(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175854
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】(メタ)アクリル系グラフト共重合体、樹脂組成物、粘着剤、及び粘着シート
(51)【国際特許分類】
C08F 265/06 20060101AFI20241212BHJP
C09J 151/06 20060101ALI20241212BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20241212BHJP
【FI】
C08F265/06
C09J151/06
C09J7/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093904
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100142309
【弁理士】
【氏名又は名称】君塚 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】藤田 果奈美
(72)【発明者】
【氏名】谷口 公太
【テーマコード(参考)】
4J004
4J026
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA10
4J004AB01
4J004AB07
4J004FA08
4J026AA47
4J026AA48
4J026BA25
4J026BA27
4J026BA50
4J026DA02
4J026DB02
4J026DB13
4J026DB15
4J026EA08
4J026FA04
4J026GA01
4J026GA08
4J040DL041
4J040JB08
4J040JB09
(57)【要約】
【課題】本発明によれば、低い溶融粘度を維持したまま、粘着力が高い樹脂組成物を提供するための(メタ)アクリル系グラフト共重合体、樹脂組成物、粘着剤及び粘着シートを提供できる。
【解決手段】励起によって活性種を生成し架橋構造を形成する単量体Mに由来する構成単位(m)を有する(メタ)アクリル系グラフト共重合体であって、前記(メタ)アクリル系グラフト共重合体は、主鎖ポリマー構造、及び側鎖ポリマー構造を有し、前記側鎖ポリマー構造に含まれる前記構成単位(m)の含有量が、前記(メタ)アクリル系グラフト共重合体に含まれる前記構成単位(m)の総質量に対して、80質量%超である、(メタ)アクリル系グラフト共重合体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
励起によって活性種を生成し架橋構造を形成する単量体Mに由来する構成単位(m)を有する(メタ)アクリル系グラフト共重合体であって、
前記(メタ)アクリル系グラフト共重合体は、主鎖ポリマー構造、及び側鎖ポリマー構造を有し、
前記側鎖ポリマー構造に含まれる前記構成単位(m)の含有量が、前記(メタ)アクリル系グラフト共重合体に含まれる前記構成単位(m)の総質量に対して、80質量%超である、(メタ)アクリル系グラフト共重合体。
【請求項2】
マクロモノマーに由来する構成単位を含む、請求項1に記載の(メタ)アクリル系グラフト共重合体。
【請求項3】
前記活性種が、ラジカルである、請求項1に記載の(メタ)アクリル系グラフト共重合体。
【請求項4】
前記単量体Mが、ベンゾフェノン骨格、チオキサントン骨格、及びアントラキノン骨格からなる群より選ばれる少なくとも1つの構造を有する、請求項1に記載の(メタ)アクリル系グラフト共重合体。
【請求項5】
前記単量体Mが、下記式(1)で表される単量体である、請求項1に記載の(メタ)アクリル系グラフト共重合体。
【化1】
(式中、R
A及びR
Bはそれぞれ独立にアルキル基、アルコキシ基、水酸基、カルボキシ基、又はハロゲン原子を示し、nは0~5の整数を示し、mは0~4の整数を示し、Xは、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルオキシアルキレンオキシ基、又は(メタ)アクリロイルオキシアルキレンオキシカルボニルオキシ基を示す。)
【請求項6】
前記構成単位(m)の含有量が、前記(メタ)アクリル系グラフト共重合体の合計質量に対して、0.01質量%以上50質量%以下である、請求項1に記載の(メタ)アクリル系グラフト共重合体。
【請求項7】
前記(メタ)アクリル系グラフト共重合体のガラス転移温度が0℃以下である、請求項1に記載の(メタ)アクリル系グラフト共重合体。
【請求項8】
前記(メタ)アクリル系グラフト共重合体が、カルボキシ基含有(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含む、請求項1に記載の(メタ)アクリル系グラフト共重合体。
【請求項9】
前記カルボキシ基含有(メタ)アクリレートに由来する構成単位の含有量が、前記(メタ)アクリル系グラフト共重合体の合計質量に対して、0.1質量%以上20質量%以下である、請求項8に記載の(メタ)アクリル系グラフト共重合体。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の(メタ)アクリル系グラフト共重合体を含む、樹脂組成物。
【請求項11】
請求項10に記載の樹脂組成物を含む、粘着剤。
【請求項12】
請求項10に記載の樹脂組成物に紫外線を照射してなる、粘着剤。
【請求項13】
請求項11に記載の粘着剤を含む、粘着シート。
【請求項14】
請求項12に記載の粘着剤を含む、粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(メタ)アクリル系グラフト共重合体、樹脂組成物、粘着剤、及び粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
基材上に塗工可能であり、紫外線の照射により硬化する粘着剤組成物として、炭素数1~4のアルキル基を有するアルキルアクリレートと、アクリル酸等の不飽和カルボン酸と、(メタ)アクリロイルオキシ基を有するベンゾフェノン誘導体とを重合した共重合体を含む樹脂組成物が知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、(メタ)アクリロイルオキシ基を有するベンゾフェノン由来の構成単位を有する共重合体であって、前記構成単位の含有量が0.01~25質量%である共重合体、及びこれを含む樹脂組成物も知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-299017号公報
【特許文献2】国際公開第2020/158475号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の樹脂組成物は、高い粘着力を得ることが難しい。
特許文献2に記載の樹脂組成物は、溶融粘度と粘着力のバランスを取りにくい。
【0005】
本発明は、低い溶融粘度を維持したまま、粘着力が高い樹脂組成物を提供できる(メタ)アクリル系グラフト共重合体、樹脂組成物、粘着剤及び粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の要旨は以下の通りである。
[1] 励起によって活性種を生成し架橋構造を形成する単量体Mに由来する構成単位(m)を有する(メタ)アクリル系グラフト共重合体であって、
前記(メタ)アクリル系グラフト共重合体は、主鎖ポリマー構造、及び側鎖ポリマー構造を有し、
前記側鎖ポリマー構造に含まれる前記構成単位(m)の含有量が、前記(メタ)アクリル系グラフト共重合体に含まれる前記構成単位(m)の総質量に対して、80質量%超である、(メタ)アクリル系グラフト共重合体。
[2] マクロモノマーに由来する構成単位を含む、[1]に記載の(メタ)アクリル系グラフト共重合体。
[3] 前記活性種が、ラジカルである、[1]又は[2]に記載の(メタ)アクリル系グラフト共重合体。
[4] 前記単量体Mが、ベンゾフェノン骨格、チオキサントン骨格、及びアントラキノン骨格からなる群より選ばれる少なくとも1つの構造を有する、[1]~[3]のいずれか一項に記載の(メタ)アクリル系グラフト共重合体。
[5] 前記単量体Mが、下記式(1)で表される単量体である、[1]~[4]のいずれか一項に記載の(メタ)アクリル系グラフト共重合体。
【0007】
【化1】
(式中、R
A及びR
Bはそれぞれ独立にアルキル基、アルコキシ基、水酸基、カルボキシ基、又はハロゲン原子を示し、nは0~5の整数を示し、mは0~4の整数を示し、Xは、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルオキシアルキレンオキシ基、又は(メタ)アクリロイルオキシアルキレンオキシカルボニルオキシ基を示す。)
【0008】
[6] 前記構成単位(m)の含有量が、前記(メタ)アクリル系グラフト共重合体の合計質量に対して、0.01質量%以上50質量%以下である、[1]~[5]のいずれか一項に記載の(メタ)アクリル系グラフト共重合体。
[7] 前記(メタ)アクリル系グラフト共重合体のガラス転移温度が0℃以下である、[1]~[6]のいずれか一項に記載の(メタ)アクリル系グラフト共重合体。
[8] 前記(メタ)アクリル系グラフト共重合体が、カルボキシ基含有(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含む、[1]~[7]のいずれか一項に記載の(メタ)アクリル系グラフト共重合体。
[9] 前記カルボキシ基含有(メタ)アクリレートに由来する構成単位の含有量が、前記(メタ)アクリル系グラフト共重合体の合計質量に対して、0.1質量%以上20質量%以下である、[8]に記載の(メタ)アクリル系グラフト共重合体。
[10] [1]~[9]のいずれか一項に記載の(メタ)アクリル系グラフト共重合体を含む、樹脂組成物。
[11] [10]に記載の樹脂組成物を含む、粘着剤。
[12] [10]に記載の樹脂組成物に紫外線を照射してなる、粘着剤。
[13] [11]に記載の粘着剤を含む、粘着シート。
[14] [12]に記載の粘着剤を含む、粘着シート。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、低い溶融粘度を維持したまま、粘着力が高い樹脂組成物を提供できる(メタ)アクリル系グラフト共重合体、樹脂組成物、粘着剤及び粘着シートを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の用語の定義は、本明細書及び請求の範囲にわたって適用される。
「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートの総称である。
「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸及びメタクリル酸の総称である。
「(メタ)アクリル系共重合体」は、構成単位の少なくとも一部が(メタ)アクリル系単量体由来の構成単位である共重合体を意味する。(メタ)アクリル系共重合体は、(メタ)アクリル系単量体以外の単量体(例えば、スチレン等)由来の構成単位をさらに含んでいてもよい。
「(メタ)アクリル系単量体」は、(メタ)アクリロイル基を有する単量体を意味する。
「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル及びメタクリロイルの総称である。
「マクロモノマー」とは、ラジカル重合性基又は付加反応性の官能基を有する重合物を意味する。
数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
マクロモノマー、及び(メタ)アクリル系共重合体の数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン基準の分子量である。
【0011】
(メタ)アクリル系共重合体のガラス転移温度は、Foxの計算式により求められる計算値である。例えば、(メタ)アクリル系共重合体が、単量体Mに由来する構成単位pと、(メタ)アクリレートに由来する構成単位qとからなる場合、単量体Mと、(メタ)アクリレートとの各々のホモポリマーのガラス転移温度及び質量分率から、下記Foxの計算式によって算出されるTgを(メタ)アクリル系共重合体のガラス転移温度(単位:℃)とする。
1/(273+Tg)=Σ(Wi/(273+Tgi))
(式中、Wiは単量体iの質量分率、Tgiは単量体iのホモポリマーのガラス転移温度(℃)を示す。)
【0012】
なお、単量体iのホモポリマーのガラス転移温度は、ポリマーハンドブック〔Polymer HandBook,J.Brandrup,Interscience,1989〕に記載されている値を用いることができる。
【0013】
<(メタ)アクリル系グラフト共重合体>
本発明の組成物は、励起によって活性種を生成し架橋構造を形成する単量体Mに由来する構成単位を有する、(メタ)アクリル系グラフト共重合体を含む。
【0014】
(メタ)アクリル系グラフト共重合体は、(メタ)アクリル系共重合体のうち、主鎖ポリマー構造と、主鎖ポリマー構造(幹ポリマー構造)に化学結合する側鎖ポリマー構造(枝ポリマー構造)で構成されたグラフト共重合体である。本明細書において、グラフト共重合体とは、主鎖ポリマー構造に、側鎖ポリマー構造として接続された1種以上のブロックを持つ高分子である。主鎖ポリマーと側鎖ポリマーの構造は、異なってもよいし、同じであってもよい。グラフト共重合体の製造方法としては特に限定されないが、末端にラジカル重合性二重結合を有するマクロモノマーを側鎖ポリマー構造として製造した後に、主鎖ポリマーの構成単位となるモノマーとラジカル重合する方法や、反応点を有する主鎖ポリマーと反応点を有するマクロモノマーを予め製造した後、それらを反応させる方法、主鎖ポリマーの製造後に水素引き抜き能を有する開始剤を使用して主鎖ポリマー上にラジカルを発生させ、側鎖ポリマーの構成単位となるモノマーを反応させて側鎖ポリマー構造を製造する方法等が挙げられる。
【0015】
(メタ)アクリル系グラフト共重合体は、構成単位の少なくとも一部が(メタ)アクリル系単量体由来の構成単位であるグラフト共重合体を意味する。(メタ)アクリル系単量体以外のビニル系ラジカル重合性単量体(たとえばスチレン等)由来の構成単位をさらに含んでいてもよい。(メタ)アクリル系グラフト共重合体は、単量体Mと(メタ)アクリル系単量体を含む混合物の共重合により製造することができる。(メタ)アクリル系グラフト共重合体は、側鎖ポリマー構造に含まれる前記単量体M由来の構成単位(以下、「構成単位(m)」ともいう。)の含有量を、前記(メタ)アクリル系グラフト共重合体に含まれる前記構成単位(m)の総質量に対して、80質量%超とすることで、高い粘着力と低い溶融粘度の両立が可能となる。
【0016】
前記側鎖ポリマー構造に含まれる構成単位(m)の総質量は、前記(メタ)アクリル系グラフト共重合体に含まれる構成単位(m)の総質量に対して、80質量%超であり、90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、98質量%以上であることがさらに好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
【0017】
前記主鎖ポリマー構造に含まれる構成単位(m)の総質量は、前記(メタ)アクリル系グラフト共重合体に含まれる構成単位(m)の総質量に対して、20質量%未満であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましく、2質量%以下であることが特に好ましく、0質量%であることが最も好ましい。
【0018】
構成単位(m)が側鎖ポリマー構造と主鎖ポリマー構造との両方に含まれる場合、[前記(メタ)アクリル系グラフト共重合体に含まれる構成単位(m)の総質量に対する前記側鎖ポリマー構造に含まれる構成単位(m)の総質量(質量%)]/[前記(メタ)アクリル系グラフト共重合体に含まれる構成単位(m)の総質量に対する前記主鎖ポリマー構造に含まれる構成単位(m)の総質量(質量%)]で表される質量比は、0.56超であることが好ましく、0.6~100であることがより好ましく、1.0~100であることがさらに好ましい。
【0019】
[前記(メタ)アクリル系グラフト共重合体に含まれる構成単位(m)の総質量に対する前記側鎖ポリマー構造に含まれる構成単位(m)の総質量(質量%)]-[前記(メタ)アクリル系グラフト共重合体に含まれる構成単位(m)の総質量に対する前記主鎖ポリマー構造に含まれる構成単位(m)の総質量(質量%)]で表される差は、0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましく、0.10質量%以上であることがさらに好ましい。なお、上限は通常10質量%である。
【0020】
[前記側鎖ポリマー構造に含まれる構成単位の総質量]/[前記主鎖ポリマー構造に含まれる構成単位の総質量]で表される質量比は、0.01~0.5であることが好ましく、0.03~0.3であることがより好ましく、0.05~0.1であることがさらに好ましい。
【0021】
側鎖ポリマー構造に含まれる前記構成単位(m)の含有量は、側鎖ポリマー構造の合計質量に対して、0.1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、0.3質量%以上20質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以上10質量%以下であることがさらに好ましく、1.0質量%以上5.0質量%以下であることが特に好ましい。側鎖ポリマー構造の合計質量に対する構成単位(m)の含有量が前記下限値以上であると、高い粘着力と低い溶融粘度とを両立しやすくなる。側鎖ポリマー構造の合計質量に対する構成単位(m)の含有量が前記上限値以下であると、粘着性能のバランスを取りやすい。
【0022】
(メタ)アクリル系グラフト共重合体は、実質的に末端にラジカル重合性基を有しない。なお、ラジカル重合性基とは、ラジカル重合性の不飽和結合を有する基を意味し、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等のエチレン性不飽和基が含まれる。
【0023】
「単量体Mに由来する構成単位」
単量体Mは、紫外線や電子線などの光励起によって活性種を生成し、架橋構造を形成する。活性種としては、ラジカル、カチオン、アニオンを例示でき、反応性の点からラジカルが好ましい。
光励起によってラジカルを生成する単量体としては、ベンゾフェノン骨格、チオキサントン骨格、アントラキノン骨格等を有する単量体が挙げられる。これらの骨格はベンゾフェノン骨格を含むため、光励起によってベンゾフェノン骨格の励起3重項状態が生成し、炭化水素基からの水素引き抜きにより2級水酸基を有する炭素ラジカルAとなる。この炭素ラジカルAが、水素を引き抜かれて生成した炭素ラジカルBと結合することにより、架橋点に3級水酸基、及び2つのフェニル基を有する架橋構造を形成すると考えられる。架橋構造は、例えば、ジフェニルヒドロキシメチル基を含むことが好ましい。架橋構造におけるフェニル基は、置換基を有していてもいなくてもよい。
単量体Mとしては、下記式(1)で表されるベンゾフェノン誘導体が反応性の点から好ましい。
【0024】
【0025】
式(1)中、RA及びRBはそれぞれ独立にアルキル基、アルコキシ基、水酸基、カルボキシ基、又はハロゲン原子を示す。
アルキル基としては、炭素数1~30の直鎖又は分岐のアルキル基が好ましく、炭素数1~10の直鎖又は分岐のアルキル基がより好ましく、炭素数1~5の直鎖又は分岐のアルキル基がさらに好ましい。
アルコキシ基としては、炭素数1~30の直鎖又は分岐のアルコキシ基が好ましく、炭素数1~10の直鎖又は分岐のアルコキシ基がより好ましく、炭素数1~5の直鎖又は分岐のアルコキシ基がさらに好ましい。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられる。
nは0~5の整数であり、0~3の整数が好ましく、0がより好ましい。mは0~4の整数であり、0~3の整数が好ましく、0がより好ましい。Xは、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルオキシアルキレンオキシ基、又は(メタ)アクリロイルオキシアルキレンオキシカルボニルオキシ基を示す。(メタ)アクリロイルオキシアルキレンオキシ基におけるアルキレン基としては、炭素数2~10のアルキレン基が好ましく、炭素数2~6のアルキレン基がより好ましい。(メタ)アクリロイルオキシアルキレンオキシ基としては、2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ基、2-(メタ)アクリロイルオキシプロポキシ基等が挙げられる。(メタ)アクリロイルオキシアルキレンオキシカルボニルオキシ基としては、4-(メタ)アクリロイルオキシブトキシカルボニルオキシ基等が挙げられる。
【0026】
上記式(1)で表される単量体としては、4-アクリロイルオキシベンゾフェノン、4-メタクリロイルオキシベンゾフェノン、4-[2-(アクリロイルオキシ)エトキシ]ベンゾフェノン、4-[2-(メタクリロイルオキシ)エトキシ]ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-アクリロイルオキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メタクリロイルオキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-(2-アクリロイルオキシ)エトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-(2-メチル-2-アクリロイルオキシ)エトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-アクリロイルオキシ-5-tert-ブチルベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-アクリロイルオキシ-2’,4’-ジクロロベンゾフェノン、4-(((4-ベンゾイルフェノキシ)カルボニル)オキシ)ブチルアクリレート、4-(((4-ベンゾイルフェノキシ)カルボニル)オキシ)ブチルメタクリレートを例示できる。なかでも、4-メタクリロイルオキシベンゾフェノン、4-[2-(メタクリロイルオキシ)エトキシ]ベンゾフェノンが好ましい。
単量体Mは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0027】
前記構成単位(m)の含有量は、(メタ)アクリル系グラフト共重合体の合計質量に対して、0.01~50質量%であることが好ましく、0.02~1.00質量%であることがより好ましく、0.03~0.50質量%であることがさらに好ましく、0.05~0.30質量%であることが特に好ましい。前記構成単位(m)の含有量が前記下限値以上であると、架橋効率が向上する。前記構成単位(m)の含有量が前記上限値以下であると、高い粘着力と低い溶融粘度とのバランスを取りやすい。
【0028】
「(メタ)アクリル系単量体に由来する構成単位」
本発明における(メタ)アクリル系グラフト共重合体は、(メタ)アクリル系単量体を含んでいてもよい。(メタ)アクリル系単量体としては、例えば、炭化水素基含有(メタ)アクリレート、水酸基含有(メタ)アクリレート、カルボキシ基含有(メタ)アクリレート、アミノ基含有(メタ)アクリレート、エポキシ基含有(メタ)アクリレート、多官能(メタ)アクリレートを例示できる。
(メタ)アクリル系単量体としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0029】
炭化水素基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートを例示できる。
【0030】
水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートを例示できる。
【0031】
カルボキシ基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸を例示できる。
【0032】
アミノ基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートを例示できる。
【0033】
エポキシ基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレートを例示できる。
【0034】
多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートを例示できる。
【0035】
(メタ)アクリル系グラフト共重合体は、炭化水素基含有(メタ)アクリレート由来の構成単位として、直鎖の炭素数1~30のアルキル基、又は分岐鎖の炭素数3~30のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位を含むことができる。直鎖の炭素数1~30のアルキル基の炭素数は、2~10であることが好ましく、3~8であることがより好ましく、4がさらに好ましい。
【0036】
カルボキシ基含有(メタ)アクリレートに由来する構成単位の含有量は、(メタ)アクリル系グラフト共重合体の合計質量に対して、0.1質量%以上20質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上10質量%以下であることがより好ましく、1質量%以上8質量%以下であることがさらに好ましく、3質量%以上6質量%以下であることが特に好ましい。カルボキシ基含有(メタ)アクリレートに由来する構成単位の含有量が前記下限値以上であると、高い粘着力と低い溶融粘度とを両立しやすくなる。カルボキシ基含有(メタ)アクリレートに由来する構成単位の含有量が前記上限値以下であると、粘着性能のバランスを取りやすい。
【0037】
「マクロモノマーに由来する構成単位」
本発明における(メタ)アクリル系グラフト共重合体は、マクロモノマーに由来する構成単位を含むことが好ましい。
【0038】
マクロモノマーに由来する構成単位は、(メタ)アクリル系グラフト共重合体の側鎖ポリマーに含まれることが好ましい(ただし、マクロモノマーに由来する構成単位のうち、末端にラジカル重合性二重結合を有する構成単位に由来する構成単位のみ、主鎖ポリマーに含まれることが好ましい。)。
【0039】
マクロモノマーとしては、下記式(2)で表されるマクロモノマーが好ましい。
【0040】
【0041】
上記式(2)中、Rは、水素原子、アルキル基、脂環式基、アリール基、又は複素環基を示す。これらの基は置換基を有していてもよい。Rにおけるアルキル基としては、例えば、炭素数1~30の分岐又は直鎖アルキル基が挙げられる。脂環式基としては、単環式でも多環式でもよく、例えば、炭素数3~20の脂環式基が挙げられる。アリール基としては、例えば、炭素数6~18のアリール基が挙げられる。複素環式基としては、例えば、炭素数5~18の複素環式基が挙げられる。置換基としては、アルキル基、アリール基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アミノ基、モノメチルアミノ基、ジメチルアミノ基、カルバモイル基、N-メチルカルバモイル基、N,N-ジメチルカルバモイル基、ハロゲン原子、アリル基、エポキシ基、シロキシ基、カルボキシ基のアルカリ塩、スルホキシ基のアルカリ塩、ポリエチレンオキシド基、ポリプロピレンオキシド基、四級アンモニウム塩基を例示できる。
【0042】
Rとしては、アルキル基又は飽和脂環式基が好ましく、アルキル基、飽和脂環式基、置換基としてアルキル基を有する飽和脂環式基が好ましい。なかでも、入手のし易さから、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、イソボルニル基、及びアダマンチル基がより好ましく、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、イソボルニル基、アダマンチル基がさらに好ましい。
【0043】
式(2)中、Zは末端基であり、公知のラジカル重合で得られるポリマーの末端基と同様に、水素原子、ラジカル重合開始剤に由来する基が挙げられる。
R21は水素原子又はメチル基である。
R22は、非置換の若しくは置換基を有するアルキル基、非置換の若しくは置換基を有する脂環式基、非置換の若しくは置換基を有するアリール基、非置換の若しくは置換基を有するヘテロアリール基、非置換の若しくは置換基を有するアラルキル基、非置換の若しくは置換基を有するアルカリール基、非置換の若しくは置換基を有するオルガノシリル基、又は非置換の若しくは置換基を有する(ポリ)オルガノシロキサン基である。これらの基における置換基はそれぞれ、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、非芳香族の複素環式基、アラルキル基、アルカリール基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、エポキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、イソシアナト基、スルホン酸基、及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも1種である。aは2以上の自然数を示す。aは、マクロモノマーの重量平均分子量(Mw)が500以上10万以下となる範囲内である。
a個のR21はすべて同じでも、一部が異なっていてもよい。a個のR22はすべて同じでも、一部が異なっていてもよい。
マクロモノマーとしては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0044】
マクロモノマーのMwは500~10万が好ましく、600~5万がより好ましく、1000~2万がさらに好ましい。マクロモノマーのMwが前記範囲内であると、粘着力と取り扱い性(他の成分との相溶性、塗工性、ホットメルト加工性等)のバランスが良好となりやすい。
【0045】
マクロモノマーのMnは500~5万が好ましく、600~2万がより好ましく、1000~1万がさらに好ましい。マクロモノマーのMnが前記範囲内であると、粘着力と取り扱い性(他の成分との相溶性、塗工性、ホットメルト加工性等)のバランスが良好となりやすい。
【0046】
マクロモノマーは、公知の方法により製造したものを用いてもよく、市販のものを用いてもよい。マクロモノマーの製造方法としては、例えば、コバルト連鎖移動剤を用いて製造する方法、α-メチルスチレンダイマー等のα置換不飽和化合物を連鎖移動剤として用いる方法、開始剤を用いる方法、重合体にラジカル重合性基を化学的に結合させる方法、熱分解による方法等が挙げられる。
マクロモノマーの製造においては、単量体としては特に限定されず、例えば、前記単量体M及び(メタ)アクリル系単量体等が挙げられる。
単量体としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0047】
マクロモノマーに由来する構成単位の含有量は、(メタ)アクリル系グラフト共重合体の合計質量に対して、0.1質量%以上40質量%以下であることが好ましく、0.3質量%以上30質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以上20質量%以下であることがさらに好ましく、1.0質量%以上10質量%以下であることが特に好ましい。マクロモノマーに由来する構成単位の含有量が前記下限値以上であると、高い粘着力と低い溶融粘度とを両立しやすくなる。マクロモノマーに由来する構成単位の含有量が前記上限値以下であると、粘着性能のバランスを取りやすい。
【0048】
マクロモノマーに含まれる前記構成単位(m)の含有量は、マクロモノマーの合計質量に対して、0.1質量%以上50質量%以下であることが好ましく、0.3質量%以上40質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以上30質量%以下であることがさらに好ましく、1.0質量%以上20質量%以下であることが特に好ましく、2.0質量%以上10質量%以下であることが最も好ましい。マクロモノマーの合計質量に対する構成単位(m)の含有量が前記下限値以上であると、高い粘着力と低い溶融粘度とを両立しやすくなる。マクロモノマーの合計質量に対する構成単位(m)の含有量が前記上限値以下であると、粘着性能のバランスを取りやすい。
【0049】
本発明における(メタ)アクリル系グラフト共重合体は、上記構成単位以外に、他の単量体に由来する構成単位を含んでいてもよい。
【0050】
他の単量体としては、特に限定されず、スチレン、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、塩化ビニル、酢酸ビニル、フッ化ビニル、フッ化ビニリデンを例示できる。
他の単量体としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0051】
(メタ)アクリル系グラフト共重合体のMwは、10000~2000000が好ましく、11000~1000000がより好ましく、30000~600000がさらに好ましく、50000~500000が特に好ましく、100000~400000が最も好ましい。(メタ)アクリル系グラフト共重合体のMwが前記下限値以上であると、粘着層の耐久性に優れる。(メタ)アクリル系グラフト共重合体のMwが前記上限値以下であると、取り扱い性(他の成分との相溶性、塗工性、ホットメルト加工性等)に優れる。
Mwと同様の理由から、(メタ)アクリル系グラフト共重合体の数平均分子量(Mn)は、10000~1000000が好ましく、11000~500000がより好ましく、12000~100000がさらに好ましく、13000~50000が特に好ましい。
Mwと同様の理由から、(メタ)アクリル系グラフト共重合体のMw/Mnは、1.0~20.0が好ましく、3.0~17.0がより好ましく、4.0~15.0がさらに好ましく、5.0~13.0であることが特に好ましい。
【0052】
(メタ)アクリル系グラフト共重合体のガラス転移温度(Tg)は、粘着性の点から、0℃以下が好ましく、-5℃以下がより好ましい。(メタ)アクリル系グラフト共重合体のTgの下限値は、特に限定されるものではないが、例えば、-100℃以上であり得る。
【0053】
(メタ)アクリル系グラフト共重合体は、公知の重合開始剤を用いて、公知の方法で製造できる。重合方法としては、例えば、溶液重合法、懸濁重合法、塊状重合法、乳化重合法等の公知の重合方法が適用でき、その中でも溶液重合法が好ましい。重合開始剤はラジカル重合開始剤が好ましい。溶液重合における溶媒としては、例えば、アセトン、トルエン、キシレン、酢酸エチル等の有機溶剤が挙げられる。
【0054】
以上説明した本発明の組成物は、側鎖ポリマー構造に含まれる前記構成単位(m)の含有量を、前記(メタ)アクリル系グラフト共重合体に含まれる前記構成単位(m)の総質量に対して、80質量%超とすることで、粘着力と低い溶融粘度の両立が可能となる。
【0055】
<樹脂組成物>
本発明の樹脂組成物は、本発明の(メタ)アクリル系グラフト共重合体を含む。
(メタ)アクリル系グラフト共重合体の含有量は、樹脂組成物の総質量に対し、20~100質量%が好ましく、30~100質量%がより好ましく、40~100質量%がさらに好ましく、50~100質量%であることが特に好ましい。
【0056】
本発明の樹脂組成物は、(メタ)アクリル系グラフト共重合体以外の他の成分を含んでもよい。他の成分としては、特に限定されず、例えば、溶剤、充填剤、架橋剤、粘着付与樹脂、酸化防止剤、光安定化剤、金属不活性化剤、老化防止剤、吸湿剤、防錆剤、加水分解防止剤、反応触媒を例示できる。
本発明の樹脂組成物は、溶剤を含む液状の組成物の態様でもよく、溶剤を含まない組成物の態様でもよい。
【0057】
本発明の樹脂組成物の未照射時の130℃溶融粘度は、160Pa・s以下が好ましく、20~160Pa・sがより好ましく、30~158Pa・sがさらに好ましい。
未照射時の130℃溶融粘度は、実施例に記載の方法により測定できる。
【0058】
本発明の樹脂組成物を硬化した後の粘着力は、9.5N/25mm以上が好ましく、9.5~20.0N/25mmがより好ましく、9.5~15.0N/25mmがさらに好ましい。
樹脂組成物を硬化した後の粘着力は、実施例に記載の方法により測定できる。
【0059】
<粘着剤、粘着シート>
本発明の粘着剤は、本発明の樹脂組成物からなる粘着剤である。
本発明の粘着剤は、本発明の樹脂組成物を未硬化状態で用いるものでもよく、活性エネルギー線を照射して硬化させたものであってもよい。活性エネルギー線としては、汎用性の点から、紫外線が好ましい。
本発明の粘着剤は、ホットメルト型の粘着剤であってもよく、反応性ホットメルト型の粘着剤が好ましく、紫外線反応性ホットメルト型の粘着剤がより好ましい。
【0060】
本発明の粘着シートは、本発明の粘着剤を含む粘着シートであり、本発明の粘着剤を層とした粘着剤層を有する。粘着剤層は、樹脂組成物からなるものであってもよく、樹脂組成物に紫外線を照射してなる硬化物からなるものであってもよい。粘着シートの取り扱い性の点では、樹脂組成物を紫外線により硬化させた硬化物からなる粘着層が好ましい。紫外線の照射量は、20~150mJ/cm2であることが好ましく、30~130mJ/cm2であることがより好ましく、35~105mJ/cm2であることがさらに好ましい。
【0061】
本発明の粘着シートは、本発明の樹脂組成物をシート状に成形した粘着剤層のみからなる態様でもよく、本発明の樹脂組成物をシート状に成形した粘着剤層の片面又は両面に異なる粘着剤層が積層した積層体の態様でもよく、本発明の樹脂組成物をシート状に成形した粘着剤層の片面又は両面に剥離性基材が積層した積層体の態様でもよい。
【0062】
粘着剤層の厚さは、用途に応じて適宜設定でき、10~500μmが好ましく、20~100μmがより好ましい。
【0063】
本発明の粘着シートの用途は特に限定されない。例えば、透明プラスチックフィルムに適用することにより、あるいは粘着フィルム状に加工することにより、車両用、建築用等の窓貼りフィルムの貼り合せや、ラベル表示におけるラベルの貼り合せ、加飾フィルムの貼り合せ等に用いることができる。基材上に粘着シートを形成することにより、テープとして用いることができる。また透明両面粘着シート状に加工することにより液晶パネル等のディスプレイ表示における各種パネルの貼り合せ、ガラス等の透明板材の貼り合せ等に用いることができる。
【実施例0064】
以下、実施例および比較例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。なお、以下の記載において、「部」は「質量部」を意味する。
【0065】
<略号>
本実施例で使用した原料の略号を以下に示す。
IPA:イソプロピルアルコール。
MMA:メチルメタクリレート。
4-MBP:4-メタクリロイルオキシベンゾフェノン。
n-BA:n-ブチルアクリレート。
AA:アクリル酸。
EHMA:メタクリル酸2-エチルヘキシル。
iBMA:メタクリル酸イソブチル。
AMBN:2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)。
V-65:2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)。
【0066】
<重合体Xの分子量>
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)装置(東ソー株式会社製 HLC-8320)を用いて測定した。重合体Xのテトラヒドロフラン(THF)溶液0.2質量%を調製後、東ソー株式会社製カラム(TSKgel SuperHZM-M(内径4.6mm、長さ15cm)、HZM-M(内径4.6mm、長さ15cm)、HZ-2000(内径4.6mm、長さ15cm)、TSKguardcolumn SuperHZ-L(内径4.6mm、長さ3.5cm))が装着された装置に上記の溶液10μLを注入し、流量:0.35mL/分、溶離液:テトラヒドロフラン(安定剤:ブチルヒドロキシトルエン(BHT))、カラム温度:40℃の条件で測定し、標準ポリスチレン換算にて重合体Xの数平均分子量(Mn)を算出した。
【0067】
<重合体AのTg>
上記Foxの計算式により、重合体AのTgを算出した。
<重合体Aの分子量>
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)装置(東ソー株式会社製、HLC-8320)を用いて測定した。重合体Aのテトラヒドロフラン(THF)溶液0.27質量%を調製後、東ソー株式会社製カラム(TSKgel SuperHZMH(内径4.6mm、長さ15cm)、HZMH(内径4.6mm、長さ15cm)、TSKguardcolumn SuperHZ-H(内径4.6mm、長さ3.5cm))が装着された上記装置に上記溶液10μLを注入し、流量:0.5mL/分、溶離液:THF(安定剤:ブチルヒドロキシトルエン(BHT))、カラム温度:40℃の条件で測定し、標準ポリスチレン換算にて重合体Aの重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、及びMw/Mnを算出した。
【0068】
<溶融粘度>
各例で得た樹脂組成物を固形分が33.3質量%となるように酢酸エチルで希釈し、重合体の溶け残りがないことを目視で確認し、常温(23℃)で液状の樹脂組成物とした。剥離処理をしたPETフィルム上に、前記樹脂組成物をアプリケーターで塗工し、90℃で1時間乾燥して厚さ50μmの粘着層を形成した。前記粘着層に対して、粘弾性測定装置HAAKE MARSを用いて溶融粘度を測定した。直径35mmのコーンプレートを用い、130℃、周波数0.02Hzで測定した時の粘度(η*)値を未照射時の130℃における溶融粘度の値とした。
【0069】
<試験片の作製>
各例で得た樹脂組成物を固形分が33.3質量%となるように酢酸エチルで希釈し、重合体の溶け残りがないことを目視で確認し、常温(23℃)で液状の樹脂組成物とした。
膜厚38μmのPETフィルム上に、前記樹脂組成物をアプリケーターで塗工し、90℃で1時間乾燥して粘着層を形成した。85mWの高圧水銀ランプを使用して、粘着層を形成したPETフィルム(PET)に、空気中で紫外線(UV-C)を照射し、粘着層を硬化させた。UV-C照射量は35mJ/cm2(積算光量計UV POWER PUCK II(S/N 13685)(米国EIT製)による実測値)とした。その上面に、剥離処理をしたPETフィルム(剥離PET)を重ねて、剥離PET-粘着層-PETの構成の積層体を得た。粘着層の厚さは50μmとした。硬化後の積層体を幅25mm、長さ250mmの短冊状に裁断し、試験片とした。
【0070】
<粘着力>
試験片の剥離PETを剥がして粘着層を露出させ、貼り合せ面が25mm×70mmになるように30mm×110mmのステンレス(SUS)板に3kgのハンドローラーを用いて貼り合せ、剥離角度180°、引張速度300mm/分で、SUS板に対する剥離強度(N/25mm)を測定し、粘着力とした。
【0071】
<製造例1>
撹拌機、冷却管、温度計、及び窒素ガス導入管を備えた重合装置中に、脱イオン水を900部、メタクリル酸2-スルホエチルナトリウムを60部、メタクリル酸カリウムを10部、及びMMAを12部入れて撹拌し、重合装置内を窒素置換しながら50℃に昇温した。さらに、重合開始剤として2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩を0.08部添加し、60℃に昇温した。昇温後、滴下ポンプを使用して、MMAを0.24部/分の速度で75分間連続的に滴下した。混合物を60℃で6時間保持した後、室温に冷却して、固形分10質量%の分散剤1を得た。
【0072】
<製造例2>
撹拌装置を備えた合成装置中に、窒素雰囲気下で、酢酸コバルト(II)四水和物を1.00g、ジフェニルグリオキシムを1.93g、あらかじめ窒素バブリングにより脱酸素したジエチルエーテルを80mL加え、室温で30分間撹拌した。さらに、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体を10mL加え、6時間撹拌した。混合物をろ過し、固体をジエチルエーテルで洗浄し、15時間真空乾燥して、赤褐色固体である連鎖移動剤1を2.12g得た。
【0073】
<製造例3>
撹拌機、冷却管、温度計、及び窒素ガス導入管を備えた重合装置中に、脱イオン水を145部、硫酸ナトリウムを0.1部、及び分散剤1(固形分10質量%)を0.5部入れて撹拌し、均一な水溶液とした。さらに、MMAを97.2部、4-MBPを2.8部、連鎖移動剤1を0.0022部、重合開始剤としてパーオクタ(登録商標)O(1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、日油株式会社製)を0.5部加え、水性懸濁液とした。
さらに、重合装置内を窒素置換し、80℃に昇温して3.5時間撹拌し、さらに重合率を上げるため、90℃に昇温して1時間保持した。その後、40℃に冷却し、得られた水性懸濁液をフィルタで濾過し、フィルタ上に残った残留物を脱イオン水で洗浄し、脱水し、40℃で16時間乾燥して重合体X-1を得た。
【0074】
<製造例4~5、製造例8~9>
表1に記載の通りに配合を変更した以外は、製造例3と同様にして重合体X-2~X-3、X-6~X-7を製造した。
【0075】
<製造例6>
撹拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入口を備えた四つ口フラスコに、MMAを87.2部、EHMAを10部、4-MBPを2.8部、連鎖移動剤1を0.00078部、および酢酸エチルを58部仕込み、窒素バブリングによって酸素を置換した。次に、重合開始剤としてAMBNを0.4部、および酢酸エチルを2部加えた。次に、ウォーターバスで外温を90℃まで昇温し、還流状態で2時間反応させた。次に、V-65を0.3部、酢酸エチルの20部を1時間かけて滴下し、その後さらに還流状態で2時間保持した。その後、反応液を40℃に冷却して重合体X-4を含む溶液を得た。この溶液に酢酸エチルを加えることで、不揮発分濃度を50質量%に調整した。
【0076】
<製造例7>
表1に記載の通りに配合を変更した以外は、製造例6と同様にして重合体X-5を含む溶液を製造した。
【0077】
【0078】
<実施例1>
撹拌装置、温度計、冷却管、及び窒素ガス導入口を備えた反応容器に、酢酸エチルを40部、IPAを5.7部入れ、窒素ガス通気下で外温を85℃に昇温した。外温が85℃に達し、内温が安定した後、25部の酢酸エチル、5部の重合体X-1、89.9部のn-BA、5.1部のAA、0.13部のナイパー(登録商標)BMT-K40(日油製、商品名)からなる混合物を4時間かけて滴下した。滴下終了後1時間保持した後、0.5部のパーオクタ(登録商標)O及び10部の酢酸エチルからなる混合物を30分間かけて添加した。その後、2時間保持した後、酸化防止剤(BASF社製、商品名「イルガノックス(登録商標)1010」)を0.5部投入し、固形分((単量体+溶剤仕込量)中の単量体仕込量の割合)が53質量%になるように酢酸エチルを添加した後、室温まで冷却して共重合体A-1を含む共重合体溶液A-1を得た。
【0079】
<実施例2~5><比較例1~2>
表2に記載の通りに配合を変更した以外は、実施例1と同様にして重合体A-2~A-7を製造した。
【0080】
重合体A-1~A-7のTg、分子量、溶融粘度、粘着力の測定結果を表2に示す。
【0081】
【0082】
表2に示すように、単量体Mに由来する構成単位(m)を有する(メタ)アクリル系グラフト共重合体であって、側鎖ポリマー構造に含まれる前記構成単位(m)の含有量が、前記(メタ)アクリル系グラフト共重合体に含まれる前記構成単位(m)の総質量に対して、80質量%超である重合体A-1~A-5は、粘着力、溶融粘度がいずれも優れていた。
単量体Mに由来する構成単位(m)を主鎖ポリマー構造にのみ含み、側鎖ポリマー構造に含まれる前記構成単位(m)の含有量が、前記(メタ)アクリル系グラフト共重合体に含まれる前記構成単位(m)の総質量に対して、80質量%以下である重合体A-6は、溶融粘度が高く、粘着力が不十分となった。
単量体Mに由来する構成単位(m)を主鎖ポリマー構造と側鎖ポリマー構造の両方に含み、側鎖ポリマー構造に含まれる前記構成単位(m)の含有量が、前記(メタ)アクリル系グラフト共重合体に含まれる前記構成単位(m)の総質量に対して、80質量%以下である重合体A-7は、溶融粘度が高く、粘着力が不十分となった。
本発明によれば、低い溶融粘度を維持したまま、粘着力が高い樹脂組成物を提供するための(メタ)アクリル系グラフト共重合体、樹脂組成物、粘着剤及び粘着シートを提供できる。