(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175926
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】興味番組獲得装置及び興味番組獲得プログラム
(51)【国際特許分類】
H04N 21/258 20110101AFI20241212BHJP
H04N 21/262 20110101ALI20241212BHJP
G06F 16/33 20190101ALI20241212BHJP
【FI】
H04N21/258
H04N21/262
G06F16/33
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094031
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】上村 真利奈
(72)【発明者】
【氏名】金子 豊
(72)【発明者】
【氏名】大亦 寿之
(72)【発明者】
【氏名】奥田 誠
(72)【発明者】
【氏名】萩尾 勇太
【テーマコード(参考)】
5B175
5C164
【Fターム(参考)】
5B175DA01
5B175HA02
5C164FA04
5C164SC11P
5C164SC28P
5C164YA10
(57)【要約】
【課題】ロボットの個性を適切に表現できる興味番組獲得装置及び興味番組獲得プログラムを提供すること。
【解決手段】興味番組獲得装置1は、ユーザが所定期間に視聴した番組からキーワードを抽出する視聴データ抽出部11と、他のユーザが視聴した番組から抽出されたキーワードの出現頻度を示すスコアを算出するスコア生成部12と、ユーザが視聴した番組から抽出されたキーワードの出現頻度を示す重み付け値を算出する加算スコア部13と、スコアを重み付け値に応じて調整した興味スコアを、キーワード毎に算出する興味スコア部14と、視聴可能な番組それぞれの情報から抽出したキーワードに対する興味スコアに基づいて、興味番組を選定する番組決定部15と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザが所定期間に視聴した番組からキーワードを抽出する視聴データ抽出部と、
前記ユーザと異なる他のユーザが視聴した番組から抽出されたキーワードの出現頻度を示すスコアを算出するスコア生成部と、
前記ユーザが視聴した番組から抽出されたキーワードの出現頻度を示す重み付け値を算出する加算スコア部と、
前記スコアを前記重み付け値に応じて調整した興味スコアを、キーワード毎に算出する興味スコア部と、
視聴可能な番組それぞれの情報から抽出したキーワードに対する前記興味スコアに基づいて、興味番組を選定する番組決定部と、を備える興味番組獲得装置。
【請求項2】
前記加算スコア部は、新たに前記ユーザが視聴した番組に前記重み付け値を算出したキーワードが出現する毎に、当該重み付け値から当該キーワードの過去の出現頻度の変動量に応じた更新スコアを減じる請求項1に記載の興味番組獲得装置。
【請求項3】
前記視聴データ抽出部は、前記キーワードとともに、番組のジャンルをさらに抽出し、
前記スコア生成部は、前記他のユーザが視聴した番組から抽出されたジャンルの出現頻度を示すスコアをさらに算出し、
前記加算スコア部は、前記ユーザが視聴した番組から抽出されたジャンルの出現頻度を示す重み付け値をさらに算出し、
前記番組決定部は、前記視聴可能な番組それぞれの情報から抽出したキーワード及びジャンルに対する前記興味スコアに基づいて、前記興味番組を決定する請求項1に記載の興味番組獲得装置。
【請求項4】
前記加算スコア部は、新たに前記ユーザが視聴した番組に前記重み付け値を算出したキーワード又はジャンルが出現する毎に、当該重み付け値から当該キーワード又はジャンルの過去の出現頻度の変動量に応じた更新スコアを減じる請求項3に記載の興味番組獲得装置。
【請求項5】
前記番組決定部は、前記視聴可能な番組それぞれに対する前記興味スコアの総和を比較し、当該興味スコアの総和が最大となる番組を選定する請求項1から請求項4のいずれかに記載の興味番組獲得装置。
【請求項6】
前記キーワードは、番組毎の字幕データ及び電子番組表データから抽出される請求項1から請求項4のいずれかに記載の興味番組獲得装置。
【請求項7】
前記ジャンルは、番組毎の電子番組表データから抽出される請求項3又は請求項4に記載の興味番組獲得装置。
【請求項8】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の興味番組獲得装置としてコンピュータを機能させるための興味番組獲得プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人と一緒にテレビ番組等のコンテンツを視聴するロボットにおいて、ロボット自身の興味番組を設定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人と対話が可能なコミュニケーションロボットの研究開発が進められている。
例えば、特許文献1では、テレビ番組の映像、音声、字幕データからキーワードを抽出して発話文を生成することにより、人と一緒にテレビを視聴するロボットが番組に関連した発話をし、テレビ視聴時にロボットと人との対話を可能とする技術が提案されている。
【0003】
また、特許文献2では、複数のロボットが、他のロボットから得た情報を参考にしつつ、互いに異なる個性を持つための技術が提案されている。
さらに、特許文献3では、視聴した番組から抽出されたキーワードが含まれる番組をロボット自身が視聴したい番組として個性を表現し、各キーワードの興味度を変化させることで、ロボットの成長感を表現する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-185400号公報
【特許文献2】特開2018-101249号公報
【特許文献3】特開2022-162742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の技術により表現されるロボットの個性は、ユーザが視聴しているテレビ番組等、ロボットを使用するユーザ個人の情報に基づき、又はこれに共通の情報が付加されるに留まっていた。このため、ロボットの個性は、ユーザに類似又は共通したものとなりやすく、ロボット自身の個性と言うには十分でなかった。
【0006】
本発明は、ロボットの個性を適切に表現できる興味番組獲得装置及び興味番組獲得プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る興味番組獲得装置は、ユーザが所定期間に視聴した番組からキーワードを抽出する視聴データ抽出部と、前記ユーザと異なる他のユーザが視聴した番組から抽出されたキーワードの出現頻度を示すスコアを算出するスコア生成部と、前記ユーザが視聴した番組から抽出されたキーワードの出現頻度を示す重み付け値を算出する加算スコア部と、前記スコアを前記重み付け値に応じて調整した興味スコアを、キーワード毎に算出する興味スコア部と、視聴可能な番組それぞれの情報から抽出したキーワードに対する前記興味スコアに基づいて、興味番組を選定する番組決定部と、を備える。
【0008】
前記加算スコア部は、新たに前記ユーザが視聴した番組に前記重み付け値を算出したキーワードが出現する毎に、当該重み付け値から当該キーワードの過去の出現頻度の変動量に応じた更新スコアを減じてもよい。
【0009】
前記視聴データ抽出部は、前記キーワードとともに、番組のジャンルをさらに抽出し、前記スコア生成部は、前記他のユーザが視聴した番組から抽出されたジャンルの出現頻度を示すスコアをさらに算出し、前記加算スコア部は、前記ユーザが視聴した番組から抽出されたジャンルの出現頻度を示す重み付け値をさらに算出し、前記番組決定部は、前記視聴可能な番組それぞれの情報から抽出したキーワード及びジャンルに対する前記興味スコアに基づいて、前記興味番組を決定してもよい。
【0010】
前記加算スコア部は、新たに前記ユーザが視聴した番組に前記重み付け値を算出したキーワード又はジャンルが出現する毎に、当該重み付け値から当該キーワード又はジャンルの過去の出現頻度の変動量に応じた更新スコアを減じてもよい。
【0011】
前記番組決定部は、前記視聴可能な番組それぞれに対する前記興味スコアの総和を比較し、当該興味スコアの総和が最大となる番組を選定してもよい。
【0012】
前記キーワードは、番組毎の字幕データ及び電子番組表データから抽出されてもよい。
【0013】
前記ジャンルは、番組毎の電子番組表データから抽出されてもよい。
【0014】
本発明に係る興味番組獲得プログラムは、前記興味番組獲得装置としてコンピュータを機能させるためのものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ロボット自身の興味番組によりロボットの個性が適切に表現される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施形態における興味番組獲得装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図2】実施形態における視聴データ抽出部の処理内容を例示する図である。
【
図3】実施形態におけるスコア生成部の処理内容を例示する図である。
【
図4】実施形態における重み付け値更新部の処理内容を例示する図である。
【
図5】実施形態における加算スコア部の処理手順を示すフローチャートである。
【
図6】実施形態における興味スコア部の処理内容を例示する図である。
【
図7】実施形態における番組決定部の処理内容を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態の一例について説明する。
本実施形態の興味番組獲得装置は、人と一緒にテレビ番組等のコンテンツを視聴するロボットにおいて、ロボット自身が視聴したい番組コンテンツ(興味番組)を獲得し、ユーザとのコミュニケーションに活用する。
ロボットの個性として、このロボットのユーザ以外の視聴履歴に基づいて興味キーワード及びジャンルが初期設定され、この個性がユーザの視聴履歴に基づいて重み付けされることにより、ロボットの興味番組が変化する。
【0018】
図1は、本実施形態における興味番組獲得装置1の機能構成を示すブロック図である。
興味番組獲得装置1は、制御部10及び記憶部20を備えた情報処理装置(コンピュータ)であり、ロボットに組み込まれ、又はロボットと通信接続されて、ロボット自身の興味番組として獲得された番組情報を出力する。また、興味番組獲得装置1には、テレビ(テレビ受像機)から、当該テレビが再生中の番組の字幕データ、及びこの番組についての電子番組表(EPG)に含まれるデータが入力される。また、興味番組獲得装置1は、外部サーバ等に設けられた、EPGデータを格納したデータベース(EPG情報DB)とネットワークで接続され、当該EPG情報DBに格納されているデータが入力される。
【0019】
制御部10は、記憶部20に記憶されたソフトウェア(興味番組獲得プログラム)を読み出して実行することにより、次の各機能部として動作する。また、記憶部20には、興味番組獲得プログラムの他、各種のデータベース(DB)が格納される。
【0020】
具体的には、制御部10は、視聴データ抽出部11と、スコア生成部12と、加算スコア部13と、興味スコア部14と、番組決定部15とを備える。
また、記憶部20は、視聴DB21と、固有スコアDB22と、重み付け値DB23と、興味スコアDB24とを備える。
【0021】
視聴データ抽出部11は、キーワード抽出部111と、ジャンル抽出部112とを含み、ユーザのテレビ番組の視聴履歴に応じて、番組に関する情報を視聴DB21に格納する。
【0022】
キーワード抽出部111は、ユーザが視聴した番組の字幕データ及び電子番組表(EPG)データからキーワードを抽出する。
ここで、キーワードとは、字幕データ及びEPGデータに含まれる固有名詞等の語句であり、予め準備された辞書に登録されているものが抽出されてよい。
【0023】
ジャンル抽出部112は、ユーザが視聴した番組のEPGデータから、この番組のジャンルを抽出する。
キーワード抽出部111により抽出されたキーワード、及びジャンル抽出部112により抽出されたジャンルは、視聴DB21に記憶される。
ここで、ジャンルとは、番組毎に、その内容に応じて一つ以上設定されている分類であり、例えば、EPGデータにおける中分類(サブジャンル)が抽出されてよい。
【0024】
図2は、本実施形態における視聴データ抽出部11の処理内容を例示する図である。
字幕データには、時刻情報とともに、字幕表示のためのテキストデータが含まれている。
また、EPGデータには、番組毎に時刻情報とともに、番組の内容を分類するためのコード(大分類、中分類、・・・)、並びに番組タイトル又は紹介文のテキストが含まれている。
【0025】
キーワード抽出部111は、これらのテキストデータから、複数のキーワードを抽出する。
ジャンル抽出部112は、EPGデータから、例えば、「0x4f」(バラエティ・その他)、「0x01」(天気)といったジャンルを抽出する。なお、例えば「0x4f」のうち「4」が大分類、「f」が中分類を示すコードである。
【0026】
スコア生成部12は、キーワードスコア生成部121と、ジャンルスコア生成部122とを含み、対象のロボットを使用しているユーザ以外の、他のユーザの視聴履歴から抽出されるキーワード及びジャンルのそれぞれの出現頻度を示すスコアを計算し、固有スコアDB22に格納する。
【0027】
ここで、他のユーザの視聴履歴(視聴DB21)は、複数の同機種のロボットがネットワーク上で共有している、全ロボットユーザの視聴履歴の中から一つが選別され、ロボットの個性として設定される。
仮に全ユーザの平均化した視聴履歴が用いられた場合、ロボットは平均的な興味を持つので、ユーザはロボットに対して個性を感じにくくなる。したがって、スコア生成部12は、他のユーザ個人の視聴履歴を選別する。
また、ユーザと趣味嗜好が乖離している個人の視聴履歴が選別されると、ユーザは、自身の視聴履歴がロボットの個性の生成に影響を与えていることを感じにくくなる。したがって、スコア生成部12は、完全に無作為ではなく、例えばユーザの年代又は性別等と一致する個人の視聴履歴を選別してもよい。
【0028】
キーワードスコア生成部121は、各キーワードの出現頻度を示すスコアとして、例えばTF値を算出する。
ジャンルスコア生成部122は、ジャンルの出現頻度を示すスコアとして、視聴割合を算出する。
キーワード及びジャンルの出現頻度を示すこれらのスコアは、固有スコアDB22に記憶される。
【0029】
図3は、本実施形態におけるスコア生成部12の処理内容を例示する図である。
キーワードスコア生成部121は、所定期間(例えば1週間)にユーザv(他のユーザ)が視聴した全番組の字幕データ及びEPGデータの情報を一つの文書d
vとみなし、文書d
vにおけるキーワードw
iの出現回数n
w_i,d_v、全キーワードの出現頻度の和Σ
jn
w_i,d_vを用いて、キーワードw
iのTF値(tf
w_i,d_v)を、次のように算出する。
【数1】
【0030】
ジャンルスコア生成部122は、例えば、ジャンル「天気」の出現回数が140回、全番組から抽出されたジャンルの総数が2000の場合、「天気」の視聴割合は、140÷2000=0.07(7%)となる。
【0031】
加算スコア部13は、キーワードスコア生成部131と、ジャンルスコア生成部132と、重み付け値更新部133とを含み、ユーザの視聴履歴、すなわち視聴DB21を入力として、固有スコアDB22の各スコアに対して加算するための重み付け値を更新し、重み付け値DB23に格納する。
【0032】
キーワードスコア生成部131及びジャンルスコア生成部132は、スコア生成部12が備えるキーワードスコア生成部121及びジャンルスコア生成部122と同様、視聴DB21に記憶されているユーザの視聴履歴にもとづいて、各キーワード及びジャンルの出現頻度を示すスコアを重み付け値として算出する。
【0033】
重み付け値更新部133は、固有スコアDB22に格納されている各キーワード及びジャンルのスコアに対する重み付け値を次のように算出し、重み付け値DB23に格納する。
【0034】
図4は、本実施形態における重み付け値更新部133の処理内容を例示する図である。
なお、ここでは、キーワードの重み付け値を算出する手順を例示するが、ジャンルの更新スコアについても同様である。
【0035】
まず、重み付け値更新部133は、ユーザの視聴履歴(視聴DB21)における、あるキーワードw
xの所定期間毎(例えば、月単位)の出現回数を数え、前の期間(前月)との差x
i(1<i≦n)を絶対値として求める。すると、出現回数の差の平均値は、
【数2】
と算出される。
【0036】
次に、視聴した全番組の字幕データ及びEPGデータを一つの文書d
vとし、文書d
vにおける全キーワードの出現回数の和をΣ
jn
w_j,d_vとしたとき、キーワードw
xの更新スコアl
w_x,d_vを次のように定義する。
【数3】
【0037】
ジャンルに対しての更新スコアの算出方法についても、キーワードの場合と同様である。すなわち、重み付け値更新部133は、まず、ジャンルの出現回数を例えば月単位で計算し、月毎の出現回数の差を求める。続いて、重み付け値更新部133は、全ての差の平均値を計算し、全キーワードの出現回数で割った数値を更新スコアとする。
【0038】
ここで、更新スコアとは、該当のキーワード又はジャンルがユーザの視聴履歴に1回出現する毎にスコアから減じる値である。すなわち、元々のロボットの興味に重み付けされる新たな興味は、該当のキーワード又はジャンルに関する番組を実際に視聴する毎に、限界効用逓減の法則を用いて更新される。
これにより、興味のあるキーワード又はジャンルを初めて見た時(1回目)と何回も見た時(例えば100回目)とでは興味の上がり方が変わり、視聴回数が多くなるほど、更新スコアの分ずつ該当のキーワード又はジャンルに対する重み付け値が減少して、興味の低下(飽き)が表現される。
【0039】
図5は、本実施形態における加算スコア部13の処理手順を示すフローチャートである。
ステップS1において、加算スコア部13は、視聴DB21から所定期間(例えば、1週間)のユーザの視聴履歴を抽出する。
ステップS2において、加算スコア部13は、キーワードスコア生成部131及びジャンルスコア生成部132により、キーワード毎のTF値及びジャンル毎の視聴割合を、出現頻度を示すスコアとして、それぞれ算出する。
【0040】
ステップS3において、加算スコア部13は、重み付け値更新部133により、キーワード及びジャンル毎の重み付け値を算出する。
ステップS4において、加算スコア部13は、算出した重み付け値を、重み付け値DB23に記憶する。
【0041】
興味スコア部14は、興味キーワードスコア生成部141と、興味ジャンルスコア生成部142とを含み、固有スコアDB22に格納されている各キーワード及びジャンルのスコアに対して、重み付け値DB23の重み付け値を加算した興味キーワードスコア及び興味ジャンルスコアを算出し、興味スコアDB24に記憶する。
【0042】
図6は、本実施形態における興味スコア部14の処理内容を例示する図である。
興味キーワードスコア生成部141は、各キーワードのスコア(TF値)に対して、それぞれの重み付け値を加算することにより、ロボットの元々の興味(固有スコアDB22)にユーザの興味(重み付け値DB23)が付加された、ロボットの現在の興味を示す興味キーワードスコアを算出する。
【0043】
興味ジャンルスコア生成部142は、興味キーワードスコア生成部141と同様に、各ジャンルのスコア(視聴割合)に対して、それぞれの重み付け値を加算することにより、興味ジャンルスコアを算出する。
【0044】
ここで、興味キーワードスコア及び興味ジャンルスコアは、例えば、全スコアのうち最大の値x
max及び最小の値x
minを用いて、次のように0~1の値に正規化されてもよい。
【数4】
【0045】
なお、重み付けの度合いは、適宜変更が可能であり、固有スコアDB22のスコア(TF値又は視聴割合)と、重み付け値DB23のスコア(TF値又は視聴割合)とが対等(1:1)に加算されてもよいが、例えば、重み付け値DB23のスコア(TF値又は視聴割合)が所定の割合に縮小(1:0.1等)されてもよい。
【0046】
番組決定部15は、興味スコアDB24に格納されている各キーワード及びジャンルのスコアに基づいて、ロボットの興味番組を決定する。
具体的には、番組決定部15は、まず、EPG情報DBから1週間分のEPGデータを取得し、各番組の紹介文にあるキーワードとジャンルとを抽出する。次に、番組決定部15は、興味スコアDB24に格納されている興味スコアをもとに、番組毎に興味スコアの和を算出し、一番興味スコアの和が大きい番組を、ロボット自身が興味のある番組として設定する。
【0047】
図7は、本実施形態における番組決定部15の処理内容を例示する図である。
興味スコアDB24には、キーワード1,2,3,…に対する興味スコア、及びジャンル1,2,3,…に対する興味スコアがそれぞれ格納されている。
このとき、EPG情報DBから取得した番組1からは、ジャンル1,3と、キーワード1,5,…が抽出されている。これらのジャンル及びキーワードの興味スコアを総和することで、番組1のスコア0.102、番組2のスコア0.1358、…が得られる。
この例では、興味スコアの和が最も大きい番組2が興味番組として決定されている。
【0048】
このように、番組決定部15は、興味スコアDB24に基づいて、ロボットの現在の興味に沿った番組を選定する。
興味スコアDB24は、ロボットの元々の個性(固有スコアDB22)にユーザの視聴履歴に基づく興味(重み付け値DB23)が重み付けされ、例えば、次のようなタイミングで更新される。
【0049】
まず、重み付け値の元となり、また、他のロボットの個性として提供されることになる視聴DB21は、ユーザ(ロボット)が番組を視聴する度にリアルタイムで、あるいは、所定の周期(例えば、1日毎、1週間毎等)で更新される。
【0050】
ロボットの個性として設定される固有スコアDB22は、初期設定後は更新しないこととしてよいが、所定期間(例えば、1年、半年等)毎に更新されてもよい。この場合、極端に大きな変化を避けるため、前回と同一ユーザの視聴履歴が用いられてもよい。
【0051】
一方、ユーザの視聴履歴に基づく重み付け値DB23は、更新スコアの算出単位である1ヶ月毎に更新され、さらに、データベースに格納されているキーワード又はジャンルが新たに視聴した番組に出現する度に更新される。
そして、興味スコアDB24は、この重み付け値DB23が更新されたタイミングで、あるいは、1ヶ月毎の一定の周期で更新されることにより、ロボット自身の興味が変化していく。
【0052】
本実施形態によれば、興味番組獲得装置1は、ロボットのユーザと異なる他のユーザが視聴した番組から抽出されたキーワード及びジャンルの出現頻度を示すスコアを算出し、これをロボットが元々持っている興味とする。さらに、興味番組獲得装置1は、ロボットのユーザが視聴した番組から抽出されたキーワード及びジャンルの出現頻度を示す重み付け値を算出することにより、ロボットが元々持っている興味に対して重み付けする。
これにより、ユーザによって興味が異なるロボットが生成され、ロボットの個性が表現される。さらに、このロボットが元々持っていた興味は、ユーザの視聴履歴によって更新されるので、ロボットは、個性を保ちつつ、ユーザの興味にも同調していく成長感が表現される。
この結果、興味番組獲得装置1は、個性及び成長感が表現された興味スコアに基づいて、ロボットに自律的に視聴したい番組を選定させ、ロボット自身の興味番組によりロボットの個性及び成長感を適切に表現できる。
【0053】
なお、興味番組獲得装置1は、番組のジャンルに関する興味スコアを用いず、キーワードのみで興味番組を決定してもよい。ここで、興味番組を選定する際に用いるEPGデータは、番組によって情報量が異なる。そのため、EPGにおける紹介文が短い番組は、抽出されるキーワードの数も少ないため、興味番組として選定され難い。その結果、興味番組獲得装置1は、キーワードのみで興味番組を決定すると、紹介文が長い番組を選定する傾向がある。
したがって、興味番組獲得装置1は、キーワードとともに、全ての番組に付与されているジャンルに関する興味スコアも算出して利用する方が、興味番組をより適切に選定できる。
【0054】
興味番組獲得装置1は、新たにユーザが視聴した番組に重み付け値を算出したキーワード又はジャンルが出現する毎に、この重み付け値からキーワード又はジャンルの過去の出現頻度の変動量に応じた更新スコアを減じてもよい。
変動量は例えば、月毎の出現回数の差を平均した値であってよい。この変動量により、キーワード及びジャンルに対しての飽きの速度が表現され、これがロボット毎に異なることで、さらに個性が表現される。
【0055】
興味番組獲得装置1は、視聴可能な番組それぞれに対する興味スコアの総和を比較し、総和が最大となる番組を選定する。これにより、興味番組獲得装置1は、番組それぞれに対する興味の度合いを適切に、かつ、容易に判断できる。
【0056】
興味番組獲得装置1は、番組毎のキーワードを字幕データ及びEPGデータから抽出し、ジャンルをEPGデータから抽出することにより、容易に興味スコアを設定し、かつ、各番組を評価できる。
なお、番組の映像又は音声を取得できる場合には、興味番組獲得装置1は、画像解析又は音声認識等により、キーワード及びジャンルを抽出してもよい。また、興味番組獲得装置1は、インターネット上の番組関連情報を検索することにより、キーワード及びジャンルを抽出してもよい。
【0057】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限るものではない。また、前述の実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【0058】
本実施形態では、主に興味番組獲得装置1の構成と動作について説明したが、本発明はこれに限られず、各構成要素を備え、ロボット自身の興味番組を獲得するための方法、又はプログラムとして構成されてもよい。
【0059】
さらに、興味番組獲得装置1の機能を実現するためのプログラムをコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。
【0060】
ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器などのハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータで読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROMなどの可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスクなどの記憶装置のことをいう。
【0061】
さらに「コンピュータで読み取り可能な記録媒体」とは、インターネットなどのネットワークや電話回線などの通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時刻の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時刻プログラムを保持しているものも含んでもよい。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 興味番組獲得装置
10 制御部
11 視聴データ抽出部
12 スコア生成部
13 加算スコア部
14 興味スコア部
15 番組決定部
20 記憶部
21 視聴DB
22 固有スコアDB
23 重み付け付け値DB
24 興味スコアDB
111 キーワード抽出部
112 ジャンル抽出部
121 キーワードスコア生成部
122 ジャンルスコア生成部
131 キーワードスコア生成部
132 ジャンルスコア生成部
133 重み付け値更新部
141 興味キーワードスコア生成部
142 興味ジャンルスコア生成部