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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175930
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】乾燥装置及び液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20241212BHJP
   B65H 29/24 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
B41J2/01 121
B41J2/01 305
B41J2/01 401
B65H29/24 C
B65H29/24 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094035
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100182453
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 英明
(72)【発明者】
【氏名】飛彈 竜作
(72)【発明者】
【氏名】浅田 幸輝
(72)【発明者】
【氏名】神原 一暁
(72)【発明者】
【氏名】野沢 健二
(72)【発明者】
【氏名】川道 源一郎
(72)【発明者】
【氏名】関 貴之
(72)【発明者】
【氏名】石原 広規
(72)【発明者】
【氏名】中村 雄大
【テーマコード(参考)】
2C056
3F049
【Fターム(参考)】
2C056EC12
2C056EC28
2C056HA29
2C056HA44
3F049AA01
3F049BA04
3F049BB00
3F049FA03
3F049FB01
3F049FB07
3F049LA01
3F049LB01
3F049LB07
3F049LB10
3F049LB11
(57)【要約】
【課題】シートの吸着不良を改善する。
【解決手段】シートSを搬送する無端状の搬送ベルト18と、シートSを搬送ベルト18に吸着させる吸着手段30と、搬送ベルト18のシート吸着面18bに対向するように配置されシートSを乾燥させる乾燥手段23とを備える乾燥装置であって、吸着手段30は、搬送ベルト18の内側でシート搬送方向Aに並んで配置される複数の吸引部材31を備え、複数の吸引部材31のうち、少なくとも1つの吸引部材31の吸引力が他の吸引部材31の吸引力とは異なる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを搬送する無端状の搬送ベルトと、
前記シートを前記搬送ベルトに吸着させる吸着手段と、
前記搬送ベルトのシート吸着面に対向するように配置され前記シートを乾燥させる乾燥手段とを備える乾燥装置であって、
前記吸着手段は、前記搬送ベルトの内側でシート搬送方向に並んで配置される複数の吸引部材を備え、
前記複数の吸引部材のうち、少なくとも1つの吸引部材の吸引力が他の吸引部材の吸引力とは異なることを特徴とする乾燥装置。
【請求項2】
前記複数の吸引部材のうち、シート搬送方向の下流側の吸引部材の吸引力が、シート搬送方向の上流側の吸引部材の吸引力よりも大きい請求項1に記載の乾燥装置。
【請求項3】
シートを搬送する無端状の搬送ベルトと、
前記シートを前記搬送ベルトに吸着させる吸着手段と、
前記搬送ベルトのシート吸着面に対向するように配置され前記シートを乾燥させる乾燥手段と、
前記乾燥手段よりもシート搬送方向の上流側に配置され前記搬送ベルトを内側から支持する上流側支持ローラと、
前記乾燥手段よりもシート搬送方向の下流側に配置され前記搬送ベルトを内側から支持する下流側支持ローラとを備える乾燥装置であって、
前記吸着手段は、前記搬送ベルトの内側で前記搬送ベルトを挟んで前記乾燥手段と対向するように配置される第一吸引部材と、前記搬送ベルトの内側で前記乾燥手段よりもシート搬送方向の下流側かつ前記下流側支持ローラよりもシート搬送方向の上流側に配置される第二吸引部材とを有することを特徴とする乾燥装置。
【請求項4】
シートを搬送する無端状の搬送ベルトと、
前記シートを前記搬送ベルトに吸着させる吸着手段と、
前記搬送ベルトのシート吸着面に対向するように配置され前記シートを乾燥させる乾燥手段と、
前記乾燥手段よりもシート搬送方向の上流側に配置され前記搬送ベルトを内側から支持する上流側支持ローラと、
前記乾燥手段よりもシート搬送方向の下流側に配置され前記搬送ベルトを内側から支持する下流側支持ローラとを備える乾燥装置であって、
前記吸着手段は、前記搬送ベルトの内側で前記搬送ベルトを挟んで前記乾燥手段と対向するように配置される第一吸引部材と、前記搬送ベルトの内側で前記乾燥手段よりもシート搬送方向の上流側かつ前記上流側支持ローラよりもシート搬送方向の下流側に配置される第二吸引部材とを有することを特徴とする乾燥装置。
【請求項5】
前記第二吸引部材は、前記下流側支持ローラと一緒に移動可能に構成される請求項3に記載の乾燥装置。
【請求項6】
前記第二吸引部材は、前記上流側支持ローラと一緒に移動可能に構成される請求項4に記載の乾燥装置。
【請求項7】
シート搬送方向における前記第二吸引部材の長さは、シート搬送方向における前記第一吸引部材の長さよりも短い請求項3又は4に記載の乾燥装置。
【請求項8】
前記第二吸引部材は、内部に負圧発生手段を有する請求項3又4に記載の乾燥装置。
【請求項9】
シートを搬送する無端状の搬送ベルトと、
前記シートを前記搬送ベルトに吸着させる吸着手段と、
前記搬送ベルトのシート吸着面に対向するように配置され前記シートを乾燥させる乾燥手段と、
前記搬送ベルトに吸着される前記シートに送風する送風手段とを備える乾燥装置であって、
前記送風手段の送風口が、シート搬送方向の下流側を向くように配置されることを特徴とする乾燥装置。
【請求項10】
シートに液体を吐出する液体吐出部と、液体が吐出された前記シートを乾燥させる請求項1、3、4、9のいずれか1項に記載の乾燥装置とを備えることを特徴とする液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥装置及び液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体吐出装置の一例として、シートにインクを吐出して画像を形成するインクジェット式の画像形成装置が知られている。
【0003】
斯かる画像形成装置においては、シートに吐出されたインクを乾燥させる乾燥装置が設けられているものがある。
【0004】
例えば、特許文献1(特開2014-181130号公報)においては、インクが吐出されたシートをガイドプレート又は搬送ベルトによって吸着しながら搬送すると共に、シートに赤外光を照射したり乾燥風を送風したりしてインクを乾燥させる技術が提案されている。
【0005】
しかしながら、シートを吸着しながら搬送する構成においては、シートを良好に吸着して搬送することができない場合があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明においては、シートの吸着不良を改善することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明は、シートを搬送する無端状の搬送ベルトと、前記シートを前記搬送ベルトに吸着させる吸着手段と、前記搬送ベルトのシート吸着面に対向するように配置され前記シートを乾燥させる乾燥手段とを備える乾燥装置であって、前記吸着手段は、前記搬送ベルトの内側でシート搬送方向に並んで配置される複数の吸引部材を備え、前記複数の吸引部材のうち、少なくとも1つの吸引部材の吸引力が他の吸引部材の吸引力とは異なることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、シートを良好に吸着して搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第一実施形態に係る液体吐出装置の構成を示す図である。
図2】本発明の第一実施形態に係る制御部の構成を示すブロック図である。
図3】本発明の第一実施形態に係る乾燥装置の側面図である
図4】本発明の第一実施形態に係る乾燥装置の平面図である。
図5】本発明の第一実施形態に係る乾燥装置の特徴部分の構成を示す図である。
図6】本発明の第二実施形態に係る乾燥装置の特徴部分の構成を示す図である。
図7】第二吸引部材が下流側支持ローラと一緒に移動する態様を示す図である。
図8】第二吸引部材の構成を説明するための図である。
図9】第二吸引部材と負圧発生手段との配置を説明するための図である。
図10】本発明の第三実施形態に係る乾燥装置の特徴部分の構成を示す図である。
図11】送風口が向く方向を説明するための図である。
図12】本発明の第三実施形態に係る制御部の構成を示すブロック図である。
図13】風量を制御する制御フローの一例を示す図である。
図14】乾燥手段の一例である紫外線照射手段の斜視図である。
図15】乾燥装置における課題を説明するための参考図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付の図面に基づき、本発明について説明する。なお、本発明を説明するための各図面において、同一の機能もしくは形状を有する部材及び構成部品などの構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付し、一度説明した後ではその説明を省略する。なお、以下の説明における、「画像形成」、「記録」、「印刷」は、いずれも同義語とする。
【0011】
<液体吐出装置の構成>
まず、図1に基づき、本発明の第一実施形態に係る液体吐出装置の構成について説明する。
【0012】
図1においては、本発明の第一実施形態に係る液体吐出装置100として、インクジェット式の画像形成装置を例に挙げる。図1に示される液体吐出装置100は、シート供給部1と、画像形成部2と、乾燥部3と、シート排出部4と、反転搬送部5とを備えている。
【0013】
シート供給部1は、画像が形成される記録媒体としてのシートSを供給する部分である。シート供給部1は、複数のシートSを収容可能な供給トレイ11と、供給トレイ11からシートSを1枚ずつ分離して送り出す給送装置12とを備えている。給送装置12によって送り出されたシートSは、画像形成部2へ供給される。
【0014】
画像形成部2は、シートSに対して画像を形成する部分である。画像形成部2は、液体吐出部13と、第一担持回転体14と、第二担持回転体15と、第三担持回転体16とを備えている。第一担持回転体14、第二担持回転体15及び第三担持回転体16は、シートSを外周面に担持して回転することにより、シートSを搬送する回転体である。シート供給部1から搬送されたシートSは、第一担持回転体14上に担持され、第二担持回転体15へ渡される。そして、第二担持回転体15へ渡されたシートSは、第二担持回転体15から第三担持回転体16へ渡される。液体吐出部13は、第二担持回転体15上に担持されるシートSに対して液体のインクを吐出する複数の液体吐出ユニット13C,13M,13Y,13K,13Wを有している。本実施形態においては、第二担持回転体15の回転方向(シートSの搬送方向)の上流側から順に、シアンインク用の液体吐出ユニット13C、マゼンタインク用の液体吐出ユニット13M、イエローインク用の液体吐出ユニット13Y、ブラックインク用の液体吐出ユニット13K、ホワイトインク用の液体吐出ユニット13Wが配置されている。なお、各液体吐出ユニット13C,13M,13Y,13K,13Wの配置は、図1に示される順に限定されるものではなく、任意の順番でもよい。また、各液体吐出ユニットに使用されるインクの色も、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック、ホワイトに限定されるものではない。必要に応じて、ホワイトのほか、白色、金色、銀色などの他の特色のインクを吐出する液体吐出ユニットを追加してもよい。
【0015】
シートSが各液体吐出ユニット13C,13M,13Y,13K,13Wとの対向位置に搬送されると、各液体吐出ユニット13C,13M,13Y,13K,13WからシートSへインクが吐出され、画像が形成される。画像形成は、各液体吐出ユニット13C,13M,13Y,13K,13Wを全て用いてフルカラー画像を形成する場合に限らず、各液体吐出ユニット13C,13M,13Y,13K,13Wのうち、いずれか一つを使用して単色画像を形成したり、いずれか2つ又は3つの作像ユニットを用いて2色又は3色の画像を形成したりすることも可能である。
【0016】
乾燥部3は、シートSに吐出されたインクを乾燥させる部分である。乾燥部3は、乾燥手段23と、搬送ベルト18と、シート検知手段19などを含む、乾燥装置10を備えている。乾燥手段23は、シートSを乾燥させる手段である。本実施形態においては、乾燥手段23として、搬送されるシートSに向けて紫外線を照射する紫外線照射手段を用いている。シートS上のインクに対して紫外線が照射されると、インクに含まれる顔料又は染料などの色材が紫外線を吸収して熱エネルギーに変換することにより発熱する。これにより、インクが温度上昇し、インク中の水又は有機溶剤が蒸発して、インクが乾燥する。また、乾燥手段23として、シートSに赤外線を照射する赤外線照射手段、あるいは、シートSに対して送風する送風手段を用いてもよい。シート検知手段19は、乾燥手段23よりもシートSの搬送方向(以下、「シート搬送方向」という。)の上流側においてシートSを検知する手段である。本実施形態においては、シート検知手段19が、液体吐出部13よりもシート搬送方向の下流側であって、第三担持回転体16よりもシート搬送方向の上流側に配置されている。シート検知手段19としては、反射型又は透過型の非接触式センサを用いることが好ましい。
【0017】
シートSが搬送ベルト18によって乾燥手段23と対向する位置に搬送されると、乾燥手段23によってシートSの乾燥処理が行われる。本実施形態においては、紫外線照射手段からシートSに対して紫外線が照射されることにより、シートS上のインクが乾燥する。シートSへ紫外線が照射されるタイミングは、シート検知手段19がシートSを検知したタイミングとシートSの搬送速度に基づいて決定される。
【0018】
シート排出部4は、シートSが排出される部分である。シート排出部4は、排出トレイ20を備えている。シートSが乾燥部3からシート排出部4へ搬送されると、シートSが排出トレイ20へ排出される。
【0019】
反転搬送部5は、両面印刷を行う場合にシートSを表裏反転させて再度画像形成部2へ搬送する部分である。反転搬送部5は、スイッチバック搬送部21と、戻し搬送部22により構成される。両面印刷を行う場合は、画像形成部2においてシートSの第一面(表て面)に画像が形成され、乾燥部3において第一面の画像の乾燥処理が行われた後、シートSはシート排出部4へ搬送されることなく反転搬送部5へ搬送される。そして、シートSは、まず反転搬送部5のスイッチバック搬送部21において前後逆向きに搬送され、続けて、戻し搬送部22を通って第一担持回転体14の上流側へ搬送される。これにより、シートSが表裏反転された状態で画像形成部2へ供給される。そして、画像形成部2においてシートSの第一面とは反対の第二面(裏面)に画像が形成された後、乾燥部3において第二面の画像の乾燥処理が行われ、シートSがシート排出部4へ搬送される。
【0020】
<制御部の構成>
図2は、本発明の第一実施形態に係る制御部の構成を示すブロック図である。
【0021】
図2に示されるように、液体吐出装置100は、シート搬送動作、画像形成動作、乾燥動作などの各種動作を制御する制御部200を備えている。具体的に、制御部200は、主制御部201と、画像入力部202と、滴付着量算出部203と、速度設定部204と、シート情報入力部205と、液体吐出制御部207と、搬送制御部208と、乾燥制御部209とを備えている。
【0022】
主制御部201は、液体吐出装置100全体の動作を制御するCPU(Central Processing Unit)と、CPUが実行するプログラム及びその他の固定データを格納するROM(Read Only Memory)と、画像情報を一時格納するRAM(Random Access Memory)と、液体吐出装置100の電源が遮断されている間もデータを保持するための書き換え可能なNVRAM(Non-Volatile Random Access Memory)などにより構成される。
【0023】
主制御部201は、速度設定部204によってシートの速度が設定されると、設定された速度の情報に基づき搬送制御部208へ制御信号を送信する。搬送制御部208は、主制御部201からの制御信号を受けて、搬送部400の搬送動作を制御する。これにより、シートが設定された速度で搬送される。搬送部400には、シート供給部1の給送装置12、画像形成部2の各担持回転体14,15,16、乾燥部3の搬送ベルト18、反転搬送部5のスイッチバック搬送部21及び戻し搬送部22などが含まれる。
【0024】
また、主制御部201は、画像入力部202に印刷画像の情報が入力されると、入力された画像情報に基づき液体吐出制御部207へ制御信号を送信する。液体吐出制御部207は、主制御部201からの制御信号を受けて、液体吐出部13の吐出動作を制御する。これにより、液体吐出部13から液体が吐出され、画像情報に応じた画像がシートに形成される。
【0025】
また、画像入力部202に入力された画像情報は、主制御部201のほか、滴付着量算出部203にも送られる。滴付着量算出部203は、画像入力部202からの画像情報に基づき、画像形成に必要な液体の滴付着量を算出する。主制御部201は、滴付着量算出部203から得られた滴付着量と、シート情報入力部205から得られたシートの情報に基づき、乾燥制御部209へ制御信号を送信する。乾燥制御部209は、主制御部201からの制御信号を受けて、乾燥手段23の乾燥強度を制御する。例えば、本実施形態においては、紫外線照射手段から照射される紫外線の出力強度が制御される。インクの乾燥に要する熱量及び時間は、シートSに吐出されるインクの量あるいはシートの表面素材などによって異なる。このため、滴付着量算出部203から得られた滴付着量と、シート情報入力部205から得られたシートの情報に基づき、主制御部201がインクの乾燥のしやすさを判断し、判断された乾燥のしやすさに応じて乾燥制御部209が乾燥手段23の乾燥強度を制御することにより良好な乾燥処理が行われる。
【0026】
<乾燥装置の構成>
続いて、図3及び図4を参照しつつ、本発明の第一実施形態に係る乾燥装置10の構成について詳しく説明する。
【0027】
図3に示されるように、本発明の第一実施形態に係る乾燥装置10は、乾燥手段23、搬送ベルト18のほか、上流側支持ローラ24、下流側支持ローラ25、ベルト駆動モータ26、吸着手段30を備えている。
【0028】
搬送ベルト18は、無端状のベルトであり、上流側支持ローラ24と下流側支持ローラ25とに掛け渡されて支持されている。上流側支持ローラ24は、乾燥手段23よりもシート搬送方向Aの上流側に配置され、搬送ベルト18を内側から支持する従動ローラである。一方、下流側支持ローラ25は、乾燥手段23よりもシート搬送方向Aの下流側に配置され、搬送ベルト18を内側から支持する駆動ローラである。下流側支持ローラ25がベルト駆動モータ26の駆動により回転駆動すると、搬送ベルト18が回転し、搬送ベルト18上のシートSがシート搬送方向Aへ搬送される。
【0029】
吸着手段30は、シートSを搬送ベルト18に吸着させる手段である。図4に示されるように、吸着手段30は、吸引部材31と、負圧発生手段32とを有する。吸引部材31は、搬送ベルト18の内側に配置され、搬送ベルト18に設けられた複数の吸引孔18aからエアを吸引する部材である。負圧発生手段32は、吸引部材31内にエアを吸引するための負圧を発生させる手段である。負圧発生手段32は、例えばダクトなどの通気路を介して吸引部材31と連結され、搬送ベルト18の外側に配置されている。負圧発生手段32としては、ファン又はブロワなどが用いられる。負圧発生手段32によって吸引部材31内に負圧を発生させると、搬送ベルト18の上面の吸引孔18aからエアが吸引され、吸引されるエアによって搬送ベルト18の上面にシートSが吸着される。
【0030】
乾燥手段23は、搬送ベルト18の上面であるシート吸着面18bに対向し、シート搬送方向Aに並んで複数配置されている。シートSがシート吸着面18bに吸着された状態で搬送されると、シートSがシート搬送方向Aの上流側から順に乾燥手段23を通過し、各乾燥手段23によって乾燥処理が行われる。
【0031】
また、本発明の第一実施形態においては、吸引部材31も、乾燥手段23に対応して複数設けられている。すなわち、吸引部材31は、搬送ベルト18を介して各乾燥手段23と対向するように、シート搬送方向Aに並んで複数配置されている。また、負圧発生手段32も、吸引部材31に対応して複数設けられている。
【0032】
<乾燥装置における課題>
ここで、本発明の第一実施形態に係る構成を例に、乾燥装置における課題について説明する。
【0033】
図3に示されるように、シートSが搬送ベルト18によって吸着されながら搬送されると、複数の乾燥手段23によって順次乾燥処理が行われることにより、シートS上のインクの乾燥が促進される。このとき、シートSが下流側へ搬送されるにつれて乾燥処理によりシートSが加熱されるため、シートSが変形することがある。そして、シートSが変形すると、シートSと搬送ベルト18との間に隙間が生じ、シートを良好に吸着することができなくなる虞がある。
【0034】
また、搬送ベルト18の内側に吸引部材31が配置される構成においては、吸引部材31を上流側支持ローラ24と下流側支持ローラ25に近づけて配置することが難しいため、上流側支持ローラ24の近傍、下流側支持ローラ25の近傍において、吸引部材31による吸引力が得られにくい課題がある。一般的に、上流側支持ローラ24及び下流側支持ローラ25の少なくとも一方は、搬送ベルト18の寸法公差などによる搬送ベルト18の張力のばらつきを無くすため、他方のローラに対して接近離間する方向へ移動可能に構成されている。このため、吸引部材31は、移動する上流側支持ローラ24又は下流側支持ローラ25との干渉を回避できるように、上流側支持ローラ24又は下流側支持ローラ25に対してスペース(間隔)をあけて配置されなければならない。従って、吸引部材31を上流側支持ローラ24又は下流側支持ローラ25に近づけて配置することができず、上流側支持ローラ24の近傍、下流側支持ローラ25の近傍において、良好な吸着が行われにくい課題がある。
【0035】
また、図15に示されるように、乾燥装置10が、シートSの乾燥を促進するためにシートSに送風する送風手段40を備える構成においては、送風手段40から搬送ベルト18に向かってシート吸着面18bに対し直交する方向へエアを送風すると、シート搬送方向Aの上流側へ向かうエアによってシートSの先端eが搬送ベルト18から浮き上がったり捲れたりする課題がある。シート先端の浮き上がり及び捲れは、シートSの搬送不良につながるため、シートSの良好な搬送を実現するにはシート先端の浮き上がり及び捲れを抑制する必要がある。
【0036】
このように、シートを吸着しながら搬送する乾燥装置においては、シートの変形に伴う吸着不良、支持ローラ近傍の吸引力不足による吸着不良、送風によるシート先端の浮き上がり又は捲れによる吸着不良の課題がある。また、このような吸着不良の課題は、特に小サイズシートにおいて顕著となる傾向がある。すなわち、小サイズシートは、大サイズシートに比べて、搬送ベルト18の吸引孔18aを塞ぐ面積が小さいため、負圧が得られにくく、吸着不良の課題が生じやすい傾向がある。
【0037】
そこで、本発明の第一実施形態においては、シートの吸着不良を改善するため、次のような対策を講じている。以下、本発明の第一実施形態に係る特徴部分の構成について説明する。
【0038】
<特徴部分の構成>
図5は、本発明の第一実施形態に係る乾燥装置10の特徴部分の構成を示す図である。
【0039】
図5において、矢印B1~B3は、それぞれ各吸引部材31において生じる吸引力を示す。また、各矢印B1~B3の長さは、吸引力の大きさを示している。図5に示されるように、本発明の第一実施形態に係る乾燥装置10においては、シート搬送方向Aの下流側の吸引部材31ほど、吸引力が大きくなるように構成されている(B1<B2<B3)。
【0040】
このように、吸引部材31の吸引力をシート搬送方向Aの下流側ほど大きくなるようにすることにより、シートSが乾燥処理時の熱により変形したとしても、シートSを良好に吸着できるようになる。すなわち、シートSに変形が生じやすいシート搬送方向Aの下流側においては、上流側に比べて大きな吸引力でもってシートSが吸着されるため、シートSの変形に伴う搬送ベルト18との間の隙間の発生を抑制できる。これにより、シートSを搬送ベルト18に対して良好に吸着させることができるようになる。
【0041】
また、各吸引部材31の吸引力B1~B3は、シート搬送方向Aの下流側に向かって順に大きくなる場合(B1<B2<B3)に限らず、シート搬送方向Aの最も下流側に配置される吸引部材31の吸引力B3のみ、その他の上流側の各吸引部材31の吸引力B1,B2に対して大きくしてもよい(B1=B2<B3)。すなわち、複数の吸引部材31のうち、一部又は1つの吸引部材31の吸引力をその他の吸引部材31の吸引力と異ならせてもよい。なお、下流側の吸引部材31の吸引力をどの程度大きくするかについては、シートSの変形の程度などを考慮して適宜決定すればよい。また、吸引部材31の数は、3つである場合に限らず、2つであってもよいし、4つ以上であってもよい。
【0042】
各吸引部材31の吸引力の大きさは、各負圧発生手段32によって生じる負圧の大きさを個別に設定することにより異ならせることができる。また、搬送されるシートSの材料又は剛性などに応じて、吸引部材31の吸引力の大きさを調整できるようにしてもよい。例えば、変形が生じにくいシートSが搬送される場合は、シート搬送方向Aの下流側における吸引力を大きくしなくてもよいため、各吸引部材31の吸引力を同じ大きさに設定してもよい。一方、変形が生じやすいシートSが搬送される場合は、シート搬送方向Aの下流側における吸引力を大きくすることが好ましい。
【0043】
<その他の実施形態の構成>
続いて、本発明の第一実施形態とは異なる他の実施形態について説明する。以下、本発明の第一実施形態とは異なる部分について主に説明し、同じ部分については適宜説明を省略する。
【0044】
<本発明の第二実施形態>
図6は、本発明の第二実施形態に係る乾燥装置10の特徴部分の構成を示す図である。
【0045】
図6に示されるように、本発明の第二実施形態においては、吸着手段30が、第一吸引部材31のほか、第一吸引部材31とは別の第二吸引部材33を有している。ここでいう第一吸引部材31は、本発明の第一実施形態に係る吸引部材31と同じように、搬送ベルト18の内側で搬送ベルト18を挟んで乾燥手段23と対向するように配置される吸引部材である。一方、第二吸引部材33は、第一吸引部材31とは別体の吸引部材であり、シート搬送方向Aの最上流の第一吸引部材31と上流側支持ローラ24との間、及び、シート搬送方向Aの最下流の第一吸引部材31と下流側支持ローラ25との間に配置される。
【0046】
このように、第一吸引部材31とは別体の第二吸引部材33が、最上流の第一吸引部材31と上流側支持ローラ24との間、及び、最下流の第一吸引部材31と下流側支持ローラ25との間に配置されていることにより、上流側支持ローラ24の近傍及び下流側支持ローラ25の近傍における吸引力を確保できる。これにより、上流側支持ローラ24の近傍及び下流側支持ローラ25の近傍において、シートSを良好に吸着できるようになる。
【0047】
第二吸引部材33は、上流側及び下流側の各支持ローラ24,25と第一吸引部材31との間の限られたスペース内に配置されるため、第一吸引部材31よりも小型であることが好ましい。従って、シート搬送方向Aにおける第二吸引部材33の長さは、シート搬送方向Aにおける第一吸引部材31の長さよりも短いことが好ましい。また、搬送ベルト18のシート吸着面18bに対して直交する方向を第一吸引部材31及び第二吸引部材33の「幅方向」とすると、第二吸引部材33の幅は、第一吸引部材31の幅以下であることが好ましい。
【0048】
また、図7に示されるように、本発明の第二実施形態においては、第二吸引部材33が下流側支持ローラ25と一緒に移動可能に構成されている。これにより、第二吸引部材33を下流側支持ローラ25の近傍に配置できるようになる。すなわち、下流側支持ローラ25が搬送ベルト18の張力調整のために図7における矢印方向へ移動したとしても、このときの下流側支持ローラ25の移動に追従して第二吸引部材33が移動することにより、第二吸引部材33と下流側支持ローラ25との間にこれらの干渉を回避するためのスペースを確保しなくてもよくなる。その結果、第二吸引部材33を下流側支持ローラ25の近傍に配置できるようになるので、下流側支持ローラ25の近傍における吸引力を確保できるようになる。また、下流側支持ローラ25ではなく、上流側支持ローラ24がテンション調整ローラとして機能する場合は、上流側支持ローラ24の移動に追従して第二吸引部材33を移動可能に構成することにより、第二吸引部材33を上流側支持ローラ24の近傍に配置できるようになる。なお、第二吸引部材33は、上流側支持ローラ24の近傍と下流側支持ローラ25の近傍の両方に配置される場合に限らず、いずれか一方の近傍のみに配置される場合であってもよい。
【0049】
また、図8に示されるように、本発明の第二実施形態においては、第二吸引部材33が、上流側支持ローラ24及び下流側支持ローラ25に向かって細くなるように形成される断面楔形状の先鋭吸引部33aを有している。先鋭吸引部33aが、搬送ベルト18のシート吸着面18bにおいて、各支持ローラ24,25と搬送ベルト18との間の楔形状の隙間Cに進入するように配置されることにより、第二吸引部材33を各支持ローラ24,25に対してより接近させて配置できるようになる。また、先鋭吸引部33aにおいてもエアが吸引されることにより、各支持ローラ24,25に対してより近い位置での吸引が行えるようになるため、各支持ローラ24,25の近傍における吸着力をより効果的に発揮できるようになる。
【0050】
また、図9に示されるように、本発明の第二実施形態においては、上流側の第二吸引部材33が、最上流の乾燥手段23よりもシート搬送方向Aの上流側で、かつ、上流側支持ローラ24よりもシート搬送方向Aの下流側に配置される。また、下流側の第二吸引部材33は、最下流の乾燥手段23よりもシート搬送方向Aの下流側で、かつ、下流側支持ローラ25よりもシート搬送方向Aの上流側に配置される。すなわち、上流側及び下流側の各第二吸引部材33は、搬送ベルト18を挟んで乾燥手段23とは対向する位置には配置されていない。このため、各第二吸引部材33は、乾燥手段23による熱の影響を受けにくい環境にある。
【0051】
これに対して、第一吸引部材31は、搬送ベルト18を挟んで乾燥手段23と対向する位置に配置されているので、乾燥手段23による熱の影響を受けやすい。このため、負圧発生手段32は、搬送ベルト18の外側に配置されている(図4参照)。すなわち、負圧発生手段32を第一吸引部材31内に配置すると、負圧発生手段32が乾燥手段23による熱の影響を受けて部品が劣化したり機能が低下したりする虞があるため、負圧発生手段32は、第一吸引部材31内ではなく、搬送ベルト18の外側に配置されている。
【0052】
一方、第二吸引部材33は、乾燥手段23による熱の影響を受けにくいので、図9に示されるように、負圧発生手段34が第二吸引部材33内に配置されている。これにより、省スペース化及び小型化を図れるようになる。
【0053】
また、第一吸引部材31と第二吸引部材33には、それぞれ別個の負圧発生手段32,34が設けられているため、第一吸引部材31及び第二吸引部材33のそれぞれの吸引力を個別に設定することが可能である。例えば、下流側の第二吸引部材33の吸引力を上流側の第一吸引部材31及び第二吸引部材33の吸引力よりも大きくして、シート搬送方向Aの下流側における吸着力を良好に確保できるようにしてもよい。
【0054】
<本発明の第三実施形態>
図10は、本発明の第三実施形態に係る乾燥装置10の特徴部分の構成を示す図である。
【0055】
図10に示されるように、本発明の第三実施形態に係る乾燥装置10は、シートSに対して送風する送風手段40を備えている。送風手段40としては、ファン又はブロワなどが用いられる。送風手段40が、搬送ベルト18に吸着されるシートSに送風することにより、シートSの乾燥が促進される。
【0056】
ここで、送風手段40の送風口41は、シート搬送方向Aの下流側を向くように配置されている。すなわち、本発明の第三実施形態においては、図15に示される例とは異なり、送風口41が、搬送ベルト18のシート吸着面18bに対して垂直な方向ではなく、シート吸着面18bに対して垂直な方向から下流側へ傾いた方向を向くように配置されている。
【0057】
このように、送風口41がシート搬送方向Aの下流側を向くように配置されることにより、送風口41からシート搬送方向Aの下流側に向かってエアが送風されることになる。これにより、シート搬送方向Aの上流側へ向かうエアを少なくすることができるので、シートSの先端にエアが吹き付けられることによるシート先端の浮き上がり又は捲れを抑制できるようになる。なお、この場合、シートSの後端に対してエアが吹き付けられることになるが、万が一シートSの後端が浮き上がったり捲れたりして、シートSの後端が乾燥手段23などに引っ掛かったとしても、シートSの搬送に伴って引っ掛かりが解除されるため、搬送不良は生じにくい。
【0058】
なお、「送風口41が向く方向」とは、図11に示される開口41aの向きを意味するのではなく、開口41a近傍の通風路41bの伸びる方向を意味する。従って、図11の(a)と(b)とでは、開口41a自体の向きは異なるが、開口41a近傍の通風路41bの伸びる方向はいずれもシート搬送方向Aの下流側を向く方向であるので、「送風口41が向く方向」もシート搬送方向Aの下流側となる。
【0059】
送風手段40の数は複数であってもよいし、1つであってもよい。送風手段40が複数設けられる場合は、各送風手段40の風量を互いに異ならせてもよいし、同じにしてもよい。また、搬送されるシートSの剛性に応じて送風手段40の風量を調整できるようにしてもよい。例えば、剛性の低い薄紙が搬送される場合は、剛性の高い厚紙が搬送される場合に比べて、送風手段40の風量を少なくすることにより、送風によるシートSの浮き上がり又は捲れをより確実に抑制できるようになる。
【0060】
また、シートSの剛性は、シートの単位面積当たりの質量である「坪量」との間に相関関係があるため、坪量に応じて風量を変更してもよい。
【0061】
その場合、図12に示されるように、制御部200は、シート情報入力部205から得られたシートの坪量に基づき送風手段40の風量を制御する風量制御部210を備える。風量制御部210は、送風手段40へ供給される最大電流値あるいはファンの最大回転数などを最大出力(100%)とし、最大出力に対する出力の割合(デューティ比)を変更することにより風量を制御する。風量の最大出力としては、例えば3.0[m/mim]以上4.0[m/mim]以下の範囲に設定される。
【0062】
図13に、風量を制御する制御フローの一例を示す。
【0063】
図13に示されるように、印刷動作が開始されると、まず、シートの坪量が170[gsm]未満であるか否か判断される。この判断は、シートの坪量に関する情報をシート情報入力部205から取得した主制御部201によって行われる。そして、坪量が170[gsm]未満であると判断された場合は、風量が最大出力の10%以上30%未満の範囲内に設定される。一方、坪量が170[gsm]以上であると判断された場合は、風量が最大出力の30%以上50%以下の範囲内に設定される。各場合における風量の設定は、主制御部201からの制御信号を受けた風量制御部210によって行われる。そして、シートが送風手段40と対向する位置へ搬送されると、設定された風量により送風手段40からシートSへエアが吹き付けられる。
【0064】
このように、坪量が170[gsm]未満である場合は、風量を相対的に少なくすることにより、剛性が低いシートSの浮き上がり又は捲れを抑制できる。一方、坪量が170[gsm]以上である場合は、風量を相対的に多くすることにより、シートSの乾燥を促進させることが可能である。
【0065】
なお、風量を制御する判断基準となる坪量の値は、170[gsm]である場合に限らず、シートの種類などによって任意に設定可能である。また、設定する風量についても同じように任意に設定可能である。
【0066】
以上のように、本発明の各実施形態によれば、シートを良好に吸着して搬送できるようになるので、シートの吸着不良を改善することが可能である。また、各実施形態に係る構成は、それぞれ単独で実施される場合のほか、いずれか2つ以上を組み合わせて実施してもよい。
【0067】
ここで、本発明に係る「液体吐出装置」には、液体吐出装置の一例であるインクジェット式の画像形成装置のほか、液体吐出部を備え、液体吐出部を駆動させて、シートに液体を吐出する装置であれば、種々の液体吐出装置が含まれる。従って、本発明に係る「液体吐出装置」は、吐出された液体によって文字、図形などの有意な画像を可視化するものに限らない。例えばそれ自体意味を持たないパターンなどを形成するもの、三次元像を造形するもの、さらにはシートの表面を改質するなどの目的でシートの表面に処理液を吐出する処理液吐出装置なども、「液体吐出装置」として含まれる。
【0068】
また、本発明に係る「液体吐出装置」は、シートの給送、搬送、排出に係わる手段、前処理装置のほか、後処理装置などが含むものであってもよい。さらに、「液体吐出装置」は、シートに対して液体吐出部が相対的に移動するものであってもよいし、液体吐出部が相対的に移動しないものであってもよい。具体例としては、液体吐出ヘッド(液体吐出部)を移動させるシリアル型の液体吐出装置、液体吐出ヘッド(液体吐出部)を移動させないライン型の液体吐出装置などが挙げられる。
【0069】
液体が吐出される「シート」には、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどが含まれる。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板が挙げられる。「シート」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0070】
また、「液体吐出装置」によって吐出される「液体」は、液体吐出部から吐出可能な粘度又は表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、又は加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒などの溶媒、染料、顔料などの着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤などの機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウムなどの生体適合材料、天然色素などの可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどである。これらは、例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子、発光素子の構成要素、電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液などの用途で用いることができる。
【0071】
また、本発明に係る乾燥装置が備える乾燥手段としては、例えば、次に挙げられるような紫外線照射手段を用いることができる。
【0072】
<紫外線照射手段の構成>
図14は、乾燥手段の一例である紫外線照射手段17の斜視図である。
【0073】
紫外線照射手段17の光源としては、LEDが好ましく、中でも紫外線を発光する発光ダイオード(UV-LED)が好ましい。図14に示される紫外線照射手段17は、粒状のUV-LED発光素子170が複数配置される照射面17aを有する。各UV-LED発光素子170が同一の照度で発光することにより、照射面17aが全体として均一に発光する状態となる。光源としてLEDが用いられる場合は、メタルハライドランプなどと異なり、波長カットフィルタを用いなくても、光源として波長が単一ピークでシャープになりやすい。このため、インクの色差による乾燥の進み方の差を減らすことができる。
【0074】
紫外線照射手段17から照射される紫外線光(UV光)としては、ピーク波長が300nm以上400nm以下の紫外線光であることが好ましい。また、紫外線光の波長分布としては、特に制限されるものではなく、適宜変更することができる。例えば、半値全幅を約15nmとすることができる。
【0075】
<インク>
続いて、本発明に用いられるインクについて説明する。ただし、インクは以下のインクに限定されるものではない。
【0076】
インクは、水又は有機溶媒、あるいはこれらの両方を主成分とする液体組成物を含む。このような液体組成物を含むインクは、水性インクとも称することができる。液体組成物に、紫外線重合開始剤及び紫外線重合性化合物が含まれていてもよいが、これらを含む場合は、紫外線重合開始剤及び紫外線重合性化合物の含有量が所定量未満に抑えられている。このため、紫外線重合開始剤及び紫外線重合性化合物の含有量が所定量未満のインクに対して、紫外線照射手段17から紫外線が照射されても、重合反応による硬化は生じない、又はほとんど生じない。
【0077】
一方、紫外線重合開始剤及び紫外線重合性化合物を所定量以上含むUVインクなどのUV硬化性の材料の場合、紫外線が照射されると、ラジカル又はカチオンの活性状態になった開始剤が紫外線重合性化合物と反応することにより、紫外線重合性化合物が重合反応を起こして樹脂として硬化する。これにより、インクがシートに定着される。しかしながら、UV硬化性の材料を用いる場合、硬化後の印刷画像に僅かながらラジカル又はカチオンの活性状態の物質が残ることがあり、安全性を有する印刷物が得られにくい問題がある。また、開始剤や重合性化合物は高コストであり、ランニングコストが高くなる問題もある。
【0078】
従って、紫外線重合開始剤及び紫外線重合性化合物の含有量が低いインクを用いることにより、ランニングコストを抑え、良好な安全性を有する印刷物が得られるようになる。
【0079】
<液体組成物>
続いて、インクに含まれる液体組成物について説明する。ただし、液体組成物は以下の液体組成物に限定されるものではない。
【0080】
液体組成物は、水又は有機溶剤を含み、必要に応じて、色材、樹脂などのその他の成分を含む。また、液体組成物は、紫外線重合開始剤及び紫外線重合性化合物を含んでいてもよい。
【0081】
液体組成物は、例えば、着色インク、前処理液(アンダーコート液)、後処理液(プロテクターコート液)などとして用いることができる。
【0082】
-紫外線重合開始剤及び紫外線重合性化合物-
液体組成物は、紫外線重合開始剤及び紫外線重合性化合物を含んでいてもよいが、これらを含む場合は、紫外線重合開始剤や紫外線重合性化合物の含有量が所定量未満に抑えられている。これにより、液体組成物に対して紫外線照射手段から紫外線が照射されても、重合反応による硬化は生じない又はほぼ生じない。
【0083】
液体組成物中に紫外線重合開始剤及び紫外線重合性化合物が含まれる場合、含有量としては、紫外線重合開始剤が液体組成物中に0.1質量%未満、又は、紫外線重合性化合物が液体組成物中に5質量%未満である。液体組成物中に紫外線重合開始剤が0.1質量%以上含まれ、かつ、紫外線重合性化合物が5質量%以上含まれる場合、コストが増大すると共に、良好な安全性を有する印刷物が得られにくくなる。
【0084】
紫外線重合開始剤としては、UV(紫外線)によって、ラジカル又はカチオンなどの活性種を生成し、重合性化合物(モノマー、オリゴマー)の重合を開始させることが可能なものが挙げられる。このような重合開始剤としては、公知のラジカル重合開始剤又はカチオン重合開始剤、塩基発生剤などを、1種単独もしくは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0085】
ラジカル重合開始剤としては、例えば、芳香族ケトン類、アシルフォスフィンオキサイド化合物、芳香族オニウム塩化合物、有機過酸化物、チオ化合物(チオキサントン化合物、チオフェニル基含有化合物など)、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、及びアルキルアミン化合物などが挙げられる。
【0086】
紫外線重合性化合物としては、特に制限されるものではなく、適宜変更することができ、例えば公知の重合性化合物を用いることができる。重合性化合物としては、モノマーでもよいし、オリゴマーなどであってもよい。例えば、メタアクリル酸などが挙げられる。
【0087】
-水-
液体組成物における水の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、乾燥性及び吐出信頼性の点から、10質量%以上90質量%以下が好ましく、20質量%以上60質量%以下がより好ましい。
【0088】
-有機溶剤-
有機溶剤としては、特に制限されず、水溶性有機溶剤を用いることができる。例えば、多価アルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類、多価アルコールアリールエーテル類などのエーテル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物類が挙げられる。
【0089】
多価アルコール類の具体例としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、グリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、エチル-1,2,4-ブタントリオール、1,2,3-ブタントリオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ペトリオールなどが挙げられる。
【0090】
多価アルコールアルキルエーテル類としては、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルなどが挙げられる。
【0091】
多価アルコールアリールエーテル類としては、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテルなどが挙げられる。
【0092】
含窒素複素環化合物としては、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-ヒドロキシエチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ε-カプロラクタム、γ-ブチロラクトンなどが挙げられる。
【0093】
アミド類としては、ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミドなどが挙げられる。
【0094】
アミン類としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミンなどが挙げられる。
【0095】
含硫黄化合物類としては、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノールなどが挙げられる。
【0096】
その他の有機溶剤としては、プロピレンカーボネート、炭酸エチレンなどが挙げられる。
【0097】
湿潤剤として機能するだけでなく、良好な乾燥性を得られることから、沸点が250℃以下の有機溶剤を用いることが好ましい。
【0098】
有機溶剤として、炭素数8以上のポリオール化合物、及びグリコールエーテル化合物も好適に使用される。炭素数8以上のポリオール化合物の具体例としては、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールなどが挙げられる。
【0099】
グリコールエーテル化合物の具体例としては、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルなどの多価アルコールアルキルエーテル類;エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテルなどの多価アルコールアリールエーテル類などが挙げられる。
【0100】
炭素数8以上のポリオール化合物、及びグリコールエーテル化合物は、シートとして紙を用いた場合に、インクの浸透性を向上させることができる。
【0101】
有機溶剤の液体組成物中における含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、乾燥性及び吐出信頼性の点から、10質量%以上60質量%以下が好ましく、20質量%以上60質量%以下がより好ましい。
【0102】
-水と有機溶剤の含有量-
液体組成物における水と有機溶剤を合計量としては、合計で80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。この場合、吐出性を向上させることができる。
【0103】
-色材-
色材としては特に限定されず、顔料、染料を使用可能である。
【0104】
顔料としては、無機顔料又は有機顔料を使用することができる。これらは、1種単独で用いても良く、2種以上を併用してもよい。また、顔料として、混晶を使用してもよい。
【0105】
顔料としては、例えば、ブラック顔料、イエロー顔料、マゼンダ顔料、シアン顔料、白色顔料、緑色顔料、橙色顔料、金色や銀色などの光沢色顔料やメタリック顔料などを用いることができる。
【0106】
無機顔料として、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエローに加え、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたカーボンブラックを使用することができる。
【0107】
また、有機顔料としては、アゾ顔料、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料など)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートなど)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどを使用できる。これらの顔料のうち、溶媒と親和性の良いものが好ましく用いられる。その他、樹脂中空粒子、無機中空粒子の使用も可能である。
【0108】
顔料の具体例として、黒色用としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラックなどのカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、又は銅、鉄(C.I.ピグメントブラック11)、酸化チタンなどの金属類、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)などの有機顔料があげられる。
【0109】
さらに、カラー用としては、C.I.ピグメントイエロー1、3、12、13、14、17、24、34、35、37、42(黄色酸化鉄)、53、55、74、81、83、95、97、98、100、101、104、108、109、110、117、120、138、150、153、155、180、185、213、C.I.ピグメントオレンジ5、13、16、17、36、43、51、C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、17、22、23、31、38、48:2、48:2(パーマネントレッド2B(Ca))、48:3、48:4、49:1、52:2、53:1、57:1(ブリリアントカーミン6B)、60:1、63:1、63:2、64:1、81、83、88、101(べんがら)、104、105、106、108(カドミウムレッド)、112、114、122(キナクリドンマゼンタ)、123、146、149、166、168、170、172、177、178、179、184、185、190、193、202、207、208、209、213、219、224、254、264、C.I.ピグメントバイオレット1(ローダミンレーキ)、3、5:1、16、19、23、38、C.I.ピグメントブルー1、2、15(フタロシアニンブルー)、15:1、15:2、15:3、15:4(フタロシアニンブルー)、16、17:1、56、60、63、C.I.ピグメントグリーン1、4、7、8、10、17、18、36、などがある。
【0110】
染料としては、特に限定されることなく、酸性染料、直接染料、反応性染料、及び塩基性染料が使用可能であり、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0111】
染料として、例えば、C.I.アシッドイエロー 17,23,42,44,79,142、C.I.アシッドレッド 52,80,82,249,254,289、C.I.アシッドブルー 9,45,249、C.I.アシッドブラック 1,2,24,94、C.I.フードブラック 1,2、C.I.ダイレクトイエロー 1,12,24,33,50,55,58,86,132,142,144,173、C.I.ダイレクトレッド 1,4,9,80,81,225,227、C.I.ダイレクトブルー 1,2,15,71,86,87,98,165,199,202、C.I.ダイレクドブラック 19,38,51,71,154,168,171,195、C.I.リアクティブレッド 14,32,55,79,249、C.I.リアクティブブラック 3,4,35が挙げられる。
【0112】
液体組成物中の色材の含有量は、画像濃度の向上、良好な定着性や吐出安定性の点から、0.1質量%以上15質量%以下が好ましく、より好ましくは1質量%以上10質量%以下である。
【0113】
顔料を分散して液体組成物を得る方法としては、顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法、顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法、分散剤を用いて分散させる方法、などが挙げられる。
【0114】
顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法としては、例えば、顔料(例えばカーボン)にスルホン基又はカルボキシル基などの官能基を付加することで、水中に分散可能とする方法が挙げられる。
【0115】
顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法としては、顔料をマイクロカプセルに包含させ、水中に分散可能とする方法が挙げられる。これは、樹脂被覆顔料と言い換えることができる。この場合、液体組成物に配合される顔料はすべて樹脂に被覆されている必要はなく、本発明の効果が損なわれない範囲において、被覆されない顔料又は部分的に被覆された顔料が液体組成物中に分散していてもよい。
【0116】
分散剤を用いて分散させる方法としては、界面活性剤に代表される、公知の低分子型の分散剤、高分子型の分散剤を用いて分散する方法が挙げられる。
【0117】
分散剤としては、顔料に応じて例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤などを使用することが可能である。分散剤として、竹本油脂社製RT-100(ノニオン系界面活性剤)のほか、ナフタレンスルホン酸Naホルマリン縮合物も、好適に使用できる。分散剤は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0118】
顔料に、水又は有機溶剤などの材料を混合してインクなどの液体組成物を得ることが可能である。また、顔料と、その他水及び分散剤などを混合して顔料分散体としたものに、水又は有機溶剤などの材料を混合して液体組成物を製造することも可能である。
【0119】
顔料分散体は、水、顔料、顔料分散剤、必要に応じてその他の成分を混合、分散し、粒径を調整して得られる。分散は分散機を用いるとよい。
【0120】
顔料分散体における顔料の粒径については特に制限はないが、顔料の分散安定性が良好となり、吐出安定性、画像濃度などの画像品質も高くなる点から、最大個数換算で最大頻度が20nm以上500nm以下であることが好ましく、20nm以上150nm以下がより好ましい。顔料の粒径は、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
【0121】
顔料分散体における顔料の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な吐出安定性が得られ、また、画像濃度を高める点から、0.1質量%以上50質量%以下が好ましく、0.1質量%以上30質量%以下がより好ましい。顔料分散体に対し、必要に応じて、フィルター、遠心分離装置などで粗大粒子をろ過し、脱気することが好ましい。
【0122】
-樹脂-
液体組成物中に含有する樹脂の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン-ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリルスチレン系樹脂、アクリルシリコーン系樹脂などが挙げられる。
【0123】
これらの樹脂から成る樹脂粒子を用いてもよい。樹脂粒子を、水を分散媒として分散した樹脂エマルションの状態で、色材及び有機溶剤などの材料と混合して液体組成物を得ることが可能である。樹脂粒子としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。また、これらは、1種を単独で用いても、2種類以上の樹脂粒子を組み合わせて用いてもよい。
【0124】
樹脂粒子の体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な定着性、高い画像硬度を得る点から、10nm以上1,000nm以下が好ましく、10nm以上200nm以下がより好ましく、10nm以上100nm以下が特に好ましい。体積平均粒径は、例えば、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
【0125】
樹脂の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、定着性、液体組成物の保存安定性の点から、液体組成物全量に対して、1質量%以上30質量%以下が好ましく、5質量%以上20質量%以下がより好ましい。
【0126】
-その他の成分-
液体組成物には、必要に応じて、界面活性剤、消泡剤、防腐防黴剤、防錆剤、pH調整剤などを加えてもよい。
【0127】
-前処理液(アンダーコート液)-
液体組成物を前処理液として用いる場合、前処理液は、有機溶剤、水を含有し、必要に応じて凝集剤、界面活性剤、消泡剤、pH調整剤、防腐防黴剤、防錆剤などを含有してもよい。有機溶剤、界面活性剤、消泡剤、pH調整剤、防腐防黴剤、防錆剤は、液体組成物に用いる材料と同様の材料を使用でき、その他、公知の処理液に用いられる材料を使用できる。凝集剤の種類は特に限定されず、水溶性カチオンポリマー、酸、多価金属塩などが挙げられる。
【0128】
-後処理液(プロテクターコート液)-
液体組成物を後処理液として用いる場合、後処理液は、透明な層を形成することが可能であれば、特に限定されない。後処理液は、有機溶剤、水の他、樹脂、界面活性剤、消泡剤、pH調整剤、防腐防黴剤、防錆剤など、必要に応じて選択し、混合して得られる。また、後処理液は、シートに形成された画像領域の全域に塗布してもよいし、選択された領域のみに塗布してもよい。
【0129】
<硬化型組成物>
本発明においては、液体組成物のほか、紫外線により硬化する硬化型組成物をシートに付与するようにしてもよい。このような硬化型組成物を用いる場合、紫外線照射手段により、液体組成物の乾燥と同時に硬化型組成物を硬化させることができるため、別途硬化手段を設ける必要がないという利点が得られる。
【0130】
硬化型組成物は、着色インク、ホワイトインク、クリアインク、前処理液(アンダーコート液)、後処理液(プロテクターコート液)などとして用いることができる。中でも、ホワイトインク、クリアインクとして用いることが好ましい。UV硬化型のインクとする場合は、UVインクなどとも称することができる。
【0131】
硬化型組成物を用いる場合、安全性及びコストの面で硬化型組成物を用いない場合に比べて劣るものの、ホワイト、クリアなどの特色を付加することで、付加価値のある印刷物を得ることができる。また、本発明においては、硬化型組成物を用いた場合においても液体組成物を合わせて用いることができるため、例えばブラックインク、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、ホワイトインクをすべてUV硬化型インクとした従来例と比べて、ランニングコストを抑え、良好な安全性を有する印刷物が得られる。
【0132】
硬化型組成物を用いる場合、シートに付与する順番としては、シートに紫外線が照射される前であればよく、適宜変更することができる。液体組成物をシートに付与する前であってもよいし、液体組成物をシートに付与した後であってもよいし、同時でもよい。また、硬化型組成物を付与する領域は、適宜変更することができ、液体組成物と同じ箇所であってもよい。
【0133】
硬化型組成物は、例えば重合開始剤、重合性化合物を含有し、必要に応じて色材や有機溶媒(有機溶剤)などのその他の成分を含んでいてもよい。
【0134】
-重合開始剤及び重合性化合物-
重合開始剤及び重合性化合物としては、紫外線重合開始剤及び紫外線重合性化合物などを用いることができる。
【0135】
重合開始剤としては、紫外線照射手段により照射される紫外線により、ラジカル又はカチオンなどの活性種を生成し、重合性化合物(モノマーやオリゴマー)の重合を開始させることが可能なものであればよい。このような重合開始剤としては、公知のラジカル重合開始剤又はカチオン重合開始剤、塩基発生剤などを、1種単独もしくは2種以上を組み合わせて用いることができ、中でもラジカル重合開始剤を使用することが好ましい。また、重合開始剤は、十分な硬化速度を得るために、硬化型組成物の総質量(100質量%)に対し、5~20質量%含まれることが好ましい。
【0136】
ラジカル重合開始剤としては、例えば、芳香族ケトン類、アシルフォスフィンオキサイド化合物、芳香族オニウム塩化合物、有機過酸化物、チオ化合物(チオキサントン化合物、チオフェニル基含有化合物など)、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、及びアルキルアミン化合物などが挙げられる。
【0137】
また、重合開始剤に加え、重合促進剤(増感剤)を併用することもできる。重合促進剤としては、特に限定されないが、例えば、トリメチルアミン、メチルジメタノールアミン、トリエタノールアミン、p-ジエチルアミノアセトフェノン、p-ジメチルアミノ安息香酸エチル、p-ジメチルアミノ安息香酸-2-エチルヘキシル、N,N-ジメチルベンジルアミン及び4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンなどのアミン化合物が好ましく、その含有量は、使用する重合開始剤又はその量に応じて適宜設定すればよい。
【0138】
-色材-
色材としては、ブラック、ホワイト、マゼンタ、シアン、イエロー、グリーン、オレンジ、金、銀などを付与する種々の顔料又は染料を用いることができ、液体組成物に用いられる色材などを用いることができる。
【0139】
色材の含有量は、所望の色濃度や組成物中における分散性などを考慮して適宜決定すればよく、特に限定されないが、硬化型組成物の総質量(100質量%)に対して、0.1~20質量%であることが好ましい。なお、硬化型組成物は、色材を含まず無色透明であってもよく、その場合には、例えば、画像を保護するためのオーバーコート層(プロテクターコート層)として好適である。
【0140】
-有機溶媒(有機溶剤)-
有機溶媒としては、液体組成物に用いられる有機溶剤などを用いることができる。硬化型組成物は、有機溶媒を含んでもよいが、可能であれば含まない方が好ましい。有機溶媒、特に揮発性の有機溶媒を含まない(VOC(Volatile Organic Compounds)フリー)組成物であれば、当該組成物を扱う場所の安全性がより高まり、環境汚染防止を図ることも可能となる。なお、「有機溶媒」とは、例えば、エーテル、ケトン、キシレン、酢酸エチル、シクロヘキサノン、トルエンなどの一般的な非反応性の有機溶媒を意味するものであり、反応性モノマーとは区別すべきものである。また、有機溶媒を「含まない」とは、実質的に含まないことを意味し、0.1質量%未満であることが好ましい。
【0141】
その他成分としては、特に制限されないが、例えば、従来公知の、界面活性剤、重合禁止剤、レベリング剤、消泡剤、蛍光増白剤、浸透促進剤、湿潤剤(保湿剤)、定着剤、粘度安定化剤、防黴剤、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、キレート剤、pH調整剤、及び増粘剤などが挙げられる。
【0142】
-調製-
硬化型組成物は、上述の各種成分を用いて作製することができ、その調製手段及び条件は特に限定されないが、例えば、重合性モノマー、顔料、分散剤などをボールミル、キティーミル、ディスクミル、ピンミル、ダイノーミルなどの分散機に投入し、分散させて顔料分散液を調製し、当該顔料分散液にさらに重合性モノマー、開始剤、重合禁止剤、界面活性剤などを混合させることにより調製することができる。
【0143】
-粘度-
硬化型組成物の粘度は、用途又は適用手段に応じて適宜調整すればよく、特に限定されないが、例えば、当該組成物をノズルから吐出させるような吐出手段を適用する場合には、20℃から65℃の範囲における粘度、望ましくは25℃における粘度が3~40mPa・sが好ましく、5~15mPa・sがより好ましく、6~12mPa・sが特に好ましい。また、当該粘度範囲を、有機溶媒を含まずに満たしていることが特に好ましい。なお、粘度は、東機産業株式会社製コーンプレート型回転粘度計VISCOMETER TVE-22Lにより、コーンロータ(1°34'×R24)を使用し、回転数50rpm、恒温循環水の温度を20℃~65℃の範囲で適宜設定して測定することができる。循環水の温度調整にはVISCOMATE VM-150IIIを用いることができる。
【0144】
以上説明した本発明の態様をまとめると、本発明には、少なくとも下記の態様が含まれる。
【0145】
[第1の態様]
第1の態様は、シートを搬送する無端状の搬送ベルトと、前記シートを前記搬送ベルトに吸着させる吸着手段と、前記搬送ベルトのシート吸着面に対向するように配置され前記シートを乾燥させる乾燥手段とを備える乾燥装置であって、前記吸着手段は、前記搬送ベルトの内側でシート搬送方向に並んで配置される複数の吸引部材を備え、前記複数の吸引部材のうち、少なくとも1つの吸引部材の吸引力が他の吸引部材の吸引力とは異なる乾燥装置である。
【0146】
[第2の態様]
第2の態様は、第1の態様において、前記複数の吸引部材のうち、シート搬送方向の下流側の吸引部材の吸引力が、シート搬送方向の上流側の吸引部材の吸引力よりも大きい乾燥装置である。
【0147】
[第3の態様]
第3の態様は、シートを搬送する無端状の搬送ベルトと、前記シートを前記搬送ベルトに吸着させる吸着手段と、前記搬送ベルトのシート吸着面に対向するように配置され前記シートを乾燥させる乾燥手段と、前記乾燥手段よりもシート搬送方向の上流側に配置され前記搬送ベルトを内側から支持する上流側支持ローラと、前記乾燥手段よりもシート搬送方向の下流側に配置され前記搬送ベルトを内側から支持する下流側支持ローラとを備える乾燥装置であって、前記吸着手段は、前記搬送ベルトの内側で前記搬送ベルトを挟んで前記乾燥手段と対向するように配置される第一吸引部材と、前記搬送ベルトの内側で前記乾燥手段よりもシート搬送方向の下流側かつ前記下流側支持ローラよりもシート搬送方向の上流側に配置される第二吸引部材とを有する乾燥装置である。
【0148】
[第4の態様]
第4の態様は、シートを搬送する無端状の搬送ベルトと、前記シートを前記搬送ベルトに吸着させる吸着手段と、前記搬送ベルトのシート吸着面に対向するように配置され前記シートを乾燥させる乾燥手段と、前記乾燥手段よりもシート搬送方向の上流側に配置され前記搬送ベルトを内側から支持する上流側支持ローラと、前記乾燥手段よりもシート搬送方向の下流側に配置され前記搬送ベルトを内側から支持する下流側支持ローラとを備える乾燥装置であって、前記吸着手段は、前記搬送ベルトの内側で前記搬送ベルトを挟んで前記乾燥手段と対向するように配置される第一吸引部材と、前記搬送ベルトの内側で前記乾燥手段よりもシート搬送方向の上流側かつ前記上流側支持ローラよりもシート搬送方向の下流側に配置される第二吸引部材とを有する乾燥装置である。
【0149】
[第5の態様]
第5の態様は、第3の態様において、前記第二吸引部材は、前記下流側支持ローラと一緒に移動可能に構成される乾燥装置である。
【0150】
[第6の態様]
第6の態様は、第4の態様において、前記第二吸引部材は、前記上流側支持ローラと一緒に移動可能に構成される乾燥装置である。
【0151】
[第7の態様]
第7の態様は、第3から第6のいずれか1つの態様において、シート搬送方向における前記第二吸引部材の長さは、シート搬送方向における前記第一吸引部材の長さよりも短い乾燥装置である。
【0152】
[第8の態様]
第8の態様は、第3から第7のいずれか1つの態様において、前記第二吸引部材は、内部に負圧発生手段を有する乾燥装置である。
【0153】
[第9の態様]
第9の態様は、シートを搬送する無端状の搬送ベルトと、前記シートを前記搬送ベルトに吸着させる吸着手段と、前記搬送ベルトのシート吸着面に対向するように配置され前記シートを乾燥させる乾燥手段と、前記搬送ベルトに吸着される前記シートに送風する送風手段とを備える乾燥装置であって、前記送風手段の送風口が、シート搬送方向の下流側を向くように配置される乾燥装置である。
【0154】
[第10の態様]
第10の態様は、シートに液体を吐出する液体吐出部と、液体が吐出された前記シートを乾燥させる第1から第9のいずれか1つの態様の乾燥装置とを備える液体吐出装置である。
【符号の説明】
【0155】
10 乾燥装置
13 液体吐出部
18 搬送ベルト
23 乾燥手段
24 上流側支持ローラ
25 下流側支持ローラ
30 吸着手段
31 吸引部材(第一吸引部材)
32 負圧発生手段
33 第二吸引部材
34 負圧発生手段
40 送風手段
41 送風口
100 液体吐出装置
A シート搬送方向
S シート
【先行技術文献】
【特許文献】
【0156】
【特許文献1】特開2014-181130号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図15