(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175931
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】低炭素高炉製鉄のためのクリーンな還元ガスの製造方法
(51)【国際特許分類】
C01B 32/40 20170101AFI20241212BHJP
C21B 5/00 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
C01B32/40
C21B5/00 321
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094036
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100172683
【弁理士】
【氏名又は名称】綾 聡平
(74)【代理人】
【識別番号】100219265
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 崇大
(74)【代理人】
【識別番号】100203208
【弁理士】
【氏名又は名称】小笠原 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】クオ ポチ
(72)【発明者】
【氏名】アズィッズ ムハンマッド
(72)【発明者】
【氏名】ソン ジョウ
【テーマコード(参考)】
4G146
4K012
【Fターム(参考)】
4G146JA01
4G146JB04
4G146JB09
4G146JC01
4K012BF05
(57)【要約】
【解決課題】
高炉製鉄プロセスで活用される新たな脱炭素技術を開発すること。
【解決手段】
高炉での製鉄に用いられる還元性ガスを製造する方法であって、
(1)還元鉄及び二酸化炭素を、酸化剤反応器に供給する工程、及び
(2)前記酸化剤反応器中で、高温で、前記還元鉄を二酸化炭素で酸化して、一酸化炭素富化な還元性ガスを生成する工程、
を含む、当該製造方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高炉での製鉄に用いられる還元性ガスを製造する方法であって、
(1)還元鉄及び二酸化炭素を、酸化剤反応器に供給する工程、及び
(2)前記酸化剤反応器中で、高温で、前記還元鉄を二酸化炭素で酸化して、一酸化炭素富化な還元性ガスを生成する工程、
を含む、当該製造方法。
【請求項2】
(3)前記酸化剤反応器で生成した部分酸化された還元鉄を空気反応器に送る工程、及び
(4)前記空気反応器中で、前記部分酸化された還元鉄を、空気によって完全に酸化する工程、
を更に含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
完全に酸化された還元鉄を回収する工程を含む、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記二酸化炭素が、濃縮二酸化炭素である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記二酸化炭素は、製鉄工場の任意のプロセスから分離回収された二酸化炭素、または、生物起源の二酸化炭素である、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記還元鉄は、直接還元鉄(DRI)及び/又はホットブリケット鉄(HBI)である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
前記完全に酸化された還元鉄が、高炉に充填される酸化鉄として、又は、高炉に充填される前に焼結される酸化鉄として、再利用される、請求項2に記載の製造方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の製造方法により得られる還元性ガスを、高炉内に吹き込むことを特徴とする、高炉での銑鉄の製造方法。
【請求項9】
高炉で銑鉄を製造する方法であって、
(a)還元鉄及び二酸化炭素を、酸化剤反応器に供給する工程、
(b)前記反応器中で、高温で、前記還元鉄を二酸化炭素で酸化して、一酸化炭素富化な還元性ガスを生成する工程、
(c)(b)の工程で得られた前記還元性ガスを、高炉内に供給する工程
を含む、当該製造方法。
【請求項10】
(d)(b)の工程において酸化剤反応器で生成した部分酸化された還元鉄を空気反応器に送る工程、及び
(e)前記空気反応器中で、前記部分酸化された還元鉄を、空気によって完全に酸化する工程、
を更に含む、請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
完全に酸化された還元鉄を回収する工程を含む、請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
前記二酸化炭素は、製鉄工場の任意のプロセスから回収された二酸化炭素、または、生物起源の二酸化炭素である、請求項9に記載の製造方法。
【請求項13】
前記還元鉄は、直接還元鉄(DRI)及び/又はホットブリケット鉄(HBI)である、請求項9に記載の製造方法。
【請求項14】
前記完全に酸化された還元鉄が、高炉に充填される酸化鉄として、又は、高炉に充填される前に焼結される酸化鉄として、再利用される、請求項10に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高炉での製鉄に用いられる還元性ガスを製造する方法に関わる。また、本発明は、当該製造方法で得られる還元性ガスを用いた高炉で銑鉄を製造する方法に関わる。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境問題や化石燃料枯渇問題を背景として、様々な分野において省エネルギー化並びに二酸化炭素(CO2)の排出量低減が強く求められている。特に、日本の全産業排出量の約40%は鉄鋼業に由来する。
一方で、鉄鋼生産の需要は世界中で増加を続けており、高炉製鉄プロセスは、依然として溶銑を生産する最も効果的かつ効率的な手法である。
【0003】
したがって、2030年までに温室効果ガスの排出量を2013年度比で30%以上削減し、2050年までにカーボンニュートラルを達成するためには、製鉄業のCO2排出量の70%以上を占める高炉製鉄プロセスの脱炭素化技術の提案・開発が急務である。
【0004】
これまで、高炉での炭素消費(コークスや微粉炭)を低減するために、様々な脱炭素技術が提案・開発されてきた。例えば、(1)直接還元鉄(DRI)/ホットブリケット鉄(HBI)を高炉に直接投入する(非特許文献1及び2);(2)高炉へ水素リッチガス(COG)を注入する技術(特許文献1及び非特許文献3);及び(3)トップガスリサイクル(TGR)高炉技術は(特許文献2及び非特許文献4)、現在開発中の3つの主要な脱炭素技術である。しかしながら、上記の技術にはそれぞれ運転上の制約があり、高炉製鉄プロセスの運転条件を複雑かつ困難なものとする。特に、上記の技術に頼るだけでは、CO2排出削減の可能性は非常に限られている(約20-25%)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】EP2719777A1
【特許文献2】米国特許第10106863
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】宇治澤 優, 砂原 公平, 松倉 良徳, 中野 薫, 山本 高郁「HBl利用による高炉増産効果の検討」、鉄と鋼、Vol.92(2016)No.10
【非特許文献2】A. Griesser and Th. Buergler Berg Huettenmaenn Monatsh (2019) Vol. 164 (7): 267-273
【非特許文献3】Kenichi HIGUCHI, Shinroku MATSUZAKI, Koji SAITO and Seiji NOMURA, Improvement in Reduction Behavior of Sintered Ores in a Blast Furnace through Injection of Reformed Coke Oven Gas. ISIJ International, Vol. 60 (2020), No. 10, pp. 2218-2227
【非特許文献4】Wei Zhang, Juhua Zhang, Zhengliang Xue, Exergy analyses of the oxygen blast furnace with top gas recycling process. Energy 121, 15, Pages 135-146
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、高炉製鉄プロセスで活用される新たな脱炭素技術を開発することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、高炉の大規模な改修を行わずにCO2排出量を最大限削減できないかを鋭意検討したところ、化学ループプロセスの原料として還元鉄を利用することによってクリーンな還元ガス (COベース) を得ることができることを着想し、高炉製鉄からの銑鉄生産のための革新的な低炭素プロセスを提供できることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
即ち、本発明は、以下の構成を有するものでさる。
[1]高炉での製鉄に用いられる還元性ガスを製造する方法であって、
(1)還元鉄及び二酸化炭素を、酸化剤反応器に供給する工程、及び
(2)前記酸化剤反応器中で、高温で、前記還元鉄を二酸化炭素で酸化して、一酸化炭素富化な還元性ガスを生成する工程、
を含む、当該製造方法。
[2](3)前記酸化剤反応器で生成した部分酸化された還元鉄を空気反応器に送る工程、及び
(4)前記空気反応器中で、前記部分酸化された還元鉄を、空気によって完全に酸化する工程、
を更に含む、[1]に記載の製造方法。
[3]完全に酸化された還元鉄を回収する工程を含む、[2]に記載の製造方法。
[4]前記二酸化炭素が、濃縮二酸化炭素である、[1]~[3]のいずれか1項に記載の製造方法。
[5]前記二酸化炭素は、製鉄工場の任意のプロセスから分離回収された二酸化炭素、または、生物起源の二酸化炭素である、[1]~[4]のいずれか1項に記載の製造方法。
[6]前記還元鉄は、直接還元鉄(DRI)及び/又はホットブリケット鉄(HBI)である、[1]~[5]のいずれか1項に記載の製造方法。
[7]前記完全に酸化された還元鉄が、高炉に充填される酸化鉄として、又は、高炉に充填される前に焼結される酸化鉄として、再利用される、[2]~[6]のいずれか1項に記載の製造方法。
[8][1]~[7]のいずれか1項に記載の製造方法により得られる還元性ガスを、高炉内に吹き込むことを特徴とする、高炉での銑鉄の製造方法。
[9]高炉で銑鉄を製造する方法であって、
(a)還元鉄及び二酸化炭素を、酸化剤反応器に供給する工程、
(b)前記反応器中で、高温で、前記還元鉄を二酸化炭素で酸化して、一酸化炭素富化な還元性ガスを生成する工程、
(c)(b)の工程で得られた前記還元性ガスを、高炉内に供給する工程
を含む、当該製造方法。
[10](d)(b)の工程において酸化剤反応器で生成した部分酸化された還元鉄を空気反応器に送る工程、及び
(e)前記空気反応器中で、前記部分酸化された還元鉄を、空気によって完全に酸化する工程、
を更に含む、[9]に記載の製造方法。
[11]完全に酸化された還元鉄を回収する工程を含む、[10]に記載の製造方法。
[12]前記二酸化炭素は、製鉄工場の任意のプロセスから回収された二酸化炭素、または、生物起源の二酸化炭素である、[9]~[11]のいずれか1項に記載の製造方法。
[13]前記還元鉄は、直接還元鉄(DRI)及び/又はホットブリケット鉄(HBI)である、[9]~[12]のいずれか1項に記載の製造方法。
[14]前記完全に酸化された還元鉄が、高炉に充填される酸化鉄として、又は、高炉に充填される前に焼結される酸化鉄として、再利用される、[10]~[13]に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、高炉の大規模な改修を行わずに、炭素の使用量を35%以上節約することができる。このように、本発明は、従来の高炉製鉄法に比べて、コークス及び微粉炭の消費量を大幅に削減することができるため、CO2排出量を顕著に削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の還元性ガスの製造方法の非限定的例の模式図を示す。
【
図2】本発明の銑鉄の製造方法の非限定的例の模式図を示す。
【
図3】本発明の銑鉄の製造方法の非限定的な例のもう1つの模式図を示す。
【
図4】本発明の銑鉄の製造方法の一態様についての模式図を示す。
【
図5】実施例による本発明の還元性ガスの製造方法のプロセスシミュレーションの概略図を示す。
【発明の実施の形態】
【0012】
本発明は、高炉(Blast Furnace(BF))製鉄からの銑鉄生産のための革新的な低炭素プロセスを提供する。本発明のプロセスにより、クリーンな還元ガス(COベース)を、ケミカルループプロセスの原料として、例えば直接還元鉄(DRI)/ホットブリケット鉄(HBI)などの還元鉄を利用することによって得ることができる。
【0013】
1.高炉での製鉄に用いられる還元性ガスを製造する方法
本発明の1つの実施形態は、高炉での製鉄に用いられる還元性ガスを製造する方法であって、
(1)還元鉄及び二酸化炭素を、酸化剤反応器に供給する工程、及び
(2)前記酸化剤反応器中で、高温で、前記還元鉄を二酸化炭素で酸化して、一酸化炭素富化な還元性ガスを生成する工程、
を含む、当該製造方法である(以下「本発明の還元性ガスの製造方法」とも言う)。
【0014】
本発明においては、還元鉄を高炉に直接投入するのではなく、高炉の外部に設けられた酸化剤反応器に充填し、酸化剤反応器中で還元鉄を酸化して一酸化炭素富化な還元性ガスを生成することが重要である。
【0015】
本発明の還元性ガスの製造方法において、還元鉄は、好ましくは、直接還元鉄(DRI)及び/又はホットブリケット化鉄(Hot Briquetted Iron(HBI))である。
直接還元鉄(DRI)は、鉄鉱石(塊鉱石・ペレット)を高炉に比べ低温で、天然ガスなどをもとに製造された還元ガスや石炭などの還元剤により直接還元する製鉄法により得られる。
また、ホットブリケット化鉄(HBI)は、海上輸送のような大量かつ長距離の輸送用や長期間にわたる屋外保存用に、直接還元鉄(DRI)を700℃前後の熱間で圧縮・成型(ブリケット化)して得られる。
【0016】
直接還元鉄(DRI)は、通常、天然ガスを改質した還元ガス(H2約55%、CO約36%)で、MIDREX(登録商標)法により得られるが、本発明の還元性ガスの製造方法においては、直接還元鉄などの還元鉄は、製鉄プロセスからの二酸化炭素排出量を減らすために、カーボンフリー(炭素を含まない)源を用いて製造された還元鉄であることが好ましい。炭素を含まない源としては、例えば、グリーン水素又はバイオ合成ガスが挙げられる。
このような還元鉄として、例えば、MIDREX法又はENERGIRON法により製造されたものが好ましいが、これらに限定されるものではない。
MIDREX法については、https://www.midrex.com/technology/midrex-process/、及び、米国特許第11499201号を参照することができる。また、ENERGIRON法については、https://www.energiron.com/technology/、及び、独国特許出願公開102016122083を参照することができる。
【0017】
本発明の還元性ガスの製造方法で使用する二酸化炭素は、濃縮二酸化炭素であることが好ましい。
【0018】
本発明の還元性ガスの製造方法で使用する二酸化炭素は、製鉄工場の任意のプロセスから分離回収された二酸化炭素、または、生物起源の二酸化炭素である。
製鉄工場では、種々のプロセスからオフ・ガス(原料・燃料として利用されるガス、製品として出荷される以外に未利用で放出されるガス;スチール・オフ・ガス(steel-off gas)とも呼ばれる)が排出され、その中には二酸化炭素を含むガスがある。このような二酸化炭素を含むスチール・オフ・ガスとしては、高炉から副生する高炉ガス(blast furnace gas(BFG);主に、二酸化炭素、一酸化炭素、水素を含む)、石炭を乾留してコークスを得るコークス炉から生成するコークス炉ガス(coke oven gas(COG))が挙げられる。また、BFG、COGは、下流の鉄鋼製造のための熱と電力を生成するために燃焼することができ、その燃焼システムから排出されるガスにも二酸化炭素が含まれる。
また、転炉ガス(LDG(Linz-Donawitz converter gas)又はBOSG(basic oxygen steelmaking gas))も本発明で使用することができる二酸化炭素を含むスチール・オフ・ガスである。転炉ガスは、発熱量も高いため、鉄鋼業のエネルギー源として利用できることから、BFG及びCOGと同様に、転炉ガスも製鉄中に生成される最も重要な副産物の1つである。 そして、転炉ガスを燃焼後に、発生する二酸化炭素も酸化剤反応器中で使用する源として回収することができる。
このような製鉄工場の任意のプロセスから排出されるガスから(スチール・オフ・ガス)分離回収された二酸化炭素を本発明で使用することはできる。
【0019】
製鉄工場の任意のプロセスから排出されるガスから二酸化炭素を分離回収するには、二酸化炭素捕捉システムを用いることができる。二酸化炭素捕捉システムとしては、例えば、圧力スイング吸着法(PSA)、モノエタノールアミン吸着法、膜分離、又はオキシ燃料燃焼プロセスを用いることができる。
【0020】
また、本発明の還元性ガスの製造方法では、生物起源の二酸化炭素、例えば、生物エネルギーシステムから得られるガス(例えば、バイオマスを利用して得られるバイオ燃料)、バイオガス(生物の排泄物、有機質肥料、生分解性物質、汚泥、汚水、ゴミ、エネルギー作物などの発酵、嫌気性消化により発生するガス)から得られる二酸化炭素も使用することができる。また、生物起源の二酸化炭素源は、バイオマス発電所 (バイオマス焚きボイラープラントなど)、バイオマスガス化複合発電 (IGCC) プラント、廃棄物発電所 (都市固形廃棄物からの焼却プラントなど) などからも回収できる。
これらの生物起源の二酸化炭素を分離回収するには、製鉄工場の任意のプロセスから排出されるガスから二酸化炭素を分離回収するのに用いるのと同様の上記した二酸化炭素捕捉システムを用いることができる。
【0021】
本発明の還元性ガスの製造方法においては、還元鉄と二酸化炭素を、一緒に酸化剤反応器に供給してもよく、あるいは、別々に酸化剤反応器に供給してもよい。
還元鉄と二酸化炭素を一緒に酸化剤反応器に供給する場合には、還元鉄を二酸化炭素流れに予め投入して、これらを一緒に酸化剤反応器に供給する場合、及び、還元鉄、二酸化炭素流れを、夫々異なる供給口から同時に酸化剤反応器に投入する場合が含まれる。
また、還元鉄と二酸化炭素を別々に酸化剤反応器に供給する場合には、還元鉄と二酸化炭素流れを、夫々異なる供給口から酸化剤反応器に投入する場合や、1つの配管等を用いて、還元鉄、二酸化炭素流れを順番に(いずれが先に投入されてもよい)酸化剤反応器に投入する場合が含まれる。
【0022】
酸化剤反応器は、還元鉄を供給された二酸化炭素により酸化して、一酸化炭素富化な還元性ガスを生成させる反応器であり、酸化器とも言われる。酸化剤反応器は、耐高温・耐高圧性の酸化剤反応器であれば、いずれの酸化剤反応器も使用できる。反応器の材質としては、例えば、鋼(または合金鋼)、または錬鉄が挙げられ、また、必要な場合には高温耐火レンガも使用することができる。
【0023】
本発明の還元性ガスの製造方法においては、酸化剤反応器中で、高温で、還元鉄を二酸化炭素で酸化して、一酸化炭素富化な還元性ガスが生成される、
酸化剤反応器中で一酸化炭素富化な還元性ガスを生成する化学反応は、700~1200℃で起こり得る。省エネルギーの観点からは、1000℃以下で運転をするのが良いが、一酸化炭素富化な還元性ガスの収率も考慮して反応温度を選定することが好ましい。したがって、好ましい運転温度は、800~1000℃の範囲内である。
【0024】
理論に拘束されることを意図するものではないが、酸化剤反応器中で以下の反応が起こっていると考えられる。
酸化工程1:
酸化工程2:
【0025】
このようにして、本発明の還元性ガスの製造方法では、一酸化炭素富化な還元性ガスが生成されると共に、部分酸化された還元鉄(即ち、FeO、Fe3O4)を生成する。
ここで生成した部分酸化された還元鉄(FeO、Fe3O4)は、空気反応器に送られて、Fe2O3及び熱を生成する。この熱は酸化剤反応器の熱源として利用される。
また、酸化剤反応器から生成した部分酸化された還元鉄(FeO、Fe3O4)の一定量を、焼結プラントで利用するために焼結プロセスに直接分割することができる。
【0026】
生成した一酸化炭素富化な還元性ガスは、還元性ガスとしてのクリーンなCOとして高炉に送ることができる。そして、この還元性ガスの供給により、一酸化炭素富化な還元性ガスを高炉用の還元性ガスとして使用することができ、高炉へのコークス及び微粉炭の投入量を大きく低減することができる。その結果、高炉での製鉄から排出される二酸化炭素の量を削減することが可能である。
【0027】
本発明の還元性ガスの製造方法においては、必要に応じて、水蒸気も二酸化炭素とともに酸化剤反応器に供給することができる。水蒸気を供給することで、未反応の鉄や酸化鉄を酸化して、以下の反応式により部分酸化された還元鉄であるFe
3O
4を生成させ、また、一酸化炭素富化な還元性ガス中に少量の水素を生成させることができる。
必要に応じて、この工程は、生成される一酸化炭素富化な還元性ガスのガス組成を従来の運転技術 (つまり、微粉炭およびコークスベースの運転) に近づける (類似する)ために用いることができる。
【0028】
本発明の還元性ガスの製造方法の1つの好ましい態様においては、
(3)前記酸化剤反応器で生成した部分酸化された還元鉄を空気反応器に送る工程、及び
(4)前記空気反応器中で、前記部分酸化された還元鉄を、空気によって完全に酸化する工程、
を更に含む。
【0029】
空気反応器は、耐高温・耐高圧性の反応器であれば、いずれの空気反応器も使用できる。反応器の材質としては、例えば、鋼(または合金鋼)、または錬鉄が挙げられ、また、必要な場合には高温耐火レンガも使用することができる。
【0030】
空気反応器中では、部分酸化された還元鉄(FeO、Fe
3O
4)が、空気によって完全に酸化される、
理論に拘束されることを意図するものではないが、空気反応器中でFe
3O
4は以下の反応により完全に酸化されてFe
2O
3が生成していると考えられる。
【0031】
空気反応器中の温度は、好ましくは、800~1200℃である。
【0032】
また、式(4)の発熱反応によって放出される熱は、熱交換などにて酸化剤反応器に伝達させて利用してもよい。
【0033】
本発明の還元性ガスの製造方法の1つの好ましい態様においては、完全に酸化された還元鉄を回収する工程を含む。
完全に酸化された還元鉄は、高炉に充填される酸化鉄として、又は、高炉に充填される前に焼結される酸化鉄として、再利用することができる。
【0034】
本発明の還元性ガスの製造方法の非限定的な例の模式図を
図1に示す。
本発明の還元性ガスの製造方法で得られる一酸化炭素富化な還元性ガス(
図1のCOリッチ還元性ガス)を高炉内に吹き込むことで、高炉での銑鉄の製造に利用することができる。
即ち、本発明のもう1つの実施態様は、本発明の還元性ガスの製造方法により得られる還元性ガスを、高炉内に吹き込むことを特徴とする、高炉での銑鉄の製造方法である。
【0035】
2.高炉で銑鉄を製造する方法
本発明のもう1つの実施態様は、高炉で銑鉄を製造する方法であって、
(a)還元鉄及び二酸化炭素を、酸化剤反応器に供給する工程、
(b)前記反応器中で、高温で、前記還元鉄を二酸化炭素で酸化して、一酸化炭素富化な還元性ガスを生成する工程、
(c)(b)の工程で得られた前記還元性ガスを、高炉内に供給する工程
を含む、当該製造方法である(以下「本発明の銑鉄の製造方法」とも言う)。
【0036】
本発明の銑鉄の製造方法の上記(a)及び(b)の工程は、夫々、本発明の還元性ガスの製造方法における(1)及び(2)の工程に対応し、その詳細(還元鉄、二酸化炭素、酸化剤反応器等)は、本発明の還元性ガスの製造方法で(1)及び(2)の工程について詳述した通りである。
【0037】
一酸化炭素富化な還元性ガスを高炉内に供給するには、(1)高炉の羽口、(2)高炉シャフト、および(3)高炉の羽口と高炉シャフトの両方のいずれかから供給することが好ましい(
図3を参照)。
【0038】
本発明の銑鉄の製造方法の1つの好ましい態様においては、
(d)(b)の工程において酸化剤反応器で生成した部分酸化された還元鉄を空気反応器に送る工程、及び
(e)前記空気反応器中で、前記部分酸化された還元鉄を、空気によって完全に酸化する工程、
を更に含む。
【0039】
本発明の銑鉄の製造方法の上記(d)及び(e)の工程は、夫々、本発明の還元性ガスの製造方法における(3)及び(4)の工程に対応し、その詳細(部分酸化された、空気反応器等)は、本発明の還元性ガスの製造方法で(3)及び(4)の工程について詳述した通りである。
【0040】
本発明の銑鉄の製造方法の1つの好ましい態様においては、完全に酸化された還元鉄を回収する工程を含む。
完全に酸化された還元鉄は、高炉に充填される酸化鉄として、又は、高炉に充填される前に焼結される酸化鉄として、再利用することができる。
【0041】
高炉で銑鉄を製造する一般的な方法としては、高炉の頂部から鉄鉱石による金属原料とコークスなどの燃料を兼ねる還元材、不純物を除去する目的で石灰石を入れ、下部側面から加熱された空気(熱風)を吹き入れてコークスを燃焼させる。頂部から投入される原料等は、通常あらかじめ簡単に焼かれて固塊状に加工されており、炉内での高温ガスの上方への流路と原料等の流動性が確保されている。高炉内部ではコークスの炭素が鉄から酸素を奪って熱と一酸化炭素、二酸化炭素を生じる。この反応が熱源となり鉄鉱石を溶かし、炉の上部から下部に沈降してゆく過程で必要な反応が連続的に行なわれ下部に到達する頃には燃焼温度は最高となり、炉の底部で高温液体状の銑鉄が得られる。不純物を多く含む高温液体状のスラグは銑鉄の上に層を成してたまる。銑鉄とスラグは底部側面から適時、自然流動によって取り出される。
【0042】
本発明の銑鉄の製造方法は、このような高炉で銑鉄を製造する一般的な方法に加えて、上記した(a)~(c)の工程を含むものである。
本発明の銑鉄の製造方法の非限定的な例の模式図を
図2に示す。
【0043】
図2では、高炉から発生する高炉ガスから二酸化炭素捕捉システムを用いて得られた二酸化炭素を酸化剤反応器に供給しているが、本発明の銑鉄の製造方法では、製鉄工場の任意のプロセスから分離回収された二酸化炭素、または、生物起源の二酸化炭素を使用することができる。製鉄工場の任意のプロセスから分離回収された二酸化炭素、生物起源の二酸化炭素の詳細については本発明の還元性ガスの製造方法で詳述した通りである。また、二酸化炭素捕捉システムを設けることは任意であり、二酸化炭素捕捉システムを用いずに、二酸化炭素を酸化剤反応器に供給する場合も本発明の範囲に含まれる。
図2で示すように、高炉ガスから二酸化炭素捕捉システムを用いて二酸化炭素を分離回収して二酸化炭素(好ましくは濃縮二酸化炭素)を生成するとともに、窒素リッチガスも生成する。
【0044】
図2に示されるように、本発明の銑鉄の製造方法では、高炉ガスから分離回収された二酸化炭素(上記の通り、本発明の銑鉄の製造方法で使用できる二酸化炭素はこれに限られない)、酸化剤反応器内で還元されて一酸化炭素富化な還元性ガスを生じ、この還元性ガスが高炉内に送られ、この還元性ガス中の一酸化炭素は鉄の還元(鉄鉱石中のFe
2O
3の還元)に利用される。したがって、(c)の工程で高炉内に供給される一酸化炭素の量に応じて、一酸化炭素を生成させるために投入されるコークスの量を低減することが可能である。
そして、高炉ガスから分離回収された二酸化炭素が還元性ガスの一酸化炭素となり再び高炉内に供給されることから、これらの反応及び工程はケミカルループをなしており、高炉から排出される二酸化炭素量を低減することができる。
【0045】
本発明の銑鉄の製造方法の非限定的な例のもう1つの模式図を
図3に示す。
図3では、
図2に記載されている還元鉄の供給、水蒸気の供給(必要な場合)や、空気反応器での工程などを省略しているが、一酸化炭素富化な還元性ガスを高炉に供給する場所として、高炉の羽口(3)、高炉シャフト(7)を示している。
【0046】
本発明の銑鉄の製造方法において、酸化剤反応器は高炉の外部の任意の場所に設けることができる。例えば、(a)の工程で使用する二酸化炭素が、高炉ガスから分離回収した二酸化炭素である場合は、高炉の周辺に酸化剤反応器を設けることができる。
また、酸化剤反応器中で生成した一酸化炭素富化な還元性ガスを、直接高炉内に注入してもよく、また、当該還元性ガスを一旦ガス貯蔵器(貯蔵タンク)などに供給・保管して、そこから必要に応じて高炉内に還元性ガス注入してもよい。
また、本発明の銑鉄の製造方法において、(a)の工程で使用する二酸化炭素が生物起源の二酸化炭素などである場合は、製鉄工場の外で(a)~(b)の工程を行い、得られた一酸化炭素富化な還元性ガスを準備して、これを高炉内に注入して用いることもできる。
【0047】
ここで、従来技術として記載した高炉製鉄プロセスで検討されている3つの主要な脱炭素技術と本発明の銑鉄の製造方法とを比較する。
【0048】
まず、直接還元鉄(DRI)/ホットブリケット鉄(HBI)を高炉に直接投入する技術に対して、本発明の銑鉄の製造方法は、以下の点で優れている。
【0049】
直接還元鉄(DRI)/ホットブリケット鉄(HBI)の材料は、燃料としてグリーン水素を用いて製造することができるため、DRI/HBIは基本的に、製鉄業界においてはクリーンでグリーンな使用原料と見なされている。高炉にDRI/HBIを直接充填する場合、DRI/HBIは鉄含有量が高く、プレミアム鉱石系金属原料であるため、コークスや微粉炭(羽口からの注入)の量を減らすことができる。したがって、このことは、DRI/HBIの充填が必要とされる還元プロセスを回避することを目的としており、コークスと微粉炭の消費量の減少につながることを意味している。この挙動は、高炉中に充填した原料(鉄鉱石)の一部がすでにDRI/HBIの形で削減されているため、炭素系燃料(コークスや石炭)の消費を削減できるためである。
【0050】
しかしながら、この技術にはいくつかの欠点がある。まず、DRI/HBIの最大充填速度は約400kg/tHM(理論計算による)以下であり、これを超えると高炉のエネルギーバランスに問題が生じ、高炉に深刻なダメージを与える恐れがある。他方、高炉に大量のDRI/HBIを直接投入すると、物理的にも化学的にも高炉内部での現象を変化させることになるため、高炉内部の反応挙動を制御するためには、高炉の新しいプロセス操作条件を探る必要がある。
これに対して、本発明の製造方法では、DRI/HBI材料などの還元鉄を高炉へ充填する必要がなく、これに代えて、酸化剤反応器を使用して、高炉を操作するための還元剤としてクリーンなCOリッチガスを生成することにより、DRI/HBI材料などの還元鉄を外部利用することができる。これにより、高炉内部の反応挙動は従来の運転技術、すなわち微粉炭やコークスベースの運転とほぼ同じになる。
【0051】
また、上記の3つの主要な脱炭素技術の内、高炉へ水素リッチガス(COG)を注入する技術があるが、本発明の銑鉄の製造方法は、この技術に対しても以下の点で優れている。
【0052】
高炉における水素リッチガス(COG)の最大注入速度には厳しい制限がある。その一方で、純水素のような高含有量の水素を高炉に注入することは、間接的な還元反応挙動(すなわち、従来のCO還元ガスベースの操作の場合の発熱反応と比較して、水素リッチ注入技術では吸熱反応が支配的である。)や高炉内部の融着帯のパターンや位置など、物理的にも化学的にも内部の高炉現象の変化により、依然として問題となっている。安全上の懸念(すなわち、どのようにして高炉に大量の水素を安全に注入するか)も大きな問題である。これらの運転上の制限は、反応器の設計を複雑にし、運転を予測不可能にし、認定を困難にする。他方、水素ガスは高炉に注入する前に少なくとも1000~1200℃に予熱する必要があり、そうでなければ、高炉のエネルギーバランスが問題となり、高炉に深刻なダメージを与える可能性がある。結果として、この目的のために、水素リッチガス(COG)のみを高炉に注入して銑鉄を製造することに成功したが、前述のように、多くの運転要因が高炉の性能に影響を与える。
【0053】
これに対して、本発明の場合は、CO系還元ガスを原料として、高炉中への充填原料(鉄鉱石原料)との還元反応を行う。その結果、反応挙動および高炉内部の融着帯のパターンと位置は、従来の高炉製鉄操業(コークスおよび石炭ベースの燃料を使用)と同じである可能性がある。つまり、本発明では、高炉技術へ直接DRI/HBIを充填する技術や、高炉技術へ水素リッチガス(COG)を注入する技術と比較すると、内部BFの動作や現象の変化は大きくない。
【0054】
また、上記の3つの主要な脱炭素技術の内、トップガスリサイクル(TGR)高炉技術は、溶銑製造用の還元ガスとしてCO2フリー高炉ガスを利用するものである。しかしながら、TGR-BF技術にはいくつかの欠点がある。まず、高炉(BF)に再注入する前に、高炉ガス(BFG)ストリームから分離された還元ガス(CO+H2)を周囲温度から少なくとも900℃以上(高炉の注入位置によって異なる)に再加熱する必要がある。また、循環ガス(CO2フリーBFG)にはN2ガスが多く含まれている場合があり、その結果、高炉内部にN2が大量に蓄積される。通常、噴射空気(Blast Air)の酸素含有量は、N2の蓄積を避けるために21%から最大90%以上(すなわち完全酸素状態)に増やす必要がある。しかし、高炉内では火炎温度が非常に高くなるため、完全酸素運転は困難である。もう一つの懸念は、高炉で使用される羽口と耐火物の材料であろう。このような高温の炎は、機械設備や耐熱材料に重大な損傷を与える可能性がある。
【0055】
第二に、分離されたCO2は、様々な化学物質の合成に再利用するために、地下に輸送して保管するか、化学工場に輸送する必要があるかもしれない。そのため、分離された高純度CO2は、製鉄業以外のどこかでさらに処理する必要がある。回収されたCO2をどのように効率的に処理するかは重要な関心事である。
第三に、BFGは一般的に燃焼され、鉄鋼製造プロセスのさらに下流で熱と電気を生成するために使用される。それにもかかわらず、BFGが常に使用され、溶銑の製造のために高炉に再循環される場合、下流の鉄鋼製造のためにBFGに代わる別の加熱および発電源を見つける必要がある。同様に、コークス炉ガス(COG)はBFGよりも発熱量が高い。また、もともとは下流の鉄鋼製造のための熱と電力を発生させるためにも使用されている。従って、仮にCOGを用いて高炉に注入した場合(高炉技術への水素リッチガス(COG)注入技術)、この場合でも下流の製鉄にはCOGに代わる別の加熱・発電源を探す必要がある。
【0056】
これに対して、本発明の製造方法の利点の1つは、ケミカルループサイクルでCO2のみが再利用されることである。このことは、BFGとCOGが下流の鉄鋼製造のための熱と電力を生成するためにまだ燃焼できることを意味する。更に、燃焼システムからCO2を回収すれば、回収したCO2をケミカルループサイクルで酸化剤反応器に循環させ、連続的にクリーンCO還元ガスを発生させることができる。
一方、酸化剤反応器から生成された部分酸化された還元鉄(例えば、FeO、Fe3O4)を空気反応器に供給し、酸化剤反応器または他のユニットの熱エネルギーを生成することができる。酸化剤反応器を経た後、完全に酸化された鉄は、物理的および化学的品質に応じて焼結工場または高炉で再利用することができる。これにより、製鋼プロセス自体のCO2ループを閉じることができる。そのため、回収したCO2を化学工場に輸送したり、地下に保管したりする必要がない。
他方、BFGからCO2を回収し、酸化剤反応器で直接再利用することも可能である。これは、製鉄プロセスにおけるエネルギーフロー配分とエネルギー配分に依存する。しかしながら、本発明者らの設計では、市場から追加の電力を購入することなく、製鉄プロセスのエネルギーフローを柔軟に配分することが容易になる。
【0057】
上記した本発明の銑鉄の製造方法の一態様についての模式図を
図4に示す。
図4で示す銑鉄の製造方法では、
図2で示した銑鉄の製造方法に加えて、以下の工程を追加している。
(i)コークスプラントからのコークスの高炉へ供給する工程
(ii)コークス炉ガスと高炉ガスを燃焼及び発電サイクルの供給する工程、及び、そこから生成する二酸化炭素を捕捉するシステム
(iii)(ii)で分離回収した二酸化炭素を酸化剤反応器に供給する工程
(iv)(ii)の燃焼及び発電サイクルで生成した熱と電気を、熱風炉及び下流の製鋼プロセスに供給する工程
【0058】
図4で示す銑鉄の製造方法では、高炉ガスを任意のCO
2捕捉システムを通して二酸化炭素を分離回収し、これを酸化剤反応器に供給してもよく、あるいは、この高炉ガス由来の二酸化炭素に加えて、あるいは、この高炉ガス由来の二酸化炭素を用いずに、上記(ii)のコークス炉ガスと高炉ガスを燃焼及び発電サイクルに供給し、そこで生成する二酸化炭素をCO
2捕捉システムで分離回収して、この分離回収した二酸化炭素を酸化剤反応器に供給することができる。
【実施例0059】
以下本発明を実施例により説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0060】
図5に示す概略図に基づいて、本発明の還元ガスのプロセスシミュレーションを行った。
【0061】
シミュレーションにおけるプロセスについて
高炉(BF)内で起こる複雑な化学反応をモデル化するために熱力学的アプローチを用いた。
図5に示すように、一酸化炭素富化な還元性ガスは酸化剤反応器から産出される。酸化剤反応器中では、直接還元鉄材料が製鉄産業自体(または、外部のCO
2源)から分離回収される濃縮COで酸化される。酸化剤反応器の運転温度は、要求される高炉の運転条件に応じて、800~1200℃である。酸化剤反応器からの生成物(部分酸化された還元鉄)は、空気反応器に供給され、部分酸化された還元鉄は、燃焼反応により、空気で完全に酸化される。また、空気反応器から放出される熱は、、プロセスのエネルギー効率を改善するために、酸化剤反応器に供給される。得られた高温で加圧された一酸化炭素富化な還元性ガスは、還元剤として羽口を通してBFに注入される。
BFでは、鉄系充填材料、コークス、フラックス(融剤)がBFの頂部から下方に移動し、一方、高温の一酸化炭素富化な還元性ガスは上方へ移動する。最初に、加熱ゾーン(HZ)として知られるBFの頂部に固体材料が供給され、HZにおいて、向流の固体と気体の接触がシミュレートされる。HZにおいて、固体材料は高温の還元性ガスにより予備加熱される。そして、BFの本体をモデリングするために、下降する固体物質と上昇する還元ガスは、一連の平衡反応器(G
1、・・・、G
n)を通り抜ける。その中で、各々の反応器中の複数の反応についての化学平衡を、Gibbsの自由エネルギーの最小化法に基づいて計算する。
BFの底で、熱風(hot blast)を羽口から送り込む。特に、熱風及び一酸化炭素富化な還元性ガスの条件は、合理的な理論的レースウェイ断熱火炎温度(RAFT)及びボッシュガスの体積流量を維持するために調整することができる。やがて、熱風炉ガスはBFの頂部から離れるのに対して、溶けた溶銑と溶融スラグはBFの底から流し出される。
【0062】
BFの現実的な運転の制約を反映するために、BFのマスバランス及びエネルギーバランスを解きながら、炉頂ガス温度、RAFT、溶湯の温度、及びスラグの塩基性度に関する様々なシミュレーションの制約が考慮されることに注意しなければならない。
【0063】
上記のプロセスを用いてシミュレーションを行った結果を以下に示す。
【0064】
【0065】
表1における先行技術(比較例1及び2)は、夫々、文献1(ISIJ International, Vol.45 (2005), No.10)及び文献2(ISIJ International, Vol.62 (2022), No.12)に記載されているデータ(文献1の表1及び文献2の表3を参照)から得た。
【0066】
高炉製鉄モデルを行うことにより、本発明の低炭素製鉄BFプロセスからのシミュレーションの結果は、従来の操作(運転)に比較して、高炉中で炭素の使用量をおよそ35%以上節約することが達成可能であることを示した。