(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175948
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】ウェーハの加工方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20241212BHJP
B23K 26/53 20140101ALI20241212BHJP
B23K 26/354 20140101ALI20241212BHJP
【FI】
H01L21/78 P
H01L21/78 B
H01L21/78 V
H01L21/78 X
B23K26/53
B23K26/354
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094076
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本郷 智之
【テーマコード(参考)】
4E168
5F063
【Fターム(参考)】
4E168AC01
4E168AD00
4E168AD18
4E168AE01
4E168CA06
4E168CB03
4E168CB07
4E168CB15
4E168CB22
4E168DA02
4E168DA03
4E168HA01
4E168JA12
4E168JA13
5F063AA06
5F063AA29
5F063AA35
5F063BA32
5F063BA33
5F063BA34
5F063BA43
5F063BA45
5F063BA47
5F063CB02
5F063CB07
5F063CB28
5F063CB29
5F063DD29
5F063DD68
5F063DD75
5F063DD83
5F063DD85
5F063DD89
5F063DE01
5F063EE07
5F063EE09
5F063EE22
(57)【要約】
【課題】改質層の形成によって生じるダメージを低減できるウェーハの加工方法を提供すること。
【解決手段】ウェーハの加工方法は、ウェーハの表面から分割予定ラインに沿って第1のレーザ光線を照射し、ウェーハの内部に改質層と、改質層から伸びるクラックと、を含む分割起点を形成する改質層形成ステップ102と、改質層形成ステップ102の前に、ウェーハの裏面に支持シートを固定する支持シート固定ステップ101と、支持シートを拡張して、分割起点に沿って分割されるチップの間隔を広げるチップ間隔拡張ステップ103と、チップ間隔拡張ステップ103の後に、チップの側面に第2のレーザ光線を照射して溶融させ、改質層形成ステップ102によって生じた改質層の少なくとも一部を修復する修復ステップ104と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の分割予定ラインが形成されたウェーハを該分割予定ラインに沿って分割して複数のチップを製造するウェーハの加工方法であって、
ウェーハの一方の面から分割予定ラインに沿って第1のレーザ光線を照射し、ウェーハの内部に改質層と、該改質層から伸びるクラックと、を含む分割起点を形成する改質層形成ステップと、
該改質層形成ステップの前または後に、ウェーハのいずれかの面に支持シートを固定する支持シート固定ステップと、
該支持シートを拡張して、該分割起点に沿って分割されるチップの間隔を広げるチップ間隔拡張ステップと、
該チップ間隔拡張ステップの後に、該チップの側面に第2のレーザ光線を照射して溶融させ、該改質層形成ステップによって生じたダメージの少なくとも一部を修復する修復ステップと、
を備えることを特徴とする、ウェーハの加工方法。
【請求項2】
該修復ステップは、少なくとも該改質層が形成された領域を含んで溶融させる事を特徴とする請求項1に記載のウェーハの加工方法。
【請求項3】
該修復ステップで使用される該第2のレーザ光線の波長は、500nm以上でかつ1100nm未満の範囲の波長であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のウェーハの加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハの加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウェーハの内部に形成した改質層を起点にウェーハを複数のチップに分割する加工方法がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された加工方法は、改質層により形成されたダメージがチップの側面に残ってしまうと、チップの強度が落ちると言う問題があった。
【0005】
本発明は、改質層の形成によって生じるダメージを低減できるウェーハの加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のウェーハの加工方法は、複数の分割予定ラインが形成されたウェーハを該分割予定ラインに沿って分割して複数のチップを製造するウェーハの加工方法であって、ウェーハの一方の面から分割予定ラインに沿って第1のレーザ光線を照射し、ウェーハの内部に改質層と、該改質層から伸びるクラックと、を含む分割起点を形成する改質層形成ステップと、該改質層形成ステップの前または後に、ウェーハのいずれかの面に支持シートを固定する支持シート固定ステップと、該支持シートを拡張して、該分割起点に沿って分割されるチップの間隔を広げるチップ間隔拡張ステップと、該チップ間隔拡張ステップの後に、該チップの側面に第2のレーザ光線を照射して溶融させ、該改質層形成ステップによって生じたダメージの少なくとも一部を修復する修復ステップと、を備えることを特徴とする。
【0007】
前記ウェーハの加工方法では、該修復ステップは、少なくとも該改質層が形成された領域を含んで溶融させても良い。
【0008】
前記ウェーハの加工方法では、該修復ステップで使用される該第2のレーザ光線の波長は、500nm以上でかつ1100nm未満の範囲の波長でも良い。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、改質層の形成によって生じるダメージを低減できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態1に係るウェーハの加工方法の加工対象のウェーハを模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態1に係るウェーハの加工方法の流れを示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、
図2に示されたウェーハの加工方法の支持シート固定ステップ後のウェーハを模式的に示す斜視図である。
【
図4】
図4は、
図2に示されたウェーハの加工方法の改質層形成ステップを実施するレーザ加工装置の構成例を模式的に示す斜視図である。
【
図5】
図5は、
図2に示されたウェーハの加工方法の改質層形成ステップを模式的に示す断面図である。
【
図6】
図6は、
図2に示されたウェーハの加工方法のチップ間隔拡張ステップを模式的に示す断面図である。
【
図7】
図7は、
図2に示されたウェーハの加工方法の修復ステップを模式的に示す断面図である。
【
図8】
図8は、
図2に示されたウェーハの加工方法の修復ステップ後のウェーハの要部を模式的に示す断面図である。
【
図9】
図9は、実施形態1の変形例に係るウェーハの加工方法の修復ステップで用いられる第2のレーザ加工装置を一部断面で模式的に示す側面図である。
【
図10】
図10は、
図9に示された第2のレーザ加工装置の要部を模式的に示す平面図である。
【
図11】
図11は、実施形態1の変形例に係るウェーハの加工方法の修復ステップを模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0012】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1に係るウェーハの加工方法を図面に基づいて説明する。
図1は、実施形態1に係るウェーハの加工方法の加工対象のウェーハを模式的に示す斜視図である。
図2は、実施形態1に係るウェーハの加工方法の流れを示すフローチャートである。
【0013】
(ウェーハ)
実施形態に係るウェーハの加工方法は、
図1に示されたウェーハ1を加工する方法である。実施形態に係るウェーハの加工方法の加工対象のウェーハ1は、シリコン(Si)、ガリウムヒ素(GaAs)または炭化ケイ素(SiC)、又はサファイヤ等を基板2とする円板状の半導体ウェーハ、光デバイスウェーハ等である。
【0014】
ウェーハ1は、表面3の複数の分割予定ライン4によって区画された領域にそれぞれデバイス5が形成されている。デバイス5は、例えば、IC(Integrated Circuit)又はLSI(Large Scale Integration)等の集積回路、CCD(Charge Coupled Device)、又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等のイメージセンサ、LED(Light-Emitting Diode)等の光学素子、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)又は半導体メモリ(半導体記憶装置)である。
【0015】
ウェーハ1は、分割予定ライン4に沿って個々のチップ10に分割される。なお、チップ10は、基板2の一部と、デバイス5とを含む。
【0016】
(ウェーハの加工方法)
実施形態1に係るウェーハの加工方法は、複数の分割予定ライン4が形成されたウェーハ1を、分割予定ライン4に沿って分割して、複数のチップ10を製造する方法である。実施形態1に係るウェーハの加工方法は、
図2に示すように、支持シート固定ステップ101と、改質層形成ステップ102と、チップ間隔拡張ステップ103と、修復ステップ104とを備える。
【0017】
(支持シート固定ステップ)
図3は、
図2に示されたウェーハの加工方法の支持シート固定ステップ後のウェーハを模式的に示す斜視図である。支持シート固定ステップ101は、改質層形成ステップ102の前または後に、ウェーハ1の表面3と表面3裏側の裏面6とのうちのいずれかの面に支持シート11を固定するステップである。
【0018】
実施形態1において、支持シート固定ステップ101では、
図3に示すように、ウェーハ1の外径よりも大径な円板状でかつ外縁部に環状フレーム12が貼着された支持シート11の中央部をウェーハ1の裏面6に貼着して、ウェーハ1を環状フレーム12の開口内に支持する。なお、支持シート11は、非粘着性と可撓性を有する樹脂により構成された基材と、基材に積層され粘着性と可撓性を有する樹脂により構成された糊層とを備え、糊層が環状フレーム12及びウェーハ1に貼着する粘着テープでも良く、非粘着性の熱可塑性樹脂により構成された基材のみで構成され、環状フレーム12及びウェーハ1に熱圧着される所謂糊無テープでも良い。
【0019】
(改質層形成ステップ)
図4は、
図2に示されたウェーハの加工方法の改質層形成ステップを実施するレーザ加工装置の構成例を模式的に示す斜視図である。
図5は、
図2に示されたウェーハの加工方法の改質層形成ステップを模式的に示す断面図である。改質層形成ステップ102は、ウェーハ1の一方の面である表面3から分割予定ライン4に沿って第1のレーザ光線41を照射し、ウェーハ1の内部に改質層7(
図5に示す)と、改質層7から伸びるクラック8(
図5に示す)と、を含む分割起点9(
図5に示す)を形成するステップである。
【0020】
なお、改質層7とは、密度、屈折率、機械的強度やその他の物理的特性が周囲のそれとは異なる状態になった領域のことを意味し、溶融処理領域、クラック領域、絶縁破壊領域、屈折率変化領域、及びこれらの領域が混在した領域等を例示できる。分割起点9は、基板2の他の箇所よりも機械的な強度が低い。
【0021】
実施形態1に係るウェーハの加工方法の改質層形成ステップ102は、
図4に示されたレーザ加工装置20により実施される。
図4に示されたレーザ加工装置20は、ウェーハ1を構成する基板2に対して透過性を有する波長のパルス状の第1のレーザ光線41(
図5に示す)の集光点411を基板2の内部に設定して、ウェーハ1の表面3から第1のレーザ光線41を分割予定ライン4に沿って照射して、ウェーハ1にレーザー加工を施す加工装置である。レーザ加工装置20は、
図4に示すように、ウェーハ1を保持する保持テーブル30と、レーザ光線照射ユニット40と、移動ユニット50と、撮像ユニット43と、制御ユニット45とを有する。
【0022】
保持テーブル30は、ウェーハ1を水平方向と平行な保持面31で保持する。保持面31は、ポーラスセラミック等から形成された円盤形状であり、図示しない吸引経路を介して図示しない真空吸引源と接続されている。保持テーブル30は、真空吸引源により吸引されることで、保持面31上に載置されたウェーハ1を吸引保持する。保持テーブル30の周囲には、ウェーハ1を開口内に支持する環状フレーム12を挟持するクランプ部32が複数配置されている。
【0023】
また、保持テーブル30は、移動ユニット50の回転移動ユニット53により保持面31に対して直交しかつ鉛直方向と平行なZ軸方向と平行な軸心回りに回転される。保持テーブル30は、回転移動ユニット53とともに、移動ユニット50のX軸移動ユニット51により水平方向と平行なX軸方向(加工進行方向に相当)に移動されかつY軸移動ユニット52により水平方向と平行でかつX軸方向と直交するY軸方向に移動される。保持テーブル30は、移動ユニット50によりレーザ光線照射ユニット40の下方の加工領域と、レーザ光線照射ユニット40の下方から離れてウェーハ1が搬入、搬出される搬入出領域とに亘って移動される。
【0024】
移動ユニット50は、保持テーブル30とレーザ光線照射ユニット40が照射する第1のレーザ光線41の集光点411とをX軸方向、Y軸方向、Z軸方向及びZ軸方向と平行な軸心回りに相対的に移動させるものである。X軸方向及びY軸方向は、互いに直交し、かつ保持面31(即ち水平方向)と平行な方向である。Z軸方向は、X軸方向とY軸方向との双方と直交する方向である。
【0025】
移動ユニット50は、保持テーブル30をX軸方向に移動させる加工送りユニットであるX軸移動ユニット51と、保持テーブル30をY軸方向に移動させる割り出し送りユニットであるY軸移動ユニット52と、保持テーブル30をZ軸方向と平行な軸心回りに回転する回転移動ユニット53と、レーザ光線照射ユニット40の第1のレーザ光線41の集光点411をZ軸方向に移動させるZ軸移動ユニット54とを備えている。
【0026】
Y軸移動ユニット52は、保持テーブル30と、レーザ光線照射ユニット40の第1のレーザ光線41の集光点411とをY軸方向に相対的に移動する割り出し送りユニットである。実施形態1では、Y軸移動ユニット52は、レーザ加工装置20の装置本体21上に設置されている。Y軸移動ユニット52は、X軸移動ユニット51を支持した移動プレート24をY軸方向に移動自在に支持している。
【0027】
X軸移動ユニット51は、保持テーブル30と、レーザ光線照射ユニット40の第1のレーザ光線41の集光点211とをX軸方向に相対的に移動する加工送りユニットである。X軸移動ユニット51は、移動プレート24上に設置されている。X軸移動ユニット51は、保持テーブル30をZ軸方向と平行な軸心回りに回転する回転移動ユニット53を支持した第2移動プレート25をX軸方向に移動自在に支持している。第2移動プレート25は、回転移動ユニット53、保持テーブル30を支持している。回転移動ユニット53は、保持テーブル30を支持している。
【0028】
Z軸移動ユニット54は、保持テーブル30と、レーザ光線照射ユニット40の第1のレーザ光線41の集光点211とをZ軸方向に相対的に移動する送りユニットである。Z軸移動ユニット54は、装置本体21から立設した立設壁22に設置されている。Z軸移動ユニット54は、レーザ光線照射ユニット40の後述する集光レンズ等を含む一部を先端に配置した支持柱23をZ軸方向に移動自在に支持している。
【0029】
X軸移動ユニット51は、軸心回りに回転自在に設けられかつ軸心回りに回転されると第2移動プレート25をX軸方向に移動させる周知のボールねじ、ボールねじを軸心回りに回転させる周知のパルスモータ、第2移動プレート25をX軸方向に移動自在に支持する周知のガイドレールを備える。Y軸移動ユニット52は、軸心回りに回転自在に設けられかつ軸心回りに回転されると移動プレート24をY軸方向に移動させる周知のボールねじ、ボールねじを軸心回りに回転させる周知のパルスモータ、移動プレート24をY軸方向に移動自在に支持する周知のガイドレールを備える。Z軸移動ユニット54は、軸心回りに回転自在に設けられかつ軸心回りに回転されると支持柱23をZ軸方向に移動させる周知のボールねじ、ボールねじを軸心回りに回転させる周知のパルスモータ、支持柱23をZ軸方向に移動自在に支持する周知のガイドレールを備える。回転移動ユニット53は、保持テーブル30を軸心回りに回転するモータ等を備える。
【0030】
また、レーザ加工装置20は、保持テーブル30のX軸方向の位置を検出するための図示しないX軸方向位置検出ユニットと、保持テーブル30のY軸方向の位置を検出するための図示しないY軸方向位置検出ユニットと、レーザ光線照射ユニット40の集光レンズのZ軸方向の位置を検出するための図示しないZ軸方向位置検出ユニットを備える。各位置検出ユニットは、検出結果を制御ユニット45に出力する。なお、実施形態1では、レーザ加工装置20の保持テーブル30のX軸方向の位置、Y軸方向及び、レーザ光線照射ユニット40の集光レンズのZ軸方向の位置は、予め定められた図示しない基準位置からのX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の距離等により定められる。
【0031】
レーザ光線照射ユニット40は、保持テーブル30の保持面31に保持されたウェーハ1に対してパルス状の第1のレーザ光線41を集光レンズで集光して照射するレーザ光線照射手段である。実施形態1では、レーザ光線照射ユニット40の一部は、
図4に示すように、装置本体21から立設した立設壁22に設置されたZ軸移動ユニット54により支持された支持柱23の先端に配置されている。
【0032】
レーザ光線照射ユニット40は、保持テーブル30に保持されたウェーハ1に対して、ウェーハ1の基板2が透過性を有する波長の第1のレーザ光線41を照射して、ウェーハ1にレーザ加工を施す。実施形態1では、第1のレーザ光線41の波長は、赤外線領域の波長(例えば、1064nm)である。
【0033】
撮像ユニット43は、保持テーブル30に保持されたウェーハ1を撮像するものである。撮像ユニット43は、対物レンズがZ軸方向に対向するものを撮像するCCD(Charge Coupled Device)撮像素子又はCMOS(Complementary MOS)撮像素子等の撮像素子を備えている。実施形態1では、撮像ユニット43は、
図1に示すように、支持柱23の先端に配置されて、対物レンズがレーザ光線照射ユニット40の集光レンズとX軸方向に沿って並ぶ位置に配置されている。
【0034】
撮像ユニット43は、撮像素子が撮像した画像を取得し、取得した画像を制御ユニット45に出力する。また、撮像ユニット43は、保持テーブル30の保持面31に保持されたウェーハ1を撮像して、ウェーハ1とレーザ光線照射ユニット40との位置合わせを行うアライメントを遂行するための画像を取得する。
【0035】
制御ユニット45は、レーザ加工装置20の上述した各構成要素をそれぞれ制御して、ウェーハ1に対する加工動作をレーザ加工装置20に実施させるものである。なお、制御ユニット45は、CPU(central processing unit)のようなマイクロプロセッサを有する演算処理装置と、ROM(read only memory)又はRAM(random access memory)のようなメモリを有する記憶装置と、入出力インターフェース装置とを有するコンピュータである。制御ユニット45の演算処理装置は、記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムに従って演算処理を実施して、レーザ加工装置20を制御するための制御信号を、入出力インターフェース装置を介してレーザ加工装置20の上述した構成要素に出力して、制御ユニット45の機能を実現する。
【0036】
また、レーザ加工装置20は、加工動作の状態や画像などを表示する液晶表示装置などにより構成される表示手段である表示ユニットと、オペレータが加工条件などを入力する際に用いる入力手段である入力ユニットを備えている。表示ユニット及び入力ユニットは、制御ユニットに接続している。実施形態1では、入力ユニットは、表示ユニットに設けられたタッチパネルにより構成される。
【0037】
実施形態1において、改質層形成ステップ102では、レーザ加工装置20の制御ユニット45がオペレータにより入力された加工条件等を受け付けて登録し、ウェーハ1が搬入出領域に位置付けられた保持テーブル30の保持面31に載置される。実施形態1において、改質層形成ステップ102では、レーザ加工装置20は、オペレータからの加工動作の開始指示を制御ユニット45が受け付けると、保持テーブル30の保持面31にウェーハ1を支持シート11を介して吸引保持するとともに、クランプ部32で環状フレーム12を挟持する。
【0038】
実施形態1において、改質層形成ステップ102では、レーザ加工装置20の制御ユニット45が移動ユニット50を制御して保持テーブル30を加工領域に移動し、撮像ユニット43で保持テーブル30に保持されたウェーハ1を撮像して、アライメントを遂行する。実施形態1において、改質層形成ステップでは、レーザ加工装置20は、加工条件に基づいて、第1のレーザ光線41の集光点411を基板2の内部に設定し、
図5に示すように、移動ユニット50により保持テーブル30とレーザ光線照射ユニット40とを分割予定ライン4に沿って相対的に移動させながらウェーハ1の分割予定ライン4に基板2の表面3側からパルス状の第1のレーザ光線41を照射して、ウェーハ1の基板2の内部に改質層7と改質層7から延びるクラック8とを形成して、ウェーハ1の内部に全ての分割予定ライン4に沿って分割起点9を形成する。
【0039】
(チップ間隔拡張ステップ)
図6は、
図2に示されたウェーハの加工方法のチップ間隔拡張ステップを模式的に示す断面図である。チップ間隔拡張ステップ103は、支持シート11を拡張して、分割起点9に沿って分割されるチップ10の間隔を広げるステップである。
【0040】
実施形態1において、チップ間隔拡張ステップ103では、第2レーザ加工装置60がフレーム挟持部61にウェーハ1を内側に支持した環状フレーム12と支持シート11の外縁部とを挟んで保持する。実施形態1において、チップ間隔拡張ステップ103では、第2レーザ加工装置60は、環状フレーム12とウェーハ1とをウェーハ1の表面3に対して交差(実施形態1では、直交)する方向に沿って相対的に移動させて、支持シート11のウェーハ1の外縁と環状フレーム12の内縁との間を拡張ドラムの上端に支持されたコロ部材が下方から上方に向けて押圧して、支持シート11を面方向に拡張する。
【0041】
すると、支持シート11の拡張の結果、支持シート11に放射状に引張力が作用する。ウェーハ1の裏面6に貼着された支持シート11に放射状に引張力が作用すると、ウェーハ1は、分割予定ライン4に沿って分割起点9が形成されているので、
図6に示すように、ウェーハ1が分割起点9を起点に個々のチップ10に分割されるとともに、チップ10間の間隔が広げられる。
【0042】
(修復ステップ)
図7は、
図2に示されたウェーハの加工方法の修復ステップを模式的に示す断面図である。
図8は、
図2に示されたウェーハの加工方法の修復ステップ後のウェーハの要部を模式的に示す断面図である。修復ステップ104は、チップ間隔拡張ステップ103の後に、チップ10の側面に第2のレーザ光線63を照射して溶融させ、改質層形成ステップ102によって生じたダメージである改質層7の少なくとも一部を修復するステップである。
【0043】
実施形態1において、修復ステップ104では、第2レーザ加工装置60が、
図7に示すように、集光点631を各チップ10の側面13に設定して、各チップ10の側面13に露出した改質層7にレーザ光線照射ユニット62から波長が300nm以上でかつ1100nm未満の第2のレーザ光線63を照射する。このように、実施形態1では、修復ステップ104で使用される該第2のレーザ光線63の波長は、500nm以上でかつ1100nm未満の範囲の波長である。
【0044】
すると、第2のレーザ光線63が照射された改質層7は、一旦溶融して、改質層7内のクラックが結合されるとともに欠けが修復される。また、第2のレーザ光線63が照射された改質層7は、一旦溶融した後、再結晶化して、
図8に示すように、チップ10の側面13に再結晶化領域14が形成されて側面13が平坦に形成される。こうして、実施形態1において修復ステップ104は、少なくとも改質層7が形成された領域を含んだ領域を一旦溶融させて、再結晶化させて再結晶化領域14を形成することで、改質層7の少なくとも一部を修復する。
【0045】
実施形態1において、修復ステップ104では、第2レーザ加工装置60が全てのチップ10の側面13に露出した改質層7全体に第2のレーザ光線63を照射して、溶融、再結晶化させる。このように、修復ステップ104においては、ウェーハ1に形成されたデバイス5に悪影響を生じさせないように、改質層7に局所的に第2のレーザ光線63を照射して、改質層7を溶融、再結晶化して修復する。なお、本発明では、修復ステップ104においては、ウェーハ1に形成されたデバイス5に悪影響を生じさせないように、改質層7に局所的にエネルギーを供給して、改質層7を溶融、再結晶化して修復できるならば、第2のレーザ光線63の代わりに例えばプラズマやイオンビームなどの他の手段を用いても良い。
【0046】
個々に分割され、改質層7が修復されたチップ10は、支持シート11からピックアップされる。
【0047】
以上、説明した実施形態1に係るウェーハの加工方法は、修復ステップ104で、チップ10の側面13に第2のレーザ光線63を照射する。これにより、実施形態1に係るウェーハの加工方法は、改質層形成ステップ102によってウェーハ1に形成された改質層7が溶融し再結晶化するので、改質層7に含まれるダメージの少なくとも一部を除去し、または修復する事ができる。
【0048】
その結果、実施形態1に係るウェーハの加工方法は、改質層7の形成によって生じるダメージを低減でき、ウェーハ1が分割されて形成されるチップ10の抗折強度を上げることができるという効果を奏する。
【0049】
また、実施形態1に係るウェーハの加工方法は、修復ステップ104で、チップ10の側面13に集光点631を設定して第2のレーザ光線63を照射するので、個々のチップ10に局所的にエネルギーを供給することができ、デバイス5への悪影響を防ぐ事ができる。
【0050】
また、実施形態1に係るウェーハの加工方法は、修復ステップ104で、チップ10の側面13に集光点631を設定して第2のレーザ光線63を照射するので、修復ステップ104の加工時間を短くして生産性を向上させることができる。
【0051】
なお、アブレーション後に、レーザ光線を照射して加工溝に付着した加工屑をこそぎとるレーザクリーニングといわれる手法が用いられている。レーザクリーニングは、紫外線の波長のレーザ光線を加工溝の表面に付着した加工屑に吸収させてアブレーションさせ除去するので効率が良い。
【0052】
しかしながら、実施形態1に係るウェーハの加工方法は、チップ10の側面13に第2のレーザ光線63を照射して溶融させて平坦化させるだけで無く、内部に入ったクラックも結合し改質層7を修復する事ができる。よって、実施形態1に係るウェーハの加工方法は、第2のレーザ光線63が吸収されすぎてもよくなく、レーザクリーニングで照射される波長よりも長い波長の532nm以上でかつ1100nm未満の第2のレーザ光線63で、0.5μm以上でかつ1.5μm以下、さらには4μm以下の深さの改質層7を溶融させる事が好ましい。
【0053】
〔変形例〕
実施形態1の変形例に係るウェーハの加工方法を図面に基づいて説明する。
図9は、実施形態1の変形例に係るウェーハの加工方法の修復ステップで用いられる第2のレーザ加工装置を一部断面で模式的に示す側面図である。
図10は、
図9に示された第2のレーザ加工装置の要部を模式的に示す平面図である。
図11は、実施形態1の変形例に係るウェーハの加工方法の修復ステップを模式的に示す断面図である。なお、
図9、
図10及び
図11は、実施形態1と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0054】
変形例では、第2レーザ加工装置60は、
図9及び
図10に示すように、レーザ光線照射ユニット62と環状フレーム12等を保持するフレーム挟持部61に加え、フレーム挟持部61をウェーハ1毎ウェーハ1の表面3に対して直交する軸心回りに回転する回転ユニット66と、フレーム挟持部61に保持された環状フレーム12に貼着した支持シート11を押圧して支持シート11を拡張する押圧バー64と、押圧バー64を水平方向に移動させる移動ユニット65とを備える。押圧バー64は、水平方向に沿って直線状に延在し、フレーム挟持部61により保持された環状フレーム12に貼着した支持シート11よりも上端が上方に位置している。
【0055】
変形例において、第2レーザ加工装置60は、
図9及び
図10に示すように、押圧バー64を各分割予定ライン4の下方に位置付けて、各分割予定ライン4の直下の支持シート11を拡張して、チップ間隔拡張ステップ103を実施して、チップ10の側面13を露出させる。変形例において、第2レーザ加工装置60は、
図11に示すように、チップ10の側面13に露出した改質層7に集光点631を設定してレーザ光線照射ユニット62から第2のレーザ光線63を照射して、修復ステップ104を実施する。このように、変形例では、チップ間隔拡張ステップ103と修復ステップ104とを各分割予定ライン4毎に実施する。
【0056】
変形例に係るウェーハの加工方法は、修復ステップ104で、チップ10の側面13に第2のレーザ光線63を照射して、改質層7を溶融し再結晶化させるので、改質層7に含まれるダメージの少なくとも一部を除去し、または修復する事ができ、実施形態1と同様に、改質層7の形成によって生じるダメージを低減でき、ウェーハ1が分割されて形成されるチップ10の抗折強度を上げることができるという効果を奏する。
【0057】
次に、本発明の発明者は、第2のレーザ光線63を照射することの効果を確認した。確認では、各波長の第2のレーザ光線63を改質層7に照射した際の修復結果を目視で確認して管能評価で確認した。結果を以下の表1に示す。
【0058】
【0059】
表1の比較例1は、改質層7に波長が266nmの第2のレーザ光線63を照射した。比較例2は、改質層7に波長が355nmの第2のレーザ光線63を照射した。比較例3は、改質層7に波長が1100nmの第2のレーザ光線63を照射した。
【0060】
表1の本発明品1は、改質層7に波長が514nmの第2のレーザ光線63を照射した。本発明品2は、改質層7に波長が532nmの第2のレーザ光線63を照射した。本発明品3は、改質層7に波長が800nmの第2のレーザ光線63を照射した。本発明品4は、改質層7に波長が1000nmの第2のレーザ光線63を照射した。本発明品5は、改質層7に波長が1064nmの第2のレーザ光線63を照射した。
【0061】
表1によれば、比較例1、比較例2及び比較例3は、修復結果が不良であった。特に、比較例2は、第2のレーザ光線63が、ウェーハ1の表面で吸収されやすく、溶融する深さが浅く、クラックを含む改質層7を修復する深さが足りなかった。また、比較例3は、第2のレーザ光線63が、ウェーハ1を透過してしまい、溶融せずに内部加工となり、内部加工によって膨張した部分の基点に割れた。
【0062】
このような比較例1、比較例2及び比較例3に対して、本発明品1、本発明品2、本発明品3、本発明品4及び本発明品5は、修復結果が良好であった。
【0063】
よって、表1によれば、修復ステップ104において、波長が500nm以上でかつ1100nm未満の第2のレーザ光線63を照射することで、改質層7を修復できることが明らかとなった。
【0064】
なお、本発明は、上記実施形態等に等限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。例えば、本発明では、支持シート固定ステップ101は、ウェーハ1の表面3に支持シート11を貼着して固定しても良く、改質層形成ステップ102の後に実施しても良い。
【0065】
また、前述した実施形態では、改質層形成ステップ102と修復ステップ104とで照射するレーザ光線41,63の波長が異なっているので、改質層形成ステップ102と修復ステップ104とで別のレーザ加工装置20,60を用いている。しかしながら、本発明では、改質層形成ステップ102と修復ステップ104とで同じ波長のレーザ光線を照射しても良い。また、本発明では、改質層形成ステップ102と修復ステップ104とで照射するレーザ光線41,63の波長が異なっていても、第1のレーザ光線41を照射するレーザ光線照射ユニット40と、第2のレーザ光線63を照射するレーザ光線照射ユニット62とを備えたレーザ加工装置を用いても良い。
【0066】
また、前述した実施形態では、改質層形成ステップ102後に、ウェーハ1がチップ10毎に分割されていなかったが、本発明では、改質層形成ステップ102後に、ウェーハ1がチップ10毎に分割されていても良い。
【0067】
また、本発明では、ウェーハ1の裏面6から分割予定ライン4に沿って第1のレーザ光線41を照射しても良く、ウェーハ1の表面3に支持シート11を固定しても良い。
【符号の説明】
【0068】
1 ウェーハ
3 表面(一方の面)
4 分割予定ライン
6 裏面
7 改質層
8 クラック
9 分割起点
10 チップ
11 支持シート
13 側面
41 第1のレーザ光線
63 第2のレーザ光線
101 支持シート固定ステップ
102 改質層形成ステップ
103 チップ間隔拡張ステップ
104 修復ステップ