(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176026
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】アライメント装置、アライメント方法、成膜装置及び製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/68 20060101AFI20241212BHJP
C23C 14/24 20060101ALI20241212BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
H01L21/68 F
C23C14/24
H01L21/68 R
H01L21/68 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094218
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】591065413
【氏名又は名称】キヤノントッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】市原 正浩
(72)【発明者】
【氏名】長岡 健
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 高志
【テーマコード(参考)】
4K029
5F131
【Fターム(参考)】
4K029AA09
4K029AA24
4K029BA62
4K029BB03
4K029BD01
4K029CA01
4K029HA01
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5F131KB55
(57)【要約】
【課題】基板及びマスクのそれぞれに設けられたマークを検出するのに有利な技術を提供する。
【解決手段】基板と、前記基板の成膜面にパターンを成膜するためのマスクとのアライメントに用いられるアライメント装置であって、前記基板と前記マスクとが重ねられた状態において、前記マスクとは反対側に配置され、前記基板の前記成膜面とは反対側の裏面に設けられた第1マークと前記マスクに設けられた第2マークとを検出するカメラを有し、前記マスクは、前記パターンを成膜するための開口を含むパターン部と、前記基板が重ねられる側に前記パターン部の前記成膜面に対向する対向面の外縁部から突出した突出部と、を含み、前記カメラは、前記突出部の上面に設けられた前記第2マークを検出する、ことを特徴とするアライメント装置を提供する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板の成膜面にパターンを成膜するためのマスクとのアライメントに用いられるアライメント装置であって、
前記基板と前記マスクとが重ねられた状態において、前記マスクとは反対側に配置され、前記基板の前記成膜面とは反対側の裏面に設けられた第1マークと前記マスクに設けられた第2マークとを検出するカメラを有し、
前記マスクは、前記パターンを成膜するための開口を含むパターン部と、前記基板が重ねられる側に前記パターン部の前記成膜面に対向する対向面の外縁部から突出した突出部と、を含み、
前記カメラは、前記突出部の上面に設けられた前記第2マークを検出する、
ことを特徴とするアライメント装置。
【請求項2】
前記突出部は、前記基板と前記マスクとが重ねられた状態において、前記基板の側面に沿って突出するように、前記外縁部に設けられている、ことを特徴とする請求項1に記載のアライメント装置。
【請求項3】
前記第1マークは、前記基板と前記マスクとが重ねられた状態において、前記カメラの視野の範囲に収まるように、前記裏面に設けられている、ことを特徴とする請求項1に記載のアライメント装置。
【請求項4】
前記第1マーク及び前記第2マークのそれぞれは、前記基板と前記マスクとが重ねられた状態において、前記カメラの被写界深度の範囲に収まるように、前記裏面及び前記外縁部に設けられている、ことを特徴とする請求項3に記載のアライメント装置。
【請求項5】
前記基板と前記マスクとが重ねられ、且つ、前記第1マークが前記被写界深度の範囲に収まっている状態において、前記第2マークが前記被写界深度の範囲に収まるように、前記突出部の突出量が設定されている、ことを特徴とする請求項4に記載のアライメント装置。
【請求項6】
前記突出部の突出量は、前記基板の厚さと、前記基板と前記マスクとが重ねられた状態における前記基板と前記マスクとの間のギャップとの和の±5%となるように設定されている、ことを特徴とする請求項4に記載のアライメント装置。
【請求項7】
前記基板と前記マスクとが重ねられた状態において、前記基板の前記裏面の高さ方向の位置と、前記突出部の前記上面の高さ方向の位置とが一致するように、前記突出部の突出量が設定されている、ことを特徴とする請求項4に記載のアライメント装置。
【請求項8】
前記裏面を吸着して前記基板を保持する第1静電チャックを更に有し、
前記第1静電チャックは、前記基板を保持した状態において、前記第1マークに対応する部分に前記第1マークを露出させるための構造を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のアライメント装置。
【請求項9】
前記構造は、貫通孔又は切り欠きを含む、ことを特徴とする請求項8に記載のアライメント装置。
【請求項10】
前記上面を吸着して前記マスクを保持する第2静電チャックを更に有し、
前記第2静電チャックは、前記マスクを保持した状態において、前記第2マークに対応する部分に前記第2マークを露出させるための構造を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のアライメント装置。
【請求項11】
前記構造は、貫通孔又は切り欠きを含む、ことを特徴とする請求項10に記載のアライメント装置。
【請求項12】
前記裏面を吸着して前記基板を保持する第1静電チャックと、
前記上面を吸着して前記マスクを保持する第2静電チャックと、
を更に有し、
前記第1静電チャックは、前記第1マークが露出するように前記基板を保持し、
前記第2静電チャックは、前記第2マークが露出するように前記マスクを保持する、
ことを特徴とする請求項1に記載のアライメント装置。
【請求項13】
前記カメラは、可視光を用いて、前記第1マークと前記第2マークとを検出する、ことを特徴とする請求項1に記載のアライメント装置。
【請求項14】
基板と、前記基板の成膜面にパターンを成膜するためのマスクとをアライメントするアライメント方法であって、
請求項1に記載のアライメント装置を用いて、前記基板に設けられた第1マークと前記マスクに設けられた第2マークとを検出する工程と、
前記第1マーク及び前記第2マークを検出した結果に基づいて、前記基板と前記マスクとをアライメントする工程と、
を有する、ことを特徴とするアライメント方法。
【請求項15】
マスクを介して基板に成膜する成膜装置であって、
前記基板と前記マスクとをアライメントする請求項1乃至13のうちいずれか1項に記載のアライメント装置、
を有する、ことを特徴とする成膜装置。
【請求項16】
請求項15に記載の成膜装置を用いて、電子デバイスを製造することを特徴とする製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アライメント装置、アライメント方法、成膜装置及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL表示装置(有機ELディスプレイ)は、スマートフォン、テレビ、自動車用ディスプレイに加えて、VR HMD(Virtual Reality Head Mount Display)などにも適用されてきている。有機EL表示装置を製造する工程においては、基板上に有機発光素子(有機EL素子:OLED)を形成する際に、一般的に、成膜装置が用いられている。
【0003】
成膜装置は、蒸着源から放出された蒸着物質(成膜材料)を、画素パターンに対応するパターンが形成されたマスクを介して、基板に付着させて有機物膜や金属膜などの膜を形成(成膜)する。この際、基板とマスクとを高精度に位置合わせ(アライメント)することが必要となる。
【0004】
基板とマスクとのアライメントに関する技術については、従来から提案されている(特許文献1参照)。特許文献1には、基板及びマスクのそれぞれに設けられたマークの相対位置(位置ずれ)を、基板を基準としてマスクとは反対側に設けられたカメラで計測し、かかる計測結果に基づいて、基板及びマスクの少なくとも一方の位置を調整する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2017/222009号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
基板とマスクとのアライメントに用いられるカメラは、一般的に、可視光などの計測光でマークを照明し、マークで反射された計測光(反射光)を検出(観察)することで、基板やマスクに設けられたマークの位置を光学的に計測する。従って、カメラで用いられる計測光に対して、基板やマスクの透過率が低い場合には、カメラで検出される計測光(マークからの反射光)の光量が低下し、基板やマスクに設けられたマークの位置の計測精度が低下してしまう。また、計測光に対する基板やマスクの透過率によっては、基板やマスクに設けられたマークの位置を計測すること自体が困難となる。
【0007】
本発明は、このような従来技術の課題に鑑みてなされ、基板及びマスクのそれぞれに設けられたマークを検出するのに有利な技術を提供することを例示的目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面としてのアライメント装置は、基板と、前記基板の成膜面にパターンを成膜するためのマスクとのアライメントに用いられるアライメント装置であって、前記基板と前記マスクとが重ねられた状態において、前記マスクとは反対側に配置され、前記基板の前記成膜面とは反対側の裏面に設けられた第1マークと前記マスクに設けられた第2マークとを検出するカメラを有し、前記マスクは、前記パターンを成膜するための開口を含むパターン部と、前記基板が重ねられる側に前記パターン部の前記成膜面に対向する対向面の外縁部から突出した突出部と、を含み、前記カメラは、前記突出部の上面に設けられた前記第2マークを検出する、ことを特徴とする。
【0009】
本発明の更なる目的又はその他の側面は、以下、添付図面を参照して説明される実施形態によって明らかにされるであろう。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、例えば、基板及びマスクのそれぞれに設けられたマークを検出するのに有利な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一側面としての成膜装置を適用可能な製造ラインの構成を模式的に示す図である。
【
図2】本発明の一側面としての成膜装置の構成を概略的に示す図である。
【
図3】基板、マスク、基板保持部及びマスク保持部の近傍を拡大して示す図である。
【
図4】基板、マスク、基板保持部及びマスク保持部の近傍を拡大して示す図である。
【
図6】電子デバイスとしての有機EL表示装置を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0013】
図1は、本発明の一側面としての成膜装置を適用可能な製造ライン100の構成(レイアウト)を模式的に示す図である。製造ライン100は、搬入される基板に対して成膜処理を行い、成膜処理が行われた基板を搬出するシステムを含み、例えば、電子デバイスの製造ラインとして構成される。なお、以下の各図において、矢印Zは、上下方向(鉛直(重力)方向)を示し、矢印X及び矢印Yは、互いに直交する水平方向を示す。
【0014】
製造ライン100(成膜装置)は、特に、OLEDなどの有機発光素子、有機薄膜太陽電池などの有機光電変換素子を製造するラインとして好適である。電子デバイスとしては、例えば、発光素子、光電変換素子、タッチパネルなどが挙げられる。本実施形態において、電子デバイスは、発光素子を備えた表示装置(例えば、有機EL表示装置)や照明装置(例えば、有機EL照明装置)、光電変換素子を備えたセンサ(例えば、有機COMSイメージセンサ)などを含む。
【0015】
製造ライン100は、本実施形態では、スマートフォン用の有機EL表示装置の表示パネル、或いは、VR HMD用の有機EL表示装置の表示パネルを製造するラインとして具現化される。スマートフォン用の表示パネルを製造する場合、4.5世代の基板(約700mm×約900mm)や6世代のフルサイズの基板(約1500mm×約1850mm)又はハーフカットサイズの基板(約1500mm×約925mm)が用いられる。このような基板に、有機EL素子を形成するための成膜を行い、かかる基板を切り抜いて複数の小さいサイズのパネルを製造する。また、VR HMD用の表示パネルを製造する場合、所定のサイズのシリコンウエハ(例えば、300mm)が用いられる。このようなシリコンウエハに、有機EL素子を形成するための成膜を行い、素子形成領域の間の領域(スクライブ領域)に沿ってシリコンウエハを切り抜いて複数の小さいサイズのパネルを製造する。但し、基板のサイズや種類は、特に限定されるものではなく、適宜設定可能である。
【0016】
製造ライン100は、
図1に示すように、平面視で八角形の形状を有する搬送室120を有する。搬送室120には、搬送路110(搬入路)を介して、成膜処理が行われる基板101が搬入される。また、成膜処理が行われた基板101は、搬送室120から搬送路111(搬出路)に搬出される。
【0017】
搬送室120の周囲には、基板101に対して成膜処理を行う複数の成膜装置1が配置されている。成膜装置1のそれぞれには、平面視で八角形の形状を有する搬送室130が隣接して配置されている。搬送室130の周囲には、マスク102を格納する格納室140が配置されている。
【0018】
搬送室120には、基板101を搬送する搬送ユニット121が設けられている。搬送ユニット121は、本実施形態では、水平多関節型のロボットを含み、基板101を水平姿勢で保持して搬送する。搬送ユニット121は、成膜処理が行われる基板101を搬送路110から成膜装置1に搬入する搬入動作と、成膜処理が行われた基板101を成膜装置1から搬送路111に搬出する搬出動作と、を行う。
【0019】
搬送室130のそれぞれには、マスク102を搬送する搬送ユニット131が設けられている。搬送ユニット131は、本実施形態では、水平多関節型のロボットを含み、マスク102を水平姿勢で保持して搬送する。搬送ユニット131は、マスク102を格納室140から成膜装置1に搬送する動作と、マスク102を成膜装置1から格納室140に搬送する動作と、を行う。
【0020】
図2は、本発明の一側面としての成膜装置1の構成を概略的に示す図である。成膜装置1は、基板101に蒸着物質を付着(蒸着)させて膜を形成する成膜処理を行い、本実施形態では、マスク102を介して基板101に成膜する。具体的には、成膜装置1は、基板101の成膜面101Aに対して、マスク102を介して、所定のパターンの蒸着物質の薄膜を形成する。基板101の材質としては、ガラス、樹脂、金属などを適宜選択可能である。特に、本実施形態では、基板101は、例えば、TFT(Thin Film Transistor)が形成されたガラス基板や半導体素子が形成されたシリコンウエハを含む。マスク102は、金属などの磁性体で構成されている。蒸着物質としては、有機材料や無機材料(例えば、金属、金属酸化物)などが用いられる。ここでは、成膜装置1が真空蒸着によって基板101に成膜処理を行う例について説明するが、これに限定されるものではなく、スパッタやCVDなどの各種の成膜処理(成膜方法)を適用することが可能である。
【0021】
成膜装置1は、箱型の真空チャンバ2を有する。真空チャンバ2の内部空間は、真空雰囲気、又は、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気に維持される。本実施形態では、真空チャンバ2は、その内部空間を真空雰囲気に維持するために、真空ポンプ(不図示)に接続されている。
【0022】
真空チャンバ2の内部空間には、蒸着ユニット10が設けられている。蒸着ユニット10は、蒸着物質を上方に放出する蒸着源を含む。蒸着ユニット10の上方には、蒸着源からの蒸着物質の放出の規制と、かかる規制の解除を行うためのシャッタ10aが設けられている。シャッタ10aは、開閉機構(不図示)によって開閉される。
図2は、シャッタ10aが閉じられ、蒸着ユニット10からの蒸着物質の放出が規制されている状態を示している。蒸着ユニット10の上方には、防着板2aが更に設けられている。防着板2aは、真空チャンバ2の内部空間の上部に設けられている構成に、蒸着ユニット10から放出された蒸着物質が不必要に付着することを抑制(防止)する機能を有する。
【0023】
真空チャンバ2の内部空間には、基板101を水平姿勢で保持する基板保持部3が設けられている。基板保持部3は、真空チャンバ2の内部空間において、マスク102とは反対側に配置される。基板保持部3は、本実施形態では、静電気力により基板Sを吸着して保持する静電チャック(第1静電チャック)として構成されている。具体的には、基板保持部3は、基板101の成膜面101Aとは反対側の裏面101Bを吸着することで、基板101の成膜面101Aを下方(-Z方向)に向けて、基板101を保持する。なお、基板保持部3には、例えば、水冷機構などを含む冷却プレート(不図示)が設けられていてもよい。冷却プレートは、成膜処理において、基板保持部3を介して基板101を冷却する。
【0024】
基板保持部3(及び冷却プレート)は、支持部(不図示)を介して、磁石プレート5に支持されている(吊り下げられている)。磁石プレート5は、マスク102に磁力を作用させてマスク102を引き寄せるプレートである。基板101は、成膜処理において、磁石プレート5と、磁石プレート5によって引き寄せられたマスク102との間に挟まれる。磁石プレート5は、基板101とマスク102とを近接させる、或いは、基板101とマスク102とを密着させる(密着性を向上させる)ために設けられている。
【0025】
成膜装置1は、マスク102を保持するためのマスク保持機構6を有する。マスク保持機構6は、マスク102を水平姿勢で保持するマスク保持部6aと、アクチュエータ6bと、を含む。マスク保持部6aは、真空チャンバ2の内部空間において、基板保持部3に保持された基板101の裏面101Bの側に、基板保持部3を取り囲むように配置される。マスク保持部6aは、本実施形態では、静電気力によりマスク102を吸着して保持する静電チャック(第2静電チャック)として構成されている。なお、マスク保持部6aの具体的な構成については、後で詳細に説明する。アクチュエータ6bは、例えば、電動シリンダや電動ボールねじ機構を含み、マスク保持部6aを昇降する。
【0026】
成膜装置1は、基板101とマスク102との位置合わせ(アライメント)に用いられるアライメント装置8を有する。アライメント装置8は、駆動機構80と、複数のカメラCRと、を有する。駆動機構80は、距離調整ユニット81と、支持軸82と、架台83と、位置調整ユニット84と、を含む。
【0027】
距離調整ユニット81は、例えば、電動シリンダや電動ボールねじ機構を含み、支持軸82をZ方向に昇降する機構である。支持軸82の下端部には、磁石プレート5が支持(固定)されている。従って、距離調整ユニット81が支持軸82を昇降することによって、磁石プレート5を介して、基板保持部3が昇降される。基板保持部3を昇降することで、基板101とマスク102との上下方向(Z方向)の距離を調整し、基板保持部3に保持された基板101とマスク102とを近接又は離間(離隔)させる。換言すれば、距離調整ユニット81は、基板101とマスク102とを重ねる方向(Z方向)に近接させたり、隔離させたりする。なお、距離調整ユニット81が調整する「距離」は、所謂、鉛直距離(垂直距離)である。従って、距離調整ユニット81は、基板保持部3に保持された基板101の鉛直位置を調整するユニットであるともいえる。距離調整ユニット81は、架台83を介して、位置調整ユニット84に載置されている。
【0028】
位置調整ユニット84は、基板保持部3を水平方向に変位(移動)させることで、XY平面内において、マスク102に対する基板101の相対位置を調整する。このように、位置調整ユニット84は、基板101とマスク102との相対的な水平位置を調整するユニットとして機能する。位置調整ユニット84は、本実施形態では、基板保持部3を、X方向、Y方向及びZ方向の軸周りの回転方向(θ方向)に変位させる。なお、本実施形態では、マスク102の位置を固定し、基板101を変位させることで、基板101とマスク102との相対位置を調整しているが、これに限定されるものではない。例えば、基板101の位置を固定し、マスク102を変位させることで、或いは、基板101及びマスク102の両方を変位させることで、基板101とマスク102との相対位置を調整してもよい。
【0029】
位置調整ユニット84は、固定プレート84aと、可動プレート84bと、を含む。固定プレート84a及び可動プレート84bは、矩形の枠状のプレートである。固定プレート84aは、真空チャンバ2の上壁部20に固定されている。固定プレート84aと可動プレート84bとの間には、固定プレート84aに対して可動プレート84bをX方向、Y方向及びZ方向の軸周りの回転方向に変位させるアクチュエータが設けられている。
【0030】
可動プレート84bには、フレーム状の架台83が載置され、架台83には、距離調整ユニット81が支持されている。従って、可動プレート84bが変位すると、架台83と距離調整ユニット81とが一体的に変位するため、基板保持部3に保持された基板101をX方向、Y方向及びZ方向の軸周りの回転方向に変位させることができる。上壁部20には、支持軸82などを設けるための開口部が形成されている。かかる開口部は、ベローズなどのシール部材(不図示)によってシールされ、真空チャンバ2の内部空間の気密性を維持している。
【0031】
カメラCRは、計測対象を撮像して画像を取得する撮像装置として具現化され、例えば、計測対象の位置を計測する計測器として機能する。カメラCRは、例えば、真空チャンバ2の上壁部20に設けられる。カメラCRは、本実施形態では、真空チャンバ2の内部空間に配置された基板101及びマスク102のそれぞれに設けられたマーク(アライメントマーク)を検出し、それらの位置から基板101とマスク102との相対位置(位置ずれ)を計測する。基板101とマスク102との位置合わせでは、カメラCRで計測される基板101とマスク102との位置ずれが許容範囲に収まるように、位置調整ユニット84を介して、基板101とマスク102との相対位置が調整される。
【0032】
成膜装置1は、コンピュータ(情報処理装置)で構成され、成膜装置1の各構成要素(の動作)を統括的に制御して、成膜装置1の全体を制御する制御部9を有する。制御部9は、処理部90と、記憶部91と、入出力(I/O)インタフェース92と、通信部93と、を含む。処理部90は、CPUに代表されるプロセッサを含み、記憶部91に記憶されたプログラムを実行することで成膜装置1の各種の動作や処理を実現する。記憶部91は、ROM、RAM、HDDなどの記憶デバイスを含み、処理部90が実行するプログラムや各種の制御情報を記憶する。I/Oインタフェース92は、処理部90と外部デバイスとの間で通信(各種情報及び信号の送受信)を行うためのインタフェースである。通信部93は、通信回線を介して、上位装置や他の制御装置などと通信を行う通信デバイスである。
【0033】
以下、制御部9(処理部90)が実行する成膜装置1の制御例について、基板101を搬入し、成膜処理を経て、基板101を搬出するまでの例を説明する。
【0034】
まず、基板101を真空チャンバ2(の内部空間)に搬入する。基板101は、搬送ユニット121によって、基板保持部3の下方に搬送される。基板保持部3の下面、即ち、基板101の裏面101Bを吸着する吸着面3a(基板101を保持する保持面)は、水平(平坦)に構成されている。そして、基板保持部3の下方に搬送された基板101を、基板保持部3に移載する。例えば、搬送ユニット121を上昇させる(+Z方向に駆動する)ことによって、基板101を、基板保持部3の吸着面3aに押し付ける。かかる状態において、基板保持部3の静電チャックとしての機能を作動させ、吸着面3aで基板101の裏面101Bを吸着して、基板保持部3により基板101を保持する。
【0035】
次いで、マスク102を真空チャンバ2(の内部空間)に搬入する。マスク102は、搬送ユニット131によって、格納室140から真空チャンバ2に搬送され、マスク保持部6aの下方、及び、基板保持部3に保持された基板101の下方に搬送される。マスク保持部6aの下面、即ち、マスク102の対向面102Aを吸着する吸着面61a(マスク102を保持する保持面)は、水平(平坦)に構成されている。ここで、マスク102の対向面102Aとは、基板保持部3に保持された基板101の成膜面101Aに対向する面であって、蒸着ユニット10(蒸着源)の面とは反対側の面である。そして、マスク保持部6a及び基板101の下方に位置するマスク102を、マスク保持部6aに移載する。例えば、搬送ユニット131を上昇させる(+Z方向に駆動する)ことによって、マスク102を、マスク保持部6aの吸着面61aに押し付ける。かかる状態において、マスク保持部6aの静電チャックとしての機能を作動させ、吸着面61aでマスク102の対向面102Aを吸着して、マスク保持部6aによりマスク102を保持する。また、アクチュエータ6bによって、マスク102を保持したマスク保持部6aを更に上昇させ(+Z方向に駆動し)、マスク102を、基板101とマスク102とのアライメントを行うためのアライメント位置に位置させる。
【0036】
次に、基板保持部3に保持された基板101と、マスク保持部6aに保持されたマスク102とのアライメントを行う。基板101とマスク102とのアライメントは、基板101とマスク102とが重ねられた状態で行われる。但し、基板101とマスク102とが重ねられた状態は、基板101とマスク102とがZ方向からの視点で重なっている状態を意味し、基板101とマスク102とが物理的に接触している状態及び接触していない状態の両方を含む。従って、基板101とマスク102とのアライメントにおいては、基板101とマスク102との間には、ギャップが設けられていてもよい。このように、基板101とマスク102とが重ねられた状態において、真空チャンバ2の上壁部20に設けられたカメラCRによって、基板101に設けられたマークと、マスク102に設けられたマークとを検出する。
【0037】
カメラCRは、可視光(計測光)で基板101及びマスク102のそれぞれに設けられたマークを照明し、かかるマークで反射された光(反射光)を検出(観察)することで、基板101やマスク102に設けられたマークの位置を光学的に計測する。従って、カメラCRで用いられる可視光(計測光)に対して、基板101やマスク102の透過率が低い場合には、カメラCRで検出される光量が少なく、計測精度が低下したり、計測自体が困難になったりしてしまう。
【0038】
そこで、本実施形態では、基板101やマスク102に設けられたマークをカメラCRで検出するのに有利となる構成(構造)を、基板101、マスク102、基板保持部3及びマスク保持部6aに設けている。以下、
図3及び
図4を参照して、基板101やマスク102に設けられたマークをカメラCRで検出するのに有利となる構成について具体的に説明する。
図3及び
図4は、基板101、マスク102、基板保持部3及びマスク保持部6aの近傍を拡大して示す図である。
図3は、基板101、マスク102、基板保持部3及びマスク保持部6aの断面図を示し、
図4は、基板101、マスク102、基板保持部3及びマスク保持部6aの上面図を示している。
【0039】
図3及び
図4に示すように、基板101は、その裏面101Bに、カメラCRの計測対象である第1マークM1が設けられている。第1マークM1は、基板101とマスク102とのアライメントにおいて、カメラCRによって検出されるアライメントマークとして具現化される。従って、第1マークM1は、真空チャンバ2の上壁部20に設けられたカメラCRの視野の範囲(検出範囲)に収まるように、基板101の裏面101Bに設けられる。これにより、基板101とマスク102とのアライメントにおいて、基板101の裏面101Bに設けられた第1マークM1を、カメラCRで検出することが可能となる。
【0040】
一方、マスク102は、基板101の成膜面101Aにパターンを成膜するための開口(不図示)を含むパターン部102Cと、パターン部102Cの周囲に設けられた突出部102Dと、を含む。突出部102Dは、
図3に示すように、基板101が重ねられる側(+Z方向)に、基板101の側面101Cに沿って、パターン部102Cの対向面102Aの外縁部OEから突出した部分である。また、突出部102Dの上面102Eには、カメラCRの計測対象である第2マークM2が設けられている。第2マークM2は、基板101とマスク102とのアライメントにおいて、カメラCRによって検出されるアライメントマークとして具現化される。従って、第2マークM2は、真空チャンバ2の上壁部20に設けられたカメラCRの視野の範囲(検出範囲)に収まるように、且つ、基板101の裏面101Bに設けられた第1マークM1に近接させて、突出部102Dの上面102Eに設けられる。これにより、基板101とマスク102とのアライメントにおいて、マスク102の突出部102Dの上面102Eに設けられた第2マークM2を、カメラCRで検出することが可能となる。
【0041】
基板101とマスク102とのアライメントを行う際には、カメラCRによって、基板101に設けられた第1マークM1と、マスク102に設けられた第2マークM2とを検出する。本実施形態では、上述したように、第1マークM1は、基板101の裏面101Bに設けられ、第2マークM2は、マスク102の突出部102Dの上面102Eに設けられている。従って、カメラCRで用いられる可視光(計測光)に対する基板101及びマスク102の透過率が低い場合であっても、カメラCRでは、第1マークM1及び第2マークM2のそれぞれからの光(反射光)を十分な光量で検出することができる。これは、基板101及びマスク102を透過させずに、第1マークM1及び第2マークM2からの光をカメラCRで検出することができるからである。このように、基板101の裏面101Bに設けられた第1マークM1と、マスク102の突出部102Dの上面102Eに設けられた第2マークM2とを検出することで、基板101とマスク102との相対位置(位置ずれ)を高精度に計測することが可能となる。
【0042】
なお、第1マークM1及び第2マークM2を高精度に検出するという観点、及び/又は、カメラCRの構成を簡易にするという観点では、カメラCRの被写界深度(焦点深度)の範囲に、第1マークM1及び第2マークM2を収める必要がある。従って、第1マークM1及び第2マークM2のそれぞれは、基板101とマスク102とが重ねられた状態において、カメラCRの被写界深度の範囲に収まるように、基板101の裏面101B及びマスク102の突出部102Dの上面102Eに設けられている。換言すれば、第1マークM1を基準として、第2マークM2がカメラCRの被写界深度の範囲に収まるように、マスク102の突出部102Dの突出量(Z方向における高さ)を設定している。具体的には、
図3に示すように、基板保持部3に保持された基板101の裏面101Bの高さ方向(Z方向)の位置と、突出部102Dの上面102Eの高さ方向の位置とが一致するように、突出部102Dの突出量を設定する。但し、カメラCRの被写界深度は、一般的に、ある程度のマージン(裕度)を有しているため、基板101の裏面101Bの高さ方向の位置と、突出部102Dの上面102Eの高さ方向の位置とを厳密に一致させる必要はない。例えば、突出部102Dの突出量(P)は、基板101の厚さ(T)と、基板101とマスク102との間のギャップ(G)との和の±5%となる(P=(T+G)×±0.05)ように設定される。
【0043】
また、第1マークM1及び第2マークM2のそれぞれからの光(反射光)を、真空チャンバ2の上壁部20に設けられたカメラCRで検出する構成においては、基板保持部3やマスク保持部6aもカメラCRで検出される光量を低下させる要因の1つとなる。特に、カメラCRで用いられる可視光(計測光)に対する基板保持部3やマスク保持部6aの透過率が低い場合には、カメラCRで検出される光量の低下が顕著となる。従って、基板保持部3は、基板101を保持している状態において、基板101の裏面101Bに設けられた第1マークM1が露出されるように構成することが好ましい。同様に、マスク保持部6aは、マスク102を保持している状態において、マスク102の突出部102Dの上面102Eに設けられた第2マークM2が露出されるように構成することが好ましい。例えば、
図4に示すように、基板保持部3には、基板101を保持した状態において、第1マークM1に対応する部分に第1マークM1を露出させるための構造32が設けられている。また、マスク保持部6aには、マスク102を保持した状態において、第2マークM2に対応する部分に第2マークM2を露出させるための構造62が設けられている。第1マークM1を露出させるための構造32や第2マークM2を露出させるための構造62としては、具体的には、貫通孔又は切り欠きなどが挙げられる。基板保持部3やマスク保持部6aのそれぞれを、第1マークM1及び第2マークM2が露出されるように構成することで、カメラCRで検出される第1マークM1及び第2マークM2からの光の光量の低下を抑制することができる。
【0044】
このように、カメラCRによって、基板101に設けられた第1マークM1とマスク102に設けられた第2マークM2を検出することで、それらの位置から基板101とマスク102との相対位置(位置ずれ)が計測される。カメラCRで計測された基板101とマスク102との位置ずれ(第1マークM1及び第2マークM2を検出した結果)が許容範囲に収まっていれば、基板101とマスク102とのアライメントを終了する。一方、カメラCRで計測された基板101とマスク102との位置ずれが許容範囲に収まっていなければ、かかる位置ずれが低減して許容範囲に収まるように、基板101とマスク102とのアライメントを行う。具体的には、まず、カメラCRで計測された基板101とマスク102との位置ずれに基づいて、かかる位置ずれを許容範囲に収めるために必要となる制御量である基板101の変位量を求める。基板101とマスク102との位置ずれは、位置ずれの距離及び方向(X、Y、θ)で定義される。そして、制御量として求めた基板101の変位量に基づいて、位置調整ユニット84によって、基板保持部3をXY平面内で変位させ、マスク102に対する基板101の相対位置を調整する。カメラCRによる基板101とマスク102との相対位置の計測、及び、位置調整ユニット84による基板101の位置の調整(基板101とマスク102とのアライメント)は、基板101とマスク102との位置ずれが許容範囲に収まるまで繰り返される。なお、基板101とマスク102との位置ずれが許容範囲に収まっているかどうかの判定は、例えば、第1マークM1と第2マークM2との間の距離を求め、かかる距離(平均値や2乗和)を閾値と比較することで行うことが可能である。
【0045】
次いで、基板101の成膜面101Aに膜を形成する成膜処理を行う。基板101とマスク102とがアライメントされたら、基板101とマスク102とを重ね合わせる。例えば、基板保持部3を降下させる(-Z方向に駆動する)ことで、基板101の成膜面101Aの全体をマスク102(の対向面102A)に接触させ、上から順に、磁石プレート5、基板保持部3、基板101及びマスク102を密着させる。上述したように、磁石プレート5とマスク102との間に作用する磁力によって、マスク102が磁石プレート5に引き寄せられるため、基板101とマスク102とを全体的に密着させることができる。そして、シャッタ10aを開いて、蒸着ユニット10から蒸着物質を放出することで、かかる蒸着物質がマスク102を介して基板101の成膜面101Aに付着し、所定のパターンの蒸着物質の膜が形成される。
【0046】
次に、マスク102を真空チャンバ2(の内部空間)から搬出する。まず、基板保持部3を上昇させる(+Z方向に駆動する)ことで、基板101とマスク102とを離間する。また、搬送ユニット131をマスク102の下方に位置させ、マスク保持部6aを降下させる(-Z方向に駆動する)ことで、マスク保持部6aから搬送ユニット131にマスク102を移載する。そして、搬送ユニット131によって、マスク102を格納室140に搬送する。
【0047】
次いで、成膜処理が行われた基板101を真空チャンバ2(の内部空間)から搬出する。搬送ユニット121を基板101の下方に位置させ、基板保持部3を降下させる(-Z方向に駆動する)ことで、基板保持部3から搬送ユニット121に基板101を移載する。そして、搬送ユニット121によって、基板101を搬送路111に搬送する。
【0048】
このようにして、基板101を搬入し、成膜処理を経て、基板101を搬出するまでの処理が完了する。本実施形態では、上述したように、基板101とマスク102との相対位置(位置ずれ)を高精度に計測することが可能であるため、基板101とマスク102とのアライメント精度を向上させることができる。これにより、成膜処理において、基板101の成膜面101Aの所定の位置に、所定のパターンの蒸着物質の膜を形成することができる。
【0049】
また、基板101の裏面101Bに設けられた第1マークM1及びマスク102の突出部102Dの上面102Eに設けられた第2マークM2を検出するカメラCRの構成(検出方式)としては、透過照明方式や同軸落射照明方式が採用される。
【0050】
図5(A)は、透過照明方式を採用したカメラCRの構成を模式的に示す図である。透過照明方式では、
図5(A)に示すように、計測対象であるマークM(アライメントマーク)の下方に可視光を射出する光源LSを配置し、マークMの上方に撮像素子などのセンサSSを配置する。そして、光源LSからの可視光でマークMを下方から照明し、マークMを透過した可視光をセンサSSで検出することで、マークM(の位置)を検出する。このように、透過照明方式では、計測対象であるマークMの下方に光源LSを配置する必要があるため、透過照明方式を成膜装置1に適用すると、基板101と蒸着ユニット10との間に光源LSが配置されることになる。
【0051】
図5(B)は、同軸落射照明方式を採用したカメラCRの構成を模式的に示す図である。同軸落射照明方式では、
図5(B)に示すように、計測対象であるマークM(アライメントマーク)の上方に光源LS及びセンサSSを配置し、光源LSとセンサSSとの間、詳細には、光源LSとマークMとの間にハーフミラーHMを配置する。そして、光源LSからの可視光をハーフミラーHMで反射してマークMを上方から照明し、マークMで反射した可視光をハーフミラーHMを透過させてセンサSSで検出することで、マークM(の位置)を検出する。このように、同軸落射照明方式では、計測対象であるマークMの上方に光源LSを配置することができるため、透過照明方式と比較して、成膜装置1に容易に適用することが可能である。また、同軸落射照明方式を採用するカメラCRの構成はシンプルであり、安価に実現することができる。
【0052】
次に、本実施形態における成膜装置1(を有する製造ライン100)を用いて、電子デバイスを製造する製造方法について説明する。ここでは、電子デバイスとして、有機EL表示装置を例に説明する。
【0053】
まず、有機EL表示装置について説明する。
図6(A)は、有機EL表示装置50の全体的な構成を示す図である。
図6(B)は、有機EL表示装置50の1つの画素の断面構造を示す図である。
【0054】
図6(A)に示すように、有機EL表示装置50は、複数の発光素子を含む画素52がマトリクス状に配置された表示領域51を有する。後述するように、複数の発光素子のそれぞれは、一対の電極に挟まれた有機層(有機膜)を備えた構造を有する。なお、本実施形態において、画素とは、表示領域51において所定の色の表示を可能とする最小単位を意味するものとする。例えば、有機EL表示装置50では、互いに異なる色の表示を可能とする第1発光素子52R、第2発光素子52G及び第3発光素子52Bの組み合わせによって、画素52が構成されている。画素52は、一般的には、赤色発光素子、緑色発光素子及び青色発光素子の組み合わせで構成されているが、これに限定されるものではない。例えば、黄色発光素子、シアン発光素子及び白色発光素子の組み合わせで構成されてもよく、少なくとも1色以上の発光素子で構成されていればよい。
【0055】
図6(B)は、
図6(A)に示すA-B線における部分断面図である。画素52は、基板53の上に、陽極54と、正孔輸送層55と、発光層56R、56G及び56Bのいずれかと、電子輸送層57と、陰極58と、を有する有機EL素子からなる。これらのうち、正孔輸送層55、発光層56R、56G及び56B、及び、電子輸送層57が有機層に相当する。また、本実施形態において、発光層56Rは、赤色を発する有機EL層であり、発光層56Gは、緑色を発する有機EL層であり、発光層56Bは、青色を発する有機EL層である。発光層56R、56G及び56Bは、それぞれ、赤色、緑色及び青色を発する発光素子(有機EL素子と記載する場合もある)に対応するパターンに形成されている。また、陽極54は、発光素子ごとに分離して形成されている。正孔輸送層55、電子輸送層57及び陰極58は、複数の発光層56R、56G及び56Bと共通で形成されていてもよいし、発光素子ごとに形成されていてもよい。なお、陽極54と陰極58とが異物によってショートすることを抑制するために、電極間には絶縁層59が設けられている。更に、有機EL層は、水分や酸素によって劣化するため、水分や酸素から有機EL素子を保護するための保護層PLが設けられている。
【0056】
図6(B)では、正孔輸送層55や電子輸送層57が1つの層として示されているが、有機EL素子の構造によって、正孔ブロック層や電子ブロック層を含む複数の層で形成されていてもよい。また、陽極54と正孔輸送層55との間には、陽極54から正孔輸送層55への正孔の注入が円滑に行われるようにするためのエネルギーバンド構造を有する正孔注入層が形成されていてもよい。同様に、陰極58と電子輸送層57との間には、電子注入層が形成されていてもよい。
【0057】
以下、有機EL表示装置の製造方法を説明する。
【0058】
まず、有機EL表示装置を駆動するための回路(不図示)及び陽極54が形成された基板53を準備する。
【0059】
次いで、陽極54が形成された基板53の上にアクリル樹脂をスピンコートで形成し、リソグラフィ法によって、アクリル樹脂の陽極54が形成された部分に開口が形成されるようにパターニングして絶縁層59を形成する。かかる開口は、発光素子が実際に発光する発光領域に相当する。
【0060】
絶縁層59がパターニングされた基板53を、製造ライン100の成膜装置1(第1成膜室)に搬入し、表示領域51の陽極54の上に、正孔輸送層55を共通する層として成膜する。正孔輸送層55は、例えば、真空蒸着によって成膜される。正孔輸送層55は、実際には、表示領域51よりも大きさサイズで形成されるため、高精細なマスクは不要である。
【0061】
次いで、正孔輸送層55までが形成された基板53を、成膜装置1(第2成膜室)に搬入する。基板53とマスクとのアライメントを行い、マスクを介して、基板53の赤色を発する発光素子を形成する部分に、赤色を発する発光層56Rを成膜する。
【0062】
発光層56Rの成膜と同様に、成膜装置1(第3成膜室)において、緑色を発する発光層56Gを成膜し、更に、成膜装置1(第4成膜室)において、青色を発する発光層56Bを成膜する。発光層56R、56G及び56Bを成膜したら、成膜装置1(第5成膜室)において、表示領域51の全体に電子輸送層57を成膜する。電子輸送層57は、3つの発光層56R、56G及び56Bに共通する層として形成される。
【0063】
次いで、電子輸送層57まで形成された基板53を、成膜装置1(第6成膜室)に搬入し、陰極58を成膜する。
【0064】
そして、陰極58まで形成された基板53を封止装置に搬入し、プラズマCVDによって保護層PLを成膜して(封止処理)、有機EL表示装置50が完成する。ここでは、保護層PLをCVD法によって形成しているが、これに限定されるものではない。例えば、ALD法やインクジェット法によって保護層PLを成膜してもよい。
【0065】
なお、絶縁層59がパターニングされた基板53を成膜装置1に搬入してから保護層PLを成膜するまでの間に、かかる基板53が水分や酸素を含む雰囲気に晒されると、有機EL材料からなる発光層が劣化してしまう可能性がある。従って、成膜装置間における基板53の搬入や搬出は、真空雰囲気下、或いは、不活性ガス雰囲気下で行われることが好ましい。
【0066】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0067】
1:成膜装置 8:アライメント装置 101:基板 101A:成膜面 101B:裏面 102:マスク 102A:対向面 102C:パターン部 102D:突出部 102E:上面 CR:カメラ M1:第1マーク M2:第2マーク