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特開2024-17607圧力測定装置、バイオリアクター、培養装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017607
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】圧力測定装置、バイオリアクター、培養装置
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/34 20060101AFI20240201BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
C12M1/34 Z
C12M1/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022120358
(22)【出願日】2022-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100155066
【弁理士】
【氏名又は名称】貞廣 知行
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 将太
(72)【発明者】
【氏名】松田 博行
(72)【発明者】
【氏名】都倉 知浩
【テーマコード(参考)】
4B029
【Fターム(参考)】
4B029AA01
4B029BB01
4B029FA15
(57)【要約】
【課題】圧力センサを繰り返し使用することが可能で、かつ、容器の内部に雑菌を持ち込むことがなく、バイオリアクター内の結露の影響も受けない圧力測定装置、バイオリアクター、培養装置を提供する。
【解決手段】本体容器の内圧を測定する圧力測定装置30であって、本体容器の気相に流路31を介して接続された内部空間35と可撓性部分を有する容器34と、前記可撓性部分と対向する位置に固定可能な板状部材36と、前記可撓性部分と板状部材36との間に保持された圧力センサ21と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体容器の内圧を測定する圧力測定装置であって、
前記本体容器の気相に流路を介して接続された内部空間と可撓性部分を有する容器と、
前記可撓性部分と対向する位置に固定可能な板状部材と、
前記可撓性部分と前記板状部材との間に保持された圧力センサと、
を備えることを特徴とする圧力測定装置。
【請求項2】
前記可撓性部分を有する容器が、可撓性バッグであることを特徴とする請求項1に記載の圧力測定装置。
【請求項3】
前記可撓性バッグを収容する箱を備え、前記箱の少なくとも2つの面が前記板状部材であることを特徴とする請求項2に記載の圧力測定装置。
【請求項4】
前記流路が、前記本体容器に接続されるチューブであることを特徴とする請求項1に記載の圧力測定装置。
【請求項5】
前記板状部材が、前記本体容器を収める装置の筐体の一部であることを特徴とする請求項1に記載の圧力測定装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の圧力測定装置を備えるバイオリアクター。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか1項に記載の圧力測定装置を備える培養装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力測定装置、バイオリアクター、培養装置に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞培養装置、バイオ医薬品製造装置、培養肉製造装置などのバイオリアクターの内部では、微生物や細胞が代謝を行ってガスを発生させたり、気体をバブリングさせることが多い。容器の外部から雑菌が入らないように、フィルターを介してガスを放出して一定の圧力に保つバイオリアクターもあるが、フィルターの目詰まりなどによりリアクター内の圧力が上昇する場合がある。このため、バイオリアクター内の圧力を監視する必要がある。例えば、特許文献1には、シングルユースバッグの内側に圧力センサが取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2019-520065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のバイオリアクターでは、圧力センサが1回で使い捨てにされる。また、バイオリアクターの外部から、圧力センサを内部に挿入する方法も採用されている。圧力センサを挿入する方法では、雑菌をバイオリアクターの内部に持ち込む危険性があると共に、挿入時に毎回圧力センサを滅菌処理しなくてはならず、手間がかかる。また、バイオリアクター内の結露により、圧力センサの精度が低下することがある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、圧力センサを繰り返し使用することが可能で、かつ、容器の内部に雑菌を持ち込むことがなく、バイオリアクター内の結露の影響も受けない圧力測定装置、バイオリアクター、培養装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記の態様を含む。
第1の態様は、本体容器の内圧を測定する圧力測定装置であって、前記本体容器の気相に流路を介して接続された内部空間と可撓性部分を有する容器と、前記可撓性部分と対向する位置に固定可能な板状部材と、前記可撓性部分と前記板状部材との間に保持された圧力センサと、を備えることを特徴とする圧力測定装置である。
【0007】
第2の態様は、第1の態様において、前記可撓性部分を有する容器が、可撓性バッグである。
第3の態様は、第2の態様において、前記可撓性バッグを収容する箱を備え、前記箱の少なくとも2つの面が前記板状部材である。
第4の態様は、第1~3のいずれか1の態様において、前記流路が、前記本体容器に接続されるチューブである。
第5の態様は、第1~4のいずれか1の態様において、前記板状部材が、前記本体容器を収める装置の筐体の一部である。
【0008】
第6の態様は、第1~5のいずれか1の態様の圧力測定装置を備えるバイオリアクターである。
第7の態様は、第1~5のいずれか1の態様の圧力測定装置を備える培養装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、圧力センサを繰り返し使用することが可能で、かつ、容器の内部に雑菌を持ち込むことがなく、バイオリアクター内の結露の影響も受けることがない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】圧力測定装置を備えたシステムの一例を示す説明図である。
図2】圧力測定装置の一例を示す説明図である。
図3】圧力測定装置の別の一例を示す説明図である。
図4】圧力測定装置の設置位置を例示する説明図である。
図5】圧力測定装置のブロック図の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、好適な実施形態に基づいて、本発明を説明する。
【0012】
図1は、圧力測定装置を備えたシステムの一例を示す。図2は、圧力測定装置の一例を示す。実施形態の圧力測定装置30は、本体容器11の内圧を測定する装置である。
【0013】
圧力測定装置30を備えたシステムは、特に限定されないが、前記圧力測定装置30を有する細胞培養装置、バイオ医薬品製造装置、培養肉製造装置などのバイオリアクターが挙げられる。細胞は単細胞生物の細胞でもよく、多細胞生物またはその組織の細胞でもよい。
【0014】
本体容器11は、可撓性を有する容器であってもよい。この場合は、本体容器11が外殻容器12に収容されて、複合容器10を構成してもよい。外殻容器12を繰り返し使用しながら、本体容器11を適宜の頻度で交換、使い捨てにしてもよい。
【0015】
本体容器11の内部には液相13と気相14が収容されている。気相14は液相13の上方に配置される。本体容器11の上部には、気相14に気体を供給する給気路15と、気相14に含まれる気体を排出する排気路16が接続されてもよい。給気路15および排気路16は、それぞれ、フレキシブルなチューブであってもよく、硬質の管路であってもよく、適宜に選択することができる。
【0016】
特に図示しないが、本体容器11は、液相13に液体を供給する給液路と、液相13に含まれる液体を排出する排液路を備えてもよく、さらに、液相13に気体を供給する供給路、液相13に含まれる液体を循環させる循環路を備えてもよい。これらの給液路、排液路、供給路、循環路は、それぞれ、フレキシブルなチューブであってもよく、硬質の管路であってもよく、適宜に選択することができる。
【0017】
圧力測定装置30は、本体容器11の気相14に流路31を介して接続された内部空間35と可撓性部分を有する容器34と、容器34の可撓性部分と対向する位置に固定可能な板状部材36,37と、容器34の可撓性部分と板状部材36との間に保持された圧力センサ21と、を備える。圧力センサ21は、内部空間35の圧力を検知する。
【0018】
図示例の板状部材36,37は、少なくとも2つの面で容器34と接している。容器34が箱32に収容される場合は、箱32の少なくとも2つの面が板状部材36,37であってもよい。板状部材36,37の少なくとも一方が底を有する箱で、他方が箱の蓋であってもよい。板状部材36,37が、同一の箱で互いに対向する2面であってもよい。
【0019】
圧力センサ21は、一方の板状部材36と容器34との間に保持されている。板状部材36,37の材質は特に限定されないが、樹脂、ゴム、ガラス、金属、木材、繊維強化プラスチック等が挙げられる。
【0020】
容器34が板状部材36,37の間に挟み込まれることにより、内部空間35の圧力が圧力センサ21に検知される。この内部空間35の圧力は、概略、本体容器11の気相14の圧力、すなわち、本体容器11の内圧に相当する。
【0021】
圧力センサ21は、本体容器11内に存在しないため、繰り返し再利用が可能である。また、圧力センサ21の滅菌処理をしなくても本体容器11の内部に雑菌を持ち込むことがない。
【0022】
可撓性部分を有する容器34が、可撓性バッグであってもよい。可撓性バッグは、樹脂フィルム、複合フィルム等から形成してもよい。複合フィルムは、樹脂フィルム以外に、金属、シリカ、アルミナ等の蒸着膜、ガスバリア層等が積層されていてもよい。
【0023】
容器34が流路31と接続されるポート33を有してもよい。ポート33は、容器34の非可撓性部分であってもよい。可撓性バッグは、ポート33以外の部分が全て可撓性部分であってもよく、バッグの周縁部に可撓性の低いシール部を有してもよい。圧力センサ21に対向する可撓性部分は、シール部から離れた箇所に配置されてもよい。
【0024】
容器34の可撓性部分が圧力センサ21と接する場合は、内部空間35の圧力変化を十分な精度で圧力センサ21に伝達できることが好ましい。圧力センサ21が可撓性部分を介して内部空間35の圧力を検知する際に、内部空間35の雰囲気が直接に圧力センサ21に作用するときと同様の圧力を指示してもよく、異なる圧力を支持してもよい。言い換えると、圧力センサ21が可撓性部分を介して検知される圧力が、内部空間35の圧力と同一の値でもよく、異なる値でもよい。
【0025】
容器34の可撓性部分を介して圧力センサ21が内部空間35の圧力を検知するには、可撓性部分を介して検知される圧力が、内部空間35の圧力と一定の対応関係を有することが好ましく、所定の圧力範囲で一対一に対応する関係であることがより好ましい。当該対応関係は、線形的な関係でもよく、非線形な関係でもよい。所定の圧力範囲は、内部空間35の圧力値として想定される範囲の少なくとも一部を含めばよい。
【0026】
容器34の可撓性部分は、内部空間35の圧力に対して可逆的に、少なくとも持続的に、変形可能であることが好ましい。これにより、可撓性部分に対して内部空間35の圧力が継続的に作用したり、圧力変化が繰り返されたりするような場合でも、圧力センサ21で検知される圧力値の精度を維持することができる。
【0027】
検知に求められる精度や使用期間によっては、容器34の可撓性部分が樹脂フィルム等、不可逆的な塑性変形を起こし得る材質で形成することも可能である。また、必要に応じて、圧力センサ21の寿命よりも短い間隔で、容器34全体または可撓性部分を交換してもよい。これにより、圧力測定装置30の経済性を向上することができる。
【0028】
図3に別の例を示すように、容器34は、少なくとも圧力センサ21と接する部分に可撓性部分34aを有し、それ以外の部分に非可撓性部分34bを有してもよい。例えば、容器34が圧力センサ21とは反対側に非可撓性部分34bを有してよい。非可撓性部分34bは、可撓性部分34aよりも可撓性が低い部分である。非可撓性部分34bは、剛性を有する部分でもよく、相対的に低い可撓性を有する部分であってもよい。
【0029】
容器34の大部分を可撓性部分34aとし、容器34の一部に非可撓性部分34bを設けてもよい。可撓性部分34aと非可撓性部分34bが半々の割合に接合されてもよい。容器34の大部分を非可撓性部分34bとし、容器34の一部に可撓性部分34aを接着してもよい。可撓性部分34aが非可撓性部分34bから膨出すると、圧力センサ21に対して内部空間35の圧力が伝達されやすくなるので好ましい。
【0030】
容器34が非可撓性部分34bを有する場合、非可撓性部分34bを板状部材37と対向させてもよい。図示例のように、板状部材37を省略し、圧力センサ21側の板状部材36に対して変位しないように、ジグ38により、容器34の非可撓性部分34bを固定することも可能である。
【0031】
板状部材36,37の少なくとも一方が、本体容器11を収める装置の筐体の一部であってもよい。例えば、図4に示すように、複合容器10または本体容器11の土台17に圧力測定装置30を設置してもよい。流路31を介して本体容器11に接続された容器34を、土台17に取り付けた圧力センサ21と対向させることにより、圧力測定装置30を構成することができる。この場合、土台17の壁面の一部を板状部材36として用いてもよい。
【0032】
土台17は、複合容器10または本体容器11を揺動させる揺動装置の筐体を有してもよい。揺動装置の土台17に圧力センサ21を取り付けることにより、土台17と圧力センサ21との間の位置関係に変化が生じにくくなり、複合容器10または本体容器11が揺動している間も、圧力センサ21の位置を安定させることができる。
【0033】
また、特に図示しないが、外殻容器12の壁面に圧力センサ21を設置して、外殻容器12の筐体の一部を板状部材36として用いてもよい。例えば、外殻容器12の外面に圧力測定装置30を設置してもよい。流路31を介して本体容器11に接続された容器34を、外殻容器12に取り付けた圧力センサ21と対向させることにより、圧力測定装置30を構成することができる。外殻容器12に圧力センサ21を取り付けることにより、本体容器11が揺動している間も、圧力センサ21の位置を安定させることができる。
【0034】
また、特に図示しないが、圧力センサ21を本体容器11とは独立した壁面に固定してもよい。この場合は、流路31にフレキシブルなチューブを用いて、本体容器11と圧力センサ21との間の位置関係の変化を吸収させることが好ましい。
【0035】
流路31は、本体容器11に接続されるチューブであってもよい。流路31のチューブは、ポート33により容器34と接続してもよい。ポート33および容器34は使い捨てにしてもよく、繰り返し再利用してもよい。ポート33を再利用するときは、滅菌処理することが好ましい。高温で滅菌処理する場合はポート33が耐熱性を有する樹脂から形成されることが好ましい。
【0036】
流路31の物性は、容器34の内部空間35の圧力が、本体容器11の内部の圧力と大差ない程度の耐久性を有することが好ましい。例えば、気体を漏出したり、圧力損失を生じたりしない流路31が好ましい。実用上は測定値の精度に影響しない程度の誤差が生じても構わない。
【0037】
流路31の内径は特に限定されないが、例えば1mm~15mm程度が挙げられ、5mm~15mmが好ましい。流路31が太くても圧力の伝達には支障がないが、取り扱いの点では適度に細いことが好ましい。流路31がフレキシブル(屈曲可能)であってもよいが、容器34の可撓性部分34aよりも、圧力に対して変形しにくい材質が好ましい。例えば、可撓性部分34aがより薄膜のフィルムで、流路31がより肉厚のチューブであってもよい。
【0038】
流路31、ポート33、容器34の材質は特に限定されないが、樹脂、ゴム等が挙げられる。流路31とポート33と容器34とを接合する方法は特に限定されないが、熱シール、超音波シール、接着剤、締結、カシメ等が挙げられる。流路31とポート33との境界部およびポート33と容器34との境界部は気密に封止される。封止部にパッキン、シーリング材等を用いてもよい。
【0039】
例えば、可撓性部分34aの材質には、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、アクリル等の熱可塑性樹脂や、これらの積層体を用いてもよい。可撓性部分34aは、例えば厚さが5~100μm程度のフィルムであってもよい。可撓性部分34aは、単層の材質でもよいし、多層の場合は、層間に空隙、気泡等がないようにラミネートされていることが好ましい。
【0040】
非可撓性部分34bの材質は特に限定されないが、樹脂、ゴム、ガラス、金属、木材、繊維強化プラスチック等から構成することができる。可撓性部分34aと非可撓性部分34bとを同種の樹脂から成形し、厚みの差異で変形の程度を調整してもよい。可撓性部分34aおよび非可撓性部分34bが成形中から一体化された状態にあってもよく、成形後に一体化されてもよい。
【0041】
可撓性部分34aは、圧力センサ21に向けて膨出する部分を有してもよい。例えば、真空成形、圧空成形、プラグ成形等により、外方に向けて突出する形状の凸部を形成することができる。可撓性部分34aと非可撓性部分34bとを接着する方法は特に限定されないが、熱シール、超音波シール、接着剤等が挙げられる。可撓性部分34aと非可撓性部分34bとの境界部は気密に封止される。
【0042】
圧力センサ21の信号は、ケーブル22を介して、表示部23,24に表示してもよいし、圧力センサ21に付属する通信装置から発信した電波等を表示部23,24で受信して表示してもよい。ケーブル22は、板状部材36を貫通するように配線してもよく、板状部材36の内面に沿って箱32の外に引き出してもよい。
【0043】
表示部23,24に表示される値は、圧力センサ21の信号に含まれる電圧値でもよく、内部空間35の圧力値でもよく、本体容器11の気相14の圧力値でもよい。本体容器11の内圧を表示する場合は、変換器を用いて数値を換算してもよい。
【0044】
<本体容器を備えるシステムの詳細>
複合容器10は、液相13を収容する本体容器11と、本体容器11を収容する外殻容器12とを備えている。この場合、本体容器11は、フィルム状容器から構成することができる。フィルム状容器としては、平坦なフィルムを2枚重ね合わせて周囲を封止した平袋、平坦なフィルム2枚の間に2つ折り状のガゼット部を接合して封止したガゼット袋、両端が開口した筒状フィルムの少なくとも一方の開口部に平坦なフィルムを接合して封止した筒状フィルム容器などが挙げられる。
【0045】
筒状フィルム容器は、ドラム缶ライナーのように、円筒状フィルムの両端に円形の平坦なフィルムを接合した構造であってもよい。筒状フィルムの一方の開口部のみに平坦なフィルムを接合する場合は、反対側の開口部において筒状フィルムを径方向に潰して、筒状フィルムの内面同士を直接接合してもよい。筒状フィルム容器は、円筒状に限らず、水平面上の断面形状が四角形等の多角形である角筒状に構成してもよい。本体容器11を二重袋や三重袋など多重の袋で構成すると、液相13が漏れにくくなるので好ましい。
【0046】
前記フィルム状容器を構成するフィルムの材質は特に限定されないが、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、アクリル等の熱可塑性樹脂や、これらの積層体が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、高分子構造が脂肪族構造でも芳香族構造でもよく、あるいは環状構造でも非環状構造でもよい。前記フィルム状容器は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の汎用性の高い熱可塑性樹脂を主体とする場合、大型容器でも比較的安価に製造できるので好ましい。
【0047】
外殻容器12は、本体容器11を収容できる容器であれば特に限定されず、箱、瓶、袋、缶、タンク等が挙げられる。外殻容器12の材質は特に限定されず、樹脂、ゴム、ガラス、金属、木材、繊維強化プラスチック等から構成することができる。外殻容器12の内面は、本体容器11に接触することから、本体容器11を損傷しにくいように平滑にしてもよく、本体容器11を保持しやすいように、凹凸等を形成してもよい。外殻容器12に、本体容器11を収容する個数は特に限定されず、外殻容器12に1つの本体容器11を収容してもよく、外殻容器12に2つ以上の本体容器11を収容してもよい。
【0048】
外殻容器12は、本体容器11を機械的に保護することが可能な硬さ(剛性)を有することが好ましい。本体容器11の周囲を外殻容器12で保護することにより、柔軟(フレキシブル)な本体容器11であっても、本体容器11の形状を容易に維持することができる。本体容器11の側面が外殻容器12の内面に密着して、本体容器11の重量が外殻容器12に支持されてもよい。外殻容器12は、本体容器11に収容された液相13の温度を調整するため、加熱器、冷却器、放熱器、熱媒体を流通させる熱交換器、温度計等を備えてもよい。
【0049】
本体容器11から外殻容器12を省略してもよい。この場合の本体容器11は、液体を収容できる容器であれば特に限定されず、箱、瓶、袋、缶、タンク等が挙げられる。本体容器11の材質は、特に限定されず、樹脂、ゴム、ガラス、金属等から構成することができる。
【0050】
外殻容器12の有無にかかわらず、本体容器11の内面は液相13に接触することから、液相13に含まれる成分の吸収、液相13の汚染等を低減することが好ましい。本体容器11の容量(大きさ)は特に限定されないが、例えば0.1L~5000Lの大きさとすることができる。
【0051】
液相13に含まれる液体としては、特に限定されないが、水性液体、油性液体、溶液、電解液、分散液、乳濁液など各種の液体が挙げられる。液相13中には、気泡、粒子、粉末、粒状物、細胞、微生物などが含まれていてもよい。本体容器11は、外気に開放された構造であってもよいが、外気から密閉されていることが好ましい。本体容器11が外気に開放されている場合は、気相14は外気から構成される。本体容器11が外気から密閉されている場合は、液相13の上に気相14が充填される。
【0052】
本体容器11内で液相13が気相14と接することにより、液相13が揺動したとき、液相13と気相14とが混合されてもよい。液相13と気相14との容量比(気液容量比)は特に限定されず、液相13が気相14より多くても、液相13より気相14が多くてもよく、液相13及び気相14が半々程度でもよい。気液容量比は、例えば1:9~9:1の範囲が好ましい。
【0053】
気相14としては、N,O,CO,NH,HO(水蒸気),HS等、又はこれらの2種類以上の混合気体が挙げられる。気相14がHe,Ar等の不活性ガスを含んでもよい。また、気相14の組成が空気又は乾燥空気を主体として調整されてもよい。気体を本体容器11に供給するときは、液相13を通じて気体が供給されてもよく、液相13より上側に気体が供給されてもよい。
【0054】
本体容器11は、本体容器11の外から液相13を揺動させる揺動装置(図示せず)を備えてもよい。これにより、揺動装置の部分を液相13に接触させることなく、液相13を撹拌することができる。撹拌翼、撹拌棒、磁気撹拌子等の撹拌部材を液相13中に配置する場合と比べて、撹拌部材の損傷、劣化等による液相13の汚染、撹拌部材の交換の手間等を回避することができる。
【0055】
揺動装置は、本体容器11を往復運動させることにより液相13を揺動させてもよい。揺動装置は、本体容器11を回転運動させることにより液相13を揺動させてもよい。往復運動又は回転運動の方向は、水平方向(左右方向)、鉛直方向(上下方向)、又はこれらの間の傾斜方向であってもよい。回転運動においては、回転軸が液相13の重心を通る自転運動であってもよく、回転軸が液相13の重心から離れた位置を通る公転運動であってもよい。
【0056】
揺動装置は、運動の種類又は方向が異なる2種類以上の運動を同時に重ね合わせて本体容器11に作用させてもよい。また、揺動装置は、時間軸に対して周期的又は不定期に、運動の種類又は方向を変更してもよい。
【0057】
給気路15、排気路16等の管路は、フレキシブルなチューブ、ホース等でもよく、硬質のパイプ等でもよい。管路の材質としては、樹脂、ゴム、エラストマー、金属等が挙げられる。管路には、フィルター、フローモニター、流量計等を設けてもよい。特に図示しないが、本体容器11に液体、気体、固形物、混合物等を供給する目的に限らず、本体容器11から液体、気体、固形物、混合物等を取り出す目的でも、本体容器11にチューブ、ホース、パイプ等の管路を接続することができる。
【0058】
前記フィルム状容器に各種の管路等として、チューブ、ホース、注出口、注入口等の付属部品を接続する場合は、付属部品の材質が前記フィルム状容器にヒートシール可能な樹脂、ゴム、エラストマー等の有機材料であることが好ましい。これにより、付属部品をヒートシールにより容易にフィルム状容器に接続することができる。また、付属部品を含めたフィルム状容器をシングルユースに構成することも容易になる。
【0059】
本体容器11内では、細胞培養装置、バイオ医薬品製造装置、培養肉製造装置などのバイオリアクターにおいて、微生物、細胞等の培養物を培養してもよい。培養物としては、特に限定されないが、菌類、細菌類、ウイルス、酵母、藻類、昆虫細胞、植物細胞、動物細胞、バイオ医薬製造用のCHO(Chinese Hamster Ovary)細胞や、HeLa細胞、COS細胞、再生医療用途のiPS細胞、間葉系幹細胞を始めとした幹細胞、分化させた組織細胞などの動物細胞、などが挙げられる。
【0060】
実施形態の圧力測定装置30を備えたシステムは、バイオリアクターであってもよく、培養装置であってもよく、培養装置を兼ねるバイオリアクターであってもよい。液相13中で微生物、細胞等の培養物を培養した場合、培養液の液相13から培養物を回収してもよい。また、微生物、細胞等の培養物が産生した酵素、抗体、化学物質等の産生物を液相13から回収してもよい。
【0061】
実施形態の圧力測定装置30は、微生物、細胞等の培養物が代謝によりガスを発生させたときや、バイオリアクター等の本体容器11内に気体を導入してバブリングさせたときの気相14の圧力の変化を検知することができる。気相14の圧力が一定となるように、給気路15、排気路16を通じて制御してもよい。
【0062】
圧力センサ21と気相14との間に容器34が介在され、圧力センサ21と気相14との間にフィルターを設置する必要がない。これにより、フィルターの目詰まりによる圧力上昇やフィルターの清掃などの手間を回避することができる。また、圧力センサ21が本体容器11の内部の物質に汚染されることがなく、圧力センサ21を繰り返し使用することができる。さらに、バイオリアクター等の本体容器11内の結露により、圧力センサ21の精度が低下することもない。
【0063】
図5に、圧力測定装置30の概略的なシステム構成の一例を示すブロック図を示す。
圧力センサ21は、例えば、コンピュータなどの監視装置40などに接続されている。
【0064】
監視装置40は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)などのプロセッサ41と、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)などの内部メモリ42と、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)などのストレージデバイス43と、周辺機器を接続するための入出力インターフェイス44(入出力I/F)と、装置外部の機器や圧力センサ21に付属する通信装置と通信を行う通信インターフェイス45(通信I/F)と、を備えた通常のコンピュータのハードウェア構成を有する。
【0065】
監視装置40は、例えば、プロセッサ41が内部メモリ42を利用しながら、ストレージデバイス43や内部メモリ42などに格納されたプログラムを実行することで各機能を実現することができる。
監視装置40は、圧力センサ21の圧力値を表示するための液晶ディスプレイや有機ELなどの表示部46を有している。
【0066】
以上、本発明を好適な実施形態に基づいて説明してきたが、本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。改変としては、各実施形態における構成要素の追加、置換、省略、その他の変更が挙げられる。
【符号の説明】
【0067】
10…複合容器、11…本体容器、12…外殻容器、13…液相、14…気相、15…給気路、16…排気路、17…土台、21…圧力センサ、22…ケーブル、23,24,46…表示部、30…圧力測定装置、31…流路、32…箱、33…ポート、34…容器、34a…可撓性部分、34b…非可撓性部分、35…内部空間、36,37…板状部材、38…ジグ、40…監視装置、41…プロセッサ、42…内部メモリ、43…ストレージデバイス、44…入出力インターフェイス、45…通信インターフェイス。
図1
図2
図3
図4
図5