(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176105
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】ノイズ低減装置、ノイズ低減方法、及びノイズ低減プログラム
(51)【国際特許分類】
G01D 3/028 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
G01D3/028 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094363
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000125370
【氏名又は名称】学校法人東京理科大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】相川 直幸
【テーマコード(参考)】
2F075
【Fターム(参考)】
2F075AA05
2F075EE16
(57)【要約】
【課題】振幅が大きくなるのを抑えつつノイズを低減することができる。
【解決手段】ノイズ低減装置は、入力信号をヒルベルト変換する第1のヒルベルト変換器と、前記第1のヒルベルト変換器と縦続接続され、前記第1のヒルベルト変換器から出力された第1のヒルベルト変換信号をヒルベルト変換する第2のヒルベルト変換器であって、前記第1のヒルベルト変換器と逆特性の第2のヒルベルト変換器と、前記入力信号を前記第1のヒルベルト変換器の次数及び前記第2のヒルベルト変換器の次数に応じて遅延させる遅延器と、前記遅延器から出力された遅延信号と、前記第2のヒルベルト変換器から出力された第2のヒルベルト変換信号と、を加算する加算器と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号をヒルベルト変換する第1のヒルベルト変換器と、
前記第1のヒルベルト変換器と縦続接続され、前記第1のヒルベルト変換器から出力された第1のヒルベルト変換信号をヒルベルト変換する第2のヒルベルト変換器であって、前記第1のヒルベルト変換器と逆特性の第2のヒルベルト変換器と、
前記入力信号を前記第1のヒルベルト変換器の次数及び前記第2のヒルベルト変換器の次数に応じて遅延させる遅延器と、
前記遅延器から出力された遅延信号と、前記第2のヒルベルト変換器から出力された第2のヒルベルト変換信号と、を加算する加算器と、
を備えたノイズ低減装置。
【請求項2】
前記第1のヒルベルト変換器の次数及び前記第2のヒルベルト変換器の次数が、奇数の次数である
請求項1記載のノイズ低減装置。
【請求項3】
コンピュータが、
入力信号を第1のヒルベルト変換処理により第1のヒルベルト変換信号に変換し、
前記第1のヒルベルト変換信号を、前記第1のヒルベルト変換処理と逆特性の第2のヒルベルト変換処理により第2のヒルベルト変換信号に変換し、
前記入力信号を前記第1のヒルベルト変換処理の次数及び前記第2のヒルベルト変換処理の次数に応じて遅延させた遅延信号を生成し、
前記遅延信号と、前記第2のヒルベルト変換信号と、を加算する、
ことを含む処理を実行するノイズ低減方法。
【請求項4】
コンピュータに、
入力信号を第1のヒルベルト変換処理により第1のヒルベルト変換信号に変換し、
前記第1のヒルベルト変換信号を、前記第1のヒルベルト変換処理と逆特性の第2のヒルベルト変換処理により第2のヒルベルト変換信号に変換し、
前記入力信号を前記第1のヒルベルト変換処理の次数及び前記第2のヒルベルト変換処理の次数に応じて遅延させた遅延信号を生成し、
前記遅延信号と、前記第2のヒルベルト変換信号と、を加算する、
ことを含む処理を実行させるノイズ低減プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の技術は、ノイズ低減装置、ノイズ低減方法、及びノイズ低減プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、センサの出力信号に対するA/D変換処理で得られた時系列の信号を入力信号として受け、該入力信号に含まれる所定周波数(Fa)より高い高域雑音成分を除去し、該高域雑音成分が除去された第1処理信号(Y(k))から前記所定周波数以下の低域雑音成分を除去して、前記入力信号の直流成分を求める信号処理方法であって、前記低域雑音成分を除去する処理は、移相処理により生じると予測される除去対象の低域雑音成分の利得低下を補償するために予め設定された固定ゲインで前記第1処理信号を増幅する段階(S5)と、前記増幅された信号に対して、ヒルベルト変換処理を2段行い、前記増幅された信号に対して180度の位相差を有する第1移相信号(Ni)と、該第1移相信号に対して90度の位相差を有する第2移相信号(Nq)とを生成する段階(S6)と、前記第1移相信号と第2移相信号とに基づいて、前記増幅された信号に含まれる前記除去対象の低域雑音成分の瞬時振幅、瞬時位相および瞬時周波数を算出する段階(S7)と、前記算出された瞬時振幅と、前記第1処理信号に含まれる前記除去対象の低域雑音成分の瞬時振幅との誤差を検出する段階(S8)と、前記算出した瞬時振幅、瞬時位相、瞬時周波数および前記瞬時振幅の誤差に基づいて前記第1処理信号に含まれる前記除去対象の低域雑音成分と同振幅、同周波数で且つ位相が反転した第1雑音信号を生成する段階(S9)と、前記第1処理信号と前記第1雑音信号とを加算して、前記第1処理信号から前記除去対象の低域雑音成分を除去した第2処理信号(Z(k))を求める段階(S10)とを含むことを特徴とする信号処理方法が開示されている。
【0003】
特許文献2には、センサの出力信号をオーバサンプリングによりデジタルの原信号列に変換する段階(S1)と、前記原信号列に含まれる交流成分の信号列を検出する段階(S2)と、前記原信号列と前記抽出した交流成分の信号列との位相および振幅を合わせる段階(S3)と、前記位相および振幅を合わせた両信号列の加算または減算を行い、前記原信号列の直流成分の信号列を検出する段階(S4)と、前記直流成分の信号列に対する間引き処理を行う段階(S5)と、前記間引きされた信号列に対する高域遮断処理を行う段階(S6)とを含み、前記高域遮断処理された信号列を前記センサの出力信号の収束予想値とする信号処理方法が開示されている。
【0004】
特許文献3には、オーディオ信号を入力する入力部と、前記入力部に入力したオーディオ信号を取得する取得部と、前記取得部で取得したオーディオ信号にヒルベルト変換を行って解析信号化し、当該解析信号の乗算を行うことにより高調波を発生する演算部と、前記演算部の演算後の信号を前記入力部に入力したオーディオ信号に加算して出力する加算部と、を備えたことを特徴とする信号処理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-276268号公報
【特許文献2】特開2005-274320号公報
【特許文献3】特開2011-119892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
搬送系における質量計測や船舶上における質量計測などにおいて、いかに精度良く秤量物の質量計測を行うかという課題がある。そのためには搬送系の振動雑音を効率よく除去する必要がある。
【0007】
一般に、搬送系の質量計測において、質量は直流成分であり、その他の雑音成分は交流成分と見なすことができる。
【0008】
図12には、第1のヒルベルト変換器H1
e、第2のヒルベルト変換器H2
e、2つの第1のヒルベルト変換器H1
eを縦続接続したヒルベルト変換器(H1
e+H1
e)、第1のヒルベルト変換器H1
e及び第2のヒルベルト変換器H2
eを縦続接続したヒルベルト変換器(H1
e+H2
e)のそれぞれの構成において船舶上で質量計測した場合のシミュレーションによる振幅特性を示した。
図12の横軸は正規化された角周波数(Angular Frequency)、縦軸は振幅である。
【0009】
なお、ヒルベルト変換器H1eの次数N1は26、第2のヒルベルト変換器H2eの次数N2は30である。従って、ヒルベルト変換器(H1e+H1e)の次数は52、ヒルベルト変換器(H1e+H2e)の次数は56である。帯域幅は、0.15から0.85である。
【0010】
図12に示すように、第1のヒルベルト変換器H1
eは、角周波数が0.05から0.95までの帯域を有する信号を90度位相変換することができる。このため、同じ第1のヒルベルト変換器H1
eを縦続接続したヒルベルト変換器(H1
e+H1
e)は、信号の位相を180度変換することができる。
【0011】
しかしながら、一般に同じ特性のヒルベルト変換器を縦続接続すると、
図13の「Cascade」で示す特性のように、「Single」で示す単一のヒルベルト変換器の特性と比較して、阻止域減衰量は大きくなりノイズ低減効果は向上するが、信号を通す通過域の振幅は大きくなり信号を増幅する。
【0012】
理想的なヒルベルト変換器は交流成分を全て90度位相変換するので、同じ特性の第1のヒルベルト変換器H1
eを縦続接続したヒルベルト変換器(H1
e+H1
e)の場合は、
図12に示すように、単一の第1のヒルベルト変換器H1
eにおける振幅よりも大きくなってしまう。この結果、同じ第1のヒルベルト変換器H1
eを縦続接続することで単一のヒルベルト変換器H1
eにおける交流成分の位相を180度変換することはできるが、振幅が大きくなってしまう、という問題があった。
【0013】
開示の技術は、上記事実を考慮して成されたものであり、振幅が大きくなるのを抑えつつノイズを低減することができるノイズ低減装置、ノイズ低減方法、及びノイズ低減プログラムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、第1態様に係るノイズ低減装置は、入力信号をヒルベルト変換する第1のヒルベルト変換器と、前記第1のヒルベルト変換器と縦続接続され、前記第1のヒルベルト変換器から出力された第1のヒルベルト変換信号をヒルベルト変換する第2のヒルベルト変換器であって、前記第1のヒルベルト変換器と逆特性の第2のヒルベルト変換器と、前記入力信号を前記第1のヒルベルト変換器の次数及び前記第2のヒルベルト変換器の次数に応じて遅延させる遅延器と、前記遅延器から出力された遅延信号と、前記第2のヒルベルト変換器から出力された第2のヒルベルト変換信号と、を加算する加算器と、を備える。
【0015】
第1態様に係るノイズ低減装置において、前記第1のヒルベルト変換器の次数及び前記第2のヒルベルト変換器の次数が、奇数の次数である構成としてもよい。
【0016】
第2態様に係るノイズ低減方法は、コンピュータが、入力信号を第1のヒルベルト変換処理により第1のヒルベルト変換信号に変換し、前記第1のヒルベルト変換信号を、前記第1のヒルベルト変換処理と逆特性の第2のヒルベルト変換処理により第2のヒルベルト変換信号に変換し、前記入力信号を前記第1のヒルベルト変換処理の次数及び前記第2のヒルベルト変換処理の次数に応じて遅延させた遅延信号を生成し、前記遅延信号と、前記第2のヒルベルト変換信号と、を加算する、ことを含む処理を実行する。
【0017】
第3態様に係るノイズ低減プログラムは、コンピュータに、入力信号を第1のヒルベルト変換処理により第1のヒルベルト変換信号に変換し、前記第1のヒルベルト変換信号を、前記第1のヒルベルト変換処理と逆特性の第2のヒルベルト変換処理により第2のヒルベルト変換信号に変換し、前記入力信号を前記第1のヒルベルト変換処理の次数及び前記第2のヒルベルト変換処理の次数に応じて遅延させた遅延信号を生成し、前記遅延信号と、前記第2のヒルベルト変換信号と、を加算する、ことを含む処理を実行させる。
【発明の効果】
【0018】
開示の技術によれば、振幅が大きくなるのを抑えつつノイズを低減することができる、という効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図2】船舶上で質量計測した場合のシミュレーションにおける入力信号と次数が偶数のヒルベルト変換器によりヒルベルト変換された信号の波形図である。
【
図3】船舶上で質量計測した場合のシミュレーションにおける次数が奇数のヒルベルト変換器の振幅特性を示す図である。
【
図4】船舶上で質量計測した場合のシミュレーションにおける入力信号と次数が奇数のヒルベルト変換器によりヒルベルト変換された信号の波形図である。
【
図5】船舶上で質量計測した場合における次数が偶数のヒルベルト変換器及び次数が奇数のヒルベルト変換器によりヒルベルト変換された信号の波形図である。
【
図6】コンベア上で質量計測した場合のシミュレーションにおける次数が偶数のヒルベルト変換器の振幅特性を示す図である。
【
図7】コンベア上で質量計測した場合のシミュレーションにおける入力信号と次数が偶数のヒルベルト変換器によりヒルベルト変換された信号の波形図である。
【
図8】コンベア上で質量計測した場合のシミュレーションにおける次数が奇数のヒルベルト変換器の振幅特性を示す図である。
【
図9】コンベア上で質量計測した場合のシミュレーションにおける入力信号と次数が奇数のヒルベルト変換器によりヒルベルト変換された信号の波形図である。
【
図10】コンベア上で質量計測した場合における次数が偶数のヒルベルト変換器及び次数が奇数のヒルベルト変換器によりヒルベルト変換された信号の波形図である。
【
図11】ヒルベルト変換処理のフローチャートである。
【
図12】船舶上で質量計測した場合のシミュレーションにおける次数が偶数のヒルベルト変換器の振幅特性を示す図である。
【
図13】単一のヒルベルト変換器及びヒルベルト変換器を縦続接続したヒルベルト変換器の振幅特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
図1は、ノイズ低減装置10の機能構成を示す図である。
図1に示すように、ノイズ低減装置10は、第1のヒルベルト変換器H1と、第2のヒルベルト変換器H2と、遅延器DLと、加算器ADと、を備える。
【0022】
第1のヒルベルト変換器H1は、入力信号x(n)に対して第1のヒルベルト変換を行うことにより、第1のヒルベルト変換信号h1(n)を生成する。第1のヒルベルト変換器H1は、生成した第1のヒルベルト変換信号h1(n)を第2のヒルベルト変換器H2に出力する。
【0023】
第2のヒルベルト変換器H2は、第1のヒルベルト変換器H1と縦続接続されている。そして、第2のヒルベルト変換器H2は、第1のヒルベルト変換器H1から出力された第1のヒルベルト変換信号h1(n)に対して第2のヒルベルト変換を行うことにより、第2のヒルベルト変換信号h2(n)を生成する。ここで、第2のヒルベルト変換器H2の振幅特性は、第1のヒルベルト変換器H1の振幅特性とは逆特性の振幅特性である。第2のヒルベルト変換器H2により生成された第2のヒルベルト変換信号h2(n)は、加算器ADに出力される。
【0024】
遅延器DLは、入力信号x(n)を第1のヒルベルト変換器H1の次数及び第2のヒルベルト変換器H2の次数に応じて遅延させた遅延信号d(n)を生成する。遅延器DLにより生成された遅延信号d(n)は、加算器ADに出力される。
【0025】
加算器ADは、遅延器DLから出力された遅延信号d(n)と、第2のヒルベルト変換器H2から出力された第2のヒルベルト変換信号h2(n)と、を加算した出力信号y(n)を生成して出力する。
【0026】
なお、ヒルベルト変換器を次数が偶数か奇数かで区別する場合は、次数が偶数のヒルベルト変換器については、符号の末尾に「e」を付す。また、次数が奇数のヒルベルト変換器については、符号の末尾に「o」を付す。
【0027】
次数が26の第1のヒルベルト変換器H1
e、次数が30の第2のヒルベルト変換器H2
eの場合、
図1に示すように第1のヒルベルト変換器H1
eと第2のヒルベルト変換器H2とを縦続接続したヒルベルト変換器(H1
e+H2
e)の振幅特性は、
図12のようになり、振幅を小さくすることができ、効果的にノイズを低減することができる。
【0028】
また、
図2には、入力信号x(n)と、同じ第1のヒルベルト変換器H1eを縦続接続したヒルベルト変換器(H1
e+H1
e)によって入力信号x(n)をヒルベルト変換した信号と、
図1に示すように第1のヒルベルト変換器H1
eと第2のヒルベルト変換器H2
eとを縦続接続したヒルベルト変換器(H1
e+H2
e)によってヒルベルト変換した信号と、を船舶上で質量計測した場合のシミュレーションにより取得した波形を示す。
図2に示すように、ヒルベルト変換器(H1
e+H2
e)によってヒルベルト変換した信号は、ヒルベルト変換器(H1
e+H1
e)によってヒルベルト変換された信号と比較して、振幅が小さくなっており、ノイズが低減できていることが判る。
【0029】
図12から分かるように、次数が偶数のヒルベルト変換器は、正規化された角周波数における1付近の信号を通すことができない。そこで、第1のヒルベルト変換器H1の次数及び第2のヒルベルト変換器H2の次数を、ともに奇数としてもよい。
【0030】
図3には、船舶上で質量計測した場合のシミュレーションにおいて、第1のヒルベルト変換器H1
oの次数N1を27、第2のヒルベルト変換器H2
oの次数N2を31とした場合における振幅特性を示した。
図3に示すように、ヒルベルト変換器の次数を奇数とすると、正規化された角周波数における1付近の信号を通すことができ、帯域幅は、0.05から1となる。
【0031】
また、
図3に示すように、次数が奇数の第1のヒルベルト変換器H1
oを縦続接続したヒルベルト変換器(H1
o+H1
o)の場合、次数が偶数の場合と同様に、振幅が大きくなる。これに対し、次数が奇数の第1のヒルベルト変換器H1と、次数が奇数の第2のヒルベルト変換器H2を縦続接続したヒルベルト変換器(H1
o+H2
o)の場合、ヒルベルト変換器(H1
o+H1
o)の場合と比較して、振幅が小さくなっており、ノイズを効果的に低減できていることが判る。
【0032】
また、
図4には、入力信号x(n)と、次数が奇数である同じ第1のヒルベルト変換器H1
oを縦続接続したヒルベルト変換器(H1
o+H1
o)によって入力信号x(n)をヒルベルト変換した信号と、次数が奇数である第1のヒルベルト変換器H1と次数が奇数である第2のヒルベルト変換器H2
oとを縦続接続したヒルベルト変換器(H1
o+H2
o)によってヒルベルト変換した信号と、を船舶上で質量計測した場合のシミュレーションにおいて取得した波形を示す。
図4に示すように、ヒルベルト変換器(H1
o+H2
o)によってヒルベルト変換した信号は、ヒルベルト変換器(H1
o+H1
o)によってヒルベルト変換された信号と比較して、振幅が小さくなっており、ノイズが低減できていることが判る。
【0033】
また、
図5には、次数が偶数である第1のヒルベルト変換器H1
eと次数が偶数である第2のヒルベルト変換器H2
eとを縦続接続したヒルベルト変換器(H1
e+H2
e)によって入力信号x(n)をヒルベルト変換した信号evenと、次数が奇数である第1のヒルベルト変換器H1
oと次数が奇数である第2のヒルベルト変換器H2
oとを縦続接続したヒルベルト変換器(H1
o+H2
o)によって入力信号x(n)をヒルベルト変換した信号oddと、を船舶上で質量計測した場合のシミュレーションにおいて取得した波形を示した。
図5に示すように、信号oddの方が、信号evenと比較して振幅が小さいことがわかる。この効果は、入力信号x(n)に高周波成分が多く含まれるほど顕著となる。
【0034】
また、
図1から明らかなように、入力信号x(n)と、入力信号x(n)を第1のヒルベルト変換器H1及び第2のヒルベルト変換器H2で変換した信号と、を加算して出力する場合、入力信号x(n)をヒルベルト変換器H1+H2の合計の次数N(=N1+N2)の1/2の次数分遅延させて、第1のヒルベルト変換器H1及び第2のヒルベルト変換器H2で変換した信号と加算させる必要がある。
【0035】
このため、信号をN/2分遅延させる遅延器が必要となるが、次数Nが奇数の単一のヒルベルト変換器は、N/2が整数とならないため通常は使用されない。
【0036】
これに対し、次数がともに奇数の第1のヒルベルト変換器H1o及び第2のヒルベルト変換器H2oを縦続接続した構成とすることにより、合計の次数Nの1/2が整数となるため、次数が奇数のヒルベルト変換器を用いることができる。
【0037】
図2~5、12、13は、船舶上で質量計測した場合のシミュレーションによる結果であるが、搬送系、具体的にはコンベア上で質量計測した場合のシミュレーションによる結果を
図6~10に示す。
【0038】
図6に示すように、コンベア上で質量計測した場合のシミュレーション結果も、
図12に示す船舶上で質量計測した場合のシミュレーション結果と同様に、次数が偶数の第1のヒルベルト変換器H1
eと、次数が偶数の第2のヒルベルト変換器H2
eを縦続接続したヒルベルト変換器(H1
e+H2
e)の場合、ヒルベルト変換器(H1
e+H1
e)の場合と比較して、振幅が小さくなっており、ノイズを効果的に低減できていることが判る。
【0039】
また、
図7に示すように、コンベア上で質量計測した場合のシミュレーション結果も、
図3に示す船舶上で質量計測した場合のシミュレーション結果と同様に、ヒルベルト変換器(H1
e+H2
e)によってヒルベルト変換した信号は、ヒルベルト変換器(H1
e+H1
e)によってヒルベルト変換された信号と比較して、振幅が小さくなっており、ノイズが低減できていることが判る。具体的には、ヒルベルト変換器(H1
e+H1
e)によってヒルベルト変換された信号の振幅は、0.00195であり、ヒルベルト変換器(H1
e+H2
e)によってヒルベルト変換された信号の振幅は、0.00189である。このように、ヒルベルト変換器(H1
e+H1
e)によってヒルベルト変換された信号と比較して、ヒルベルト変換器(H1
e+H2
e)によってヒルベルト変換された信号の振幅の方が小さい。
【0040】
また、
図8に示すように、コンベア上で質量計測した場合のシミュレーション結果も、
図3に示す船舶上で質量計測した場合のシミュレーション結果と同様に、次数が奇数の第1のヒルベルト変換器H1
oと、次数が奇数の第2のヒルベルト変換器H2
oを縦続接続したヒルベルト変換器(H1
o+H2
o)の場合、ヒルベルト変換器(H1
o+H1
o)の場合と比較して、振幅が小さくなっており、ノイズを効果的に低減できていることが判る。
【0041】
また、
図9に示すように、コンベア上で質量計測した場合のシミュレーション結果も、
図3に示す船舶上で質量計測した場合のシミュレーション結果と同様に、次数が奇数のヒルベルト変換器(H1
o+H2
o)によってヒルベルト変換した信号は、ヒルベルト変換器(H1
o+H1
o)によってヒルベルト変換された信号と比較して、振幅が小さくなっており、ノイズが低減できていることが判る。具体的には、ヒルベルト変換器(H1
o+H1
o)によってヒルベルト変換された信号の振幅は、0.0019であり、ヒルベルト変換器(H1
o+H2
o)によってヒルベルト変換された信号の振幅は、0.00178である。このように、ヒルベルト変換器(H1
o+H1
o)によってヒルベルト変換された信号と比較して、ヒルベルト変換器(H1
o+H2
o)によってヒルベルト変換された信号の振幅の方が小さい。
【0042】
また、
図10に示すように、コンベア上で質量計測した場合のシミュレーション結果も、
図5に示す船舶上で質量計測した場合のシミュレーション結果と同様に、信号oddの方が、信号evenと比較して振幅が小さいことがわかる。これは、
図7、9の結果からも明らかである。
【0043】
ノイズ低減装置10に含まれる各機能部は、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等で構成されるが、これに限られない。例えばノイズ低減装置10をCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、不揮発性メモリ、及び入出力インターフェース(I/O)等を備えたコンピュータで構成してもよい。この場合、ノイズ低減プログラムをROMに予め記憶しておき、CPUがROMからノイズ低減プログラムを読み込んでノイズ低減処理を実行することにより、各機能部が実現される構成としてもよい。また、ノイズ低減プログラムは、不揮発性の非遷移的(non-transitory)記録媒体に記憶して、又はネットワークを介して配布して、適宜インストールすることにより不揮発性メモリ等に記憶されてもよい。
【0044】
不揮発性の非遷移的記録媒体の例としては、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、光磁気ディスク、HDD(ハードディスクドライブ)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、フラッシュメモリ、メモリカード等が挙げられる。
【0045】
次に、本実施形態の作用として、ノイズ低減装置10で実行されるノイズ低減処理について
図2に示すフローチャートを参照して説明する。なお、
図2のノイズ低減処理は、入力信号x(n)が入力されている間は繰り返し実行される。
【0046】
ステップS100では、入力信号x(n)に対して第1のヒルベルト変換を行い、第1のヒルベルト変換信号h1(n)を生成する。
【0047】
ステップS101では、ステップS100で生成された第1のヒルベルト変換信号h1(n)に対して第2のヒルベルト変換を行うことにより、第2のヒルベルト変換信号h2(n)を生成する。
【0048】
ステップS102では、入力信号x(n)をステップS100の第1のヒルベルト変換処理の次数N1及びステップS101の第2のヒルベルト変換処理の次数N2の合計次数Nの1/2の次数に応じて遅延させた遅延信号d(n)を生成する。
【0049】
なお、ステップS100及びステップS101の処理と、ステップS102の処理と、は並行して実行される。
【0050】
ステップS103では、ステップS101で生成された第2のヒルベルト変換信号h2(n)と、ステップS102で生成された遅延信号d(n)と、を加算した加算信号y(n)を生成して出力する。
【0051】
このように、本実施形態では、第1のヒルベルト変換器H1及び第2のヒルベルト変換器H2を縦続接続する構成としたことにより、入力信号x(n)に対して振幅が大きくなるのを抑えつつノイズを低減した出力信号y(n)を得ることができる。
【0052】
また、第1のヒルベルト変換器H1及び第2のヒルベルト変換器H2の次数をともに奇数とすることにより、正規化された角周波数における1付近の信号を通すことができる。
【0053】
なお、本実施形態は、請求項に係る発明を限定するものではなく、また実施の形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。前述した実施の形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件の組み合わせにより種々の発明が抽出される。実施の形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、効果が得られる限りにおいて、この幾つかの構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0054】
10 ノイズ低減装置
H1 第1のヒルベルト変換器
H2 第2のヒルベルト変換器
AD 加算器
DL 遅延器