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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176108
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】基板ステージ及び真空処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/677 20060101AFI20241212BHJP
   B25J 9/06 20060101ALN20241212BHJP
【FI】
H01L21/68 A
B25J9/06 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094367
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】弁理士法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】中畑 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】中村 真也
【テーマコード(参考)】
3C707
5F131
【Fターム(参考)】
3C707AS24
3C707BS15
3C707BS23
3C707BS26
3C707CY27
3C707JS02
3C707NS13
5F131AA02
5F131AA03
5F131BA03
5F131BA04
5F131BA11
5F131BA19
5F131BA37
5F131CA09
5F131CA18
5F131DA02
5F131DA22
5F131DA42
5F131DB02
5F131DB05
5F131DB83
(57)【要約】
【課題】反りのある基板をその他方の面を上方に向けた姿勢で支持でき、真空処理後の微細なパーティクルの基板への付着を可及的に抑制できるようにした基板ステージを提供する。
【解決手段】基台5と、基台上面から隙間を存して基板Swの下面外周縁部を支持する環状壁6とを備える。その上面内縁部に、径方向内方に向かって下方に傾斜して下面外周縁部が着座する第1傾斜支持面64が形成され、環状壁の内壁に径方向外方に凹入する受入れ凹部65が周方向に間隔を置いて複数形成される。受入れ凹部に可動体7を収納し、各可動体7の上面に、径方向内方に向かって下方に傾斜する第2傾斜支持面75aを有する支持突起75を夫々設けて下面外周縁部をその周方向3箇所以上で支持可能とする。そして、各支持突起で基板を支持した状態からの各可動体の下動により、基板が第1傾斜支持面64に受け渡されるように構成する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理基板に対して所定の真空処理を実施する真空チャンバ内に配置されて当該被処理基板が設置される基板ステージであって、
基台と、当該基台上面から隙間を存して被処理基板の下面外周縁部を支持する環状壁とを備えるものにおいて、
環状壁の上面内縁部に、径方向内方に向かって下方に傾斜して被処理基板の下面外周縁部が着座する第1傾斜支持面が形成されると共に、当該環状壁の内壁に径方向外方に凹入する受入れ凹部が周方向に間隔を置いて複数形成され、
各受入れ凹部に夫々収納される可動体と各可動体を同期して上下動する駆動体とを更に備え、
各可動体の上面に、径方向内方に向かって下方に傾斜する第2傾斜支持面を有する支持突起を夫々設けて、各支持突起の第2傾斜支持面で被処理基板の下面外周縁部をその周方向3箇所以上で支持可能とし、各支持突起により被処理基板を支持した状態からの各可動体の下動により、被処理基板が第1傾斜支持面に受け渡されるように構成したことを特徴とする基板ステージ。
【請求項2】
前記支持突起が耐熱性樹脂で構成され、各可動体の上面部分に着脱自在に取り付けられることを特徴とする請求項1記載の基板ステージ。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の基板ステージを備える真空チャンバと、当該基板ステージで支持された前記被処理基板の上面に対し真空雰囲気の真空チャンバ内で成膜処理を施す成膜手段とを備える真空処理装置において、
前記環状壁の上面を上下方向の隙間を存して覆うカバーリングを更に備えることを特徴とする真空成膜装置。
【請求項4】
請求項3記載の真空成膜装置であって、真空チャンバ内に配置される防着板を備えて当該防着板が前記環状壁の周囲に位置して上下動自在な可動部分を有するものにおいて、前記カバーリングが可動部分で保持されることを特徴とする真空処理装置。
【請求項5】
請求項4記載の真空成膜装置であって、前記成膜手段を前記基板ステージに対向させて前記真空チャンバに設けられるスパッタリングカソードとし、基板ステージの周囲に、真空チャンバ内に形成されるプラズマ雰囲気を臨むように導電性を持つ筒状のブロック体が設けられるものにおいて、
ブロック体の上方に位置する前記可動部分に50%以上の開口率で開口が形成されることを特徴とする真空処理装置。
【請求項6】
請求項5記載の真空成膜装置であって、前記可動体を上動させた状態で前記被処理基板が前記基板ステージ周囲の一方向に搬送されるものにおいて、
前記真空チャンバ内に、シャッタ板を支持して、当該シャッタ板を前記被処理基板の搬送方向に対向する方向から各可動体の上面への受渡可能な位置に搬送する搬送手段が設けられることを特徴とする真空処理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハなどの被処理基板に対して所定の真空処理を実施する真空チャンバ内に配置されて当該被処理基板が設置される基板ステージ及びこの基板ステージを備える真空処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の基板ステージ及びこの基板ステージを備える真空処理装置として例えば特許文献1に記載のものが知られている。基板ステージは、基台と被処理基板(以下、「基板」という)の下面外周縁部が当接して基台上面から隙間を存して基板の下面外周縁部を支持する環状壁とを備える。環状壁は、固定壁部と所定の円弧長さを持つ複数個の可動壁部とで構成され、可動壁が固定壁部に対して上下動自在に構成されている。環状壁としては、一般に、アルミナや炭化シリコンなどのセラミックスから製作される。
【0003】
処理前の基板を基板ステージへと搬入する場合、各可動壁部が、基台上面から所定の高さ位置まで同期して上動され、この状態で真空搬送ロボットのロボットハンドで支持された基板が各可動壁部に受け渡され、基板の下面外周縁部が円弧状にのびる各可動壁部の上面に着座した状態となる。そして、各可動壁部が同期して下動されると、基板の下面外周縁部の残り部分が固定壁部にも着座する。固定壁部及び可動壁部の上面内縁部は、径方向内方に向かって下方に傾斜して基板の下面外周縁部が当接する傾斜支持面として形成されている。これにより、仮に基板が下方に凹状に反っている場合でも、例えばデバイス構造が既に形成された基板の一方の面が基台上面に接触して傷付くことを防止しながら、固定壁部及び可動壁部に形成される傾斜支持面で基板をその他方の面を上方に向けた姿勢で支持できる。
【0004】
処理済みの基板を基板ステージから搬出する場合には、可動壁部が所定の高さ位置まで再度上動され、可動壁の上面で基板の下面外周縁部が支持される状態に戻す。そして、基板と環状壁との間の空間にロボットハンドを進入させて処理済みの基板がロボットハンドへと受け渡される。然し、上記従来例のものでは、基板ステージに対する基板の搬出入を繰り返していくと、真空処理直後の基板に微細な(所定サイズ以上の)パーティクルが多数付着することが判明した。そこで、本願発明者らは、鋭意検討を重ね、次のことを知見するのに至った。即ち、上記従来例のものでは、可動壁部が比較的長い円弧状の傾斜支持面を持つことで基板との接触面積が多い。そのため、搬送ロボットのロボットハンドから可動壁部に基板を受け渡すときや、基板を支持した状態で可動壁部を上下動するときに、基板が振動してその外周縁部が繰り返し傾斜支持面に衝突して削られることで、これが新たなパーティクルの発塵源となっていることを知見するのに至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-77744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の知見を基になされたものであり、基板の一方の面を傷つけることなく、反りのある基板をその他方の面を上方に向けた姿勢で支持できるという機能を損なうことなく、成膜処理を繰り返しても成膜直後の基板への微細なパーティクルの付着が可及的に抑制できるようにした基板ステージ及び真空処理装置を提供することをその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、被処理基板に対して所定の真空処理を実施する真空チャンバ内に配置されて当該被処理基板が設置される本発明の基板ステージは、基台と、当該基台上面から隙間を存して被処理基板の下面外周縁部を支持する環状壁とを備え、環状壁の上面内縁部に、径方向内方に向かって下方に傾斜して被処理基板の下面外周縁部が着座する第1傾斜支持面が形成されると共に、当該環状壁の内壁に径方向外方に凹入する受入れ凹部が周方向に間隔を置いて複数形成され、受入れ凹部に夫々収納される可動体と各可動体を同期して上下動する駆動体とを更に備え、各可動体の上面に、径方向内方に向かって下方に傾斜する第2傾斜支持面を有する支持突起を夫々設けて、各支持突起の第2傾斜支持面で被処理基板の下面外周縁部をその周方向3箇所以上で支持可能とし、各支持突起により被処理基板を支持した状態からの各可動体の下動により、被処理基板が第1傾斜支持面に受け渡されるように構成したことを特徴とする。この場合、前記支持突起が耐熱性樹脂で構成され、各可動体の上面部分に着脱自在に取り付けられることが好ましい。
【0008】
本発明によれば、処理前の基板を基板ステージへと搬入する場合、各可動壁部が、基台の上面から所定の高さ位置まで同期して上動され、この状態で真空搬送ロボットのロボットハンドで支持された基板が各可動壁部の支持突起に受け渡される。このとき、基板の下面外周縁部が各支持突起の第2傾斜支持面に着座して基板がその周方向3箇所以上で支持された状態となる。そして、各可動壁部が同期して下動し、第1傾斜支持面と第2傾斜支持面とが同一の水平面上にある高さ位置を超えると、各可動体の上方に位置する基板の下外周縁部を除く残りの部分が第1傾斜支持面に着座して基板が環状壁でのみ支持された状態となる。このとき、可動体は微小隙間を存して受入れ凹部内に位置する。
【0009】
このように本発明では、各支持突起の第2傾斜支持面でのみ基板の下面外周縁部を少なくとも3点支持する構成を採用し、基板との接触面積を可及的に小さくすることで、成膜処理を繰り返しても成膜直後の基板に微細な(所定サイズ以上の)パーティクルが付着することが飛躍的に減少できることが確認された。このとき、支持突起を基板より柔らかい材質の(即ち、クッション性のある)耐熱性樹脂で構成しておけば、より発塵の発生を抑制できて効果的である。ここで、基板を半導体ウエハとし、基板の外周縁部をベベル部とした場合、基板サイズに応じて固定壁部の第1傾斜支持面と支持突起の第2傾斜支持面との基台上面に対する傾斜角を4度~40度の範囲に設定しておけばよい。これにより、半導体ウエハが仮に下方に凹状に反ったものであっても、微小隙間を持って基台上面への接触を確実に防止できる状態且つベベル部のみが第1傾斜支持面に着座した状態で基板を支持することができ、しかも、プラズマを利用して基板に対して所定の真空処理を施す際に、基台の上面や当該環状壁の受入れ凹部と可動体との間の隙間への所謂放電漏れも防止することができる。更に、基板の搬出入を繰り返すことで、支持突起が変形したような場合には、耐熱性樹脂製の当該支持突起のみを交換すれば済み、有利である。
【0010】
また、上記課題を解決するために、上記基板ステージを備える真空チャンバと、当該基板ステージで支持された基板の上面に対し真空雰囲気の真空チャンバ内で成膜処理を施す成膜手段とを備える本発明の真空処理装置は、環状壁の上面を上下方向の隙間を存して覆うカバーリングを更に備えることを特徴とする。これにより、真空処理装置内にて基板に対する成膜処理を施す際に、環状壁への着膜を可及的に抑制することができる。そのため、環状壁が新たなパーティクルの発塵源となって、成膜直後の被処理基板に微細な(所定サイズ以上の)パーティクルが付着することを抑制することができる。
【0011】
本発明においては、真空チャンバ内に配置される防着板を備えて当該防着板が環状壁の周囲に位置して上下動自在な可動部分を有するような場合、カバーリングが可動部分で保持されることが好ましい。これにより、カバーリングと干渉することがなく、真空搬送ロボットにより支持突起への基板の受け渡しが容易に実施でき、有利である。
【0012】
また、成膜手段を前記基板ステージに対向させて真空チャンバに設けられるスパッタリングカソードとし、基板ステージの周囲に、真空チャンバ内に形成されるプラズマ雰囲気を臨むように導電性を持つ筒状のブロック体が設けられるような場合、ブロック体の上方に位置する前記可動部分に50%以上の開口率で開口が形成されるようにしておけば、絶縁物ターゲットをスパッタリングして被処理基板に成膜するような場合でも、プラズマを安定させた状態で成膜できることが確認された。
【0013】
なお、被処理基板に対して、例えば反応性スパッタリング法によりシリコン窒化物膜を成膜するような場合、所謂ダミー処理を定期的に実施することが一般である。このとき、可動体を上動させた状態で被処理基板が基板ステージ周囲の一方向に搬送されるものとし、真空チャンバ内に、シャッタ板を支持して、当該シャッタ板を前記被処理基板の搬送方向に対向する方向から各可動体の上面への受渡可能な位置に搬送する搬送手段を設けておけば、大気雰囲気からシャッタ板を殊更搬送することなく、ダミー処理が簡単に実施でき、有利である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態の基板ステージ及びこれを備える真空処置装置を備える真空処理システムの構成を模式的に示す図。
図2】(a)は、ロードロックチャンバの切断平面図、(b)は、(a)のIIb-IIb線に沿う断面図。
図3】(a)は、ロボットハンドの斜視図、(b)は、突条での基板の支持状態を説明する部分拡大断面図、(c)は、支持突起での基板の支持状態を説明する部分拡大断面図。
図4】本実施形態のスパッタリング装置をその成膜位置で示す断面図。
図5図4の要部を拡大した断面図。
図6】環状壁を説明する平面図。
図7】カバ-リングを持つ下防着板を説明する平面図。
図8図4に示すスパッタリング装置をその搬送位置で示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、「被処理基板」をφ300mmの半導体ウエハ(以下、「基板Sw」という)、その「外周縁部」を半導体ウエハの外端面を面取りしてなるベベル部Sb(例えば、基板Sw外縁から2mm以内の部分)とし、また、「真空処理装置」を基板Swの上面にスパッタリング法により所定の薄膜を成膜するスパッタリング装置としたものを例に本発明の基板ステージ及びこの基板ステージを備える真空処理装置の実施形態について説明する。
【0016】
図1を参照して、CMは、中央の搬送チャンバTcと、搬送チャンバTcを囲うようにして配置されるロードロックチャンバLcと複数の処理チャンバPcとを備えるクラスタツール式の真空処理システムであり、いずれかの処理チャンバPcが、本実施形態の基板ステージSTを備える真空処理装置としてのスパッタリング装置の真空チャンバを構成する。ロードロックチャンバLcの搬送チャンバTcと背向する側にはロボットステージRsが配置されている。ロボットステージRsには大気搬送ロボットRtと複数枚の基板SwをストックできるカセットKwとが設けられている。大気搬送ロボットRtとしては、ベベル部Sbを径方向両側から挟持して基板Swを保持できる多関節式のものが用いられ、基板Swの一方の面(デバイス構造が形成される面)または他方の面が鉛直方向上方を向く姿勢でロードロックチャンバLcに搬送することができる。このような大気搬送ロボットRtとしては公知のものが利用できるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0017】
図2(a)及び(b)も参照して、ロードロックチャンバLcには、特に図示して説明しないが、真空ポンプからの排気管とベントガスを導入するベントガスラインとが夫々接続され、ロードロックチャンバLc内を真空雰囲気と大気雰囲気とに早期に切り換えることができる。ロードロックチャンバLc内には、金属製の基板支持台1が設置されている。基板支持台1の上面には、基板Swと同等の所定径を持つ同一円周上に位置させて3本の支持ピン11が突設させている。各支持ピン11の上面には径方向内方に向かって下方に傾斜する傾斜支持面12が夫々形成され、大気搬送ロボットRtで保持された基板Swをその一方の面または他方の面が鉛直方向上方を向く姿勢で設置することができる。この場合、基板Swの下面と基板支持台1との間に大気搬送ロボットRtや真空搬送ロボットRvのロボットハンド21が進入できる空間を確保できるように支持ピン11の高さが設定される。また、傾斜支持面12は、支持ピン11の平坦な上面に対して4度~30度の範囲の角度α1で傾斜され、基板支持台1の上面から隙間を存してベベル部Sbのみが傾斜支持面12に着座した状態で基板Swが支持される。
【0018】
ロードロックチャンバLcにゲートバルブGvを介して連結される搬送チャンバTcには、特に図示して説明しないが、真空ポンプからの排気管が接続され、所定圧力の真空雰囲気に維持することができる。搬送チャンバTc内には、真空搬送ロボットRvが設置されている。真空搬送ロボットRvは、基板Swを載置した状態で支持する搬送用のロボットハンド21を先端に有する2本のロボットアーム22と、各ロボットアーム22を回転駆動する同心の2本の回転軸23a,23bとを備えた所謂フログレック式のものである。そして、搬送チャンバTc外に設けられる図示省略のモータにより回転軸23a,23bの回転方向や回転角を適宜制御することで、ロボットアーム22が同一平面内で旋回または伸縮する。このとき、伸縮動作を行うと、ロボットハンド21が同一線上に沿って往復動する。なお、各処理チャンバPcでは、後述するように、各可動体7,7を上動させた受渡位置にあるとき、ロボットハンド21で支持された基板Swは、基板ステージST周囲の一方向から搬入され、処理済みの基板Swは、ロボットハンド21に受け渡された後、同方向から搬出される。また、回転軸23a,23bには、特に図示して説明しないが、エアシリンダ等の駆動手段が付設され、ロボットハンド21及びロボットアーム22が旋回または伸縮するのに加えて、上下動するように構成されている。
【0019】
図3(a)~図3(c)も参照して、ロボットアーム22にギアボックス24を介して連結されるロボットハンド21は、スパッタリング法による成膜中に基板Swが加熱される場合があることを考慮して、耐熱性を有すると共に摩擦係数が大きい材料、例えばアルミナや炭化シリコン製の板材から製作されている。ロボットハンド21は、ギアボックス24に連結される基端部21aと、基端部21aから二股状に分岐して先方に延びる一対のフィンガー部21bとを有する。基端部21aの所定位置には、図外の光学式センサでロボットハンド21を検出できるように検出窓21cが開設されている。そして、基板Swと同等の所定径を持つ同一円周上に位置させて、基端部21aの上面の検出窓21cの周方向両側には帯状にのび且つ上方に突出する2個の突条25がビスなどの締結手段26aで着脱自在に取り付けられると共に、両フィンガー部21bの両先端部の上面には、上方に突出する支持突起27が、同様にビスなどの締結手段26bで着脱自在に取り付けられている。
【0020】
ロボットハンド21の上面から同等の高さを持つ突条25と支持突起27とは、基板Swが加熱される場合があることや、ロボットハンド21への基板Swの受け渡し時やその搬送時に発塵の発生を抑制することを考慮して、基板Swより柔らかい材質の(即ち、クッション性のある)耐熱性樹脂で構成される。このような耐熱性樹脂としては、耐熱温度が200℃のフッ素系の樹脂が挙げられる。また、突条25と支持突起27との上面には、径方向内方に向かって下方に傾斜して基板Swのベベル部Sbが着座する傾斜支持面25a,27aが夫々形成され、当該傾斜支持面25a,27aの外周に上方への段差25b,27bが夫々形成されている。この場合、傾斜支持面25a,27aは、ロボットハンド21の上面に対して4度~30度の範囲の角度α2で傾斜され、仮に基板Swが下方に凹状に反ったものであっても、微小隙間を持ってロボットハンド21の上面への接触を確実に防止できる状態且つベベル部Sbのみが突条25と支持突起27との各傾斜支持面25a,27aに周方向4箇所で着座した状態で基板Swを支持することができる。なお、本実施形態では、検出窓21cを形成したため、突条25,25を周方向で2つの部分に分離して設けられているが、検出窓21cを開設しないような場合には、突条25を一体に形成してもよい。
【0021】
以上のようにロボットハンド21を構成することで、ロボットハンド21で基板Swを支持した状態で搬送するときには、基板Swのベベル部Sbの一部を比較的長い一対の突条25,25の傾斜支持面25aに線接触させると共に、残りのベベル部Sbのうち少なくとも周方向2か所で支持突起27の傾斜支持面27aに接触させているため、摩擦抵抗で基板Swの位置ずれが抑制されて安定した搬送が可能になる。そして、傾斜支持面25a,27aの外周に上方への段差25b,27bがあることで、例えば、ロボットハンド21の移動停止時にその慣性力で基板Swが傾斜支持面25a,27aを這い上がるように動いても、段差25b,27bへの当接で勢いが減じられ、基板Swがロボットハンド21から脱落することが防止できる。また、突条25と支持突起27とを着脱自在に取り付けているため、基板Swの搬送を繰り返すことで、突条25や支持突起27が変形したような場合には、当該突条25や支持突起27のみを交換すれば済み、有利である。
【0022】
搬送チャンバTcにゲートバルブGvを介して夫々連結される各処理チャンバPc内には、基板Swの一方の面や他方の面に対して実施しようとする真空処理に応じて各種の機器が設けられている。そして、いずれかの1個の処理チャンバPc内では、本実施形態の基板ステージSTを備えて基板Swの他方の面に対してスパッタリング法により窒化シリコン膜が成膜できるようにしている。これにつき、図4図8を参照して以下に説明する。
【0023】
処理チャンバPcには、図4に示すように、ターボ分子ポンプやロータリーポンプなどからなる真空ポンプユニット31に通じる排気管31aが接続され、処理チャンバPc内を所定圧力(例えば1×10-5Pa)まで真空排気することができる。処理チャンバPcの側壁には、図示省略のガス源に連通し、マスフローコントローラ32が介設されたガス管32aが接続され、処理チャンバPc内にスパッタガスを所定流量で導入することができる。スパッタガスとしては、放電用の希ガスとしてのアルゴンガスと、反応ガスとしての窒素ガスとが用いられる。処理チャンバPcの上部には、シリコン製のターゲット4が設けられている。ターゲット4には図示省略のボンディング材によりバッキングプレート41が接合され、そのスパッタ面42を下方にした姿勢で絶縁体43を介して処理チャンバPc側壁上部に配置される。ターゲット4にはまた、スパッタ電源44からの出力が接続されている。スパッタ電源44としては公知のパルスDC電源や高周波電源を用いることができ、スパッタリング時、所定周波数(例えば、10kHz~40MHz)の電力をターゲット4に投入することができる。そして、処理チャンバPcの下部には、ターゲット4に対向させて本実施形態の基板ステージSTが配置されている。
【0024】
基板ステージSTは、絶縁体51を介して処理チャンバPc下壁に設けられる、基板Swよりも一回り大きい輪郭を有する基台5と、基台5の上面から隙間を存して基板Swのベベル部Sbを支持する環状壁6とを備える。基台5内には冷媒通路5aが形成され、冷媒通路5aに図示省略するチラーから供給される冷媒を循環させることで基台5の上面を所定温度(例えば-20~30℃)に冷却することができる。なお、冷媒通路5aの代わりに、基台5の下面に配管を付設し、この配管に冷媒を循環させるようにしてもよい。冷媒としては、冷却水やエチレングリコールなどの公知のものを使用することができる。基台5は、例えばアルミニウムなどの金属といった高い熱伝導性を持つ材料で作製され、その電位は接地電位とフローティング電位のいずれであってもよい。
【0025】
環状壁6は、図5及び図6に示すように、例えば、アルミニウムや炭化シリコン製であり、絶縁体61を介して基台5の上面に設置される基部62を備える。基部62の上端内縁部には、径方向内方に突出する環状の突出壁部63が形成されている。環状壁6の突出壁部63の上面内縁部には、基板Swと同等の所定径を持つ同一円周上に位置させて、径方向内方に向かって下方に傾斜して基板Swのベベル部Sbが着座する第1傾斜支持面64が形成されている。第1傾斜支持面64は、基台5の上面に対して4度~40度の範囲で傾斜され、仮に基板Swが下方に凹状に反ったものであっても、微小隙間を持って、後述の駆動板部73や基台5の上面への接触を確実に防止できる状態且つベベル部Sbのみが第1傾斜支持面64に着座した状態で基板Swを支持することができる。突出壁部63にまた、径方向外方に凹入する受入れ凹部65が周方向に180度間隔で2箇所形成され、各受入れ凹部65には可動体7が夫々収納されている。
【0026】
可動体7は、環状壁6と同様に、例えば、アルミニウムや炭化シリコン製であり、環状壁6と同一の曲率で湾曲する環状の支持壁部71と、支持壁部71の下端に形成されて径方向内方に突出する環状の取付板部72とを備える。支持壁部71は、受入れ凹部65の上下方向の高さと同等以上に定寸されている。両取付板部72,72の下面には、板状の駆動板部73の両端が夫々連結され、駆動板部73の下面中央には、基台5の中央部を上下方向に貫通して設けられる駆動体としてのアクチュエータ74の駆動軸74aが連結されている。これにより、可動体7が環状壁6の受入れ凹部65から出没自在に上下動する。また、支持壁部71の上面の内周側に下方への段差部71aが形成され、段差部71aが、第1傾斜支持面64が形成される同一円周上に位置するようにしている。
【0027】
一方の支持壁部71の段差部71aの上面中央と、他方の支持壁部71の段差部71aの上面両端とには、径方向内方に向かって下方に傾斜する第2傾斜支持面75aを有する3個の支持突起75が夫々設けられ、各支持突起75の第2傾斜支持面75aで基板Swのベベル部Sbをその周方向3箇所で支持可能としている。支持突起75は、上記と同様に、基板Swより柔らかい材質の(即ち、クッション性のある)耐熱性樹脂で構成され、このような耐熱性樹脂としては、上記同様に、耐熱温度が200℃のフッ素系の樹脂が挙げられる。この場合、支持突起75は、ビスなどの締結手段(図示せず)で着脱自在に取り付けることができる。また、第2傾斜支持面75aは、基台5の上面に対して4度~40度の範囲で傾斜され、その外端が支持壁部71の上面と略面一になるようにしている。これにより、仮に基板Swが下方に凹状に反ったものであっても、微小隙間を持って駆動板部73や基台5の上面への接触を確実に防止できる状態且つベベル部Sbのみが各支持突起75の第2傾斜支持面75aに着座した状態で基板Swを支持することができる。
【0028】
処理チャンバPc内には、基板ステージSTの周囲に位置させてブロック体Baが設けられている。ブロック体Baは、金属製の筒状部材で構成され、その外筒面は、その上端から下端に向けて末広がりのテーパ面として形成されている。ブロック体Baにはまた、上下方向に貫通する複数個の貫通孔Ba1が開設されている。そして、アース接地の処理チャンバPcの底面に設置され、スパッタリング時には、アースとしての役割を果たすようにしている。処理チャンバPc内には、ターゲット4と基板ステージSTとの間の成膜空間Psを囲繞する防着板8が設けられている(図4参照)。防着板8は、アルミナやステンレス等の材料製であり、上防着板81と可動部分としての下防着板82とを有する。上防着板81は、筒状部材で構成され、筒状部材の上端に径方向に内方に向けて突出させた取付部81aを介して処理チャンバPcの上部に吊設されている。一方、下防着板82は円盤状の板材で構成され、その径方向外端には上方に向けて起立させた筒状の起立壁部82aが形成されている。
【0029】
下防着板82の中央領域には、第1開口82bが開設され、第1開口82bの内周縁部が、第1傾斜支持面64で支持された基板Swのベベル部Sbの直上に位置するようにしている。また、第1開口82bの周囲でブロック体Baの上方に位置する下防着板82の部分には、図7に示すように、第1開口82bより小面積の第2開口82cが周方向に所定間隔で3箇所開設されている。そして、第2開口82cより内方に残る環状部分82dが本実施形態のカバーリングとなって環状壁6の上方を覆うことで環状壁6へのスパッタ粒子の付着を可及的に抑制するようにしている。
【0030】
また、各第2開口82cを含む環状領域82e(図7中、一点鎖線で囲まれる領域)を基準にして第2開口82cの開口率が50%以上あれば(言い換えると、成膜空間Ps側から視てアースブロックの上表面のうち50%以上の露出する状態であればよい)、シリコン製のターゲット4の表面を窒化させて窒化シリコンとし、その表面の窒化シリコンをスパッタリングして基板Sw表面に高抵抗な膜を成膜するような場合に、プラズマを安定させた状態で成膜し続けることができる。即ち、ブロック体Baとしての機能は損なわれない。なお、本実施形態では、下防着板82にカバーリングに相当する環状部分82dを一体に形成したものを例に説明したが、これに限定されるものではなく、下防着板82に別体のカバーリングを取り付けるようにしてもよい。また、環状部分82dの下面に下方に突出する突条部82fを形成し、環状壁6の上面の所定位置に形成した突条66と共にラビリンス構造を形成し、スパッタ粒子の回り込みや放電漏れを抑制できるようにしてもよい。
【0031】
下防着板82には、処理チャンバPcの下壁を貫通してのびる、モータやエアシリンダなどの駆動手段83からの駆動軸83aが連結されている。駆動手段83によって下防着板82は、図4に示すスパッタリングによる成膜が実施される成膜位置と、成膜位置から下防着板82を所定の高さ位置まで上動させて、真空搬送ロボットRvによる基板ステージSTへの基板Swの受け渡しがされる図8に示す搬送位置との間で上下動される。成膜位置では、上防着板81の下端部と起立壁部82aの上端部とが上下方向で互いにオーバーラップするように設計されている。以下に、基板Swの他方の面に窒化シリコン膜を成膜する場合を例に、カセットKwから基板ステージSTまでの基板Swの搬送を説明する。
【0032】
ロボットステージRsのカセットKwから大気搬送ロボットRtにより一枚の基板Swを取り出し、大気雰囲気のロードロックチャンバLcに搬送する。このとき、基板Swの他方の面が上方を向く姿勢とし、この姿勢のままロードロックチャンバLcに形成される図示省略の開閉扉を通してロードロックチャンバLc内に搬送し、基板支持台1の各支持ピン11で支持されるように基板Swを基板支持台1に設置する。基板Swは、基板支持台1の上面から隙間を存してベベル部Sbのみが傾斜支持面12に着座した状態で支持される(図2参照)。基板Swが設置されると、開閉扉を閉めてロードロックチャンバLc内を所定圧力まで真空排気する。このとき、搬送チャンバTc及び処理チャンバPcは所定圧力まで真空排気された状態となっている。
【0033】
ロードロックチャンバLc内を所定圧力まで真空排気されると、ゲートバルブGvを開けて真空搬送ロボットRvのロボットハンド21で基板Swを受け取る。このとき、回転軸23a,23bの回転方向や回転角を適宜制御することで、基板Swの一方の面と基板支持台1の上面との間の隙間にロボットハンド21を進入させた後、回転軸23a,23bを上動させる。これにより、微小隙間を持ってロボットハンド21の上面への接触を確実に防止できる状態且つベベル部Sbのみが突条25と支持突起27との傾斜支持面25a,27aに着座した状態で基板Swが支持される。
【0034】
ロボットハンド21で基板Swを受け取ると、搬送チャンバTcと処理チャンバPcとの間のゲートバルブGvを開け、回転軸23a,23bの回転方向や回転角を適宜制御することで、ロードロックチャンバLcから搬送チャンバTcを経由して処理チャンバPcへと基板Swが搬送される。このとき、下防着板82が上動して搬送位置にあると共に、各可動体7,7が同期して上動し、環状壁6の受入れ凹部65から突出した受渡位置にある。そして、ロボットハンド21で支持された基板Swが各可動体7,7に受け渡される。これにより、取付板部72や駆動板部73などへの接触を確実に防止できる状態且つベベル部Sbのみが各第2傾斜支持面75aに着座した状態で基板Swがその周方向3箇所で基板Swが支持される。
【0035】
各可動体7,7で基板Swが支持されると、ロボットハンド21を退避させた後に各可動体7,7が同期して下動され、第1傾斜支持面64と第2傾斜支持面75aとが同一の水平面上にある高さ位置を超えると、各可動体7,7の上方に位置する基板Swのベベル部Sbを除く残りの部分が第1傾斜支持面64に着座して環状壁6の第1傾斜支持面64でのみ支持された状態で基板Swが受け渡される。このとき、基板Swの一方の面と基台5の上面または駆動板部73の上面との間に所定の隙間が存する。この場合の隙間は、基板Swのサイズや反りを考慮して、例えば、0.5mm以下の範囲内で可及的小さく設定される。また、各可動体7は微小隙間を存して受入れ凹部65内に没入する。
【0036】
基板Swが環状壁6に受け渡されると、ゲートバルブGvが閉じられると共に、下防着板82が成膜位置まで下動される。これにより、第1開口82bを通してベベル部Sbを除く基板Swの他方の面が成膜空間Psを臨むと共に、下防着板82の環状部分82dで環状壁6の上方が覆われた状態となる一方で、下防着板82の第2開口82cを通してブロック体Baが成膜空間Psを臨む状態となる。基板Swの支持後、アルゴンガスと窒素ガスを10~20sccm、20~40sccmの流量で夫々導入し(このとき、処理チャンバPc内の圧力は0.1~0.4Paとなる)、これと併せて、スパッタ電源44によりターゲット4に例えば周波数100kHz、パルス幅2.0μs(On duty 80%)のパルスDC電力を4kW~6kWの範囲で投入する。なお、スパッタ電源44により13.56MHzの高周波電力を4kW~6kWの範囲で投入することもできる。これにより、成膜空間Psにプラズマ雰囲気が形成され、ターゲット4がスパッタリングされる。このとき、基台5の冷媒通路5aに冷媒を循環させることで、基台5の上面が所定温度(22℃)に冷却される。そして、スパッタリングによりターゲット4から飛散したスパッタ粒子と窒素ガスとの反応生成物を基板Swの表面に付着、堆積させることで、基板Swの他方の面にシリコン窒化膜が成膜される。スパッタリング法による成膜中には、ベベル部Sbの大部分が環状壁6の第1傾斜支持面64で当接しているため、基板Swが位置ずれを起こすといった不具合は生じない。しかも、各可動体7が微小隙間を存して受入れ凹部65内に没入していることで、基板Sw下面と基台5上面との間の空間への放電漏れだけでなく、スパッタ粒子や反応生成物の回り込みを防止できる。
【0037】
成膜処理が終了すると、各可動体7,7が同期して受渡位置まで上動され、ロボットハンド21が進入できる空間が基板Swと基板ステージSTの上面との間に形成される。この状態で、上記と逆の手順で処理済みの基板Swがロボットハンド21に受け渡され、処理チャンバPcから搬送チャンバTcを経由してロードロックチャンバLcへと搬送され、大気搬送ロボットRtによりカセットKwへと戻される。
【0038】
ここで、上記のように反応性スパッタリング法によりシリコン窒化膜を成膜すると、ターゲット4の表面にもまた反応生成物が形成されることから、安定的な成膜が継続でき、また、ターゲット4の表面の反応生成物が新たなパーティクルの発塵源とならないように、ターゲット4の表面をクリーニングする所謂ダミー処理が定期的に実施される。このような場合、特に図示して説明しないが、処理チャンバPc内に、シャッタ板を支持して、シャッタ板を基板Swの搬送方向に対向する方向(図6参照)から各可動体7,7の上面への受渡可能な位置に搬送する搬送手段を設けておけば、大気雰囲気からシャッタ板を殊更搬送することなく、ダミー処理が簡単に実施でき、有利である。
【0039】
以上によれば、処理チャンバPc内にて基板Swを受け渡す際に、可動体7,7の第2傾斜支持面75aでのみ基板Swのベベル部Sbを3点支持する構成を採用し、基板Swとの接触面積を可及的に小さくすることで、成膜処理を繰り返しても成膜直後の基板Swに微細な(所定サイズ以上の)パーティクルが付着することが飛躍的に減少できる。このとき、支持突起75を基板Swより柔らかい材質の(即ち、クッション性のある)耐熱性樹脂で構成したため、より発塵の発生を抑制できて効果的である。しかも、基板Swの搬出入を繰り返すことで、支持突起75が変形したような場合には、耐熱性樹脂製の当該支持突起75のみを交換すれば済み、有利である。また、下防着板82にカバーリングとして機能する環状部分82dを備えることで、環状壁6へのスパッタ粒子の付着を可及的に抑制することができる。そのため、環状壁6が新たなパーティクルの発塵源となって、成膜直後の基板Swに微細な(所定サイズ以上の)パーティクルが付着することを抑制することができる。その上、干渉することなく、真空搬送ロボットRvにより支持突起75への基板Swの受け渡しが容易に実施でき、有利である。
【0040】
次に、上記効果を確認するために、上記真空処理システムCMを用いて、次の実験を行った。本実験では、基板Swとしてφ300mmの半導体ウエハを用い、上述のカセットKwと基板ステージSTとの間の基板Swの搬送に従い、処理チャンバPcに複数枚の基板Swを順次搬送し、基板Swの他方の面に窒化シリコン膜を成膜した後、成膜済みの基板SwをカセットKwに戻した。スパッタリング条件としては、アルゴンガスを流量10sccm、窒素ガスを流量30sccmで処理チャンバPc内に夫々導入し(このときの処理チャンバPc内の圧力は約0.4Pa)、パルスDC電源Psからシリコン製のターゲット4に周波数100kHz,パルス幅2.0μs(On duty 80%)、投入電力4kWに設定し、133秒間シリコン窒化膜を成膜した。反応性スパッタリング法による成膜中には、基台5の上面を22℃に冷却した。
【0041】
カセットKwまで搬送された基板Swの他方の面でのパーティクル数を確認した。この場合、既存のパーティクルカウンタを用い、基板Swの外周縁部から0.5mmの範囲を除く部分における0.1μm以上のパーティクル数をカウントした。先ずは、比較実験として、上記従来例の裏面成膜用の基板ステージを用い、上記と同様の実験を行ったところ、0.1μm以上のパーティクル数は8000以上であり、特に、基板Swの径方向の中間点より外方の領域で多くパーティクルが付着していた。他方で、可動体7の各支持突起75の第2傾斜支持面75aによって基板Swのベベル部Sbを3点支持する構成とした発明実験では、0.1μm以上のパーティクル数が100個以下であり、1000回以上の繰り返し搬送を実施した後においても同じく100個以下であった。本実験より、成膜後の基板Swに付着するパーティクル数を飛躍的に少なくできることが確認された。
【0042】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明の技術思想の範囲を逸脱しない限り、種々の変形が可能である。上記実施形態では、スパッタリング装置SMを例に真空処理装置を説明したが、ドライエッチング装置や熱処理装置のような他の真空処理装置に対しても本発明を適用することができる。例えばドライエッチング装置の場合、基板Swをその表面を下にして環状壁6で保持することで、基板Swの裏面にドライエッチング処理を施す際に、基板Sw表面が基台3上面と接触して傷付くことを防止することができる。また、上記実施形態では、一対の(2個の)可動体7を上下動させる場合を例に説明したが、基板Swを持ち上げることができれば、可動体7の数は限定されない。更に、上記実施形態では、ターゲット4としてシリコン製のものを用い、反応性スパッタリングによりシリコン窒化膜を成膜する場合を例に説明しているが、窒化シリコン製のターゲットをスパッタリングしてシリコン窒化膜を成膜し、または、金属製のターゲットをスパッタリングして金属膜を成膜する場合にも適用することができる。
【符号の説明】
【0043】
ST…基板ステージ、5…基台、6…環状壁、64…第1傾斜支持面、65…受入れ凹部、7…可動体、74…アクチュエータ(駆動体)、75…支持突起、75a…第2傾斜支持面、第Sw…基板(半導体ウエハ)、Sb…基板の外周縁部(ベベル部)、Pc…処理チャンバ(真空チャンバ)、4…ターゲット(スパッタリング法による成膜する成膜手段の構成要素)、8…防着板、82…下防着板(可動部分)、82c…開口、82e…環状部分(カバーリングを構成するもの)、Ba…ブロック体。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8