(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176109
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】搬送用のロボットハンド
(51)【国際特許分類】
H01L 21/677 20060101AFI20241212BHJP
B25J 15/08 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
H01L21/68 A
B25J15/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094368
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】弁理士法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】中畑 俊彦
【テーマコード(参考)】
3C707
5F131
【Fターム(参考)】
3C707AS24
3C707BS15
3C707DS01
3C707ES17
3C707NS13
5F131AA02
5F131BA01
5F131BA11
5F131BA19
5F131BA37
5F131BA39
5F131CA09
5F131CA18
5F131DA02
5F131DA22
5F131DA33
5F131DA42
5F131DB05
5F131DB83
5F131KA12
5F131KB32
(57)【要約】
【課題】基板Swを搬送するための真空搬送ロボットRvに設けられ、基板Swを載置した状態で支持する搬送用のロボットハンド21を搬送時にその下面がいずれにも接触しない状態で確実に支持して搬送が可能なように構成する。
【課題手段】ロボットハンド21の上面に基板と同等の所定径を持つ同一円周上に位置させて帯状にのび且つ上方に突出する突条25と、上方に突出する少なくとも2個の支持突起27とを周方向に間隔を存して備える。突条25と支持突起27とが、径方向内方に向かって下方に傾斜して基板Swの下面外周縁部Sbが着座する傾斜支持面25a,27aを夫々有し、傾斜支持面の外周に上方への段差が設けられる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理基板を搬送するための搬送ロボットに設けられ、被処理基板を載置した状態で支持する搬送用のロボットハンドにおいて、
ロボットハンドの上面に、被処理基板と同等の所定径を持つ同一円周上に位置させて、帯状にのび且つ上方に突出する突条と、上方に突出する少なくとも2個の支持突起とを周方向に間隔を存して備え、
突条と支持突起とが、径方向内方に向かって下方に傾斜して被処理基板の外周縁部が着座する傾斜支持面を夫々有し、当該傾斜支持面の外周に上方への段差が設けられることを特徴とする搬送用のロボットハンド。
【請求項2】
前記傾斜支持面が前記ロボットハンドの表面に対して4度~30度の範囲で傾斜していることを特徴とする請求項1記載の搬送用のロボットハンド。
【請求項3】
前記突条及び前記支持突起が耐熱性樹脂で構成され、前記ロボットハンドの上面に着脱自在に取り付けられることを特徴とする請求項1または請求項2記載の搬送用のロボットハンド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理基板を搬送するための搬送ロボットに設けられ、被処理基板を載置した状態で支持する搬送用のロボットハンドに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の基板搬送用のロボットハンドとして例えば特許文献1に記載のものが知られている。このものは、ロボットハンドの上面に、被処理基板としての半導体ウエハの下面外周縁部が着座する第1の座面が設けられ、この第1の座面の外周に上方への段差が形成されている。また、被処理基板の下面外周縁部から離れたロボットハンドの上面部分に、半導体ウエハが下方に凹状に反ったときに半導体ウエハの下面が着座するように半導体ウエハの中心に向けて下方に傾斜した第2の座面が設けられている。
【0003】
ところで、半導体ウエハには、通常反りが生じている。そして、半導体ウエハの一方の面(即ち、デバイス構造を形成する面)に成膜処理により所定の薄膜を成膜すると、場合によっては、この成膜された薄膜の応力で反り量が大きくなる場合(複数の薄膜を積層すると、反り量が一層大きくなる場合)がある。そのため、半導体ウエハの他方の面に所定の薄膜(例えば、窒化シリコン膜)を成膜し、シリコンウエハの反りを可及的に小さくすることが一般に知られている。
【0004】
半導体ウエハの他方の面に所定の薄膜を成膜しようとする場合、ロボットハンドにより半導体ウエハの他方の面を上に受けた姿勢で支持して搬送することになる。このとき、上記従来例のものでは、半導体ウエハが下方に凹状に反っていると、半導体ウエハの下面(デバイス構造を形成する一方の面)が第2の座面に接触することで、搬送時に振動等により半導体ウエハの下面に傷つく虞がある。このような場合、シリコンウエハの一方の面に保護シートを貼付しておくことも考えられるが、これでは、製造工程が増えてコストアップを招来する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の点に鑑み、被処理基板の搬送時にその下面がいずれにも接触しない状態で確実に支持して搬送が可能な搬送用のロボットハンドを提供することをその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、被処理基板を搬送するための搬送ロボットに設けられ、被処理基板を載置した状態で支持する本発明の搬送用のロボットハンドは、ロボットハンドの上面に、被処理基板と同等の所定径を持つ同一円周上に位置させて、帯状にのび且つ上方に突出する突条と、上方に突出する少なくとも2個の支持突起とを周方向に間隔を存して備え、突条と支持突起とが、径方向内方に向かって下方に傾斜して被処理基板の外周縁部が着座する傾斜支持面を夫々有し、当該傾斜支持面の外周に上方への段差が設けられることを特徴とする。この場合、傾斜支持面がロボットハンドの表面に対して4度~30度の範囲で傾斜する構成を採用することができる。
【0008】
本発明によれば、突条と支持突起との傾斜支持面に被処理基板の下面外周縁部のみを部分的に着座させた状態で被処理基板を支持するため、仮に被処理基板が下方に凹状に反っている場合でも、当該被処理基板の下面がロボットハンドの上面に接触しない状態で確実に支持できる。搬送時には、被処理基板の外周縁部の一部を比較的長い突条の傾斜支持面に線接触させると共に、残りの外周縁のうち少なくとも周方向2か所で支持突起の傾斜支持面に接触させているため、摩擦抵抗で被処理基板の位置ずれが抑制されて安定した搬送が可能になる。そして、傾斜支持面の外周に上方への段差をあることで、例えば、ロボットハンドの移動停止時にその慣性力で被処理基板が傾斜支持面を這い上がるように動いても、段差への当接で勢いが減じられ、被処理基板がロボットハンドから脱落することが防止できる。ここで、被処理基板が半導体ウエハとし、その外周縁部をベベル部とした場合、傾斜支持面がロボットハンドの表面に対して4度~30度の範囲で傾斜していれば、半導体ウエハが仮に下方に凹状に反ったものであっても、微小隙間を持ってロボットハンド上面への接触を確実に防止できる状態且つベベル部のみが突条と支持突起との傾斜支持面に着座した状態で被処理基板を支持することができる。
【0009】
本発明においては、前記突条及び前記支持突起が耐熱性樹脂で構成され、前記ロボットハンドの上面に着脱自在に取り付けられることが好ましい。このように突条や支持突起を被処理基板より柔らかい材質の(即ち、クッション性のある)耐熱性樹脂で構成しておけば、例えば、ロボットハンドへの被処理基板の受け渡し時やその搬送時に発塵の発生を抑制できて効果的である。そして、被処理基板の搬送を繰り返すことで、突条や支持突起が変形したような場合には、耐熱性樹脂製の当該突条や支持突起のみを交換すれば済み、有利である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】基板ステージ及びこれを備える真空処置装置を備える真空処理システムの構成を模式的に示す図。
【
図2】(a)は、ロードロックチャンバの切断平面図、(b)は、(a)のIIb-IIb線に沿う断面図。
【
図3】(a)は、本実施形態のロボットハンドの斜視図、(b)は、突条での基板の支持状態を説明する部分拡大断面図、(c)は、支持突起での基板の支持状態を説明する部分拡大断面図。
【
図4】スパッタリング装置をその成膜位置で示す断面図。
【
図7】カバ-リングを持つ下防着板を説明する平面図。
【
図8】
図4に示すスパッタリング装置をその搬送位置で示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、「被処理基板」をφ300mmの半導体ウエハ(以下、「基板Sw」という)、その「外周縁部」を半導体ウエハの外端面を面取りしてなるベベル部Sb(例えば、基板Sw外縁から2mm以内の部分)とし、クラスタツール式の真空処理システムに備えられる真空搬送ロボットに本発明の搬送用のロボットハンドを適用した場合を例にその実施形態を説明する。
【0012】
図1を参照して、CMは、中央の搬送チャンバTcと、搬送チャンバTcを囲うようにして配置されるロードロックチャンバLcと複数の処理チャンバPcとを備えるクラスタツール式の真空処理システムであり、いずれかの処理チャンバPcが、基板ステージSTを備える真空処理装置としてのスパッタリング装置の真空チャンバを構成する。ロードロックチャンバLcの搬送チャンバTcと背向する側にはロボットステージRsが配置されている。ロボットステージRsには大気搬送ロボットRtと複数枚の基板SwをストックできるカセットKwとが設けられている。大気搬送ロボットRtとしては、ベベル部Sbを径方向両側から挟持して基板Swを保持できる多関節式のものが用いられ、基板Swの一方の面(デバイス構造が形成される面)または他方の面が鉛直方向上方を向く姿勢でロードロックチャンバLcに搬送することができる。このような大気搬送ロボットRtとしては公知のものが利用できるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0013】
図2(a)及び(b)も参照して、ロードロックチャンバLcには、特に図示して説明しないが、真空ポンプからの排気管とベントガスを導入するベントガスラインとが夫々接続され、ロードロックチャンバLc内を真空雰囲気と大気雰囲気とに早期に切り換えることができる。ロードロックチャンバLc内には、金属製の基板支持台1が設置されている。基板支持台1の上面には、基板Swと同等の所定径を持つ同一円周上に位置させて3本の支持ピン11が突設させている。各支持ピン11の上面には径方向内方に向かって下方に傾斜する傾斜支持面12が夫々形成され、大気搬送ロボットRtで保持された基板Swをその一方の面または他方の面が鉛直方向上方を向く姿勢で設置することができる。この場合、基板Swの下面と基板支持台1との間に大気搬送ロボットRtや真空搬送ロボットRvのロボットハンド21が進入できる空間を確保できるように支持ピン11の高さが設定される。また、傾斜支持面12は、支持ピン11の平坦な上面に対して4度~30度の範囲の角度α1で傾斜され、基板支持台1の上面から隙間を存してベベル部Sbのみが傾斜支持面12に着座した状態で基板Swが支持される。
【0014】
ロードロックチャンバLcにゲートバルブGvを介して連結される搬送チャンバTcには、特に図示して説明しないが、真空ポンプからの排気管が接続され、所定圧力の真空雰囲気に維持することができる。搬送チャンバTc内には、真空搬送ロボットRvが設置されている。真空搬送ロボットRvは、基板Swを載置した状態で支持する本実施形態の搬送用のロボットハンド21を先端に有する2本のロボットアーム22と、各ロボットアーム22を回転駆動する同心の2本の回転軸23a,23bとを備えた所謂フログレック式のものである。そして、搬送チャンバTc外に設けられる図示省略のモータにより回転軸23a,23bの回転方向や回転角を適宜制御することで、ロボットアーム22が同一平面内で旋回または伸縮する。このとき、伸縮動作を行うと、ロボットハンド21が同一線上に沿って往復動する。なお、各処理チャンバPcでは、後述するように、各可動体7,7を上動させた受渡位置にあるとき、ロボットハンド21で支持された基板Swは、基板ステージST周囲の一方向から搬入され、処理済みの基板Swは、ロボットハンド21に受け渡された後、同方向から搬出される。また、回転軸23a,23bには、特に図示して説明しないが、エアシリンダ等の駆動手段が付設され、ロボットハンド21及びロボットアーム22が旋回または伸縮するのに加えて、上下動するように構成されている。
【0015】
図3(a)~
図3(c)も参照して、ロボットアーム22にギアボックス24を介して連結されるロボットハンド21は、スパッタリング法による成膜中に基板Swが加熱される場合があることを考慮して、耐熱性を有すると共に摩擦係数が大きい材料、例えばアルミナや炭化シリコン製の板材から製作されている。ロボットハンド21は、ギアボックス24に連結される基端部21aと、基端部21aから二股状に分岐して先方に延びる一対のフィンガー部21bとを有する。基端部21aの所定位置には、図外の光学式センサでロボットハンド21を検出できるように検出窓21cが開設されている。そして、基板Swと同等の所定径を持つ同一円周上に位置させて、基端部21aの上面の検出窓21cの周方向両側には帯状にのび且つ上方に突出する2個の突条25がビスなどの締結手段26aで着脱自在に取り付けられると共に、両フィンガー部21bの両先端部の上面には、上方に突出する支持突起27が、同様にビスなどの締結手段26bで着脱自在に取り付けられている。
【0016】
ロボットハンド21の上面から同等の高さを持つ突条25と支持突起27とは、基板Swが加熱される場合があることや、ロボットハンド21への基板Swの受け渡し時やその搬送時に発塵の発生を抑制することを考慮して、基板Swより柔らかい材質の(即ち、クッション性のある)耐熱性樹脂で構成される。このような耐熱性樹脂としては、耐熱温度が200℃のフッ素系の樹脂が挙げられる。また、突条25と支持突起27との上面には、径方向内方に向かって下方に傾斜して基板Swのベベル部Sbが着座する傾斜支持面25a,27aが夫々形成され、当該傾斜支持面25a,27aの外周に上方への段差25b,27bが夫々形成されている。この場合、傾斜支持面25a,27aは、ロボットハンド21の上面に対して4度~30度の範囲の角度α2で傾斜され、仮に基板Swが下方に凹状に反ったものであっても、微小隙間を持ってロボットハンド21の上面への接触を確実に防止できる状態且つベベル部Sbのみが突条25と支持突起27との各傾斜支持面25a,27aに周方向4箇所で着座した状態で基板Swを支持することができる。なお、本実施形態では、検出窓21cを形成したため、突条25,25を周方向で2つの部分に分離して設けられているが、検出窓21cを開設しないような場合には、突条25を一体に形成してもよい。
【0017】
以上によれば、ロボットハンド21で基板Swを支持した状態で搬送するときには、基板Swのベベル部Sbの一部を比較的長い一対の突条25,25の傾斜支持面25aに線接触させると共に、残りのベベル部Sbのうち少なくとも周方向2か所で支持突起27の傾斜支持面27aに接触させているため、摩擦抵抗で基板Swの位置ずれが抑制されて安定した搬送が可能になる。そして、傾斜支持面25a,27aの外周に上方への段差25b,27bがあることで、例えば、ロボットハンド21の移動停止時にその慣性力で基板Swが傾斜支持面25a,27aを這い上がるように動いても、段差25b,27bへの当接で勢いが減じられ、基板Swがロボットハンド21から脱落することが防止できる。また、突条25と支持突起27とを着脱自在に取り付けているため、基板Swの搬送を繰り返すことで、突条25や支持突起27が変形したような場合には、当該突条25や支持突起27のみを交換すれば済み、有利である。搬送チャンバTcにゲートバルブGvを介して夫々連結される各処理チャンバPc内には、基板Swの一方の面や他方の面に対して実施しようとする真空処理に応じて各種の機器が設けられている。そして、いずれかの1個の処理チャンバPc内にて基板Swの他方の面に対してスパッタリング法により窒化シリコン膜が成膜される。これにつき、
図4~
図8を参照して以下に説明する。
【0018】
処理チャンバPcには、
図4に示すように、ターボ分子ポンプやロータリーポンプなどからなる真空ポンプユニット31に通じる排気管31aが接続され、処理チャンバPc内を所定圧力(例えば1×10
-5Pa)まで真空排気することができる。処理チャンバPcの側壁には、図示省略のガス源に連通し、マスフローコントローラ32が介設されたガス管32aが接続され、処理チャンバPc内にスパッタガスを所定流量で導入することができる。スパッタガスとしては、放電用の希ガスとしてのアルゴンガスと、反応ガスとしての窒素ガスとが用いられる。処理チャンバPcの上部には、シリコン製のターゲット4が設けられている。ターゲット4には図示省略のボンディング材によりバッキングプレート41が接合され、そのスパッタ面42を下方にした姿勢で絶縁体43を介して処理チャンバPc側壁上部に配置される。ターゲット4にはまた、スパッタ電源44からの出力が接続されている。スパッタ電源44としては公知のパルスDC電源や高周波電源を用いることができ、スパッタリング時、所定周波数(例えば、10kHz~40MHz)の電力をターゲット4に投入することができる。そして、処理チャンバPcの下部には、ターゲット4に対向させて基板ステージSTが配置されている。
【0019】
基板ステージSTは、絶縁体51を介して処理チャンバPc下壁に設けられる、基板Swよりも一回り大きい輪郭を有する基台5と、基台5の上面から隙間を存して基板Swのベベル部Sbを支持する環状壁6とを備える。基台5内には冷媒通路5aが形成され、冷媒通路5aに図示省略するチラーから供給される冷媒を循環させることで基台5の上面を所定温度(例えば-20~30℃)に冷却することができる。なお、冷媒通路5aの代わりに、基台5の下面に配管を付設し、この配管に冷媒を循環させるようにしてもよい。冷媒としては、冷却水やエチレングリコールなどの公知のものを使用することができる。基台5は、例えばアルミニウムなどの金属といった高い熱伝導性を持つ材料で作製され、その電位は接地電位とフローティング電位のいずれであってもよい。
【0020】
環状壁6は、
図5及び
図6に示すように、例えば、アルミニウムや炭化シリコン製であり、絶縁体61を介して基台5の上面に設置される基部62を備える。基部62の上端内縁部には、径方向内方に突出する環状の突出壁部63が形成されている。環状壁6の突出壁部63の上面内縁部には、基板Swと同等の所定径を持つ同一円周上に位置させて、径方向内方に向かって下方に傾斜して基板Swのベベル部Sbが着座する第1傾斜支持面64が形成されている。第1傾斜支持面64は、基台5の上面に対して4度~40度の範囲で傾斜され、仮に基板Swが下方に凹状に反ったものであっても、微小隙間を持って、後述の駆動板部73や基台5の上面への接触を確実に防止できる状態且つベベル部Sbのみが第1傾斜支持面64に着座した状態で基板Swを支持することができる。突出壁部63にまた、径方向外方に凹入する受入れ凹部65が周方向に180度間隔で2箇所形成され、各受入れ凹部65には可動体7が夫々収納されている。
【0021】
可動体7は、環状壁6と同様に、例えば、アルミニウムや炭化シリコン製であり、環状壁6と同一の曲率で湾曲する環状の支持壁部71と、支持壁部71の下端に形成されて径方向内方に突出する環状の取付板部72とを備える。支持壁部71は、受入れ凹部65の上下方向の高さと同等以上に定寸されている。両取付板部72,72の下面には、板状の駆動板部73の両端が夫々連結され、駆動板部73の下面中央には、基台5の中央部を上下方向に貫通して設けられる駆動体としてのアクチュエータ74の駆動軸74aが連結されている。これにより、可動体7が環状壁6の受入れ凹部65から出没自在に上下動する。また、支持壁部71の上面の内周側に下方への段差部71aが形成され、段差部71aが、第1傾斜支持面64が形成される同一円周上に位置するようにしている。
【0022】
一方の支持壁部71の段差部71aの上面中央と、他方の支持壁部71の段差部71aの上面両端とには、径方向内方に向かって下方に傾斜する第2傾斜支持面75aを有する3個の支持突起75が夫々設けられ、各支持突起75の第2傾斜支持面75aで基板Swのベベル部Sbをその周方向3箇所で支持可能としている。支持突起75は、上記と同様に、基板Swより柔らかい材質の(即ち、クッション性のある)耐熱性樹脂で構成され、このような耐熱性樹脂としては、上記同様に、耐熱温度が200℃のフッ素系の樹脂が挙げられる。この場合、支持突起75は、ビスなどの締結手段(図示せず)で着脱自在に取り付けることができる。また、第2傾斜支持面75aは、基台5の上面に対して4度~40度の範囲で傾斜され、その外端が支持壁部71の上面と略面一になるようにしている。これにより、仮に基板Swが下方に凹状に反ったものであっても、微小隙間を持って駆動板部73や基台5の上面への接触を確実に防止できる状態且つベベル部Sbのみが各支持突起75の第2傾斜支持面75aに着座した状態で基板Swを支持することができる。
【0023】
処理チャンバPc内には、基板ステージSTの周囲に位置させてブロック体Baが設けられている。ブロック体Baは、金属製の筒状部材で構成され、その外筒面は、その上端から下端に向けて末広がりのテーパ面として形成されている。ブロック体Baにはまた、上下方向に貫通する複数個の貫通孔Ba1が開設されている。そして、アース接地の処理チャンバPcの底面に設置され、スパッタリング時には、アースとしての役割を果たすようにしている。処理チャンバPc内には、ターゲット4と基板ステージSTとの間の成膜空間Psを囲繞する防着板8が設けられている(
図4参照)。防着板8は、アルミナやステンレス等の材料製であり、上防着板81と可動部分としての下防着板82とを有する。上防着板81は、筒状部材で構成され、筒状部材の上端に径方向に内方に向けて突出させた取付部81aを介して処理チャンバPcの上部に吊設されている。一方、下防着板82は円盤状の板材で構成され、その径方向外端には上方に向けて起立させた筒状の起立壁部82aが形成されている。
【0024】
下防着板82の中央領域には、第1開口82bが開設され、第1開口82bの内周縁部が、第1傾斜支持面64で支持された基板Swのベベル部Sbの直上に位置するようにしている。また、第1開口82bの周囲でブロック体Baの上方に位置する下防着板82の部分には、
図7に示すように、第1開口82bより小面積の第2開口82cが周方向に所定間隔で3箇所開設されている。そして、第2開口82cより内方に残る環状部分82dが本実施形態のカバーリングとなって環状壁6の上方を覆うことで環状壁6へのスパッタ粒子の付着を可及的に抑制するようにしている。
【0025】
また、各第2開口82cを含む環状領域82e(
図7中、一点鎖線で囲まれる領域)を基準にして第2開口82cの開口率が50%以上あれば(言い換えると、成膜空間Ps側から視てアースブロックの上表面のうち50%以上の露出する状態であればよい)、シリコン製のターゲット4の表面を窒化させて窒化シリコンとし、その表面の窒化シリコンをスパッタリングして基板Sw表面に高抵抗な膜を成膜するような場合に、プラズマを安定させた状態で成膜し続けることができる。即ち、ブロック体Baとしての機能は損なわれない。なお、本実施形態では、下防着板82にカバーリングに相当する環状部分82dを一体に形成したものを例に説明したが、これに限定されるものではなく、下防着板82に別体のカバーリングを取り付けるようにしてもよい。また、環状部分82dの下面に下方に突出する突条部82fを形成し、環状壁6の上面の所定位置に形成した突条66と共にラビリンス構造を形成し、スパッタ粒子の回り込みや放電漏れを抑制できるようにしてもよい。
【0026】
下防着板82には、処理チャンバPcの下壁を貫通してのびる、モータやエアシリンダなどの駆動手段83からの駆動軸83aが連結されている。駆動手段83によって下防着板82は、
図4に示すスパッタリングによる成膜が実施される成膜位置と、成膜位置から下防着板82を所定の高さ位置まで上動させて、真空搬送ロボットRvによる基板ステージSTへの基板Swの受け渡しがされる
図8に示す搬送位置との間で上下動される。成膜位置では、上防着板81の下端部と起立壁部82aの上端部とが上下方向で互いにオーバーラップするように設計されている。以下に、基板Swの他方の面に窒化シリコン膜を成膜する場合を例に、カセットKwから基板ステージSTまでの基板Swの搬送を説明する。
【0027】
ロボットステージRsのカセットKwから大気搬送ロボットRtにより一枚の基板Swを取り出し、大気雰囲気のロードロックチャンバLcに搬送する。このとき、基板Swの他方の面が上方を向く姿勢とし、この姿勢のままロードロックチャンバLcに形成される図示省略の開閉扉を通してロードロックチャンバLc内に搬送し、基板支持台1の各支持ピン11で支持されるように基板Swを基板支持台1に設置する。基板Swは、基板支持台1の上面から隙間を存してベベル部Sbのみが傾斜支持面12に着座した状態で支持される(
図2参照)。基板Swが設置されると、開閉扉を閉めてロードロックチャンバLc内を所定圧力まで真空排気する。このとき、搬送チャンバTc及び処理チャンバPcは所定圧力まで真空排気された状態となっている。
【0028】
ロードロックチャンバLc内を所定圧力まで真空排気されると、ゲートバルブGvを開けて真空搬送ロボットRvのロボットハンド21で基板Swを受け取る。このとき、回転軸23a,23bの回転方向や回転角を適宜制御することで、基板Swの一方の面と基板支持台1の上面との間の隙間にロボットハンド21を進入させた後、回転軸23a,23bを上動させる。これにより、微小隙間を持ってロボットハンド21の上面への接触を確実に防止できる状態且つベベル部Sbのみが突条25と支持突起27との傾斜支持面25a,27aに着座した状態で基板Swが支持される。
【0029】
ロボットハンド21で基板Swを受け取ると、搬送チャンバTcと処理チャンバPcとの間のゲートバルブGvを開け、回転軸23a,23bの回転方向や回転角を適宜制御することで、ロードロックチャンバLcから搬送チャンバTcを経由して処理チャンバPcへと基板Swが搬送される。このとき、下防着板82が上動して搬送位置にあると共に、各可動体7,7が同期して上動し、環状壁6の受入れ凹部65から突出した受渡位置にある。そして、ロボットハンド21で支持された基板Swが各可動体7,7に受け渡される。これにより、取付板部72や駆動板部73などへの接触を確実に防止できる状態且つベベル部Sbのみが各第2傾斜支持面75aに着座した状態で基板Swがその周方向3箇所で基板Swが支持される。
【0030】
各可動体7,7で基板Swが支持されると、ロボットハンド21を退避させた後に各可動体7,7が同期して下動され、第1傾斜支持面64と第2傾斜支持面75aとが同一の水平面上にある高さ位置を超えると、各可動体7,7の上方に位置する基板Swのベベル部Sbを除く残りの部分が第1傾斜支持面64に着座して環状壁6の第1傾斜支持面64でのみ支持された状態で基板Swが受け渡される。このとき、基板Swの一方の面と基台5の上面または駆動板部73の上面との間に所定の隙間が存する。この場合の隙間は、基板Swのサイズや反りを考慮して、例えば、0.5mm以下の範囲内で可及的小さく設定される。また、各可動体7は微小隙間を存して受入れ凹部65内に没入する。
【0031】
基板Swが環状壁6に受け渡されると、ゲートバルブGvが閉じられると共に、下防着板82が成膜位置まで下動される。これにより、第1開口82bを通してベベル部Sbを除く基板Swの他方の面が成膜空間Psを臨むと共に、下防着板82の環状部分82dで環状壁6の上方が覆われた状態となる一方で、下防着板82の第2開口82cを通してブロック体Baが成膜空間Psを臨む状態となる。基板Swの支持後、アルゴンガスと窒素ガスを10~20sccm、20~40sccmの流量で夫々導入し(このとき、処理チャンバPc内の圧力は0.1~0.4Paとなる)、これと併せて、スパッタ電源44によりターゲット4に、例えば周波数100kHz、パルス幅2.0μs(On duty 80%)のパルスDC電力を4kW~6kWの範囲で投入する。なお、スパッタ電源44により13.56MHzの高周波電力を4kW~6kWの範囲で投入することもできる。これにより、成膜空間Psにプラズマ雰囲気が形成され、ターゲット4がスパッタリングされる。このとき、基台5の冷媒通路5aに冷媒を循環させることで、基台5の上面が所定温度(22℃)に冷却される。そして、スパッタリングによりターゲット4から飛散したスパッタ粒子と窒素ガスとの反応生成物を基板Swの表面に付着、堆積させることで、基板Swの他方の面にシリコン窒化膜が成膜される。
【0032】
スパッタリング法による成膜中には、ベベル部Sbの大部分が環状壁6の第1傾斜支持面64で当接しているため、基板Swが位置ずれを起こすといった不具合は生じない。しかも、各可動体7が微小隙間を存して受入れ凹部65内に没入していることで、基板Sw下面と基台5上面との間の空間への放電漏れだけでなく、スパッタ粒子や反応生成物の回り込みを防止できる。
成膜処理が終了すると、各可動体7,7が同期して受渡位置まで上動され、ロボットハンド21が進入できる空間が基板Swと基板ステージSTの上面との間に形成される。この状態で、上記と逆の手順で処理済みの基板Swがロボットハンド21に受け渡され、処理チャンバPcから搬送チャンバTcを経由してロードロックチャンバLcへと搬送され、大気搬送ロボットによりカセットKwへと戻される。
【0033】
ここで、上記のように反応性スパッタリング法によりシリコン窒化膜を成膜すると、ターゲット4の表面にもまた反応生成物が形成されることから、安定的な成膜が継続でき、また、ターゲット4の表面の反応生成物が新たなパーティクルの発塵源とならないように、ターゲット4の表面をクリーニングする所謂ダミー処理が定期的に実施される。このような場合、特に図示して説明しないが、処理チャンバPc内に、シャッタ板を支持して、シャッタ板を基板Swの搬送方向に対向する方向(
図6参照)から各可動体7,7の上面への受渡可能な位置に搬送する搬送手段を設けておけば、大気雰囲気からシャッタ板を殊更搬送することなく、ダミー処理が簡単に実施でき、有利である。
【0034】
以上によれば、処理チャンバPc内にて基板Swを受け渡す際に、可動体7,7の第2傾斜支持面75aでのみ基板Swのベベル部Sbを3点支持する構成を採用し、基板Swとの接触面積を可及的に小さくすることで、成膜処理を繰り返しても成膜直後の基板Swに微細な(所定サイズ以上の)パーティクルが付着することが飛躍的に減少できる。このとき、支持突起75を基板Swより柔らかい材質の(即ち、クッション性のある)耐熱性樹脂で構成したため、より発塵の発生を抑制できて効果的である。しかも、基板Swの搬出入を繰り返すことで、支持突起75が変形したような場合には、耐熱性樹脂製の当該支持突起75のみを交換すれば済み、有利である。また、下防着板82にカバーリングとして機能する環状部分82dを備えることで、環状壁6へのスパッタ粒子の付着を可及的に抑制することができる。そのため、環状壁6が新たなパーティクルの発塵源となって、成膜直後の基板Swに微細な(所定サイズ以上の)パーティクルが付着することを抑制することができる。その上、干渉することなく、真空搬送ロボットRvにより支持突起75への基板Swの受け渡しが容易に実施でき、有利である。
【0035】
次に、上記効果を確認するために、上記真空処理システムCMを用いて、次の実験を行った。本実験では、基板Swとしてφ300mmの半導体ウエハを用い、上述のカセットKwと基板ステージSTとの間の基板Swの搬送に従い、処理チャンバPcに複数枚の基板Swを順次搬送し、基板Swの他方の面に窒化シリコン膜を成膜した後、成膜済みの基板SwをカセットKwに戻した。スパッタリング条件としては、アルゴンガスを流量10sccm、窒素ガスを流量30sccmで処理チャンバPc内に夫々導入し(このときの処理チャンバPc内の圧力は約0.4Pa)、パルスDC電源Psからシリコン製のターゲット4に周波数100kHz,パルス幅2.0μs(On duty 80%)、投入電力4kWに設定し、133秒間シリコン窒化膜を成膜した。反応性スパッタリング法による成膜中には、基台5の上面を22℃に冷却した。
【0036】
カセットKwまで搬送された基板Swの他方の面でのパーティクル数を確認した。この場合、既存のパーティクルカウンタを用い、基板Swの外周縁部から3.0mmの範囲を除く部分における0.1μm以上のパーティクル数をカウントした。先ずは、比較実験として、ロボットハンドとして、炭化シリコン製である上記従来例のものを用い、430回搬送を繰り返した後でのパーティクル数を確認した。これによれば、基板Swの外周縁部から3.0mmの範囲を除く部分における0.1μm以上のパーティクル数は700個以上であり、また、パーティクルの面内分布を確認したところ、基板Swの径方向の中間点より外方の領域で多くパーティクルが付着していた。
【0037】
次に、ロボットハンドを上記実施形態に記載したもの(傾斜支持面25a,27aを持つ突条25と支持突起27とが設けられたもの)に変更し、430回搬送を繰り返した後でのパーティクル数を確認した(発明実験1)。但し、本発明実験1では、突条25と支持突起27とをロボットハンド21と同質の炭化シリコン製とした。これによれば、0.1μm以上のパーティクル数が180個以下にでき、ロボットハンド21での基板Swの支持形態(即ち、突条25と支持突起27との各傾斜支持面25a,27aにより周方向4箇所で基板Swを支持する形態)を変えるだけでパーティクル数が大幅に抑制されることが確認された。
【0038】
次に、上記発明実験1で用いたロボットハンドの突条25と支持突起27とをフッ素系の耐熱性樹脂に変更し、430回搬送を繰り返した後でのパーティクル数を確認した(発明実験2)。これによれば、0.1μm以上のパーティクル数が50個以下にでき、突条25及び支持突起27を耐熱性樹脂で構成すれば、パーティクル数が大飛躍的に抑制されることが確認された。なお、1043回搬送を繰り返した後でのパーティクル数も50個以下を維持できていることが確認された。
【0039】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明の技術思想の範囲を逸脱しない限り、種々の変形が可能である。上記実施形態では、スパッタリング装置SMを例に真空処理装置を説明したが、ドライエッチング装置や熱処理装置のような他の真空処理装置に対しても本発明を適用することができる。例えばドライエッチング装置の場合、基板Swをその表面を下にして環状壁6で保持することで、基板Swの裏面にドライエッチング処理を施す際に、基板Sw表面が基台5上面と接触して傷付くことを防止することができる。また、上記実施形態では、一対の(2個の)可動体7を上下動させる場合を例に説明したが、基板Swを持ち上げることができれば、可動体7の数は限定されない。更に、上記実施形態では、ターゲット4としてシリコン製のものを用い、反応性スパッタリングによりシリコン窒化膜を成膜する場合を例に説明しているが、窒化シリコン製のターゲットをスパッタリングしてシリコン窒化膜を成膜し、または、金属製のターゲットをスパッタリングして金属膜を成膜する場合にも適用することができる。
【符号の説明】
【0040】
Rv…真空搬送ロボット、21…ロボットハンド、21a…基端部、21b…フィンガー部、25…突条、27…支持突起、25a,27a…傾斜支持面、Sw…基板(半導体ウエハ)、Sb…基板の外周縁部(ベベル部)。