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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176112
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】ペット用おむつ
(51)【国際特許分類】
   A01K 23/00 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
A01K23/00 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094372
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小松原 大介
(57)【要約】
【課題】良好な装着性を備え、位置ずれが生じ難いペット用おむつを提供する。
【解決手段】腹側胴回り部(2)と、背側胴回り部(3)と、股下部(4)と、一対のファスニングタブ(50)と、尻尾挿入部(70)と、を有し、股下部(4)の左右方向における両側に、一対の脚繰り部(4lh)が設けられており、前後方向の中央位置よりも腹側に股下部(4)を厚さ方向に貫通する貫通部(40)を有するペット用おむつ(1)であって、伸長状態において、腹側胴回り部(2)の左右方向の側縁の背側端(2eb)と、背側胴回り部(3)の左右方向の側縁の腹側端(3ef)とを結んだ直線と、脚繰り部(4lh)の周縁と、によって囲まれる部分の面積のうち、前後方向の中央位置よりも腹側における面積(A)は、前後方向の中央位置よりも背側における面積(B)よりも大きい。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸長且つ展開状態において、互いに交差する前後方向と左右方向と厚さ方向とを有し、
腹側胴回り部と、背側胴回り部と、前記前後方向において前記腹側胴回り部と前記背側胴回り部との間の股下部と、
前記腹側胴回り部の前記左右方向における両側に配置された一対のファスニングタブと、
ペットの尻尾を通すための尻尾挿入部と、
を有し、
前記股下部の前記左右方向における両側に、前記腹側胴回り部及び前記背側胴回り部よりも前記左右方向における幅が狭くなった一対の脚繰り部が設けられており、
前記前後方向の中央位置よりも腹側に、前記脚繰り部の周縁から前記左右方向の内側へ向かって、前記股下部を前記厚さ方向に貫通する貫通部を有するペット用おむつであって、
伸長状態において、前記腹側胴回り部の前記左右方向の側縁の背側端と、前記背側胴回り部の前記左右方向の側縁の腹側端とを結んだ直線と、前記脚繰り部の周縁とによって囲まれる部分の面積のうち、前記前後方向の中央位置よりも腹側における面積は、前記前後方向の中央位置よりも背側における面積よりも大きい、ことを特徴とするペット用おむつ。
【請求項2】
請求項1に記載のペット用おむつであって、
前記前後方向の中央位置よりも腹側おける前記脚繰り部の周縁は、
前記前後方向の中央位置よりも背側における前記脚繰り部の周縁よりも前記左右方向の内側に括れている、ことを特徴とするペット用おむつ。
【請求項3】
伸長且つ展開状態において、互いに交差する前後方向と左右方向と厚さ方向とを有し、
腹側胴回り部と、背側胴回り部と、前記前後方向において前記腹側胴回り部と前記背側胴回り部との間の股下部と、
前記腹側胴回り部の前記左右方向における両側に配置された一対のファスニングタブと、
ペットの尻尾を通すための尻尾挿入部と、
を有し、
前記股下部の前記左右方向における両側に、前記腹側胴回り部及び前記背側胴回り部よりも前記左右方向における幅が狭くなった一対の脚繰り部が設けられており、
前記前後方向の中央位置よりも腹側に、前記脚繰り部の周縁から前記左右方向の内側へ向かって、前記股下部を前記厚さ方向に貫通する貫通部を有するペット用おむつであって、
伸長状態において、前記腹側胴回り部の前記左右方向の側縁の背側端と、前記背側胴回り部の前記左右方向の側縁の腹側端とを結んだ直線と、前記脚繰り部の周縁とによって囲まれる部分の面積のうち、前記前後方向の中央位置よりも背側における面積は、前記前後方向の中央位置よりも腹側における面積よりも大きい、ことを特徴とするペット用おむつ。
【請求項4】
請求項3に記載のペット用おむつであって、
前記前後方向の中央位置よりも背側における脚繰り部の周縁は、
前記前後方向の中央位置よりも腹側における脚繰り部の周縁よりも前記左右方向の内側に括れている、ことを特徴とするペット用おむつ。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1項に記載のペット用おむつであって、
前記貫通部は、前記股下部を前記厚さ方向に貫通する複数の溝が、前記脚繰り部の周縁から前記左右方向の内側へ向かって断続的に並んだミシン目である、ことを特徴とするペット用おむつ。
【請求項6】
請求項5に記載のペット用おむつであって、
液吸収性の吸収体と、
前記吸収体よりも肌側に配置されたトップシートと、前記吸収体を覆うコアラップシートと、を有し、
前記厚さ方向に見たときに、前記ミシン目が、前記トップシート及び前記コアラップシートの少なくとも何れかと重複していない、ことを特徴とするペット用おむつ。
【請求項7】
請求項5に記載のペット用おむつであって、
液吸収性の吸収体と、
前記吸収体よりも非肌側に配置された防漏シートと、を有し、
前記厚さ方向に見たときに、前記ミシン目の前記左右方向における内側の端部が、前記防漏シートと重複する部分を有している、ことを特徴とするペット用おむつ。
【請求項8】
請求項5に記載のペット用おむつであって、
前記左右方向の両側に、前記前後方向に伸縮する脚回り弾性部材を有し、
前記厚さ方向に見たときに、前記脚回り弾性部材またはその延長線と、前記ミシン目とが交差していない、ことを特徴とするペット用おむつ。
【請求項9】
請求項5に記載のペット用おむつであって、
前記左右方向の両側に、前記前後方向に伸縮する脚回り弾性部材を有し、
前記厚さ方向に見たときに、前記脚回り弾性部材またはその延長線と、前記ミシン目とが交差している、ことを特徴とするペット用おむつ。
【請求項10】
請求項5に記載のペット用おむつであって、
前記左右方向において、前記ミシン目の最も内側の端よりも内側に、前記ミシン目と交差する方向に配置された溝を有する、ことを特徴とするペット用おむつ。
【請求項11】
請求項5に記載のペット用おむつであって、
前記厚さ方向に見たときに、前記ミシン目を構成する複数の前記溝のうち、前記左右方向の最も外側に位置する外側端部溝と、前記脚繰り部の周縁とが交差している、ことを特徴とするペット用おむつ。
【請求項12】
請求項5に記載のペット用おむつであって、
前記厚さ方向に見たときに、前記ミシン目を構成する複数の前記溝のうち、前記左右方向の最も外側に位置する外側端部溝と、前記脚繰り部の周縁とが交差していない、ことを特徴とするペット用おむつ。
【請求項13】
請求項1~4の何れか1項に記載のペット用おむつであって、
伸長且つ展開状態において前記前後方向に4等分したときの腹側から3番目の領域と、前記尻尾挿入部とが重複する部分を有している、ことを特徴とするペット用おむつ。
【請求項14】
請求項13に記載のペット用おむつであって、
前記尻尾挿入部の前記前後方向における背側の端が、前記腹側から3番目の領域に位置している、ことを特徴とするペット用おむつ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペット用おむつに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、犬や猫等のペットに装着されるペット用おむつとして、ファス二ングタブ(ファスニングテープ)によってペットの胴回りに固定するタイプのテープ型ペット用おむつが知られている。例えば、特許文献1には、一対のファスニングテープと、当該ファスニングテープを係止するための止着領域と、脚開口部を係止するための一対の円弧状領域にミシン目を備え、様々なサイズの胴周りや脚回りを有するペットに対応することが可能な、テープ型のペット用吸収性物品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-154828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のテープ型のペット用おむつにおいて、脚回り開口を形成する脚繰りの抉れが小さいと、装着時にペットの両脚の脚の付け根に干渉しやすく、装着性が悪化したり肌トラブル等の原因となったりするおそれがある。一方、脚繰りの抉れが大きいと、装着時に両脚の間で位置ずれが生じやすくなり、排泄漏れ等が生じるおそれがある。
【0005】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、良好な装着性を備え、位置ずれが生じ難いペット用おむつを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための主たる発明は、伸長且つ展開状態において、互いに交差する前後方向と左右方向と厚さ方向とを有し、腹側胴回り部と、背側胴回り部と、前記前後方向において前記腹側胴回り部と前記背側胴回り部との間の股下部と、前記腹側胴回り部の前記左右方向における両側に配置された一対のファスニングタブと、ペットの尻尾を通すための尻尾挿入部と、を有し、前記股下部の前記左右方向における両側に、前記腹側胴回り部及び前記背側胴回り部よりも前記左右方向における幅が狭くなった一対の脚繰り部が設けられており、前記前後方向の中央位置よりも腹側に、前記脚繰り部の周縁から前記左右方向の内側へ向かって、前記股下部を前記厚さ方向に貫通する貫通部を有するペット用おむつであって、伸長状態において、前記腹側胴回り部の前記左右方向の側縁の背側端と、前記背側胴回り部の前記左右方向の側縁の腹側端とを結んだ直線と、前記脚繰り部の周縁とによって囲まれる部分の面積のうち、前記前後方向の中央位置よりも腹側における面積は、前記前後方向の中央位置よりも背側における面積よりも大きい、ことを特徴とするペット用おむつである。
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、良好な装着性を備え、位置ずれが生じ難いペット用おむつを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】展開且つ伸長状態であるおむつ1の平面図である。
図2図2Aは、図1のA-A矢視について表す概略断面図である。図2Bは、図1のB-B矢視について表す概略断面図である。
図3図3A及び図3Bは、おむつ1をペットに装着させる際の動作について説明する図である。
図4】脚回り開口LHの形状について説明する図である。
図5図4の展開且つ伸長状態のおむつ1を、前後方向における中央位置CLにて二つ折りにした状態を表す図である。
図6】貫通部40の詳細について説明する図である。
図7】ミシン目(貫通部40)と脚回り弾性部材15とが重複する場合について表す図である。
図8図8A及び図8Bは、ミシン目(貫通部40)破れ抑制機構について説明する図である。
図9図9A及び図9Bは、ミシン目(貫通部40)と腹側脚繰り部4lhfの周縁との位置関係について説明する図である
図10図10A及び図10Bは、貫通部40の変形例について表す図である。
図11】尻尾挿入部70配置について説明する図である。
図12】尻尾挿入部70の変形例について表す図である。
図13】展開且つ伸長状態のおむつ100を表す平面図である。
図14図13の展開且つ伸長状態のおむつ100を、前後方向における中央位置CLにて二つ折りにした状態を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
(態様1)
伸長且つ展開状態において、互いに交差する前後方向と左右方向と厚さ方向とを有し、腹側胴回り部と、背側胴回り部と、前記前後方向において前記腹側胴回り部と前記背側胴回り部との間の股下部と、前記腹側胴回り部の前記左右方向における両側に配置された一対のファスニングタブと、ペットの尻尾を通すための尻尾挿入部と、を有し、前記股下部の前記左右方向における両側に、前記腹側胴回り部及び前記背側胴回り部よりも前記左右方向における幅が狭くなった一対の脚繰り部が設けられており、前記前後方向の中央位置よりも腹側に、前記脚繰り部の周縁から前記左右方向の内側へ向かって、前記股下部を前記厚さ方向に貫通する貫通部を有するペット用おむつであって、伸長状態において、前記腹側胴回り部の前記左右方向の側縁の背側端と、前記背側胴回り部の前記左右方向の側縁の腹側端とを結んだ直線と、前記脚繰り部の周縁とによって囲まれる部分の面積のうち、前記前後方向の中央位置よりも腹側における面積は、前記前後方向の中央位置よりも背側における面積よりも大きい、ことを特徴とするペット用おむつ。
【0010】
態様1のペット用おむつによれば、脚回り開口が腹側において広く形成されるため、装着時にペットの両脚の間で、脚繰り部の腹側の周縁がペットの脚の付け根に干渉し難くなり、装着性が向上する。また、貫通部が設けられていることにより、腹側脚繰り部の周縁がペットの脚の付け根に食い込んでしまうことを抑制しやすい。一方、脚回り開口の背側が腹側と比較して狭くなるため、脚回り開口は全体として過度に広がらず、装着時に位置ずれが生じ難い。したがって、良好な装着性と、位置ずれの生じ難さを両立することができる。
【0011】
(態様2)
前記前後方向の中央位置よりも腹側おける前記脚繰り部の周縁は、前記前後方向の中央位置よりも背側における前記脚繰り部の周縁よりも前記左右方向の内側に括れている、態様1に記載のペット用おむつ。
【0012】
態様2のペット用おむつによれば、腹側脚繰り部の周縁が内側に括れた形状を有していることにより、ペットに装着させた際に、ペットの脚の付け根により干渉し難くなる。したがって、腹側脚繰り部の周縁が脚の付け根に食い込んでしまうことが抑制され、装着性をより向上させることができる。
【0013】
(態様3)
伸長且つ展開状態において、互いに交差する前後方向と左右方向と厚さ方向とを有し、腹側胴回り部と、背側胴回り部と、前記前後方向において前記腹側胴回り部と前記背側胴回り部との間の股下部と、前記腹側胴回り部の前記左右方向における両側に配置された一対のファスニングタブと、ペットの尻尾を通すための尻尾挿入部と、を有し、前記股下部の前記左右方向における両側に、前記腹側胴回り部及び前記背側胴回り部よりも前記左右方向における幅が狭くなった一対の脚繰り部が設けられており、前記前後方向の中央位置よりも腹側に、前記脚繰り部の周縁から前記左右方向の内側へ向かって、前記股下部を前記厚さ方向に貫通する貫通部を有するペット用おむつであって、伸長状態において、前記腹側胴回り部の前記左右方向の側縁の背側端と、前記背側胴回り部の前記左右方向の側縁の腹側端とを結んだ直線と、前記脚繰り部の周縁とによって囲まれる部分の面積のうち、前記前後方向の中央位置よりも背側における面積は、前記前後方向の中央位置よりも腹側における面積よりも大きい、ことを特徴とするペット用おむつ。
【0014】
態様3のペット用おむつによれば、装着時において脚回り開口が背側において広くなるため、ペットの背側における位置調整が容易であり、フィット性を向上させやすい。一方、脚回り開口の腹側が過度に大きくないため、位置調整の際にペットの両脚の間で吸収体の位置ずれ等を生じ難くすることができる。そして、腹側脚繰り部の周縁がペットの脚に干渉する場合には貫通部(ミシン目)を破いて調整することで、干渉を抑制することができる。したがって、良好な装着性と、位置ずれの生じ難さを両立することができる。
【0015】
(態様4)
前記前後方向の中央位置よりも背側における脚繰り部の周縁は、前記前後方向の中央位置よりも腹側における脚繰り部の周縁よりも前記左右方向の内側に括れている、態様3に記載のペット用おむつ。
【0016】
態様4のペット用おむつによれば、ペットの尻尾を尻尾挿入部に通した後で、背側胴回り部の左右方向における位置を調整する際に、背側脚繰り部の周縁がペットの脚に干渉し難くなるため、位置調整を行いやすくなる。これにより、背側胴回り部にファスニングタブを係合させやすくなる等、ペット用おむつの装着性をより向上させることができる。
【0017】
(態様5)
前記貫通部は、前記股下部を前記厚さ方向に貫通する複数の溝が、前記脚繰り部の周縁から前記左右方向の内側へ向かって断続的に並んだミシン目である、態様1~4の何れかに記載のペット用おむつ。
【0018】
態様5のペット用おむつによれば、装着時に、腹側脚繰り部の周縁がペットの脚の付け根に干渉してしまうような場合であっても、ミシン目を破いて腹側脚繰り部に切り込みを形成することで、干渉を生じ難くすることができる。これにより、装着時のフィット性をより高めることができる。そして、ミシン目を破る量を変更することで、ペットの体型に合わせてフィット性を自在に調整することができる。
【0019】
(態様6)
液吸収性の吸収体と、前記吸収体よりも肌側に配置されたトップシートと、前記吸収体を覆うコアラップシートと、を有し、前記厚さ方向に見たときに、前記ミシン目が、前記トップシート及び前記コアラップシートの少なくとも何れかと重複していない、態様1~5の何れかに記載のペット用おむつ。
【0020】
態様6のペット用おむつによれば、トップシートやコアラップシートがミシン目(貫通部)によって厚さ方向に貫通されていないため、装着時に尿等の排泄物がミシン目を伝って厚さ方向の肌側から非肌側へ漏れ出すことが抑制される。
【0021】
(態様7)
液吸収性の吸収体と、前記吸収体よりも非肌側に配置された防漏シートと、を有し、前記厚さ方向に見たときに、前記ミシン目の前記左右方向における内側の端部が、前記防漏シートと重複する部分を有している、態様1~6の何れかに記載のペット用おむつ。
【0022】
態様7のペット用おむつによれば、ミシン目を破り始める際に起点となる左右方向外側端部(先端部)に積層されているシート部材の枚数よりも、ミシン目を最大限に破った場合の終点となる左右方向内側端部(終端部)に積層されているシート部材の枚数が多くなる。したがって、ユーザーは、ミシン目の先端部から簡単に破り始めることが可能であり、また、ミシン目の終端部を超えておむつ(吸収体等)を余計に破いてしまうことが抑制される。
【0023】
(態様8)
前記左右方向の両側に、前記前後方向に伸縮する脚回り弾性部材を有し、前記厚さ方向に見たときに、前記脚回り弾性部材またはその延長線と、前記ミシン目とが交差していない、態様1~7の何れかに記載のペット用おむつ。
【0024】
態様8のペット用おむつによれば、ミシン目に対して脚回り弾性部材の収縮力が作用し難く、脚回り弾性部材によってミシン目が両側に引っ張られてしまうことが抑制される。したがって、ミシン目が自然に破れてしまうことが抑制され、良好な装着性を維持しやすくすることができる。
【0025】
(態様9)
前記左右方向の両側に、前記前後方向に伸縮する脚回り弾性部材を有し、前記厚さ方向に見たときに、前記脚回り弾性部材またはその延長線と、前記ミシン目とが交差している、態様1~8の何れかに記載のペット用おむつ。
【0026】
態様9のペット用おむつによれば、脚回り弾性部材がミシン目と交差した点において切断され、ミシン目の両側に向かって収縮することとで、ミシン目を開く(破る)方向に力が作用しやすくなる。これにより、弱い力でもミシン目を破りやすくなり、ペット用おむつの装着性の調整を行いやすくすることができる。
【0027】
(態様10)
前記左右方向において、前記ミシン目の最も内側の端よりも内側に、前記ミシン目と交差する方向に配置された溝を有する、態様1~9の何れかに記載のペット用おむつ。
【0028】
態様10のペット用おむつによれば、ユーザーがミシン目を先端側から終端側に向かって破る際に、誤ってミシン目の終端部を超えて破ろうとしてしまった場合であっても、交差溝部が設けられていることにより、該交差溝部によってミシン目を破る力がせき止められて、ミシン目が過度に破れてしまうことを抑制することができる。
(態様11)
前記厚さ方向に見たときに、前記ミシン目を構成する複数の前記溝のうち、前記左右方向の最も外側に位置する外側端部溝と、前記脚繰り部の周縁とが交差している、態様1~10の何れかに記載のペット用おむつ。
【0029】
態様11のペット用おむつによれば、ユーザーがミシン目を破る際に、脚繰り部の周縁において破り始めの起点となる部分を弱い力で破り始めることができるため、安全且つ簡単にミシン目を破る動作を行うことができる。また、破り始める際に余計な力がかかり難くなるため、誤ってミシン目以外の部分が破れてしまうこと等を抑制できる。
(態様12)
前記厚さ方向に見たときに、前記ミシン目を構成する複数の前記溝のうち、前記左右方向の最も外側に位置する外側端部溝と、前記脚繰り部の周縁とが交差していない、態様1~11の何れかに記載のペット用おむつ。
【0030】
態様12のペット用おむつによれば、破り始めの起点となる部分が脚繰り部の周縁の内側に離間して配置されているため、ミシン目の破り始める際に要する力が大きくなる。これにより、ミシン目が自然に破れてしまったり、ユーザーが意図していない破れが生じたりすることを抑制できる。
(態様13)
伸長且つ展開状態において前記前後方向に4等分したときの腹側から3番目の領域と、前記尻尾挿入部とが重複する部分を有している、態様1~12の何れかに記載のペット用おむつ。
【0031】
態様13のペット用おむつによれば、尻尾挿入部の前後方向における位置を規定することで、装着時にペットの尻尾の位置を基準として、腹側胴回り部、背側胴回り部、及び股下部の位置を容易に調節しやすくなる。これにより、ペットの身体の適正な位置にペット用おむつの各部位を正しく当接させやすくなる。
(態様14)
前記尻尾挿入部の前記前後方向における背側の端が、前記腹側から3番目の領域に位置している、態様1~13の何れかに記載のペット用おむつ。
【0032】
態様14のペット用おむつによれば、装着時に尻尾挿入部よりも背側の領域が過度に狭くなりすぎず、ペットの背部が十分に覆われなくなったり、排泄物の後ろ漏れが生じたりすることを抑制しやすくなる。
【0033】
===第1実施形態===
<おむつ1の基本的構成>
犬や猫等のペットに装着させるペット用おむつの一例として、ペット用のテープ型使い捨ておむつ1(以下、「おむつ1」とも呼ぶ)の基本的な構成について説明する。図1は、展開且つ伸長状態であるおむつ1の平面図である。図2Aは、図1のA-A矢視について表す概略断面図である。図2Bは、図1のB-B矢視について表す概略断面図である。なお、図1における伸長状態とは、製品(おむつ1)を皺なく伸長させた状態、具体的には、おむつ1を構成する各部材(例えば、後述するバックシート24等)の寸法がその部材単体の寸法と一致又はそれに近い長さになるまで伸長した状態のことを言う。
【0034】
図1に示すように、各方向を定義する。すなわち、おむつ1の長手方向に沿った方向を「前後方向」とし、前後方向と直交し、おむつ1の幅方向に沿った方向を「左右方向」とする。前後方向の「前側」は、おむつ1の装着時に装着対象者(ここではペット)の腹側に位置する側であり、以下「腹側」とも呼ぶ。前後方向の「後側」は、おむつ1の装着時に装着対象者(ペット)の背側に位置する側であり、以下「背側」とも呼ぶ。また、図2A及び図2Bに示すように、前後方向及び左右方向と直交する方向を「厚さ方向」とし、装着対象者(ペット)の肌と当接する側を「肌側」とし、その反対側を「非肌側」とする。
【0035】
おむつ1は、所謂オープンタイプのテープ型使い捨ておむつであり、吸収体10と、トップシート22と、防漏シート23と、バックシート24と、サイドシート25と、貫通部40と、ファスニングタブ50と、ターゲット領域60と、を有する。
【0036】
吸収体10は、排泄物等の液体を吸収して保持する吸収性コア11(例えば粉砕パルプや高吸収ポリマーで構成される)と、吸収性コア11を被覆する液透過性のコアラップシート12(例えばティッシュシートやスパンボンド不織布)とを有する。本実施形態において吸収性コア11(吸収体10)は、長手方向の中央部がくびれた平面視略砂時計型の形状をなし、その長手方向をおむつ1の前後方向に沿わせつつ左右方向の中央に配置されている。吸収性コア11にこのようなくびれが設けられることにより、おむつ1の装着時において、ペットが脚を動かしやすくなる。但し、吸収体10の形状は必ずしも図1に示されるような砂時計型である必要ななく、例えば、長方形型等であっても良い。
【0037】
トップシート22は、吸収体10の肌側に配置される液透過性のシート部材であり、例えば、エアスルー不織布やスパンボンド不織布等によって形成される。また、トップシート22の肌側且つ左右方向両側には、左右方向の外側に張り出した一対のサイドシート25,25が接合されている。サイドシート25は、左右方向における内側端部が外側に折り返されており、当該折り返された部分には、糸ゴム等の防漏壁弾性部材16が前後方向に伸長した状態で挟み込まれ、接合されている(図2参照)。おむつ1をペットに装着させる際には、該防漏壁弾性部材16が発現する伸縮性に基づいてサイドシート25の左右方向内側端部が装着者(ペット)の肌側に起立し、所謂防漏壁を形成して、尿等の横漏れを抑制する。
【0038】
防漏シート23は、吸収体10の非肌側に配置された液不透過性の部材であり、例えば樹脂製のフィルム等が用いられる。バックシート24は、防漏シート23よりも非肌側に配置され、おむつ1の最も非肌側の外装を構成する部材(外装シート)であり、例えば不織布によって構成される。
【0039】
また、吸収体10よりも左右方向の外側には、糸ゴム等からなる一対の脚回り弾性部材15,15が前後方向に伸長した状態で挟み込まれ、接合されている。当該脚回り弾性部材15が前後方向に沿って伸縮性を発現することにより、おむつ1の装着時に脚回り開口LH(後述する図3参照)がペットの脚回りに沿ってフィットしやすくなり、装着性が向上すると共に、尿等の排泄物の横漏れが抑制される。
【0040】
これらの部材が厚さ方向に積層され、積層された部材同士の一部がホットメルト接着剤等の接着剤によって適宜接合されることによって、おむつ1が形成される。
【0041】
図1に示されるように、展開且つ伸長状態のおむつ1は、全体として前後方向の腹側及び背側において左右方向の幅が広く、前後方向の中央部において左右方向の幅が狭くなるように形成されている。以下、前後方向の腹側において左右方向の幅が最も広くなる部分を腹側胴回り部2とし、前後方向の背側において左右方向の幅が最も広くなる部分を背側胴回り部3とする。図1では、前後方向の腹側において左右方向の幅W1で表される矩形状の部分が腹側胴回り部2となる。すなわち、腹側胴回り部2は、左右方向の両側で前後方向に沿った側縁と、一対の側縁の前端同士を結ぶ直線と、一対の側縁の後端同士を結ぶ直線とによって囲まれた部分である。同様に、図1で、前後方向の背側において左右方向の幅W1で表される矩形状の部分が背側胴回り部3となる。
【0042】
そして、前後方向において、腹側胴回り部2と背側胴回り部3との間の部分を股下部4とする。股下部4では、左右方向における幅が腹側胴回り部2及び背側胴回り部3の左右方向における幅W1よりも狭くなっている。具体的に、股下部4は、左右方向における両側部が切り欠かれており、その周縁が、前後方向の外側(腹側及び背側)から中心側に向かって左右方向の外側から内側に括れた形状を有している。以下、股下部4の周縁を構成する部分を脚繰り部4lhとする。この脚繰り部4lhは、おむつ1をペットに装着させた際に、脚回り開口LHを形成する部分である(後述する図3参照)。以下では、脚繰り部4lhのうち、前後方向において中央位置CLよりも腹側(前側)の部分を腹側脚繰り部4lhfとも呼び、前後方向において中央位置CLよりも背側(後側)の部分を背側脚繰り部4lhbとも呼ぶ。
【0043】
おむつ1の股下部4のうち、前後方向における中央位置CLよりも腹側には、該股下部4を記厚さ方向に貫通する一対の貫通部40が設けられている。図1では、腹側脚繰り部4lhfの周縁から左右方向の内側且つ前後方向の腹側に向かって延びる、一対の貫通部40,40が設けられている。貫通部40の詳細については後で説明する。
【0044】
また、おむつ1の腹側胴回り部2には、図1及び図2に示されるように、サイドシート25及びバックシート24の左右方向における両側端から外側に延出する一対のファスニングタブ50,50が設けられている。ファスニングタブ50はテープ基材51と、係止部52とを有している。テープ基材51は、例えば不織布等からなる略矩形状のシート部材であり、左右方向における一方側の端部がサイドシート25やバックシート24に固定され、左右方向における他方側の端部がサイドシート25及びバックシート24の両側から外側に延出している。係止部52は、係止用突起(不図示のフック)を複数備えた、所謂面ファスナーであり、テープ基材51の厚さ方向における肌側の面に設けられている。
【0045】
一方、おむつ1の背側胴回り部3には、バックシート24の非肌側面にターゲット領域60が設けられている。ターゲット領域60は、係止部52と係合可能な領域であり、例えば、不織布の表面の繊維をループ状に加工して係止部52の係止用突起(フック)を係合させやすくした部材を設けることによって形成される。また、ターゲット領域60とバックシート24とを異なる部材とするのではなく、背側胴回り部3においてバックシート24の一部の領域を加工することによってターゲット領域60が形成されるのであっても良い。
【0046】
おむつ1をペットに装着させる際には、背側胴回り部3に設けられたターゲット領域60に腹側胴回り部2に設けられた一対のファスニングタブ50,50(係止部52,52)をそれぞれ係止させる。これにより、胴回り開口BH、及び、一対の脚回り開口LHが形成される(図3A及び図3B参照)。おむつ1の装着時の具体的動作、及び、胴回り開口BH,脚回り開口LHについては後で説明する。
【0047】
また、おむつ1の股下部4の左右方向における中央部には、おむつ1を装着する際にペットの尻尾を通すための尻尾挿入部70が設けられている。図1において、尻尾挿入部70は、トップシート22、防漏シート23、及びバックシート24を厚さ方向に貫通する切り込み71によって形成される。おむつ1に尻尾挿入部70が設けられていることにより、該おむつ1をペットに装着させる際に尻尾が邪魔にならず、おむつ1の着脱を楽に行うことができる。また、ペットの身体に対するおむつ1のフィット性を高くすると共に、位置ずれが生じることを抑制することができる。
【0048】
<おむつ1の装着について>
図3A及び図3Bは、おむつ1をペットに装着させる際の動作について説明する図である。ペットにおむつ1を装着させる際には、先ず、図3Aのように、尻尾挿入部70にペットの尻尾を通しながら背側胴回り部3をペットの背中側に当てがいつつ、おむつ1を前後方向に二つ折りにする。この状態において、おむつ1の腹側胴回り部2はペットの腹側に配置され、吸収体10もペットの腹側(すなわちペットの排泄器官がある側)に配置される。尻尾挿入部70を基準とすることで、ペットの排泄器官の位置に吸収体10を正しく配置することができる。
【0049】
次に、腹側胴回り部2に設けられている一対のファスニングタブ50を左右方向の両側に引っ張り上げながら、係止部52の係止用突起を、背側胴回り部3に設けられているターゲット領域60に引っかけて係止させる。これにより、腹側胴回り部2と背側胴回り部3とが環状に連結され、図3Bに示されるような胴回り開口BHが形成される。また、股下部4の左右方向両側の脚繰り部4lh,4lhによって、一対の脚回り開口LH,LHが形成される。
【0050】
おむつ1の装着時には、脚回り開口LHを形成している脚繰り部4lhのうち、前後方向腹側の腹側脚繰り部4lhfが、ペットの両脚(後脚)の間で脚の付け根部分に当接した状態となる(図3B参照)。そのため、腹側脚繰り部4lhfの周縁がペットの後脚の付け根に干渉してしまう場合がある。例えば、胴回りにおけるフィット性を高めようとして、ファスニングタブ50を左右方向の両側に強く引っ張ると、腹側脚繰り部4lhfの周縁がペットの脚の付け根に食い込んでしまい、装着性が悪化したり肌トラブルの原因となったりするおそれがある。
【0051】
そこで、本実施形態のおむつ1では、装着時における脚回り開口LHの形状を適当に調整することにより、良好な装着性を実現している。図4は、脚回り開口LHの形状について説明する図である。同図4は、図1と同様に展開且つ伸長状態のおむつ1について表している。図4において、股下部4の脚繰り部4lhよりも左右方向の外側において、斜線部で示されている領域が、おむつ1の装着時に脚回り開口LHを形成する領域である。すなわち、腹側胴回り部2の左右方向側縁の前後方向における背側の端2ebと、背側胴回り部3の左右方向側縁の前後方向における腹側の端3efとを結ぶ直線と、脚繰り部4lhの周縁とによって囲まれる部分によって、脚回り開口LHが形成される。
【0052】
そしてこの脚回り開口LHを形成する斜線部で示される領域のうち、前後方向において中央位置CLよりも腹側の部分を腹側開口部A、前後方向において中央位置CLよりも背側の部分を背側開口部Bとする。第1実施形態のおむつ1では、腹側開口部Aの面積が背側開口部Bの面積よりも大きくなっている。腹側開口部Aの面積が大きいため、装着時において脚回り開口が腹側において広くなる。したがって、ペットの両脚の間で、腹側脚繰り部4lhfの周縁がペットの後脚の付け根に干渉し難くなり、装着性が向上する。一方、背側開口部Bの面積は腹側開口部Aと比較して小さいため、脚回り開口LHは全体として過度に広がらず、装着時に位置ずれが生じ難い。これにより、良好な装着性と、位置ずれの生じ難さを両立することができる。
【0053】
さらに、第1実施形態のおむつ1では、腹側脚繰り部4lhfの周縁が、背側脚繰り部4lhbの周縁よりも左右方向の内側に括れるように、脚繰り部4lhが形成されている。図5は、図4の展開且つ伸長状態のおむつ1を、前後方向における中央位置CLにて二つ折りにした状態を表す図である。図5の様に腹側胴回り部2と背側胴回り部3とを重ね合わせた状態において、腹側脚繰り部4lhfの周縁は、背側脚繰り部4lhbの周縁よりも左右方向の内側に位置している。例えば、前後方向において中央位置CLから距離h1だけ離間した位置で、腹側脚繰り部4lhfの周縁における点Pfは、背側脚繰り部4lhbの周縁における点Pbよりも、左右方向の内側に位置している。
【0054】
このように、腹側脚繰り部4lhfの周縁が内側に括れていることによって、図3Bのようにおむつ1をペットに装着させた際に、腹側脚繰り部4lhfの周縁がペットの脚の付け根により干渉し難くなる。したがって、腹側脚繰り部4lhfの周縁が脚の付け根に食い込んでしまうことが抑制され、装着性をより向上させることができる。
【0055】
また、おむつ1では、腹側脚繰り部4lhfの周縁から左右方向の内側へ向かって延びる一対の貫通部40,40が設けられていることにより、腹側脚繰り部4lhfの周縁がペットの脚の付け根に食い込んでしまうことを抑制しやすくなっている。図6は、貫通部40の詳細について説明する図である。同図6は、展開且つ伸長状態のおむつ1の腹側脚繰り部4lhfのうち、腹側胴周り部2に隣接する領域を拡大して表したものである。
【0056】
第1実施形態の貫通部40は、股下部4を厚さ方向に貫通する複数の溝41,41…が腹側脚繰り部4lhfの周縁から左右方向の内側へ向かって断続的に並んだ、所謂ミシン目である。このようなミシン目(貫通部40)が設けられていることにより、ユーザー(ペットの飼い主等)は、股下部4の一部を当該ミシン目に沿って裂くことができる。すなわち、腹側脚繰り部4lhfの周縁に切り込みを形成することができる。このような構成であれば、おむつ1の装着時に、ペットの体型によって腹側脚繰り部4lhfの周縁が脚の付け根に干渉してしまうような場合であっても、腹側脚繰り部4lhfに切り込みを形成することで、干渉を生じ難くすることができる。これにより、おむつ1装着時のフィット性をより高めることができる。そして、ミシン目を破る量(切り込みの長さ)を変更することで、ペットの体型に合わせてフィット性を自在に調整することができる。
【0057】
なお、ミシン目(貫通部40)は、股下部4から腹側胴回り部2まで達していても良い。すなわち、ミシン目(貫通部40)が腹側胴回り部2の一部を厚さ方向に貫通していても良い。
【0058】
また、おむつ1を厚さ方向に見たときに、ミシン目(貫通部40)が、吸収性コア11を覆うコアラップシート12、及び、吸収体10よりも肌側に設けられたトップシート22の少なくとも何れかと重複していないことが好ましい。仮に、コアラップシート12やトップシート22と重複してミシン目(貫通部40)が設けられていた場合、コアラップシート12やトップシート22が厚さ方向に貫通されることにより、おむつ1の装着時に尿等の排泄物が貫通部40を通過して肌側から非肌側に漏出しやすくなるおそれがある。
【0059】
これに対して、おむつ1では図6に示されるように、左右方向において、ミシン目(貫通部40)の内側端部(終端部とも呼ぶ)が、コアラップシート12及びトップシート22の外側端よりも外側に位置している。つまり、ミシン目(貫通部40)は、コアラップシート12及びトップシート22の何れとも重複していない。したがって、おむつ1の装着時に尿等がミシン目を伝って厚さ方向の肌側から非肌側へ漏れ出すことが抑制される。
【0060】
また、おむつ1を厚さ方向に見たときに、ミシン目(貫通部40)の左右方向における内側端部は、防漏シート23と重複している。図6では、ミシン目(貫通部40)の終端部が、防漏シート23と重複した位置に配置されている。この場合、ミシン目(貫通部40)の終端部は、厚さ方向において、少なくともサイドシート25及び防漏シート23及びバックシート24の3枚のシート部材を貫通している。一方、ミシン目(貫通部40)の左右方向における外側端部(先端部とも呼ぶ)は、防漏シート23と重複しておらず、サイドシート25及びバックシート24の2枚のシート部材を貫通している。
【0061】
つまり、ミシン目を破り始める際に起点となる左右方向における外側端部(先端部)では2枚のシート部材が積層されており、ミシン目を最大限に破った場合の終点となる左右方向における内側端部(終端部)では3枚のシート部材が積層されている。このような構成であれば、ミシン目を破る際に、破り始めとなる先端部付近では比較的弱い力で破ることが可能となり、破り終わりとなる終端部付近では、先端部よりも強い力が必要となる。これにより、ユーザーは、ミシン目の先端部から簡単に破り始めることが可能であり、また、ミシン目の終端部を超えておむつ1(吸収体10等)を余計に破いてしまうことが抑制される。
【0062】
また、おむつ1を厚さ方向に見たときに、ミシン目(貫通部40)は、脚回り弾性部材15及びその延長線と重複していない。ミシン目(貫通部40)は、おむつ1の製造工程において脚回り弾性部材15を挟み込んだ状態でサイドシート25とバックシート24とを接合した後で、所定のカッター等を用いて複数の溝41を形成することによって設けられる。したがって、ミシン目と脚回り弾性部材15とが重複していた場合、溝41を形成する過程で脚回り弾性部材15が切断されてしまう可能性が高い。そして、仮に、脚回り弾性部材15がミシン目によって切断されていた場合、ミシン目の両側に脚回り弾性部材15の収縮力(脚回り弾性部材15が切断された箇所から切断されていない側に向かって収縮する力)が作用することになる。すなわち、ミシン目と交差する方向に該ミシン目が引っ張られることによって、ミシン目が自然に破れやすくなるおそれがある。同様に、ミシン目(貫通部40)が、脚回り弾性部材15の延長線と交差している場合にも、脚回り弾性部材15の収縮力が作用して、ミシン目が自然に破れやすくなるおそれがある。
【0063】
これに対して、第1実施形態のおむつ1では、図6に示されるように、ミシン目(貫通部40)が脚回り弾性部材15及びその延長線と重複していないため、ミシン目(貫通部40)に対して脚回り弾性部材15の収縮力が作用し難い。すなわち、脚回り弾性部材15によってミシン目が両側(ミシン目と交差する方向)に引っ張られてしまうことが抑制される。これにより、ミシン目が自然に破れてしまうことが抑制され、おむつ1の良好な装着性を維持しやすくすることができる。
【0064】
一方、おむつ1を厚さ方向に見たときに、ミシン目(貫通部40)と、脚回り弾性部材15及びその延長線とが重複する構成としても良い。図7は、ミシン目(貫通部40)と脚回り弾性部材15とが重複する場合について表す図である。図7では、脚回り弾性部材15がミシン目と交差した点において切断され、ミシン目よりも腹側に位置する腹側弾性部材15fと、ミシン目よりも背側に位置する背側弾性部材15fbとに分割されている。この場合、腹側弾性部材15fと背側弾性部材15fbとがそれぞれ収縮して、ミシン目を開く(破る)方向に力が作用する。例えば、おむつ1を構成しているシート部材(サイドシート25やバックシート24等)が厚く、ミシン目を破るために大きな力が必要となる場合等には、ミシン目の両側に腹側弾性部材15f及び背側弾性部材15fbによる収縮力が作用するようにしておくことで、弱い力でもミシン目を破りやすくすることができる。これにより、おむつ1の装着性の調整を行いやすくすることができる。
【0065】
また、ミシン目の終端部側に、ミシン目が過度に破れてしまうことを抑制するための破れ抑制機構を設けておくと良い。図8A及び図8Bは、ミシン目(貫通部40)破れ抑制機構について説明する図である。図8Aでは、左右方向において、ミシン目の最も内側の端よりも内側に、ミシン目と交差する方向に配置された縦溝42が設けられている。すなわち、ミシン目を構成している複数の溝41,41…のうち、左右方向の最も内側(終端側)に位置する内側端部溝41iよりもさらに内側に、内側端部溝41iと交差する方向に延びる縦溝42が配置されている。例えば、ユーザーがミシン目を先端側から終端側に向かって破る動作を行う際に、誤ってミシン目の終端部(内側端部溝41i)を超えて破ろうとしてしまった場合に、破る方向(ミシン目に沿った方向)と交差する縦溝42(以下、「交差溝部」とも呼ぶ)が設けられていれば、当該縦溝42によってミシン目を破る力がせき止められて、ミシン目が過度に破れてしまうことが抑制される。
【0066】
図8Bでは、縦溝42に替えて、左右方向において、ミシン目の最も内側の端よりも内側に、C型溝43が設けられている。C型溝43は、ミシン目の内側端部溝41iよりもさらに内側に、内側端部溝41iと交差する部分を有しており、縦溝42と同様に交差溝部として機能する。これにより、ミシン目を破る力がC型溝43によってせき止められ、ミシン目が終端部(内側端部溝41i)を超えて破れてしまうことが抑制される。また、縦溝42やC型溝43以外に、左右方向においてミシン目の最も内側の端よりも内側に、ミシン目と交差する交差溝部が設けられていても良い。このような交差溝部が破れ抑制機構として機能することで、おむつ1が過度に破れてしまうことが抑制される。
【0067】
図9A及び図9Bは、ミシン目(貫通部40)と腹側脚繰り部4lhfの周縁との位置関係について説明する図である。図9Aでは、おむつ1を厚さ方向に見たときに、ミシン目(貫通部40)を構成している複数の溝41,41…のうち、左右方向の最も外側(先端側)に位置する外側端部溝41оと、腹側脚繰り部4lhfの周縁とが交差している。外側端部溝41оは、ミシン目を破いて腹側脚繰り部4lhfの周縁に切れ目を形成する際に、破り始めの起点となる部分である。したがって、図9Aのように外側端部溝41оが腹側脚繰り部4lhfの周縁と重複する構成であれば、ユーザーがミシン目を破いて腹側脚繰り部4lhfに切れ目を形成する際に、弱い力でミシン目を破り始めることが可能となり、安全且つ簡単にミシン目を破る動作を行うことができる。また、余計な力がかかり難いため、誤ってミシン目以外の部分が破れてしまうこと等を抑制できる。
【0068】
一方、図9Bでは、おむつ1を厚さ方向に見たときに、ミシン目の左右方向の最も外側(先端側)に位置する外側端部溝41оと、腹側脚繰り部4lhfの周縁とが交差してない。すなわち、外側端部溝41оが腹側脚繰り部4lhfの周縁よりも左右方向の内側に配置されている。破り始めの起点となる外側端部溝41оが腹側脚繰り部4lhfの周縁の内側に離間して配置されているため、図9Aの場合と比較してミシン目の破り始める際に要する力が大きくなる。したがって、図9Bのように外側端部溝41оが腹側脚繰り部4lhfの周縁と重複していない構成とすることにより、ミシン目が自然に破れてしまったり、ユーザーが意図していない破れが生じたりすることを抑制しやすくなる。
【0069】
(貫通部40の変形例)
おむつ1の貫通部40は上述したミシン目以外に、以下の様な構成としても良い。図10A及び図10Bは、貫通部40の変形例について表す図である。図10Aでは、一つの溝により貫通部40が構成されている。すなわち、腹側脚繰り部4lhfの周縁から左右方向の内側且つ前後方向の腹側に向かって延びる切り込み45によって貫通部40が構成されている。腹側脚繰り部4lhfの周縁部に予め切り込み45が設けられていることにより、ミシン目を破く手間をかけずに脚回り開口LHを広げることができる。
【0070】
また、図10Bでは、或る程度広い面積を有する孔により貫通部40が構成されている。すなわち、腹側脚繰り部4lhfの周縁を含む股下部4の所定の領域が厚さ方向にくり抜かれたくり抜き部46によって貫通部40が構成されている。腹側脚繰り部4lhfの周縁部を含む一部の領域が予めくり抜かれていることにより、装着時に腹側脚繰り部4lhfの周縁がペットの脚の付け根に食い込んでしまうことをより抑制しやすくなる。
【0071】
なお、腹側脚繰り部4lhfの周縁に図10Bのようなくり抜き部46が設けられている場合、当該くり抜き部46によってくり抜かれた部分の面積は、図4で説明した腹側開口部Aの面積には含まれないものとする。すなわち、腹側開口部Aの面積と背側開口部Bの面積とを比較する際には、くり抜き部46が形成されていない場合における側脚繰り部4lhfの周縁(図10Bの点線で示される仮想線)に基づいて腹側開口部Aの面積が決定される。
【0072】
<尻尾挿入部70の構成>
おむつ1において、装着時にペットの尻尾を通すための尻尾挿入部70は、股下部4のうち前後方向の中央位置CLよりも背側寄りに配置されている。具体的には、図1のように、展開且つ伸長状態のおむつ1の前後方向の長さをLとして、長さLを4等分したときに、腹側(前側)から3番目の領域(第3領域GA3とする)と重複するように尻尾挿入部70が配置される。尻尾挿入部70の前後方向における位置を規定することで、おむつ1の装着時にペットの尻尾の位置を基準として、腹側胴回り部2、背側胴回り部3、及び股下部4の位置を容易に調節しやすくなる。これにより、ペットの身体の適正な位置におむつ1の各部位を正しく当接させやすくなる。例えば、ペットの排泄口に対する吸収体10の位置や、ペットの両脚に対する脚回り開口LHの位置が適正に定められる。また、おむつ1を装着した状態において、尻尾挿入部70の位置が固定されるため、装着後におむつ1の位置ズレ等が生じ難くなる。
【0073】
図11は尻尾挿入部70配置について説明する図である。尻尾挿入部70は、おむつ1を前後方向に4等分したときの腹側(前側)から3番目の第3領域GA3と重複するように配置することを説明したが、尻尾挿入部70(切り込み71)の一部がおむつ1を前後方向に4等分したときの腹側(前側)から2番目の領域(第2領域GA2とする)と重複していても良い。図11Aでは、尻尾挿入部70の前後方向における腹側端が第2領域GA2と重複するように配置されている。このような構成であっても、ペットに装着させる際のおむつ1の位置調整を容易に行うことができる。
【0074】
なお、図11Aのように尻尾挿入部70の一部が第2領域GA2と重複する場合、尻尾挿入部70と吸収体10(吸収性コア11)とが重複する可能性がある。この場合、図11Aのように尻尾挿入部70と重複しないよう吸収性コア11の形状を変更すると良い。但し、吸収性コア11と重複して尻尾挿入部70が形成されるのであっても良い。
【0075】
一方、尻尾挿入部70は、おむつ1を前後方向に4等分したときの腹側(前側)から4番目の領域(第4領域GA4とする)とは重複しないように配置される。図11Bは、尻尾挿入部70の前後方向の後側端が第4領域GA4と重複する場合について表している。図11Bの場合、尻尾挿入部70よりも背側の領域が狭くなり、おむつ1の装着時にペットの背部が十分に覆われ難く、排泄物の後ろ漏れの原因となるおそれがある。また、ペットの両脚に対する脚回り開口LHの位置がずれやすく、装着性が悪化するおそれがある。したがって、おむつ1では、尻尾挿入部70の前後方向の後側端が、第4領域GA4ではなく第3領域GA3と重複して配置されるようにしている(図1及び図11A参照)。これにより、装着時にペットの背部が十分に覆われなくなったり、排泄物の後ろ漏れが生じたりすることを抑制しやすくなる。
【0076】
また、尻尾挿入部70の構成は、以下のように変形しても良い。図12は、尻尾挿入部70の変形例について表す図である。図12Aでは、股下部4を厚さ方向に貫通する十字型の溝72によって尻尾挿入部70が形成されている。図12Bでは、略円形状や楕円形状に空いた穴73によって尻尾挿入部70が形成されている。このような溝72や穴73によって尻尾挿入部70が形成される場合であっても、切り込み71と同様に尻尾挿入部70の機能を実現することができる。
【0077】
===第2実施形態===
第2実施形態では、脚繰り部4lhの形状が第1実施形態のおむつ1とは異なるペット用おむつ100(以下、おむつ100とも呼ぶ)について説明する。図13は、展開且つ伸長状態のおむつ100を表す平面図である。第2実施形態のおむつ100において、脚繰り部4lhの形状以外の構成は第1実施形態のおむつ1とほぼ同様であるため、おむつ100の各部の構成については説明を省略する。
【0078】
おむつ100において、股下部4の脚繰り部4lhよりも左右方向の外側において、図13の斜線部で示されている領域が、おむつ1の装着時に脚回り開口LHを形成する領域である。すなわち、腹側胴回り部2の左右方向側縁の前後方向における背側の端2ebと、背側胴回り部3の左右方向側縁の前後方向における腹側の端3efとを結ぶ直線と、脚繰り部4lhの周縁とによって囲まれる部分によって、脚回り開口LHが形成される。
【0079】
そして、前後方向において中央位置CLよりも腹側の部分を腹側開口部A、前後方向において中央位置CLよりも背側の部分を背側開口部Bとすると、おむつ100では、背側開口部Bの面積が腹側開口部Aの面積よりも大きくなっている。背側開口部Bの面積が大きいため、おむつ100をペットに装着させる際に、ペットの背側における位置調整が容易であり、フィット性を向上させやすい。一方、腹側開口部Aの面積が過度に大きくないため、位置調整の際にペットの両脚(後脚)の間で吸収体10の位置ずれを生じ難くすることができる。なお、腹側開口部Aの面積が小さいと、腹側脚繰り部4lhfの周縁がペットの脚の付け根に干渉しやすくなるおそれがある。しかしながら、おむつ100の腹側脚繰り部4lhfにはミシン目(貫通部40)が設けられており、腹側脚繰り部4lhfの周縁がペットの脚に干渉する場合には当該ミシン目を破いて調整することで、干渉を抑制することができる。これにより、良好な装着性を備え、位置ずれが生じ難いペット用おむつを実現することができる。
【0080】
図14は、図13の展開且つ伸長状態のおむつ100を、前後方向における中央位置CLにて二つ折りにした状態を表す図である。第2実施形態のおむつ100では、図5の様に腹側胴回り部2と背側胴回り部3とを重ね合わせた状態において、腹側脚繰り部4lhfの周縁は、背側脚繰り部4lhbの周縁よりも左右方向の外側に位置している。例えば、前後方向において中央位置CLから距離h1だけ離間した位置で、腹側脚繰り部4lhfの周縁における点Pfは、背側脚繰り部4lhbの周縁における点Pbよりも、左右方向の外側に位置している。すなわち、第2実施形態のおむつ100では、背側脚繰り部4lhbの周縁が、腹側脚繰り部4lhfの周縁よりも左右方向の内側に括れるように、脚繰り部4lhが形成されている。
【0081】
背側脚繰り部4lhbの周縁が内側に括れていることによって、おむつ100をペットに装着させようとする際に背側胴回り部3の位置調整が容易になる。例えば、図3Aのようにペットの尻尾を尻尾挿入部70に通した後で、背側胴回り部3の左右方向における位置を調整する際に、背側脚繰り部4lhbの周縁がペットの脚に干渉し難くなるため、位置調整を行いやすくなる。これにより、背側胴回り部3に設けられたターゲット領域60に対してファスニングタブ50を係合させやすくなり、おむつ100の装着性を向上させることができる。
【0082】
===その他の実施の形態===
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。また、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更や改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0083】
1 おむつ(第1実施形態、ペット用おむつ)、
2 腹側胴回り部、2eb 端(左右方向の側縁の背側端)、
3 背側胴回り部、3ef 端(左右方向の側縁の腹側端)、
4 股下部、4lh 脚繰り部、4lhf 腹側脚繰り部、4lhb 背側脚繰り部、
10 吸収体、
11 吸収性コア、12 コアラップシート、
15 脚回り弾性部材、16 防漏壁弾性部材、
22 トップシート、23 防漏シート、24 バックシート、25 サイドシート、
40 貫通部、
41 溝、41i 内側端部溝、41о 外側端部溝、
42 縦溝、43 C型溝、
45 切り込み、46 くり抜き部、
50 ファスニングタブ、
51 テープ基材、52 係止部、
60 ターゲット領域、
70 尻尾挿入部、
71 切り込み、72 溝、73 穴、
100 おむつ(第2実施形態、ペット用おむつ)、
BH 胴回り開口、LH 脚回り開口
図1
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