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特開2024-176120アミドイミド樹脂組成物、硬化性樹脂組成物、硬化物及び物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176120
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】アミドイミド樹脂組成物、硬化性樹脂組成物、硬化物及び物品
(51)【国際特許分類】
   C08L 79/08 20060101AFI20241212BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20241212BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
C08L79/08 C
C08L63/00 A
C08G73/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094384
(22)【出願日】2023-06-07
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 1.山田 駿介、高木 望、戸田 政明が、2022年8月5日付で、RadTech Asia 2022に係る予稿集において「Synthesis of UV curable amide-imide resins and its physical properties」と題し公開。 2.山田 駿介、高木 望、戸田 政明が、2022年8月25日付で、RadTech Asia 2022において、公開。
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177426
【弁理士】
【氏名又は名称】粟野 晴夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141601
【弁理士】
【氏名又は名称】貴志 浩充
(74)【代理人】
【識別番号】100173473
【弁理士】
【氏名又は名称】高井良 克己
(72)【発明者】
【氏名】山田 駿介
(72)【発明者】
【氏名】高木 望
(72)【発明者】
【氏名】戸田 政明
【テーマコード(参考)】
4J002
4J043
【Fターム(参考)】
4J002CD01X
4J002CD02X
4J002CD03X
4J002CD05X
4J002CD06X
4J002CM04W
4J002GQ00
4J043PA04
4J043QB26
4J043QB58
4J043RA06
4J043RA35
4J043TA11
4J043TA21
4J043TA71
4J043TB01
4J043UA122
4J043XA03
4J043XA18
4J043ZA02
4J043ZA34
4J043ZB47
(57)【要約】
【課題】本開示は、硬化物における優れた伸度及び基材密着性を有するアミドイミド樹脂組成物、これを含有する硬化性樹脂組成物、前記硬化性樹脂組成物の硬化物、及び物品を提供することを目的とする。
【解決手段】本開示は、酸基及び/又は酸無水物基を有するアミドイミド樹脂(A)と、分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(B)とを含有するアミドイミド樹脂組成物であって、前記アミドイミド樹脂(A)が、ポリイソシアネート化合物(a1)とtrans体含有脂環式ポリカルボン酸化合物又はその酸無水物(a2)とを必須の反応原料とすることを特徴とするアミドイミド樹脂組成物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸基及び/又は酸無水物基を有するアミドイミド樹脂(A)と、分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(B)とを含有するアミドイミド樹脂組成物であって、
前記アミドイミド樹脂(A)が、ポリイソシアネート化合物(a1)とtrans体含有脂環式ポリカルボン酸化合物又はその酸無水物(a2)とを必須の反応原料とすることを特徴とするアミドイミド樹脂組成物。
【請求項2】
前記trans体含有脂環式ポリカルボン酸化合物又はその酸無水物(a2)中のtrans体含有割合が、30mol%以上である、請求項1記載のアミドイミド樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリイソシアネート化合物(a1)が、ヌレート体である、請求項1記載のアミドイミド樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1~3の何れか一つに記載のアミドイミド樹脂組成物を含有する硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
触媒を更に含有する、請求項4に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項4記載の硬化性樹脂組成物の硬化物。
【請求項7】
請求項6記載の硬化物からなる塗膜を有することを特徴とする物品。
【請求項8】
以下の工程:
(i)ポリイソシアネート化合物(a1)とtrans体含有脂環式ポリカルボン酸化合物又はその酸無水物(a2)とを反応させて、酸基及び/又は酸無水物基を有するアミドイミド樹脂(A)を製造する工程;及び
(ii)工程(i)で得られたアミドイミド樹脂(A)と、分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物とを混合して、前記アミドイミド樹脂(A)と前記エポキシ化合物(B)とを含有するアミドイミド樹脂組成物を製造する工程
を含む、アミドイミド樹脂組成物の製造方法。
【請求項9】
前記trans体含有脂環式ポリカルボン酸化合物又はその酸無水物(a2)中のtrans体含有割合が、30mol%以上である、請求項8記載のアミドイミド樹脂組成物の製造方法。
【請求項10】
前記ポリイソシアネート化合物(a1)が、ヌレート体である、請求項8記載のアミドイミド樹脂組成物の製造方法。
【請求項11】
以下の工程:
(i)ポリイソシアネート化合物(a1)とtrans体含有脂環式ポリカルボン酸化合物又はその酸無水物(a2)とを反応させて、酸基及び/又は酸無水物基を有するアミドイミド樹脂(A)を製造する工程;及び
(ii)工程(i)で得られたアミドイミド樹脂(A)と、分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物とを混合して、前記アミドイミド樹脂(A)と前記エポキシ化合物(B)とを含有する硬化性樹脂組成物を製造する工程
を含む、硬化性樹脂組成物の製造方法。
【請求項12】
工程(ii)において、工程(i)で得られたアミドイミド樹脂(A)と、分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物と、更に触媒とを混合して、前記アミドイミド樹脂(A)と前記エポキシ化合物(B)と更に触媒とを含有する硬化性樹脂組成物を製造するか;又は、
工程(iii):工程(ii)で得られた硬化性樹脂組成物と、触媒とを混合して、前記アミドイミド樹脂(A)と前記エポキシ化合物(B)と更に触媒とを含有する硬化性樹脂組成物を製造する工程を更に含む、
請求項11記載の硬化性樹脂組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化物における優れた伸度及び基材密着性を有するアミドイミド樹脂組成物、これを含有する硬化性樹脂組成物、前記硬化性樹脂組成物の硬化物、及び物品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミドイミド樹脂は耐熱性や機械物性に優れ、電気電子産業を中心に各種分野において使用されてきている材料である。
【0003】
例えば、ポリアミドイミド樹脂として、カルボキシル基含有ポリイミド、及びオキシラン環を含有する化合物を含むこと、及び前記カルボキシル基含有ポリイミドが、テトラカルボン酸二無水物中の酸無水物基とジイソシアネート化合物中のイソシアネート基を反応させて得られた末端酸無水物基含有イミドプレポリマーが、ポリオール化合物を介して鎖延長された構造を有することを特徴とする熱硬化性樹脂組成物を用いることが知られている(特許文献1)。一方、硬化物における優れた伸度及び基材密着性を有する樹脂組成物として用いる原料の選択に検討の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-177548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、硬化物における優れた伸度及び基材密着性を有するアミドイミド樹脂組成物、これを含有する硬化性樹脂組成物、前記硬化性樹脂組成物の硬化物、及び物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、ポリイソシアネート化合物とtrans体含有脂環式ポリカルボン酸化合物又はその酸無水物とを反応して得られる酸基及び/又は酸無水物基を有するアミドイミド樹脂と、分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物とを含有するアミドイミド樹脂組成物が、硬化物における優れた伸度及び基材密着性を有することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
即ち、本発明は、酸基及び/又は酸無水物基を有するアミドイミド樹脂(A)と、分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(B)とを含有するアミドイミド樹脂組成物であって、
前記アミドイミド樹脂(A)が、ポリイソシアネート化合物(a1)とtrans体含有脂環式ポリカルボン酸化合物又はその酸無水物(a2)とを必須の反応原料とすることを特徴とするアミドイミド樹脂組成物に関する。
【0008】
本発明はさらに、前記アミドイミド樹脂組成物を含有する硬化性樹脂組成物に関する。
【0009】
本発明はさらに、前記硬化性樹脂組成物の硬化物に関する。
【0010】
本発明はさらに、前記硬化物からなる塗膜を有することを特徴とする物品に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、硬化物における優れた伸度及び基材密着性を有するアミドイミド樹脂組成物、これを含有する硬化性樹脂組成物、前記硬化性樹脂組成物の硬化物、及び物品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0013】
(用語の定義)
本明細書中、「置換基」の例としては、特に限定されないが、
水酸基、アルデヒド基、カルボキシル基、アルコキシ基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、スルホ基、
直鎖又は分岐の飽和脂肪族炭化水素基(例えば、炭素数1~20、好ましくは炭素数1~10の直鎖又は分岐のアルキル基)、
直鎖又は分岐の不飽和脂肪族炭化水素基(例えば、炭素数1~20、好ましくは炭素数1~10の直鎖又は分岐のアルケニル基)、
前記飽和脂肪族炭化水素基又は不飽和脂肪族炭化水素基中のメチレンが、後述する「酸素原子、窒素原子、及び/又は硫黄原子を含む2価の基」に置き換わった基、
前記飽和脂肪族炭化水素基又は不飽和脂肪族炭化水素基中の水素原子が、水酸基、アルデヒド基、カルボキシル基、アルコキシ基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、スルホ基等で置換された基
が挙げられる。
【0014】
本明細書中、「リンカー」とは、2価の基又は結合手をいう。
【0015】
本明細書中、「2価の基」の例としては、特に限定されないが、
脂肪族炭化水素構造を有する2価の基、
酸素原子、窒素原子、及び/又は硫黄原子を含む2価の基、及び
これらの2以上が連結してなる2価の基
等が挙げられる。
【0016】
本明細書中、「脂肪族炭化水素構造を有する2価の基」の例としては、特に限定されないが、
直鎖又は分岐の飽和脂肪族炭化水素構造を有する2価の基(例、炭素数1~30、好ましくは、炭素数1~20の直鎖又は分岐のアルキレン基);
直鎖又は分岐の不飽和脂肪族炭化水素構造を有する2価の基(例、炭素数1~30、好ましくは、炭素原子数1~20の直鎖又は分岐のアルケニレン基);
前記飽和脂肪族炭化水素構造を有する2価の基又は不飽和脂肪族炭化水素構造を有する2価の基中のメチレンが、酸素原子、窒素原子、及び/又は硫黄原子を含む2価の基に置き換わった2価の基;
これらの2以上が連結してなる2価の基
等が挙げられる。
【0017】
本明細書中、「酸素原子、窒素原子、及び/又は硫黄原子を含む2価の基」の例としては、特に限定されないが、例えば、カルボニル基(-C(=O)-)、-O-、-S-、-SO-、-N=N-、又は
【化1】
〔式(am-1)中、Ramは、水素原子、又は水酸基、アルデヒド基、カルボキシル基、アルコキシ基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、スルホ基、直鎖又は分岐の飽和脂肪族炭化水素基、及び直鎖又は分岐の不飽和脂肪族炭化水素基等から選択される任意の置換基である。〕
等で示される2価の基が挙げられる。
【0018】
本明細書中、「ハロゲン原子」、「ハロゲン化物」の用語における「ハロゲン」としては、例えば、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素等が挙げられる。
【0019】
(アミドイミド樹脂組成物)
本発明のアミドイミド樹脂組成物は、酸基及び/又は酸無水物基を有するアミドイミド樹脂(A)と、分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(B)とを含有するアミドイミド樹脂組成物であって、
前記アミドイミド樹脂(A)が、ポリイソシアネート化合物(a1)とtrans体含有脂環式ポリカルボン酸化合物又はその酸無水物(a2)とを必須の反応原料とすることを特徴とする。
【0020】
前記酸基及び/又は酸無水物基を有するアミドイミド樹脂(A)は、酸基及び酸無水物基のいずれか一方のみを有するものであってもよいし、両方を有するものであってもよい。中でも、硬化物における優れた伸度及び基材密着性を有するアミドイミド樹脂組成物を得ることができる観点から酸無水物基を有していることが好ましく、酸基及び酸無水物基の両方を有することが好ましい。前記アミドイミド樹脂(A)の固形分酸価は、中性条件下、即ち、酸無水物基を開環させない条件での測定値が60~250mgKOH/gの範囲であることが好ましい。他方、水の存在下等、酸無水物基を開環させた条件での測定値が61~300mgKOH/gの範囲であることが好ましい。
【0021】
<酸基及び/又は酸無水物基を有するアミドイミド樹脂(A)>
前記アミドイミド樹脂(A)は、ポリイソシアネート化合物(a1)とtrans体含有脂環式ポリカルボン酸化合物又はその酸無水物(a2)とを必須の反応原料とすることを特徴とする。また、前記アミドイミド樹脂(A)は、ポリイソシアネート化合物(a1)及びtrans体含有脂環式ポリカルボン酸化合物又はその酸無水物(a2)以外の反応原料(以下、「その他の反応原料(a3)」ということがある。)をさらなる任意の反応原料としてもよい。
【0022】
<ポリイソシアネート化合物(a1)>
ポリイソシアネート化合物(a1)は、イソシアネート基(-NCO)を2個以上有する化合物である。ポリイソシアネート化合物(a1)が有するイソシアネート基の数は、2個以上であり、例えば、2~15個である。一実施形態では、ポリイソシアネート化合物(a1)は、イソシアネート基を2個以上、3個以上、4個以上、5個以上、6個以上、7個以上、8個以上、9個以上、10個以上、11個以上、12個以上、13個以上又は14個以上有する化合物を含む。別の実施形態では、ポリイソシアネート化合物(a1)は、イソシアネート基を14個以下、13個以下、12個以下、11個以下、10個以下、9個以下、8個以下、7個以下、6個以下、5個以下、4個以下、3個以下又は2個以下有する化合物を含む。さらに別の実施形態では、ポリイソシアネート化合物(a1)は、イソシアネート基を2個、3個、4個又は5個有する化合物を含む。以下、便宜的に、ポリイソシアネート化合物(a1)を包括的に、以下の構造式(I)で表すことがある。

OCN-G-(NCO) (I)

〔式中、Gは、任意の化学構造を示し、nは、1以上の整数を示す。〕
【0023】
ポリイソシアネート化合物(a1)としては、特に限定されず、公知のポリイソシアネート化合物を用いることができる。ポリイソシアネート化合物(a1)としては、例えば、ジイソシアネート化合物、イソシアネート基(-NCO)を有する繰り返し構造を有するポリマー型ポリイソシアネート化合物、構造の一部にイソシアヌレート構造を有するポリイソシアネート化合物(「ヌレート変性体」、「ヌレート体」ともいう。)、構造の一部にビウレット構造を有するポリイソシアネート化合物(「ビウレット体」ともいう。)又は構造の一部にアロファネート構造を有するポリイソシアネート化合物(「アロファネート体」ともいう。)等が挙げられる。
【0024】
<ジイソシアネート化合物>
ジイソシアネート化合物とは、イソシアネート基(-NCO)を2個有する化合物であり、一般式:OCN-Ric-NCO
〔式中、Ricは、炭化水素構造を有する2価の基であって、当該炭化水素構造が、置換基で置換されていてもよく、酸素原子、窒素原子、及び/又は硫黄原子を含んでもよい、2価の基であり、例えば、下記Ric1、Ric2、又はRic3として定義されるものであってもよい。〕
で表される化合物である。この場合、構造式(I)におけるGは、Ricに相当し、nは、1に相当する。ジイソシアネート化合物としては、例えば、脂肪族ジイソシアネート化合物、脂環式ジイソシアネート化合物、芳香族ジイソシアネート化合物等が挙げられる。
【0025】
<<脂肪族ジイソシアネート化合物>>
「脂肪族ジイソシアネート化合物」とは、構造中に直鎖又は分岐の飽和又は不飽和脂肪族炭化水素構造を含有し、脂環構造及び芳香環を含有しない化合物であって、当該脂肪族炭化水素構造が、置換基で置換されていてもよく、酸素原子、窒素原子、及び/又は硫黄原子を含んでもよい、化合物をいう。脂肪族ジイソシアネート化合物としては、例えば、一般式:OCN-Ric1-NCO
〔式中、Ric1は、上記で定義した「脂肪族炭化水素構造を有する2価の基」である。〕
で表される化合物が挙げられる。
【0026】
ic1で示される「脂肪族炭化水素構造を有する2価の基」の例としては、
下記構造式(x-1):
【化2】
〔式(x-1)中、
「*」は、イソシアネート基(-NCO)の窒素原子との結合点を示し、
x1は、それぞれ独立して、置換基を示し、
p1は、1以上の整数(例えば、1~20の整数)を示し、
q1は、それぞれ独立して、0以上の整数(例えば、0~3の整数)を示す。〕
で表される2価の基;
上記構造式(x-1)で表される2価の基中のメチレンが、上記の「酸素原子、窒素原子、及び/又は硫黄原子を含む2価の基」に置き換わった2価の基
等が挙げられる。
【0027】
構造式(x-1)中のRx1で示される置換基の例は、上記で定義したとおりである。
【0028】
ic1が上記構造式(x-1)で表される場合、構造式(x-1)の具体例としては、下記構造式(x-1-1)~(x-1-8)で表される構造及び下記構造式(x-1-1)~(x-1-8)で表される構造中の水素原子が上記の「置換基」の定義で例示した置換基で置換された構造が挙げられる。
【化3】
【化4】
〔式中、「*」は、イソシアネート基(-NCO)の窒素原子との結合点を示す。〕
【0029】
脂肪族ジイソシアネート化合物の具体例としては、モノメチレンジイソシアネート、ジメチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラトリメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘプタメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0030】
<<脂環式ジイソシアネート化合物>>
「脂環式ジイソシアネート化合物」とは、構造中に脂環構造及び2つのイソシアネート基を含有し、芳香環を含有しない化合物をいう。脂環式ジイソシアネート化合物としては、例えば、一般式:OCN-Ric2-NCO
〔式中、Ric2は、脂環式炭化水素構造を有する2価の基であって、当該脂環式炭化水素構造が、置換基で置換されていてもよく、酸素原子、窒素原子、及び/又は硫黄原子を含んでもよい、2価の基である。〕
で表される化合物が挙げられる。式中、Ric2が含有する脂環構造としては、例えば、炭素数3~30、好ましくは炭素数3~20、より好ましくは炭素数3~10のシクロアルカン環(例、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン等)、炭素数3~30、好ましくは炭素数3~20、より好ましくは炭素数3~10のシクロアルケン環(例、シクロヘキセン、シクロヘキサジエン等)、2以上のこれらの環同士が複合してなる縮合環、架橋環(例、ビシクロ環)、スピロ環、又はこれらの組合せによる多環(例、ノルボルナン等)、水添芳香族環(例、水添ベンゼン環等)が挙げられる。式中、Ric2が有していてもよい「置換基」は、上記で定義したとおりである。Ric2が「置換基」を有する場合、「置換基」の数としては、例えば、1個以上10個以下であってもよい。「置換基」は、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。脂環式ジイソシアネート化合物中で、イソシアネート基(-NCO)は、環構造部分又は置換基部分のいずれかと結合していてもよい。
【0031】
脂環式ジイソシアネート化合物が一般式:OCN-Ric2-NCOで表される構造を有する場合、Ric2は、例えば、下記構造式(x-2)又は(x-3)で表すことができる。
【化5】
【化6】
〔式(x-2)又は(x-3)中、
「*」は、イソシアネート基(-NCO)の窒素原子との結合点を示し、
Ac、Ac、及びAcは、それぞれ独立して、脂環構造を示し、
x2、Rx3、及びRx4は、それぞれ独立して、置換基を示し、
x1、Lx2、Lx1’、Lx2’、及びLx3は、それぞれ独立して、リンカーを示し、
q2、q3、及びq4は、それぞれ独立して、0以上の整数(例えば、0~3の整数)を示す。〕
【0032】
構造式(x-2)又は(x-3)中のAc、Ac、又はAcで示される脂環構造としては、例えば、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカン等のシクロアルカン単環構造;シクロプロペン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロペンタジエン、シクロヘキセン、シクロヘキサジエン、シクロヘプテン、シクロオクテン、シクロノネン、シクロデセン等のシクロアルケン単環構造;2以上のこれらの単環構造同士が複合してなる縮合環(例、ヒドリンダン、デカヒドロナフタレン等)、架橋環(例、ノルボルナン、ノルボルネン、ノルボルナジエン等のビシクロ環、アダマンタン等のかご型分子)、スピロデカン等のスピロ環、又はこれらの組合せによる多環構造;等が挙げられる。
【0033】
構造式(x-2)又は(x-3)中のRx2、Rx3、又はRx4で示される置換基は、上記で定義したとおりである。
【0034】
構造式(x-2)又は(x-3)中のLx1、Lx2、Lx1’、Lx2’、及びLx3で示されるリンカーは、上記で定義したとおりである。
【0035】
ic2が上記構造式(x-2)で表される場合、構造式(x-2)の具体例としては、下記構造式(x-2-1)~(x-2-8)のいずれかで表される構造及び下記構造式(x-2-1)~(x-2-8)で表される構造中の水素原子が上記「Rx2、Rx3、又はRx4で示される置換基」として例示した置換基で置換された構造が挙げられる。
【化7】
【化8】
【化9】
式中、「*」は、イソシアネート基(-NCO)の窒素原子との結合点を示す。
【0036】
ic2が上記構造式(x-3)で表される場合、構造式(x-3)の具体例としては、下記構造式(x-3-1)~(x-3-3)のいずれかで表されるものが挙げられる。
【化10】
式中、「*」は、イソシアネート基(-NCO)の窒素原子との結合点を示す。
【0037】
脂環式ジイソシアネート化合物の具体例としては、シクロヘキサンジイソシアネート、シクロヘキセンジイソシアネート、シクロヘキサンジ(メチレンイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、ノルボルナンジ(メチレンイソシアネート)、アダマンタンジイソシアネート、ペンチルヘキセニルシクロヘキセンオクタメチレンイソシアネートノナメチレンイソシアネート、ビシクロヘキシルジイソシアネート、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、ジメチルメチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)等が挙げられる。
【0038】
<<芳香族ジイソシアネート化合物>>
「芳香族ジイソシアネート化合物」とは、構造中に芳香環及び2つのイソシアネート基を含有する化合物をいう。本明細書中、「芳香環」は、脂環構造との縮合環であってもよい。「芳香族ジイソシアネート化合物」は、任意で、構造中に芳香環以外の炭化水素構造(例、直鎖又は分岐の脂肪族炭化水素構造、脂環式炭化水素構造)をさらに含有してもよい。芳香族ジイソシアネート化合物としては、例えば、一般式:OCN-Ric3-NCO
〔式中、Ric3は、置換基で置換されていてもよい酸素原子、窒素原子、及び/又は硫黄原子を含んでもよい芳香環を含有する構造を含有する2価の基である。〕
で表される化合物が挙げられる。式中、Ric3の「芳香族基」を構成する環構造としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環等が挙げられる。式中、Ric3が有していてもよい「置換基」としては、例えば、直鎖又は分岐の脂肪族炭化水素基(例えば、炭素数1~20、好ましくは炭素数1~10の直鎖又は分岐のアルキル基)、脂環式炭化水素基(例えば、炭素数3~30の、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、縮合環、架橋環、スピロ環等の多環構造を有する基)等が挙げられる。Ric3が「置換基」を有する場合、「置換基」の数としては、例えば、1個以上10個以下であってもよい。「置換基」は、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。芳香族ジイソシアネート化合物中で、イソシアネート基(-NCO)は、環構造部分及び置換基部分のいずれと結合していてもよい。芳香族ジイソシアネート化合物の具体例としては、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ジイソシアナトジメチルビフェニル、トリジンジイソシアネート等が挙げられる。
【0039】
芳香族ジイソシアネート化合物が一般式:OCN-Ric3-NCOで表される構造を有する場合、Ric3は、例えば、下記構造式(x-4)~(x-6)のいずれかで表すことができる。
【化11】
【化12】
【化13】
〔式(x-4)~(x-6)中、
「*」は、イソシアネート基(-NCO)の窒素原子との結合点を示し、
Ar、Ar、Ar、及びArは、それぞれ独立して、芳香環を示し、
Acは、脂環構造を示し、
x5、Rx6、Rx7、Rx8、及びRx9は、それぞれ独立して、置換基を示し、
x4、Lx5、Lx6、Lx7、Lx8、Lx9、Lx10、及びLx11は、それぞれ独立して、リンカーを示し、
q5、q6、q7、q8、及びq9は、それぞれ独立して、0以上の整数(例えば、0~3の整数)を示す。〕
【0040】
構造式(x-4)~(x-6)中のAr、Ar、Ar、及びArで示される芳香環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、アントラセン環、インダン環、インデン環、テトラリン環、ビフェニレン環、フルオレン環等が挙げられる。
【0041】
構造式(x-6)中のAcで示され得る脂環構造の例は、上記「構造式(x-2)又は(x-3)中のAc、Ac、又はAcで示される脂環構造」として例示したものと同じである。
【0042】
構造式(x-4)~(x-6)中のRx5、Rx6、Rx7、Rx8、及びRx9で示される置換基の例は、上記「構造式(x-1)中のRx1で示される置換基」として例示したものと同じである。
【0043】
構造式(x-4)~(x-6)中のLx4、Lx5、Lx6、Lx7、Lx8、Lx9、Lx10、及びLx11で示されるリンカーの例は、上記「構造式(x-2)又は(x-3)中のLx1、Lx2、又はLx3で示されるリンカー」として例示したものと同じである。
【0044】
ic3が上記構造式(x-4)で表される場合、構造式(x-4)の具体例としては、下記構造式(x-4-1)~(x-4-11)で表される構造及び下記構造式(x-4-1)~(x-4-11)で表される構造中の水素原子が上記「Rx5、Rx6、Rx7、Rx8、及びRx9で示される置換基」として例示した置換基で置換された構造が挙げられる。
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
式中、「*」は、イソシアネート基(-NCO)の窒素原子との結合点を示す。
【0045】
ic3が上記構造式(x-5)で表される場合、構造式(x-5)の具体例としては、下記構造式(x-5-1)~(x-5-11)で表される構造及び下記構造式(x-5-1)~(x-5-11)で表される構造中の水素原子が上記「Rx5、Rx6、又はRx7で示される置換基」として例示した置換基で置換された構造が挙げられる。
【化18】
【化19】
【化20】
【化21】
【化22】
式中、「*」は、イソシアネート基(-NCO)の窒素原子との結合点を示す。
【0046】
ic3が上記構造式(x-6)で表される場合、構造式(x-6)の具体例としては、下記構造式(x-6-1)~(x-6-8)で表される構造及び下記構造式(x-6-1)~(x-6-8)で表される構造中の水素原子が上記「Rx5、Rx6、又はRx7で示される置換基」として例示した置換基で置換された構造が挙げられる。
【化23】
【化24】
【化25】
式中、「*」は、イソシアネート基(-NCO)の窒素原子との結合点を示す。
【0047】
芳香族ジイソシアネート化合物の具体例としては、
フェノールジイソシアネート、フェノールジ(メチレンイソシアネート)、フェノールジ(イソプロピルイソシアネート)、ナフタレンジイソシアネート、
インダンジイソシアネート、インデンジイソシアネート、テトラリンジイソシアネート、
ビフェニルジイソシアネート、ベンジルメチルフェノールジイソシアネート、
フェニルイソプロピル(イソプロピル)フェノールジイソシアネート、フェニルナフタレンジイソシアネート、
インダニルベンゼンジイソシアネート、インデニルベンゼンジイソシアネート、テトラリニルベンゼンジイソシアネート、
シクロヘキサニルベンゼンジイソシアネート、シクロヘキサンジメチレンベンゼンジイソシアネート、イソホロニルベンゼンジイソシアネート、
シクロヘキセニルベンゼンジイソシアネート、ペンチルヘキセニルシクロヘキセンオクタメチレンイソシアネートノニレンベンゼンイソシアネート等が挙げられる。
【0048】
<ポリマー型ポリイソシアネート化合物>
イソシアネート基(-NCO)を有する繰り返し構造を有するポリマー型ポリイソシアネート化合物は、例えば、特開2021-102714号公報の構造式(11)で表される繰り返し構造を有するポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートも挙げられる。
【0049】
【化26】
〔式中、Rはそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1~6の炭化水素基の何れかである。Rはそれぞれ独立に炭素原子数1~4のアルキル基、又は構造式(11)で表される構造部位と*印が付されたメチレン基を介して連結する結合点の何れかである。lは0~5の整数であり、mは2~15の整数である。〕
【0050】
<イソシアヌレート構造を有するポリイソシアネート化合物(ヌレート体)>
ジイソシアネート化合物(即ち、上述した一般式「OCN-Ric-NCO」〔式中、Ricの定義及び例示は上述したとおりである。〕で表される化合物)のポリイソシアネート化合物(以下、「ヌレート体」ということがある。)は、例えば、下記構造式(NU-1)、(NU-2)又は(NU-3)で表される構造を有する化合物である。
【化27】
【化28】
【化29】
〔式(NU-1)~(NU-3)中、Ricの定義及び例示は上述したとおりである。〕
ヌレート体としては、脂肪族ジイソシアネート化合物のヌレート体、脂環式ジイソシアネート化合物のヌレート体、及び芳香族ジイソシアネート化合物のヌレート体が挙げられる。
【0051】
<<脂肪族ジイソシアネート化合物のヌレート体>>
脂肪族ジイソシアネート化合物のヌレート体とは、上記構造式(NU-1)、(NU-2)又は(NU-3)においてRicが上記Ric1(Ric1の定義及び例示は上述したとおりである。)である構造を有する化合物である。脂肪族ジイソシアネート化合物のヌレート体の具体例としては、上述した脂肪族ジイソシアネート化合物に由来するヌレート体等が挙げられる。
【0052】
<<脂環式ジイソシアネート化合物のヌレート体>>
脂環式ジイソシアネート化合物のヌレート体としては、上記構造式(NU-1)、(NU-2)又は(NU-3)においてRicが上記Ric2(Ric2の定義及び例示は上述したとおりである。)である構造を有する化合物である。脂環式ジイソシアネート化合物の具体例としては、イソホロンジイソシアネート等の上述したジイソシアネート化合物に由来するヌレート体等が挙げられる。
【0053】
脂環式ジイソシアネート化合物のヌレート体の例として、イソホロンジイソシアネートのヌレート体を挙げることができる。イソホロンジイソシアネートのヌレート体としては、多種多様な構造を有する化合物が存在し得るが、これらの中でも、例えば、下記構造式(IP-1)、(IP-2)および(IP-3)に示す構造を有する化合物等が挙げられる。
【化30】
【化31】
【化32】
【0054】
イソホロンジイソシアネートのヌレート体としては、上記構造式(IP-1)、(IP-2)、又は(IP-3)で示されるようなイソシアネート基を3個有するヌレート体、イソシアネート基を合計4個又は5個有するヌレート体、及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0055】
<<芳香族ジイソシアネート化合物のヌレート体>>
芳香族ジイソシアネート化合物のヌレート体とは、上記構造式(NU-1)、(NU-2)又は(NU-3)においてRicが上記Ric3(Ric3の定義及び例示は上述したとおりである。)である構造を有する化合物である。芳香族ジイソシアネート化合物の具体例としては、上述した芳香族ジイソシアネート化合物に由来するヌレート体等が挙げられる。
【0056】
<ビウレット構造を有するポリイソシアネート化合物(ビウレット体)>
ビウレット構造を有するポリイソシアネート化合物(以下、単に「ビウレット体」ということがある。)における「ビウレット構造」とは、-N(CONH-)を指す。ビウレット体としては、一般式(BU):

OCN-Ric-N(CONH-Ric-NCO) (BU)
〔式中、Ricの定義及び例示は上述したとおりである。〕

で表される化合物が挙げられる。ビウレット体としては、脂肪族ジイソシアネート化合物のビウレット体(即ち、上記一般式(BU)においてRicが上記で説明したRic1である化合物)、脂環式ジイソシアネート化合物のビウレット体(即ち、上記一般式(BU)においてRicが上記で説明したRic2である化合物)、及び芳香族ジイソシアネート化合物のビウレット体(即ち、上記一般式(BU)においてRicが上記で説明したRic3である化合物)が挙げられる。
【0057】
<アロファネート構造を有するポリイソシアネート化合物(アロファネート体)>
アロファネート構造を有するポリイソシアネート化合物(以下、単に「アロファネート体」ということがある。)における「アロファネート構造」とは、-OC(O)NC(O)-NH-を指す。アロファネート体としては、一般式(AP):

OCN-Ric-OC(O)NC(O)-NH-NCO (AP)
〔式中、Ricの定義及び例示は上述したとおりである。〕

で表される化合物が挙げられる。アロファネート体としては、脂肪族ジイソシアネート化合物のアロファネート体(即ち、上記一般式(AP)においてRicが上記で説明したRic1である化合物)、脂環式ジイソシアネート化合物のアロファネート体(即ち、上記一般式(AP)においてRicが上記で説明したRic2である化合物)、及び芳香族ジイソシアネート化合物のアロファネート体(即ち、上記一般式(AP)においてRicが上記で説明したRic3である化合物)が挙げられる。
【0058】
イソシアネート化合物の市販品としては、例えば、EVONIK社の「VESTANAT(登録商標)」シリーズ(IPDI、TMDI、H12MDI、T 1890 E、T 1890 L、T 1890 M、T 1890/100等);三井化学社の「タケネート(登録商標)」シリーズ(D-127N等);DIC株式会社の「バーノック(BURNOCK)(登録商標)」シリーズ(DN-901S、DN-902S、DN-980、DN-980S、DN-981、DN-992-S等)が挙げられる。
【0059】
これらの中でも、硬化物における優れた伸度及び基材密着性を有するアミドイミド樹脂組成物となることから、イソシアヌレート変性体が好ましく、脂肪族ジイソシアネート化合物もしくは脂環式ジイソシアネート化合物のイソシアヌレート変性体がより好ましい。更に、前記ポリイソシアネート化合物(a1)の総質量に対するイソシアヌレート変性体の割合が70質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることが好ましい。
【0060】
<trans体含有脂環式ポリカルボン酸化合物又はその酸無水物(a2)>
「trans体含有脂環式ポリカルボン酸化合物又はその酸無水物(a2)」(以下、「ポリカルボン酸化合物(a2)」ともいう。)とは、脂環式ポリカルボン酸化合物又はその酸無水物であって、そのうちtrans体を含有する化合物である。
【0061】
<カルボン酸に関する用語等の定義>
本明細書中、「酸無水物基」とは、炭化水素系骨格構造(例、脂環骨格)中の互いに隣接する2つの骨格構造形成炭素原子のうち一方の炭素原子に結合した1つのカルボキシル基と、他方の炭素原子に結合した1つのカルボキシル基とからなる2つのカルボキシル基(以下、「隣接する2つのカルボキシル基」という。)が脱水縮合した構造をいう。
本明細書中、便宜的に、「カルボキシル基換算数」とは、[カルボキシル基の数]+2×[酸無水物基の数]をいう。
同様に、「カルボキシル基換算モル数」も、[カルボキシル基のモル数]+2×[酸無水物基のモル数]をいう。
【0062】
<ポリカルボン酸化合物(a2)の特性>
詳細な機構は不明であるが、アミドイミド樹脂(A)の反応原料として用いるポリカルボン酸化合物(a2)のtrans体含有割合が多いほど、得られるアミドイミド樹脂(A)中のアミド基(ポリイソシアネート化合物(a1)とポリカルボン酸化合物(a2)がアミド結合により連結することにより形成される連結部分)/イミド基(ポリイソシアネート化合物(a1)とポリカルボン酸化合物(a2)がイミド結合により連結することにより形成される連結部分)のモル比率が増大し、それによって硬化物における優れた伸度及び基材密着性を有するアミドイミド樹脂組成物を得ることができる。この観点から、アミドイミド樹脂(A)の反応原料として用いるポリカルボン酸化合物(a2)のtrans体含有割合は、多いほど好ましい。
【0063】
「脂環式ポリカルボン酸化合物」とは、脂環骨格に2以上のカルボキシル基を有し、かつ、これらのカルボキシル基のうち少なくとも2つが、互いに隣接する環構成炭素原子にそれぞれ結合している化合物をいう。
【0064】
「脂環式ポリカルボン酸化合物の酸無水物」とは、前記脂環式ポリカルボン酸化合物中の隣接する2つの環構成炭素原子に結合したカルボキシル基同士が分子内で脱水縮合した構造(酸無水物基)を有するカルボン酸無水物である。
【0065】
「脂環式ポリカルボン酸化合物のtrans体」とは、脂環式ポリカルボン酸化合物中の前記2つの環構成炭素原子に結合したカルボキシル基が、互いにtransの向きで環構成炭素原子に結合している、脂環式ポリカルボン酸化合物であり、下記構造式(PC-1)で表される構造を有する化合物である。
【化33】
〔式中、「*」は、「隣接する2つのカルボキシル基」が結合した脂環骨格中の2つの炭素原子の位置を示す。〕
【0066】
「脂環式ポリカルボン酸化合物の酸無水物のtrans体」とは、脂環式ポリカルボン酸化合物中の酸無水物の中の前記脱水縮合した2つのカルボキシル基が、互いにtransの向きで環構成炭素原子に結合している、脂環式ポリカルボン酸化合物の酸無水物であり、下記構造式(PC-2)で表される構造を有する化合物である。
【化34】
【0067】
なお、式(PC-1)及び(PC-2)中、Acは、脂環骨格であり、Rpcは、それぞれ独立して、カルボキシル基以外の任意の置換基であり、p及びqは、それぞれ独立して、0以上の整数である。
【0068】
脂環骨格としては、例えば、シクロプロパン、シクロブタン、シクロブテン、シクロペンタン、シクロペンテン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、1,3-シクロヘキサジエン、シクロヘプタン、シクロヘプテン、シクロヘプタジエン(1,3-シクロヘプタジエン、1,4-シクロヘプタジエン)、シクロオクタン、シクロオクテン、シクロオクタジエン(1,2-シクロオクタジエン、1,3-シクロオクタジエン、1,4-シクロオクタジエン、1,5-シクロオクタジエン)、1,3,5-シクロオクタトリエン等の飽和又は不飽和環状脂肪族炭化水素(例、3~8員飽和又は不飽和環状脂肪族炭化水素)に由来する骨格が挙げられるが、これらに限定されない。
【0069】
脂環式ポリカルボン酸化合物又はその酸無水物のtrans体中のカルボキシル基換算数(2+pに相当)は、2以上であり、例えば、2、3、4、5、6、7又は8(ただし、脂環骨格の環構成原子数を超えない)であってもよい。
【0070】
式(PC-1)及び(PC-2)中、Rpcで表されるカルボキシル基以外の任意の置換基としては、例えば、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数1~20のアルケニル基、炭素原子数1~20のアルコキシ基、炭素原子数1~20のアルケニルオキシ基、アリール基、ハロゲン原子、水酸基、アルデヒド基等が挙げられる。
【0071】
脂環式ポリカルボン酸化合物又はその酸無水物のtrans体が有する前記カルボキシル基以外の任意の置換基の数(上記qに相当)は、0以上の整数であり、0又は1であることが好ましく、0であることがより好ましい。
【0072】
脂環式ポリカルボン酸化合物のtrans体としては、例えば、下記構造式で表される構造を有する化合物及びこれらが置換基で置換された化合物が挙げられるが、これらに限定されない。以下、構造式中、破線が付された結合は、単結合又は不飽和結合を示す。
【化35】
【化36】
【化37】
【化38】
【化39】
【0073】
脂環式ポリカルボン酸化合物のtrans体としては、例えば、
シクロプロパン-r-1,trans-2-ジカルボン酸、メチルシクロプロパン-r-2,trans-3-トリカルボン酸シクロプロパン-r-1,trans-2,trans-3-トリカルボン酸等のシクロプロパン骨格ポリカルボン酸trans体化合物;
シクロブタン-r-1,trans-2-ジカルボン酸、メチルシクロブタン-r-2,trans-3-ジカルボン酸、シクロブタン-r-1,trans-2,trans-4-トリカルボン酸、メチルシクロブタン-r-2,trans-3,trans-4-トリカルボン酸等のシクロブタン骨格ポリカルボン酸trans体化合物;
シクロブテン-r-3,trans-4-ジカルボン酸、シクロブテン-1,r-3,trans-4-トリカルボン酸、シクロブテン-2,r-3,trans-4-トリカルボン酸等のシクロブテン骨格ポリカルボン酸trans体化合物;
シクロペンタン-r-1,trans-2-ジカルボン酸、シクロペンテン-r-3,trans-4-ジカルボン酸、シクロペンタン-r-1,trans-2,trans-4-トリカルボン酸等のシクロペンタン骨格ポリカルボン酸trans体化合物;
シクロペンテン-r-3,trans-4-ジカルボン酸、シクロペンテン-1,r-3,trans-4-トリカルボン酸等のシクロペンテン骨格ポリカルボン酸trans体化合物;
シクロヘキサン-r-1,trans-2-ジカルボン酸、メチルシクロヘキサン-r-3,trans-4-ジカルボン酸、シクロヘキサン-r-1,trans-2,trans-4-トリカルボン酸、メチルシクロヘキサン-r-3,trans-4,trans-6-トリカルボン酸等のシクロヘキサン骨格ポリカルボン酸trans体化合物;
シクロヘキセン-r-4,trans-5-ジカルボン酸、シクロヘキセン-1,r-4,trans-5-トリカルボン酸等のシクロヘキセン骨格ポリカルボン酸trans体化合物;
1,3-シクロヘキサジエン-r-5,trans-6-トリカルボン酸、1,3-シクロヘキサジエン-2,r-5,trans-6-トリカルボン酸等のシクロヘキサジエン骨格ポリカルボン酸trans体化合物;
シクロヘプタン-r-1,trans-2,trans-4-トリカルボン酸等のシクロヘプタン骨格ポリカルボン酸trans体化合物;
シクロヘプテン-r-3,trans-4,trans-6-トリカルボン酸等のシクロヘプテン骨格ポリカルボン酸trans体化合物;
1,3-シクロヘプタジエン-1,r-5,trans-6-トリカルボン酸、1,4-シクロヘプタジエン-2,r-6,trans-7-トリカルボン酸等のシクロヘプタジエン骨格ポリカルボン酸trans体化合物;
シクロオクタン-r-1,trans-2,trans-4-トリカルボン酸等のシクロオクタン骨格ポリカルボン酸trans体化合物;
シクロオクテン-r-3,trans-4,trans-6-トリカルボン酸等のシクロオクテン骨格ポリカルボン酸trans体化合物;
1,2-シクロオクタジエン-r-4,trans-5,trans-7-トリカルボン酸、1,3-シクロオクタジエン-r-5,trans-6,trans-8-トリカルボン酸、1,4-シクロオクタジエン-1,r-6,trans-7-トリカルボン酸、1,5-シクロオクタジエン-2,r-7,trans-8-トリカルボン酸等のシクロオクタジエン骨格ポリカルボン酸trans体化合物;
1,3,5-シクロオクタトリエン-2,r-7,trans-8-トリカルボン酸等のシクロオクタトリエン骨格ポリカルボン酸trans体化合物;
が挙げられるが、これらに限定されない。
【0074】
脂環式ポリカルボン酸化合物のtrans体としては、6員脂環骨格を有する脂環式ポリカルボン酸化合物のtrans体が好ましく、6員脂環骨格及び3つのカルボキシル基を有する脂環式ポリカルボン酸化合物(水添トリメリット酸)のtrans体がより好ましく、下記構造式で表される構造を有するシクロヘキサン-r-1,trans-2,trans-4-トリカルボン酸が好ましい。
【化40】
【0075】
脂環式ポリカルボン酸化合物の酸無水物のtrans体としては、特に限定されないが、例えば、上記で「脂環式ポリカルボン酸化合物のtrans体」として例示した化合物中の隣接する2つの環構成炭素原子に互いにtransの向きで結合したカルボキシル基同士が分子内で脱水縮合した構造を有するカルボン酸無水物が挙げられる。
【0076】
脂環式ポリカルボン酸化合物の酸無水物のtrans体としては、6員脂環骨格を有する脂環式ポリカルボン酸化合物の酸無水物のtrans体が好ましく、6員脂環骨格及び3つのカルボキシル基を有する脂環式ポリカルボン酸化合物の酸無水物(例、水添トリメリット酸無水物)のtrans体がより好ましく、下記構造式で表される構造を有するシクロヘキサン-r-1,trans-2,trans-4-トリカルボン酸-1,2-無水物がさらに好ましい。
【化41】
【0077】
脂環式ポリカルボン酸化合物又はその酸無水物のtrans体としては、脂環式ポリカルボン酸化合物の酸無水物のtrans体が好ましく、6員脂環骨格を有する脂環式ポリカルボン酸化合物の酸無水物のtrans体がより好ましく、シクロヘキサン-r-1,trans-2,trans-4-トリカルボン酸-1,2-無水物がさらに好ましい。
【0078】
trans体含有脂環式ポリカルボン酸化合物又はその酸無水物(a2)は、該当する脂環式ポリカルボン酸化合物又はその酸無水物のtrans体とcis体の混合物であってもよい。例えば、trans体含有脂環式ポリカルボン酸化合物又はその酸無水物(a2)は、trans体であるシクロヘキサン-r-1,trans-2,trans-4-トリカルボン酸-1,2-無水物と、cis体である(1R,3R,4S)-シクロヘキサン-1,3,4-トリカルボン酸-3,4-無水物の混合物であってもよい。trans体含有脂環式ポリカルボン酸化合物又はその酸無水物(a2)中のtrans体含有割合(trans体とcis体の合計に対するtrans体の割合)は、上述した理由により、硬化物における優れた伸度及び基材密着性を有するアミドイミド樹脂組成物を得ることができる観点から、できるだけ高いほうが好ましい。trans体含有脂環式ポリカルボン酸化合物又はその酸無水物(a2)中のtrans体含有割合は、20mol%以上であることが好ましく、30mol%以上であることがより好ましく、40mol%以上であることがさらに好ましく、50mol%以上であることがさらに好ましく、55mol%以上であることがさらに好ましい。
【0079】
本発明が奏する効果を十分に発揮する観点から、アミドイミド樹脂(A)の反応原料総質量に対する前記ポリイソシアネート化合物(a1)と前記ポリカルボン酸化合物(a2)との合計質量の割合が90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることが好ましい。
【0080】
<その他の反応原料(a3)>
前記アミドイミド樹脂(A)の反応原料は、任意で、必須の反応原料である前記ポリイソシアネート化合物(a1)と前記ポリカルボン酸化合物(a2)に加えて、所望の樹脂性能等に応じてこれら以外の反応原料(以下、「その他の反応原料(a3)」という。)を併用してさらに含んでもよい。その他の反応原料(a3)としては、例えば、前記ポリカルボン酸化合物(a2)以外のポリカルボン酸化合物又はその酸無水物等が挙げられる。
【0081】
その他の反応原料(a3)としては、例えば、水酸基含有化合物、脂肪族多塩基酸、脂環式多塩基酸、芳香族多塩基酸、これらの多塩基酸無水物、及びこれらの多塩基酸又は多塩基酸無水物の酸ハロゲン化物等が挙げられる。
【0082】
上記水酸基含有化合物としては、例えば、水酸基含有非アクリレート系化合物等が挙げられる。水酸基含有非アクリレート系化合物としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール化合物;フェノール、ナフトール等のフェノール性水酸基含有化合物;等が挙げられる。前記ポリイソシアネート化合物(a1)と前記ポリカルボン酸化合物(a2)との反応生成物中に酸無水物基とカルボキシル基が残存し得る場合、その他の反応原料(a3)として水酸基含有化合物を用いると、水酸基含有化合物の水酸基が、カルボキシル基よりも酸無水物基と優先的に反応して、1つの当該水酸基含有化合物に由来するカルボキシルエステル含有基と1つのカルボキシル基に変換される。
【0083】
上記脂肪族多塩基酸、脂肪族多塩基酸無水物、及びこれらの脂肪族多塩基酸又は脂肪族多塩基酸無水物の酸ハロゲン化物としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸、これらの多塩基酸無水物、及びこれらの多塩基酸又は多塩基酸無水物の酸ハロゲン化物等が挙げられる。また、これらの化合物中の脂肪族炭化水素基は直鎖型及び分岐型のいずれでもよく、構造中に不飽和結合を有していてもよい。
【0084】
上記脂環式多塩基酸、脂環式多塩基酸無水物、及びこれらの脂環式多塩基酸又は脂環式多塩基酸無水物の酸ハロゲン化物としては、例えば、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、シクロヘキサントリカルボン酸、シクロヘキサンテトラカルボン酸、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジカルボン酸、メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジカルボン酸、4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸、これらの多塩基酸無水物、及びこれらの多塩基酸又は多塩基酸無水物の酸ハロゲン化物等が挙げられる。
【0085】
上記芳香族多塩基酸、芳香族多塩基酸無水物、及びこれらの芳香族多塩基酸又は芳香族多塩基酸無水物の酸ハロゲン化物としては、例えば、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸、ナフタレントリカルボン酸、ナフタレンテトラカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、ビフェニルトリカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、これらの多塩基酸無水物、及びこれらの多塩基酸又は多塩基酸無水物の酸ハロゲン化物等が挙げられる。
【0086】
その他の反応原料(a3)は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0087】
本発明が奏する効果を十分に発揮する観点から、アミドイミド樹脂(A)の反応原料総質量に対する前記ポリイソシアネート化合物(a1)、前記ポリカルボン酸化合物(a2)とその他の反応原料(a3)との合計質量の割合は90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることが好ましい。
【0088】
<反応条件等>
ポリイソシアネート化合物(a1)とポリカルボン酸化合物(a2)とを必須の反応原料とする前記アミドイミド樹脂(A)の製造方法は特に限定されず、どのような方法で製造してもよい。例えば、一般的なアミドイミド樹脂と同様の方法にて製造することができる。具体的には、前記ポリイソシアネート化合物(a1)が有するイソシアネート基1モルに対し、0.6~3モルの前記ポリカルボン酸化合物(a2)を用い、好ましくは50℃~250℃の範囲、特に好ましくは70~180℃程度の温度条件下で撹拌混合して反応させる方法が挙げられる。反応時間は、1~24時間であることが好ましく、1~12時間であることがより好ましい。反応は、不活性ガス(例、窒素;ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン等の希ガス等)雰囲気下で行うことが好ましい。
【0089】
ポリイソシアネート化合物(a1)とポリカルボン酸化合物(a2)とその他の反応原料(a3)とを反応原料とする前記アミドイミド樹脂(A)の製造方法の場合、これらの反応原料の割合として、前記ポリイソシアネート化合物(a1)が有するイソシアネート基1モルに対して0.6~3モルの前記ポリカルボン酸化合物(a2)を用いてもよい。これらの反応原料の反応は、好ましくは50℃~250℃の範囲、特に好ましくは70~180℃程度の温度条件下で撹拌混合して行ってもよい。反応時間は、1~24時間であることが好ましく、1~12時間であることがより好ましい。
【0090】
前記ポリイソシアネート(a1)と前記ポリカルボン酸化合物(a2)とは、前記ポリイソシアネート(a1)のイソシアネート基のモル数(N)と、前記ポリカルボン酸化合物(a2)のカルボキシル基換算モル数(M)(即ち、[カルボキシ基のモル数]+2×[酸無水物基のモル数])との比(M/N)が0.7~4.5、より好ましくは1~3.5となるように反応させれば、後述する分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(B)との反応により得られるアミドイミド樹脂組成物を、硬化物における優れた伸度及び基材密着性を有するアミドイミド樹脂組成物とすることが可能となる。中でも、(M/N)は、2~3.2であることがより好ましい。
【0091】
ポリイソシアネート化合物(a1)とポリカルボン酸化合物(a2)が反応して、アミド基又はイミド基が形成されることによって、後述するアミドイミド樹脂(A)が形成される。以下、この反応を「アミド/イミド化反応」という。アミド/イミド化反応は、溶媒中あるいは無溶媒中で、前記ポリイソシアネート化合物(a1)の1種類以上と、前記ポリカルボン酸化合物(a2)の1種以上とを混合し、撹拌を行いながら昇温して行うことが好ましい。その際、分子量分布が小さいポリアミドイミド樹脂を得たい場合は、前記ポリカルボン酸化合物(a2)に対して、前記ポリイソシアネート(a1)を少なくとも2回、さらに好ましくは3~5回に分けて加えることが好ましい。アミド/イミド化反応は、ポリカルボン酸化合物(a2)が酸無水物基を有する場合に、ポリイソシアネート(a1)中のイソシアネート基とポリカルボン酸化合物(a2)中の酸無水物基からイミド基が形成され、ポリカルボン酸化合物(a2)がカルボキシル基を有する場合に、ポリイソシアネート(a1)中のイソシアネート基とポリカルボン酸化合物(a2)中のカルボキシル基からアミド基が形成される反応である。反応生成物中のアミド基及びイミド基の具体的な構造式は後述する。
【0092】
アミド/イミド化反応の進行は、赤外スペクトルや、酸価、イソシアネート基又はイソシアネート基の変性部分の定量等の分析手段により追跡することができる。赤外スペクトルでは、イソシアネート基又はイソシアネート基の変性部分(例、イソシアヌレート部分、ビウレット部分、アロファネート部分)の特性吸収である1690~1720cm-1及び1406~1428cm-1が反応とともに減少し、さらに1860cm-1と850cm-1に特性吸収を有する酸無水物基が減少する。一方、1780cm-1と1720cm-1にイミド基の吸収が増加する。アミド/イミド化反応は、イソシアネート基が消失するまで反応を進行させる方が好ましい。また、アミド/イミド化反応中や該反応後は、酸基及び重合性不飽和基含有樹脂や酸基及び重合性不飽和基含有樹脂から得られる硬化物等の特性を損なわない範囲で、塩基性触媒、重合禁止剤、酸化防止剤、その他溶媒等を添加してもよい。
【0093】
<<塩基性触媒>>
前記塩基性触媒としては、例えば、N-メチルモルフォリン、ピリジン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7(DBU)、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン-5(DBN)、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、トリ-n-ブチルアミンもしくはジメチルベンジルアミン、トリメチルアミン、ジメチルエチルアミン、ジエチルメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルプロピルアミン、ジエチルプロピルアミン、ジプロピルメチルアミン、ジプロピルエチルアミン、トリプロピルアミン、ジメチルブチルアミン、ジエチルブチルアミン、ジブチルメチルアミン、ジブチルエチルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、トリノニルアミン、トリデシルアミン、ブチルアミン、オクチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イミダゾール、1-メチルイミダゾール、2,4-ジメチルイミダゾール、1,4-ジエチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(N-フェニル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等のアミン化合物;トリオクチルメチルアンモニウムクロライド、トリオクチルメチルアンモニウムアセテート等の四級アンモニウム塩;トリメチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等のホスフィン化合物;テトラメチルホスホニウムクロライド、テトラエチルホスホニウムクロライド、テトラプロピルホスホニウムクロライド、テトラブチルホスホニウムクロライド、テトラブチルホスホニウムブロマイド、トリメチル(2-ヒドロキシルプロピル)ホスホニウムクロライド、トリフェニルホスホニウムクロライド、ベンジルホスホニウムクロライド等のホスホニウム塩;ジブチル錫ジラウレート、オクチル錫トリラウレート、オクチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジネオデカノエート、ジブチル錫ジアセテート、オクチル酸錫、1,1,3,3-テトラブチル-1,3-ドデカノイルジスタノキサン等の有機錫化合物;オクチル酸亜鉛、オクチル酸ビスマス等の有機金属化合物;オクタン酸錫等の無機錫化合物;無機金属化合物等が挙げられる。また、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩及びアルカリ金属水酸化物等を用いることもできる。これらの塩基性触媒は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。使用に際しては、これらの塩基性触媒を10~55質量%程度の水溶液の形態で使用してもよいし、固形の形態で使用してもよい。
【0094】
前記塩基性触媒の使用量は、硬化物における優れた伸度及び基材密着性を有するアミドイミド樹脂組成物を得る観点から、ポリイソシアネート化合物(a1)と前記ポリカルボン酸化合物(a2)の合計100質量部に対して、0.01~1質量部の範囲が好ましく、0.05~0.8の範囲がより好ましい。
【0095】
<<重合禁止剤>>
前記重合禁止剤としては、例えば、p-メトキシフェノール、p-メトキシクレゾール、ヒンダードフェノール化合物(例、ジブチルヒドロキシトルエン)、4-メトキシ-1-ナフトール、4,4’-ジアルコキシ-2,2’-ビ-1-ナフトール、3-(N-サリチロイル)アミノ-1,2,4-トリアゾール、N’1,N’12-ビス(2-ヒドロキシベンゾイル)ドデカンジヒドラジド、スチレン化フェノール、N-イソプロピル-N’-フェニルベンゼン-1,4-ジアミン、6-エトキシ-2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン等のフェノール化合物、ヒドロキノン、メチルヒドロキノン、p-ベンゾキノン、メチル-p-ベンゾキノン、2,5-ジフェニルベンゾキノン、2-ヒドロキシ-1,4-ナフトキノン、アントラキノン、ジフェノキノン等のキノン化合物、メラミン、p-フェニレンジアミン、4-アミノジフェニルアミン、N.N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、N-i-プロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(1.3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、ジフェニルアミン、4,4’-ジクミル-ジフェニルアミン、4,4’-ジオクチル-ジフェニルアミン、ポリ(2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン)、スチレン化ジフェニルアミン、スチレン化ジフェニルアミンと2,4,4-トリメチルペンテンの反応生成物、ジフェニルアミンと2,4,4-トリメチルペンテンの反応生成物等のアミン化合物、フェノチアジン、ジステアリルチオジプロピオネート、2,2-ビス({[3-(ドデシルチオ)プロピオニル]オキシ}メチル)-1,3-プロパンジイル=ビス[3-(ドデシルチオ)プロピオナート]、ジトリデカン-1-イル=3,3’-スルファンジイルジプロパノアート等のチオエーテル化合物、N-ニトロソジフェニルアミン、N-ニトロソフェニルナフチルアミン、p-ニトロソフェノール、ニトロソベンゼン、p-ニトロソジフェニルアミン、α-ニトロソ-β-ナフトール等、N、N-ジメチルp-ニトロソアニリン、p-ニトロソジフェニルアミン、p-ニトロンジメチルアミン、p-ニトロン-N、N-ジエチルアミン、N-ニトロソエタノールアミン、N-ニトロソジ-n-ブチルアミン、N-ニトロソ-N-n-ブチル-4-ブタノールアミン、N-ニトロソ-ジイソプロパノールアミン、N-ニトロソ-N-エチル-4-ブタノールアミン、5-ニトロソ-8-ヒドロキシキノリン、N-ニトロソモルホリン、N-二トロソーN-フェニルヒドロキシルアミンアンモニウム塩、二トロソベンゼン、N-ニトロソ-N-メチル-p-トルエンスルホンアミド、N-ニトロソ-N-エチルウレタン、N-ニトロソ-N-n-プロピルウレタン、1-ニトロソ-2-ナフトール、2-ニトロソ-1-ナフトール、1-ニトロソ-2-ナフトール-3,6-スルホン酸ナトリウム、2-ニトロソ-1-ナフトール-4-スルホン酸ナトリウム、2-ニトロソ-5-メチルアミノフェノール塩酸塩、2-ニトロソ-5-メチルアミノフェノール塩酸塩等のニトロソ化合物、リン酸とオクタデカン-1-オールのエステル、トリフェニルホスファイト、3,9-ジオクタデカン-1-イル-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、トリスノニルフェニルホスフィト、亜リン酸-(1-メチルエチリデン)-ジ-4,1-フェニレンテトラ-C12-15-アルキルエステル、2-エチルヘキシル=ジフェニル=ホスフィット、ジフェニルイソデシルフォスファイト、トリイソデシル=ホスフィット、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト等のホスファイト化合物、ビス(ジメチルジチオカルバマト-κ(2)S,S’)亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジブチル・ジチオカルバミン酸亜鉛等の亜鉛化合物、ビス(N,N-ジブチルカルバモジチオアト-S,S’)ニッケル等のニッケル化合物、1,3-ジヒドロ-2H-ベンゾイミダゾール-2-チオン、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール、2-メチル-4,6-ビス[(オクタン-1-イルスルファニル)メチル]フェノール、ジラウリルチオジプロピオン酸エステル、3,3’-チオジプロピオン酸ジステアリル等の硫黄化合物等が挙げられる。これらの重合禁止剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0096】
<<酸化防止剤>>
前記酸化防止剤としては、上記で重合禁止剤として例示した化合物と同様のものを用いることができ、前記酸化防止剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0097】
また、前記酸化防止剤の市販品としては、例えば、和光純薬工業株式会社製「Q-1300」、「Q-1301」、住友化学株式会社製「スミライザーBBM-S」、「スミライザーGA-80が」等が挙げられる。
【0098】
<<溶媒>>
アミド/イミド化反応は必要に応じて有機溶媒中で行ってもよい。用いる有機溶媒の選択は、反応原料及び生成物であるアミドイミド樹脂組成物の溶解性や反応温度条件等により適宜選択してもよい。
【0099】
前記有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、ヘプタン、ヘキサン、ミネラルスピリット等の炭化水素系溶媒、メチルエチルケトン、アセトン、ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジメチルアセトアミド等のケトン溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキソラン等の環状エーテル溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル溶媒;トルエン、キシレン、ソルベントナフサ等の芳香族溶媒;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族溶媒;カルビトール、セロソルブ、メタノール、イソプロパノール、ブタノール(n-ブタノール、イソブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール)、シクロヘキサノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール溶媒;プロピルエーテル、メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ等のエーテル系溶媒;アルキレングリコールモノアルキルエーテル、ジアルキレングリコールモノアルキルエーテル、ジアルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート等のグリコールエーテル溶媒;α-アセトラクトン、β-プロピオラクトン、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン等のラクトン溶媒;大豆油、亜麻仁油、菜種油、サフラワー油等の植物油脂;メトキシプロパノール、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。これらの有機溶媒は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0100】
また、上記有機溶媒としては、市販品を用いることもでき、当該市販品としては、例えば、ENEOS株式会社製「1号スピンドル油」、「3号ソルベント」、「4号ソルベント」、「5号ソルベント」、「6号ソルベント」、「ナフテゾールH」、「アルケン56NT」、「AFソルベント4号」、「AFソルベント5号」「AFソルベント6号」「AFソルベント7号」、三菱ケミカル株式会社製「ダイヤドール13」、「ダイヤレン168」;出光興産株式会社「スーパーゾルLA35」、「スーパーゾルLA38」;ExxonMobil Chemical社製「エクソールD80」、「エクソールD110」、「エクソールD120」、「エクソールD130」、「エクソールD160」、「エクソールD100K」、「エクソールD120K」、「エクソールD130K」、「エクソールD280」、「エクソールD300」、「エクソールD320」;等が挙げられる。有機溶媒の使用量は、反応効率が良好となることから、反応原料の合計質量に対し0.1~5倍量程度の範囲で用いることが好ましい。
【0101】
<アミドイミド樹脂(A)の構造>
アミドイミド樹脂(A)は、ポリイソシアネート化合物(a1)とポリカルボン酸化合物(a2)とがアミド/イミド化反応により連結した重合体である。アミドイミド樹脂(A)において、ポリイソシアネート化合物(a1)とポリカルボン酸化合物(a2)は、アミド結合又はイミド結合により連結している。
【0102】
以下、ポリカルボン酸化合物(a2)が、脂環骨格中の互いに隣接する環構成炭素原子に結合した2つのカルボキシル基(以下、便宜上「隣接カルボキシル基」という。)又は1つの酸無水物基と、それ以外の環構成炭素原子に結合した1つのカルボキシル基(以下、便宜上「孤立カルボキシル基」という。)を含有する場合を例として、アミドイミド樹脂(A)の重合単位構造を説明する。この場合、ポリカルボン酸化合物(a2)中のカルボキシル基換算数は、3である。なお、ポリカルボン酸化合物(a2)中のカルボキシル基換算数が3以外である場合も、アミドイミド樹脂(A)の重合単位構造は、以下の説明に準じた構造式で表すことができる。
【0103】
ポリカルボン酸化合物(a2)中の隣接カルボキシル基又は酸無水物基とポリイソシアネート化合物(a1)中のイソシアネート基の反応後の想定される状態としては、以下の(i-1)~(i-4)の4通りの場合が挙げられる。なお、便宜的に、以下の反応式の説明において、ポリイソシアネート化合物(a1)を包括的に、以下の構造式(I)で表す。

OCN-G-(NCO) (I)

〔式中、Gは、任意の化学構造を示し、nは、1以上の整数を示す。〕
【0104】
(i-1)2つの隣接カルボキシル基又は酸無水物基がイソシアネート基と反応せず、そのまま2つのカルボキシル基又は1つの酸無水物基として残存する。
【0105】
(i-2)2つの隣接カルボキシル基のうち一方がイソシアネート基と反応してアミド基を形成し、他方がイソシアネート基と反応せずカルボキシル基として残存する。
【化42】
【化43】
あるいは、酸無水物基が1つのイソシアネート基と反応して、1つのアミド基及び1つのカルボキシル基を形成する。
【化44】
【化45】
【0106】
(i-3)2つの隣接カルボキシル基のそれぞれがイソシアネート基と反応して、それぞれ合計2つのアミド基を形成する。
【化46】
あるいは、酸無水物基が2つのイソシアネート基と反応して、合計2つのアミド基を形成する。
【化47】
【0107】
(i-4)酸無水物基が1つのイソシアネート基と反応して1つのイミド基を形成する。
【化48】
【0108】
上記反応式は、ポリカルボン酸化合物(a2)とポリイソシアネート化合物(a1)との連結反応のうち、ポリイソシアネート化合物(a1)中の1つのイソシアネート基(構造式(I)における「OCN-」で表される部分)と、ポリカルボン酸化合物(a2)との連結反応に関する部分を示す。反応生成物の構造式中の「・・・」は、ポリイソシアネート化合物(a1)中の上記1つのイソシアネート基以外のイソシアネート基(構造式(I)における「-(NCO)」で表される部分)に由来する反応後の構造を示す。また、上記反応式中、Ac中の「*」は、ポリカルボン酸化合物(a2)中の隣接カルボキシル基又は酸無水物基が結合した脂環骨格中の2つの炭素原子、及び反応生成物中の対応する2つの炭素原子の位置を示す。上記反応式は、簡便のため、孤立カルボキシル基がイソシアネート基と反応しない場合のみを示したが、実際は、後述するように、孤立カルボキシル基がイソシアネート基と反応しない場合と、孤立カルボキシル基がイソシアネート基と反応してアミド基を形成する場合が存在する。
【0109】
ポリカルボン酸化合物(a2)中の孤立カルボキシル基とポリイソシアネート化合物(a1)中のイソシアネート基の反応後の想定される状態としては、以下の(ii-1)及び(ii-2)の2通りの場合が挙げられる。
(ii-1)孤立カルボキシル基がイソシアネート基と反応せず、そのままカルボキシル基として残存する。
(ii-2)孤立カルボキシル基がイソシアネート基と反応してアミド基を形成する。
【0110】
上述したように、ポリカルボン酸化合物(a2)のtrans体含有割合が多いほど、得られるアミドイミド樹脂(A)中のアミド基/イミド基のモル比率が増大し、それによって硬化物における優れた伸度及び基材密着性を有するアミドイミド樹脂組成物を得ることができる。この観点から、アミドイミド樹脂(A)の反応原料として用いるポリカルボン酸化合物(a2)のtrans体含有割合は、多いほど好ましい。trans体含有割合の好ましい範囲は、上述したとおりである。
【0111】
また、アミドイミド樹脂(A)の形成反応に用いるポリイソシアネート(a1)のイソシアネート基のモル数(N)と、ポリカルボン酸化合物(a2)のカルボキシル基換算モル数(M)(即ち、[カルボキシ基のモル数]+2×[酸無水物基のモル数])がほぼ同じである場合、指標としてのアミドイミド樹脂(A)中のアミド基/イミド基のモル比率が高いほど、アミドイミド樹脂(A)中のカルボキシル基換算数が多くなり、アミドイミド樹脂(A)とエポキシ化合物(B)との結合の量が増大する。そのため、熱硬化に用いる硬化性樹脂組成物の熱硬化性が向上し、硬化物における優れた伸度及び基材密着性を有するアミドイミド樹脂組成物を得ることができるので好ましい。アミドイミド樹脂(A)中のアミド基/イミド基のモル比率は、1.2以上が好ましく、1.5以上がより好ましい。
【0112】
ポリイソシアネート化合物(a1)とポリカルボン酸化合物(a2)との連結様式としては、下記表1の(X1-1)~(X1-3)の末端構造(枝数=1)、(X2-1)~(X2-3)の直鎖構造(枝数=2)、(X3-1)の分岐構造(枝数=3)が挙げられる。
【0113】
【表1】
【0114】
ここで、便宜的に、ポリイソシアネート化合物(a1)を下記の構造式(I):

OCN-G-(NCO) (I)

〔式中、Gは、任意の化学構造を示し、nは、1以上の整数を示す。〕
で包括的に表した場合、ポリカルボン酸化合物(a2)におけるポリイソシアネート化合物(a1)との連結様式(X1-1)~(X1-3)、(X2-1)~(X2-3)、(X3-1)は、それぞれ、下記構造式(X1-1a)~(X1-3)、(X2-1a)~(X2-3)、(X3-1)で表すことができる。
【0115】
連結様式(X1-1):末端構造型(枝数=1)
【化49】
【化50】
【0116】
連結様式(X1-2):末端構造型(枝数=1)
【化51】
【化52】
【0117】
連結様式(X1-3):末端構造型(枝数=1)
【化53】
【0118】
連結様式(X2-1):直鎖構造型(枝数=2)
【化54】
【化55】
【0119】
連結様式(X2-2):直鎖構造型(枝数=2)
【化56】
【0120】
連結様式(X2-3):直鎖構造型(枝数=2)
【化57】
【0121】
連結様式(X3-1):分岐構造型(枝数=3)
【化58】
【0122】
式(X1-1a)~(X1-3)、(X2-1a)~(X2-3)、(X3-1)中、「G」は、上記で定義したポリイソシアネート化合物(a1)の部分に相当する構造である。「*」は、反応前のポリカルボン酸化合物(a2)における、「隣接する2つのカルボキシル基」又は「酸無水物基」が結合した脂環骨格中の2つの炭素原子の位置を示す。Ac、Rpc、及びqは、ポリカルボン酸化合物(a2)に関して説明したとおりである。
【0123】
また、上記構造式中、破線で囲んだ部分をまとめて、[PCN1]、[PCN2]、及び[PCN3]として表す。[PCN1]、[PCN2]、及び[PCN3]は、それぞれ、末端構造型(枝数=1)、直鎖構造型(枝数=2)、及び分岐構造型(枝数=3)の連結様式の中心構造を便宜的に表すものである。このようにすれば、末端構造型(枝数=1)の連結様式の構造を

・・・G-[PCN1]

として表し、
直鎖構造型(枝数=2)の連結様式の構造を

・・・G-[PCN2]-G・・・

として表し、
分岐構造型(枝数=3)の連結様式の構造を
【化59】
として、包括的に表すことができる。
【0124】
即ち、[PCN1]は、末端構造型(枝数=1)の連結様式(X1-1)~(X1-3)を表す上記構造式(X1-1a)~(X1-3)のいずれかにおける、1つの「・・・G-」を除いた部分(中心構造)を示す。
[PCN2]は、直鎖構造型(枝数=2)の連結様式(X2-1)~(X2-3)を表す上記構造式(X2-1a)~(X2-3)のいずれかにおける、2つの「・・・G-」を除いた部分(中心構造)を示す。
[PCN3]は、分岐構造型(枝数=3)の連結様式(X3-1)を表す上記構造式(X3-1)における、3つの「・・・G-」を除いた部分(中心構造)を示す。
【0125】
ここで、ポリイソシアネート化合物(a1)が下記構造式(DI-1):

OCN-Ric-NCO (DI-1)

で表される構造を有するジイソシアネート化合物である場合を例として、ポリイソシアネート化合物(a1)とポリカルボン酸化合物(a2)との連結様式を説明する。ポリイソシアネート化合物(a1)とポリカルボン酸化合物(a2)との連結様式としては、下記構造式(DX1-1)~(DX3-3)で表される構造が挙げられる。
【0126】
【化60】
【0127】
各式中、「・・・」は、隣接する繰返し単位の[PCN1]、[PCN2]、及び[PCN3]構造への連結部位を示す。Ric、[PCN1]、[PCN2]、及び[PCN3]は、上記で説明したとおりである。
【0128】
また、例えば、ポリイソシアネート化合物(a1)が下記構造式(NU-1)
【化61】
で表される構造を有するイソシアヌレート化合物である場合、ポリイソシアネート化合物(a1)とポリカルボン酸化合物(a2)との連結様式としては、下記構造式(NUX1-1-1)~(NUX3-3-3)で表される構造が挙げられる。
【0129】
【化62】
【化63】
【化64】
【化65】
【化66】
【化67】
【化68】
【化69】
【化70】
【化71】
【0130】
各式中、「・・・」は、隣接する繰返し単位の[PCN1]、[PCN2]、及び[PCN3]構造への連結部位を示す。Ric、[PCN1]、[PCN2]、及び[PCN3]は、上記で説明したとおりである。
【0131】
ポリイソシアネート化合物(a1)が下記構造式(NU-2)又は(NU-3)
【化72】
【化73】
で表される構造を有するイソシアヌレート化合物である場合も、アミドイミド樹脂(A)は、上記構造式(NU-1)で表される構造を有するイソシアヌレート化合物に関して説明したのと同様な構造を有する。
【0132】
また、例えば、ポリイソシアネート化合物(a1)が下記構造式(IP-1)
【化74】
で表される構造を有するイソホロンジイソシアネートのヌレート体である場合、ポリイソシアネート化合物(a1)とポリカルボン酸化合物(a2)との連結様式としては、多岐に亘るため全ての連結様式の一部のみを示すが、例えば、下記構造式(IPX1-1-1)~(IPX3-3-3)で表される構造が挙げられる。また、連結様式中の立体異性構造も多岐に亘るため、全ての立体異性構造の一部として、上記で定義した[PCN1]、[PCN2]、及び[PCN3]の表現形式で例示する。
【0133】
【化75】
【化76】
【化77】
【化78】
【化79】
【化80】
【化81】
【化82】
【化83】
【化84】
【0134】
各式中、「・・・」は、隣接する繰返し単位の[PCN1]、[PCN2]、及び[PCN3]構造への連結部位を示す。[PCN1]、[PCN2]、及び[PCN3]は、上記で説明したとおりである。
【0135】
なお、上記構造式(IP-1)で表される構造を有するイソホロンジイソシアネートのヌレート体は、3つのイソシアネート基(-NCO)をいずれも非対称な位置に有しているため、ポリイソシアネート化合物(a1)とポリカルボン酸化合物(a2)との連結様式は、上記で例示した構造式(IPX1-1-1)~(IPX3-3-3)で表される構造以外にも存在するが、イソホロンジイソシアネートのヌレート体の中心構造における3つのイソシアネート基の位置以外の点で、上記で例示した構造式(IPX1-1-1)~(IPX3-3-3)で表される構造に準じた連結様式となる。
【0136】
また、例えば、ポリイソシアネート化合物(a1)が下記構造式(IP-2)又は(IP-3)
【化85】
【化86】
で表される構造を有するイソホロンジイソシアネートのヌレート体である場合も、アミドイミド樹脂(A)は、上記構造式(IP-1)で表される構造を有するイソホロンジイソシアネートのヌレート体に関して説明したのと同様な構造を有する。
【0137】
ポリイソシアネート化合物(a1)及びポリカルボン酸化合物(a2)が上記以外の構造を有する場合も、上記例示と同様に、ポリイソシアネート化合物(a1)とポリカルボン酸化合物(a2)とがアミド基及び/又はイミド基を形成してアミドイミド樹脂(A)が生成されると考えてよい。
【0138】
<分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(B)>
分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(B)(以下、「エポキシ化合物(B)」ともいう。)は、アミドイミド樹脂(A)と反応することにより硬化物を形成し得る成分である。アミドイミド樹脂(A)とエポキシ化合物(B)とが反応して硬化物を形成する機構は、次のとおりである。アミドイミド樹脂(A)とエポキシ化合物(B)とを含有する硬化性樹脂組成物を熱硬化させるために加熱すると、エポキシ化合物(B)中のエポキシ基が、アミドイミド樹脂(A)中の(無水)カルボキシル基と結合することによって、硬化性樹脂組成物が硬化して、硬化物を形成する。エポキシ化合物(B)としては、特に限定されず、多種多様な化合物を用いることができ、例えば、分子中に2個以上のエポキシ基を有する低分子エポキシ化合物、エポキシ樹脂以外のエポキシ基含有ポリマー、エポキシ樹脂等が挙げられる。また、エポキシ化合物(B)は、それぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。エポキシ化合物(B)は、硬化物における優れた伸度及び基材密着性を有するアミドイミド樹脂組成物を得ることができる観点から、エポキシ樹脂であることが好ましく、ノボラック型エポキシ樹脂であることがより好ましく、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂であることがさらに好ましい。
【0139】
<<分子中に2個以上のエポキシ基を有する低分子エポキシ化合物>>
分子中に2個以上のエポキシ基を有する低分子エポキシ化合物としては、特に限定されず、例えば、
ブタンジオールジグリシジルエーテル、ペンタンジオールジグリシジルエーテル、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ヘプタンジオールジグリシジルエーテル、オクタンジオールジグリシジルエーテル、ノナンジオールジグリシジルエーテル、デカンジオールジグリシジルエーテル、ウンデカンジオールジグリシジルエーテル、ドデカンジオールジグリシジルエーテル、トリデカンジオールジグリシジルエーテル、テトラデカンジオールジグリシジルエーテル、ペンタデカンジオールジグリシジルエーテル、ヘキサデカンジオールジグリシジルエーテル、
エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、テトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、ペンタメチレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ヘキサメチレングリコールジグリシジルエーテル、ヘプタメチレングリコールジグリシジルエーテル、
ビスフェノールAジグリシジルエーテル、
トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル
等が挙げられる。
【0140】
<<エポキシ基含有ポリマー>>
エポキシ樹脂以外のエポキシ基含有ポリマーとしては、特に限定されず、例えば、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリペンタメチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリヘキサメチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリヘプタメチレングリコールジグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0141】
<<エポキシ樹脂>>
前記エポキシ樹脂としては、例えば、特開2022-098702号公報に記載のエポキシ樹脂を用いることができ、ビスフェノール型エポキシ樹脂、フェニレンエーテル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール-フェノール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール-クレゾール共縮ノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン-フェノール付加反応型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、キサンテン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシベンゼン型エポキシ樹脂、トリヒドロキシベンゼン型エポキシ樹脂、オキサゾリドン型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0142】
前記ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAP型エポキシ樹脂、ビスフェノールB型エポキシ樹脂、ビスフェノールBP型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0143】
前記水添ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールB型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールE型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールS型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0144】
前記ビフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、4,4’-ビフェノール型エポキシ樹脂、2,2’-ビフェノール型エポキシ樹脂、テトラメチル-4,4’-ビフェノール型エポキシ樹脂、テトラメチル-2,2’-ビフェノール型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0145】
前記水添ビフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、水添4,4’-ビフェノール型エポキシ樹脂、水添2,2’-ビフェノール型エポキシ樹脂、水添テトラメチル-4,4’-ビフェノール型エポキシ樹脂、水添テトラメチル-2,2’-ビフェノール型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0146】
<<エポキシ化合物(B)の含有量>>
前記アミドイミド樹脂(A)と前記エポキシ化合物(B)との混合割合は、前記アミドイミド樹脂(A)中の酸基及び酸無水物基の合計に対し、前記エポキシ化合物(B)のエポキシ基数が0.9~10モルの範囲で用いることが好ましく、0.9~2モルの範囲で用いることが特に好ましい。
【0147】
<アミドイミド樹脂組成物が含有してもよいその他の成分>
アミドイミド樹脂組成物は、アミドイミド樹脂(A)及びエポキシ化合物(B)以外の成分(以下、「その他の成分」ともいう。)を含有してもよい。その他の成分としては、溶媒、重合禁止剤、酸化防止剤等が挙げられる。溶媒、重合禁止剤、及び/又は酸化防止剤は、酸基及び/又は酸無水物基を有するアミドイミド樹脂(A)の製造時に用いたものを引き続き用いてもよく、新たに追加してもよい。
【0148】
<<溶媒>>
溶媒の例は、上記の「酸基及び/又は酸無水物基を有するアミドイミド樹脂(A)」の項目で説明したとおりである。溶媒の使用量は、溶解性及び均一性が良好となることから、不揮発分の合計質量に対し0.1~5倍量程度の範囲で用いることが好ましい。
【0149】
<重合禁止剤>
前記重合禁止剤としては、上記「酸基及び/又は酸無水物基を有するアミドイミド樹脂(A)」の項目で「重合禁止剤」として例示した化合物を用いることができる。
【0150】
<酸化防止剤>
前記酸化防止剤としては、前記重合禁止剤で例示した化合物と同様のものを用いることができ、前記酸化防止剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0151】
また、前記重合禁止剤、及び前記酸化防止剤の市販品としては、例えば、和光純薬工業株式会社製「Q-1300」、「Q-1301」、住友化学株式会社製「スミライザーBBM-S」、「スミライザーGA-80が」等が挙げられる。
【0152】
<その他の樹脂成分>
本発明のアミドイミド樹脂組成物は、アミドイミド樹脂(A)及びエポキシ樹脂のいずれにも該当しない樹脂成分(以下、「その他の樹脂成分」ともいう。)を含有してもよい。その他の樹脂成分は、例えば、特開2022-098702号公報に記載のものを用いることができる。
【0153】
<(メタ)アクリレートモノマー>
本発明の硬化性樹脂組成物は、ヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物(分子構造中に水酸基と(メタ)アクリロイル基とを有する化合物)以外の各種の(メタ)アクリレートモノマーを含有してもよい。これらの(メタ)アクリレートモノマーは、例えば、特開2022-098702号公報に記載のものを用いることができる。
【0154】
前記(メタ)アクリレートモノマーの含有量は、本発明のアミドイミド樹脂組成物の不揮発分中に90質量%以下が好ましい。
【0155】
(アミドイミド樹脂組成物の製造方法)
本発明のアミドイミド樹脂組成物は、以下の工程:
(i)ポリイソシアネート化合物(a1)とtrans体含有脂環式ポリカルボン酸化合物又はその酸無水物(a2)とを反応させて、酸基及び/又は酸無水物基を有するアミドイミド樹脂(A)を製造する工程;及び
(ii)工程(i)で得られたアミドイミド樹脂(A)と、分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物とを混合して、前記アミドイミド樹脂(A)と前記エポキシ化合物(B)とを含有するアミドイミド樹脂組成物を製造する工程
を含む、アミドイミド樹脂組成物の製造方法によって製造することができる。
【0156】
工程(i)の反応は、上記の「酸基及び/又は酸無水物基を有するアミドイミド樹脂(A)」の項目で説明した反応条件で行うことができる。
【0157】
工程(ii)の混合のための条件は特に限定されないが、混合の均一性を向上させる観点から、溶媒中で行うことが好ましい。溶媒については、工程(i)で得られたアミドイミド樹脂(A)を溶解している溶媒を引き続き用いてもよく、あるいは、溶媒を追加してもよい。混合操作や保存中の前記アミドイミド樹脂(A)及び前記エポキシ化合物(B)の変質や、前記アミドイミド樹脂(A)及び前記エポキシ化合物(B)との重合を抑制するため、工程(ii)の混合を、重合禁止剤や酸化防止剤の存在下で行ってもよい。工程(ii)の混合は、撹拌によって行ってもよいが、剪断力による樹脂成分の切断を抑制するため穏和な条件での撹拌によって行うことが好ましい。工程(ii)の混合の温度は、混合中の熱硬化を抑制する観点から、できるだけ低温であることが好ましく、例えば、例えば、0~100℃の範囲が好ましい。
【0158】
(硬化性樹脂組成物)
本発明の硬化性樹脂組成物は、上述したアミドイミド樹脂組成物及び任意で追加の成分を含有する。本発明の硬化性樹脂組成物は、硬化(特に、熱硬化)することによって硬化物を形成するために用いることができる。任意追加成分としては、例えば、硬化促進剤、重合禁止剤、酸化防止剤、溶媒、無機質充填材やポリマー微粒子、顔料、消泡剤、粘度調整剤、レベリング剤、難燃剤、保存安定化剤等が挙げられる。これらのうち、重合禁止剤、酸化防止剤、溶媒を用いる場合は、上記「アミドイミド樹脂組成物が含有してもよいその他の成分」の項目で説明したものを用いてもよい。
【0159】
<硬化促進剤>
硬化促進剤としては、硬化反応を促進するものであり、例えば、上記「酸基及び/又は酸無水物基を有するアミドイミド樹脂(A)」の項目で「塩基性触媒」として例示した化合物、ルイス酸等が挙げられる。これらの硬化促進剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。また、前記硬化促進剤の添加量は、硬化性樹脂組成物を硬化(特に、熱硬化)することによって得られる硬化物の伸度及び基材密着性を向上させる観点から、アミドイミド樹脂(A)とエポキシ化合物(B)の合計100質量部に対して、0.01~10質量部の範囲が好ましく、0.05~5の範囲がより好ましい。
【0160】
<無機質充填材>
前記無機質充填材としては、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化珪素、水酸化アルミ等が挙げられる。
【0161】
<顔料>
前記顔料としては、公知慣用の無機顔料や有機顔料を使用することができる。
【0162】
前記無機顔料としては、例えば、白色顔料、アンチモンレッド、ベンガラ、カドミウムレッド、カドミウムイエロー、コバルトブルー、紺青、群青、カーボンブラック、黒鉛等が挙げられる。これらの無機顔料は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0163】
前記白色顔料としては、例えば、酸化チタン,酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、硫酸バリウム、シリカ、タルク、マイカ、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、中空樹脂粒子、硫化亜鉛等が挙げられる。
【0164】
前記有機顔料としては、例えば、キナクリドン顔料、キナクリドンキノン顔料、ジオキサジン顔料、フタロシアニン顔料、アントラピリミジン顔料、アンサンスロン顔料、インダンスロン顔料、フラバンスロン顔料、ペリレン顔料、ジケトピロロピロール顔料、ペリノン顔料、キノフタロン顔料、アントラキノン顔料、チオインジゴ顔料、ベンツイミダゾロン顔料、アゾ顔料等が挙げられる。これらの有機顔料は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0165】
<難燃剤>
前記難燃剤としては、例えば、赤リン、リン酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム等のリン酸アンモニウム、リン酸アミド等の無機リン化合物;リン酸エステル化合物、ホスホン酸化合物、ホスフィン酸化合物、ホスフィンオキシド化合物、ホスホラン化合物、有機系含窒素リン化合物、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、10-(2,5-ジヒドロオキシフェニル)-10H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、10-(2,7-ジヒドロオキシナフチル)-10H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド等の環状有機リン化合物、及びそれをエポキシ樹脂やフェノール樹脂等の化合物と反応させた誘導体等の有機リン化合物;トリアジン化合物、シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物、フェノチアジン等の窒素系難燃剤;シリコーンオイル、シリコーンゴム、シリコーン樹脂等のシリコーン系難燃剤;金属水酸化物、金属酸化物、金属炭酸塩化合物、金属粉、ホウ素化合物、低融点ガラス等の無機難燃剤等が挙げられる。これらの難燃剤は、単独でも用いることも2種以上を併用することもできる。また、これら難燃剤を用いる場合は、全樹脂組成物中0.1~20質量%の範囲であることが好ましい。
【0166】
(硬化性樹脂組成物の製造方法)
本発明の硬化性樹脂組成物は、以下の工程:
(i)ポリイソシアネート化合物(a1)とtrans体含有脂環式ポリカルボン酸化合物又はその酸無水物(a2)とを反応させて、酸基及び/又は酸無水物基を有するアミドイミド樹脂(A)を製造する工程;及び
(ii)工程(i)で得られたアミドイミド樹脂(A)と、分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物とを混合して、前記アミドイミド樹脂(A)と前記エポキシ化合物(B)とを含有する硬化性樹脂組成物を製造する工程
を含む、硬化性樹脂組成物の製造方法によって製造することができる。
【0167】
また、本発明の硬化性樹脂組成物が触媒等の任意追加成分を含有する場合、任意追加成分は、前記アミドイミド樹脂(A)と前記エポキシ化合物(B)との混合時に一緒に混合されてもよく、前記アミドイミド樹脂(A)と前記エポキシ化合物(B)との混合物である硬化性樹脂組成物を予め製造した後で、硬化性樹脂組成物と混合してもよい。
【0168】
即ち、本発明の硬化性樹脂組成物が触媒等の任意追加成分を含有する場合、工程(ii)において、工程(i)で得られたアミドイミド樹脂(A)と、分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物と、更に触媒等の任意追加成分とを混合して、前記アミドイミド樹脂(A)と前記エポキシ化合物(B)と更に任意追加成分とを含有する硬化性樹脂組成物を製造してもよい。あるいは、硬化性樹脂組成物の製造方法が、以下の工程(iii):
(iii)工程(ii)で得られた硬化性樹脂組成物と、触媒等の任意追加成分とを混合して、前記アミドイミド樹脂(A)と前記エポキシ化合物(B)と更に任意追加成分とを含有する硬化性樹脂組成物を製造する工程を更に含んでもよい。
【0169】
硬化性樹脂組成物の製造方法における工程(i)及び(ii)を行うための条件は、それぞれ、アミドイミド樹脂組成物の製造方法における工程(i)及び(ii)について説明したものと同等の条件であってもよい。硬化性樹脂組成物の製造方法における工程(iii)を行うための条件は、同製造方法における工程(ii)を行うための条件と同等であってもよい。
【0170】
(硬化物)
本発明の硬化物は、上述した硬化性樹脂組成物を硬化(特に、熱硬化)することによって得られる硬化物である。熱硬化は、例えば、硬化性樹脂組成物の基材への塗布、硬化性樹脂組成物からの溶媒等の部分的又は全体的除去(例、揮発乾燥)、及び加熱による熱硬化によって行うことができる。塗布を行う厚みは、0.5~500μmの範囲が好ましい。揮発乾燥の温度は、例えば、60~100℃の範囲が好ましい。揮発乾燥の時間は、例えば、10~60minの範囲が好ましい。熱硬化の温度は、例えば、140~250℃の範囲が好ましい。熱硬化の時間は、例えば、0.5~10hの範囲が好ましい。
【0171】
(硬化性樹脂組成物及び硬化物の用途)
本発明の硬化性樹脂組成物は、優れた伸度及び基材密着性を有する硬化物を生じることから、種々の物品を形成する材料として汎用的に用いることができ、例えば、絶縁材料として好適に用いることができる。また、本発明の硬化性樹脂組成物は、例えば、半導体デバイス用途における、ソルダーレジスト、層間絶縁材料、パッケージ材、アンダーフィル材、回路素子等のパッケージ接着層や、集積回路素子と回路基板の接着層に用いる樹脂材料として好適に用いることができる。また、本発明の硬化物は、優れた伸度及び基材密着性を有することから、種々の物品として汎用的に用いることができ、例えば、半導体デバイス用途における、ソルダーレジスト、層間絶縁材料、パッケージ材、アンダーフィル材、回路素子等のパッケージ接着層や、集積回路素子と回路基板の接着層として好適に用いることができる。また、LCD、OELDに代表される薄型ディスプレイ用途における、薄膜トランジスタ保護膜、液晶カラーフィルタ保護膜、カラーフィルタ用顔料レジスト、ブラックマトリックス用レジスト、スペーサー等に好適に用いることができる。これらの中でも、特にソルダーレジスト用途に好適に用いることができる。
【0172】
本発明の硬化物は、硬化物からなる塗膜を有することを特徴とする物品に用いることができる。塗膜を施す基材としては、例えば、銅、アルミニウム等の金属張積層板、ガラス、各種樹脂等が挙げられる。
【実施例0173】
以下に、実施例および比較例をもって本発明をより詳しく説明する。表中の配合量の単位は、別段の記載のない限り、質量部である。
【0174】
本願実施例においてアミドイミド樹脂組成物の酸価はJIS K 0070(1992)の中和滴定法にて測定した。
【0175】
本願実施例においてアミドイミド樹脂組成物のcis/trans比、アミド基/イミド基のモル比率は下記条件のNMRにて測定した。
【0176】
測定装置:JNM-ECA500(日本電子株式会社)
磁場強度:11.7 T (500MHz)
プローブ:SuperCOOL開放型プローブ(5mmΦ)
測定溶媒:DMSO-d6(関東化学株式会社)
測定条件:
13C-NMR、DEPT135
試料濃度:H-NMR 3%(w/v)、
13C-NMR 30%(w/v)
13C-NMR測定用試料は緩和試薬として
クロム(III)アセチルアセトネート(東京化成株式会社)を添加し、nneモードで測定
積算回数:13C-NMR 4,000回
【0177】
(実施例1):アミドイミド樹脂(A-1)の合成
温度計、攪拌器、及び還流冷却器を備えたフラスコに、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート579.8質量部を入れ、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体(EVONIK社製「VESTANAT T-1890/100」、NCO%=17.2%)244.3質量部及びシクロヘキサン-1,3,4-トリカルボン酸-3,4-無水物(三菱ガス化学株式会社製、「H-TMAn」、cis/trans=42/58(mol%)、cis/trans比は13C NMRより算出)207.9質量部を溶解し、ジブチルヒドロキシトルエン0.4質量部を添加した。窒素雰囲気下で140℃、4時間反応させ、NCO%が0.1以下となっていることを確認し、アミドイミド樹脂(A-1)を得た。13C NMRより算出したアミドイミド樹脂(A-1)のアミド基/イミド基のモル比率は、1.52(mol/mol)であった。当該樹脂(A-1)の不揮発分は38質量%であり、固形分酸価は、188mgKOH/gであった。
【0178】
(実施例2):アミドイミド樹脂(A-2)の合成
温度計、攪拌器、及び還流冷却器を備えたフラスコに、γ-ブチロラクトン515質量部を入れ、ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート変性体(DIC株式会社製「バーノックDN901S」、イソシアネート基含有量23.5質量%)178.7質量部及びシクロヘキサン-1,3,4-トリカルボン酸-3,4-無水物(三菱ガス化学株式会社製、「H-TMAn」、cis/trans=42/58(mol%)、cis/trans比は13C NMRより算出)207.9質量部を溶解し、ジブチルヒドロキシトルエン0.3質量部を添加した。窒素雰囲気下で140℃、6時間反応させ、NCO%が0.1以下となっていることを確認し、アミドイミド樹脂(A-2)を得た。当該樹脂(A-2)の不揮発分は38質量%であり、固形分酸価は、215mgKOH/gであった。
【0179】
(実施例3):アミドイミド樹脂(A-3)の合成
温度計、攪拌器、及び還流冷却器を備えたフラスコに、γ-ブチロラクトン680質量部を入れ、水添キシリレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体(タケネート D-127N、三井化学株式会社製、NCO%=13.8、不揮発分75.5質量%)304質量部及びシクロヘキサン-1,3,4-トリカルボン酸-3,4-無水物(三菱ガス化学株式会社製、「H-TMAn」、cis/trans=42/58(mol%)、cis/trans比は13C NMRより算出)207.9質量部を溶解し、ジブチルヒドロキシトルエン0.4質量部を添加した。窒素雰囲気下で140℃、5時間反応させ、NCO%が0.1以下となっていることを確認し、アミドイミド樹脂(A-3)を得た。当該樹脂(A-3)の不揮発分は38質量%であり、固形分酸価は、179mgKOH/gであった。
【0180】
(比較例1):アミドイミド樹脂(C-1)の合成
温度計、攪拌器、及び還流冷却器を備えたフラスコに、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート579.8質量部を入れ、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体(EVONIK社製「VESTANAT T-1890/100」、NCO%=17.2%)244.3質量部及びシクロヘキサン-1,3,4-トリカルボン酸-3,4-無水物(三菱ガス化学株式会社製、「H-TMAn―S」、cis体のみ)207.9質量部を溶解し、ジブチルヒドロキシトルエン0.4質量部を添加した。窒素雰囲気下で140℃、4時間反応させ、NCO%が0.1以下となっていることを確認し、アミドイミド樹脂(C-1)を得た。13C NMRより算出したアミドイミド樹脂(C-1)のアミド基/イミド基のモル比率は、1.08(mol%)であった。当該樹脂(C-1)の不揮発分は38質量%であり、固形分酸価は、180mgKOH/gであった。
【0181】
(比較例2):アミドイミド樹脂(C-2)の合成
温度計、攪拌器、及び還流冷却器を備えたフラスコに、γ-ブチロラクトン515質量部を入れ、ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート変性体(DIC株式会社製「バーノックDN901S」、イソシアネート基含有量23.5質量%)178.7質量部及びシクロヘキサン-1,3,4-トリカルボン酸-3,4-無水物(三菱ガス化学株式会社製、「H-TMAn―S」、cis体のみ)207.9質量部を溶解し、ジブチルヒドロキシトルエン0.3質量部を添加した。窒素雰囲気下で140℃、6時間反応させ、NCO%が0.1以下となっていることを確認し、アミドイミド樹脂(C-2)を得た。当該樹脂(C-2)の不揮発分は38質量%であり、固形分酸価は、209mgKOH/gであった。
【0182】
(比較例3):アミドイミド樹脂(C-3)の合成
温度計、攪拌器、及び還流冷却器を備えたフラスコに、γ-ブチロラクトン680質量部を入れ、水添キシリレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体(タケネート D-127N、三井化学株式会社製、NCO%=13.8、不揮発分75.5質量%)304質量部及びシクロヘキサン-1,3,4-トリカルボン酸-3,4-無水物(三菱ガス化学株式会社製、「H-TMAn―S」、cis体のみ)207.9質量部を溶解し、ジブチルヒドロキシトルエン0.4質量部を添加した。窒素雰囲気下で140℃、5時間反応させ、NCO%が0.1以下となっていることを確認し、アミドイミド樹脂(C-3)を得た。当該樹脂(C-3)の不揮発分は38質量%であり、固形分酸価は、174mgKOH/gであった。
【0183】
(実施例4~6及び比較例4~6)
<硬化性樹脂組成物(1)~(3)及び(C1)~(C3)の調製>
表2に記載の配合量で各成分を混合して、硬化性樹脂組成物(1)~(3)及び(C1)~(C3)を得た。分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(硬化剤)としては、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(DIC株式会社製「EPICLON N-680」、エポキシ当量:214g/当量)を、塩基性触媒としては、トリフェニルホスフィンを用いた。
【0184】
なお、硬化性樹脂組成物を硬化させる際の硬化条件(熱硬化)は、特に断りが無い限り、以下の通りである。
50μmのアプリケーターで塗布
80℃、30minで仮乾燥
175℃、5h硬化
【0185】
また、各試験において、基材としては、銅箔を使用した。
【0186】
[密着性の評価方法]
密着性の評価は、ピール強度の測定により行った。具体的に、銅箔(古河産業株式会社製、電解銅箔「F2-WS」18μm)上に実施例及び比較例で得られた硬化性樹脂組成物を50μmのアプリケーターで塗布し、メタルハライドランプを用いて10kJ/mの紫外線を照射した後、160℃で1時間加熱した。銅箔から硬化物を剥離し、試験片1(硬化物)を得た。この試験片1を幅1cm、長さ12cmの大きさに切り出し、剥離試験機(株式会社A&D製「A&Dテンシロン」、剥離速度50mm/分)を用いて90°ピール強度(N/cm)を測定した。値が大きいほど、密着性に優れることを示す。
【0187】
[伸度の測定方法]
伸度の測定は、引張試験に基づいて行った。具体的に、上記と同様の試験片1(硬化物)を10mm×80mmの大きさに切り出し、株式会社島津製作所製精密万能試験機オートグラフ「AG-IS」を用いて、下記の測定条件で試験片1の引張試験を行った。試験片が破断するまでの伸度(%)を測定した。
測定条件:温度23℃、湿度50%、標線間距離20mm、支点間距離20mm、引張速度10mm/分
【0188】
【表2】
【0189】
表2中の「硬化剤(N-680)」は、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(DIC株式会社製「EPICLON N-680」)を示す。配合量の数値は、不揮発分の質量部を表す。
【0190】
表2に示した実施例4と比較例4、実施例5と比較例5、実施例6と比較例6のそれぞれの対比から、実施例の硬化性樹脂組成物の硬化物は、比較例に比して優れた伸度及び基材密着性を有していることが確認できた。