(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176121
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】ガラス板積層体及びガラス板梱包体
(51)【国際特許分類】
B65D 85/48 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
B65D85/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094386
(22)【出願日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】嶋村 剛直
(72)【発明者】
【氏名】清水 将伍
【テーマコード(参考)】
3E096
【Fターム(参考)】
3E096AA06
3E096BA20
3E096BA24
3E096BB05
3E096CA02
3E096CA19
3E096CA21
3E096CB02
3E096DA03
3E096DB08
3E096DC02
3E096EA01Y
3E096FA40
3E096GA11
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ガラス板表面におけるパーティクルを抑制できるガラス板積層体、及び上記ガラス板積層体を有するガラス板梱包体を提供する。
【解決手段】収納容器に収納されるガラス板積層体10であって、複数枚のガラス板2と、複数枚のガラス板用合紙1とが交互に積層された構造を有し、ガラス板積層体10の積層方向のうち、収納容器から離れる方向を第1方向D1とし、反対方向を第2方向D2とし、ガラス板用合紙1の第1方向側の主面を第1主面とし、ガラス板用合紙の第1主面の、隣接するガラス板の主面に接する領域または対応する領域を面内領域とし、ガラス板積層体10において、最も前記第1方向側に位置するガラス板用合紙1aの面内領域の色彩値を第1面内色とし、最も第2方向側に位置するガラス板用合紙1Nの面内領域の色彩値を第2面内色としたときに、第1面内色と第2面内色との色差が所定の値以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
収納容器に収納されるガラス板積層体であって、
前記ガラス板積層体は、複数枚のガラス板と、複数枚のガラス板用合紙とが交互に積層された構造を有し、
前記ガラス板用合紙はバージンパルプからなる合紙であり、
前記ガラス板積層体の積層方向のうち、前記収納容器から離れる方向を第1方向とし、前記第1方向の反対方向を第2方向とし、
前記ガラス板用合紙の前記第1方向側の主面を第1主面とし、
前記ガラス板用合紙の前記第1主面の、隣接するガラス板の主面に接する領域または対応する領域を面内領域とし、
前記ガラス板積層体において、最も前記第1方向側に位置する前記ガラス板用合紙の前記面内領域のL*a*b*表色系における色彩値を第1面内色とし、最も前記第2方向側に位置する前記ガラス板用合紙の前記面内領域のL*a*b*表色系における色彩値を第2面内色としたときに、
前記第1面内色と前記第2面内色との色差ΔE*
abが0.58以下である、ガラス板積層体。
【請求項2】
前記ガラス板用合紙の前記第1主面の、前記面内領域以外の領域を出代領域とし、
最も前記第1方向側に位置する前記ガラス板用合紙の前記出代領域のL*a*b*表色系における色彩値を第1出代色としたときに、
前記第1出代色と前記第2面内色との色差ΔE*
abが0.58以下である、請求項1に記載のガラス板積層体。
【請求項3】
前記ガラス板用合紙は、L*が90%以上であり、灰分量が0.001%以上0.5%以下である、請求項1に記載のガラス板積層体。
【請求項4】
前記ガラス板用合紙は、L*が90%以上であり、灰分量が0.001%以上0.5%以下である、請求項2に記載のガラス板積層体。
【請求項5】
収納容器に収納されるガラス板積層体であって、
前記ガラス板積層体は、複数枚のガラス板と、複数枚のガラス板用合紙とが交互に積層された構造を有し、
前記ガラス板用合紙は古紙パルプからなる合紙であり、
前記ガラス板積層体の積層方向のうち、前記収納容器から離れる方向を第1方向とし、前記第1方向の反対方向を第2方向とし、
前記ガラス板用合紙の前記第1方向側の主面を第1主面とし、
前記ガラス板用合紙の前記第1主面の、隣接するガラス板の主面に接する領域または対応する領域を面内領域とし、
前記ガラス板積層体において、最も前記第1方向側に位置する前記ガラス板用合紙の前記面内領域のL*a*b*表色系における色彩値を第1面内色とし、最も前記第2方向側に位置する前記ガラス板用合紙の前記面内領域のL*a*b*表色系における色彩値を第2面内色としたときに、
前記第1面内色と前記第2面内色との色差ΔE*
abが5.0以下である、ガラス板積層体。
【請求項6】
前記ガラス板用合紙の前記第1主面の、前記面内領域以外の領域を出代領域とし、
最も前記第1方向側に位置する前記ガラス板用合紙の前記出代領域のL*a*b*表色系における色彩値を第1出代色としたときに、
前記第1出代色と前記第2面内色との色差ΔE*
abが5.0以下である、請求項4に記載のガラス板積層体。
【請求項7】
前記ガラス板用合紙は、L*が70%以上90%未満であり、灰分量が0.5%超10%以下である、請求項5に記載のガラス板積層体。
【請求項8】
前記ガラス板用合紙は、L*が70%以上90%未満であり、灰分量が0.5%超10%以下である、請求項6に記載のガラス板積層体。
【請求項9】
前記ガラス板積層体の前記第1方向側の最表面と前記第2方向側の最表面には、それぞれガラス板用合紙が積層される、請求項1~8のいずれか1項に記載のガラス板積層体。
【請求項10】
前記ガラス板積層体の前記第1方向側の最表面にはガラス板が積層され、前記ガラス板積層体の前記第2方向側の最表面にはガラス板用合紙が積層される、請求項1~8のいずれか1項に記載のガラス板積層体。
【請求項11】
請求項1~8のいずれか1項に記載のガラス板積層体と、前記ガラス板積層体を収納する収納容器とを有し、
前記ガラス板積層体の前記第2方向側の面が前記収納容器に面して載置されている、ガラス板梱包体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス板積層体及びガラス板梱包体に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイに使用される無アルカリガラス板のように、その表面に電気回路等を組み込むガラス板は、その表面にわずかな傷や汚染があっても断線やパターニング不良が発生する場合がある。よって、このようなガラス板には、きわめて高い表面特性が要求される。そこで、ガラス板の保管中や搬送中の傷や汚染を防止する方法として、積層されるガラス板同士の間にガラス板用合紙(以下、単に「合紙」ともいう。)を挟み込み、隣接するガラス板表面を分離する方法が従来から採られている。
【0003】
ガラス板間に合紙を介在させた形態をガラス板積層体という。ガラス板積層体は、例えばガラス板積層体の側面からはみ出す合紙を側面から押圧する合紙押さえ部材(横押さえ部材)を備えるパレット等の収納容器に収納される。ガラス板積層体を収納容器に収納した形態をガラス板梱包体という。
【0004】
ガラス板間に合紙を介在させる方法では、合紙とガラス板の表面とが、直接接触する。そのため、合紙から発生した紙粉や、合紙原料中に含まれる樹脂分や粘着成分、抄紙工程中で添加する填料、pH調整剤などの添加剤や工程中で混入する部材片といった各種の異物などが合紙の表面に存在し、接触したガラス板の表面に転写され、パーティクルとして検出される場合がある。ガラス板にパーティクルが多い場合、ガラス板の表面に形成された微細な配線が断線する等の不良の原因となる。
【0005】
例えば特許文献1には、複数枚のガラス板が合紙を介して積層されたガラス板積層体が梱包されたガラス板梱包体において、前記合紙の、合紙質量に対する高級飽和脂肪酸の含有率が0.08質量%以下であることで、合紙からガラス板への転写汚れを抑制できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載のような合紙を用いた場合にもガラス板表面のパーティクルが検出されることがあり、パーティクルの抑制という観点で不十分な場合があった。
【0008】
本発明は上記に鑑み、ガラス板表面におけるパーティクルを抑制できるガラス板積層体、及び上記ガラス板積層体を有するガラス板梱包体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、光により紙ヤケしたガラス板用合紙を用いた際に、ガラス板表面におけるパーティクルが生じやすいことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は以下のガラス板積層体及びガラス板梱包体を提供する。
<1> 収納容器に収納されるガラス板積層体であって、
前記ガラス板積層体は、複数枚のガラス板と、複数枚のガラス板用合紙とが交互に積層された構造を有し、
前記ガラス板用合紙はバージンパルプからなる合紙であり、
前記ガラス板積層体の積層方向のうち、前記収納容器から離れる方向を第1方向とし、前記第1方向の反対方向を第2方向とし、
前記ガラス板用合紙の前記第1方向側の主面を第1主面とし、
前記ガラス板用合紙の前記第1主面の、隣接するガラス板の主面に接する領域または対応する領域を面内領域とし、
前記ガラス板積層体において、最も前記第1方向側に位置する前記ガラス板用合紙の前記面内領域のL*a*b*表色系における色彩値を第1面内色とし、最も前記第2方向側に位置する前記ガラス板用合紙の前記面内領域のL*a*b*表色系における色彩値を第2面内色としたときに、
前記第1面内色と前記第2面内色との色差ΔE*
abが0.58以下である、ガラス板積層体。
<2> 収納容器に収納されるガラス板積層体であって、
前記ガラス板積層体は、複数枚のガラス板と、複数枚のガラス板用合紙とが交互に積層された構造を有し、
前記ガラス板用合紙は古紙パルプからなる合紙であり、
前記ガラス板積層体の積層方向のうち、前記収納容器から離れる方向を第1方向とし、前記第1方向の反対方向を第2方向とし、
前記ガラス板用合紙の前記第1方向側の主面を第1主面とし、
前記ガラス板用合紙の前記第1主面の、隣接するガラス板の主面に接する領域または対応する領域を面内領域とし、
前記ガラス板積層体において、最も前記第1方向側に位置する前記ガラス板用合紙の前記面内領域のL*a*b*表色系における色彩値を第1面内色とし、最も前記第2方向側に位置する前記ガラス板用合紙の前記面内領域のL*a*b*表色系における色彩値を第2面内色としたときに、
前記第1面内色と前記第2面内色との色差ΔE*
abが5.0以下である、ガラス板積層体。
<3> 上記<1>又は<2>に記載のガラス板積層体と、前記ガラス板積層体を収納する収納容器とを有し、
前記ガラス板積層体の前記第2方向側の面が前記収納容器に面して載置されている、ガラス板梱包体。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ガラス板用合紙の紙ヤケが抑制されていることで、ガラス板表面におけるパーティクルを抑制できるガラス板積層体、及び上記ガラス板積層体を有するガラス板梱包体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本実施形態に係るガラス板積層体の一態様を示す側面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示されるガラス板積層体の一部を構成するガラス板用合紙とこれに隣接するガラス板との積層状態を表す分解斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1に示されるガラス板積層体の一部を構成するガラス板用合紙とこれに隣接するガラス板との積層状態を表す分解斜視図である。
【
図4】
図4は、本実施形態に係るガラス板積層体の別の一態様を示す側面図である。
【
図5】
図5は、
図2に示されるガラス板積層体の一部を構成するガラス板用合紙とこれに隣接するガラス板との積層状態を表す分解斜視図である。
【
図6】
図6は、ガラス板梱包体の一例の概略構成を示す側面図である。
【
図7】
図7は、ガラス板梱包体の別の一例の概略構成を示す側面図である。
【
図8】
図8は、ガラス板用合紙Aを用いた積載試験後のパーティクル個数の測定結果を示す図である。
【
図9】
図9は、ガラス板用合紙Bを用いた積載試験後のパーティクル個数の測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施できる。また、数値範囲を示す「~」とは、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
また、以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明することがあり、重複する説明は省略または簡略化することがある。また、図面に記載の実施形態は、本発明を明瞭に説明するために模式化されており、実際のサイズや縮尺を必ずしも正確に表したものではない。
【0014】
(ガラス板積層体)
本実施形態に係るガラス板積層体は、収納容器に収納されるガラス板積層体であって、前記ガラス板積層体は、複数枚のガラス板と、複数枚のガラス板用合紙とが交互に積層された構造を有し、前記ガラス板積層体の積層方向のうち、前記収納容器から離れる方向を第1方向とし、前記第1方向の反対方向を第2方向とし、前記ガラス板用合紙の前記第1方向側の主面を第1主面とし、前記ガラス板用合紙の前記第1主面の、隣接するガラス板の主面に接する領域または対応する領域を面内領域とし、前記ガラス板積層体において、最も前記第1方向側に位置する前記ガラス板用合紙の前記面内領域のL*a*b*表色系における色彩値を第1面内色とし、最も前記第2方向側に位置する前記ガラス板用合紙の前記面内領域のL*a*b*表色系における色彩値を第2面内色としたときに、前記第1面内色と前記第2面内色との色差ΔE*
abが所定の値以下である。
【0015】
まず、
図1~
図3を参照して、本実施形態の一態様(態様1)に係るガラス板積層体について説明する。
図1は、態様1に係るガラス板積層体を示す側面図である。
図1に示されるように、本態様におけるガラス板積層体10は、収納容器の背板22の表面(載置面)上に載置されて、収納容器に収容される。本態様におけるガラス板積層体10は、N枚のガラス板2と、N枚のガラス板用合紙1とが、交互に積層された構造を有する。ここで、Nは2以上の整数である。
【0016】
また、収納容器の背板22の表面(載置面)に垂直な方向をガラス板積層体10の積層方向とし、収納容器から離れる方向を第1方向D1、第1方向D1とは反対方向を第2方向D2としたときに、最も第1方向D1側のガラス板用合紙1をガラス板用合紙1aとし、最も第1方向D1側から数えて2番目のガラス板用合紙をガラス板用合紙1bとし、最も第2方向D2側のガラス板用合紙1をガラス板用合紙1Nとする。なお、ガラス板用合紙1Nは、ガラス板用合紙1aから数えてN枚目のガラス板用合紙1であり、合計N枚のガラス板用合紙1がガラス板積層体10に包含されている。Nが2の場合には、ガラス板用合紙1bがガラス板用合紙1Nに相当する。
また、最も第1方向D1側のガラス板2をガラス板2aとし、最も第1方向D1側から数えて2番目のガラス板をガラス板2bとし、最も第2方向D2側のガラス板2をガラス板2Nとする。なお、ガラス板2Nは、ガラス板2aから数えてN枚目のガラス板2であり、合計N枚のガラス板2がガラス板積層体10に包含されている。Nが2の場合には、ガラス板2bがガラス板2Nに相当する。
本態様においては、ガラス板積層体10の第1方向D1側の最表面にはガラス板2aが積層され、ガラス板積層体10の第2方向D2側の最表面にはガラス板用合紙1Nが積層されており、ガラス板用合紙1Nが収納容器の背板22の載置面上に載置されている。
【0017】
そして、各ガラス板用合紙1について、第1方向側D1の主面を第1主面とし、第2方向D2側の主面、すなわち第1主面と対向する主面を第2主面とする。最も第1方向D1側に位置するガラス板用合紙1aは、第1方向D1側の第1主面1a1と、第2方向D2側の第2主面1a2とを有する。同様に、最も第2方向D2側に位置するガラス板用合紙1Nは、第1方向D1側の第1主面1N1と、第2方向D2側の第2主面1N2とを有する。
【0018】
つづいて、本態様(態様1)のガラス板積層体における、ガラス板用合紙の第1主面における面内領域と出代領域について説明する。本態様においては、ガラス板用合紙1の第1主面のうち、隣接するガラス板2の主面に接する領域を面内領域とする。
図2は、態様1に係るガラス板積層体10のうち、最も第1方向D1側に位置するガラス板用合紙1aと、ガラス板用合紙1aの第1主面1a1側に隣接するガラス板2aとの積層状態を表す分解斜視図である。
図2に示すように、ガラス板用合紙1aの第1主面1a1における面内領域1a1Aは、第1主面1a1のうち、ガラス板用合紙1aと、これに隣接するガラス板2aとが重複(接触)している領域として定義できる。また、本態様において、ガラス板用合紙1aの第1主面1a1のうち、面内領域1a1A以外の領域を出代領域1a1Bとする。
図2において、出代領域1a1Bは、ガラス板2aがガラス板用合紙1aに重複(接触)していない、ガラス板用合紙1aの第1主面1a1上の領域ともいえる。
【0019】
同様に、最も第2方向側に位置するガラス板用合紙1Nの第1主面1N1における面内領域1N1Aと出代領域1N1Bについて説明する。
図3は、態様1に係るガラス板積層体10のうち、最も第2方向D1側に位置するガラス板用合紙1Nと、ガラス板用合紙1Nの第1主面1N1側に隣接するガラス板2Nとの積層状態を表す分解斜視図である。
図3に示すように、ガラス板用合紙1Nの第1主面1N1における面内領域1N1Aは、第1主面1N1のうち、ガラス板用合紙1Nと、これに隣接するガラス板2Nとが重複(接触)している領域として定義できる。また、本態様において、ガラス板用合紙1Nの第1主面1N1のうち、面内領域1N1A以外の領域を出代領域1N1Bとする。
図3において、出代領域1N1Bは、ガラス板2Nがガラス板用合紙1Nに重複(接触)していない、ガラス板用合紙1Nの第1主面1N1上の領域ともいえる。
【0020】
また、
図4~5を参照して、本実施形態の一態様(態様2)に係るガラス板積層体について説明する。
図4は、態様2に係るガラス板積層体を示す側面図である。
図4に示されるように、本態様におけるガラス板積層体10は、収納容器の背板22の上に載置されて、収納容器に収容される。本態様におけるガラス板積層体10は、N枚のガラス板2と、N+1枚のガラス板用合紙1とが、交互に積層された構造を有する。ここで、Nは2以上の整数である。
また、収納容器の背板22の表面(載置面)に垂直な方向を積層方向とし、収納容器から離れる方向を第1方向D1、第1方向D1とは反対方向を第2方向D2としたときに、最も第1方向D1側のガラス板用合紙1をガラス板用合紙1aaとする。また、最も第1方向D1側から数えて2番目のガラス板用合紙をガラス板用合紙1aとし、最も第1方向D1側から数えて3番目のガラス板用合紙をガラス板用合紙1bとし、最も第2方向D2側のガラス板用合紙1をガラス板用合紙1Nとする。なお、ガラス板用合紙1Nは、ガラス板用合紙1aから数えてN枚目のガラス板用合紙であり、ガラス板用合紙1aaと合わせて合計N+1枚のガラス板用合紙1がガラス板積層体10に包含されている。Nが2の場合には、ガラス板用合紙1bがガラス板用合紙1Nに相当する。
また、最も第1方向D1側のガラス板2をガラス板2aとし、最も第1方向D1側から数えて2番目のガラス板をガラス板2bとし、最も第2方向D2側のガラス板2をガラス板2Nとする。なお、ガラス板2Nは、ガラス板2aから数えてN枚目のガラス板2であり、合計N枚のガラス板2がガラス板積層体10に包含されている。Nが2の場合には、ガラス板2bがガラス板2Nに相当する。
本態様においては、ガラス板積層体10の第1方向D1側の最表面にはガラス板用合紙1aaが積層され、ガラス板積層体10の第2方向D2側の最表面にはガラス板用合紙1Nが積層されており、ガラス板用合紙1Nが収納容器の背板22の載置面上に載置されている。
【0021】
そして、各ガラス板用合紙1について、第1方向側D1の主面を第1主面とし、第2方向D2側の主面、すなわち第1主面と対向する主面を第2主面とする。最も第1方向D1側に位置するガラス板用合紙1aaは、第1方向D1側の第1主面1aa1と、第2方向D2側の第2主面1aa2とを有する。同様に、最も第2方向D2側に位置するガラス板用合紙1Nは、第1方向D1側の第1主面1N1と、第2方向D2側の第2主面1N2とを有する。
【0022】
つづいて、本態様(態様2)のガラス板積層体における、ガラス板用合紙の第1主面における面内領域と出代領域について説明する。本態様においては、最も第1方向D1側に位置するガラス板用合紙1aaについて、その第1主面のうち、隣接するガラス板2aの主面に対応する領域を面内領域とする。これについて、
図5を参照して詳細に説明する。
【0023】
図5は、本態様のガラス板積層体10のうち、最も第1方向D1側に位置するガラス板用合紙1aaと、ガラス板用合紙1aaに隣接するガラス板2aとの積層状態を表す分解斜視図である。
ガラス板用合紙1aaとガラス板2aとは、ガラス板用合紙1aaの第2主面1aa2がガラス板2aに接するように積層されている。ここで、ガラス板用合紙1aaの第2主面1aa2のうち、ガラス板2aの主面に接する領域を、接触領域1aa2Aとし、ガラス板2aの主面に接しない領域を非接触領域1aa2Bとする。そして、ガラス板用合紙1aaを積層方向から平面視したときに、第1主面1aa1のうち、対向する第2主面1aa2における接触領域1aa2Aに重複する領域を、ガラス板2aの主面に対応する領域である面内領域1aa1Aと定義する。また、第1主面1aa1のうち、面内領域1aa1A以外の領域を出代領域1aa1Bとする。なお、出代領域1aa1Bは、ガラス板用合紙1aaを積層方向から平面視したときに、第2主面1aa2における非接触領域1aa2Bに重複する領域ともいえる。
【0024】
また、本態様において、最も第2方向側に位置するガラス板用合紙1Nについては、上述した態様1と同様に、ガラス板用合紙1Nの第1主面1N1のうち、隣接するガラス板2Nの主面に接する領域を面内領域とする。また、ガラス板用合紙1Nの第1主面1N1のうち、面内領域1N1A以外の領域を出代領域1N1Bとする。
【0025】
なお、上記した態様1及び態様2においては、収納容器の背板の表面(載置面)には、ガラス板用合紙が載置されるようにガラス板積層体が収納されているが、本実施形態はこれに限定されず、収納容器の背板の表面(載置面)にガラス板が載置されるようにガラス板積層体が収納されていてもよい。
【0026】
本発明者らは、光により紙ヤケしたガラス板用合紙を用いた際に、ガラス板表面においてパーティクルが生じやすいことを見出し、本発明を完成するに至った。その理由としては、ガラス板用合紙が光により紙ヤケすると、合紙から紙粉の発生量が増加したり、異物の脱落量が増加したりするためと考えられる。なお本明細書においてパーティクルとは凸状の付着物のことであり、ガラス板表面に紙粉や異物が存在した場合に、異物検査機による測定により検出されるものである。パーティクルは、例えば、ガラス板用合紙から発生する紙粉や異物がガラス板に転写されることで生じる。
【0027】
「紙ヤケ」とは、光による紙の変質のことをいい、典型的には紙の変色を伴う。具体的には、紙中に含まれる樹脂成分(主としてリグニン)が日光(紫外線)により化学変化することで黄~褐色になることが知られている。そこで、本明細書においてはガラス板用合紙の色彩値によって紙ヤケの程度を評価する。なお一般に、紙に対しては白さを表すISO白色度による評価が行われる場合が多いが、紙ヤケの場合には黄変が生じるため、その変化の度合いを正確に表すには色彩値による評価がより適切であると考えられる。ところで、「紙ヤケ」という表現は、ガラス板用合紙によるガラスのヤケ(紙からの異物の付着や紙表面の成分や水分などがガラス中の成分と反応することによって生成物等による曇りが発生すること)を指す言葉として使用されている場合もあるが、ここでは紙ヤケは紙そのものの変質を指す。
【0028】
ガラス板積層体の最も第2方向側(便宜上、「最下部」ともいう)に位置するガラス板用合紙の面内領域は、通常光に曝露されることがないため、紙ヤケしていない状態が維持されると考えられる。具体的に本発明者らは、屋内の窓ガラス付近で受けるよりも大きい10000Luxの光を、ガラス板を100枚含むガラス板積層体に照射したときに、最下部のガラス板用合紙付近の照度が0.01~0.05%程度となり、ほとんど遮光されることを確認している。これは、収納容器の一形態としての、いわゆる縦積型のパレットにガラス板積層体を積載した場合も、最下部(最背面側)の面内領域の中心付近において同様であるといえる。
なお、ガラス板積層体の最も第2方向側(最下部)に位置するガラス板用合紙の出代領域は、光に暴露されて、紙ヤケを生じることがある。
【0029】
これに対し、ガラス板積層体の最も第1方向側(便宜上、「最上部」ともいう)に位置するガラス板用合紙は光に暴露されやすく、紙ヤケが生じやすい。したがって、ガラス板積層体の上下端の合紙(最も第1方向側の合紙と最も第2方向側の合紙)の色差が大きい場合、最上部側(最も第1方向側)の合紙の紙ヤケの程度が大きいと言える。これに対し、上述の第1面内色と第2面内色との色差ΔE*
abが所定の値以下であれば、最上部側(最も第1方向側)の合紙の紙ヤケが抑制されているため、ガラス板積層体全体としてガラス板表面におけるパーティクルが抑制されたものとなる。
【0030】
本明細書において、ガラス板積層体の上下端の合紙の色差は第1面内色と第2面内色との色差から求める。すなわち、ガラス板積層体の積層方向のうち収納容器から離れる方向を第1方向とし、第1方向の反対方向を第2方向としたときに、ガラス板積層体において最も第1方向側に位置するガラス板用合紙の面内領域のL*a*b*表色系における色彩値を第1面内色とする。また、最も第2方向側に位置するガラス板用合紙の面内領域のL*a*b*表色系における色彩値を第2面内色とする。
ガラス板用合紙の色彩値は、後述の実施例に記載の方法で測定でき、面内領域の色彩値は面内領域の外形の各辺の短辺から20%以上内側にある領域で測定する。
【0031】
ここで、ガラス板用合紙の灰分量が0.001%~0.5%である場合、第1面内色と第2面内色との色差ΔE*
abは0.58以下であり、0.57以下が好ましく、0.56以下がより好ましい。
また、ガラス板用合紙の灰分量が0.5%超10%以下である場合、第1面内色と第2面内色との色差ΔE*
abは5.0以下であり、4.5以下が好ましく、4.0以下がより好ましい。
【0032】
古紙パルプは古紙回収時に砂や金属のような硬質な異物が混入したり、清浄度や白色度を高めるために、より多くの填料や添加剤、洗浄剤等を使用するため、バージン紙と比べて灰分量が多くなる傾向にある。灰分量が0.001%以上0.5%以下であるガラス板用合紙はバージンパルプからなる合紙に相当し、灰分量が0.5より大きく10%以下であるガラス板用合紙は古紙パルプからなる合紙に相当する。灰分量を0.001%未満とするには過剰なパルプの精選を行う必要があり、著しく生産性が悪い。また灰分量が10%を超える場合、不純物の量が多いため、ガラス板に傷やパーティクルが発生しやすくなることから、ガラス板用合紙としては不適である。バージンパルプからなる合紙はより清浄度が高い場合が多く、ガラス板表面におけるパーティクルを低減する観点では好ましい。一方で、生産性や要求品質の観点等から、古紙パルプからなる合紙が好ましく用いられる場合もある。本実施形態においては、ガラス板用合紙の灰分量に応じて色差ΔE*
abを上記の値以下とすることで、いずれの場合も紙ヤケに起因するパーティクルの付着を相対的に抑制できる。
【0033】
本発明者らは、紙ヤケがパーティクルを増加させる原因となっていることを見出したものの、紙ヤケの程度が比較的軽度である場合、むしろパーティクルを抑制できる場合があることも併せて見出した。すなわち、第1面内色と第2面内色との色差ΔE*
abは0であってもよいが、0より大きい場合にパーティクルをより抑制できる場合がある。この理由としては、ガラス板用合紙が適度に光を受けることで、紙粉や異物の脱落性が低減するためと考えられる。発明者らの検討により、ガラス板用合紙が結露するほど保水すると、パーティクルが非常に多くなる一方で、保水分が8%~12%程度と適度に高い場合、パーティクルが減ることがわかった。保水が過剰な場合、繊維同士や異物と繊維との結合の間に水分が浸透し、水中へ遊離したり、親水基を持った樹脂分が水に溶けることで、結果的にパーティクルが多くなると考えられる。一般的に紙の保水分は紙中の添加剤や環境の湿度の影響を受けるが、特に保水性を増す添加剤が入っていない合紙の場合、25℃、50RH%において保水分は5%~7%程度である。保水が適度に高くなると、繊維を構成するセルロース同士やセルロースと異物との間に僅かな水分子が入り込み、水素結合をより強固に形成するため、紙粉や異物の脱落性が低下するものと考えられる。ガラス板用合紙がダメージを受けない程度の適度な光を受け、ガラス板用合紙が加温・加湿されることで、紙の保湿が促進され、繊維間ないし繊維と異物間の結合が一旦強固になった場合、日間変動での紙の吸放湿サイクルはあれども、ある範囲では結合が乖離せず、したがって紙粉や異物等の脱落が低減するものと考えられる。さらに光の照射が進むと、繊維がダメージを受け、繊維間の結合が切れ、脱落が優位となるものと考えられる。ガラス板用合紙の灰分量が0.001%~0.5%である場合、第1面内色と第2面内色との色差ΔE*
abは0以上であり、0.2以上が好ましく、0.3以上がより好ましい。また、ガラス板用合紙の灰分量が0.5%超~10%である場合、第1面内色と第2面内色との色差ΔE*
abは0以上であり、0.5以上が好ましく、1.0以上がより好ましい。
【0034】
紙ヤケが進んでいる場合の合紙の色彩値として、L*値がより小さくなる傾向がある。よって、第1面内色と第2面内色とを比較すると、一般的には、第1面内色のL*値が第2面内色のL*値より小さくなる。
この場合、最も第1方向側に位置するガラス板用合紙の出代領域のL*a*b*表色系における色彩値を第1出代色として、第1出代色と第2面内色との色差ΔE*
abが所定値以下であることが好ましい。
【0035】
ガラス板用合紙の出代領域は、ガラス板積層体においてガラス板用合紙が露出している部分でもあり、より紙ヤケが生じやすい部分である。出代領域は直接ガラス板の主面に接していないものの、出代領域に紙ヤケが生じているとガラス板の端面にパーティクルが付着し、結果的にガラス板の品質を低下させるおそれがある。これに対し、第1出代色と第2面内色との色差ΔE*
abが所定値以下であることで、出代領域の紙ヤケが抑制されていると言え、ガラス板の端面へのパーティクル付着も抑制できる。なお、ガラス板用合紙の出代色は出代領域のガラス板と接触する端部および合紙の切断辺それぞれの10%以上内側で測定する。
【0036】
ガラス板用合紙の灰分量が0.001%~0.5%である場合、第1出代色と第2面内色との色差ΔE*
abは0.58以下が好ましく、0.57以下がより好ましく、0.56以下がさらに好ましい。
また、ガラス板用合紙の灰分量が0.5%超以上10%以下である場合、第1出代色と第2面内色との色差ΔE*
abは5.0以下が好ましく、4.5以下がより好ましく、4.0以下がさらに好ましい。
【0037】
第1面内色と第2面内色との色差の下限値と同様の観点から、ガラス板用合紙の灰分量が0.001%~0.5%である場合、第1出代色と第2面内色との色差ΔE*
abは0以上であり、0.2以上が好ましく、0.3以上がより好ましい。また、ガラス板用合紙の灰分量が0.5%超以上10%以下である場合、第1出代色と第2面内色との色差ΔE*
abは0以上であり、0.5以上が好ましく、1.0以上がより好ましい。
【0038】
ガラス板用合紙の絶対的な色彩値は、用いるガラス板用合紙の種類にもよるため特に限定されない。一例として、バージンパルプからなり、意図的な着色を行っていないガラス板用合紙の場合、L*a*b*表色系における色彩値はL*:90以上、a*:-0.4以上、b*:6.0以下が好ましく、L*:95以上99.5以下、a*:-1.0超-0.4以下、b*:1.0以上6.0未満がより好ましい。
また、再生パルプからなり、意図的な着色を行っていないガラス板用合紙の場合、L*a*b*表色系における色彩値はL*:70以上90未満、a*:-0.3以上1.0以下、b*:9.0以下が好ましく、L*:75以上85以下、a*:-0.3以上0.5以下、b*:2.0以上9.0以下がより好ましい。
なお、意図的な着色を行っていないとは、例えばガラス板用合紙に塗料、顔料、染料等の着色剤が含まれていないか、コンタミとして含まれていたとしても0.5質量%以下であることをいう。
【0039】
図1に示すガラス板積層体10は、N枚(Nは2以上の整数)のガラス板用合紙1とガラス板2が交互に積層された構成である。ガラス板用合紙1とガラス板2の積層枚数はこれに限定されず、ガラス板2の強度やサイズ、梱包容器のサイズ等の種々の条件に応じて適宜変更すればよい。ガラス板の積層枚数(N)は、2枚以上であればよく、上限は例えば800枚以下である。積層枚数は150~600枚がより好ましい。通常、ガラス板積層体10の総質量が2000kg以下となるように積層される。
【0040】
ガラス板2およびガラス板用合紙1の積層枚数は、通常、ガラス板2とガラス板用合紙1の枚数が同数となるか、ガラス板用合紙1の枚数がガラス板2の枚数よりも1枚多いかのいずれかである。
【0041】
(ガラス板積層体の製造方法)
本実施形態に係るガラス板積層体は、公知の方法でガラス板とガラス板用合紙とを積層することで製造できる。このとき、例えば、積載体形成直後に積載体を光透過性の低い材質または厚みのあるフィルムやシートで被覆すること、ガラス板用合紙に光吸収性の材料を添加すること等によって、ガラス板積層体の上面側の紙ヤケを抑制でき、本実施形態に係るガラス板積層体が得られる。
【0042】
(ガラス板)
ガラス板積層体を構成するガラス板の種類は特に限定されず、公知のものが用いられる。例えばガラス板は、液晶製品や半導体製品の製造に関連して使用されるガラス板等の表面が高度に清浄に保たれることが求められるガラス板、例えば、液晶ディスプレイ用ガラス基板、有機EL用ガラス基板等のフラットパネルディスプレイ、カバーガラス用途のガラス板、半導体パッケージ用途のガラス板、および太陽電池等の電子デバイス等に適用されるガラス板であることが好ましい。
【0043】
ガラス板の材質も特に限定されず用途に応じて適宜選択すればよいが、例えば、ソーダライムガラス、アルミノ珪酸塩ガラス、ホウ珪酸ガラス、無アルカリアルミノ珪酸塩ガラス、石英ガラス等が挙げられる。また、紫外線や赤外線を吸収するガラスや強化ガラスからなるガラス板を用いることも可能である。
【0044】
ガラス板の形状、大きさ、厚さ等は特に限定されず、2枚以上積層して保管、運搬できる形状、大きさ、厚さ等であればよい。
ガラス板の形状としては、例えば
図1に示されるガラス板のように平板状であってもよく、また、全面または一部が曲率を有する曲面状であってもよい。
ガラス板の厚さは、用途により適宜調整すればよいが、例えば0.01~10mmである。
ガラス板の大きさは、例えば、近年開発された第8世代(2200mm×2500mm)程度の大きさを有するものであってよい。この場合、ガラス板の厚さは、0.2~0.8mmであることが強度確保の点で好ましく、さらに好ましくは0.3~0.7mm程度である。
また、ガラス板は、複数枚のガラス板が中間膜を挟んで接着された合わせガラスであってもよい。
【0045】
ガラス板の製造方法も特に限定されないが、例えばプレス法、ダウンドロー法、フロート法などの方法により所定の板厚に成形し、徐冷後、研削、研磨などの加工を行い、所定のサイズ、形状のガラス板とすればよい。
【0046】
また、ガラス板は、表面に機能性薄膜を有するものであってもよい。機能性薄膜とは、具体的には、導電膜(スズドープ酸化インジウム(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO2)、Ag、Cr/Cu/Cr構造を有する膜等)や熱線遮蔽膜(酸化物(例えば、酸化亜鉛、酸化チタン、ITO等)/Ag/酸化物の構造を有する層等)等である。ここで、酸化亜鉛には、Al、Gaまたは水素等がドープされていてもよい。また、酸化スズにはFまたはSbがドープされていてもよい。さらに、AgにはPdまたはAuがドープされていてもよい。
【0047】
(ガラス板用合紙)
ガラス板積層体を構成するガラス板用合紙の種類も特に限定されず、公知のものが用いられる。例えば、上述したようにバージンパルプからなるガラス板用合紙、古紙パルプからなるガラス板用合紙、バージンパルプと古紙パルプの混合パルプからなるガラス板用合紙、等から所望の特性等に応じて適宜選択できる。なお、ガラス板用合紙が特定のパルプからなるとは、ガラス板用合紙の原料として用いたパルプに占める特定のパルプの割合が実質的に100質量%であり、他の種類のパルプを意図的に混入させていないことを意味する。
【0048】
本明細書において、バージンパルプとは抄紙された紙や古紙を原料としたパルプではなく、木材等から製造されたパルプのことをいう。
バージンパルプにおける具体的なパルプの種類は特に限定されず、ガラス板用合紙として求められる特性に応じて適宜選択できる。バージンパルプとしては、1種類のパルプを単独で用いてもよく、複数種のパルプを併用してもよい。パルプの種類として、例えばクラフトパルプ(KP)、亜硫酸パルプ(SP)、ソーダパルプ(AP)等の化学パルプや、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)等の機械パルプ、およびその中間的な機械的・化学的パルプとしてのケミグランドパルプ(CGP)、セミケミカルパルプ(SCP)等の半化学パルプ等が挙げられる。パルプは晒でも未晒であってもよく、例えばKPのうち、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)が利用できる。
【0049】
ガラス板用合紙には高い清浄性が要求されることから、原料パルプとしては漂白処理が施され、リグニン等に由来する樹脂分等の成分が洗浄されることでその量が低減された晒クラフトパルプ(LBKPおよびNBKP)が特に好ましい。
【0050】
(古紙パルプ)
本明細書において古紙パルプとは、古紙から回収されたパルプのことをいう。古紙パルプは、例えば新聞、雑誌、チラシ等の古紙に由来するパルプであり、これを脱墨パルプ(DIP)という場合がある。脱墨パルプとは、古紙を原料として除塵・脱墨処理を行い、インキを分離したパルプのことをいう。古紙パルプはガラス板用合紙古紙に由来するパルプであってもよい。
【0051】
ガラス板用合紙の坪量は30~100g/m2が好ましい。本実施形態のガラス板用合紙の坪量が小さいと、強度が低下して破れやすくなる恐れがある。したがって、本実施形態のガラス板用合紙の坪量は30g/m2以上が好ましく、35g/m2以上がより好ましく、40g/m2以上がさらに好ましく、45g/m2以上が特に好ましい。
一方、坪量が大きいと、重量の増加を招き、また、ガラス板用合紙とガラス板とを積層して積層体とした際の積層高さが大きくなるため、所定の高さの容器に格納できる枚数が少なくなる。したがって、本実施形態のガラス板用合紙の坪量は100g/m2以下が好ましく、90g/m2以下がより好ましく、80g/m2以下がさらに好ましく、70g/m2以下が特に好ましい。
坪量は、JIS P 8124:2011に準拠して測定できる。
また、上記と同様の観点より、本実施形態のガラス板用合紙の厚さは30~150μmが好ましい。
【0052】
本実施形態のガラス板用合紙とともに積層されるガラス板は通常矩形状なので、本実施形態のガラス板用合紙も矩形状であることが好ましい。また、大型のガラス板の積層にも使用できるように、本実施形態のガラス板用合紙は、矩形状の少なくとも一辺の長さが500mm以上であることが好ましく、1000mm以上であることがより好ましく、1500mm以上であることがさらに好ましく、2200mm以上であることが特に好ましい。上限は特に限定されないが、例えば4000mm以下である。
例えばガラス板が矩形状であり、大きさが2200mm×2500mmである場合は、ガラス板用合紙は2280mm×2580mm程度の矩形状が好ましい。ガラス板が矩形である場合、ガラス板用合紙の各辺の長さは、それぞれ対応するガラス板の辺の長さの1.02~1.05倍程度であることが好ましい。
【0053】
本実施形態のガラス板用合紙には、本発明の効果を奏する範囲において各種薬剤が内添又は外添(塗工、含浸等)されていてもよい。ガラス板用合紙に内添又は外添される薬剤としては、例えば硫酸アルミニウムや消泡剤、定着剤、紙力増強剤、歩留向上剤、凝結剤、界面活性剤、サイズ剤、帯電防止剤、スライムコントロール剤、ドライヤー剥離剤、ポリビニルアルコールやポリクリルアミド、でんぷん、CMC等のセルロース誘導体、填料(タルク、クレー、二酸化チタン、炭酸カルシウム等)等が挙げられる。
【0054】
本実施形態のガラス板用合紙は公知の方法で製造できる。例えば、原料となるパルプを準備する準備工程、パルプからパルプスラリーを製造する調成工程、パルプスラリーからガラス板用合紙を抄紙する抄紙工程を含む方法によりガラス板用合紙が得られる。
【0055】
(ガラス板梱包体)
本実施形態のガラス板梱包体は、本実施形態に係るガラス板積層体と、前記ガラス板積層体を収納する収納容器とを有する。
【0056】
ガラス板の輸送や保管の際には、ガラス板とガラス板用合紙とを交互に積層して積層体とし、これを収納容器に収容してから梱包して梱包体(ガラス板梱包体)とする。収納容器としては、収納箱やパレットなどが例示される。収納箱としては、例えば、ガラス板積層体を収容する箱体と、蓋体とからなる収納箱が挙げられる。また、パレットを用いたガラス板梱包体には、ガラス板を水平に積層する横置き型とガラス板を傾斜させて立てた状態で積層する縦積型とがあり、本実施形態はいずれの型にも適用できる。
図6に縦積型のパレットを用いたガラス板梱包体の一例の概略構成を示す。また、
図7に横置き型のパレットを用いたガラス板梱包体の一例の概略構成を示す。
【0057】
本実施形態のガラス板梱包体は、ガラス板積層体における第1面内色のL*値が第2面内色のL*値より小さく、ガラス板積層体の第2方向側の面が収納容器の載置板に面して載置されている。ガラス板梱包体の状態においては、通常、ガラス板積層体が収納容器に収納された時に収納容器の載置面に面して配置される面が、紙ヤケの生じにくいガラス板積層体の下面側となる。
【0058】
図6に示すガラス板梱包体30は、パレット31に、複数枚のガラス板2を、間にガラス板用合紙1を介在させて積層したガラス板積層体10が載置され、梱包されたものである。なお、ガラス板用合紙1はパレット31とガラス板2の間にも配置されることが好ましい。パレット31は、公知の縦積型のガラス板梱包用のパレットであり、基台33と、基台33の上面に立設された背板32と、基台33の上面に載置された底板34とを有する。なお、背板32は、傾斜台又は載置板ということがある。また、底板34は載置台ということがある。本例において、ガラス板積層体の積層方向は、パレット31の背板32の載置面に垂直な方向である。
【0059】
背板32の鉛直方向の一面(ガラス板積層体10との接触面。以下「傾斜面」ともいう。)は、鉛直方向に対して傾斜している。この傾斜面の角度(
図3中、αで示す。)は、積層されたガラス板積層体10が安定して積載、保管および搬送できる角度であればよく、通常、水平方向に対して85°以下であり、例えば、85°~70°である。
【0060】
また、底板34の上面は、水平方向に対して背板32に向かって下降するように傾斜する。図示例においては、一例として、底板34の上面は、背板32の傾斜面に対して90°となるように構成されている。
【0061】
パレット31において、ガラス板2は、底板34の上面に載置され、かつ、背板32の傾斜面に立て掛けられた状態で積層される。また、各ガラス板の間には、ガラス板用合紙1が介在される。また、最前面のガラス板の表面をガラス板用合紙で覆ってもよい。縦積型のガラス板梱包用のパレットを用いる場合、ガラス板積層体の第2方向側の面はパレットの背板32の傾斜面に面して配置されている。
【0062】
図7に示すガラス板梱包体50は、パレット51に、複数枚のガラス板2を間にガラス板用合紙1を介在させて積層したガラス板積層体10が載置され、梱包されたものである。なお、ガラス板用合紙1はパレット51とガラス板2の間にも配置されることが好ましい。パレット51は、公知の横置き型ガラス板梱包用のパレットであり、基台53と、基台53の上面に載置された背板52とを有する。また、基台53の上面の隅(例えば、基台53の上面が矩形であれば少なくとも4隅)に、パレット51を積層するための支柱54を有する。横置き型ガラス板梱包用のパレットを用いる場合、ガラス板積層体の第2方向側の面はパレットの背板52に面して配置されている。なお、背板52は載置板ということがある。本例において、ガラス板積層体の積層方向は、パレット51の背板52の載置面に垂直な方向である。
【0063】
以上説明したように、本明細書には次の事項が開示されている。
(1)収納容器に収納されるガラス板積層体であって、
前記ガラス板積層体は、複数枚のガラス板と、複数枚のガラス板用合紙とが交互に積層された構造を有し、
前記ガラス板用合紙はバージンパルプからなる合紙であり、
前記ガラス板積層体の積層方向のうち、前記収納容器から離れる方向を第1方向とし、前記第1方向の反対方向を第2方向とし、
前記ガラス板用合紙の前記第1方向側の主面を第1主面とし、
前記ガラス板用合紙の前記第1主面の、隣接するガラス板の主面に接する領域または対応する領域を面内領域とし、
前記ガラス板積層体において、最も前記第1方向側に位置する前記ガラス板用合紙の前記面内領域のL*a*b*表色系における色彩値を第1面内色とし、最も前記第2方向側に位置する前記ガラス板用合紙の前記面内領域のL*a*b*表色系における色彩値を第2面内色としたときに、
前記第1面内色と前記第2面内色との色差ΔE*
abが0.58以下である、ガラス板積層体。
(2)前記ガラス板用合紙の前記第1主面の、前記面内領域以外の領域を出代領域とし、
最も前記第1方向側に位置する前記ガラス板用合紙の前記出代領域のL*a*b*表色系における色彩値を第1出代色としたときに、
前記第1出代色と前記第2面内色との色差ΔE*
abが0.58以下である、(1)に記載のガラス板積層体。
(3)前記ガラス板用合紙は、L*が90%以上であり、灰分量が0.001%以上0.5%以下である、(1)に記載のガラス板積層体。
(4)前記ガラス板用合紙は、L*が90%以上であり、灰分量が0.001%以上0.5%以下である、(2)に記載のガラス板積層体。
(5)収納容器に収納されるガラス板積層体であって、
前記ガラス板積層体は、複数枚のガラス板と、複数枚のガラス板用合紙とが交互に積層された構造を有し、
前記ガラス板用合紙は古紙パルプからなる合紙であり、
前記ガラス板積層体の積層方向のうち、前記収納容器から離れる方向を第1方向とし、前記第1方向の反対方向を第2方向とし、
前記ガラス板用合紙の前記第1方向側の主面を第1主面とし、
前記ガラス板用合紙の前記第1主面の、隣接するガラス板の主面に接する領域または対応する領域を面内領域とし、
前記ガラス板積層体において、最も前記第1方向側に位置する前記ガラス板用合紙の前記面内領域のL*a*b*表色系における色彩値を第1面内色とし、最も前記第2方向側に位置する前記ガラス板用合紙の前記面内領域のL*a*b*表色系における色彩値を第2面内色としたときに、
前記第1面内色と前記第2面内色との色差ΔE*
abが5.0以下である、ガラス板積層体。
(6)前記ガラス板用合紙の前記第1主面の、前記面内領域以外の領域を出代領域とし、
最も前記第1方向側に位置する前記ガラス板用合紙の前記出代領域のL*a*b*表色系における色彩値を第1出代色としたときに、
前記第1出代色と前記第2面内色との色差ΔE*
abが5.0以下である、(4)に記載のガラス板積層体。
(7)前記ガラス板用合紙は、L*が70%以上90%未満であり、灰分量が0.5%超10%以下である、(5)に記載のガラス板積層体。
(8)前記ガラス板用合紙は、L*が70%以上90%未満であり、灰分量が0.5%超10%以下である、(6)に記載のガラス板積層体。
(9)前記ガラス板積層体の前記第1方向側の最表面と前記第2方向側の最表面には、それぞれガラス板用合紙が積層される、(1)~(8)のいずれか1に記載のガラス板積層体。
(10)前記ガラス板積層体の前記第1方向側の最表面にはガラス板が積層され、前記ガラス板積層体の前記第2方向側の最表面にはガラス板用合紙が積層される、(1)~(8)のいずれか1に記載のガラス板積層体。
(11)(1)~(10)のいずれか1に記載のガラス板積層体と、前記ガラス板積層体を収納する収納容器とを有し、
前記ガラス板積層体の前記第2方向側の面が前記収納容器に面して載置されている、ガラス板梱包体。
【実施例0064】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0065】
(試験例1:ガラス板用合紙の日光曝露試験)
ガラス板用合紙として、バージンパルプ(針葉樹晒クラフトパルプ)からなるガラス板用合紙A(L*=97.5、a*=-0.6、b*=5.1、灰分0.20%)と、古紙パルプ(新聞古紙に由来する脱墨パルプ)からなるガラス板用合紙B(L*=83.1、a*=0.5、b*=5.7、灰分3.5%)を用意した。
イオナイザー(静電気除去器)により処理したポリエチレン製の透明袋にガラス板用合紙を擦ることなく1枚入れて日光曝露試験用のサンプルとし、これをガラス板用合紙A、Bについてそれぞれ複数用意した。
用意したサンプルを、試験室内において日光が入射する南向きの窓面に屋内側から貼り付けた状態で所定の期間保管し、日光曝露試験を行った。また、一部のサンプルは日光に曝露させず、黒色の箱に入れて暗所保管した。
【0066】
(色彩値の測定)
2か月間暗所保管したサンプル1と、保管期間をそれぞれ0.5か月、1か月、2か月として日光曝露したサンプル2~4について、以下の方法でL*a*b*表色系における色彩値を測定した。なお、測色時は、同じ条件で処理したガラス板用合紙を50mm×50mm以上のサイズとしてこれを30枚以上積層し、かつ、最上面のガラス板用合紙を毎回異なるものに変更しながら各条件あたり5回以上測定を行って、その平均値を測色結果とした。ガラス板用合紙の積層数が少ないと、測色計の光がガラス板用合紙を透過しやすくなるため、測色計受光部に入射する光がガラス板用合紙の背面にある物体の影響が大きくなることから、正しく測色できない可能性がある。ガラス板用合紙の枚数が多いほど一定の値に近づくようになり、30枚以上積層させた場合には枚数にかかわらず測色結果が概ね一定の値となることから、より正確な測色結果が得られる。色彩値の測定から得られた色差の結果を表1に示す。なお、サンプル2~4における色差の値は、サンプル1(2か月間暗所保管)における色彩値を基準とした場合の数値である。
【0067】
(測色条件)
装置:コニカミノルタ社製 分光測色計CM-700d
照明・受光光学系:SCI方式(正反射光を含む)
測定径:SAV(直径6mm)
観察光源:D65光源
観察条件:10°視野
表色系:L*a*b*表色系
【0068】
【0069】
(試験例2:積載試験)
試験例1におけるサンプル1~4のガラス板用合紙と同等の条件で作成したサンプルを用いてガラス板積層体1~4を作製し、所定条件で保管した後のガラス板表面のパーティクル個数を測定した。
各サンプルのガラス板用合紙(縦520mm×横420mm)と、ガラス板(縦470mm×横370mm×厚さ0.5mm、AGC株式会社製の無アルカリガラス基板:AN100)とを交互に積層し、ガラス板を30枚以上含むガラス板積層体を得た。得られたガラス板積層体に2kPa相当となる荷重を積載し、温度80℃、相対湿度40%の条件で16時間保管した。なお、室温から80℃への昇温、80℃から室温への降温はそれぞれ4時間かけて行った。
【0070】
<ガラス板表面のパーティクル個数の測定>
積載試験を経たガラス板積層体1~4から取り出したガラス板の配線形成面を上向きとして洗浄機に通過させた。洗浄機は配管圧1MPa、流量20L/minの純水(イオン交換水)が流れるシャワーパイプ上下各2列からなり、吐出口が均等扇形形状のノズルであって、各パイプのノズル個数が5個であるスプレーシャワーで吐出する。この洗浄機に3m/minの速度でガラス板を通過し、クリーンドライエアーを噴射するエアーナイフで乾燥させ、洗浄済み基板を得た。洗浄済み基板をFPD用異物検査機(東レエンジニアリング株式会社製、HS-830e)を用いてNormal(1.0μm)モードで測定し、パーティクル個数を得た。なお、異物検査機のパーティクルとは一般に凸状の付着物の他、凹み状の傷も含むが、本明細書内では、凸状の付着物をパーティクル、凹み状の欠陥を傷としている。
また、確認されたパーティクルの大きさについて以下のように分類して評価した。結果を
図8、
図9に示す。なお、
図8、
図9の棒グラフは同じ条件のサンプルについて3回以上測定した平均値に基づくものであり、最大値及び最小値を併せて図示している。
L(Large):標準粒子の直径が5μm以上である。
M(Medium):標準粒子の直径が3μm以上5μm未満である。
S(Small):標準粒子の直径が1μm以上3μm未満である。
【0071】
表1の結果から、ガラス板用合紙を光に曝した期間が長いほど色彩値に変化が生じ、暗所保管の状態と比較した色差ΔE
*
abが大きくなっている、すなわち紙ヤケの程度が大きくなっていることがわかる。そして、
図8、
図9の結果から、ガラス板用合紙の紙ヤケの程度が大きいほど、検出されるパーティクルの個数が多くなる傾向にあることがわかる。このことから、ガラス板とガラス板用合紙とを交互に積層してガラス板積層体を構成したときに、第1面内色と第2面内色との色差ΔE
*
abが所定値以下であれば、ガラス板表面におけるパーティクルを抑制できることがわかる。