(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176225
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20241212BHJP
H05H 1/46 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
H01L21/302 101B
H05H1/46 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094628
(22)【出願日】2023-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122507
【弁理士】
【氏名又は名称】柏岡 潤二
(72)【発明者】
【氏名】平山 昌樹
【テーマコード(参考)】
2G084
5F004
【Fターム(参考)】
2G084CC16
2G084CC33
2G084DD04
2G084DD20
2G084DD23
2G084DD42
2G084DD44
2G084FF15
2G084FF32
2G084FF39
5F004BA04
5F004BB28
5F004BB29
5F004CA03
(57)【要約】
【課題】プラズマ処理装置の励起電極の冷却効率を調整する技術を提供する。
【解決手段】開示されるプラズマ処理装置は、チャンバ、基板支持部、励起電極、放出器、冷却器、及び熱抵抗調整器を備える。チャンバは、その内部に処理空間を提供する。基板支持部は、処理空間内に配置されている。励起電極は、基板支持部の上方に配置されている。放出器は、励起電極の下のプラズマ生成空間に電磁波を放出するように構成されている。冷却器は、伝熱媒体用の流路をその内部に提供する。熱抵抗調整器は、熱抵抗調整板を含む。熱抵抗調整器は、励起電極と冷却器との間の伝熱経路における該熱抵抗調整板内の最短経路長を調整可能に構成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
その内部に処理空間を提供するチャンバと、
前記処理空間内に配置された基板支持部と、
前記基板支持部の上方に配置された励起電極と、
前記励起電極の下のプラズマ生成空間に電磁波を放出するように構成された放出器と、
伝熱媒体用の流路をその内部に提供する冷却器と、
熱抵抗調整板を含み、前記励起電極と前記冷却器との間の伝熱経路における該熱抵抗調整板内の最短経路長を調整可能に構成された熱抵抗調整器と、
を備えるプラズマ処理装置。
【請求項2】
前記冷却器の下方且つ前記励起電極の上方に配置されており、前記放出器に電磁的に結合された共振器を更に備え、
前記熱抵抗調整器は、前記冷却器を、前記共振器を介して前記励起電極に熱的に接続している、
請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記熱抵抗調整器は、
前記冷却器と前記熱抵抗調整板との間に介在する第1のスペーサと、
前記共振器と前記熱抵抗調整板との間に介在する第2のスペーサと、
を更に含み、
前記最短経路長は、前記熱抵抗調整板において前記第1のスペーサと前記第2のスペーサとの間の部位の長さである、
請求項2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記熱抵抗調整器は、
前記第1のスペーサと前記熱抵抗調整板とを互いに固定する第1の固定部材と、
前記第2のスペーサと前記熱抵抗調整板とを互いに固定する第2の固定部材と、
を更に含み、
前記熱抵抗調整板は、前記最短経路長の方向に沿って配列された複数の開口を提供しており、
前記第1の固定部材は、前記複数の開口のうち一つを通って、前記第1のスペーサと前記熱抵抗調整板とを互いに固定し、
前記第2の固定部材は、前記複数の開口のうち他の一つを通って、前記第2のスペーサと前記熱抵抗調整板とを互いに固定する、
請求項3に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記熱抵抗調整器は、
前記第1のスペーサと前記熱抵抗調整板とを互いに固定する第1の固定部材と、
前記第2のスペーサと前記熱抵抗調整板とを互いに固定する第2の固定部材と、
を更に含み、
前記熱抵抗調整板は、前記最短経路長の方向に沿って延びるスリット孔を提供しており、
前記第1の固定部材は、前記スリット孔を通って、前記第1のスペーサと前記熱抵抗調整板とを互いに固定する、
請求項3に記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記熱抵抗調整板は、前記スリット孔に沿って配置された目盛を含む、請求項5に記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
前記熱抵抗調整板は、第1部分及び第2部分を含み、
前記第1部分は、前記冷却器に固定されており、
前記熱抵抗調整器は、前記共振器と前記第2部分との間に介在するスペーサを更に含み、
前記熱抵抗調整板は、前記共振器の熱膨張による該共振器と前記冷却器との間のギャップ長の変化により、前記冷却器に接する部位の長さが変化するよう、可撓性を有する、
請求項2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項8】
前記冷却器と前記共振器との間に設けられたばねを更に含み、
前記冷却器は、前記ばねにより前記共振器に対して支持されている、
請求項7に記載のプラズマ処理装置。
【請求項9】
前記冷却器は、前記熱抵抗調整板と互いに向かい合う斜面又は曲面であって、前記第1部分が固定されている位置からの距離の増加につれて前記共振器からの距離が増加するよう構成された該斜面又は該曲面を有する、請求項7又は8に記載のプラズマ処理装置。
【請求項10】
前記熱抵抗調整板は、第1部分及び第2部分を含み、
前記第1部分は、前記冷却器に固定されており、
前記熱抵抗調整器は、前記共振器と前記第2部分との間に介在するスペーサを更に含み、
前記熱抵抗調整板は、バイメタルであり、その温度に応じて前記冷却器に接する部位の長さが変化するよう、可撓性を有する、
請求項2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項11】
前記冷却器は、前記熱抵抗調整板と互いに向かい合う斜面又は曲面であって、前記第1部分が固定されている位置からの距離の増加につれて前記共振器からの距離が増加する該斜面又は該曲面を有する、請求項10に記載のプラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の例示的実施形態は、プラズマ処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラズマ処理装置が基板に対するプラズマ処理において用いられている。一種のプラズマ処理装置は、下記の特許文献1に記載されている。特許文献1に記載されたプラズマ処理装置では、電磁波が上部電極の下面に沿って伝搬して、当該電磁波によりチャンバ内でプラズマが生成される。この上部電極は、伝熱媒体用の流路をその内部に提供している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、プラズマ処理装置の励起電極の冷却効率を調整する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一つの例示的実施形態において、プラズマ処理装置が提供される。プラズマ処理装置は、チャンバ、基板支持部、励起電極、放出器、冷却器、及び熱抵抗調整器を備える。チャンバは、その内部に処理空間を提供する。基板支持部は、処理空間内に配置されている。励起電極は、基板支持部の上方に配置されている。放出器は、励起電極の下のプラズマ生成空間に電磁波を放出するように構成されている。冷却器は、伝熱媒体用の流路をその内部に提供する。熱抵抗調整器は、熱抵抗調整板を含む。熱抵抗調整器は、励起電極と冷却器との間の伝熱経路における該熱抵抗調整板内の最短経路長を調整可能に構成されている。
【発明の効果】
【0006】
一つの例示的実施形態によれば、プラズマ処理装置の励起電極の冷却効率を調整する技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】一つの例示的実施形態に係るプラズマ処理装置を示す図である。
【
図2】
図2の(a)は、一つの例示的実施形態に係る熱抵抗調整器の部分拡大平面図である。
図2の(b)は、一つの例示的実施形態に係る熱抵抗調整器の部分拡大断面図である。
【
図3】
図3の(a)は、別の例示的実施形態に係る熱抵抗調整器の部分拡大平面図である。
図3の(b)は、別の例示的実施形態に係る熱抵抗調整器の部分拡大断面図である。
【
図4】
図4の(a)及び
図4の(b)の各々は、更に別の例示的実施形態に係る熱抵抗調整器の部分拡大断面図である。
【
図5】
図5の(a)及び
図5の(b)の各々は、更に別の例示的実施形態に係る熱抵抗調整器の部分拡大断面図である。
【
図6】別の例示的実施形態に係るプラズマ処理装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して種々の例示的実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
【0009】
図1は、一つの例示的実施形態に係るプラズマ処理装置を示す図である。
図1に示すプラズマ処理装置1は、チャンバ10、基板支持部12、励起電極14、放出器15、冷却器50、及び熱抵抗調整器6を備える。
【0010】
チャンバ10は、その内部に処理空間10sを提供している。プラズマ処理装置1では、基板Wは、処理空間10sの中で処理される。チャンバ10は、アルミニウムのような金属から形成されており、接地されている。チャンバ10は、側壁10aを有しており、その上端において開口されている。チャンバ10及び側壁10aは、略円筒形状を有し得る。処理空間10sは、側壁10aの内側に提供されている。チャンバ10、側壁10a、及び処理空間10sの各々の中心軸線は、軸線AXである。チャンバ10は、その表面に耐腐食性を有する膜を有していてもよい。耐腐食性を有する膜は、酸化イットリウム膜、酸化フッ化イットリウム膜、フッ化イットリウム膜、酸化イットリウム、又はフッ化イットリウム等を含むセラミック膜であり得る。
【0011】
チャンバ10の底部は、排気口10eを提供している。排気口10eには、排気装置が接続される。排気装置は、ドライポンプ及び/又はターボ分子ポンプのような真空ポンプと自動圧力制御弁を含み得る。
【0012】
基板支持部12は、処理空間10s内に配置されている。基板支持部12は、その上面の上に載置された基板Wを略水平に支持するように構成されている。基板支持部12は、略円盤形状を有している。基板支持部12の中心軸線は、軸線AXである。
【0013】
励起電極14は、基板支持部12の上方に配置されている。励起電極14は、金属(例えばアルミニウム)のような導体から形成されており、略円盤形状を有している。励起電極14の中心軸線は、軸線AXである。
【0014】
励起電極14は、シャワープレート141及び上部電極142を含んでいてもよい。シャワープレート141は、基板支持部12の上方に設けられている。シャワープレート141は、放出器15と共にチャンバ10の上端の開口を閉じている。シャワープレート141は、複数のガス孔14hを提供している。複数のガス孔14hは、シャワープレート141の厚さ方向(鉛直方向)に延びており、シャワープレート141を貫通している。
【0015】
上部電極142は、シャワープレート141上に設けられている。上部電極142は、シャワープレート141と上部電極142との間にガス拡散室14dを形成している。ガス拡散室14dには、ガス供給部26が接続されている。ガス供給部26からのガスは、ガス拡散室14dを介して複数のガス孔14hから処理空間10sに吐出される。
【0016】
励起電極14は、ヒータ143を内蔵していてもよい。ヒータ143は、上部電極142の中に設けられていてもよい。ヒータ143は、ヒータ電源25に接続されている。ヒータ143は、ヒータ電源25から与えられる電力により発熱する。また、プラズマ処理装置1は、温度センサを更に備えていてもよい。
【0017】
放出器15は、励起電極14の下のプラズマ生成空間に電磁波を放出するように構成されている。プラズマ処理装置1において、プラズマ生成空間は、処理空間10sに含まれており、その中心軸線は軸線AXである。プラズマ処理装置1では、放出器15から処理空間10sに放出される電磁波により、処理空間10s内のガスが励起されて、プラズマが生成される。放出器15から処理空間10sに放出される電磁波は、VHF波又はUHF波のような高周波であり得る。放出器15は、石英、窒化アルミニウム、又は酸化アルミニウムのような誘電体から形成されている。放出器15は、処理空間10sの横方向端部に設けられている。放出器15は、軸線AXの周りで延在している。放出器15は、環形状を有していてもよい。
【0018】
冷却器50は、伝熱媒体用の流路50fをその内部に提供する。流路50fには、チラーユニットから冷媒が供給される。冷却器50は、壁50wを含んでおり、壁50wの中に流路50fを提供している。冷却器50は、励起電極14の上方に配置され得る。一例において、冷却器50は、アルミニウムのような金属から形成される。冷却器50は、軸線AXの周りで延在する環形状を有していてもよい。
【0019】
熱抵抗調整器6は、熱抵抗調整板60を含む。熱抵抗調整器6は、励起電極14と冷却器50との間の伝熱経路における熱抵抗調整板60内の最短経路長を調整可能に構成されている。該最短経路長は、熱抵抗調整板60内での伝熱経路における最短経路長であって、励起電極14と冷却器50との間の伝熱経路に含まれる。熱抵抗調整板60は、金属から形成されている。一例において、熱抵抗調整板60は、ステンレス、アルミニウム、銅、又はそれらを含む合金から形成される。
【0020】
一実施形態において、プラズマ処理装置1は、共振器18を更に備えていてもよい。共振器18は、冷却器50の下方且つ励起電極14の上方に配置されている。共振器18は、放出器15に電磁的に結合されている。共振器18は、放出器15に電磁波を供給するように構成されている。電磁波は、共振器18を介して放出器15に伝搬し、放出器15からプラズマ生成空間に導入され得る。冷却器50は、熱抵抗調整器6及び共振器18を介して励起電極14に熱的に接続される。
【0021】
共振器18は、導波部20を含んでいてもよい。導波部20は、導波路20wを提供している。導波路20wは、金属のような導電性材料から形成された壁によって形成されている。導波部20は、第1端201及び第2端202を含む。第1端201は、第2端202に対して上方に設けられている。第1端201は、軸線AXを囲むように周方向に延在している。第1端201は、導波部20の外周部によって提供されている。第2端202は、放出器15に結合されている。導波部20は、導波路20w内で伝搬する電磁波を、第1端201と第2端202とで反射させて共振させるように構成されている。導波部20内で共振した電磁波は、第2端202から放出器15に供給されて、プラズマ生成空間に放出される。
【0022】
一実施形態において、導波部20の導波路20wは、軸線AXに対して軸対称又は回転対称に構成されていてもよい。導波部20は、複数の環状導体板210を含み得る。複数の環状導体板210は、それらの中心(又は中心軸線)が軸線AX上に位置するように配置されている。
【0023】
一実施形態において、プラズマ処理装置1は、ばね及び支柱を備えていてもよい。
図1に示す例は、複数のばね16及び複数の支柱17を備えている。複数の支柱17は、金属のような導体から形成されている。複数の支柱17は、軸線AXが延びる方向(即ち、鉛直方向)に沿って延びている。複数の支柱17は、軸線AXの周りで周方向に沿って間隔をもって配列されている。複数の支柱17は、複数の環状導体板210の外周及び内周のそれぞれに沿って配列されている。
【0024】
複数の支柱17の各々は、鉛直方向に沿って整列された複数の部位に分割されている。複数の支柱17の各々の複数の部位は、鉛直方向に沿って複数の環状導体板210と交互に配列されている。複数の支柱17の各々の複数の部位及び複数の環状導体板210は、互いに導通するように固定されている。複数の支柱17の各々の複数の部位のうち共振器18の外周部において最上段に位置する部位は、上述の第1端201を構成している。
【0025】
複数の支柱17及びそれらの各々の複数の部位の各々は筒形状を有している。複数の支柱17の中には、複数のボルトがそれぞれ通されている。複数のボルトの各々の下端は、複数の環状導体板210のうち最も低い位置で延在する環状導体板に形成されたねじ穴に螺合されている。複数のボルトの各々の上端は、冷却器50の上方に位置している。複数のボルトの各々の上端には、ナットが螺合されている。複数のボルト及びそれらと螺合された複数のナットは、複数の支柱17、複数の環状導体板210、及び冷却器50を互いに固定している。
【0026】
複数のばね16は、共振器18と冷却器50との間に設けられている。一例において、複数のばね16は、複数の環状導体板210のうち最も高い位置で延在する環状導体板と冷却器50との間に配置されている。複数のばね16の各々は、上述の複数のボルトのうち対応するボルトの周りで延在している。冷却器50は、複数のばね16により共振器18に対して弾性的に支持されている。
【0027】
共振器18は、熱膨張によって鉛直方向に伸縮する。共振器18と冷却器50との間には複数のばね16が設けられているので、共振器18が熱膨張により鉛直方向に延びると、複数のばね16の各々が縮んで、共振器18と冷却器50との間のギャップ長が減少する。
【0028】
一実施形態において、導波路20wは、上部20a及び下部20bを含む層構造を有していてもよい。下部20bは、軸線AXの周りで共振器18の第2端202に向けて軸線AXに対して径方向に延びている。上部20aは、下部20bの上方且つ軸線AXの周りで、第1端201から径方向に対して反対方向に延びている。即ち、上部20aは、第1端201から軸線AXに近付く方向に延びている。導波路20wは、軸線AXの周りで第1端201から第2端202まで蛇行するように径方向とその反対方向とに交互に延びている。
【0029】
一実施形態において、導波路20wは、中間部20cを更に含んでいてもよい。中間部20cは、上部20aと下部20bとの間に設けられている。即ち、中間部20cは、上部20aの下、且つ、下部20bの上に設けられている。中間部20cの一端は、上部20aにおける内側の端部、即ち、第1端201に対して内側の上部20aの端部に接続している。中間部20cの他端は、下部20bにおける内側の端部、即ち、第2端202に対して内側の下部20bの端部に接続している。中間部20cは、軸線AXの周りで蛇行するように径方向とその反対方向とに交互に延びていてもよい。
【0030】
一実施形態において、第2端202は、誘電体から形成さていてもよく、下部20bを構成する上側導体壁と下側導体壁との間に介在する環状の板であってもよい。電磁波を第1端201と第2端202との間で共振させるために、第2端202は、電磁波に対して下部20bにおける導波路20wのインピーダンスよりも低いインピーダンスを有しており、したがって、大きな静電容量を有する。
【0031】
プラズマ処理装置1は、高周波電源24を更に備えていてもよい。高周波電源24は、高周波電力を発生するように構成されている。チャンバ10内に導入される電磁波は、高周波電源24によって発生される高周波電力に基づいて発生する。高周波電源24は、同軸線路28を用いて共振器18に直結されていてもよい。即ち、高周波電源24は、インピーダンス整合用の整合器を介さずに、共振器18の導波路に結合されていてもよい。同軸線路28は、共振器18への接続部として、コネクタ40を含んでいてもよい。コネクタ40は、共振器18内に電磁波を導入するよう、共振器18に接続されていてもよい。
【0032】
以上説明したプラズマ処理装置1では、励起電極14と冷却器50との間の伝熱経路における熱抵抗調整板60内の最短経路長が調整可能である。熱抵抗調整板60内の最短経路長の調整により、励起電極14と冷却器50との間の熱抵抗が調整される。したがって、プラズマ処理装置1によれば、励起電極14の冷却効率が調整される。
【0033】
以下、
図2の(a)及び
図2の(b)を参照して、熱抵抗調整器6の詳細について説明する。
図2の(a)は、一つの例示的実施形態に係る熱抵抗調整器の部分拡大平面図である。
図2の(b)は、一つの例示的実施形態に係る熱抵抗調整器の部分拡大断面図である。
【0034】
一実施形態において、熱抵抗調整器6は、第1のスペーサ61及び第2のスペーサ62を更に含んでいてもよい。第1のスペーサ61は、冷却器50と熱抵抗調整板60との間に介在する。冷却器50と熱抵抗調整板60とは、第1のスペーサ61を介して熱的に接続されている。第2のスペーサ62は、共振器18と熱抵抗調整板60との間に介在する。共振器18と熱抵抗調整板60とは、第2のスペーサ62を介して熱的に接続されている。第1のスペーサ61及び第2のスペーサ62の各々は、金属から形成される。第1のスペーサ61及び第2のスペーサ62の各々は、例えば、ステンレス、アルミニウム、銅、又はそれらを含む合金から形成される。励起電極14と冷却器50との間の伝熱経路における熱抵抗調整板60内の最短経路長a1は、熱抵抗調整板60において第1のスペーサ61と第2のスペーサ62との間の部位の長さである。
【0035】
一実施形態において、熱抵抗調整器6は、第1の固定部材63及び第2の固定部材64を更に含んでいてもよい。第1の固定部材63は、第1のスペーサ61と熱抵抗調整板60とを互いに固定する。第2の固定部材64は、第2のスペーサ62と熱抵抗調整板60とを互いに固定する。熱抵抗調整板60は、最短経路長a1の方向に沿って配列された複数の開口60hを提供する。複数の開口60hは、熱抵抗調整板60をその板厚方向に貫通している。第1の固定部材63は、複数の開口60hのうち一つを通って、第1のスペーサ61と熱抵抗調整板60とを互いに固定する。第2の固定部材64は、複数の開口60hのうち他の一つを通って、第2のスペーサ62と熱抵抗調整板60とを互いに固定する。
【0036】
一例において、第1の固定部材63は、ねじ63s及び締結部材63aを含んでいてもよく、第2の固定部材64は、ねじ64s及び締結部材64aを含んでいてもよい。第1のスペーサ61及び第2のスペーサ62の各々は、リング状又は筒状をなしていてもよい。冷却器50の壁50wは、複数の開口50hを提供していてもよい。複数の開口50hは、最短経路長a1の方向に沿って配列されており、それらの各々は、対応する開口60hと整列している。ねじ63sは、複数の開口60hのうち一つと、第1のスペーサ61の内孔と、複数の開口50hのうち一つとを通り、締結部材63aに固定される。締結部材63aは、例えば、ナットである。
【0037】
ねじ64sは、複数の開口60hのうち別の一つと、第2のスペーサ62の内孔と、複数の開口50hのうち別の一つと、複数の環状導体板210のうち最も高い位置で延在する環状導体板の貫通孔と、を通り、締結部材64aに固定される。締結部材64aは、例えば、ナットである。一実施形態において、第2のスペーサ62は、複数の開口50hのうち別の一つを通って、共振器18と熱抵抗調整板60とを熱的に接続していてもよい。第2のスペーサ62と複数の開口50hのうち別の一つの内壁との間には、間隙が画成され得る。第2のスペーサ62と複数の開口50hのうち別の一つの内壁との間に間隙が画成される場合には、第2のスペーサ62と冷却器50の壁50wとが互いから分離されて、それらの間での直接の熱交換が抑制される。
【0038】
熱抵抗調整器6では、最短経路長a1は、複数の開口60hのうち第1の固定部材63が通る開口と第2の固定部材64が通る他の開口とを選択することにより、調整され得る。したがって、熱抵抗調整器6によれば、励起電極14と冷却器50との間の熱抵抗が調整され得る。
【0039】
以下、
図3の(a)及び
図3の(b)を参照して、別の例示的実施形態に係る熱抵抗調整器について説明する。
図3の(a)は、別の例示的実施形態に係る熱抵抗調整器の部分拡大平面図である。
図3の(b)は、別の例示的実施形態に係る熱抵抗調整器の部分拡大断面図である。以下、
図3の(a)及び
図3の(b)に示す熱抵抗調整器6Aについて、熱抵抗調整器6に対する相違点の観点から説明する。
【0040】
熱抵抗調整器6Aは、熱抵抗調整板60に代えて、熱抵抗調整板60Aを含んでいる。熱抵抗調整板60Aは、スリット孔60s及び開口60tを提供している。スリット孔60sは、最短経路長a1の方向に沿って延びている。スリット孔60s及び開口60tは、最短経路長a1の方向に沿って配列されていている。スリット孔60s及び開口60tは、熱抵抗調整板60Aをその板厚方向にそれぞれ貫通している。第1の固定部材63(例えば、そのねじ63s)は、スリット孔60sを通って、第1のスペーサ61と熱抵抗調整板60Aとを互いに固定する。冷却器50の壁50wは、スリット孔60s及び開口60tにそれぞれ対応して形成されたスリット孔50s及び開口50tを提供してもよい。第1の固定部材63は、スリット孔60sと、第1のスペーサ61の内孔と、スリット孔50sとを通り、締結部材63aによって固定される。第2の固定部材64は、開口60tと、第2のスペーサ62の内孔と、開口50tとを通り、締結部材64aに締結される。熱抵抗調整板60Aは、スリット孔60sに沿って配置された目盛60gを含んでいてもよい。
【0041】
熱抵抗調整器6Aにおいても、最短経路長a1は、熱抵抗調整板60Aにおいて第1のスペーサ61と第2のスペーサ62との間の部位の長さである。熱抵抗調整器6Aでは、最短経路長a1は、スリット孔60sに通される第1の固定部材63の位置を調整することによって、調整され得る。したがって、熱抵抗調整器6Aによれば、熱抵抗が調整され得る。また、スリット孔60sに通される第1の固定部材63の位置は、目盛60gを参照することによって、より正確に調整され得る。
【0042】
以下、
図4の(a)及び
図4の(b)を参照して、更に別の例示的実施形態に係る熱抵抗調整器について説明する。
図4の(a)及び
図4の(b)の各々は、更に別の例示的実施形態に係る熱抵抗調整器の部分拡大断面図である。以下、
図4の(a)及び
図4の(b)に示す熱抵抗調整器6Bについて、熱抵抗調整器6に対する相違点の観点から説明する。
【0043】
熱抵抗調整器6Bは、熱抵抗調整板60に代えて、熱抵抗調整板60Bを含んでいる。熱抵抗調整器6Bは、第1のスペーサ61及び第2のスペーサ62を含まない。熱抵抗調整器6Bは、スペーサ67を含んでいる。熱抵抗調整板60Bは、第1部分65及び第2部分66を含む。第1部分65は、冷却器50に固定されている。第1部分65は、例えば、冷却器50に直接固定されていてもよい。スペーサ67は、共振器18と第2部分66との間に介在する。一例において、第2部分66は、スペーサ67に固定され、スペーサ67は、共振器18に固定される。第2部分66と共振器18とは、スペーサ67を介して、熱的に接続されている。熱抵抗調整板60Bは、共振器18の熱膨張による共振器18と冷却器50との間のギャップ長の変化により、冷却器50に接する部位の長さが変化するよう、可撓性を有する。
【0044】
一実施形態において、冷却器50は、斜面又は曲面を有していてもよい。
図4に示す例では、冷却器50は、曲面50aを有している。冷却器50は、曲面50aに代えて斜面を有していてもよい。曲面50aは、熱抵抗調整板60Bと互いに向かい合っている。曲面50aは、第1部分65が固定されている位置からの距離の増加につれて、共振器18からの距離が増加するように構成される。一例において、曲面50aは、第1部分65が固定されている位置からの距離の増加につれて、熱抵抗調整板60Bと互いに向かい合う方向において共振器18からの距離が増加するように構成される。
【0045】
熱抵抗調整器6Bでは、共振器18の熱膨張による共振器18と冷却器50との間のギャップ長の減少により、熱抵抗調整板60Bは曲面50aに近付くように湾曲し、冷却器50に接する熱抵抗調整板60Bの部位の長さが増加する。したがって、熱抵抗調整器6Bでは、共振器18が熱膨張することによって、励起電極14と冷却器50との間の熱抵抗が減少する。故に、熱抵抗調整器6Bでは、共振器18の温度上昇に応じて、励起電極14の冷却効率が自動的に増加する。
【0046】
以下、
図5の(a)及び
図5の(b)を参照して、更に別の例示的実施形態に係る熱抵抗調整器について説明する。
図5の(a)及び
図5の(b)の各々は、更に別の例示的実施形態に係る熱抵抗調整器の部分拡大断面図である。以下、
図5の(a)及び
図5の(b)に示す熱抵抗調整器6Cについて、熱抵抗調整器6Bに対する相違点の観点から説明する。
【0047】
熱抵抗調整器6Cは、熱抵抗調整板60Bに代えて、熱抵抗調整板60Cを含んでいる。熱抵抗調整板60Cは、その温度に応じて冷却器50に接する部位の長さが変化するよう、可撓性を有する。具体的には、熱抵抗調整板60Cは、バイメタルであり、第1部材60a及び第2部材60bを含む。第1部材60a及び第2部材60bの各々は、板状である。第1部材60a及び第2部材60bは、単一の熱抵抗調整板60Cを構成するよう、互いに貼り合わせされている。第1部材60aは、冷却器50と互いに向かい合うよう位置している。第2部材60bは、共振器18と互いに向かい合うよう位置している。第1部材60a及び第2部材60bは、それぞれ異なる熱膨張係数を有する。第1部材60aの熱膨張係数は、第2部材60bの熱膨張係数よりも大きい。
【0048】
熱抵抗調整器6Cでは、共振器18の温度上昇に応じて熱抵抗調整板60Cの温度が上昇すると、熱抵抗調整板60Cが冷却器50の曲面50aに向かって湾曲して、冷却器50に接する熱抵抗調整板60Cの部位の長さが増加する。したがって、熱抵抗調整器6Cでは、共振器18の温度上昇に応じて、励起電極14と冷却器50との間の熱抵抗が自動的に減少する。故に、熱抵抗調整器6Cでは、共振器18の温度上昇に応じて、励起電極14の冷却効率が自動的に増加する。
【0049】
図5の(a)及び
図5の(b)の例では、冷却器50と共振器18との間には、複数のばね16に代えて、複数の断熱部材19が設けられている。複数の断熱部材19の各々の熱伝導係数は、複数の支柱17の各々の熱伝導係数よりも小さい。熱抵抗調整器6Cでは、共振器18と冷却器50との間のギャップ長が変化しなくても、熱抵抗調整板60Cが湾曲することによって、励起電極14と冷却器50との間の熱抵抗が自動的に減少する。
【0050】
以下、
図6を参照して、別の例示的実施形態に係るプラズマ処理装置について説明する。
図6は、別の例示的実施形態に係るプラズマ処理装置を示す図である。以下、
図6に示すプラズマ処理装置1Dについて、プラズマ処理装置1に対する相違点の観点から説明する。
【0051】
プラズマ処理装置1Dは、複数の熱抵抗調整器6を備えている。複数の熱抵抗調整器6の各々は、上述した熱抵抗調整器6に対応する。複数の熱抵抗調整器6の各々は、上述した熱抵抗調整器6A,6B,6Cのうち何れかに対応していてもよい。複数の熱抵抗調整器6のうち少なくとも一つは、その最短経路長a1の方向がチャンバ10及び励起電極14の径方向に沿うように配置されていてもよい。複数の熱抵抗調整器6のうち少なくとも一つは、その最短経路長a1の方向がチャンバ10及び励起電極14の径方向と交差するように配置されていてもよい。
図6に示す例では、複数の熱抵抗調整器6のうち第1の熱抵抗調整器が、その最短経路長a1の方向がチャンバ10及び励起電極14の径方向に沿うように配置されている。また、複数の熱抵抗調整器6のうち第2の熱抵抗調整器が、その最短経路長a1の方向がチャンバ10及び励起電極14の径方向に交差し且つ第1の熱抵抗調整器の最短経路長a1の方向と平行であるように配置されている。
【0052】
以上、種々の例示的実施形態について説明してきたが、上述した例示的実施形態に限定されることなく、様々な追加、省略、置換、及び変更がなされてもよい。また、異なる実施形態における要素を組み合わせて他の実施形態を形成することが可能である。
【0053】
以上の説明から、本開示の種々の実施形態は、説明の目的で本明細書で説明されており、本開示の範囲及び主旨から逸脱することなく種々の変更をなし得ることが、理解されるであろう。したがって、本明細書に開示した種々の実施形態は限定することを意図しておらず、真の範囲と主旨は、添付の特許請求の範囲によって示される。
【符号の説明】
【0054】
1,1D…プラズマ処理装置、6,6A,6B,6C…熱抵抗調整器、10…チャンバ、10s…処理空間、12…基板支持部、14…励起電極、15…放出器、61…第1のスペーサ、62…第2のスペーサ、67…スペーサ、18…共振器、19…複数のばね、50…冷却器、50a…曲面、50f…流路、50h…複数の開口、50s…スリット孔、60,60A,60B,60C…熱抵抗調整板、60g…目盛、63…第1の固定部材、64…第2の固定部材、65…第1部分、66…第2部分、a1…最短経路長。