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特開2024-176280液体吐出装置、液体吐出方法、及び、制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176280
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】液体吐出装置、液体吐出方法、及び、制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/165 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
B41J2/165 211
B41J2/165 401
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094730
(22)【出願日】2023-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高木 康信
(72)【発明者】
【氏名】菊地 徹平
(72)【発明者】
【氏名】山下 宏之
(72)【発明者】
【氏名】高野 菜々美
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA14
2C056EA17
2C056EB30
2C056EB31
2C056EB38
2C056EC22
2C056EC24
2C056EC57
2C056FA10
2C056JA01
2C056JA13
2C056JA24
2C056JC06
2C056JC20
(57)【要約】
【課題】液体吐出装置における吸引キャップを十分に洗浄、及び、保湿する。
【解決手段】ヘッドを備え、前記ヘッドが吐出する液体によって所定処理を行う液体吐出装置が、前記ヘッドを吸引する吸引部と、前記吸引部が吸引してから第1時間以内に、洗浄液を注入して前記吸引部を洗浄する第1洗浄部と、温度、及び、湿度に基づいて設定される第2時間ごとに、前記吸引部に前記洗浄液を注入して前記吸引部を洗浄する第2洗浄部とを備える。
【選択図】図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドを備え、前記ヘッドが吐出する液体によって所定処理を行う液体吐出装置であって、
前記ヘッドを吸引する吸引部と、
前記吸引部が吸引してから第1時間以内に、洗浄液を注入して前記吸引部を洗浄する第1洗浄部と、
温度、及び、湿度に基づいて設定される第2時間ごとに、前記吸引部に前記洗浄液を注入して前記吸引部を洗浄する第2洗浄部と
を備える液体吐出装置。
【請求項2】
前記第2洗浄部は、
前記温度、及び、前記湿度に基づき、前記液体の蒸発速度が速い温度湿度条件であるほど前記第2時間を短く決定する
請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記第1洗浄部が前記吸引部を洗浄した後、前記洗浄液を排出口から排出すると、前記排出口を封止する
請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記排出口を封止した後、前記吸引部に前記洗浄液を注入する
請求項3に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記第2洗浄部が前記吸引部を洗浄した後、前記洗浄液を排出口から排出すると、前記排出口を封止する
請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記排出口を封止した後、前記吸引部に前記洗浄液を注入する
請求項5に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
電源の操作、スリープ状態への移行、又は、前記スリープ状態からの復帰を含む状態移行があると、前記洗浄液を注入して前記吸引部を洗浄する第3洗浄部を更に備える
請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記液体は、インクであり、
前記ヘッドは、前記インクを記録媒体に吐出し、
前記所定処理は、前記記録媒体に画像を形成する処理であり、
前記吸引部は、前記ヘッドをキャップする吸引キャップであり、
前記第1洗浄部は、前記吸引部が吸引を行うと第1洗浄を実行し、
前記第2洗浄部は、前記温度、及び、前記湿度に応じてテーブルで定まる重み係数に応じて決定される前記第2時間に基づき、定期的に第2洗浄を実行する
請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項9】
ヘッドと、
前記ヘッドを吸引する吸引部と
を備え、前記ヘッドが吐出する液体によって所定処理を行う液体吐出装置が行う液体吐出方法であって、
前記吸引部が吸引してから第1時間以内に、洗浄液を注入して前記吸引部を洗浄する第1洗浄手順と、
温度、及び、湿度に基づいて設定される第2時間ごとに、前記吸引部に前記洗浄液を注入して前記吸引部を洗浄する第2洗浄手順と
を含む液体吐出方法。
【請求項10】
請求項9に記載の液体吐出方法を液体吐出装置に実行させるための制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置、液体吐出方法、及び、制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
液体を吐出して様々な処理を実現する技術が知られている。具体的には、液体として、インクを使用し、用紙等の記録媒体に対して、画像を形成する処理を実行する画像形成装置等の技術が知られている。
【0003】
インクを吐出するヘッドを有する画像形成装置が、ヘッドからインクを吸引する吸引キャップを備える。インクは、長時間滞留すると増粘し、吸引キャップによる吸引、又は、ヘッドによる吐出等の動作に悪影響を与える。そのため、吸引キャップでインクを吸引する。一方で、吸引キャップにインクが残ると、吸引性能が低下する。そこで、吸引キャップを洗浄して吸引キャップの吸引性能が低下するのを防ぐ技術が知られている(例えば、特許文献1等である)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術では、吸引キャップが十分に洗浄、及び、保湿できていない場合が多い。そのため、乾燥したインクが様々な箇所で詰まり、不具合となる。したがって、従来の技術には、吸引キャップが十分に洗浄、及び、保湿できない課題がある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みて、液体吐出装置における吸引キャップを十分に洗浄、及び、保湿することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、液体吐出装置は、
ヘッドを備え、前記ヘッドが吐出する液体によって所定処理を行う液体吐出装置であって、
前記ヘッドを吸引する吸引部と、
前記吸引部が吸引してから第1時間以内に、洗浄液を注入して前記吸引部を洗浄する第1洗浄部と、
温度、及び、湿度に基づいて設定される第2時間ごとに、前記吸引部に前記洗浄液を注入して前記吸引部を洗浄する第2洗浄部と
を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、液体吐出装置が備える吸引キャップを十分に洗浄、及び、保湿できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】液体吐出装置の例を示す図(側面図)である。
図2】液体吐出装置の例を示す図(平面図)である。
図3】キャリッジ103の例を示す図である。
図4】ヘッドクリーニングユニット171、及び、キャリッジ103の配置例(その1)を示す図である。
図5】ヘッドクリーニングユニット171、及び、キャリッジ103の配置例(その2)を示す図である。
図6】ヘッドクリーニングユニット171、及び、キャリッジ103の配置例(その3)を示す図である。
図7】吸引部の例を示す図である。
図8】洗浄液の注入例(その1)を示す図である。
図9】洗浄液の注入例(その2)を示す図である。
図10】洗浄液の注入例(その3)を示す図である。
図11】洗浄液の注入例(その4)を示す図である。
図12】インクが残る例を示す図である。
図13】洗浄頻度の設定例を示す図である。
図14】全体処理例を示す図である。
図15】排出口の封止する例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付する図面を参照し、具体例を説明する。なお、実施形態は、以下に説明する具体例に限られない。
【0010】
[液体吐出装置の例]
図1は、液体吐出装置の例を示す図(側面図)である。図2は、液体吐出装置の例を示す図(平面図)である。液体吐出装置は、例えば、以下のような画像形成装置10である。すなわち、以下の例では、液体は、画像を形成するためのインクである。また、液体が付着する記録媒体は、以下の例では、用紙112とする。
【0011】
画像形成装置10は、左右に設置する側板に横架したガイド部材であるガイドロッド101、及び、ガイドレール102でキャリッジ103を主走査方向に摺動自在に保持し、主走査モータ104でタイミングベルト105を介して、主走査方向に移動する。
【0012】
キャリッジ103は、例えば、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、及び、ブラック(Bk)の4色インクを吐出するノズルの列を備える。また、キャリッジ103は、4個の記録ヘッド107と、吸引キャップ173を洗浄液で洗浄する洗浄用ヘッド201とを有する。
【0013】
記録ヘッド107のノズル列は、ノズル列の長手方向が、キャリッジ103においてキャリッジ103の主走査方向と直交する方向に配列される。
【0014】
記録ヘッド107を構成するインクジェットヘッドは、圧電素子等の圧電アクチュエータ、発熱抵抗体等の電気熱変換素子を用いて液体の膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエータ、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、又は、静電力を用いる静電アクチュエータ等を備える。
【0015】
また、キャリッジ103は、記録ヘッド107に各色のインクを供給するため、各色のサブタンク108を備える。このサブタンク108には、インク供給チューブ14を介してメインタンク(以下「インクカートリッジ12」という。)からインクが供給される。
【0016】
画像形成装置10は、サブタンク108、及び、記録ヘッド107を一体に有する。ただし、記録ヘッド107とサブタンク108は別体でもよい。さらに、サブタンクを用いずに、インクカートリッジ12と記録ヘッド107は、一体でもよい。
【0017】
一方、給紙カセット110は、圧板111上に用紙112を積載する。そして、圧板111上から用紙112を1枚ずつ分離して搬送する給紙ローラ113が設置される。また、給紙ローラ113に対向する位置に、分離パッド114が設置される。
【0018】
用紙112を静電吸着して搬送する搬送ベルト121が設置される。また、ガイド115を介して送られる用紙112を搬送ベルト121との間で挟んで搬送するカウンタローラ122が設置される。
【0019】
用紙112を方向転換させて搬送ベルト121上に倣わせる搬送ガイド123が設置される。また、押さえ部材124には、搬送ベルト121側に先端加圧コロ125が設置される。さらに、搬送ベルト121表面を帯電させる帯電ローラ126が設置される。
【0020】
搬送ベルト121は、無端状ベルトである。そして、搬送ベルト121は、搬送ローラ127とテンションローラ128との間に掛け渡される。
【0021】
副走査モータ131がタイミングベルト132、及び、タイミングローラ133を回転させる。次に、タイミングベルト132、及び、タイミングローラ133によって、搬送ローラ127が回転する。そして、搬送ベルト121は、搬送ローラ127が回転すると、副走査方向に回転する。なお、搬送ベルト121の裏面側には、記録ヘッド107が画像形成する画像形成領域に対応して、ガイド部材129が設置される。
【0022】
搬送ローラ127の軸には、スリット円板134が設置される。さらに、スリット円板134が備えるスリットを検知するセンサ135が設置される。そして、スリット円板134、及び、センサ135により、第1エンコーダ136が構成される。
【0023】
帯電ローラ126は、搬送ベルト121の表層に接触する。また、帯電ローラ126は、搬送ベルト121の回動に従動して回転するように配置される。さらに、帯電ローラ126は、軸の両端に各2.5Nの加圧力をかける。
【0024】
キャリッジ103の後方側には、スリットを形成したエンコーダスケール142が設置される。そして、エンコーダセンサ143が、エンコーダスケール142のスリットを検出する。例えば、エンコーダセンサ143は、透過型フォトセンサ等である。エンコーダスケール142、及び、エンコーダセンサ143によって、ホーム位置に対するキャリッジ103の主走査方向位置を検知する第2エンコーダ144が構成される。
【0025】
画像形成装置10は、用紙112を排紙するため、搬送ベルト121から用紙112を分離する分離爪16、排紙ローラ152、排紙コロ153、排紙される用紙112をストックする排紙トレイ154を備える。
【0026】
画像形成装置10の背部には、両面給紙ユニット161が着脱自在に装着される。両面給紙ユニット161は、搬送ベルト121の逆方向回転で戻される用紙112を取り込んで反転させて、再度、カウンタローラ122と搬送ベルト121の間に給紙する。
【0027】
用紙112は、1枚ずつ分離して給紙され、上方向に給紙された用紙112は、ガイド115で案内される。次に、用紙112は、搬送ベルト121とカウンタローラ122との間に挟まれて搬送される。続いて、用紙112は、先端を搬送ガイド123で案内されて先端加圧コロ125で搬送ベルト121に押し付けられた後、搬送方向を90°転換される。
【0028】
制御回路は、高圧電源から帯電ローラ126に対して、プラス出力とマイナス出力とが交互に繰り返すように電圧を印加させる。このような制御によって、搬送ベルト121は、帯電電圧パターン、すなわち、周回方向である副走査方向に、プラスとマイナスが所定の幅で帯状に交互に帯電される。
【0029】
このようなプラス、及び、マイナスに交互に帯電した搬送ベルト121上に、用紙112が搬送されると、用紙112は、搬送ベルト121に静電力で吸着する。吸着後、搬送ベルト121の周回移動によって、用紙112が副走査方向に搬送される。
【0030】
一方で、画像形成装置10は、キャリッジ103を移動させながら、画像信号に応じて記録ヘッド107を駆動する。そして、記録ヘッド107は、用紙112に対しインクを吐出して1行分の画像形成を行う。画像形成後、用紙112を所定量搬送し、記録ヘッド107は、次の行の画像形成を行う。
【0031】
記録終了信号、又は、用紙112の後端が画像形成領域に到達した信号を受けると、画像形成装置10は、画像形成を終了して、用紙112を排紙トレイ154に排紙する。
【0032】
両面印刷の場合には、おもて面(すなわち、最初に画像形成を行う面である。)に対する画像形成が終了した後、画像形成装置10は、搬送ベルト121を逆回転させる。そして、用紙112を両面給紙ユニット161内に搬送して、用紙112を反転させる。このようにして、裏面に画像形成が可能となる状態にして、再度、画像形成装置10は、カウンタローラ122と搬送ベルト121の間に用紙112を搬送する。搬送後、画像形成装置10は、タイミング制御を行って、用紙112の裏面に画像形成を行った後、排紙トレイ154に排紙する。
【0033】
キャリッジ103の走査方向(X軸方向である。)において、用紙112から外れた位置には、ノズル面をクリーニングするヘッドクリーニングユニット171が設置される。具体的には、ヘッドクリーニングユニット171は、吸引キャップ173、記録ヘッド保湿キャップ172、洗浄用ヘッド保湿キャップ204、及び、ワイパーブレード174が設置される。
【0034】
図3は、キャリッジ103の例を示す図である。具体的には、キャリッジ103は、キャリッジガイド106を介して、ガイドロッド101に設置される。
【0035】
キャリッジ103は、記録ヘッド107、及び、洗浄用ヘッド201を備える。
【0036】
記録ヘッド107は、インクを吐出するインク吐出ノズル211を備える。インク吐出ノズル211から、用紙112上にインクを吐出することによって画像が形成される。
【0037】
洗浄用ヘッド201は、洗浄液を流す洗浄用ノズル202を備える。なお、洗浄用ノズル202は、洗浄液を流すことができればよく、インク吐出ノズル211のように液体を吐出することができなくてもよい。また、洗浄用ノズル202は、インク吐出ノズル211よりも径の精度が低く、ノズル径がインク吐出ノズル211よりも大きくてもよい。
【0038】
[洗浄に用いる装置の構成例]
図4乃至図6は、ヘッドクリーニングユニット171、及び、キャリッジ103の配置例を示す図である。以下、第1洗浄部、及び、第2洗浄部をヘッドクリーニングユニット171で実現する例で説明する。
【0039】
ただし、第1洗浄部、及び、第2洗浄部は、共通のハードウェアで実現せず、別々に専用のハードウェアがある構成でもよい。また、第1洗浄部、及び、第2洗浄部は、吸引キャップ173内に洗浄液を注入する注入装置等が画像形成装置10の内部、又は、外部にあればよい。
【0040】
キャリッジ103は、記録ヘッド107に供給するインクを一時的に貯留するサブタンク108、及び、洗浄用ヘッド201に供給する洗浄液を一時的に貯留する洗浄液用サブタンク203を有する。
【0041】
一方、ヘッドクリーニングユニット171は、画像形成領域から外れた領域に設けられる。また、ヘッドクリーニングユニット171は、吸引キャップ173、吸引機構205、記録ヘッド保湿キャップ172、洗浄用ヘッド保湿キャップ204、ワイパーブレード174、及び、吸収体206を備える。
【0042】
吸引キャップ173は、インク吐出ノズル211、及び、洗浄用ノズル202からインク、又は、洗浄液を吸引する。
【0043】
吸引機構205は、吸引経路212を介して、吸引キャップ173内に存在する液体を吸引する。例えば、吸引機構205はポンプである。
【0044】
記録ヘッド保湿キャップ172は、記録ヘッド107のノズル面を保湿して、乾燥によってノズルが塞がるのを防ぐ。
【0045】
洗浄用ヘッド保湿キャップ204は、洗浄用ヘッド201のノズル面を保湿することにより、乾燥によるノズルの閉塞を防ぐ。
【0046】
ワイパーブレード174は、インク吐出ノズル211、及び、洗浄用ノズル202のノズル面を払拭して、ノズル面に残った液体を除去する。
【0047】
吸収体206は、ワイパーブレード174がふき取った液体を吸収する。
【0048】
この例では、吸引キャップ173が1つであるが、記録ヘッド保湿キャップ172ごとに設けられてもよい。また、インク、又は、洗浄液の揮発性が低い場合には、記録ヘッド保湿キャップ172、及び、洗浄用ヘッド保湿キャップ204等がなくともよい。
【0049】
図4は、画像形成装置10が、待機、又は、クリーニング等の状態を示す。例えば、記録ヘッド107が備えるインク吐出ノズル211のノズル面は、インク吐出ノズル211に対応する吸引キャップ173、及び、記録ヘッド保湿キャップ172により密閉される。
【0050】
洗浄用ヘッド201の洗浄用ノズル202は、洗浄用ヘッド保湿キャップ204により密閉される。
【0051】
以上のような構成により、インク吐出ノズル211、及び、洗浄用ノズル202のノズル面の乾燥を防ぐ。また、ノズル面を密閉した状態で吸引機構205を動作させて、吸引キャップ173の中を負圧にする。そして、インク吐出ノズル211が、記録ヘッド107a内のインクを吸引して、ヘッドクリーニングを行う。
【0052】
次に、キャリッジ103を移動して、記録ヘッド107b、107c、及び、107dを吸引キャップ173で吸引する。このようにして、記録ヘッド107a乃至107dがクリーニングされる。
【0053】
クリーニングにおいて、吸引キャップ173内にインクが残る場合がある。そして、吸引キャップ173を大気に開放すると、吸引キャップ173内に残ったインクが乾燥して蓄積されやすくなる。このような乾燥は、固形分が多く、粘度の高い顔料を用いたインクを使用した場合により顕著となる。ほかにも、水性分散染料等も再溶解性が悪い場合がある。
【0054】
流動性が変化するインク(例えば、水系である。)の流動性がなくなると問題になりやすい。具体的には、「1:流動性がなくなりやすい(増粘しやすい、又は、乾燥しやすいも同義である。)」、「2:流動性が元々低い(粘度が高いと同義である。)」、及び、「3:再溶解性が悪い(流動性が一度なくなると元には戻りにくい)」といったことでインクの流動性がなくなる。これらのうち、「3:再溶解性が悪い」が特に問題となる。すなわち、流動性がなくなった後に、水分を加えても再溶解性が悪いと、効果が薄い。
【0055】
図5は、画像形成装置10が吸引キャップ173を洗浄する状態を示す。図5に示すように、吸引キャップ173で洗浄用ヘッド201の洗浄用ノズル202を密閉した状態で、吸引機構205を動作させる。
【0056】
洗浄液が吸引キャップ173内に流れ込むと、吸引キャップ173内に残ったインクが洗い流されて洗浄される。この洗浄では、吸引キャップ173は、洗浄用ノズル202を吸引する。
【0057】
洗浄用ノズル202とインク吐出ノズル211とを一緒に吸引すると、吸引キャップ173内に、インクと洗浄液が流れ込み、吸引キャップ173を洗浄する効率が落ちる場合がある。そこで、吸引キャップ173は、洗浄用ノズル202に絞って吸引することにより、吸引キャップ173内のインクを効率的に洗浄できる。
【0058】
また、インク吐出ノズル211を吸引した後に続けて洗浄用ノズル202を吸引するのが望ましい。吸引キャップ173は、画像形成領域から外れた位置に設置される。そのため、キャリッジ103が吸引キャップ173に対向する位置にある状態では、キャリッジ103の洗浄用ノズル202は、インク吐出ノズル211よりも用紙112から離れた位置になる。
【0059】
吸引キャップ173内に残ったインクは、時間が経過すると大気による乾燥により、固化するため、洗浄が困難になる。したがって、吸引キャップ173でインクを吸引した後に、速やかに吸引キャップ173で洗浄液を吸引すると大きな洗浄が効果を得ることができる。
【0060】
また、インク吐出ノズル211から洗浄用ノズル202を離れた位置に設置すると、記録ヘッド107の吸引動作、吸引キャップ173の洗浄動作、及び、記録動作を一連の動作で行うことができる。具体的には、キャリッジ103の移動方向において、すなわち図4図5図6の順に動作させることができる。このようにして、吸引キャップ173の洗浄において、無駄なキャリッジ103の動きを減らし、画像形成装置10の生産性を向上させることができる。
【0061】
図6は、画像形成装置10が用紙112に対して画像形成を行う状態を示す。具体的には、キャリッジ103は、ガイドロッド101に沿って往復移動する。そして、往復移動をしながら、記録ヘッド107は、インクを吐出して用紙112上に画像を形成する。
【0062】
なお、ハードウェア構成、及び、動作手順は、上記のものに限られない。すなわち、液体吐出装置は、上記以外のハードウェアを備えてもよい。また、液体吐出装置は、上記とは異なる手順、又は、ハードウェアで洗浄を実現してもよい。
【0063】
[吸引部の例]
図7は、吸引部の例を示す図である。具体的には、吸引キャップ173は、開口部301に、記録ヘッド107のノズルが接する。そして、開口部301に記録ヘッド107を当接させ、密閉状態にした上で、吸引機構205が吸引を行う。このように、吸引機構205が吸引を行うと、吸引キャップ173内を負圧にして、記録ヘッド107からインクを吸引できる。吸引されると、インクは、排出口303から排出される。このようにして、記録ヘッド107のメンテナンスが行われる。
【0064】
また、吸引キャップ173上で記録ヘッド107がインクを吐出する「空吐出」によって、吸引キャップ173内にインクが入る場合もある。
【0065】
なお、吸引キャップ173内には、吸収体302が設置されてもよい。吸収体302を設置すると、空吐出によって、インクが飛んでミストとなって、機体を汚す、又は、ノズルに付着して吐出不良を起こすのを防ぐことができる。
【0066】
また、画像形成装置10が待機の状態等では、記録ヘッド107は、キャッピングされる場合がある。この状態において、吸収体302がインク等の水分を含んでいると、ノズルを保湿することができる。
【0067】
[洗浄の例]
図8乃至図11は、洗浄の例を示す図である。以下、図7に示す吸引キャップ173内の状態を模式図で説明する。以下の説明では、黒色の丸で「インク成分304」、及び、白色の丸で「洗浄液成分305」を模式的に示す。
【0068】
図8は、洗浄液の注入例(その1)を示す図である。以下、図8に示すような状態の吸引キャップ173に洗浄液を注入して洗浄を行う場合を例に説明する。したがって、吸引キャップ173内は、洗浄液を用いて洗浄すると、図8図9図10図11の順に変化していく。
【0069】
記録ヘッド107を吸引した後、記録ヘッド107をデキャップする。次に、画像形成装置10は、デキャップ後に「空吸引」を行う。「空吸引」は、吸引キャップ173に記録ヘッド107を当接させない状態で吸引を行う動作である。このような「空吸引」によって、吸引キャップ173からインクを排出する。
【0070】
空吸引を行っても、図8に示すように、吸引キャップ173内に、インク成分304が残る。特に、吸収体302を設置する構成では、吸収体302がインクを吸収するため、吸引キャップ173内に、インク成分304が多く残りやすい。
【0071】
また、インクが再溶解性の低いインクの場合、一度インクが乾燥してしまうと、水分(インクを含む。)が吸引キャップ173内に入っても、乾燥したインクが液状にならず、蓄積されてしまう場合もある。
【0072】
図9は、洗浄液の注入例(その2)を示す図である。図9は、図8に示す状態の吸引キャップ173に洗浄液を注入して、吸引キャップ173を更に洗浄した状態を示す。吸引キャップ173内は、インク成分304が図8に示す状態より減った状態となる。また、洗浄液を注入すると、吸引キャップ173内は、洗浄液成分305が増加し、洗浄液成分305が吸引キャップ173内を洗浄する。
【0073】
図10は、洗浄液の注入例(その3)を示す図である。図10は、図9に示す状態の吸引キャップ173に洗浄液を注入して、吸引キャップ173を更に洗浄した状態を示す。
【0074】
図11は、洗浄液の注入例(その4)を示す図である。図11は、図10に示す状態の吸引キャップ173に洗浄液を注入して、吸引キャップ173を更に洗浄した状態を示す。
【0075】
以上のように、吸引キャップ173を洗浄すると、吸引キャップ173内において、インク成分304が希釈、又は、排出されるため、減っていく。
【0076】
インク成分304は、乾燥する前の状態、すなわち、インク成分304の水分が蒸発する前に洗浄すると、排出されやすい。したがって、洗浄は、吸引部が吸引を行ってから、所定時間(以下、吸引を行ってから洗浄を行うまでの時間を「第1時間」という。)内に行う。第1時間は、事前に設定される時間である。また、第1時間以内に行う洗浄を「第1洗浄」という。
【0077】
すなわち、第1洗浄は、吸引(空吸引を含む。)が行われてから可及的速やかに行われるのが望ましい。したがって、第1時間は、装置の仕様等に基づいて、第1洗浄が実行可能なできるだけ短い時間が設定されるのが望ましい。また、第1時間は、温度、及び、湿度を考慮して設定されるのが望ましい。具体的には、第1時間は、数分程度に設定される。
【0078】
図12は、インクが残る例を示す図である。第1洗浄を行っても、図12に示すように、インク成分304が完全に排出されずに吸引キャップ173内に残る場合がある。このように、吸引キャップ173内にインク成分304が残った状態で乾燥が進むと、インク成分304が吸引キャップ173内に固着する。
【0079】
特に、画像形成を行う等の状態では、デキャップの状態であるため、乾燥が進みやすい。また、高温、又は、低湿な温度湿度条件であるほど蒸発速度が速いため、乾燥が進む。
【0080】
そこで、画像形成装置10は、第1洗浄とは別に洗浄(以下「第2洗浄」という。)を行う。第2洗浄は、所定時間(以下、第2洗浄を行う周期を「第2時間」という。)ごとに、定期的に実行する洗浄である。
【0081】
図13は、洗浄頻度の設定例を示す図である。例えば、第2洗浄は、図13に示す洗浄頻度を決定するテーブル(以下単に「テーブル」という。)で定まる重み係数に応じて実行される。
【0082】
テーブルは、横軸を「湿度h」とし、かつ、縦軸を「温度t」とする。したがって、温度計、及び、湿度計等のセンサで温度湿度条件が取得されると、テーブルによって重み係数が定まる。テーブルに入力される重み係数は事前に設定される。
【0083】
重み係数は、第2時間の長さに対応する。したがって、重み係数が大きい値であるほど、第2時間は短く設定される。そして、第2時間が短く設定されると、第2洗浄は、頻繁に実行される。
【0084】
重み係数は、温度が高くなるほど高い値となるように設定される。例えば、「湿度hが10%未満」の湿度において、「温度tが10℃未満」であると、重み係数は「0.25」である。一方で、「湿度hが10%未満」の湿度であって、「温度tが40℃以上、かつ、45℃未満」であると、重み係数は「1.5」である。このように、同じ湿度の条件であっても、温度が高い条件であれば、重み係数は大きな値となる。そのため、高温ほど、第2時間が短く決定され、第2洗浄が高頻度で実行される。
【0085】
重み係数は、湿度が低くなるほど高い値となるように設定される。例えば、「温度tが30℃以上、かつ、35℃未満」の温度において、「湿度hが10%未満」であると、重み係数は「1」である。一方で、「温度tが30℃以上、かつ、35℃未満」であって、「湿度hが90%以上」であると、重み係数は「0.25」である。このように、同じ温度の条件であっても、湿度が低い条件であれば、重み係数は大きな値となる。そのため、低湿ほど、第2時間が短く決定され、第2洗浄が高頻度で実行される。
【0086】
また、重み係数を時間ごとに加算していき、加算した値が閾値に達した場合に第2洗浄を実行するようにしてもよい。例えば、デキャップ状態において、1分ごとに、温度、及び、湿度が取得される。この取得される温度、及び、湿度によって、重み係数が定まる。
【0087】
例えば、閾値を「100」に事前に設定する。そして、「温度tが37℃」、かつ、「湿度hが25%」であると、重み係数は「1」と定まる。したがって、この条件、かつ、設定では、デキャップ状態が「100分」続くと、第2洗浄が実行される。
【0088】
同様に、「温度tが27℃」、かつ、「湿度hが25%」であると、重み係数は「0.5」と定まる。したがって、この条件、かつ、設定では、デキャップ状態が「200分」続くと、第2洗浄が実行される。
【0089】
以上のように、第2時間は、蒸発速度が速い温度湿度条件であるほど短くなるように決定されるのが望ましい。高温、又は、低湿等の蒸発速度が速い温度湿度条件では、インクの乾燥が進みやすい。したがって、蒸発速度が速い温度湿度条件下では、洗浄が高頻度に実行されるのが望ましい。このように、温度湿度条件に基づいて第2洗浄が実行されると、吸引キャップ173を十分に洗浄、及び、保湿できる。
【0090】
なお、重み係数は、図13に示す値、及び、傾向に限られない。すなわち、重み係数は、乾燥時間、デキャップ時間、インクが蓄積される時間、水分の蒸発量、装置、及び、液体の種類等に応じて異なる値が設定されてもよい。インクは、種類によって、再溶解のしやすさ、又は、乾燥のしやすさが異なる場合がある。また、重み係数は、テーブルでなく、数式等に基づいて計算されて定まってもよい。
【0091】
なお、1つの吸引キャップ173が複数のヘッドに対応する場合には、ヘッドごとに洗浄が実行されてもよい。一方で、1つの吸引キャップ173が複数のヘッドに対応する場合には、最後のヘッドが使用された後等に洗浄が実行されてもよい。
【0092】
[全体処理例]
図14は、全体処理例を示す図である。例えば、全体処理は、第1洗浄に関するステップS1401乃至ステップS1402と、第2洗浄に関するステップS1403乃至ステップS1404の処理を並列で実行する処理である。
【0093】
ステップS1401では、画像形成装置10は、吸引を行ったか否かを判断する。次に、吸引を行った場合(ステップS1401でYES)、画像形成装置10は、ステップS1402に進む。一方で、吸引を行っていない場合(ステップS1401でNO)、画像形成装置10は、ステップS1401を繰り返す。
【0094】
ステップS1402では、画像形成装置10は、第1時間以内に第1洗浄を実行する第1洗浄手順を行う。
【0095】
なお、第1時間以内に第1洗浄が実行されるのであれば、画像形成装置10は、他の動作を行ってもよい。例えば、インクの吸引、又は、空吐出等の第1洗浄以外の動作を短時間に連続的に実施する場合がある。具体的には、ヘッドクリーニング動作において、インクの吸引、ヘッドノズル面をワイピング、及び、空吐出を1セットの動作と設定する場合がある。この1セットの動作に第1洗浄を実行する時間を加えて、すべてが第1時間以内に収まるのであれば、画像形成装置10は、1セットの一連の動作を終えてから第1洗浄を行うのが望ましい。
【0096】
一方で、キャップにインクを入れる動作が間欠的であって、洗浄を行うのに第1時間以上の間があく場合には、画像形成装置10は、都度、第1洗浄を実行するのが望ましい。
【0097】
ステップS1403では、画像形成装置10は、温度、及び、湿度に基づき、第2時間を決定する。
【0098】
ステップS1404では、ステップS1403で決定した第2時間ごとに、画像形成装置10は、第2洗浄を実行する第2洗浄手順を行う。
【0099】
例えば、第2洗浄は、デキャップ中、定期的(例えば、1分ごと等と事前に設定する。)に温湿度をチェックして、図13に示す重み係数を加算していく。そして、重み係数のTotal値が閾値を超えたら第2洗浄を実施し、かつ、Total値をリセットする。なお、Total値は、第1洗浄が実行された場合にもリセットされてもよい。
【0100】
ステップS1404は、ステップS1403で決定した第2時間ごとに繰り返し実行される。
【0101】
以上のように、ステップS1402により、吸引があると、第1時間以内に第1洗浄が実行される。一方で、第1洗浄とは別に、ステップS1403乃至ステップS1404により、定期的に第2洗浄が実行される。
【0102】
第1洗浄は、吸引によって、吸引キャップ173内にインクが入った直後のタイミングで実行される。つまり、吸引キャップ173内でインクが乾燥し、排出しにくい状態となる前に、第1洗浄は実行する。したがって、第1洗浄は、インクが液状であって、流動性が高い状態において、洗浄液でインクを濯ぎ流すのに実行される。
【0103】
このように、第1洗浄と第2洗浄の両方が実行されると、液体が流れやすいタイミング、かつ、定期的に洗浄が実行されるため、画像形成装置10は、吸引キャップ173を十分に洗浄できる。また、第1洗浄とは別に第2洗浄により、定期的に洗浄液を注入するため、画像形成装置10は、吸引キャップ173内を十分に保湿できる。
【0104】
なお、洗浄は、空吐出等が行われた後に実行されてもよい。また、洗浄は、複数回実行されてもよい。さらに、複数回の洗浄を行う場合には、例えば、1回目の洗浄は、洗浄液を少量にし、2回目以降の洗浄は、洗浄液の多量にしていくのが望ましい。このように、洗浄液を少量から始めて量を増やしていくと、洗浄で汚れた洗浄液が吸引キャップ173の上面に達するのを防ぐことができる。
【0105】
また、洗浄液を注入して洗浄してから、洗浄液を排出するまでの時間(以下「ウエイトタイム」(Wait Time)という。)を設定してもよい。インクの種類によっては、吸引キャップ173から成分が剥がれるのに時間がかかる場合がある。したがって、ウエイトタイムがあると、インクをより排出させることができる。
【0106】
洗浄液を注入して洗浄するのに排出口303を封止して、ある程度、洗浄液を吸引キャップ173内に貯水してから洗浄液が排出されてもよい。すなわち、洗浄液が吸引キャップ173全体内に行き届いた状態まで洗浄液が注入されるのが望ましい。
【0107】
特に、洗浄液を注入する注入口が少ない場合、又は、吸収体302がある構成では、洗浄液が吸引キャップ173全体内に行き届くまで十分に洗浄液が注入されるのが望ましい。
【0108】
[排出口303の封止する変形例]
画像形成装置10は、第1洗浄、又は、第2洗浄で吸引部を洗浄した後、排出経路のいずれかを塞ぐことでキャップ内が洗浄液で満たされた状態にし、キャップ内の乾燥を抑えるのが望ましい。具体的には、排出側を塞ぐのに、例えば、チュービングポンプでチューブを押し潰すことでの封止する封止機構等を更に備えるのが望ましい。ほかにも、排出経路のいずれかに電磁弁等を取り付けて封止する封止機構でもよい。
【0109】
また、封止機構は以下のような機構でもよい。なお、以下のような蓋等と、廃液の封止は併用でもよい。
【0110】
図15は、排出口の封止する例を示す図である。図7と比較すると、図15は、排出口303が封止機構306で封止されている状態である点が異なる。
【0111】
画像形成装置10は、第1洗浄、又は、第2洗浄で吸引部を洗浄した後、洗浄液を排出口303から排出すると、封止機構306で排出口303を封止するのが望ましい。
【0112】
例えば、封止機構は、吸引経路212がチューブである場合には、チューブを押し潰して廃液が流れにくくする構成である。ただし、封止機構は、排出を妨げることができればよい。封止機構306は、例えば、弁、蓋、又は、絞り機構等でもよい。なお、封止機構306は、アクチュエータ、又は、手動で封止、又は、開口する。
【0113】
封止機構306で排出口303を封止すると、吸引キャップ173内に洗浄液を保持できる。そのため、封止機構306で排出口303を封止すると、画像形成装置10は、吸引キャップ173内を保湿することができる。
【0114】
また、封止機構306で排出口303を封止した状態でキャッピングすると、記録ヘッド107のノズル面も保湿することができる。
【0115】
ただし、封止機構306で排出口303を封止するのは、洗浄、及び、排出の後が望ましい。吸引キャップ173内にインク成分304が多い状態で封止すると、インク成分304を多く含む洗浄液が吸引キャップ173の上面に達し、インク成分304が吸引キャップ173の上面付近で乾燥する場合がある。したがって、洗浄、及び、排出の後、すなわち、吸引キャップ173内にインク成分304が少ない状態で、封止機構306が封止すると、吸引キャップ173の上面付近にインク成分304が残るのを防げる。
【0116】
さらに、封止機構306で排出口303を封止した状態で、洗浄液が注入されるのが望ましい。封止機構306で排出口303を封止した状態で洗浄液が注入されると、吸引キャップ173内に洗浄液を保持できる。そのため、封止機構306で排出口303を封止した状態で洗浄液を注入すると、画像形成装置10は、吸引キャップ173内を保湿することができる。
【0117】
なお、封止する前に排出する処理があってもよい。吸引キャップ173内の洗浄液は、残量が乾燥状態等でばらつく。したがって、一度、洗浄液を排出して、残量をリセットしたうえで封止し、洗浄液を注入する。このようにすると、吸引キャップ173内の洗浄液の残量を計測、又は、洗浄液を注入する量を可変にしなくとも、吸引キャップ173内の洗浄液がキャップ内から溢れる等を防ぐことができる。
【0118】
[第3洗浄部の変形例]
電源の操作、スリープ状態への移行、又は、スリープ状態からの復帰等といった状態移行があると、洗浄液を注入して吸引部を洗浄する(以下「第3洗浄」という。)第3洗浄部が更にある構成が望ましい。例えば、第3洗浄部は、ヘッドクリーニングユニット171等で実現する。
【0119】
電源の操作は、例えば、ユーザが電源スイッチを押す操作により、画像形成装置10全体の電源を「ON」又は「OFF」に切り替える操作である。
【0120】
スリープ状態は、画像形成装置10の一部を停止させた状態である。例えば、一定期間、画像形成装置10に対して命令がないと、画像形成装置10は、スリープ状態へ移行する。一方で、スリープ状態にある画像形成装置10に対して、命令が入力されると、画像形成装置10は、スリープ状態から画像形成等の処理が実行可能な状態へ復帰する。
【0121】
なお、状態移行は、スリープ状態、又は、処理が実行可能な状態以外にモードがある場合には、スリープ状態、又は、処理が実行可能な状態から他のモードへ移行が含まれてもよい。
【0122】
画像形成装置10は、キャッピングをしてから状態移行をするのが望ましい。しかし、キャッピングをしても、水分の蒸発は生じる場合が多い。したがって、状態移行をする際に、画像形成装置10は、第3洗浄を行う。
【0123】
このように、状態移行の際に洗浄が実行されると、吸引キャップ173内にインク成分304が残り、乾燥するのを防ぐことができる。
【0124】
なお、第3洗浄が実行された場合も、洗浄が実行された後、封止機構306で排出口303を封止、及び、封止機構306で排出口303を封止した後に洗浄液を注入すると、画像形成装置10は、吸引キャップ173内を保湿することができる。
【0125】
[注入経路の変形例]
洗浄液は、開口部301以外から注入されてもよい。例えば、吸引キャップ173には、洗浄液を注入するための経路(以下単に「注入経路」という。)が形成されてもよい。このように、注入経路がある構成では、キャッピング、又は、デキャップの状態にかかわらず、吸引キャップ173に洗浄液を注入できる。また、注入経路は複数あると、洗浄液が偏って注入されるのを分散できる。
【0126】
[キャップ、及び、デキャップについて]
「キャッピング」とは、吸引キャップ173の上部(図7における開口部301である。)を塞いで吸引キャップ173を密閉状態にする処理である。例えば、キャッピングは、記録ヘッド107を開口部301に当接させるように、記録ヘッド107を移動させる処理をいう。キャップ状態では、記録ヘッド107のノズル面が開口部301に当接するため、記録ヘッド107のノズル面が保湿、及び、保護される。ただし、キャッピングは、記録ヘッド107以外の物体で塞ぐのでもよい。
【0127】
「デキャッピング」とは、吸引キャップ173の上部を開放した状態にする処理である。デキャップ状態は、開口部301が開放されているため、水分の蒸発が生じやすい。
【0128】
[その他の実施形態]
画像形成装置10は、例えば、商業用印刷等において印刷を行う。ただし、画像形成装置10は、商業用印刷以外に用いられてもよい。例えば、画像形成装置10は、コピー機、MFP、又は、プリンタ等でもよい。
【0129】
本願において、液体は、ヘッドから吐出可能な粘度、又は、表面張力であればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において加熱、又は、冷却により、粘度が30mPa・s以下となるものが好ましい。
【0130】
より具体的には、例えば、水、有機溶媒等の溶媒、染料、若しくは、顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、若しくは、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸、たんぱく質、若しくは、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料等を含む溶液、懸濁液、又は、エマルジョン等である。これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子、若しくは、発光素子の構成要素、若しくは、電子回路レジストパターンの形成用液、又は、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0131】
ヘッドは、液体を吐出するエネルギー発生源として、圧電アクチュエータ(例えば、積層型圧電素子、及び、薄膜型圧電素子等である。)、発熱抵抗体等の電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極を有する静電アクチュエータ等を備える。
【0132】
また、「液体吐出装置」には、液体が付着可能な物体に対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を気中、又は、液中に向けて吐出する装置も含まれる。この「液体吐出装置」は、液体が付着可能な物体の給送、搬送、若しくは、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、又は、後処理装置等が含まれてもよい。
【0133】
例えば、「液体吐出装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置は、立体造形物(「3次元造形物」ともいう。)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(「3次元造形装置」ともいう。)でもよい。
【0134】
また、「液体吐出装置」は、吐出された液体によって文字、又は、図形等といった画像が可視化されるものに限定されない。例えば、「液体吐出装置」は、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、又は、3次元像を造形してもよい。
【0135】
上記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能な媒体であって、付着して固着するもの、又は、付着して浸透するもの等を意味する。例えば、媒体は、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、若しくは、布等の被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、又は、検査用セル等であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべての物体が含まれる。
【0136】
また、上記「液体が付着可能なもの」の材質は、例えば、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、又は、セラミックス等の液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0137】
本発明に係る液体吐出方法は、上記に示す以外の処理が含まれてもよい。また、液体吐出方法は、一部の処理を外部装置による処理又は操作等で実行される方法を含む。
【0138】
上記の液体吐出方法は、上記に例示する処理、又は、上記に示す処理と等価な処理を実行するプログラム(ファームウェア、及び、プログラムに準ずるものを含む。以下単に「プログラム」という。)で実現されてもよい。
【0139】
すなわち、上記の液体吐出方法は、液体吐出装置に対して指令を行って所定の結果が得られるように、プログラミング言語等で記載されたプログラム等で実現されてもよい。なお、プログラムは、処理の一部をIC(集積回路、Integrated Circuit)等のハードウェア等で実行する構成であってもよい。
【0140】
制御プログラムは、液体吐出装置が有する演算装置、制御装置、及び、記憶装置等を協働させて上記に示す処理等を液体吐出装置に実行させる。すなわち、制御プログラムは、主記憶装置等にロードされて、演算装置に命令を発して演算を行わせて液体吐出装置を動作させる。
【0141】
また、制御プログラムは、コンピュータが読み込み可能な記録媒体、又は、ネットワーク等の電気通信回線を介して提供されてもよい。
【0142】
本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
【0143】
<1>ヘッドを備え、前記ヘッドが吐出する液体によって所定処理を行う液体吐出装置であって、
前記ヘッドを吸引する吸引部と、
前記吸引部が吸引してから第1時間以内に、洗浄液を注入して前記吸引部を洗浄する第1洗浄部と、
温度、及び、湿度に基づいて設定される第2時間ごとに、前記吸引部に前記洗浄液を注入して前記吸引部を洗浄する第2洗浄部と
を備える液体吐出装置である。
【0144】
<2>前記第2洗浄部は、
前記温度、及び、前記湿度に基づき、前記液体の蒸発速度が速い温度湿度条件であるほど前記第2時間を短く決定する
上記<1>に記載の液体吐出装置である。
【0145】
<3>前記第1洗浄部が前記吸引部を洗浄した後、前記洗浄液を排出口から排出すると、前記排出口を封止する
上記<1>又は<2>に記載の液体吐出装置である。
【0146】
<4>前記排出口を封止した後、前記吸引部に前記洗浄液を注入する
上記<3>に記載の液体吐出装置である。
【0147】
<5>前記第2洗浄部が前記吸引部を洗浄した後、前記洗浄液を排出口から排出すると、前記排出口を封止する
上記<1>乃至<4>のいずれかに記載の液体吐出装置である。
【0148】
<6>前記排出口を封止した後、前記吸引部に前記洗浄液を注入する
上記<5>に記載の液体吐出装置である。
【0149】
<7>電源の操作、スリープ状態への移行、又は、前記スリープ状態からの復帰を含む状態移行があると、前記洗浄液を注入して前記吸引部を洗浄する第3洗浄部を更に備える
上記<1>乃至<6>のいずれかに記載の液体吐出装置である。
【0150】
<8>前記液体は、インクであり、
前記ヘッドは、前記インクを記録媒体に吐出し、
前記所定処理は、前記記録媒体に画像を形成する処理であり、
前記吸引部は、前記ヘッドをキャップする吸引キャップであり、
前記第1洗浄部は、前記吸引部が吸引を行うと前記第1洗浄を実行し、
前記第2洗浄部は、前記温度、及び、前記湿度に応じてテーブルで定まる重み係数に応じて決定される前記第2時間に基づき、定期的に前記第2洗浄を実行する
上記<1>乃至<7>のいずれかに記載の液体吐出装置である。
【0151】
なお、本発明は、上記に例示する各実施形態に限定されない。したがって、本発明は、技術的な要旨を逸脱しない範囲で、構成要素の追加、又は、変形が可能である。ゆえに、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項のすべてが本発明の対象となる。なお、上記に例示する実施形態は、実施において好適な具体例である。そして、当業者であれば、開示した内容から様々な変形例を実現で可能であって、このような変形例は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0152】
10 :画像形成装置
107 :記録ヘッド
171 :ヘッドクリーニングユニット
173 :吸引キャップ
205 :吸引機構
206 :吸収体
211 :インク吐出ノズル
212 :吸引経路
301 :開口部
302 :吸収体
303 :排出口
304 :インク成分
305 :洗浄液成分
306 :封止機構
h :湿度
t :温度
【先行技術文献】
【特許文献】
【0153】
【特許文献1】特開2007‐296779号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15