(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176326
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】親水性組成物、親水膜、及び親水膜付き物品
(51)【国際特許分類】
C09D 171/00 20060101AFI20241212BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20241212BHJP
C09D 9/04 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
C09D171/00
C09D7/61
C09D9/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094786
(22)【出願日】2023-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】吉川 知里
(72)【発明者】
【氏名】小竹 智彦
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038DF001
4J038GA03
4J038HA216
4J038HA446
4J038KA09
4J038KA20
4J038LA06
4J038MA08
4J038NA06
4J038PA18
4J038PB06
4J038PC03
4J038PC08
(57)【要約】
【課題】所望の部材に親水性を付与することができ、耐熱性にも優れる親水性組成物を提供すること。
【解決手段】親水性組成物は、無機粒子と、表面調整剤と、を含有し、表面調整剤が、水酸基を有する化合物を含み、化合物のHLB値が、12以上19以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機粒子と、表面調整剤と、を含有し、
前記表面調整剤が、水酸基を有する化合物を含み、
前記化合物のHLB値が、12以上19以下である、親水性組成物。
【請求項2】
前記化合物が、ポリグリセリン脂肪酸エステル化合物である、請求項1に記載の親水性組成物。
【請求項3】
前記ポリグリセリン脂肪酸エステル化合物が、下記一般式(1)で表される化合物である、請求項2に記載の親水性組成物。
【化1】
[式(1)中、aは1以上の整数を表し、R
1は炭素数10以上の炭化水素基を表す。]
【請求項4】
前記化合物が、アセチレングリコール化合物である、請求項1に記載の親水性組成物。
【請求項5】
前記アセチレングリコール化合物が、下記一般式(2)で表される化合物である、請求項4に記載の親水性組成物。
【化2】
[式(2)中、m、nはそれぞれ独立に0以上の整数であり、m+nは1以上であり、R
2、R
3、R
4、及びR
5はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1以上6以下のアルキル基を示し、L
1、L
2はそれぞれ独立に、エチレン基又はプロピレン基を示す。]
【請求項6】
無機粒子と、表面調整剤と、を含有し、
前記表面調整剤が、水酸基を有する化合物を含み、
前記化合物のHLB値が、12以上19以下である、親水膜。
【請求項7】
前記化合物が、ポリグリセリン脂肪酸エステル化合物である、請求項6に記載の親水膜。
【請求項8】
前記ポリグリセリン脂肪酸エステル化合物が、下記一般式(1)で表される化合物である、請求項7に記載の親水膜。
【化3】
[式(1)中、aは1以上の整数を表し、R
1は炭素数10以上の炭化水素基を表す。]
【請求項9】
前記化合物が、アセチレングリコール化合物である、請求項6に記載の親水膜。
【請求項10】
前記アセチレングリコール化合物が、下記一般式(2)で表される化合物である、請求項9に記載の親水膜。
【化4】
[式(2)中、m、nはそれぞれ独立に0以上の整数であり、m+nは1以上であり、R
2、R
3、R
4、及びR
5はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1以上6以下のアルキル基を示し、L
1、L
2はそれぞれ独立に、エチレン基又はプロピレン基を示す。]
【請求項11】
請求項6~10のいずれか一項に記載の親水膜を備える、親水膜付き物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、親水性組成物、親水膜、及び親水膜付き物品に関する。
【背景技術】
【0002】
部材を親水化することで種々の有用な効果を得ることができる。例えば、ガラス、レンズ、鏡等の表面が親水化されると、付着した水滴が表面に拡がり均一な水膜を形成するようになり、曇りにくくなる。
【0003】
部材を親水化する技術としては、部材上に親水性組成物を塗工して親水膜を設ける方法が提案されている(例えば、下記特許文献1など)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フロントガラス、建物用ガラス、センサーレンズ、ヘッドランプ、ソーラーパネル、電線、屋外テント等に使用されるガラス、ポリカーボネート、金属、繊維等の部材は、高温環境下に長期間晒されることがある。そのため、これらの部材に形成される親水膜は、熱によって親水性が低下しにくい耐熱性を有していることが求められている。特に、フロントガラスは表面温度が100℃になる場合があり、ヘッドランプの内部はヘッドライトの電球からの熱により100℃程度になる場合があることから、親水膜に対する耐熱性試験では130℃といった高温の条件で従来よりも長期にわたって親水性を所定の水準に維持する必要がある。
【0006】
そこで、本開示は、所望の部材に親水性を付与することができ、耐熱性にも優れる親水性組成物を提供することを目的とする。また、本開示は、親水膜及び親水膜付き物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示は、以下の親水性組成物、親水膜、及び親水膜付き物品を提供する。
【0008】
[1] 無機粒子と、表面調整剤と、を含有し、前記表面調整剤が、水酸基を有する化合物を含み、前記化合物のHLB値が、12以上19以下である、親水性組成物。
[2] 前記化合物が、ポリグリセリン脂肪酸エステル化合物である、[1]に記載の親水性組成物。
[3] 前記ポリグリセリン脂肪酸エステル化合物が、下記一般式(1)で表される化合物である、[2]に記載の親水性組成物。
【化1】
[式(1)中、aは1以上の整数を表し、R
1は炭素数10以上の炭化水素基を表す。]
[4] 前記化合物が、アセチレングリコール化合物である、[1]に記載の親水性組成物。
[5] 前記アセチレングリコール化合物が、下記一般式(2)で表される化合物である、[4]に記載の親水性組成物。
【化2】
[式(2)中、m、nはそれぞれ独立に0以上の整数であり、m+nは1以上であり、R
2、R
3、R
4、及びR
5はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1以上6以下のアルキル基を示し、L
1、L
2はそれぞれ独立に、エチレン基又はプロピレン基を示す。]
[6] 無機粒子と、表面調整剤と、を含有し、前記表面調整剤が、水酸基を有する化合物を含み、前記化合物のHLB値が、12以上19以下である、親水膜。
[7] 前記化合物が、ポリグリセリン脂肪酸エステル化合物である、[6]に記載の親水膜。
[8] 前記ポリグリセリン脂肪酸エステル化合物が、下記一般式(1)で表される化合物である、[7]に記載の親水膜。
【化3】
[式(1)中、aは1以上の整数を表し、R
1は炭素数10以上の炭化水素基を表す。]
[9] 前記化合物が、アセチレングリコール化合物である、[6]に記載の親水膜。
[10] 前記アセチレングリコール化合物が、下記一般式(2)で表される化合物である、[9]に記載の親水膜。
【化4】
[式(2)中、m、nはそれぞれ独立に0以上の整数であり、m+nは1以上であり、R
2、R
3、R
4、及びR
5はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1以上6以下のアルキル基を示し、L
1、L
2はそれぞれ独立に、エチレン基又はプロピレン基を示す。]
[11] [6]~[10]のいずれかに記載の親水膜を備える、親水膜付き物品。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、所望の部材に親水性を付与することができ、耐熱性にも優れる親水性組成物を提供することができる。また、本開示は、親水膜及び親水膜付き物品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書において「~」を用いて示された数値範囲には、「~」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。また、本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0011】
<親水性組成物>
本実施形態の親水性組成物は、無機粒子と、表面調整剤と、を含有する。
【0012】
(無機粒子)
無機粒子としては、シリカ粒子、アルミナ粒子、ジルコニア粒子、チタニア粒子、酸化亜鉛粒子、セリア粒子等の金属酸化物微粒子が挙げられる。これらは、一種を単独で、又は二種以上を組み合わせて用いてもよい。無機粒子は、アルミナゾル、コロイダルシリカ、シリカゾル、ジルコニアゾル、チタニアゾル、酸化亜鉛ゾル、セリアゾル等のコロイド粒子を用いてもよい。また、コロイド粒子は、酸性ゾル、アルカリ性ゾル、又は中性域で安定化したゾルであってもよい。
【0013】
無機粒子は、水酸基、アミノ基、スルホ基、アルミノール基等の極性基を表面に有していてもよい。
【0014】
無機粒子は、粒子径は、動的光散乱法にて測定した平均粒子径が1~200nmであってもよく、2~50nmであってもよい。
【0015】
無機粒子の含有量は、組成物の全量を基準として、0.01~5.0質量%であってもよく、0.1~2.0質量%であってもよく、0.3~1.5質量%であってもよく、0.5~1.0質量%であってもよい。
【0016】
本実施形態の親水性組成物は、透明性、親水性、及び汎用性の観点から、シリカ粒子を含むことができる。
【0017】
シリカ粒子の粒子径は、動的光散乱法にて測定した平均粒子径が3~700nmであってもよく、5~500nmであってもよい。シリカ粒子の平均粒子径は、透明性の観点又は干渉縞が発生しにくくなる観点から、20nm以下であってもよく、10nm以下であってもよい。
【0018】
シリカ粒子の形状は特に制限されず、数珠状(パールネックレス状)、鎖状、球状、繭型、会合型、金平糖型が挙げられる。これらのうち、水分が付着したときに良好な(均一な)水膜を形成する観点から、球状、数珠状(パールネックレス状)及び鎖状が好ましい。水膜の均一性については、例えば、WO2022/107823に記載の方法によって評価することができる。
【0019】
シリカ粒子は二酸化ケイ素以外の金属酸化物を含有していても良い。金属酸化物の種類は特に限定されないが、例えば、アルミナが挙げられる。このようなシリカ粒子として、シリカゾルの安定化に充分な量のアルミノシリケイトがコロイダルシリカ表面のシラノール基と重縮合反応して形成されたコロイダルシリカが挙げられる。シリカ粒子は、水分が付着したときに良好な(均一な)水膜を形成することができ、なおかつ表面の硬さを確保しやすくなる観点から、アルミナアルコキシドで修飾されていてもよい。
【0020】
シリカ粒子は、コロイダルシリカであってもよい。コロイダルシリカとしては、平均粒子径(二次粒径)が1~1000nmであるものを用いることができる。平均粒子径が1nm以上であることにより、親水性組成物中で粒子が凝集し難くなるため、部材に粒子が密着し易くなる。一方、平均粒子径が1000nm以下であることにより、粒子の比表面積が増え、部材に粒子が密着し易くなる。この観点から、コロイダルシリカの平均粒子径は、3~700nmであってよく、5~500nmであってよい。
【0021】
平均粒子径は、例えば、下記の手順により測定できる。まず、コロイダルシリカ分散液を100μL(Lはリットルを表す。以下同じ。)程度量り取り、コロイダルシリカの含有量が0.05質量%前後(測定時透過率(H)が60~70%である含有量)になるようにイオン交換水で希釈して希釈液を得る。そして、希釈液をレーザ回折式粒度分布計(株式会社堀場製作所製、商品名:LA-920、屈折率:1.93、光源:He-Neレーザ、吸収0)の試料槽に投入し、平均粒子径を測ることができる。
【0022】
コロイダルシリカの1g当りのシラノール基数は、10×1018~1000×1018個/gであってよく、50×1018~800×1018個/gであってよく、又は100×1018~700×1018個/gであってよい。コロイダルシリカの1g当りのシラノール基数が10×1018個/g以上であることにより、部材の官能基との化学結合点が増加するため、部材との密着性が向上し易くなる。一方、シラノール基数が1000×1018個/g以下であることにより、防曇液調製時におけるコロイダルシリカ同士の急な重縮合反応を抑制でき、部材の官能基との化学結合点が低減することを抑制できる。
【0023】
本実施形態においてシラノール基数(ρ[個/g])は次のような滴定により測定及び算出することができる。
【0024】
[1]まず、質量を測定済みの容器(X[g])に、コロイダルシリカを15g量りとり、適量(100ml以下)の水に分散させる。コロイダルシリカが水等の媒体に分散された分散液の状態の場合は、コロイダルシリカの量が15gとなるように、容器に分散液を量りとる。
【0025】
[2]次に、0.1mol/L塩酸でpHを3.0~3.5に調整し、このときの質量(Y[g])を測定し、液体の総質量(Y-X[g])を求める。
【0026】
[3]上記[2]で得られた質量の1/10にあたる量((Y-X)/10[g])の液体を、別の容器に量りとる。この段階で液体に含まれるコロイダルシリカ(A[g])は1.5gである。
【0027】
[4]そこに、塩化ナトリウムを30g添加し、さらに超純水を添加して全量を150gにする。これを、0.1mol/L水酸化ナトリウム溶液でpHを4.0に調整し、滴定用サンプルとする。
【0028】
[5]この滴定用サンプルに0.1mol/L水酸化ナトリウムをpHが9.0になるまで滴下し、pHが4.0から9.0になるまでに要した水酸化ナトリウム量(B[mol])を求める。
【0029】
[6]下記式(A)よりコロイダルシリカの持つシラノール基数を算出する。
ρ=B・NA/A・SBET ・・・(A)
(式(A)中、NA[個/mol]はアボガドロ数を示す。SBET[m2/g]はコロイダルシリカのBET比表面積を示す。)
【0030】
上述のBET比表面積SBETは、BET比表面積法に従って求める。具体的な測定方法としては、例えば、コロイダルシリカを乾燥機に入れ、150℃で乾燥させた後、測定セルに入れて120℃で60分間真空脱気した試料について、BET比表面積測定装置を用い、窒素ガスを吸着させる1点法又は多点法により求めることができる。より具体的には、まず150℃で乾燥したコロイダルシリカを、乳鉢(磁製、100ml)で細かく砕いて測定用試料として測定セルに入れ、これをユアサアイオニクス株式会社製BET比表面積測定装置(製品名NOVE-1200)を用いて、BET比表面積SBETを測定する。
【0031】
コロイダルシリカの会合度は、例えば、5.0以下であってもよく、4.0以下であってもよく、3.0以下であってもよく、2.5以下であってもよく、2.0以下であってもよい。会合度がこのような範囲であると、コロイダルシリカの比表面積が適度に大きくなることにより、部材との密着性が向上する。また、このような会合度を有するコロイダルシリカは入手が容易である。会合度は、1.0以上であってもよく、1.3以上であってもよく、1.5以上であってもよい。会合度がこのような範囲であると、コロイダルシリカの比表面積が適度に小さくなることにより、親水性組成物調製時のコロイダルシリカの凝集が抑制できる。
【0032】
ここで、本明細書において、コロイダルシリカ分散液におけるコロイダルシリカの会合度は、分散液中のコロイダルシリカの二次粒子の平均粒子径と、コロイダルシリカの二軸平均一次粒子径との比(二次粒子の平均粒子径/二軸平均一次粒子径)をいう。平均一次粒子径は、例えば、公知の透過型電子顕微鏡(例えば、株式会社日立ハイテク製の商品名:H-7100FA)により測定することができる。例えば、電子顕微鏡を用いて粒子の画像を撮影し、所定数の任意の粒子について二軸平均一次粒子径を算出し、これらの平均値を求める。コロイダルシリカである場合、一般に粒径がそろっているため、測定する粒子数は、例えば20粒子程度でよい。なお、二次粒子の平均粒子径は上述した方法により求められる値をいう。
【0033】
コロイダルシリカの含有量は、組成物の全量を基準として、0.01~5.0質量%とすることができる。含有量が0.01質量%以上であることにより、充分な防曇性が発現し易くなり、一方5.0質量%以下であることにより、粒子間のシラノール基の重縮合反応が抑制され、防曇性(親水性)が維持し易くなる。この観点から、コロイダルシリカの含有量は、0.1~2.0質量%であってよく、0.3~1.5質量%であってよく、0.5~1.0質量%であってよい。
【0034】
コロイダルシリカは、コロイダルシリカ分散液として入手可能である。分散媒としては、水、イソプロピルアルコール、1-メトキシ-2-プロピルアルコール、エチルアルコール、メチルアルコール、エチレングリコール、エチレングリコール-n-プロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサン、酢酸エチル等が挙げられる。分散媒は、水、アルコール類、又は水及びアルコール類の混合液であってよい。これらのうち、汎用性の観点から水が好ましい。
【0035】
コロイダルシリカ分散液のpHは2~10であってよい。pHが6~8であることにより、コロイダルシリカの表面にアルコキシ基が存在する場合、その加水分解反応速度が遅くなる。これにより、アルコキシ基が残存したコロイダルシリカを塗膜にし易い。この場合、吸湿によるシラノール基の重縮合反応が抑制できるため、膜表面の防曇性(親水性)が維持し易い。pHが2~5又は8~10であることにより、コロイダルシリカの表面にアルコキシ基が存在する場合、その加水分解反応速度が速くなる。これにより、シラノール基をより多く生成することができ、部材への密着性が向上し易い。
【0036】
コロイダルシリカ分散液のpHは、pHメーター(例えば、電気化学計器株式会社製、型番:PHL-40)で測定できる。pHの測定値としては、標準緩衝液(フタル酸塩pH緩衝液 pH:4.01(25℃)、中性りん酸塩pH緩衝液 pH:6.86(25℃)、ホウ酸塩pH緩衝液 pH:9.18(25℃))を用いて、3点校正した後、電極を分散液に入れて、2分以上経過して安定した後の値を採用する。
【0037】
分散液中のコロイダルシリカのゼータ電位は-50mV~40mVであることが好ましい。ゼータ電位が-10mV~10mVであることにより、塗工した際に粒子同士の反発が小さくなり、部材に密に密着するため、部材の親水性が向上し易い。ゼータ電位が-50mV~-11mV、或いは11mV~40mVであることにより、分散液中で粒子同士が反発し易くなり、分散性が高くなるため、粒子の凝集を抑制し易い。
【0038】
コロイダルシリカのゼータ電位は、ゼータ電位測定器(例えば、ベックマン・コールター社製、型番:Coulter Delsa 440)で測定できる。ゼータ電位の測定方法としては、まず、シリカ粒子濃度が試験液の全量基準で5ppmになるようにコロイダルシリカ分散液に純水を加え、超音波処理によりシリカ粒子を分散させた試験液を準備する。次いで、両側に白金製電極を取り付けてある測定セルに試験液を入れ、両電極に10Vの電圧を印加すると、電荷を持ったシリカ粒子はその電荷と反対の極を持つ電極側に移動する。そして、この電荷を持ったシリカ粒子の移動速度を求める。
【0039】
本実施形態の親水性組成物がシリカ粒子を含み、液のpHが弱酸性~中性である場合、シリカ粒子(例えば、上記コロイダルシリカ)のゼータ電位はマイナスであってもよい。
【0040】
コロイダルシリカの原料としては、水ガラスでもアルコキシシランでも良く、特に限定されない。
【0041】
原料が水ガラスの場合の作製工程は、特に限定されないが、例えば、珪酸ナトリウムを水熱合成法で加熱し濃縮して粒子を作製する。例えば、酸性pHで1次粒子の成長を抑えた状態で3次元網目構造の凝集体を作製してこれを解砕しても良いし、アルカリ性pHで1次粒子の成長を速くしてブロック状の凝集体を作製してこれを解砕しても良い。
【0042】
原料がアルコキシシランの場合の作製工程は、特に限定されないが、例えば、アルコキシシランをゾルゲル合成して粒子を作製する。例えば、アルコキシシランの加水分解反応を促進した後に、重縮合反応を促進してゲルを得た後、熱処理で内部溶媒を取り除いてもよい。或いはゲルを得た後、所定の溶剤に溶媒置換をしても良い。
【0043】
コロイダルシリカ分散液としては市販品を用いてよく、例えば、ST-PS-SO(日産化学株式会社製)、ST-PS-MO(日産化学株式会社製)、ST-PS-M(日産化学株式会社製)、ST-PS-S(日産化学株式会社製)、ST-UP(日産化学株式会社製)、ST-OUP(日産化学株式会社製)、IPA-ST-UP(日産化学株式会社製)、MA-ST-UP(日産化学株式会社製)、PGM-ST-UP(日産化学株式会社製)、MEK-ST-UP(日産化学株式会社製)、IPA-ST(日産化学株式会社製)、IPA-ST-L(日産化学株式会社製)、IPA-ST-ZL(日産化学株式会社製)、MA-ST-M(日産化学株式会社製)、MA-ST-L(日産化学株式会社製)、MA-ST-ZL(日産化学株式会社製)、EG-ST(日産化学株式会社製)、EG-ST-XL-30(日産化学株式会社製)、NPC-ST-30(日産化学株式会社製)、PGM-ST(日産化学株式会社製)、DMAC-ST(日産化学株式会社製)、DMAC-ST-ZL(日産化学株式会社製)、NMP-ST(日産化学株式会社製)、TOL-ST(日産化学株式会社製)、MEK-ST-40(日産化学株式会社製)、MEK-ST-L(日産化学株式会社製)、MEK-ST-ZL(日産化学株式会社製)、MIBK-ST(日産化学株式会社製)、MIBK-ST-L(日産化学株式会社製)、CHO-ST-M(日産化学株式会社製)、EAC-ST(日産化学株式会社製)、PMA-ST(日産化学株式会社製)、MEK-EC-2130Y(日産化学株式会社製)、MEK-EC-2430Z(日産化学株式会社製)、MEK-EC-2140Z(日産化学株式会社製)、MEK-AC-4130Z(日産化学株式会社製)、MEK-AC-5140Z(日産化学株式会社製)、PGM-AC-2140Y(日産化学株式会社製)、PGM-AC-4130Y(日産化学株式会社製)、MIBK-AC-2140Z(日産化学株式会社製)、MIBK-SD-L(日産化学株式会社製)、ST-XS(日産化学株式会社製)、ST-OXS(日産化学株式会社製)、ST-NXS(日産化学株式会社製)、ST-CXS(日産化学株式会社製)、ST-S(日産化学株式会社製)、ST-OS(日産化学株式会社製)、ST-NS(日産化学株式会社製)、ST-30(日産化学株式会社製)、ST-O(日産化学株式会社製)、ST-N(日産化学株式会社製)、ST-C(日産化学株式会社製)、ST-AK(日産化学株式会社製)、ST-50-T(日産化学株式会社製)、ST-O-40(日産化学株式会社製)、ST-N-40(日産化学株式会社製)、ST-CM(日産化学株式会社製)、ST-30L(日産化学株式会社製)、ST-OL(日産化学株式会社製)、ST-AK-L(日産化学株式会社製)、ST-YL(日産化学株式会社製)、ST-OYL(日産化学株式会社製)、ST-AK-YL(日産化学株式会社製)、ST-ZL(日産化学株式会社製)、MP-1040(日産化学株式会社製)、MP-2040(日産化学株式会社製)、MP-4540M(日産化学株式会社製)、PL-1-IPA(扶桑化学株式会社製)、PL-1-TOL(扶桑化学株式会社製)、PL-2L-PGME(扶桑化学株式会社製)、PL-2L-MEK(扶桑化学株式会社製)、PL-2L(扶桑化学株式会社製)、PL-3(扶桑化学株式会社製)、PL-4(扶桑化学株式会社製)、PL-5(扶桑化学株式会社製)、PL-1H(扶桑化学株式会社製)、PL-3H(扶桑化学株式会社製)、PL-5H(扶桑化学株式会社製)、BS-2L(扶桑化学株式会社製)、BS-3L(扶桑化学株式会社製)、BS-5L(扶桑化学株式会社製)、HL-2L(扶桑化学株式会社製)、HL-3L(扶桑化学株式会社製)、HL-4L(扶桑化学株式会社製)、PL-3-C(扶桑化学株式会社製)、PL-3-D(扶桑化学株式会社製)、TCSOL800(多摩化学工業株式会社製)、SI-40(日揮触媒化成株式会社製)、SI-50(日揮触媒化成株式会社製)、SI-45P(日揮触媒化成株式会社製)、SI-80P(日揮触媒化成株式会社製)、SIK-23(日揮触媒化成株式会社製)、S-30H(日揮触媒化成株式会社製)、SIK-15(日揮触媒化成株式会社製)、SI-550(日揮触媒化成株式会社製)等が挙げられる。
【0044】
シリカ粒子の含有量は、組成物の全量を基準として、0.01~5.0質量%であってもよく、0.1~2.0質量%であってもよく、0.3~1.5質量%であってもよく、0.5~1.0質量%であってもよい。
【0045】
本実施形態の親水性組成物は、透明性、及び耐擦傷性の観点から、アルミナ粒子を含むことができる。
【0046】
アルミナ粒子は、動的光散乱法にて測定した平均粒子径が1~500nmであってもよく、5~100nmであってもよい。アルミナ粒子の平均粒子径は、透明性の観点又は干渉縞が発生しにくくなる観点から、50nm以下であってもよく、20nm以下であってもよい。
【0047】
アルミナ粒子の形状は、粒状、羽毛状、球状、針状、棒状が挙げられる。これらのうち、透明性の観点又は干渉縞が発生しにくくなる観点から、粒状であってもよく、アスペクト比が10以下の粒状であってもよい。ここで、アスペクト比はアルミナ粒子の長径Lを短径Sで除すること(長径L/短径S)により求められる値である。
【0048】
アルミナ粒子は、アルミナ水和物粒子が分散媒に分散したコロイド溶液であるアルミナゾルを用いてもよい。
【0049】
アルミナゾルとしては市販品を用いてよく、例えば、AS-520-A(日産化学株式会社製)、AS-200(日産化学株式会社製)、アルミナゾルF-3000(川研ファインケミカル製)、アルミナゾル-10A(川研ファインケミカル製)、アルミナゾルCSA-110AD(川研ファインケミカル製)、アルミナゾル-10D(川研ファインケミカル製)、アルミナゾル-A2(川研ファインケミカル製)、アルミナゾル-F1000(川研ファインケミカル製)、アルミナゾルCSA-30AD(川研ファインケミカル製)、オルガノアルミナゾル(川研ファインケミカル製)、クリアゾル(川研ファインケミカル製)、AL-7(多木化学社製)、AL-ML15(多木化学社製)、AL-C20(多木化学社製)、AS-L10(多木化学社製)、カタロイドシリーズ(特殊品)(日揮触媒化成社製)等が挙げられる。
【0050】
アルミナ粒子の含有量は、組成物の全量を基準として、0.01~5.0質量%であってもよく、0.1~2.0質量%であってもよく、0.3~1.5質量%であってもよく、0.5~1.0質量%であってもよい。
【0051】
(表面調整剤)
表面調整剤は、水酸基を有する化合物を含む。耐熱性に優れた親水膜を形成する観点から、水酸基を有する化合物のHLB値は、12以上19以下である。
【0052】
「HLB(Hydrophilic-Lipophilic Balance)値」とは、化合物の親水性と親油性のバランスを表す値である。HLB値は、1つの化合物中において疎水基の種類、親水基の種類又は共重合比等が異なっている場合であっても、計算によって決定することができる。
【0053】
HLB値の計算方法はいくつか提案されている。例えば、HLB値は、下記式で表されるグリフィン法により算出される。HLB値は、0~20.0の値である。HLB値が0に近いほど親油性が高く、HLB値が20.0に近いほど親水性が高い。
HLB値=20×(親水基部分の総分子量)/(全体の分子量)
【0054】
本実施形態の親水性組成物は、無機粒子と、HLB値が12以上19以下である水酸基を有する化合物とを含むことにより、部材上に耐熱性に優れた親水膜を良好に形成することができる。このような効果が得られる理由について本発明者らは以下のとおり推察する。まず、上記の水酸基を有する化合物及び無機粒子は、互いに相互作用することにより組成物中で充分に均一分散され得ると考えられる。そのため、組成物を膜化したときには、上記の水酸基を有する化合物の凝集が抑制され、無機粒子間に上記の水酸基を有する化合物を充分に介在させることができたと考えられる。また、無機粒子を含んで構成される親水膜中の上記の水酸基を有する化合物は充分に分散していることから、親水膜を加熱した場合であっても上記の水酸基を有する化合物の凝集が生じ難く、加熱による親水性の劣化が起こりにくくなったものと推察される。
【0055】
水酸基を有する化合物のHLB値は、溶解性の観点から、12.5以上、13以上、又は14以上であってもよく、耐水性の観点から、18.5以下、18以下、17以下、16以下、又は15.5以下であってもよい。
【0056】
水酸基を有する化合物は、脂肪酸エステル化合物又はアセチレングリコール化合物であってもよい。
【0057】
脂肪酸エステル化合物としては、ポリグリセリン脂肪酸エステル化合物が挙げられる。ポリグリセリン脂肪酸エステル化合物は、下記一般式(1)で表される化合物であってもよい。
【化5】
式(1)中、aは1以上の整数を表し、R
1は炭素数10以上の炭化水素基を表す。
【0058】
上記式(1)中、R1は、炭素数11以上22以下の炭化水素基であってもよく、炭素数11以上15以下の炭化水素基であってもよい。炭化水素基は、鎖式飽和炭化水素基であってもよい。
【0059】
上記式(1)で表される化合物は、ポリグリセリンと脂肪酸とのエステル化反応により得ることができる。脂肪酸としては、例えば、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸等が挙げられる。ポリグリセリンと脂肪酸とのエステル化反応は、従来公知の手法により可能である。
【0060】
上記式(1)で表される化合物としては市販品を用いてよく、例えば、L-7D(三菱ケミカル株式会社製、商品名、HLB値:17、ポリグリセリンラウリン酸エステル)、M-7D(三菱ケミカル株式会社製、商品名、HLB値:16、ポリグリセリンミリスチン酸エステル)等が挙げられる。
【0061】
アセチレングリコール化合物としては、例えば、アセチレングリコール、アセチレングリコールのアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0062】
アセチレングリコール化合物は、下記一般式(2)で表される化合物であってもよい。
【0063】
【化6】
式(2)中、m、nはそれぞれ独立に0以上の整数であり、m+nは1以上である。R
2、R
3、R
4、及びR
5はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1以上6以下のアルキル基を示す。L
1、L
2はそれぞれ独立に、エチレン基又はプロピレン基を示す。
【0064】
上記式(2)中、mが2以上の場合、複数存在する-O-L1-は互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。nが2以上の場合、複数存在する-O-L2-は互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。-O-L1-又は-O-L2-で表される構造単位はランダムに存在してもよく、ブロックを形成してもよい。なお、m、nは各構造単位の数を示す。
【0065】
上記式(2)中、R2、R3、R4、及びR5はそれぞれ独立に、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、又はブチル基であってもよい。
【0066】
上記式(2)で表される化合物は、下記一般式(3)で表されるアセチレングリコールをアルキレンオキサイド化することで得ることができる。アセチレングリコールのアルキレンオキサイド化は従来公知の手法により可能である。
【0067】
【化7】
式(3)中、R
6、R
7、R
8、R
9はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1以上6以下のアルキル基を示す。
【0068】
上記式(3)で表されるアセチレングリコールとしては、例えば、5,8-ジメチル-6-ドデシン-5,8-ジオール、4,7-ジメチル-5-デシン-4,7-ジオール、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール、2,3,6,7-テトラメチル-4-オクチン-3,6-ジオール、3,6-ジメチル-4-オクチン-3,6-ジオール、3,6-ジエチル-4-オクチン-3,6-ジオール、2,5-ジメチル-3-ヘキシン-2,5-ジオール等が挙げられる。
【0069】
上記式(2)で表される化合物としては市販品を用いてよく、例えば、サーフィノール465(日信化学工業株式会社製、商品名、HLB値:13、アセチレングリコール化合物)等が挙げられる。
【0070】
表面調整剤の耐熱温度は、組成物の耐熱性がより優れる観点から、130℃以上200℃以下であってもよい。なお、耐熱温度は、示差熱熱重量同時測定装置(例えば、TG-DTA6300(株式会社日立ハイテクサイエンス製)を用いて、表面調整剤の重量減少を測定した際に、1%重量減少した温度として定義される。
【0071】
表面調整剤の含有量は、防曇性、耐熱性及び耐擦傷性の観点から、無機粒子100質量部に対して、30~300質量部であってもよく、40~250質量部であってもよく、50~200質量部であってもよい。
【0072】
また、部材への密着性の観点から、表面調整剤の含有量は、組成物の全量を基準として、0.01~3.0質量%であってもよく、0.1~2.0質量%であってもよく、0.3~1.0質量%であってもよい。
【0073】
本実施形態の親水性組成物は、防曇性、耐熱性及び耐擦傷性の観点から、表面調整剤の含有量が、無機粒子(特にはアルミナ粒子)100質量部に対して、1.5~30質量部であってもよく、3.0~20質量部であってもよい。
【0074】
本実施形態の親水性組成物は、分散性及び塗布性の観点から、液状媒体を含有してもよい。液状媒体は、組成物中にて無機粒子の分散、表面調整剤の溶解等を担う媒体である。液状媒体は沸点が185℃より低い媒体であってもよい。液状媒体は塗膜の加熱により揮発し、それにより無機粒子同士が接近し、結合が形成され易くなる。
【0075】
液状媒体としては、例えば、水、有機溶媒、又はこれらの混合溶媒を使用できる。有機溶媒としてはメチルアルコール、エチルアルコール、1-プロパノール、イソプロピルアルコール、1-ブチルアルコール、2-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、ジアセトンアルコール、1-ブトキシ-2-プロパノール、1-ヘキサノール、1-オクタノール、2-オクタノール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール等のアルコール類、ポリエチレングリコール等のグリコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノ-tert-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールn-プロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、シクロヘキサン等の環状炭化水素類、アセトニトリルなどが挙げられる。これらは1種類で用いてもよく、2種類以上混合して用いてもよい。
【0076】
本実施形態の親水性組成物においては、環境対応の観点から、液状媒体が、水、エチルアルコール、1-プロパノール、イソプロピルアルコール、1-ブチルアルコール、2-ブチルアルコール、及びイソブチルアルコールのうちの1種以上であってもよい。
【0077】
本実施形態の親水性組成物は、不揮発分濃度が0.05~10質量%であってもよく、0.1~8.5質量%であってもよく、0.5~7質量%であってもよい。なお、不揮発分濃度とは、組成物を100℃で60分間加熱したときの質量をMa、加熱前の組成物の質量をMbとしたときに、Ma×100/Mbで算出される値を意味する。
【0078】
本実施形態の親水性組成物は、所期の効果を得られる範囲において、必要により、触媒、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、増粘剤、結露防止剤、着雪防止剤、防汚剤等の各種添加剤を含んでよい。
【0079】
触媒としては、酢酸、硝酸、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸パラトルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、フェノールスルホン酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、酒石酸、クエン酸、りんご酸、酢酸、乳酸、コハク酸、安息香酸、アンモニア、尿素、イミダゾール、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、酢酸ナトリウム等が挙げられる。
【0080】
本実施形態の親水性組成物は、非界面活性剤系としてもよい。非界面活性剤系とは、界面活性剤の含有量が、組成物の不揮発分全量を基準として1質量%以下であること又は含有しないことを意味する。界面活性剤は、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、両性界面活性剤等の界面活性剤であってよい。
【0081】
本実施形態の親水性組成物によれば、所望の部材に親水性を付与することができる。例えば、所望の部材上に親水性組成物を塗布し、乾燥することにより、親水膜を形成することができる。また、本実施形態の親水性組成物は、結露防止剤、着雪防止剤、又は防汚剤に適用してもよい。
【0082】
部材としては、ガラス基材、ポリカーボネート基材、アクリル基材等の部材が挙げられる。例えば、ガラス内面、内装アンテナ、ヒーターフィルム、サイドミラー、及びセンサーレンズ等の自動車部材、ディスプレイレンズ、信号機、及び警告灯等の光学部材、商業冷凍庫ドア等の電化製品、ガラス窓、風呂場、及びシャワーミラー等の建築用部材、スポーツバイザー、眼鏡、マスク、食品包装材などが挙げられる。
【0083】
塗布方法は、例えば、スピンコート法、ディップコート法、スプレーコート法、フローコート法、バーコート法及びグラビアコート、バーコート法、ワイピング法が挙げられる。特に、スプレーコート法は、凹凸のある被処理面にも、均一な厚さの親水膜を形成し易い観点、生産性が高く、親水性組成物の使用効率が高い観点から、好ましい。これらの方法は、単独で、又は2種類以上を併用してもよい。なお、親水性組成物を布等に染み込ませて塗布を行ってもよい。
【0084】
乾燥温度は、例えば、5~100℃であってもよく、10~80℃であってもよい。乾燥時間は、例えば、60秒間~5時間とすることができる。
【0085】
<親水膜>
本実施形態の親水膜は、無機粒子と、表面調整剤と、を含有する。無機粒子及び表面調整剤並びにそれらの含有割合については、上述した親水性組成物におけるものと同様であってもよい。また、本実施形態の親水膜は、上述した各種添加剤を含んでいてもよい。
【0086】
本実施形態の親水膜は、上述した本実施形態の親水性組成物を上述した条件で塗布、乾燥することにより形成することができる。
【0087】
親水膜の厚さは、透明性、防曇性、及び耐擦傷性等の観点から、1nm~1000μm、10nm~500μm、又は100nm~2μmとすることができる。親水膜の膜厚は、例えば、非接触式膜厚計Optical NanoGauge C13027(浜松ホトニクス株式会社製)により測定することができる。
【0088】
<親水膜付き物品>
【0089】
本実施形態の親水膜付き物品は、物品と、物品上に設けられた本実施形態の親水膜と、を備える。
【0090】
物品としては、上述した部材が挙げられる。
【実施例0091】
以下、実施例を挙げて本開示についてさらに具体的に説明する。ただし、本開示はこれら実施例に限定されるものではない。
【0092】
<親水性組成物の調製>
(実施例1)
水を分散媒とした、アルミナ水和物のコロイド溶液であるAS-520-A(日産化学株式会社製、商品名、不揮発分濃度20質量%)0.5gと、水19.39gと、を混合し、120分攪拌後、表面調整剤であるサーフィノール465(日信化学工業株式会社製、商品名)0.11gを更に混合し、更に15分間攪拌して、親水性組成物を得た。表1には組成物中の各成分の含有割合(質量部)を示す。なお、表1に示される無機粒子及び表面調整剤の含有割合(質量部)には、溶媒分は含まれない。
【0093】
(実施例2)
サーフィノール465に代えてL-7D(三菱ケミカル株式会社製、商品名)を用い、表1に示す組成(質量部)となるように各成分を混合したこと以外は実施例1と同様にして、親水性組成物を得た。
【0094】
(実施例3)
サーフィノール465に代えてM-7D(三菱ケミカル株式会社製、商品名)を用い、表1に示す組成(質量部)となるように各成分を混合したこと以外は実施例1と同様にして、親水性組成物を得た。
【0095】
(実施例4~6)
攪拌時間を120分から240分に変更し、表1に示す組成(質量部)となるように各成分を混合したこと以外は実施例1と同様にして、親水性組成物を得た。
【0096】
<親水膜付きガラスの作製>
7.6cm×5.2cm×1.3mm厚のガラスをイソプロピルアルコールで洗浄した。各例で得られた組成物をスポイトで採取し、ガラスの端に液を垂らし、ベンコットを用いて(ワイピング法)により塗布した。塗膜を60℃で3分加熱することで、厚さ0.1μmの親水膜を形成し、親水膜付きガラスの供試材を得た。
【0097】
供試材について、以下の評価を実施した。結果を表1に示す。
【0098】
[防曇性]
(呼気試験:初期)
室温が25℃である実験室で、親水膜から5cm離れた位置から息を吹きかけ、曇りの有無を目視で確認した。曇りが発生しない場合を「A」、曇りが発生した場合を「B」とした。
【0099】
(呼気試験:耐熱試験後)
供試材に対して以下の耐熱試験を実施した。
耐熱性試験:大気圧下でクリーンオーブン(エスペック株式会社製、型式:PVHC-231M)を使用して、供試材を130℃で5日間加熱した。
試験後の供試材について上記と同様にして呼気試験を行い、曇りを評価した。
【0100】
(呼気試験:耐擦傷試験後)
供試材に対して以下の耐擦傷試験を実施した。
耐擦傷試験:スチールウール(♯0000)を膜の上に置き、さらにその上に200gの分銅を置いて、分銅を乗せたスチールウールを10回往復した。
試験後の供試材について上記と同様にして呼気試験を行い、曇りを評価した。
【0101】
【0102】
表1に示す各成分の詳細については下記のとおりである。
(無機粒子)
アルミナA:AS-520-A(日産化学株式会社製、商品名、水を分散媒としたアルミナ水和物のコロイド溶液(不揮発分濃度20質量%)、粒子形状:粒状、平均粒子径15nm)
(表面調整剤)
B1:サーフィノール465(日信化学工業株式会社製、商品名、アセチレングリコール化合物、HLB値:13、不揮発分濃度100質量%)
B2:L-7D(三菱ケミカル株式会社製、商品名、ポリグリセリンラウリン酸エステル、HLB値:17、不揮発分濃度100質量%)
B3:M-7D(三菱ケミカル株式会社製、商品名、ポリグリセリンミリスチン酸エステル、HLB値:16、不揮発分濃度100質量%)