(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176442
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】被加工物の加工方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20241212BHJP
B23Q 17/24 20060101ALI20241212BHJP
B23K 26/364 20140101ALI20241212BHJP
B24B 49/12 20060101ALI20241212BHJP
B24B 19/02 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
H01L21/78 C
H01L21/78 B
H01L21/78 F
B23Q17/24 B
B23Q17/24 A
B23K26/364
B24B49/12
B24B19/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094977
(22)【出願日】2023-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バン ヒョンジン
(72)【発明者】
【氏名】キム テヒ
【テーマコード(参考)】
3C029
3C034
3C049
4E168
5F063
【Fターム(参考)】
3C029AA04
3C029AA40
3C029CC10
3C034BB93
3C049AA03
3C049AC02
3C049BA07
3C049CA01
4E168AD01
4E168AD18
4E168CA06
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5F063AA01
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5F063AA43
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5F063DE33
5F063FF01
(57)【要約】
【課題】実際に加工する被加工物において複数回のヘアライン合わせや加工の蛇行のチェックを実施できる被加工物の加工方法を提供する事。
【解決手段】被加工物の加工方法は、外周余剰領域に位置合わせ溝を形成する溝形成ステップ1001と、位置合わせ溝に撮像ユニットの基準線を合わせ、位置合わせ溝と基準線との距離を登録する距離登録ステップ1002と、位置合わせ溝のY方向の振れ量を検出する蛇行検出ステップ1003と、保持テーブルを回転させて、異なる外周余剰領域で、距離登録ステップ1002で登録した距離及び蛇行検出ステップ1003で検出した振れ量を確認する距離蛇行確認ステップ1004と、被加工物の分割予定ラインを加工すべき位置に設定する加工位置設定ステップ1005と、加工位置設定ステップ1005の後、被加工物を分割予定ラインに沿って加工する加工ステップ1006と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持する保持テーブルと、
該保持テーブルで保持した被加工物を加工する加工ユニットと、
該保持テーブルと該加工ユニットとをY方向及び該Y方向と直交するX方向に相対移動させる移動ユニットと、
該加工ユニットの位置合わせ用の基準線がX方向に形成された光学系を有し被加工物を撮像する撮像ユニットと、
各構成要素を制御する制御ユニットと、
を備えた加工装置を用いた被加工物の加工方法であって、
該保持テーブルに保持された被加工物の外周余剰領域に位置合わせ溝を形成する溝形成ステップと、
該位置合わせ溝に該撮像ユニットの該基準線を合わせ、該位置合わせ溝と該基準線との距離を登録する距離登録ステップと、
該位置合わせ溝のY方向の振れ量を検出する蛇行検出ステップと、
該保持テーブルを回転させて、異なる外周余剰領域で、位置合わせ溝を形成し、該位置合わせ溝に該撮像ユニットの該基準線を合わせて該位置合わせ溝と該基準線との距離を算出して該距離登録ステップで登録した距離を確認するとともに該位置合わせ溝のY方向の振れ量を検出することで、該蛇行検出ステップで検出した振れ量を確認する距離蛇行確認ステップと、
該被加工物に設定された分割予定ラインに該基準線を合わせ、加工すべき位置を設定する加工位置設定ステップと、
該加工位置設定ステップで設定された位置から該距離の分だけ補正した位置に該加工ユニットを位置付け、被加工物を該分割予定ラインに沿って加工する加工ステップと、を備え、
該距離蛇行確認ステップは、1回または複数回実施される事を特徴とする被加工物の加工方法。
【請求項2】
該溝形成ステップは、被加工物を完全に分割しない深さに該位置合わせ溝を形成する請求項1に記載の被加工物の加工方法。
【請求項3】
該加工ユニットは、スピンドルの先端に固定された切削ブレードである請求項1または2に記載の被加工物の加工方法。
【請求項4】
該加工ユニットは、第1スピンドルの先端に固定された第1切削ブレードと、第2スピンドルの先端に固定された第2切削ブレードと、を有し、
該第1切削ブレードと、該第2切削ブレードと、のそれぞれにおいて、該溝形成ステップと、該距離登録ステップと、該蛇行検出ステップと、該距離蛇行確認ステップと、を実施する事を特徴とする請求項1または2に記載の被加工物の加工方法。
【請求項5】
該加工ユニットは、レーザ光線を発振するレーザ光線発振器と、該レーザ光線を集光する集光レンズを含む光学系と、を含むレーザ光線照射ユニットである事を特徴とする請求項1に記載の被加工物の加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物の加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被加工物に加工溝を形成する加工に際しては、事前に加工装置に搭載されたカメラ等の撮像ユニットの基準線と被加工物を加工する加工ユニットによる加工位置とを合わせる作業であるいわゆるヘアライン合わせを実施することが知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
このヘアライン合わせ作業は、具体的には、一度加工ユニットにて被加工物を加工して加工溝を形成し、この加工溝を撮像して画像処理を行ってこの加工溝の幅方向中央を検出し、この加工溝の幅方向中央の位置とカメラの基準線位置とのずれ量を算出し、このずれ量を座標位置に加減することにより、加工溝の幅方向中央の位置とカメラの基準線位置とを合致させた補正位置を装置に記憶させることで行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6600267号公報
【特許文献2】特許第6037705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなヘアライン合わせを確認のため二度行いたい場合もあるが、被加工物の外周領域にはヘアライン合わせを実施する十分なスペースがないという問題があった。特に、ヘアライン合わせとともに加工の蛇行を検出する場合には、加工溝の長さが長い方が好ましいため、スペースの確保がより困難であるという問題があった。
【0006】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、実際に加工する被加工物において複数回のヘアライン合わせや加工の蛇行のチェックを実施できる被加工物の加工方法を提供する事である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の被加工物の加工方法は、被加工物を保持する保持テーブルと、該保持テーブルで保持した被加工物を加工する加工ユニットと、該保持テーブルと該加工ユニットとをY方向及び該Y方向と直交するX方向に相対移動させる移動ユニットと、該加工ユニットの位置合わせ用の基準線がX方向に形成された光学系を有し被加工物を撮像する撮像ユニットと、各構成要素を制御する制御ユニットと、を備えた加工装置を用いた被加工物の加工方法であって、該保持テーブルに保持された被加工物の外周余剰領域に位置合わせ溝を形成する溝形成ステップと、該位置合わせ溝に該撮像ユニットの該基準線を合わせ、該位置合わせ溝と該基準線との距離を登録する距離登録ステップと、該位置合わせ溝のY方向の振れ量を検出する蛇行検出ステップと、該保持テーブルを回転させて、異なる外周余剰領域で、位置合わせ溝を形成し、該位置合わせ溝に該撮像ユニットの該基準線を合わせて該位置合わせ溝と該基準線との距離を算出して該距離登録ステップで登録した距離を確認するとともに該位置合わせ溝のY方向の振れ量を検出することで、該蛇行検出ステップで検出した振れ量を確認する距離蛇行確認ステップと、該被加工物に設定された分割予定ラインに該基準線を合わせ、加工すべき位置を設定する加工位置設定ステップと、該加工位置設定ステップで設定された位置から該距離の分だけ補正した位置に該加工ユニットを位置付け、被加工物を該分割予定ラインに沿って加工する加工ステップと、を備え、該距離蛇行確認ステップは、1回または複数回実施される事を特徴とする。
【0008】
該溝形成ステップは、被加工物を完全に分割しない深さに該位置合わせ溝を形成してもよい。
【0009】
該加工ユニットは、スピンドルの先端に固定された切削ブレードであってもよい。
【0010】
該加工ユニットは、第1スピンドルの先端に固定された第1切削ブレードと、第2スピンドルの先端に固定された第2切削ブレードと、を有し、該第1切削ブレードと、該第2切削ブレードと、のそれぞれにおいて、該溝形成ステップと、該距離登録ステップと、該蛇行検出ステップと、該距離蛇行確認ステップと、を実施してもよい。
【0011】
該加工ユニットは、レーザ光線を発振するレーザ光線発振器と、該レーザ光線を集光する集光レンズを含む光学系と、を含むレーザ光線照射ユニットであってもよい。
【発明の効果】
【0012】
本願発明は、先(直前)に実施する溝形成ステップ、距離登録ステップ及び蛇行検出ステップにおいて位置合わせ用溝を形成した領域から、被加工物を回転させることで、後に距離蛇行確認ステップにおいて位置合わせ用溝を形成する領域に変更するので、仮に被加工物の外周余剰領域の面積が小さくても、所定長さ以上の位置合わせ用溝を複数回形成することができるため、実際に加工する被加工物において複数回のヘアライン合わせや加工の蛇行のチェックを実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る被加工物の加工方法の処理手順を示すフローチャートである。
【
図2】
図2は、実施形態1に係る被加工物の加工方法の加工対象である被加工物の一例を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、実施形態1に係る被加工物の加工方法を実施する加工装置の構成例を示す斜視図である。
【
図7】
図7は、実施形態2に係る被加工物の加工方法を実施する加工装置の構成例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0015】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1に係る被加工物の加工方法を図面に基づいて説明する。
図1は、実施形態1に係る被加工物の加工方法の処理手順を示すフローチャートである。実施形態1に係る被加工物の加工方法は、
図1に示すように、溝形成ステップ1001と、距離登録ステップ1002と、蛇行検出ステップ1003と、距離蛇行確認ステップ1004と、加工位置設定ステップ1005と、加工ステップ1006と、を備える。
【0016】
図2は、実施形態1に係る被加工物の加工方法の加工対象である被加工物100の一例を示す斜視図である。被加工物100は、
図2に示すように、例えば、シリコン、サファイア、シリコンカーバイド(SiC)、ガリウムヒ素、ガラスなどを母材とする円板状の半導体ウエーハや光デバイスウエーハなどのウエーハである。被加工物100は、平坦な表面101に、互いに交差する複数の分割予定ライン102によって区画されたそれぞれの領域にチップ状のデバイス103が形成されたデバイス領域107と、デバイス103が形成されておらず、デバイス領域107の外周を囲む外周余剰領域108と、を有する。被加工物100は、実施形態1に係る被加工物の加工方法が実施されて分割予定ライン102に沿って分割することで、複数のデバイス103のチップを製造する。
【0017】
被加工物100は、表面101の裏側の裏面104に支持テープ105が貼着され、支持テープ105の外縁部に環状フレーム106が装着されてもよい。すなわち、被加工物100は、環状フレーム106の開口に支持テープ105を介して固定されてもよい。また、被加工物100は、本発明では、樹脂により封止されたデバイスを複数有した矩形状のパッケージ基板、セラミックス板、又はガラス板等でもよい。
【0018】
図3は、実施形態1に係る被加工物の加工方法を実施する加工装置1の構成例を示す斜視図である。加工装置1は、
図3に示すように、保持テーブル10と、加工ユニット20と、撮像ユニット30と、移動ユニット40と、モニタ50と、制御ユニット60と、を備える。加工装置1は、実施形態1に係る被加工物の加工方法の溝形成ステップ1001、距離登録ステップ1002、蛇行検出ステップ1003、距離蛇行確認ステップ1004、加工位置設定ステップ1005及び加工ステップ1006を実施する。
【0019】
保持テーブル10は、凹部が形成された円盤状の枠体と、凹部内に嵌め込まれた円盤形状の吸着部と、を備えるいわゆるチャックテーブルである。保持テーブル10の吸着部は、多数のポーラス孔を備えたポーラスセラミック等から形成され、図示しない真空吸引経路を介して図示しない真空吸引源と接続されている。保持テーブル10の吸着部の上面は、被加工物100が載置されて、真空吸引源から導入される負圧により、載置された被加工物100を吸引保持する保持面11である。保持面11と保持テーブル10の枠体の上面とは、同一平面上に配置されており、水平面であるXY平面に平行に形成されている。保持テーブル10は、移動ユニット40のX軸方向移動ユニット41により水平方向と平行なX軸方向(X方向)に移動自在に設けられている。保持テーブル10は、不図示の回転駆動源により、鉛直方向に平行でかつXY平面に直交するZ軸回りに回転自在に設けられている。
【0020】
加工ユニット20は、実施形態1では、
図3に示すように、第1加工ユニット20-1と、第2加工ユニット20-2と、を有する。第1加工ユニット20-1と、第2加工ユニット20-2とは、概ね同じ構成を有する。以下、第1加工ユニット20-1に関する各部を第2加工ユニット20-2に関する各部に対して区別する場合には、符号の後ろに「-1」を付して記し、第2加工ユニット20-2に関する各部を第1加工ユニット20-1に関する各部に対して区別する場合には、符号の後ろに「-2」を付して記す。第1加工ユニット20-1と第2加工ユニット20-2とを区別する必要がない場合には、対応する各部を、双方に共通のものであるとして、符号の後ろに「-1」も「-2」も付さずに適宜省略して記す。また、第1加工ユニット20-1と、第2加工ユニット20-2とについて、同じ構成の部分を説明する際や、特に区別しない場合には、加工ユニット20と略記する。
【0021】
加工ユニット20は、切削ブレード21と、スピンドル22と、を備える切削ユニットである。切削ブレード21は、スピンドル22の先端に装着され、回転軸となるスピンドル22により回転されることで保持テーブル10に保持された被加工物100を切削加工する。スピンドル22は、水平方向と平行でかつX軸方向と直交するY軸方向(Y方向)と平行な軸心周りに回転可能に設けられ、スピンドル22に連結された不図示のモータにより軸心回りに回転する。スピンドル22は、スピンドル22の先端に装着された切削ブレード21をY軸方向と平行な軸心周りに回転可能に支持する。
【0022】
すなわち、加工ユニット20の第1加工ユニット20-1は、第1スピンドル22-1と、第1スピンドル22-1の先端に第1スピンドル22-1とともに回転可能に固定された第1切削ブレード21-1とを有し、加工ユニット20の第2加工ユニット20-2は、第2スピンドル22-2と、第2スピンドル22-2の先端に第2スピンドル22-2とともに回転可能に固定された第2切削ブレード21-2とを有する。
【0023】
第1加工ユニット20-1は、第2加工ユニット20-2とは独立して、それぞれ移動ユニット40のY軸方向移動ユニット42及びZ軸方向移動ユニット43により、Y軸方向及びZ軸方向(Z方向)に移動自在に設けられている。また、第2加工ユニット20-2は、第1加工ユニット20-1とは独立して、それぞれ移動ユニット40のY軸方向移動ユニット42及びZ軸方向移動ユニット43により、Y軸方向及びZ軸方向に移動自在に設けられている。加工装置1は、このように、切削ユニットである加工ユニット20-1,20-2を2組備えた、即ち、2スピンドルのダイサ、いわゆるフェイシングデュアルタイプの加工装置である。
【0024】
加工ユニット20は、スピンドル22の回転動作によりスピンドル22の先端に装着された切削ブレード21をY軸方向と平行な軸心周りに回転しながら、X軸方向移動ユニット41により切削ブレード21を保持テーブル10上の被加工物100に対して相対的に加工送り方向であるX軸方向に沿って移動させる(加工送りする)ことにより、切削ブレード21で被加工物100を切削して切削溝(加工溝)を形成する。加工ユニット20は、また、同様に、切削ブレード21で被加工物100を分割予定ライン102に沿って切削加工することで、被加工物100を分割予定ライン102に沿って分割する。
【0025】
撮像ユニット30は、実施形態1では、
図3に示すように、第1撮像ユニット30-1と、第2撮像ユニット30-2と、を有する。第1撮像ユニット30-1と、第2撮像ユニット30-2とは、概ね同じ構成を有する。以下、第1撮像ユニット30-1に関する各部を第2撮像ユニット30-2に関する各部に対して区別する場合には、符号の後ろに「-1」を付して記し、第2撮像ユニット30-2に関する各部を第1撮像ユニット30-1に関する各部に対して区別する場合には、符号の後ろに「-2」を付して記す。第1撮像ユニット30-1と第2撮像ユニット30-2とを区別する必要がない場合には、対応する各部を、双方に共通のものであるとして、符号の後ろに「-1」も「-2」も付さずに適宜省略して記す。また、第1撮像ユニット30-1と、第2撮像ユニット30-2とについて、同じ構成の部分を説明する際や、特に区別しない場合には、撮像ユニット30と略記する。
【0026】
撮像ユニット30は、保持テーブル10に保持された被加工物100を撮像する撮像素子を備えている。撮像素子は、例えば、CCD(Charge-Coupled Device)撮像素子又はCMOS(Complementary MOS)撮像素子である。撮像ユニット30は、保持テーブル10に保持された被加工物100の表面101を撮像して、被加工物100と加工ユニット20との位置合わせを行なうアライメントを遂行するための画像を取得する。また、撮像ユニット30は、保持テーブル10に保持された被加工物100の表面101を撮像して、被加工物100に対する加工が正常な範囲内で実行されたか否かを自動的に確認するチェックを遂行するための画像を取得する。
【0027】
実施形態1では、第1撮像ユニット30-1は、第1加工ユニット20-1に隣接して固定されており、第1加工ユニット20-1と一体的に移動する。また、第2撮像ユニット30-2は、第2加工ユニット20-2に隣接して固定されており、第2加工ユニット20-2と一体的に移動する。
【0028】
撮像ユニット30は、加工ユニット20の位置合わせ用の基準線31(
図8及び
図9参照)がX軸方向に沿って形成された光学系を有する。基準線31は、撮像ユニット30の内部に設定されており、撮像ユニット30で撮像した画像に重ねて取得及び表示させることができる。基準線31は、実施形態1では、撮像ユニット30で撮像した画像において、画像の縦方向であるY軸方向における中央を、画像の横方向であるX軸方向に沿って延びる直線に設定される。
【0029】
実施形態1では、第1撮像ユニット30-1は、第1加工ユニット20-1の位置合わせ用の第1基準線31-1が形成された光学系を有する。また、第2撮像ユニット30-2は、第2加工ユニット20-2の位置合わせ用の第2基準線31-2が形成された光学系を有する。
【0030】
移動ユニット40は、保持テーブル10と加工ユニット20とを、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向に沿って相対的に移動(相対移動)させる。移動ユニット40は、実施形態1では、
図3に示すように、X軸方向移動ユニット41と、Y軸方向移動ユニット42と、Z軸方向移動ユニット43と、を有する。X軸方向移動ユニット41、Y軸方向移動ユニット42及びZ軸方向移動ユニット43は、それぞれ、保持テーブル10と、加工ユニット20及び撮像ユニット30と、を相対的にX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向に移動させる。X軸方向移動ユニット41は、実施形態1では、X軸方向に沿って、保持テーブル10を加工ユニット20及び撮像ユニット30に対して相対的に移動させる。Y軸方向移動ユニット42及びZ軸方向移動ユニット43は、実施形態1では、それぞれY軸方向及びZ軸方向に沿って、加工ユニット20及び撮像ユニット30を保持テーブル10に対して相対的に移動させる。
【0031】
X軸方向移動ユニット41、Y軸方向移動ユニット42及びZ軸方向移動ユニット43は、いずれも、モータと、ボールねじと、ガイドと、を有する公知のボールねじ機構である。X軸方向移動ユニット41、Y軸方向移動ユニット42及びZ軸方向移動ユニット43は、モータの回転位置を読み取るエンコーダを含み、エンコーダが読み取ったモータの回転位置に基づいて、保持テーブル10と加工ユニット20及び撮像ユニット30とのX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の相対的な位置を検出し、検出した相対的な位置を制御ユニット60に出力する。ここで、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の相対的な位置は、加工装置1に備え付けられ、例えば保持テーブル10の保持面11の中心を原点とする装置座標系(直交座標系であるXYZ座標や円柱座標系であるRθZ座標等)が使用される。
【0032】
なお、X軸方向移動ユニット41、Y軸方向移動ユニット42及びZ軸方向移動ユニット43は、エンコーダにより保持テーブル10と加工ユニット20及び撮像ユニット30との相対的な位置を検出する構成に限定されず、それぞれX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向に平行なリニアスケールと、X軸方向移動ユニット41、Y軸方向移動ユニット42及びZ軸方向移動ユニット43によりそれぞれX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向に移動自在に設けられリニアスケールの目盛を読み取る読み取りヘッドと、により構成してもよい。
【0033】
モニタ50は、実施形態1では、
図3に示すように、加工装置1の不図示のカバーに、表示面側を外側に向けて設けられている。モニタ50は、加工ユニット20による加工や撮像ユニット30による撮像等の加工装置1の各種処理に関する各種条件の設定の画面や、取得された画像やデータ、制御ユニット60による種々の処理結果、等を作業者に視認可能に表示する。モニタ50は、液晶表示装置等により構成される。モニタ50は、作業者が加工装置1の上記した各種条件に関する情報や画像等の表示に関する情報等を入力する際に使用する入力ユニット51が設けられている。モニタ50に設けられた入力ユニット51は、モニタ50に設けられたタッチパネルと、マウス、タッチパッド、キーボード等とのうち少なくとも一つにより構成される。なお、モニタ50は加工装置1に固定されておらず、任意の通信機器に備えられ、任意の通信機器が無線または有線により加工装置1と接続されてもよい。
【0034】
制御ユニット60は、加工装置1の各構成要素の動作を制御して、実施形態1に係る被加工物の加工方法における様々な処理を含む各種処理を加工装置1に実施させる。制御ユニット60は、実施形態1では、コンピュータシステムを含む。制御ユニット60が含むコンピュータシステムは、CPU(Central Processing Unit)のようなマイクロプロセッサを有する演算処理装置と、ROM(Read Only Memory)又はRAM(Random Access Memory)のようなメモリを有する記憶装置と、入出力インターフェース装置とを有する。制御ユニット60の演算処理装置は、制御ユニット60の記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムに従って演算処理を実施して、加工装置1を制御するための制御信号を、制御ユニット60の入出力インターフェース装置を介して加工装置1の各構成要素に出力する。
【0035】
次に、本明細書は、実施形態1に係る被加工物の加工方法を図面に基づいて説明する。実施形態1に係る被加工物の加工方法では、溝形成ステップ1001を実施する前に、被加工物100を保持テーブル10の保持面11で保持する保持ステップを実施する。この保持ステップでは、具体的には、まず、制御ユニット60は、不図示の搬送ユニットにより、実施形態1に係る被加工物の加工方法を実施前の被加工物100を1枚搬出して、表面101を上方に向けて露出させて、裏面104側を保持テーブル10の保持面11に向けて、保持テーブル10の保持面11上に搬送する。この保持ステップでは、次に、制御ユニット60は、保持テーブル10により、保持面11上に搬送された被加工物100を、表面101を上方に向けて露出させた状態で、裏面104側から吸引保持する。
【0036】
溝形成ステップ1001は、保持テーブル10に保持された被加工物100の外周余剰領域108に位置合わせ溝121を形成するステップである。溝形成ステップ1001では、まず、制御ユニット60は、保持テーブル10の不図示の回転駆動源により、保持テーブル10を回転させることにより、保持テーブル10に保持された被加工物100の外周余剰領域108を面内方向に沿って横切る所望の溝形成ライン111(
図2参照)を加工送り方向(X軸方向)と平行にし、かつ、移動ユニット40により、被加工物100を保持する保持テーブル10と加工ユニット20とを相対的に移動させることにより、加工ユニット20による加工位置(切削ブレード21による切削位置)を、保持テーブル10に保持された被加工物100の外周余剰領域108の所望の溝形成ライン111上に位置付ける。
【0037】
ここで、所望の溝形成ライン111は、保持テーブル10に保持された被加工物100のデバイス103を含むデバイス領域107を全く横切らないように、保持テーブル10に保持された被加工物100の外周余剰領域108のみを面内方向に沿って横切り、なおかつ、可能な限り長くなるように設定される面内方向に沿って延びる直線状の領域である。所望の溝形成ライン111は、保持テーブル10に保持された被加工物100の外周余剰領域108において複数設定でき、適宜、所望の1本が選択される。溝形成ライン111は、
図2に示す実施形態1の例では、溝形成ライン111-1,111-2,111-3,111-4,111-5の5本が設定されているが、本発明ではこれに限定されず、何本設定してもよい。また、溝形成ライン111は、所定長さ以上等の条件が適宜課せられた上で、設定されてもよい。制御ユニット60は、設定可能な複数の所望の溝形成ライン111の情報を、例えば、装置座標系を用いた関数で取り扱い、予め制御ユニット60の記憶装置に記憶される。
【0038】
溝形成ステップ1001では、次に、制御ユニット60は、スピンドル22を回転させることにより切削ブレード21をY軸方向と平行な軸心周りに回転しながら、X軸方向移動ユニット41により切削ブレード21を保持テーブル10上の被加工物100に対して相対的に加工送り方向であるX軸方向に沿って移動させる(加工送りする)ことにより、切削ブレード21で被加工物100の溝形成ライン111に沿って切削加工して、溝形成ライン111に沿って位置合わせ溝121を形成する。
【0039】
ここで、溝形成ステップ1001では、被加工物100を完全に分割しない深さに位置合わせ溝121を形成することが好ましく、この場合、位置合わせ溝121の形成によって被加工物100の一部が端材となって切り離されてしまう恐れや、端材が切り離されることによって切り離された端材が飛んで行ってしまう所謂チップ飛びが発生する恐れを抑制できる。
【0040】
図4及び
図5は、いずれも、
図1の距離登録ステップ1002を説明する図である。距離登録ステップ1002は、位置合わせ溝121に撮像ユニット30の基準線31を合わせ、位置合わせ溝121と基準線31との距離125(
図4参照)を登録するステップである。
【0041】
距離登録ステップ1002では、溝形成ステップ1001で位置合わせ溝121を形成した後、まず、制御ユニット60は、移動ユニット40により、被加工物100を保持する保持テーブル10と撮像ユニット30とを相対的に移動させることにより、撮像ユニット30の基準線31を、制御ユニット60が溝形成ステップ1001で位置合わせ溝121を形成した所望の溝形成ライン111と認識しているラインに合わせる。
【0042】
距離登録ステップ1002では、撮像ユニット30の基準線31を、制御ユニット60が所望の溝形成ライン111と認識しているラインに合わせた後、制御ユニット60は、撮像ユニット30により、撮像ユニット30の基準線31を、制御ユニット60が所望の溝形成ライン111と認識しているラインに合わせた状態で撮像処理を行うことにより、
図4に示すような位置合わせ溝121の画像131を撮像して取得する。
【0043】
距離登録ステップ1002では、制御ユニット60は、移動ユニット40により撮像ユニット30を被加工物100を保持する保持テーブル10に対して移動させながら、位置合わせ溝121を形成した全ての領域において、位置合わせ溝121の画像131を取得して撮像し、これらの画像131を位置合わせ溝121が滑らかに繋がるように合成して、位置合わせ溝121全体の画像131としてもよい。
【0044】
距離登録ステップ1002では、画像131を取得した後、制御ユニット60は、この画像131に基づいて、位置合わせ溝121の幅方向の中央の位置を表し、X軸方向に平行な中央直線122(
図4参照)を算出する。距離登録ステップ1002では、制御ユニット60は、例えば、画像131を二値化処理することにより、位置合わせ溝121が形成されていない領域が明輝度で表され、位置合わせ溝121が形成された領域が暗輝度で表された二値化画像を形成し、この二値化画像において明輝度領域と暗輝度領域との間の境界線を位置合わせ溝121の幅方向両端(両縁)を示す線である両端線123(曲線、
図6参照)として検出し、この両端線123の間の中央線124(曲線、
図6参照)を算出し、この中央線124に基づいて、中央線124に近似しX軸方向に平行な中央直線122を算出する。距離登録ステップ1002では、制御ユニット60は、例えば、この中央線124に基づいて中央直線122を算出する近似の処理において、最小二乗法を使用してもよいし、その他の算出処理により近似の処理をしてもよい。
【0045】
距離登録ステップ1002では、制御ユニット60は、位置合わせ溝121の幅方向の中央の位置を表す中央直線122を算出した後、この算出した中央直線122と、撮像ユニット30の基準線31との間のY軸方向に沿った距離125を算出する。この距離125は、撮像ユニット30の基準線31と、被加工物100を加工する加工ユニット20による加工位置とのずれであるいわゆるヘアラインずれに相当する。なお、距離125は、中央直線122が基準線31に対して+Y方向にあるか-Y方向にあるかの位置関係の情報を含むものであり、例えば、中央直線122が基準線31に対して+Y方向にある場合には正の値で、中央直線122が基準線31に対して-Y方向にある場合には負の値で、それぞれ表される。
【0046】
距離登録ステップ1002では、制御ユニット60は、移動ユニット40により取得する撮像ユニット30の保持テーブル10に対する相対位置の情報と、撮像ユニット30により撮像されて取得される画像における位置である画像内位置の情報とに基づいて算出されて取得される位置の情報を元に加工ユニット20を分割予定ライン102に位置付ける際に、撮像ユニット30に撮像された画像内で算出した位置から距離125を打ち消すように補正した位置を加工ユニット20の位置付け位置とする補正処理を追加し、当該補正処理を実行する旨を制御ユニット60の記憶装置に登録する。なお、距離登録ステップ1002では、制御ユニット60による距離125の算出に代えて、作業者が、
図4の状態から、
図5の状態になるようにY方向に撮像ユニット30と、保持テーブル10とを相対的に移動させて、移動量から距離125を算出しても良い。
【0047】
実施形態1に係る被加工物の加工方法では、このような溝形成ステップ1001及び距離登録ステップ1002を実施することにより、撮像ユニット30の基準線31と、被加工物100を加工する加工ユニット20による加工位置とを合わせる作業であるいわゆるヘアライン合わせを実施する。
【0048】
図6は、
図1の蛇行検出ステップ1003を説明する図である。蛇行検出ステップ1003は、位置合わせ溝121のY方向の振れ量126(
図6参照)を検出するステップである。蛇行検出ステップ1003では、まず、制御ユニット60は、距離登録ステップ1002と同様に、位置合わせ溝121全体の画像131を取得し、両端線123を算出する。位置合わせ溝121全体の画像131及び両端線123については、距離登録ステップ1002で取得及び算出したものを使用してもよいし、距離登録ステップ1002の実施後に改めて取得及び算出してもよい。
【0049】
蛇行検出ステップ1003では、両端線123を算出した後、制御ユニット60は、この両端線123の間隔を位置合わせ溝121の溝幅127(
図6参照)として算出するとともに、両端線123のそれぞれについて、他方の両端線123から最も離れた点同士の間隔を最大離間距離128(
図6参照)として算出し、これらの算出した溝幅127と最大離間距離128との差分(
図6の振れ量部分126-1と振れ量部分126-2との合計値)を位置合わせ溝121のY軸方向の振れ量126として算出する。
【0050】
蛇行検出ステップ1003では、振れ量126を算出した後、制御ユニット60は、振れ量126が所定の閾値(許容値)以下であるか否かを判定する。蛇行検出ステップ1003では、振れ量126が所定の閾値以下であると判定した場合、制御ユニット60は、位置合わせ溝121に蛇行が検出されなかったと判定し、当該判定結果を作業者に認識可能にモニタ50に表示させる。蛇行検出ステップ1003では、振れ量126が所定の閾値以下ではないと判定した場合、すなわち振れ量126が所定の閾値より大きいと判定した場合、制御ユニット60は、位置合わせ溝121に蛇行が検出されたと判定し、当該判定結果とともに、この蛇行を解消するような措置、すなわち所定の閾値より大きい振れ量126が所定の閾値以下となるような措置を促す旨を、作業者に認識可能にモニタ50に表示させる。
【0051】
位置合わせ溝121の大きい振れ量126、すなわち位置合わせ溝121の蛇行は、実施形態1のように加工ユニット20が切削ユニットである場合、例えば、スピンドル22の先端における切削ブレード21の装着が弛んでいたり、歪んでいたりすることに起因する場合がある。このため、蛇行検出ステップ1003では、制御ユニット60は、位置合わせ溝121に蛇行が検出されたと判定した場合、これに対する措置として、例えばスピンドル22の先端における切削ブレード21の装着をし直すことで、切削ブレード21の緩みや歪みを解消し、これにより、この蛇行を解消する措置を促す。
【0052】
なお、蛇行検出ステップ1003では、本発明では上記形態に限定されず、例えば、作業者が、移動ユニット40を動作させて、被加工物100を保持する保持テーブル10をX軸方向に移動させながら、撮像ユニット30を通して、位置合わせ溝121のY軸方向の振れ量126を目視で確認して、振れ量126が所定の閾値(許容値)以下であるか否かを判定して、蛇行の有無を判定してもよい。
【0053】
距離蛇行確認ステップ1004は、保持テーブル10を回転させて、異なる外周余剰領域108で、位置合わせ溝121を形成し、位置合わせ溝121に撮像ユニット30の基準線31を合わせて位置合わせ溝121と基準線31との距離125を算出して距離登録ステップ1002で登録した距離125を確認するとともに、位置合わせ溝121のY方向の振れ量126を検出することで、蛇行検出ステップ1003で検出した振れ量126を確認するステップである。
【0054】
距離蛇行確認ステップ1004は、すなわち、同じ被加工物100において、先(直前)に溝形成ステップ1001、距離登録ステップ1002及び蛇行検出ステップ1003を実施した被加工物100の外周余剰領域108における溝形成ライン111とは異なる溝形成ライン111で、溝形成ステップ1001、距離登録ステップ1002及び蛇行検出ステップ1003と同様の処理を再び実施することにより、先(直前)に実施した距離登録ステップ1002で登録した距離125が正確かどうか、及び、先(直前)に実施した蛇行検出ステップ1003で検出した振れ量126が所定の閾値以下となるかどうかを確認するものである。
【0055】
このため、距離蛇行確認ステップ1004では、まず、制御ユニット60は、保持テーブル10の不図示の回転駆動源により、被加工物100を保持する保持テーブル10を回転させることにより、後の溝形成ステップ1001、距離登録ステップ1002及び蛇行検出ステップ1003を実施する溝形成ライン111を、先に溝形成ステップ1001、距離登録ステップ1002及び蛇行検出ステップ1003を実施した溝形成ライン111と異なる溝形成ライン111に設定する。距離蛇行確認ステップ1004では、例えば、先に溝形成ライン111-1において溝形成ステップ1001、距離登録ステップ1002及び蛇行検出ステップ1003を実施した場合、後の溝形成ステップ1001、距離登録ステップ1002及び蛇行検出ステップ1003を実施する溝形成ライン111を、溝形成ライン111-1以外の溝形成ライン111-2,111-3,111-4,111-5のいずれかに設定する。
【0056】
実施形態1に係る被加工物の加工方法では、距離蛇行確認ステップ1004を少なくとも1回実施する。実施形態1に係る被加工物の加工方法では、先(直前)に実施した距離登録ステップ1002で登録した距離125が正確であること、及び、先(直前)に実施した蛇行検出ステップ1003で検出した振れ量126が所定の閾値以下であることについて確認が取れるまで、距離蛇行確認ステップ1004を繰り返し実施することが好ましい。実施形態1に係る被加工物の加工方法では、先(直前)に実施した距離登録ステップ1002で登録した距離125が正確であること、及び、先(直前)に実施した蛇行検出ステップ1003で検出した振れ量126が所定の閾値以下であることについて確認が取れると、距離蛇行確認ステップ1004を終了して、次の加工位置設定ステップ1005に処理を進める。
【0057】
また、実施形態1に係る被加工物の加工方法では、第1加工ユニット20-1の第1スピンドル22-1の先端に装着された第1切削ブレード21-1において、第1撮像ユニット30-1の第1基準線31-1と第1切削ブレード21-1による加工位置とを合わせるヘアライン合わせを実施するために溝形成ステップ1001及び距離登録ステップ1002を実施し、位置合わせ溝121のY方向の振れ量126を検出する蛇行検出ステップ1003を実施し、さらに距離蛇行確認ステップ1004を実施するとともに、第2加工ユニット20-2の第2スピンドル22-2の先端に装着された第2切削ブレード21-2において、第2撮像ユニット30-2の第2基準線31-2と第2切削ブレード21-2による加工位置とを合わせるヘアライン合わせを実施するために溝形成ステップ1001及び距離登録ステップ1002を実施し、位置合わせ溝121のY方向の振れ量126を検出する蛇行検出ステップ1003を実施し、さらに距離蛇行確認ステップ1004を実施する。
【0058】
この場合、例えば、第1切削ブレード21-1において、溝形成ステップ1001、距離登録ステップ1002及び蛇行検出ステップ1003を実施する際に溝形成ライン111-1を使用し、第1切削ブレード21-1において、距離蛇行確認ステップ1004を実施する際に溝形成ライン111-2を使用し、第2切削ブレード21-2において、溝形成ステップ1001、距離登録ステップ1002及び蛇行検出ステップ1003を実施する際に溝形成ライン111-3を使用し、第2切削ブレード21-2において、距離蛇行確認ステップ1004を実施する際に溝形成ライン111-4を使用するという風に、全てにおいて使用する溝形成ライン111を異なるものに設定する。
【0059】
なお、実施形態1に係る被加工物の加工方法は、本発明では第1切削ブレード21-1及び第2切削ブレード21-2において溝形成ステップ1001、距離登録ステップ1002、蛇行検出ステップ1003及び距離蛇行確認ステップ1004を実施する形態に限定されず、例えば、追って実施する加工ステップ1006で被加工物100を加工する際に使用する方の第1切削ブレード21-1または第2切削ブレード21-2のみにおいて、溝形成ステップ1001、距離登録ステップ1002、蛇行検出ステップ1003及び距離蛇行確認ステップ1004を実施してもよい。
【0060】
加工位置設定ステップ1005は、被加工物100に設定された分割予定ライン102に基準線31を合わせ、加工すべき位置を設定するステップである。加工位置設定ステップ1005では、具体的には、制御ユニット60は、移動ユニット40により、被加工物100を保持する保持テーブル10と撮像ユニット30とを相対的に移動させることにより、撮像ユニット30の基準線31を、被加工物100に設定された1本の分割予定ライン102に合わせ、この合わせた時の基準線31上の位置を加工すべき旨を、制御ユニット60の記憶装置に登録する。加工位置設定ステップ1005では、この登録処理を、加工する予定の1本の分割予定ライン102に対して実施し、登録処理が実施された分割予定ライン102を基準に事前に登録された分割予定ライン102の間隔にそって他の分割予定ライン102の位置を特定する。加工位置設定ステップ1005では、加工すべき旨の登録をする基準線31上の位置から距離登録ステップ1002で登録した距離125の分補正した位置を加工ユニット20の位置付け位置として登録処理を実施する。
【0061】
加工位置設定ステップ1005では、このように、加工すべき旨の登録をする基準線31上の位置から距離登録ステップ1002で登録した距離125の分補正した位置を加工ユニット20の位置付け位置として登録し、なおかつ、先(直前)に実施した距離登録ステップ1002で登録した距離125が正確であること、及び、先(直前)に実施した蛇行検出ステップ1003で検出した振れ量126が所定の閾値以下であることについて確認が取れてから、登録処理を実施するので、加工すべき位置をより正確に登録することができる。
【0062】
加工ステップ1006は、加工位置設定ステップ1005で設定された位置から距離125の分だけ補正した位置、すなわち加工位置設定ステップ1005で登録した加工ユニット20の位置付け位置に、加工ユニット20を位置付け、被加工物100を分割予定ライン102に沿って加工するステップである。加工ステップ1006では、まず、制御ユニット60は、保持テーブル10の不図示の回転駆動源により、保持テーブル10を回転させることにより、加工位置設定ステップ1005で登録した保持テーブル10上の被加工物100の表面101における分割予定ライン102を加工送り方向(X軸方向)と平行にし、かつ、移動ユニット40により、被加工物100を保持する保持テーブル10と加工ユニット20とを相対的に移動させることにより、加工ユニット20による加工位置(切削ブレード21による切削位置)を、加工位置設定ステップ1005で登録した保持テーブル10上の被加工物100の表面101における分割予定ライン102に位置付ける。
【0063】
加工ステップ1006では、次に、制御ユニット60は、スピンドル22を回転させることにより切削ブレード21をY軸方向と平行な軸心周りに回転しながら、X軸方向移動ユニット41により切削ブレード21を保持テーブル10上の被加工物100に対して相対的に加工送り方向(X軸方向)に沿って移動させる(加工送りする)ことにより、切削ブレード21で被加工物100を分割予定ライン102に沿って切削加工して、切削溝(加工溝)を形成する。加工ステップ1006では、この切削加工処理を、加工する予定の全ての分割予定ライン102に対して1本ずつ実施する。
【0064】
加工ステップ1006では、加工位置設定ステップ1005で距離125を打ち消すように補正した位置に加工ユニット20の位置付け位置として登録し、なおかつ、先(直前)に実施した距離登録ステップ1002で登録した距離125が正確であること、及び、先(直前)に実施した蛇行検出ステップ1003で検出した振れ量126が所定の閾値以下であることについて確認が取れてから、登録された加工すべき位置を加工するので、より正確な位置に切削溝(加工溝)を形成することができる。
【0065】
以上のような構成を有する実施形態1に係る被加工物の加工方法は、先(直前)に実施する溝形成ステップ1001、距離登録ステップ1002及び蛇行検出ステップ1003において位置合わせ溝121を形成した領域である溝形成ライン111から、被加工物100を回転させることで、後に距離蛇行確認ステップ1004において実施する溝形成ステップ1001、距離登録ステップ1002及び蛇行検出ステップ1003と同様の処理において位置合わせ溝121を形成する領域である溝形成ライン111に変更するので、仮に被加工物100の外周余剰領域108の面積が小さくても、所定長さ以上の溝形成ライン111を複数設定でき、所定長さ以上の位置合わせ溝121を複数回形成することができる。このため、実施形態1に係る被加工物の加工方法は、実際に加工する被加工物100において複数回のヘアライン合わせや加工の蛇行のチェックを実施できるという作用効果を奏する。
【0066】
また、実施形態1に係る被加工物の加工方法は、溝形成ステップ1001では、被加工物100を完全に分割しない深さに位置合わせ溝121を形成する。このため、実施形態1に係る被加工物の加工方法は、位置合わせ溝121の形成によって被加工物100の一部が端材となって切り離されてしまう恐れや、端材が切り離されることによって切り離された端材が飛んで行ってしまう所謂チップ飛びが発生する恐れを抑制できる。
【0067】
また、実施形態1に係る被加工物の加工方法は、特に、加工ユニット20が、スピンドル22の先端に固定されたマウントに装着された切削ブレード21である事が好ましい。なぜなら他の種類の加工ユニットと比較して切削ブレード21の交換によってヘアラインずれが生じ、さらに切削ブレード21とスピンドル22の先端に固定されたマウントとの間に異物の挟み込みや、斜めに取付けられる等によって、蛇行が生じる恐れが高いためである。このため、実施形態1に係る被加工物の加工方法は、特に顕著に、実際に加工する被加工物100において複数回のヘアライン合わせや加工の蛇行のチェックを実施できるという作用効果を奏することにより、複数回のヘアライン合わせや加工の蛇行のチェックにかかる時間やコストの大幅な低減に繋がる。
【0068】
また、実施形態1に係る被加工物の加工方法は、さらに、加工ユニット20が、第1スピンドル22-1の先端に固定された第1切削ブレード21-1を有する第1加工ユニット20-1と、第2スピンドル22-2の先端に固定された第2切削ブレード21-2を有する第2加工ユニット20-2と、を有し、第1切削ブレード21-1と、第2切削ブレード21-2と、のそれぞれにおいて、溝形成ステップ1001と、距離登録ステップ1002と、蛇行検出ステップ1003と、距離蛇行確認ステップ1004と、を実施する。このため、実施形態1に係る被加工物の加工方法は、さらに特に顕著に、実際に加工する被加工物100において複数回のヘアライン合わせや加工の蛇行のチェックを実施できるという作用効果を奏することにより、複数の加工ユニット20-1,20-2のそれぞれにおいて、複数回のヘアライン合わせや加工の蛇行のチェックにかかる時間やコストの大幅な低減に繋がる。
【0069】
〔実施形態2〕
本発明の実施形態2に係る被加工物の加工方法を説明する。
図7は、実施形態2に係る被加工物の加工方法を実施する加工装置1-3の構成例を示す斜視図である。なお、
図7は、実施形態1と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0070】
実施形態2に係る被加工物の加工方法は、実施形態1に係る被加工物の加工方法において、加工装置1を使用することに代えて、
図7に示す加工装置1-3を使用するように変更したものである。
【0071】
加工装置1-3は、
図7に示すように、保持テーブル10と、加工ユニット20-3と、撮像ユニット30と、移動ユニット40と、モニタ50と、制御ユニット60と、を備える。加工装置1-3は、実施形態1で使用する加工装置1において、加工ユニット20を加工ユニット20-3に変更し、この変更に伴い、移動ユニット40の仕様などを変更したものである。加工装置1-3では、保持テーブル10は、それぞれX軸方向移動ユニット41及びY軸方向移動ユニット42により、X軸方向及びY軸方向に移動自在に設けられている。
【0072】
加工ユニット20-3は、
図7に示すように、レーザ光線を発振するレーザ光線発振器25と、レーザ光線を集光して被加工物100に向けて照射する集光レンズを含む光学系26と、を含み、レーザ光線を照射するレーザ光線照射ユニット(レーザ加工ユニット)である。加工ユニット20-3は、光学系26が、移動ユニット40のZ軸方向移動ユニット43により、Z軸方向に移動自在に設けられている。
【0073】
加工ユニット20-3は、被加工物100に対して吸収性を有する波長のレーザ光線を、保持テーブル10に保持された被加工物100に照射しながら、X軸方向移動ユニット41により保持テーブル10上の被加工物100を加工ユニット20-3の光学系26に対して相対的に加工送り方向に沿って移動させる(加工送りする)ことにより、レーザ光線で被加工物100をアブレーション(昇華もしくは蒸発)させて、保持テーブル10に保持された被加工物100をアブレーション加工して、加工溝を形成する。
【0074】
また、加工ユニット20-3は、被加工物100に対して透過性を有する波長のレーザ光線を、保持テーブル10に保持された被加工物100に照射しながら、X軸方向移動ユニット41により保持テーブル10上の被加工物100を加工ユニット20-3の光学系26に対して相対的に加工送り方向に沿って移動させる(加工送りする)ことにより、レーザ光線で被加工物100の内部に分割予定ライン102に沿って、改質層と改質層から被加工物100の表裏面に向かって伸びるクラックとからなる加工溝を形成する。ここで、改質層は、密度、屈折率、機械的強度やその他の物理的特性が周囲のそれとは異なる状態になった領域のことを意味し、溶融処理領域、クラック領域、絶縁破壊領域、屈折率変化領域、及びこれらの領域が混在した領域等を例示できる。こちらの加工溝は、被加工物100が研削処理やその他のエキスパンド等の分割処理が実施されることにより、分割予定ライン102に沿って分割する分割起点となる。
【0075】
X軸方向移動ユニット41及びY軸方向移動ユニット42は、実施形態2では、それぞれX軸方向及びY軸方向に沿って、保持テーブル10を加工ユニット20-3及び撮像ユニット30に対して相対的に移動させる。Z軸方向移動ユニット43は、実施形態2では、Z軸方向に沿って、加工ユニット20-3の光学系26及び撮像ユニット30を保持テーブル10に対して相対的に移動させる。
【0076】
実施形態2に係る被加工物の加工方法は、実施形態1に係る被加工物の加工方法において、溝形成ステップ1001と、距離蛇行確認ステップ1004において位置合わせ溝121を形成する際と、加工ステップ1006と、を、いずれも、加工ユニット20-3による被加工物100に対して吸収性を有する波長のレーザ光線の照射によって、実施形態1と同様の位置合わせ溝121及び加工溝を形成するように変更したものであり、その他の構成は、実施形態1と同様である。
【0077】
以上のような構成を有する実施形態2に係る被加工物の加工方法は、実施形態1に係る被加工物の加工方法において、加工ユニット20の切削ブレード21で位置合わせ溝121及び加工溝を形成することに代えて、加工ユニット20-3による被加工物100に対して吸収性を有する波長のレーザ光線の照射によって位置合わせ溝121及び加工溝を形成するように変更したものであり、実施形態1と同様に、先(直前)に実施する溝形成ステップ1001、距離登録ステップ1002及び蛇行検出ステップ1003において位置合わせ溝121を形成した領域である溝形成ライン111から、被加工物100を回転させることで、後に距離蛇行確認ステップ1004において実施する溝形成ステップ1001、距離登録ステップ1002及び蛇行検出ステップ1003と同様の処理において位置合わせ溝121を形成する領域である溝形成ライン111に変更するので、実施形態1と同様の作用効果を奏するものとなる。
【0078】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0079】
1,1-3 加工装置
10 保持テーブル
20,20-3 加工ユニット
20-1 第1加工ユニット
20-2 第2加工ユニット
21 切削ブレード
21-1 第1切削ブレード
21-2 第2切削ブレード
22 スピンドル
22-1 第1スピンドル
22-2 第2スピンドル
25 レーザ光線発振器
26 光学系
30 撮像ユニット
31 基準線
40 移動ユニット
60 制御ユニット
100 被加工物
102 分割予定ライン
108 外周余剰領域
121 位置合わせ溝
125 距離
126 振れ量
1001 溝形成ステップ
1002 距離登録ステップ
1003 蛇行検出ステップ
1004 距離蛇行確認ステップ
1005 加工位置設定ステップ
1006 加工ステップ