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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176444
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】樹脂組成物及び成形体
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/00 20060101AFI20241212BHJP
   C08L 67/00 20060101ALI20241212BHJP
   C08L 77/00 20060101ALI20241212BHJP
   C08L 101/08 20060101ALI20241212BHJP
   C08L 67/02 20060101ALI20241212BHJP
   C08L 67/04 20060101ALI20241212BHJP
   C08L 23/10 20060101ALI20241212BHJP
   C08L 23/04 20060101ALI20241212BHJP
   C08L 23/26 20060101ALI20241212BHJP
   C08L 51/04 20060101ALI20241212BHJP
   C08L 51/06 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
C08L23/00
C08L67/00
C08L77/00
C08L101/08
C08L67/02
C08L67/04
C08L23/10
C08L23/04
C08L23/26
C08L51/04
C08L51/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094980
(22)【出願日】2023-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】山口 実沙紀
(72)【発明者】
【氏名】上田 雅博
(72)【発明者】
【氏名】宮井 章吾
(72)【発明者】
【氏名】成田 和章
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BB03Y
4J002BB05Y
4J002BB06Y
4J002BB07Y
4J002BB08Z
4J002BB09Z
4J002BB12Y
4J002BB14Y
4J002BB17Y
4J002BB21Z
4J002BB25Z
4J002BN05Z
4J002BN21Z
4J002BP02Y
4J002CE00Y
4J002CF03W
4J002CF06W
4J002CF07W
4J002CF19W
4J002CL01X
4J002CL03X
4J002CL05X
4J002FD010
4J002GC00
4J002GF00
4J002GK01
4J002GN00
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】高い機械特性と優れた外観性とを備えた成形体を得ることができる樹脂組成物を提供する。
【解決手段】樹脂組成物であって、ポリエステル樹脂及び/又はポリアミド樹脂(A)と、ポリオレフィン樹脂(B)と、カルボン酸及び/又はカルボン酸誘導体により変性された変性ポリマー(C)とを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル樹脂及び/又はポリアミド樹脂(A)と、
ポリオレフィン樹脂(B)と、
カルボン酸及び/又はカルボン酸誘導体により変性された変性ポリマー(C)とを含む、樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリエステル樹脂及び/又はポリアミド樹脂(A)が、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、及びポリ乳酸から選ばれる少なくとも1種のポリエステル樹脂を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリオレフィン樹脂(B)が、ポリプロピレンである、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記ポリオレフィン樹脂(B)が、ポリエチレンである、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記変性ポリマー(C)の酸価が、70mg・KOH/g以下である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記変性ポリマー(C)の質量平均分子量が、50,000以上である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記変性ポリマー(C)の180℃、2.16kgf(21.18N)におけるメルトマスフローレートが、0.1g/10min以上である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記変性ポリマー(C)が、前記カルボン酸及び/又はカルボン酸誘導体とポリオレフィン又はエラストマーとの共重合体である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記カルボン酸及び/又はカルボン酸誘導体に由来する構造単位が前記変性ポリマー(C)のグラフト鎖にある、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
前記カルボン酸及び/又はカルボン酸誘導体が、ジカルボン酸無水物である、請求項8に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
前記ポリオレフィンが、ポリエチレン又はポリプロピレンである、請求項8に記載の樹脂組成物。
【請求項12】
前記ポリエステル樹脂及び/又はポリアミド樹脂(A)、前記ポリオレフィン樹脂(B)、並びに前記変性ポリマー(C)の合計100質量部における、前記変性ポリマー(C)の含有量が、0.1質量部以上20質量部未満である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項13】
前記ポリエステル樹脂及び/又はポリアミド樹脂(A)、前記ポリオレフィン樹脂(B)、並びに前記変性ポリマー(C)の合計100質量部における、
前記ポリエステル樹脂及び/又はポリアミド樹脂(A)の含有量が、1質量部以上99質量部以下であり、
前記ポリオレフィン樹脂(B)の含有量が、1質量部以上99質量部以下である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか1項に記載の樹脂組成物を含む、成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物及び成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル樹脂は、機械的特性、耐熱性、剛性、ガスバリアー性及びフレーバーバリアー性等に優れている事から、調味料、飲料類、化粧品等の容器、或いは食品包装用フィルムの材料として広く用いられている。一方、ポリエステル樹脂は、高い剛性を有しているものの、そのガラス転移温度が約81℃と高いことから、耐衝撃性を必要とする成形品の製造には不向きである。
【0003】
ポリアミド樹脂は、耐薬品性及び酸素バリア性に優れるため、食品包装材及び食品容器、並びに自動車部品等の分野に広く使用されている。一方、ポリアミド樹脂は、成形温度での溶融張力が小さく、フィルム、シート及びブローといった成形が難しい。
【0004】
これらのことから、ポリエステル樹脂及び/又はポリアミド樹脂と、ポリオレフィン樹脂とのポリマーブレンド(ポリマーアロイを含む)について盛んに検討されている。例えば、特許文献1には、ポリエステル樹脂、オレフィン系樹脂及びカルボン酸変性エチレン・α-オレフィン共重合体を所定の比率で配合することにより、高い低温衝撃強度及び高い剛性を有する成形品を製造することができることが記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、ポリアミド樹脂と、ポリオレフィン樹脂と、マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂である相容化剤を含む2種以上の相容化剤と、が溶融混合された樹脂組成物を使用することにより、優れた耐衝撃特性とともに、優れた剛性が得られることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001-106886号公報
【特許文献2】特開2013-129800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ポリエステル樹脂及び/又はポリアミド樹脂と、ポリオレフィン樹脂とのポリマーブレンドは、様々な用途への適用が想定されるために、各用途に合った特性を有することが求められる。しかしながら、本発明者等の検討によると、特許文献1又は特許文献2に記載の相容化剤を用いた場合、得られる成形体の靭性及び外観が十分ではなく、さらなる改善が必要であることが判明した。
【0008】
本発明の一態様は、高い機械物性と優れた外観性とを備えた成形体を得ることができる樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等の鋭意検討により、ポリエステル樹脂及び/又はポリアミド樹脂と、ポリオレフィン樹脂と、のポリマーブレンドに、特定の構造からなる変性ポリマーを併用することにより、前記課題を解決できることが判明し、本発明を達成するに至った。すなわち、本発明は、以下を要旨とする。
【0010】
[1]ポリエステル樹脂及び/又はポリアミド樹脂(A)と、ポリオレフィン樹脂(B)と、カルボン酸及び/又はカルボン酸誘導体により変性された変性ポリマー(C)とを含む、樹脂組成物。
[2]前記ポリエステル樹脂及び/又はポリアミド樹脂(A)が、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、及びポリ乳酸から選ばれる少なくとも1種のポリエステル樹脂を含む、[1]に記載の樹脂組成物。
[3]前記ポリオレフィン樹脂(B)が、ポリプロピレンである、[1]又は[2]に記載の樹脂組成物。
[4]前記ポリオレフィン樹脂(B)が、ポリエチレンである、[1]又は[2]に記載の樹脂組成物。
[5]前記変性ポリマー(C)の酸価が、70mg・KOH/g以下である、[1]から[4]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[6]前記変性ポリマー(C)の質量平均分子量が、50,000以上である、[1]から[5]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[7]前記変性ポリマー(C)の180℃、2.16kgf(21.18N)におけるメルトマスフローレートが、0.1g/10min以上である、[1]から[6]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[8]前記変性ポリマー(C)が、前記カルボン酸及び/又はカルボン酸誘導体とポリオレフィン又はエラストマーとの共重合体である、[1]から[7]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[9]前記カルボン酸及び/又はカルボン酸誘導体に由来する構造単位が前記変性ポリマー(C)のグラフト鎖にある、[8]に記載の樹脂組成物。
[10]前記カルボン酸及び/又はカルボン酸誘導体が、ジカルボン酸無水物である、[8]に記載の樹脂組成物。
[11]前記ポリオレフィンが、ポリエチレン又はポリプロピレンである、[8]に記載の樹脂組成物。
[12]前記ポリエステル樹脂及び/又はポリアミド樹脂(A)、前記ポリオレフィン樹脂(B)、並びに前記変性ポリマー(C)の合計100質量部における、前記変性ポリマー(C)の含有量が、0.1質量部以上20質量部未満である、[1]から[11]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[13]前記ポリエステル樹脂及び/又はポリアミド樹脂(A)、前記ポリオレフィン樹脂(B)、並びに前記変性ポリマー(C)の合計100質量部における、前記ポリエステル樹脂及び/又はポリアミド樹脂(A)の含有量が、1質量部以上99質量部以下であり、前記ポリオレフィン樹脂(B)の含有量が、1質量部以上99質量部以下である、[1]から[12]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[14][1]から[13]のいずれかに記載の樹脂組成物を含む、成形体。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様によれば、高い機械物性と優れた外観性とを備えた成形体を得ることができる樹脂組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一態様について詳細に説明するが、本発明は目的を逸脱しない範囲において以下の各態様に限定されるわけではない。なお、本明細書において「~」は、下限と上限とを含むものとする。また、各好ましい範囲については、上限と下限とを任意で組み合わせて使用することができる。
【0013】
<1.樹脂組成物>
本発明の一態様に係る樹脂組成物は、ポリエステル樹脂及び/又はポリアミド樹脂(以下、ポリエステル樹脂及び/又はポリアミド樹脂(A)と称す場合がある)と、ポリオレフィン樹脂(以下、ポリオレフィン樹脂(B)と称す場合がある)と、カルボン酸及び/又はカルボン酸誘導体により変性された変性ポリマー(C)とを含む。
【0014】
ポリエステル樹脂及び/又はポリアミド樹脂(A)と、ポリオレフィン樹脂(B)とのポリマーブレンドの樹脂組成物は、樹脂同士の相溶性を向上するために、相容化剤が用いられる場合がある。このような相容化剤として、特開2001-106886号公報には、カルボン酸変性エチレン・α-オレフィン共重合体を用いることが提案されている。また、特開2013-129800号公報には、マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂である相容化剤を含む2種以上の相容化剤が提案されている。
【0015】
しかしながら、このような相容化剤を含むポリマーブレンドは、引張弾性率、引張破断伸度又はシャルピー衝撃強度といった機械物性に改善の余地がある。また、前記ポリマーブレンドの成形体にはポリエステル樹脂の分散不良による、いわゆるブツが確認される等、外観性の改善が必要な場合がある。
【0016】
本発明の一態様では、前記ポリマーブレンドにおいて、特定の構造からなる変性ポリマー(C)を併用することにより高い機械物性と優れた外観性とを備えた成形体を提供することができる。このメカニズムは明らかではないが、変性ポリマー(C)は、カルボン酸及び/又はカルボン酸誘導体を有することにより、該変性ポリマー(C)がポリエステル樹脂及び/又はポリアミド樹脂(A)と適度に反応し、ポリオレフィン樹脂(B)と相溶しやすい分子構造を付与することができるためであると考えられる。これにより、本発明の一態様に係る樹脂組成物は、混合時の分散が助長されることで、ポリエステル樹脂及び/又はポリアミド樹脂(A)の流動性及び剛性と、ポリオレフィン樹脂(B)の靭性とを併せ持った物性を発現し、優れた外観を有する成形体を得ることができる。
【0017】
このように、本発明の一態様によれば、ポリエステル樹脂及び/又はポリアミド樹脂(A)並びにポリオレフィン樹脂(B)を含む成形体の廃棄物をリサイクルする場合に、物性の低減を最小限とし、高効率に新たな樹脂組成物及びその成形体を製造できる。このような効果は、例えば、国連が提唱する持続可能な開発目標(SDGs)の目標12「つくる責任つかう責任」等の達成にも貢献するものである。
【0018】
<1-1.ポリエステル樹脂及び/又はポリアミド樹脂(A)>
本発明の一態様に係る樹脂組成物は、ポリエステル樹脂及び/又はポリアミド樹脂(A)を含有する。ここで、ポリエステル樹脂及び/又はポリアミド樹脂(A)とは、ポリエステル樹脂及びポリアミド樹脂の両方を含んでいる樹脂であってもよく、ポリエステル樹脂又はポリアミド樹脂の一方のみを含んでいる樹脂であってもよい。
【0019】
(1-1-1.ポリエステル樹脂)
ポリエステル樹脂とは、芳香族又は脂肪族のジカルボン酸とジオールとの重縮合体である。ポリエステル樹脂の製造に際して、ジカルボン酸及びジオールは、各々1種類を選んで通常の重縮合条件下で製造してもよく、或いは2種類以上を適宜組み合わせて製造してもよい。
【0020】
ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ナフタレン-1,4-ジカルボン酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸及びジフニルエーテル-4,4’-ジカルボン酸等を例示することができる。
【0021】
ジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール及び2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン等を例示することができる。重縮合に際して、p-ヒドロキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸を共存させてもよい。
【0022】
前記のジカルボン酸及びジオールから製造したポリエステル樹脂として、ポリエチレンテレフタレート及びポリブチレンテレフタレート等を代表例に挙げることができる。また、ポリエステル樹脂は、乳酸を構成単位として含むポリ乳酸等の、バイオマス由来及び生分解性の少なくともいずれかである樹脂であってもよい。
【0023】
また、ポリエステル樹脂は、それらの成形品を一旦使用した後の再生品であってもよく、さらに、未使用品と再生品との混合物であってもよい。それらポリエステル樹脂は、フェノール/テトラクロロエチレン=50/50(重量比)混合溶媒中、25℃で測定した極限粘度(IV)が、0.30~0.85(dl/g)であるポリエステル樹脂が適している。
【0024】
ポリエステル樹脂の固有粘度は、0.30(dl/g)超0.85(dl/g)未満であることが好ましい。使用するポリエステル樹脂の固有粘度が0.30(dl/g)以下である場合、溶融張力の低さにより成形性が悪化し、またフィルム等の成形体の機械特性等が不満足なものとなることがあり、好ましくない。使用するポリエステル樹脂の固有粘度が0.85(dl/g)以上である場合、溶融粘度の高さにより成形性が悪化することがある。
【0025】
(1-1-2.ポリアミド樹脂)
ポリアミド樹脂とは、主鎖中にアミド結合(-NHCO-)を有する重合体である。ポリアミド樹脂としては、例えば、ジアミン及びジカルボン酸の縮合重合で得られるポリアミド樹脂、ラクタムの開環重合で得られるポリアミド樹脂、アミノカルボン酸の自己縮合で得られるポリアミド樹脂、及びこれらのポリアミド樹脂を構成する2種類以上の単量体の共重合で得られる共重合物が挙げられる。これらのポリアミド樹脂は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。併用する場合には、これらのポリアミド樹脂をブレンドして用いる方法、又はこれらの複数のポリアミド樹脂の原料を共重合して得られるポリアミド樹脂を用いる方法等が挙げられる。
【0026】
ジアミンとしては、例えば、脂肪族ジアミン、脂環族ジアミン、芳香族ジアミン等が挙げられる。
【0027】
脂肪族ジアミンとしては、例えば、炭素数2~20の直鎖飽和脂肪族ジアミン及び炭素数3~20の分岐状飽和脂肪族ジアミン等が挙げられる。炭素数2~20の直鎖飽和脂肪族ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン及びトリデカメチレンジアミン等が挙げられる。炭素数3~20の分岐状飽和脂肪族ジアミンとしては、例えば、2-メチルペンタメチレンジアミン(2-メチル-1,5-ジアミノペンタンとも記される。)、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、2-メチルオクタメチレンジアミン及び2,4-ジメチルオクタメチレンジアミン等が挙げられる。また、炭素数3~20の分岐状飽和脂肪族ジアミンとしては、例えば、主鎖から分岐した置換基を持つジアミンが挙げられる。
【0028】
脂環族ジアミン(脂環式ジアミンとも記される。)としては、例えば、1,4-シクロヘキサンジアミン、1,3-シクロヘキサンジアミン及び1,3-シクロペンタンジアミン等が挙げられる。
【0029】
芳香族ジアミンとしては、例えば、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、メタフェニレンジアミン、オルトフェニレンジアミン及びパラフェニレンジアミン等が挙げられる。
【0030】
ジカルボン酸としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。
【0031】
脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、2,2-ジメチルコハク酸、2,3-ジメチルグルタル酸、2,2-ジエチルコハク酸、2,3-ジエチルグルタル酸、グルタル酸、2,2-ジメチルグルタル酸、アジピン酸、2-メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸、エイコサン二酸及びジグリコール酸等の、炭素数3~20の直鎖又は分岐状飽和脂肪族ジカルボン酸等が挙げられる。
【0032】
脂環族ジカルボン酸としては、例えば、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸及び1,3-シクロペンタンジカルボン酸等が挙げられる。
【0033】
脂環族カルボン酸の脂環構造の炭素数は、特に限定されないが、得られるポリアミド樹脂の吸水性と結晶化度のバランスの観点から、好ましくは3~10であり、より好ましくは5~10である。
【0034】
脂環族ジカルボン酸は、無置換でもよいし、置換基を有していてもよい。脂環族ジカルボン酸における置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基及びtert-ブチル基等の炭素数1~4のアルキル基等が挙げられる。
【0035】
芳香族ジカルボン酸としては、例えば、無置換又は置換基で置換された炭素数8~20の芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。芳香族ジカルボン酸における置換基としては、例えば、炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、炭素数7~20のアリールアルキル基、クロロ基及びブロモ基等のハロゲン基、炭素数3~10のアルキルシリル基、スルホン酸基、並びにそれらのナトリウム塩等の塩である基等が挙げられる。
【0036】
芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、2-クロロテレフタル酸、2-メチルテレフタル酸、5-メチルイソフタル酸及び5-ナトリウムスルホイソフタル酸等が挙げられる。
【0037】
ジカルボン酸中には、本発明の一態様の目的を損なわない範囲で、トリメリット酸、トリメシン酸又はピロメリット酸等の3価以上の多価カルボン酸をさらに含んでもよい。
【0038】
上述したジアミン及びジカルボン酸は、それぞれ1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0039】
ラクタムとしては、例えば、ブチロラクタム、ピバロラクタム、ε-カプロラクタム、カプリロラクタム、エナントラクタム、ウンデカノラクタム及びラウロラクタム(ドデカノラクタム)等が挙げられる。これらの中でも、靭性の観点から、ε-カプロラクタム又はラウロラクタム等が好ましく、ε-カプロラクタムがより好ましい。
【0040】
アミノカルボン酸としては、例えば、上述したラクタムが開環した化合物(ω-アミノカルボン酸、α,ω-アミノカルボン酸等)等が挙げられる。アミノカルボン酸としては、ポリアミド樹脂の結晶化度を高める観点から、ω位がアミノ基で置換された、炭素数4~14の直鎖又は分岐状の飽和脂肪族カルボン酸であることが好ましい。このような網のカルボン酸としては、例えば、6-アミノカプロン酸、11-アミノウンデカン酸及び12-アミノドデカン酸等が挙げられる。また、アミノカルボン酸としては、パラアミノメチル安息香酸等も挙げられる。
【0041】
上述したポリアミド樹脂としては、例えば、ポリアミド4(ポリα-ピロリドン)、ポリアミド6(ポリカプロアミド)、ポリアミド11(ポリウンデカンアミド)、ポリアミド12(ポリドデカンアミド)、ポリアミド46(ポリテトラメチレンアジパミド)、ポリアミド56(ポリペンタメチレンアジパミド)、ポリアミド66(ポリヘキサメチレンアジパミド)、ポリアミド610(ポリヘキサメチレンセバカミド)、ポリアミド612(ポリヘキサメチレンドデカミド)、ポリアミド116(ポリウンデカメチレンアジパミド)、ポリアミドTMHT(トリメチルヘキサメチレンテレフタルアミド)、ポリアミド6T(ポリヘキサメチレンテレフタルアミド)、ポリアミド2Me-5T(ポリ2-メチルペンタメチレンテレフタルアミド)、ポリアミド9T(ポリノナメチレンテレフタルアミド)、2Me-8T(ポリ2-メチルオクタメチレンテレフタルアミド)、ポリアミド6I(ポリヘキサメチレンイソフタルアミド)、ポリアミド6C(ポリヘキサメチレンシクロヘキサンジカルボキサミド)、ポリアミド2Me-5C(ポリ2-メチルペンタメチレンシクロヘキサンジカルボキサミド)、ポリアミド9C(ポリノナメチレンシクロヘキサンジカルボキサミド)、2Me-8C(ポリ2-メチルオクタメチレンシクロヘキサンジカルボキサミド)、ポリアミドPBCM12(ポリビス(4-アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド)、ポリアミドジメチルPBCM12(ポリビス(3-メチル-アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド)、ポリアミドMXD6(ポリメタキシリレンアジパミド)、ポリアミド10T(ポリデカメチレンテレフタルアミド)、ポリアミド11T(ポリウンデカメチレンテレフタルアミド)、ポリアミド12T(ポリドデカメチレンテレフタルアミド)、ポリアミド10C(ポリデカメチレンシクロヘキサンジカルボキサミド)、ポリアミド11C(ポリウンデカメチレンシクロヘキサンジカルボキサミド)及びポリアミド12C(ポリドデカメチレンシクロヘキサンジカルボキサミド)等が挙げられる。なお、前記「Me」は、メチル基を示す。
【0042】
また、上述の各種モノマーを重合させ、ポリアミド樹脂を製造する際には、分子量調節のために末端封止剤をさらに添加することができる。この末端封止剤としては、特に限定されず、公知のものを用いることができる。
【0043】
末端封止剤としては、例えば、モノカルボン酸、モノアミン、酸無水物、モノイソシアネート、モノ酸ハロゲン化物、モノエステル類及びモノアルコール類等が挙げられる。これらは1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0044】
末端封止剤として使用できるモノカルボン酸としては、アミノ基との反応性を有するものであればよく、例えば、脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸及び芳香族モノカルボン酸等が挙げられる。脂肪族モノカルボン酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ピバリン酸、イソブチル酸等が挙げられる。脂環族モノカルボン酸としては、例えば、シクロヘキサンカルボン酸等が挙げられる。芳香族モノカルボン酸としては、例えば、安息香酸、トルイル酸、α-ナフタレンカルボン酸、β-ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカルボン酸及びフェニル酢酸等が挙げられる。これらは1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0045】
末端封止剤として使用できるモノアミンとしては、カルボキシル基との反応性を有するものであればよく、例えば、脂肪族モノアミン、脂環族モノアミン及び芳香族モノアミン等が挙げられる。脂肪族モノアミンとしては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン及びジブチルアミ等が挙げられる。脂環族モノアミンとしては、例えば、シクロヘキシルアミン及びジシクロヘキシルアミン等が上げられる。芳香族モノアミンとしては、例えば、アニリン、トルイジン、ジフェニルアミン及びナフチルアミン等が挙げられる。これらは1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0046】
末端封止剤として使用できる酸無水物としては、例えば、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水安息香酸、無水酢酸及びヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。これらは、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0047】
末端封止剤として使用できるモノイソシアネートとしては、例えば、フェニルイソシアネート、トリルイソシアネート、ジメチルフェニルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、ブチルイソシアネート及びナフチルイソシアネート等が挙げられる。これらは1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0048】
末端封止剤として使用できるモノ酸ハロゲン化物としては、例えば、安息香酸、ジフェニルメタンカルボン酸、ジフェニルスルホンカルボン酸、ジフェニルスルホキシドカルボン酸、ジフェニルスルフィドカルボン酸、ジフェニルエーテルカルボン酸、ベンゾフェノンカルボン酸、ビフェニルカルボン酸、α-ナフタレンカルボン酸、β-ナフタレンカルボン酸及びアントラセンカルボン酸等のモノカルボン酸がハロゲン置換された、ハロゲン置換モノカルボン酸が挙げられる。これらは1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0049】
末端封止剤として使用できるモノエステルとしては、例えば、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノベヘネート、グリセリンモノモンタネート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールモノベヘネート、ペンタエリスリトールモノモンタネート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノベヘネート、ソルビタンモノモンタネート、ソルビタンジモンタネート、ソルビタントリモンタネート、ソルビトールモノパルミテート、ソルビトールモノステアレート、ソルビトールモノベヘネート、ソルビトールトリベヘネート、ソルビトールモノモンタネート及びソルビトールジモンタネート等が挙げられる。これらは1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0050】
末端封止剤として使用できるモノアルコールとしては、例えば、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール、オクタデカノール、ノナデカノール、エイコサノール、ドコサノール、トリコサノール、テトラコサノール、ヘキサコサノール、ヘプタコサノール、オクタコサノール、トリアコンタノール(以上、直鎖状又は分岐状)、オレイルアルコール、ベヘニルアルコール、フェノール、クレゾール(o-、m-又はp-体)、ビフェノール(o-、m-又はp-体)、1-ナフトール及び2-ナフトール等が挙げられる。これらは1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0051】
前記のなかでも、ポリアミド樹脂は、ポリアミド4(ポリα-ピロリドン)、ポリアミド6(ポリカプロアミド)、ポリアミド11(ポリウンデカンアミド)、ポリアミド12(ポリドデカンアミド)、ポリアミド46(ポリテトラメチレンアジパミド)、ポリアミド56(ポリペンタメチレンアジパミド)、ポリアミド66(ポリヘキサメチレンアジパミド)、ポリアミド610(ポリヘキサメチレンセバカミド)、ポリアミド612(ポリヘキサメチレンドデカミド)又はポリアミド116(ポリウンデカメチレンアジパミド)等が好ましい。
【0052】
ポリアミド樹脂の質量平均分子量は特段の制限はないが、機械物性のために、10,000以上であることが好ましく、15,000以上であることがより好ましく、20,000以上であることがより好ましい。一方、加工性のために、該質量平均分子量は70,000以下であることが好ましく、65,000以下であることがより好ましく、60,000以下であることがより好ましい。ポリアミド樹脂の質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィにより測定することができる。
【0053】
ポリアミド樹脂の市販品としては、例えば、宇部興産株式会社製のUBEナイロン1013B、UBE1022B及びUBE1030B、東洋紡株式会社製のグラマイドT-802、グラマイドT-860、グラマイドT-222SA、グラマイドT-662及びグラマイドT-656E、ユニチカ株式会社製のユニチカナイロンA1020BRL、ユニチカナイロンA1030BRL、ユニチカナイロンA1030BRF、ユニチカナイロンA1030BRT、ユニチカナイロンM1040及びユニチカナイロンA125、並びに、東レ株式会社製のアミランCM1007、アミランCM1017、アミランCM1017XL3、アミランCM1017K、アミランCM1026、アミランCM3007、アミランCM3001-N、アミランCM3006及びアミランCM3301Lが挙げられる。
【0054】
<1-2.ポリオレフィン樹脂(B)>
上述の通り、本発明の一態様に係る樹脂組成物はポリオレフィン樹脂(B)を含む。なお、本発明の一態様において「ポリオレフィン樹脂(B)」とは、樹脂を構成する全ての構成単位100mol%に対し、オレフィン単位又はシクロオレフィン単位が占める割合が80mol%以上であり、変性ポリマー(C)とは異なる樹脂である。なかでも、ポリオレフィン樹脂(B)を構成する全ての構成単位100mol%に対し、オレフィン単位及びシクロオレフィン単位の合計割合は、85mol%以上が好ましく、90mol%以上がより好ましい。
【0055】
ポリオレフィン樹脂(B)としては、例えば、α-オレフィンの単独重合体、α-オレフィンの共重合体及びシクロオレフィン重合体等が挙げられる。α-オレフィンの単独重合体としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ(3-メチル-1-ブテン)、ポリ(3-メチル-1-ペンテン)、ポリ(4-メチル-1-ペンテン)等が挙げられる。α-オレフィンの共重合体としては、例えば、エチレン-プロピレンブロック又はランダム共重合体、炭素原子数4以上のα-オレフィン-プロピレンブロック又はランダム共重合体、エチレン-メチルメタクリレート共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。シクロオレフィン重合体としては、例えば、ポリシクロヘキセン、ポリシクロペンテン等が挙げられる。
【0056】
ポリエチレンとしては、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン及び高密度ポリエチレン等が挙げられる。ポリプロピレンとしては、アイソタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン、ヘミアイソタクチックポリプロピレン及びステレオブロックポリプロピレン等が挙げられる。炭素原子数4以上のα-オレフィン-プロピレンブロック又はランダム共重合体において、炭素原子数4以上のα-オレフィンとしては、ブテン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン及び4-メチル-1-ペンテン等が挙げられる。本発明の一態様に係る樹脂組成物中、ポリオレフィン樹脂(B)は1種のみ含まれていてもよいし、2種以上含まれていてもよい。これらは未使用の重合体であっても、或いは一旦使用した後の再生重合体であってもよい。
【0057】
前記のなかでも、ポリオレフィン樹脂(B)は、ポリエチレン、ポリプロピレン又はポリブテンが好ましく、ポリプロピレン及びブロックポリプロピレン等のプロピレン系重合体が好ましい。
【0058】
ポリオレフィン樹脂(B)のメルトマスフローレートは特段の制限はないが、機械特性向上のために、0.1g/10min以上であることが好ましく、0.2g/10min以上であることがより好ましく、0.3g/10min以上であることがより好ましい。一方、加工性向上のために、該メルトマスフローレートは70g/10min以下であることが好ましく、60g/10min以下であることがより好ましく、50g/10min以下であることがより好ましく、30g/10min以下であることがより好ましく、25g/10min以下であることがより好ましく、15g/10min以下であることがより好ましく、12.5g/10min以下であることがより好ましく、10g/10min以下であることがより好ましい。ポリオレフィン樹脂(B)のメルトマスフローレートは、JIS K7210により算出することができる。メルトマスフローレートの測定における温度及び荷重は、材料規格により規定されている材料については当該規定に従い、規定されていない材料については190℃、2.16kgf(21.18N)とする。
【0059】
ポリオレフィン樹脂(B)の市販品としては、例えば、日本ポリプロ株式会社製のノバテック(登録商標)MA3、ノバテックMA3H、ノバテックMA1B、ノバテックEA9、ノバテックEA9HD、ノバテックEA9FTD、ノバテックEA7AD、ノバテックFY6H、ノバテックEA6A、ノバテックFY6、ノバテックFY6C、ノバテックFY4及びノバテックSA3A、株式会社プライムポリマー製のプライムポリプロ(登録商標)J105G、プライムポリプロJ106G、プライムポリプロJ106MG、プライムポリプロ107G、プライムポリプロJ137G、プライムポリプロJ108M、エボリュー(登録商標)SP2320、エボリューSP2520、エボリューSP2510、エボリューSP3010、エボリューSP4020、エボリューSP1071C、ハイゼックス(登録商標)1300J、ハイゼックス2100J、ハイゼックス2100JH、ハイゼックス2200J、ハイゼックス2208J、ハイゼックス3300F、ハイゼックス3600F、ハイゼックス7000F及びハイゼックス8000F、並びに、日本ポリエチレン株式会社製のノバテックLL UF420、ノバテックLL UF421、ノバテックLL UF621、ノバテックLL UF524、ノバテックLL UF622、ノバテックLL UF230、ノバテックLL UF320、ノバテックLL UF332、ノバテックLL UA421、ノバテックLL UF240、ノバテックLL UF442、ノバテックLL UF641、ノバテックLL UF943、ノバテックLL UJ960、ノバテックLL UJ370、ノバテックLL UJ580、ノバテックLL UJ480、ノバテックLL UJ990、ノバテックLL UJ790、ノバテックLL UE320、ノバテックLL UR951、ノバテックC6 SF720、ノバテックC6 SF941、ノバテックC6 SF8402、ノバテックHD HJ360、ノバテックHD 362N、ノバテックHD HJ560、ノバテックHD HJ580N、ノバテックHD HJ490、ノバテックHD HJ590N、ノバテックHD HY420、ノバテックHD HY530、ノバテックHD HY430、ノバテックHD HY331、ノバテックHD HY540、ノバテックHD HE122R、ノバテックHD HF313、ノバテックHD HF111K、ノバテックHD HF560、ノバテックHD HE121、ノバテックHD HE212W、ノバテックHD HE421、ノバテックHD HB420R、ノバテックHD HB338RE、ノバテックHD HB332E、ノバテックHD HB432E、ノバテックHD HB530、ノバテックHD HB216R及びノバテックHDHB111R等が挙げられる。
【0060】
<1-3.変性ポリマー(C)>
本発明の一態様に係る樹脂組成物は、カルボン酸及び/又はカルボン酸誘導体により変性された変性ポリマー(C)を含有する。この変性ポリマー(C)は、ジエン等の他の成分を含んでいてもよい。「カルボン酸及び/又はカルボン酸誘導体により変性された」とは、変性の基質となるポリマーが、カルボン酸及び/又はカルボン酸誘導体と共重合した状態を示す。尚、機械物性、外観向上の観点から、カルボン酸及び/又はカルボン酸誘導体に由来する構造単位が前記変性ポリマー(C)のグラフト鎖にあることが好ましい。
【0061】
カルボン酸としては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、メチルマレイン酸、フマル酸、メチルフマル酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、グルタコン酸及びノルボルナン-5-エン-2,3-ジカルボン酸等が挙げられる。なお、「(メタ)アクリル酸」はアクリル酸又はメタクリル酸を示す。
【0062】
カルボン酸誘導体としては、例えば、カルボン酸エステル、カルボン酸無水物及びカルボン酸イミド等が挙げられる。
【0063】
カルボン酸エステルとしては、前記カルボン酸のエステル化合物が挙げられ、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルへキシル及び(メタ)アクリル酸グリシジル等の(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
【0064】
カルボン酸無水物としては、例えば、前記カルボン酸の無水物が挙げられ、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水コハク酸、無水シトラコン酸及び5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物等のジカルボン酸無水物が挙げられる。
【0065】
カルボン酸イミドとしては、例えば、前記カルボン酸のイミド化合物が挙げられ、例えば、マレイミド、N-エチルマレイミド及びN-フェニルマレイミド等のマレイミド化合物が挙げられる。
【0066】
なお、カルボン酸及び/又はカルボン酸誘導体として、これらは1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。上述の中では、変性反応性の点から、カルボン酸エステル又はジカルボン酸無水物が好ましく、ジカルボン酸無水物がより好ましく、無水マレイン酸がより好ましい。
【0067】
変性ポリマー(C)の製造方法は特に制限を受けるものではないが、例えば、(1)変性の基質となるポリマーを重合した後、カルボン酸及び/又はカルボン酸誘導体を有する化合物又は単量体を付加させる方法、(2)変性の基質となるポリマーを重合した後、酸化処理してその共重合体分子中にカルボン酸基を生成させる方法、(3)変性の基質となるポリマーと酸性基を有する化合物又は単量体とを共重合する方法等が挙げられる。重合方法としては、溶液重合、乳化重合、懸濁重合、塊状重合等のラジカル重合法、又はリビング重合法を採用することができる。さらに一旦マクロモノマーを形成した後、重合する方法も採用可能である。変性ポリマー(C)は、グラフト鎖としてカルボン酸及び/又はカルボン酸誘導体を有することが好ましく、この点において、前記(1)の方法が好ましい。なお、変性ポリマー(C)は、主鎖にカルボン酸及び/又はカルボン酸誘導体を有していてもよい。
【0068】
変性ポリマー(C)100重量%におけるカルボン酸及び/又はカルボン酸誘導体の合計割合は、特段の制限はないが、ポリエステル樹脂及び/又はポリアミド樹脂(A)とポリオレフィン樹脂(B)との相溶性改善のために、0.01重量%以上であることが好ましく、0.05重量%以上であることがさらに好ましい。一方、成形品の外観性向上のために、該合計割合は、20重量%以下であることが好ましく、15重量%以下がさらに好ましい。
【0069】
変性ポリマー(C)において、変性の基質となるポリマーとしては、例えば、ポリオレフィン及びエラストマーが挙げられる。言い換えれば、変性ポリマー(C)は、カルボン酸及び/又はカルボン酸誘導体とポリオレフィンとの共重合体であってもよく、カルボン酸及び/又はカルボン酸誘導体とエラストマーとの共重合体であってもよい。
【0070】
変性ポリマー(C)において、変性の基質となるポリオレフィンとしては、特に制限されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン及び熱可塑性エラストマーが挙げられる。前記<1-2.ポリオレフィン樹脂(B)>において例示したポリオレフィンを1種又は2種以上含むものであってよい。
【0071】
変性ポリマー(C)を有機溶剤に溶解し、溶解液を熱分解GC-MS(ガスクロマトグラフィー質量分析計、無極性カラムを使用)に供することで、変性ポリマー(C)の分子量が得られ、変性ポリマー(C)に含まれるα-オレフィンの炭素原子数と含有量とを算出することができる。変性ポリマー(C)を溶解する有機溶剤としては、例えばTHF(テトラヒドロフラン)が挙げられるが、これに限定されない。
【0072】
変性ポリマー(C)において、変性の基質となるエラストマーとしては、特段の制限はないが、例えば、熱可塑性エラストマーであることが好ましい。熱可塑性エラストマーとしては、例えば、オレフィン系熱可塑性エラストマー及びスチレン系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
【0073】
オレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、α-オレフィン・エチレン共重合体が挙げられる。α-オレフィン・エチレン共重合体におけるエチレン含量は、60~95mol%が好ましく、70~90mol%がさらに好ましく、α-オレフィン含量は5~40mol%が好ましく、10~30mol%がさらに好ましい。オレフィン系熱可塑性エラストマーは、α-オレフィンとエチレンのランダム共重合体であってよい。α-オレフィンとしては、直鎖又は分岐鎖状の炭素原子数3~20のα-オレフィンが好ましく、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン及び1-デセンを挙げることができ、またそれらを2種類以上組み合わせて使用してもよい。これら共重合体の中でも、プロピレン・エチレン共重合体、1-ブテン・エチレン共重合体又は1-オクテン・エチレン共重合体が好ましい。この共重合体中には、少量のジエン成分が含まれていてもよい。また、オレフィン系熱可塑性エラストマーは、その密度が0.85~0.90(g/cm)であることが望ましい。このようなα-オレフィン・エチレン共重合体は、例えば、チーグラー系触媒又はメタロセン系触媒の存在下に、エチレンとα-オレフィンとの共重合を溶液状態で行うことによって製造することができる。
【0074】
スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレン・エチレン・ブチレン・スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(SIS)及びスチレン・エチレン・プロピレン・スチレンブロック共重合体(SEPS)等が挙げられる。
【0075】
変性ポリマー(C)のメルトマスフローレートは特段の制限はないが、樹脂中での分散性向上のために、0.1g/10min以上であることが好ましく、0.2g/10min以上であることがより好ましく、0.3g/10min以上であることがより好ましく、0.4g/10min以上であることがより好ましく、0.5g/10min以上であることがより好ましく、1.0g/10min以上であることがより好ましい。一方、加工性の低下を抑制するために、該メルトマスフローレートは660g/10min以下であることが好ましく、500g/10min以下であることがより好ましく、250g/10min以下であることがより好ましく、100g/10min以下であることがより好ましく、80g/10min以下であることがより好ましく、70g/10min以下であることがより好ましく、60g/10min以下であることがより好ましく、50g/10min以下であることがより好ましい。変性ポリマー(C)のメルトマスフローレートは、JIS K7210により算出することができる。メルトマスフローレートの測定における温度及び荷重は、180℃、2.16kgf(21.18N)とする。
【0076】
変性ポリマー(C)の酸価は、成形品の外観性向上のために、1mg・KOH/g以上であることが好ましく、なかでも、2mg・KOH/g以上であることが好ましく、3mg・KOH/g以上であることがより好ましく、5mg・KOH/g以上であることがより好ましく、6mg・KOH/g以上であることがより好ましく、8mg・KOH/g以上であることがより好ましい。
【0077】
一方、変性ポリマー(C)の酸価が高すぎる場合、変性ポリマー(C)がポリエステル樹脂及び/又はポリアミド樹脂(A)と過剰に反応してしまい、変性ポリマー(C)がポリエステル樹脂及び/又はポリアミド樹脂(A)並びにポリオレフィン樹脂(B)に対して適当な相溶性を得ることが困難になる可能性がある。そのため、該酸価は、100mg・KOH/g以下であることが好ましく、80mg・KOH/g以下であることがより好ましく、70mg・KOH/g以下であることがより好ましく、55mg・KOH/g以下であることがより好ましく、40mg・KOH/g以下であることがより好ましく、30mg・KOH/g以下であることがより好ましく、20mg・KOH/g以下であることがより好ましい。
【0078】
変性ポリマー(C)の酸価は、FT-IR測定により酸価を測定することができる。変性ポリマー(C)を、融解温度以上において5MPaで5分間熱プレスして成形品を作製する。この成形品についてFT-IR測定を行い、1780cm-1の吸収によりカルボン酸及び/又はカルボン酸誘導体の変性率を定量する。変性率に係数11.44を乗じて酸価を算出する。
【0079】
変性ポリマー(C)の質量平均分子量は、特段の制限はないが、耐衝撃性向上のため10,000以上が好ましく、20,000以上がより好ましく、30,000以上がより好ましく、40,000以上がより好ましく、50,000以上がより好ましく、60,000以上がより好ましく、80,000以上がより好ましく、100,000以上がより好ましい。また、変性ポリマー(C)の質量平均分子量が高すぎると樹脂組成物中での分散性が悪くなることから、該質量平均分子量は1,000,000以下が好ましく、750,000以下がより好ましく、500,000以下がより好ましく、250,000以下がより好ましく、200,000以下がより好ましい。変性ポリマー(C)の質量平均分子量は、変性ポリマー(C)をTHF等の有機溶剤に溶解し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィにより測定される標準ポリスチレン換算の値である。
【0080】
<1-4.樹脂組成物>
本発明の一態様に係る樹脂組成物中、ポリエステル樹脂及び/又はポリアミド樹脂(A)、ポリオレフィン樹脂(B)、並びに変性ポリマー(C)の合計100質量部における、ポリエステル樹脂及び/又はポリアミド樹脂(A)の含有量は、特段の制限はないが、得られる成形品の耐熱性向上のために、1質量部以上であることが好ましく、5質量部以上であることがより好ましく、7.5質量部以上であることがより好ましく、10質量部以上であることがより好ましい。一方、得られる成形品の軽量化のために、ポリエステル樹脂及び/又はポリアミド樹脂(A)の含有量は99質量部以下であることが好ましく、95質量部以下であることがより好ましく、92.5質量部以下であることがより好ましく、90質量部以下であることがより好ましい。
【0081】
樹脂組成物中、ポリエステル樹脂及び/又はポリアミド樹脂(A)、ポリオレフィン樹脂(B)、並びに変性ポリマー(C)の合計100質量部における、ポリオレフィン樹脂(B)の含有量は、特段の制限はないが、得られる成形品の軽量化のために、1質量部以上であることが好ましく、5質量部以上であることがより好ましく、7.5質量部以上であることがより好ましく、10質量部以上であることがより好ましい。一方、得られる成形品の耐熱性向上のために、ポリオレフィン樹脂(B)の含有量は99質量部以下であることが好ましく、95質量部以下であることがより好ましく、92.5質量部以下であることがより好ましく、90質量部以下であることがより好ましい。
【0082】
樹脂組成物中、ポリエステル樹脂及び/又はポリアミド樹脂(A)、ポリオレフィン樹脂(B)、並びに変性ポリマー(C)の合計100質量部における、変性ポリマー(C)の含有量は、特段の制限はないが、ポリエステル樹脂及び/又はポリアミド樹脂(A)と、ポリオレフィン樹脂(B)と、後述する他の成分との親和性を高めるために、0.1質量部以上であることが好ましく、0.3質量部以上であることがより好ましく、0.5質量部以上であることがより好ましい。一方、成形品の外観性向上のために、変性ポリマー(C)の含有量は20質量部未満であることが好ましく、10質量部以下であることがより好ましく、7.5質量部以下であることがより好ましく、5質量部以下であることがより好ましい。
【0083】
樹脂組成物100質量部における、ポリエステル樹脂及び/又はポリアミド樹脂(A)とポリオレフィン樹脂(B)との合計量の割合は、特段の制限はないが、加工性向上のために、10質量部以上であることが好ましく、20質量部以上であることがより好ましく、30質量部以上であることがより好ましい。一方、成形品の外観性向上のために、該合計量の割合は99.9質量部以下であることが好ましく、99.8質量部以下であることがより好ましく、99.7質量部以下であることがより好ましい。
【0084】
樹脂組成物は、ポリエステル樹脂及び/又はポリアミド樹脂(A)、ポリオレフィン樹脂(B)、並びに変性ポリマー(C)以外の他の成分を含有していてもよい。
【0085】
他の成分としては、例えば、フィラーが挙げられる。なお、本発明の一態様においてフィラーとは機械強度、光反射・散乱、難燃性、遮音性又は制振性等を付与する目的で添加され、樹脂組成物の加工温度以上の融点を有する成分を意味するものとする。
【0086】
フィラーとしては、特段の制限はないが、無機系フィラー又は有機系フィラーが挙げられる。無機系フィラーとしては特段の制限はなく、ガラス繊維、ガラスビーズ、タルク、硫酸バリウム、ワラストナイト、カオリン、微粉末シリカ、マイカ、珪酸カルシウム、酸化アルミニウム及び酸化マグネシウム等が挙げられる。有機系フィラーとしては特段の制限はなく、木粉、紙粉、セルロース繊維及び炭素繊維等が挙げられる。
【0087】
前記のなかでも、フィラーは無機系フィラー、紙紛又はセルロース繊維であることが好ましく、なかでも、ガラスフィラー、ガラスビーズ、紙粉又はセルロース繊維が好ましい。
【0088】
樹脂組成物がフィラーを含む場合、その割合は特段の制限はないが、機械強度のために樹脂組成物100質量部に対して、10質量部以上であることが好ましく、15質量部以上であることがより好ましく、20質量部以上であることがより好ましい。一方、成形加工性のために、フィラーの割合は70質量部以下であることが好ましく、60質量部以下であることがより好ましく、50質量部以下であることがより好ましい。
【0089】
また、フィラー以外の他の成分としては、ポリエステル樹脂及び/又はポリアミド樹脂(A)並びにポリオレフィン樹脂(B)以外のその他の樹脂、難燃剤(例えば、燐系、ブロム系、シリコーン系及び有機金属塩系等)、ドリップ防止剤(例えば、フッ素化ポリオレフィン、シリコーン及びアラミド繊維等)、滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム等の長鎖脂肪酸金属塩等)、離型剤(例えば、ペンタエリスリトールテトラステアレート等)、成核剤、帯電防止剤、安定剤(例えば、フェノール系安定剤、硫黄系安定剤、リン系安定剤、紫外線吸収剤及びアミン系光安定剤等)、可塑剤、色素及び顔料等が挙げられる。なお、これらのその他の成分は周知の材料を使用することができ、また、樹脂組成物を使用する用途に合わせて任意で選択して使用することができ、また、樹脂組成物における各その他の成分も任意で選択すればよい。
【0090】
樹脂組成物100質量部におけるその他の成分の割合は特段の制限はないが、通常、0.1質量部以上であり、一方、60質量部以下であることが好ましく、50質量部以下であることがより好ましい。
【0091】
本発明の一態様に係る樹脂組成物を製造するには、任意の方法が採用される。例えば、ポリエステル樹脂及び/又はポリアミド樹脂(A)と、ポリオレフィン樹脂(B)と、変性ポリマー(C)と、必要に応じて他の成分とを混合する。該混合は、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー、メカノケミカル装置又は押出混合機等の予備混合手段を用いてよい。また、場合により混合で得られた混合物を押出造粒器又はブリケッティングマシーン等により造粒し、その後、溶融混練機で溶融混練し、押し出す方法が挙げられる。
【0092】
溶融混練機としては、ベント式二軸押出機等の二軸押出機、バンバリーミキサー、混練ロール、単軸押出機及び3軸以上の多軸押出機等が挙げられる。溶融混練する際の温度は、例えば200~320℃である。前記の如く押し出された樹脂組成物は、直接、ペレタイザー等の機器により切断されてペレット化されるか、又は冷却されてストランドを形成した後、係るストランドがペレタイザー等の機器により切断されてペレット化される。
【0093】
<2.成形体>
本発明の一態様に係る樹脂組成物を成形することにより、成形体を得ることができる。なお、樹脂組成物の用途としては、自動車、オートバイ、船の部品、電機電子部品、雑貨、繊維、フィルム、成形品等をリサイクルして得られる成形体、及びその他の分野で有用な成形体等が挙げられる。
【0094】
成形体は、本発明の一態様に係る樹脂組成物を含有する。すなわち、成形体は、ポリエステル樹脂及び/又はポリアミド樹脂(A)と、ポリオレフィン樹脂(B)と、変性ポリマー(C)と、を含有する。なお、成形体において各成分の好ましい比率は、上述の樹脂組成物について記載した好ましい比率と同じである。成形体の形状は特に限定されず、樹脂板、シート、フィルム、ケーブル、繊維又は異形品等の種々の形状をとり得る。
【0095】
本発明の一態様に係る樹脂組成物から得られるフィルム及びシートは用途に応じて、ポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィン類、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、エチレン-ビニルアルコール共重合体、アルミ箔及び紙等、他の基材と2種或いはそれ以上に積層してもよい。
【0096】
本発明の一態様に係る樹脂組成物から得られる繊維は用途に応じて、ポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィン類、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、エチレン-ビニルアルコール共重合体及びポリエステル等、他の基材と2種或いはそれ以上の層を有してもよい。
【0097】
本発明の一態様に係る成形体を得るための成形方法は、特に限定されるものではなく、押し出し加工、カレンダー加工、射出成形、ロール、圧縮成形及びブロー成形等が挙げられる。本発明の一態様に係る樹脂組成物を成形する際の温度は、例えば、200~320℃である。
【0098】
本発明は上述した各態様に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる態様としてそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる態様についても、本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例0099】
以下、本発明の一態様を実施例により、具体的に説明する。但し、本発明は以下の実施例により何ら制限されるものではない。なお、以下の実施例等において、%は特に記載が無い限り質量基準である。
【0100】
[実施例1~15、比較例1~8]
表1から表5に示す比率で各原料を配合し、ハンドブレンドで混合した。その後、φ30mm異方向二軸押出機(機種名「PCM-30」、(株)池貝製)を用い、スクリュー回転数150rpm、シリンダー温度250~270℃の条件で溶融混練して樹脂組成物を得た。
【0101】
なお、表1から表5に示す各原料の詳細は下記の通りである;
ポリアミド樹脂(A-1):ナイロン6樹脂(宇部興産(株)製、宇部ナイロン1022B、数平均分子量22,000)
ポリアミド樹脂(A-2):ナイロン66樹脂(東洋紡(株)製、グラマイドT-662、数平均分子量47,000)
ポリエステル樹脂(A-3):ポリエチレンテレフタレート樹脂((株)ベルポリエステルプロダクツ製、ベルペット(登録商標) EFG70、極限粘度(IV)=0.75 dl/g)
ポリエステル樹脂(A-4):ポリエチレンテレフタレート樹脂(帝人(株)製、TRN-MTJ、極限粘度(IV)=0.53 dl/g)
ポリオレフィン樹脂(B-1):直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(プライムポリマー(株)製、エボリュー SP2520、メルトマスフローレート1.9g/10min)
ポリオレフィン樹脂(B-2):高密度ポリエチレン樹脂(日本ポリプロ(株)製、ノバテックHD HJ580、メルトマスフローレート12g/10min)
ポリオレフィン樹脂(B-3):ポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ(株)製、ノバテックPP FY-4、メルトマスフローレート5.0g/10min)
ポリオレフィン樹脂(B-4):ポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ(株)製、ノバテックPP MA1B、メルトマスフローレート21g/10min)
変性ポリマー(C-1):無水マレイン酸変性ポリエチレン(酸価10mgKOH/g、メルトマスフローレート1.2g/10min、質量平均分子量149,000、密度0.92g/cm
変性ポリマー(C-2):無水マレイン酸変性ポリプロピレン(酸価10mgKOH/g、メルトマスフローレート45g/10min、質量平均分子量150,000、密度0.91g/cm
変性ポリマー(C-3):無水マレイン酸変性エラストマー(酸価4mgKOH/g、メルトマスフローレート1.1g/10min、エラストマー:α-オレフィン・エチレン共重合体、密度0.88g/cm
【0102】
変性ポリマー(C-1)、(C-2)および(C-3)のメルトマスフローレートは、180℃、2.16kgf(21.18N)の条件で測定した。
【0103】
得られた樹脂組成物を、100t射出成形機(機種名「SE-100DU」、住友重機械工業(株)製)を用い、成形温度220~270℃の条件で射出成形して長さ80mm×幅10mm×厚さ4mmの成形体(シャルピー衝撃強度試験片)、JIS-7139で定める引張試験片及びペレットの態様の射出成形体を得た。得られたペレットについては、80℃で一昼夜除湿乾燥し、300mm幅のTダイを取り付け、スクリーンメッシュを設けた25mmφの単軸押出機(L/D=20)を用いて、以下の条件にてフィルムを製膜した;
実施例1、2及び比較例1:シリンダー温度230~250℃、Tダイ温度250℃、フィルム厚さ約450μm
実施例3、4及び比較例2:シリンダー温度250~270℃、Tダイ温度270℃、フィルム厚さ約450μm
実施例5、6及び比較例3:シリンダー温度250~270℃、Tダイ温度270℃、フィルム厚さ約140μm
【0104】
実施例7~14及び比較例4~7に係る射出成形体の加工温度は、シリンダー温度270℃、成形温度270℃とした。実施例15及び比較例8に係る射出成形体の加工温度は、シリンダー温度270℃、成形温度220℃とした。
【0105】
各成形体を用いて、以下に記載の評価を行った。
【0106】
[シャルピー衝撃試験]
シャルピー衝撃強度は、ISO-179-1に準拠し、ISO2818に準拠したTYPE Aのノッチを刻んで測定した。
【0107】
[引張試験]
引張弾性率及び引張破断伸度は、ISO-527に準拠し測定した。実施例5、実施例7~10、実施例15、比較例3~5及び比較例8は、引張速度を5mm/minとして測定した。実施例11~14、比較例6及び比較例7は、引張速度を50mm/minとして測定した。
【0108】
[外観評価]
外観は、得られた成形体(フィルム)を用い、フィッシュアイ数を測定して評価した。オフライン型FEカウンター((株)メック製、型式:LSC-4500)を用い、フィルム中の0.001mm以上の大きさのフィッシュアイを検出した。また、測定面積は計324cmとなるように設定し、324cm中のフィッシュアイの総数を測定した。
【0109】
[透過率(HAZE)]
透過率(HAZE)は、得られた成形体(フィルム)を用い、JIS K-7361に準拠して測定した。
【0110】
[突き刺し強度]
JIS Z 1707に準拠し、直径1.0mmの針を毎分50mmの速度で突き刺し、針が貫通するまでの最大応力を測定した。
【0111】
[結果]
得られた結果を表1から表5に示す。
【0112】
【表1】
【0113】
【表2】
【0114】
【表3】
【0115】
【表4】
【0116】
【表5】
【0117】
実施例1~2と比較例1、実施例3~4と比較例2をそれぞれ比較すると明らかなように、ポリエステル樹脂又はポリアミド樹脂とポリオレフィン樹脂とを含む樹脂組成物の成形品において、変性ポリマー(C)を併用することで、突き刺し強度により表される機械物性が大きく向上した。また、HAZEが小さいことから色むらが低減した、外観性に優れた成形品を得ることができた。
【0118】
また、実施例5~6と比較例3を比較すると明らかなように、ポリエステル樹脂及びポリアミド樹脂とポリオレフィン樹脂とを含む樹脂組成物の成形品において、変性ポリマー(C)を併用することで、フィッシュアイ数が少なく、また、HAZEが小さいことから色むらについても低減した、外観性に優れた成形品を得ることができた。さらに、実施例5と比較例3を比較すると、変性ポリマー(C)を併用することで、引張弾性率により表される機械物性が向上した。
【0119】
また、実施例7~8と比較例4、実施例9~10と比較例5、実施例15と比較例8をそれぞれ比較すると明らかなように、ポリエステル樹脂とポリオレフィン樹脂とを含む樹脂組成物の成形品において、変性ポリマー(C)を併用することで、引張破断伸度及び/又はシャルピー衝撃強度により表される機械物性が大きく向上した。
【0120】
また、実施例11~12と比較例6、実施例13~14と比較例7をそれぞれ比較すると明らかなように、ポリアミド樹脂とポリオレフィン樹脂とを含む樹脂組成物の成形品において、変性ポリマー(C)を併用することで、引張弾性率及び/又は引張破断伸度及びシャルピー衝撃強度により表される機械物性が大きく向上した。
【0121】
以上に示すように、ポリエステル樹脂及び/又はポリアミド樹脂(A)とポリオレフィン樹脂(B)とを含む樹脂組成物において、変性ポリマー(C-1)、(C-2)又は(C-3)のような、カルボン酸及び/又はカルボン酸誘導体により変性された変性ポリマー(C)を併用すれば、特に、引張弾性率、引張破断伸度及びシャルピー衝撃強度により表される機械物性が大幅に向上し、HAZEおよびフィッシュアイ数が小さく色むらが低減した、外観性も優れる成形体が得られることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明の一態様に係る樹脂組成物は、ポリエステル樹脂及び/又はポリアミド樹脂とポリオレフィン樹脂とが良好に相溶している。このような樹脂組成物により、高い機械物性と優れた外観性とを備えた成形体を得ることができる。
【0123】
本発明の一態様に係る樹脂組成物を用いて得られた成形体は、自動車、オートバイ、船の部品や電機電子部品、雑貨、繊維、フィルム及び成形品等をリサイクルして得られる成形体、その他の分野で有用な成形体等に好適に用いることができる。