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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017646
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】粉粒体搬送設備
(51)【国際特許分類】
   B65G 53/16 20060101AFI20240201BHJP
   C22B 15/00 20060101ALI20240201BHJP
   F27D 3/18 20060101ALI20240201BHJP
   B65G 53/50 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
B65G53/16
C22B15/00
F27D3/18
B65G53/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022120437
(22)【出願日】2022-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136825
【弁理士】
【氏名又は名称】辻川 典範
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(72)【発明者】
【氏名】本村 優貴
(72)【発明者】
【氏名】森 勝弘
【テーマコード(参考)】
3F047
4K001
4K055
【Fターム(参考)】
3F047AA03
3F047BA02
3F047CA01
3F047CA15
4K001AA09
4K001BA03
4K001DA03
4K001GA04
4K055AA00
4K055MA02
(57)【要約】
【課題】 付着に起因する閉塞を生じさせやすい粉粒体であっても過乾燥させることなく安定的に気流搬送することが可能な設備を提供する。
【解決手段】 搬送対象の粉粒体を気流に乗せて搬送する輸送管と、該輸送管の上流側端部を囲むように設けられた略円筒形状の粉粒体タンクと、該粉粒体タンクに該気流形成用のガスを供給するガス供給手段とから構成される気流搬送設備であって、前記輸送管の上流側端部には、前記粉粒体タンク内におけるその中心軸に対して垂直な断面を狭窄させる鍔部が設けられており、前記粉粒体タンクには、その側壁部から延在して前記鍔部よりも下方の空間に至る圧縮ガス放出用のガス吹出管が少なくとも1本設けられている。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送対象の粉粒体を気流に乗せて搬送する輸送管と、該輸送管の上流側端部を囲むように設けられた略円筒形状の粉粒体タンクと、該粉粒体タンクに該気流形成用のガスを供給するガス供給手段とから構成される気流搬送設備であって、前記輸送管の上流側端部には、前記粉粒体タンク内におけるその中心軸に対して垂直な断面を狭窄させる鍔部が設けられており、前記粉粒体タンクには、その側壁部から延在して前記鍔部よりも下方の空間に至る圧縮ガス放出用のガス吹出管が少なくとも1本設けられていることを特徴とする気流搬送設備。
【請求項2】
前記輸送管の上流側端部が、前記粉粒体タンクの中心軸上で且つ底面近傍において下向きに開口していることを特徴とする、請求項1に記載の気流搬送設備。
【請求項3】
前記ガス放出管は、その開口部が前記輸送管の上流側端部を臨むように配されていることを特徴とする、請求項2に記載の気流搬送設備。
【請求項4】
前記ガス吹出管は、その先端部が前記粉粒体タンクの側壁に設けた貫通孔から該粉粒体タンクの内側に貫入しており、該貫入する部分の長さが調節自在であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の気流搬送設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉粒体の搬送設備に関し、特に、乾燥処理された粉粒状の銅精鉱を自熔炉に装入するため、配管を介して高所に向けて搬送する気流搬送設備に関する。
【背景技術】
【0002】
乾式銅製錬においては、主として硫化鉱からなる原料鉱石を浮遊選鉱することで得た銅品位20~30%程度の湿潤状態の銅精鉱を熔錬工程、製銅工程及び精製工程で順次処理することで銅品位99.99%以上の純銅を製造している。これら一連の工程のうち、熔錬工程では上記の銅精鉱を乾燥炉で乾燥処理した後、自熔炉に装入して酸化・熔融させることにより銅品位60~65%程度のマットを生成している。
【0003】
上記の自熔炉にはオウトクンプ式が多用されており、これは銅精鉱を酸素又は空気と共に頂部から装入して酸化・熔融させる縦型円筒形状のリアクションシャフトと、該酸化・熔融により生成したマットを比重差によりスラグから分離するセトラーと、該酸化・熔融時に発生する硫黄酸化物を含んだ高温の排ガスを排出するアップテイクとからなる。上記のように、自熔炉ではリアクションシャフトの頂部から銅精鉱を装入する必要があるため、該リアクションシャフトの頂部の更に上方に銅精鉱を一時的に貯留する乾鉱庫が設けられている。従って、前段の乾燥炉によって乾燥処理した銅精鉱を、この高所位置に設けられている乾鉱庫に供給することが必要になる。
【0004】
この場合、乾燥炉には大型の円筒状ドラムを水平方向からわずかに傾くように横向けにしてその中心軸を中心として回転可能に支持したロータリードライヤーが一般的に用いられるため、かかる大型の乾燥炉を該乾鉱庫と同レベルの高所位置に据付けるのは建設コストがかかりすぎて非現実的である。また、乾燥前の湿潤状態の銅精鉱を高所位置に設けた乾燥炉に搬送するのは運転コストもより多くかかるので経済的でない。そこで、特許文献1に開示されているように、乾燥炉を地上に据付け、該乾燥炉で乾燥処理された銅精鉱を輸送管内で気流に乗せることで、より高所に位置する乾鉱庫に向けて搬送する気流搬送(空気搬送又はニューマチックコンベアとも称する)設備が一般的に採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-160526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の気流搬送設備は、搬送元から搬送先まで所定のルートに沿って設置され、被搬送物である粉粒体を気流に乗せて搬送する輸送管と、該輸送管の上流側端部に設けられ、該粉粒体が供給される粉粒体タンクと、該粉粒体タンクに該気流形成用のガスを供給するコンプレッサーやブロワなどのガス供給手段とから主に構成され、該輸送管内で該気流形成用ガスとして例えば空気を一方向に流すことで、気流に乗せて粉粒体を搬送することができる。
【0007】
上記の搬送の際、粉粒体タンク内に供給された粉粒体は、輸送管の上流側端部の入口から吸い込まれることで該輸送管内に連続的に導入されるが、搬送対象の粉粒体が乾燥処理された銅精鉱の場合、該粉粒体タンク内において該銅精鉱が付着して該輸送管の入口周辺に堆積することがあった。この場合、該輸送管の入口からの銅精鉱の吸い込みが不安定になったり、該輸送管の入口が閉塞したりすることがあった。なお、上記の銅精鉱による閉塞等の問題は、一般に搬送量が多いほど発生する頻度が高くなる傾向にある。
【0008】
上記の銅精鉱による閉塞等の問題を放置しておくと、該粉粒体タンクに銅精鉱を供給する前段のチェーンコンベアの排出端側において行き場を失なった銅精鉱が徐々に蓄積し、これが負荷となってチェーンコンベアの駆動モーターの電流値が上昇する。そして、チェーンコンベアの電流値が設備保護のため予め設定しておいた閾値以上になったときにインターロックが作動し、チェーンコンベア及びその前段のロータリードライヤーの運転が緊急停止してしまう。ロータリードライヤーが運転停止するとその立ち上げには手間と時間がかかるうえ、銅精鉱の処理量が低下することになる。
【0009】
上記の銅精鉱の付着による粉粒体タンク内の閉塞等の問題を防止する方法としては、前段のロータリードライヤーにおいて銅精鉱を過乾燥して付着しにくくすると共に流動性を高めることで、輸送管の上流側端部の入口から良好に吸い込ませる方法が有効であると考えられる。なお、一般的なロータリードライヤーによる乾燥処理では、該乾燥処理後の銅精鉱は温度約90~100℃、含水率(水分率とも称する)約0.5質量%以下となるように処理条件が調整される。従って、上記の過乾燥とは、これよりも乾燥度が高くなる条件で処理を行なうものであり、例えば乾燥処理後の銅精鉱が温度約110~120℃、含水率約0.2質量%となる処理条件が採用される。
【0010】
しかしながら、上記のようなロータリードライヤーにおいて銅精鉱を過乾燥する対処法では、乾燥効率が悪化したり、単位時間当たりの処理量が低下したりする問題が発生しうる。本発明は上記した従来の粉粒体の気流搬送設備が抱える問題点に鑑みてなされたものであり、付着による閉塞等の問題を生じさせやすい粉粒体であっても、過乾燥させることなく安定的に気流搬送することが可能な設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、乾燥処理後の銅精鉱を被搬送物として自熔炉に向けて気流搬送する設備において、その輸送管の上流側端部に設けられている粉粒体タンクに供給した銅精鉱の該輸送管への吸い込み促進や、銅精鉱の付着による閉塞等の問題の防止について長年に亘り取り組んできた。その結果、該粉粒体タンク内における銅精鉱による閉塞は、該粉粒体タンク内において銅精鉱の流動性が低下したり銅精鉱が付着したりする部位を起点として銅精鉱が徐々に堆積していき、最終的に輸送管の上流側端部の入口を閉塞させると考えた。
【0012】
粉粒体を取り扱うタンク内で該粉粒体が付着等により堆積したとき、該タンクに対して外部から振動を与えることで堆積を解消する方法が一般的に採用されるが、上記のような構造の気流搬送システムでは粉粒体タンクに対して振動を与える対処法では銅精鉱による閉塞を効果的に防ぐことはできなかった。そこで、振動に代えて粉粒体タンク内に圧縮空気を吹き付ける方法について実験を繰り返したところ、粉粒体タンクの構造及び圧縮空気の吹き付け方を工夫することで過乾燥させることなく安定的に気流搬送できるようになることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明に係る粉粒体の気流搬送設備は、搬送対象の粉粒体を気流に乗せて搬送する輸送管と、該輸送管の上流側端部を囲むように設けられた略円筒形状の粉粒体タンクと、該粉粒体タンクに該気流形成用のガスを供給するガス供給手段とから構成される気流搬送設備であって、前記輸送管の上流側端部には、前記粉粒体タンク内におけるその中心軸に対して垂直な断面を狭窄させる鍔部が設けられており、前記粉粒体タンクには、その側壁部から延在して前記鍔部よりも下方の空間に至る圧縮ガス放出用のガス吹出管が少なくとも1本設けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、粉粒体タンクの内部において搬送対象の粉粒体が付着により閉塞等の問題を生じさせるのを防止することができるので、該粉粒体を安定的に気流搬送することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態の気流搬送設備をその前段及び後段の装置と共に示すフロー図である。
図2図1の気流搬送設備を構成する粉粒体タンクの斜視図である。
図3図2の粉粒体タンクの縦断面図である。
図4】本発明の実施例の気流搬送設備を用いて行なった銅精鉱の気流搬送において、圧縮空気の導入の有無と搬送不良トラブルの発生頻度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の気流搬送設備の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。図1に示すように、本発明の実施形態の気流搬送設備は、化石燃料の燃焼ガスや蒸気を熱源とするロータリードライヤー1において含水率約0.5質量%以下まで乾燥処理された平均粒径5~100μm程度の銅精鉱を搬送対象としており、この乾燥処理された銅精鉱を自熔炉2のリアクションシャフト2aの上方に位置する乾鉱庫3に向けて気流に乗せて搬送する設備である。なお、上記の含水率は湿潤基準の値であり、これは固形分の質量をW、水分の質量をWとしたとき、W/(W+W)×100で求めることができる。また、上記の平均粒径はメジアン径であり、これはレーザー回折散乱法で測定することで得た粒度分布曲線における粒子量の体積積算が50%となる粒径(D50)として求めることができる。
【0017】
本発明の実施形態の気流搬送設備は、搬送対象の銅精鉱を気流に乗せて搬送する際の流路となる輸送管10と、この輸送管10の上流側端部を囲むように設けられた縦型略円筒形状の粉粒体タンク20と、この粉粒体タンク20に上記気流形成用ガスとして空気を導入するコンプレッサーやブロワなどのガス供給手段30とから主に構成される。ロータリードライヤー1で乾燥処理された銅精鉱は、スクリューフィーダやロータリーフィーダなどの粉粒体供給手段を介して粉粒体タンク20の上部側壁に設けた粉粒体投入口21から断続的又は連続的にタンク内に供給される。
【0018】
粉粒体タンク20の底面中央部にはガス供給手段30に一端部が接続するガス供給配管31の他端部の出口開口部31aが接続しており、上記の粉粒体投入口21から供給された銅精鉱は、この出口開口部31aから導入される空気によって流動化される。ガス供給配管31の出口開口部31aは、粉粒体タンク20の頂部中央から中心軸方向に貫入する輸送管10の上流側端部の入口開口部10aに対向しており、ガス供給配管31のガス出口開口部31aを出た空気は、入口開口部10aから輸送管10内に流れ込んで気流を形成する。
【0019】
銅精鉱は上記の気流に伴って輸送管10の上流側端部の入口開口部10aから吸い込まれることで粉粒体タンク20から排出され、そのまま該気流に乗って輸送管10内を一方向に搬送される。その後、銅精鉱は気流と共に輸送管10の下流側端部に位置するサイクロンセパレータ4に導入され、ここで銅精鉱は遠心力により気流から気固分離され、サイクロンセパレータ4の下部から排出されて乾鉱庫3内に落下する。一方、気流は、サイクロンセパレータ4の頂部中央から排出される。このサイクロンセパレータ4から排出される気流は、遠心力で分離しきれない程度の微細な銅精鉱を含んでいるので、サイクロンセパレータ4の後段のバグフィルター5に導入されて該微細な銅精鉱の捕集が行われた後、大気に放出される。なお、上記のサイクロンセパレータ4を設けることなくバグフィルター5のみで銅精鉱を気流から気固分離してもよい。
【0020】
次に、上記の気流搬送設備が具備する粉粒体タンク20の構造について、図2を参照しながら説明する。前述したように、輸送管10の上流側端部は、粉粒体タンク20の頂部中央を貫通して粉粒体タンク20内を鉛直方向に延在して底面近傍にまで至っており、その入口開口部10aは粉粒体タンク20の底面中央部に対向している。これにより、粉粒体タンク20内に供給された銅精鉱を輸送管10の上流側端部の入口開口部10a内にその周方向からほぼ均等に吸い込ませて粉粒体タンク20から排出させることができる。なお、図3に示すように、輸送管10の上流側端部の先端と、粉粒体タンク20の底面との離間距離Lは、輸送管10の内径Dの0.2~1.0倍程度であるのが好ましく、0.3倍程度がより好ましい。
【0021】
ところで、上記構造の略縦型円筒形状の粉粒体タンク20では、その底面と側壁とが交わる下側隅部Aにおいて銅精鉱が付着等により滞留しやすく、その結果、銅精鉱が徐々に堆積することによって輸送管10の上流側端部の入口開口部10aを閉塞させたり、入口開口部10aからの銅精鉱の吸い込みを不安定にしたりすることがあった。そこで、本発明の実施形態の気流搬送設備は、上記の堆積した銅精鉱による閉塞等の問題を抑えるため、粉粒体タンク20内におけるその中心軸に対して垂直な断面を狭窄させる鍔部11が輸送管10の上流側端部に設けられている。また、粉粒体タンク20には、その側壁部から延在して鍔部11よりも下方の空間に至る圧縮空気などの圧縮ガス放出用のガス吹出管22が少なくとも1本設けられている。
【0022】
上記の構成により、下側隅部Aにおける銅精鉱の付着を抑制することができるので、下側隅部Aに付着した銅精鉱が堆積することによって生じる輸送管10の入口開口部10aの閉塞等の問題を防ぐことができる。また、輸送管10の入口開口部10aの周辺に滞留している銅精鉱の内部にガス吹出管22から放出した空気を入り込ませてその流動性を高めることができるので、輸送管10の入口開口部10aへの銅精鉱の吸い込みを促進することができる。
【0023】
ガス吹出管22は上記のように鍔部11よりも下方の空間において圧縮ガスを放出できるのであれば特に限定はないが、粉粒体タンク20の側壁に設けた貫通孔にガス吹出管22を挿通させて、そのガス放出開口部22aを輸送管10の上流側端部を臨むように配するのが好ましい。これにより、ガス吹出管22から放出された圧縮ガスを輸送管10の上流側端部に当てて分散させることができるので、粉粒体タンク20の下側隅部Aに全周に亘って銅精鉱が堆積している場合であっても、それらにまんべんなく圧縮ガスを吹き付けることができるので、それらの流動性を高めて効率よく輸送管10に吸い込ませることができる。
【0024】
本発明の実施形態の気流搬送設備においては、上記のように粉粒体タンク20の内部を鍔部11によって上部空間と下部空間の2つに区分すると共に、銅精鉱が堆積しやすい該下部空間にのみガス吹出管22から圧縮ガスを放出することで、圧縮ガスの放出の効果を十分に発揮させることができる。これにより、輸送管10の入口開口部10aの周辺に滞留している銅精鉱の流動性をより効果的に高めることができるので、輸送管10の入口開口部10aへの銅精鉱の吸い込みを促進することができる。
【0025】
ガス吹出管22は、輸送管10の上流側端部に対して斜め上方から圧縮ガスを吹き付けることができるように、粉粒体タンク20の側壁に対して外側から内側に斜め下方に貫入させるのが好ましい。具体的には、水平方向に対してガス吹出管22を斜め下方に傾斜させる角度αは20~60°の範囲内が好ましく、30°程度がより好ましい。これにより、ガス吹出管22から放出された圧縮空気を輸送管10の外周面で反射させて粉粒体タンク20の底面方向に向かわせることができるので、粉粒体タンク20の下側隅部Aに堆積している銅精鉱に効果的に圧縮空気を吹き付けることができる。
【0026】
上記の鍔部11は、その下面から輸送管10の上流側端部の先端までの距離Lが、粉粒体タンク20の内側で延在する輸送管10の上流側端部の長さLの10~30%程度となるように輸送管10の上流側端部に設けるのが好ましい。この距離Lが上流側端部の長さLの10%未満では粉粒体タンク20内における銅精鉱の堆積がかえって促進されるおそれがある。逆にこの距離Lが上流側端部の長さLの30%を超えると粉粒体タンク20内を鍔部11で上部空間と下部空間に区分する効果が得られにくくなる。
【0027】
また、鍔部11の外径Dは、粉粒体タンク20の内径Dの30~50%程度であるのが好ましい。この割合が30%未満では、鍔部11を設けた効果が得られにくくなる。逆にこの割合が50%を超えると、鍔部11によって銅精鉱の流れが阻害されるおそれがある。なお、ガス吹出管22の中心軸が輸送管10の上流側端部の外周面に交差する点Pから輸送管10の上流側端部の先端までの距離Lは、前述した鍔部11の下面から輸送管10の先端までの距離Lに対して25~75%の範囲内であるのが好ましく、50%程度がより好ましい。また、ガス吹出管22の先端部から上記の交差する点Pまでの距離Lは50~200mmの範囲内であるのが好ましい。
【0028】
上記のガス吹出管22は、粉粒体タンク20の内側に貫入させる部分の長さが自在に調節できるのが好ましい。これにより、銅精鉱の気流搬送を停止することなく上記のガス吹出管22の先端部から交差する点Pまでの距離Lを調節することができるので、銅精鉱の気流搬送を停止することで生じやすい銅精鉱の堆積を抑えつつ、例えば銅精鉱の流量などを参考にしながら圧縮空気の吹き付けの効果がより高くなる位置にガス吹出管22を設置することができる。この場合、ガス吹出管22を貫入させる長さを容易に調整できるように、フレキシブルホース23を介してガス吹出管22を図示しない圧縮ガス供給源に接続するのが好ましい。
【0029】
なお、ガス吹出管22は粉粒体タンク20の頂部から貫入させてもよいが、ロータリードライヤー1で乾燥処理された銅精鉱は、一般的に粉粒体タンク20の側壁からタンク内に供給するので、銅精鉱の粉粒体タンク20内での流動方向を考慮すると、ガス吹出管22も粉粒体タンク20の側壁から貫入させることが好都合である。また、銅精鉱は一般的に粉粒体タンク20の上部からタンク内に導入するので、銅精鉱の粉粒体タンク20内での流動方向を考慮すると、ガス吹出管22から放出させる圧縮ガスが粉粒体タンク20内で上方から下方へ流れるようにガス放出開口部22aを設置することが好都合である。
【0030】
粉粒体タンク20の下側隅部Aに堆積した銅精鉱にできるだけ均一に圧縮ガスを吹き付けるには、複数本のガス吹出管22を粉粒体タンク20の側壁から周方向に均等な間隔をあけて貫入させるのが好ましいが、粉粒体タンク20が据付けられている場所の制約等によりガス吹出管22の本数が1本に限られる場合は、粉粒体タンク20内に銅精鉱を供給する箇所のほぼ真下においてガス吹出管22を貫入するのが好ましい。これにより、上方から落下する銅精鉱に圧縮空気を直接吹き付けることができるので、銅精鉱の堆積を防止する効果が高くなる。
【0031】
あるいは、粉粒体タンク20内に銅精鉱を供給する箇所の真下においてガス吹出管22を貫入するのが困難な場合は、粉粒体タンク20内に銅精鉱を供給する箇所から落下した銅精鉱が粉粒体タンク20の底面においてある程度広がる範囲内、例えば粉粒体タンク20内に銅精鉱を供給する箇所の真下から粉粒体タンク20の中心軸を中心として±30°程度の角度範囲内に圧縮ガスが吹き付けられるようにするのが好ましく、この場合も銅精鉱の堆積を効果的に防ぐことができる。
【0032】
上記のガス吹出管22に供給する圧縮ガスの圧力は、気流搬送時の粉粒体タンク20内の運転圧力よりも数kg/cm程度高いのが好ましく、例えば、工場内で一般用に用いられるプラント空気や計装用空気として使用されている供給圧5~7kg/cmG程度の圧縮空気を好適に用いることができる。
【実施例0033】
図1に示すような輸送管10、粉粒体タンク20、及びガス供給手段30からなる気流搬送設備を用いて、ロータリードライヤー1で乾燥処理した銅精鉱を、自熔炉2の上方に位置する乾鉱庫3の更に上方に位置するサイクロンセパレータ4に気流搬送した。なお、ロータリードライヤー1では銅精鉱を過乾燥させなかった。粉粒体タンク20には図2に示すような構造のものを使用した。
【0034】
具体的には、粉粒体タンク20には縦型円筒形状の容器を用い、その頂部中央に輸送管10の上流側端部を真下に向けて貫入させて、その先端から粉粒体タンク20の底面までの離間距離Lを輸送管10の内径Dの0.3倍にした。そして、この輸送管10の上流側端部に粉粒体タンク20の内径Dに対して40%の外径を有する鍔部11を取り付けた。その際、粉粒体タンク20内において延在する上流側端部の長さLに対して、輸送管10の先端から鍔部11の下面までの距離Lを15%にした。
【0035】
この鍔部11の真下の空間において圧縮空気を吹き出させるため、粉粒体タンク20の粉粒体投入口21の真下に設けた貫通孔から1本のガス吹出管22をタンクの外側から内側に貫入させた。その際、水平方向に対してガス吹出管22を斜め下方に傾斜させる角度αを30°にした。これにより、ガス吹出開口部22aが、輸送管10の上流側端部のうち、鍔部11の下面から輸送管10の先端までの距離Lのほぼ中間部分に臨むようにした。
【0036】
また、ガス供給手段30に一端部が接続されたガス供給配管31の他端部を粉粒体タンク20の底面中央に接続することで、ガス供給配管31のガス出口開口部31aを輸送管10の入口開口部10aと上下方向に対向させた。そして、ガス吹出管22に供給圧約5kg/cmGの圧縮空気を導入しながら銅精鉱を気流搬送した。その結果、運転開始から約1ヶ月後に行なった開放点検では粉粒体タンク20の下側隅部Aに銅精鉱の付着が生じていなかった。また、運転期間中を通して安定的に気流搬送することができ、搬送不良等のトラブルは一切生じなかった。
【0037】
次に、圧縮空気の導入の効果を調べるため、上記の気流搬送設備を用いて運転開始から19.5ヶ月が経過するまではガス吹出管22に圧縮空気を導入しない状態で銅精鉱の搬送を行ない、19.5ヶ月経過したときにガス吹出管22に供給圧5kg/cmGの圧縮空気を導入しながら銅精鉱を気流搬送した。その結果を図3に示す。この図3から分かるように、圧縮空気吹き込み前は3~19回/月の頻度で搬送不良トラブルが発生していたが、圧縮空気吹き込み後は搬送不良トラブル発生頻度を0~3回にまで低減することができた。
【0038】
比較のため、上記のガス吹出管22から粉粒体タンク20内に圧縮空気を導入する代わりに、粉粒体タンク20にエアノッカーを設けて20秒ごとに粉粒体タンク20を振動させながら気流搬送を行なった。その結果、運転開始から1ヶ月後の開放点検において粉粒体タンク20の下側隅部Aに銅精鉱の付着が生じていた。また、運転期間中を通して高い頻度で銅精鉱の付着による気流搬送不良トラブルが生じた。
【符号の説明】
【0039】
1 ロータリードライヤー
2 自熔炉
2a リアクションシャフト
3 乾鉱庫
4 サイクロンセパレータ
5 バグフィルター
10 輸送管
10a 入口開口部
20 粉粒体タンク
21 粉粒体投入口
22 ガス吹出管
22a ガス吹出開口部
30 ガス供給手段
31 ガス供給配管
31a ガス出口開口部
図1
図2
図3
図4