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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176489
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】粒子分析装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 15/13 20240101AFI20241212BHJP
【FI】
G01N15/12 A
G01N15/12 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095046
(22)【出願日】2023-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】最乗 英
(72)【発明者】
【氏名】安居 晃啓
(57)【要約】
【課題】気泡及び汚染物質が測定精度に及ぼす影響を抑制し、測定精度と測定の安定性を向上させることができる粒子分析装置を提供する。
【解決手段】粒子測定部は、電気信号測定に用いる第1の電極及び第2の電極と、試料が供給される第1の試料通過領域と、試料が排出される第2の試料通過領域と、第1の試料通過領域と第2の試料通過領域との間に設けられ貫通孔を有する隔壁と、第1の試料通過領域又は第2の試料通過領域に接続され、シース液の供給又は廃液を行うシース液流路とを備える。第1の電極及び第2の電極は、第1の試料通過領域と第2試料通過領域に接続されるシース液流路の廃液流路に配置され、隔壁よりも上方に位置する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料の測定を行う粒子測定部と、
前記粒子測定部を制御する制御部と
を備え、
前記粒子測定部は、
電気信号測定に用いる第1の電極及び第2の電極と、
前記試料が供給される第1の試料通過領域と、
前記試料が排出される第2の試料通過領域と、
前記第1の試料通過領域と前記第2の試料通過領域との間に設けられ貫通孔を有する隔壁と、
前記第1の試料通過領域又は前記第2の試料通過領域に接続され、シース液の供給又は廃液を行うシース液流路と、
を備え、
前記第1の電極及び前記第2の電極は、前記第1の試料通過領域と前記第2の試料通過領域に接続される前記シース液流路の廃液流路に配置され、前記隔壁よりも上方に位置する
ことを特徴とする粒子分析装置。
【請求項2】
前記シース液流路の供給流路は、前記第1の試料通過領域又は前記第2の試料通過領域に対し下方から斜め方向に延びるよう構成され、
前記シース液流路の前記廃液流路は、前記第1の試料通過領域又は前記第2の試料通過領域の上方で鉛直方向に延びるよう構成される、
請求項1に記載の粒子分析装置。
【請求項3】
前記第1の電極及び前記第2の電極は、前記廃液流路の軸上に配置される、請求項2に記載の粒子分析装置。
【請求項4】
前記廃液流路は、前記第1の電極及び前記第2の電極の直径の2倍以下の直径を有する、請求項3に記載の粒子分析装置。
【請求項5】
前記第1の電極及び前記第2の電極は、前記シース液流路の前記廃液流路に対して、ニップルで固定されていることを特徴とする請求項1に記載の粒子分析装置。
【請求項6】
前記第1の電極及び第2の電極は、前記シース液流路の前記廃液流路に対し着脱可能である請求項1に記載の粒子分析装置。
【請求項7】
前記シース液流路は、
前記第1の試料通過領域に接続される第1のシース液供給流路と、
前記第1の試料通過領域に接続される第1の廃液流路と、
前記第2の試料通過領域に接続される第2のシース液供給流路と、
前記第2の試料通過領域に接続される第2の廃液流路と
を含み、
前記第1の廃液流路及び前記第2の廃液流路は、廃液を溜める廃液タンクに接続され、
前記第1の電極及び前記第2の電極は、それぞれ前記第1の廃液流路及び前記第2の廃液流路に配置されている、請求項1に記載の粒子分析装置。
【請求項8】
前記第1の廃液流路は、第1流路と、前記第1流路と交差する第2流路とを備え、
前記第2の廃液流路は、第3流路と、前記第3流路と交差する第4流路とを備え、
前記第1の電極及び前記第2の電極はそれぞれ、前記第2流路及び前記第4流路の側面に固定され、且つ前記第1の電極及び前記第2の電極は、第1流路及び前記第3流路の流路壁面と離間した状態で配置される、請求項7に記載の粒子分析装置。
【請求項9】
前記第1の試料通過領域及び前記第2の試料通過領域にシース液を供給する送液機構を更に備え、
前記制御部は、前記粒子測定部及び前記送液機構を制御して、前記第1の試料通過領域に対して試料及びシース液を同時に送液する流路構成を有する、請求項8に記載の粒子分析装置。
【請求項10】
前記制御部は、
電極の洗浄時に、
前記送液機構により前記第1のシース液供給流路からシース液を供給し、前記第1の廃液流路から排出する工程と、
前記第2のシース液供給流路からシース液を供給し、前記第2の廃液流路から排出する工程と、
を実行するよう構成されると共に、
測定動作時に、
前記送液機構によって試料及びシース液を同時に前記隔壁を通過させ、
前記第2の試料通過領域に接続される廃液回収ニップルから排出する工程を実行するよう構成されている、請求項9に記載の粒子分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、希釈液(シース液)で希釈される試料(サンプル)に含まれる粒子を分析する粒子分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
病院やクリニックで行われる検査の中に血液検査がある。血液検査は一般に、生化学・免疫検査、凝固検査、輸血検査、血液学的検査、細菌検査の5種類に分類される。さらに、血液学的検査は、全血球計算、形態学検査、細胞表面マーカー検査に分類される。全血球計算の測定項目に赤血球や血小板等の血球の細胞数と細胞容積を測定する項目がある。測定結果は患者の診断に用いられるため、これらの検査は、高い測定精度が求められる。
【0003】
これらの検査においては、測定対象の粒子の大きさと数を測定することが行われる。粒子の大きさと数を測定するための手法として、隔壁によって区切られた流路内に被測定粒子を流し、インピーダンスの変化を電気的に測定する方法がある。隔壁は、粒子を通過させるための貫通穴を設けた絶縁体である。
【0004】
この手法では、電解液中において発生する気泡や残存粒子により、測定流路と電極の汚染が生じることがあり、これらは測定時のインピーダンスの変化に影響を与え、測定精度を低下させ得る。特許文献1では、隔壁の後方で旋回流を発生させることにより試料の舞い戻り等を抑制しつつ外部に流し、これにより誤測定を防止する技術が開示されている。
【0005】
しかし、特許文献1のように旋回流を用いる装置では、流路及び電極に付着した気泡や汚染物質が試料に混入し、これにより誤測定が生じ測定精度が低下する虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015-21892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の問題に鑑み、気泡及び汚染物質が測定精度に及ぼす影響を抑制し、測定精度と測定の安定性を向上させることができる粒子分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題の達成のため、本発明に係る粒子分析装置は、試料の測定を行う粒子測定部と、前記粒子測定部を制御する制御部とを備える。前記粒子測定部は、電気信号測定に用いる第1の電極及び第2の電極と、前記試料が供給される第1の試料通過領域と、前記試料が排出される第2の試料通過領域と、前記第1の試料通過領域と前記第2の試料通過領域との間に設けられ貫通孔を有する隔壁と、前記第1の試料通過領域又は前記第2の試料通過領域に接続され、シース液の供給又は廃液を行うシース液流路とを備える。前記第1の電極及び前記第2の電極は、前記第1の試料通過領域と前記第2の試料通過領域に接続されるシース液流路の廃液流路に配置され、前記隔壁よりも上方に位置する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、粒子分析装置において、気泡及び汚染物質が測定精度に及ぼす影響を抑制し、測定精度と測定の安定性を向上させることができる粒子分析装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態の粒子分析装置100の構成図である。
図2】本発明の実施の形態の粒子測定部4の構造の詳細を説明する断面斜視図である。
図3図2の隔壁13付近の拡大図である。
図4】粒子測定部4の正面図である。
図5】粒子測定部4の側面図である。
図6図4のB-B’断面図である。
図7図4のC-C’断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本実施形態について説明する。添付図面では、機能的に同じ要素は同じ番号又は対応する番号で表示される場合もある。なお、添付図面は本開示の原理に則った実施形態と実装例を示しているが、これらは本開示の理解のためのものであり、決して本開示を限定的に解釈するために用いられるものではない。本明細書の記述は典型的な例示に過ぎず、本開示の特許請求の範囲又は適用例を如何なる意味においても限定するものではない。
【0012】
本実施形態では、当業者が本開示を実施するのに十分詳細にその説明がなされているが、他の実装・形態も可能で、本開示の技術的思想の範囲と精神を逸脱することなく構成・構造の変更や多様な要素の置き換えが可能であることを理解する必要がある。従って、以降の記述をこれに限定して解釈してはならない。図面に記載の構成要素は、実際とは異なる比率で表している部分がある。
【0013】
本実施の形態に係る粒子分析装置100を、図1を参照して説明する。この粒子分析装置100は、赤血球や血小板等の血球を含む血液、又は粒子混濁液を測定対象物とし、測定対象物中の粒子の粒子濃度、粒子体積、及びそれらの分布等を測定する。試料は、測定対象物をシース液によって希釈することで調整される。
【0014】
粒子分析装置100は、制御部1、サンプリング機構2、送液機構3、粒子測定部4、電圧測定回路5、及び演算部6から大略構成される。粒子分析装置100は、制御部1によってサンプリング機構2と送液機構3を駆動して試料(サンプル)及びシース液を粒子測定部4へ送液し、粒子測定部4において測定動作を実行するよう構成される。サンプリング機構2と送液機構3は、サンプル投入部10を介して接続されている。試料はサンプリング機構2によってサンプル投入部10に分注され、送液機構3によって粒子測定部4へと引き込まれる。
【0015】
制御部1は、電磁弁SV1~10、第1シリンジ7、及び第2シリンジ8を制御して送液機構3を駆動し、送液流路の切り替え及び送液/廃液を制御する。シース液タンク9からシース液を吸引することで、サンプル投入部10と廃液タンク11を除く送液機構3及び粒子測定部4はシース液で満たされ得る。
【0016】
送液機構3は、試料及びシース液を送液するための部分であり、第1シリンジ7、第2シリンジ8、シース液タンク9、サンプル投入部10、廃液タンク11、電磁弁SV1~10を備えると共に、これらを接続する流路12を備えて構成される。また、送液機構3と粒子測定部4との間も、試料及びシース液の供給、排出を行うため、流路12により接続されている。
【0017】
第1シリンジ7は、シース液タンク9からシース液の供給を受けて粒子測定部4にシース液を注入する。第1シリンジ7とシース液タンク9との間の流路12には、電磁弁SV1及びSV3が設けられて、シース液の注入量が制御される。また、第1シリンジ7と粒子測定部4との間には電磁弁SV5及びSV6が設けられ、シース液の粒子測定部4への注入量が制御される。
【0018】
第2シリンジ8は、サンプル投入部10から試料の供給を受け、試料を粒子測定部4に注入する。第2シリンジ8とシース液タンク9との間の流路12には電磁弁SV3及びSV2が設けられている。また、サンプル投入部10と第2シリンジ8との間には電磁弁SV4が設けられ、試料の注入量が制御される。
【0019】
粒子測定部4は、第1の容器16、及び第2の容器17を備えると共に、隔壁13、第1の電極14、第2の電極15を有している。粒子測定部4内に引き込まれた試料を送液機構3によって粒子測定部4を通過させ、その際のインピーダンスの変化を第1の電極14及び第2の電極15の間の電圧の変化に基づく電気信号の変化を測定することで、粒子の測定が行われる。
【0020】
隔壁13は第1の容器16と第2の容器17の境界部に設けられ、略中央付近において貫通穴(アパーチャ)を備えている。試料が隔壁13の貫通穴を通過している時に、電圧測定回路5は、第1の電極14及び第2の電極15を介して、インピーダンスの変化に伴う信号を取得し、その信号を増幅する。その後、演算部6は、増幅された出力信号に従い出力項目の算出を行う。粒子測定部4を通過した後の試料及びシース液は、廃液タンク11に排出される。廃液タンク11と粒子測定部4との間の流路12には、電磁弁SV7~SV9が接続されている。
【0021】
図2の断面斜視図を参照して、粒子測定部4のより詳細な構成を説明する。図3は、図2における隔壁13を含む領域ECの拡大図である。
【0022】
図2に示すように、粒子測定部4は、第1の容器16と第2の容器17によって構成され、2つの容器が隔壁13により仕切られている。隔壁13は絶縁体、例えば、人工サファイアや人工ルビー等により構成され得る。また、隔壁13の略中心付近には、例えば直径30~100μm程度の貫通穴が形成されている。
【0023】
第1の容器16と第2の容器17は、それぞれ第1の試料通過領域18、第2の試料通過領域19を有しており、第1の試料通過領域18と第2の試料通過領域19とは、隔壁13により仕切られ、貫通孔を介して接続されている。図3に示すように、隔壁13の両側にはパッキン20が配置され、パッキン20により第1の容器16と第2の容器17との間で隔壁13が挟み込まれることで水密性が維持される。なお、両電極14及び15は、電極固定用ニップル36A、36Bにより第1の容器16及び第2の容器17に固定されている。電極固定用ニップル36A、36Bを取り外すことにより電極14及び15の交換が可能になる。
【0024】
図3の拡大図に示すように、第1の容器16は、第2の試料通過領域19との接続部が凸形状となっている。一方、第2の容器17は、第1の試料通過領域18との接続部が凹形状となっている。第1の容器の凸形状部と第2の容器の凹形状部とが嵌め合されることで、第1の試料通過領域18、第2の試料通過領域19、及び隔壁13を同軸上に合わせて固定することが出来る。
【0025】
図3に示すように、第1の容器16は、試料吐出ノズル21と接続され、第2の容器17は廃液回収ニップル22と接続される。試料吐出ノズル21は、第2シリンジ8から流路12を介して試料を吐出されるノズルであり、廃液回収ニップル22は、廃液タンクに向けて廃液を排出(回収)するノズルである。第1の容器16、第2の容器17、及び廃液回収ニップル22は、内部流路の視認性、電気絶縁性、加工性を考慮して、透明なプラスチック例えば、アクリル樹脂やPEIにより構成され得る。
【0026】
また、試料吐出ノズル21と第1の容器16との間には、テフロン(登録商標)製のシーリングパーツ24が挟み込まれている。更に試料吐出ノズル21の注入口には、Y型ニップル25が接続されている。試料はY型ニップル25を介して、試料吐出ノズル21に供給される。廃液回収ニップル22は、第2の容器17との間にパッキン26(図2参照)を挟むことで水密性を維持している。
【0027】
図4及び図5を参照して、粒子測定部4の外観構造を説明する。図4は、粒子測定部4の正面図であり、図5はY型ニップル25側の側面図である。図5に示すように、試料吐出ノズル21は、固定ネジ23によって固定されている。試料吐出ノズル21と第1の容器16とが固定ネジ23によって押し付けられることで水密性が維持される。固定ネジ23としては、例えば、カムロックファスナのような、ハンドルを回すことで簡単に着脱可能でメンテナンス性が高いネジを使用することができる。
【0028】
試料吐出ノズル21及び廃液回収ニップル22の先端は、共に隔壁13の近傍、例えば、隔壁13から1mm程度の距離に配置されている。そのため、試料は第1の試料通過領域18及び第2の試料通過領域19に拡散せずに隔壁13を通過し、第2の容器17から廃液され得る。
【0029】
第1の容器16及び第2の容器17は、シース液流路27を有している。シース液流路27は、シース液を第1の試料通過領域18及び第2の試料通過領域19に供給し、さらに第1の試料通過領域18及び第2の試料通過領域19から排出する役割を担う。
【0030】
シース液流路27は、第1のシース液供給流路28、第2のシース液供給流路29、第1の廃液流路30、及び第2の廃液流路31の4つの流路に区別される。第1のシース液供給流路28と第1の廃液流路30は第1の試料通過領域18に接続されており、第2のシース液供給流路29と第2の廃液流路31は第2の試料通過領域19に接続されている。
【0031】
第1のシース液供給流路28と第2のシース液供給流路29とは、隔壁13の平面に対し斜めに交差する方向を向くように斜めに(例えば45度程度の角度を持って)配置されている。この配置により、第1のシース液供給流路28と第2のシース液供給流路29は、隔壁13に付着した汚染物質や気泡を効率的に除去することができる。
一方、第1の廃液流路30と第2の廃液流路31は、隔壁13の平面に対し水平に、粒子測定部4の鉛直方向に延びた流路とされている。
【0032】
第1の電極14及び第2の電極15は、それぞれ第1の廃液流路30及び第2の廃液流路31の流路内に配置され、隔壁13よりも上方に位置している。一例として、例えば、2つの電極14及び15は円筒形状を有している。両電極14及び15は白金を材料として構成され得て、これにより、腐食によるノイズレベルの変化を抑制している。なお、全ての流路28~31は加工性及び汚染物質の付着を考慮し円筒形状をしているのが好適である。
【0033】
図6及び図7を参照して、第1の廃液流路30、第2の廃液流路31、及び第1の電極14及び第2の電極15の構造を更に詳細に説明する。図6の断面図は、図4のB-B’断面図を示し、第1の廃液流路30及び第1の電極14の構造を示している。図7の断面図は、図4のC-C’断面図を示し、第2の廃液流路31及び第2の電極15の構造を示している。
【0034】
図6に示すように、第1の廃液流路30は、第1流路32と第2流路33で構成される。また、図7に示すように、第2の廃液流路31は、第3流路34及び第4流路35で構成される。
【0035】
第1流路32は、第1の試料通過領域18の上方から鉛直方向に延び、第3流路34は第2の試料通過領域19の上方から鉛直方向に延びるよう配置されている。このため、第1の試料通過領域18及び第2の試料通過領域19で発生した気泡は、鉛直上向きに浮力を受けて上昇し、第1流路32及び第3の流路34に排出される。送液方向と浮力の向きが同方向であり、このため、第1の試料通過領域18、第2の試料通過領域19、第1流路32、第3流路34の内部には気泡が溜まりにくく、外部への気泡の排出を効率良く実行することができる。
【0036】
また、第1流路32は第2流路33と接続され、第3流路34は第4流路35に接続されている。第2流路33は、第1流路32の側面から水平方向に延びるよう構成され、第4流路35は第2流路の側面から水平方向に延びるよう構成される。なお、電極14、15のメンテナンス性と洗浄効率の向上のため、第2流路33及び第4流路35は、第1流路32及び第3流路34に対し略直角に交差することが好ましい。これにより、電極14、15を第1流路32及び第3流路34の軸方向に固定することができる。さらに電極14、15の基部に流路を接続することができるため、電極の全面を速い流速の流体が通過し、効率良く電極14、15を洗浄することが可能になる。
【0037】
第1の電極14は、第2流路33の側面(水平に延びる壁面)に固定されていて、第1流路32の壁面と離間して配置されている。また、第2の電極15は、第4流路35の側面(水平に延びる壁面)に固定されていて、第3流路34の壁面と離間して配置されている。これにより、電極14及び15は流路の壁面近傍よりも速い流れを受けることになり、これにより第1の電極14及び第2の電極15に対しては、高い洗浄効率で洗浄を実行することができる。特に、流路内の流速は中心が最も速いため、電極14及び15が第1流路32及び第3流路34の軸上に配置される場合が最も洗浄効率が高くなる。
【0038】
第1流路32及び第3流路34は、電極14及び15の直径の2倍以下の直径を有することが好ましい。同流量で比較した場合、流路32及び34の直径が大きくなると流速が低下する。流路内の流れについてハーゲン・ポワズイユの式を用いて考えると、流速が最も速い中心軸上の流速は直径が2倍になると1/4に減少する。また、角をもつ流路形状の場合、例えば矩形の流路である場合、汚染物質や気泡が付着しやすくなる。このため、流路の形状は、洗浄効率の観点から円筒形状であることが好適である。なお、洗浄効率の向上によって、洗浄に使用するシース液の量を削減できるため、シース液タンク9の交換頻度を減らすことが可能になる。
【0039】
続いて、本実施の形態の粒子分析装置における粒子の測定手順、及び制御部1が行う制御の手順を説明する。送液動作は送液機構3が持つ第1シリンジ7、第2シリンジ8、及び電磁弁SV1~10によって実行される。
【0040】
粒子の測定においては、まず測定の実行の前に試料の準備動作が実行される。準備動作においては、制御部1は、調整された試料をサンプリング機構2によってサンプリングして、サンプル投入部10に分注させる。サンプル投入部10に分注された試料は、送液機構3によって粒子測定部4内に送液される。具体的に説明すると、まず電磁弁SV1、SV2、SV4が開弁されて第1シリンジ7が吸引方向に動かされることで、Y型ニップル25と第1シリンジ7に接続された流路内に試料が引き込まれる。この時、Y型ニップル25の流路体積の約3倍の試料がY型ニップル25を通過するようにする。これによりY型ニップル25内の流路の粒子濃度が一定となる。
【0041】
次に、電磁弁SV4を閉じ、電磁弁SV8を開弁して第1シリンジ7を吐出方向に動かす。これにより、試料吐出ノズル21の先端まで試料が吐出される。その後、電磁弁SV1、SV2、SV8を閉じる一方、電磁弁SV5、SV9を開弁して、第1シリンジ7を吐出方向に動かす。これにより、試料吐出ノズル21から第1の試料通過領域18に排出された試料を第1の容器16から排出する。その後、全ての電磁弁SV1~SV10が閉弁され、測定の準備が完了する。
【0042】
続いて測定動作が実行される。具体的には、電磁弁SV8を開弁して第2シリンジ8を吐出方向に動かすことで、試料を第1の試料通過領域18に吐出する。その後、試料は隔壁13を通過し第2の試料通過領域19に送液される。
【0043】
さらに、試料吐出時に電磁弁SV5を開弁し、第1シリンジ7を吐出方向に動かすことによってシース液を第1の試料通過領域18に送液する。これにより、隔壁13に試料とシース液を同時に通過させる。試料は送液軸周りをシース液で包みこまれた状態で隔壁13を通過する。その結果、試料は隔壁13の中心軸上に集約され、測定対象物の粒子による隔壁13の同時通過や隔壁13近傍を通過した時に生じる計数に不利な波形の乱れを抑制することができる。
【0044】
隔壁13を通過し第2の試料通過領域19に送液された試料及びシース液は、廃液回収ニップル22を通り廃液タンク11に排出される。前述したように、2つの電極14、15はそれぞれ第1の廃液流路30及び第2の廃液流路31内に配置されており、その先端は第1の試料通過領域18及び第2の試料通過領域19には到達しない。そのため、試料及びシース液は電極14、15の近傍を通過しないので、電極14、15に試料の成分が付着するなどして汚染が進むことを抑制することができる。
【0045】
測定動作時には第1の電極14と第2の電極15の間に、電圧測定回路5から一定の電流又は電圧が印加される。2つの電極14、15は、粒子測定部4内の隔壁13の流路で通電している。隔壁13は絶縁体のため電気抵抗は大きい。試料内の粒子はシース液と電気伝導率が異なるため、隔壁13を粒子が通過する際に隔壁13の電気抵抗が変化し、その変化が電極14及び15に接続されている電圧測定回路5の出力信号にパルス状の変化として現れる。パルスの数と形状を解析することで、貫通孔を通過した粒子の数と大きさが演算部6で算出され測定結果として出力される。
【0046】
電極14及び15に電流又は電圧が印加されることによりシース液が電気分解され、これにより気泡が発生する場合がある。気泡は、測定対象の粒子と同様にシース液とは電気伝導率が異なる。そのため、気泡が隔壁13を通過すると隔壁13の抵抗が変化し、これが電圧測定回路の出力信号においてパルスの変化として出力される。測定対象の粒子によるパルスは、気泡によるパルスと区別することが難しい場合もあるので、気泡を隔壁13に通過させないようにすることが望ましい。
【0047】
本実施の形態の粒子測定部4では、2つの電極14、15の先端が第1の試料通過領域18、第2の試料通過領域19よりも離間して配置され、従って隔壁13よりも上方に配置されている。そのため、電極14、15で発生した気泡が隔壁13側に流れていくことを抑制することができ、電圧測定回路5の出力電圧に気泡によるパルスが現れず安定した測定を実行することが可能となる。また、シース液は第1のシース液供給流路28から第1の試料通過領域18に送液されるため、電極14及び15の近傍を通過せずに隔壁13を通過することが出来る。そのため、シース液の流れによって気泡が隔壁13を通過することが抑制される。
【0048】
送液機構3、粒子測定部4内に測定阻害物があると、出力電圧に試料内の粒子以外によるパルスやノイズレベルの変化が起こり測定の精度が低下する。特に、2本の電極14、15と隔壁13近傍に測定阻害物が存在すると測定精度に大きな影響を与え得る。具体的に測定阻害物とは、電極と流路に残留又は付着している測定対象の試料内の粒子や汚染物質、気泡のことである。
【0049】
そのため、本実施の形態の粒子分析装置100では、粒子測定動作後において、流路12及び電極14、15の洗浄動作を実行し、次の測定に備える。本実施の形態の粒子分析装置100の粒子測定部4は、以下に説明する洗浄動作を実行し、測定対象物内の粒子の計数精度を向上させることができる。
【0050】
本実施の形態の送液機構3による洗浄動作の手順を以下に説明する。まず、電磁弁SV1、SV2、SV9を開弁し、第1シリンジ7を吐出方向に駆動させる。これにより、Y型ニップル25内に残留している測定対象の粒子を第1の試料通過領域18及び第1の廃液流路30を経由して廃液タンク11に排出する。その後、電磁弁SV2、SV9を閉じる一方、電磁弁SV3を開弁して第1シリンジ7を吸引方向に動かすことでシース液をシース液タンク9から吸引する。
【0051】
次に、電磁弁SV1、SV3を閉弁する一方、電磁弁SV5、SV9を開弁させて第1シリンジ7を吐出方向に動かす。これにより、シース液を第1のシース液供給流路28から、第1の試料通過領域18に送液し、第1の廃液流路30を経由して、廃液タンク11に向けて排出する。その後、電磁弁SV5、SV9を閉じる一方、電磁弁SV1、SV3を開弁させて第1シリンジ7を吸引方向に動かすことで、シース液をシース液タンク9から吸引する。
【0052】
次に、電磁弁SV1、SV3を閉弁する一方、電磁弁SV6、SV7を開弁させて第1シリンジ7を吐出方向に動かす。これにより、シース液を第2のシース液供給流路29から、第2の試料通過領域19に送液し、第2の廃液流路31を経由して、廃液タンク11に排出する。その後、電磁弁SV6、SV7を閉弁する一方、電磁弁SV1、SV3を開弁させ第1シリンジ7を吸引方向に動かすことでシース液をシース液タンク9から吸引する。
【0053】
最後に、SV1、SV3を閉じ、SV6、SV8を開け、第1シリンジ7を吐出方向に動かす。これにより、廃液回収ニップル22内に残留している測定対象粒子を廃液タンク11へと排出する。
【0054】
上記の洗浄動作では、シース液は必ず第1の廃液流路30及び第2の廃液流路31を廃液タンク11に向かって流れるため、第1の廃液流路30及び第2の廃液流路31に配置されている電極14、15に付着している汚染物質や気泡は、第1の廃液流路30及び第2の廃液流路31から外部へ弊出され、隔壁13の近傍に汚染物質や気泡が移動することを抑制することができる。第1のシース液供給流路28、第2のシース液供給流路29は、第1の試料通過領域18及び第2の試料通過領域19に向けて、電極14、15を経由せずに隔壁13の近傍にシース液を供給できるため、隔壁13の清浄性を保つことができる。
【0055】
なお、本発明は、上記の実施例に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、上記の実施例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、本発明は、必ずしも説明した全ての構成を備える態様に限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能である。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、削除したり、他の構成を追加・置換したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0056】
1…制御部
2…サンプリング機構
3…送液機構
4…粒子測定部
5…電圧測定回路
6…演算部
7…第1シリンジ
8…第2シリンジ
9…シース液タンク
10…サンプル投入部
11…廃液タンク
12…流路
13…隔壁
14…第1の電極
15…第2の電極
16…第1の容器
17…第2の容器
18…第1の試料通過領域
19…第2の試料通過領域
20…パッキン
21…試料吐出ノズル
22…廃液回収ニップル
23…固定ネジ
24…シーリングパーツ
25…Y型ニップル
26…パッキン
27…シース液流路
28…第1のシース液供給流路
29…第2のシース液供給流路
30…第1の廃液流路
31…第2の廃液流路
32…第1流路
33…第2流路
34…第3流路
35…第4流路
36A、36B…電極固定用ニップル
100…粒子分析装置
図1
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図7