(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176552
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】電気脱イオン装置、そのメンテナンス方法、及び電気脱イオン装置の管理方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/42 20230101AFI20241212BHJP
C02F 1/469 20230101ALI20241212BHJP
【FI】
C02F1/42 A
C02F1/469
C02F1/42 B
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095138
(22)【出願日】2023-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】杉田 航
(72)【発明者】
【氏名】中馬 高明
【テーマコード(参考)】
4D025
4D061
【Fターム(参考)】
4D025AA04
4D025BA08
4D025BA13
4D025BB03
4D025BB04
4D025BB10
4D025BB16
4D025DA06
4D061DA02
4D061DB18
4D061EA09
4D061EB01
4D061EB04
4D061EB13
4D061EB17
4D061EB19
4D061EB37
4D061FA08
4D061GA14
4D061GA30
(57)【要約】
【課題】 メンテナンス性が良好で水質管理の容易な電気脱イオン装置を提供する。
【解決手段】 電気脱イオン装置9は、電極(陽極21、陰極22)の間に複数のカチオン交換膜23及びアニオン交換膜24を交互に配列して脱塩室25と濃縮室26とを交互に形成したものであり、脱塩室25には、イオン交換樹脂が混合もしくは複層状に充填されている。脱塩室25と濃縮室26は、カチオン交換膜23とアニオン交換膜24とを交互に配列して形成した脱塩室25と濃縮室26をカチオン交換膜23とアニオン交換膜24とともにフレーム内に設置してセルパックとし、このセルパックを複数連結した一体型構造体9Aにより構成する。この一体型構造体9Aは、電気脱イオン装置9から着脱可能となっている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
陰極及び陽極と、該陰極と陽極との間に複数のカチオン交換膜とアニオン交換膜とを配列することにより交互に形成された濃縮室及び脱塩室とを有し、前記脱塩室及び濃縮室にイオン交換樹脂が充填されている電気脱イオン装置であって、
前記脱塩室及び濃縮室がこれらを構成するカチオン交換膜及びアニオン交換膜とともにそれぞれフレーム内に形成されたセルパック構造であり、このセルパックを複数連結して濃縮室及び脱塩室を交互に配置した一体型構造体となっていて、
該一体型構造体が前記電気脱イオン装置から着脱可能である、電気脱イオン装置。
【請求項2】
陰極及び陽極と、該陰極と陽極との間に複数のカチオン交換膜とアニオン交換膜とを配列することにより交互に形成された濃縮室及び脱塩室とを有し、前記脱塩室及び濃縮室にイオン交換樹脂が充填されており、前記脱塩室及び濃縮室がこれらを構成するカチオン交換膜及びアニオン交換膜とともにそれぞれフレーム内に形成されたセルパック構造であり、このセルパックを複数連結して濃縮室及び脱塩室を交互に配置した一体型構造体となっていて、該一体型構造体が前記電気脱イオン装置から着脱可能である電気脱イオン装置のメンテナンス方法であって、
前記一体型構造体を前記電気脱イオン装置から取り出して交換する、電気脱イオン装置のメンテナンス方法。
【請求項3】
陰極及び陽極と、該陰極と陽極との間に複数のカチオン交換膜とアニオン交換膜とを配列することにより交互に形成された濃縮室及び脱塩室とを有し、前記脱塩室及び濃縮室にイオン交換樹脂が充填されており、前記脱塩室及び濃縮室がこれらを構成するカチオン交換膜及びアニオン交換膜とともにそれぞれフレーム内に形成されたセルパック構造であり、このセルパックを複数連結して濃縮室及び脱塩室を交互に配置した一体型構造体となっていて、該一体型構造体が前記電気脱イオン装置から着脱可能である電気脱イオン装置の管理方法であって、
前記電気イオン装置の運転情報または処理水情報に基づいて、前記一体型構造体の交換の時期を判断する、電気脱イオン装置の管理方法。
【請求項4】
前記電気脱イオン装置の運転情報が、該電気脱イオン装置の運転電圧である、請求項3に記載の電気脱イオン装置の管理方法。
【請求項5】
前記電気脱イオン装置の運転情報が、該電気脱イオン装置の脱塩室の給水圧力と、処理水圧力とにより算出される通水差圧である、請求項3に記載の電気脱イオン装置の管理方法。
【請求項6】
前記電気脱イオン装置の処理水情報が、該電気脱イオン装置の処理水の比抵抗値又は導電率である、請求項3に記載の電気脱イオン装置の管理方法。
【請求項7】
前記電気脱イオン装置の運転情報または処理水情報を送受信機により送信することで、該電気脱イオン装置を遠隔監視して前記一体型構造体の交換時期を判断し、交換時期と判断したら交換用の一体型構造体を前記電気脱イオン装置に搬送して交換する、請求項3~6のいずれか1項に記載の電気脱イオン装置の管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、純水製造装置に用いられる電気脱イオン装置、そのメンテナンス方法、及び電気脱イオン装置の管理方法に関し、特にメンテナンス性が良好で水質管理の容易な電気脱イオン装置、そのメンテナンス方法、及び電気脱イオン装置の管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体等の電子産業分野で用いられている超純水は、例えば、
図3に示すような超純水製造装置1により製造される。この超純水製造装置1は、前処理装置2、一次純水製造装置3、及び二次純水製造装置(サブシステム)4といった3段の装置で構成されている。このような超純水製造装置1の前処理装置2では、原水Wの濾過、凝集沈殿、精密濾過膜などによる前処理が施され、主に懸濁物質が除去される。
【0003】
一次純水製造装置3は、前処理水W1を処理する逆浸透膜装置5と、脱気膜装置6と、紫外線酸化装置7と、電気脱イオン装置9と、この電気脱イオン装置9に給水を供給する給水ポンプ8とを有する。この一次純水製造装置3で前処理水W1中の大半の電解質、微粒子、生菌等の除去を行うとともに有機物を分解する。
【0004】
サブシステム4は、一次純水製造装置3で製造された一次純水W2を貯留するサブタンク10とこのサブタンク10からポンプ11を介して送給される一次純水W2を処理する紫外線酸化装置12と非再生型混床式イオン交換装置13と微粒子除去手段としての限外濾過(UF)膜14とで構成され、さらに必要に応じRO膜分離装置等が設けられている場合もある。このサブシステム4では、紫外線酸化装置12により一次純水W2中に含まれる微量の有機物(TOC成分)を酸化分解し、続いて非再生型混床式イオン交換装置13で処理することで残留した炭酸イオン、有機酸類、アニオン性物質、さらには金属イオンやカチオン性物質をイオン交換によって除去する。そして、限外濾過(UF)膜14で微粒子を除去して超純水W3とし、これをユースポイント15に供給して、未使用の超純水はサブタンク10に返送する。
【0005】
このような超純水製造装置1に用いられる一次純水製造装置3は、超純水製造の分野以外にも、医薬用や食品用などの様々な分野に利用されている汎用性の高い装置である。ここで、
図4に示すように電気脱イオン装置9は、電極(陽極21、陰極22)の間に複数のカチオン交換膜23及びアニオン交換膜24を交互に配列して脱塩室25と濃縮室26とを交互に形成したものであり、脱塩室25には、イオン交換樹脂、イオン交換繊維もしくはグラフト交換体等からなるイオン交換体(アニオン交換体及びカチオン交換体)が混合もしくは複層状に充填されている。また、濃縮室26と、陽極室27に陰極室28にもイオン交換体が充填されている。一般的には、この脱塩室25及び濃縮室26には、アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂とを所定の割合で混合した混合イオン交換樹脂が充填されている。
【0006】
この電気脱イオン装置9には、脱塩室25に給水(被処理水)W4を通水して処理水(脱塩水)W5を取り出す通水手段(図示せず)と、濃縮室26に被濃縮水を通水する濃縮水通水手段(図示せず)とが設けられていて、ここでは、被濃縮水を脱塩室25の脱塩水W5の取り出し口に近い側から濃縮室26内に導入すると共に、脱塩室25の給水W4の入口に近い側から流出する。すなわち脱塩室25における給水W4の流通方向と反対方向から被濃縮水(脱塩水)W5を濃縮室26に導入して濃縮水W6を吐出する構成となっている。さらに、脱塩水W5は、陽極室27及び陰極室28にも供給されて、電極室排水W7,W8をそれぞれ吐出する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したような電気脱イオン装置9は、トータル処理水量が増加して脱塩室25に充填されているイオン交換樹脂が劣化すると、定電流運転において運転電圧が上昇し、消費電力量の増加を招くだけでなく、さらに電圧が上昇すると運転が困難になる。また、充填されているイオン交換樹脂が破砕し、微粒子としてリークし水質の低下を招く。
【0008】
しかしながら、このように電気脱イオン装置9はその性能が低下しても、脱塩室25に充填されたイオン交換樹脂を再生したり、交換したりするメンテナンスが困難であることから、現状では電気脱イオン装置9ごと交換せざるをえず、電気脱イオン装置9の外装や電極(陽極21、陰極22)も廃棄せざるを得ない、という問題点がある。また、大型の電気脱イオン装置は、受注生産することが多いため、突然電気脱イオン装置9の交換が必要になっても直ちに交換するのが困難である。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、メンテナンス性が良好で水質管理の容易な電気脱イオン装置を提供することを目的とする。また、メンテナンスが簡単で廃棄物の削減が可能な電気脱イオン装置のメンテナンス方法を提供することを目的とする。さらに、本発明は、メンテナンス性が良く水質管理の容易な電気脱イオン装置の管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的に鑑み、本発明は第一に、陰極及び陽極と、該陰極と陽極との間に複数のカチオン交換膜とアニオン交換膜とを配列することにより交互に形成された濃縮室及び脱塩室とを有し、前記脱塩室及び濃縮室にイオン交換樹脂が充填されている電気脱イオン装置であって、前記脱塩室及び濃縮室がこれらを構成するカチオン交換膜及びアニオン交換膜とともにそれぞれフレーム内に形成されたセルパック構造であり、このセルパックを複数連結して濃縮室及び脱塩室を交互に配置した一体型構造体となっていて、該一体型構造体が前記電気脱イオン装置から着脱可能である、電気脱イオン装置を提供する(発明1)。
【0011】
かかる発明(発明1)によれば、電気脱イオン装置の脱塩室及び濃縮室に充填されているイオン交換樹脂が劣化したら、セルパックにより構成される一体構造体を取り出して交換するだけで、電気脱イオン装置のメンテナンスを実施して、性能を回復することができる。しかも、電気脱イオン装置の外装や電極は継続して利用することができる。
【0012】
また、本発明は第二に、陰極及び陽極と、該陰極と陽極との間に複数のカチオン交換膜とアニオン交換膜とを配列することにより交互に形成された濃縮室及び脱塩室とを有し、前記脱塩室及び濃縮室にイオン交換樹脂が充填されており、前記脱塩室及び濃縮室がこれらを構成するカチオン交換膜及びアニオン交換膜とともにそれぞれフレーム内に形成されたセルパック構造であり、このセルパックを複数連結して濃縮室及び脱塩室を交互に配置した一体型構造体となっていて、該一体型構造体が前記電気脱イオン装置から着脱可能である電気脱イオン装置のメンテナンス方法であって、前記一体型構造体を前記電気脱イオン装置から取り出して交換する、電気脱イオン装置のメンテナンス方法を提供する(発明2)。
【0013】
かかる発明(発明2)によれば、電気脱イオン装置の脱塩室及び濃縮室に充填されているイオン交換樹脂が劣化したら、セルパックにより構成される一体構造体を取り出して交換するだけで、電気脱イオン装置のメンテナンスを実施して、性能を回復することができる。しかも、電気脱イオン装置の外装や電極は継続して利用することができる。
【0014】
さらに本発明は第三に、陰極及び陽極と、該陰極と陽極との間に複数のカチオン交換膜とアニオン交換膜とを配列することにより交互に形成された濃縮室及び脱塩室とを有し、前記脱塩室及び濃縮室にイオン交換樹脂が充填されており、前記脱塩室及び濃縮室がこれらを構成するカチオン交換膜及びアニオン交換膜とともにそれぞれフレーム内に形成されたセルパック構造であり、このセルパックを複数連結して濃縮室及び脱塩室を交互に配置した一体型構造体となっていて、該一体型構造体が前記電気脱イオン装置から着脱可能である電気脱イオン装置の管理方法であって、前記電気イオン装置の運転情報または処理水情報に基づいて、前記一体型構造体の交換の時期を判断する、電気脱イオン装置の管理方法を提供する(発明3)。
【0015】
かかる発明(発明3)によれば、電気脱イオン装置の運転情報または処理水情報に基づいて、脱塩室及び濃縮室に充填されているイオン交換樹脂が劣化状況を判断して、セルパックにより構成される一体構造体の交換の時期を判断し、これに基づきセルパックを交換することで、電気脱イオン装置のメンテナンス時期の適正化を図り、電気脱イオン装置、ひいてはこれを備えた純水製造装置の水質を容易に管理することができる。
【0016】
上記発明(発明3)においては、前記電気脱イオン装置の運転情報が、該電気脱イオン装置の運転電圧であることが好ましい(発明4)。
【0017】
かかる発明(発明4)によれば、電気脱イオン装置は、トータル処理水量が増加して充填されているイオン交換樹脂が劣化すると定電流運転において運転電圧が上昇するので、この運転電圧を監視することで、一体型構造体の交換の時期を好適に判断することができる。
【0018】
上記発明(発明3)においては、前記電気脱イオン装置の運転情報が、該電気脱イオン装置の脱塩室の給水圧力と、処理水圧力とにより算出される通水差圧であることが好ましい(発明5)。
【0019】
かかる発明(発明5)によれば、トータル処理水量が増加して充填されているイオン交換樹脂が劣化すると、イオン交換樹脂が破砕したり不純物が蓄積したりして、通水差圧が上昇するので、この通水差圧を監視することで、一体型構造体の交換の時期を好適に判断することができる。
【0020】
上記発明(発明3)においては、前記電気脱イオン装置の処理水情報が、該電気脱イオン装置の処理水の比抵抗値又は導電率であることが好ましい(発明6)。
【0021】
かかる発明(発明6)によれば、トータル処理水量が増加して充填されているイオン交換樹脂が劣化して水質が悪化すると、処理水の比抵抗値又は導電率が増加するので、比抵抗値又は導電率を監視してこの傾向を察知することで、一体型構造体の交換の時期を好適に判断することができる。
【0022】
上記発明(発明3~6)においては、前記電気脱イオン装置の運転情報または処理水情報を送受信機により送信することで、該電気脱イオン装置を遠隔監視して前記一体型構造体の交換時期を判断し、交換時期と判断したら交換用の一体型構造体を前記電気脱イオン装置に搬送して交換することが好ましい(発明7)。
【0023】
上記発明(発明7)によれば、運転情報または処理水情報を送受信機により送信することで、電気脱イオン装置の状態を遠隔監視することができ、この監視結果に基づき一体型構造体の交換の時期を判断し、この判断結果に基づいて一体型構造体を事前に準備しておくことで、一体構造体の交換を的確に行うことができ、電気脱イオン装置やこれを備えた純水製造装置の水質を容易に管理することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、電気脱イオン装置の脱塩室及び濃縮室が、これらを構成するカチオン交換膜及びアニオン交換膜とともにそれぞれフレーム内に形成されたセルパック構造であり、このセルパックを複数連結して濃縮室及び脱塩室を交互に配置した一体型構造体となっていて、該一体型構造体が前記電気脱イオン装置から着脱可能となっているので、セルパックにより構成される一体構造体を取り出して交換するだけで、電気脱イオン装置のメンテナンスを実施して、性能を回復することができる。しかも、電気脱イオン装置の外装や電極は継続して利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の一実施形態に係る電気脱イオン装置を示す概略図である。
【
図2】前記実施形態の電気脱イオン装置の管理システムを示す概略図である。
【
図3】電気脱イオン装置の適用例としての超純水製造装置を示す概略図である。
【
図4】従来の電気脱イオン装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の電気脱イオン装置、及びこれを用いたメンテナンス方法について添付図面を参照して説明する。
【0027】
(電気脱イオン装置)
本発明の電気脱イオン装置としては、陰極及び陽極と、該陰極と陽極との間に複数のカチオン交換膜とアニオン交換膜とを配列することにより交互に形成された濃縮室及び脱塩室とを有し、前記脱塩室及び濃縮室にイオン交換樹脂が充填されたものであり、基本的には、
図4に示す電気脱イオン装置と同じ構成のものである。したがって、
図1に示す電気脱イオン装置において、
図4に示す電気脱イオン装置と同じ構成には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0028】
本実施形態では
図1に示すように電気脱イオン装置9は、脱塩室25と濃縮室26がカチオン交換膜23とアニオン交換膜24とを交互に配列して形成した脱塩室25と濃縮室26をカチオン交換膜23とアニオン交換膜24とともにフレーム内に設置してセルパックとし、このセルパックを複数連結した一体型構造体9Aとなっている。この一体型構造体9Aは、電気脱イオン装置9から着脱可能となっている。このセルパックを複数連結した一体型構造体9Aは、脱塩室に充填するアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂の比率を要求水質などに応じて種々変更した複数種をあらかじめストックしておくことが好ましい。
【0029】
(電気脱イオン装置のメンテナンス方法)
上述したような電気脱イオン装置9のメンテナンス方法について以下説明する。
電気脱イオン装置9の処理水W5の水質の低下、所定の使用期間の経過、あるいは所定の積算処理水量に達するなどしたら、電気脱イオン装置9のメンテナンスが必要となる。この際、従来は、電気脱イオン装置9ごと交換していた。これに対し、本実施形態においては、セルパックを複数連結した一体型構造体9Aが着脱可能となっているので、この一体型構造体9Aを取り出して交換するだけで、電気脱イオン装置9のメンテナンスを実施して、その性能を回復することができる。しかも、電気脱イオン装置9の外装や電極(陽極21、陰極22)は継続して利用することができるので、廃棄物の削減が可能となる。
【0030】
(電気脱イオン装置の管理方法)
この電気脱イオン装置9の管理方法について以下説明する。
図2は電気脱イオン装置9の管理システムを示している。
図2において、電気脱イオン装置9は、純水製造装置(一次純水製造装置)の一部を構成するものであり、この電気脱イオン装置9の脱塩室の供給側及び吐出側には、それぞれ供給管31及び吐出管32が接続されていて、供給管31には給水W4の通水圧力を計測する圧力計33Aが設けられているとともに吐出管32には脱塩水W5の通水圧力を計測する圧力計33Bが設けられている。また、電気脱イオン装置9の電源装置には電圧計34が設けられている。そして、運転情報としてのこれら圧力計33A、圧力計33Bの計測値及び電圧計34の計測値は、図示しない送信機により、遠隔箇所に設けられた管理設備(図示せず)にそれぞれ運転情報Dとして送信可能となっている。
【0031】
この電気脱イオン装置9の管理システムにおいて、電気脱イオン装置9で給水W4の処理をしている間に、圧力計33Aの計測値と圧力計33Bの計測値の情報D、またはこれらに基づく通水差圧の情報Dを管理設備に送信する。そして、電気脱イオン装置9の積算処理水量が多くなると、イオン交換樹脂の破損などにより通水差圧が上昇し、水質の低下を招くので、管理設備で通水差圧の情報に基づいて、セルパックを複数連結した一体型構造体9Aの交換の時期を判断する。
【0032】
この判断は、例えば、あらかじめ通水差圧について閾値を設けておき、圧力計33Aの計測値と圧力計33Bの計測値とから算出される通水差圧がこの閾値を超えた時点を基準として、直ちにあるいは所定の期間経過後を一体型構造体9Aの交換の時期と判断すればよい。この際、一時的に通水差圧が閾値を超えることもありうるので、通水差圧が閾値を超えた時間が所定時間継続した時点を基準としてもよい。さらに、通水差圧の上昇傾向が一定以上の傾き(単位時間当たり一定以上の湧水差圧の上昇)となった時点を基準としてもよい。
【0033】
また、電気脱イオン装置9で給水W4の処理をしている間に、電圧計34の計測値情報Dを管理設備に送信する。そして、電気脱イオン装置9の積算処理水量が多くなると、脱塩室に充填されているイオン交換樹脂に各種イオンが蓄積するなどに起因して、定電流運転を想定した場合に運転電圧が上昇し、消費電力の増大、さらには電気脱イオン装置9の運転停止をきたすので、管理設備で電圧計34の情報に基づいて、セルパックを複数連結した一体型構造体9Aの交換の時期を判断する。
【0034】
この判断は、例えば、あらかじめ運転電圧について閾値を設けておき、電圧計34の計測値がこの閾値を超えた時点を基準として、直ちにあるいは所定の期間経過後を一体型構造体9Aの交換の時期と判断すればよい。この際、一時的に運転電圧が閾値を超えることもありうるので、運転電圧が閾値を超えた時間が所定時間継続した時点を基準としてもよい。さらに、運転電圧の上昇傾向が一定以上の傾き(単位時間当たり一定以上の圧力上昇)となった時点を基準としてもよい。
【0035】
なお、圧力計33Aの計測値と圧力計33Bの計測値に基づく一体型構造体9Aの交換の時期を判断と、電圧計34による運転電圧の計測値に基づく一体型構造体9Aの交換の時期を判断とは、併用するのが望ましいが、それぞれ単独で採用してもよい。
【0036】
このような本実施形態によれば、セルパックを複数連結した一体型構造体9Aの交換の時期を好適に判断し、水質管理を容易に行うことができる。特に、電気脱イオン装置9を遠隔監視することで、例えば、脱塩室に充填するアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂の比率を要求水質などに応じて種々変更した一体型構造体9Aをあらかじめ複数種ストックしておくことで、管理設備で一体型構造体9Aの種類を特定して、一体型構造体9Aを運搬して交換するだけで、電気脱イオン装置9の性能を回復することができる。
【0037】
以上、本発明について、前記実施形態に基づき説明してきたが、本発明は前記実施形態に限らず種々の変形実施が可能である。例えば、吐出管32に脱塩水W5の比抵抗を計測する比抵抗計や導電率を測定する導電率計を設け、水質が低下すると比抵抗値が低下するので、処理水情報として脱塩水W5の比抵抗値に基づいて、電気脱イオン装置9を管理してもよい。また、吐出管32に微粒子計を設けて、処理水情報として脱塩水W5の微粒子数に基づいて、電気脱イオン装置9を管理しても良い。さらに、電気脱イオン装置としては、カチオン交換膜とアニオン交換膜とを交互に配列して形成した脱塩室と濃縮室をカチオン交換膜とアニオン交換膜とともにフレーム内に設置してセルパックとすることができれば、その通水方向などは制限されず、種々の電気脱イオン装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0038】
3 一次純水製造装置
9 電気脱イオン装置
9A セルパックを複数連結した一体型構造体
21 陽極(電極)
22 陰極(電極)
23 カチオン交換膜
24 アニオン交換膜
25 脱塩室
26 濃縮室
27 陽極室
28 陰極室
31 供給管
32 吐出管
33A,33B 圧力計
34 電圧計
W 原水
W1 前処理水(給水)
W2 一次純水(脱塩水)
W3 超純水(二次純水)
W4 給水(被処理水)
W5 脱塩水(処理水)
W6 濃縮水
W7,W8 電極室排水
D 運転情報
【手続補正書】
【提出日】2024-10-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
陰極及び陽極と、該陰極と陽極との間に複数のカチオン交換膜とアニオン交換膜とを配列することにより交互に形成された濃縮室及び脱塩室とを有し、前記脱塩室及び濃縮室にイオン交換樹脂が充填されている電気脱イオン装置であって、
前記脱塩室及び濃縮室がこれらを構成するカチオン交換膜及びアニオン交換膜とともにそれぞれフレーム内に形成されたセルパック構造であり、このセルパックを複数連結して濃縮室及び脱塩室を交互に配置した一体型構造体となっていて、
該一体型構造体が前記電気脱イオン装置から着脱可能であり、
遠隔箇所に設けられた管理設備に前記電気脱イオン装置の運転情報を送信可能な送信機を備え、前記管理設備において、前記電気脱イオン装置の運転情報に基づいて、前記一体型構造体の交換の時期が判断され、
前記電気脱イオン装置の運転情報が、該電気脱イオン装置の運転電圧、及び該電気脱イオン装置の脱塩室の給水圧力と、処理水圧力とにより算出される通水差圧である、電気脱イオン装置。
【請求項2】
陰極及び陽極と、該陰極と陽極との間に複数のカチオン交換膜とアニオン交換膜とを配列することにより交互に形成された濃縮室及び脱塩室とを有し、前記脱塩室及び濃縮室にイオン交換樹脂が充填されており、前記脱塩室及び濃縮室がこれらを構成するカチオン交換膜及びアニオン交換膜とともにそれぞれフレーム内に形成されたセルパック構造であり、このセルパックを複数連結して濃縮室及び脱塩室を交互に配置した一体型構造体となっていて、該一体型構造体が前記電気脱イオン装置から着脱可能である電気脱イオン装置のメンテナンス方法であって、
前記電気脱イオン装置は、遠隔箇所に設けられた管理設備に前記電気脱イオン装置の運転情報を送信可能な送信機を備え、前記管理設備において、前記電気脱イオン装置の運転情報に基づいて、前記一体型構造体の交換の時期が判断され、
前記電気脱イオン装置の運転情報が、該電気脱イオン装置の運転電圧、及び該電気脱イオン装置の脱塩室の給水圧力と、処理水圧力とにより算出される通水差圧であり、
判断された前記一体型構造体の交換の時期に基づき、前記一体型構造体を前記電気脱イオン装置から取り出して交換する、電気脱イオン装置のメンテナンス方法。
【請求項3】
陰極及び陽極と、該陰極と陽極との間に複数のカチオン交換膜とアニオン交換膜とを配列することにより交互に形成された濃縮室及び脱塩室とを有し、前記脱塩室及び濃縮室にイオン交換樹脂が充填されており、前記脱塩室及び濃縮室がこれらを構成するカチオン交換膜及びアニオン交換膜とともにそれぞれフレーム内に形成されたセルパック構造であり、このセルパックを複数連結して濃縮室及び脱塩室を交互に配置した一体型構造体となっていて、該一体型構造体が前記電気脱イオン装置から着脱可能である電気脱イオン装置の管理方法であって、
前記電気脱イオン装置の運転情報に基づいて、前記一体型構造体の交換の時期を判断し、
前記電気脱イオン装置の運転情報が、該電気脱イオン装置の運転電圧、及び該電気脱イオン装置の脱塩室の給水圧力と、処理水圧力とにより算出される通水差圧である、電気脱イオン装置の管理方法。
【請求項4】
前記電気脱イオン装置の運転情報を送受信機により送信することで、該電気脱イオン装置を遠隔監視して前記一体型構造体の交換時期を判断し、交換時期と判断したら交換用の一体型構造体を前記電気脱イオン装置に搬送して交換する、請求項3に記載の電気脱イオン装置の管理方法。
【請求項5】
さらに前記電気脱イオン装置の処理水情報に基づいて、前記一体型構造体の交換の時期を判断し、
前記電気脱イオン装置の処理水情報が、該電気脱イオン装置の処理水の比抵抗値又は導電率である、請求項3に記載の電気脱イオン装置の管理方法。
【請求項6】
前記電気脱イオン装置の処理水情報を送受信機により送信することで、該電気脱イオン装置を遠隔監視して前記一体型構造体の交換時期を判断し、交換時期と判断したら交換用の一体型構造体を前記電気脱イオン装置に搬送して交換する、請求項5に記載の電気脱イオン装置の管理方法。