(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176650
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】液体移送装置
(51)【国際特許分類】
F04D 29/70 20060101AFI20241212BHJP
F04D 7/02 20060101ALI20241212BHJP
F04D 13/16 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
F04D29/70 A
F04D7/02 A
F04D13/16 W
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095374
(22)【出願日】2023-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100174089
【弁理士】
【氏名又は名称】郷戸 学
(74)【代理人】
【識別番号】100186749
【弁理士】
【氏名又は名称】金沢 充博
(72)【発明者】
【氏名】笠谷 哲司
(72)【発明者】
【氏名】渡次 圭
(72)【発明者】
【氏名】菊池 日向
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 朝紀
(72)【発明者】
【氏名】原 彰宏
【テーマコード(参考)】
3H130
【Fターム(参考)】
3H130AA06
3H130AC30
3H130BA44J
3H130BA66J
3H130CA02
3H130DE01Z
3H130DG03X
3H130DJ01X
3H130EA06J
3H130EB04J
(57)【要約】
【課題】ガスの、ポンプへの吸い込みを防止することができる液体移送装置が提供される。
【解決手段】液化ガスを移送する液体移送装置1は、液化ガスから発生した気泡を、気泡がポンプ11に吸い込まれる前に回収する気体混入防止装置20を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下方から液化ガスを吸込んで上方に移送するポンプと、
前記ポンプを内部に配置する垂直配管と、
前記垂直配管における前記ポンプの下方の位置に液化ガスを供給する水平配管と、
前記垂直配管から隔離して前記ポンプに支持され、かつ前記液化ガスから発生した気泡を、前記気泡が前記ポンプに吸い込まれる前に回収する気体混入防止装置と、を備えている、液体移送装置。
【請求項2】
前記気体混入防止装置は、前記ポンプの、前記垂直配管の側面に対向する側から、前記側面に沿って下方に延びる板状部材を備えており、
前記板状部材の先端部は、前記水平配管に向かって延びている、請求項1に記載の液体移送装置。
【請求項3】
前記板状部材は、前記垂直配管と前記板状部材との間に前記気泡が流れる気泡流路を形成する、請求項2に記載の液体移送装置。
【請求項4】
前記板状部材は、前記板状部材の途中で前記水平配管の上流側に折れ曲がった屈曲部を有している、請求項2に記載の液体移送装置。
【請求項5】
前記気体混入防止装置は、前記ポンプの吸込口から吊り下げられた、前記気泡を回収する漏斗状部材を備えている、請求項1に記載の液体移送装置。
【請求項6】
前記漏斗状部材は、前記吸込口の直径よりも大きな直径を有している、請求項5に記載の液体移送装置。
【請求項7】
前記気体混入防止装置は、前記漏斗状部材に接続されたガス排出管を備えている、請求項5に記載の液体移送装置。
【請求項8】
前記気体混入防止装置は、前記水平配管に配置されたガイド部材を備えており、
前記ガイド部材は、前記水平配管を流れる前記液化ガスの流れを絞ることにより、前記液化ガスの旋回流を発生させる、請求項5に記載の液体移送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体移送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
低温の液化ガスを移送するポンプとして、液化ガス槽から延びる配管に接続されたポット型ポンプが知られている。このようなポット型ポンプは、その運転により、液化ガス槽内の液化ガスを移送するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-240986号公報
【特許文献2】特開2014-134142号公報
【特許文献3】特開2011-247575号公報
【特許文献4】特開2018-199116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
液化ガスは、非常に低い沸点を有している。したがって、液化ガスの一部は、外部入熱などの原因により、気化してしまうおそれがある。気化したガス(言い換えれば、気泡)は、ボイルオフガス(BOG)と呼ばれる。液化ガスの流れ方向において、ポンプの吸込口の上流側でガスが発生すると、ガスが液化ガスとともにポンプの吸込口に吸い込まれるおそれがある。ポンプの吸込口に吸い込まれたガスは、ポンプの性能低下を引き起こす可能性がある。
【0005】
液化ガスは、非常に低い沸点を有している。したがって、液化ガスの一部は、外部入熱などの原因により、気化してしまうおそれがある。特許文献2(すなわち、特開2014-134142号公報)のように、ポンプが空気(ガス)を吸い込むのを防止するために外部の常温域と接する追加構成(例えば、渦防止部材)を備えると、液体移送装置に外部入熱が増えてしまい、気化したガスがより多く発生してしまう。ガスが多く発生すると、ポンプがガスを吸い込む可能性が高くなり、ポンプの性能低下を引き起こす可能性が高くなる。
【0006】
そこで、本発明は、ガスの、ポンプへの吸い込みを防止する液体移送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様では、下方から液化ガスを吸込んで上方に移送するポンプと、前記ポンプを内部に配置する垂直配管と、前記垂直配管における前記ポンプの下方の位置に液化ガスを供給する水平配管と、前記垂直配管から隔離して前記ポンプに支持され、かつ前記液化ガスから発生した気泡を、前記気泡が前記ポンプに吸い込まれる前に回収する気体混入防止装置と、を備えている、液体移送装置が提供される。
【0008】
一態様では、前記気体混入防止装置は、前記ポンプの、前記垂直配管の側面に対向する側から、前記側面に沿って下方に延びる板状部材を備えており、前記板状部材の先端部は、前記水平配管に向かって延びている。
一態様では、前記板状部材は、前記垂直配管と前記板状部材との間に前記気泡が流れる気泡流路を形成する。
一態様では、前記板状部材は、前記板状部材の途中で前記水平配管の上流側に折れ曲がった屈曲部を有している。
【0009】
一態様では、前記気体混入防止装置は、前記ポンプの吸込口から吊り下げられた、前記気泡を回収する漏斗状部材を備えている。
一態様では、前記漏斗状部材は、前記吸込口の直径よりも大きな直径を有している。
一態様では、前記気体混入防止装置は、前記漏斗状部材に接続されたガス排出管を備えている。
一態様では、前記気体混入防止装置は、前記水平配管に配置されたガイド部材を備えており、前記ガイド部材は、前記水平配管を流れる前記液化ガスの流れを絞ることにより、前記液化ガスの旋回流を発生させる。
【発明の効果】
【0010】
ポンプの運転中、液化ガス槽からポンプの吸込口まで運ばれる液化ガスの一部は、気化して気泡を形成する可能性がある。気体混入防止装置は、液化ガスから発生した気泡がポンプに吸い込まれる前に、気泡を垂直配管内で回収することで、ポンプによる気泡の吸い込みを防止することができる。
【0011】
気体混入防止装置は、ポンプ装置に備えられる一方で、真空二重配管には接続されない。したがって、真空二重配管の内筒より外側の熱、すなわち、外部の熱を真空二重配管から気体混入防止装置に伝えることなく、液化ガスから発生したガスを分離することができ、ポンプによる気泡の吸い込みを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図3】
図3(a)は折れ曲がった先端部を有する気体混入防止装置を示す図であり、
図3(b)は基端部と平行に延びる先端部を有する気体混入防止装置を示す図である。
【
図4】
図4(a)乃至
図4(c)は、垂直配管を垂直配管の延びる方向から見たときにおける、気体混入防止装置の一例を示す図である。
【
図5】気体混入防止装置の他の実施形態を示す図である。
【
図6】垂直配管を垂直配管の延びる方向から見たときの、
図5に示す気体混入防止装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明において、同一または対応する構成要素には同一の符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0014】
図1は、液体移送装置の一実施形態を示す図である。液体移送装置1は、極低温の液化ガス(例えば、液化水素)を移送するように構成されている。
図1に示すように、液体移送装置1は、真空二重配管2と、真空二重配管2内に配置されたポンプ装置10と、を備えている。
【0015】
真空二重配管2は、水平方向に延びる水平配管2Aと、垂直方向に延びる垂直配管2Cと、水平配管2Aおよび垂直配管2Cを接続するエルボ管2Bと、を有している。水平配管2A、エルボ管2B、および垂直配管2Cのそれぞれは、外筒および内筒を有しており、外筒と内筒との間に真空を形成している。このような構造を有する真空二重配管2は、外部入熱によって、真空二重配管2を流れる液化ガスへの入熱および液化ガスの気化を抑制することができる。
【0016】
ポンプ装置10は、垂直配管2Cの内部に配置されており、水平配管2Aおよびエルボ管2Bは、ポンプ装置10の下方に配置されている。水平配管2Aは、垂直配管2Cにおけるポンプ装置10(より具体的には、ポンプ11)の下方の位置に液化ガスを供給する。
図1に示す実施形態では、水平配管2Aには、吸込管3が接続されている。例えば、吸込管3は、液化ガス槽(図示しない)に接続されている。ポンプ装置10を運転することにより、液化ガス槽内の液化ガスは、吸込管3を通じて真空二重配管2に流れ込む。水平配管2Aおよびエルボ管2Bを流れる液化ガスは、垂直配管2C内に配置されたポンプ装置10に吸い込まれる。
【0017】
図1に示すように、ポンプ装置10には、吐出ノズル19が接続されており、吐出ノズル19には、吐出管4が接続されている。したがって、ポンプ装置10に吸い込まれた液化ガスは、吐出ノズル19および吐出管4を通じて、外部に移送される。
【0018】
このように、ポンプ装置10の下方に配置された水平配管2Aおよびエルボ管2Bを流れる液化ガスを吸い込むタイプの液体移送装置1は、底部吸い込み式のポット型ポンプと呼ばれてもよい。底部吸い込み式のポット型ポンプは、一般的なポット型ポンプシステム(すなわち、吸込管をサクションポットの底部に取り付けることのできないタイプのポンプシステム)とは異なり、大口径の吸込管3の取り付けが可能であり、低い圧力損失で、かつ大流量の液化ガスを移送することができる。
【0019】
図2は、ポンプ装置を示す模式図である。
図2に示すように、ポンプ装置10は、垂直配管2Cの内部に配置されたポンプ11と、ポンプ11を駆動するモータ12と、を備えている。例えば、ポンプ装置10は、サブマージドモータポンプである。
【0020】
ポンプ11は、回転軸17に固定された複数の羽根車16と、複数の羽根車16を収容するポンプケーシング18と、を備えている。
図2に示す実施形態では、複数の羽根車16が配置されているが、少なくとも1つの羽根車16が配置されてもよい。ポンプケーシング18は、複数(より具体的には、初段)の羽根車16の下方に配置された吸込ベルマウス15を有しており、吸込ベルマウス15は、下方に開口する吸込口15aを有している。
【0021】
モータ12は、回転軸17に固定された回転子21と、回転子21を取り囲む固定子22と、回転子21および固定子22を収容するモータケーシング23と、を備えている。回転子21および固定子22は、回転要素を構成している。
【0022】
モータ12に電力が供給されると、回転子21とともに回転軸17および複数の羽根車16が回転し、液化ガスは吸込ベルマウス15の吸込口15aを通じて、ポンプ装置10の内部に導入される。ポンプ装置10を通過した液化ガスは、吐出ノズル19および吐出管4(
図1参照)を通って、外部に移送される。
【0023】
真空二重配管2を流れる液化ガスが気化すると、真空二重配管2内にガス(言い換えれば、気泡)が発生する。特に、ガスが水平配管2Aで発生すると、ガスが吸込ベルマウス15を通じてポンプ11に吸い込まれるおそれがある。この場合、ガスの吸い込みに起因して、ポンプ11の性能低下が引き起こされてしまう。そこで、液体移送装置1は、水平配管2A(およびエルボ管2B)を流れる液化ガスから発生したガスを、吸込口15aから隔離する気体混入防止装置20を備えている。
【0024】
気体混入防止装置20は、垂直配管2Cから隔離してポンプ11に支持されており、液化ガスから発生したガスを、ガスがポンプ11に吸い込まれる前に垂直配管2C内で回収するように構成されている。
【0025】
図1および
図2に示す実施形態では、気体混入防止装置20は、吸込口15aの下方に向かって、垂直配管2Cに沿って延びる板状部材を備えている。より具体的には、板状部材としての気体混入防止装置20は、吸込ベルマウス15に接続され、かつ垂直配管2Cと平行に延びる基端部20aと、基端部20aから下方に延びる先端部20bと、を有している。本実施形態では、基端部20aおよび先端部20bは、一体成形部材であるが、別部材から構成されてもよい。
【0026】
板状部材としての気体混入防止装置20は、ポンプ11の、垂直配管2Cの内側内面2Ca(すなわち、垂直配管の側面)に対向する側から、内側内面2Caに沿って下方に延びている。気体混入防止装置20の先端部20bは、水平配管2Aに向かって延びている。
【0027】
気体混入防止装置20は、垂直配管2Cと気体混入防止装置20(本実施形態では、板状部材)との間にガスが流れるガス流路(言い換えれば、気泡流路)A1を形成する。言い換えれば、気体混入防止装置20は、垂直配管2Cの空間を、液化ガスから発生したガスが流れる空間(ガス流路A1)と、液化ガスが流れる空間(液体流路)A2と、に区画する。
【0028】
本実施形態によれば、気体混入防止装置20は、液化ガスから発生したガスをガス流路A1に流入させつつ、液化ガスを液体流路A2に流入させることができる。吸込ベルマウス15の吸込口15aは、液体流路A2に配置されている。したがって、液体流路A2を流れる液化ガスは、吸込口15aに吸い込まれ、ガス流路A1を流れるガスは、吸込口15aに吸い込まることなく、垂直配管2Cを上昇する。結果として、気体混入防止装置20は、ガスの、ポンプ11への吸い込みを防止することができる。
【0029】
水平配管2A(または吸込管3)を流れる液化ガスから発生したガスは、その浮力により、水平配管2Aの上部に集まる。水平配管2Aの上部に集まったガスは、液化ガスとは分離された状態で、エルボ管2Bの内側曲面2Baおよび垂直配管2Cの内側内面2Caに沿って流れる(
図1参照)。
【0030】
水平配管2Aは、液化ガスから発生したガス(すなわち、気泡)を水平配管2Aの上部に集めることが可能な長さを有している。水平配管2Aの長さは、移送対象となる液化ガスの種類や液化ガスの流速などの要素に基づいて決定される。水平配管2Aの長さを十分に確保することにより、ガスを液化ガスから確実に分離することができ、垂直配管2Cの内側内面2Ca側に配置された気体混入防止装置20は、ガスを液化ガスからより効果的に隔離することができる。
【0031】
エルボ管2Bの内側曲面2Baは、エルボ管2Bの折れ曲がり部位のうち、曲率半径の小さな部位である。垂直配管2Cの内側内面2Caは、内側曲面2Baに接続された部位である。気体混入防止装置20は、内側内面2Caに対向して配置されている。したがって、ガス流路A1は、垂直配管2Cの内側内面2Caと気体混入防止装置20との間に形成される。このような構成により、内側曲面2Baおよび内側内面2Caに沿って流れるガスは、確実にガス流路A1に導入される。
【0032】
ガスを液化ガスからより効果的に隔離するために、先端部20bの先端は、垂直配管2Cの下方まで延びていることが好ましい。より好ましくは、先端部20bの先端は、水平配管2Aの途中の位置まで延びている。より具体的には、水平配管2Aを水平配管2Aの延びる方向から見たとき、先端部20bの先端は、水平配管2Aの中心部分まで延びている。言い換えれば、先端部20bの先端は、真空二重配管2の底部までは到達していない。このような構成により、気体混入防止装置20は、ガスをガス流路A1に流入させつつ、圧力損失を抑制して、液化ガスを液体流路A2に流入させることができる。
【0033】
気体混入防止装置20は、ポンプ装置10(本実施形態では、ポンプ11)に接続されている一方で、真空二重配管2には接続されていない。気体混入防止装置20を真空二重配管2(例えば、水平配管2Aの上部)に接続した場合、気体混入防止装置20は、水平配管2Aの上流側で発生したガスを捕捉する。しかしながら、この場合、真空二重配管2の内筒より外側の熱、すなわち、外部の熱が真空二重配管2を通じて、気体混入防止装置20に伝達される可能性がある。
【0034】
外部の熱が気体混入防止装置20に伝わることにより、気体混入防止装置20の温度が上昇し、結果として、気体混入防止装置20の周囲でガスが発生するおそれがある。仮に、気体混入防止装置20の下流側でガスが発生すると、気体混入防止装置20はガスを捕捉することができず、結果として、ガスが吸込ベルマウス15の吸込口15aに流入するおそれがある。
【0035】
本実施形態によれば、気体混入防止装置20をポンプ装置10に接続することにより、気体混入防止装置20の周囲でのガスの発生を防止することができ、結果として、気体混入防止装置20の下流側でのガスの発生が防止される。したがって、上述した問題点は生じない。
【0036】
図3(a)は折れ曲がった先端部を有する気体混入防止装置を示す図であり、
図3(b)は基端部と平行に延びる先端部を有する気体混入防止装置を示す図である。
図3(a)に示すように、気体混入防止装置20は、その途中で水平配管2Aの上流側(すなわち、吸込管3側)に折れ曲がった屈曲部20cを有している。
【0037】
屈曲部20cは、基端部20aと先端部20bとの間に配置されており、内側曲面2Ba(または水平配管2A)に向かって、斜め下方に折れ曲がっている。このような形状により、先端部20bは、水平配管2Aおよびエルボ管2Bを流れるガスを確実に捕捉することができ、ガスが気体混入防止装置20を通過して液体流路A2側に流れることをより確実に防止することができる。
【0038】
一実施形態では、真空二重配管2の形状や液化ガスの流速などの状況に応じて、気体混入防止装置20は、屈曲部20cを有していなくてもよい。
図3(b)に示すように、気体混入防止装置20は、基端部20aと平行に延びる先端部20bを有してもよい。この場合、気体混入防止装置20は、その全体として、垂直配管2Cと平行に延びている。
【0039】
図4(a)乃至
図4(c)は、垂直配管を垂直配管の延びる方向から見たときにおける、気体混入防止装置の一例を示す図である。
図4(a)および
図4(c)に示す実施形態では、垂直配管2Cを垂直配管2Cの延びる方向から見たとき、気体混入防止装置20は、湾曲形状を有する基端部20aを有している。
図4(b)に示す実施形態では、垂直配管2Cを垂直配管2Cの延びる方向から見たとき、気体混入防止装置20は、直線形状を有する基端部20aを有している。
【0040】
図4(a)に示す実施形態では、基端部20aは、吸込ベルマウス15の外形に沿った円弧形状を有している。
図4(c)に示す実施形態では、基端部20aは、吸込ベルマウス15の外形とは反対側に湾曲している。
【0041】
図5は、気体混入防止装置の他の実施形態を示す図である。
図5に示す実施形態では、気体混入防止装置20は、液化ガスから発生したガスを回収する漏斗状部材25と、漏斗状部材25を吸込ベルマウス15の吸込口15aから吊り下げる吊り下げ部材27と、を備えている。
【0042】
漏斗状部材25は、吸込口15aの下方に配置されており、ガスを吸込口15aから隔離する構造を有している。漏斗状部材25は、吸込口15aの直径よりも大きな直径を有している。漏斗状部材25を吸込口15aの下方に配置することにより、漏斗状部材25は、垂直配管2Cを上昇するガスを捕捉(回収)する。
【0043】
ガスを漏斗状部材25に捕捉させることにより、垂直配管2Cを上昇する、ガス(気泡)を含まない液化ガスは、漏斗状部材25の上方に配置された吸込口15aに吸い込まれる。
図5に示す実施形態では、漏斗状部材25は、円錐形状を有しているが、ガスを捕捉することができれば、漏斗状部材25の形状は特に限定されない。
【0044】
図5に示すように、気体混入防止装置20は、漏斗状部材25に接続されたガス排出管26を備えてもよい。ガス排出管26は、垂直配管2Cと平行に延びており、漏斗状部材25に回収されたガスを外部に排出するように構成されている。
【0045】
気体混入防止装置20は、ポンプ装置10(本実施形態では、吸込ベルマウス15)に接続されている一方で、真空二重配管2には接続されていない。気体混入防止装置20を真空二重配管2(例えば、垂直配管2Cの内側内面2Ca)に接続した場合、気体混入防止装置20は、水平配管2Aの上流側で発生したガスを捕捉する。しかしながら、この場合、真空二重配管2の内筒より外側の熱、すなわち、外部の熱が真空二重配管2を通じて、気体混入防止装置20に伝達される可能性がある。
【0046】
外部の熱が気体混入防止装置20に伝わると、気体混入防止装置20の温度が上昇し、結果として、気体混入防止装置20の周囲でガスが発生するおそれがある。仮に、気体混入防止装置20の下流側でガスが発生すると、気体混入防止装置20は、ガスを捕捉することができず、結果として、ガスが吸込ベルマウス15の吸込口15aに流入するおそれがある。
【0047】
図6は、垂直配管を垂直配管の延びる方向から見たときの、
図5に示す気体混入防止装置を示す図である。
図6に示すように、気体混入防止装置20は、水平配管2Aに配置されたガイド部材30を備えてもよい。ガイド部材30は、水平配管2Aを流れる液化ガスの流れを絞ることにより、垂直配管2Cに旋回流を発生させるように構成されている。ガイド部材30は、補助的に配置されており、液化ガスから発生したガスをより積極的に漏斗状部材25に回収させることができる。
【0048】
図6に示すように、ガイド部材30は、水平配管2Aの延びる方向に対して、傾斜して配置された傾斜板30aと、傾斜板30aを水平配管2Aに取り付ける複数の取付部材30bと、を備えている。取付部材30bの数は、本実施形態には限定されない。
図6に示す実施形態では、傾斜板30aは、取付部材30bによって水平配管2Aの一側面側に配置されているが、他側面側(反対側の面)に配置されてもよい。
【0049】
水平配管2Aを流れる液化ガスの流速は、液化ガスの流量を水平配管2Aの断面積で割り算することにより、決定される。したがって、液化ガスの流量が一定である条件下において、水平配管2Aの断面積が小さければ、液化ガスの流速は速くなる。ガイド部材30は、水平配管2Aの断面積(すなわち、液化ガスの流路)を小さくする。したがって、ガイド部材30は、水平配管2Aを流れる液化ガスの流速を速くする。
【0050】
ガイド部材30を配置することにより、液化ガスは、その流路が絞られることで、流れに偏りが発生し、かつ増速された状態で、エルボ管2Bおよび垂直配管2Cを流れる。水平配管2Aおよびガイド部材30を通過した液化ガスは、エルボ管2Bを通過する際に液化ガスの旋回流が形成される(
図6の矢印参照)。液化ガスの旋回流が形成されると、旋回流による遠心力は、液化ガスと、液化ガスから発生したガス(気泡)と、に作用する。
【0051】
液化ガスは、ガス(気泡)よりも高い密度を有している。したがって、密度の低いガスは垂直配管2Cの中心側に集まり、密度の高い液化ガスは垂直配管2Cの外側(すなわち、中心側に集まるガスの外側)を旋回する。漏斗状部材25は、垂直配管2Cの中央側に配置されている。したがって、垂直配管2Cの中心側に集まるガスは、漏斗状部材25に積極的に回収される。
【0052】
本実施形態においても、漏斗状部材25は、吊り下げ部材27を介してポンプ装置10(より具体的には、ポンプ11の吸込ベルマウス15)に接続されているため、漏斗状部材25の下流側でのガスの発生が防止される。
【0053】
図1乃至
図4に示す実施形態と、
図5および
図6に示す実施形態と、を、適宜、組み合わせてもよい。より具体的には、気体混入防止装置20は、
図1乃至
図4に示す板状部材と、
図5および
図6に示す漏斗状部材25と、を備えてもよい。このような構成により、気体混入防止装置20は、ガスの、ポンプ11への吸い込みをより確実に防止することができる。
【0054】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうることである。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0055】
1 液体移送装置
2 真空二重配管
2A 水平配管
2B エルボ管
2Ba 内側曲面
2C 垂直配管
2Ca 内側内面
3 吸込管
4 吐出管
10 ポンプ装置
11 ポンプ
12 モータ
15 吸込ベルマウス
15a 吸込口
16 羽根車
17 回転軸
18 ポンプケーシング
19 吐出ノズル
20 気体混入防止装置
20a 基端部
20b 先端部
20c 屈曲部
21 回転子
22 固定子
23 モータケーシング
25 漏斗状部材
26 ガス排出管
27 吊り下げ部材
30 ガイド部材
30a 傾斜板
30b 取付部材