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特開2024-17671マルチビーム画像取得装置及びマルチビーム画像取得方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017671
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】マルチビーム画像取得装置及びマルチビーム画像取得方法
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/22 20060101AFI20240201BHJP
   H01J 37/28 20060101ALI20240201BHJP
   H01J 37/244 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
H01J37/22 502H
H01J37/28 B
H01J37/244
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022120477
(22)【出願日】2022-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】504162958
【氏名又は名称】株式会社ニューフレアテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100119035
【弁理士】
【氏名又は名称】池上 徹真
(74)【代理人】
【識別番号】100141036
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 章
(74)【代理人】
【識別番号】100178984
【弁理士】
【氏名又は名称】高下 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 洋介
(72)【発明者】
【氏名】石井 浩一
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 宗博
(72)【発明者】
【氏名】安藤 厚司
【テーマコード(参考)】
5C101
【Fターム(参考)】
5C101AA03
5C101EE03
5C101EE22
5C101EE51
5C101EE69
5C101EE75
5C101FF48
5C101GG37
5C101HH21
5C101HH36
5C101JJ06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】使用するビームアレイの配列サイズに関わらずマルチ2次電子ビームのうちコーナービームを特定可能な装置を提供する。
【解決手段】マルチビーム画像取得装置は、ステージ105と、ステージ上に配置された基材と、基材上であってマルチ1次電子ビーム20のうち予め設定された十字状に配列される複数のビームの試料面上の高さ位置における設計上の複数の照射位置と重なる位置に形成される十字パターンを構成する複数のラインパターンと、アライメントマークを有するマーク部材111と、アライメントマークを用いてマルチ1次電子ビームの位置合わせを行った状態でマーク部材111をマルチ1次電子ビーム20で照射する電子光学系151と、マーク部材111から放出されたマルチ2次電子ビームを検出するマルチ検出器222と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を載置可能なステージと、
前記ステージ上に配置され、少なくとも表面が第1の材料を用いた基材と、前記基材上であってマルチ1次電子ビームのうち予め設定された十字状若しくはクロス状に配列される複数のビームの前記試料面上の高さ位置における設計上の複数の照射位置と重なる位置に形成され、組み合わせることにより十字パターン若しくはクロスパターンを構成する、前記第1の材料とは異なる第2の材料を用いた複数のラインパターンと、アライメントマークと、を有するマーク部材と、
前記アライメントマークを用いて前記マルチ1次電子ビームの位置合わせを行った状態で、前記マーク部材を前記マルチ1次電子ビームで照射する電子光学系と、
前記マーク部材を前記マルチ1次電子ビームで照射することによって前記マーク部材から放出されたマルチ2次電子ビームを検出するマルチ検出器と、
を備えたことを特徴とするマルチビーム画像取得装置。
【請求項2】
検出された前記マルチ2次電子ビームの画像を用いて、画像内の強度の違いに基づいて前記複数のラインパターンを照射した複数のビームを特定する照射ビーム特定部と、
特定された前記複数のビームの情報を用い、前記マルチ2次電子ビームの配列規則性に基づいて、前記マルチ2次電子ビームの4隅のうち少なくとも1つのコーナービームを特定するコーナービーム特定部と、
をさらに備えたことを特徴とする請求項1記載のマルチビーム画像取得装置。
【請求項3】
前記複数のラインパターンは、組み合わせることにより前記クロスパターンを構成し、前記マルチ1次電子ビームの設計上のアレイ矩形形状の対角線上に配列される複数のビームと重なる位置に形成されることを特徴とする請求項1又は2記載のマルチビーム画像取得装置。
【請求項4】
前記複数のラインパターンは、組み合わせることにより前記十字パターンを構成し、前記マルチ1次電子ビームの設計上のアレイ矩形形状の外周の4辺の中心を対向する辺同士で繋いだ直交する2つの直線上に配列される複数のビームと重なる位置に形成されることを特徴とする請求項1又は2記載のマルチビーム画像取得装置。
【請求項5】
アライメントマークを用いてマルチ1次電子ビームの位置合わせを行う工程と、
前記アライメントマークを用いて前記マルチ1次電子ビームの位置合わせを行った状態で、試料を載置可能なステージ上に配置され、少なくとも表面が第1の材料を用いた基材と、前記基材上であってマルチ1次電子ビームのうち予め設定された十字状若しくはクロス状に配列される複数のビームの前記試料面上の高さ位置における設計上の複数の照射位置と重なる位置に形成され、組み合わせることにより十字パターン若しくはクロスパターンを構成する、前記第1の材料とは異なる第2の材料を用いた複数のラインパターンと、前記アライメントマークと、を有するマーク部材を前記マルチ1次電子ビームで照射する工程と、
前記マーク部材を前記マルチ1次電子ビームで照射することによって前記マーク部材から放出されたマルチ2次電子ビームを検出し、検出された画像データを出力する工程と、
を備えたことを特徴とするマルチビーム画像取得方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチビーム画像取得装置及びマルチビーム画像取得方法に関し、マルチ1次電子ビームを基板に照射して、基板から放出されるマルチ2次電子ビームを検出して画像を得る手法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大規模集積回路(LSI)の高集積化及び大容量化に伴い、半導体素子に要求される回路線幅はますます狭くなってきている。そして、多大な製造コストのかかるLSIの製造にとって、歩留まりの向上は欠かせない。しかし、1ギガビット級のDRAM(ランダムアクセスメモリ)に代表されるように、LSIを構成するパターンは、サブミクロンからナノメータのオーダーになっている。近年、半導体ウェハ上に形成されるLSIパターン寸法の微細化に伴って、パターン欠陥として検出しなければならない寸法も極めて小さいものとなっている。よって、半導体ウェハ上に転写された超微細パターンの欠陥を検査するパターン検査装置の高精度化が必要とされている。その他、歩留まりを低下させる大きな要因の一つとして、半導体ウェハ上に超微細パターンをフォトリソグラフィ技術で露光、転写する際に使用されるマスクのパターン欠陥があげられる。そのため、LSI製造に使用される転写用マスクのパターンの画像を例えば電子ビームを使って取得し、得られた画像を用いて転写用マスクの欠陥が検査される。
【0003】
例えば、電子ビームを使ったマルチビームを検査対象基板に照射して、検査対象基板から放出される各ビームに対応する2次電子を検出して、パターン画像を撮像する。そして撮像された測定画像と、設計データ、あるいは基板上の同一パターンを撮像した測定画像と比較することにより検査を行う方法が知られている。
【0004】
マルチビームで各ビーム画像を同時に取得する装置では、マルチ2次電子ビームと2次電子検出器の複数の検出エレメントとの位置合わせが重要となる。そのためには、まず、マルチ2次電子ビームの4隅のコーナービームを特定することが求められる。マルチ2次電子ビームの各ビーム位置は複数の検出エレメントで撮像された2次電子画像から算出される。しかしながら、得られた画像におけるビームの位置関係は様々なケースが存在する。そのため、コーナービームを特定することは容易ではない。
【0005】
さらに、マルチビームのうち外周に位置するビームは一般的に収差が大きくなってしまう場合がある。かかる場合に、使用するビームアレイを中央部のビームアレイに限定したい場合も生じ得る。この場合、使用するビームアレイの配列サイズによってマルチ2次電子ビームの4隅のコーナービームも変化することになる。よって、最大配列サイズのビームアレイの4隅のコーナービームだけを特定できる機構では、使用するビームアレイの配列サイズが異なると4隅のコーナービームを特定することが困難になる。よって、使用するビームアレイの配列サイズに関わらず、その時の4隅のコーナービームを特定できることが望ましい。
【0006】
ここで、例えば、2次光学系レンズの最終段のレンズと2次電子検出器との間に開口板を配置して、開口板を2次電子ビームの位置調整に用いるといった手法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2014-026834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明の一態様は、使用するビームアレイの配列サイズに関わらずマルチ2次電子ビームのうちコーナービームを特定可能な装置および方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様のマルチビーム画像取得装置は、
試料を載置可能なステージと、
ステージ上に配置され、少なくとも表面が第1の材料を用いた基材と、基材上であってマルチ1次電子ビームのうち予め設定された十字状若しくはクロス状に配列される複数のビームの試料面上の高さ位置における設計上の複数の照射位置と重なる位置に形成され、組み合わせることにより十字パターン若しくはクロスパターンを構成する、第1の材料とは異なる第2の材料を用いた複数のラインパターンと、アライメントマークと、を有するマーク部材と、
アライメントマークを用いてマルチ1次電子ビームの位置合わせを行った状態で、マーク部材をマルチ1次電子ビームで照射する電子光学系と、
マーク部材をマルチ1次電子ビームで照射することによってマーク部材から放出されたマルチ2次電子ビームを検出するマルチ検出器と、
を備えたことを特徴とする。
【0010】
また、検出されたマルチ2次電子ビームの画像を用いて、画像内の強度の違いに基づいて複数のラインパターンを照射した複数のビームを特定する照射ビーム特定部と、
特定された複数のビームの情報を用い、マルチ2次電子ビームの配列規則性に基づいて、マルチ2次電子ビームの4隅のうち少なくとも1つのコーナービームを特定するコーナービーム特定部と、
をさらに備えると好適である。
【0011】
また、複数のラインパターンは、組み合わせることによりクロスパターンを構成し、マルチ1次電子ビームの設計上のアレイ矩形形状の対角線上に配列される複数のビームと重なる位置に形成されると好適である。
【0012】
或いは、複数のラインパターンは、組み合わせることにより十字パターンを構成し、マルチ1次電子ビームの設計上のアレイ矩形形状の外周の4辺の中心を対向する辺同士で繋いだ直交する2つの直線上に配列される複数のビームと重なる位置に形成されると好適である。
【0013】
本発明の一態様のマルチビーム画像取得方法は、
アライメントマークを用いてマルチ1次電子ビームの位置合わせを行う工程と、
アライメントマークを用いてマルチ1次電子ビームの位置合わせを行った状態で、試料を載置可能なステージ上に配置され、少なくとも表面が第1の材料を用いた基材と、基材上であってマルチ1次電子ビームのうち予め設定された十字状若しくはクロス状に配列される複数のビームの試料面上の高さ位置における設計上の複数の照射位置と重なる位置に形成され、組み合わせることにより十字パターン若しくはクロスパターンを構成する、第1の材料とは異なる第2の材料を用いた複数のラインパターンと、アライメントマークと、を有するマーク部材をマルチ1次電子ビームで照射する工程と、
マーク部材をマルチ1次電子ビームで照射することによってマーク部材から放出されたマルチ2次電子ビームを検出し、検出された画像データを出力する工程と、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様によれば、使用するビームアレイの配列サイズに関わらずマルチ2次電子ビームのうちコーナービームを特定できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施の形態1における検査装置の構成を示す構成図である。
図2】実施の形態1における成形アパーチャアレイ基板の構成を示す概念図である。
図3】実施の形態1におけるビーム選択アパーチャ基板の一例を示す上面図である。
図4】実施の形態1の比較例1における検出画像の一例を示す図である。
図5】実施の形態1の比較例2における検出画像の他の一例を示す図である。
図6】実施の形態1の比較例3における検出画像の他の一例を示す図である。
図7】実施の形態1の比較例4におけるマーク部材の一例を示す図である。
図8】実施の形態1の比較例4におけるマーク部材を照射した場合の孤立パターンとマルチ1次電子ビームとの位置関係の一例を示す図である。
図9】実施の形態1の比較例4におけるマーク部材を照射した場合の孤立パターンとマルチ1次電子ビームとの位置関係の他の一例を示す図である。
図10】実施の形態1の比較例4におけるマーク部材を照射した場合の孤立パターンとマルチ1次電子ビームとの位置関係の他の一例を示す図である。
図11】実施の形態1におけるマーク部材の一例を示す図である。
図12】実施の形態1におけるマーク部材を照射した場合の複数のラインパターンとマルチ1次電子ビームとの位置関係の一例を示す図である。
図13】実施の形態1におけるマーク部材を照射した場合の複数のラインパターンとマルチ1次電子ビームとの位置関係の他の一例を示す図である。
図14】実施の形態1におけるマーク部材を照射した場合の複数のラインパターンとマルチ1次電子ビームとの位置関係の他の一例を示す図である。
図15】実施の形態1における位置合わせ回路の内部構成の一例を示す図である。
図16】実施の形態1における検査方法の要部工程の一例を示すフローチャート図である。
図17】実施の形態1における2次電子ビームアレイの一例を示す図である。
図18】実施の形態1における各検出エレメントで撮像された画像の一例を示す図である。
図19】実施の形態1におけるコーナービームを特定する手法を説明するための一部の一例を示す図である。
図20】実施の形態1におけるコーナービームを特定する手法を説明するための残部の一例を示す図である。
図21】実施の形態1における検出エレメントD11と各ビームB11,B12,B21,B22の位置との関係を示す図である。
図22】実施の形態1における検出エレメントD12と各ビームB11,B12,B21,B22の位置との関係を示す図である。
図23】実施の形態1における検出エレメントD21と各ビームB11,B12,B21,B22の位置との関係を示す図である。
図24】実施の形態1における検出エレメントD22と各ビームB11,B12,B21,B22の位置との関係を示す図である。
図25】実施の形態1における合成後の各検出エレメントの位置と各ビームの位置との関係の一例を示す図である。
図26】実施の形態1における全体位置関係の一例を示す図である。
図27】実施の形態1の変形例におけるマーク部材の一例を示す図である。
図28】実施の形態1の変形例におけるマーク部材を照射した場合の複数のラインパターンとマルチ1次電子ビームとの位置関係の一例を示す図である。
図29】実施の形態1の変形例におけるコーナービームを特定する手法を説明するための一例を示す図である。
図30】実施の形態1における半導体基板に形成される複数のチップ領域の一例を示す図である。
図31】実施の形態1における検査処理を説明するための図である。
図32】実施の形態1における比較回路内の構成の一例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、実施の形態では、マルチビーム画像取得装置の一例として、マルチ電子ビームを用いた検査装置について説明する。但し、これに限るものではない。マルチ1次電子ビームで基板を照射して、基板から放出されるマルチ2次電子ビームをマルチ検出器で検出する装置であればよい。
【0017】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1における検査装置の構成を示す構成図である。図1において、基板に形成されたパターンを検査する検査装置100は、マルチ電子ビーム検査装置の一例である。また、検査装置100は、マルチビーム画像取得装置の一例である。検査装置100は、画像取得機構150、及び制御系回路160を備えている。画像取得機構150は、電子ビームカラム102(電子鏡筒)及び検査室103を備えている。電子ビームカラム102内には、電子銃201、電磁レンズ202、成形アパーチャアレイ基板203、ビーム選択アパーチャ基板210、駆動回路211、電磁レンズ205、一括ブランキング偏向器212、制限アパーチャ基板213、電磁レンズ206、電磁レンズ207(対物レンズ)、偏向器208、偏向器209、E×B分離器214(ビームセパレーター)、偏向器218、偏向器226、電磁レンズ224、検出器ステージ229、検出器アパーチャアレイ基板225、及びマルチ検出器222が配置されている。電子銃201、電磁レンズ202、成形アパーチャアレイ基板203、ビーム選択アパーチャ基板210、電磁レンズ205、一括ブランキング偏向器212、制限アパーチャ基板213、電磁レンズ206、電磁レンズ207(対物レンズ)、偏向器208、及び偏向器209によって1次電子光学系151(照明光学系)を構成する。また、電磁レンズ207、E×B分離器214、偏向器218、偏向器226、及び電磁レンズ224によって2次電子光学系152(検出光学系)を構成する。マルチ検出器222は、2次座標系のx,y方向及び回転(θ)方向に移動可能な検出器ステージ229上に配置される。検出器ステージ229は、回転ステージ227、及び2次系のx,yステージ228を有している。
【0018】
検査室103内には、少なくともXY方向に移動可能なステージ105が配置される。ステージ105上には、検査対象となる基板101(試料)が配置される。基板101には、露光用マスク基板、及びシリコンウェハ等の半導体基板が含まれる。基板101が半導体基板である場合、半導体基板には複数のチップパターン(ウェハダイ)が形成されている。基板101が露光用マスク基板である場合、露光用マスク基板には、チップパターンが形成されている。チップパターンは、複数の図形パターンによって構成される。かかる露光用マスク基板に形成されたチップパターンが半導体基板上に複数回露光転写されることで、半導体基板には複数のチップパターン(ウェハダイ)が形成されることになる。以下、基板101が半導体基板である場合を主として説明する。基板101は、例えば、パターン形成面を上側に向けてステージ105に配置される。また、ステージ105上には、検査室103の外部に配置されたレーザ測長システム122から照射されるレーザ測長用のレーザ光を反射するミラー216が配置されている。また、ステージ105上には、基板101面と同じ高さ位置に調整されるマーク部材111が配置される。
【0019】
また、マルチ検出器222は、電子ビームカラム102の外部で検出回路106に接続される。検出回路106は、チップパターンメモリ123に接続される。
【0020】
マルチ検出器222は、アレイ状(格子状)に配置される複数の検出エレメントを有する。検出器アパーチャアレイ基板225には、複数の検出エレメントの配列ピッチで複数の開口部が形成される。複数の開口部は、例えば、円形に形成される。各開口部の中心位置は、対応する検出エレメントの中心位置に合わせて形成される。また、開口部のサイズは、検出エレメントの電子検出面の領域サイズよりも小さく形成される。マルチ検出器222の複数の検出エレメントの数および配列は、例えば、形成されるマルチ1次電子ビーム20の本数および配列に合わせて配置される。検出器アパーチャアレイ基板225の複数の開口部の数および配列は、例えば、マルチ検出器222の複数の検出エレメントの数および配列に合わせて配置される。なお、マルチ検出器222の複数の検出エレメントの数は形成されるマルチ1次電子ビーム20の本数より多い場合であっても構わない。同様に、検出器アパーチャアレイ基板225の複数の開口部の数は、マルチ検出器222の複数の検出エレメントの数より多い場合であっても構わない。
【0021】
制御系回路160では、検査装置100全体を制御する制御計算機110が、バス120を介して、位置回路107、比較回路108、参照画像作成回路112、ステージ制御回路114、レンズ制御回路124、ブランキング制御回路126、偏向制御回路128、検出器ステージ制御回路130、E×B制御回路133、位置合わせ回路134、ビーム選択制御回路136、磁気ディスク装置等の記憶装置109、メモリ118、及びプリンタ119に接続されている。また、偏向制御回路128は、DAC(デジタルアナログ変換)アンプ144,146,148,149に接続される。DACアンプ146は、偏向器208に接続され、DACアンプ144は、偏向器209に接続される。DACアンプ148は、偏向器218に接続される。DACアンプ149は、偏向器226に接続される。
【0022】
また、チップパターンメモリ123は、比較回路108と位置合わせ回路134とに接続されている。また、ステージ105は、ステージ制御回路114の制御の下に駆動機構142により駆動される。駆動機構142では、例えば、ステージ座標系におけるX方向、Y方向、θ方向に駆動する3軸(X-Y-θ)モータの様な駆動系が構成され、XYθ方向にステージ105が移動可能となっている。これらの、図示しないXモータ、Yモータ、θモータは、例えばステップモータを用いることができる。ステージ105は、XYθ各軸のモータによって水平方向及び回転方向に移動可能である。そして、ステージ105の移動位置はレーザ測長システム122により測定され、位置回路107に供給される。レーザ測長システム122は、ミラー216からの反射光を受光することによって、レーザ干渉法の原理でステージ105の位置を測長する。ステージ座標系は、例えば、マルチ1次電子ビーム20の光軸に直交する面に対して、1次座標系のX方向、Y方向、θ方向が設定される。
【0023】
検出器ステージ229は、検出器ステージ制御回路130の制御の下に駆動機構132により駆動される。駆動機構132では、例えば、ステージ座標系におけるx方向、y方向、θ方向に駆動する3軸(x-y-θ)モータの様な駆動系が構成され、x、y方向にx,yステージ228が、θ方法に回転ステージ227が移動可能となっている。図1の例では、回転ステージ227上にx,yステージ228が配置される場合を示している。これらの、図示しないxモータ、yモータ、θモータは、例えばステップモータを用いることができる。検出器ステージ229は、xyθ各軸のモータによって水平方向及び回転方向に移動可能である。ステージ座標系は、例えば、マルチ2次電子ビーム300の光軸に直交する面に対して、2次座標系のx方向、y方向、θ方向が設定される。或いは、検出器ステージ229の移動の代わりに、例えばアライメントコイルを配置して光学的にマルチ2次電子ビーム300を移動して、マルチ2次電子ビーム300とマルチ検出器222との相対位置を調整しても良い。
【0024】
電磁レンズ202、電磁レンズ205、電磁レンズ206、電磁レンズ207、及び電磁レンズ224は、レンズ制御回路124により制御される。E×B分離器214は、E×B制御回路133により制御される。駆動回路211は、ビーム選択制御回路136により制御される。また、一括偏向器212は、2極以上の電極により構成される静電型の偏向器であって、電極毎に図示しないDACアンプを介してブランキング制御回路126により制御される。偏向器209は、4極以上の電極により構成される静電型の偏向器であって、電極毎にDACアンプ144を介して偏向制御回路128により制御される。偏向器208は、4極以上の電極により構成される静電型の偏向器であって、電極毎にDACアンプ146を介して偏向制御回路128により制御される。偏向器218は、4極以上の電極により構成される静電型の偏向器であって、電極毎にDACアンプ148を介して偏向制御回路128により制御される。また、偏向器226は、4極以上の電極により構成される静電型の偏向器であって、電極毎にDACアンプ149を介して偏向制御回路128により制御される。
【0025】
電子銃201には、図示しない高圧電源回路が接続され、電子銃201内の図示しないフィラメント(カソード)と引出電極(アノード)間への高圧電源回路からの加速電圧の印加と共に、別の引出電極(ウェネルト)の電圧の印加と所定の温度のカソードの加熱によって、カソードから放出された電子群が加速させられ、電子ビーム200となって放出される。
【0026】
ここで、図1では、実施の形態1を説明する上で必要な構成を記載している。検査装置100にとって、通常、必要なその他の構成を備えていても構わない。
【0027】
図2は、実施の形態1における成形アパーチャアレイ基板の構成を示す概念図である。図2において、成形アパーチャアレイ基板203には、2次元状の横(x方向)m列×縦(y方向)n段(m,nは2以上の整数)の穴(開口部)22がx,y方向に所定の配列ピッチで形成されている。図2の例では、23×23の穴(開口部)22が形成されている場合を示している。各穴22は、共に同じ寸法形状の矩形で形成される。或いは、同じ外径の円形であっても構わない。これらの複数の穴22を電子ビーム200の一部がそれぞれ通過することで、マルチ1次電子ビーム20が形成されることになる。
【0028】
図3は、実施の形態1におけるビーム選択アパーチャ基板の一例を示す上面図である。図3において、ビーム選択アパーチャ基板210には、マルチ1次電子ビーム20全体が通過可能な大開口2と、1本の1次電子ビームだけを通過させるサイズの小開口4とが形成される。ビーム選択アパーチャ基板210は、駆動機構211によりx方向及びy方向に水平移動させられることにより、ビーム軌道上の開口を大開口2と小開口4との間で切り替える。
【0029】
ここで、上述したように、マルチ1次電子ビーム20のうち外周に位置するビームは一般的に収差が大きくなってしまう場合がある。かかる場合に、使用するビームアレイを中央部のビームアレイに限定したい場合も生じる。そこで、ビーム選択アパーチャ基板210には、さらに、マルチ1次電子ビーム20のビームアレイサイズを選択する開口部6と開口部8とが形成される。開口部6は、形成されるすべてのマルチ1次電子ビーム20のうち、例えば、外周に位置する1列分のビーム群を遮蔽し、内側の残りのビームアレイを通過させる。開口部8は、形成されるすべてのマルチ1次電子ビーム20のうち、例えば、外周に位置する2列分のビーム群を遮蔽し、内側の残りのビームアレイを通過させる。大開口2と開口部6,8とを選択的に使用することで、使用するビームアレイを選択できる。例えば、画像精度を犠牲にしても構わないので画像取得速度を重視する場合、大開口2が選択される。速度を犠牲にしても構わないので画像精度を重視する場合、開口部6或いは開口部8が選択される。
【0030】
次に、2次電子画像を取得する場合における画像取得機構150の動作について説明する。1次電子光学系151は、基板101をマルチ1次電子ビーム20で照射する。具体的には、以下のように動作する。
【0031】
電子銃201(放出源)から放出された電子ビーム200は、電磁レンズ202によって屈折させられ、成形アパーチャアレイ基板203全体を照明する。成形アパーチャアレイ基板203には、図2に示すように、複数の穴22(開口部)が形成され、電子ビーム200は、すべての複数の穴22が含まれる領域を照明する。複数の穴22の位置に照射された電子ビーム200の各一部が、かかる成形アパーチャアレイ基板203の複数の穴22をそれぞれ通過することによって、マルチ1次電子ビーム20が形成される。
【0032】
形成されたマルチ1次電子ビーム20は、ビーム選択アパーチャ基板210の大開口2(或いは開口部6、或いは開口部8)を通過し、電磁レンズ205、及び電磁レンズ206によってそれぞれ屈折させられ、中間像およびクロスオーバーを繰り返しながら、マルチ1次電子ビーム20の各ビームの中間像面に配置されたE×B分離器214を通過して電磁レンズ207(対物レンズ)に進む。
【0033】
マルチ1次電子ビーム20が電磁レンズ207(対物レンズ)に入射すると、電磁レンズ207は、マルチ1次電子ビーム20を基板101にフォーカスする。対物レンズ207により基板101(試料)面上に焦点が合わされ(合焦され)たマルチ1次電子ビーム20は、偏向器208及び偏向器209によって一括して偏向され、各ビームの基板101上のそれぞれの照射位置に照射される。なお、一括ブランキング偏向器212によって、マルチ1次電子ビーム20全体が一括して偏向された場合には、制限アパーチャ基板213の中心の穴から位置がはずれ、制限アパーチャ基板213によってマルチ1次電子ビーム20全体が遮蔽される。一方、一括ブランキング偏向器212によって偏向されなかったマルチ1次電子ビーム20は、図1に示すように制限アパーチャ基板213の中心の穴を通過する。かかる一括ブランキング偏向器212のON/OFFによって、ブランキング制御が行われ、ビームのON/OFFが一括制御される。このように、制限アパーチャ基板213は、一括ブランキング偏向器212によってビームOFFの状態になるように偏向されたマルチ1次電子ビーム20を遮蔽する。そして、ビームONになってからビームOFFになるまでに形成された、制限アパーチャ基板213を通過したビームアレイにより、画像取得用のマルチ1次電子ビーム20が形成される。
【0034】
基板101の所望する位置にマルチ1次電子ビーム20が照射されると、かかるマルチ1次電子ビーム20が照射されたことに起因して基板101からマルチ1次電子ビーム20の各ビームに対応する、反射電子を含む2次電子の束(マルチ2次電子ビーム300)が放出される。
【0035】
基板101から放出されたマルチ2次電子ビーム300は、電磁レンズ207を通って、E×B分離器214に進む。E×B分離器214は、コイルを用いた2極以上の複数の磁極と、2極以上の複数の電極とを有する。例えば、90°ずつ位相をずらした4極の磁極(電磁偏向コイル)と、同じく90°ずつ位相をずらした4極の電極(静電偏向電極)とを有する。そして、例えば対向する2極の磁極をN極とS極とに設定することで、かかる複数の磁極によって指向性の磁界を発生させる。同様に、例えば対向する2極の電極に符号が逆の電位Vを印加することで、かかる複数の電極によって指向性の電界を発生させる。具体的には、E×B分離器214は、マルチ1次電子ビーム20の中心ビームが進む方向(軌道中心軸)に直交する面上において電界と磁界を直交する方向に発生させる。電界は電子の進行方向に関わりなく同じ方向に力を及ぼす。これに対して、磁界はフレミング左手の法則に従って力を及ぼす。そのため電子の侵入方向によって電子に作用する力の向きを変化させることができる。E×B分離器214に上側から侵入してくるマルチ1次電子ビーム20には、電界による力と磁界による力が打ち消し合い、マルチ1次電子ビーム20は下方に直進する。これに対して、E×B分離器214に下側から侵入してくるマルチ2次電子ビーム300には、電界による力と磁界による力がどちらも同じ方向に働き、マルチ2次電子ビーム300は斜め上方に曲げられ、マルチ1次電子ビーム20の軌道上から分離する。
【0036】
斜め上方に曲げられたマルチ2次電子ビーム300は、偏向器218によって、さらに曲げられ、電磁レンズ224によって、屈折させられながらマルチ検出器222に投影される。マルチ検出器222は、検出器アパーチャアレイ基板225の開口部を通過して投影されたマルチ2次電子ビーム300を検出する。マルチ1次電子ビーム20の各ビームは、マルチ検出器222の検出面において、マルチ2次電子ビーム300の各2次電子ビームに対応する検出エレメントに衝突して、電子を増幅発生させ、2次電子画像データを画素毎に生成する。マルチ検出器222にて検出された強度信号は、検出回路106に出力される。各1次電子ビームは、基板101上における自身のビームが位置するx方向のビーム間ピッチとy方向のビーム間ピッチとで囲まれるサブ照射領域内に照射され、当該サブ照射領域内を走査(スキャン動作)する。
【0037】
2次電子画像の取得は、上述したように、マルチ1次電子ビーム20で基板101を照射して、マルチ1次電子ビーム20の照射に起因して基板101から放出されるマルチ2次電子ビーム300をマルチ検出器222で検出する。検出されるマルチ2次電子ビーム300には、反射電子が含まれていても構わない。或いは、反射電子は、2次電子光学系152を移動中に分離され、マルチ検出器222まで到達しない場合であっても構わない。マルチ検出器222によって検出された各1次電子ビームの個別照射領域(サブ照射領域)内の画素毎の2次電子の検出データ(測定画像データ:2次電子画像データ:被検査画像データ)は、測定順に検出回路106に出力される。検出回路106内では、図示しないA/D変換器によって、アナログの検出データがデジタルデータに変換され、チップパターンメモリ123に格納される。そして、得られた2次電子画像データ(2次電子画像1のデータ)は、位置回路107からの各位置を示す情報と共に、比較回路108に出力される。
【0038】
各1次電子ビームのサブ照射領域内の画像を得るためには、各1次電子ビームに対応する2次電子ビームをマルチ検出器222の対応する検出エレメントで検出する必要がある。よって、マルチ1次電子ビーム20に対応するマルチ2次電子ビーム300とマルチ検出器222の複数の検出エレメントとの位置合わせが必要となる。
【0039】
図4は、実施の形態1の比較例1における検出画像の一例を示す図である。
図5は、実施の形態1の比較例2における検出画像の他の一例を示す図である。
図6は、実施の形態1の比較例3における検出画像の他の一例を示す図である。
上述したように、得られた画像におけるビームの位置関係は様々なケースが存在する。例えば、図4の例のように、紙面の斜め右上方向に隣接するビームが存在し、その逆方向には存在せず、かつ、斜め右下方向に隣接するビームが存在し、その逆方向にそれぞれ存在しないビームが明確に示された画像であれば、コーナービームを画像から特定できる。しかしながら、図5の例、及び図6の例では、紙面の斜め右下方向に隣接するビームが存在することはわかるが、その逆方向に存在しないビームが明確ではない。よって、図5の例、及び図5の例では画像内にコーナービームが存在するかどうかを判断しにくい。このように、得られる画像におけるビームの位置関係は様々なため、コーナービームを特定することは容易ではない。そこで、実施の形態1では、得られた画像からコーナービームを他のビームから識別可能にする。
【0040】
図7は、実施の形態1の比較例4におけるマーク部材の一例を示す図である。図7において、マーク部材311は、基材310と複数の孤立パターン313とアライメントマーク314とを有する。複数の孤立パターン313は、基材上であって形成可能なマルチ1次電子ビーム20全体のうち予め設定された4隅の1次電子ビームの基板101(試料)面上の高さ位置における設計上の複数の照射位置と同様の位置関係に形成される。言い換えれば、基板101面上における形成可能なマルチ1次電子ビーム20全体のうち4つのコーナービームの配列ピッチと同様の配列ピッチで4つの孤立パターン12が形成される。
【0041】
図8は、実施の形態1の比較例4におけるマーク部材を照射した場合の孤立パターンとマルチ1次電子ビームとの位置関係の一例を示す図である。図8の例では、例えば、5×5本のビームアレイを用いる場合を示している。また、例えば、5×5本のビームアレイの4つのコーナービームの照射位置に4つの孤立パターン313の位置を合わせた場合を示している。アライメントマーク314に中心ビームの位置が位置合わせされた状態で、電子ビームカラム102が、マルチ1次電子ビーム20でマーク部材311を照射した場合、各孤立パターン313は、4つのコーナービームのうちそれぞれ1つのコーナービームで照射される。孤立パターン313と基材310とに用いる材料を異なる材料にすることで、得られる画像では、コーナービームと残りのビームとで強度を変えることができる。しかしながら、上述したように、使用するビームアレイは、常時、一意に決まっているものではない。
【0042】
図9は、実施の形態1の比較例4におけるマーク部材を照射した場合の孤立パターンとマルチ1次電子ビームとの位置関係の他の一例を示す図である。使用されるビームアレイが少なくなった場合、4つのコーナービームの位置も変化する。図9の例では、3×3本のビームアレイを用いる場合を示している。一方、4つの孤立パターン313の位置は、例えば、5×5本のビームアレイの4つのコーナービームの照射位置に合わせられている。その結果、アライメントマーク314に中心ビームの位置が位置合わせされた状態で、電子ビームカラム102が、マルチ1次電子ビーム20でマーク部材311を照射した場合、各孤立パターン313にはビームが照射されない。よって、得られる画像では、コーナービームと残りのビームとで同じ強度になる。かかる画像からは、コーナービームを特定しにくくなる。
【0043】
図10は、実施の形態1の比較例4におけるマーク部材を照射した場合の孤立パターンとマルチ1次電子ビームとの位置関係の他の一例を示す図である。使用されるビームアレイが多くなった場合、4つのコーナービームの位置も変化する。図10の例では、7×7本のビームアレイを用いる場合を示している。一方、4つの孤立パターン313の位置は、例えば、5×5本のビームアレイの4つのコーナービームの照射位置に合わせられている。その結果、アライメントマーク314に中心ビームの位置が位置合わせされた状態で、電子ビームカラム102が、マルチ1次電子ビーム20でマーク部材311を照射した場合、各孤立パターン313はコーナービームではない内側のビームで照射される。よって、得られる画像では、コーナービームを特定しにくくなる。
【0044】
以上のように、ビーム数の増減等、ビームのジオメトリが変更になることが生じ得る。かかる場合、使用するビームアレイに合わせて、その都度、孤立パターンの位置を変更した図7に示したマーク部材311を作成する必要が生じる。そこで、実施の形態1では、使用するビームアレイの配列サイズに関わらずマルチ1次電子ビーム20のうちコーナービームをパターンに当てるマーク部材を提供する。
【0045】
図11は、実施の形態1におけるマーク部材の一例を示す図である。図11において、マーク部材111は、基材10と複数のラインパターン12とアライメントマーク14とを有する。複数のラインパターン12は、基材10上であってマルチ1次電子ビーム20のうち予め設定されたクロス状に配列される複数のビームの基板101(試料)面上の高さ位置における設計上の複数の照射位置と重なる位置に形成される。そして、複数のラインパターン12は、組み合わせることによりクロスパターンを構成する。ここでは、4つのラインパターン12の組み合わせによりクロスパターンが構成される。言い換えれば、複数のラインパターン12は、マルチ1次電子ビーム20の設計上のアレイ矩形形状の対角線上に配列される複数のビームと重なる位置に形成される。4つのコーナービームは、対角線上に配列される。図11の例では、マルチ1次電子ビーム20のうちの中心ビームの照射位置から例えば90°ずつ位相をずらしながら放射状に延びる4つのラインパターン12が示されている。
【0046】
また、4つのラインパターン12の中心にアライメントマーク14が形成される。言い換えれば、アライメントマーク14は、マルチ1次電子ビーム20のうちの中心ビームの基板101(試料)面上の高さ位置における設計上の照射位置と重なる位置に形成される。アライメントマーク14には、図11に示すように、例えば、十字パターンが用いられると好適である。
【0047】
基材10は、少なくとも表面が材料1(第1の材料)を用いている。材料1として、例えば、シリコン(Si)が用いられると好適である。これに対して、複数のラインパターン12は、材料1とは異なる材料2(第2の材料)を用いている。材料2として、例えば、ニッケル(Ni)、金(Au)、クロム(Cr)、及び白金(Pt)のうち1つが用いられる。また、アライメントマーク14は、材料1,2とは異なる材料3(第3の材料)を用いている。材料3として、例えば、チタン(Ti)が用いられる。材料1と材料2は、1次電子ビームに対する2次電子ビームの発生割合(収率)が異なる。同様に、材料1と材料3は、1次電子ビームに対する2次電子ビームの発生割合(収率)が異なる。材料1の例となるSiの収率が0.44であるのに対して、材料2の例となるNi、Au、Cr、及びPtの収率が、0.7、0.94、1.01、1.22である。材料1と材料2は、収率が大きく異なる方がより好ましい。また、材料3の例となるTiの収率が、0.51となる。材料1と材料3は、収率が異なるが近い材料を用いると好適である。
【0048】
図12は、実施の形態1におけるマーク部材を照射した場合の複数のラインパターンとマルチ1次電子ビームとの位置関係の一例を示す図である。図12の例では、例えば、5×5本のマルチ1次電子ビーム20でマーク部材を照射する場合を示す。マルチ1次電子ビーム20のうちの中心1次電子ビームの位置をアライメントマーク14の中心に合わせた状態で、電子ビームカラム102が、マルチ1次電子ビーム20でマーク部材111を照射した場合、各コーナービームから中心1次電子ビームに向かって並ぶ少なくとも1つの1次電子ビームは、それぞれの位置のラインパターン12に入射する。中心1次電子ビームは、アライメントマーク14に入射する。その他の複数の1次電子ビームは、材料1に入射する。よって、各コーナービームから中心ビームに向かって並ぶ少なくとも1つの1次電子ビームと中心1次電子ビームとその他の複数の1次電子ビームとにおいて、発生する2次電子ビームの強度を変えることができる。
【0049】
言い換えれば、4つのコーナービームに対応する4つの2次電子ビームとそれぞれのコーナービームから中心1次電子ビームに向かう1次電子ビームに対応する2次電子ビームの強度は、その他の複数の1次電子ビームに対応する複数の2次電子ビームの強度よりも大きくできる。また、4つのコーナービームに対応する4つの2次電子ビームとそれぞれのコーナービームから中心1次電子ビームに向かう1次電子ビームに対応する2次電子ビームの強度は、中心1次電子ビームの強度よりも大きくできる。
【0050】
ここで、図12に示すように、各ラインパターン12の幅dは、基板101(試料)面上の高さ位置における各ラインパターン12が延びる方向と直交する方向の設計上のビーム間ピッチPよりも小さく形成されると好適である。また、各ラインパターン12の幅dは、基板101(試料)面上の高さ位置におけるビームサイズD以上のサイズで形成されると好適である。各ラインパターン12の長手方向のサイズは、形成可能なビームアレイの対角線サイズの1/2以上のサイズに設定される。
【0051】
上述した例では、ラインパターン12の材料2を基材10の材料1よりも収率が大きい材料としたがこれに限るものではない。逆に、ラインパターン12の材料2を基材10の材料1よりも収率が小さい材料にしても好適である。例えば、材料2として、Siの収率よりも十分に小さい収率のベリリウム(Be)等を用いても好適である。これにより、4つのコーナービームに対応する4つの2次電子ビームとそれぞれのコーナービームから中心1次電子ビームに向かう1次電子ビームに対応する2次電子ビームの強度は、その他の複数の1次電子ビームに対応する複数の2次電子ビームの強度よりも小さくできる。また、4つのコーナービームに対応する4つの2次電子ビームとそれぞれのコーナービームから中心1次電子ビームに向かう1次電子ビームに対応する2次電子ビームの強度は、中心1次電子ビームの強度よりも小さくできる。
【0052】
図13は、実施の形態1におけるマーク部材を照射した場合の複数のラインパターンとマルチ1次電子ビームとの位置関係の他の一例を示す図である。図13の例では、例えば、3×3本のマルチ1次電子ビーム20でマーク部材を照射する場合を示す。マルチ1次電子ビーム20のうちの中心1次電子ビームの位置をアライメントマーク14の中心に合わせた状態で、電子ビームカラム102が、マルチ1次電子ビーム20でマーク部材111を照射した場合、各コーナービームは、それぞれの位置のラインパターン12に入射する。中心1次電子ビームは、アライメントマーク14に入射する。その他の複数の1次電子ビームは、材料1に入射する。よって、各コーナービームと中心1次電子ビームとその他の複数の1次電子ビームとにおいて、発生する2次電子ビームの強度を変えることができる。
【0053】
図14は、実施の形態1におけるマーク部材を照射した場合の複数のラインパターンとマルチ1次電子ビームとの位置関係の他の一例を示す図である。図14の例では、例えば、7×7本のマルチ1次電子ビーム20でマーク部材を照射する場合を示す。マルチ1次電子ビーム20のうちの中心1次電子ビームの位置をアライメントマーク14の中心に合わせた状態で、電子ビームカラム102が、マルチ1次電子ビーム20でマーク部材111を照射した場合、各コーナービームから中心1次電子ビームに向かって並ぶ2つの1次電子ビームは、それぞれの位置のラインパターン12に入射する。中心1次電子ビームは、アライメントマーク14に入射する。その他の複数の1次電子ビームは、材料1に入射する。よって、各コーナービームから中心ビームに向かって並ぶ2つの1次電子ビームと中心1次電子ビームとその他の複数の1次電子ビームとにおいて、発生する2次電子ビームの強度を変えることができる。
【0054】
以上のように実施の形態1のマーク部材111を用いれば、ビームアレイの配列サイズが変わっても、4つのラインパターン12を4つのコーナービームのそれぞれ異なるコーナービームで照射できる。言い換えれば、4つのコーナービームをそれぞれ異なるラインパターン12に当てることができる。
【0055】
図15は、実施の形態1における位置合わせ回路の内部構成の一例を示す図である。図15において、位置合わせ回路134内には、検出画像を保存する磁気ディスク装置等の記憶装置61、コーナー画像抽出部60、照射ビーム特定部62,コーナービーム特定部63、コーナー部位置関係算出部64、全体位置関係特定部66、位置合わせ部68が配置される。
【0056】
また、コーナー部位置関係算出部64内には、ビーム位置算出部80、合成部82、及び検出エレメント座標算出部84が配置される。
【0057】
コーナー画像抽出部60、照射ビーム特定部62,コーナービーム特定部63、コーナー部位置関係算出部64(ビーム位置算出部80、合成部82、及び検出エレメント座標算出部84)、全体位置関係特定部66、位置合わせ部68といった各「~部」は、処理回路を含み、その処理回路には、電気回路、コンピュータ、プロセッサ、回路基板、量子回路、或いは、半導体装置等が含まれる。また、各「~部」は、共通する処理回路(同じ処理回路)を用いてもよい。或いは、異なる処理回路(別々の処理回路)を用いても良い。コーナー画像抽出部60、照射ビーム特定部62,コーナービーム特定部63、コーナー部位置関係算出部64(ビーム位置算出部80、合成部82、及び検出エレメント座標算出部84)、全体位置関係特定部66、位置合わせ部68内に必要な入力データ或いは演算された結果はその都度図示しないメモリ、或いはメモリ118に記憶される。
【0058】
図16は、実施の形態1における検査方法の要部工程の一例を示すフローチャート図である。図16において、実施の形態1における検査方法の要部工程は、マルチ1次ビーム位置合わせ工程(S102)と、マルチ2次ビームスキャン及び画像取得工程(S104)と、コーナー画像抽出工程(S106)と、コーナービーム特定工程(S107)と、コーナー部位置関係算出工程(S108)と、全体位置関係特定工程(S120)と、位置合わせ工程(S122)と、検査処理工程(S140)と、いう一連の工程を実施する。
【0059】
マルチ1次ビーム位置合わせ工程(S102)として、アライメントマーク14を用いてマルチ1次電子ビーム20の位置合わせを行う。具体的には、以下のように動作する。まず、アライメントマーク14がマルチ1次電子ビーム20の軌道中心軸上に位置するように、ステージ105を移動させる。また、ビーム選択制御回路136は、駆動機構211を制御して、小開口4が中心1次電子ビームの軌道上に位置するように、駆動機構211によりビーム選択アパーチャ基板210を移動させる。これにより、マルチ1次電子ビーム20のうち、中心1次電子ビームを選択的に通過させる。残りの1次電子ビームは、ビーム選択アパーチャ基板210により遮蔽される。
【0060】
次に、偏向器208及び/或いは偏向器209は、ビーム偏向により中心1次電子ビームでアライメントマーク14上を走査する。その結果、アライメントマーク14及びその周辺から放出された2次電子ビームをマルチ検出器222で検出する。ここでは、マルチ検出器222のうち中心1次電子ビームに対応する中心2次電子ビームを検出予定の中心の検出エレメントで2次電子ビームを検出することが望ましいが、他の検出エレメントで検出しても良い。得られる2次電子画像の中心にアライメントマーク14の像が位置するように、ステージ105を移動させる。或いは、得られる2次電子画像の中心にアライメントマーク14の像が位置するように、偏向器208及び偏向器209で中心1次電子ビームを偏向する。これにより、マーク部材111に対するマルチ1次電子ビーム20の位置合わせができる。
【0061】
位置合わせ終了後、ビーム選択制御回路136は、駆動機構211を制御して、大開口2(或いは開口部6、或いは開口部8)がマルチ1次電子ビーム20の軌道上に位置するように、駆動機構211によりビーム選択アパーチャ基板210を移動させる。これにより、マルチ1次電子ビーム20全体のうち、使用するビームアレイを通過させることができる。
【0062】
マルチ2次ビームスキャン及び画像取得工程(S104)として、1次電子光学系151は、アライメントマーク14を用いてマルチ1次電子ビーム20の位置合わせを行った状態で、マーク部材111をマルチ1次電子ビーム20で照射する。具体的には以下のように動作する。画像取得機構150は、マルチ1次電子ビーム20を停止した状態のステージ105上に照射する。その際、偏向器208及び偏向器209は、マルチ1次電子ビーム20の中心をマルチ1次電子ビームの軌道中心軸の位置に合わせる。偏向しなくてもマルチ1次電子ビーム20の軌道中心軸に位置する場合には偏向無しでも良い。これにより、各1次電子ビームは、各自の1次電子ビームの走査範囲のスキャン中心位置に照射されることになる。
【0063】
そして、偏向器226(2次系偏向器)は、マルチ1次電子ビーム20の照射によってマーク部材111の表面から放出されるマルチ2次電子ビーム300でマルチ検出器222の複数の検出エレメント上を走査する。具体的には以下のように動作する。マーク部材111から放出されたマルチ2次電子ビーム300は、2次電子光学系152により検出器アパーチャアレイ基板225を介してマルチ検出器222に投影される。かかる状態で偏向器226によってマルチ2次電子ビーム300に対して予め設定された2次ビーム走査範囲のスキャン動作を行う。
【0064】
マルチ検出器222は、マーク部材111をマルチ1次電子ビーム20で照射することによってマーク部材111から放出されたマルチ2次電子ビーム300を検出し、検出された画像データを出力する。言い換えれば、マルチ検出器222は、格子状に配列された複数の検出エレメント(第1の検出エレメント)でマルチ2次電子ビーム300を検出する。これにより、各検出エレメントでは、検出器アパーチャアレイ基板225のアパーチャ像が撮像される。マルチ検出器222は、マルチ2次電子ビーム300のうち少なくともコーナーに位置するコーナービームを含む複数のビームを検出する。
【0065】
図17は、実施の形態1における2次電子ビームアレイの一例を示す図である。図17の例では、例えば、5×5本のマルチ2次電子ビーム300が示されている。ここで、図17に示す中心2次電子ビーム付近のビーム群の画像(点線範囲)を見ても、画像内の各ビームがどの位置のビームなのか位置関係が判別困難である。これに対して、4隅のコーナー部のビーム群(例えば、左上コーナー部の2×2のビーム群)の画像からは、かかるビーム群のうち実際にコーナーに位置するコーナービームが判別できる。よって、ビーム群の位置関係を求めることができる。画像に対してビーム群の位置関係がわかれば、画像を撮像した検出エレメントとビーム群との位置関係を求めることができる。そこで、偏向器226でマルチ2次電子ビーム300を一括走査する場合に、図17に示すようにマルチ2次電子ビーム300のビーム間ピッチPの4倍以上の走査範囲(スキャン範囲)を走査する。図17では、実線でマルチ2次電子ビーム300のビーム間ピッチPの4倍のスキャン範囲を示す。これにより、マルチ2次電子ビーム300をスキャンした場合に、コーナービームを含む2×2のビーム群に対応する2×2個の検出エレメントの各スキャン範囲内にコーナービームを含む2×2のビーム群を含めることができる。
【0066】
図18は、実施の形態1における各検出エレメントで撮像された画像の一例を示す図である。図18の例では、5×5本のマルチ2次電子ビーム300に対応する5×5個の検出エレメントD11~D55によって撮像された複数のアパーチャ画像の画像配列の一例を示している。また、図18の例では、すべての検出エレメントの画像群の4つのコーナー部の画像群のうち1つのコーナー部の画像群として、D11,D12,D21,D22の画像の一例を示している。
【0067】
各検出エレメントでは、マルチ2次電子ビーム300のスキャン動作によって、自己の検出エレメント上を通過した複数の2次電子ビームを撮像する。実際には検出器アパーチャアレイ基板225の開口部を通過したビームが検出される。そのため、各検出エレメントでは、複数のアパーチャ像が検出される。各検出エレメントで検出された2次電子の検出データは、測定順に検出回路106に出力される。検出回路106内では、図示しないA/D変換器によって、アナログの検出データがデジタルデータに変換され、チップパターンメモリ123に格納される。そして、得られた2次電子画像データは位置合わせ回路134に出力される。位置合わせ回路134内において、2次電子画像データ(検出画像)は記憶装置61に格納される。
【0068】
コーナー画像抽出工程(S106)として、コーナー画像抽出部60は、すべての検出エレメントの画像群の中から、コーナー部の画像群を抽出する。
【0069】
図18において、コーナー部の画像群の1つとして検出エレメントD11を含む2×2個の検出エレメントD11,D12,D21,D22の画像群が挙げられる。同様に、コーナー部の画像群の1つとして検出エレメントD15を含む隣接する2×2個の検出エレメントD14,D15,D24,D25の画像群が挙げられる。同様に、コーナー部の画像群の1つとして検出エレメントD51を含む2×2個の検出エレメントD41,D42,D51,D52の画像群が挙げられる。同様に、コーナー部の画像群の1つとして検出エレメントD55を含む2×2個の検出エレメントD44,D45,D54,D55の画像群が挙げられる。
【0070】
検出エレメントD11を含む2×2個の検出エレメントD11,D12,D21,D22には、検出エレメントD11に対応するコーナービームを含む隣接する2×2本の2次電子ビームのアパーチャ像が検出される。同様に、検出エレメントD15を含む隣接する2×2個の検出エレメントD14,D15,D24,D25には、検出エレメントD15に対応するコーナービームを含む2×2本の2次電子ビームのアパーチャ像が検出される。同様に、検出エレメントD51を含む2×2個の検出エレメントD41,D42,D51,D52には、検出エレメントD51に対応するコーナービームを含む隣接する2×2本の2次電子ビームのアパーチャ像が検出される。同様に、検出エレメントD55を含む2×2個の検出エレメントD44,D45,D54,D55には、検出エレメントD55に対応するコーナービームを含む隣接する2×2本の2次電子ビームのアパーチャ像が検出される。
【0071】
ここでは、例えば、2×2個の検出エレメントD11,D12,D21,D22の画像群を抽出する。
【0072】
コーナービーム特定工程(S107)として、まず、照射ビーム特定部62は、検出されたマルチ2次電子ビーム300の画像を用いて、画像内の強度の違いに基づいて複数のラインパターン12を照射した複数の照射ビームを特定する。具体的には、図18に示す検出エレメントD11で得られた画像内で、ハッチングした2つの2次電子ビームのアパーチャ像がコーナービームB11を含む2つの照射ビームのアパーチャ像であると特定する。
【0073】
このように、得られる画像内でのコーナービームを含む対角線上の複数の2次電子ビームのアパーチャ像の強度が他の2次電子ビームのアパーチャ像の強度よりも大きく(或いは小さく)できるので、容易に1つのラインパターン12を照射した複数の照射ビームを特定できる。
【0074】
その他の検出エレメントD12,D21,D22の画像についても同様にコーナービームB11を含む2つの照射ビームのアパーチャ像を特定できる。
【0075】
次に、コーナービーム特定部63は、特定された複数の照射ビームの情報を用い、マルチ2次電子ビーム300の配列規則性に基づいて、マルチ2次電子ビーム300の4隅のうち少なくとも1つのコーナービームを特定する。
【0076】
図19は、実施の形態1におけるコーナービームを特定する手法を説明するための一部の一例を示す図である。特定された複数の照射ビームの照射ビーム毎に、周囲の近い隣接ビームを確認する。図19の例では、対象の照射ビーム18には、直交する2方向にそれぞれ距離が近い隣接ビーム40,42を確認できる。一方、隣接ビーム40と反対方向の隣接ビーム43と隣接ビーム42と反対方向の隣接ビーム41とが確認できない。このように、4近傍のうち2近傍には隣接ビームが存在し、その他の2近傍には隣接ビームが存在しない場合、コーナービーム特定部63は、対象の照射ビーム18のアパーチャ像をコーナービームB11のアパーチャ像として特定する。
【0077】
図20は、実施の形態1におけるコーナービームを特定する手法を説明するための残部の一例を示す図である。図20の例では、対象の照射ビーム18には、直交する2方向に対象の照射ビーム18を挟んで両側に、それぞれ距離が近い隣接ビーム40,41,42,43を確認できる。このように、4近傍に隣接ビームが存在する場合、コーナービーム特定部63は、対象の照射ビーム18をコーナービームB11から排除する。
【0078】
同様に、検出エレメントD12,D21,D22の画像内のコーナービームB11のアパーチャ像をそれぞれ特定できる。
【0079】
同様に、検出エレメントD15を含む隣接する2×2個の検出エレメントD14,D15,D24,D25の画像内からコーナービームB15のアパーチャ像を特定する。
【0080】
同様に、検出エレメントD51を含む2×2個の検出エレメントD41,D42,D51,D52の画像内からコーナービームB51のアパーチャ像を特定する。
【0081】
同様に、検出エレメントD55を含む2×2個の検出エレメントD44,D45,D54,D55の画像内からコーナービームB55のアパーチャ像を特定する。
【0082】
ここで、画像内にコーナービームが存在しない場合もあり得る。原因として、マルチ2次電子ビーム300のビームピッチが広すぎることが考えられる。その場合、ビームピッチを調整して、再度、マルチ2次ビームスキャン及び画像取得工程(S104)からやり直す。
【0083】
また、4つのコーナー部のうち、2以上のコーナー部の画像が得られない場合もあり得る。原因として、マルチ2次電子ビーム300のビーム軸が大きくずれていることが考えられる。その場合、ビーム軸を調整して、再度、マルチ2次ビームスキャン及び画像取得工程(S104)からやり直す。
【0084】
以上のように、実施の形態1によれば、対角線に並ぶ複数の2次電子ビームの強度が他の2次電子ビームの強度と異なる強度になるようにマーク部材111を形成することで、得られた画像内での複数のビーム間の位置関係に関わらず、得られた画像から容易にコーナービームを特定できる。
【0085】
次に特定されたコーナービームを用いて、マルチ2次電子ビーム300とマルチ検出器222の複数の検出エレメントとの位置関係を算出する。以下、具体的に説明する。
【0086】
コーナー部位置関係算出工程(S108)として、コーナー部位置関係算出部64(位置関係算出部)は、コーナービームを含む複数の2次電子ビームと、複数の検出エレメントのうちコーナービームを含む複数の2次電子ビームを検出した複数の検出エレメント(第2の検出エレメント)との位置関係を算出する。具体的には以下のように動作する。
【0087】
ビーム位置算出部80は、抽出された画像毎に、コーナービームを含む2×2のビーム群の位置を算出する。
【0088】
図21は、実施の形態1における検出エレメントD11と各ビームB11,B12,B21,B22の位置との関係を示す図である。図21に示す検出エレメントD11の画像では、対応するコーナービームB11のスキャン中心(スキャン範囲の中心)の位置を中心にした画像が撮像される。コーナービームB11がわかれば、コーナービームB11のスキャン中心の位置からの実際に撮像されたコーナービームB11の相対位置が算出できる。また、コーナービームB11がわかれば、マルチ2次電子ビーム300の位置関係から隣接するビームB12,B21,B22が判別できる。よって、コーナービームB11のスキャン中心の位置(或いは、コーナービームB11)からのビームB12,B21,B22の各相対位置が算出できる。
【0089】
図21では、検出エレメントD11の位置を中心にした場合の画像から算出された各ビームB11,B12,B21,B22の相対位置関係を示している。図18の検出エレメントD11の出力画像は各ビームB11,B12,B21,B22をスキャンした時、各ビームB11,B12,B21,B22のスキャン中心と検出エレメントD11との位置関係を示すものであるから、逆に検出エレメントD11から見た時の各ビームB11,B12,B21,B22の位置を求めることができ、その結果が図21に示されている。例えば、図18の検出エレメントD11の出力画像で、ビームB12は中心から右上にある。これは、ビームB12のスキャン中心から見て検出エレメントD11が右上にあることを意味する。これを検出エレメントD11から見るとビームB12は左下にあることになるから図21ではビームB12は中心から左下に位置する。
同様に、例えば、図18の検出エレメントD11の出力画像で、ビームB11は中心から少し左下にある。これは、ビームB11のスキャン中心から見て検出エレメントD11が少し左下にあることを意味する。これを検出エレメントD11から見るとビームB11は少し右上にあることになるから図21ではビームB12は中心から少し右上に位置する。
同様に、例えば、図18の検出エレメントD11の出力画像で、ビームB21は中心から下側のやや右にある。これは、ビームB21のスキャン中心から見て検出エレメントD11が下側のやや右にあることを意味する。これを検出エレメントD11から見るとビームB21は上側のやや左にあることになるから図21ではビームB21は中心から上側のやや左に位置する。
同様に、例えば、図18の検出エレメントD11の出力画像で、ビームB22は中心から右下にある。これは、ビームB22のスキャン中心から見て検出エレメントD11が右下にあることを意味する。これを検出エレメントD11から見るとビームB22は左上にあることになるから図21ではビームB22は中心から左上に位置する。
【0090】
図22は、実施の形態1における検出エレメントD12と各ビームB11,B12,B21,B22の位置との関係を示す図である。図22では、検出エレメントD12の位置を中心にした場合の画像から算出された各ビームB11,B12,B21,B22の相対位置関係を示している。
図18の検出エレメントD12の出力画像は各ビームB11,B12,B21,B22をスキャンした時、各ビームB11,B12,B21,B22のスキャン中心と検出エレメントD12との位置関係を示すものであるから、逆に検出エレメントD12から見た時の各ビームB11,B12,B21,B22の位置を求めることができ、その結果が図22に示されている。例えば、図18の検出エレメントD12の出力画像で、ビームB12は中心から少し左下にある。これは、ビームB12のスキャン中心から見て検出エレメントD12が少し左下にあることを意味する。これを検出エレメントD12から見るとビームB12は少し右上にあることになるから図22ではビームB12は中心から少し右上に位置する。
同様に、例えば、図18の検出エレメントD12の出力画像で、ビームB11は中心から左下にある。これは、ビームB11のスキャン中心から見て検出エレメントD11が左下にあることを意味する。これを検出エレメントD12から見るとビームB11は右上にあることになるから図22ではビームB12は中心から右上に位置する。
同様に、例えば、図18の検出エレメントD12の出力画像で、ビームB21は中心から下側のやや左にある。これは、ビームB21のスキャン中心から見て検出エレメントD12が下側のやや左にあることを意味する。これを検出エレメントD12から見るとビームB21は上側のやや右にあることになるから図22ではビームB21は中心から上側のやや右に位置する。
同様に、例えば、図18の検出エレメントD12の出力画像で、ビームB22は中心から右下にある。これは、ビームB22のスキャン中心から見て検出エレメントD12が右下にあることを意味する。これを検出エレメントD12から見るとビームB22は左上にあることになるから図22ではビームB22は中心から左上に位置する。
【0091】
図23は、実施の形態1における検出エレメントD21と各ビームB11,B12,B21,B22の位置との関係を示す図である。図23では、検出エレメントD21の位置を中心にした場合の画像から算出された各ビームB11,B12,B21,B22の相対位置関係を示している。
図18の検出エレメントD21の出力画像は各ビームB11,B12,B21,B22をスキャンした時、各ビームB11,B12,B21,B22のスキャン中心と検出エレメントD21との位置関係を示すものであるから、逆に検出エレメントD21から見た時の各ビームB11,B12,B21,B22の位置を求めることができ、その結果が図23に示されている。例えば、図18の検出エレメントD21の出力画像で、ビームB12は中心から上側やや右にある。これは、ビームB12のスキャン中心から見て検出エレメントD21が上側やや右にあることを意味する。これを検出エレメントD21から見るとビームB12は下側やや左にあることになるから図23ではビームB12は中心から下側やや左に位置する。
同様に、例えば、図18の検出エレメントD21の出力画像で、ビームB11は中心から左上にある。これは、ビームB11のスキャン中心から見て検出エレメントD21が左上にあることを意味する。これを検出エレメントD21から見るとビームB11は右下にあることになるから図23ではビームB12は中心から右下に位置する。
同様に、例えば、図18の検出エレメントD21の出力画像で、ビームB21は中心からやや左下にある。これは、ビームB21のスキャン中心から見て検出エレメントD21がやや左下にあることを意味する。これを検出エレメントD21から見るとビームB21はやや右上にあることになるから図23ではビームB21は中心からやや右上に位置する。
同様に、例えば、図18の検出エレメントD21の出力画像で、ビームB22は中心から右側やや上にある。これは、ビームB22のスキャン中心から見て検出エレメントD21が右側やや上にあることを意味する。これを検出エレメントD21から見るとビームB22は左側やや下にあることになるから図23ではビームB22は中心から左側やや下に位置する。
【0092】
図24は、実施の形態1における検出エレメントD22と各ビームB11,B12,B21,B22の位置との関係を示す図である。図24では、検出エレメントD22の位置を中心にした場合の画像から算出された各ビームB11,B12,B21,B22の相対位置関係を示している。
図18の検出エレメントD22の出力画像は各ビームB11,B12,B21,B22をスキャンした時、各ビームB11,B12,B21,B22のスキャン中心と検出エレメントD22との位置関係を示すものであるから、逆に検出エレメントD22から見た時の各ビームB11,B12,B21,B22の位置を求めることができ、その結果が図24に示されている。例えば、図18の検出エレメントD22の出力画像で、ビームB12は中心から左上にある。これは、ビームB12のスキャン中心から見て検出エレメントD22が左上にあることを意味する。これを検出エレメントD22から見るとビームB12は右下にあることになるから図24ではビームB12は中心から右下に位置する。
同様に、例えば、図18の検出エレメントD22の出力画像で、ビームB11は中心から左側やや上にある。これは、ビームB11のスキャン中心から見て検出エレメントD22が左側やや上にあることを意味する。これを検出エレメントD22から見るとビームB11は右側やや下にあることになるから図24ではビームB12は中心から右側やや下に位置する。
同様に、例えば、図18の検出エレメントD22の出力画像で、ビームB21は中心から左下にある。これは、ビームB21のスキャン中心から見て検出エレメントD22が左下にあることを意味する。これを検出エレメントD22から見るとビームB21は右上にあることになるから図24ではビームB21は中心から右上に位置する。
同様に、例えば、図18の検出エレメントD22の出力画像で、ビームB22は中心から少し左下にある。これは、ビームB22のスキャン中心から見て検出エレメントD22が少し左下にあることを意味する。これを検出エレメントD22から見るとビームB22は少し右上にあることになるから図24ではビームB22は中心から少し右上に位置する。
【0093】
次に、合成部82は、コーナー部の4つの画像から算出された各検出エレメントに対する各ビームの位置の関係を合成する。
【0094】
図25は、実施の形態1における合成後の各検出エレメントの位置と各ビームの位置との関係の一例を示す図である。図21図24のいずれの位置関係でも同じ2×2のビームB11,B12,B21,B22を用いている。よって、2×2のビームB11,B12,B21,B22の位置関係は同じである。そこで、コーナービームB11を含む2×2のビームB11,B12,B21,B22の位置を合わせるように、各検出エレメントの位置を合成する。図25では、マルチ2次電子ビーム300の座標系(2次座標系)でコーナー部の各検出エレメントD11,D12,D21,D22の位置と各ビームB11,B12,B21,B22の位置との関係を示している。2次座標系は、マルチ2次電子ビーム300の中心位置を中心とする座標系である。よって、2次座標系においてマルチ2次電子ビーム300の各2次電子ビームの座標は特定できる。よって、2次座標系における検出エレメントの座標は、各ビームとの位置関係がわかっていれば特定できる。
【0095】
また、その他のコーナー部についても、同様に位置関係を算出する。具体的には、各検出エレメントD14,D15,D24,D25の位置と各ビームB14,B15,B24,B25の位置との関係を算出する。同様に、各検出エレメントD41,D42,D51,D52の位置と各ビームB41,B42,B51,B52の位置との関係を算出する。同様に、各検出エレメントD44,D45,D54,D55の位置と各ビームB44,B45,B54,B55の位置との関係を算出する。
【0096】
全体位置関係特定工程(S120)として、全体位置関係特定部66は、マルチ2次電子ビーム300と、全検出エレメントとの全体位置関係を特定する。
【0097】
図26は、実施の形態1における全体位置関係の一例を示す図である。4つのコーナー部の位置関係がそれぞれ算出されているので、4つのコーナー部の位置関係を組み合わせる。マルチ検出器222の5×5個の検出エレメントD11~D55の配列位置関係および配列ピッチは予めわかっているので、個々のコーナー部で算出された2×2個の検出エレメントを1セットとする4隅分の4セットをそれぞれの配列位置に当てはめる。これにより、図25に示すように、5×5個の検出エレメントの全体の位置に対する5×5本のマルチ2次電子ビーム300全体の位置を特定できる。よって、2次座標系における5×5個の検出エレメントD11~D55の位置関係を特定できる。これに伴い計16本のビーム位置も特定される。
【0098】
位置合わせ工程(S122)として、位置合わせ部68は、回転及び平行移動により、5×5個のマルチ2次電子ビーム300とマルチ検出器222の5×5個の検出エレメントD11~D55との位置を合わせる。具体的には、検出器ステージ制御回路130は、駆動機構132を制御して、回転ステージ227を回転させる。これにより、回転ステージ227は、マルチ検出器222を回転させる。また、検出器ステージ制御回路130は、駆動機構132を制御して、x,yステージ228(移動機構)を移動させる。これにより、x,yステージ228は、マルチ検出器222をマルチ2次電子ビーム300に対して相対的に移動させる。具体的には、マルチ検出器222を平行移動させる。例えば、マルチ検出器222を機械的に移動させる。
【0099】
以上の動作により、マルチ検出器222の複数の検出エレメントD11~D55をマルチ2次電子ビームB11~B55に位置合わせできる。
【0100】
図27は、実施の形態1の変形例におけるマーク部材の一例を示す図である。図27において、マーク部材111は、基材10と複数のラインパターン12とアライメントマーク14とを有する。図27の例では、複数のラインパターン12は、基材10上であってマルチ1次電子ビーム20のうち予め設定された十字状に配列される複数のビームの基板101面上の高さ位置における設計上の複数の照射位置と重なる位置に形成される。そして、複数のラインパターン12は、組み合わせることにより十字パターンを構成する。言い換えれば、複数のラインパターン12は、マルチ1次電子ビーム20の設計上のアレイ矩形形状の外周の4辺の中心を対向する辺同士で繋いだ直交する2つの直線上に配列される複数のビームと重なる位置に形成される。その他の構成は図11と同様である。
【0101】
図28は、実施の形態1の変形例におけるマーク部材を照射した場合の複数のラインパターンとマルチ1次電子ビームとの位置関係の一例を示す図である。図28の例では、例えば、5×5本のマルチ1次電子ビーム20でマーク部材を照射する場合を示す。マルチ1次電子ビーム20のうちの中心1次電子ビームの位置をアライメントマーク14の中心に合わせた状態で、電子ビームカラム102が、マルチ1次電子ビーム20でマーク部材111を照射した場合、外周4辺の中心に位置する各外周辺中心ビームから中心1次電子ビームに向かって並ぶ少なくとも1つの1次電子ビームは、それぞれの位置のラインパターン12に入射する。中心1次電子ビームは、アライメントマーク14に入射する。その他の複数の1次電子ビームは、材料1に入射する。よって、各外周辺中心ビームから中心1次電子ビームに向かって並ぶ少なくとも1つの1次電子ビームと中心1次電子ビームとその他の複数の1次電子ビームとにおいて、発生する2次電子ビームの強度を変えることができる。
【0102】
言い換えれば、各外周辺中心ビームから中心1次電子ビームに向かって並ぶ少なくとも1つの1次電子ビームに対応する2次電子ビームの強度は、その他の複数の1次電子ビームに対応する複数の2次電子ビームの強度よりも大きくできる。また、各外周辺中心ビームから中心1次電子ビームに向かって並ぶ少なくとも1つの1次電子ビームに対応する2次電子ビームの強度は、中心1次電子ビームの強度よりも大きくできる。
【0103】
ここで、図28に示すように、各ラインパターン12の幅dは、基板101(試料)面上の高さ位置における各ラインパターン12が延びる方向と直交する方向の設計上のビーム間ピッチP′よりも小さく形成されると好適である。また、各ラインパターン12の幅dは、基板101(試料)面上の高さ位置におけるビームサイズD以上のサイズで形成されると好適である。各ラインパターン12の長手方向のサイズは、形成可能なビームアレイの縦横サイズの1/2以上のサイズに設定される。
【0104】
図29は、実施の形態1の変形例におけるコーナービームを特定する手法を説明するための一例を示す図である。検出エレメントD53の画像について、外周辺上の中央に位置する端ビームB53を特定する。具体的には、それぞれの画像内で、特定された複数の照射ビームの照射ビーム毎に、周囲の近い隣接ビームを確認する。図29の例では、対象の照射ビーム18には、1方向の両側に距離が近い2つの隣接ビームを確認でき、かかる1方向と直交する方向には片側にのみ距離が近い1つの隣接ビームを確認できる。一方、かかる1方向と直交する方向に確認できる隣接ビームと反対方向には隣接ビームが確認できない。このように、このように、4近傍のうち3近傍には隣接ビームが存在し、残りの1近傍には隣接ビームが存在しない場合、コーナービーム特定部63は、対象の照射ビーム18のアパーチャ像を外周辺上に位置する端ビームB53と特定する。対象の照射ビーム18の4近傍に隣接ビームが存在する場合、かかる対象の照射ビーム18は、端ビームB53に該当しない。
【0105】
同様に、検出エレメントD31の画像について、外周辺上の中央に位置する端ビームB31を特定する。
【0106】
同様に、検出エレメントD13の画像について、外周辺上の中央に位置する端ビームB13を特定する。
【0107】
同様に、検出エレメントD35の画像について、外周辺上の中央に位置する端ビームB35を特定する。
【0108】
そして、各外周辺の中央の端ビームを特定できれば、端ビームの外周辺上に隣接する1次電子ビームの延長線上にコーナービーム17が存在する。コーナービーム特定部63は、4つの端ビームの外周辺上に隣接する1次電子ビームの延長線が交差する4つの位置の2次電子ビームをコーナービーム17として特定する。
【0109】
4つのコーナービームが特定できれば、マルチ2次電子ビーム300とマルチ検出器222の各検出エレメントとの位置関係を算出できる。そして、マルチ2次電子ビーム300とマルチ検出器222の各検出エレメントとの位置合わせができる。
【0110】
なお、マルチ検出器222の各検出エレメントの配列規則性に基づいて、各検出エレメントの全体位置関係を算出できる。そして、4つの外周辺の中央の端ビームを特定できれば、端ビームと対応する検出エレメントとの位置関係がわかる。よって、コーナービーム17を特定しない場合でも、マルチ2次電子ビーム300の配列規則性と各検出エレメントの配列規則性とに基づいて、マルチ2次電子ビームの全体位置関係を算出しても良い。これにより、マルチ2次電子ビーム300とマルチ検出器222の各検出エレメントとの位置合わせができる。
【0111】
検査処理工程(S140)として、位置合わせが行われた検査装置100を用いて、基板101を検査する。
【0112】
図30は、実施の形態1における半導体基板に形成される複数のチップ領域の一例を示す図である。図30において、基板101が半導体基板(ウェハ)である場合、半導体基板(ウェハ)の検査領域330には、複数のチップ(ウェハダイ)332が2次元のアレイ状に形成されている。各チップ332には、露光用マスク基板に形成された1チップ分のマスクパターンが図示しない露光装置(ステッパ)によって例えば1/4に縮小されて転写されている。1チップ分のマスクパターンは、一般に、複数の図形パターンにより構成される。
【0113】
図31は、実施の形態1における検査処理を説明するための図である。図31に示すように、各チップ332の領域は、例えばy方向に向かって所定の幅で複数のストライプ領域32に分割される。画像取得機構150によるスキャン動作は、例えば、ストライプ領域32毎に実施される。例えば、-x方向にステージ105を移動させながら、相対的にx方向にストライプ領域32のスキャン動作を進めていく。各ストライプ領域32は、長手方向に向かって複数の矩形領域33に分割される。対象となる矩形領域33へのビームの移動は、偏向器208,209によるマルチ1次電子ビーム20全体での一括偏向によって行われる。
【0114】
図31の例では、例えば、5×5列のマルチ1次電子ビーム20の場合を示している。1回のマルチ1次電子ビーム20の照射で照射可能な照射領域34は、(基板101面上におけるマルチ1次電子ビーム20のx方向のビーム間ピッチにx方向のビーム数を乗じたx方向サイズ)×(基板101面上におけるマルチ1次電子ビーム20のy方向のビーム間ピッチにy方向のビーム数を乗じたy方向サイズ)で定義される。照射領域34が、マルチ1次電子ビーム20の視野となる。そして、マルチ1次電子ビーム20を構成する各1次電子ビーム8は、自身のビームが位置するx方向のビーム間ピッチとy方向のビーム間ピッチとで囲まれるサブ照射領域29内に照射され、当該サブ照射領域29内を走査(スキャン動作)する。各1次電子ビーム8は、互いに異なるいずれかのサブ照射領域29を担当することになる。そして、各ショット時に、各1次電子ビーム10は、担当サブ照射領域29内の同じ位置を照射することになる。サブ照射領域29内の1次電子ビーム10の移動は、偏向器208,209によるマルチ1次電子ビーム20全体での一括偏向によって行われる。かかる動作を繰り返し、1つの1次電子ビーム10で1つのサブ照射領域29内を順に照射していく。
【0115】
各ストライプ領域32の幅は、照射領域34のy方向サイズと同様、或いはスキャンマージン分狭くしたサイズに設定すると好適である。図31の例では、照射領域34が矩形領域33と同じサイズの場合を示している。但し、これに限るものではない。照射領域34が矩形領域33よりも小さくても良い。或いは大きくても構わない。そして、マルチ1次電子ビーム20を構成する各1次電子ビーム10は、自身のビームが位置するサブ照射領域29内に照射され、当該サブ照射領域29内を走査(スキャン動作)する。そして、1つのサブ照射領域29のスキャンが終了したら、偏向器208,209によるマルチ1次電子ビーム20全体での一括偏向によって照射位置が同じストライプ領域32内の隣接する矩形領域33へと移動する。かかる動作を繰り返し、ストライプ領域32内を順に照射していく。1つのストライプ領域32のスキャンが終了したら、ステージ105の移動或いは/及び偏向器208,209によるマルチ1次電子ビーム20全体での一括偏向によって照射領域34が次のストライプ領域32へと移動する。以上のように各1次電子ビーム10の照射によってサブ照射領域29毎のスキャン動作および2次電子画像の取得が行われる。これらのサブ照射領域29毎の2次電子画像を組み合わせることで、矩形領域33の2次電子画像、ストライプ領域32の2次電子画像、或いはチップ332の2次電子画像が構成される。また、実際に画像比較を行う場合には、各矩形領域33内のサブ照射領域29をさらに複数のフレーム領域30に分割して、フレーム領域30毎のフレーム画像31について比較することになる。図22の例では、1つの1次電子ビーム8によってスキャンされるサブ照射領域29を例えばx,y方向にそれぞれ2分割することによって形成される4つのフレーム領域30に分割する場合を示している。
【0116】
ここで、ステージ105が連続移動しながらマルチ1次電子ビーム20を基板101に照射する場合、マルチ1次電子ビーム20の照射位置がステージ105の移動に追従するように偏向器208,209によって一括偏向によるトラッキング動作が行われる。そのため、マルチ2次電子ビーム300の放出位置がマルチ1次電子ビーム20の軌道中心軸に対して刻々と変化する。同様に、サブ照射領域29内をスキャンする場合に、各2次電子ビームの放出位置は、サブ照射領域29内で刻々と変化する。このように放出位置が変化した各2次電子ビームをマルチ検出器222の対応する検出領域内に照射させるように、偏向器226は、マルチ2次電子ビーム300を一括偏向する。
【0117】
以上のように、画像取得機構150は、ストライプ領域32毎に、スキャン動作をすすめていく。検査に用いる画像(2次電子画像)は、ステージ105上の被検査基板101をマルチ1次電子ビーム20で照射し、マルチ1次電子ビーム20の照射によって基板101から放出されるマルチ2次電子ビーム300をマルチ検出器222が検出することによって取得される。検出されるマルチ2次電子ビーム300には、反射電子が含まれていても構わない。或いは、反射電子は、2次電子光学系152を移動中に分離され、マルチ検出器222まで到達しない場合であっても構わない。マルチ検出器222によって検出された各サブ照射領域29内の画素毎の2次電子の検出データ(測定画像データ:2次電子画像データ:被検査画像データ)は、測定順に検出回路106に出力される。検出回路106内では、図示しないA/D変換器によって、アナログの検出データがデジタルデータに変換され、チップパターンメモリ123に格納される。そして、得られた測定画像データは、位置回路107からの各位置を示す情報と共に、比較回路108に転送される。
【0118】
図32は、実施の形態1における比較回路内の構成の一例を示す構成図である。図32において、比較回路108内には、磁気ディスク装置等の記憶装置50,52,56、フレーム画像作成部54、位置合わせ部57、及び比較部58が配置される。フレーム画像作成部54、位置合わせ部57、及び比較部58といった各「~部」は、処理回路を含み、その処理回路には、電気回路、コンピュータ、プロセッサ、回路基板、量子回路、或いは、半導体装置等が含まれる。また、各「~部」は、共通する処理回路(同じ処理回路)を用いてもよい。或いは、異なる処理回路(別々の処理回路)を用いても良い。フレーム画像作成部54、位置合わせ部57、及び比較部58内に必要な入力データ或いは演算された結果はその都度図示しないメモリ、或いはメモリ118に記憶される。
【0119】
比較回路108内に転送された測定画像データ(ビーム画像)は、記憶装置50に格納される。
【0120】
そして、フレーム画像作成部54は、各1次電子ビーム10のスキャン動作によって取得されたサブ照射領域29の画像データをさらに分割した複数のフレーム領域30のフレーム領域30毎のフレーム画像31を作成する。そして、フレーム領域30を被検査画像の単位領域として使用する。なお、各フレーム領域30は、画像の抜けが無いように、互いにマージン領域が重なり合うように構成されると好適である。作成されたフレーム画像31は、記憶装置56に格納される。
【0121】
一方、参照画像作成回路112は、基板101に形成された複数の図形パターンの元になる設計データに基づいて、フレーム領域30毎に、フレーム画像31に対応する参照画像を作成する。具体的には、以下のように動作する。まず、記憶装置109から制御計算機110を通して設計パターンデータを読み出し、この読み出された設計パターンデータに定義された各図形パターンを2値ないしは多値のイメージデータに変換する。
【0122】
上述したように、設計パターンデータに定義される図形は、例えば長方形や三角形を基本図形としたもので、例えば、図形の基準位置における座標(x、y)、辺の長さ、長方形や三角形等の図形種を区別する識別子となる図形コードといった情報で各パターン図形の形、大きさ、位置等を定義した図形データが格納されている。
【0123】
かかる図形データとなる設計パターンデータが参照画像作成回路112に入力されると図形ごとのデータにまで展開し、その図形データの図形形状を示す図形コード、図形寸法などを解釈する。そして、所定の量子化寸法のグリッドを単位とするマス目内に配置されるパターンとして2値ないしは多値の設計パターン画像データに展開し、出力する。言い換えれば、設計データを読み込み、検査領域を所定の寸法を単位とするマス目として仮想分割してできたマス目毎に設計パターンにおける図形が占める占有率を演算し、nビットの占有率データを出力する。例えば、1つのマス目を1画素として設定すると好適である。そして、1画素に1/2(=1/256)の分解能を持たせるとすると、画素内に配置されている図形の領域分だけ1/256の小領域を割り付けて画素内の占有率を演算する。そして、8ビットの占有率データとなる。かかるマス目(検査画素)は、測定データの画素に合わせればよい。
【0124】
次に、参照画像作成回路112は、図形のイメージデータである設計パターンの設計画像データに、所定のフィルタ関数を使ってフィルタ処理を施す。これにより、画像強度(濃淡値)がデジタル値の設計側のイメージデータである設計画像データをマルチ1次電子ビーム20の照射によって得られる像生成特性に合わせることができる。作成された参照画像の画素毎の画像データは比較回路108に出力される。比較回路108内に転送された参照画像データは、記憶装置52に格納される。
【0125】
次に、位置合わせ部57は、被検査画像となるフレーム画像31と、当該フレーム画像31に対応する参照画像とを読み出し、画素より小さいサブ画素単位で、両画像を位置合わせする。例えば、最小2乗法で位置合わせを行えばよい。
【0126】
そして、比較部58は、ステージ105上に載置される基板101の2次電子画像を所定の画像と比較する。具体的には、比較部58は、フレーム画像31と参照画像とを画素毎に比較する。比較部58は、所定の判定条件に従って画素毎に両者を比較し、例えば形状欠陥といった欠陥の有無を判定する。例えば、画素毎の階調値差が判定閾値Thよりも大きければ欠陥と判定する。そして、比較結果が出力される。比較結果は、記憶装置109、若しくはメモリ118に出力される、或いはプリンタ119より出力されればよい。
【0127】
なお、上述した例では、ダイ-データベース検査について説明したが、これに限るものではない。ダイ-ダイ検査を行う場合であっても良い。ダイ-ダイ検査を行う場合、対象となるフレーム画像31(ダイ1)と、当該フレーム画像31と同じパターンが形成されたフレーム画像31(ダイ2)(参照画像の他の一例)との間で、上述した位置合わせと比較処理を行えばよい。
【0128】
以上のように、実施の形態1によれば、マルチ2次電子ビームのうち所望のビームを特定できる。
【0129】
以上の説明において、一連の「~回路」は、処理回路を含み、その処理回路には、電気回路、コンピュータ、プロセッサ、回路基板、量子回路、或いは、半導体装置等が含まれる。また、各「~回路」は、共通する処理回路(同じ処理回路)を用いてもよい。或いは、異なる処理回路(別々の処理回路)を用いても良い。プロセッサ等を実行させるプログラムは、磁気ディスク装置、磁気テープ装置、FD、或いはROM(リードオンリメモリ)等の記録媒体に記録されればよい。例えば、位置回路107、比較回路108、参照画像作成回路112、ステージ制御回路114、レンズ制御回路124、ブランキング制御回路126、偏向制御回路128、検出器ステージ制御回路130、E×B制御回路133、位置合わせ回路134、ビーム選択制御回路136、及び偏向調整回路137は、上述した少なくとも1つの処理回路で構成されても良い。例えば、これらの回路内での処理を制御計算機110で実施しても良い。
【0130】
以上、具体例を参照しつつ実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。図1の例では、1つの照射源となる電子銃201から照射された1本のビームから成形アパーチャアレイ基板203によりマルチ1次電子ビーム20を形成する場合を示しているが、これに限るものではない。複数の照射源からそれぞれ1次電子ビームを照射することによってマルチ1次電子ビーム20を形成する態様であっても構わない。
【0131】
また、装置構成や制御手法等、本発明の説明に直接必要しない部分等については記載を省略したが、必要とされる装置構成や制御手法を適宜選択して用いることができる。
【0132】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全てのマルチビーム画像取得装置、マルチビーム画像取得方法、マルチ2次電子ビームの位置合わせ方法、マルチ2次電子ビームの位置合わせ装置、及びマルチ2次電子ビームの偏向調整方法は、本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0133】
8 1次電子ビーム
10 基材
12 ラインパターン
14 アライメントマーク
20 マルチ1次電子ビーム
22 穴
29 サブ照射領域
30 フレーム領域
31 フレーム画像
32 ストライプ領域
33 矩形領域
34 照射領域
50,52,56 記憶装置
54 フレーム画像作成部
57 位置合わせ部
58 比較部
60 コーナー画像抽出部
61 記憶装置
62 照射ビーム特定部
63 コーナービーム特定部
64 コーナー部位置関係算出部
66 全体位置関係特定部
68 位置合わせ部
71,76 記憶装置
70 画像合成部
72 座標取得部
74 偏向条件演算部
80 ビーム位置算出部
82 合成部
84 検出エレメント座標算出部
100 検査装置
101 基板
102 電子ビームカラム
103 検査室
105 ステージ
106 検出回路
107 位置回路
108 比較回路
109 記憶装置
110 制御計算機
111 マーク部材
112 参照画像作成回路
114 ステージ制御回路
117 モニタ
118 メモリ
119 プリンタ
120 バス
122 レーザ測長システム
123 チップパターンメモリ
124 レンズ制御回路
126 ブランキング制御回路
128 偏向制御回路
130 検出器ステージ制御回路
132 駆動機構
133 E×B制御回路
134 位置合わせ回路
137 偏向調整回路
142 駆動機構
144,146,148,149 DACアンプ
150 画像取得機構
151 1次電子光学系
152 2次電子光学系
160 制御系回路
201 電子銃
202 電磁レンズ
203 成形アパーチャアレイ基板
205,206,207,224 電磁レンズ
208 偏向器
209 偏向器
210 ビーム選択アパーチャ基板
211 駆動機構
212 一括ブランキング偏向器
213 制限アパーチャ基板
214 E×B分離器
216 ミラー
218 偏向器
222 マルチ検出器
224 電磁レンズ
225 検出器アパーチャアレイ基板
226 偏向器
227 回転ステージ
228 x,yステージ
229 検出器ステージ
300 マルチ2次電子ビーム
310 基材
311 マーク部材
313 ラインパターン
314 アライメントマーク
330 検査領域
332 チップ
図1
図2
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