(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176719
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】水溶性金属加工油剤
(51)【国際特許分類】
C10M 173/00 20060101AFI20241212BHJP
C10M 133/04 20060101ALI20241212BHJP
C10M 145/26 20060101ALI20241212BHJP
C10N 30/08 20060101ALN20241212BHJP
C10N 30/16 20060101ALN20241212BHJP
C10N 40/22 20060101ALN20241212BHJP
【FI】
C10M173/00
C10M133/04
C10M145/26
C10N30:08
C10N30:16
C10N40:22
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095481
(22)【出願日】2023-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100114409
【弁理士】
【氏名又は名称】古橋 伸茂
(74)【代理人】
【識別番号】100128761
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100194423
【弁理士】
【氏名又は名称】植竹 友紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100158481
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 俊秀
(74)【代理人】
【識別番号】100217663
【弁理士】
【氏名又は名称】末広 尚也
(72)【発明者】
【氏名】岡野 知晃
(72)【発明者】
【氏名】小矢 俊亮
【テーマコード(参考)】
4H104
【Fターム(参考)】
4H104BA02A
4H104BA04A
4H104BA07A
4H104BB08A
4H104BB33A
4H104BB34A
4H104BE01C
4H104BH03A
4H104CB14C
4H104DA02A
4H104LA04
4H104LA08
4H104PA22
4H104QA01
(57)【要約】
【課題】例えば、長期間にわたり性能が維持され得る水溶性金属加工油剤となり得る金属加工液が求められている。
【解決手段】50℃で48時間加熱した際の下記式(i)から算出される揮発率が20%以下であるアミン化合物(A)を2種以上、及び、脂肪酸類(B)を含有し、成分(A)には該当しないアミン化合物(X)の含有量が、成分(A)の全量100質量部に対して、5.0質量部未満である、水溶性金属加工油剤。
・式(i):揮発率(%)=([加熱前のアミン化合物の質量]-[48時間加熱後のアミン化合物の質量])/[加熱前のアミン化合物の質量]×100
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
50℃で48時間加熱した際の下記式(i)から算出される揮発率が20%以下であるアミン化合物(A)を2種以上、及び、脂肪酸類(B)を含有し、
成分(A)には該当しないアミン化合物(X)の含有量が、成分(A)の全量100質量部に対して、5.0質量部未満である、水溶性金属加工油剤。
・式(i):揮発率(%)=([加熱前のアミン化合物の質量]-[48時間加熱後のアミン化合物の質量])/[加熱前のアミン化合物の質量]×100
【請求項2】
成分(A)の含有量が、前記水溶性金属加工油剤の全量基準で、5.0質量%超である、請求項1に記載の水溶性金属加工油剤。
【請求項3】
成分(A)が、前記揮発率が10%以下であるアミン化合物(A1)を少なくとも2種含む、請求項1又は2に記載の水溶性金属加工油剤。
【請求項4】
重量平均分子量が12,000以下のポリアルキレングリコール(Y1)及びポリオキシアルキレン基を有する非水溶性化合物(Y2)の合計含有量が、前記水溶性金属加工油剤の全量基準で、70質量%未満である、請求項1~3のいずれか一項に記載の水溶性金属加工油剤。
【請求項5】
重量平均分子量が12,000以下のポリアルキレングリコール(Y1)の含有量が、前記水溶性金属加工油剤の全量基準で、15.0質量%未満である、請求項1~4のいずれか一項に記載の水溶性金属加工油剤。
【請求項6】
ポリオキシアルキレン基を有する非水溶性化合物(Y2)の含有量が、前記水溶性金属加工油剤の全量基準で、15.0質量%未満である、請求項1~5のいずれか一項に記載の水溶性金属加工油剤。
【請求項7】
成分(B)の含有量が、前記水溶性金属加工油剤の全量基準で、5.0質量%以上である、請求項1~6のいずれか一項に記載の水溶性金属加工油剤。
【請求項8】
成分(A)に由来する塩基価と、成分(B)に由来する酸価との比[(A)/(B)]が、0.50~10.0である、請求項1~7のいずれか一項に記載の水溶性金属加工油剤。
【請求項9】
さらに非イオン性界面活性剤(C)を含有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の水溶性金属加工油剤。
【請求項10】
さらに基油(D)を含有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の水溶性金属加工油剤。
【請求項11】
さらに水(E)を含有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の水溶性金属加工油剤。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の水溶性金属加工油剤に、希釈水を配合してなる、金属加工液。
【請求項13】
請求項12に記載の金属加工液を適用して、金属からなる被加工材を加工する、金属加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶性金属加工油剤、当該水溶性金属加工油剤に希釈水を配合してなる金属加工液、及び、金属加工液を適用して金属からなる被加工材を加工する金属加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
切削加工や研削加工等の金属加工分野では、被加工材の加工性を向上させると共に、加工工具の磨耗抑制を目的として、金属加工液が使用される。
金属加工液には、鉱油、合成油、動植物油等の油分を主成分した油性金属加工液と、油分に界面活性を有する化合物を配合して水溶性を付与した水溶性金属加工液がある。近年では、火災の危険性が低い等の安全性の理由から、水溶性金属加工液が用いられるようになってきている。
【0003】
例えば、特許文献1には、水溶性ポリアルキレングリコール、メトキシポリエチレングリコール、及びそれらの2種以上の組み合わせからなる群から選択される60~90重量%の基油と、5~20重量%のグリコールエーテルと、0.01~5重量%の油溶性ポリアルキレングリコールと、0.2~6重量%の添加剤とを含む、濃縮金属加工流体に関する発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1のような水溶性金属加工液は、金属加工時において繰り返し使用されるが、長期間の使用に伴う性能の低下が問題となっている。そのため、長期間にわたり性能が維持され得る金属加工油を調整し得る水溶性金属加工油剤が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、特定の揮発率が所定値以下のアミン化合物を2種以上と、脂肪酸類とを含有し、特定の揮発率が所定値を超えるアミン化合物の含有量を制限した水溶性金属加工油剤を提供する。
具体的には、本発明は、例えば、下記態様[1]~[13]を提供する。
[1]
50℃で48時間加熱した際の下記式(i)から算出される揮発率が20%以下であるアミン化合物(A)を2種以上、及び、脂肪酸類(B)を含有し、
成分(A)には該当しないアミン化合物(X)の含有量が、成分(A)の全量100質量部に対して、5.0質量部未満である、水溶性金属加工油剤。
・式(i):揮発率(%)=([加熱前のアミン化合物の質量]-[48時間加熱後のアミン化合物の質量])/[加熱前のアミン化合物の質量]×100
[2]
成分(A)の含有量が、前記水溶性金属加工油剤の全量基準で、5.0質量%超である、上記[1]に記載の水溶性金属加工油剤。
[3]
成分(A)が、前記揮発率が10%以下であるアミン化合物(A1)を少なくとも2種含む、上記[1]又は[2]に記載の水溶性金属加工油剤。
[4]
重量平均分子量が12,000以下のポリアルキレングリコール(Y1)及びポリオキシアルキレン基を有する非水溶性化合物(Y2)の合計含有量が、前記水溶性金属加工油剤の全量基準で、70質量%未満である、上記[1]~[3]のいずれか一項に記載の水溶性金属加工油剤。
[5]
重量平均分子量が12,000以下のポリアルキレングリコール(Y1)の含有量が、前記水溶性金属加工油剤の全量基準で、15.0質量%未満である、上記[1]~[4]のいずれか一項に記載の水溶性金属加工油剤。
[6]
ポリオキシアルキレン基を有する非水溶性化合物(Y2)の含有量が、前記水溶性金属加工油剤の全量基準で、15.0質量%未満である、上記[1]~[5]のいずれか一項に記載の水溶性金属加工油剤。
[7]
成分(B)の含有量が、前記水溶性金属加工油剤の全量基準で、5.0質量%以上である、上記[1]~[6]のいずれか一項に記載の水溶性金属加工油剤。
[8]
成分(A)に由来する塩基価と、成分(B)に由来する酸価との比[(A)/(B)]が、0.50~10.0である、上記[1]~[7]のいずれか一項に記載の水溶性金属加工油剤。
[9]
さらに非イオン性界面活性剤(C)を含有する、上記[1]~[8]のいずれか一項に記載の水溶性金属加工油剤。
[10]
さらに基油(D)を含有する、上記[1]~[9]のいずれか一項に記載の水溶性金属加工油剤。
[11]
さらに水(E)を含有する、上記[1]~[10]のいずれか一項に記載の水溶性金属加工油剤。
[12]
上記[1]~[11]のいずれか一項に記載の水溶性金属加工油剤に、希釈水を配合してなる、金属加工液。
[13]
上記[12]に記載の金属加工液を適用して、金属からなる被加工材を加工する、金属加工方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の好適な一態様の水溶性金属加工油剤は、希釈水で希釈することで、熱安定性及び耐腐敗性に優れ、長期間にわたり性能がより維持できる金属加工油を調製可能である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書に記載された数値範囲については、上限値及び下限値を任意に組み合わせることができる。例えば、数値範囲として「好ましくは30~100、より好ましくは40~80」と記載されている場合、「30~80」との範囲や「40~100」との範囲も、本明細書に記載された数値範囲に含まれる。また、例えば、数値範囲として「好ましくは30以上、より好ましくは40以上であり、また、好ましくは100以下、より好ましくは80以下である」と記載されている場合、「30~80」との範囲や「40~100」との範囲も、本明細書に記載された数値範囲に含まれる。
加えて、本明細書に記載された数値範囲として、例えば「60~100」との記載は、「60以上(60又は60超)、100以下(100又は100未満)」という範囲であることを意味する。
【0009】
本明細書において、「金属加工油剤」は、希釈水で希釈して金属加工液とする前の金属加工液の原液であって、金属加工に用いる前の輸送時や保管時には好適な形態である。また、「金属加工液」は、原液である金属加工油剤に希釈水を加えて希釈したものであって、金属加工に使用する際に好適な形態である。
「金属加工油剤」と「金属加工液」とは、例えば、以下のように、水の含有量によって区別することもできる。
・「金属加工油剤」:水の含有量が、水以外の成分の全量100質量部に対して0質量部以上400質量部以下である。
・「金属加工液」:水の含有量が、水以外の成分の全量100質量部に対して、400質量部超である。
【0010】
〔水溶性金属加工油剤の構成〕
本発明の水溶性金属加工油剤は、式(i)から算出される揮発率が20%以下であるアミン化合物(A)(以下、「成分(A)」ともいう)を2種以上、及び、脂肪酸類(B)(以下、「成分(B)」ともいう)を含有し、成分(A)には該当しないアミン化合物(X)(以下、「成分(X)」ともいう)の含有量が、成分(A)の全量100質量部に対して、5.0質量部未満に調製した油剤である。
本明細書において、「水溶性」とは、25℃の水100gへの溶解量が20g以上であって、25℃の水100gに対象物質を20g添加後の25℃の溶液の全光線透過率が90%以上である成分を意味する。
【0011】
本発明者らは、金属加工油を長期間の使用した際に生じる性能の低下は、金属加工油中で、アミン化合物と脂肪酸類からアミン塩が形成されるが、そのアミン塩のアミンが、金属加工時に生じる熱により揮発してしまうことに原因があることを見出した。
本発明の一態様の水溶性金属加工油剤は、当該知見に基づき完成されたものであり、式(i)から算出される揮発率が20%以下であるアミン化合物(A)を脂肪酸類(B)と共に含有すると共に、性能低下の要因ともなる、成分(A)には該当しないアミン化合物(X)の含有量を制限している。これにより、本発明の一態様の水溶性金属加工油剤から調製した金属加工油は、金属加工油中で形成されるアミン塩のアミンが、金属加工時に生じる熱によっても揮発し難くなると考えられ、長期間にわたり性能が維持され得る。
【0012】
本発明の一態様の水溶性金属加工油剤は、さらに非イオン界面活性剤(C)(以下、「成分(C)」ともいう)を含有してもよい。
本発明の一態様の水溶性金属加工油剤は、さらに基油(D)(以下、「成分(D)」ともいう)を含有してもよい。
本発明の一態様の水溶性金属加工油剤は、さらに水(E)(以下、「成分(E)」ともいう)を含有してもよい。水(E)の含有量を調整することで、JIS K2241:2017で規定する、A1種に分類されるエマルション型の油剤、もしくは、A2種に分類されるソルブル型の油剤に調製することができる。
本発明の一態様の水溶性金属加工油剤は、成分(C)、成分(D)、及び成分(E)から選ばれる2種以上を含有することが好ましく、成分(C)、成分(D)及び成分(E)のすべてを含有することがより好ましい。
【0013】
なお、本発明の一態様の水溶性金属加工油剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、成分(A)~(E)以外の他の成分を含有してもよい。
【0014】
本発明の一態様の水溶性金属加工油剤において、成分(A)及び(B)の合計含有量は、当該水溶性金属加工油剤の全量(100質量%)基準で、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは20質量%以上、より更に好ましくは25質量%以上、特に好ましくは28質量%以上であり、また、100質量%以下、90質量%以下、80質量%以下、70質量%以下、65質量%以下、60質量%以下、55質量%以下、50質量%以下、又は48質量%以下としてもよい。
【0015】
本発明の一態様の水溶性金属加工油剤において、成分(A)~(E)の合計含有量は、当該水溶性金属加工油剤の全量(100質量%)基準で、好ましく40質量%以上、より好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、より更に好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上であり、また、100質量%以下、99質量%以下、98質量%以下、又は97質量%以下としてもよい。
以下、本発明の一態様の水溶性金属加工油剤に含まれる各成分について説明する。
【0016】
<成分(A):アミン系化合物>
本発明の一態様の水溶性金属加工油剤は、50℃で48時間加熱した際の下記式(i)から算出される揮発率が20%以下であるアミン化合物(A)を2種以上含有する。
・式(i):揮発率(%)=([加熱前のアミン化合物の質量]-[48時間加熱後のアミン化合物の質量])/[加熱前のアミン化合物の質量]×100
本明細書において、揮発率は、後述の実施例に記載の方法に基づいて測定された値を意味する。
【0017】
本発明の一態様の水溶性金属加工油剤は、成分(A)を含有することで、当該水溶性金属加工油剤を希釈して金属加工油とした際に、金属加工油中で成分(A)と成分(B)から形成されるアミン塩のアミンが、金属加工時に生じる熱によっても揮発し難くなり、長期間にわたり性能が維持される金属加工油とすることができる。
【0018】
本発明の一態様の水溶性金属加工油剤において、熱安定性及び耐腐敗性に優れ、長期間にわたり性能がより維持できる金属加工油を調製可能な水溶性金属加工油剤とする観点から、成分(A)の含有量は、当該水溶性金属加工油剤の全量(100質量%)基準で、5.0質量%超、7.0質量%以上、9.0質量%以上、10.0質量%以上、11.0質量%以上、12.0質量%以上、14.0質量%以上、16.0質量%以上、18.0質量%以上、20.0質量%以上、22.0質量%以上、24.0質量%以上、又は26.0質量%以上とすることが好ましく、また、60.0質量%以下、55.0質量%以下、50.0質量%以下、45.0質量%以下、40.0質量%以下、37.0質量%以下、35.0質量%以下、32.0質量%以下、又は30.0質量%以下としてもよい。
【0019】
本発明の一態様の水溶性金属加工油剤において、熱安定性及び耐腐敗性に優れ、長期間にわたり性能がより維持できる金属加工油を調製可能な水溶性金属加工油剤とする観点から、成分(A)の含有量は、当該水溶性金属加工油剤の水を除く全量(100質量%)基準で、5.0質量%超、7.0質量%以上、9.0質量%以上、10.0質量%以上、11.0質量%以上、12.0質量%以上、13.0質量%以上、15.0質量%以上、17.0質量%以上、20.0質量%以上、22.0質量%以上、24.0質量%以上、26.0質量%以上、28.0質量%以上、又は30.0質量%以上とすることが好ましく、また、70.0質量%以下、65.0質量%以下、60.0質量%以下、55.0質量%以下、50.0質量%以下、45.0質量%以下、40.0質量%以下、37.0質量%以下、又は35.0質量%以下としてもよい。
【0020】
本発明の一態様で用いる成分(A)の前記揮発率は、熱安定性及び耐腐敗性に優れ、長期間にわたり性能がより維持できる金属加工油を調製可能な水溶性金属加工油剤とする観点から、20%以下、18%以下、16%以下、14%以下、12%以下、11%以下、10%以下、9.0%以下、8.0%以下、7.0%以下、6.0%以下、5.0%以下、4.0%以下、3.0%以下、2.0%以下、1.0%以下、又は0.50%以下であることが好ましい。
【0021】
本発明の一態様で用いる成分(A)は、熱安定性及び耐腐敗性に優れ、長期間にわたり性能がより維持できる金属加工油を調製可能な水溶性金属加工油剤とする観点から、前記揮発率が20%以下のアミン化合物の2種以上から構成されるが、前記揮発率が10%以下のアミン化合物(A1)を少なくとも2種含むことが好ましい。
アミン化合物(A1)の前記揮発率は、10%以下であるが、上記観点から、9.0%以下、8.0%以下、7.0%以下、6.0%以下、5.0%以下、4.0%以下、3.0%以下、2.0%以下、1.0%以下、又は0.50%以下であることがより好ましい。
【0022】
本発明の一態様の水溶性金属加工油剤において、熱安定性及び耐腐敗性に優れ、長期間にわたり性能がより維持できる金属加工油を調製可能な水溶性金属加工油剤とする観点から、成分(A1)の含有割合は、当該水溶性金属加工油剤に含まれる成分(A)の全量(100質量%)基準で、20質量%以上、25質量%以上、30質量%以上、35質量%以上、40質量%以上、45質量%以上、50質量%以上、55質量%以上、60質量%以上、65質量%以上、70質量%以上、75質量%以上、80質量%以上、85質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、98質量%以上、又は100質量%とすることが好ましい。
【0023】
本発明の一態様で用いる成分(A)は、前記揮発率が20%以下である限り特に制限はなく、例えば、上記一分子中にアミノ窒素原子を1つ有するモノアミン、一分子中にアミノ窒素原子を2つ有するジアミン、及び、一分子中にアミノ窒素原子を3つ以上有するポリアミンのいずれであってもよい。
ただし、前記揮発率を所定値以下とする観点から、本発明の一態様で用いる成分(A)は、モノアミンが好ましい。
【0024】
本発明の一態様で成分(A)として用いるモノアミンとしては、第1級アミン、第2級アミン及び第3級アミンのいずれであってもよいが、前記揮発率を所定値以下とする観点から、第1級アミンとしては、下記一般式(a-1)で表される第1級アミン化合物が好ましく、第2級アミンとしては、下記一般式(a-2)で表される第2級アミン化合物、第3級アミンとしては、下記一般式(a-3)で表される第3級アミン化合物が好ましい。
【0025】
【0026】
前記一般式(a-1)中、p1及びp2は、それぞれ独立して、0~10の整数であり、好ましくは1~6の整数、より好ましくは1~4の整数、更に好ましくは2~3の整数、より更に好ましくは2である。
x1は0又は1である。
【0027】
前記一般式(a-1)で表される第1級アミン化合物としては、2-(2-アミノエトキシ)エタノールが好ましい。
【0028】
前記一般式(a-2)中、R11~R14は、それぞれ独立して、水素原子、水酸基、水酸基で置換されていてもよい直鎖又は分岐鎖のアルキル基、又はフェニル基である。
R11~R14として選択し得る、前記アルキル基の炭素数は、好ましくは1~12、より好ましくは1~10、更に好ましくは1~6、より更に好ましくは1~3である。
ただし、R11及びR13の少なくとも一方は、水素原子であり、他方が水素原子以外の基であることが好ましく、また、R12及びR14の少なくとも一方は、水素原子であり、他方が水素原子以外の基であることが好ましい。
X1及びX2は、それぞれ独立して、酸素原子、オキシエチレン基、又はオキシプロピレン基である。p3及びp4は、それぞれ独立して、0~10の整数であり、0~6の整数であることが好ましく、0~3の整数であることがより好ましい。
【0029】
前記一般式(a-2)で表される第2級アミン化合物としては、ジイソプロパノールアミン又はジベンジルアミンが好ましく、ジベンジルアミンがより好ましい。
【0030】
前記一般式(a-3)中、R21~R24は、それぞれ独立して、水素原子、水酸基、水酸基で置換されていてもよい直鎖又は分岐鎖のアルキル基、又はフェニル基である。
R21~R24として選択し得る、前記アルキル基の炭素数は、好ましくは1~12、より好ましくは1~10、更に好ましくは1~6、より更に好ましくは1~3である。
ただし、R21及びR23の少なくとも一方は、水素原子であり、他方が水素原子以外の基であることが好ましく、また、R22及びR24の少なくとも一方は、水素原子であり、他方が水素原子以外の基であることが好ましい。
X3及びX4は、それぞれ独立して、酸素原子、オキシエチレン基、又はオキシプロピレン基である。p3及びp4は、それぞれ独立して、0~10の整数であり、0~6の整数であることが好ましく、0~3の整数であることがより好ましい。
R31は、水酸基で置換されていてもよい直鎖又は分岐鎖のアルキル基、フェニル基、又はシクロヘキシル基である。
R31として選択し得る、前記アルキル基の炭素数は、好ましくは1~12、より好ましくは1~10、更に好ましくは1~6、より更に好ましくは1~3である。
【0031】
前記一般式(a-3)で表される第3級アミン化合物としては、N-メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、シクロヘキシルジエタノールアミン、又はポリオキシアルキレンアルキルアミンが好ましく、少なくともシクロヘキシルジエタノールアミン又はポリオキシアルキレンアルキルアミンを含むことがより好ましい。
【0032】
前記一般式(a-2)~(a-3)中のR11~R14、R21~R24及びR31として選択し得る、前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基(n-プロピル基、i-プロピル基)、ブチル基(n-ブチル基、i-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基)、ペンチル基(n-ペンチル基、i-ペンチル基、ネオペンチル基)、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等が挙げられる。
当該アルキル基は、直鎖アルキル基であってもよく、分岐鎖アルキル基であってもよい。
【0033】
本発明の一態様で用いる成分(A)は、2種以上の組み合わせからなり、具体的には、以下の組み合わせが挙げられる。
・(i)第1級アミンの少なくとも1種と、第2級アミンの少なくとも1種との組み合わせ。
・(ii)第1級アミンの少なくとも1種と、第3級アミンの少なくとも1種との組み合わせ。
・(iii)第2級アミンの少なくとも1種と、第3級アミンの少なくとも1種との組み合わせ。
・(iv)第1アミンの少なくとも1種と、第2級アミンの少なくとも1種と、第3級アミンの少なくとも1種との組み合わせ。
・(v)第1アミンの少なくとも2種の組み合わせ。
・(vi)第2アミンの少なくとも2種の組み合わせ。
・(vii)第3アミンの少なくとも2種の組み合わせ。
上記組み合わせの態様の中でも、熱安定性及び耐腐敗性に優れ、長期間にわたり性能がより維持できる金属加工油を調製可能な水溶性金属加工油剤とする観点から、上記(i)、(ii)、(iii)、(iv)、(vi)又は(vii)の組み合わせが好ましく、上記(i)、(ii)、(iv)、(vi)又は(vii)の組み合わせがより好ましく、上記(i)、(iv)又は(vii)の組み合わせが更に好ましく、上記(iv)又は(vii)の組み合わせがより更に好ましい。
【0034】
本発明の一態様で用いる成分(A)の塩基価(アミン価)は、熱安定性及び耐腐敗性に優れ、長期間にわたり性能がより維持できる金属加工油を調製可能な水溶性金属加工油剤とする観点から、560mgKOH/g以下、550mgKOH/g以下、又は540mgKOH/g以下とすることが好ましく、また、100mgKOH/g超、150mgKOH/g以上、又は170mgKOH/g以上とすることが好ましい。
【0035】
成分(A)として、第1級アミン化合物を用いる場合、第1級アミン化合物の塩基価(アミン価)は、熱安定性及び耐腐敗性に優れ、長期間にわたり性能がより維持できる金属加工油を調製可能な水溶性金属加工油剤とする観点から、560mgKOH/g以下、550mgKOH/g以下、又は540mgKOH/g以下とすることが好ましく、また、100mgKOH/g超、150mgKOH/g以上、170mgKOH/g以上、200mgKOH/g以上、250mgKOH/g以上、300mgKOH/g以上、350mgKOH/g以上、400mgKOH/g以上、450mgKOH/g以下、又は500mgKOH/g以上とすることが好ましい。
【0036】
成分(A)として、第2級アミン化合物を用いる場合、第2級アミン化合物の塩基価(アミン価)は、熱安定性及び耐腐敗性に優れ、長期間にわたり性能がより維持できる金属加工油を調製可能な水溶性金属加工油剤とする観点から、570mgKOH/g以下、550mgKOH/g以下、530mgKOH/g以下、500mgKOH/g以下、470mgKOH/g以下、450mgKOH/g以下、430mgKOH/g以下、400mgKOH/g以下、370mgKOH/g以下、350mgKOH/g以下、330mgKOH/g以下、又は300mgKOH/g以下であることが好ましく、また、100mgKOH/g超、150mgKOH/g以上、170mgKOH/g以上、200mgKOH/g以上、又は250mgKOH/g以上とすることが好ましい。
【0037】
成分(A)として、第3級アミン化合物を用いる場合、第3級アミン化合物の塩基価(アミン価)は、熱安定性及び耐腐敗性に優れ、長期間にわたり性能がより維持できる金属加工油を調製可能な水溶性金属加工油剤とする観点から、570mgKOH/g以下、550mgKOH/g以下、530mgKOH/g以下、500mgKOH/g以下、470mgKOH/g以下、450mgKOH/g以下、430mgKOH/g以下、400mgKOH/g以下、370mgKOH/g以下、350mgKOH/g以下、330mgKOH/g以下、又は300mgKOH/g以下であることが好ましく、また、100mgKOH/g超、150mgKOH/g以上、又は170mgKOH/g以上とすることが好ましい。
【0038】
本明細書において、塩基価(アミン価)は、JIS K2501:2003(塩酸法)に準拠して測定された値を意味する。
【0039】
<成分(X):成分(A)には該当しないアミン化合物>
本発明の一態様の水溶性金属加工油剤は、熱安定性及び耐腐敗性に優れ、長期間にわたり性能がより維持できる金属加工油を調製可能な水溶性金属加工油剤とする観点から、成分(A)には該当しないアミン化合物(X)の含有量を、成分(A)の全量100質量部に対して、5.0質量部未満に制限している。
上記観点から、本発明の一態様の水溶性金属過去油剤において、成分(X)の含有量は、成分(A)の全量100質量部に対して、4.5質量部未満、4.0質量部未満、3.0質量部未満、2.0質量部未満、1.0質量部未満、0.50質量部未満、0.10質量部未満、0.01質量部未満、0.001質量部未満、又は0.0001質量部未満とすることが好ましい。
【0040】
また、上記観点から、本発明の一態様の水溶性金属過去油剤において、成分(X)の含有量は、当該水溶性金属加工油剤の全量(100質量%)基準で、1.0質量%未満、0.10質量%未満、500質量ppm未満、100質量ppm未満、50質量ppm未満、10質量ppm未満、5.0質量ppm未満、又は1.0質量ppm未満とすることが好ましい。
【0041】
<成分(B):脂肪酸類>
本発明の一態様の水溶性金属加工油剤は、脂肪酸類(B)を含有する。
成分(B)を含有することで、乳化安定性、防錆性、及び加工性等の各種性能を向上させた金属加工液となり得る水溶性金属加工油剤とすることができる。
本発明の一態様の水溶性金属加工油剤において、成分(B)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0042】
本発明の一態様の水溶性金属加工油剤において、成分(B)の含有量は、当該水溶性金属加工油剤の全量(100質量%)基準で、2.0質量%以上、3.0質量%以上、5.0質量%以上、7.0質量%以上、10.0質量%以上、12.0質量%以上、14.0質量%以上、又は16.0質量%以上とすることが好ましく、また、60質量%以下、50質量%以下、40質量%以下、35質量%以下、30質量%以下、25質量%以下、又は20質量%以下とすることが好ましい。
【0043】
本発明の一態様の水溶性金属加工油剤において、成分(B)の含有量は、当該水溶性金属加工油剤の水を除く全量(100質量%)基準で、2.0質量%以上、3.0質量%以上、5.0質量%以上、7.0質量%以上、10.0質量%以上、12.0質量%以上、14.0質量%以上、16.0質量%以上、又は18.0質量%とすることが好ましく、また、60質量%以下、50質量%以下、40質量%以下、35質量%以下、30質量%以下、25質量%以下、又は22質量%以下とすることが好ましい。
【0044】
本発明の一態様で用いる成分(B)としては、例えば、脂肪酸、ヒドロキシ脂肪酸、脂肪族ジカルボン酸、脂肪酸のダイマー酸、及びヒドロキシ不飽和脂肪酸の重合脂肪酸等が挙げられる。
【0045】
前記脂肪酸としては、例えば、オクタン酸、2-エチルヘキサン酸、デカン酸、ネオデカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、ペンタデカン酸、ヘプタデカン酸、ノナデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、イソステアリン酸等の飽和脂肪族モノカルボン酸、及び、オクテン酸、ノネン酸、デセン酸、ウンデセン酸、オレイン酸、エライジン酸、エルカ酸、ネルボン酸、リノール酸、γ-リノレン酸、アラキドン酸、α-リノレン酸、ステアリドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸等の不飽和脂肪族モノカルボン酸等が挙げられる。
また、不飽和脂肪酸の混合物である、トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸、パーム油脂肪酸、亜麻仁油脂肪酸、米糠油脂肪酸、綿実油脂肪酸等を用いてもよい。
前記脂肪酸の炭素数としては、好ましくは8~30、より好ましくは10~25、更に好ましくは10~20である。
【0046】
前記ヒドロキシ脂肪酸としては、ヒドロキシラウリル酸、ヒドロキシミリスチン酸、ヒドロキシパルミチン酸、ヒドロキシステアリン酸、ヒドロキシアラキン酸、ヒドロキシベヘン酸、ヒドロキシオクタデセン酸等が挙げられる。
前記ヒドロキシ脂肪酸の炭素数としては、好ましくは8~30、より好ましくは10~25、更に好ましくは10~20である。
【0047】
前記脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、セバシン酸、ドデカン二酸、ドデシルコハク酸、ラウリルコハク酸、ステアリルコハク酸、イソステアリルコハク酸等が挙げられる。
前記脂肪族ジカルボン酸の炭素数としては、好ましくは8~30、より好ましくは10~25、更に好ましくは10~20である。
【0048】
前記ヒドロキシ不飽和脂肪酸の重合脂肪酸を構成するヒドロキシ不飽和脂肪酸としては、リシノール酸(12-ヒドロキシオクタデカ-9-エノン酸)等が挙げられる。また、ひまし油等のリシノール酸を含む脂肪酸混合物を用いてもよい。
そして、前記ヒドロキシ不飽和脂肪酸の重合脂肪酸としては、ヒドロキシ不飽和脂肪酸の脱水重縮合物である縮合脂肪酸や、ヒドロキシ不飽和脂肪酸の脱水重縮合物である縮合脂肪酸のアルコール性水酸基とモノカルボン酸とを脱水縮合した縮合脂肪酸等が挙げられる。
【0049】
成分(B)の酸価としては、加工性をより向上させた金属加工液となり得る水溶性金属加工油剤とする観点から、通常0mgKOH/g以上であり、5mgKOH/g以上、10mgKOH/g以上、15mgKOH/g以上、又は20mgKOH/g以上とすることが好ましく、また、100mgKOH/g以下、90mgKOH/g以下、80mgKOH/g以下、70mgKOH/g以下、60mgKOH/g以下、50mgKOH/g以下、40mgKOH/g以下、又は30mgKOH/g以下としてもよい。
成分(B)の水酸基価としては、80mgKOH/g以下、60mgKOH/g以下、40mgKOH/g以下、20mgKOH/g以下、10mgKOH/g以下、又は5mgKOH/g以下とすることが好ましく、また、0mgKOH/g以上、0.1mgKOH/g以上、又は0.5mgKOH/g以上としてもよい。
成分(B)の酸価と水酸基価との比〔酸価/水酸基価〕は、上記観点から、1.5以上、2.0以上、2.5以上、5.0以上、10以上、又は15以上とすることが好ましく、また、50以下、40以下、35以下、30以下、又は25以下とすることが好ましい。
成分(B)のけん化価は、10mgKOH/g以上、20mgKOH/g以上、40mgKOH/g以上、60mgKOH/g以上、100mgKOH/g以上、150mgKOH/g以上、180mgKOH/g以上、190mgKOH/g以上、又は195mgKOH/g以上とすることが好ましく、また、300mgKOH/g以下、250mgKOH/g以下、220mgKOH/g以下、210mgKOH/g以下、又は205mgKOH/g以下とすることが好ましい。
なお、本明細書において、酸価は、JIS K2501:2003(指示薬光度滴定法)に準拠して測定した値を意味し、水酸基価は、JIS K0070:1992に準拠して測定した値を意味し、けん化価は、JIS K2503:1996に基づいて測定した値を意味する。
【0050】
本発明の一態様の水溶性金属加工油剤において、熱安定性及び耐腐敗性に優れ、長期間にわたり性能がより維持できる金属加工油を調製可能な水溶性金属加工油剤とする観点から、成分(A)に由来する塩基価(アミン価)と、成分(B)に由来する酸価との比[(A)/(B)]は、0.50以上、0.60以上、0.70以上、0.80以上、0.90以上、1.00以上、1.10以上、1.20以上、1.30以上、1.40以上、1.50以上、1.60以上、1.70以上、1.80以上、1.90以上、2.00以上、2.20以上、2.40以上、2.50以上、2.60以上、2.80以上、又は3.00以上とすることが好ましく、また、10.0以下、9.0以下、8.0以下、7.0以下、6.5以下、6.0以下、5.5以下、5.0以下、4.5以下、4.0以下、又は3.5以下とすることが好ましい。
【0051】
<非イオン界面活性剤(C)>
本発明の一態様の水溶性金属加工油剤は、さらに非イオン界面活性剤(C)を含有することが好ましい。成分(C)を含有することで、乳化安定性及び加工性をより向上させた金属加工液となり得る水溶性金属加工油剤とすることができる。
なお、本発明の一態様の水溶性金属加工油剤において、成分(C)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0052】
上記観点から、本発明の一態様の水溶性金属加工油剤において、成分(C)の含有量は、当該水溶性金属加工油剤の全量(100質量%)基準で、0.10質量%以上、0.30質量%以上、0.50質量%以上、0.70質量%以上、1.00質量%以上、1.20質量%以上、1.50質量%以上、1.70質量%以上、2.00質量%以上、2.20質量%以上、2.50質量%以上、又は2.70質量%以上とすることが好ましく、また、15.0質量%以下、12.0質量%以下、10.0質量%以下、8.0質量%以下、6.0質量%以下、5.0質量%以下、4.5質量%以下、又は4.0質量%以下とすることが好ましい。
【0053】
上記観点から、本発明の一態様の水溶性金属加工油剤において、成分(C)の含有量は、当該水溶性金属加工油剤の水を除く全量(100質量%)基準で、0.20質量%以上、0.40質量%以上、0.60質量%以上、0.80質量%以上、1.00質量%以上、1.20質量%以上、1.50質量%以上、1.70質量%以上、2.00質量%以上、2.20質量%以上、2.50質量%以上、2.70質量%以上、又は3.00質量%以上とすることが好ましく、また、15.0質量%以下、12.0質量%以下、10.0質量%以下、8.0質量%以下、6.0質量%以下、5.0質量%以下、4.5質量%以下、又は4.0質量%以下とすることが好ましい。
【0054】
本発明の一態様で用いる成分(C)のHLBは、乳化安定性及び加工性をより向上させた金属加工液となり得る水溶性金属加工油剤とする観点から、好ましくは6.0以上、より好ましくは7.0以上、更に好ましくは8.0以上、より更に好ましくは9.0以上、特に好ましくは10.0以上であり、また、18.0以下であり、好ましくは17.0以下、より好ましくは16.0以下、更に好ましくは15.0以下、より更に好ましくは14.5以下である。
なお、本明細書において、HLBは、グリフィン法により算出された値を意味する。
【0055】
本発明の一態様で用いる成分(C)としては、例えば、アルキレングリコール、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアリールエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミン(ココアミンアルキレンオキサイド付加物)、アルキルフェノールアルキレンオキサイド付加物、高級アルコールアルキレンオキサイド付加物、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、グリセリン及びペンタエリスリトールの脂肪酸エステル、ショ糖の脂肪酸エステル、多価アルコールのポリオキシアルキレン付加物の脂肪酸エステル、アルキルポリグリコシド、脂肪酸アルカノールアミド等が挙げられる。
【0056】
これらの中でも、乳化安定性及び加工性をより向上させた金属加工液となり得る水溶性金属加工油剤とする観点から、本発明の一態様で用いる成分(C)は、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル及びポリオキシアルキレンアルキルアミンから選ばれる1種以上を含むことが好ましい。
ポリオキシアルキレンアルキルエーテル及びポリオキシアルキレンアルキルアミンの合計含有割合は、水溶性金属加工油剤に含まれる成分(C)の全量(100質量%)基準で、好ましくは50~100質量%、より好ましくは70~100質量%、更に好ましくは80~100質量%、より更に好ましくは90~100質量%、特に好ましくは95~100質量%である。
【0057】
<成分(D):基油>
本発明の水溶性金属加工油剤は、さらに基油(D)を含有することが好ましい。成分(D)を含有することで、加工性をより向上させた金属加工液となり得る水溶性金属加工油剤とすることができる。
なお、本発明の一態様で用いる成分(D)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0058】
本発明の一態様の水溶性金属加工油剤において、成分(D)の含有量は、当該水溶性金属加工油剤の全量(100質量%)基準で、0.01質量%以上、0.1質量%以上、1.0質量%以上、3.0質量%以上、5.0質量%以上、10.0質量%以上、20.0質量%以上、25.0質量%以上、30.0質量%以上、35.0質量%以上、又は40.0質量%以上としてもよく、また、80質量%以下、70質量%以下、65質量%以下、60質量%以下、55質量%以下、50質量%以下、45質量%以下、40質量%以下、又は35質量%以下としてもよい。
【0059】
なお、JIS K2241:2017で規定する、A1種に分類されるエマルション型の油剤とする場合、成分(A)の含有量は、当該油剤の全量(100質量%)基準で、10質量%以上、15質量%以上、20質量%以上、30質量%以上、40質量%以上、45質量%以上、又は50質量%以上としてもよい。
【0060】
JIS K2241:2017で規定する、A2種に分類されるソルブル型の油剤とする場合、成分(A)の含有量は、当該油剤の全量(100質量%)基準で、60質量%以下、50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、25質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、又は10質量%以下としてもよい。
【0061】
また、本発明の一態様の水溶性金属加工油剤において、成分(D)の含有量は、当該水溶性金属加工油剤の水を除く全量(100質量%)基準で、0.01質量%以上、0.1質量%以上、1.0質量%以上、3.0質量%以上、5.0質量%以上、10.0質量%以上、20.0質量%以上、25.0質量%以上、30.0質量%以上、35.0質量%以上、又は40.0質量%以上としてもよく、また、80質量%以下、70質量%以下、65質量%以下、60質量%以下、55質量%以下、50質量%以下、45質量%以下、40質量%以下、又は35質量%以下としてもよい。
【0062】
なお、JIS K2241:2017で規定する、A1種に分類されるエマルション型の油剤とする場合、成分(D)の含有量は、当該油剤の水を除く全量(100質量%)基準で、10質量%以上、15質量%以上、20質量%以上、30質量%以上、40質量%以上、45質量%以上、又は50質量%以上としてもよい。
【0063】
また、JIS K2241:2017で規定する、A2種に分類されるソルブル型の油剤とする場合、成分(D)の含有量は、当該油剤の水を除く全量(100質量%)基準で、60質量%以下、50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、25質量%以下、又は20質量%以下としてもよい。
【0064】
本発明の一態様で用いる成分(D)としては、鉱油及び合成油から選ばれる1種以上が挙げられる。
鉱油としては、例えば、パラフィン系原油、中間基系原油、ナフテン系原油等の原油を常圧蒸留して得られる常圧残油;これらの常圧残油を減圧蒸留して得られる留出油;当該留出油を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、接触脱ろう、及び水素化精製等の精製処理を1つ以上施して得られる精製油;等が挙げられる。
【0065】
合成油としては、例えば、α-オレフィン単独重合体、又はα-オレフィン共重合体(例えば、エチレン-α-オレフィン共重合体等の炭素数8~14のα-オレフィン共重合体)等のポリα-オレフィン;イソパラフィン;ポリオールエステル、二塩基酸エステル、リン酸エステル等のエステル系油;ポリフェニルエーテル等のエーテル系油;アルキルベンゼン;アルキルナフタレン;天然ガスからフィッシャー・トロプシュ法等により製造されるワックス(GTLワックス(Gas To Liquids WAX))を異性化することで得られる合成油(GTL)等が挙げられる。
【0066】
本発明の一態様で用いる成分(D)の40℃における動粘度は、加工性に優れた金属加工液となり得る水溶性金属加工油剤とする観点から、好ましくは2.0~150mm2/s、より好ましくは3.0~120mm2/s、更に好ましくは5.0~100mm2/s、より更に好ましくは6.0~90mm2/s、特に好ましくは7.0~80mm2/sである。
【0067】
<成分(E):水>
本発明の一態様の水溶性金属加工油剤は、さらに水(E)を含有してもよい。水を含有する水溶性金属加工油剤とすることで、難燃性を付与して非危険物とし、保管時の取扱性を良好とすることができる。
本発明の一態様で用いる成分(E)である水としては、特に限定されず、例えば、蒸留水、イオン交換水、水道水、工業用水等のいずれであってもよい。
【0068】
本発明の一態様の水溶性金属加工油剤において、成分(E)の含有量は、当該水溶性金属加工油剤中の水以外の成分の全量100質量部に対して、400質量部以下であるが、好ましくは1~350質量部、より好ましくは2~300質量部、更に好ましくは3~250質量部、より更に好ましくは5~200質量部である。
なお、JIS K2241:2017で規定する、A1種に分類されるエマルション型の油剤とする場合、成分(E)の含有量は、当該水溶性金属加工油剤中の水以外の成分の全量100質量部に対して、150質量部以下、100質量部以下、70質量部以下、50質量部以下、40質量部以下、30質量部以下、20質量部以下、又は15質量部以下としてもよく、また、下限は上記のとおりである。
また、JIS K2241:2017で規定する、A2種に分類されるソルブル型の油剤とする場合、成分(E)の含有量は、当該水溶性金属加工油剤中の水以外の成分の全量100質量部に対して、10質量部以上、30質量部以上、50質量部以上、60質量部以上、70質量部以上、80質量部以上、90質量部以上、又は100質量部以上としてもよく、また、上限は上記のとおりである。
【0069】
本発明の一態様の水溶性金属加工油剤において、成分(E)の含有量は、当該水溶性金属加工油剤の全量(100質量%)基準で、好ましくは1~99質量%、より好ましくは2~90質量%、更に好ましくは3~85質量%、より更に好ましくは5~80質量%である。
なお、JIS K2241:2017で規定する、A1種に分類されるエマルション型の油剤とする場合、成分(E)の含有量は、当該水溶性金属加工油剤の全量(100質量%)基準で、70質量%以下、60質量%以下、50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、25質量%以下、20質量%以下、又は15質量%以下としてもよく、また、下限は上記のとおりである。
また、JIS K2241:2017で規定する、A2種に分類されるソルブル型の油剤とする場合、成分(E)の含有量は、当該水溶性金属加工油剤の全量(100質量%)基準で、10質量%以上、15質量%以上、20質量%以上、25質量部以上、30質量%以上、35質量%以上、40質量%以上、45質量部以上、又は50質量%以上としてもよく、また、上限は上記のとおりである。
【0070】
<ポリアルキレングリコール(Y1)、ポリオキシアルキレン基を有する非水溶性化合物(Y2)>
本発明の一態様の水溶性金属加工油剤において、重量平均分子量が12,000以下のポリアルキレングリコール(Y1)(以下、「成分(Y1)」ともいう)及びポリオキシアルキレン基を有する非水溶性化合物(Y2)(以下、「成分(Y2)」ともいう)の合計含有量は、前記水溶性金属加工油剤の全量(100質量%)基準で、70質量%未満、60質量%未満、50質量%未満、40質量%未満、30質量%未満、20質量%未満、15質量%未満、10質量%未満、又は5.0質量%未満としてもよい。
【0071】
本発明の一態様の水溶性金属加工油剤において、成分(Y1)の含有量は、当該水溶性金属加工油剤の全量(100質量%)基準で、45.0質量%未満、40.0質量%未満、35.0質量%未満、30.0質量%未満、25.0質量%未満、20.0質量%未満、15.0質量%未満、10.0質量%未満、又は5.0質量%未満としてもよい。
【0072】
本発明の一態様の水溶性金属加工油剤において、成分(Y2)の含有量は、当該水溶性金属加工油剤の全量(100質量%)基準で、40.0質量%未満、30.0質量%未満、20.0質量%未満、15.0質量%未満、10.0質量%未満、5.0質量%未満、1.0質量%未満、0.1質量%未満、0.01質量%未満、0.001質量%未満、0.0001質量%未満、又は0.00001質量%未満としてもよい。
【0073】
<他の各種添加剤>
本発明の一態様の水溶性金属加工油剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、上記成分(A)~(E)以外の他の各種添加剤をさらに含有してもよい。
そのような他の各種添加剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、石油スルホネート、極圧剤、金属不活性化剤、乳化助剤、抗菌剤、消泡剤、酸化防止剤、油性剤等が挙げられる。
なお、これらの各種添加剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0074】
なお、本発明の一態様の水溶性金属加工油剤において、これらの各種添加剤のそれぞれの含有量としては、各成分の種類及び機能によって適宜設定されるが、当該水溶性金属加工油剤の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.01~40質量%、より好ましくは0.07~30質量%、更に好ましくは0.1~20質量%である。
【0075】
なお、本発明の一態様の水溶性金属加工油剤において、これらの各種添加剤のそれぞれの含有量としては、各成分の種類及び機能によって適宜設定されるが、当該水溶性金属加工油剤の全量(100質量%)基準で、0.001質量%以上、0.01質量%以上、0.1質量%以上、1.0質量%以上、又は3.0質量%以上としてもよく、また、20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下、5.0質量%以下、又は1.0質量%以下としてもよい。
【0076】
また、本発明の一態様の水溶性金属加工油剤において、これらの各種添加剤のうち、特定の添加剤を実質的に含有しなくてもよい。なお、「実質的に含有しない」とは、対象となる添加剤を特定の意図をもって添加する態様を除外するものであって、不可避的に含有する態様までを除外するものではない。
特定の添加剤を実質的に含有しない場合の、当該添加剤の含有量としては、前記水溶性金属加工油剤の全量(100質量%)基準で、0.1質量%未満、0.01質量%未満、0.001質量%未満、0.0001質量%未満、又は0.00001質量%未満としてもよい。
【0077】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、α-オレフィンスルホン酸、及びこれらの塩等が挙げられる。
なお、アニオン性界面活性剤の酸価は、好ましくは20~250mgKOH/g、より好ましくは30~200mgKOH/g、更に好ましくは40~190mgKOH/g、より更に好ましくは50~180mgKOH/gである。
カチオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩等が挙げられる。
【0078】
石油スルホネートとしては、例えば、カルシウムスルホネート、ナトリウムスルホネート、マグネシウムスルホネート等が挙げられる。
【0079】
極圧剤としては、例えば、塩素化パラフィン、塩素化脂肪酸、塩素化脂肪油等の塩素系極圧剤;リン酸エステル、亜リン酸エステル、チオリン酸エステル、及びこれらの塩、ホスフィン系、リン酸トリクレジル等のリン系極圧剤;硫化オレフィン、硫化ラード、アルキルポリサルファイド、硫化脂肪酸等の硫黄系極圧剤;等が挙げられる。
【0080】
金属不活性化剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール、イミダゾリン、ピリミジン誘導体、及びチアジアゾール等が挙げられる。
【0081】
乳化助剤としては、例えば、オレイン酸メチル、オレイン酸エチル、オレイン酸プロピル等の不飽和脂肪酸エステル;2-フェノキシエタノール、2-フェニルエチルアルコールの芳香族アルコール;等が挙げられる。
【0082】
抗菌剤としては、例えば、イソチアゾリン系化合物、トリアジン系化合物、アルキルベンゾイミダゾール系化合物、金属ピリチオン塩等が挙げられる。
【0083】
消泡剤としては、例えば、シリコーン系消泡剤、フルオロシリコーン系消泡剤、ポリアクリレート等が挙げられる。
【0084】
酸化防止剤としては、例えば、アルキル化ジフェニルアミン、フェニルナフチルアミン、アルキル化フェニルナフチルアミン等のアミン系酸化防止剤;2、6-ジ-t-ブチルフェノール、4,4’-メチレンビス(2,6ージーtーブチルフェノール)、イソオクチル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、n-オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート等のフェノール系酸化防止剤;等が挙げられる。
【0085】
油性剤としては、例えば、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール等のアルコール類が挙げられる。
【0086】
<水溶性金属加工油剤の製造方法>
本発明の一態様の水溶性金属加工油剤の製造方法としては、特に制限はなく、上述の成分(A)及び(B)、必要に応じて、成分(C)~(E)及び他の各種添加剤を配合する工程を有する、方法であることが好ましい。各成分の配合の順序は適宜設定することができる。
【0087】
〔金属加工液の形態〕
本発明の一態様の金属加工液は、上述の本発明の一態様の金属加工油剤を原液とし、当該金属加工油剤に希釈水を配合してなるものである。
希釈水としては、例えば、蒸留水、イオン交換水、水道水、工業用水等のいずれであってもよい。
【0088】
金属加工液を調製する際の希釈水の配合量は、前記水溶性金属加工油剤の水以外の成分の全量100質量部に対して、400質量部超であるが、所望の希釈濃度となるように適宜調整することが好ましい。
本発明の一態様の金属加工液の希釈濃度としては、好ましくは1~50体積%、より好ましくは3~40体積%、更に好ましくは5~20体積%である。
なお、本明細書において、上記の「金属加工液の希釈濃度」は、下記式から算出された値を意味する。
・「金属加工液の希釈濃度(体積%)」=〔希釈前の金属加工油剤としての体積〕/[〔希釈前の金属加工油剤としての体積〕+〔希釈水の体積〕]×100
【0089】
〔金属加工液の用途、金属加工方法〕
本発明の好適な一態様の金属加工液は、従来の金属加工液に比べて、熱安定性及び耐腐敗性に優れ、長期間にわたり性能がより維持できる。そのため、本発明の好適な一態様の金属加工液は、金属加工用途において繰り返し使用できるため、油剤の消費を抑制することができる。
【0090】
本発明の一態様の金属加工液を用いて加工する被加工材としては、特に制限は無いが、鉄、チタン、アルミニウム、チタン合金、合金鋼、ニッケル基合金、ニオブ合金、タンタル合金、モリブデン合金、タングステン合金、ステンレス鋼、アルミニウム合金、及び高マンガン鋼からなる群より選ばれる金属からなる被加工材に特に好適である。これらの中でも、特に、鉄又はアルミニウムを少なくとも含む部材を有する被加工材に適している。
【0091】
そのため、本発明は、下記〔1〕及び〔2〕も提供し得る。
〔1〕上述の本発明の一態様の金属加工液を金属からなる被加工材の加工に適用する、使用方法。
〔2〕上述の本発明の一態様の金属加工液を適用して、金属からなる被加工材を加工する、金属加工方法。
【0092】
上記〔1〕及び〔2〕に記載の被加工材は、上述のとおりであるが、例えば、鉄又はアルミニウムを少なくとも含む部材を有する被加工材が好適である。
【0093】
上記〔1〕及び〔2〕において、被加工材の加工としては、例えば、切削加工、研削加工、打抜き加工、研摩、絞り加工、抽伸加工、圧延加工等が挙げられる。
なお、上記〔1〕の使用方法、及び、上記〔2〕の金属加工方法において、金属加工液は、上述の本発明の一態様の水溶性金属加工油剤に希釈水を配合した上で、被加工材に供給して、被加工材に接触させて使用される。金属加工液は、被加工材と加工具との間を潤滑する。更には、切り屑の除去、被加工材の錆止め、工具及び被加工材の冷却等のためにも使用される。
【実施例0094】
次に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
なお、以下の実施例において、下記の物性値の測定方法及び算出方法は以下に示すとおりである。
(1)アミン化合物の揮発率
測定対象となるアミン化合物20gを直径70mmのガラス製シャーレ(ケニス株式会社製)に電子天秤で秤量し、蓋をせずに、爆発ベント付き精密恒温機(ファインオーブン)(ヤマト科学株式会社製、型式「DF412S」)に設置した。そして、ベント全開で、25℃から50℃まで30分間かけて昇温し、50℃で48時間加熱し、加熱後のアミン化合物の質量を電子天秤で測定し、下記式から算出した。
・揮発率(%)=([加熱前のアミン化合物の質量(20g)]-[48時間加熱後のアミン化合物の質量(g)])/[加熱前のアミン化合物の質量(20g)]×100
(2)塩基価(塩酸法)
JIS K2501:2003(塩酸法)に準拠して測定した。
(3)酸価(指示薬光度滴定法)
JIS K2501:2003(指示薬光度滴定法)に準拠して測定した。
(4)HLB
グリフィン法に基づいて算出した。
(5)動粘度、粘度指数
JIS K2283:2000に準拠して測定及び算出した。
【0095】
実施例1~19、比較例1~20
表1~4に示す種類の各種成分を、各表に示す配合量にて添加して混合して、水溶性金属加工油剤をそれぞれ調製した。なお、調製した水溶性金属加工油剤に含まれる、重量平均分子量(Mw)12,000以下のポリアルキレングリコール(Y1)及びポリオキシアルキレン基を有する非水溶性化合物(Y2)の含有量は共に「0質量%」であった。
また、当該水溶性金属加工油剤の調製に使用した、各成分の詳細は以下のとおりである。
【0096】
<成分(A)>
・「2-(2-アミノエトキシ)エタノール」:第1級アミン、揮発率=4.00%、全塩基価=534mgKOH/g。
・「ジイソプロパノールアミン」:第2級アミン、揮発率=11.00%、全塩基価=365mgKOH/g。
・「ジベンジルアミン」:第2級アミン、揮発率=2.00%、全塩基価=279mgKOH/g。
・「N-メチルジエタノールアミン」:第3級アミン、揮発率=7.00%、全塩基価=434mgKOH/g。
・「トリイソプロパノールアミン」:第3級アミン、揮発率=8.00%、全塩基価=249mgKOH/g。
・「シクロヘキシルジエタノールアミン」:第3級アミン、揮発率=0.10%、全塩基価=297mgKOH/g。
・「POEアルキルアミン(EO:2)」:第3級アミン、ポリオキシエチレン(2EO)アルキルアミン、揮発率=0.10%、全塩基価=200mgKOH/g。
【0097】
<成分(X)>
・「モノイソプロパノールアミン」:第1級アミン、揮発率=100.00%、全塩基価=747mgKOH/g。
・「2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール」:第1級アミン、揮発率=100.00%、全塩基価=565mgKOH/g。
・「N-メチルエタノールアミン」:第1級アミン、揮発率=100.00%、全塩基価=747mgKOH/g。
・「ジシクロヘキシルアミン」:第1級アミン、揮発率=61.00%、全塩基価=309mgKOH/g。
・「N-メチルジシクロヘキシルアミン」:第1級アミン、揮発率=28.00%、全塩基価=287mgKOH/g。
【0098】
<成分(B)>
・「脂肪酸混合物」:主にドデカン二酸、ネオデカン酸、トール油脂肪酸及びリシノレイン酸重合脂肪酸(ひまし油重合脂肪酸)を含む脂肪酸混合物、酸価=22.0mgKOH/g、水酸基価=1.1mgKOH/g。
<成分(C)>
・「ポリオキシアルキレンアルキルエーテル」:非イオン性界面活性剤、HLB=12.7。
<成分(D)>
・「パラフィン系鉱油」:40℃動粘度=7.117mm2/s、粘度指数=109のパラフィン系鉱油。
・「PAO」:40℃動粘度=31.0mm2/s、粘度指数=132のポリαオレフィン系合成油。
・「エステル系合成油」:40℃動粘度=49.45mm2/s、粘度指数=189のトリメチロールプロパントリオレエート。
<成分(E)>
・水:イオン交換水
<他の添加剤>
・「ベンゾトリアゾール」:金属不活性化剤
・「オレイルアルコール」:乳化助剤
・「1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オン」:抗菌剤
・「シリコーン系消泡剤」
【0099】
調製した水溶性金属加工油剤を用いて、以下の評価を行った。これらの結果を表1~4に示す。
【0100】
(1)ヒューム呈色試験
80℃に熱した冷間圧延鋼板(SPCC-SD)の上に、水溶性金属加工油剤を約0.1mL滴下し、容量50mLのガラス瓶の開口部を、滴下した油剤を覆うように冷間圧延鋼板上に接するように設置し、この状態で1分間静置して、油剤のヒューム成分を捕集した。その後、ガラス瓶に捕集されたヒューム成分に、チモールブルー水溶液(アルカリ性で黄色から青色に呈色)を添加して呈色の有無を確認し、以下の基準でアルカリ成分の揮発性について評価した。
・A:呈色せず、アミン化合物を含むアルカリ成分の揮発は確認されなかった。
・F:青色に呈色し、アミン化合物を含むアルカリ成分の揮発が確認された。
【0101】
(2)熱安定性試験
水溶性金属加工油剤を水で希釈して調製した、油剤濃度が5容量%の金属加工液を試験液とした。
直径70mmのシャーレに上記試験液20gを滴下し、シャーレの重さを測定した。そして、シャーレに蓋をしない状態で、50℃で24時間(1日間)の環境下で加熱をし、加熱による試験液の重量減少分のイオン交換水を添加した後に、pHメーター(製品名「HM-25R」、東亜ディーケーケー株式会社製)を用いて試験液のpHを測定した。このpHの値を「24時間加熱後のpH」として、表1~4に記載している。
また、上記の「50℃で24時間の加熱」及び「質量減少分のイオン交換水の添加」を7日間(加熱時間168時間)繰り返した後、試験液のpHを測定した。このpHの値を「168時間加熱後のpH」として、表1~4に記載している。
なお、加熱時間が168時間に至る前に、試験液が分離してしまいpHの測定ができなくなった場合は「測定不可」とし、熱安定性が劣る水溶性金属加工油剤と判断し、その後の操作をせずに終了した。
「24時間加熱後のpH」と「168時間加熱後のpH」との差が小さいほど、熱安定性に優れた水溶性金属加工油剤であるといえる。
【0102】
(3)耐腐敗性試験
[試験液の調製]
水溶性金属加工油剤を水で希釈して調製した、油剤濃度3容量%の金属加工液を「熱劣化前試験液」とした。
また、上記の熱劣化前試験液100mLを、50℃で48時間加熱し、重量減少分のイオン交換水を添加した金属加工液を「熱劣化後試験液」とした。なお、48時間の加熱により試験液が分離してしまい、「熱劣化後試験液」の調製ができなかった場合は「測定不可」とし、「熱劣化後試験液」を用いた以下の耐腐敗性試験は行わずに終了した。
[耐腐敗性試験]
上記の「熱劣化前試験液」又は「熱劣化後試験液」100mLに、下記の腐敗液Aを5mL及び腐敗液Bを0.5mL添加し、30℃、150rpmで1週間(7日間)の振とう培養を行った。
1週間の培養後に、試験液の生菌数を測定し、細菌数が106個/mL以上である場合は試験を終了した。細菌数が106個/mL未満である場合は、さらに腐敗液Aを2.5mL及び腐敗液Bを0.25mL添加し、さらに1週間(7日間)の振とう培養を行い、生菌数を測定した。各試験液において、細菌数が106個/mL以上となる週数を表1~4に記載している。当該週数が多いほど、耐腐敗性に優れた水溶性金属加工油剤であるといえる。
【0103】
腐敗試験条件及び生菌数の測定方法は、以下のとおりである。
(腐敗試験条件)
・培養条件:FC200ドライ切粉を3g添加し、30℃、150rpmで振とうして培養。
・腐敗液A:腐敗劣化したエマルション型切削液に、SCD培地「ダイゴ」(製品名、日本製薬株式会社製)を加え、72時間エアレーションして活性化させた溶液。
・腐敗液B:腐敗劣化したエマルション型切削液に、ポテトデキストロース寒天培地「ダイゴ」(製品名、日本製薬株式会社製)を加え、72時間エアレーションして活性化させた溶液。
(生菌数の測定方法)
総細菌数測定器具「サンアイバイオチェッカーTTC」(製品名、三愛オブリ株式会社製)を用いて、1mL中の細菌数を測定した。
【0104】
【0105】
【0106】
【0107】
【0108】
表1及び表2から、実施例1~20の水溶性金属加工油剤から調製した金属加工液は、アルカリ成分の揮発が抑制されており、加熱を行ってもpHが維持されており、耐腐食性も良好である結果となった。そのため、これらの水溶性金属加工油剤から得られる金属加工液は、加熱環境下でも長期間にわたり性能を維持し得ると考えられる。
一方で、表3及び表4から、比較例1~4の水溶性金属加工油剤から調製した金属加工液は、アルカリ成分の揮発の抑制が不十分な油剤もあり、また、加熱環境下でのpHの低下や耐腐敗性の低下が見られた。