(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176739
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】通信システム、通信装置、プログラム及び通信方法
(51)【国際特許分類】
H04W 28/18 20090101AFI20241212BHJP
H04W 24/10 20090101ALI20241212BHJP
H04W 4/44 20180101ALI20241212BHJP
G08G 1/09 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
H04W28/18
H04W24/10
H04W4/44
G08G1/09 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095515
(22)【出願日】2023-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【弁理士】
【氏名又は名称】来間 清志
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】矢板 信
(72)【発明者】
【氏名】椎野 雅人
(72)【発明者】
【氏名】杉村 竹三
(72)【発明者】
【氏名】黒田 政彦
【テーマコード(参考)】
5H181
5K067
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181BB04
5H181BB13
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC12
5H181CC14
5H181CC27
5H181EE12
5H181FF13
5H181FF27
5H181JJ28
5H181LL09
5H181MC19
5H181MC27
5K067AA33
5K067DD11
5K067DD43
5K067EE02
5K067EE10
(57)【要約】
【課題】無線でのデータ伝送の確実性を上げることができる通信システム、通信装置、プログラム及び通信方法を提供すること。
【解決手段】通信システム100は、基地局2と車載装置1と、を備え、車載装置1は、基地局2からリファレンス信号を取得するリファレンス信号取得部103と、リファレンス信号に基づいて伝搬路状態を判定する伝搬路状態判定部104と、判定された伝搬路状態に基づいて、伝搬路状態に関するCQIリポートを生成し、基地局2に送信するCQIリポート送信処理部116と、基地局2からのCQIリポートが示す伝搬路状態に対応する通信モードで送信されたデータを受信する受信処理部102と、を備え、基地局2を介して所定のデータをダウンロードする場合、CQIリポート送信処理部116は、実際の伝搬路状態よりも状態が低い伝搬路状態を示すCQIリポートを生成し、基地局2に送信する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互にデータを無線で伝送する第1通信装置と第2通信装置と、を備える通信システムであって、
前記第1通信装置は、
前記第2通信装置とのデータの伝搬路の状態である伝搬路状態を判定するための基準信号を前記第2通信装置に送信する基準信号送信部を備え、
前記第2通信装置は、
前記第1通信装置から前記基準信号を取得する基準信号取得部と、
取得した前記基準信号に基づいて前記伝搬路状態を判定する判定部と、
前記判定部によって判定された前記伝搬路状態に基づいて、前記伝搬路状態に関する伝搬路情報を生成し、当該伝搬路情報を前記第1通信装置に送信する伝搬路情報送信部と、
前記第1通信装置からの前記伝搬路情報が示す前記伝搬路状態に対応する通信モードで送信されたデータを受信する受信処理部と、を備え、
前記第1通信装置を介して所定のデータをダウンロードする場合、前記伝搬路情報送信部は、前記判定部によって判定された実際の伝搬路状態よりも状態が低い伝搬路状態を示す伝搬路情報を生成し、当該伝搬路情報を前記第1通信装置に送信する通信システム。
【請求項2】
前記第2通信装置は、複数の運転方式で運転可能な移動体に搭載される車載装置であり、
前記移動体の前記運転方式が所定の運転方式に設定されているか否かを判断する運転方式判断部を更に備え、
前記伝搬路情報送信部は、前記運転方式判断部によって前記移動体の前記運転方式が前記所定の運転方式に設定されていると判断された場合、前記第1通信装置を介して所定のデータをダウンロードする場合に相当すると判断する請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
前記第2通信装置は、移動体に搭載される車載装置であり、
前記移動体の移動速度を少なくとも含む移動情報を取得する移動情報取得部を更に備え、
前記伝搬路情報送信部は、前記移動情報を加味して、前記伝搬路情報を生成する請求項1に記載の通信システム。
【請求項4】
前記第2通信装置は、移動体に搭載される車載装置であり、
前記移動体の周囲の気象情報を取得する気象情報取得部を更に備え、
前記伝搬路情報送信部は、前記気象情報を加味して、前記伝搬路情報を生成する請求項1に記載の通信システム。
【請求項5】
前記第2通信装置は、移動体に搭載される車載装置であり、
前記移動体が移動する予定の移動経路に関する経路情報を取得する経路情報取得部を更に備え、
前記伝搬路情報送信部は、前記経路情報を加味して、前記伝搬路情報を生成する請求項1に記載の通信システム。
【請求項6】
特定の通信装置との間でデータを無線で伝送する通信装置であって、
前記特定の通信装置とのデータの伝搬路の状態である伝搬路状態を判定するための基準信号を取得する基準信号取得部と、
取得した前記基準信号に基づいて前記伝搬路状態を判定する判定部と、
前記判定部によって判定された前記伝搬路状態に基づいて、前記伝搬路状態に関する伝搬路情報を生成し、当該伝搬路情報を前記特定の通信装置に送信する伝搬路情報送信部と、
前記特定の通信装置からの前記伝搬路情報が示す前記伝搬路状態に対応する通信モードで送信されたデータを受信する受信処理部と、を備え、
前記特定の通信装置を介して所定のデータをダウンロードする場合、前記伝搬路情報送信部は、前記判定部によって判定された実際の前記伝搬路状態よりも状態が低い前記伝搬路状態を示す前記伝搬路情報を生成し、当該伝搬路情報を前記特定の通信装置に送信する通信装置。
【請求項7】
特定の通信装置との間でデータを無線で伝送する通信装置に含まれるコンピュータに、
前記特定の通信装置とのデータの伝搬路の状態である伝搬路状態を判定するための基準信号を取得する取得工程と、
取得した前記基準信号に基づいて前記伝搬路状態を判定する判定工程と、
前記判定工程で判定された前記伝搬路状態に基づいて、前記伝搬路状態に関する伝搬路情報を生成し、当該伝搬路情報を前記特定の通信装置に送信する伝搬路情報送信工程と、
前記特定の通信装置からの前記伝搬路情報が示す前記伝搬路状態に対応する通信モードで送信されたデータを受信する受信工程と、を実行させ、
前記伝搬路情報送信工程では、前記特定の通信装置を介して所定のデータをダウンロードする場合、前記判定工程で判定された実際の前記伝搬路状態よりも状態が低い前記伝搬路状態を示す前記伝搬路情報を生成し、当該伝搬路情報を前記特定の通信装置に送信する処理が実行される、プログラム。
【請求項8】
特定の通信装置との間でデータを無線で伝送する通信装置が実行する通信方法であって、
前記特定の通信装置とのデータの伝搬路の状態である伝搬路状態を判定するための基準信号を取得する取得工程と、
取得した前記基準信号に基づいて前記伝搬路状態を判定する判定工程と、
前記判定工程で判定された前記伝搬路状態に基づいて、前記伝搬路状態に関する伝搬路情報を生成し、当該伝搬路情報を前記特定の通信装置に送信する伝搬路情報送信工程と、
前記特定の通信装置からの前記伝搬路情報が示す前記伝搬路状態に対応する通信モードで送信されたデータを受信する受信工程と、を含み、
前記伝搬路情報送信工程では、前記特定の通信装置を介して所定のデータをダウンロードする場合、前記判定工程で判定された実際の前記伝搬路状態よりも状態が低い前記伝搬路状態を示す前記伝搬路情報を生成し、当該伝搬路情報を前記特定の通信装置に送信する処理が実行される通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信システム、通信装置、プログラム及び通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車等の移動体の運転支援や遠隔制御、自動運転等のために行うデータ伝送や通話時における音声や画像等による端末間の通信等の通信品質を向上させるための技術が開発されている。例えば特許文献1には、無線通信端末間のチャネル情報の推定精度が低下するので、一方の無線通信端末からもう一方の無線通信端末へのデータ送信に用いる変調方式や符号化率からなる変調モードを送信ビットが低いものに変更して送信する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えば自動車等の移動体の遠隔制御において、安全性や実用性の点から、サーバ装置等から基地局を介して送信される制御信号等を確実に移動体に届けることが重要である。特許文献1では、干渉信号によりパケットエラーが生じる可能性を減らすことができるとされているものの、通信装置間におけるデータ伝送をより確実に行うという点で改善の余地があった。
【0005】
本発明は、無線でのデータ伝送の確実性を上げることができる通信システム、通信装置、プログラム及び通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)通信システムは、相互にデータを無線で伝送する第1通信装置と第2通信装置と、を備える通信システムであって、前記第1通信装置は、前記第2通信装置とのデータの伝搬路の状態である伝搬路状態を判定するための基準信号を前記第2通信装置に送信する基準信号送信部を備え、前記第2通信装置は、前記第1通信装置から前記基準信号を取得する基準信号取得部と、取得した前記基準信号に基づいて前記伝搬路状態を判定する判定部と、前記判定部によって判定された前記伝搬路状態に基づいて、前記伝搬路状態に関する伝搬路情報を生成し、当該伝搬路情報を前記第1通信装置に送信する伝搬路情報送信部と、前記第1通信装置からの前記伝搬路情報が示す前記伝搬路状態に対応する通信モードで送信されたデータを受信する受信処理部と、を備え、前記第1通信装置を介して所定のデータをダウンロードする場合、前記伝搬路情報送信部は、前記判定部によって判定された実際の伝搬路状態よりも状態が低い伝搬路状態を示す伝搬路情報を生成し、当該伝搬路情報を前記第1通信装置に送信する。
【0007】
(2)(1)に記載の通信システムにおいて、前記第2通信装置は、複数の運転方式で運転可能な移動体に搭載される車載装置であり、前記移動体の前記運転方式が所定の運転方式に設定されているか否かを判断する運転方式判断部を更に備え、前記伝搬路情報送信部は、前記運転方式判断部によって前記移動体の前記運転方式が前記所定の運転方式に設定されていると判断された場合、前記第1通信装置を介して所定のデータをダウンロードする場合に相当すると判断する。
【0008】
(3)(1)又は(2)に記載の通信システムにおいて、前記第2通信装置は、移動体に搭載される車載装置であり、前記移動体の移動速度を少なくとも含む移動情報を取得する移動情報取得部を更に備え、前記伝搬路情報送信部は、前記移動情報を加味して、前記伝搬路情報を生成する。
【0009】
(4)(1)から(3)のいずれか1つに記載の通信システムは、前記第2通信装置は、移動体に搭載される車載装置であり、前記移動体の周囲の気象情報を取得する気象情報取得部を更に備え、前記伝搬路情報送信部は、前記気象情報を加味して、前記伝搬路情報を生成する。
【0010】
(5)(1)から(4)のいずれか1つに記載の通信システムは、前記第2通信装置は、移動体に搭載される車載装置であり、前記移動体が移動する予定の移動経路に関する経路情報を取得する経路情報取得部を更に備え、前記伝搬路情報送信部は、前記経路情報を加味して、前記伝搬路情報を生成する。
【0011】
(6)通信装置は、特定の通信装置との間でデータを無線で伝送する通信装置であって、前記特定の通信装置とのデータの伝搬路の状態である伝搬路状態を判定するための基準信号を取得する基準信号取得部と、取得した前記基準信号に基づいて前記伝搬路状態を判定する判定部と、前記判定部によって判定された前記伝搬路状態に基づいて、前記伝搬路状態に関する伝搬路情報を生成し、当該伝搬路情報を前記特定の通信装置に送信する伝搬路情報送信部と、前記特定の通信装置からの前記伝搬路情報が示す前記伝搬路状態に対応する通信モードで送信されたデータを受信する受信処理部と、を備え、前記特定の通信装置を介して所定のデータをダウンロードする場合、前記伝搬路情報送信部は、前記判定部によって判定された実際の前記伝搬路状態よりも状態が低い前記伝搬路状態を示す前記伝搬路情報を生成し、当該伝搬路情報を前記特定の通信装置に送信する。
【0012】
(7)プログラムは、特定の通信装置との間でデータを無線で伝送する通信装置に含まれるコンピュータに、前記特定の通信装置とのデータの伝搬路の状態である伝搬路状態を判定するための基準信号を取得する取得工程と、取得した前記基準信号に基づいて前記伝搬路状態を判定する判定工程と、前記判定工程で判定された前記伝搬路状態に基づいて、前記伝搬路状態に関する伝搬路情報を生成し、当該伝搬路情報を前記特定の通信装置に送信する伝搬路情報送信工程と、前記特定の通信装置からの前記伝搬路情報が示す前記伝搬路状態に対応する通信モードで送信されたデータを受信する受信工程と、を実行させ、前記伝搬路情報送信工程では、前記特定の通信装置を介して所定のデータをダウンロードする場合、前記判定工程で判定された実際の前記伝搬路状態よりも状態が低い前記伝搬路状態を示す前記伝搬路情報を生成し、当該伝搬路情報を前記特定の通信装置に送信する処理が実行される。
【0013】
(8)通信方法は、特定の通信装置との間でデータを無線で伝送する通信装置が実行する通信方法であって、前記特定の通信装置とのデータの伝搬路の状態である伝搬路状態を判定するための基準信号を取得する取得工程と、取得した前記基準信号に基づいて前記伝搬路状態を判定する判定工程と、前記判定工程で判定された前記伝搬路状態に基づいて、前記伝搬路状態に関する伝搬路情報を生成し、当該伝搬路情報を前記特定の通信装置に送信する伝搬路情報送信工程と、前記特定の通信装置からの前記伝搬路情報が示す前記伝搬路状態に対応する通信モードで送信されたデータを受信する受信工程と、を含み、前記伝搬路情報送信工程では、前記特定の通信装置を介して所定のデータをダウンロードする場合、前記判定工程で判定された実際の前記伝搬路状態よりも状態が低い前記伝搬路状態を示す前記伝搬路情報を生成し、当該伝搬路情報を前記特定の通信装置に送信する処理が実行される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、無線でのデータ伝送の確実性を上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る通信システム及び通信システムを利用する移動体が道路を移動する様子を示す模式図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る通信システムの基地局のハードウェア及び機能ブロックの構成を示すブロック図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る通信システムの車載装置のハードウェア及び機能ブロックの構成を示すブロック図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る通信システムの基地局から車載装置に下り送信データが送信されるまでの流れの一例を示すシーケンス図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る通信システムの車載装置によって実行される安全通信処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態に係る通信システム100について説明する。なお、以下の実施の形態により本発明が限定されるものでない。また、以下の説明において参照する各図は、本開示の内容を理解でき得る程度に形状、大きさ、及び位置関係を概略的に示してあるに過ぎない。即ち、本発明は、各図で例示された形状、大きさ、及び位置関係のみに限定されるものでない。
【0017】
第1実施形態に係る通信システム100の全体的な構成について
図1を参照しながら説明する。
図1は、通信システム100及び通信システム100を利用する移動体4が道路5を移動する様子を示す模式図である。
【0018】
通信システム100は、車載装置(通信装置)1と基地局2との間で無線通信を行うためのシステムである。通信システム100は、車載装置1と、基地局2と通信ネットワークNWを介して通信可能に接続されるサーバ装置3と、を備える。本実施形態では、通信システム100について車両である移動体4に搭載された車載装置1と基地局2との間のデータの伝送を例に説明する。なお、
図1では、車載装置1を搭載した移動体4が基地局2と無線で通信しながら移動方向Xに移動している状態を示している。即ち、車載装置1は、移動体4の移動によって移動方向Xに移動しながら基地局2との間で、無線で通信を行っている。なお、移動体4は、移動せずに、停止しながら基地局2との間で通信を行ってもよい。
【0019】
車載装置1は、例えば、カーナビゲーション、ITS(Intelligent Transportation System)及びV2X通信等を使用する機能を備える。車載装置1は、基地局2にデータを無線で伝送し、基地局2から送信されるデータを受信する。車載装置1と基地局2との間で伝送されるデータの種別、属性は特に限定されない。例えば、伝送されるデータの種別は、道路5上を含む移動体4の周囲の状況を示すデータであってもよく、移動体4の運転を制御するためのデータであってもよく、移動体4に関する情報を示すデータであってもよい。伝送されるデータの属性は、画像データであってもよく、点群データであってもよく、音声データであってもよく、テキストデータであってもよく、信号であってもよい。
【0020】
本実施形態の車載装置1が搭載される移動体4は、複数の運転方式で運転可能である。移動体4に設定される運転方式としては、例えば通常運転方式、自動運転方式等が挙げられる。通常運転方式とは、運転者の操作によって移動体4の駆動が制御されるモードである。自動運転方式には、例えば遠隔制御方式、自律運転方式等が含まれる。遠隔制御方式とは、例えばサーバ装置3等の外部装置からの基地局2等を介して送信される制御信号によって移動体4の駆動が制御されるモードである。自律運転方式とは、移動体4自身が周囲環境に関する情報等に基づいて移動体4の駆動を制御し、自車のみで走行ができるモードである。なお、運転方式は、上述に限定されず、運転者の操作をアシストする方式などがあってもよい。
【0021】
サーバ装置3は、基地局2を介して車載装置1から受信したデータに応じて、車載装置1の運転を制御又は支援するためのデータを生成し、基地局2を介して車載装置1に送信する処理を行う。サーバ装置3は、基地局2及び通信ネットワークNWを介して車載装置1からデータを取得し、該データに応じて車載装置1に返信するための各種データを生成し、基地局2及び通信ネットワークNWを介して車載装置1に送信する。例えばサーバ装置3は、車載装置1から送信された画像データに基づいて、移動体4を遠隔制御するための制御信号を生成し、基地局2及び通信ネットワークNWを介して車載装置1に送信してもよい。
【0022】
基地局2は、無線通信が可能なエリア(以下、通信可能エリア)内を走行する移動体4に搭載された車載装置1との間でデータの伝送を行うとともに、通信ネットワークNWを介してサーバ装置3との間でデータの伝送を行う。基地局2は、例えば車載装置1から移動体4の周囲の状況を示す画像データを受信し、通信ネットワークNWを介して受信した画像データをサーバ装置3に送信する。そして、基地局2は、サーバ装置3からその画像データに基づいて生成された移動体4の制御信号を受信し、受信した制御信号を無線で車載装置1に送信する。
【0023】
ここで、走行する車両等の移動体4に搭載される車載装置1と基地局2との通信では、車載装置1の位置が変化するので、車載装置1と基地局2との間のデータの伝搬路の状態(以下、伝搬路状態という)がリアルタイムで変化する。なお、移動体4が移動しなくても、周囲に他の移動体が増減することによっても、車載装置1と基地局2との間のデータの伝搬路状態がリアルタイムで変化する。例えば、車載装置1から基地局2までの距離の変化や基地局2と通信する他の通信装置の存在による電波の干渉、車載装置1と基地局2との間に存在する障害物の有無等によって伝搬路状態が変化する。このため、車載装置1と基地局2との間の通信が途絶したり、通信品質が低下したりするおそれがある。車両等の移動体4の遠隔制御では、安全性や実用性の点から、基地局2から送信される移動体4の制御信号等を確実に車載装置1に届けることが重要である。本実施形態では、LTEや5Gに代表される無線通信システムにより実現される通信装置間における実質的にリアルタイムでのデータの伝送において、後述する安全通信処理によって通信装置間におけるデータ伝送の確実性を高めることができる。
【0024】
次に、基地局2の機能的構成について説明する。
図2は、基地局2のハードウェア及び機能ブロックの構成を例示するブロック図である。
【0025】
基地局2は、
図2に示すように処理部20と、通信I/F部21と、無線通信部22と、記憶部23と、を備える。
【0026】
通信I/F部21は、基地局2が通信ネットワークNWを介して通信するためのインターフェイスである。基地局2は、通信I/F部21を介してサーバ装置3と通信可能に接続される。
【0027】
無線通信部22は、基地局2が周囲の無線端末装置と無線通信するための処理を実行する。無線通信部22は、電波を送受信するアンテナを備える。無線通信部22は、基地局2の通信可能エリア内を移動する移動体4と無線通信を行う。
【0028】
記憶部23は、ハードウェア群を基地局2として機能させるための各種プログラム、及び各種データなどの記憶領域であり、ROM、RAM、フラッシュメモリ、半導体ドライブ(SSD)又はハードディスクドライブ(HDD)などで構成することができる。具体的には、記憶部23は、本実施形態の各機能を処理部20に実行させるためのプログラム、基地局2の制御プログラム、各種パラメータ等が記憶される。
【0029】
処理部20は、例えばプロセッサによって構成され、基地局2の動作に必要な演算及び制御等の処理を行うコンピュータの中枢部分であり、各種演算及び処理等を行う。プロセッサは、CPU(central processing unit)、MPU(micro processing unit)、SoC(system on a chip)、DSP(digital signal processor)、GPU(graphics processing unit)、ASIC(application specific integrated circuit)、PLD(programmable logic device)又はFPGA(field-programmable gate array)などである。あるいは、プロセッサは、これらのうちの複数を組み合わせたものである。また、プロセッサは、これらにハードウェアアクセラレーターなどを組み合わせたものであっても良い。プロセッサは、ROM(図示省略)又は補助記憶装置(図示省略)などに記憶されたファームウェア、システムソフトウェア及びアプリケーションソフトウェアなどのプログラムに基づいて、基地局2の各種の機能を実現するべく各部を制御する。なお、当該プログラムの一部又は全部は、プロセッサの回路内に組み込まれていても良い。
【0030】
処理部20は、送信処理部201と、受信処理部202と、リファレンス信号送信部(基準信号送信部)203と、CQI(Channel Quality Indicator)リポート取得部204と、通信モード選択部205と、を備える。
【0031】
送信処理部201は、通信I/F部21及び無線通信部22を介してデータを送信する処理を実行する。送信処理部201は、通信I/F部21を介してサーバ装置3からデータを受信し、無線通信部22を制御して、サーバ装置3から受信したデータを車載装置1に変調して送信する。
【0032】
受信処理部202は、通信I/F部21及び無線通信部22を介してサーバ装置3や車載装置1からデータを受信する処理を実行する。
【0033】
リファレンス信号送信部203は、リファレンス信号を車載装置1に送信する。リファレンス信号は、基地局2と車載装置1との間の伝搬路状態を判定するための基準信号である。リファレンス信号送信部203は、例えば基地局2と車載装置1とが通信を開始する際に、基地局2から車載装置1に向かってデータを送信する場合の伝搬路状態を判定するためのリファレンス信号を送信してもよい。
【0034】
CQIリポート取得部204は、基地局2と車載装置1との間の伝搬路状態に関する伝搬路情報を取得する処理を実行する。本実施形態では、CQIリポート取得部204は、車載装置1から送信されるCQIリポートを伝搬路情報として取得する。CQIとは、基地局2と車載装置1との間の伝搬路状態を示す指標である。
【0035】
通信モード選択部205は、CQIリポート取得部204によって取得されたCQIリポートに基づいて、基地局2から車載装置1へデータを伝送するための通信モードを選択し、車載装置1へデータを送信するためのリソースを割り当てる。通信モードは、CQIindexで決まるモードであり、変調方式、符号化率および周波数利用効率で定義されるモードである。通信モード選択部205は、例えば
図3に示すようなCQIテーブルを参照して、取得したCQIリポートに対応する通信モードを選択してもよい。
図3に示す例では、変調方式としてQPSK(Quadrature Phase Shift Keying)、16QAM(Quadrature Amplitude Modulation)、64QAM、256QAMが示され、78×1024から948×1024までの誤り訂正符号の符号化率が示されている。例えばCQIリポートが示すCQI値(
図3では、CQIindex)が9である場合、通信モード選択部205は変調方式が64QAMであり、符号化率が666×1024である通信モードが選択される。通信モード選択部205は、伝搬路状態が良い、即ち伝搬路状態が高いほど、CQI値が高く、変調次数や符号化率が高い通信モードを選択し、伝搬路状態が悪い、即ち伝搬路状態が低いほど、CQI値が低く、変調次数や符号化率が低い通信モードを選択する。即ち、通信モード選択部205は、伝搬路状態が高いほど、通信速度が速いがノイズ耐性が低い通信モードを選択し、伝搬路状態が低いほど、通信速度が遅くなるがノイズ耐性が高い通信モードを選択する。ノイズ耐性とは、ノイズの影響に対するデータ伝送の耐性である。
【0036】
次に、車載装置1の機能的構成について説明する。
図4は、車載装置1のハードウェア及び機能ブロックの構成を例示するブロック図である。
【0037】
車載装置1は、センサ部11と、無線通信部12と、通信I/F13と、記憶部14と、処理部10と、を備える。
【0038】
センサ部11は、移動体4の移動情報や移動体4の周囲の情報を検出する装置である。センサ部11は、例えば車速センサ、加速度センサ、角速度センサ等の移動体4の移動情報を取得する各種センサ、カメラ、レーダ、LiDAR(Light Detection And Ranging)等を含んで構成されてもよい。移動体4の移動情報としては、例えば移動体4の走行速度や走行方向等が挙げられる。カメラは、移動体4の周囲等の静止画又は動画等の画像を撮像することで物体の周囲の情報を検出する。レーダやLiDARは、移動体4の周囲に送信した送信波と反射された受信波に基づいて、移動体4の周囲に存在する物体との距離、方向、相対速度等を検出する。LiDARは、移動体4の周囲にレーザ光を照射し、周囲の物体を点群データとして検出する。LiDARにより、高い精度で周囲の物体の位置や形状等を検出できる。センサ部11は、検出した移動体4の移動情報や画像データ、点群データを処理部10に送信する。
【0039】
センサ部11は、ワイパーの動きを検出する機能を有する構成でもよい。ワイパーが動いていれば、雨や雪が降っている状態であり、晴天時に比べて通信環境が悪化している可能性がある。例えば、ワイパーが動いている場合には、CQIindexを通常時よりも低次のものに変更することで、通信の安全性を高めることができる。また、例えば、ワイパーの動きが早いほど降雨量や降雪量が多いことが予想できるため、CQIindexを通常時よりも、さらに低次のものに変更することで、通信の安全性を高めることができる。
【0040】
また、センサ部11は、カーナビゲーションシステム、即ち現在位置から目的地までの道順(経路情報)を生成する経路情報生成部と連携する機能を有する構成でもよい。この構成の場合、センサ部11は、カーナビゲーションシステムから移動体4が移動する予定の移動経路に関する経路情報を受け取る。例えば、移動体4の移動経路上に通信環境が悪化する場所があれば、その場所に到着またはその場所を通過するときに、CQIindexを通常時よりも低次のものに変更することで、通信の安全性を高めることができる。
【0041】
無線通信部12は、車載装置1が基地局2等と無線通信を行うための処理を実行する。無線通信部12は、電波を送受信するアンテナを備える。無線通信部12は、処理部10で生成されたデータを基地局2に送信する。
【0042】
通信I/F部13は、車載装置1が通信ネットワークNWを介して通信するためのインターフェイスである。車載装置1は、通信I/F部13を介して移動体4のECU(Electronic Control Unit)41等と通信可能に接続される。
【0043】
記憶部14は、ハードウェア群を車載装置1として機能させるための各種プログラム、及び各種データなどの記憶領域であり、ROM、RAM、フラッシュメモリ、半導体ドライブ(SSD)又はハードディスクドライブ(HDD)などで構成することができる。具体的には、記憶部14は、本実施形態の各機能を処理部10に実行させるためのプログラム、車載装置1の制御プログラム、各種パラメータ、車載装置1のIPアドレスやMACアドレス等の識別情報、車載装置1から送信するデータの種類と該データに応じて基地局2から送信されるデータの種類の関係を示すテーブル、CQIテーブル等が記憶される。
【0044】
処理部10は、例えばプロセッサによって構成され、車載装置1の動作に必要な演算及び制御等の処理を行うコンピュータの中枢部分であり、各種演算及び処理等を行う。プロセッサは、CPU(central processing unit)、MPU(micro processing unit)、SoC(system on a chip)、DSP(digital signal processor)、GPU(graphics processing unit)、ASIC(application specific integrated circuit)、PLD(programmable logic device)又はFPGA(field-programmable gate array)などである。あるいは、プロセッサは、これらのうちの複数を組み合わせたものである。また、プロセッサは、これらにハードウェアアクセラレーターなどを組み合わせたものであっても良い。プロセッサは、ROM(図示省略)又は補助記憶装置(図示省略)などに記憶されたファームウェア、システムソフトウェア及びアプリケーションソフトウェアなどのプログラムに基づいて、車載装置1の各種の機能を実現するべく各部を制御する。なお、当該プログラムの一部又は全部は、プロセッサの回路内に組み込まれていても良い。
【0045】
処理部10は、
図4に示すように、送信処理部101と、受信処理部102と、リファレンス信号取得部(基準信号取得部)103と、伝搬路状態判定部(判定部)104と、CQI処理部110と、を備える。
【0046】
送信処理部101は、無線通信部12を介してデータを基地局2等の無線通信装置に送信する処理を実行する。例えば送信処理部101は、無線通信部12を制御してセンサ部11によって検出された移動体4の周囲の状況を示す画像データや点群データ等を変調し、基地局2に送信する。また例えば送信処理部101は、通信I/F部13を介して基地局2から受信した制御信号をECU41に送信する。
【0047】
受信処理部102は、無線通信部12を介してデータを基地局2等の無線通信装置から受信する処理を実行する。例えば受信処理部102は、無線通信部12を制御して基地局2からCQIリポートが示す伝搬路情報に対応する通信モードで送信された制御信号等のデータを復調して受信する。
【0048】
リファレンス信号取得部103は、無線通信部12を介して基地局2からリファレンス信号を取得する処理を実行する。
【0049】
伝搬路状態判定部104は、基地局2から受信したリファレンス信号に基づいて伝搬路状態を判定する処理を実行する。伝搬路状態判定部104は、例えば基地局2から受信したリファレンス信号の情報等を検出し、検出した情報と記憶部14に予め記憶された基地局2のリファレンス信号の情報とを比較することで伝搬路状態を判定してもよい。
【0050】
CQI処理部110は、伝搬路状態取得部111と、移動情報取得部112と、気象情報取得部113と、経路情報取得部114と、通信モード判定部(運転方式判断部)115と、CQIリポート送信処理部(伝搬路情報送信部)116と、を有する。
【0051】
伝搬路状態取得部111は、伝搬路状態判定部104によって判定された伝搬路状態を示す伝搬路情報を取得する。
【0052】
移動情報取得部112は、センサ部11から移動体4の移動速度と移動方向を少なくとも含む移動情報を取得する。
【0053】
気象情報取得部113は、移動体4の周囲の気象情報を取得する処理を実行する。CQIリポート送信処理部(伝搬路情報送信部)116は、気象情報を加味して、CQIリポートを生成する。例えば、気象情報取得部113は、センサ部11によって検出された移動体4のワイパーの動きに関する情報に基づいて移動体4の周囲の気象を判定することで気象情報を取得してもよい。例えば、気象情報取得部113は、ワイパーが動いていない場合、天気が晴天や曇天等であると判定し、ワイパーが動いている場合、天気が降雨や降雪等であると判定し、ワイパーの動きが早いほど降雨量や降雪量が多いと判定してもよい。なお、気象情報取得部113は、移動体4の周囲の温度情報や湿度情報に基づいて移動体4の周囲の天気を判定してもよい。
【0054】
経路情報取得部114は、センサ部11を介してカーナビゲーションシステムから移動体4が移動する予定の移動経路に関する経路情報を取得する処理を実行する。CQIリポート送信処理部(伝搬路情報送信部)116は、経路情報を加味して、CQIリポートを生成する。
【0055】
通信モード判定部115は、移動体4の運転方式を判断し、判断した運転方式に基づいて、基地局2と車載装置1との間で行う通信モードを通常通信モードに設定するか安全通信モードに設定するかを判定する。通常通信モードとは、伝搬路状態判定部104によって判定された伝搬路状態に応じた通信速度及びノイズ耐性の通信モードである。安全通信モードとは、通常通信モードよりも通信速度が低く、ノイズ耐性が高い通信モードである。通信モード判定部115は、例えば移動体4の運転方式を通常運転方式と判断した場合、通信モードを通常通信モードに設定すると判定する。また通信モード判定部115は、例えば移動体4の運転方式を遠隔制御方式と判断した場合、通信モードを安全通信モードに設定すると判定する。安全通信モードは、基地局2を介して所定のデータをダウンロードする場合に設定されることになる。所定のデータとは、遠隔制御方式に設定されている車載装置1が、安全性等の点で基地局2から確実に取得することが求められ、比較的低速でも低遅延で伝送可能な、容量が比較的小さいデータであり、例えば移動体4の制御信号等が挙げられる。容量が比較的小さいデータとは、再送信が生じない方が好ましいデータであって、例えば、自動運転時に基地局から移動体4側に送信されるコマンド(例えば、ハンドル操作、ブレーキ操作などのコマンド)などが考えられるが、これに限定されない。
【0056】
CQIリポート送信処理部116は、基地局2に送信するCQIリポートを生成して基地局2に送信する処理を実行する。CQIリポート送信処理部116は、通信モード判定部115が通信モードを通常通信モードに設定すると判定した場合、伝搬路状態判定部104によって判定された伝搬路状態を示すCQIリポートを生成し、基地局2に送信する。
【0057】
CQIリポート送信処理部116は、通信モード判定部115が通信モードを安全通信モードに設定すると判定した場合、安全通信モードに対応する伝搬路状態を示すCQIリポートを生成し、基地局2に送信する。即ち、基地局2を介して所定のデータをダウンロードする場合、CQIリポート送信処理部116は、伝搬路状態判定部104によって判定された実際の伝搬路状態よりも状態が低い伝搬路状態を示すCQIリポートを生成し、基地局2に送信する。CQIリポート送信処理部116は、通信モード判定部115によって移動体4の運転方式が例えば遠隔制御方式等の所定の運転方式に設定されていると判断された場合、基地局2を介して所定のデータをダウンロードする場合に相当すると判断している。このCQIリポートを受信した基地局2は、基地局2から車載装置1へデータを伝送するために、実際の伝搬路状態に応じた通信モードよりも通信速度が遅く、ノイズ耐性が高い通信モードのリソースを割り当てることになる。これにより、移動体4の制御信号等を基地局2から車載装置1により確実に伝送することができる。
【0058】
また例えばCQIリポート送信処理部116は、安全通信モードに設定すると判定された場合、移動情報取得部112によって取得された移動体4の移動情報を加味して特定された安全通信モードに対応するCQIリポートを生成し、基地局2に送信してもよい。ここで通信品質は、移動体4の移動速度が高くなるほどドップラーシフトにより劣化する傾向にある。CQIリポート送信処理部116は、このドップラーシフトにより劣化する傾向を考慮して、移動体4の移動速度が速くなるほど低い伝搬路状態を示すCQIリポートを生成してもよい。また例えばCQIリポート送信処理部116は、例えば移動体4の移動速度に基づいて、この移動速度で移動する車載装置1にデータの全てを基地局2に伝送可能であり、かつ最もノイズ耐性が高い通信モードに対応する伝搬路状態を示すCQIリポートを生成し、基地局2に送信してもよい。これにより、制限時間内の通信の確実性をより高めることができる。
【0059】
また例えばCQIリポート送信処理部116は、安全通信モードに設定すると判定された場合、気象情報を加味して特定され安全通信モードに対応するCQIリポートを生成し、基地局2に送信してもよい。上述したように降雨時や降雪時は晴天時に比べて通信環境が悪化する可能性があることを考慮して、CQIリポート送信処理部116は、気象情報が降雨や降雪の場合、晴天時よりも低い伝搬路状態を示すCQIリポートを生成してもよい。
【0060】
また例えばCQIリポート送信処理部116は、安全通信モードに設定すると判定された場合、移動体4の経路情報を加味して特定された安全通信モードに対応するCQIリポートを生成し、基地局2に送信してもよい。具体的には、CQIリポート送信処理部116は、移動体4の移動経路上に通信環境が悪化する場所がある場合、その場所に到着またはその場所を通過するときに、さらに低い伝搬路状態を示すCQIリポートを生成してもよい。
【0061】
次に、基地局2から車載装置1にデータを送信するまでの処理の流れについて
図5及び
図6を参照しながら説明する。なお、以降の説明において、基地局2から車載装置1に送信されるデータを下り送信データともいう。
【0062】
まず、基地局2から車載装置1に下り送信データが送信されるまでの基地局2と車載装置1との間の処理の流れについて説明する。
図5は、基地局2から車載装置1に下り送信データが送信されるまでの流れの一例を示すシーケンス図である。
【0063】
図5に示すように、ステップS1において、基地局2から車載装置1にリファレンス信号が送信される。
【0064】
ステップS2において、車載装置1は、ステップS1で送信されたリファレンス信号を受信し、受信したリファレンス信号に基づいて伝搬路状態を判定する。
【0065】
ステップS3において、車載装置1は、ステップS2で判定した伝搬路状態に基づいてCQIリポートを生成する。
【0066】
ステップS4において、車載装置1は、ステップS3で生成したCQIリポートを基地局2に送信する。
【0067】
ステップS5において、基地局2は、受信したCQIリポートに基づいて基地局2から車載装置1にデータを伝送するための通信モードを選択する。
【0068】
ステップS6において、基地局2は、ステップS5で選択した通信モードに対応し、車載装置1へデータを伝送するためのリソースを割り当てる。
【0069】
ステップS7において、基地局2は、ステップS5で選択した通信モードで車載装置1に下り送信データを送信する。
【0070】
次に、移動体4に搭載された車載装置1の処理部10が実行する安全通信処理の一例について
図6を参照しながら説明する。
図6は、車載装置1によって実行される安全通信処理の一例を示すフローチャートである。
【0071】
図6に示すように、ステップS11において、処理部10のリファレンス信号取得部103は、無線通信部12を介して基地局2から、基地局2から車載装置1へのデータの伝送に用いる伝搬路の状態を判定するためのリファレンス信号を取得する。
【0072】
ステップS12において、伝搬路状態判定部104は、ステップS11で取得したリファレンス信号に基づいて基地局2と車載装置1との間の伝搬路状態を判定する。
【0073】
ステップS13において、CQIリポート送信処理部116は、基地局2を介して所定のデータをダウンロードする場合であるか否かを判定する。例えばCQIリポート送信処理部116は、通信モード判定部115によって移動体4の運転方式が所定の運転方式に設定されていると判断された場合、基地局2を介して所定のデータをダウンロードする場合であると判断する。CQIリポート送信処理部116は、基地局2を介して所定のデータをダウンロードする場合でないと判定した場合(ステップS13;NO)、処理をステップS14に移行させる。そして、ステップS14においてCQIリポート送信処理部116は、ステップS12で判定した伝搬路状態に応じた通信速度及びノイズ耐性の通信モードに対応するCQIリポートを生成し、処理をステップS19に移行させる。一方で、CQIリポート送信処理部116は、基地局2を介して所定のデータをダウンロードする場合であると判定した場合(ステップS13;YES)、処理をステップS15に移行させる。なお、
図6に示す例における所定のデータとしては、例えば移動体4の遠隔制御を行うための制御信号等が挙げられ、所定の運転方式としては、遠隔制御方式等が挙げられる。
【0074】
ステップS15において、移動情報取得部112は、移動体4の移動速度及び移動方向を含む移動情報を取得する。
【0075】
ステップS16において、CQIリポート送信処理部116は、ステップS12で判定された伝搬路状態に応じた通信速度及びノイズ耐性の通信モードよりも通信速度が低く、ノイズ耐性が高い通信モードである安全通信モードを特定する。例えばCQIリポート送信処理部116は、ステップS15で取得した移動情報を加味して安全通信モードを特定してもよい。特定される安全通信モードは、例えばステップS15で取得した移動速度で移動する車載装置1に下り送信データの全てを基地局2に伝送可能であり、かつ最もノイズ耐性が高い通信モードであってもよい。
【0076】
ステップS17において、CQIリポート送信処理部116は、ステップS16で特定した安全通信モードに対応するCQIリポートを生成する。
【0077】
ステップS18において、CQIリポート送信処理部116は、ステップS17で生成したCQIリポートを基地局2に送信する。
【0078】
ステップS19において、受信処理部102は、無線通信部12を介して基地局2から下り送信データを取得する。その後、処理部10は安全通信処理を終了する。
【0079】
以上説明した実施形態によれば、以下のような効果を奏する。
【0080】
本実施形態に係る通信システム100は、相互にデータを無線で伝送する基地局2と車載装置1と、を備える通信システム100であって、基地局2は、車載装置1とのデータの伝搬路の状態である伝搬路状態を判定するための基準信号を車載装置1に送信するリファレンス信号送信部203を備え、車載装置1は、基地局2からリファレンス信号を取得するリファレンス信号取得部103と、取得したリファレンス信号に基づいて伝搬路状態を判定する伝搬路状態判定部104と、伝搬路状態判定部104によって判定された伝搬路状態に基づいて、伝搬路状態に関するCQIリポートを生成し、当該CQIリポートを基地局2に送信するCQIリポート送信処理部116と、基地局2からのCQIリポートが示す伝搬路状態に対応する通信モードで送信されたデータを受信する受信処理部102と、を備え、基地局2を介して所定のデータをダウンロードする場合、CQIリポート送信処理部116は、前記判定部によって判定された実際の伝搬路状態よりも状態が低い伝搬路状態を示すCQIリポートを生成し、当該CQIリポートを基地局2に送信する。
【0081】
これにより、例えば移動体4の遠隔制御において基地局2から移動体4の制御信号等の下り送信データを取得する場合、車載装置1が伝搬路状態の判定結果とし実際の伝搬路状態の代わりに、実際の伝搬路状態に応じた通信モードよりもノイズ耐性が高い通信モードに対応する伝搬路状態である判定結果を基地局2に送信する。即ち、伝搬路状態を実際よりも悪い状態であると基地局2に伝えるので、その結果を受信した基地局2が悪い伝搬路状態でもデータが車載装置1に確実に届くように、ノイズ耐性が高い通信モードでデータを送信することになる。よって、車載装置1が移動しながら基地局2と通信を行い、伝搬路状態が変化する場合であっても、基地局2からのデータをより確実に受信することができ、基地局2と車載装置1との間の通信の確実性を上げることができる。
【0082】
また本実施形態に係る通信システム100において、車載装置1は、複数の運転方式で運転可能な移動体4に搭載され、移動体4の運転方式が所定の運転方式に設定されているか否かを判断する通信モード判定部115を更に備え、CQIリポート送信処理部116は、通信モード判定部115によって移動体4の運転方式が所定の運転方式に設定されていると判断された場合、基地局2を介して所定のデータをダウンロードする場合に相当すると判断する。
【0083】
これにより、移動体4の運転方式に応じて通信の確実性を上げることができる。
【0084】
また本実施形態に係る車載装置1は、移動体4に搭載され、移動体4の移動速度を少なくとも含む移動情報を取得する移動情報取得部112を更に備え、CQIリポート送信処理部116は、移動情報を加味して、CQIリポートを生成する。
【0085】
これにより、通信品質の劣化に起因する移動体4の移動速度も加味してCQIリポートを生成するので、基地局2と車載装置1との間のデータ伝送の確実性をより高めることができる。
【0086】
また本実施形態に係る車載装置1は、移動体4に搭載され、移動体4の周囲の気象情報を取得する気象情報取得部113を更に備え、CQIリポート送信処理部116は、気象情報を加味して、CQIリポートを生成する。
【0087】
これにより、通信品質の劣化に起因する気象情報も加味してCQIリポートを生成するので、基地局2と車載装置1との間のデータ伝送の確実性をより高めることができる。
【0088】
また本実施形態に係る車載装置1は、移動体4に搭載され、移動体4が移動する予定の移動経路に関する経路情報を取得する経路情報取得部114を更に備え、CQIリポート送信処理部116は、経路情報を加味して、CQIリポートを生成する。
【0089】
これにより、例えば移動体4の移動経路上に通信環境が悪化する場所がある場合であっても、通信環境の悪化を考慮してCQIリポートを生成することができる。
【0090】
また本実施形態に係る車載装置1は、基地局2との間でデータを無線で伝送する通信装置であって、基地局2とのデータの伝搬路の状態である伝搬路状態を判定するためのリファレンス信号を取得するリファレンス信号取得部103と、取得したリファレンス信号に基づいて伝搬路状態を判定する伝搬路状態判定部104と、伝搬路状態判定部104によって判定された伝搬路状態に基づいて、伝搬路状態に関するCQIリポートを生成し、当該CQIリポートを基地局2に送信するCQIリポート送信処理部116と、基地局2からのCQIリポートが示す伝搬路状態に対応する通信モードで送信されたデータを受信する受信処理部102と、を備え、基地局2を介して所定のデータをダウンロードする場合、CQIリポート送信処理部116は、前記判定部によって判定された実際の伝搬路状態よりも状態が低い伝搬路状態を示すCQIリポートを生成し、当該CQIリポートを基地局2に送信する。
【0091】
また本実施形態に係るプログラムは、基地局2との間でデータを無線で伝送する車載装置1に含まれるコンピュータに、基地局2とのデータの伝搬路の状態である伝搬路状態を判定するためのリファレンス信号を取得する取得工程と、取得したリファレンス信号に基づいて伝搬路状態を判定する判定工程と、判定工程で判定された伝搬路状態に基づいて、伝搬路状態に関するCQIリポートを生成し、CQIリポートを基地局2に送信するCQIリポート送信工程と、基地局2からのCQIリポートが示す伝搬路状態に対応する通信モードで送信されたデータを受信する受信工程と、を実行させ、CQIリポート送信工程では、基地局2を介して所定のデータをダウンロードする場合、判定工程で判定された実際の伝搬路状態よりも状態が低い伝搬路状態を示すCQIリポートを生成し、CQIリポートを基地局2に送信する処理が実行される。
【0092】
また本実施形態に係る通信方法は、基地局2との間でデータを無線で伝送する車載装置1が実行する通信方法であって、基地局2とのデータの伝搬路の状態である伝搬路状態を判定するためのリファレンス信号を取得する取得工程と、取得したリファレンス信号に基づいて伝搬路状態を判定する判定工程と、判定工程で判定された伝搬路状態に基づいて、伝搬路状態に関するCQIリポートを生成し、当該CQIリポートを基地局2に送信するCQIリポート送信工程と、基地局2からのCQIリポートが示す伝搬路状態に対応する通信モードで送信されたデータを受信する受信工程と、を含み、CQIリポート送信工程では、基地局2を介して所定のデータをダウンロードする場合、判定工程で判定された実際の伝搬路状態よりも状態が低い伝搬路状態を示すCQIリポートを生成し、CQIリポートを基地局2に送信する処理が実行される。
【0093】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
【0094】
例えばCQIリポート送信処理部116は、安全通信モードに設定すると判定された場合、通信モード判定部115によって判定された伝搬路状態に応じた通信モードよりも通信速度が遅く、ノイズ耐性が高い通信モードが存在しない場合、例えば以下(a)~(d)の処理を実行してもよい。
(a)車載装置1の通信相手である基地局2を切り替える、即ち通信キャリアを切り替える。
(b)無線通信技法を基地局2とのセルラー通信から他の通信に切り替える。例えば、V2I通信、V2V通信、V2P通信、WiFi、Local 5G、Private LTE等に切り替える。
(c)無線通信部12のアンテナの指向性を変更する。
(d)判定された伝搬路状態に応じた通信モードよりも通信速度が遅く、ノイズ耐性が高い通信モードが存在しない間、移動体4の運転方式を切り替える。例えば、基地局2の制御信号によって移動体4の駆動が制御される遠隔制御方式から移動体4自体が移動体4の運転を制御する自律運転方式に切り替える。
【0095】
また上記実施形態では、通信システム100は、遠隔制御等のために、移動体4に搭載される車載装置1と基地局2との間でデータの伝送を行うシステムであったが、本システムが適用される分野は特に限定されない。例えば、通信システム100は、医療分野に適用してもよい。救急車に搭載されている通信装置が基地局を介して病院などに設置されている端末と通信可能に接続されているものとする。例えば、医療従事者が救急車に乗車して患者を搬送しているときに、通信装置で受け付けた病院の医師からの情報に基づいて、患者に応急処置を施すことができる。
【0096】
また例えば車載装置1のCQI処理部110は、移動情報取得部112、気象情報取得部113、及び経路情報取得部114の少なくともともいずれかを有していない構成であってもよい。
【符号の説明】
【0097】
1 車載装置(第2通信装置、通信装置)
2 基地局(第1通信装置、特定の通信装置)
100 通信システム
102 受信処理部
103 リファレンス信号取得部(基準信号取得部)
104 伝搬路状態判定部(判定部)
116 CQIリポート送信処理部(伝搬路情報送信部)
203 リファレンス信号送信部(基準信号送信部)