(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017675
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】成型体の製造方法及び成型体の製造装置
(51)【国際特許分類】
B29C 51/46 20060101AFI20240201BHJP
C08J 9/04 20060101ALI20240201BHJP
B29C 51/02 20060101ALI20240201BHJP
B29C 44/00 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
B29C51/46
C08J9/04 101
C08J9/04 CFD
B29C51/02
B29C44/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022120482
(22)【出願日】2022-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】廣川 悠哉
(72)【発明者】
【氏名】宮越 亮
(72)【発明者】
【氏名】小川 哲
(72)【発明者】
【氏名】熊井 秀充
(72)【発明者】
【氏名】田村 里彩
【テーマコード(参考)】
4F074
4F208
4F214
【Fターム(参考)】
4F074AA68
4F074AB03
4F074AB04
4F074BA32
4F074BB03
4F074BC12
4F074CA22
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4F074DA34
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4F214UC30
4F214UN12
4F214UN41
4F214UN51
4F214UP84
(57)【要約】
【課題】賦形性及び耐熱性に優れる成型体の製造方法を提供すること。
【解決手段】構成モノマー単位として乳酸のD体及び乳酸のL体のいずれか一方を98モル%以上含むポリ乳酸を含有する組成物を用いて、結晶化度Aが7.5%以下となるように発泡シートを作製する発泡シート作製工程と、前記発泡シートの結晶化度Aと、前記発泡シートを成型した成型体の結晶化度Bとの差(B-A)が20.0%以上40.0%以下となるように前記発泡シートを熱成型する成型工程と、を含む成型体の製造方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構成モノマー単位として乳酸のD体及び乳酸のL体のいずれか一方を98モル%以上含むポリ乳酸を含有する組成物を用いて、結晶化度Aが7.5%以下となるように発泡シートを作製する発泡シート作製工程と、
前記発泡シートの結晶化度Aと、前記発泡シートを成型した成型体の結晶化度Bとの差(B-A)が20.0%以上40.0%以下となるように前記発泡シートを熱成型する成型工程と、
を含むことを特徴とする成型体の製造方法。
【請求項2】
前記発泡シート作製工程が、前記発泡シートの前記結晶化度Aが3.8%以下となるように前記発泡シートを作製する工程である、請求項1に記載の成型体の製造方法。
【請求項3】
前記成型工程が、前記発泡シートの前記結晶化度Aと、前記成型体の前記結晶化度Bとの前記差(B-A)が30.0%以上40.0%以下となるように前記発泡シートを熱成型する工程である、請求項1に記載の成型体の製造方法。
【請求項4】
前記発泡シート作製工程が、前記発泡シートのかさ密度が0.063g/cm3以上0.250g/cm3以下となるように前記発泡シートを作製する工程である、請求項1に記載の成型体の製造方法。
【請求項5】
前記発泡シート作製工程が、前記発泡シート中の発泡の発泡径が、メジアン径で800μm以下となるように前記発泡シートを作製する工程である、請求項1に記載の成型体の製造方法。
【請求項6】
構成モノマー単位として乳酸のD体及び乳酸のL体のいずれか一方を98モル%以上含むポリ乳酸を含有する組成物を用いて、結晶化度Aが7.5%以下となるように発泡シートを作製する発泡シート作製手段と、
前記発泡シートの結晶化度Aと、前記発泡シートを成型した成型体の結晶化度Bとの差(B-A)が20.0%以上40.0%以下となるように前記発泡シートを熱成型する成型手段と、
を有することを特徴とする成型体の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成型体の製造方法及び成型体の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックは、袋、容器など様々な製品形状に加工され広く流通している。しかし、プラスチック製品は、自然界で分解されにくい性質を有しているため、使用後の廃棄処理が問題となっている。近年、環境意識の高まりから、プラスチック製品について、自然界で分解されにくい非生分解性プラスチックから、自然界で分解されやすい生分解性プラスチックへ置き換えるための材料開発が盛んに行われている。生分解性プラスチックの中でもポリ乳酸は、プラスチックとして従来使用されているポリスチレンなどと性質が似ていることから、非生分解性プラスチックの代替材料として注目されている。
【0003】
ポリスチレンの利用形態の1つに、ポリスチレンを発泡させることで、軽量性、緩衝性、断熱性などの機能を付与した発泡ポリスチレンがあり、広く用いられている。このような発泡ポリスチレンの環境に配慮した代替素材として、生分解性プラスチックであるポリ乳酸を用いた発泡ポリ乳酸も提案されている(例えば、特許文献1~4参照)。
【0004】
しかし、一般に、ポリ乳酸はガラス転移温度(約60℃)が低いことに起因して耐熱性が低いことが指摘されている。例えば、ポリ乳酸を食品容器に適用する場合、熱湯への暴露や電子レンジを用いた調理を行った際、ポリ乳酸製食品容器に変形や穴あき等の不具合が起こることがあった。発泡ポリ乳酸食品容器の耐熱性を向上する方法として、例えば、成型過程でポリ乳酸の結晶化度を高めることで耐熱性を向上する手法も知られている(特許文献5及び6参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、賦形性及び耐熱性に優れる成型体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための手段としての本発明の成型体の製造方法は、構成モノマー単位として乳酸のD体及び乳酸のL体のいずれか一方を98モル%以上含むポリ乳酸を含有する組成物を用いて、結晶化度Aが7.5%以下となるように発泡シートを作製する発泡シート作製工程と、前記発泡シートの結晶化度Aと、前記発泡シートを成型した成型体の結晶化度Bとの差(B-A)が20.0%以上40.0%以下となるように前記発泡シートを熱成型する成型工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、賦形性及び耐熱性に優れる成型体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の成型体の製造装置における混練部の一例を示す概略図である。
【
図2】
図2は、本発明の成型体の製造装置における発泡シート作製手段の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(成型体の製造方法及び成型体の製造装置)
本発明の成型体の製造方法は、構成モノマー単位として乳酸のD体及び乳酸のL体のいずれか一方を98モル%以上含むポリ乳酸を含有する組成物(以下、「ポリ乳酸含有組成物」、「ポリ乳酸樹脂組成物」、「マスターバッチ」などと称することがある)を用いて、結晶化度Aが7.5%以下となるように発泡シートを作製する発泡シート作製工程と、前記発泡シートの結晶化度Aと、前記発泡シートを成型した成型体の結晶化度Bとの差(B-A)が20.0%以上40.0%以下となるように前記発泡シートを熱成型する成型工程と、を含み、更に必要に応じて、その他の工程を含む。
【0010】
本発明の成型体の製造装置は、構成モノマー単位として乳酸のD体及び乳酸のL体のいずれか一方を98モル%以上含むポリ乳酸を含有する組成物を用いて、結晶化度Aが7.5%以下となるように発泡シートを作製する発泡シート作製手段と、前記発泡シートの結晶化度Aと、前記発泡シートを成型した成型体の結晶化度Bとの差(B-A)が20.0%以上40.0%以下となるように前記発泡シートを熱成型する成型手段と、を有し、更に必要に応じて、その他の手段を有する。
本発明の成型体の製造方法は、本発明の成型体の製造装置により好適に行われる。
【0011】
本発明者らは、容器、特に絞りの深い容器(深絞り容器)を、ポリ乳酸を含有する組成物からなる発泡シート(以下、「発泡ポリ乳酸シート」と称することがある)から製造しようとした場合、結晶化が進んだ発泡ポリ乳酸シートを用いると成型過程で該発泡ポリ乳酸シートを十分軟化できず、成型時に破れや賦形性の悪化などを起こすという問題を見出した。また、成型過程での軟化が十分でないと内部応力が残り、熱湯への暴露や電子レンジを用いた調理を行った際に収縮や変形などを起こすという問題も見出した。
【0012】
上記問題に対し、本発明者らは鋭意検討を行い、成型前のポリ乳酸(以下、「ポリ乳酸系樹脂」、「ポリ乳酸樹脂」などと称することがある)を含有する組成物からなる発泡シートの結晶化度Aと、熱成型後の成型体の結晶化度Bとの差(B-A)の最適な組合せを見出し、従来の成型体の製造方法では達成できなかった深絞り容器であっても、賦形性及び耐熱性に優れることを知見した。
【0013】
以下、本発明の成型体の製造方法及び成型体の製造装置について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用及び効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0014】
<発泡シート作製工程及び発泡シート作製手段>
前記発泡シート作製工程は、構成モノマー単位として乳酸のD体及び乳酸のL体のいずれか一方を98モル%以上含むポリ乳酸を含有する組成物を用いて、結晶化度Aが7.5%以下となるように発泡シートを作製する工程であり、原材料混合及び溶融処理と、圧縮性流体供給処理と、混錬処理と、発泡処理と、を含むことが好ましく、更に必要に応じて、その他の処理を含む。
【0015】
前記発泡シート作製処理は、構成モノマー単位として乳酸のD体及び乳酸のL体のいずれか一方を98モル%以上含むポリ乳酸を含有する組成物を用いて、結晶化度Aが7.5%以下となるように発泡シートを作製する手段であり、原材料混合及び溶融部と、圧縮性流体供給部と、混錬部と、発泡部と、を含むことが好ましく、更に必要に応じて、その他の部材を有する。
前記発泡シート作製工程は、前記発泡シート作製手段により好適に行われる。
【0016】
-ポリ乳酸含有組成物-
前記ポリ乳酸を含有する組成物(ポリ乳酸含有組成物)は、前記ポリ乳酸を含有し、更に必要に応じて、その他の成分を含有する。
【0017】
--ポリ乳酸--
前記ポリ乳酸は微生物により生分解されるため、環境に優しい低環境負荷高分子材料として注目されている(「脂肪族ポリエステルの構造、物性、生分解性」、井上 義夫、高分子、2001年、50巻、6号、p374-377参照)。前記ポリ乳酸としては、例えば、乳酸のD体(D-乳酸)と乳酸のL体(L-乳酸)との共重合体(DL-乳酸);D-乳酸又はL-乳酸のいずれか一方の単独重合体;ラクチドのD体(D-ラクチド)、ラクチドのL体(L-ラクチド)、及びDL-ラクチドからなる群より選ばれた一又は二以上のラクチドの開環重合体などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。前記ポリ乳酸としては、適宜合成したものを用いても、市販されているものを用いてもよい。
【0018】
前記ポリ乳酸として、D-乳酸とL-乳酸との共重合体(DL-乳酸)、又はD-ラクチド、L-ラクチド、及びDL-ラクチドからなる群より選ばれた一又は二以上のラクチドの開環重合体を用いる場合、D体及びL体のうち少ない方の光学異性体が減少するに従って、結晶性が高くなり融点や結晶化速度が高くなる傾向がある。また、D体及びL体のうち少ない方の光学異性体が増加するに従って、結晶性が低くなり、やがて非晶性となる傾向がある。
【0019】
本発明においては、発泡時の泡成長に伴う結晶化により、充分な耐熱性を付与する必要がある点から、前記ポリ乳酸含有組成物に含有されるポリ乳酸の構成モノマー単位である乳酸のD体及び乳酸のL体のいずれか一方のモル比率は、該ポリ乳酸中98モル%以上であり、99モル%以上であることが好ましい。このようなことから、前記ポリ乳酸としては、乳酸のD体及び乳酸のL体のいずれか一方の光学異性体のみからなるポリ乳酸を用いてもよい。前記ポリ乳酸中の該ポリ乳酸の構成モノマー単位である乳酸のD体及び乳酸のL体のいずれか一方が98モル%未満である場合、前記ポリ乳酸含有組成物からなる発泡シートを成型してなる成型体は、良好な耐熱性が得られない。一方、前記ポリ乳酸中の該ポリ乳酸の構成モノマー単位である乳酸のD体及び乳酸のL体のいずれか一方を98モル%以上にすることによって、結晶化速度が速くなり成型過程での結晶化が進み賦形性と耐熱性が向上する。
【0020】
前記発泡シート中のポリ乳酸において、構成モノマー単位である乳酸のD体及び乳酸のL体のいずれか一方が、該ポリ乳酸中98モル%以上であることは、光学活性カラムを用いた液体クロマトグラフィー(LC-MS)で分析することにより確認することができる。LC-MSによる測定手順、測定装置、及び測定条件は次の通りである。
【0021】
前記発泡シートを凍結粉砕し、凍結粉砕した該発泡シートの粉末を精密天秤にて三角フラスコに200mg量り取り、1Nの水酸化ナトリウム水溶液30mLを加える。次に、三角フラスコを振盪しながら65℃に加熱して、ポリ乳酸を完全に溶解させる。続いて、1N塩酸を用いてpHが4~7となるように調整し、メスフラスコを用いて所定の体積に希釈してポリ乳酸溶解液を得る。次に、前記ポリ乳酸溶解液を0.45μmのメンブレンフィルターで濾過した後、液体クロマトグラフィーにより分析する。
得られたチャートに基づいて、乳酸のD体由来のピーク面積及び乳酸のL体由来のピーク面積と、これらの合計面積とから、乳酸のD体由来のピーク面積比及び乳酸のL体由来のピーク面積比を算出し、これを存在比として、D体量比及びL体量比を算出する。上記操作を3回行って得られた結果の算術平均した値を、本発明における発泡シートにおけるポリ乳酸を構成する乳酸のD体量及びL体量とする。
[LC-MSの測定装置及び測定条件]
・ HPLC装置(液体クロマトグラフ):PU-2085plus型システム(日本分光株式会社製)
・ カラム:Chromolith(登録商標) coated with SUMICHIRAL OA-5000(内径4.6mm、長さ250mm)(株式会社住友分析センター製)
・ カラム温度:25℃
・ 移動相:2mM CuSO4水溶液と2-プロパノールとの混合液(CuSO4水溶液:2-プロパノール(体積比)=95:5)
・ 移動相流量:1.0mL/分間
・ 検出器:UV254nm
・ 注入量:20μL
【0022】
前記発泡シートに対して上記測定を行い、乳酸のD体由来のピーク面積及び乳酸のL体由来のピーク面積の合計面積に対して、乳酸のD体由来のピーク面積及び乳酸のL体由来のピーク面積のうち、ピーク面積が大きい方の面積が98%以上である場合、前記ポリ乳酸中の該ポリ乳酸の構成モノマー単位である乳酸のD体及び乳酸のL体のいずれか一方が98モル%以上であると言える。
【0023】
前記ポリ乳酸含有組成物における前記ポリ乳酸の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、生分解性及びリサイクル性(リサイクルが容易となる)の観点から、該ポリ乳酸含有組成物中の有機物の総量に対して98質量%以上であることが好ましい。
なお、前記ポリ乳酸含有組成物中の各成分の含有量は、該ポリ乳酸含有組成物からなる発泡シート中の各成分の含有量と同義である。
【0024】
なお、前記ポリ乳酸含有組成物中の前記有機物としては、主にポリ乳酸であるが、該ポリ乳酸以外の有機物としては、例えば、後述する発泡核剤としての有機系核材、鎖伸長剤などが挙げられる。前記発泡シートの発泡核材として無機系核材を用いた場合、該無機系核材は前記有機物には該当しない。
【0025】
前記ポリ乳酸の含有量は、前記発泡シート作製工程において仕込む材料の割合から算出できるが、仕込む材料の割合が不明な場合、前記発泡シート中の前記ポリ乳酸の含有量は、核磁気共鳴(NMR)測定によって算出することができる。核磁気共鳴(NMR)による測定手順、測定装置、及び測定条件は次の通りである。
【0026】
内部標準となる1,3,5-トリメトキシベンゼン標準品(定量NMR用、富士フイルム和光純薬株式会社製)を100mg測り取り、10mLメスフラスコにて重水素化クロロホルム(TMS0.3体積%入り)で溶解させ、NMR溶媒として用いる。
前記発泡シートを凍結粉砕し、凍結粉砕した該発泡シートの粉末を精密天秤にてバイアルに10mg量り取り、前記NMR溶媒(1,3,5-トリメトキシベンゼン標準品を溶解した重水素化クロロホルム溶液)を約1g(約0.7mL)加え、溶解させるため半日置いて、ポリ乳酸溶解液を調製する。次に、調製したポリ乳酸溶解液を0.45μmのメンブレンフィルターで濾過した後、直径5mmのNMRチューブに入れ、下記NMRの測定装置及び測定条件にて、NMR測定に供する。
得られたNMRスペクトルはベースラインを確認後、ポリ乳酸由来の5.2ppm(-CH-)の積分値と、内部標準6.1ppm(H-Ph)の積分値から、既知のポリ乳酸をポリ乳酸含有率100質量%(REF)として、前記ポリ乳酸の含有量を算出することができる。
[NMRの測定装置及び測定条件]
・ 核磁気共鳴(NMR)装置:JNM-ECX-500 FT-NMR(日本電子株式会社製)
・ 測定温度:25℃
・ 測定核:1H(500MHz) データポイント32K
・ 観測幅:17ppm
・ 積算回数:8回
・ 測定パルス:90°パルス
・ Relaxation Delay:60秒間
・ offset:8ppm
・ SPIN:OFF
・ 13Cデカップリング:ON
・ irr_offset:70ppm
・ irr_noise:MPF8
【0027】
--その他の成分--
前記ポリ乳酸含有組成物における前記その他の成分としては、通常、発泡シートに含有されるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、発泡核材、鎖伸長剤、発泡剤、添加剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0028】
---発泡核材---
前記発泡核材(以下「フィラー」と称することもある)は、前記発泡シートの気泡径及び数密度などを調節する他、前記ポリ乳酸の結晶性を向上するために含有することが好ましい。
前記発泡核材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、無機系核材、有機系核材などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0029】
前記無機系核材としては、例えば、タルク、カオリン、炭酸カルシウム、層状珪酸塩、炭酸亜鉛、ワラストナイト、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化チタン、ケイ酸カルシウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カルシウム、アルミノ珪酸ナトリウム、珪酸マグネシウム、ガラスバルーン、カーボンブラック、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、ゼオライト、ハイドロタルサイト、金属繊維、金属ウイスカー、セラミックウイスカー、チタン酸カリウム、窒化ホウ素、グラファイト、ガラス繊維、炭素繊維などが挙げられるこれらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記無機系核材としては、効率的に分散が可能で添加量を少なくでき、環境負荷を低くできる点から、シリカ、酸化チタン、層状珪酸塩が好ましい。
【0030】
前記有機系核材としては、例えば、澱粉、セルロースナノファイバー、セルロース微粒子、木粉、おから、モミ殻、フスマ等の天然に存在するポリマーやこれらの変性品、またグリセリン化合物、ソルビトール化合物、安息香酸及びその化合物の金属塩、燐酸エステル金属塩、ロジン化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0031】
前記発泡核材の個数平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、添加量当たりの表面積を大きくでき、添加量を少なくできる観点から、短軸方向の長さの個数平均粒径が100nm以下であることが好ましい。
【0032】
前記発泡核材の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記ポリ乳酸含有組成物の総量に対して、3質量%以下が好ましい。前記発泡核材の含有量が3質量%以下であると、前記ポリ乳酸含有組成物からなる発泡シートの物性が硬くなり、脆くなることを防ぐことができる。また、生分解性のない発泡核材の含有量はより少ない方が好ましいため、前記発泡核材の含有量は、前記ポリ乳酸含有組成物の総量に対して、1質量%以下であることがより好ましい。
【0033】
なお、前記有機発泡核材の含有量は、下記測定装置及び測定条件でガスクロマトグラフィー質量分析(GC-MS)を用いて求めることができる。
[GC-MSの測定装置及び測定条件]
・ GC-MS装置(ガスクロマトグラフ質量分析):GC-MS QP2010(株式会社島津製作所製)、補器 Py3030D(フロンティア・ラボ株式会社製)
・分離カラム:Ultra ALLOY UA5-30M-0.25F(フロンティア・ラボ株式会社製)
・試料加熱温度:300℃
・カラムオーブン温度:50℃(1分間保持)~昇温速度15℃/分間~320℃(6分間保持)
・イオン化法:Electron Ionization(E.I)法
・検出質量範囲:25~700(m/z)
【0034】
また、前記無機発泡核剤の含有量は、例えば、JIS K 7250-1:2006(プラスチック-灰分の求め方-第1部:通則)に準拠した方法で求めることができる。
【0035】
--鎖伸長剤--
前記鎖伸長剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記ポリ乳酸の水酸基及び/又はカルボン酸基と反応性を有する化合物であることが好ましく、例えば、エポキシ系鎖伸長剤(エポキシ基を有する鎖伸長剤)、イソシアネート系鎖伸長剤(イソシアネート基を有する鎖伸長剤)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記鎖伸長剤としては、分子内に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ官能性(メタ)アクリル-スチレン系鎖伸長剤、分子内に2つ以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネートなどが好ましく、前記ポリ乳酸に分岐構造を導入し、溶融強度を効率的に向上でき、未反応物の残留を少なくできる点から、分子内に3つ以上のエポキシ基を有するエポキシ官能性(メタ)アクリル-スチレン系鎖伸長剤、分子内に3つ以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネートがより好ましい。このような鎖伸長剤を用いると、気泡の合一、破泡を抑制でき、発泡倍率を向上させることができる。
【0036】
ここで、前記分子内に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ官能性(メタ)アクリル-スチレン系鎖伸長剤とは、エポキシ基を有する(メタ)アクリルモノマーとスチレンモノマーとを共重合させて得られた重合体である。
前記エポキシ基を有する(メタ)アクリルモノマーとしては、例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等の1,2-エポキシ基を含有するモノマーが挙げられる。また、前記スチレンモノマーとしては、例えば、スチレン、α-メチルスチレンなどが挙げられる。
【0037】
前記分子内に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ官能性(メタ)アクリル-スチレン系鎖伸長剤は、その共重合成分にエポキシ基を有しない(メタ)アクリルモノマーを含有していてもよい。このような(メタ)アクリルモノマーとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレートなどが挙げられる。
【0038】
前記分子内に2つ以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネートとしては、例えば、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、3-イソシアネートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート)、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、メチルシクロヘキシル-2,4-ジイソシアネート、メチルシクロヘキシル-2,6-ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネート)メチルシクロヘキサン、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、トランスシクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、水添トリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添テトラメチルキシリレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート等の脂環族ポリイソシアネート;2,4-トルイレンジイソシアネート、2,6-トルイレンジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-イソシアネート、1,5’-ナフテンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、ジフェニルメチルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジベンジルジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;リジンエステルトリイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート、1,8-イソシアネート-4,4-イソシアネートメチルオクタン、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート等のトリイソシアネート;トリメチロールプロパンと2,4-トルイレンジイソシアネートとのアダクト体、トリメチロールプロパンと1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート等のジイソシアネートとのアダクト体等のトリイソシアネート化合物、及びグリセリン、ペンタエリストール等の多価アルコールを、前記脂肪族及び芳香族ジイソシアネート化合物又は前記トリイソシアネート化合物などと反応させて得られる変性ポリイソシアネート化合物などがある。これらは1種を単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0039】
前記鎖伸長剤の含有量としては、特に制限はなく、前記ポリ乳酸の分子量や該ポリ乳酸の分子量分布によって適宜選択することができる。低分子量のポリ乳酸が多くなると、発泡に適した溶融強度を付与するために、前記鎖伸長剤はより多く含有することが必要となる傾向がある。しかし、前記鎖伸長剤の含有量が増えると、前記ポリ乳酸含有組成物により得られる発泡シートの生分解性及び前記ポリ乳酸の結晶性に劣る傾向があることから、前記ポリ乳酸含有組成物における前記鎖伸長剤の含有量としては、前記ポリ乳酸及び前記鎖伸長剤の合計質量100質部に対して、前記鎖伸長剤が2質量部以下であることが好ましい。
【0040】
その他の鎖伸長剤としては、分子中に2以上のオキサゾリン基を有する化合物、分子中に2以上のカルボジイミド基を有する化合物(ポリカルボジイミド系鎖伸長剤)なども用いることができる。
【0041】
---発泡剤---
前記発泡剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、物理発泡剤、化学発泡剤などが挙げられる。前記成型体の製造方法は、後述する発泡処理において、発泡シートへの残留物が少なくクリーンであることが好ましいことから、物理発泡であることが好ましく、前記発泡剤としても、物理発泡剤が好ましい。
【0042】
前記物理発泡に用いられる発泡剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ヘキサン等の低級アルカン等の炭化水素類;ジメチルエーテル等のエーテル類;メチルクロライド、エチルクロライド等のハロゲン化炭化水素類;二酸化炭素;窒素などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、取扱いが容易であり、臭気がなく、環境負荷が低いという観点で、二酸化炭素や窒素を用いることが好ましい。
【0043】
前記発泡剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記ポリ乳酸含有組成物の全量に対して、2質量%以上7質量%以下が好ましく、3質量%以上7質量%以下がより好ましく、4質量%以上5質量%以下が更に好ましい。前記発泡剤の含有量が2質量%以上であると、発泡径が小さくなり、前記発泡シートを成型した成型体の断熱性が上がり耐熱性が向上し、7質量%以下であると、過剰量の前記発泡剤が発泡シートから抜ける際にできる欠陥の発生が抑制され、前記発泡シートの強度が向上し成型時に割れにくくなるため、該発泡シートを成型した成型体、特に深絞り容器の成型性が向上する。
【0044】
---添加剤---
前記添加剤としては、例えば、熱安定剤、酸化防止剤、可塑剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記添加剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記ポリ乳酸含有組成物中の有機物の総量に対して、2質量%以下が好ましい。前記添加剤の含有量が、前記ポリ乳酸含有組成物中の有機物の総量に対して2質量%以下であると、リサイクル性がより良好になる。
【0045】
<<原材料混合及び溶融処理及び原材料混合及び溶融部>>
前記原材料混合及び溶融処理は、前記ポリ乳酸含有組成物の原材料を混合及び溶融する処理である。
前記原材料混合及び溶融部は、前記ポリ乳酸含有組成物の原材料を混合及び溶融する部材である。
前記原材料混合及び溶融処理は、前記原材料混合及び溶融部により好適に行われる。
【0046】
前記原材料混合及び溶融処理は、前記ポリ乳酸含有組成物の原材料を昇温して溶融する。
前記原材料混合及び溶融処理における加熱温度としては、前記原材料を混合及び溶融することができれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記ポリ乳酸の溶融温度以上であることが好ましい。前記原材料混合及び溶融部の温度を前記ポリ乳酸の溶融温度以上に設定することで、前記原材料を混合及び溶融することができる。これにより、次の圧縮性流体供給処理において、前記原材料を圧縮性流体と均一に混合できる状態にすることができる。
【0047】
<<圧縮性流体供給処理及び圧縮性流体供給部>>
前記圧縮性流体供給処理は、前記原材料混合及び溶融処理で得られた、溶融状態となった前記ポリ乳酸含有組成物の原材料に、圧縮性流体を供給し、溶融したポリ乳酸を可塑化させる処理である。前記発泡シート作製工程が、前記圧縮性流体供給処理を含むと、前記ポリ乳酸中に前記発泡核材を均一に分散させることができる点で好ましい。なお、前記圧縮性流体が、前記発泡剤と同じである場合、前記混錬処理における前記発泡核材の混練と、前記発泡処理における発泡とを一連のプロセスで実施できるため、環境負荷低減の観点でより製造形態として好ましい。
【0048】
前記圧縮性流体供給部は、前記原材料混合及び溶融処理で得られた、溶融状態となった前記ポリ乳酸含有組成物の原材料に、圧縮性流体を供給し、溶融したポリ乳酸を可塑化させる部材である。
前記圧縮性流体供給処理は、前記圧縮性流体供給部により好適に行われる。
【0049】
-圧縮性流体-
前記圧縮性流体の状態で用いることができる物質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、一酸化炭素、二酸化炭素、一酸化二窒素、窒素、メタン、エタン、プロパン、2,3-ジメチルブタン、エチレン、ジメチルエーテルなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記圧縮性流体の状態で用いることができる物質としては、二酸化炭素が、不燃性で取扱いが容易であることなどの点で好ましい。
【0050】
前記溶融状態となった前記ポリ乳酸含有組成物の原材料への前記圧縮性流体の供給量としては、前記ポリ乳酸の種類と前記圧縮性流体との組合せ、温度、圧力などによって、前記圧縮性流体の前記ポリ乳酸への溶解度が変わるため、特に制限はなく、適宜調整することができる。例えば、前記ポリ乳酸と前記二酸化炭素の組合せであれば、前記ポリ乳酸含有組成物の原材料を100質量部とした場合、二酸化炭素の供給量は、2質量部以上7質量部以下が好ましく、3質量部以上7質量部以下がより好ましく、4質量部以上5質量部以下が更に好ましい。前記ポリ乳酸含有組成物100質量部に対して、前記二酸化炭素の供給量が2質量部以上であると、可塑化の効果が限定的になるという不具合や発泡径が粗大化する不具合を防止できる。また、前記ポリ乳酸含有組成物100質量部に対して、前記二酸化炭素の供給量が7質量部以下であると、急激な発泡による表面性の不良を防止できる。
【0051】
<<混錬処理及び混錬部>>
前記混錬処理は、前記圧縮性流体供給処理で得られた、圧縮性流体を供給した前記ポリ乳酸含有組成物の原材料を溶融混練してポリ乳酸樹脂組成物を作製する処理である。前記混錬は、後述する発泡処理での発泡をより効率的に行うために、前記ポリ乳酸含有組成物の原料として、更に発泡剤を含有することが好ましい。
【0052】
前記混錬部は、前記圧縮性流体供給処理で得られた、圧縮性流体を供給した前記ポリ乳酸含有組成物の原材料を溶融混練してポリ乳酸樹脂組成物を作製する部材である。
前記混錬工程は、前記混錬部材により好適に行われる。
【0053】
前記混練部としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、混練に好適な粘度に対応できる点から、一軸の押出機、二軸の押出機、ニーダー、無軸籠型撹拌槽、ズルツァー式SMLXタイプスタチックミキサー具備管型重合槽などを使用できる。これらの中でも、前記混練部は、混練性、生産効率、前記ポリ乳酸の色調、安定性、及び耐熱性の点から、二軸の押出機が好ましい。
前記二軸の押出機としては、例えば、超臨界押出混練装置(株式会社プラスチック工学研究所製)などが挙げられる。
【0054】
前記混練部は、前記発泡核剤の混練に好適な粘度となるように、該混練部の温度設定を行うことが好ましい。
前記混練部の設定温度としては、反応装置の仕様や、樹脂種、樹脂の構造、分子量などで変わるため、特に限定するものではなく、適宜選択できるが、前記ポリ乳酸の融点に対して+10℃以上+35℃以下が好ましい。前記混練部における前記設定温度を、前記ポリ乳酸の融点に対して+10℃以上+35℃以下に設定することで、前記ポリ乳酸の結晶化温度と離れた温度となるため、後述する発泡処理において、結晶化度Aが7.5%以下となるように発泡シートを作製することができる。
【0055】
ここで、前記ポリ乳酸の融点は、JIS K 7122-1987(プラスチックの転移熱測定方法)に準拠した示差走査熱量(DSC)測定から求められる。
具体的には、前記ポリ乳酸の融点のDSC測定には、例えば、示差走査熱量計装置(例えば、Q-2000型、ティーエイインスツルメント社製)を用いることができ、前記発泡シートから切り出した5mg~10mgの試料を、前記示差走査熱量計装置の容器に入れ、10℃から200℃まで昇温速度10℃/分間で昇温する。前記ポリ乳酸の融点は、1st coolingの後に、再び25℃から200℃まで昇温速度10℃/分間で走査した際、ガラス転移点以上の温度域で観測される吸熱ピークのピークトップ温度を指し、概ね150℃~180℃の範囲内である。
【0056】
<発泡処理及び発泡部>
前記発泡処理は、前記混練処理で得られた前記ポリ乳酸樹脂組成物に溶解していた圧縮性流体を気化させて除去し、前記ポリ乳酸樹脂組成物に気泡を発生させ、発泡させる工程である。
【0057】
前記発泡部は、前記混練処理で得られた前記ポリ乳酸樹脂組成物に溶解していた圧縮性流体を気化させて、前記ポリ乳酸樹脂組成物に気泡を発生させ、発泡させる部材である。
前記発泡処理は、前記発泡部により好適に行われる。
【0058】
前記発泡部としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、混練に好適な粘度に対応できる点から、一軸の押出機、二軸の押出機、ニーダー、無軸籠型撹拌槽、ズルツァー式SMLXタイプスタチックミキサー具備管型重合槽などを使用できる。これらの中でも、前記発泡部は、混練性、生産効率、前記ポリ乳酸の色調、安定性、及び耐熱性の点から、二軸の押出機が好ましい。
前記二軸の押出機としては、例えば、超臨界押出混練装置(株式会社プラスチック工学研究所製)などが挙げられる。
また、前記発泡部としての押出機におけるダイとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、サーキュラーダイ、Tダイなどを用いることができる。これらの中でも、前記発泡シートのかさ密度の点から、サーキュラーダイが好ましい。
【0059】
前記混練部及び前記発泡部を1つの手段としてもよいし、別々の手段としてもよい。
したがって、前記混錬処理と前記発泡処理は同時に行ってもよく、別々の処理として行ってもよい。
【0060】
前記発泡処理において、前記ポリ乳酸樹脂組成物に溶解していた圧縮性流体を気化させる方法としては、例えば、前記ポリ乳酸樹脂組成物を大気に開放することにより減圧する方法などが挙げられる。これにより、前記圧縮性流体を大気下で徐々に空気と置換し、発泡シートから除去することができる。
【0061】
前記発泡部の設定温度としては、反応装置の仕様や、樹脂種、樹脂の構造、分子量などで変わるため、特に限定するものではなく、適宜選択できるが、前記ポリ乳酸の結晶化温度に対して、+10℃以上+20℃以下が好ましい。具体的には、前記発泡部における設定温度としては、155℃以上165℃以下が好ましく、155℃以上160℃以下がより好ましく、158℃以上160℃以下が更に好ましい。前記発泡部における前記設定温度を、前記ポリ乳酸の結晶化温度に対して、+10℃以上+20℃以下に設定することで、前記ポリ乳酸の結晶化温度と離れた温度となるため、前記発泡処理において、結晶化度Aが7.5%以下となるように発泡シートを作製することができる。
【0062】
ここで、前記ポリ乳酸の結晶化温度は、JIS K 7122-1987(プラスチックの転移熱測定方法)に準拠した示差走査熱量(DSC)測定から求められる。
具体的には、前記ポリ乳酸の結晶化温度のDSC測定は、例えば、示差走査熱量計装置(例えば、Q-2000型、ティーエイインスツルメント社製)を用いることができ、前記発泡シートから切り出した5mg~10mgの試料を、前記示差走査熱量計装置の容器に入れ、10℃から200℃まで昇温速度10℃/分間で昇温し10分間保持後、200℃から10℃まで10℃/分間で降温する。前記ポリ乳酸の結晶化温度は、この際、観測される発熱ピークのピークトップ温度を指し、概ね130℃~150℃の範囲内である。
【0063】
なお、前記発泡処理において、前記発泡部の設定温度は一定でなくてもよく、前記混錬処理における前記混錬部の設定温度から徐々に又は段階的に低下させて最終的に前記発泡部の設定温度としてもよい。
【0064】
前記ダイの設定温度としては、反応装置の仕様や、樹脂種、樹脂の構造、分子量などで変わるため、特に限定するものではなく、適宜選択できるが、前記発泡部の設定温度と同様に、前記ポリ乳酸の結晶化温度に対して、+10℃以上+20℃以下が好ましい。具体的には、前記ダイの設定温度としては、155℃以上165℃以下が好ましく、155℃以上160℃以下がより好ましく、158℃以上160℃以下が更に好ましい。前記ダイの設定温度を、前記ポリ乳酸の結晶化温度に対して、+10℃以上+20℃以下に設定することで、前記ポリ乳酸の結晶化温度と離れた温度となるため、前記発泡処理において、結晶化度Aが7.5%以下となるように発泡シートを作製することができる。
【0065】
しかし、結晶化の制御は非常に難しいことに加え、過度に結晶化が進行すると前記ポリ乳酸含有組成物の流動性を低下させ、前記混錬処理における押し出し、及び発泡そのものが困難となる可能性があることから、前記発泡核剤を添加する方法が好ましい。
前記発泡には物理発泡と化学発泡とがあるが、発泡シートへの残留物が少なくクリーンな物理発泡が広く用いられており、本発明においても前記物理発泡が好ましい。
【0066】
以下に、図面を用いて、前記発泡シート作製工程について詳細に説明するが、本発明はこれに限られるものではない。
【0067】
図1は、本発明の成型体の製造装置における混練部の一例としての二軸押出装置100を示す概略図である。例えば、二軸押出装置100は、スクリュー口径が42mmであり、押出機長さ(L)と前記スクリュー口径(D)との比(L/D)を48とする。本例では、第一の供給部1及び第二の供給部2から原材料混合及び溶融部aに、例えば、ポリ乳酸、発泡核剤、鎖伸長剤等の原材料が供給され、混合及び溶融される。混合及び溶融された原材料は、圧縮性流体供給部bで圧縮性流体貯留部3から圧縮性流体が供給される。次いで、圧縮性流体を含む混合物は混練部cにて混練される。次いで、前記混合物は圧縮性流体除去部dにて圧縮性流体Fが除去された後、成型加工部eで、例えば、ペレット化されて樹脂ペレットPとなる。このようにして、樹脂組成物前駆体としてのポリ乳酸含有組成物(マスターバッチ)を作製することができる。
なお、圧縮性流体は、例えば、冷却して液化したものを計量ポンプで供給し、また樹脂ペレットや発泡核剤などの固体の原材料は、例えば、定量フィーダーで供給することができる。
【0068】
前記混練部及び前記発泡部を連続して行う場合の前記発泡シート作製手段(連続式発泡シート作製手段110)の一例を
図2に示す。連続式発泡シート作製手段110としては、上記と同様に例えば二軸押出機を用いることができる。連続式発泡シート作製手段110では、例えば、第一の供給部1及び第二の供給部2から原材料混合及び溶融部aにポリ乳酸、発泡核剤、鎖伸長剤等の原材料が供給され、混合及び溶融される。混合及び溶融された原材料は、圧縮性流体供給部bで圧縮性流体貯留部3から圧縮性流体が供給される。次いで、圧縮性流体を含む混合物は混練部cで混練され、ポリ乳酸含有組成物を得る。次いで、前記ポリ乳酸含有組成物は、発泡部fに供給され、発泡部fでは加熱及び混練を行い、その後、例えば、大気開放することにより押出発泡させる。押出発泡された発泡シート4をマンドレル5上に沿わせて巻き取る。
【0069】
連続式発泡シート作製手段110において、原材料混合及び溶融部a、圧縮性流体供給部b、及び混練部cを構成する部分を第一押出機とも称し、発泡部fを構成する部分を第二押出機とも称する。本例では、混合、溶融、混練された原材料が第一押出機により第二押出機に押し出され、第二押出機により発泡シートが押出発泡される。第二押出機としては、例えば、サーキュラーダイ、Tダイなどを用いることができる。
【0070】
本例では、前記混練部と前記発泡シート作製手段の第一押出機により混練処理を行い、前記発泡シート作製手段の第二押出機により前記発泡処理を行っている。しかし、本発明ではこのような構成に制限されるものではない。例えば、前記混練処理と前記発泡処理を行う領域を適宜変更することができる。
【0071】
-発泡シート-
以上のようにして、前記発泡シート作製工程により発泡シートを得ることができる。したがって、本発明において、「発泡シート」とは、前記ポリ乳酸含有組成物を発泡させ、シート状にしたものを意味する。また、前記発泡シートは、前記ポリ乳酸含有組成物からなるため、前記発泡シートを「ポリ乳酸発泡シート」、「発泡ポリ乳酸組成物シート」などと称することがある。後述する通り、前記発泡シートは、良好な耐熱性を有し、例えば、耐熱食品容器として好適に使用することができる。
前記発泡シートの物性は、以下の通りである。
【0072】
--結晶化度A--
前記発泡シートの結晶化度Aは、7.5%以下であるが、3.8%以下であることが好ましい。前記発泡シートの結晶化度Aが7.5%超であると、後述する成型工程の開始時に、該発泡シートの結晶化が進んでしまい、後述する加熱成型処理時に発泡シートが流動しにくいため、型の形状をよく転写できず、賦形性が悪くなる。また、内部応力が残り、容器を製造することができなくなり、容器が熱湯への暴露や電子レンジを用いた調理を行った際に収縮や変形が起きにやすくなるため、耐熱性が悪くなる。一方、前記発泡シートの結晶化度Aが7.5%以下であると、後述する加熱成型処理時に発泡シートの結晶化が進んでおらず加熱成型時に発泡シートが流動しやすいため型の形状をよく転写でき賦形性が向上する。また、内部応力が残らず容器を製造することができるため、容器が熱湯への暴露や電子レンジを用いた調理行った際に収縮や変形が起きにくくなるため耐熱性が向上する。前記発泡シートの結晶化度Aが3.8%以下であると、賦形性及び耐熱性が更に向上する。
なお、上記した通り、前記発泡シートの結晶化度Aを7.5%以下とすることは、前記発泡シート作製工程における条件を適切に選択することによって達成することができ、特に前記発泡部及びダイの温度条件が重要である。
【0073】
本発明において「結晶性」とは、結晶化度や結晶化速度のことを広く表現しており、「結晶性が高い」とは、結晶化度が高い及び/又は結晶化速度が速いことを意味する。
【0074】
前記発泡シートの結晶性は、結晶溶融ピーク面積及び冷結晶化ピーク面積から求めることができる。これらの面積は、JIS K 7122-1987(プラスチックの転移熱測定方法)に準拠した示差走査熱量(DSC)測定から求められる値とする。
具体的には、前記DSC測定は、例えば、示差走査熱量計装置(例えば、Q-2000型、ティーエイインスツルメント社製)を用いることができ、前記発泡シートから切り出した5mg~10mgの試料を、示差走査熱量計装置の容器に入れ、10℃から200℃まで昇温速度10℃/分間で昇温する。昇温時に、80℃~110℃程度で見られる発熱ピークに対応する面積を「冷結晶化ピーク面積」とし、それより高温での吸熱ピークに対応する面積を「結晶溶融ピーク面積」とする。結晶化度は、これらのピーク面積値から、下記計算式(I)より求められる。
結晶化度(%)=(結晶融解ピーク面積値[J/g]-冷結晶化ピーク面積値[J/g])/93[J/g]×100[%] ・・・ 計算式(I)
【0075】
ただし、充分に結晶化が進行した発泡シートでは、冷結晶化ピークが観察されないことがあり、全く結晶化が進行していない発泡シートでは結晶溶融ピークが観察されないことがある。
【0076】
--かさ密度--
前記発泡シートのかさ密度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.063g/cm3以上0.250g/cm3以下であることが好ましく、0.063g/cm3以上0.125g/cm3以下であることがより好ましい。前記発泡シートのかさ密度を0.063g/cm3以上0.250g/cm3以下にすることで、前記発泡シートの柔軟性が増し、加熱成型時に金型を良く転写できるようになり成型性が向上する。前記発泡シートのかさ密度は、前記発泡シート製造時の発泡温度、発泡剤の量、及びダイの種類などで発泡倍率を変えることにより調整可能である。具体的には、前記発泡シート製造時の発泡温度を低くする、前記発泡剤の量を多くする、前記ダイとしてサーキュラーダイを用いるなどの方法を取ることで発泡倍率が上がるため、前記発泡シートのかさ密度を小さくすることができる。
【0077】
本発明において、前記発泡シートのかさ密度は、次のように測定した値である。
前記発泡シートを温度23℃、相対湿度50%に調整された環境下で24時間以上静置し、50mm×50mmの試験片を切り出す。切り出した試験片に対して、自動比重計(例えば、DSG-1、株式会社東洋精機製作所製)を用い、液中秤量法を用いてかさ密度を求める。これは発泡シート大気中の重量(g)を精秤し、次いで発泡シートの水中での重量(g)を精秤し、下記計算式(II)により算出されるものである。
かさ密度[g/cm3]=大気中の試料重量[g]/{(大気中の試料重量[g]-液体中の重量[g])×液体密度[g/cm3]} ・・・ 計算式(II)
【0078】
--発泡径(メジアン径)--
前記発泡シートの発泡径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、メジアン径で800μm以下であることが好ましく、600μm以下であることがより好ましい。前記発泡シートの発泡径(メジアン径)を800μm以下することで、気泡内の対流が抑えられ、熱伝導が低下し、容器が高温の食品などと接した時に前記発泡シートの内側や外側の温度が高くなりにくくなり、収縮や変形が抑えられて耐熱性が向上する。前記発泡径(メジアン径)は、前記発泡核剤の量及び前記発泡剤の量で調整可能である。具体的には、前記発泡核剤及び前記発泡剤の量を増やすことで発泡時の起点が多くなり、1つ1つの発泡の径が小さくなり、前記発泡径(メジアン径)を800μm以下に調整することができる。
【0079】
前記発泡シートの発泡径(メジアン径)の測定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、前記発泡シートを鋭利なカミソリ(例えば、76カミソリ、日新EM株式会社製)を用いて断面切削を行い、走査電子顕微鏡(SEM)(例えば、3Dリアルサーフェスビュー顕微鏡 VE-9800、KEYENCE社製)を用いて発泡シート断面のSEM観察を行う。拡大倍率は、後述の画像解析に適する画像が得られるように、観察範囲の気泡数が数十~数百個になるように調整する(100μm程度の発泡径であれば、例えば50倍)。必要に応じて、複数の視野を撮影し、画像を連結させて画像解析に供してもよい。
得られた画像は、例えば、画像解析ソフトImageJ(フリーソフト)のMorphoLibJプラグインを用い、watershed法(Morphological segmetation)による領域分割を行う。この際、Toleranceは分割が妥当になるように画像毎に調整する(例えば、60等)。領域の分割線を2値画像として出力し、画像解析ソフトの粒子径解析機能により気泡面積の分布を求める。この際、画像端部に接する気泡は解析から除外する。気泡面積の累積分布を表計算ソフト等で作成し、累積分布が50%になる面積を求め、該面積の円相当径を計算し発泡径(メジアン径)として用いる。
【0080】
--有機物総量及び無機発泡核材量--
前述の通り、前記ポリ乳酸含有組成物中の前記有機物としては、主にポリ乳酸であるが、該ポリ乳酸以外の有機物としては、例えば、前記発泡核剤としての有機系核材、前記鎖伸長剤などが挙げられる。
【0081】
前記発泡シート中の有機物総量は、灰分(=無機成分量)以外の量として見積もることができる。また、灰分量は、前記無機系核材の量と考えることができる。灰分は600℃にて、4時間燃焼した際の残渣とする。
【0082】
本発明において、灰分は以下のようにして測定する。精密天秤で小数点以下第4位まで質量を精秤した100mLのるつぼ中に前記発泡シートの測定サンプルを3g程度測り入れ、るつぼとサンプルの合計質量を精秤する。るつぼをマッフル炉(例えば、マッフル炉 FP-310、ヤマト科学株式会社製)に入れ、600℃にて4時間燃焼し、有機成分を燃焼させる。その後、デシケータ内でるつぼを1時間冷却し、再度るつぼの質量を精秤することで、るつぼと灰分の合計質量を測定する。灰分量、即ち無機系核材の量、及び有機物総量は、下記計算式(III)及び下記計算式(IV)により算出されるものである。なお、上記測定をn=2で実施し、その平均値を求め、該平均値をそれぞれ有機物総量及び無機発泡核材量とする。
無機系核材量[質量%]=灰分量[%]=(燃焼及び冷却後のるつぼと測定試料の合計質量[g]-るつぼの質量[g])/(燃焼前のるつぼと試料の合計質量[g]-るつぼの質量[g])×100 ・・・ 計算式(III)
有機物総量[%]=100-灰分量[%] ・・・ 計算式(IV)
【0083】
--平均厚み--
前記発泡シートの平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.5mm以上5mm以下であることが好ましく、1.0mm以上5mm以下がより好ましく、2.0mm以上5mm以下であることが更に好ましい。前記発泡シートの平均厚みが0.5mm以上であることによって、高温環境で発泡シートが軟化した場合であっても強度が保たれ収縮や変形しなくなる。また、前記発泡シートの平均厚みが5mm以下であると、前記型形状を発泡シートに転写しやすくなり賦形性が向上する。
【0084】
本発明において、前記発泡シートの平均厚みは、ノギス(例えば、デジマチックキャリパー、株式会社ミツトヨ製)を用い、任意に選択した10か所の厚みの測定値の算術平均とする。
【0085】
<成型工程及び成型手段>
前記成型工程は、前記発泡シートの結晶化度Aと、前記発泡シートを成型した成型体の結晶化度Bとの差(B-A)が20.0%以上40.0%以下となるように前記発泡シートを熱成型する工程である。
前記成型工程は、加熱処理と、加熱成型処理を含むことが好ましく、更に必要に応じて、その他の処理を含む。
【0086】
前記成型手段は、前記発泡シートの結晶化度Aと、前記発泡シートを成型した成型体の結晶化度Bとの差(B-A)が20.0%以上40.0%以下となるように前記発泡シートを熱成型する手段である。
前記成型手段は、加熱部、加熱成型部を含むことが好ましく、更に必要に応じて、その他の部材を含む。
【0087】
<<加熱処理及び加熱手段>>
前記加熱処理は、前記発泡シート作製工程で得られたポリ乳酸発泡シートを成型する前に、ポリ乳酸発泡シートを加熱し軟化させる処理である。
【0088】
前記加熱部は、前記発泡シート作製手段で得られたポリ乳酸発泡シートを成型する前に、ポリ乳酸発泡シートを加熱し軟化させる部材である。
前記加熱処理は、前記加熱部により好適に行われる。
【0089】
前記加熱処理において、前記ポリ乳酸発泡シートを加熱する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記ポリ乳酸発泡シートの上下、若しくは、前記ポリ乳酸発泡シートの上面と下面のいずれか一方に、加熱手段を配置して加熱する方法などが挙げられる。
【0090】
前記加熱部としては、特に制限はなく、公知の加熱部材の中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、電熱ヒーター、加熱板、IR(赤外線)ヒーターなどが挙げられる。
【0091】
前記加熱処理では、前記ポリ乳酸発泡シートの成型前にポリ乳酸の結晶化を進めずに、次の加熱成型処理で前記ポリ乳酸の結晶化を進めることが、耐熱性の向上の点で好ましい。そのため、前記加熱処理としては、短時間で前記ポリ乳酸発泡シートを加熱することができる方法が好ましく、前記ポリ乳酸発泡シートの上下にIR(赤外線)ヒーターを配置して加熱する方法が特に好ましい。
【0092】
前記加熱処理における前記ポリ乳酸発泡シートの加熱温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記ポリ乳酸のガラス転移温度以上の温度が好ましく、60℃以上の温度で行うことがより好ましく、80℃以上の温度で行うことが更に好ましい。また、前記ポリ乳酸の冷結晶化温度近傍で加熱すると、前記加熱処理中に結晶化が進んでしまうため、前記加熱処理における前記ポリ乳酸発泡シートの加熱温度は、最大でも110℃以下の温度で加熱することが好ましい。前記加熱温度の下限値と上限値とは適宜組み合わせることができるが、前記加熱処理における前記ポリ乳酸の加熱温度は、60℃以上110℃以下がより好ましく、80℃以上110℃以下が特に好ましい。
なお、前記加熱温度は、前記ポリ乳酸発泡シート自体の温度を意味する。
【0093】
ここで、前記ポリ乳酸のガラス転移温度は、JIS K 7122-1987(プラスチックの転移熱測定方法)に準拠した示差走査熱量(DSC)測定から求められる。
具体的には、前記ポリ乳酸のガラス転移温度のDSC測定は、例えば、示差走査熱量計装置(例えば、Q-2000型、ティーエイインスツルメント社製)を用いることができ、前記ポリ乳酸発泡シートから切り出した5mg~10mgの試料を、前記示差走査熱量計装置の容器に入れ、10℃から200℃まで昇温速度10℃/分間で昇温することにより測定することができる。前記ポリ乳酸のガラス転移温度は、概ね55℃~70℃の範囲内である。
【0094】
また、前記ポリ乳酸の冷結晶化温度は、JIS K 7122-1987(プラスチックの転移熱測定方法)に準拠した示差走査熱量(DSC)測定から求められる。
具体的には、前記ポリ乳酸の冷結晶化温度のDSC測定は、例えば、示差走査熱量計装置(例えば、Q-2000型、ティーエイインスツルメント社製)を用いることができ、前記発泡シートから切り出した5mg~10mgの試料を、前記示差走査熱量計装置の容器に入れ、10℃から200℃まで昇温速度10℃/分間で昇温する。前記ポリ乳酸の冷結晶化温度は、この際、ガラス転移点以上の温度域で観測される発熱ピークのピークトップ温度を指し、概ね80℃~110℃の範囲内である。
【0095】
前記加熱処理における前記ポリ乳酸発泡シートの加熱時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、結晶化を進め過ぎないという観点から、15秒間以内が好ましく、10秒間以内がより好ましく、5秒間以外が更に好ましい。
【0096】
<<加熱成型処理>>
前記加熱成型処理は、前記加熱処理によって軟化した前記ポリ乳酸発泡シートを、型、好ましくは金型を用いて成型する工程であり、容器の形状に賦形する工程であることが好ましい。
【0097】
前記型を用いた成型方法としては、特に制限はなく、従来公知の熱可塑性樹脂の熱成型方法を用いることができ、例えば、真空成型法、圧空成型法、真空圧空成型法、マッチモールド成型法などが挙げられるが、成型過程で前記ポリ乳酸発泡シートのポリ乳酸の結晶化を進めて耐熱性を向上させる観点から、マッチモールド成型法が特に好ましい。
【0098】
前記加熱成型処理における前記型の温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記ポリ乳酸発泡シートにおける前記ポリ乳酸の結晶化が進むように、前記ポリ乳酸の冷結晶化温度近傍で行うことが好ましい。本発明において、「ポリ乳酸の冷結晶化温度近傍」とは、前記ポリ乳酸の冷結晶化温度に対して+20℃以下を意味する。具体的には、前記加熱成型処理における前記型の温度としては、100℃以上130℃以下が好ましく、100℃以上110℃以下が更に好ましい。前記加熱成型処理における前記型の温度を前記ポリ乳酸の冷結晶化温度近傍で行うことで、前記成型体の結晶化度Bと、前記発泡シートの結晶化度Aとの差(B-A)が20.0%以上40.0%以下となる成型体を得ることができる。
【0099】
前記加熱成型処理における加熱成型時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記ポリ乳酸発泡シートが結晶化するのに十分な時間を確保することが好ましく、5秒間以上がより好ましく、7秒間以上が更に好ましい。前記加熱成型時間の上限値としては、特に制限はないが、耐熱性の点から10秒間以下であることが好ましい。前記加熱成型時間の下限値と上限値とは適宜組み合わせることができ、前記加熱成型時間は、5秒間以上10秒間以下が好ましく、7秒間以上10秒間以下がより好ましい。
【0100】
前記成型工程で得られた成型体の結晶化度Bと、前記発泡シートの結晶化度Aとの差(B-A)は、20.0%以上40.0%以下であり、30.0%以上40.0%以下であることがより好ましい。前記成型体の結晶化度Bと、前記発泡シートの結晶化度Aとの差(B-A)が20.0%未満又は40.0%超であると、前記加熱成型処理の過程で前記ポリ乳酸の結晶化が大きく進行せず、得られる成型体の形状が固定化されず、賦形性が悪くなる。一方、前記成型体の結晶化度Bと、前記発泡シートの結晶化度Aとの差(B-A)が20.0%以上40.0%以下であることによって、前記加熱成型処理の過程で前記ポリ乳酸の結晶化が大きく進行し、得られる成型体の形状がしっかり固定化され賦形性が向上する。また、成型後の成型体のポリ乳酸の結晶化が高いため、成型体が高温に曝された場合でも収縮や変形が起きにくくなるため高耐熱性に繋がる。前記成型体の結晶化度Bと、前記発泡シートの結晶化度Aとの差(B-A)が20.0%以上40.0%以下となる成型体は、前記ポリ乳酸の構成モノマー単位として乳酸のD体及び乳酸のL体のいずれか一方のモル比率と、前記成型条件の最適化によって達成することができる。また、前記成型体の結晶化度Bと、前記発泡シートの結晶化度Aとの差(B-A)が30.0%以上40.0%以下であると、耐熱性が更に向上する。
【0101】
<その他の工程及びその他の手段>
前記その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記型から前記成型体を取り外す離形工程、前記ポリ乳酸発泡シートから前記成型体を打ち抜く工程、前記成型体以外の前記ポリ乳酸発泡シートの余分な部分を切り落とす工程、発泡に適した溶融強度を付与するための溶融強度付与工程(溶融張力付与工程)などが挙げられる。
【0102】
前記その他の手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記型から前記成型体を取り外す離形手段、前記ポリ乳酸発泡シートから前記成型体を打ち抜く手段、前記成型体以外の前記ポリ乳酸発泡シートの余分な部分を切り落とす手段、発泡に適した溶融強度を付与するための溶融強度付与手段(溶融張力付与手段)などが挙げられる。
前記その他の工程は、前記その他の手段により好適に行われる。
【0103】
<<溶融強度付与工程及び溶融強度付与手段>>
前記溶融強度付与工程は、前記ポリ乳酸含有組成物に、発泡に適した溶融強度を付与するための工程である。
前記溶融強度付与手段は、前記ポリ乳酸含有組成物に、発泡に適した溶融強度を付与するための手段である。
前記ポリ乳酸含有組成物に、発泡に適した溶融強度を付与する方法としては、例えば、層状珪酸塩や繊維状の発泡核剤等をナノレベルで分散する方法、鎖伸長剤あるいは架橋助剤等を用いてポリ乳酸含有組成物を架橋する方法、電子線等により樹脂組成物を架橋する方法、高い溶融張力を有する別の樹脂組成物を添加する方法、発泡温度を低くする方法などが挙げられる。
【0104】
-成型体-
本発明において、「成型体」とは、前記ポリ乳酸含有組成物からなる発泡シートを、型を用いて成型した製品を意味する。
前記成型体は、賦形性及び耐熱性に優れるため、食品用容器として好適に用いられる。
また、前記成型体の概念には、食品用容器等の単体としての成型品のみでなく、トレイの取っ手のような成型体からなる部品、及び取っ手が取り付けられたトレイのような成型体を備えた製品なども含まれる。
【0105】
--結晶化度B--
前記成型体の結晶化度Bとしては、前記成型体の結晶化度Bと、前記発泡シートの結晶化度Aとの差(B-A)が20.0%以上40.0%以下となる限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、23.8%以上47.5%以上が好ましく、27.5%以上43.8%以上がより好ましい。前記成型体の結晶化度Bが23.8%以上47.5%以上であると、前記成型体の形状がしっかり固定化され賦形性が向上する。また、前記成型体が高温に曝された場合でも収縮や変形が起きにくくなるため耐熱性に優れる。
なお、上記した通り、前記成型体の結晶化度Bは、前記成型工程における条件を適切に選択することによって達成することができる。
【0106】
前記成型体の結晶性は、結晶溶融ピーク面積及び冷結晶化ピーク面積から求めることができる。これらの面積は、JIS K 7122-1987(プラスチックの転移熱測定方法)に準拠した示差走査熱量(DSC)測定から求められる値とする。DSC測定は、前記発泡シートの結晶化度Aの測定において、測定試料を、前記発泡シートから切り出した5mg~10mgの試料から、前記成型体から切り出した5mg~10mgの試料に変更すること以外は、前記発泡シートの結晶化度Aの測定と同様の方法で行うことができる。
【0107】
本発明の成型体の製造方法及び成型体の製造装置は、賦形性及び耐熱性に優れる成型体を製造することができ、特に、容器の直径(口径)よりも容器の深さの方が長い絞りの深い容器(深絞り容器)の製造に特に好適に用いられる。
【0108】
なお、本発明において、「賦形性」とは、前記成型工程で得られた成型体において、破れ及び皺がなく、型の形状が転写される性能を意味する。前記成型体が容器である場合、前記容器の賦形性は、例えば、型の形状と、前記容器の形状とを比較することで評価することができる。前記容器の賦形性は、破れ及び皺がなく、前記型の深さに対する前記容器の深さが95%以上であることが好ましい。
【0109】
なお、本発明において、「耐熱性」とは、前記成型体を加熱した際に、収縮や変形が起きないことを意味する。前記成型体が容器である場合、前記容器の耐熱性は、例えば、加熱前の前記容器内の体積(初期体積)と、加熱後の前記容器内の体積(加熱後体積)とから、下記計算式(V)により体積変化率を算出することで評価することができる。前記成型体は、前記体積変化率が、6%未満が好ましく、4%未満がより好ましく、2%未満が更に好ましい。
体積変化率(%)=(初期体積-加熱後体積)/初期体積×100 ・・・ 計算式(V)
【実施例0110】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例において、別段の断りない限り、「部」は「質量部」を示し、「%」は、評価基準中のものを除き「質量%」を示す。
【0111】
(実施例1)
<発泡シート成型体の作製>
-ポリ乳酸樹脂組成物の調製-
ポリ乳酸樹脂97.7部(REVODE 190、HISUN社製)、発泡核剤としての無機粒子1.0部(疎水性フュームドシリカ、AEROSIL(登録商標) RY300、日本アエロジル株式会社製)、及び鎖伸長剤1.3部(Joncryl(登録商標) ADR4468、BASF社製)を混合し、ポリ乳酸樹脂組成物を得た。
【0112】
-発泡シートの作製-
図2に示すタンデム型の連続式発泡シート化装置110を用い、第一押出機10の原材料混合及び溶融部aに前記ポリ乳酸樹脂組成物を流量20kg/時間で供給した。次いで、圧縮性流体である二酸化炭素を0.82kg/時間(即ち、ポリ乳酸樹脂組成物100部に対して二酸化炭素4.1部に相当)で第一押出機10の圧縮性流体供給部bに供給した。次いで、これらを混練部cで混合、溶融、及び混練し、第二押出機20に供給した。次いで、ポリ乳酸樹脂組成物を、第二押出機20の発泡部fで、樹脂温度が160℃になるまで冷却し、第二押出機の先端に取り付けたスリット口径70mm、ギャップ0.5mmのサーキュラーダイから大気中に吐出することで押出発泡させた。得られた筒状のポリ乳酸系樹脂の発泡シート4を、冷却されたマンドレル5上に沿わせると共に、その外面にエアーを吹き付けて強制冷却し、回転刃式カッターによりシートを切開して、平坦なシート状発泡体を得た。
【0113】
実施例1において、各部の温度は下記の通りとした。
・ 第一押出機10の原材料混合及び溶融部a:200℃
・ 第一押出機10の圧縮性流体供給部b:200℃
・ 第一押出機10の混練部c:200℃
・ 第二押出機20の発泡部f:180℃から160℃に冷却
・ サーキュラーダイ:160℃
【0114】
また、実施例1において、各部の圧力は下記の通りとした。
・ 第一押出機10の圧縮性流体供給部b:7MPa~10MPa
・ 第一押出機10の混練部c:8MPa~20MPa
・ 第二押出機20の発泡部f:8MPa~35MPa
【0115】
-成型体の作製-
上下の赤外線(IR)ヒーター及び型を備えたマッチモールド方式の成型機を用い、開口部の直径180mm、底部の直径110mm、深さ60mmの深絞り容器を成型できる金型を用いてカップ焼きそば用容器を熱成型し、実施例1の成型体を得た。
具体的には、加熱工程として、上下のIRヒーターを用いて発泡シートの温度を80℃になるようにし、4.5秒間加熱後、直ちに、加熱成型工程として、マッチモールド方式で110℃に設定した加熱金型で10秒間真空成型した。
【0116】
(実施例2及び3)
実施例1において、成型体の製造条件を下記表1に示す条件に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で、ポリ乳酸樹脂組成物の調製、発泡シートの作製、及び成型体の作製を行い、実施例2及び3の成型体を得た。
【0117】
(実施例4)
実施例1において、発泡シートの製造条件を下記表1に示す条件に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で、ポリ乳酸樹脂組成物の調製、発泡シートの作製、及び成型体の作製を行い、実施例4の成型体を得た。
【0118】
(実施例5)
実施例1において、ポリ乳酸樹脂組成物の処方、発泡シートの製造条件、及び成型体の製造条件を下記表2に示す条件に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で、ポリ乳酸樹脂組成物の調製、発泡シートの作製、及び成型体の作製を行い、実施例5の成型体を得た。
なお、実施例5の発泡核剤としての無機粒子は、疎水性フュームドシリカ(AEROSIL(登録商標) R972、日本アエロジル株式会社製)を使用し、第二押出機の先端のTダイは、幅400mmのTダイを使用した。
【0119】
(実施例6~7)
実施例1において、発泡シートの製造条件及び成型体の製造条件を下記表2に示す条件に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で、ポリ乳酸樹脂組成物の調製、発泡シートの作製、及び成型体の作製を行い、実施例6及び7の成型体を得た。
【0120】
(比較例1)
実施例1において、ポリ乳酸樹脂組成物の処方、発泡シートの製造条件、及び成型体の製造条件を下記表3に示す条件に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で、ポリ乳酸樹脂組成物の調製、発泡シートの作製、及び成型体の作製を行い、比較例1の成型体を得た。
【0121】
(比較例2)
実施例5において、成型体の製造条件を下記表3に示す条件に変更したこと以外は、実施例5と同様の方法で、ポリ乳酸樹脂組成物の調製、発泡シートの作製、及び成型体の作製を行い、比較例2の成型体を得た。
【0122】
(比較例3)
実施例1において、ポリ乳酸樹脂組成物の処方、発泡シートの製造条件、及び成型体の製造条件を下記表3に示す条件に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で、ポリ乳酸樹脂組成物の調製、発泡シートの作製、及び成型体の作製を行い、比較例3の成型体を得た。
なお、比較例3のポリ乳酸樹脂は、REVODE 110(HISUN社製)を使用した。
【0123】
<発泡シート及び成型体の結晶化度の測定>
JIS K 7122-1987(プラスチックの転移熱測定方法)に準拠して、実施例1~7及び比較例1~3の発泡シート及び成型体の結晶溶融ピーク面積値及び冷結晶化ピーク面積値を求めた。
DSC測定には、示差走査熱量計装置 Q-2000型(ティーエイインスツルメント社製)を用い、下記測定条件で行った。昇温時に、80℃~110℃程度で見られた発熱ピークに対応する面積を「冷結晶化ピーク面積」とし、それより高温での吸熱ピークに対応する面積を「結晶溶融ピーク面積」とした。結晶化度は下記計算式(I)より算出した。結果は下記表1~表3に示した。
[測定条件]
・ 試料量:5mg~10mg
・ 測定温度範囲:10℃~200℃
・ 昇温速度:10℃/分間
・ パージガス:窒素
・ パージガス流量:50mL/分間
結晶化度(%)=(結晶融解ピーク面積値[J/g]-冷結晶化ピーク面積値[J/g])/93[J/g]×100[%] ・・・ 計算式(I)
【0124】
<発泡シートのかさ密度の測定>
実施例1~7及び比較例1~3の発泡シートを温度23℃、相対湿度50%に調整された環境下で24時間以上静置し、50mm×50mmの試験片を切り出した。切り出した試験片に対して、自動比重計(DSG-1、株式会社東洋精機製作所製)を用い、液中秤量法を用いてかさ密度を求めた。液中秤量法においては、発泡シート大気中の重量(g)を精秤し、次いで発泡シートの水中での重量(g)を精秤し、以下の計算式(II)により算出した。結果は下記表1~表3に示した。
かさ密度[g/cm3]=大気中の試料重量[g]/{(大気中の試料重量[g]-液体中の重量[g])×液体密度[g/cm3]} ・・・ 計算式(II)
【0125】
<発泡シートの平均厚みの測定>
実施例1~7及び比較例1~3の発泡シートをノギス(デジマチックキャリパー、株式会社ミツトヨ製)を用い、任意に選択した10か所の厚みを測定した。この10か所の厚みの測定値の算術平均値を算出し、平均厚みとした。結果は下記表1~表3に示した。
【0126】
<発泡シートの発泡径(メジアン径)の測定>
実施例1~7及び比較例1~3の発泡シートを鋭利なカミソリ(76カミソリ、日新EM株式会社製)を用いて断面切削を行い、走査電子顕微鏡(SEM)(3Dリアルサーフェスビュー顕微鏡 VE-9800、KEYENCE社製)を用いて、発泡シート断面の拡大倍率20倍から50倍のSEM観察を行った。得られた画像は、画像解析ソフトImageJ(フリーソフト)のMorphoLibJプラグインを用い、watershed法(Morphological segmetation)による領域分割を行った。この際、Toleranceは分割が妥当になるように画像毎に調整した。領域の分割線を2値画像として出力し、画像端部に接する気泡は解析から除外しながら画像解析ソフトの粒子径解析機能により気泡面積の分布を求めた。気泡面積の累積分布を表計算ソフト(Excel、Microsoft社製)で作成し、累積分布が50%になる面積を求め、該面積の円相当径を計算し、発泡径(メジアン径)として用いた。結果は下記表1~表3に示した。
【0127】
<発泡シート中のポリ乳酸樹脂を構成する乳酸のD体及び乳酸のL体のモル比率の測定>
実施例1~7及び比較例1~3の発泡シートを凍結粉砕し、凍結粉砕した該発泡シートの粉末を精密天秤にて三角フラスコに200mg量り取り、1Nの水酸化ナトリウム水溶液30mLを加えた。次に、三角フラスコを振盪しながら65℃に加熱して、ポリ乳酸樹脂を完全に溶解させた。続いて、1N塩酸を用いてpHが7となるように調整し、メスフラスコを用いて所定の体積に希釈してポリ乳酸樹脂溶解液を得た。次に、前記ポリ乳酸樹脂溶解液を0.45μmのメンブレンフィルターで濾過した後、下記測定条件で液体クロマトグラフィーにより分析した。
得られたチャートに基づいて、乳酸のD体由来のピーク面積及び乳酸のL体由来のピーク面積と、これらの合計面積とから、乳酸のD体由来のピーク面積比及び乳酸のL体由来のピーク面積比をそれぞれ算出し、これを存在比として、D体量比及びL体量比を算出した。上記操作を3回行って得られた結果の算術平均した値を、発泡シートにおけるポリ乳酸樹脂を構成する乳酸のD体量及び乳酸のL体量とした。結果は、「モル比率(L体:D体)」として、下記表1~表3に示した。
[LC-MSの測定装置及び測定条件]
・ HPLC装置(液体クロマトグラフ):PU-2085plus型システム(日本分光株式会社製)
・ カラム:Chromolith(登録商標) coated with SUMICHIRAL OA-5000(内径4.6mm、長さ250mm)(株式会社住友分析センター製)
・ カラム温度:25℃
・ 移動相:2mM CuSO4水溶液と2-プロパノールとの混合液(CuSO4水溶液:2-プロパノール(体積比)=95:5)
・ 移動相流量:1.0mL/分間
・ 検出器:UV254nm
・ 注入量:20μL
【0128】
<発泡シート中のポリ乳酸樹脂の結晶化温度の測定>
実施例1~7及び比較例1~3の発泡シート中のポリ乳酸樹脂の結晶化温度は、JIS K 7122-1987(プラスチックの転移熱測定方法)に準拠した示差走査熱量(DSC)測定から求めた。
具体的には、前記発泡シートから切り出した5mg~10mgの試料を、示差走査熱量計装置(Q-2000型、ティーエイインスツルメント社製)の容器に入れ、10℃から200℃まで昇温速度10℃/分間で昇温し10分間保持後、200℃から10℃まで10℃/分間で降温した。この際、発熱ピークのピークトップ温度をポリ乳酸の結晶化温度として測定した。結果は下記表1~表3に示した。なお、結晶化ピークが明確に見えないものは、下記表1~表3において「不明瞭」と記載した。
【0129】
<発泡シート中のポリ乳酸樹脂のガラス転移温度の測定>
実施例1~7及び比較例1~3の発泡シート中のポリ乳酸樹脂の結晶化温度は、JIS K 7122-1987(プラスチックの転移熱測定方法)に準拠した示差走査熱量(DSC)測定から求めた。
具体的には、前記発泡シートから切り出した5mg~10mgの試料を、示差走査熱量計装置(Q-2000型、ティーエイインスツルメント社製)の容器に入れ、10℃から200℃まで昇温速度10℃/分間で昇温してポリ乳酸のガラス転移温度を測定した。結果は下記表1~表3に示した。
【0130】
<発泡シート中のポリ乳酸樹脂の冷結晶化温度の測定>
実施例1~7及び比較例1~3の発泡シート中のポリ乳酸樹脂の結晶化温度は、JIS K 7122-1987(プラスチックの転移熱測定方法)に準拠した示差走査熱量(DSC)測定から求めた。
具体的には、前記発泡シートから切り出した5mg~10mgの試料を、示差走査熱量計装置(Q-2000型、ティーエイインスツルメント社製)の容器に入れ、10℃から200℃まで昇温速度10℃/分間で昇温した。この際、ガラス転移点以上の温度域で観測される発熱ピークのピークトップ温度をポリ乳酸の冷結晶化温度として測定した。結果は下記表1~表3に示した。
【0131】
[評価]
<深絞り容器の成型性>
実施例1~7及び比較例1~3の成型体を観察し、成型性を以下の評価基準に基づいて評価した。評価結果は5が最も良く、許容範囲は3以上とした。
-評価基準-
5:破れ及び皺がなく、角部なども含めて金型の形状をよく転写できている
4:破れ及び皺がないが、角部などの形状がやや丸みがかっていて賦形がやや甘い
3:破れ及び皺がないが、成型体(カップ焼きそば用容器)の深さが、金型の深さに対して95%以上100%未満の深さ
2:破れている部分が確認できる、若しくは、成型体(カップ焼きそば用容器)の深さが、金型の深さに対して95%未満の深さ
1:大きな破れがある
【0132】
<深絞り容器の耐熱性>
25℃の水を、実施例1~7及び比較例1~3の成型体(カップ焼きそば用容器)の開口部のすりきりまで入れ、成型体内に入れた水の質量を測定し、25℃における水の密度で体積に換算した値を成型体の「初期体積」とした。
次に、実施例1~7及び比較例1~3の成型体を120℃で10分間加熱後に、25℃の水を開口部のすりきりまで入れ、成型体内に入れた水の質量を測定し、25℃における水の密度で体積に換算した値を成型体の「加熱後体積」とした。
下記計算式(V)により成型体の加熱前後の体積変化率を算出し、この体積変化率を成型体の耐熱性の指標として、以下の評価基準に基づいて評価した。評価結果は5が最も良く、許容範囲は3以上とした。
体積変化率(%)=(初期体積-加熱後体積)/初期体積×100 ・・・ 計算式(V)
-評価基準-
5:体積変化率が2%未満である
4:体積変化率が2%以上4%未満である
3:体積変化率が4%以上6%未満である
2:体積変化率が6%以上10%未満である
1:体積変化率が10%以上である、若しくは、もとの形状が認められないほど変形している
【0133】
【0134】
【0135】
【0136】
本発明の態様としては、例えば、以下のものなどが挙げられる。
<1> 構成モノマー単位として乳酸のD体及び乳酸のL体のいずれか一方を98モル%以上含むポリ乳酸を含有する組成物を用いて、結晶化度Aが7.5%以下となるように発泡シートを作製する発泡シート作製工程と、
前記発泡シートの結晶化度Aと、前記発泡シートを成型した成型体の結晶化度Bとの差(B-A)が20.0%以上40.0%以下となるように前記発泡シートを熱成型する成型工程と、
を含むことを特徴とする成型体の製造方法である。
<2> 前記発泡シート作製工程が、前記発泡シートの前記結晶化度Aが3.8%以下となるように前記発泡シートを作製する工程である、前記<1>に記載の成型体の製造方法である。
<3> 前記成型工程が、前記発泡シートの前記結晶化度Aと、前記成型体の前記結晶化度Bとの前記差(B-A)が30.0%以上40.0%以下となるように前記発泡シートを熱成型する工程である、前記<1>から<2>のいずれかに記載の成型体の製造方法である。
<4> 前記発泡シート作製工程が、前記発泡シートのかさ密度が0.063g/cm3以上0.250g/cm3以下となるように前記発泡シートを作製する工程である、前記<1>から<3>のいずれかに記載の成型体の製造方法である。
<5> 前記発泡シート作製工程が、前記発泡シート中の発泡の発泡径が、メジアン径で800μm以下となるように前記発泡シートを作製する工程である、前記<1>から<4>のいずれかに記載の成型体の製造方法である。
<6> 前記発泡シート作製工程が、
圧縮性流体の存在下において、前記ポリ乳酸と発泡核剤とを、前記ポリ乳酸の融点以上の温度で混練して前記ポリ乳酸を含有する組成物を得る混練処理と、
前記ポリ乳酸を含有する組成物から前記圧縮性流体を除去するときに、前記ポリ乳酸の結晶化温度以上の温度で、前記ポリ乳酸を含有する組成物を発泡させて発泡シートを得る発泡処理と、
を含む、前記<1>から<5>のいずれかに記載の成型体の製造方法である。
<7> 前記ポリ乳酸の融点以上の温度が、前記ポリ乳酸の融点に対して+10℃以上+35℃以下である、前記<6>に記載の成型体の製造方法である。
<8> 前記ポリ乳酸の結晶化温度以上の温度が、前記ポリ乳酸の冷結晶化温度に対して+10℃以上+20℃以下である、前記<6>から<7>のいずれかに記載の成型体の製造方法である。
<9> 前記発泡処理において、発泡した前記ポリ乳酸を含有する組成物をサーキュラーダイで押し出して発泡シートを得る、前記<6>から<8>のいずれかに記載の成型体の製造方法である。
<10> 前記混錬処理において、前記ポリ乳酸を含有する組成物100質量部に対して前記圧縮性流体を2質量部以上7質量部以下供給する、前記<6>から<9>のいずれかに記載の成型体の製造方法である。
<11> 前記成型工程が、
前記発泡シートを、前記ポリ乳酸のガラス転移温度以上の温度で加熱する加熱処理と、
前記加熱処理後の発泡シートを、型を用いて前記ポリ乳酸の冷結晶化温度近傍の温度で加熱しながら成型する加熱成型処理と、
を含む、前記<1>から<10>のいずれかに記載の成型体の製造方法である。
<12> 前記加熱処理が、60℃以上110℃以下にて15秒間以内で行われる、前記<11>に記載の成型体の製造方法である。
<13> 前記ポリ乳酸の冷結晶化温度近傍の温度が、前記ポリ乳酸の冷結晶化温度に対して+20℃以下である、前記<11>から<12>のいずれかに記載の成型体の製造方法である。
<14> 前記加熱成型処理が、100℃以上130℃以下にて5秒間以上で行われる、前記<11>から<13>のいずれかに記載の成型体の製造方法である。
<15> 成型体が深絞り容器である、前記<1>から<14>のいずれかに記載の成型体の製造方法である。
<16> 前記ポリ乳酸を含有する組成物が、更に発泡核材及び鎖伸長剤を含有する、前記<1>から<15>のいずれかに記載の成型体の製造方法である。
<17> 前記発泡核材が、シリカ、酸化チタン、及び層状珪酸塩の少なくともいずれかである、前記<16>に記載の成型体の製造方法である。
<18> 前記鎖伸長剤が、エポキシ系鎖伸長剤及びイソシアネート系鎖伸長剤の少なくともいずれかである、前記<16>から<17>のいずれかに記載の成型体の製造方法である。
<19> 構成モノマー単位として乳酸のD体及び乳酸のL体のいずれか一方を98モル%以上含むポリ乳酸を含有する組成物を用いて、結晶化度Aが7.5%以下となるように発泡シートを作製する発泡シート作製手段と、
前記発泡シートの結晶化度Aと、前記発泡シートを成型した成型体の結晶化度Bとの差(B-A)が20.0%以上40.0%以下となるように前記発泡シートを熱成型する成型手段と、
を有することを特徴とする成型体の製造装置である。
【0137】
前記<1>から<18>のいずれかに記載の成型体の製造方法及び前記<19>に記載の成型体の製造装置は、従来における前記諸問題を解決し、前記本発明の目的を達成することができる。