(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176755
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】コーティング液及び突起形成方法
(51)【国際特許分類】
C09D 201/00 20060101AFI20241212BHJP
C08J 3/09 20060101ALI20241212BHJP
C09D 7/20 20180101ALI20241212BHJP
C09D 7/62 20180101ALI20241212BHJP
C12M 1/00 20060101ALN20241212BHJP
【FI】
C09D201/00
C08J3/09 CEY
C09D7/20
C09D7/62
C12M1/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095536
(22)【出願日】2023-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100211018
【弁理士】
【氏名又は名称】財部 俊正
(74)【代理人】
【識別番号】100211100
【弁理士】
【氏名又は名称】福島 直樹
(72)【発明者】
【氏名】久野 豪士
【テーマコード(参考)】
4B029
4F070
4J038
【Fターム(参考)】
4B029AA21
4B029BB01
4B029CC02
4B029GB09
4F070AA32
4F070AA47
4F070AA52
4F070AA53
4F070AA58
4F070AB09
4F070AC14
4F070AC23
4F070AC34
4F070AC39
4F070AE28
4F070AE30
4F070CA02
4F070CB12
4J038CG141
4J038CH031
4J038HA216
4J038KA06
4J038KA15
4J038NA01
4J038NA07
4J038PB01
(57)【要約】
【課題】高い強度を示す突起が高い均一性で設けられたコーティング層を形成可能なコーティング液を提供すること。
【解決手段】(1)異形粒子と、(2)ポリマーと、(3)前記ポリマーの貧溶媒と、(4)前記ポリマーの良溶媒であって、前記貧溶媒よりも沸点が低い良溶媒と、を含有し、前記成分(2)の体積に対する前記成分(1)の体積の比が1/4~10/1であり、前記成分(2)の体積及び前記成分(3)の体積の合計に対する、前記成分(1)の体積の比が1/10~1/2であり、前記成分(3)の体積に対する前記成分(4)の体積の比が1/1~100/1である、コーティング液。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)異形粒子と、(2)ポリマーと、(3)前記ポリマーの貧溶媒と、(4)前記ポリマーの良溶媒であって、前記貧溶媒よりも沸点が低い良溶媒と、を含有し、
前記成分(2)の体積に対する前記成分(1)の体積の比が1/4~10/1であり、
前記成分(2)の体積及び前記成分(3)の体積の合計に対する、前記成分(1)の体積の比が1/10~1/2であり、
前記成分(3)の体積に対する前記成分(4)の体積の比が1/1~100/1である、コーティング液。
【請求項2】
前記異形粒子の長径が0.1~100μmであり、
前記異形粒子の短径が0.01~10μmであり、
前記異形粒子の短径に対する、前記異形粒子の長径の比が2.0以上である、請求項1に記載のコーティング液。
【請求項3】
前記貧溶媒がフッ素基を有する、請求項1に記載のコーティング液。
【請求項4】
前記貧溶媒の沸点が大気圧下において200℃以下である、請求項1に記載のコーティング液。
【請求項5】
前記貧溶媒の表面張力が22mN/m以下である、請求項1に記載のコーティング液。
【請求項6】
前記異形粒子が、(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤で表面改質されており、
前記シランカップリング剤の溶解度パラメータと前記ポリマーの溶解度パラメータとの差が5以下である、請求項1に記載のコーティング液。
【請求項7】
下記〔1〕~〔3〕工程を有する、突起形成方法。
〔1〕請求項1~6のいずれか一項に記載のコーティング液を支持基材に塗布して塗膜を形成する工程
〔2〕前記塗膜から前記良溶媒を揮発させ、前記ポリマーを不溶化させる工程
〔3〕前記ポリマーが不溶化された前記塗膜から前記貧溶媒を揮発させる工程
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーティング液及び突起形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生物がもつ優れた機能を模倣する試みはバイオミメティクスと呼ばれ、代表的なものに生物や植物の表面に存在する凹凸構造を模倣して機能を発現するものがある。例えば、フィルムの表面に蛾の目と同じ突起構造を形成し、反射率を低減する反射防止膜が提案されている。これは表面に設けた凹凸構造の空間占有率が空気界面から基材側にかけて連続的に変化し、実質的な屈折率が空気界面から基材側にかけて連続的に変化する屈折率傾斜構造が形成されていることで、反射界面が無くなり、反射が起こらなくなることを利用した反射防止膜である。また、蓮の葉の表面に存在する階層構造をもつ突起は、対水接触角が150°以上の超撥水性を示すことが知られている。
【0003】
このような微細な凹凸構造が形成された物品として、特許文献1には表面に特定の微細凹凸構造を有する反射防止物品が開示されている。特許文献2には、基板、該基板上に形成されたマイクロ流路、該マイクロ流路内に形成されたナノワイヤを含み、ナノワイヤの一部が、マイクロ流路内に埋め込まれている生体分子抽出用チップが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-209540号公報
【特許文献2】特許6606786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
表面の少なくとも一部に突起が設けられ、微細な凹凸構造を有するコーティング層を備えるデバイスによれば、細胞、細胞外小胞及びタンパク質等の生体試料を捕捉することができると考えられる。そして、生体試料中の目的成分を捕集する効率等の点から、コーティング層上には、強度が高い突起が高い均一性で形成されていることが望ましい。
【0006】
本発明の目的は、高い強度を示す突起が高い均一性で設けられたコーティング層を形成可能なコーティング液を提供することにある。本発明の目的は、当該コーティング液を用いた突起形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、異形粒子、ポリマー、ポリマーの貧溶媒、当該貧溶媒よりも沸点が低いポリマーの良溶媒を特定の割合で含有するコーティング液によって上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の各態様は以下に示す[1]~[7]である。
[1]
(1)異形粒子と、(2)ポリマーと、(3)前記ポリマーの貧溶媒と、(4)前記ポリマーの良溶媒であって、前記貧溶媒よりも沸点が低い良溶媒と、を含有し、前記成分(2)の体積に対する前記成分(1)の体積の比が1/4~10/1であり、前記成分(2)の体積及び前記成分(3)の体積の合計に対する、前記成分(1)の体積の比が1/10~1/2であり、前記成分(3)の体積に対する前記成分(4)の体積の比が1/1~100/1である、コーティング液。
[2]
前記異形粒子の長径が0.1~100μmであり、前記異形粒子の短径が0.01~10μmであり、前記異形粒子の短径に対する、前記異形粒子の長径の比が2.0以上である、[1]に記載のコーティング液。
[3]
前記貧溶媒がフッ素基を有する、[1]又は[2]に記載のコーティング液。
[4]
前記貧溶媒の沸点が大気圧下において200℃以下である、[1]~[3]のいずれかに記載のコーティング液。
[5]
前記貧溶媒の表面張力が22mN/m以下である、[1]~[4]のいずれかに記載のコーティング液。
[6]
前記異形粒子が、(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤で表面改質されており、前記シランカップリング剤の溶解度パラメータと前記ポリマーの溶解度パラメータとの差が5以下である、[1]~[5]のいずれかに記載のコーティング液。
[7]
下記〔1〕~〔3〕工程を有する、突起形成方法。
〔1〕[1]~[6]のいずれかに記載のコーティング液を支持基材に塗布して塗膜を形成する工程
〔2〕前記塗膜から前記良溶媒を揮発させ、前記ポリマーを不溶化させる工程
〔3〕前記ポリマーが不溶化された前記塗膜から前記貧溶媒を揮発させる工程
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高い強度を示す突起が高い均一性で設けられたコーティング層を形成可能なコーティング液を提供することができる。本発明によれば、当該コーティング液を用いた突起形成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は異形粒子の長径及び短径を示す模式図である。
【
図2】
図2は異形粒子の埋没部位及び露出部位を示す概略図である。
【
図3】
図3はデバイスの製造方法における工程〔1〕を説明するための模式図である。
【
図4】
図4はデバイスの製造方法における工程〔2〕を説明するための模式図である。
【
図5】
図5はデバイスの製造方法における工程〔3〕を説明するための模式図である。
【
図6】
図6は実施例2のコーティング層表面の走査型電子顕微鏡写真である。
【
図7】
図7は実施例8のコーティング層表面の走査型電子顕微鏡写真である。
【
図8】
図8は実施例9のコーティング層表面の走査型電子顕微鏡写真である。
【
図9】
図9は比較例1のコーティング層表面の走査型電子顕微鏡写真である。
【
図10】
図10は比較例2のコーティング層表面の走査型電子顕微鏡写真である。
【
図11】
図11は比較例3のコーティング層表面の走査型電子顕微鏡写真である。
【
図12】
図12は比較例4のコーティング層表面の走査型電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。本明細書において「(メタ)アクリロイル基」はメタクリロイル基又はアクリロイル基を示し、「(メタ)アクリレート」はメタクリレート又はアクリレートを示す。以下で例示する材料は、特に断らない限り、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0012】
本実施形態に係るコーティング液は、(1)異形粒子と、(2)ポリマーと、(3)ポリマーの貧溶媒と、(4)ポリマーの良溶媒であって、貧溶媒よりも沸点が低い良溶媒と、を含有する。当該コーティング液において、成分(2)の体積に対する成分(1)の体積の比が1/4~10/1であり、成分(2)の体積及び成分(3)の体積の合計に対する、成分(1)の体積の比が1/10~1/2であり、成分(3)の体積に対する成分(4)の体積の比が1/1~100/1である。
【0013】
本実施形態に係るコーティング液によれば、ポリマー層と、異形粒子とを有し、異形粒子がポリマー層への埋没部位とポリマー層からの露出部位とを有し、異形粒子のポリマー層からの露出部位によって突起が表面に形成されているコーティング層を形成可能である。当該コーティング層は、高い強度を示す突起が高い均一性で設けられているため、生体試料捕集用デバイス等の用途に好適に用いることができる。本明細書において「生体試料」とは、動物(例えば、ヒト)又は植物から得られる試料である。生体試料としては、例えば、尿、血液、組織、細胞及び細胞外小胞が挙げられる。これらの生体試料にはDNA、RNA(例えば、miRNA)、タンパク質等が含まれていてよい。
【0014】
<(1)異形粒子>
異形粒子は形状異方性を有する粒子である。「形状異方性を有する」とは、形状が、球以外の形状かつ正多面体以外の形状であることをいう。
【0015】
本明細書において「異形粒子の長径」とは、異形粒子の最大粒径を示す。「異形粒子の短径」とは、異形粒子の長径方向の軸(長軸)に垂直な方向の最大粒径を示す。異形粒子の長径及び短径は走査型電子顕微鏡写真上でこれらの長さを測定することで算出できる。
【0016】
図1は異形粒子の一例である。
図1に示す異形粒子4においてLは長径を示し、Sは短径を示す。
図2は異形粒子4によって形成される突起の一例である。異形粒子4を
図2に示すようにポリマー層3に埋没させることで、埋没部位4a及び露出部位4bが形成される。異形粒子4は埋没部位4aにおいてポリマー層3に固定化され、露出部位4bによって突起が形成される。
【0017】
異形粒子の長径は、異形粒子の一部をポリマー層に埋没させつつ、異形粒子をポリマー層から露出させることが可能で、突起の表面積を増やして生体試料を捕捉する性能を向上可能であることから、0.1~100μmであることが好ましい。異形粒子の長径は、生体試料を捕捉する性能を向上するのに好適であることから、0.2μm以上、0.5μm以上、1.0μm以上、2.0μm以上、3.0μm以上、4.0μm以上、5.0μm以上、8.0μm以上、又は10.0μm以上であることが好ましい。異形粒子の長径は、突起の強度を向上させるのに好適であることから、80.0μm以下、50.0μm以下、30.0μm以下、20.0μm以下、15.0μm以下、12.0μm以下、10.0μm以下、8.0μm以下、6.0μm以下、5.0μm以下、3.0μm以下、又は1.0μm以下であることが好ましい。
【0018】
異形粒子の短径は、異形粒子の強度を高めることで突起の強度を向上しつつ、突起の表面積を増やして生体試料を捕捉する性能を向上可能であることから、0.01~10μmであることが好ましい。異形粒子の短径は、突起の強度を高めるのに好適であることから、0.02μm以上、0.04μm以上、0.05μm以上、0.10μm以上、又は0.15μm以上であることが好ましく、1.0μm以上又は5.0μm以上であってもよい。異形粒子の短径は、生体試料を捕捉する性能を向上するのに好適であることから、8.0μm以下、4.0μm以下、2.0μm以下、1.0μm以下、0.50μm以下、0.40μm以下、又は0.30μm以下であることが好ましい。
【0019】
異形粒子の短径(単位:μm)に対する異形粒子の長径(単位:μm)の比(L/S)は、異形粒子のポリマー層への埋没部位とポリマー層からの露出部位とをいずれも長くすることができ、突起の強度と生体試料を捕捉する性能を両立することができることから、2.0以上であることが好ましい。異形粒子の短径に対する異形粒子の長径の比は、突起の強度と生体試料を捕捉する性能とを向上させるために好適であることから、3.0以上、4.0以上、5.0以上、8.0以上、10.0以上、15.0以上、20.0以上、25.0以上、50.0以上、75.0以上又は100.0以上であることがより好ましい。異形粒子の短径に対する異形粒子の長径の比は150以下、125以下、100以下、75以下、50以下、30以下又は25以下であってよい。
【0020】
異形粒子の材質としては特に限定はないが、粒子の合成容易性から、シリカ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ニッケル、酸化アルミナ、酸化イットリア、酸化スズ、酸化インジウム、酸化インジウムスズ、シリコンカーバイド、金、銀、カーボン及び窒化シリコン等を挙げることができる。異形粒子の材質は、異形粒子の合成が特に容易であることから、酸化亜鉛及び酸化チタンからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0021】
異形粒子は、シランカップリング剤で表面改質されていてよい。シランカップリング剤は、エチレン性不飽和基(例えば、ビニル基、(メタ)アクリロイル基)、エポキシ基、アミノ基、イソシアヌレート基、イソシアネート基、ウレイド基、メルカプト基、又はポリスルフィド基(例えばテトラスルフィド基)等の反応性官能基を有していてよい。
【0022】
(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤としては、例えば、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン及び3-アクリロキシプロピルトリメトキシシランが挙げられる。ビニル基を有するシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン及びp-スチリルトリメトキシシランが挙げられる。エポキシ基を有するシランカップリング剤としては、例えば、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン及び3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランが挙げられる。アミノ基を有するシランカップリング剤としては、例えば、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン及び3-アミノプロピルトリエトキシシランが挙げられる。イソシアヌレート基を有するシランカップリング剤としては、例えば、トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートが挙げられる。イソシアネート基を有するシランカップリング剤としては、例えば、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシランが挙げられる。ウレイド基を有するシランカップリング剤としては、例えば、3-ウレイドプロピルトリアルコキシシランが挙げられる。メルカプト基を有するシランカップリング剤としては、例えば、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシランが挙げられる。ポリスルフィド基を有するシランカップリング剤としては、例えば、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドが挙げられる。
【0023】
シランカップリング剤は、(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤であることが好ましい。
【0024】
シランカップリング剤の溶解度パラメータとポリマーの溶解度パラメータとの差は、5以下であることが好ましい。ポリマー層への埋没部位の異形粒子の表面を構成する成分とポリマーとの溶解度パラメータの差が小さいことで、異形粒子とポリマーとの相溶性を高め、異形粒子がポリマー層から脱離しづらくなるため、突起の強度を更に高めることができる。突起の強度を高めるのに好適であることから、シランカップリング剤の溶解度パラメータとポリマーの溶解度パラメータとの差は4以下であることがより好ましく、3以下が更に好ましく、2以下であることが最も好ましい。本明細書においては、Hansen溶解度パラメータ(HSP値)を溶解度パラメータの値として使用する。
【0025】
シランカップリング剤の溶解度パラメータは、10以上、11以上、又は12以上であってよく、15以下、14以下、又は13以下であってよい。
【0026】
異形粒子の粒径分布の指標である分散度(多分散指数)は、コーティング層において突起のばらつきを抑制し、捕集される生体試料の量を一定に保つために好適であることから、10%以下であることが好ましく、8%以下であることがより好ましく、5%以下であることが特に好ましい。本明細書において「分散度」は、動的光散乱法により測定し、キュムラント法により求めた多分散指数を分散度として用いる。
【0027】
異形粒子の含有量は、コーティング液の全質量を基準として、1.0質量%以上、3.0質量%以上、5.0質量%以上、7.0質量%以上、9.0質量%以上、11.0質量%以上、13.0質量%以上、15.0質量%以上、又は17.0質量%以上であってよく、25.0質量%以下、20.0質量%以下、18.0質量%以下、15.0質量%以下、13.0質量%以下、11.0質量%以下、又は9.0質量%以下であってよい。異形粒子がシランカップリング剤で表面改質されている場合、異形粒子及びシランカップリング剤の合計含有量が、異形粒子の含有量として上述した範囲内であってよい。
【0028】
<(2)ポリマー>
コーティング液は、ポリマーを含有する。ポリマーとしては、例えば、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリ(エチル)アクリレート等のポリ(メタ)アクリレート、ポリトリメチロールプロパンエトキシトリ(メタ)アクリレート、ポリペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ポリトリメチロールプロパンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、ポリペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ポリペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ポリジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリトリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ポリエトキシ化フェニル(メタ)アクリレート等の脂肪族ポリマー;ポリスチレン、ポリα-メチルスチレン、ポリビニルトルエン、ポリp-メチルスチレン、ポリ2-メチルスチレン、ポリ3-メチルスチレン、ポリ4-メチルスチレン、ポリ4-エチルスチレン、ポリ4-tert-ブチルスチレン、ポリ3,4-ジメチルスチレン、ポリ4-メトキシスチレン、ポリ4-エトキシスチレン、ポリ2-クロロスチレン、ポリ3-クロロスチレン、ポリ4-クロロスチレン、ポリ2,4-ジクロロスチレン、ポリ2,6-ジクロロスチレン、ポリ4-クロロ-3-メチルスチレン、ポリジビニルベンゼン、ポリ1-ビニルナフタレン、ポリ2-ビニルピリジン、ポリ4-ビニルピリジン、ポリp-スチレンスルホン酸ナトリウム等の芳香族ポリマーが挙げられる。
【0029】
ポリマーは、入手容易性から、ポリメチル(メタ)アクリレート及びポリスチレンからなる群より選択される1種を含むことが好ましい。ポリマーは、相当するモノマーを単一のモノマーの重合によって得られるホモポリマーであってもよく、複数のモノマーの混合物の重合によって得られるコポリマーであってもよい。モノマーの重合によってポリマーを得る際には必要に応じて各種添加剤が用いられてよい。添加剤としては、例えば、開始剤、酸化防止剤、重合禁止剤、レベリング剤、シランカップリング剤等が挙げられる。モノマーの重合によってポリマーを得る際には開始剤を用いることが好ましい。開始剤としては、例えば、ペルオキソ二硫酸カリウム、過酸化水素、アゾビスイソブチロニトリル、過酸化ベンゾイル等が挙げられる。
【0030】
ポリマーの溶解度パラメータは、7以上、8以上、又は9以上であってよく、12以下、11以下、又は10以下であってよい。
【0031】
ポリマーの含有量は、コーティング液の全質量を基準として、1.0質量%以上、2.0質量%以上、3.0質量%以上、4.0質量%以上、5.0質量%以上、又は6.0質量%以上であってよく、20.0質量%以下、15.0質量%以下、12.0質量%以下、10.0質量%以下、8.5質量%以下、又は7.0質量%以下であってよい。
【0032】
<ポリマーの貧溶媒>
コーティング液は、ポリマーの貧溶媒を含有する。「ポリマーの貧溶媒」とは、該ポリマーを溶解しない又は溶解しにくい液体を示す。粉末状のポリマーを液体に入れて24時間攪拌した後、液体から固体を回収して乾燥した時、元のポリマーからの重量減少が50%未満の場合、その液体はポリマーの貧溶媒である。
【0033】
コーティング液がポリマーの貧溶媒を含むことで、ポリマーの良溶媒が揮発した際にポリマーが不溶化するため、異形粒子が固定化される。ポリマーの良溶媒が揮発した際に貧溶媒があることで、異形粒子が液面から露出せず、この状態で粒子が固定化されるため、粒子の凝集を抑制可能である。その結果として、高い均一性でコーティング層の表面に突起が形成される。コーティング液が貧溶媒を含まない場合、良溶媒が揮発した際に異形粒子が固定化されていないため、粒子が凝集し、突起が形成されない領域が発生するか、又は突起の構造にばらつきを生じる。
【0034】
ポリマーの貧溶媒は、フッ素基(-F)を有することが好ましい。この場合、ポリマーの貧溶媒の表面張力が低下し、ポリマーの良溶媒が揮発した際に、コーティング液の上層にポリマーの貧溶媒、下層に不溶化したポリマーという2層構造がより形成されやすくなる。これにより、異形粒子の根本をポリマーが固定した構造が形成されやすくなるため、強度が更に高い突起が形成可能になる。
【0035】
フッ素基を有するポリマーの貧溶媒としては、特にこれらに限定されないが、例えば、モノフルオロベンゼン、ジフルオロベンゼン、トリフルオロベンゼン、テトラフルオロベンゼン、ヘキサフルオロベンゼン、オクタフルオロシクロペンテン、ヘキサフルオロイソプロピルメチルエーテル、オクタフルオロトルエン、テトラデカフルオロメチルシクロヘキサン、エイコサフルオロノナン、オクタフルオロオクタン、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、テトラデカフルオロ-2-メチルペンタン、ヘキサデカフルオロ-n-オクチルブロミド、テトラデカフルオロヘキサン、ペンタデカフルオロトリエチルアミン、ヘキサコサフルオロドデカン、ヘキサデカフルオロへプタン、ヘキサデカフルオロ(1,3-ジメチルシクロヘキサン)、へプタコサフルオロトリブチルアミン、オクタデカフルオロデカヒドロナフタレンペルフルオロデカリン、パーフルオロ(2-ブチルテトラヒドロフラン)、パーフルオロトリアミルアミン、1,1,2-トリクロロトリフルオロエタン、1,2-ジクロロテトラフルオロエタン、1,3-ジクロロテトラフルオロプロパン、1-クロロ-1,2,2,2-テトラフルオロエタン、1-ブロモ-1,1,2,2-テトラフルオロエタン、1-フルオロ-1,2-ジクロロエタン、1-フルオロ-2,2,3,3-テトラクロロプロペン、1-フルオロ-2,2,3,3-テトラフルオロプロペン、1-フルオロ-2,3,3,3-テトラクロロプロペン、1-フルオロ-3,3-ジクロロプロペン、1-フルオロ-4-クロロ-2-ニトロベンゼン、1,1,1-トリフルオロエタン、1,1,2-トリクロロ-1,2,2-トリフルオロエタン、1,1-ジクロロ-1-フルオロエタン、1,1-ジクロロ-2,2,2-トリフルオロエタン、1,2,2-トリフルオロエタン、1,2-ジクロロ-1,1,2,2-テトラフルオロエタン、1,2-ジクロロ-1,2,2-トリフルオロエタン、1,2-ジクロロ-1,2,2-トリフルオロエタノール、1,2-ジフルオロ-1,2-ジクロロエチレン、1,2-ジフルオロエタン、1,3-ジクロロ-1,1,2,2-テトラフルオロエタン、1,3-ジクロロ-1,2,2-トリフルオロプロパン、1,4-ジフルオロベンゼン、2,2-ジクロロ-1,1,1-トリフルオロエタン、2,2-ジフルオロエタン、2,3-ジフルオロ-1,1,2,2-テトラクロロエタン、2,3-ジフルオロ-1,1,2,2-テトラフルオロエタン、2,4-ジフルオロベンゼン、3,3-ジクロロ-1,1,1-トリフルオロプロペン、3,3-ジクロロ-1,1,2,2-テトラフルオロプロペン、3,3-ジフルオロ-1,2-ジクロロプロペン、3,3-ジフルオロ-1,2-エポキシプロパン、3,4-ジフルオロ-1,1,2,2-テトラクロロエタン等を挙げることができる。
【0036】
ポリマーの貧溶媒の表面張力は、22mN/m以下であることが好ましい。表面張力が22mN/m以下であることにより、コーティング層の表面に貧溶媒が集まりやすく、貧溶媒とポリマーの2層構造を形成しやすい。ポリマーの貧溶媒の表面張力は20mN/m以下であることがより好ましく、18mN/m以下であることが更に好ましく、16mN/m以下であることが最も好ましい。環境に排出された時の自然破壊の影響を抑制するという観点では、表面張力が高い方が好ましく、このため、表面張力は13N/m以上であることが好ましく、15N/m以上であることがより好ましく、17N/m以上であることが更に好ましく、19N/m以上であることが最も好ましい。
【0037】
ポリマーの貧溶媒の沸点は、コーティングの乾燥時間を短縮するため、大気圧下において、200℃以下、175℃以下又は150℃以下であることが好ましく、140℃以下、130℃以下、120℃以下、又は100℃以下であってもよい。ポリマーの貧溶媒の沸点は、大気圧下において、ポリマーの良溶媒の沸点超であり、80℃以上、90℃以上、100℃以上、又は110℃以上であってよい。
【0038】
ポリマーの貧溶媒の含有量は、コーティング液の全質量を基準として、1.0質量%以上、2.0質量%以上、3.0質量%以上、4.0質量%以上、5.0質量%以上、又は6.0質量%以上であってよく、20.0質量%以下、15.0質量%以下、12.0質量%以下、10.0質量%以下、8.5質量%以下、又は7.0質量%以下であってよい。
【0039】
<ポリマーの良溶媒>
コーティング液は、ポリマーの良溶媒を含有する。「ポリマーの良溶媒」とは、該ポリマーを溶解する液体のことを示す。粉末状のポリマーを液体に入れて24時間攪拌した後、液体から固体を回収して乾燥した時、元のポリマーからの重量減少が50%以上の場合、その液体はポリマーの良溶媒である。
【0040】
ポリマーの良溶媒を含有することにより、塗工前のコーティング液ではポリマーが溶解した状態にあり、コーティング(塗膜)の均一性を高めることができる。ポリマーの良溶媒を含有しない場合、コーティング液には不溶化したポリマー固体と異形粒子が分散した状態にあり、コーティングした異形粒子を支持基材上に固定化することができず、突起の強度が低下する。良溶媒が先に揮発することで、前述の貧溶媒とポリマーの2層構造が形成されることから、良溶媒の沸点は貧溶媒よりも低いものである。
【0041】
大気圧下におけるポリマーの貧溶媒の沸点T3と、大気圧下におけるポリマーの良溶媒の沸点T4との差(T3-T4)は、貧溶媒とポリマーとの2層構造を形成しやすくし、突起の強度を高めるのに更に好適であることから、10℃以上であることが好ましく、20℃以上であることがより好ましく、30℃以上であることが最も好ましい。沸点が低すぎると保存中にコーティング液が乾燥してしまう原因となることから、T3-T4は、70℃以下、又は50℃以下であることが好ましく、40℃以下、30℃以下、又は10℃以下であってもよい。
【0042】
ポリマーの良溶媒の沸点は、大気圧下において、90℃以下、80℃以下、70℃以下、60℃以下、50℃以下、又は40℃以下であってよく、30℃以上、40℃以上、50℃以上、又は60℃以上であってよい。
【0043】
ポリマーの良溶媒としては、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、アセトン、テトラヒドロフラン、トルエン、酢酸エチル等を好適に用いることができる。
【0044】
ポリマーの良溶媒の含有量は、コーティング液の全量を基準として、50質量%以上、60質量%以上、又は70質量%以上であってよく、90質量%以下、85質量%以下、又は80質量%以下であってよい。
【0045】
<成分(1)/成分(2)>
成分(2)(ポリマー)の体積に対する成分(1)(異形粒子)の体積の比(成分(1)/成分(2))は1/4~10/1である。成分(1)/成分(2)がこの範囲内にあることで、異形粒子をポリマーで固定化することで突起の強度を高めつつ、異形粒子がポリマーで完全に埋没することがないため、突起を形成可能である。突起の強度を高めるのに好適であることから、成分(1)/成分(2)の上限は8/1以下であることが好ましく、6/1以下であることがより好ましく、4/1以下であることが更に好ましく、2/1以下であることが最も好ましい。突起の高さを向上させ、生体試料の捕捉性能を向上するのに好適であることから、成分(1)/成分(2)の下限は、1/3以上であることが好ましく、1/2以上であることがより好ましく、1/1以上であることが更に好ましく、2/1以上であることが最も好ましい。
【0046】
<成分(1)/[成分(2)+成分(3)]>
成分(2)(ポリマー)の体積及び成分(3)(ポリマーの貧溶媒)の体積の合計に対する、成分(1)(異形粒子)の体積の比(成分(1)/[成分(2)+成分(3)])は1/10~1/2である。成分(1)/[成分(2)+成分(3)]が上記範囲にあることで、良溶媒が揮発した時に貧溶媒とポリマーの2層構造が形成され、異形粒子の凝集を抑制することができる。異形粒子の凝集を抑制するのに好適であることから、成分(1)/[成分(2)+成分(3)]の上限は1/3以下であることが好ましく、1/4以下であることがより好ましく、1/5以下であることが最も好ましい。ポリマーに固定化されない異形粒子がコーティング層に含まれることを抑制するのに好適であることから、成分(1)/[成分(2)+成分(3)]の下限は1/8以上であることが好ましく、1/6以上であることがより好ましく、1/4以上であることが更に好ましく、1/3以上であることが最も好ましい。
【0047】
<成分(4)/成分(3)>
成分(3)(ポリマーの貧溶媒)の体積に対する成分(4)(ポリマーの良溶媒)の体積の比(成分(4)/成分(3))が1/1~100/1である。成分(4)/成分(3)が上記範囲にあることで、コーティング液に含まれるポリマーを溶解することができ、均一なコーティング層を形成可能である。また、良溶媒が揮発した際に貧溶媒とポリマーの2層構造が形成される。コーティング液に含まれるポリマーを溶解するのに好適であることから、成分(4)/成分(3)は2/1以上であることが好ましく、5/1以上であることがより好ましく、10/1以上であることが更に好ましく、20/1以上であることが最も好ましい。また、良溶媒が揮発した際に貧溶媒とポリマーの2層構造が形成されるために好適であることから、成分(4)/成分(3)は50/1以下であることが好ましく、30/1以下であることがより好ましく、15/1以下が更に好ましく、8/1以下であることが最も好ましい。
【0048】
<突起形成方法>
本発明のコーティング液を用いた突起形成方法は、下記〔1〕~〔3〕工程を有する。
〔1〕上記コーティング液を支持基材に塗布してコーティング液を含む塗膜を形成する工程
〔2〕塗膜からポリマーの良溶媒を揮発させ、ポリマーを不溶化させる工程
〔3〕ポリマーが不溶化された塗膜からポリマーの貧溶媒を揮発させる工程
【0049】
<工程〔1〕>
図3に示すように、工程〔1〕では、コーティング液を支持基材1に塗布して塗膜9を形成する。塗膜9は、支持基材1上に形成され、異形粒子4と、ポリマー、ポリマーの貧溶媒及びポリマーの良溶媒の混合物6と、を含む。
【0050】
支持基材1の材質は、特に制限されず、例えば、樹脂、ガラス、セラミックス等が挙げられる。支持基材1は、フィルム、シート、板の他、曲面を有する形状の構造物等如何なる形状の基材であってもよい。
【0051】
支持基材1として用いることができる樹脂としては、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、アセテートブチレートセルロース等のセルロース系樹脂;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリメタクリル酸メチル等のアクリル系樹脂;ポリウレタン系樹脂;ポリエーテル樹脂;ポリスルホン樹脂;ポリエーテルサルホン;ポリエーテルケトン等が挙げられる。
【0052】
支持基材1の表面には、耐擦傷性及び密着性等を高めるために、ハードコート層、アンカーコート層、高分子電解質層等のコート層が形成されていてもよく、密着性及び塗工性等を高めるために、UVオゾン洗浄、プラズマ処理、コロナ処理等の表面処理が施されていてもよい。
【0053】
コーティング液を支持基材1に塗布する方法としては特に限定はないが、はけ塗り、ディップコーティング、スピンコーティング、バーコーディング、流し塗り、スプレー塗装、ロール塗装、エアーナイフコーティング、ブレードコーティング、グラビアコーティング、マイクログラビアコーティング、スロットダイコーティングなど通常知られている各種の方法を用いることが可能である。
【0054】
<工程〔2〕>
工程〔2〕では、塗膜9からポリマーの良溶媒を揮発させ、ポリマーを不溶化させる。
図4に示すようにポリマーを不溶化させることで、ポリマーの貧溶媒7と、不溶化したポリマーを含むポリマー層3とからなる2層構造が形成される。ポリマー層3が異形粒子4を支持基材1上に固定化する。
【0055】
ポリマーの良溶媒を揮発させる方法としては特に限定はないが、加熱乾燥、真空乾燥、エアー乾燥、UV乾燥等の通常知られている各種の方法を用いることが可能である。
【0056】
<工程〔3〕>
工程〔3〕では、ポリマーが不溶化された塗膜からポリマーの貧溶媒を揮発させる。
図5に示すように、ポリマーの貧溶媒7を除去することで、支持基材1上に、ポリマー層3と、ポリマー層3に固定化された異形粒子4とを含むコーティング層2が形成される。
図2に示すように、異形粒子4のポリマー層3からの露出部位4bによって突起5が形成される。
【0057】
ポリマーの貧溶媒7を揮発させる方法としては特に限定はなく、ポリマーの良溶媒を揮発させる方法として上述した乾燥方法を適用可能である。
【0058】
<その他の工程>
突起形成方法は、コーティング層2の突起5が存在する側とは反対側の面の少なくとも一部を被覆層で被覆する工程を更に含んでいてよい。
【0059】
被覆層は、例えば、無機酸化物層又はイオン性ポリマー層であってよい。被覆層が無機酸化物層又はイオン性ポリマー層である場合、細胞外小胞捕捉率を更に高めることが可能になる。
【0060】
無機酸化物層は無機酸化物を含有する。無機酸化物としては、例えば、酸化亜鉛(ZnO)、酸化アルミナ(Al2O3)、シリカ(SiO2)、酸化ニッケル(NiO)、酸化チタン(TiO2)、酸化イットリア(Y2O3)、酸化スズ(例えば、SnO)、酸化インジウム、酸化インジウムスズ(ITO)が挙げられる。
【0061】
無機酸化物層は、細胞外小胞の捕捉率を高めるのに好適であることから、酸化亜鉛、酸化アルミナ、シリカ、酸化ニッケル、酸化チタン、酸化イットリア、酸化スズ、及び酸化インジウムスズからなる群より選択される少なくとも1種を含有することが好ましく、酸化亜鉛、酸化チタン及び酸化インジウムスズからなる群より選択される少なくとも1種を含有することがより好ましい。
【0062】
コーティング層2の表面に無機酸化物層を形成する方法としては、特に限定されないが、スパッタリング、化学気相成長法又は蒸着等により、目的の無機酸化物を直接被覆する方法、無機酸化物の前駆体をウェットコーティングした後、ゾルゲル法により無機酸化物に成長させる方法を挙げることができる。
【0063】
イオン性ポリマー層はカチオン性ポリマー及び/又はアニオン性ポリマーを含有していてよい。カチオン性ポリマーは、第二級アミノ基、第三級アミノ基又は第四級アンモニウム基を含有するポリマーであることが好ましい。カチオン性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンイミン及びその四級化物、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ポリ(N,N’-ジメチル-3,5-ジメチレン-ピペリジニウムクロライド)ポリアリルアミン及びその4級化物、ポリジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びその4級化物、ポリジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド及びその4級化物の高分子電解質が挙げられる。
【0064】
アニオン性ポリマーは、-COOH、-COO-、-SO3H、又は-SO3
-を有するポリマーであってよい。アニオン性ポリマーとしては、ポリ(メタ)アクリル酸およびそのイオン化物、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸)、ポリアミック酸、ポリビニルスルホン酸カリウム等の高分子電解質が挙げられる。
【0065】
イオン性ポリマー層は、細胞外小胞捕捉率を更に高めることが可能になることから、カチオン性ポリマーを含むことが好ましい。イオン性ポリマー層は、細胞外小胞捕捉率を更に高めることが可能になることから、カチオン性ポリマーを含み、かつ、アニオン性ポリマーを含まないイオン性ポリマー層(カチオン性ポリマー層)、又は、カチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーを含むイオン性ポリマー層であることが好ましい。
【0066】
コーティング層2の表面にイオン性ポリマー層を形成する方法としては、特に限定されず、異形粒子4の材質、並びに、カチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーの種類等に応じて適宜選択することができる。コーティング層2及び突起5の表面にイオン性ポリマー層を形成する方法は、例えば、コーティング層2の突起5が設けられている側の面を表面処理すること、及び、コーティング層2の表面処理された面にカチオン性ポリマー又はアニオン性ポリマーを含む液を付着させ、必要に応じて水等で洗浄した後に乾燥させることを含む方法を用いることができる。表面処理は例えばプラズマ処理を用いることができる。コーティング層2の表面にカチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーを含むイオン性ポリマー層を形成する方法としては、コーティング層2の表面をカチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーの一方のポリマーで被覆した後に、他方のポリマーで被覆する方法を用いることができる。
【0067】
<デバイス化工程>
突起形成方法は、形成した突起を生体試料の捕集等に用いるためにデバイス化する工程(デバイス化工程)を更に備えていてよい。
【0068】
デバイス化工程は、例えば、1又は複数の貫通孔を有する被覆基材をコーティング層2の突起が存在する面上に貼り合わせ、貫通孔の少なくとも一つによって生体試料を添加するための空間を形成する工程であってよい。コーティング層2上に被覆基材を貼り合わせる方法は特に限定はなく、粘着テープや接着剤、加熱による融着等、物理的又は化学的に貼り合わせる方法を利用することができる。
【0069】
デバイス化工程は、例えば、コーティング層2の突起が存在する側の面上に、1又は複数の貫通孔を有する被覆基材を、これらを接着する領域と、生体試料を輸送する流路を形成する内部空間とを有する中間層を介して接着する工程を備えていてよい。中間層は例えば粘着テープによって形成することが可能である。この場合、粘着テープによってコーティング層2と被覆基材とを張り合わせるとともに粘着テープが存在しない領域(内部空間)を流路とすることができる。
【0070】
<突起>
異形粒子4の長径(単位:μm)に対する突起5の高さ(単位:μm)の比(突起5の高さ/異形粒子4の長径)は0.10~0.95であることが好ましい。異形粒子4の長径に対する突起5の高さの比が上記範囲にあることにより、突起5の強度と生体試料を捕捉する性能を両立することができる。生体試料を捕捉する性能を高めるのに好適であることから、異形粒子4の長径に対する突起5の高さの比は0.20以上、0.30以上、0.50以上、0.60以上、0.70以上、又は0.80以上であることが好ましい。突起5の強度を高めるのに好適であることから、異形粒子4の長径に対する突起5の高さの比は0.90以下、0.85以下、0.80以下、0.75以下、又は0.70以下であることが好ましく、0.60以下、又は0.40以下であってもよい。
【0071】
コーティング層2を突起5が存在する側から見たとき、コーティング層2全体に対する突起5が存在する領域の面積の割合(以下「突起存在割合」ともいう。)が10%以上であることが好ましい。突起存在割合が10%以上である場合、生体試料を捕捉する性能を高めることができる。生体試料を捕捉する性能を高めるのに好適であることから、突起存在割合は30.0%以上、50.0%以上、60.0%以上、70.0%以上又は80.0%以上であることが好ましい。突起存在割合は例えば100.0%以下、95.0%以下、90.0%以下、又は85.0%以下であってよい。
【0072】
突起存在割合は、コーティング層2の突起5が存在する側の面に対して垂直な方向から、当該面を走査型電子顕微鏡で観察し、得られた走査型電子顕微鏡画像における突起5(ポリマー層3から露出した異形粒子4)が存在する領域を測定範囲の面積で割ることによって求めることができる。ここで測定範囲は、突起5を形成する異形粒子4の短径の100倍以上を一辺とする正方形の面積に相当する範囲である。測定方法の詳細は実施例において記載されるとおりであってよい。
【0073】
突起存在割合の標準偏差は、10.00以下であることが好ましい。突起存在割合の標準偏差はばらつきの指標とすることができる。突起存在割合の標準偏差が低いほど、より均一に突起が存在することを意味する。突起存在割合の標準偏差は、8.00以下、7.00以下、6.00以下、5.00以下、4.00以下、3.00以下、2.50以下、2.00以下、1.50以下、又は1.00以下であることが好ましい。突起存在割合の標準偏差は、例えば、0.30以上、0.60以上、又は0.90以上であってよい。突起存在割合の標準偏差は、コーティング層2の突起5が存在する側の表面に対して垂直な方向から、当該表面を走査型電子顕微鏡で測定した画像において、一辺10μmの正方形の領域を無作為に5点選び、上記の突起存在割合を求めることと、5点の突起存在割合の測定結果の標準偏差を算出することとを含む方法によって求めることができる。
【0074】
コーティング層2において、ポリマー層3への埋没部位4aを有しない異形粒子4の粒子数は、異形粒子4の全粒子数に対して、50%以下であることが好ましい。ポリマー層3への埋没部位4aを有しない異形粒子4の粒子数が、異形粒子4の全粒子数の50%以下であることにより、生体試料を接触させた際に異形粒子4が混入して汚染されることを抑制できる。異形粒子混入による生体試料の汚染を抑制するのに好適であることから、ポリマー層3への埋没部位4aを有しない異形粒子4の粒子数は、異形粒子4の全粒子数の30%以下であることがより好ましく、10%以下であることが更に好ましく、5%以下であることが最も好ましい。ポリマー層3への埋没部位4aを有しない異形粒子4の粒子数は、生体試料捕集デバイスを純水に浸漬して超音波照射を行うことでデバイスから剥離して回収でき、この粒子の数を計測することで求めることができる。また、溶媒による洗浄又は焼成等によってポリマー層3を除去した後に異形粒子4を回収し、この粒子数を計測することで、コーティング層2が含有する異形粒子4の全粒子数を求めることができる。
【0075】
支持基材1のコーティング層2側の面から突起5の頂点までの支持基材1の面外方向の長さは、異形粒子4の長径の10倍以下であることが好ましい。支持基材1のコーティング層2側の面から突起5の頂点までの支持基材1の面外方向の長さが、異形粒子4の長径の10倍以下であることにより、コーティング層2の膜厚を薄くすることができ、可撓性に優れるデバイスとなる。可撓性を高めるのに好適であることから、支持基材1のコーティング層2側の面から突起5の頂点までの支持基材1の面外方向の長さは、異形粒子4の長径の5倍以下であることがより好ましく、異形粒子4の長径の2倍以下であることが更に好ましく、異形粒子4の長径以下であることが最も好ましい。
【0076】
細胞を捕集する用途においては、露出した異形粒子4によって形成される突起5が、一方向に配向していることが好ましい。露出した異形粒子4によって形成される突起5が、一方向に配向していることで、流路構造を有する生体試料捕集デバイスの場合、流路内の生体試料の流れに抗って突起5を配置することで、突起5の生体試料の捕集効率を高めることができる。また、細胞等の生体試料の場合、突起5による破砕で生体試料の内部の成分を抽出しやすい。突起5が一方向に配向していることは、生体試料捕集デバイス表面の走査型電子顕微鏡像を測定し、その像をフーリエ変換したフーリエ変換像における輝点の有無により判断することができる。フーリエ変換により、元画像の濃淡を正弦波の重ね合わせで近似した場合の、各正弦波の波数に対するパワー(輝度の絶対値の二乗)を表す二次元像に変換することができ、元画像の濃淡に規則性がある場合、各正弦波に対応する輝点がフーリエ変換像に現れる。
【0077】
細胞外小胞を捕集する用途においては、露出した異形粒子4によって形成される突起5が、不規則配列であることが好ましい。露出した異形粒子4によって形成される突起5が、一方向に配向せず不規則配列であることで、流路構造を有する生体試料捕集デバイスの場合、流路内の突起5の方向に依存せず、生体試料の捕集効率の再現性を安定させることができる。
【実施例0078】
以下、実施例に基づき本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。実施例及び比較例における異形粒子の長径及び短径、強度の確認、及び突起が形成されている面積割合の算出は以下の方法により行った。
【0079】
[異形粒子の長径及び短径の測定]
(測定用サンプルの調製)
異形粒子分散液をコロジオン支持銅メッシュ上にキャスト乾燥した測定用サンプルを準備した。異形粒子分散液は、異形粒子10mgをメタノール1mLに加え、10秒間超音波照射して分散させることにより調製した。
【0080】
(測定)
走査型電子顕微鏡(キーエンス社製VE-9800)を用い、測定用サンプルの走査型電子顕微鏡写真を取得した。取得した写真上で、異形粒子の最大粒径を測定することで長径を算出した。長径方向の軸を長軸とし、長軸に垂直な方向の最大長さを測定することで短径を算出した。無作為に選んだ50点の粒子の長径及び短径の平均を求めた。算出した長径を短径で除することで、短径に対する長径の比(長径/短径)とした。
【0081】
[強度の確認]
コーティング層の強度は、ベンコット(旭化成社製)に50gの荷重をかけた状態でコーティング表面を5往復擦傷し、コーティング層の支持基材からの剥離を目視及び走査型電子顕微鏡を用いて確認することで評価した。
〇:コーティング層の剥離なし。
×:コーティング層の剥離あり。
【0082】
[突起が存在する面積割合]
走査型電子顕微鏡(キーエンス社製VE-9800)を用いてコーティング層の表面を測定した。取得したコーティング層の表面の顕微鏡写真上で、異形粒子が存在する領域が白、存在しない領域が黒となるように2値化し、白及び黒の合計面積に対する白の面積の割合を求めた。これを、コーティング層を突起が存在する側から見たときのコーティング層全体に対する突起が存在する領域の面積の割合とした。
【0083】
[突起の均一性]
走査型電子顕微鏡(キーエンス社製VE-9800)を用いてコーティング層の表面を測定した写真上で、一辺10μmの正方形の領域を無作為に5点選び、突起が存在する面積割合を求めた。5点の測定結果の標準偏差を求め、ばらつきの指標とした。
【0084】
[実施例1]
酸化亜鉛の異形粒子(シグマアルドリッチ製;長径4.5μm、短径0.2μm、長径/短径の比22.5)0.5gをメタノール10mLに加え、超音波照射して分散させた。得られた分散液に、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(東京化成工業製)(溶解度パラメータ12.5)0.05g、及び25%アンモニア水(富士フイルム和光純薬製)0.05gを加え、60℃で2時間、スターラーを用いて300rpmで攪拌して反応させた。反応後、目開き106μmメッシュフィルターでろ過して粗大凝集物を除去後、デカンテーションで上澄みを回収した。反応後に得られた粒子にメタノールを加えて4000rpmで10秒遠心分離し、上澄みを捨ててメタノールで再度洗浄した。その後、得られた粒子を室温乾燥することで、メタクリロイル基(溶解度パラメータ9.5)で表面が修飾された異形粒子を得た。
【0085】
上記メタクリロイル基で表面修飾された異形粒子0.02g、ポリメタクリル酸メチル0.01g、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン0.01g、及びメチルエチルケトン0.12gを混合した。混合液に対して超音波照射して粒子を分散させた。ポリカーボネートフィルム(帝人製;製品名パンライト)に得られた分散液を1000rpmで30秒間スピンコートした後、60℃で加熱乾燥することで、異形粒子とポリマー層からなるコーティング層を形成した。
【0086】
作製したコーティング層は突起の強度に優れるものであった。粒子は全体に密に存在していた。また、突起が存在する面積が78.1%で、表面に多くの突起が形成されていた。得られたコーティング層の物性を表1に示す。
【0087】
[実施例2]
コーティング液としてメタクリロイル基で表面修飾された異形粒子0.02g、ポリメタクリル酸メチル0.005g、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン0.015g、及びメチルエチルケトン0.1gを混合したものを用い、その他は実施例1と同様にしてデバイスを作製した。
【0088】
作製したコーティング層は突起の強度に優れるものであった。粒子は全体に密に存在していた。また、突起が存在する面積が69.1%で、表面に多くの突起が形成されていた。
図6は実施例2のコーティング層表面の走査型電子顕微鏡写真を示す。
【0089】
[実施例3]
コーティング液としてメタクリロイル基で表面修飾された異形粒子0.02g、ポリメタクリル酸メチル0.0025g、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン0.0175g、及びメチルエチルケトン0.09gを混合したものを用い、その他は実施例1と同様にしてデバイスを作製した。
【0090】
作製したコーティング層は突起の強度に優れるものであった。粒子は全体に密に存在していた。また、突起が存在する面積が57.2%で、表面に多くの突起が形成されていた。
【0091】
[実施例4]
コーティング液としてメタクリロイル基で表面修飾された異形粒子0.02g、ポリメタクリル酸メチル0.00125g、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン0.01875g、及びメチルエチルケトン0.085gを混合したものを用い、その他は実施例1と同様にしてデバイスを作製した。
【0092】
作製したコーティング層は突起の強度に優れるものであった。粒子は全体に密に存在していた。また、突起が存在する面積が78.5%で、表面に多くの突起が形成されていた。
【0093】
[実施例5]
コーティング液としてメタクリロイル基で表面修飾された異形粒子0.02g、ポリメタクリル酸メチル0.00125g、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン0.04375g、及びメチルエチルケトン0.085gを混合したものを用い、その他は実施例1と同様にしてデバイスを作製した。
【0094】
作製したコーティング層は突起の強度に優れるものであった。粒子は全体に密に存在していた。また、突起が存在する面積が55.5%で、表面に多くの突起が形成されていた。
【0095】
[実施例6]
酸化亜鉛の異形粒子(シグマアルドリッチ製;長径0.3μm、短径0.05μm、長径/短径の比6)を用い、その他は実施例2と同様にしてコーティング層を形成した。
【0096】
作製したコーティング層は突起の強度に優れるものであった。粒子は全体に密に存在していた。また、突起が存在する面積が61.7%で、表面に多くの突起が形成されていた。
【0097】
[実施例7]
酸化亜鉛の異形粒子(シグマアルドリッチ製;長径1μm、短径0.18μm、長径/短径の比5.6)を用い、その他は実施例2と同様にしてコーティング層を形成した。
【0098】
作製したコーティング層は突起の強度に優れるものであった。粒子は全体に密に存在していた。また、突起が存在する面積が77.4%で、表面に多くの突起が形成されていた。
【0099】
[実施例8]
酸化チタンの異形粒子(シグマアルドリッチ製;長径10μm、短径0.1μm、長径/短径の比100)を用い、その他は実施例2と同様にしてコーティング層を形成した。
【0100】
作製したコーティング層は突起の強度に優れるものであった。粒子は全体に密に存在していた。また、突起が存在する面積が81.2%で、表面に多くの突起が形成されていた。
図7は実施例8のコーティング層表面の走査型電子顕微鏡写真を示す。
【0101】
[実施例9]
ポリマーとしてポリスチレンを用い、その他は実施例2と同様にしてコーティング層を形成した。
【0102】
作製したコーティング層は突起の強度に優れるものであった。粒子が存在しない領域があったが、均一に分布していた。また、突起が存在する面積が51.7%で、表面に多くの突起が形成されていた。
図8は実施例9のコーティング層表面の走査型電子顕微鏡写真を示す。
【0103】
[実施例10]
貧溶媒としてオクタデカフルオロデカヒドロナフタレンペルフルオロデカリンを用い、その他は実施例2と同様にしてコーティング層を形成した。
【0104】
作製したコーティング層は突起の強度に優れるものであった。粒子は全体に密に存在していた。また、突起が存在する面積が74.2%で、表面に多くの突起が形成されていた。
【0105】
[比較例1]
コーティング液にポリメタクリル酸メチルを添加せず、その他は実施例1と同様にしてコーティング層を形成した。
【0106】
作製したコーティング層は強度に劣るものであった。
図9は比較例1のコーティング層表面の走査型電子顕微鏡写真を示す。
【0107】
[比較例2]
コーティング液としてメタクリロイル基で表面修飾された異形粒子0.02g、ポリメタクリル酸メチル0.04g、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン0.01g、及びメチルエチルケトン0.16gを混合したものを用い、その他は実施例1と同様にしてコーティング層を形成した。
【0108】
作製したコーティング層は表面に突起が存在しないものであった。
図10は比較例2のコーティング層表面の走査型電子顕微鏡写真を示す。
【0109】
[比較例3]
1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンを添加せず、その他は実施例4と同様にしてコーティング層を形成した。
【0110】
作製したコーティング層は粒子の分布にばらつきが大きいものであった。作製したコーティング層は突起が存在する面積が小さいものであった。
図11は比較例3のコーティング層表面の走査型電子顕微鏡写真を示す。
【0111】
[比較例4]
コーティング液としてメタクリル基で表面修飾された異形粒子0.02g、ポリメタクリル酸メチル0.025g、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン0.0975g、及びメチルエチルケトン0.09gを混合したものを用い、その他は実施例3と同様にしてコーティング層を形成した。
【0112】
作製したコーティング層は突起が存在する面積が小さいものであった。
図12は比較例4のコーティング層表面の走査型電子顕微鏡写真を示す。
【0113】
表1中の略号は次に示すとおりである。
ZnO:酸化亜鉛、TiO2:酸化チタン、PMMA:ポリメタクリル酸メチル、PS:ポリスチレン、TFMB:1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、ODFNPFD:オクタデカフルオロデカヒドロナフタレンペルフルオロデカリン。
【0114】
実施例1~10及び比較例1~4において、メタクリロイル基を有するシランカップリング剤の溶解度パラメータと、ポリマーの溶解度パラメータとの差は3.2であった。
【0115】
【0116】
表1に示すとおり、成分(1)~(4)を含有し、成分(2)/成分(1)、成分(1)/[成分(2)+成分(3)]、及び成分(4)/成分(3)を特定の比に調整したコーティング液を用いて突起を形成することで、強度に優れ、突起存在割合の標準偏差が低く、突起存在割合が高い突起が形成されることが確認された。
1…支持基材、2…コーティング層、3…ポリマー層、4…異形粒子、4a…ポリマー層への埋没部位、4b…ポリマー層からの露出部位、5…突起、貧溶媒及び良溶媒の混合物、7…貧溶媒、10…デバイス、S…異形粒子の短径、L…異形粒子の長径