(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176757
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】デバイス
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
C12M1/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095539
(22)【出願日】2023-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100211018
【弁理士】
【氏名又は名称】財部 俊正
(74)【代理人】
【識別番号】100211100
【弁理士】
【氏名又は名称】福島 直樹
(72)【発明者】
【氏名】安井 隆雄
(72)【発明者】
【氏名】久野 豪士
【テーマコード(参考)】
4B029
【Fターム(参考)】
4B029AA09
4B029BB11
4B029CC01
4B029DG08
4B029GB09
(57)【要約】
【課題】表面に存在する突起の強度が高く、かつ、細胞外小胞の捕捉効率が高いデバイスを提供すること。
【解決手段】支持基材と、前記支持基材上に形成されたコーティング層とを備え、前記コーティング層が、ポリマー層と、異形粒子とを含み、前記異形粒子が前記ポリマー層への埋没部位と、前記ポリマー層からの露出部位とを有し、前記ポリマー層からの露出部位によって前記コーティング層の前記支持基材とは反対側の面上に突起が形成されている、デバイス。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基材と、前記支持基材上に形成されたコーティング層とを備え、
前記コーティング層が、ポリマー層と、異形粒子とを含み、
前記異形粒子が前記ポリマー層への埋没部位と、前記ポリマー層からの露出部位とを有し、
前記ポリマー層からの露出部位によって前記コーティング層の前記支持基材とは反対側の面上に突起が形成されている、デバイス。
【請求項2】
前記異形粒子の長径が0.1~100μmであり
前記異形粒子の短径が0.01~10μmであり、
前記異形粒子の短径に対する前記異形粒子の長径の比が2.0以上である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記異形粒子の長径に対する前記突起の高さの比が0.10~0.95である、請求項1又は2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記コーティング層を前記突起が存在する側から見たとき、前記コーティング層全体に対する突起が存在する領域の面積の割合が10%以上である、請求項1又は2に記載のデバイス。
【請求項5】
前記ポリマー層への埋没部位を有しない前記異形粒子の粒子数が前記異形粒子の全粒子数の50%以下である、請求項1又は2に記載のデバイス。
【請求項6】
前記支持基材の前記コーティング層側の面から前記突起の頂点までの前記支持基材の面外方向の長さが前記異形粒子の長径以下である、請求項1又は2に記載のデバイス。
【請求項7】
前記突起が一方向に配向している、請求項1又は2に記載のデバイス。
【請求項8】
前記異形粒子の材質が、シリカ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ニッケル、酸化アルミナ、酸化イットリア、酸化スズ、酸化インジウム、酸化インジウムスズ、シリコンカーバイド、金、銀、カーボン、窒化シリコン及びこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1又は2に記載のデバイス。
【請求項9】
前記異形粒子が、少なくとも前記埋没部位において、シランカップリング剤で表面改質されており、
前記シランカップリング剤の溶解度パラメータと前記ポリマー層の溶解度パラメータとの差が5以下である、請求項1又は2に記載のデバイス。
【請求項10】
前記突起が、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ニッケル、酸化イットリア、酸化スズ、酸化アルミナ、シリカ、酸化インジウム及び酸化インジウムスズからなる群より選択される群より選択される少なくとも1種を含有する被覆層によって被覆されている、請求項1又は2に記載のデバイス。
【請求項11】
前記突起が、カチオン性ポリマーを含有する被覆層によって被覆されている、請求項1又は2に記載のデバイス。
【請求項12】
当該デバイスが、前記コーティング層の前記支持基材とは反対の面側に1又は複数の貫通孔を有する被覆基材を更に備え、
前記貫通孔の少なくとも一つによって生体試料を添加するための空間が形成されている、請求項1又は2に記載のデバイス。
【請求項13】
当該デバイスが、前記コーティング層と前記被覆基材との間に中間層を更に備え、
前記中間層が、前記コーティング層と前記被覆基材とを接着する領域と、前記生体試料を輸送する流路を形成する内部空間と、を含む、請求項12に記載のデバイス。
【請求項14】
生体試料捕集用である、請求項1又は2に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
尿及び血液等の体液を用いた疾病検査はリキッドバイオプシーと呼ばれ、新たな検査手法として注目されている。中でも細胞が放出する細胞外小胞は、がん等の早期診断マーカーとして機能するmicroRNA(microribonucleic acid;以下、「miRNA」と記載することがある。)を内包しており、細胞外小胞を捕集する技術が求められている。
【0003】
既存の細胞外小胞分離手法には、超遠心分離法や、凝集試薬法等が知られている。最も一般的に用いられている超遠心分離法は、数十mLのサンプル量及び4~5時間の分離時間が必要であり、また、回収率も5~25%程度で効率的に細胞外小胞を分離することが難しいという問題がある。凝集試薬法は、対象サンプルに凝集試薬を滴下し静置する簡便な手法である一方、分離には長時間の静置が必要であり、また、遠心機の使用、粒径の変化や粒子数の減少、マーカータンパク量の減少が生じること等の問題点がある。
【0004】
上記問題点を解決するため、チップのマイクロ流路内に形成したナノワイヤを用いて、少量の体液や培養上清液から細胞外小胞をナノワイヤに吸着させることで、細胞外小胞由来miRNAを高効率に抽出する方法が報告されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
表面に突起を形成すると細胞外小胞が回収しやすくなる一方、従来の突起を有するデバイスでは、突起の強度において改善の余地があった。
【0007】
本発明の目的は、表面に存在する突起の強度が高く、かつ、細胞外小胞の捕捉効率が高いデバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定形状の異形粒子の一部位をポリマー層に埋没させたコーティング層を有するデバイスによって、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の各態様は以下に示す[1]~[14]である。
[1]
支持基材と、前記支持基材上に形成されたコーティング層とを備え、前記コーティング層が、ポリマー層と、異形粒子とを含み、前記異形粒子が前記ポリマー層への埋没部位と、前記ポリマー層からの露出部位とを有し、前記ポリマー層からの露出部位によって前記コーティング層の前記支持基材とは反対側の面上に突起が形成されている、デバイス。
[2]
前記異形粒子の長径が0.1~100μmであり、前記異形粒子の短径が0.01~10μmであり、前記異形粒子の短径に対する前記異形粒子の長径の比が2.0以上である、[1]に記載のデバイス。
[3]
前記異形粒子の長径に対する前記突起の高さの比が0.10~0.95である、[1]又は[2]に記載のデバイス。
[4]
前記コーティング層を前記突起が存在する側から見たとき、前記コーティング層全体に対する突起が存在する領域の面積の割合が10%以上である、[1]~[3]のいずれかに記載のデバイス。
[5]
前記ポリマー層への埋没部位を有しない前記異形粒子の粒子数が前記異形粒子の全粒子数の50%以下である、[1]~[4]のいずれかに記載のデバイス。
[6]
前記支持基材の前記コーティング層側の面から前記突起の頂点までの前記支持基材の面外方向の長さが前記異形粒子の長径以下である、[1]~[5]のいずれかに記載のデバイス。
[7]
前記突起が一方向に配向している、[1]~[6]のいずれかに記載のデバイス。
[8]
前記異形粒子の材質が、シリカ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ニッケル、酸化アルミナ、酸化イットリア、酸化スズ、酸化インジウム、酸化インジウムスズ、シリコンカーバイド、金、銀、カーボン、窒化シリコン及びこれらの組み合わせからなる群より選択される、[1]~[7]のいずれかに記載のデバイス。
[9]
前記異形粒子が、少なくとも前記埋没部位において、シランカップリング剤で表面改質されており、前記シランカップリング剤の溶解度パラメータと前記ポリマー層の溶解度パラメータとの差が5以下である、[1]~[8]のいずれかに記載のデバイス。
[10]
前記突起が、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ニッケル、酸化イットリア、酸化スズ、酸化アルミナ、シリカ、酸化インジウム及び酸化インジウムスズからなる群より選択される群より選択される少なくとも1種を含有する被覆層によって被覆されている、[1]~[9]のいずれかに記載のデバイス。
[11]
前記突起が、カチオン性ポリマーを含有する被覆層によって被覆されている、[1]~[10]のいずれかに記載のデバイス。
[12]
当該デバイスが、前記コーティング層の前記支持基材とは反対の面側に1又は複数の貫通孔を有する被覆基材を更に備え、前記貫通孔の少なくとも一つによって生体試料を添加するための空間が形成されている、[1]~[11]のいずれかに記載のデバイス。
[13]
当該デバイスが、前記コーティング層と前記被覆基材との間に中間層を更に備え、前記中間層が、前記コーティング層と前記被覆基材とを接着する領域と、前記生体試料を輸送する流路を形成する内部空間と、を含む[12]に記載のデバイス。
[14]
生体試料捕集用である、[1]~[13]のいずれかに記載のデバイス。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、表面に存在する突起の強度が高く、かつ、細胞外小胞の捕捉効率が高いデバイスを提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】
図2は異形粒子の埋没部位及び露出部位を示す概略図である。
【
図3】
図3は異形粒子の長径及び短径を示す模式図である。
【
図4】
図4はウェルプレート形態のデバイスの一例を示す斜視図である。
【
図5】
図5は流路形態のデバイスの一例を示す斜視図である。
【
図6】
図6は実施例1のデバイス表面の走査型電子顕微鏡写真である。
【
図7】
図7は実施例2のデバイス表面の走査型電子顕微鏡写真である。
【
図8】
図8は実施例3のデバイス表面の走査型電子顕微鏡写真である。
【
図9】
図9は実施例4のデバイス表面の走査型電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。本明細書において「(メタ)アクリロイル基」はメタクリロイル基又はアクリロイル基を示し、「(メタ)アクリレート」はメタクリレート又はアクリレートを示す。以下で例示する材料は、特に断らない限り、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0013】
図1はデバイスの一実施形態を示す。
図1に示すデバイス10は、支持基材1と、支持基材1上に形成されたコーティング層2とを備える。コーティング層2はポリマー層3と、異形粒子4とを含む。異形粒子4は
図2に示すようにポリマー層3への埋没部位4aとポリマー層3からの露出部位4bとを有する。ポリマー層3への埋没部位4aによって異形粒子4はポリマー層3に固定化されている。ポリマー層3からの露出部位4bによってコーティング層2の支持基材1とは反対側の面上に突起5が形成されている。
【0014】
デバイス10は生体試料捕集用であるデバイスとして好適に用いることができる。本明細書において「生体試料」とは、動物(例えば、ヒト)又は植物から得られる試料である。生体試料としては、例えば、尿、血液、組織、細胞及び細胞外小胞が挙げられる。これらの生体試料にはDNA、RNA(例えば、miRNA)、タンパク質等が含まれていてよい。
【0015】
<支持基材>
支持基材1の材質は、特に制限されず、例えば、樹脂、ガラス、セラミックス等が挙げられる。支持基材1は、フィルム、シート、板の他、曲面を有する形状の構造物等如何なる形状の基材であってもよい。
【0016】
支持基材1として用いることができる樹脂としては、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、アセテートブチレートセルロース等のセルロース系樹脂;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリメタクリル酸メチル等のアクリル系樹脂;ポリウレタン系樹脂;ポリエーテル樹脂;ポリスルホン樹脂;ポリエーテルサルホン;ポリエーテルケトン等が挙げられる。
【0017】
支持基材1の表面には、耐擦傷性及び密着性等を高めるために、ハードコート層、アンカーコート層、高分子電解質層等のコート層が形成されていてもよく、密着性及び塗工性等を高めるために、UVオゾン洗浄、プラズマ処理、コロナ処理等の表面処理が施されていてもよい。
【0018】
<コーティング層>
コーティング層2は、支持基材1の主面上に設けられている。コーティング層2は、ポリマー層3と、異形粒子4とを含む。
【0019】
(ポリマー層)
ポリマー層3は、ポリマーを含有する。ポリマー層3が異形粒子4を埋没部位4aにおいて固定化することによって、露出部位4bにより形成される突起5の強度が高くなる。
【0020】
ポリマーとしては、例えば、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリ(エチル)アクリレート等のポリ(メタ)アクリレート、ポリトリメチロールプロパンエトキシトリ(メタ)アクリレート、ポリペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ポリトリメチロールプロパンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、ポリペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ポリペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ポリジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリトリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ポリエトキシ化フェニル(メタ)アクリレート等の脂肪族ポリマー;ポリスチレン、ポリα-メチルスチレン、ポリビニルトルエン、ポリp-メチルスチレン、ポリ2-メチルスチレン、ポリ3-メチルスチレン、ポリ4-メチルスチレン、ポリ4-エチルスチレン、ポリ4-tert-ブチルスチレン、ポリ3,4-ジメチルスチレン、ポリ4-メトキシスチレン、ポリ4-エトキシスチレン、ポリ2-クロロスチレン、ポリ3-クロロスチレン、ポリ4-クロロスチレン、ポリ2,4-ジクロロスチレン、ポリ2,6-ジクロロスチレン、ポリ4-クロロ-3-メチルスチレン、ポリジビニルベンゼン、ポリ1-ビニルナフタレン、ポリ2-ビニルピリジン、ポリ4-ビニルピリジン、ポリp-スチレンスルホン酸ナトリウム等の芳香族ポリマーが挙げられる。
【0021】
ポリマーは、入手容易性から、ポリメチル(メタ)アクリレート及びポリスチレンからなる群より選択される1種を含むことが好ましい。
【0022】
ポリマーは、相当するモノマーを単一のモノマーの重合によって得られるホモポリマーであってもよく、複数のモノマーの混合物の重合によって得られるコポリマーであってもよい。
モノマーの重合によってポリマーを得る際には必要に応じて各種添加剤が用いられてよい。添加剤としては、例えば、開始剤、酸化防止剤、重合禁止剤、レベリング剤、シランカップリング剤等が挙げられる。モノマーの重合によってポリマーを得る際には開始剤を用いることが好ましい。開始剤としては、例えば、ペルオキソ二硫酸カリウム、過酸化水素、アゾビスイソブチロニトリル、過酸化ベンゾイル等が挙げられる。
【0023】
ポリマーの溶解度パラメータは、7以上、8以上、又は9以上であってよく、12以下、11以下、又は10以下であってよい。
【0024】
(異形粒子)
異形粒子4は形状異方性を有する粒子である。「形状異方性を有する」とは、形状が、球以外の形状かつ正多面体以外の形状であることをいう。
【0025】
異形粒子4の長径とは、異形粒子4の最大粒径を示す。異形粒子4の短径とは、異形粒子4の長径方向の軸(長軸)に垂直な方向の最大粒径を示す。異形粒子4の長径及び短径は走査型電子顕微鏡写真上でこれらの長さを測定することで算出できる。
図3は異形粒子4の一例であり、Lは長径を示し、Sは短径を示す。
【0026】
異形粒子4の長径は、異形粒子4の一部をポリマー層3に埋没させつつ、異形粒子4をポリマー層3から露出させることが可能で、突起5の強度と生体試料を捕捉する性能を両立することができることから、0.1~100μmであることが好ましい。異形粒子4の長径は、生体試料を捕捉する性能を向上するのに好適であることから、0.2μm以上、0.5μm以上、1.0μm以上、2.0μm以上、3.0μm以上、4.0μm以上、5.0μm以上、8.0μm以上、又は10.0μm以上であることが好ましい。異形粒子4の長径は、突起5の強度を向上させるのに好適であることから、80.0μm以下、50.0μm以下、30.0μm以下、20.0μm以下、15.0μm以下、12.0μm以下、10.0μm以下、8.0μm以下、6.0μm以下、5.0μm以下、3.0μm以下又は1.0μm以下であることが好ましい。
【0027】
異形粒子4の短径は、異形粒子4の強度を高めることで突起5の強度を向上しつつ、突起5の表面積を増やして生体試料を捕捉する性能を向上可能であることから、0.01~10μmであることが好ましい。異形粒子4の短径は、突起5の強度を高めるのに好適であることから、0.02μm以上、0.04μm以上、0.05μm以上、0.10μm以上、又は0.15μm以上であることが好ましく、1.0μm以上又は5.0μm以上であってもよい。異形粒子4の短径は、生体試料を捕捉する性能を向上するのに好適であることから、8.0μm以下、4.0μm以下、2.0μm以下、1.0μm以下、0.50μm以下、0.40μm以下、又は0.30μm以下であることが好ましい。
【0028】
異形粒子4における短径(単位:μm)に対する長径(単位:μm)の比(L/S)は、異形粒子4のポリマー層3への埋没部位4aとポリマー層3からの露出部位4bとをいずれも長くすることができ、突起5の強度と生体試料を捕捉する性能とを両立することができることから、2.0以上であることが好ましく、突起5の強度と生体試料を捕捉する性能を向上させるために更に好適であることから、3.0以上、4.0以上、5.0以上、8.0以上、10.0以上、15.0以上、20.0以上、25.0以上、50.0以上、75.0以上又は100.0以上であることがより好ましい。異形粒子4における短径に対する長径の比は150.0以下、125.0以下、100.0以下、75.0以下、50.0以下、30.0以下又は25.0以下であってよい。
【0029】
異形粒子4の材質としては特に限定はないが、異形粒子4の合成容易性から、シリカ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ニッケル、酸化アルミナ、酸化イットリア、酸化スズ、酸化インジウム、酸化インジウムスズ、シリコンカーバイド、金、銀、カーボン及び窒化シリコン等を挙げることができる。異形粒子4の材質は、異形粒子4の合成が特に容易であることから、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アルミナ、シリカ及びこれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、酸化亜鉛及び酸化チタンからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが特に好ましい。
【0030】
異形粒子4は、シランカップリング剤で表面改質されていてよく、少なくともポリマー層3への埋没部位4aにおいてシランカップリング剤で表面改質されていてよい。
【0031】
シランカップリング剤は、エチレン性不飽和基(例えば、ビニル基、(メタ)アクリロイル基)、エポキシ基、アミノ基、イソシアヌレート基、イソシアネート基、ウレイド基、メルカプト基、又はポリスルフィド基(例えばテトラスルフィド基)等の反応性官能基を有していてよい。
【0032】
(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤としては、例えば、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン及び3-アクリロキシプロピルトリメトキシシランが挙げられる。ビニル基を有するシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン及びp-スチリルトリメトキシシランが挙げられる。エポキシ基を有するシランカップリング剤としては、例えば、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン及び3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランが挙げられる。アミノ基を有するシランカップリング剤としては、例えば、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン及び3-アミノプロピルトリエトキシシランが挙げられる。イソシアヌレート基を有するシランカップリング剤としては、例えば、トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートが挙げられる。イソシアネート基を有するシランカップリング剤としては、例えば、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシランが挙げられる。ウレイド基を有するシランカップリング剤としては、例えば、3-ウレイドプロピルトリアルコキシシランが挙げられる。メルカプト基を有するシランカップリング剤としては、例えば、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシランが挙げられる。ポリスルフィド基を有するシランカップリング剤としては、例えば、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドが挙げられる。
【0033】
シランカップリング剤は、(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤であることが好ましい。
【0034】
シランカップリング剤の溶解度パラメータとポリマーの溶解度パラメータとの差は、5以下であることが好ましい。ポリマー層3への埋没部位4aの異形粒子4の表面を構成する成分とポリマーとの溶解度パラメータの差が小さいことで、異形粒子4とポリマーとの相溶性を高め、異形粒子4がポリマー層3から脱離しづらくなる。その結果として、突起5の強度を更に高めることができる。突起5の強度を高めるのに好適であることから、シランカップリング剤の溶解度パラメータとポリマーの溶解度パラメータとの差は4以下であることがより好ましく、3以下が更に好ましく、2以下であることが最も好ましい。本明細書においては、Hansen溶解度パラメータ(HSP値)を溶解度パラメータの値として使用する。
【0035】
シランカップリング剤の溶解度パラメータは、10以上、11以上、又は12以上であってよく、15以下、14以下、又は13以下であってよい。
【0036】
異形粒子の粒径分布の指標である分散度(多分散指数)は、コーティング層2において突起5のばらつきを抑制し、捕集される生体試料の量を一定に保つために好適であることから、10%以下であることが好ましく、8%以下であることがより好ましく、5%以下であることが特に好ましい。本明細書において「分散度」は、動的光散乱法により測定し、キュムラント法により求めた多分散指数を分散度として用いる。
【0037】
異形粒子4の含有量は、ポリマーの全量1質量部に対して、1.0質量部以上、2.0質量部以上、3.0質量部以上、3.5質量部以上、7.0質量部以上、又は15.0質量部以上であってよく、20質量部以下、15.0質量部以下、10.0質量部以下、8.0質量部以下、6.0質量部以下、又は5.0質量部以下であってよい。異形粒子4がシランカップリング剤で表面改質されている場合、異形粒子4及びシランカップリング剤の合計含有量が、異形粒子4の含有量として上述した範囲内であってよい。
【0038】
(被覆層)
コーティング層2の突起5が存在する側の少なくとも一部は、被覆層で被覆されていてもよく、被覆されていなくてもよい。コーティング層2において少なくとも突起5が被覆層で被覆されていることが好ましい。
【0039】
被覆層は、例えば、無機酸化物層又はイオン性ポリマー層であってよい。被覆層が無機酸化物層又はイオン性ポリマー層である場合、細胞外小胞捕捉率を更に高めることが可能になる。
【0040】
無機酸化物層は無機酸化物を含有する。無機酸化物としては、例えば、酸化亜鉛(ZnO)、酸化アルミナ(Al2O3)、シリカ(SiO2)、酸化ニッケル(NiO)、酸化チタン(TiO2)、酸化イットリア(Y2O3)、酸化スズ(例えば、SnO)、酸化インジウム、酸化インジウムスズ(ITO)が挙げられる。
【0041】
無機酸化物層は、細胞外小胞の捕捉率を高めるのに好適であることから、酸化亜鉛、酸化アルミナ、シリカ、酸化ニッケル、酸化チタン、酸化イットリア、酸化スズ、及び酸化インジウムスズからなる群より選択される少なくとも1種を含有することが好ましく、酸化亜鉛、酸化チタン及び酸化インジウムスズからなる群より選択される少なくとも1種を含有することがより好ましい。
【0042】
コーティング層2の表面に無機酸化物層を形成する方法としては、特に限定されないが、スパッタリング、化学気相成長法又は蒸着等により、目的の無機酸化物を直接被覆する方法、無機酸化物の前駆体をウェットコーティングした後、ゾルゲル法により無機酸化物に成長させる方法を挙げることができる。
【0043】
イオン性ポリマー層はカチオン性ポリマー及び/又はアニオン性ポリマーを含有していてよい。カチオン性ポリマーは、第二級アミノ基、第三級アミノ基又は第四級アンモニウム基を含有するポリマーであることが好ましい。カチオン性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンイミン及びその四級化物、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ポリ(N,N’-ジメチル-3,5-ジメチレン-ピペリジニウムクロライド)ポリアリルアミン及びその4級化物、ポリジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びその4級化物、ポリジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド及びその4級化物等の高分子電解質が挙げられる。
【0044】
アニオン性ポリマーは、-COOH、-COO-、-SO3H、又は-SO3
-を有するポリマーであってよい。アニオン性ポリマーとしては、ポリ(メタ)アクリル酸およびそのイオン化物、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸)、ポリアミック酸、ポリビニルスルホン酸カリウム等の高分子電解質が挙げられる。
【0045】
イオン性ポリマー層は、細胞外小胞捕捉率を更に高めることが可能になることから、カチオン性ポリマーを含むことが好ましい。イオン性ポリマー層は、細胞外小胞捕捉率を更に高めることが可能になることから、カチオン性ポリマーを含み、かつ、アニオン性ポリマーを含まないイオン性ポリマー層(カチオン性ポリマー層)、又は、カチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーを含むイオン性ポリマー層であることが好ましい。
【0046】
コーティング層2の表面にイオン性ポリマー層を形成する方法としては、特に限定されず、異形粒子4の材質、並びに、カチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーの種類等に応じて適宜選択することができる。コーティング層2及び突起5の表面にイオン性ポリマー層を形成する方法は、例えば、コーティング層2の突起5が設けられている側の面を表面処理すること、及び、コーティング層2の表面処理された面にカチオン性ポリマー又はアニオン性ポリマーを含む液を付着させ、必要に応じて水等で洗浄した後に乾燥させることを含む方法を用いることができる。表面処理は例えばプラズマ処理を用いることができる。コーティング層2の表面にカチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーを含むイオン性ポリマー層を形成する方法としては、コーティング層2の表面をカチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーの一方のポリマーで被覆した後に、他方のポリマーで被覆する方法を用いることができる。
【0047】
被覆層の膜厚は、50nm以上、80nm以上、又は90nm以上であってよく、200nm以下、160nm以下、120nm以下、又は110nm以下であってよい。被覆層の膜厚は、次の方法によって測定することができる。被覆層を表面に有するコーティング層2を形成した支持基材1をミクロトームで切断し、薄膜切片を作製する。この切片を走査型電子顕微鏡で観察し、コーティング層2と被覆層との界面から被覆層表面までの長さを測定する。
【0048】
突起5の高さは、0.10μm以上、0.30μm以上、0.50μm以上、0.80μm以上、1.00μm以上、1.50μm以上、2.00μm以上、又は2.50μm以上であってよく、8.00μm以下、6.00μm以下、4.00μm以下、又は3.50μm以下であってよい。突起5の高さはコーティング層2の断面を走査型電子顕微鏡で観察し、ポリマー層3の突起5が設けられている側の面から突起5の頂点までの支持基材1の面外方向の長さを求めることで算出できる。
【0049】
異形粒子4の長径(単位:μm)に対する突起5の高さ(単位:μm)の比(突起5の高さ/異形粒子4の長径)は0.10~0.95であることが好ましい。異形粒子4の長径に対する突起5の高さの比が上記範囲にあることにより、突起5の強度と生体試料を捕捉する性能を両立することができる。生体試料を捕捉する性能を高めるのに好適であることから、異形粒子4の長径に対する突起5の高さの比は0.20以上、0.30以上、0.50以上、0.60以上、0.70以上、又は0.80以上であることが好ましい。突起5の強度を高めるのに好適であることから、異形粒子4の長径に対する突起5の高さの比は0.90以下、0.85以下、0.80以下、0.75以下、又は0.70以下であることが好ましく、0.60以下、又は0.40以下であってもよい。
【0050】
コーティング層2を突起5が存在する側から見たとき、コーティング層2全体に対する突起5が存在する領域の面積の割合(以下「突起存在割合」ともいう。)が10%以上であることが好ましい。突起存在割合が10%以上である場合、生体試料を捕捉する性能を高めることができる。生体試料を捕捉する性能を高めるのに好適であることから、突起存在割合は30.0%以上、50.0%以上、60.0%以上、70.0%以上又は80.0%以上であることが好ましい。突起存在割合は例えば100.0%以下、95.0%以下、90.0%以下、又は85.0%以下であってよい。
【0051】
突起存在割合は、コーティング層2の突起5が存在する側の面に対して垂直な方向から、当該面を走査型電子顕微鏡で観察し、得られた走査型電子顕微鏡画像における突起5(ポリマー層3から露出した異形粒子4)が存在する領域を測定範囲の面積で割ることによって求めることができる。ここで測定範囲は、突起5を形成する異形粒子4の短径の100倍以上を一辺とする正方形の面積に相当する範囲である。測定方法の詳細は実施例において記載されるとおりであってよい。
【0052】
コーティング層2において、ポリマー層3への埋没部位4aを有しない異形粒子4の粒子数は、異形粒子4の全粒子数に対して、50%以下であることが好ましい。ポリマー層3への埋没部位4aを有しない異形粒子4の粒子数が、異形粒子4の全粒子数の50%以下であることにより、生体試料を接触させた際に異形粒子4が混入して汚染されることを抑制できる。異形粒子4の混入による生体試料の汚染を抑制するのに好適であることから、ポリマー層3への埋没部位4aを有しない異形粒子4の粒子数は、異形粒子4の全粒子数の30%以下であることがより好ましく、10%以下であることが更に好ましく、5%以下であることが最も好ましい。ポリマー層3への埋没部位4aを有しない異形粒子4の粒子数は、生体試料捕集デバイスを純水に浸漬して超音波照射を行うことでデバイスから剥離して回収でき、この粒子の数を計測することで求めることができる。また、溶媒による洗浄又は焼成等によってポリマー層3を除去した後に異形粒子4を回収し、この粒子数を計測することで、コーティング層2が含有する異形粒子4の全粒子数を求めることができる。
【0053】
支持基材1のコーティング層2側の面から突起5の頂点までの支持基材1の面外方向の長さは、可撓性を高めるのに好適であることから、異形粒子4の長径の10倍以下、異形粒子4の長径の5倍以下、又は異形粒子4の長径の2倍以下であることが好ましく、異形粒子4の長径以下であることがより好ましい。支持基材1のコーティング層2側の面から突起5の頂点までの支持基材1の面外方向の長さが、異形粒子4の長径以下である場合、コーティング層2の膜厚を薄くすることができ、可撓性に特に優れるデバイスとなる。
【0054】
細胞を捕集する用途においては、露出した異形粒子4によって形成される突起5が、一方向に配向していることが好ましい。露出した異形粒子4によって形成される突起5が、一方向に配向していることで、流路構造を有するデバイスの場合、流路内の生体試料の流れに抗って突起5を配置することで、突起5の生体試料の捕捉効率を高めることができる。また、細胞等の生体試料の場合、突起による破砕で生体試料の内部の成分を抽出しやすい。突起5が一方向に配向していることは、デバイス表面の走査型電子顕微鏡像を測定し、その像をフーリエ変換したフーリエ変換像における輝点の有無により判断することができる。フーリエ変換により、元画像の濃淡を正弦波の重ね合わせで近似した場合の、各正弦波の波数に対するパワー(輝度の絶対値の二乗)を表す二次元像に変換することができ、元画像の濃淡に規則性がある場合、各正弦波に対応する輝点がフーリエ変換像に現れる。
【0055】
細胞外小胞を捕集する用途においては、露出した異形粒子4によって形成される突起5が、不規則配列であることが好ましい。露出した異形粒子4によって形成される突起5が、一方向に配向せず不規則配列であることで、流路構造を有するデバイスの場合、流路内の突起5の方向に依存せず、生体試料の捕捉効率の再現性を安定させることができる。
【0056】
デバイス10はコーティング層2の支持基材1とは反対の面側に1又は複数の貫通孔を有する被覆基材を更に備えていてよい。当該デバイスは貫通孔の少なくとも一つによって生体試料を添加するための空間が形成されていてよい。
【0057】
図4は被覆基材を更に備えるデバイスの一例であり、ウェルプレート形態のデバイスである。
図4に示すデバイス10Aは支持基材1と、コーティング層2と、被覆基材6とを備える。被覆基材6は複数の空間7を有する。デバイス10Aでは、生体試料を添加するための空間7が形成されている。空間7は、他の空間とは区分けされているため、1つのデバイスにおいて、生体試料同士が混ざり合うことなく、空間ごとに異なる生体試料を添加することができる。したがって、デバイス10Aでは、複数種の生体試料を同時に取り扱うことが可能である。なお、空間7は、生体試料の反応が促進されることから、貫通孔であってもよい。
【0058】
被覆基材6における空間7の数は、2個以上であってよい。被覆基材6における空間7の数は、例えば、6個、24個、48個、96個、384個、又は1536個であることが好ましい。また、空間7は、2個以上の貫通孔であってもよい。
【0059】
図5は中間層8を更に備えるデバイスの一例であり、流路を有するデバイスである。
図5に示すデバイス10Bでは支持基材1と、コーティング層2と、中間層8と、被覆基材6とがこの順に積層されている。
【0060】
被覆基材6には2つの空間7a,7bが形成されている。この空間7a、7bは貫通孔である。一方の空間7aは生体試料を含む液体を添加するための空間であり、他方の空間7bは液体を回収するための空間である。一方の空間7aに添加した液体が流路を通過した後に他方の空間7bに流れ出るため、生体試料中の少なくとも一部の成分が除外された液体を回収できる。
【0061】
中間層8はコーティング層2と被覆基材6との間に配置され、コーティング層2と被覆基材6とを接着する領域と、生体試料を輸送する流路9を形成する内部空間とを含む。
【0062】
流路9は中央領域及び2つの端部領域を有し、2つの端部領域がそれぞれ空間7a,7bの鉛直下側に位置するように配置される。中間層8は例えば粘着テープによって形成することが可能である。この場合、粘着テープによってコーティング層2と被覆基材6とを張り合わせるとともに粘着テープが存在しない領域を内部空間として流路9を形成することができる。
【0063】
生体試料は、空間7aを介して流路9の端部領域においてコーティング層2上に添加される。添加された生体試料はコーティング層2中の突起5と接触しながら方向dに沿って空間7bまで輸送される。デバイス10Bによれば、微小な空間で生体試料とコーティング層2とを接触させることができ、少量の生体試料からも効率的に成分を抽出可能である。
【0064】
本実施形態に係るデバイスでは細胞外小胞捕捉率が向上している。細胞外小胞捕捉率は50%以上であることが好ましく、60%以上であることがさらに好ましく、80%以上であることが特に好ましく、90%以上であることが最も好ましい。細胞外小胞捕捉率は次の式1によって算出される。測定方法の詳細は後述する実施例に記載のとおりである。
式1:([元の細胞外小胞サンプルの細胞外小胞量]-[捕捉されなかった細胞外小胞量])×100/[元の細胞外小胞サンプルの細胞外小胞量](%)
【0065】
本実施形態に係るデバイスは、細胞外小胞捕捉率が高いため、細胞外小胞に内包されるmiRNAの回収に好適に用いることができる。miRNA回収量は0.10ng/μL以上であることが好ましく、0.15ng/μL以上であることがさらに好ましく、0.20ng/μLであることが特に好ましく、0.25ng/μLであることが最も好ましい。miRNA回収量は後述する実施例に記載の方法によって測定される。
【0066】
結晶成長を利用することによって突起を作製する場合(例えば、特許文献1参照)、突起の材質が酸化亜鉛等の一部の材質に限定され、捕集対象の生体試料の種類に応じて材質を柔軟に変更することが困難であった。これに対して、本実施形態に係るデバイスでは、異形粒子4のポリマー層3からの露出部位4bによって突起5を形成するため、突起表面の材質を目的とする生体試料の種類に応じて変更することが可能であり、様々な生体試料に対して高い捕捉効率を達成することができる。
【0067】
本実施形態に係るデバイスは、例えば、下記〔1〕~〔3〕工程を含む方法によって製造することができる。
〔1〕異形粒子4、ポリマー、ポリマーの貧溶媒、及び、ポリマーの良溶媒を含むコーティング液を支持基材1に塗布して塗膜を形成する工程
〔2〕塗膜からポリマーの良溶媒を揮発させ、ポリマーを不溶化させる工程
〔3〕ポリマーが不溶化された塗膜からポリマーの貧溶媒を揮発させる工程
【0068】
<工程〔1〕>
工程〔1〕では、コーティング液を支持基材1に塗布して塗膜を形成する。コーティング液を支持基材1に塗布する方法としては特に限定はないが、はけ塗り、ディップコーティング、スピンコーティング、バーコーディング、流し塗り、スプレー塗装、ロール塗装、エアーナイフコーティング、ブレードコーティング、グラビアコーティング、マイクログラビアコーティング、スロットダイコーティングなど通常知られている各種の方法を用いることが可能である。
【0069】
(ポリマーの貧溶媒)
「ポリマーの貧溶媒」とは、該ポリマーを溶解しない又は溶解しにくい液体を示す。粉末状のポリマーを液体に入れて24時間攪拌した後、液体から固体を回収して乾燥した時、元のポリマーからの重量減少が50%未満の場合、その液体はポリマーの貧溶媒である。
【0070】
コーティング液がポリマーの貧溶媒を含むことで、ポリマーの良溶媒が揮発した際にポリマーが不溶化するため、異形粒子4が固定化される。ポリマーの良溶媒が揮発した際に貧溶媒があることで、異形粒子4が液面から露出せず、この状態で粒子が固定化されるため、粒子の凝集を抑制可能である。その結果として、高い均一性でコーティング層2の表面に突起5が形成される。コーティング液が貧溶媒を含まない場合、良溶媒が揮発した際に異形粒子4が固定化されていないため、粒子が凝集し、突起5が形成されない領域が発生するか、又は突起5の構造にばらつきを生じる。
【0071】
ポリマーの貧溶媒は、フッ素基(-F)を有することが好ましい。この場合、ポリマーの貧溶媒の表面張力が低下し、ポリマーの良溶媒が揮発した際に、コーティング液の上層にポリマーの貧溶媒、下層に不溶化したポリマーという2層構造がより形成されやすくなる。これにより、異形粒子4の根本をポリマーが固定した構造が形成されやすくなるため、強度が高い突起5が形成可能になる。
【0072】
フッ素基を有するポリマーの貧溶媒としては、フッ素基を有するポリマーの貧溶媒であれば特に限定はないが、例えば、モノフルオロベンゼン、ジフルオロベンゼン、トリフルオロベンゼン、テトラフルオロベンゼン、ヘキサフルオロベンゼン、オクタフルオロシクロペンテン、ヘキサフルオロイソプロピルメチルエーテル、オクタフルオロトルエン、テトラデカフルオロメチルシクロヘキサン、エイコサフルオロノナン、オクタフルオロオクタン、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、テトラデカフルオロ-2-メチルペンタン、ヘキサデカフルオロ-n-オクチルブロミド、テトラデカフルオロヘキサン、ペンタデカフルオロトリエチルアミン、ヘキサコサフルオロドデカン、ヘキサデカフルオロへプタン、ヘキサデカフルオロ(1,3-ジメチルシクロヘキサン)、へプタコサフルオロトリブチルアミン、オクタデカフルオロデカヒドロナフタレンペルフルオロデカリン、パーフルオロ(2-ブチルテトラヒドロフラン)、パーフルオロトリアミルアミン、1,1,2-トリクロロトリフルオロエタン、1,2-ジクロロテトラフルオロエタン、1,3-ジクロロテトラフルオロプロパン、1-クロロ-1,2,2,2-テトラフルオロエタン、1-ブロモ-1,1,2,2-テトラフルオロエタン、1-フルオロ-1,2-ジクロロエタン、1-フルオロ-2,2,3,3-テトラクロロプロペン、1-フルオロ-2,2,3,3-テトラフルオロプロペン、1-フルオロ-2,3,3,3-テトラクロロプロペン、1-フルオロ-3,3-ジクロロプロペン、1-フルオロ-4-クロロ-2-ニトロベンゼン、1,1,1-トリフルオロエタン、1,1,2-トリクロロ-1,2,2-トリフルオロエタン、1,1-ジクロロ-1-フルオロエタン、1,1-ジクロロ-2,2,2-トリフルオロエタン、1,2,2-トリフルオロエタン、1,2-ジクロロ-1,1,2,2-テトラフルオロエタン、1,2-ジクロロ-1,2,2-トリフルオロエタン、1,2-ジクロロ-1,2,2-トリフルオロエタノール、1,2-ジフルオロ-1,2-ジクロロエチレン、1,2-ジフルオロエタン、1,3-ジクロロ-1,1,2,2-テトラフルオロエタン、1,3-ジクロロ-1,2,2-トリフルオロプロパン、1,4-ジフルオロベンゼン、2,2-ジクロロ-1,1,1-トリフルオロエタン、2,2-ジフルオロエタン、2,3-ジフルオロ-1,1,2,2-テトラクロロエタン、2,3-ジフルオロ-1,1,2,2-テトラフルオロエタン、2,4-ジフルオロベンゼン、3,3-ジクロロ-1,1,1-トリフルオロプロペン、3,3-ジクロロ-1,1,2,2-テトラフルオロプロペン、3,3-ジフルオロ-1,2-ジクロロプロペン、3,3-ジフルオロ-1,2-エポキシプロパン、3,4-ジフルオロ-1,1,2,2-テトラクロロエタン等を挙げることができる。
【0073】
ポリマーの貧溶媒の表面張力は、22mN/m以下であることが好ましい。表面張力が22mN/m以下であることにより、コーティング層2の表面に貧溶媒が集まりやすく、貧溶媒とポリマーの2層構造を形成しやすい。ポリマーの貧溶媒の表面張力は20mN/m以下であることがより好ましく、18mN/m以下であることが更に好ましく、16mN/m以下であることが最も好ましい。環境に排出された時の自然破壊の影響を抑制するという観点では、表面張力が高い方が好ましく、このため、表面張力は13N/m以上であることが好ましく、15N/m以上であることがより好ましく、17N/m以上であることが更に好ましく、19N/m以上であることが最も好ましい。
【0074】
ポリマーの貧溶媒の沸点は、コーティングの乾燥時間を短縮するため、大気圧下において、200℃以下、175℃以下又は150℃以下であることが好ましく、140℃以下、130℃以下、120℃以下、又は100℃以下であってもよい。ポリマーの貧溶媒の沸点は、大気圧下において、ポリマーの良溶媒の沸点超であり、80℃以上、90℃以上、100℃以上、又は110℃以上であってよい。
【0075】
ポリマーの貧溶媒の含有量は、コーティング液の全質量を基準として、1.0質量%以上、2.0質量%以上、3.0質量%以上、4.0質量%以上、5.0質量%以上、又は6.0質量%以上であってよく、20.0質量%以下、15.0質量%以下、12.0質量%以下、10.0質量%以下、8.5質量%以下、又は7.0質量%以下であってよい。
【0076】
(ポリマーの良溶媒)
「ポリマーの良溶媒」とは、該ポリマーを溶解する液体のことを示す。粉末状のポリマーを液体に入れて24時間攪拌した後、液体から固体を回収して乾燥した時、元のポリマーからの重量減少が50%以上の場合、その液体はポリマーの良溶媒である。
【0077】
ポリマーの良溶媒を含有することにより、塗工前のコーティング液ではポリマーが溶解した状態にあり、コーティング(塗膜)の均一性を高めることができる。ポリマーの良溶媒を含有しない場合、コーティング液には不溶化したポリマー固体と異形粒子4が分散した状態にあり、コーティングした異形粒子4を基板上に固定化することができず、突起5の強度が低下する。良溶媒が先に揮発することで、前述の貧溶媒とポリマーの2層構造が形成されることから、良溶媒の沸点は貧溶媒よりも低いものである。
【0078】
大気圧下におけるポリマーの貧溶媒の沸点T3と、大気圧下におけるポリマーの良溶媒の沸点T4との差(T3-T4)は、貧溶媒とポリマーとの2層構造を形成しやすくし、突起5の強度を高めるのに更に好適であることから、10℃以上であることが好ましく、20℃以上であることがより好ましく、30℃以上であることが最も好ましい。沸点が低すぎると保存中にコーティング液が乾燥してしまう原因となることから、T3-T4は、70℃以下、又は50℃以下であることが好ましく、40℃以下、30℃以下、又は10℃以下であってもよい。
【0079】
ポリマーの良溶媒の沸点は、大気圧下において、90℃以下、80℃以下、70℃以下、60℃以下、50℃以下、又は40℃以下であってよく、30℃以上、40℃以上、50℃以上、又は60℃以上であってよい。
【0080】
ポリマーの良溶媒としては、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、アセトン、テトラヒドロフラン、トルエン、酢酸エチル等を好適に用いることができる。
【0081】
ポリマーの良溶媒の含有量は、コーティング液の全量を基準として、50質量%以上、60質量%以上、又は70質量%以上であってよく、90質量%以下、85質量%以下、又は80質量%以下であってよい。
【0082】
<工程〔2〕>
工程〔2〕では、塗膜からポリマーの良溶媒を揮発させ、ポリマーを不溶化させる。ポリマーを不溶化させることで、ポリマーの貧溶媒と、不溶化したポリマーを含むポリマー層3とからなる2層構造が形成される。ポリマー層3が異形粒子4を支持基材1上に固定化する。
【0083】
ポリマーの良溶媒を揮発させる方法としては特に限定はないが、加熱乾燥、真空乾燥、エアー乾燥、UV乾燥など、通常知られている各種の方法を用いることが可能である。
【0084】
<工程〔3〕>
工程〔3〕では、ポリマーが不溶化された塗膜からポリマーの貧溶媒を揮発させる。ポリマーの貧溶媒を除去することで、
図1に示すように、支持基材1上に、ポリマー層3と、ポリマー層3に固定化された異形粒子4とを含むコーティング層2が形成される。異形粒子4のポリマー層3からの露出部位4bによって突起5が形成される。
【0085】
ポリマーの貧溶媒を揮発させる方法としては特に限定はなく、ポリマーの良溶媒を揮発させる方法として上述した乾燥方法を適用可能である。
【0086】
<その他の工程>
本実施形態に係るデバイスの製造方法は、上述した工程以外の工程(その他の工程)を更に備えていてよい。本実施形態に係るデバイスの製造方法は、他の工程として、例えば、工程〔3〕においてポリマーの貧溶媒を揮発させることによって形成されるコーティング層2の突起5が存在する側の少なくとも一部を被覆層で被覆する工程を更に備えていてよい。被覆層及び被覆層で被覆する方法について上述したとおりであってよい。
図4に示すウェルプレート形態のデバイスを製造する場合、デバイスの製造方法は、被覆基材6(例えば、ボトムレスウェルプレート)をコーティング層2に貼り合わせる工程を更に備えていてよい。被覆基材6とコーティング層2とを貼り合わせる方法は特に限定はなく、粘着テープや接着剤、加熱による融着等、物理的又は化学的に貼り合わせる方法を利用することができる。
図5に示す流路構造を有するデバイスを製造する場合、デバイスの製造方法は、コーティング層2の突起5が存在する側の面上に上述した中間層8及び被覆基材6をこの順に配置する工程を更に備えていてよい。
【実施例0087】
以下、本発明を実施例及び比較例によってより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。実施例及び比較例における異形粒子の長径及び短径、強度の確認、細胞外小胞捕捉率及びmiRNA量の測定は以下の方法により行った。
【0088】
[異形粒子の長径及び短径の測定]
(測定用サンプルの調製)
異形粒子分散液をコロジオン支持銅メッシュ上にキャスト乾燥した測定用サンプルを準備した。異形粒子分散液は、異形粒子10mgをメタノール1mLに加え、10秒間超音波照射して分散させることにより調製した。
【0089】
(測定)
走査型電子顕微鏡(キーエンス社製VE-9800)を用い、測定用サンプルの走査型電子顕微鏡写真を取得した。取得した写真上で、異形粒子の最大粒径を測定することで長径を算出した。長径方向の軸を長軸とし、長軸に垂直な方向の最大長さを測定することで短径を算出した。無作為に選んだ50点の粒子の長径及び短径の平均を求めた。算出した長径を短径で除することで、短径に対する長径の比(長径/短径)とした。
【0090】
[異形粒子の長径に対する突起の高さの比の測定]
コーティング層の表面を樹脂包埋した後に切断した断面を走査型電子顕微鏡(キーエンス社製VE-9800)により観察した。当該断面の走査型電子顕微鏡写真においてポリマー層の支持基材とは反対側の表面から突起の頂点までの距離を求め、突起の高さとした。突起の高さを前述の方法で求めた異形粒子の長径で割ることで、異形粒子の長径に対する突起の高さの比(突起の高さ/異形粒子の長径)を求めた。
【0091】
[突起が存在する領域の割合]
走査型電子顕微鏡(キーエンス社製VE-9800)を用いてコーティング層の表面を測定した。取得したコーティング層の表面の顕微鏡写真上で、異形粒子が存在する領域が白、存在しない領域が黒となるように2値化し、白の面積割合を求めた。これを、コーティング層を突起が存在する側から見たときのコーティング層全体に対する突起が存在する領域の面積の割合とした。
【0092】
[強度の確認]
コーティング層の強度は、ベンコット(旭化成社製)に50gの荷重をかけた状態でコーティング表面を5往復擦傷し、コーティング層の支持基材からの剥離を目視及び走査型電子顕微鏡を用いて確認することで評価した。
〇:コーティング層の剥離なし。
×:コーティング層の剥離あり。
【0093】
[細胞外小胞捕捉率及びmiRNA量の測定]
細胞を培養した培地を細胞外小胞サンプルとして使用した。デバイスが24ウェルプレートの場合、250μL/wellで細胞外小胞サンプルを滴下し、一晩静置した。上澄み液を回収し、細胞外小胞濃度を測定することで、捕捉されなかった細胞外小胞量を求めた。Lysisバッファーを250μL/wellで滴下し、5分間静置した。Lysisバッファーを回収し、核酸精製キットで精製後、miRNA濃度を測定した。
【0094】
デバイスが流路の場合、流路内にサンプルを250μL流して溶液を回収し、細胞外小胞濃度を測定することで、捕捉されなかった細胞外小胞量を求めた。次に、250μLのLysisバッファーを流して溶液を回収し、核酸精製キットで精製後、miRNA濃度を測定した。
細胞外小胞捕捉率は次の式から求めた。
([元の細胞外小胞サンプルの細胞外小胞量]-[捕捉されなかった細胞外小胞量])×100/[元の細胞外小胞サンプルの細胞外小胞量](%)
【0095】
[実施例1]
酸化亜鉛の異形粒子(シグマアルドリッチ製;長径0.3μm、短径0.05μm、長径/短径の比6.0)0.5gをメタノール10mLに加え、超音波照射して分散させた。メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(東京化成工業製)(溶解度パラメータ12.5)0.05g,及び、25%アンモニア水(富士フイルム和光純薬製)0.05gを加え、60℃で2時間、スターラーを用いて300rpmで攪拌した。反応後、目開き106μmメッシュフィルターでろ過して粗大凝集物を除去後、デカンテーションで上澄みを回収した。回収した粒子にメタノールを加えて4000rpmで10秒遠心分離し、上澄みを捨ててメタノールで再度洗浄した。その後室温乾燥することで、メタクリロイル基(溶解度パラメータ9.5)で表面が修飾された異形粒子を得た。
【0096】
上記メタクリロイル基で表面修飾された異形粒子10質量部、ポリメタクリル酸メチル2.5質量部、及び1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン7.5質量部をメチルエチルケトン50質量部に加えて混合した。超音波照射して粒子を分散させた。ポリカーボネートフィルム(帝人製;製品名パンライト)に粒子の分散液を1000rpmで30秒間スピンコートすることで、異形粒子とポリマー層とからなるコーティング層を形成した。このコーティング層の表面にスパッタリングで酸化亜鉛を膜厚100nmで被覆した。
図6は実施例1のデバイス表面の走査型電子顕微鏡写真を示す。
【0097】
上記コーティング層を有する支持基材を、ボトムレス24ウェルプレートの底面に貼り合わせることで、ウェル内の底面に突起構造を有するデバイスを作製した。このデバイスを滅菌バッグに包装し、エチレンオキシドガス滅菌を行った。24時間エアレーション後にデバイスを取り出し、評価に使用した。
【0098】
作製したデバイスは突起の強度に優れるものであった。また、細胞外小胞捕捉率が89.4%で、細胞外小胞の捕捉性能に優れるものであった。また、回収可能なmiRNA量は0.201ng/μLで、回収できたmiRNA量が多いものであった。
【0099】
[実施例2]
異形粒子として酸化亜鉛の異形粒子(シグマアルドリッチ製;長径1μm、短径0.18μm、長径/短径の比5.6)を使用し、その他は実施例1と同様にしてデバイスを作製した。
図7は実施例2のデバイス表面の走査型電子顕微鏡写真を示す。
【0100】
作製したデバイスは突起の強度に優れるものであった。また、細胞外小胞捕捉率が90.1%で、細胞外小胞の捕捉性能に優れるものであった。また、回収可能なmiRNA量は0.239ng/μLで、回収できたmiRNA量が多いものであった。
【0101】
[実施例3]
異形粒子として酸化亜鉛の異形粒子(シグマアルドリッチ製;長径4.5μm、短径0.2μm、長径/短径の比22.5)を使用し、その他は実施例1と同様にしてデバイスを作製した。
図8は実施例3のデバイス表面の走査型電子顕微鏡写真を示す。
【0102】
作製したデバイスは突起の強度に優れるものであった。また、細胞外小胞捕捉率が82.5%で、細胞外小胞の捕捉性能に優れるものであった。また、回収可能なmiRNA量は0.226ng/μLで、回収できたmiRNA量が多いものであった。
【0103】
[実施例4]
異形粒子として酸化チタンの異形粒子(シグマアルドリッチ製;長径10μm、短径0.1μm、長径/短径の比100)を使用し、その他は実施例1と同様にしてデバイスを作製した。
【0104】
作製したデバイスは突起の強度に優れるものであった。また、細胞外小胞捕捉率が92.2%で、細胞外小胞の捕捉性能に優れるものであった。また、回収可能なmiRNA量は0.104ng/μLで、回収できたmiRNA量が多いものであった。
【0105】
[実施例5]
コーティング層表面のスパッタリングを酸化アルミナで実施し、その他は実施例3と同様にしてデバイスを作製した。
図9は実施例4のデバイス表面の走査型電子顕微鏡写真を示す。
【0106】
作製したデバイスは突起の強度に優れるものであった。また、細胞外小胞捕捉率が92.1%で、細胞外小胞の捕捉性能に優れるものであった。また、回収可能なmiRNA量は0.14ng/μLで、回収できたmiRNA量が多いものであった。
【0107】
[実施例6]
コーティング層表面のスパッタリングをシリカで実施し、その他は実施例3と同様にしてデバイスを作製した。
【0108】
作製したデバイスは突起の強度に優れるものであった。また、細胞外小胞捕捉率が91.9%で、細胞外小胞の捕捉性能に優れるものであった。また、回収可能なmiRNA量は0.128ng/μLで、回収できたmiRNA量が多いものであった。
【0109】
[実施例7]
コーティング層表面のスパッタリングを酸化ニッケルで実施し、その他は実施例3と同様にしてデバイスを作製した。
【0110】
作製したデバイスは突起の強度に優れるものであった。また、細胞外小胞捕捉率が92.3%で、細胞外小胞の捕捉性能に優れるものであった。また、回収可能なmiRNA量は0.203ng/μLで、回収できたmiRNA量が多いものであった。
【0111】
[実施例8]
コーティング層表面のスパッタリングを酸化スズで実施し、その他は実施例3と同様にしてデバイスを作製した。
【0112】
作製したデバイスは突起の強度に優れるものであった。また、細胞外小胞捕捉率が94.9%で、細胞外小胞の捕捉性能に優れるものであった。また、回収可能なmiRNA量は0.156ng/μLで、回収できたmiRNA量が多いものであった。
【0113】
[実施例9]
コーティング層表面のスパッタリングを酸化チタンで実施し、その他は実施例3と同様にしてデバイスを作製した。
【0114】
作製したデバイスは突起の強度に優れるものであった。また、細胞外小胞捕捉率が92.6%で、細胞外小胞の捕捉性能に優れるものであった。また、回収可能なmiRNA量は0.1ng/μLで、回収できたmiRNA量が多いものであった。
【0115】
[実施例10]
コーティング層表面のスパッタリングを酸化イットリアで実施し、その他は実施例3と同様にしてデバイスを作製した。
【0116】
作製したデバイスは突起の強度に優れるものであった。また、細胞外小胞捕捉率が88.1%で、細胞外小胞の捕捉性能に優れるものであった。
【0117】
[実施例11]
コーティング層表面のスパッタリングを酸化インジウムスズで実施し、その他は実施例3と同様にしてデバイスを作製した。
【0118】
作製したデバイスは突起の強度に優れるものであった。また、細胞外小胞捕捉率が93.7%で、細胞外小胞の捕捉性能に優れるものであった。また、回収可能なmiRNA量は0.468ng/μLで、回収できたmiRNA量が多いものであった。
【0119】
[実施例12]
実施例3のスパッタリングを実施せず、代わりに以下の方法でカチオン性ポリマーを被覆し、その他は実施例3と同様にしてデバイスを作製した。
【0120】
コーティング層を形成した後、真空プラズマ装置(真空デバイス製;PIB-20)を用いて表面にプラズマ処理を施した。1mg/mL濃度のポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド水溶液(シグマアルドリッチ製)に10秒間浸漬し、純水で洗浄してエアーで乾燥させた。
【0121】
作製したデバイスは突起の強度に優れるものであった。また、細胞外小胞捕捉率が79.9%で、細胞外小胞の捕捉性能に優れるものであった。また、回収可能なmiRNA量は0.14ng/μLで、回収できたmiRNA量が多いものであった。
【0122】
[実施例13]
実施例3のスパッタリングを実施せず、代わりに以下の方法でイオン性ポリマーを被覆し、その他は実施例3と同様にしてデバイスを作製した。
【0123】
コーティング層を形成した後、真空プラズマ装置(真空デバイス製;PIB-20)を用いて表面にプラズマ処理を施した。1mg/mL濃度のポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド水溶液(シグマアルドリッチ製)に10秒間浸漬し、純水で洗浄してエアーで乾燥させた。また、このフィルムをさらに1mg/mL濃度のポリスチレンスルホン酸水溶液(シグマアルドリッチ製)に10秒間浸漬し、純水で洗浄してエアーで乾燥させた。
【0124】
作製したデバイスは突起の強度に優れるものであった。また、細胞外小胞捕捉率が58.8%で、細胞外小胞の捕捉性能に優れるものであった。また、回収可能なmiRNA量は0.176ng/μLで、回収できたmiRNA量が多いものであった。
【0125】
[実施例14]
実施例4と同様の方法でコーティング層を形成後、24ウェルプレートとフィルムを貼り合わせる代わりに、コーティング層の上に粘着テープとアクリル板を貼ることで、底面に突起構造を有するマイクロ流路を作製した。なお、粘着テープは2mm×20mmの長方形の貫通領域を有し、厚み0.1mmのものを使用した。アクリル板は直径1mmの円形の貫通孔を有するものをそれぞれ用いた。形成されたマイクロ流路は流路幅2mm、流路長20mm、流路の高さ0.1mmであった。
【0126】
作製したデバイスは突起の強度に優れるものであった。また、細胞外小胞捕捉率が48.3%で、細胞外小胞の捕捉性能に優れるものであった。
【0127】
[実施例15]
実施例7と同様の方法でコーティング層を形成後、実施例14と同様の方法でマイクロ流路型のデバイスを作製した。
【0128】
作製したデバイスは突起の強度に優れるものであった。また、細胞外小胞捕捉率が51.7%で、細胞外小胞の捕捉性能に優れるものであった。
【0129】
[実施例16]
実施例8と同様の方法でコーティング層を形成後、実施例14と同様の方法でマイクロ流路型のデバイスを作製した。
【0130】
作製したデバイスは突起の強度に優れるものであった。また、細胞外小胞捕捉率が58.2%で、細胞外小胞の捕捉性能に優れるものであった。
【0131】
[実施例17]
実施例9と同様の方法でコーティング層を形成後、実施例14と同様の方法でマイクロ流路型のデバイスを作製した。
【0132】
作製したデバイスは突起の強度に優れるものであった。また、細胞外小胞捕捉率が58.5%で、細胞外小胞の捕捉性能に優れるものであった。
【0133】
[実施例18]
実施例10と同様の方法でコーティング層を形成後、実施例14と同様の方法でマイクロ流路型のデバイスを作製した。
【0134】
作製したデバイスは突起の強度に優れるものであった。また、細胞外小胞捕捉率が60.4%で、細胞外小胞の捕捉性能に優れるものであった。
【0135】
[実施例19]
実施例11と同様の方法でコーティング層を形成後、実施例14と同様の方法でマイクロ流路型のデバイスを作製した。
【0136】
作製したデバイスは突起の強度に優れるものであった。また、細胞外小胞捕捉率が67.7%で、細胞外小胞の捕捉性能に優れるものであった。
【0137】
[比較例1]
コーティング層の形成及びスパッタリングを実施せず、ポリカーボネートフィルムをそのまま使用し、実施例1と同様にしてボトムレス24ウェルプレートに貼り合わせた。
【0138】
作製したデバイスは細胞外小胞捕捉率が46.0%で、捕捉率に劣るものであった。
【0139】
[比較例2]
コーティング層の形成及びスパッタリングを実施せず、ポリカーボネートフィルムをそのまま使用し、実施例14と同様にしてマイクロ流路を作製した。
【0140】
作製したデバイスは細胞外小胞捕捉率が41.3%で、捕捉率に劣るものであった。
【0141】
[比較例3]
コーティング層の形成を実施せず、ポリカーボネートフィルムの表面にスパッタリングで酸化亜鉛の平滑な膜を形成した後、実施例14と同様にしてマイクロ流路を作製した。
【0142】
作製したデバイスは細胞外小胞捕捉率が38.5%で、捕捉率に劣るものであった。
【0143】
[比較例4]
実施例3のコーティング層の形成の際、ポリメタクリル酸メチルを添加していない溶液を用いることで、ポリマー層を有しないコーティング層を形成し、その他は実施例3と同様にしてデバイスを作製した。
【0144】
作製したデバイスは突起の強度に劣るものであった。
【0145】
表1中の略号は次に示すとおりである。
PC:ポリカーボネート、PMMA:ポリメタクリル酸メチル、ZnO:酸化亜鉛、Al2O3:酸化アルミナ、SiO2:シリカ、SnO:酸化スズ(II)、NiO:酸化ニッケル、TiO2:酸化チタン、Y2O3:酸化イットリア、ITO:酸化インジウムスズ、PDDA:ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド、PSS:ポリスチレンスルホン酸
【0146】
実施例1~19及び比較例1~4において使用したシランカップリング剤はメタクリロイル基を有するものを使用した。当該シランカップリング剤の溶解度パラメータと、ポリマーの溶解度パラメータとの差は3.2であった。
【0147】
【0148】
表1に示すとおり、ポリマー層への埋没部位と、ポリマー層からの露出部位とを有する異形粒子によって突起を形成した実施例のデバイスが、突起の強度及び細胞外小胞の捕捉率に優れることが示された。
1…支持基材、2…コーティング層、3…ポリマー層、4…異形粒子、4a…ポリマー層への埋没部位、4b…ポリマー層からの露出部位、5…突起、6…被覆基材、7,7a,7b…空間、8…中間層、9…流路、10,10A,10B…デバイス、S…異形粒子の短径、L…異形粒子の長径