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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176872
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】テープ
(51)【国際特許分類】
   C08L 29/04 20060101AFI20241212BHJP
   B32B 27/28 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
C08L29/04 S
B32B27/28 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095716
(22)【出願日】2023-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123928
【弁理士】
【氏名又は名称】井▲崎▼ 愛佳
(74)【代理人】
【識別番号】100136308
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100207295
【弁理士】
【氏名又は名称】寺尾 茂泰
(72)【発明者】
【氏名】池澤 泰憲
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 拓哉
【テーマコード(参考)】
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
4F100AK01B
4F100AK03B
4F100AK69A
4F100AL07B
4F100AT00B
4F100BA02
4F100EA02
4F100EH17
4F100EH20
4F100EH23
4F100GB16
4F100JA06A
4F100JB16B
4F100JD02
4F100JD03
4F100YY00A
4J002BE031
4J002GG01
(57)【要約】
【課題】ガスバリア性と柔軟性とを兼ね備えたEVOHを含む層を有するテープを提供する。
【解決手段】エチレン含有量20mol%以上32mol%未満のエチレン-ビニルアルコール系共重合体を含むエチレン-ビニルアルコール系共重合体層を有するテープ。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン含有量20mol%以上32mol%未満のエチレン-ビニルアルコール系共重合体を含むエチレン-ビニルアルコール系共重合体層を有するテープ。
【請求項2】
前記エチレン-ビニルアルコール系共重合体層の厚みが0.1~80μmである請求項1記載のテープ。
【請求項3】
前記エチレン-ビニルアルコール系共重合体のエチレン含有量が20mol%以上30mol%以下である請求項1又は2記載のテープ。
【請求項4】
前記エチレン-ビニルアルコール系共重合体のメルトフローレート(210℃、荷重2160g)が2~15g/10minである請求項1又は2記載のテープ。
【請求項5】
前記エチレン-ビニルアルコール系共重合体層に含まれるエチレン-ビニルアルコール系共重合体の含有量が50質量%以上である請求項1又は2記載のテープ。
【請求項6】
厚みが10~400μmである請求項1又は2記載のテープ。
【請求項7】
テープの厚みに対するエチレン-ビニルアルコール系共重合体層の厚みの比(エチレン-ビニルアルコール系共重合体層/テープ)が1/100~1/2である請求項1又は2記載のテープ。
【請求項8】
ガスバリア性を有する容器の保護用である請求項1又は2記載のテープ。
【請求項9】
エッジプロテクト用である請求項1又は2記載のテープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テープに関し、さらに詳しくは、ガスバリア性と柔軟性に優れたテープに関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂製の基材フィルムに粘着剤を塗工して作製される粘着テープは、幅広く利用されている。
また、前記熱可塑性樹脂の一種である、エチレン-ビニルアルコール系共重合体(以下、「EVOH」と称することがある)は、高分子側鎖に存在する水酸基同士の水素結合のため、非常に強い分子間力を有する。それゆえに、結晶性が高く、また、非晶部分においても分子間力が高いため、EVOHを用いたフィルムは、気体分子等が通過しにくく、優れたガスバリア性を示す。このような性質を有するEVOHは、基材フィルムにガスバリア性を付与するための、ガスバリア層として用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、エチレン含有量35~49mol%かつ2~9ミクロンの層厚のEVOH層を有する積層体(テープ)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-45526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1に開示されたテープにおいて、より高いガスバリア性を発現させるためにはEVOH層の厚みを厚くする必要がある。しかし、EVOH層の厚みを厚くした場合、テープの柔軟性が十分ではなくなり、更なる改善の余地がある。
【0006】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、ガスバリア性と柔軟性とを兼ね備えたEVOHを含む層を有するテープの提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
しかるに本発明者らは、かかる事情に鑑み鋭意研究を重ねた結果、EVOHのエチレン含有量が従来のEVOHより低いEVOHを用いることにより、ガスバリア性と柔軟性とを兼ね備えたテープとなることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の態様を有する。
[1] エチレン含有量20mol%以上32mol%未満のEVOHを含むEVOH層を有するテープ。
[2] 前記EVOH層の厚みが0.1~80μmである[1]に記載のテープ。
[3] 前記EVOHのエチレン含有量が20mol%以上30mol%以下である[1]又は[2]に記載のテープ。
[4] 前記EVOHのメルトフローレート(210℃、荷重2160g)が2~15g/10minである[1]~[3]のいずれかに記載のテープ。
[5] 前記EVOH層に含まれるEVOHの含有量が50質量%以上である[1]~[4]のいずれかに記載のテープ。
[6] 厚みが10~400μmである[1]~[5]のいずれかに記載のテープ。
[7] テープの厚みに対するEVOH層の厚みの比(EVOH層/テープ)が1/100~1/2である[1]~[6]のいずれかに記載のテープ。
[8] ガスバリア性を有する容器の保護用である[1]~[7]のいずれかに記載のテープ。
[9] エッジプロテクト用である[1]~[7]のいずれかに記載のテープ。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、エチレン含有量が20mol%以上32mol%未満のEVOHを含むEVOH層を有することにより、ガスバリア性、特には酸素バリア性と柔軟性とを兼ね備え、ハンドリング性が改善されたテープとすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明を実施するための形態の例に基づいて本発明を説明する。但し、本発明が、次に説明する実施形態に限定されるものではない。
本発明において「テープ」とは「フィルム」や「シート」をも含めた意味である。
【0011】
本発明において「X~Y」(X,Yは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」または「好ましくはYより小さい」の意も包含する。
また、「X以上」(Xは任意の数字)または「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、「Xより大きいことが好ましい」または「Y未満であることが好ましい」旨の意も包含する。
更に、「X及び/又はY(X,Yは任意の構成)」とは、X及びYの少なくとも一方を意味するものであって、Xのみ、Yのみ、X及びY、の3通りを意味するものである。
【0012】
以下において、EVOHや熱可塑性樹脂に含まれる単量体単位を単に「単位」と称す場合がある。例えば、エチレンに基づく単量体単位を「エチレン単位」と称す場合がある。
【0013】
本発明の一実施形態に係るテープ(以下、「本テープ」という場合がある)は、エチレン含有量20mol%以上32mol%未満のEVOHを含むEVOH層を有するテープである。
本テープは、EVOH層を有すればよく、例えば、EVOH層のみの単層テープであっても、EVOH層が複数積層した多層テープや、EVOH層とEVOH層以外の熱可塑性樹脂を含む層が積層した多層テープであってもよい。
以下、本テープの各構成について説明する。
【0014】
〔EVOH層〕
本テープにおけるEVOH層の厚みは、0.1~80μmであることが好ましく、より好ましくは0.5~70μm、更に好ましくは1~50μm、特に好ましくは1.5~40μm、殊に好ましくは2~30μmである。EVOH層の厚みが前記範囲内であると、柔軟性に優れる傾向がある。なお、本テープにEVOH層が複数含まれる場合、前記EVOH層の厚みとは、全てのEVOH層を合わせた厚みである。
【0015】
前記EVOH層は、EVOHを含むEVOH組成物から形成されるものである。
前記EVOHは、エチレン-ビニルエステル共重合体をケン化することにより得ることができる。ビニルエステルとしては酢酸ビニルが代表的なものとして挙げられるが、その他の脂肪酸ビニルエステル(プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニルなど)も使用できる。エチレン-ビニルエステル共重合体は、公知の任意の重合法、例えば、溶液重合、懸濁重合、エマルジョン重合等により製造され、エチレン-ビニルエステル共重合体のケン化も、公知の方法で行い得る。
【0016】
前記EVOHのエチレン含有量は、ISO14663に基づいて測定される値で、20mol%以上32mol%未満であり、好ましくは20mol%以上30mol%以下、より好ましくは22mol%以上29mol%以下、特に好ましくは24mol%以上26mol%以下である。EVOHのエチレン含有量が前記範囲内であることにより、本テープは、ガスバリア性と柔軟性に優れたものとなる。
【0017】
前記EVOHのメルトフローレート(MFR)(210℃、荷重2160g)は、0.1~50g/10minであることが好ましく、より好ましくは1~30g/10min、更に好ましくは2~15g/10minである。EVOHのMFRが大きすぎる場合は、製膜性が不安定となる傾向があり、小さすぎる場合は粘度が高くなり過ぎて溶融押出しが困難となる傾向がある。
【0018】
前記EVOHの密度は、JIS K7112:1999Bに基づいて測定される値で、通常1.1~1.4g/cm3であり、好ましくは1.15~1.3g/cm3、より好ましくは1.2~1.25g/cm3である。EVOHの密度が前記範囲内であることにより、ガスバリア性により優れる傾向がある。
【0019】
前記EVOHのビニルエステル単位のケン化度は、JIS K6726(ただし、EVOHは水/メタノール溶媒に均一に溶解した溶液にて)に基づいて測定される値で、ガスバリア性、熱安定性、耐湿性の観点から、80モル%以上が好ましく、90モル%以上が更に好ましく、98モル%以上がより好ましく、99モル%以上が特に好ましく、100モル%であってもよい。
【0020】
前記EVOHは、本発明の効果を阻害しない範囲、一般的には5モル%以下の範囲で、エチレン及びビニルエステル以外の重合性単量体が共重合されていてもよい。このような重合性単量体としては、例えば、プロピレン、イソブテン、α-オクテン、α-ドデセン、α-オクタデセン等のα-オレフィン;3-ブテン-1-オール、4-ペンテン-1-オール、3-ブテン-1,2-ジオール等のヒドロキシ基含有α-オレフィン類やそのエステル化物、アシル化物等のヒドロキシ基含有α-オレフィン誘導体;1,3-ジアセトキシ-2-メチレンプロパン、1,3-ジプロピオニルオキシ-2-メチレンプロパン、1,3-ジブチロニルオキシ-2-メチレンプロパン等のヒドロキシメチルビニリデンジアセテート類;不飽和カルボン酸又はその塩、部分アルキルエステル、完全アルキルエステル、ニトリル、アミド若しくは無水物;不飽和スルホン酸又はその塩;ビニルシラン化合物;塩化ビニル;スチレン等が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0021】
更に、EVOHとしては、ウレタン化、アセタール化、シアノエチル化、オキシアルキレン化等の「後変性」されたEVOHを用いることもできる。
【0022】
前記EVOH層に含まれるEVOHの含有量は特に限定されないが、EVOHが主成分(すなわち、EVOH層中に含まれるEVOHの含有量が50質量%以上)であることが好ましい。EVOHの含有量は60質量%以上がより好ましく、70質量%以上が更に好ましく、80質量%以上、90質量%以上、100質量%が特に好ましい。
【0023】
前記EVOH層には、本発明の効果を阻害しない範囲、一般的には20質量%以下の範囲で、EVOH以外の成分、例えば、ブロッキング防止剤、加工助剤、EVOH以外の樹脂、カルボン酸化合物、リン酸化合物、ホウ素化合物、金属塩、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、着色剤、充填剤、界面活性剤、乾燥剤、架橋剤、各種繊維等の補強剤等のその他成分を含有してもよい。これらは単独でもしくは2種以上を併せて用いてもよい。
【0024】
〔熱可塑性樹脂層〕
本テープは、EVOH層以外にも熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂層を有していてもよい。本テープにおいて、前記熱可塑性樹脂層は、1層であってもよく、複数層有していてもよい。本テープが、熱可塑性樹脂層を有することにより、本テープの機械強度や水蒸気に対するガスバリア性をより高めることができる傾向がある。また、機械強度等の特性を、熱可塑性樹脂層を構成する熱可塑性樹脂の種類によって、応じて付与することができる。
【0025】
前記熱可塑性樹脂としては、前記EVOHを除くものであり、例えば、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等のポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、エチレン-プロピレン(ブロック又はランダム)共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリプロピレン、プロピレン-α-オレフィン共重合体、ポリブテン、ポリペンテン等のオレフィンの単独又は共重合体、或いはこれらを不飽和カルボン酸又はそのエステルでグラフト変性したもの等のポリオレフィン;ポリエステル;ポリアミド(共重合ポリアミドも含む);ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;アクリル樹脂;ポリスチレン;ポリビニルエステル;ポリエステルエラストマー;ポリウレタンエラストマー;塩素化ポリスチレン;塩素化ポリプロピレン;芳香族ポリケトン又は脂肪族ポリケトン、及びこれらを還元して得られるポリアルコール;ポリアセタール;ポリカーボネート等が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0026】
熱可塑性樹脂層における熱可塑性樹脂の含有量は、特に限定されないが、熱可塑性樹脂が主成分(すなわち、熱可塑性樹脂層に含まれる熱可塑性樹脂の含有量が50質量%以上)であることが好ましい。熱可塑性樹脂の含有量は60質量%以上がより好ましく、70質量%以上が更に好ましく、80質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、100質量%が特に好ましい。
【0027】
前記熱可塑性樹脂層には、本発明の効果を阻害しない範囲、一般的には20質量%以下の範囲で、熱可塑性樹脂以外の成分、例えば、ブロッキング防止剤、加工助剤、熱可塑性樹脂以外の樹脂、カルボン酸化合物、リン酸化合物、ホウ素化合物、金属塩、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、着色剤、充填剤、界面活性剤、乾燥剤、架橋剤、各種繊維等の補強剤等のその他成分を含有してもよい。これらは単独でもしくは2種以上を併せて用いてもよい。
【0028】
[接着性樹脂組成物を含む層]
本テープは、前記熱可塑性樹脂層にポリオレフィンが含まれる場合、EVOH層との接着性の点から、接着性樹脂を含む層(以下、「接着性樹脂層」と称する)を有していてもよい。本テープが、接着性樹脂層を有することにより、本テープの外観特性(膜面)がより良好なものとなる傾向にある。
【0029】
前記接着性樹脂は、特に限定されないが、カルボキシ基、カルボン酸無水物基、エポキシ基を有するポリオレフィンを用いることが好ましく、カルボン酸無水物基を有するポリオレフィンを用いることがより好ましい。このような接着性樹脂は、EVOH層及び/又は熱可塑性樹脂層との接着性にも優れる傾向にある。
【0030】
カルボキシ基を含有するポリオレフィンとしては、例えば、アクリル酸やメタクリル酸を共重合したポリオレフィン等が挙げられる。このとき、アイオノマーに代表されるようにポリオレフィン中に含有されるカルボキシ基の全部あるいは一部が金属塩の形で存在していてもよい。カルボン酸無水物基を有するポリオレフィンとしては、無水マレイン酸やイタコン酸でグラフト変性されたポリオレフィンが挙げられる。また、エポキシ基を有するポリオレフィンとしては、グリシジルメタクリレートを共重合したポリオレフィンが挙げられる。なかでも、好ましくは無水マレイン酸等のカルボン酸無水物基を有するポリオレフィン、特に好ましくはカルボン酸無水物基を有するポリエチレンである。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0031】
前記接着性樹脂のJIS K7210:2014に従って測定(190℃、荷重2160g)したメルトフローレート(MFR)は、特に限定されないが、0.1~20.0g/10分が好ましく、1.0~10.0g/10分がより好ましい。接着性樹脂のMFRが前記範囲であると、成形安定性がより良好になる傾向となる。
【0032】
接着性樹脂層における接着性樹脂の含有量は、特に限定されないが、接着性樹脂が主成分(すなわち、接着性樹脂層中に含まれる接着性樹脂の含有量が50質量%以上)であることが好ましい。接着性樹脂の含有量は60質量%以上がより好ましく、70質量%以上が更に好ましく、80質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、100質量%が特に好ましい。
【0033】
前記接着性樹脂層は、本発明の効果を阻害しない範囲、一般的には20質量%以下の範囲で、接着性樹脂以外の成分、例えば、ブロッキング防止剤、加工助剤、接着性樹脂以外の樹脂、カルボン酸化合物、リン酸化合物、ホウ素化合物、金属塩、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、着色剤、充填剤、界面活性剤、乾燥剤、架橋剤、各種繊維等の補強剤等のその他成分を含有してもよい。これらは単独でもしくは2種以上を併せて用いてもよい。
【0034】
〔本テープの製造方法〕
本テープを製造する方法としては、特に限定されず、一般には、前記EVOH層を形成する原料をダイから押出し、テープ状に成形する方法が挙げられる。
また、本テープがEVOH層と熱可塑性樹脂層等を有する多層テープの場合は、例えば、各層を形成する原料を、それぞれ別々のダイ又は共通のダイから共押出して積層する方法、EVOH層に熱可塑性樹脂を溶融押出ラミネートする方法、熱可塑性樹脂層にEVOHを溶融押出ラミネートする方法、EVOH層と熱可塑性樹脂層を各々作成し、これらにアクリル系やシリコーン系等の公知の粘着剤を塗工してドライラミネートする方法等より製造することができる。なお、前記粘着剤を用いる場合、粘着性を与えるために塗工時に架橋剤を用いることが好ましい。また、前記粘着剤には、用途によりその他の添加剤を加えてもよい。
【0035】
前記ダイとしては、例えば、環状ダイやTダイ等を使用できる。
また、前記成形方法としては、例えば、押出成形、ブロー成形、射出成形、熱成形、キャスト成形、インフレーション成形等が挙げられる。
【0036】
このようにして本テープを製造することができる。
なお、本テープの製造にあたっては、必要に応じてエージング工程を設けてもよい。また、製造された本テープは、使用に適した幅にスリットしてもよい。
【0037】
本テープの厚みは、特に限定されないが10~400μmであることが好ましく、より好ましくは15~200μm、特に好ましくは20~150μmである。本テープの厚みが前記範囲内であると、柔軟性に優れる傾向がある。
【0038】
また、本テープが多層フィルムである場合、テープの厚みに対するEVOH層の厚みの比(EVOH層/テープ)が1/100~1/2であることが好ましく、より好ましくは1/80~1/3、さらに好ましくは1/50~1/4、特に好ましくは1/30~1/10である。本テープとEVOH層との厚みの比が前記範囲内であると、ガスバリア性、柔軟性に優れる傾向がある。
【0039】
本テープが熱可塑性樹脂層を有する場合、その厚みは、特に限定されないが、工業的な生産性、機械物性の観点から、7~100μmが好ましく、10~50μmがより好ましい。なお、熱可塑性樹脂層が、本テープに複数設けられている場合は、全ての熱可塑性樹脂層の合計が前記範囲であることが好ましい。
【0040】
本テープが接着性樹脂層を有する場合、その厚みは、特に限定されないが、工業的な生産性、品質安定性の観点から、0.5~20μmが好ましく、1~10μmがより好ましい。なお、接着性樹脂層が、本テープに複数設けられている場合は、全ての接着性樹脂層の合計が前記範囲であることが好ましい。
【0041】
本テープの湿度65%RH、温度23℃における酸素透過度は、0.15cc/m2・day・atm以下であることが好ましく、0.1cc/m2・day・atm以下がより好ましい。なお、前記酸素透過度は、本テープの厚みを20μmに換算した時の値である。
【0042】
本テープの反発力は、1N以下であることが好ましく、より好ましくは0.8N以下、更に好ましくは0.6N以下、特に好ましくは0.3N以下である。反発力が前記範囲であることにより、本テープは柔軟性に優れる傾向がある。
【0043】
前記反発力は、下記の測定方法に従い測定されるものである。
本テープを8cm×6cmに切り出し、その長辺を半分に折り、引張試験機のチャックに挟む。引張試験機の上治具をフィルム上端に近づけ50mm/minの速度で上端部から15mm下げたとき、引張試験機のチャックが受ける上方向の力を測定し、フィルムの反発力(N)とする。
【0044】
本テープの用途は特に限定されないが、高いガスバリア性と柔軟性を両立できる点から、ガスバリア性を有する容器(例えば、深絞り容器やバッグインボックス等)の保護用として好適に用いることができる。すなわち、ガスバリア性を有する容器に破損等があった場合、ガスバリア性を保つことが難しくなる。そこで、ガスバリア性を有する容器が破損等した場合、本テープを用いて補修することにより、ガスバリア性を維持することができる。
また、本テープは、エッジプロテクト用のテープとして好適に用いることができる。前記エッジプロテクト用のテープとは、例えば、紙とバリア性フィルムとを貼り合わせた積層体を用いて容器等を製造した場合、積層体の端部同士を貼り合わせる必要がある。この場合、端部において、紙が露出してしまい、ガスバリア性の低下や、液体等が容器の内部に侵入する原因となる。そこで、本テープをこのような容器の端部に貼り合わせることにより、ガスバリア性の低下や、液体等の侵入を防止することができる。
【実施例0045】
以下、実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、例中、「部」、「%」とあるのは、質量基準を意味する。
【0046】
実施例に先立って、下記のEVOHを準備した。
〔EVOH〕
・EVOH1(エチレン含有量25mol%、MFR4g/10min、密度1.23g/cm3
・EVOH2(エチレン含有量29mol%、MFR4g/10min、密度1.21g/cm3
・EVOH1’(エチレン含有量32mol%、MFR3g/10min、密度1.19g/cm3
・EVOH2’(エチレン含有量32mol%、MFR3g/10min、密度1.19(g/cm3
【0047】
<実施例1>
EVOH1を用い、下記の製膜条件でT-ダイ法により、厚み30μmのテープを作製した。
[製膜条件]
温度:C1/C2/C3/C4=180/210/220/220℃
ダイ温度:220℃
回転数:40rpm
【0048】
<実施例2>
用いるEVOHをEVOH2とし、厚みを50μmに変更した以外は、実施例1と同様にしてテープを作製した。
【0049】
<比較例1>
用いるEVOHをEVOH1’とし、厚みを30μmに変更した以外は、実施例1と同様にしてテープを作製した。
【0050】
<比較例2>
用いるEVOHをEVOH2’とし、厚みを100μmに変更した以外は、実施例1と同様にしてテープを作製した。
【0051】
得られた実施例1、2、比較例1、2のテープを用いて、下記の柔軟性評価、ガスバリア性評価を行った。結果を後記の表1に示す。
【0052】
〔柔軟性評価〕
テープを8cm×6cmに切り出し、その長辺を半分に折って、引張試験機のチャックに挟む。引張試験機の上治具をフィルム上端に近づけ、50mm/minの速度で上端部から15mm下げたときの引張試験機のチャックが受ける上方向の力をテープの反発力(N)とし、下記の評価基準にて評価を行った。テープの反発力(N)が低い場合、少ない力で曲げることができるため、フィルムの柔軟性が高いといえる。
[評価基準]
◎:反発力が0.5N未満
〇:反発力が0.5N以上1N未満
△:反発力が1N以上2N未満
×:反発力が2N以上
【0053】
〔ガスバリア性評価〕
酸素透過率測定装置(MOCON社製、「Ox-Tran2/21」)を用いて、湿度65%RH、温度23℃における各テープの酸素透過度(cc/m2.day.atm)を測定した。得られた測定値を、厚みの影響をなくすために、厚み20μmでの値に換算し、下記の評価基準にて評価を行った。
[評価基準]
〇:酸素透過度が0.1cc/m2.day.atm未満
×:酸素透過度が0.1cc/m2.day.atm超
【0054】
【表1】
【0055】
表1の結果から、エチレン含有量32mol%未満のEVOHを用いた実施例1、2のテープは、高いガスバリア性と柔軟性を両立するものであった。一方、エチレン含有量32molのEVOHを用い、厚みを30μmとした比較例1のテープは、ガスバリア性が十分ではなかった。また、エチレン含有量32molのEVOHを用い、厚みを100μmとした比較例2のテープは、ガスバリア性は高いものの、柔軟性に欠けるものであった。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本テープは、高いガスバリア性と柔軟性を両立しているため、ガスバリア性を有する容器(例えば、深絞り容器やバッグインボックス等)の保護や、ガスバリア性フィルムを貼り合わせた紙製容器のエッジプロテクト用のテープとして好適に用いることができる。