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特開2024-177060マルチ電子ビームの調整方法及びマルチ電子ビーム検査装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177060
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】マルチ電子ビームの調整方法及びマルチ電子ビーム検査装置
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/04 20060101AFI20241212BHJP
   H01J 37/09 20060101ALI20241212BHJP
   H01J 37/147 20060101ALI20241212BHJP
   H01J 37/21 20060101ALI20241212BHJP
   H01J 37/28 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
H01J37/04 B
H01J37/09 A
H01J37/147 B
H01J37/21 B
H01J37/28 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024038426
(22)【出願日】2024-03-12
(31)【優先権主張番号】P 2023094460
(32)【優先日】2023-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】504162958
【氏名又は名称】株式会社ニューフレアテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100119035
【弁理士】
【氏名又は名称】池上 徹真
(74)【代理人】
【識別番号】100141036
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 章
(74)【代理人】
【識別番号】100178984
【弁理士】
【氏名又は名称】高下 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】三上 翔平
(72)【発明者】
【氏名】安藤 厚司
(72)【発明者】
【氏名】井上 和彦
【テーマコード(参考)】
5C101
【Fターム(参考)】
5C101AA03
5C101EE03
5C101EE13
5C101EE15
5C101EE22
5C101EE33
5C101EE47
5C101EE48
5C101EE51
5C101EE59
5C101EE69
5C101EE78
5C101FF02
5C101FF48
5C101GG37
5C101GG42
5C101HH21
5C101HH23
5C101HH25
(57)【要約】      (修正有)
【課題】マルチ1次電子ビームを検査対象基板にフォーカスさせ、マルチ1次電子ビームから分離されたマルチ2次電子ビームの軌道上の偏向器の中心位置付近に中間像面を形成可能にする調整方法を提供する。
【解決手段】本発明の一態様の調整方法は、マルチ1次電子ビームを基板に導く第1と第2のレンズと、マルチ2次電子ビームを検出器に導く第3のレンズと、の各入力値の組み合わせ毎に、代表1次電子ビームで基板若しくはマーク上を走査し、放出される代表2次電子ビームでアパーチャ基板上を走査し、検出器で検出することにより、パターン像と開口像との両方が一緒に写る2次電子像を取得する工程を備える。さらに、第1と第2と第3のレンズの各入力値の組み合わせ毎の2次電子像を用いて、代表2次電子ビームを第1の偏向器の所定の位置にフォーカスさせる各レンズの入力値の組み合わせを取得する工程を備えることを特徴とする。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチ1次電子ビームで基板若しくはマークが照射されたことに起因して放出されるマルチ2次電子ビームを前記マルチ1次電子ビームから分離する分離器と、
前記分離器と前記基板との間に配置され、前記マルチ1次電子ビームを前記基板に導く第1と第2のレンズと、
前記分離器により前記マルチ1次電子ビームから分離された前記マルチ2次電子ビームを、開口部を有するアパーチャ基板が検出素子上に配置された検出器に向けて偏向する第1の偏向器と、
前記第1の偏向器と前記検出器との間に配置され、前記マルチ2次電子ビームを前記検出器に導く第3のレンズと、
を有するマルチ電子ビーム画像取得装置のマルチ電子ビーム調整方法であって、
前記マルチ1次電子ビームの中から1本の代表1次電子ビームを選択する工程と、
前記第1、第2、および第3のレンズへの各入力値を可変に組み合わせた組み合わせ毎に、前記代表1次電子ビームで前記基板若しくはマーク上を走査し、前記代表1次電子ビームによる走査によって前記基板若しくはマークから放出される代表2次電子ビームで前記アパーチャ基板上を走査し、走査された前記代表2次電子ビームを前記検出器で検出することにより、前記代表1次電子ビームで前記基板若しくはマーク上を走査することにより得られるパターン像と前記代表2次電子ビームで前記アパーチャ基板上を走査することにより得られる開口像との両方が一緒に写る2次電子像を取得する工程と、
前記第1、第2、および第3のレンズへの各入力値の組み合わせ毎の2次電子像を用いて、前記代表2次電子ビームを前記第1の偏向器の所定の位置にフォーカスさせる、前記第1と第2のレンズのうち前記分離器側に配置される前記第1のレンズの第1のフォーカス入力値と、前記代表1次電子ビームを前記基板若しくはマークにフォーカスさせる前記第2のレンズの第2のフォーカス入力値と、前記代表2次電子ビームを前記検出器にフォーカスさせる前記第3のレンズの第3のフォーカス入力値と、の組み合わせを取得する工程と、
取得された組み合わせの第1のフォーカス入力値を前記第1のレンズに設定し、取得された組み合わせの第2のフォーカス入力値を前記第2のレンズに設定する工程と、
を備えたことを特徴とするマルチ電子ビームの調整方法。
【請求項2】
前記第1と第2と第3のレンズの各入力値の組み合わせ毎の2次電子像を取得する際、前記分離器と前記基板との間に配置された第2の偏向器を用いて、前記代表1次電子ビームで前記基板若しくはマーク上を走査すると共に前記基板から放出される前記代表2次電子ビームで前記アパーチャ基板上を走査することを特徴とする請求項1記載のマルチ電子ビームの調整方法。
【請求項3】
前記第1と第2と第3のレンズの各入力値の組み合わせ毎の2次電子像を取得する際、前記分離器と前記基板との間に配置された第2の偏向器を用いて前記代表1次電子ビームで前記基板若しくはマーク上を走査し、前記第1の偏向器と前記検出器との間に配置された第3の偏向器を用いて前記基板から放出された前記代表2次電子ビームで前記アパーチャ基板上を走査することを特徴とする請求項1記載のマルチ電子ビームの調整方法。
【請求項4】
前記組み合わせを取得する工程は、
前記パターン像のフォーカスが合うように前記第2のレンズの前記第2のフォーカス入力値を決定する工程と、
前記開口像のフォーカスが合うように前記第3のレンズの前記第3のフォーカス入力値を決定する工程と、
前記第1の偏向器の第4の入力値を変化させた場合に前記開口像の位置変化量が閾値以下になるように前記第1のレンズの前記第1のフォーカス入力値を決定する工程と、
を有することを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のマルチ電子ビームの調整方法。
【請求項5】
前記検出器として、複数の開口部が形成されたアパーチャ基板が検出素子上に配置された検出器が用いられることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のマルチ電子ビームの調整方法。
【請求項6】
請求項1~3のいずれかに記載のマルチ電子ビームの調整方法により調整された前記第1と第2のレンズと、
前記分離器と、
前記第1の偏向器と、
前記第3のレンズと、
前記分離器と前記第1の偏向器と前記第3のレンズとを通過したマルチ2次電子ビームを検出する検出器と、
を備えたことを特徴とするマルチ電子ビーム検査装置。
【請求項7】
前記検出器を第1の検出器とし、
前記第1と第2のレンズの調整用の第2の検出器をさらに備えたことを特徴とする請求項6記載のマルチ電子ビーム検査装置。
【請求項8】
前記検出器は、前記複数の開口部が形成されたアパーチャ基板が1つの検出素子上に配置されたことを特徴とする請求項5記載のマルチ電子ビームの調整方法。
【請求項9】
マルチ1次電子ビームで基板若しくはマークが照射されたことに起因して放出されるマルチ2次電子ビームを前記マルチ1次電子ビームから分離する分離器と、
前記分離器と前記基板との間に配置され、前記マルチ1次電子ビームを前記基板に導く第1と第2のレンズと、
前記分離器により前記マルチ1次電子ビームから分離された前記マルチ2次電子ビームを、開口部が形成されたアパーチャ基板が検出素子上に配置された検出器に向けて偏向する第1の偏向器と、
前記第1の偏向器と前記検出器との間に配置され、前記マルチ2次電子ビームを前記検出器に導く第3のレンズと、
を有するマルチ電子ビーム画像取得装置のマルチ電子ビーム調整方法であって、
前記マルチ1次電子ビームの中から1本の代表1次電子ビームを選択する工程と、
前記第1、第2、および第3のレンズへの各入力値を可変に組み合わせた組み合わせ毎に、前記代表1次電子ビームで前記基板若しくはマーク上を走査し、前記代表1次電子ビームによる走査によって前記基板若しくはマークから放出される代表2次電子ビームで前記アパーチャ基板上を走査し、走査された前記代表2次電子ビームを前記検出器で検出することにより、前記代表1次電子ビームで前記基板若しくはマーク上を走査することにより得られるパターン像と前記代表2次電子ビームで前記アパーチャ基板上を走査することにより得られる開口像との両方が一緒に写る2次電子像を取得する工程と、
前記第1、第2、および第3のレンズへの各入力値の組み合わせ毎の2次電子像を用いて、前記代表2次電子ビームを前記第1の偏向器の所定の位置にフォーカスさせると共に、前記代表1次電子ビームを前記基板若しくはマークにフォーカスさせる前記第1と第2のレンズの第1と第2のフォーカス入力値と、前記代表2次電子ビームを前記検出器にフォーカスさせる前記第3のレンズの第3のフォーカス入力値と、の組み合わせを取得する工程と、
取得された組み合わせの第1のフォーカス入力値を前記第1のレンズに設定し、取得された組み合わせの第2のフォーカス入力値を前記第2のレンズに設定する工程と、
を備えたことを特徴とするマルチ電子ビームの調整方法。
【請求項10】
マルチ1次電子ビームで基板若しくはマークが照射されたことに起因して放出されるマルチ2次電子ビームを前記マルチ1次電子ビームから分離する分離器と、
前記分離器と前記基板との間に配置され、前記マルチ1次電子ビームを前記基板に導く第1と第2のレンズと、
前記分離器により前記マルチ1次電子ビームから分離された前記マルチ2次電子ビームを、開口部が形成されたアパーチャ基板が検出素子上に配置された検出器に向けて偏向する第1の偏向器と、
前記第1の偏向器と前記検出器との間に配置され、前記マルチ2次電子ビームを前記検出器に導く第3のレンズと、
を有するマルチ電子ビーム画像取得装置のマルチ電子ビーム調整方法であって、
前記第1、第2、および第3のレンズへの各入力値を可変に組み合わせた組み合わせ毎に、前記マルチ1次電子ビームで前記基板若しくはマーク上を走査し、前記マルチ1次電子ビームによる走査によって前記基板若しくはマークから放出されるマルチ2次電子ビームで前記アパーチャ基板上を走査し、走査された前記マルチ2次電子ビームを前記検出器で1つの開口部に2以上の2次電子ビームが入射しないように検出することにより、前記マルチ1次電子ビームで前記基板若しくはマーク上を走査することにより得られるパターン像と前記マルチ2次電子ビームで前記アパーチャ基板上を走査することにより得られる開口像との両方が一緒に写る2次電子像を取得する工程と、
前記第1、第2、および第3のレンズへの各入力値の組み合わせ毎の2次電子像を用いて、前記マルチ2次電子ビームを前記第1の偏向器の所定の位置にフォーカスさせると共に、前記マルチ1次電子ビームを前記基板若しくはマークにフォーカスさせる、前記第1と第2のレンズの第1と第2のフォーカス入力値と、前記マルチ2次電子ビームを前記検出器にフォーカスさせる前記第3のレンズの第3のフォーカス入力値と、の組み合わせを取得する工程と、
取得された組み合わせの第1のフォーカス入力値を前記第1のレンズに設定し、取得された組み合わせの第2のフォーカス入力値を前記第2のレンズに設定する工程と、
を備えたことを特徴とするマルチ電子ビームの調整方法。
【請求項11】
前記検出器として、各検出エレメント上にそれぞれ別の開口部が位置するように複数の開口部が形成されたアパーチャ基板が複数の検出エレメント上に配置されたマルチ検出器を用い、
取得された組み合わせの第3のフォーカス入力値を前記第3のレンズに設定する工程をさらに備えたことを特徴とする請求項10記載のマルチ電子ビームの調整方法。
【請求項12】
前記複数の開口部の開口サイズは、前記アパーチャ基板上での前記マルチ2次電子ビームのビームピッチより小さいことを特徴とする請求項10記載のマルチ電子ビームの調整方法。
【請求項13】
請求項10記載のマルチ電子ビームの調整方法により調整された前記第1と第2のレンズと、
前記分離器と、
前記第1の偏向器と、
前記第3のレンズと、
前記分離器と前記第1の偏向器と前記第3のレンズとを通過したマルチ2次電子ビームを検出するマルチ検出器と、
を備えたことを特徴とするマルチ電子ビーム検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチ電子ビームの調整方法及びマルチ電子ビーム検査装置に関する。例えば、マルチ1次電子ビームの照射に起因した2次電子画像を用いてパターン検査するマルチビーム検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大規模集積回路(LSI)の高集積化及び大容量化に伴い、半導体素子に要求される回路線幅はますます狭くなってきている。そして、多大な製造コストのかかるLSIの製造にとって、歩留まりの向上は欠かせない。しかし、1ギガビット級のDRAM(ランダムアクセスメモリ)に代表されるように、LSIを構成するパターンは、サブミクロンからナノメータのオーダーになっている。近年、半導体ウェハ上に形成されるLSIパターン寸法の微細化に伴って、パターン欠陥として検出しなければならない寸法も極めて小さいものとなっている。よって、半導体ウェハ上に転写された超微細パターンの欠陥を検査するためにも、高精度な画像を撮像する必要がある。
【0003】
検査装置では、例えば、電子ビームを使ったマルチ1次電子ビームを検査対象基板にフォーカスした上で、マルチ1次電子ビームで検査対象基板を走査して、検査対象基板から放出されるマルチ2次電子ビームをマルチ1次電子ビームの軌道から分離する。そして、分離されたマルチ2次電子ビームを検出器に導く(例えば特許文献1参照)。そして、マルチ2次電子ビームを検出器で検出して、パターン画像を撮像する。マルチ2次電子ビームをマルチ検出器に導くためには、分離されたマルチ2次電子ビームをさらに偏向器で偏向することが行われる。ここで、マルチ検出器で各2次電子ビームの画像を撮像するためには、マルチ検出器の検出面上において、マルチ2次電子ビームが互いに分離している必要がある。しかしながら、マルチ検出器の検出面にステージ上の試料のパターン像を入射するだけでは十分に分離できなかった。マルチ検出器の検出面上においてマルチ2次電子ビームを互いに分離させるためには、偏向器の中心位置付近にマルチ2次電子ビームの中間像面を形成することが求められる。
【0004】
しかしながら、従来、マルチ1次電子ビームを検査対象基板にフォーカスした上で、偏向器の中心位置付近にマルチ2次電子ビームを結像する手法がなく、例えばシミュレーションによりレンズの調整を行っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-132834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の一態様は、マルチ1次電子ビームを検査対象基板にフォーカスさせると共に、マルチ1次電子ビームの軌道から分離されたマルチ2次電子ビームの軌道上の偏向器の中心位置付近にマルチ2次電子ビームの中間像面を形成するように偏向器よりも上流側のレンズを調整可能な方法及び装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様のマルチ電子ビームの調整方法は、
マルチ1次電子ビームで基板若しくはマークが照射されたことに起因して放出されるマルチ2次電子ビームを前記マルチ1次電子ビームから分離する分離器と、
分離器と基板との間に配置され、マルチ1次電子ビームを基板に導く第1と第2のレンズと、
分離器によりマルチ1次電子ビームから分離されたマルチ2次電子ビームを、開口部を有するアパーチャ基板が検出素子上に配置された検出器に向けて偏向する第1の偏向器と、
第1の偏向器と検出器との間に配置され、マルチ2次電子ビームを検出器に導く第3のレンズと、
を有するマルチ電子ビーム画像取得装置のマルチ電子ビーム調整方法であって、
マルチ1次電子ビームの中から1本の代表1次電子ビームを選択する工程と、
第1、第2、および第3のレンズへの各入力値を可変に組み合わせた組み合わせ毎に、代表1次電子ビームで基板若しくはマーク上を走査し、代表1次電子ビームによる走査によって基板若しくはマークから放出される代表2次電子ビームでアパーチャ基板上を走査し、走査された代表2次電子ビームを検出器で検出することにより、代表1次電子ビームで基板若しくはマーク上を走査することにより得られるパターン像と代表2次電子ビームでアパーチャ基板上を走査することにより得られる開口像との両方が一緒に写る2次電子像を取得する工程と、
第1、第2、および第3のレンズへの各入力値の組み合わせ毎の2次電子像を用いて、代表2次電子ビームを第1の偏向器の所定の位置にフォーカスさせる、第1と第2のレンズのうち分離器側に配置される第1のレンズの第1のフォーカス入力値と、代表1次電子ビームを基板若しくはマークにフォーカスさせる第2のレンズの第2のフォーカス入力値と、代表2次電子ビームを検出器にフォーカスさせる第3のレンズの第3のフォーカス入力値と、の組み合わせを取得する工程と、
取得された組み合わせの第1のフォーカス入力値を第1のレンズに設定し、取得された組み合わせの第2のフォーカス入力値を第2のレンズに設定する工程と、
を備えたことを特徴とする。
【0008】
また、第1と第2と第3のレンズの各入力値の組み合わせ毎の2次電子像を取得する際、分離器と基板との間に配置された第2の偏向器を用いて、代表1次電子ビームで基板若しくはマーク上を走査すると共に基板若しくはマークから放出される代表2次電子ビームでアパーチャ基板上を走査すると好適である。
【0009】
或いは、第1と第2と第3のレンズの各入力値の組み合わせ毎の2次電子像を取得する際、分離器と基板との間に配置された第2の偏向器を用いて代表1次電子ビームで基板若しくはマーク上を走査し、第1の偏向器と検出器との間に配置された第3の偏向器を用いて基板若しくはマークから放出された代表2次電子ビームでアパーチャ基板上を走査すると好適である。
【0010】
また、組み合わせを取得する工程は、
パターン像のフォーカスが合うように第2のレンズの第2のフォーカス入力値を決定する工程と、
開口像のフォーカスが合うように第3のレンズの第3のフォーカス入力値を決定する工程と、
第1の偏向器の第4の入力値を変化させた場合に開口像の位置変化量が閾値以下になるように第1のレンズの第1のフォーカス入力値を決定する工程と、
を有すると好適である。
【0011】
また、検出器として、複数の開口部が形成されたアパーチャ基板が検出素子上に配置された検出器が用いられると好適である。
【0012】
本発明の一態様のマルチ電子ビーム検査装置は、
上述したマルチ電子ビームの調整方法により調整された第1と第2のレンズと、
上述した分離器と、
上述した第1の偏向器と、
上述した第3のレンズと、
上述した分離器と第1の偏向器と第3のレンズとを通過したマルチ2次電子ビームを検出する検出器と、
を備えたことを特徴とする。
【0013】
また、上述した検出器を第1の検出器とし、
第1と第2のレンズの調整用の第2の検出器をさらに備えると好適である。
【0014】
また、検出器は、複数の開口部が形成されたアパーチャ基板が1つの検出素子上に配置されると好適である。
【0015】
本発明の他の態様のマルチ電子ビームの調整方法は、
マルチ1次電子ビームで基板若しくはマークが照射されたことに起因して放出されるマルチ2次電子ビームをマルチ1次電子ビームから分離する分離器と、
分離器と基板との間に配置され、マルチ1次電子ビームを基板に導く第1と第2のレンズと、
分離器によりマルチ1次電子ビームから分離されたマルチ2次電子ビームを、開口部が形成されたアパーチャ基板が検出素子上に配置された検出器に向けて偏向する第1の偏向器と、
第1の偏向器と検出器との間に配置され、マルチ2次電子ビームを検出器に導く第3のレンズと、
を有するマルチ電子ビーム画像取得装置のマルチ電子ビーム調整方法であって、
マルチ1次電子ビームの中から1本の代表1次電子ビームを選択する工程と、
第1、第2、および第3のレンズへの各入力値を可変に組み合わせた組み合わせ毎に、代表1次電子ビームで基板若しくはマーク上を走査し、代表1次電子ビームによる走査によって基板若しくはマークから放出される代表2次電子ビームでアパーチャ基板上を走査し、走査された代表2次電子ビームを検出器で検出することにより、代表1次電子ビームで基板若しくはマーク上を走査することにより得られるパターン像と代表2次電子ビームでアパーチャ基板上を走査することにより得られる開口像との両方が一緒に写る2次電子像を取得する工程と、
第1、第2、および第3のレンズへの各入力値の組み合わせ毎の2次電子像を用いて、代表2次電子ビームを第1の偏向器の所定の位置にフォーカスさせると共に、代表1次電子ビームを基板若しくはマークにフォーカスさせる第1と第2のレンズの第1と第2のフォーカス入力値と、代表2次電子ビームを検出器にフォーカスさせる第3のレンズの第3のフォーカス入力値と、の組み合わせを取得する工程と、
取得された組み合わせの第1のフォーカス入力値を第1のレンズに設定し、取得された組み合わせの第2のフォーカス入力値を第2のレンズに設定する工程と、
を備えたことを特徴とする。
【0016】
本発明の他の態様のマルチ電子ビームの調整方法は、
マルチ1次電子ビームで基板若しくはマークが照射されたことに起因して放出されるマルチ2次電子ビームをマルチ1次電子ビームから分離する分離器と、
分離器と基板との間に配置され、マルチ1次電子ビームを基板に導く第1と第2のレンズと、
分離器によりマルチ1次電子ビームから分離されたマルチ2次電子ビームを、開口部が形成されたアパーチャ基板が検出素子上に配置された検出器に向けて偏向する第1の偏向器と、
第1の偏向器と検出器との間に配置され、マルチ2次電子ビームを検出器に導く第3のレンズと、
を有するマルチ電子ビーム画像取得装置のマルチ電子ビーム調整方法であって、
第1、第2、および第3のレンズへの各入力値を可変に組み合わせた組み合わせ毎に、マルチ1次電子ビームで基板若しくはマーク上を走査し、マルチ1次電子ビームによる走査によって基板若しくはマークから放出されるマルチ2次電子ビームでアパーチャ基板上を走査し、走査されたマルチ2次電子ビームを検出器で1つの開口部に2以上の2次電子ビームが入射しないように検出することにより、マルチ1次電子ビームで基板若しくはマーク上を走査することにより得られるパターン像とマルチ2次電子ビームでアパーチャ基板上を走査することにより得られる開口像との両方が一緒に写る2次電子像を取得する工程と、
第1、第2、および第3のレンズへの各入力値の組み合わせ毎の2次電子像を用いて、マルチ2次電子ビームを第1の偏向器の所定の位置にフォーカスさせると共に、マルチ1次電子ビームを基板若しくはマークにフォーカスさせる、第1と第2のレンズの第1と第2のフォーカス入力値と、マルチ2次電子ビームを検出器にフォーカスさせる第3のレンズの第3のフォーカス入力値と、の組み合わせを取得する工程と、
取得された組み合わせの第1のフォーカス入力値を第1のレンズに設定し、取得された組み合わせの第2のフォーカス入力値を第2のレンズに設定する工程と、
を備えたことを特徴とする。
【0017】
また、検出器として、各検出エレメント上にそれぞれ別の開口部が位置するように複数の開口部が形成されたアパーチャ基板が複数の検出エレメント上に配置されたマルチ検出器を用い、
取得された組み合わせの第3のフォーカス入力値を第3のレンズに設定する工程をさらに備えると好適である。
【0018】
また、複数の開口部の開口サイズは、アパーチャ基板上でのマルチ2次電子ビームのビームピッチより小さいと好適である。
【0019】
本発明の他の態様のマルチ電子ビーム検査装置は、
上述したマルチ電子ビームの調整方法により調整された第1と第2のレンズと、
分離器と、
第1の偏向器と、
第3のレンズと、
分離器と第1の偏向器と第3のレンズとを通過したマルチ2次電子ビームを検出するマルチ検出器と、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一態様によれば、マルチ1次電子ビームを検査対象基板にフォーカスさせると共に、マルチ1次電子ビームの軌道から分離されたマルチ2次電子ビームの軌道上の偏向器の中心位置付近にマルチ2次電子ビームの中間像面を形成するように偏向器よりも上流側のレンズを調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施の形態1におけるパターン検査装置の構成を示す構成図である。
図2】実施の形態1における成形アパーチャアレイ基板の構成を示す概念図である。
図3】実施の形態1における半導体基板に形成される複数のチップ領域の一例を示す図である。
図4】実施の形態1における画像取得処理を説明するための図である。
図5】実施の形態1の比較例における電子ビーム調整方法を説明するための図である。
図6】実施の形態1におけるビーム調整回路内の構成の一例を示すブロック図である。
図7】実施の形態1におけるマルチ電子ビーム調整方法の要部工程の一例を示すフローチャート図である。
図8】実施の形態1におけるビーム選択アパーチャ基板の一例を示す上面図である。
図9】実施の形態1における画像取得方法の一例を説明するための図である。
図10】実施の形態1におけるマルチ検出器の代わりに配置される検出器の一例の上面図である。
図11】実施の形態1におけるマルチ検出器の代わりに配置される検出器の一例の断面図である。
図12】実施の形態1における2次電子画像の一例を示す図である。
図13】実施の形態1におけるフォーカス調整方法の一例を示す図である。
図14】実施の形態1の変形例1における画像取得方法の一例を説明するための図である。
図15】実施の形態1の変形例2における画像取得方法の一例を説明するための図である。
図16】実施の形態1の変形例3における画像取得方法の一例を説明するための図である。
図17】実施の形態1における検出器アパーチャアレイ基板の一例を示す上面図である。
図18】実施の形態1におけるマルチ検出器の一例を示す断面図である。
図19】実施の形態1の変形例3における2次電子画像の一例を示す図である。
図20】実施の形態1の変形例3における2次電子画像の他の一例を示す図である。
図21】実施の形態1における比較回路内の構成の一例を示す構成図である。
図22】実施の形態2におけるマルチ電子ビーム調整方法の要部工程の一例を示すフローチャート図である。
図23】実施の形態2における画像取得方法の一例を説明するための図である。
図24】実施の形態2における検出器アパーチャアレイ基板とマルチ2次電子ビームとの関係を示す図である。
図25】実施の形態2における粒子の一例を示す図である。
図26】実施の形態2における2次電子画像の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、実施の形態では、マルチ電子ビーム画像取得装置の一例として、マルチ電子ビーム検査装置について説明する。但し、画像取得装置は、検査装置に限るものではなく、マルチビームを用いて画像を取得する装置であれば構わない。
【0023】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1におけるパターン検査装置の構成を示す構成図である。図1において、基板に形成されたパターンを検査する検査装置100は、マルチ電子ビーム検査装置の一例である。検査装置100は、マルチ電子ビーム画像取得装置の一例である。検査装置100は、画像取得機構150、及び制御系回路160(制御部)を備えている。画像取得機構150は、電子ビームカラム102(電子鏡筒)、検査室103、検出回路106、チップパターンメモリ123、ステージ駆動機構142、及びレーザ測長システム122を備えている。電子ビームカラム102内には、電子銃201、照明レンズ202、成形アパーチャアレイ基板203、ビーム選択アパーチャ基板204、駆動回路215、電磁レンズ205、一括偏向器212、制限アパーチャ基板213、電磁レンズ206、E×B分離器214(分離器)、電磁レンズ217(第1のレンズ)、電磁レンズ207(第2のレンズ)、偏向器208,209、偏向器(ベンダー)218、偏向器225、電磁レンズ224(第3のレンズ)、検出器アパーチャアレイ基板223、及びマルチ検出器222が配置されている。
【0024】
電子銃201、照明レンズ202、成形アパーチャアレイ基板203、ビーム選択アパーチャ基板204、電磁レンズ205、一括偏向器212、制限アパーチャ基板213、電磁レンズ206、E×B分離器214(分離器)、電磁レンズ217、電磁レンズ207、偏向器208,209によって1次電子光学系151(照明光学系)を構成する。また、電磁レンズ207,217、E×B分離器214、偏向器218、偏向器225、及び電磁レンズ224によって2次電子光学系152(検出光学系)を構成する。
【0025】
マルチ検出器222は、アレイ状(格子状)に配置される複数の検出エレメントを有する。複数の検出エレメントは、マルチ2次電子ビームの数、若しくはそれ以上の数の検出エレメントによって構成される。マルチ2次電子ビーム300の数はマルチ1次電子ビーム20の数と同じになるので、複数の検出エレメントは、マルチ1次電子ビーム20の数、若しくはそれ以上の数の検出エレメントによって構成される。
検出器アパーチャアレイ基板223には、複数の検出エレメントの配列ピッチで複数の開口部が形成される。複数の開口部は、例えば、矩形或いは円形に形成される。各開口部の中心位置は、対応する検出エレメントの中心位置に合わせて形成される。また、開口部のサイズは、検出エレメントの電子検出面の領域サイズよりも小さく形成される。
【0026】
また、検出器226(第2の検出器の一例)が一時的に2次電子光学系152内に配置される。検出器226は、1つの検出エレメントを有する。検出器226の検出エレメントには、例えば、SSD(Solid-State Detector)を用いると好適である。検出器226は、マルチ検出器222(第1の検出器の一例)の代わりに、電磁レンズ224とマルチ検出器222との間の位置、或いはマルチ検出器222の位置に配置される。検査対象の基板101のパターンを撮像する際には、検出器226は取り外され、マルチ検出器222が配置される。なお、検出器226は、使用しない期間、2次電子光学系152内の2次電子ビーム軌道に干渉しない位置に移動させておくと良い。或いは、検査装置100外に取り出しておいても構わない。
【0027】
また、電磁レンズ224と検出器226の間の位置に偏向器227が配置される。なお、偏向器227が行う機構は、後述するように、偏向器225で代用できるので、偏向器227は、省略しても構わない。
【0028】
検査室103内には、少なくともXY方向に移動可能なステージ105が配置される。ステージ105上には、検査対象となる基板101(試料)が配置される。基板101には、露光用マスク基板、及びシリコンウェハ等の半導体基板が含まれる。基板101が半導体基板である場合、半導体基板には複数のチップパターン(ウェハダイ)が形成されている。基板101が露光用マスク基板である場合、露光用マスク基板には、チップパターンが形成されている。チップパターンは、複数の図形パターンによって構成される。かかる露光用マスク基板に形成されたチップパターンが半導体基板上に複数回露光転写されることで、半導体基板には複数のチップパターン(ウェハダイ)が形成される。以下、基板101が半導体基板である場合を主として説明する。基板101は、例えば、パターン形成面を上側に向けてステージ105に配置される。また、ステージ105上には、検査室103の外部に配置されたレーザ測長システム122から照射されるレーザ測長用のレーザ光を反射するミラー216が配置されている。また、ステージ105上には、基板101面と同一高さ位置に配置されたマーク111が配置される。マーク111には、例えば、十字パターン、アレイ状に配置された複数の矩形パターン、或いは/及びラインアンドスペースパターン等が形成される。
【0029】
また、マルチ検出器222は、電子ビームカラム102の外部で検出回路106に接続される。検出回路106は、チップパターンメモリ123に接続される。
【0030】
制御系回路160では、検査装置100全体を制御する制御計算機110が、バス120を介して、位置回路107、比較回路108、参照画像作成回路112、ステージ制御回路114、レンズ制御回路124、ブランキング制御回路126、偏向制御回路128、リターディング制御回路130、E×B分離器制御回路132、ビーム調整回路134、磁気ディスク装置等の記憶装置109、モニタ117、メモリ118、及びプリンタ119に接続されている。また、偏向制御回路128は、DAC(デジタルアナログ変換)アンプ144,146,147,149、及び電源148に接続される。DACアンプ146は、偏向器208に接続され、DACアンプ144は、偏向器209に接続される。DACアンプ147は、偏向器225に接続される。DACアンプ149は、偏向器227に接続される。偏向器227が省略される場合にはDACアンプ149も同様に省略される。電源148は、偏向器218に接続される。
【0031】
また、チップパターンメモリ123は、比較回路108に接続されている。また、ステージ105は、ステージ制御回路114の制御の下に駆動機構142により駆動される。駆動機構142では、例えば、ステージ座標系におけるX方向、Y方向、θ方向に駆動する3軸(X-Y-θ)モータの様な駆動系が構成され、XYθ方向にステージ105が移動可能となっている。これらの、図示しないXモータ、Yモータ、θモータは、例えばステップモータを用いることができる。ステージ105は、XYθ各軸のモータによって水平方向及び回転方向に移動可能である。そして、ステージ105の移動位置はレーザ測長システム122により測定され、位置回路107に供給される。レーザ測長システム122は、ミラー216からの反射光を受光することによって、レーザ干渉法の原理でステージ105の位置を測長する。ステージ座標系は、例えば、マルチ1次電子ビーム20の光軸に直交する面に対して、1次座標系のX方向、Y方向、θ方向が設定される。
【0032】
電磁レンズ202、電磁レンズ205、電磁レンズ206、電磁レンズ217、電磁レンズ207、及び電磁レンズ224は、レンズ制御回路124により制御される。また、一括偏向器212は、2極以上の電極により構成され、電極毎に図示しないDACアンプを介してブランキング制御回路126により制御される。偏向器209は、4極以上の電極により構成され、電極毎にDACアンプ144を介して偏向制御回路128により制御される。偏向器208は、4極以上の電極により構成され、電極毎にDACアンプ146を介して偏向制御回路128により制御される。また、偏向器225は、4極以上の電極により構成され、電極毎にDACアンプ147を介して偏向制御回路128により制御される。
【0033】
偏向器225は、1段の偏向器として図示されているが、偏向器208,209の組にように、2段の偏向器として構成されても好適である。同様に、偏向器227は、1段の偏向器として図示されているが、偏向器208,209の組にように、2段の偏向器として構成されても好適である。
【0034】
偏向器218(ベンダー)は、例えば、円弧状に曲がった筒状に形成された対向する複数の電極により構成され、各電極の電位は電源148を介して偏向制御回路128により制御される。或いは、偏向器218は、2極以上の電極により構成され、各電極の電位は電源148を介して偏向制御回路128により制御されるように構成しておき、偏向電場の一様性を高める様にしても構わない。
【0035】
リターディング制御回路130(電位印加回路)は、基板101及びマーク111に所望のリターディング電位を印加して、基板101及びマーク111に照射されるマルチ1次電子ビーム20のエネルギーを調整する。
【0036】
E×B分離器214は、E×B分離器制御回路132により制御される。
【0037】
電子銃201には、図示しない高圧電源回路が接続され、電子銃201内の図示しないフィラメントと引出電極間への高圧電源回路からの加速電圧の印加と共に、所定の引出電極(ウェネルト)の電圧の印加と所定の温度のカソードの加熱によって、カソードから放出された電子群が加速させられ、電子ビーム200となって放出される。
【0038】
ここで、図1では、実施の形態1を説明する上で必要な構成を記載している。検査装置100にとって、通常、必要なその他の構成を備えていても構わない。
【0039】
図2は、実施の形態1における成形アパーチャアレイ基板の構成を示す概念図である。図2において、成形アパーチャアレイ基板203には、2次元状の横(x方向)m列×縦(y方向)n段(m,nは2以上の整数)の穴(開口部)22がx,y方向に所定の配列ピッチで形成されている。図2の例では、23×23の穴(開口部)22が形成されている場合を示している。各穴22は、共に同じ寸法形状の矩形で形成される。或いは、同じ外径の円形であっても構わない。これらの複数の穴22を電子ビーム200の一部がそれぞれ通過することで、マルチ1次電子ビーム20が形成されることになる。成形アパーチャアレイ基板203には、マルチ1次電子ビームを形成するマルチビーム形成機構の一例となる。
【0040】
画像取得機構150は、電子ビームによるマルチビームを用いて、図形パターンが形成された基板101から図形パターンの被検査画像を取得する。以下、検査装置100における画像取得機構150の動作について説明する。
【0041】
電子銃201(放出源)から放出された電子ビーム200は、電磁レンズ202によって屈折させられ、成形アパーチャアレイ基板203全体を照明する。成形アパーチャアレイ基板203には、図2に示すように、複数の穴22(開口部)が形成され、電子ビーム200は、すべての複数の穴22が含まれる領域を照明する。複数の穴22の位置に照射された電子ビーム200の各一部が、かかる成形アパーチャアレイ基板203の複数の穴22をそれぞれ通過することによって、マルチ1次電子ビーム20が形成される。
【0042】
形成されたマルチ1次電子ビーム20は、電磁レンズ205、及び電磁レンズ206によってそれぞれ屈折させられ、中間像およびクロスオーバーを繰り返しながら、マルチ1次電子ビーム20の各ビームの中間像面(像面共役位置:I.I.P.)の高さ位置に配置されたE×B分離器214に進む。そして、E×B分離器214を通過して、電磁レンズ217,207に進む。また、マルチ1次電子ビーム20のクロスオーバー位置付近に、通過孔が制限された制限アパーチャ基板213を配置することで、散乱ビームを遮蔽できる。また、一括偏向器212によりマルチ1次電子ビーム20全体を一括して偏向して、マルチ1次電子ビーム20全体を制限アパーチャ基板213で遮蔽することにより、マルチ1次電子ビーム20全体をブランキングできる。
【0043】
マルチ1次電子ビーム20が電磁レンズ217,207(2段の対物レンズ)に入射すると、電磁レンズ217は、マルチ1次電子ビーム20を屈折すると共に、電磁レンズ207は、マルチ1次電子ビーム20を基板101に結像する。言い換えれば、電磁レンズ217,207は、マルチ1次電子ビーム20で基板101を照射する。さらに言い換えれば、電磁レンズ217,207は、マルチ1次電子ビーム20を基板101に導く。このように、1次電子光学系151は、基板101にマルチ1次電子ビーム20を照明する。
【0044】
電磁レンズ207により基板101(試料)面上に焦点が合わされ(合焦され)たマルチ1次電子ビーム20は、偏向器208及び偏向器209によって一括して偏向され、各ビームの基板101上のそれぞれの照射位置に照射される。このように、1次電子光学系151は、基板101にマルチ1次電子ビーム20を照明する。
【0045】
基板101の所望する位置にマルチ1次電子ビーム20が照射されると、かかるマルチ1次電子ビーム20が照射されたことに起因して基板101から反射電子を含む2次電子の束(マルチ2次電子ビーム300)が放出される。マルチ1次電子ビーム20の各ビームに対応する2次電子ビームが放出される。
【0046】
基板101から放出されたマルチ2次電子ビーム300は、電磁レンズ207,217を通って、E×B分離器214に進む。
【0047】
E×B分離器214(分離器)は、マルチ1次電子ビーム20で基板101が照射されたことに起因して放出されるマルチ2次電子ビーム300をマルチ1次電子ビーム20の軌道上から分離する。
【0048】
E×B分離器214は、コイルを用いた4極以上の複数の磁極(電磁偏向コイル)と、4極以上の複数の電極(静電偏向電極)と、を有する。例えば、90°ずつ位相をずらした複数の磁極と、90°ずつ位相をずらした複数の電極とが配置される。また、複数の磁極と複数の電極とが45°ずつ位相をずらして交互に配置される。配置の仕方はこれに限るものではない。複数の磁極と複数の電極とが同じ位相に重なって配置されても構わない。E×B分離器214でマルチ2次電子ビーム300を偏向することで分離作用を生じさせる。E×B分離器214では、複数の磁極によって指向性の磁界を発生させる。同様に、複数の電極によって指向性の電界を発生させる。具体的には、E×B分離器214は、マルチ1次電子ビーム20の中心ビームが進む方向(軌道中心軸)に直交する面上において電界Eと磁界Bを直交する方向に発生させる。電界は電子の進行方向に関わりなく同じ方向に力を及ぼす。これに対して、磁界はフレミング左手の法則に従って力を及ぼす。そのため、電子の侵入方向によって電子に作用する力の向きを変化させることができる。E×B分離器214に上側から侵入してくるマルチ1次電子ビーム20には、電界による力FEと磁界による力FBが打ち消し合い、マルチ1次電子ビーム20は下方に直進する。これに対して、E×B分離器214に下側から侵入してくるマルチ2次電子ビーム300には、電界による力FEと磁界による力FBがどちらも同じ方向に働き、マルチ2次電子ビーム300は所定の方向に偏向されることによって斜め上方に曲げられ、マルチ1次電子ビーム20の軌道上から分離する。
【0049】
斜め上方に曲げられ、マルチ1次電子ビーム20から分離したマルチ2次電子ビーム300は、2次電子光学系152によってマルチ検出器222に導かれる。具体的には、マルチ1次電子ビーム20から分離したマルチ2次電子ビーム300は、偏向器(ベンダー)218によって偏向されることにより、さらに曲げられ、電磁レンズ224に進む。言い換えれば、偏向器(ベンダー)218は、マルチ1次電子ビーム20から分離されたマルチ2次電子ビーム300をマルチ検出器222(或いは検出器226)に向けて偏向する。
【0050】
そして、マルチ2次電子ビーム300は、マルチ1次電子ビーム20の軌道上から離れた位置で電磁レンズ224によって、集束方向に屈折させられながらマルチ検出器222に投影される。言い換えれば、偏向器218とマルチ検出器222(或いは検出器226)との間に配置された電磁レンズ224は、マルチ2次電子ビーム300をマルチ検出器222(或いは検出器226)に導く。
【0051】
マルチ検出器222(マルチ2次電子ビーム検出器)は、マルチ1次電子ビーム20の軌道上から分離されたマルチ2次電子ビーム300を検出する。言い換えれば、マルチ検出器222は、屈折させられ、投影されたマルチ2次電子ビーム300を検出する。マルチ検出器222は、複数の検出エレメント(例えば図示しないダイオード型の2次元センサ)を有する。そして、マルチ1次電子ビーム20の各ビームは、マルチ検出器222の検出面において、マルチ2次電子ビーム300の各2次電子ビームに対応する検出エレメントに衝突して、電子を発生し、2次電子画像データを画素毎に生成する。マルチ検出器222にて検出された強度信号は、検出回路106に出力される。
【0052】
図3は、実施の形態1における半導体基板に形成される複数のチップ領域の一例を示す図である。図3において、基板(半導体ウェハ)101の検査領域330には、複数のチップ(ウェハダイ)332が2次元のアレイ状に形成されている。各チップ332には、露光用マスク基板に形成された1チップ分のマスクパターンが図示しない露光装置(ステッパ)によって例えば1/4に縮小されて転写されている。
【0053】
図4は、実施の形態1における画像取得処理を説明するための図である。図4に示すように、各チップ332の領域は、例えばy方向に向かって所定の幅で複数のストライプ領域32に分割される。画像取得機構150によるスキャン動作は、例えば、ストライプ領域32毎に実施される。例えば、-x方向にステージ105を移動させながら、相対的にx方向にストライプ領域32のスキャン動作を進めていく。各ストライプ領域32は、長手方向に向かって複数の矩形領域33に分割される。対象となる矩形領域33へのビームの移動は、2段の偏向器208,209(静電偏向器)によるマルチ1次電子ビーム20全体での一括偏向によって行われる。
【0054】
図4の例では、例えば、5×5列のマルチ1次電子ビーム20の場合を示している。1回のマルチ1次電子ビーム20の照射で照射可能な照射領域34は、(基板101面上におけるマルチ1次電子ビーム20のx方向のビーム間ピッチにx方向のビーム数を乗じたx方向サイズ)×(基板101面上におけるマルチ1次電子ビーム20のy方向のビーム間ピッチにy方向のビーム数を乗じたy方向サイズ)で定義される。照射領域34が、マルチ1次電子ビーム20の視野となる。そして、マルチ1次電子ビーム20を構成する各1次電子ビーム10は、自身のビームが位置するx方向のビーム間ピッチとy方向のビーム間ピッチとで囲まれるサブ照射領域29内に照射され、当該サブ照射領域29内を走査(スキャン動作)する。各1次電子ビーム10は、互いに異なるいずれかのサブ照射領域29を担当することになる。そして、各1次電子ビーム10は、担当サブ照射領域29内の同じ位置を照射することになる。2段の偏向器208,209は、マルチ1次電子ビーム20を一括して偏向することにより、パターンが形成された基板101面上をマルチ1次電子ビーム20で走査する。言い換えれば、サブ照射領域29内の1次電子ビーム10の移動は、2段の偏向器208,209によるマルチ1次電子ビーム20全体での一括偏向によって行われる。かかる動作を繰り返し、1つの1次電子ビーム10で1つのサブ照射領域29内を順に照射していく。
【0055】
各ストライプ領域32の幅は、照射領域34のy方向サイズと同様、或いはスキャンマージン分狭くしたサイズに設定すると好適である。図3の例では、照射領域34が矩形領域33と同じサイズの場合を示している。但し、これに限るものではない。照射領域34が矩形領域33よりも小さくても良い。或いは大きくても構わない。そして、マルチ1次電子ビーム20を構成する各1次電子ビーム10は、自身のビームが位置するサブ照射領域29内に照射され、当該サブ照射領域29内を走査(スキャン動作)する。そして、1つのサブ照射領域29のスキャンが終了したら、2段の偏向器208,209によるマルチ1次電子ビーム20全体での一括偏向によって照射位置が同じストライプ領域32内の隣接する矩形領域33へと移動する。かかる動作を繰り返し、ストライプ領域32内を順に照射していく。1つのストライプ領域32のスキャンが終了したら、ステージ105の移動或いは/及び2段の偏向器208,209によるマルチ1次電子ビーム20全体での一括偏向によって照射領域34が次のストライプ領域32へと移動する。以上のように各1次電子ビーム10の照射によってサブ照射領域29毎のスキャン動作および2次電子画像の取得が行われる。これらのサブ照射領域29毎の2次電子画像を組み合わせることで、矩形領域33の2次電子画像、ストライプ領域32の2次電子画像、或いはチップ332の2次電子画像が構成される。また、実際に画像比較を行う場合には、各矩形領域33内のサブ照射領域29をさらに複数のフレーム領域30に分割して、フレーム領域30毎の測定画像となるフレーム画像31について比較することになる。図4の例では、1つの1次電子ビーム10によってスキャンされるサブ照射領域29を例えばx,y方向にそれぞれ2分割することによって形成される4つのフレーム領域30に分割する場合を示している。
【0056】
また、ステージ105が連続移動しながらマルチ1次電子ビーム20を基板101に照射する場合、マルチ1次電子ビーム20の照射位置がステージ105の移動に追従するように2段の偏向器208,209によって一括偏向によるトラッキング動作が行われる。そのため、マルチ2次電子ビーム300の放出位置がマルチ1次電子ビーム20の軌道中心軸に対して刻々と変化する。同様に、サブ照射領域29内をスキャンする場合に、各2次電子ビームの放出位置は、サブ照射領域29内で刻々と変化する。このように放出位置が変化した各2次電子ビームをマルチ検出器222の対応する検出領域内に照射させるように、偏向器225は、マルチ2次電子ビーム300を一括偏向する。言い換えれば、偏向器225は、マルチ1次電子ビーム20を用いた走査により変動するマルチ検出器222の検出面上でのマルチ2次電子ビーム300の位置をマルチ2次電子ビームの振り戻し偏向により不動にする。これにより、各2次電子ビームがマルチ検出器222の対応する検出エレメントにて検出されることができる。なお、偏向器225は、1段の偏向器に限らず、偏向器208,209と同様、2段の偏向器により構成しても好適である。
【0057】
ここで、上述したように、分離されたマルチ2次電子ビーム300を偏向器218でさらに偏向した上でマルチ検出器222に導く。マルチ検出器222で各2次電子ビームの画像を撮像するためには、マルチ検出器222の検出面上において、マルチ2次電子ビーム300が互いに分離している必要がある。そのためには、偏向器218の中心位置(偏向支点)にマルチ2次電子ビーム300の中間像面を形成することが求められる。偏向器218の中心位置は、偏向器218内のビーム軌道の距離の1/2の距離の位置、言い換えれば、偏向器218内のビーム軌道の中間位置(中央位置)に相当する。マルチ2次電子ビーム300の結像(中間像面の形成)は、マルチ1次電子ビーム20からの分離前の軌道上に配置された電磁レンズ217によって行われる。
【0058】
偏向器218の中心位置にマルチ2次電子ビーム300を結像させることにより、偏向器218による偏向収差を最小にできる。これにより、マルチ検出器222の検出面上において、マルチ2次電子ビーム300を互いに分離できる。
【0059】
図5は、実施の形態1の比較例における電子ビーム調整方法を説明するための図である。比較例では、偏向器(ベンダー)218の出口付近に検出器429を配置する。そして、偏向器(ベンダー)218に印加する電位(入力値)を、まずは、マルチ2次電子ビーム300が検出器429に衝突する向きに偏向可能な電位に設定する。また、電磁レンズ217,207の入力値(励磁)を初期値に設定する。
【0060】
そして、比較例では、マルチ1次電子ビーム20をビーム選択アパーチャ基板204で1本の代表1次電子ビーム21に絞る。そして、偏向器208,209によって代表1次電子ビーム21でマーク111上をスキャンする。そして、マーク111から放出された代表2次電子ビーム301をE×B分離器214により代表1次電子ビーム21から分離し、分離された代表2次電子ビーム301を偏向器(ベンダー)218が検出器429に向けて偏向する。これにより検出器429は、マーク像を検出する。
【0061】
そして、比較例では、まず、かかるマーク像の焦点が合うように、電磁レンズ207の入力値(励磁)を調整する。
【0062】
次に、比較例では、偏向器(ベンダー)218に印加する電位(入力値)を、マルチ2次電子ビーム300が検出器226に衝突する向きに偏向される電位に再設定する。そして、代表1次電子ビーム21でマーク111を照射する。ここでは偏向器208,209による代表1次電子ビーム21を用いたスキャンはしない。そして、マーク111から放出された代表2次電子ビーム301をE×B分離器214により代表1次電子ビーム21から分離し、分離された代表2次電子ビーム301を偏向器(ベンダー)218が検出器226に向けて偏向する。偏向された代表2次電子ビーム301は偏向器225、電磁レンズ224を通って、偏向器227に進む。偏向器227は代表2次電子ビーム301で検出器226手前のアパーチャ基板上をスキャンする。これにより検出器226は、アパーチャ基板の開口像を検出する。そして、検出器226で得られた開口像の焦点が合うように、電磁レンズ224の入力値(励磁)を調整する。
【0063】
そして、比較例では、偏向器(ベンダー)218に印加する電位(入力値)を変更して、検出器226で得られた像の位置が変化するかどうかを確認し、像の位置が移動する場合には、像の位置が移動しなくなるまで、電磁レンズ217の入力値(励磁)を変更して、電磁レンズ217の入力値毎に、上述した動作を繰り返す。
【0064】
このように、比較例では、検出器429での1次スキャン像と検出器226での2次スキャン像とを時期をずらして別々に撮像しながら上述した動作を繰り返す。このように、1次電子ビームの情報と2次電子ビームの情報を別々に撮像された画像から得ることが必要となり、ビーム調整が煩雑となってしまう。
【0065】
そこで、実施の形態1では、同じ画像から1次電子ビームの情報と2次電子ビームの情報を得ながらビーム調整を行う。以下、具体的に説明する。
【0066】
図6は、実施の形態1におけるビーム調整回路内の構成の一例を示すブロック図である。図6において、ビーム調整回路134内には、磁気ディスク装置等の記憶装置71、ビーム選択部60、ベンダー入力値設定部75、及び組み合わせ取得部80が配置される。
組み合わせ取得部80内には、入力値1設定部62、入力値2設定部64、入力値3設定部66、シャープネス算出部68、判定部70、シャープネス算出部72、判定部74、ベンダー入力値設定部76、位置変化量算出部78、及び判定部79が配置される。ビーム選択部60、ベンダー入力値設定部75、及び組み合わせ取得部80が配置される。
ビーム選択部60、ベンダー入力値設定部75、組み合わせ取得部80(入力値1設定部62、入力値2設定部64、入力値3設定部66、シャープネス算出部68、判定部70、シャープネス算出部72、判定部74、ベンダー入力値設定部76、位置変化量算出部78、及び判定部79)といった各「~部」は、処理回路を有する。かかる処理回路は、例えば、電気回路、コンピュータ、プロセッサ、回路基板、量子回路、或いは、半導体装置を含む。各「~部」は、共通する処理回路(同じ処理回路)を用いても良いし、或いは異なる処理回路(別々の処理回路)を用いても良い。ビーム選択部60、ベンダー入力値設定部75、組み合わせ取得部80(入力値1設定部62、入力値2設定部64、入力値3設定部66、シャープネス算出部68、判定部70、シャープネス算出部72、判定部74、ベンダー入力値設定部76、位置変化量算出部78、及び判定部79)に入出力される情報および演算中の情報はメモリ118若しくはビーム調整回路134内の図示しないメモリにその都度格納される。
【0067】
図7は、実施の形態1におけるマルチ電子ビーム調整方法の要部工程の一例を示すフローチャート図である。図7において、実施の形態1におけるマルチ電子ビーム調整方法は、ビーム選択工程(S102)と、ベンダー入力値設定工程(S104)と、レンズ入力値組み合わせ取得工程(S105)と、ベンダー入力値戻し工程(S142)と、レンズ1,2設定工程(S152)と、検出器組み換え工程(S154)と、レンズ3調整工程(S156)と、いう一連の工程を実施する。
【0068】
レンズ入力値組み合わせ取得工程(S105)は、内部工程として、レンズ入力値1設定工程(S106)と、レンズ入力値2設定工程(S108)と、レンズ入力値3設定工程(S110)と、スキャン工程(S112)と、1次スキャン像シャープネス算出工程(S114)と、判定工程(S116)と、2次スキャン像シャープネス算出工程(S120)と、判定工程(S122)と、ベンダー入力値変更工程(S130)と、スキャン工程(S132)と、判定工程(S140)と、いう一連の工程を実施する。
【0069】
まず、マルチ検出器222の代わりに、検出器226を2次電子ビームの軌道上に配置する。検出器226は、電磁レンズ224とマルチ検出器222との間の2次電子ビームの軌道上に配置される。或いは、検出器226は、マルチ検出器222の配置位置に配置される。或いは、マルチ検出器222をそのまま使っても良い。マルチ検出器222を使う場合には、1つの検出素子の情報だけを使えば良い。
【0070】
ビーム選択工程(S102)として、ビーム選択部60は、マルチ1次電子ビーム20の中から1本の代表1次電子ビーム21を選択する。具体的には、以下のように動作する。
【0071】
図8は、実施の形態1におけるビーム選択アパーチャ基板の一例を示す上面図である。図8において、ビーム選択アパーチャ基板204には、マルチ1次電子ビーム20全体が通過可能な大開口11と、1本の1次電子ビームが通過し、残りの1次電子ビームを遮蔽する小開口13とが形成される。ビーム選択部60は、マルチ1次電子ビーム20の中から代表1次電子ビーム21として、例えば、中心1次電子ビームを選択する。駆動回路215は、選択された代表1次電子ビーム21が小開口13を通過する位置にビーム選択アパーチャ基板204を水平移動させる。これにより、マルチ1次電子ビーム20全体のうち、代表1次電子ビーム21が小開口13を通過し、残りの1次電子ビームが遮蔽される。よって、マルチ1次電子ビーム20の中から1本の代表1次電子ビーム21が選択される。
【0072】
ベンダー入力値設定工程(S104)として、ベンダー入力値設定部75は、マルチ2次電子ビーム300をマルチ検出器222(ここでは検出器226)に向くように偏向するための入力値(電位)を設定し、偏向制御回路128に出力する。偏向制御回路128は、電源148を制御して、電源148が偏向器218の各電極にそれぞれ設定された電位を印加する。
【0073】
レンズ入力値組み合わせ取得工程(S105)として、組み合わせ取得部80は、電磁レンズ217,207,224の各入力値の組み合わせ毎の2次電子像を用いて、後述する代表2次電子ビーム301を偏向器(ベンダー)218(第1の偏向器)の中間位置(所定の位置)にフォーカスさせる、電磁レンズ217(第1のレンズ)のレンズ入力値1(第1のフォーカス入力値)と、代表1次電子ビーム21を基板101若しくはマーク111にフォーカスさせる電磁レンズ207(第2のレンズ)のレンズ入力値2(第2のフォーカス入力値)と、代表2次電子ビーム301をマルチ検出器222(ここでは検出器226)にフォーカスさせる電磁レンズ224(第3のレンズ)のレンズ入力値3(第3のフォーカス入力値)と、の組み合わせを取得する。具体的には、以下のように動作する。
【0074】
レンズ入力値1設定工程(S106)として、入力値1設定部62は、電磁レンズ217(対物レンズ1)を励磁するための仮の入力値1(励磁値1)を設定する。仮の入力値1は、過去の実績或いはシミュレーション等により得られる予想値を含む複数の値のうちの1つを設定する。予想値を中央値として複数の値を設けると好適である。レンズ制御回路124は、設定された仮の入力値1で電磁レンズ217を励磁する。言い換えれば、レンズ制御回路124は、設定された仮の入力値1の電流を電磁レンズ217のコイルに流す。入力値1を順に大きく或いは小さくするために、ここでは、例えば、複数の値のうち最小の値(n=0の入力値1)を初期値として設定すると好適である。
【0075】
レンズ入力値2設定工程(S108)として、入力値2設定部64は、電磁レンズ207(対物レンズ2)を励磁するための仮の入力値2(励磁値2)を設定する。仮の入力値2は、過去の実績或いはシミュレーション等により得られる予想値を含む複数の値のうちの1つを設定する。予想値を中央値として複数の値を設けると好適である。レンズ制御回路124は、設定された仮の入力値2で電磁レンズ207を励磁する。言い換えれば、レンズ制御回路124は、設定された仮の入力値2の電流を電磁レンズ207のコイルに流す。入力値2を順に大きく或いは小さくするために、ここでは、例えば、複数の値のうち最小の値(n=0の入力値2)を初期値として設定すると好適である。
【0076】
レンズ入力値3設定工程(S110)として、入力値3設定部66は、電磁レンズ224(対物レンズ3)を励磁するための仮の入力値3(励磁値3)を設定する。仮の入力値3は、過去の実績或いはシミュレーション等により得られる予想値を含む複数の値のうちの1つを設定する。予想値を中央値として複数の値を設けると好適である。レンズ制御回路124は、設定された仮の入力値3で電磁レンズ224を励磁する。言い換えれば、レンズ制御回路124は、設定された仮の入力値3の電流を電磁レンズ224のコイルに流す。入力値3を順に大きく或いは小さくするために、ここでは、例えば、複数の値のうち最小の値(n=0の入力値3)を初期値として設定すると好適である。
【0077】
スキャン工程(S112)として、画像取得機構150は、電磁レンズ217,207と、電磁レンズ224と、の各入力値を可変に組み合わせた組み合わせ毎に、代表1次電子ビーム21で基板101若しくはマーク111上を走査し、代表1次電子ビーム21による走査によって基板101若しくはマーク111から放出される代表2次電子ビーム301で検出器226のアパーチャ基板上を走査し、走査された代表2次電子ビーム301を検出器226で検出し、検出された検出信号に基づいた2次電子画像を取得する。以下、画像取得機構150の動作について説明する。
【0078】
図9は、実施の形態1における画像取得方法の一例を説明するための図である。図9の例では、マーク111上をスキャンする場合を示している。マーク111の代わりに基板101を用いても構わない。実施の形態1では、電磁レンズ217、207,224の各入力値の組み合わせ毎の2次電子像を取得する際、偏向器208,209(第2の偏向器)を用いて代表1次電子ビーム21で基板101若しくはマーク111上を走査する。そして、偏向器(ベンダー)218(第1の偏向器)とマルチ検出器222(ここでは検出器226)との間に配置された偏向器227(第3の偏向器の一例)を用いて基板101若しくはマーク111から放出された代表2次電子ビーム301で検出器226のアパーチャ基板上を走査する。
【0079】
図9の例では、入力値1による電磁レンズ217のレンズ作用が生じている状態で、マルチ1次電子ビーム20の代表1次電子ビーム21でマーク111をスキャン(走査)する。マーク111の走査は、偏向器208,209で代表1次電子ビーム21を偏向することにより行われる。かかる走査により代表2次電子ビーム301がマーク111から放出される。代表2次電子ビーム301は、電磁レンズ207,217でレンズ作用を受け、E×B分離器214によりマルチ1次電子ビーム20の軌道上から分離される。分離された代表2次電子ビームは、偏向器218で曲げられ、偏向器225に進む。偏向器225は、代表1次電子ビーム21を用いた走査により変動する検出器226の検出面上での代表2次電子ビーム301の位置を代表2次電子ビーム301の振り戻し偏向により不動にする。そして、振り戻された代表2次電子ビーム301は、電磁レンズ224で検出器226に投影される。その際、偏向器227は、代表2次電子ビーム301で検出器226上をスキャンする。
【0080】
図10は、実施の形態1におけるマルチ検出器の代わりに配置される検出器の一例の上面図である。
図11は、実施の形態1におけるマルチ検出器の代わりに配置される検出器の一例の断面図である。図10及び図11の例において、検出器226は、アパーチャ基板14、検出素子16、複数の支柱17、及び基台18を有する。基台18上に1つの検出素子16が配置される。検出素子16として、電子ビームの照射を受けて電気信号に変換するSSDを用いると好適である。検出素子16上には、複数の開口部15が形成されたアパーチャ基板14が配置される。アパーチャ基板14は、複数の支柱17によって基台18上に支持される。図10及び図11の例では、アパーチャ基板14上に8×8個の開口部15が形成された場合を示している。各開口部15は、例えば、矩形に形成される。
【0081】
よって、代表2次電子ビーム301で検出器226上をスキャンすることは、代表2次電子ビーム301で複数の開口部15が形成されたアパーチャ基板14上をスキャンすることになる。
【0082】
そして、スキャンされ、開口部15を通過した代表2次電子ビーム301が検出器226により検出される。検出器226により検出された検出データは、例えば検出回路106に出力され、かかる検出回路106によって2次電子画像が生成される。或いは、図示しない検出回路に出力され、かかる検出回路によって2次電子画像が生成されても良い。生成された2次電子画像は、ビーム調整回路134に出力され、記憶装置61に格納される。
【0083】
図12は、実施の形態1における2次電子画像の一例を示す図である。図12に示すように、2次電子画像には、代表1次電子ビーム21で基板101若しくはマーク111上を走査することにより得られるパターン像と代表2次電子ビーム301で検出器226のアパーチャ基板14上を走査することにより得られる開口像との両方が一緒に写る。1つの検出素子16上に複数の開口部15が存在するため、複数の開口像が写ると共に、各開口像内にパターン像が写り込む。図12の例では、見やすくするために、1つの開口像の内周部分を線で示している。
【0084】
このように、代表1次電子ビーム21で基板101若しくはマーク111上を走査すると共に、代表2次電子ビーム301で検出器226のアパーチャ基板14上を走査することにより1次スキャン像となるパターン像と2次スキャン像となる開口像とを同じ画像内に一緒に写すことができる。
【0085】
1次スキャン像シャープネス算出工程(S114)として、シャープネス算出部68は、1次スキャン像のシャープネスを算出する。
【0086】
図13は、実施の形態1におけるフォーカス調整方法の一例を示す図である。図13では、デフォーカスされた状態(結像面がマーク面からずれている状態)で検出されたマーク111のパターンの像強度プロファイルとジャストフォーカスされた状態(結像面がマーク面と一致している状態)で検出されたマーク111のパターンの像強度プロファイルとを示している。
シャープネス算出部68は、像強度プロファイルのパターンの立ち上がり部分の幅Dをシャープネスの値として算出する。例えば、検出強度の最大値の30%と70%の位置での幅Dを算出する。デフォーカスされた状態では、立ち上がりがなだらかとなり、ジャストフォーカスされた状態では、立ち上がりが急峻となる。立ち上がりが急峻となるほど立ち上がり部分の幅Dが小さくなる。算出されたシャープネスの値は、2次電子画像と関連させて記憶装置61に格納される。
【0087】
判定工程(S116)として、判定部70は、1次スキャン像のフォーカスが合っているかどうかを判定する。具体的には、1次スキャン像の像強度プロファイルのパターンの立ち上がり部分の幅Dが閾値Th1以下、或いは最小となっているかどうかを判定する。1次スキャン像のフォーカスが合っている場合には2次スキャン像シャープネス算出工程(S120)に進む。1次スキャン像のフォーカスが合っていない場合には、レンズ入力値2設定工程(S108)に戻り、レンズ入力値2の値を変えて、1次スキャン像のフォーカスが合うまでレンズ入力値2設定工程(S108)から判定工程(S116)までの各工程を繰り返す。
【0088】
レンズ入力値2の値を変えながら行う、1次スキャン像のフォーカスが合うまでレンズ入力値2設定工程(S108)から判定工程(S116)までの各工程の繰り返しによって、基板101若しくはマーク111のパターン像のフォーカスが合うように電磁レンズ207(第2のレンズ)のレンズ入力値2(第2のフォーカス入力値)を決定する工程が実施される。例えば、複数のレンズ入力値2でそれぞれ画像を撮像し、得られた1次スキャン像の像強度プロファイルのパターンの立ち上がり部分の幅Dをプロットし、最小計測値となるレンズ入力値2を探索する。
【0089】
これにより、設定されているレンズ入力値1による電磁レンズ217のレンズ作用下において、レンズ入力値2の調整が済んだことになる。言い換えれば、設定されているレンズ入力値1による電磁レンズ217のレンズ作用下において、レンズ制御回路124は、像強度プロファイルのパターンの立ち上がり部分の幅Dが最小となるように電磁レンズ207のレンズ入力値2を調整する。
【0090】
2次スキャン像シャープネス算出工程(S120)として、シャープネス算出部72は、2次スキャン像のシャープネスを算出する。
【0091】
シャープネス算出部72は、図12に示した、アパーチャ基板14上を走査することにより得られる2次スキャン像となる開口像の像強度プロファイルのパターンの立ち上がり部分の幅Dをシャープネスの値として算出する。例えば、検出強度の最大値の30%と70%の位置での幅Dを算出する。図13に示したように、デフォーカスされた状態では、立ち上がりがなだらかとなり、ジャストフォーカスされた状態では、立ち上がりが急峻となる。立ち上がりが急峻となるほど立ち上がり部分の幅Dが小さくなる。算出されたシャープネスの値は、2次電子画像と関連させて記憶装置61に格納される。
【0092】
判定工程(S122)として、判定部74は、2次スキャン像のフォーカスが合っているかどうかを判定する。具体的には、2次スキャン像の像強度プロファイルのパターンの立ち上がり部分の幅Dが閾値Th2以下、或いは最小となっているかどうかを判定する。2次スキャン像のフォーカスが合っている場合にはベンダー入力値変更工程(S130)に進む。2次スキャン像のフォーカスが合っていない場合には、レンズ入力値3設定工程(S110)に戻り、レンズ入力値3の値を変えて、2次スキャン像のフォーカスが合うまでレンズ入力値3設定工程(S110)から判定工程(S122)までの各工程を繰り返す。
【0093】
レンズ入力値3の値を変えながら行う、2次スキャン像のフォーカスが合うまでレンズ入力値3設定工程(S110)から判定工程(S122)までの各工程の繰り返しによって、開口像のフォーカスが合うように電磁レンズ224(第3のレンズ)のレンズ入力値3(第3のフォーカス入力値)を決定する工程が実施される。例えば、複数のレンズ入力値3でそれぞれ画像を撮像し、得られた2次スキャン像の像強度プロファイルのパターンの立ち上がり部分の幅Dをプロットし、最小計測値となるレンズ入力値2を探索する。
【0094】
これにより、設定されているレンズ入力値1による電磁レンズ217のレンズ作用下、及びレンズ入力値2による電磁レンズ207のレンズ作用下において、レンズ入力値3の調整が済んだことになる。言い換えれば、設定されているレンズ入力値1による電磁レンズ217のレンズ作用下、及びレンズ入力値2による電磁レンズ207のレンズ作用下において、レンズ制御回路124は、像強度プロファイルのパターンの立ち上がり部分の幅Dが最小となるように電磁レンズ224のレンズ入力値3を調整する。
【0095】
ベンダー入力値変更工程(S130)として、ベンダー入力値設定部76は、マルチ2次電子ビーム300をマルチ検出器222(ここでは検出器226)に向くように偏向するための偏向器218の入力値(電位)を変更し、偏向制御回路128に出力する。ここでは、検出器226で代表2次電子ビーム301を検出可能な範囲で偏向器218の偏向角度を変える。偏向制御回路128は、電源148を制御して、電源148が偏向器218の各電極にそれぞれ設定された電位を印加する。
【0096】
スキャン工程(S132)として、画像取得機構150は、電磁レンズ217,207と、電磁レンズ224と、の各入力値の組み合わせにおいて、偏向器218の偏向角度が変わった状態で、代表1次電子ビーム21で基板101若しくはマーク111上を走査し、代表1次電子ビーム21による走査によって基板101若しくはマーク111から放出される代表2次電子ビーム301で検出器226のアパーチャ基板上を走査し、走査された代表2次電子ビーム301を検出器226で検出し、検出された検出信号に基づいた2次電子画像を取得する。
【0097】
判定工程(S140)として、位置変化量算出部78は、偏向器218の入力値を変化させる前から後の開口像の位置変化量を算出する。
次に、判定部79は、開口像の位置変化量が閾値Th3以下、或いは不動かとうかを判定する。位置変化量が閾値Th3以下、或いは不動である場合、ベンダー入力値戻し工程(S142)に進む。位置変化量が閾値Th3以下、或いは不動ではない場合、レンズ入力値1設定工程(S106)に戻り、レンズ入力値1の値を変えて、位置変化量が閾値Th3以下、或いは不動になるまでレンズ入力値1設定工程(S106)から判定工程(S140)までの各工程を繰り返す。
【0098】
レンズ入力値1の値を変えながら行う、レンズ入力値1設定工程(S106)から判定工程(S140)までの各工程を繰り返しによって、偏向器(ベンダー)218(第1の偏向器)の入力値(第4の入力値)を変化させた場合に開口像の位置変化量が閾値以下になるように電磁レンズ217(第1のレンズ)のレンズ入力値1(第1のフォーカス入力値)を決定する工程が実施される。例えば、複数のレンズ入力値1でそれぞれ1次スキャン像と2次スキャン像のフォーカスを合わせ、偏向器218の入力値(電位)を変化させる前から後の開口像の位置変化量が閾値Th3以下、或いは不動なるレンズ入力値1を探索する。
【0099】
入力値を変えても像が動かないのであれば、偏向支点に像面が位置することになる。よって、1次スキャン像と2次スキャン像とのフォーカスが合った状態で、偏向器(ベンダー)218の中心位置(偏向支点)にマルチ2次電子ビーム300の中間像面を形成できたことになる。
【0100】
以上により、代表2次電子ビーム301を偏向器(ベンダー)218の中間位置にフォーカスさせると共に代表1次電子ビーム21を基板101若しくはマーク111にフォーカスさせる電磁レンズ217(第1のレンズ)のレンズ入力値1(第1のフォーカス入力値)及び電磁レンズ207(第2のレンズ)のレンズ入力値2(第2のフォーカス入力値)と、代表2次電子ビーム301をマルチ検出器222(ここでは検出器226)にフォーカスさせる電磁レンズ224(第3のレンズ)のレンズ入力値3(第3のフォーカス入力値)と、の組み合わせが取得される。例えば、代表2次電子ビーム301を偏向器(ベンダー)218の中間位置にフォーカスさせる、電磁レンズ217(第1のレンズ)のレンズ入力値1(第1のフォーカス入力値)と、代表1次電子ビーム21を基板101若しくはマーク111にフォーカスさせる電磁レンズ207(第2のレンズ)のレンズ入力値2(第2のフォーカス入力値)と、代表2次電子ビーム301をマルチ検出器222(ここでは検出器226)にフォーカスさせる電磁レンズ224(第3のレンズ)のレンズ入力値3(第3のフォーカス入力値)と、の組み合わせが取得される。取得された組み合わせの情報はレンズ制御回路124に出力される。
【0101】
ベンダー入力値戻し工程(S142)として、ベンダー入力値設定部76は、変更された偏向器218の入力値を、ベンダー入力値設定工程(S104)にて設定されていた元々の入力値(電位)に戻し、偏向制御回路128に出力する。ここでは、検出器226で代表2次電子ビーム301を検出可能な範囲で偏向器218の偏向角度を変える。偏向制御回路128は、電源148を制御して、電源148が偏向器218の各電極にそれぞれ設定された電位を印加する。
【0102】
レンズ1,2設定工程(S152)として、レンズ制御回路124は、取得された組み合わせのレンズ入力値1(第1のフォーカス入力値)を電磁レンズ217に設定し、取得された組み合わせのレンズ入力値2(第2のフォーカス入力値)を電磁レンズ207に設定する。
【0103】
検出器組み換え工程(S154)として、検出器226を取り外し、マルチ検出器222を設置する。また、マルチ1次電子ビーム20全体が大開口11を通過するようにビーム選択アパーチャ基板204を移動させる。
【0104】
レンズ3調整工程(S156)として、決定された組み合わせのレンズ入力値1,2が電磁レンズ217,207にそれぞれ設定された状態で、電磁レンズ224を用いて、マルチ検出器222に、マルチ1次電子ビーム20で基板101若しくはマーク111が照射されたことに起因して放出されるマルチ2次電子ビーム300を導く。具体的には、マルチ2次電子ビーム300でマルチ検出器222手前に配置される検出器アパーチャアレイ基板223上を走査する。マルチ検出器222の各検出エレメントは、検出器アパーチャアレイ基板223の対応する開口部を通過した2次電子ビームを検出する。スキャン範囲に応じて複数の2次電子ビームが開口部上を通過するため、各検出エレメントでは、アレイ状の複数のアパーチャ像の2次電子画像が得られる。マルチ検出器222の各検出エレメントでアレイ状の複数のアパーチャ像が検出できるように電磁レンズ224のレンズ入力値3を調整する。各検出エレメントでアレイ状の複数のアパーチャ像が検出できれば、マルチ2次電子ビーム300をマルチ検出器222の検出面で分離できていることになる。そして、各検出エレメントで得られた2次電子画像内のアパーチャ像の強度プロファイルの立ち上がり幅Dが最小になる(立ち上がりが急峻になる)ように電磁レンズ224のレンズ入力値3を調整する。これにより、電磁レンズ224で、マルチ検出器222でマルチ2次電子ビーム300の情報が得られるようにマルチ2次電子ビーム300を導くことができる。
【0105】
図14は、実施の形態1の変形例1における画像取得方法の一例を説明するための図である。図14の例では、マーク111上をスキャンする場合を示している。マーク111の代わりに基板101を用いても構わない。図9の例では、偏向器227によって代表2次電子ビーム301で検出器226上をスキャンする場合を説明したが、これに限るものではない。実施の形態1の変形例1では、電磁レンズ217、207,224の各入力値の組み合わせ毎の2次電子像を取得する際、偏向器208,209(第2の偏向器)を用いて代表1次電子ビーム21で基板101若しくはマーク111上を走査する。そして、偏向器(ベンダー)218(第1の偏向器)とマルチ検出器222(ここでは検出器226)との間に配置された偏向器225(第3の偏向器の他の一例)を用いて基板101若しくはマーク111から放出された代表2次電子ビーム301でアパーチャ基板14上を走査する。言い換えれば、偏向器227を用いずに、偏向器225によって代表2次電子ビーム301で検出器226上をスキャンする。
【0106】
偏向器225は、例えば、代表1次電子ビーム21を用いた走査により変動する検出器226の検出面上での代表2次電子ビーム301の位置を不動にする振り戻し偏向の偏向量にさらに代表2次電子ビーム301で検出器226上をスキャンする偏向を行う偏向量を加算した偏向量で代表2次電子ビーム301を偏向する。これにより、図12に示したような2次電子画像を取得できる。言い換えれば、代表1次電子ビーム21で基板101若しくはマーク111上を走査することにより得られるパターン像と代表2次電子ビーム301で検出器226のアパーチャ基板14上を走査することにより得られる開口像との両方が一緒に写る2次電子画像を取得できる。
【0107】
図15は、実施の形態1の変形例2における画像取得方法の一例を説明するための図である。図15の例では、マーク111上をスキャンする場合を示している。マーク111の代わりに基板101を用いても構わない。図9若しくは図14の例では、2次電子光学系152の偏向器225若しくは偏向器227によって代表2次電子ビーム301で検出器226上をスキャンする場合を説明したが、これに限るものではない。実施の形態1の変形例2では、電磁レンズ217、207,224の各入力値の組み合わせ毎の2次電子像を取得する際、偏向器208,209(第2の偏向器)を用いて代表1次電子ビーム21で基板101若しくはマーク111上を走査すると共に、基板101若しくはマーク111から放出された代表2次電子ビーム301でアパーチャ基板14上を走査する。言い換えれば、偏向器225,227を用いずに、偏向器208,209によって代表2次電子ビーム301で検出器226上をスキャンする。ここでは、2段の偏向器208,209を用いる場合を説明したが、1段の偏向器208(或いは209)で代表1次電子ビーム21を偏向しても良い。
【0108】
ここでは、偏向器225による振り戻し偏向を行わないので、例えば、代表1次電子ビーム21を用いた走査により検出器226の検出面上での代表2次電子ビーム301の位置が変動する。かかる変動によって、検出器226のアパーチャ基板14上を走査する。かかる場合であっても、図12に示したような2次電子画像を取得できる。言い換えれば、代表1次電子ビーム21で基板101若しくはマーク111上を走査することにより得られるパターン像と代表2次電子ビーム301で検出器226のアパーチャ基板14上を走査することにより得られる開口像との両方が一緒に写る2次電子画像を取得できる。
【0109】
図16は、実施の形態1の変形例3における画像取得方法の一例を説明するための図である。図16の例では、マーク111上をスキャンする場合を示している。マーク111の代わりに基板101を用いても構わない。上述した構成では、いずれもマルチ検出器222を検出器226に乗せ換えてから、ビーム調整を行う場合を説明したが、これに限るものではない。マルチ検出器222をそのまま利用してビーム調整を行う場合であっても構わない。
【0110】
図17は、実施の形態1における検出器アパーチャアレイ基板の一例を示す上面図である。
図18は、実施の形態1におけるマルチ検出器の一例を示す断面図である。マルチ検出器222は、図18に示すように、アレイ状(格子状)に配置される複数の検出エレメント42を有する。検出器アパーチャアレイ基板223には、図17及び図18に示すように、複数の検出エレメント42(検出素子)の配列ピッチで複数の開口部45が形成される。図17の例では、5×5個の開口部が45形成される場合を示している。図17の例では、開口部15が矩形で形成される場合を示している。かかる場合、マルチ検出器222には、5×5個の検出エレメント42が配置される。複数の検出エレメント42は、基台44上に配置される。検出器アパーチャアレイ基板223は、基台44から延びる複数の支柱43によって複数の検出エレメント42上に支持される。
【0111】
図19は、実施の形態1の変形例3における2次電子画像の一例を示す図である。
図20は、実施の形態1の変形例3における2次電子画像の他の一例を示す図である。検出器226とは異なり、マルチ検出器222の各検出エレメント42上には、対応する1つの開口部45が配置される。そのため、得られる2次電子画像には、1つの開口像46が写る。そのため、1次スキャンのスキャン範囲のサイズによっては、図19に示すように、パターン像47の両側のエッジのうち片側のエッジだけが写る場合が起こり得る。その場合には、1次スキャンのスキャン範囲のサイズを大きくすることにより、図20に示すように、パターン像47の両側のエッジが開口像46内に写るようにできる。しかし、1次スキャンのスキャン範囲のサイズを大きくすることは画像分解能を低下させてしまう。
また、2次スキャンのスキャン範囲のサイズによっては、偏向器(ベンダー)218の入力値を変えた場合に、開口像の位置が変動し、開口像の枠が2次電子画像からはみ出してしまうことが起こり得る。
【0112】
これに対して、1つの検出素子16上に、複数の開口部15が形成された検出器226では、得られる2次電子画像内に、複数の開口像が写る。よって、パターン像の両側のエッジが内部に映る開口像が存在する確率を各段に上げることができる。さらに、偏向器(ベンダー)218の入力値を変えた場合に、開口像の位置が変動してもすべての開口像の枠が2次電子画像からはみ出してしまうことは回避できる。よって、変形例3によってもビーム調整は可能であるが、マルチ検出器222の代わりに検出器226を配置した方がより望ましい。
【0113】
以上のように、マルチ電子ビームの調整方法により電磁レンズ217,207(及び電磁レンズ224)を調整する。そして、マルチ電子ビームの調整方法により調整された電磁レンズ217,207、及び電磁レンズ224が搭載された検査装置100を使って、検査処理を実施する。
【0114】
検査処理では、上述したように、画像取得機構150が、ストライプ領域32毎に、スキャン動作をすすめていく。上述したように、マルチ1次電子ビーム20を照射して、マルチ1次電子ビーム20の照射に起因して基板101から放出されるマルチ2次電子ビーム300は、偏向器218内で中間像面を形成すると共に、偏向器218で偏向され、それからマルチ検出器222で検出される。検出されるマルチ2次電子ビーム300には、反射電子が含まれていても構わない。或いは、反射電子は、2次電子光学系を移動中に発散し、マルチ検出器222まで到達しない場合であっても構わない。そして。検出されたマルチ2次電子ビーム300の信号に基づいた2次電子画像が取得される。具体的には、マルチ検出器222によって検出された各サブ照射領域29内の画素毎の2次電子の検出データ(測定画像データ:2次電子画像データ:被検査画像データ)は、測定順に検出回路106に出力される。検出回路106内では、図示しないA/D変換器によって、アナログの検出データがデジタルデータに変換され、チップパターンメモリ123に格納される。そして、得られた測定画像データは、位置回路107からの各位置を示す情報と共に、比較回路108に転送される。
【0115】
図21は、実施の形態1における比較回路内の構成の一例を示す構成図である。図21において、比較回路108内には、磁気ディスク装置等の記憶装置50,52,56、フレーム画像作成部54、位置合わせ部57、及び比較部58が配置される。フレーム画像作成部54、位置合わせ部57、及び比較部58といった各「~部」は、処理回路を含み、その処理回路には、電気回路、コンピュータ、プロセッサ、回路基板、量子回路、或いは、半導体装置等が含まれる。また、各「~部」は、共通する処理回路(同じ処理回路)を用いてもよい。或いは、異なる処理回路(別々の処理回路)を用いても良い。フレーム画像作成部54、位置合わせ部57、及び比較部58内に必要な入力データ或いは演算された結果はその都度図示しないメモリ、或いはメモリ118に記憶される。
【0116】
比較回路108内に転送された測定画像データ(ビーム画像)は、記憶装置50に格納される。
【0117】
そして、フレーム画像作成部54は、各1次電子ビームのスキャン動作によって取得されたサブ照射領域29の画像データをさらに分割した複数のフレーム領域30のフレーム領域30毎のフレーム画像31を作成する。そして、フレーム領域30を被検査画像の単位領域として使用する。なお、各フレーム領域30は、画像の抜けが無いように、互いにマージン領域が重なり合うように構成されると好適である。作成されたフレーム画像31は、記憶装置56に格納される。
【0118】
一方、参照画像作成回路112は、基板101に形成された複数の図形パターンの元になる設計データに基づいて、フレーム領域30毎に、フレーム画像31に対応する参照画像を作成する。具体的には、以下のように動作する。まず、記憶装置109から制御計算機110を通して設計パターンデータを読み出し、この読み出された設計パターンデータに定義された各図形パターンを2値ないしは多値のイメージデータに変換する。
【0119】
上述したように、設計パターンデータに定義される図形は、例えば長方形や三角形を基本図形としたもので、例えば、図形の基準位置における座標(x、y)、辺の長さ、長方形や三角形等の図形種を区別する識別子となる図形コードといった情報で各パターン図形の形、大きさ、位置等を定義した図形データが格納されている。
【0120】
かかる図形データとなる設計パターンデータが参照画像作成回路112に入力されると図形ごとのデータにまで展開し、その図形データの図形形状を示す図形コード、図形寸法などを解釈する。そして、所定の量子化寸法のグリッドを単位とするマス目内に配置されるパターンとして2値ないしは多値の設計パターン画像データに展開し、出力する。言い換えれば、設計データを読み込み、検査領域を所定の寸法を単位とするマス目として仮想分割してできたマス目毎に設計パターンにおける図形が占める占有率を演算し、nビットの占有率データを出力する。例えば、1つのマス目を1画素として設定すると好適である。そして、1画素に1/2(=1/256)の分解能を持たせるとすると、画素内に配置されている図形の領域分だけ1/256の小領域を割り付けて画素内の占有率を演算する。そして、8ビットの占有率データとなる。かかるマス目(検査画素)は、測定データの画素に合わせればよい。
【0121】
次に、参照画像作成回路112は、図形のイメージデータである設計パターンの設計画像データに、所定のフィルタ関数を使ってフィルタ処理を施す。これにより、画像強度(濃淡値)がデジタル値の設計側のイメージデータである設計画像データをマルチ1次電子ビーム20の照射によって得られる像生成特性に合わせることができる。作成された参照画像の画素毎の画像データは比較回路108に出力される。比較回路108内に転送された参照画像データは、記憶装置52に格納される。
【0122】
次に、位置合わせ部57は、被検査画像となるフレーム画像31と、当該フレーム画像31に対応する参照画像とを読み出し、画素より小さいサブ画素単位で、両画像を位置合わせする。例えば、最小2乗法で位置合わせを行えばよい。
【0123】
そして、比較部58は、ステージ105上に載置される基板101の2次電子画像を所定の画像と比較する。具体的には、比較部58は、フレーム画像31と参照画像とを画素毎に比較する。比較部58は、所定の判定条件に従って画素毎に両者を比較し、例えば形状欠陥といった欠陥の有無を判定する。例えば、画素毎の階調値差が判定閾値Thよりも大きければ欠陥と判定する。そして、比較結果が出力される。比較結果は、記憶装置109、若しくはメモリ118に出力される、或いはプリンタ119より出力されればよい。
【0124】
なお、上述したダイ-データベース検査の他、同一基板上の異なる場所の同一パターンを撮像した測定画像データ同士を比較するダイ-ダイ検査を行っても好適である。或いは、自己の測定画像だけを用いて検査しても構わない。
【0125】
以上のように、実施の形態1によれば、マルチ1次電子ビーム20を検査対象基板にフォーカスさせると共に、マルチ1次電子ビーム20の軌道から分離されたマルチ2次電子ビーム300の軌道上の偏向器(ベンダー)218の中心位置付近にマルチ2次電子ビーム300の中間像面を形成するように偏向器(ベンダー)218よりも上流側の電磁レンズ217を調整できる。
【0126】
実施の形態2.
上述した実施の形態1では、マルチ1次電子ビーム20のうち1本の代表1次電子ビーム21だけを使って基板101或いはマーク111上を走査する場合を説明したが、これに限るものではない。実施の形態2では、マルチ1次電子ビーム20を使って基板101或いはマーク111上を走査する構成について説明する。以下、特に説明する点以外の内容は、実施の形態1と同様で構わない。
【0127】
実施の形態2における検査装置100の構成は、図1と同様で構わない。なお、実施の形態2では、マルチ1次電子ビーム20を代表1次電子ビーム21に絞らないので、図1におけるビーム選択アパーチャ基盤204及び駆動回路215を省略しても構わない。また、実施の形態2におけるビーム調整回路134の構成は、図6と同様で構わない。また、実施の形態2では、マルチ1次電子ビーム20を代表1次電子ビーム21に絞らないので、図6のビーム選択部60を省略しても構わない。
【0128】
図22は、実施の形態2におけるマルチ電子ビーム調整方法の要部工程の一例を示すフローチャート図である。図22に示すフローチャート図は、ビーム選択工程(S102)と検出器組み換え工程(S154)と、を省略した点以外は図7と同様である。
【0129】
まず、実施の形態2では、検出器226を使わずに、マルチ検出器222をそのまま使用する。マルチ検出器222は、図17および図18に示したように、各検出エレメント42上にそれぞれ別の開口部45が位置するように複数の開口部45が形成された検出器アパーチャアレイ基板223が複数の検出エレメント42上に配置される。
【0130】
ベンダー入力値設定工程(S104)の内容は実施の形態1と同様である。レンズ入力値組み合わせ取得工程(S105)のうち、レンズ入力値1設定工程(S106)と、レンズ入力値2設定工程(S108)と、レンズ入力値3設定工程(S110)と、の各工程の内容は実施の形態1と同様である。
【0131】
スキャン工程(S112)として、画像取得機構150は、電磁レンズ217,207と、電磁レンズ224と、の各入力値を可変に組み合わせた組み合わせ毎に、マルチ1次電子ビーム20で基板101若しくはマーク111上を走査し、マルチ1次電子ビーム20による走査によって基板101若しくはマーク111から放出されるマルチ2次電子ビーム300でマルチ検出器222のアパーチャ基板上を走査し、走査されたマルチ2次電子ビーム300をマルチ検出器222で検出し、検出された検出信号に基づいた2次電子画像を取得する。以下、画像取得機構150の動作について説明する。
【0132】
図23は、実施の形態2における画像取得方法の一例を説明するための図である。図23では、マーク111上をスキャンする場合を示している。マーク111の代わりに基板101を用いても構わない。また、図23では、マルチ1次電子ビーム20のうち代表1次電子ビーム21の軌道を一例として示すと共に、マルチ2次電子ビーム300のうち代表2次電子ビーム301の軌道を一例として示す。実施の形態2では、電磁レンズ217、207,224の各入力値の組み合わせ毎の2次電子像を取得する際、偏向器208,209(第2の偏向器)を用いてマルチ1次電子ビーム20で基板101若しくはマーク111上を走査する。そして、偏向器(ベンダー)218(第1の偏向器)とマルチ検出器222との間に配置された偏向器227(第3の偏向器の一例)を用いて基板101若しくはマーク111から放出されたマルチ2次電子ビーム300で検出器226のアパーチャ基板上を走査する。
【0133】
図23の例では、実施の形態1と同様、入力値1による電磁レンズ217のレンズ作用が生じている状態で、マルチ1次電子ビーム20でマーク111をスキャン(走査)する。マーク111の走査は、偏向器208,209でマルチ1次電子ビーム20を偏向することにより行われる。かかる走査によりマルチ2次電子ビーム300がマーク111から放出される。マルチ2次電子ビーム300は、電磁レンズ207,217でレンズ作用を受け、E×B分離器214によりマルチ1次電子ビーム20の軌道上から分離される。分離されたマルチ2次電子ビーム300は、偏向器218で曲げられ、偏向器225に進む。偏向器225は、マルチ1次電子ビーム20を用いた走査により変動するマルチ検出器222の検出面上でのマルチ2次電子ビーム300の位置をマルチ2次電子ビーム300の振り戻し偏向により不動にする。そして、振り戻されたマルチ2次電子ビーム300は、電磁レンズ224でマルチ検出器222に投影される。その際、偏向器227は、マルチ2次電子ビーム300でマルチ検出器222上をスキャンする。基板101若しくはマーク111から放出されるマルチ2次電子ビーム300で検出器アパーチャアレイ基板223上を走査する際、マルチ検出器222は、マルチ2次電子ビーム222をマルチ検出器222で1つの開口部45に2以上の2次電子ビームが入射しないように検出する。
【0134】
図24は、実施の形態2における検出器アパーチャアレイ基板とマルチ2次電子ビームとの関係を示す図である。マルチ検出器222の検出器アパーチャアレイ基板223の複数の開口部45のサイズSは、マルチ検出器222上(検出器アパーチャアレイ基板223上)でのマルチ2次電子ビーム300のビームピッチPより小さく形成される。x方向とy方向とで開口部45のサイズやビームピッチが異なる場合には、x方向の開口部45のサイズSxは、同方向のマルチ2次電子ビーム300のビームピッチPxより小さく、y方向の開口部45のサイズSyは、同方向のマルチ2次電子ビーム300のビームピッチPyより小さく形成される。これにより、マルチ2次電子ビーム300で検出器アパーチャアレイ基板223上を走査しても、各開口部45には、1つの2次電子ビームしか検出しないようにできる。言い換えれば、同時に2以上のビームを検出しないようにできる。なお、スキャン幅は、開口部45のサイズS(x方向にSx、y方向にSy)よりも大きい範囲とする。これにより開口部像を得ることができる。
なお、スキャン幅は、マルチ2次電子ビーム300のビームピッチPよりも大きくても構わない。対象2次電子ビームの情報と他の2次電子ビームの情報とでは検出時の時間的ずれが生じるので、検出エレメント毎に2以上の2次電子ビームの情報は混在せずに分離できる。
【0135】
図25は、実施の形態2における粒子の一例を示す図である。実施の形態2では、マーク111には、形状、サイズ、及び配置位置がランダムな複数の金属粒子を用いると好適である。形状、サイズ、及び配置位置がランダムな複数の金属粒子を用いることで、焦点合わせをし易くできる。
【0136】
図26は、実施の形態2における2次電子画像の一例を示す図である。図26の例では、形状、サイズ、及び配置位置がランダムな複数の金属粒子が配置されたマーク111の画像の一例を示す。検出エレメント毎に像が得られる。言い換えれば、マルチ2次電子ビーム300のビーム毎に像が得られる。スキャンによってマルチ2次電子ビーム300の位置が大きくずれていれば、少なくとも一部の検出エレメントではビームが入射しないのでパターン像と開口部像のセットが得られないことになる。よって、マルチ2次電子ビーム300のすべての像が得られた時点での複数の2次電子画像が、各2次電子ビームが対応する検出エレメントで検出された場合の複数の2次電子画像である。各像の枠が2次電子の走査による開口部像を示す。各像の枠内の像が1次電子の走査によるパターン像を示す。
【0137】
レンズ入力値組み合わせ取得工程(S105)内の、1次スキャン像シャープネス算出工程(S114)と、判定工程(S116)と、2次スキャン像シャープネス算出工程(S120)と、判定工程(S122)と、ベンダー入力値変更工程(S130)と、スキャン工程(S132)と、判定工程(S140)と、の各工程の内容は実施の形態1と同様である。
なお、1次スキャン像シャープネス算出工程(S114)と、判定工程(S116)と、2次スキャン像シャープネス算出工程(S120)と、判定工程(S122)と、において、すべての検出エレメントの2次電子画像を用いる必要は無く、例えば、中心2次電子ビームを検出した検出エレメントで得られた2次電子像を用いればよい。
【0138】
また、判定工程(S140)において、開口像の位置変化量が閾値Th3以下、或いは不動であれば、ベンダー入力値戻し工程(S142)に進む。
【0139】
以上により、マルチ2次電子ビーム300を偏向器(ベンダー)218の中間位置にフォーカスさせると共にマルチ1次電子ビーム20を基板101若しくはマーク111にフォーカスさせる電磁レンズ217(第1のレンズ)のレンズ入力値1(第1のフォーカス入力値)及び電磁レンズ207(第2のレンズ)のレンズ入力値2(第2のフォーカス入力値)と、マルチ2次電子ビーム300をマルチ検出器222にフォーカスさせる電磁レンズ224(第3のレンズ)のレンズ入力値3(第3のフォーカス入力値)と、の組み合わせが取得される。取得された組み合わせの情報はレンズ制御回路124に出力される。
【0140】
ベンダー入力値戻し工程(S142)と、レンズ1,2設定工程(S152)と、レンズ3調整工程(S156)と、の各工程の内容は、実施の形態1と同様である。なお、レンズ3調整工程(S156)において、実施の形態2では、検出器の組み換えが生じないので、取得された組み合わせのレンズ入力値3を電磁レンズ224(第3のレンズ)に設定すればよい。
【0141】
なお、図14で説明した変形例1を実施の形態2に適用することができる。その際、実施の形態2の変形例1では、電磁レンズ217、207,224の各入力値の組み合わせ毎の2次電子像を取得する際、偏向器208,209(第2の偏向器)を用いてマルチ1次電子ビーム20で基板101若しくはマーク111上を走査する。そして、偏向器(ベンダー)218(第1の偏向器)とマルチ検出器222との間に配置された偏向器225(第3の偏向器の他の一例)を用いて基板101若しくはマーク111から放出されたマルチ2次電子ビーム300でマルチ検出器222の検出器アパーチャアレイ基板223上を走査する。
【0142】
同様に、図15で説明した変形例2を実施の形態2に適用することができる。その際、実施の形態2の変形例2では、電磁レンズ217、207,224の各入力値の組み合わせ毎の2次電子像を取得する際、偏向器208,209(第2の偏向器)を用いてマルチ1次電子ビーム20で基板101若しくはマーク111上を走査すると共に、基板101若しくはマーク111から放出されたマルチ2次電子ビーム300でアパーチャ基板14上を走査する。言い換えれば、偏向器225,227を用いずに、偏向器208,209によってマルチ2次電子ビーム300でマルチ検出器222上をスキャンする。
【0143】
ここでは、偏向器225による振り戻し偏向を行わないので、例えば、マルチ1次電子ビーム20を用いた走査によりマルチ検出器222の検出面上でのマルチ2次電子ビーム300の位置が変動する。かかる変動によって、マルチ検出器222の検出器アパーチャアレイ基板223上を走査する。
【0144】
以上のように、実施の形態2によれば、マルチビームを使って走査を行う場合でも、マルチ1次電子ビーム20を検査対象基板にフォーカスさせると共に、マルチ1次電子ビーム20の軌道から分離されたマルチ2次電子ビーム300の軌道上の偏向器(ベンダー)218の中心位置付近にマルチ2次電子ビーム300の中間像面を形成するように偏向器(ベンダー)218よりも上流側の電磁レンズ217を調整できる。また、検査用のマルチ検出器222を用いて調整することで、偏向器(ベンダー)218よりも下流側の電磁レンズ224を一緒に調整できる。
【0145】
以上の説明において、一連の「~回路」は、処理回路を含み、その処理回路には、電気回路、コンピュータ、プロセッサ、回路基板、量子回路、或いは、半導体装置等が含まれる。また、各「~回路」は、共通する処理回路(同じ処理回路)を用いてもよい。或いは、異なる処理回路(別々の処理回路)を用いても良い。プロセッサ等を実行させるプログラムは、磁気ディスク装置、磁気テープ装置、FD、或いはROM(リードオンリメモリ)等の記録媒体に記録されればよい。例えば、位置回路107、比較回路108、参照画像作成回路112、ステージ制御回路114、レンズ制御回路124、ブランキング制御回路126、偏向制御回路128、リターディング制御回路130、E×B分離器制御回路132、及びビーム調整回路134は、上述した少なくとも1つの処理回路で構成されても良い。
【0146】
以上、具体例を参照しつつ実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。
【0147】
また、装置構成や制御手法等、本発明の説明に直接必要しない部分等については記載を省略したが、必要とされる装置構成や制御手法を適宜選択して用いることができる。
【0148】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全てのマルチ電子ビームの調整方法及びマルチ電子ビーム検査装置は、本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0149】
10 1次電子ビーム
11 大開口
13 小開口
14 アパーチャ基板
15 開口部
16 検出素子
17 支柱
18 基台
20 マルチ1次電子ビーム
21 代表1次電子ビーム
22 穴
29 サブ照射領域
30 フレーム領域
31 フレーム画像
32 ストライプ領域
33 矩形領域
34 照射領域
42 検出エレメント
43 支柱
44 基台
45 開口部
46 開口像
47 パターン像
60 ビーム選択部
62 入力値1設定部
64 入力値2設定部
66 入力値3設定部
68 シャープネス算出部
70 判定部
71 記憶装置
72 シャープネス算出部
74 判定部
75 ベンダー入力値設定部
76 ベンダー入力値設定部
78 位置変化量算出部
79 判定部
80 組み合わせ取得部
100 検査装置
101 基板
102 電子ビームカラム
103 検査室
105 ステージ
106 検出回路
107 位置回路
108 比較回路
109 記憶装置
110 制御計算機
111 マーク
112 参照画像作成回路
114 ステージ制御回路
117 モニタ
118 メモリ
119 プリンタ
120 バス
122 レーザ測長システム
123 チップパターンメモリ
124 レンズ制御回路
126 ブランキング制御回路
128 偏向制御回路
130 リターディング制御回路
132 E×B分離器制御回路
134 ビーム調整回路
142 ステージ駆動機構
144,146,147,149 DACアンプ
148 電源
150 画像取得機構
151 1次電子光学系
152 2次電子光学系
160 制御系回路
200 電子ビーム
201 電子銃
202,205,217,207 電磁レンズ
203 成形アパーチャアレイ基板
204 ビーム選択アパーチャ基板
208 偏向器
209 偏向器
212 一括偏向器
213 制限アパーチャ基板
214 E×B分離器
215 駆動回路
216 ミラー
218 偏向器
222 マルチ検出器
223 検出器アパーチャアレイ基板
224 電磁レンズ
225 偏向器
226 検出器
227 偏向器
300 マルチ2次電子ビーム
301 代表2次電子ビーム
330 検査領域
332 チップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26