(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177099
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】粘着剤組成物、粘着剤層、及び、粘着剤付き偏光板
(51)【国際特許分類】
C09J 133/14 20060101AFI20241212BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20241212BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20241212BHJP
C09K 3/00 20060101ALI20241212BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
C09J133/14
C09J11/06
C09J7/38
C09K3/00 103G
G02B5/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024088907
(22)【出願日】2024-05-31
(31)【優先権主張番号】P 2023094724
(32)【優先日】2023-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】坂口 哲生
(72)【発明者】
【氏名】西上 由紀
(72)【発明者】
【氏名】連 怡テイ
(72)【発明者】
【氏名】李 昇祐
(72)【発明者】
【氏名】久保 昂大
【テーマコード(参考)】
2H149
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
2H149AA01
2H149AB11
2H149BA02
2H149DA02
2H149DA12
2H149FA51Z
2H149FA66
2H149FD25
2H149FD29
2H149FD47
4J004AA10
4J004AA14
4J004AB01
4J004BA02
4J004CB03
4J004CC02
4J004DB02
4J004FA08
4J040DF021
4J040DF031
4J040DF061
4J040EF282
4J040GA07
4J040GA08
4J040HC23
4J040HD18
4J040HD32
4J040JB09
4J040KA16
4J040KA23
4J040KA32
4J040LA09
4J040MA10
4J040NA17
(57)【要約】
【課題】粘着力、帯電防止性及び金属腐食防止性が良好な粘着剤組成物を提供すること。
【解決手段】(メタ)アクリル系樹脂(A-1)及びイオン性化合物(A-2)を含有し、(メタ)アクリル系樹脂(A-1)は、アルコキシアルキル(メタ)アクリレートに由来する構造単位を、構造単位全量を基準として10質量%以上40質量%以下含み、イオン性化合物(A-2)は、下記式(A-2-1)で表されるアニオン部と有機カチオンとからなるイオン性化合物である、粘着剤組成物。
[式中、R
4及びR
5は各々独立に炭素数1~4のパーフルオロアルキル基を示す、又は、R
4とR
5とが結合して形成された炭素数1~8のパーフルオロアルキレン基を示す。]
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル系樹脂(A-1)及びイオン性化合物(A-2)を含有する粘着剤組成物であって、
前記(メタ)アクリル系樹脂(A-1)は、アルコキシアルキル(メタ)アクリレートに由来する構造単位を、前記(メタ)アクリル系樹脂(A-1)を構成する構造単位全量を基準として10質量%以上40質量%以下含み、
前記イオン性化合物(A-2)は、下記式(A-2-1)で表されるアニオン部と有機カチオンとからなるイオン性化合物である、粘着剤組成物。
【化1】
[式中、R
4及びR
5は各々独立に炭素数1~4のパーフルオロアルキル基を示す、又は、R
4とR
5とが結合して形成された炭素数1~8のパーフルオロアルキレン基を示す。]
【請求項2】
前記アルコキシアルキル(メタ)アクリレートに由来する構造単位が、下記式(A-1-1)で表される(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位を含む、請求項1に記載の粘着剤組成物。
【化2】
[式中、R
1は水素原子又はメチル基を示し、R
2は炭素数1~4のアルキレン基を示し、R
3は炭素数1~4のアルキル基を示す。]
【請求項3】
前記(メタ)アクリル系樹脂(A-1)が、カルボキシル基含有モノマー由来の構造単位を、前記(メタ)アクリル系樹脂(A-1)を構成する構造単位全量を基準として0.6質量%以上10質量%以下含む、請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
前記(メタ)アクリル系樹脂(A-1)が、下記式(A-1-2)で表される(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位を含む、請求項1に記載の粘着剤組成物。
【化3】
[式中、R
6は水素原子又はメチル基を示し、R
7は炭素数1~14のアルキル基又はアラルキル基を示す。]
【請求項5】
前記(メタ)アクリル系樹脂(A-1)が、前記式(A-1-2)で表され且つ前記R7が炭素数1~3のアルキル基である(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位を、前記(メタ)アクリル系樹脂(A-1)を構成する構造単位全量を基準として5質量%以上50質量%以下含む、請求項4に記載の粘着剤組成物。
【請求項6】
前記イオン性化合物(A-2)の含有量が、前記(メタ)アクリル系樹脂(A-1)100質量部に対して0.1質量部以上10質量部以下である、請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項7】
前記イオン性化合物(A-2)の融点が23℃以上である、請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項8】
前記イオン性化合物(A-2)の前記アニオン部のR4及びR5がいずれもトリフルオロメチル基である、請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項9】
前記イオン性化合物(A-2)の前記有機カチオンが窒素原子を含む、請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の粘着剤組成物を用いて形成された、粘着剤層。
【請求項11】
厚さが2μm以上50μm以下である、請求項10に記載の粘着剤層。
【請求項12】
請求項10に記載の粘着剤層に偏光板を貼合した、粘着剤付き偏光板。
【請求項13】
前記偏光板が位相子を含む、請求項12に記載の粘着剤付き偏光板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤組成物、粘着剤層、及び、粘着剤付き偏光板に関する。
【背景技術】
【0002】
偏光板は、画像表示装置に装着され、広く使用されている。画像表示装置としては液晶表示装置や有機EL表示装置などが挙げられる。偏光板は、偏光子の両面もしくは片面に透明保護フィルムが積層され、少なくとも一方の表面に粘着剤層が形成された粘着剤付き偏光板とし、その粘着剤層の上に剥離フィルムが貼着された状態で流通している。また、偏光子の両面もしくは片面に保護フィルムが貼合された状態の偏光板に位相子を積層して楕円偏光板とし、その位相子側に粘着剤層が形成されることもある。画像表示装置への貼合前に、これらの偏光板、楕円偏光板、位相子の表面の粘着剤層から剥離フィルムを剥がし、露出した粘着剤層を介して画像表示装置に貼合することになる。このような偏光板、楕円偏光板又は位相子は、剥離フィルムを剥離する際に粘着剤面と剥離フィルム間で静電気が発生し、その静電気が減衰するよりも前に画像表示装置に貼合されることで静電気により画像表示装置が破壊されるといった不具合が発生しうる。
【0003】
その対策の一つとして、下記特許文献1には、偏光子フィルムの表面に保護フィルムが積層され、保護フィルムの表面に粘着剤層が設けられた偏光板において、粘着剤として、電解質塩とオルガノポリシロキサンからなるイオン導電性組成物及びアクリル系共重合体を含む組成物を用いることが提案されている。
【0004】
また、下記特許文献2には、側鎖に水酸基及びエチレンオキサイド鎖などのアルキレンオキサイド鎖を有するアクリル系共重合体、イオン化合物及び硬化剤を含有する帯電防止アクリル粘着剤が開示されている。特許文献2では、Li塩等の無機カチオンを有するイオン化合物が使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6-313807号公報
【特許文献2】特開2005-206776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
画像表示装置にはその表示素子やタッチパネル素子などに金属配線が用いられる。上記の静電気の対策としてイオン性化合物を添加した場合、イオン性化合物により金属配線が腐食されてしまうといった不具合が発生しうる。腐食の中でも孔食は、金属層の厚さが薄い場合や、金属層が金属配線であるときにその線幅が狭い場合は、金属層が貫通してしまうため、特に問題になる。
【0007】
上記特許文献1及び2に開示された粘着剤を用いた場合、帯電防止性は発現されるものの、その性能が必ずしも十分とはいえず、また、金属腐食防止性についても必ずしも十分とはいえなかった。
【0008】
そこで、本発明は、粘着力、帯電防止性及び金属腐食防止性が良好な粘着剤組成物、粘着剤層、及び、粘着剤付き偏光板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、以下の粘着剤組成物、粘着剤層、及び、粘着剤付き偏光板を提供する。
[1](メタ)アクリル系樹脂(A-1)及びイオン性化合物(A-2)を含有する粘着剤組成物であって、上記(メタ)アクリル系樹脂(A-1)は、アルコキシアルキル(メタ)アクリレートに由来する構造単位を、上記(メタ)アクリル系樹脂(A-1)を構成する構造単位全量を基準として10質量%以上40質量%以下含み、上記イオン性化合物(A-2)は、下記式(A-2-1)で表されるアニオン部と有機カチオンとからなるイオン性化合物である、粘着剤組成物。
【化1】
[式中、R
4及びR
5は各々独立に炭素数1~4のパーフルオロアルキル基を示す、又は、R
4とR
5とが結合して形成された炭素数1~8のパーフルオロアルキレン基を示す。]
[2]上記アルコキシアルキル(メタ)アクリレートに由来する構造単位が、下記式(A-1-1)で表される(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位を含む、上記[1]に記載の粘着剤組成物。
【化2】
[式中、R
1は水素原子又はメチル基を示し、R
2は炭素数1~4のアルキレン基を示し、R
3は炭素数1~4のアルキル基を示す。]
[3]上記(メタ)アクリル系樹脂(A-1)が、カルボキシル基含有モノマー由来の構造単位を、上記(メタ)アクリル系樹脂(A-1)を構成する構造単位全量を基準として0.6質量%以上10質量%以下含む、上記[1]又は[2]に記載の粘着剤組成物。
[4]上記(メタ)アクリル系樹脂(A-1)が、下記式(A-1-2)で表される(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位を含む、上記[1]~[3]のいずれかに記載の粘着剤組成物。
【化3】
[式中、R
6は水素原子又はメチル基を示し、R
7は炭素数1~14のアルキル基又はアラルキル基を示す。]
[5]上記(メタ)アクリル系樹脂(A-1)が、上記式(A-1-2)で表され且つ上記R
7が炭素数1~3のアルキル基である(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位を、上記(メタ)アクリル系樹脂(A-1)を構成する構造単位全量を基準として5質量%以上50質量%以下含む、上記[4]に記載の粘着剤組成物。
[6]上記イオン性化合物(A-2)の含有量が、上記(メタ)アクリル系樹脂(A-1)100質量部に対して0.1質量部以上10質量部以下である、上記[1]~[5]のいずれかに記載の粘着剤組成物。
[7]上記イオン性化合物(A-2)の融点が23℃以上である、上記[1]~[6]のいずれかに記載の粘着剤組成物。
[8]上記イオン性化合物(A-2)の上記アニオン部のR
4及びR
5がいずれもトリフルオロメチル基である、上記[1]~[7]のいずれかに記載の粘着剤組成物。
[9]上記イオン性化合物(A-2)の上記有機カチオンが窒素原子を含む、上記[1]~[8]のいずれかに記載の粘着剤組成物。
[10]上記[1]~[9]のいずれかに記載の粘着剤組成物を用いて形成された、粘着剤層。
[11]厚さが2μm以上50μm以下である、上記[10]に記載の粘着剤層。
[12]上記[10]又は[11]に記載の粘着剤層に偏光板を貼合した粘着剤付き偏光板。
[13]上記偏光板が位相子を含む、上記[12]に記載の粘着剤付き偏光板。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、粘着力、帯電防止性及び金属腐食防止性が良好な粘着剤組成物、粘着剤層、及び、粘着剤付き偏光板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る光学積層体の一例を示す概略断面図である。
【
図2】本発明に係る光学積層体の他の一例を示す概略断面図である。
【
図3】本発明に係る光学積層体の他の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、場合により図面を参照しつつ、本発明の一実施形態について詳細に説明する。
【0013】
<粘着剤組成物>
本発明の粘着剤組成物は、(メタ)アクリル系樹脂(A-1)及びイオン性化合物(A-2)を含有する。上記(メタ)アクリル系樹脂(A-1)は、アルコキシアルキル(メタ)アクリレートに由来する構造単位を、上記(メタ)アクリル系樹脂(A-1)を構成する構造単位全量を基準として10質量%以上40質量%以下含む。上記イオン性化合物(A-2)は、下記式(A-2-1)で表されるアニオン部と有機カチオンとからなるイオン性化合物である。
【化4】
式(A-2-1)中、R
4及びR
5は各々独立に炭素数1~4のパーフルオロアルキル基を示す、又は、R
4とR
5とが結合して形成された炭素数1~8のパーフルオロアルキレン基を示す。
【0014】
上記粘着剤組成物によれば、上記特定のイオン性化合物(A-2)を用いることで、良好な帯電防止性を得ることができると共に、他のイオン性化合物を用いた場合と比較して、金属腐食防止性を向上させることができる。また、上記粘着剤組成物によれば、上記特定の(メタ)アクリル系樹脂(A-1)を用いることで、金属腐食防止性を向上させることができると共に、粘着剤組成物のイオン伝導性が向上し、イオン性化合物(A-2)による帯電防止性の向上効果を高めることができる。さらに、上記粘着剤組成物によれば、良好な粘着力を得ることができる。
【0015】
[(メタ)アクリル系樹脂(A-1)]
(メタ)アクリル系樹脂(A-1)は、アルコキシアルキル(メタ)アクリレートに由来する構造単位を含む。アルコキシアルキル(メタ)アクリレートに由来する構造単位は、例えば下記式(A-1-1)で表される(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位を含んでいてもよい。(メタ)アクリル系樹脂(A-1)はさらに、下記式(A-1-2)で表される(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位、カルボキシル基含有モノマー由来の構造単位、及び、カルボキシル基以外の極性官能基を有する単量体に由来する構造単位のうちの少なくとも1種を含んでいてもよい。ここで、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸又はメタクリル酸のいずれでもよいことを意味し、他に、(メタ)アクリレートなどというときの「(メタ)」も同様の趣旨である。
【化5】
式(A-1-1)中、R
1は水素原子又はメチル基を示し、R
2は炭素数1~4のアルキレン基を示し、R
3は炭素数1~4のアルキル基を示す。
【化6】
式(A-1-2)中、R
6は水素原子又はメチル基を示し、R
7は炭素数1~14のアルキル基又はアラルキル基を示す。
【0016】
アルコキシアルキル(メタ)アクリレートの中でも、上記式(A-1-1)で表される(メタ)アクリル酸エステルとして具体的には、アクリル酸2-メトキシエチル、アクリル酸2-エトキシエチル、アクリル酸2-メトキシ-2-エトキシエチル、メタクリル酸2-メトキシエチル、メタクリル酸2-エトキシエチル、メタクリル酸2-メトキシ-2-エトキシエチルなどが例示される。これらの(メタ)アクリル酸エステルは、それぞれ単独で用いることができるほか、異なる複数のものを用いて共重合させてもよい。これらのなかでも、アクリル酸2-メトキシエチルを、(メタ)アクリル系樹脂(A-1)を構成する(メタ)アクリル酸エステルの一つとして用いることが好ましい。
【0017】
(メタ)アクリル系樹脂(A-1)において、アルコキシアルキル(メタ)アクリレートに由来する構造単位の含有量は、(メタ)アクリル系樹脂(A-1)を構成する構造単位全量を基準として10質量%以上40質量%以下であるが、15質量%以上40質量%以下であることが好ましく、15質量%以上35質量%以下であることがより好ましく、20質量%以上35質量%以下であることが特に好ましい。この含有量が10質量%未満の場合、粘着剤のイオン導電性が低いことから所望の帯電防止性を担保するためには帯電防止剤を多く添加する必要があり、金属腐食耐性が低くなり、40質量%を超えると粘着剤の極性が高くなることで水分率が高くなり粘着剤特性に影響を及ぼす。
【0018】
アルコキシアルキル(メタ)アクリレートは、上記式(A-1-1)で表される(メタ)アクリル酸エステル以外の(メタ)アクリル酸エステル(例えば、上記式(A-1-1)中のR2が炭素数1~4のアルキレン基以外である又はR3が炭素数1~4のアルキル基以外である(メタ)アクリル酸エステル)を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。アルコキシアルキル(メタ)アクリレートに由来する構造単位は、その全てが上記式(A-1-1)で表される(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位であってもよい。
【0019】
上記式(A-1-2)で表される(メタ)アクリル酸エステルのうち、R7がアルキル基であるものとして、具体的には、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸n-オクチル、アクリル酸ラウリル等の直鎖状のアクリル酸アルキルエステル;アクリル酸イソブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸イソオクチル等の分枝状のアクリル酸アルキルエステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸n-オクチル、メタクリル酸ラウリル等の直鎖状のメタクリル酸アルキルエステル;メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸イソオクチル等の分枝状のメタクリル酸アルキルエステルなどが例示される。R7がアラルキル基である場合の式(A-1-2)で表される(メタ)アクリル酸エステルとして、具体的には、アクリル酸ベンジルやメタクリル酸ベンジルなどが例示される。これらの(メタ)アクリル酸エステルは、それぞれ単独で用いることができるほか、異なる複数のものを用いて共重合させてもよい。
【0020】
これらのなかでも、R7が炭素数1~3のアルキル基である場合の式(A-1-2)で表される(メタ)アクリル酸エステルを共重合成分として用いることが好ましく、R7が炭素数1~3のアルキル基である場合の式(A-1-2)で表される(メタ)アクリル酸エステルと、R7が炭素数4~14のアルキル基である場合の式(A-1-2)で表される(メタ)アクリル酸とを併用することがより好ましい。
【0021】
(メタ)アクリル系樹脂(A-1)において、上記式(A-1-2)で表される(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位の含有量は、(メタ)アクリル系樹脂(A-1)を構成する構造単位全量を基準として50質量%以上89.4質量%以下であることが好ましく、50質量%以上84.4質量%以下であることがより好ましく、55質量%以上84.4質量%以下であることがさらに好ましく、55質量%以上79.4質量%以下であることが特に好ましい。この含有量が50質量%以上89.4質量%以下であると、粘着力や耐久性を適切に調整できる。
【0022】
(メタ)アクリル系樹脂(A-1)において、R7が炭素数1~3のアルキル基である場合の式(A-1-2)で表される(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位の含有量は、(メタ)アクリル系樹脂(A-1)を構成する構造単位全量を基準として5質量%以上50質量%以下であることが好ましく、10質量%以上40質量%以下であることがより好ましく、15質量%以上35質量%以下であることがさらに好ましく、20質量%以上35質量%以下であることが特に好ましい。この含有量が5質量%以上50質量%以下であると、適切に耐久性を確保できる。
【0023】
(メタ)アクリル系樹脂(A-1)において、R7が炭素数4~14のアルキル基である場合の式(A-1-2)で表される(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位の含有量は、(メタ)アクリル系樹脂(A-1)を構成する構造単位全量を基準として0質量%以上84.4質量%以下であることが好ましく、10質量%以上79.4質量%以下であることがより好ましく、15質量%以上74.4質量%以下であることがさらに好ましく、15質量%以上69.4質量%以下であることが特に好ましい。この含有量が0質量%以上84.4質量%以下であると、粘着剤のタック性や耐久性を適切に調整できる。
【0024】
(メタ)アクリル系樹脂(A-1)は、カルボキシル基含有モノマー由来の構造単位を含むことが好ましい。(メタ)アクリル系樹脂(A-1)において、カルボキシル基含有モノマー由来の構造単位の含有量は、(メタ)アクリル系樹脂(A-1)を構成する構造単位全量を基準として0.6質量%以上10質量%以下であることが好ましく、1質量%以上5質量%以下であることがより好ましく、1質量%以上3質量%以下であることがさらに好ましい。この含有量が0.6質量%以上であるとガラス密着力の向上により粘着力や耐久性が向上し、10質量%以下であると酸成分が過剰に存在することを抑制できるため金属腐食防止性の低下を抑制でき、さらに、粘着剤の極性が高くなることを抑制できるため、水分率が高くなって粘着剤特性に影響を及ぼすことを抑制できる。
【0025】
カルボキシル基含有モノマーとしては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、カルボキシアルキル(メタ)アクリレート(例えばカルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート)などが挙げられる。また、カルボキシル基含有モノマーは、β-カルボキシエチルアクリレート等の、遊離カルボキシル基を有するモノマーであってもよい。この中でも(メタ)アクリル酸を用いることが耐久性の向上の観点から好ましい。
【0026】
カルボキシル基以外の極性官能基を有する単量体としては、水酸基、アミノ基、エポキシ環をはじめとする複素環基などの極性官能基を有する単量体が挙げられ、好ましくは極性官能基を有する(メタ)アクリル酸系化合物が挙げられる。
【0027】
極性官能基を有する単量体の例としては、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-又は3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル等の、水酸基を有する単量体;アクリロイルモルホリン、ビニルカプロラクタム、N-ビニル-2-ピロリドン、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリルアクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2,5-ジヒドロフラン等の、複素環基を有する単量体;N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の、複素環とは異なるアミノ基を有する単量体などを挙げることができる。これらの極性官能基を有する単量体は、それぞれ単独で用いてもよいし、異なる複数のものを用いてもよい。
【0028】
極性官能基を有する単量体の極性官能基は、水酸基、アミノ基又はエポキシ環であることが好ましい。とりわけ水酸基を有する単量体を、(メタ)アクリル系樹脂(A-1)を構成する単量体の一つとして用いることが好ましい。また、水酸基を有する単量体に加えて、他の極性官能基を有する単量体を併用するのも有効である。
【0029】
(メタ)アクリル系樹脂(A-1)において、カルボキシル基以外の極性官能基を有する単量体に由来する構造単位の含有量は、(メタ)アクリル系樹脂(A-1)を構成する構造単位全量を基準として0.5質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上5質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以上3質量%以下であることがさらに好ましく、1.0質量%以上3質量%以下であることが特に好ましい。この含有量が0.5質量%以上であると後述の架橋剤との反応点が多くなり耐久性を向上でき、10質量%以下であると粘着剤の極性が高くなることを抑制できるため、水分率が高くなって粘着剤特性に影響を及ぼすことを抑制できる。
【0030】
(メタ)アクリル系樹脂(A-1)は、上述したもの以外の他の単量体に由来する構造単位を含んでいてもよい。他の単量体に由来する構造単位の例としては、分子内に脂環式構造を有する(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位、スチレン系単量体に由来する構造単位、ビニル系単量体に由来する構造単位、及び、分子内に複数の(メタ)アクリロイル基を有する単量体に由来する構造単位などを挙げることができる。
【0031】
脂環式構造とは、炭素数が、通常5以上、好ましくは5~7程度のシクロパラフィン構造である。脂環式構造を有するアクリル酸エステルの具体例としては、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ジシクロペンタニル、アクリル酸シクロドデシル、アクリル酸メチルシクロヘキシル、アクリル酸トリメチルシクロヘキシル、アクリル酸tert-ブチルシクロヘキシル、α-エトキシアクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸シクロヘキシルフェニルなどが挙げられ、脂環式構造を有するメタクリル酸エステルの具体例としては、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ジシクロペンタニル、メタクリル酸シクロドデシル、メタクリル酸メチルシクロヘキシル、メタクリル酸トリメチルシクロヘキシル、メタクリル酸tert-ブチルシクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシルフェニルなどが挙げられる。
【0032】
スチレン系単量体の例としては、スチレンのほか、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、トリエチルスチレン、プロピルスチレン、ブチルスチレン、ヘキシルスチレン、ヘプチルスチレン、オクチルスチレン等のアルキルスチレン;フロロスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、ヨードスチレン等のハロゲン化スチレン;さらに、ニトロスチレン、アセチルスチレン、メトキシスチレン、ジビニルベンゼンなどを挙げることができる。
【0033】
ビニル系単量体の例としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、2-エチルヘキサン酸ビニル、ラウリン酸ビニル等の脂肪酸ビニルエステル;塩化ビニルや臭化ビニル等のハロゲン化ビニル;塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン;ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニルカルバゾール等の含窒素芳香族ビニル;ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等の共役ジエン単量体;さらには、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどを挙げることができる。
【0034】
分子内に複数の(メタ)アクリロイル基を有する単量体の例としては、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の、分子内に2個の(メタ)アクリロイル基を有する単量体;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の、分子内に3個の(メタ)アクリロイル基を有する単量体などを挙げることができる。
【0035】
上記のような他の単量体は、それぞれ単独で、又は2種以上組み合わせて使用することができる。(メタ)アクリル系樹脂(A-1)において、他の単量体に由来する構造単位の含有量は、(メタ)アクリル系樹脂(A-1)を構成する構造単位全量を基準として0質量%以上20質量%以下であってよく、0質量%以上10質量%以下であってよい。
【0036】
粘着剤組成物は、(メタ)アクリル系樹脂(A-1)を1種単独で含んでいてもよく、2種類以上含んでいてもよい。さらに、粘着剤組成物は、(メタ)アクリル系樹脂(A-1)に該当しない他の(メタ)アクリル系樹脂を含んでいてもよい。粘着剤組成物が他の(メタ)アクリル系樹脂を含む場合、(メタ)アクリル系樹脂(A-1)の含有量は、(メタ)アクリル系樹脂全体のうちの60質量%以上とすることが好ましく、80質量%以上とすることがより好ましい。
【0037】
(メタ)アクリル系樹脂(A-1)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が100万~200万の範囲にあることが好ましい。標準ポリスチレン換算の重量平均分子量が100万以上であると、高温高湿下での接着性が向上し、金属層又はガラス基板と粘着剤層との間に浮きや剥れの発生する可能性が低くなる傾向にあることから好ましい。また、この重量平均分子量が200万以下であると、粘着剤層作製時に調整する粘着剤溶液の粘度が適切な範囲となり、作製時のスジやムラなどを抑制できる。
【0038】
また、(メタ)アクリル系樹脂(A-1)は、ガラス転移温度が-10~-60℃の範囲にあることが好ましく、-20~-50℃の範囲にあることがより好ましく、-30~-45℃の範囲にあることがさらに好ましい。樹脂のガラス転移温度は一般に、示差走査熱量計により測定することができる。
【0039】
(メタ)アクリル系樹脂(A-1)は、上記のような比較的高分子量のものだけで構成することもできるし、かかる(メタ)アクリル系樹脂(A-1)に加えて、それとは異なる分子量の(メタ)アクリル系樹脂(A-1)との混合物で構成することもできる。混合して用い得る(メタ)アクリル系樹脂(A-1)としては、例えば、重量平均分子量が5万~30万の範囲にある(メタ)アクリル系樹脂(A-1)を挙げることができる。
【0040】
(メタ)アクリル系樹脂(A-1)(2種類以上を組み合わせる場合は両者の混合物)は、それを酢酸エチルに溶かして不揮発分濃度20質量%に調整した溶液が、25℃において20Pa・s以下、さらには0.1~15Pa・sの粘度を示すことが好ましい。このときの粘度が20Pa・s以下であると、粘着剤作製時のスジの発生を抑制可能であることから好ましい。粘度は、ブルックフィールド粘度計によって測定することができる。
【0041】
(メタ)アクリル系樹脂(A-1)は、例えば、溶液重合法、乳化重合法、塊状重合法、懸濁重合法など、公知の各種方法によって製造することができる。この(メタ)アクリル系樹脂(A-1)の製造においては、通常、重合開始剤が用いられる。重合開始剤は、(メタ)アクリル系樹脂(A-1)の製造に用いられる全ての単量体の合計100質量部に対して、0.001~5質量部程度使用される。
【0042】
重合開始剤としては、熱重合開始剤や光重合開始剤などが用いられる。光重合開始剤として、例えば、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトンなどを挙げることができる。熱重合開始剤として、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチル-4-メトキシバレロニトリル)、ジメチル-2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、2,2’-アゾビス(2-ヒドロキシメチルプロピオニトリル)等のアゾ系化合物;ラウリルパーオキサイド、tert-ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化ベンゾイル、tert-ブチルパーオキシベンゾエート、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジプロピルパーオキシジカーボネート、tert-ブチルパーオキシネオデカノエート、tert-ブチルパーオキシピバレート、(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド等の有機過酸化物;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素等の無機過酸化物などを挙げることができる。また、過酸化物と還元剤を併用したレドックス系開始剤なども、重合開始剤として使用し得る。
【0043】
(メタ)アクリル系樹脂(A-1)の製造方法としては、上述した方法の中でも、溶液重合法が好ましい。溶液重合法の具体例を挙げて説明すると、所望の単量体及び有機溶媒を混合し、窒素雰囲気下にて、熱重合開始剤を添加して、40~90℃程度、好ましくは60~80℃程度にて3~10時間程度攪拌する方法などを挙げることができる。また、反応を制御するために、単量体や熱重合開始剤を重合中に連続的又は間歇的に添加したり、有機溶媒に溶解した状態で添加したりしてもよい。ここで、有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の脂肪族アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類などを用いることができる。
【0044】
[イオン性化合物(A-2)]
粘着剤組成物は、(メタ)アクリル系樹脂(A-1)に加え、帯電防止剤として、イオン性化合物(A-2)を含む。イオン性化合物(A-2)は、上記式(A-2-1)で表されるアニオン部と有機カチオンとからなる。イオン性化合物(A-2)は、室温(25℃)において固体であってよい。
【0045】
イオン性化合物(A-2)を構成する有機カチオンとしては、例えば、イミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、アンモニウムカチオン、スルホニウムカチオン、ホスホニウムカチオンなどが挙げられる。これらのなかでも、窒素原子を含む有機カチオンが好ましく、芳香環含有化合物を使用することでの粘着剤の屈折率変動を抑制するという観点から、脂肪族カチオンであることがより好ましく、ピロリジニウムカチオン、アンモニウムカチオンがさらに好ましい。
【0046】
有機カチオンの具体例としては、トリブチルメチルアンモニウムカチオン、トリオクチルメチルアンモニウムカチオン、トリメチルプロピルアンモニウムカチオン、テトラブチルアンモニウムカチオン、(2-ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウムカチオン等のアンモニウムカチオン;トリブチルドデシルホスホニウムカチオン等のホスホニウムカチオン;1-ヘキシルピリジニウムカチオン、1-オクチルピリジニウムカチオン、4-メチル-1-ヘキシルピリジニウムカチオン、4-メチル-1-オクチルピリジニウムカチオン、4-メチル-1-ブチルピリジニウムカチオン等のピリジニウムカチオン;ブチルメチルピロリジニウムカチオン、エチルメチルピロリジニウムカチオン等のピロリジニウムカチオン;1-エチル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムカチオン等のイミダゾリウムカチオンなどが挙げられる。
【0047】
イオン性化合物(A-2)を構成するアニオンは、上記式(A-2-1)で表されるアニオンである。これらのなかでも、同一の添加重量での帯電防止性能の発現しやすさという観点から、上記式(A-2-1)中のR4及びR5がいずれもトリフルオロメチル基であるアニオンが好ましい。
【0048】
上記式(A-2-1)で表されるアニオンの具体例としては、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン〔(CF3SO2)2N-〕、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドアニオン〔(C2F5SO2)2N-〕、ビス(へプタフルオロプロパンスルホニル)イミドアニオン、ビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミドアニオン、トリフルオロメタンスルホニル(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドアニオン、トリフルオロメタンスルホニル(へプタフルオロプロパンスルホニル)イミドアニオン、トリフルオロメタンスルホニル(ノナフルオロブタンスルホニル)イミドアニオン、1,1,2,2,3,3-ヘキサフルオロプロパン-1,3-ジスルホンイミドアニオン等が挙げられる。
【0049】
イオン性化合物(A-2)は、1種を単独で、又は2種以上組み合わせて用いることができる。粘着剤組成物は、上記イオン性化合物(A-2)以外のイオン性化合物を含んでいてもよい。
【0050】
イオン性化合物(A-2)は前述したとおり、(メタ)アクリル系樹脂(A-1)を含む粘着剤組成物から形成される粘着剤層に帯電防止性を付与するとともに、粘着剤としての諸物性を保つうえで有効である。特に、室温において固体であるイオン性化合物(A-2)を用いる場合、室温で液体であるイオン性化合物を用いる場合に比べ、帯電防止性能を長期間保持することができる。帯電防止性の長期安定性という観点からすると、イオン性化合物(A-2)は、23℃以上の融点を有することが好ましい。一方で、その融点があまり高すぎると、(メタ)アクリル系樹脂(A-1)との相溶性が悪くなるため、90℃以下、さらには80℃以下、特に50℃以下の融点を有することが好ましい。イオン性化合物(A-2)の分子量は特に限定されないが、例えば、分子量700以下、さらには500以下であることが好ましい。
【0051】
粘着剤組成物におけるイオン性化合物(A-2)の含有量は、上述した(メタ)アクリル系樹脂(A-1)の不揮発分100質量部に対して、0.1質量部以上10質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以上5質量部以下であることがより好ましく、0.1質量部以上2.5質量部以下であることがさらに好ましく、0.1質量部以上1.5質量部以下であることが特に好ましい。(メタ)アクリル系樹脂(A-1)の不揮発分100質量部に対して、イオン性化合物(A-2)を0.1質量部以上含有すると、帯電防止性能が向上することから好ましく、またその量が10質量部以下であると、耐久試験中に粘着剤層からのイオン性化合物のブリードアウトを抑制でき、耐久性を保つのが容易であることから好ましい。
【0052】
[架橋剤]
粘着剤組成物は、さらに架橋剤を含有してよい。架橋剤は、(メタ)アクリル系樹脂(A-1)中の例えば極性官能基を有する単量体に由来する構造単位と架橋し得る官能基を、分子内に少なくとも2個有する化合物であり、具体的には、イソシアネート系化合物、エポキシ系化合物、金属キレート系化合物、アジリジン系化合物などが例示される。
【0053】
イソシアネート系化合物は、分子内に少なくとも2個のイソシアナト基(-NCO)を有する化合物であり、例えば、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネートなどが挙げられる。また、これらのイソシアネート化合物に、グリセロールやトリメチロールプロパンなどのポリオールを反応せしめたアダクト体や、イソシアネート化合物を二量体、三量体等にしたものも、粘着剤に用いられる架橋剤となり得る。2種以上のイソシアネート系化合物を混合して用いることもできる。
【0054】
エポキシ系化合物は、分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物であり、例えば、ビスフェノールA型のエポキシ樹脂、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、N,N-ジグリシジルアニリン、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサンなどが挙げられる。2種以上のエポキシ系化合物を混合して用いることもできる。
【0055】
金属キレート化合物としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、バナジウム、クロム及びジルコニウムなどの多価金属に、アセチルアセトンやアセト酢酸エチルが配位した化合物などが挙げられる。
【0056】
アジリジン系化合物は、エチレンイミンとも呼ばれる1個の窒素原子と2個の炭素原子からなる3員環の骨格を分子内に少なくとも2個有する化合物であり、例えば、ジフェニルメタン-4,4’-ビス(1-アジリジンカルボキサミド)、トルエン-2,4-ビス(1-アジリジンカルボキサミド)、トリエチレンメラミン、イソフタロイルビス-1-(2-メチルアジリジン)、トリス-1-アジリジニルホスフィンオキサイド、ヘキサメチレン-1,6-ビス(1-アジリジンカルボキサミド)、トリメチロールプロパン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタン-トリ-β-アジリジニルプロピオネートなどが挙げられる。
【0057】
これらの架橋剤の中でも、イソシアネート系化合物、とりわけ、キシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート若しくはヘキサメチレンジイソシアネート、又はこれらのイソシアネート化合物を、グリセロールやトリメチロールプロパンなどのポリオールに反応せしめたアダクト体や、イソシアネート化合物を二量体、三量体等にしたもの、これらのイソシアネート系化合物の混合物などが、好ましく用いられる。極性官能基含有単量体が、遊離カルボキシル基、水酸基、アミノ基及びエポキシ環から選ばれる極性官能基を有する場合は特に、架橋剤の少なくとも一つとして、イソシアネート系化合物を用いることが好ましい。好適なイソシアネート系化合物として、トリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネートをポリオールに反応せしめたアダクト体、トリレンジイソシアネートの二量体、及びトリレンジイソシアネートの三量体、また、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートをポリオールに反応せしめたアダクト体、ヘキサメチレンジイソシアネートの二量体、及びヘキサメチレンジイソシアネートの三量体が挙げられる。
【0058】
架橋剤は、(メタ)アクリル系樹脂(A-1)の不揮発分100質量部に対し、0.01~10質量部の割合で配合され、好ましくは0.1~5質量部、さらに好ましくは0.1~3質量部、特に好ましくは0.1~1質量部の割合である。(メタ)アクリル系樹脂(A-1)の不揮発分100質量部に対する架橋剤の量が0.01質量部以上であると、粘着剤の流動性が高くなりすぎることを抑制できるため、耐久試験時の変形量が大きくなることを抑制でき、また10質量部以下であると、粘着剤が固くなりすぎることを抑制できるため、耐久試験時に粘着剤の破断等の不具合が発生することを抑制しやすくなる。
【0059】
[粘着剤組成物を構成するその他の成分]
本発明における粘着剤層を形成するための粘着剤組成物には、粘着剤層と金属層又はガラス基板との密着性を向上させるために、シラン系化合物を含有させることが好ましく、とりわけ、架橋剤を配合する前のアクリル系樹脂にシラン系化合物を含有させておくことが好ましい。
【0060】
シラン系化合物としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルジメトキシメチルシラン、3-グリシドキシプロピルエトキシジメチルシランなどが挙げられる。2種以上のシラン系化合物を使用してもよい。
【0061】
シラン系化合物は、シリコーンオリゴマータイプのものであってもよい。シリコーンオリゴマーをコポリマーの形式で示すと、例えば、次のようなものを挙げることができる。すなわち、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマー、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマー等の、メルカプトプロピル基含有のコポリマー;メルカプトメチルトリメトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、メルカプトメチルトリメトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマー、メルカプトメチルトリエトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、メルカプトメチルトリエトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマー等の、メルカプトメチル基含有のコポリマー;3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマー、3-メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、3-メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマー、3-メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、3-メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマー、3-メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、3-メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマー等の、メタクリロイルオキシプロピル基含有のコポリマー;3-アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、3-アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマー、3-アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、3-アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマー、3-アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、3-アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマー、3-アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、3-アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマー等の、アクリロイルオキシプロピル基含有のコポリマー;ビニルトリメトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、ビニルトリメトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマー、ビニルトリエトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、ビニルトリエトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマー、ビニルメチルジメトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、ビニルメチルジメトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマー、ビニルメチルジエトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、ビニルメチルジエトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマー等の、ビニル基含有のコポリマー;3-アミノプロピルトリメトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、3-アミノプロピルトリメトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマー、3-アミノプロピルトリエトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、3-アミノプロピルトリエトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマー、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマー、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマー等の、アミノ基含有のコポリマーなどが挙げられる。
【0062】
これらのシラン系化合物は、金属面の被覆性の観点から、分子量が1000以下であることが好ましく、500以下であることがさらに好ましく、250以下であることが特に好ましい。また、シラン系化合物と粘着剤組成物との結合の観点から、シラン系化合物はエポキシ基を含有することが好ましい。
【0063】
これらのシラン系化合物は、多くの場合、液体である。粘着剤組成物におけるシラン系化合物の配合量は、(メタ)アクリル系樹脂(A-1)の不揮発分100質量部(2種類以上用いる場合はその合計質量)に対して、通常0.01~10質量部程度であり、好ましくは0.03~5質量部の割合で使用され、さらに好ましくは0.1~1質量部の割合で使用される。(メタ)アクリル系樹脂(A-1)の不揮発分100質量部に対するシラン系化合物の量が0.01質量部以上であると、粘着剤層と金属層又はガラス基板との密着性が向上することから好ましい。また、その量が10質量部以下であると、粘着剤層からシラン系化合物がブリードアウトすることが抑制される傾向にあることから好ましい。
【0064】
以上説明した粘着剤組成物にはさらに、架橋触媒、耐候安定剤、タッキファイヤー、可塑剤、軟化剤、染料、顔料、無機フィラー、(メタ)アクリル系樹脂(A-1)以外の樹脂などを配合してもよい。また、粘着剤組成物に紫外線硬化性化合物を配合し、粘着剤層形成後に紫外線を照射して硬化させ、より硬い粘着剤層とするのも有用である。中でも、粘着剤組成物に架橋剤とともに架橋触媒を配合すれば、粘着剤層を短時間の熟成で調製することができ、得られる粘着剤付き樹脂フィルムにおいて、樹脂フィルムと粘着剤層との間に浮きや剥れが発生したり粘着剤層内で発泡が起こったりすることを抑制できる。架橋触媒としては、例えば、ヘキサメチレンジアミン、エチレンジアミン、ポリエチレンイミン、ヘキサメチレンテトラミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、イソホロンジアミン、トリメチレンジアミン、ポリアミノ樹脂、メラミン樹脂等のアミン系化合物などを挙げることができる。粘着剤組成物に架橋触媒としてアミン系化合物を配合する場合、架橋剤としてはイソシアネート系化合物が好適である。
【0065】
粘着剤組成物を構成するこれらの各成分は、溶剤に溶かした状態で適当な基材上に塗布し、乾燥させて、粘着剤層とされる。
【0066】
<粘着剤付き光学フィルム>
本発明の粘着剤付き光学フィルムは、光学フィルムの少なくとも一方の面に、以上のような粘着剤組成物から形成される粘着剤層を設けたものである。ここで用いる光学フィルムとは、光学特性を有するフィルムであり、例えば、偏光板(直線偏光板や円偏光板)などが挙げられる。偏光板は、位相差膜を含んでもよい。すなわち、粘着剤付き光学フィルムは、粘着剤付き偏光板であってよい。
【0067】
(光学フィルム)
光学フィルムとしては、直線偏光層;直線偏光層の片面又は両面に保護層が設けられた直線偏光板;直線偏光層又は直線偏光板と1以上の位相子とを含む円偏光板;直線偏光板及び円偏光板等の偏光板の片面に表面保護フィルムが設けられた表面保護フィルム付き偏光板;位相子;位相子の片面又は両面に保護層が設けられた位相差板;反射フィルム;半透過型反射フィルム;輝度向上フィルム;防眩機能付きフィルム等が挙げられ、これらのうち1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。光学フィルムは、少なくとも直線偏光層を含むことが好ましく、直線偏光板又は円偏光板を含むことがより好ましい。円偏光板に含まれる位相子は少なくとも1つの位相差膜を含み、少なくとも1つは通常λ/4位相差膜である。
【0068】
(直線偏光層)
直線偏光層は、無偏光の光を入射させたとき、吸収軸に直交する振動面をもつ直線偏光を透過させる性質を有する。直線偏光層は、ヨウ素が吸着配向しているポリビニルアルコール系樹脂フィルム(以下、「PVA系フィルム」ということがある。)であってもよく、吸収異方性及び液晶性を有する化合物を含む組成物を基材フィルムに塗布して形成した液晶性の偏光層を含むフィルムであってもよい。吸収異方性及び液晶性を有する化合物は、吸収異方性を有する色素と液晶性を有する化合物との混合物であってもよく、吸収異方性及び液晶性を有する色素であってもよい。
【0069】
PVA系フィルムである直線偏光層は、例えば、ポリビニルアルコールフィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコールフィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等のPVA系フィルムに、ヨウ素による染色処理、及び延伸処理が施されたもの等が挙げられる。必要に応じて、染色処理によりヨウ素が吸着配向したPVA系フィルムをホウ酸水溶液で処理し、その後に、ホウ酸水溶液を洗い落とす洗浄工程を行ってもよい。各工程には公知の方法を採用できる。
【0070】
ポリビニルアルコール系樹脂(以下、「PVA系樹脂」ということがある。)は、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化することにより製造できる。ポリ酢酸ビニル系樹脂は、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルのほか、酢酸ビニルと酢酸ビニルに共重合可能な他の単量体との共重合体であることもできる。酢酸ビニルに共重合可能な他の単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類、アンモニウム基を有するアクリルアミド類等が挙げられる。
【0071】
PVA系樹脂のケン化度は、通常85~100モル%程度であり、好ましくは98モル%以上である。PVA系樹脂は変性されていてもよく、例えば、アルデヒド類で変性されたポリビニルホルマールやポリビニルアセタール等も使用可能である。PVA系樹脂の平均重合度は、通常1,000~10,000程度であり、好ましくは1,500~5,000程度である。PVA系樹脂のケン化度及び平均重合度は、JIS K 6726(1994)に準拠して求めることができる。平均重合度が1000未満では好ましい偏光性能を得ることが困難であり、10000超ではフィルム加工性に劣ることがある。
【0072】
PVA系フィルムである直線偏光層の製造方法は、基材フィルムを用意し、基材フィルム上にPVA系樹脂等の樹脂の溶液を塗布し、溶媒を除去する乾燥等を行って基材フィルム上に樹脂層を形成する工程を含むものであってもよい。なお、基材フィルムの樹脂層が形成される面には、予めプライマー層を形成することができる。基材フィルムとしては、後述する保護層としての保護フィルムを形成するために用いる熱可塑性樹脂として説明する樹脂材料を用いたフィルムを使用できる。プライマー層の材料としては、直線偏光層に用いられる親水性樹脂を架橋した樹脂等を挙げることができる。
【0073】
次いで、必要に応じて樹脂層の水分等の溶媒量を調整し、その後、基材フィルム及び樹脂層を一軸延伸し、続いて、樹脂層をヨウ素で染色してヨウ素を樹脂層に吸着配向させる。次に、必要に応じてヨウ素が吸着配向した樹脂層をホウ酸水溶液で処理し、その後に、ホウ酸水溶液を洗い落とす洗浄工程を行う。これにより、ヨウ素が吸着配向された樹脂層、すなわち、直線偏光層となるPVA系フィルムが製造される。各工程には公知の方法を採用できる。
【0074】
ヨウ素が吸着配向したPVA系フィルム又は樹脂層を処理するホウ酸含有水溶液におけるホウ酸の量は、通常、水100質量部あたり、2~15質量部程度であり、5~12質量部が好ましい。このホウ酸含有水溶液はヨウ化カリウムを含有することが好ましい。ホウ酸含有水溶液におけるヨウ化カリウムの量は、通常、水100質量部あたり、0.1~15質量部程度であり、5~12質量部程度が好ましい。ホウ酸含有水溶液への浸漬時間は、通常、60~1,200秒程度であり、150~600秒程度が好ましく、200~400秒程度がより好ましい。ホウ酸含有水溶液の温度は、通常、50℃以上であり、50~85℃が好ましく、60~80℃がより好ましい。
【0075】
PVA系フィルム、並びに、基材フィルム及び樹脂層の一軸延伸は、染色の前に行ってもよいし、染色中に行ってもよいし、染色後のホウ酸処理中に行ってもよく、これら複数の段階においてそれぞれ一軸延伸を行ってもよい。PVA系フィルム、並びに、基材フィルム及び樹脂層は、MD方向(フィルム搬送方向)に一軸延伸してもよく、この場合、周速の異なるロール間で一軸に延伸してもよいし、熱ロールを用いて一軸に延伸してもよい。また、PVA系フィルム、並びに、基材フィルム及び樹脂層は、TD方向(フィルム搬送方向に垂直な方向)に一軸延伸してもよく、この場合、いわゆるテンター法を使用することができる。また、上記延伸は、大気中で延伸を行う乾式延伸であってもよいし、溶剤にてPVA系フィルム又は樹脂層を膨潤させた状態で延伸を行う湿式延伸であってもよい。直線偏光層の性能を発現するためには延伸倍率は4倍以上であり、5倍以上であることが好ましく、特に5.5倍以上が好ましい。延伸倍率の上限は特にないが、破断等を抑制する観点から8倍以下が好ましい。
【0076】
基材フィルムを用いる製造方法で作製した直線偏光層は、保護層を積層した後に基材フィルムを剥離することで得ることができる。この方法によれば、直線偏光層のさらなる薄膜化が可能となる。
【0077】
PVA系フィルムである直線偏光層の厚さは、1μm以上であることが好ましく、2μm以上であってもよく、5μm以上であってもよく、また、30μm以下であることが好ましく、15μm以下であることがより好ましく、10μm以下であってもよく、8μm以下であってもよい。直線偏光層の厚さが1μm未満であると工程内での破断等の不具合が発生する可能性があり、30μmを超えると光学フィルムが厚膜化してしまうため不適切である。
【0078】
液晶性の直線偏光層を含むフィルムは、液晶性及び吸収異方性を有する色素を含む組成物、又は、吸収異方性を有する色素と重合性液晶とを含む組成物を基材フィルムに塗布して得られる直線偏光層が挙げられる。液晶性の直線偏光層は、重合性液晶化合物の硬化物であることができ、配向膜を含んでいてもよい。配向膜としては、後述する位相差膜に含まれる配向膜が挙げられる。液晶性の直線偏光層を含むフィルムは、液晶性の直線偏光層であってもよく、液晶性の直線偏光層と基材フィルムとの積層構造を有していてもよい。基材フィルムとしては、例えば後述する保護層としての保護フィルムを形成するために用いる熱可塑性樹脂として説明する樹脂材料を用いたフィルムが挙げられる。液晶性の直線偏光層を含むフィルムとしては、例えば特開2013-33249号公報等に記載の偏光層が挙げられる。
【0079】
上記のようにして形成した基材フィルムと直線偏光層との合計厚さは小さい方が好ましいが、小さすぎると強度が低下し、加工性に劣る傾向があるため、通常20μm以下であり、好ましくは5μm以下であり、より好ましくは0.5~3μmである。
【0080】
(保護層)
保護層としては、例えば、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性、延伸性等に優れる熱可塑性樹脂から形成されたフィルムである保護フィルム;耐溶剤性、透明性、機械的強度、熱安定性、遮蔽性、及び等方性等に優れる組成物から形成されたオーバーコート層等が挙げられる。保護フィルムは、貼合層を介して直線偏光層に積層されることが好ましく、オーバーコート層は、直線偏光層に直接接するように積層されることが好ましい。
【0081】
保護フィルムを形成するための熱可塑性樹脂の具体例としては、トリアセチルセルロース等のセルロース樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂;ポリエーテルスルホン樹脂;ポリスルホン樹脂;ポリカーボネート樹脂;ナイロンや芳香族ポリアミド等のポリアミド樹脂;ポリイミド樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体等のポリオレフィン樹脂;シクロ系及びノルボルネン構造を有する環状ポリオレフィン樹脂(ノルボルネン系樹脂ともいう);(メタ)アクリル樹脂;ポリアリレート樹脂;ポリスチレン樹脂;ポリビニルアルコール樹脂、並びにこれらの混合物を挙げることができる。保護フィルムの厚さは、3μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましく、また、50μm以下であることが好ましく、30μm以下であることがより好ましい。
【0082】
オーバーコート層は、溶剤性、透明性、機械的強度、熱安定性、遮蔽性、及び等方性等に優れる組成物から形成することができる。オーバーコート層は、例えば、直線偏光層上に上記組成物を塗布することによって形成することができる。オーバーコート層を構成する材料としては、例えば、光硬化性樹脂や水溶性ポリマー等が挙げられ、(メタ)アクリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアミドエポキシ樹脂等を用いることができる。オーバーコート層の厚さは、例えば0.1μm以上10μm以下であることができる。
【0083】
保護層は、反射防止特性、防眩特性、ハードコート特性等を有するものであってもよい(以下、当該特性を有する保護フィルムを「機能性保護層」ということがある。)。保護層が機能性保護層ではない場合、直線偏光板の片面には、反射防止層、防眩層、ハードコート層等の表面機能層が設けられていてもよい。表面機能層は、保護層に直接接するように設けられることが好ましい。表面機能層は、保護層の直線偏光層側とは反対側に設けられることが好ましい。
【0084】
上記では、保護層を直線偏光層に設ける場合について説明したが、上記の保護層は、位相差膜に設けてもよい。
【0085】
(位相子)
位相子は、面内又は厚み方向に位相差を示す光学素子であり、少なくとも1つの位相差膜を含む。位相差膜は1つであってもよく、2つ以上を公知の接着剤又は粘着剤によって貼り合わせられていてよい。中でも位相差膜を2つ組み合わせて使用することが、円偏光板として使用したときに適切に位相差を調整可能であるため好ましい。
【0086】
(位相差膜)
位相差膜は、面内又は厚み方向に位相差を示す膜であって、延伸フィルムであってもよく、重合性液晶化合物の硬化物層を含むものであってもよい。
【0087】
位相差膜が延伸フィルムである場合、延伸フィルムは従来公知のものを用いることができ、樹脂フィルムを一軸延伸又は二軸延伸することによって位相差を付与したものを用いることができる。樹脂フィルムとしては、トリアセチルセルロース及びジアセチルセルロース等のセルロースフィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート及びポリブチレンテレフタレート等のポリエステルフィルム、ポリメチル(メタ)アクリレート及びポリエチル(メタ)アクリレート等のアクリル樹脂フィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリイミドフィルム、ポリオレフィンフィルム、ポリノルボルネンフィルム等を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0088】
位相差膜が上記硬化物層を含むものである場合、重合性液晶化合物としては、公知の重合性液晶化合物を用いることができる。重合性液晶化合物は、少なくとも1つの重合性基を有し、かつ、液晶性を有する化合物である。
【0089】
重合性液晶化合物が有する重合性基とは、重合反応に関与する基を意味し、光重合性基であることが好ましい。光重合性基とは、光重合開始剤から発生した活性ラジカルや酸等によって重合反応に関与し得る基のことをいう。重合性基としては、ビニル基、ビニルオキシ基、1-クロロビニル基、イソプロペニル基、4-ビニルフェニル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、オキシラニル基、オキセタニル基、スチリル基、アリル基等が挙げられる。中でも、(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニルオキシ基、オキシラニル基及びオキセタニル基が好ましく、アクリロイルオキシ基がより好ましい。重合性液晶化合物が有する液晶性はサーモトロピック性液晶でもリオトロピック液晶でもよく、サーモトロピック液晶を秩序度で分類すると、ネマチック液晶でもスメクチック液晶でもよい。重合性液晶化合物の硬化物層を形成するために重合性液晶化合物を2種類以上併用する場合、少なくとも1種類が分子内に2以上の重合性基を有することが好ましい。
【0090】
位相差膜が上記硬化物層を含むものである場合、位相差膜は配向膜を含んでいてもよい。配向膜は、重合性液晶化合物を所望の方向に配向させる配向規制力を有する。配向膜は、重合性液晶化合物の分子軸を積層体の平面方向に対して垂直配向した垂直配向膜であってもよく、重合性液晶化合物の分子軸を積層体の平面方向に対して水平配向した水平配向膜であってもよく、重合性液晶化合物の分子軸を積層体の平面方向に対して傾斜配向させる傾斜配向膜であってもよい。
【0091】
上記硬化物層は、重合性液晶化合物と溶剤、必要に応じて各種添加剤を含む位相差膜形成用の組成物を、配向膜上に塗布して塗膜を形成し、この塗膜を固化(硬化)させることによって、重合性液晶化合物の硬化物層を形成することができる。あるいは、基材フィルム上に上記組成物を塗布して塗膜を形成し、この塗膜を基材フィルムとともに延伸することによって硬化物層を形成してもよい。上記組成物は、上記した重合性液晶化合物及び溶剤の他に、重合開始剤、反応性添加剤、レベリング剤、重合禁止剤等を含んでいてもよい。重合性液晶化合物、溶剤、重合開始剤、反応性添加剤、レベリング剤、重合禁止剤等は、公知のものを適宜用いることができる。基材フィルムとしては、上記保護層としての保護フィルムを形成するために用いる熱可塑性樹脂として説明した樹脂材料を用いたフィルムを使用できる。
【0092】
(表面保護フィルム)
表面保護フィルムは、偏光板に対して剥離可能に設けられる。表面保護フィルムは、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。表面保護フィルムは、基材層と第2粘着剤層とを含んでいてもよく、自己粘着性の基材層であってもよい。
【0093】
表面保護フィルムを構成する基材層としては、上記保護層としての保護フィルムを形成するために用いる熱可塑性樹脂として説明した樹脂材料を用いたフィルムを使用できる。第2粘着剤層を形成するための粘着剤組成物としては、公知の粘着剤組成物を用いて形成することができる。公知の粘着剤組成物としては、上記した粘着剤組成物で説明したものが挙げられる。
【0094】
基材層と第2粘着剤層とを含む表面保護フィルムは、粘着剤組成物それ自体又は粘着剤組成物の有機溶剤希釈液を基材層上に塗布し、乾燥することによって形成することができる。粘着剤組成物又はその有機溶剤希釈液を塗布する方法としては、例えばバーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等が挙げられる。
【0095】
表面保護フィルムが自己粘着性を有する場合、自己粘着性の基材層を構成する熱可塑性樹脂としては、例えばポリプロピレン系樹脂及びポリエチレン系樹脂等が挙げられる。
【0096】
上記では、偏光板に対して表面保護フィルムを用いる場合について説明したが、偏光板以外の光学フィルムとして例示した部材に上記の表面保護フィルムを積層してもよい。
【0097】
(貼合層)
光学フィルムが多層構造を有する場合、層間は貼合層によって貼合されていてもよい。貼合層は、粘着剤層又は接着剤層である。貼合層が粘着剤層である場合、公知の粘着剤組成物を用いて形成することができる。公知の粘着剤組成物としては、上記した粘着剤組成物で説明したものが挙げられる。
【0098】
貼合層が接着剤層である場合、接着剤層は、接着剤組成物中の硬化性成分を硬化させることによって形成することができる。接着剤層を形成するための接着剤組成物としては、感圧型接着剤(粘着剤)以外の接着剤であって、例えば、水系接着剤、活性エネルギー線硬化型接着剤が挙げられる。
【0099】
水系接着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール樹脂を水に溶解、又は分散させた接着剤が挙げられる。水系接着剤を用いた場合の乾燥方法については特に限定されるものではないが、例えば、熱風乾燥機や赤外線乾燥機を用いて乾燥する方法が採用できる。
【0100】
活性エネルギー線硬化型接着剤としては、例えば、紫外線、可視光、電子線、X線のような活性エネルギー線の照射によって硬化する硬化性化合物を含む無溶剤型の活性エネルギー線硬化型接着剤が挙げられる。無溶剤型の活性エネルギー線硬化型接着剤を用いることにより、層間の密着性を向上させることができる。
【0101】
(粘着剤付き光学フィルム)
粘着剤付き光学フィルムは、その粘着剤層の表面に剥離フィルムを貼着し、使用時まで粘着剤層表面を保護しておくのが好ましい。このように剥離フィルムが設けられた粘着剤付き光学フィルムは、例えば、剥離フィルムの上に、上記の粘着剤組成物を塗布して粘着剤層を形成し、得られた粘着剤層にさらに光学フィルムを積層する方法、光学フィルムの上に粘着剤組成物を塗布して粘着剤層を形成し、その粘着剤面に剥離フィルムを貼り合わせて保護する方法、剥離フィルム上に、上記の粘着剤組成物を塗布して粘着剤層を形成し、得られた粘着剤層にさらに別の剥離フィルムを貼合した後、片方の剥離フィルムを剥離し、露出した粘着剤面に光学フィルムを積層し、粘着剤付き光学フィルムとする方法などにより、製造できる。特に、剥離フィルム上に、上記の粘着剤組成物を塗布して粘着剤層を形成し、得られた粘着剤層にさらに別の剥離フィルムを貼合した後、片方の剥離フィルムを剥離し、露出した粘着剤面に光学フィルムを積層し、剥離フィルムが設けられた粘着剤付き光学フィルムとする方法が、粘着剤の養生期間中の物性安定化の観点で好ましい。特にここで用いる剥離フィルムは、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート等の各種樹脂からなるフィルムを基材とし、この基材の粘着剤層との接合面に、シリコーン処理等の離型処理が施されたものなどであることができる。
【0102】
粘着剤層の厚さは特に限定されないが、通常は2μm以上50μm以下であるのが好ましく、5μm以上30μm以下であることがより好ましく、5μm以上25μm以下であることがさらに好ましく、10μm以上20μm以下であることが特に好ましい。粘着剤層の厚さが2μm以上であると、接着性が低下することを抑制できるため、耐久性に不具合が発生する可能性を低減でき、50μm以下であると、粘着剤や粘着剤付き光学フィルムを裁断する際に、粘着剤の端面がカット刃に付着して取れてしまうといった不具合が発生することを抑制できる。
【0103】
本発明の粘着剤付き光学フィルムは、粘着剤層の粘着力、帯電防止性及び金属腐食防止性が良好であるため、画像表示装置等に好適に用いることができる。
【0104】
<光学積層体>
図1は、本発明に係る光学積層体の一例を示す概略断面図である。
図1に示されるように本発明に係る光学積層体100は、光学フィルム10と、粘着剤層20と、金属層30とをこの順に含み、基板40をさらに含んでいてもよい。この光学積層体100は、基板40上に形成される金属層30の上に、光学フィルム10と、その少なくとも一方の面上に積層される粘着剤層20とを含む粘着剤付き光学フィルム1をその粘着剤層20を介して貼合したものであることができる。粘着剤付き光学フィルム1としては、先に説明したものを使用することができる。光学フィルム10は、単層構造の光学フィルムであってもよいし多層構造の光学フィルムであってもよい。
【0105】
粘着剤層20は通常、光学フィルム10の表面に直接積層される。また通常、粘着剤付き光学フィルム1は、その粘着剤層20が金属層30に直接接するように金属層30上に積層される。また、後述のように金属層30上に樹脂層50を有する場合は、樹脂層50に粘着剤層20が直接接するように積層される。本発明によれば、粘着剤層20が上述した本発明の粘着剤組成物を用いて形成されているため、光学積層体100において、金属層30の腐食を効果的に抑制することができる。また、粘着剤層20は、光学フィルム10、金属層30及び基板40との粘着力が良好であり、且つ、帯電防止性が良好である。本明細書では、金属層30の腐食を抑制することができる性質を、金属腐食防止性ともいう。
【0106】
金属層30は、例えば、アルミニウム、チタン、銅、銀、金、鉄、スズ、亜鉛、ニッケル、モリブデン、クロム、タングステン、鉛及びこれらから選択される2種以上の金属を含む合金からなる群より選択される1種以上を含む層であることができ、導電性の観点から、好ましくはアルミニウム、チタン、銅、銀及び金からなる群より選択される金属元素を含む層であり、導電性及びコストの観点から、より好ましくはアルミニウム元素を含む層であり、さらに好ましくはアルミニウム元素を主成分として含む層である。主成分として含むとは、金属層30を構成する金属成分が全金属成分の30質量%以上、さらには50質量%以上であることをいう。
【0107】
金属層30は、例えばITO等の金属酸化物層であってもよいが、本発明に係る粘着剤付き光学フィルム1は、とりわけ金属単体や合金に対する耐腐食性が良好であることから、金属層30は、上記の金属元素からなる金属単体及び/又は上記の金属元素の2種以上を含有する合金を含むことが好ましい。ただし、光学積層体100は、このような金属層30とともに、ITO等の金属酸化物からなる透明電極層を有していてもよい。
【0108】
金属層30の形態(例えば厚さ等)や調製方法は特に限定されず、金属箔であることができるほか、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、インクジェット印刷法、グラビア印刷法により形成されたものでもよいが、好ましくはスパッタリング法、インクジェット印刷法、グラビア印刷法により形成された金属層であり、より好ましくはスパッタリングにより形成された金属層である。スパッタリングで形成された金属層と金属箔とでは、前者の方が耐腐食性が悪い傾向にあるが、光学積層体100によれば、スパッタリングで形成された金属層に対しても良好な金属腐食防止性を有する。金属層30の厚さは、通常3μm以下であり、好ましくは1μm以下であり、より好ましくは0.8μm以下である。また金属層30の厚さは、通常0.01μm以上である。さらに、金属層30が金属配線層の場合、その金属配線層が有する金属配線の線幅は通常10μm以下であり、好ましくは5μm以下であり、さらに好ましくは3μm以下である。また金属配線の線幅は、通常0.01μm以上であり、好ましくは0.1μm以上であり、さらに好ましくは0.5μm以上である。かかる薄膜の金属層30や細線の金属配線からなる金属層30に対しても、光学積層体100は良好な金属腐食防止性を示す。特に、金属配線が、例えば厚さ3μm以下であり線幅10μm以下である場合や、厚さ3μm以下であり線幅10μm以下であり、スパッタリング法により形成された場合であっても、その腐食、特に孔食を抑えることができる。
【0109】
金属層30は、例えば、タッチ入力式画像表示装置が有するタッチ入力素子の金属配線層(すなわち電極層)や有機ELパネルの表示素子であることができる。この場合、金属層30は、所定の形状にパターニングされているのが通常である。パターニングされた金属層30上に粘着剤層20を積層する場合、粘着剤層20は金属層30に接触していない部分を有していてもよい。金属層30は、上記金属又は合金を含む連続膜であってもよい。
【0110】
また、金属層30は単層構造であってもよいし、2層又は3層以上の多層構造であってもよい。多層構造の金属層としては、例えばモリブデン/アルミニウム/モリブデンで示される3層構造の金属含有層(メタルメッシュ等)が挙げられる。
【0111】
図1に示されるように、例えば金属配線層である金属層30は通常、基板40上に形成され、この場合、光学積層体100はこの基板40を含む。基板40上への金属層30の形成は、例えばスパッタリングにより行うことができる。基板40は、タッチ入力素子に含まれる画像表示装置を構成する透明基板や有機ELパネルの表示素子であることができる。金属層30は、基板40の全面に形成されていてもよいし、その一部に形成されていてもよい。
【0112】
図2は、本発明に係る光学積層体の層構成の他の一例を示す概略断面図である。他の実施形態において本発明に係る光学積層体は、
図2に示される光学積層体200のように、粘着剤付き光学フィルム1の粘着剤層20が樹脂層50を介して金属層30に積層されている。粘着剤層20は、樹脂層50に直接接している。かかる光学積層体200においても、金属層30の腐食を効果的に抑制することができる。粘着剤層20と金属層30との間に配置される樹脂層50は、例えば、硬化性樹脂の硬化物層であってもよい。樹脂層50を形成し得る硬化性樹脂としては公知のものを用いることができる。
【0113】
上述のように金属層30は、金属配線層であってもよい。金属層30が金属配線層である場合の一例を
図3に示す。
図3に示される光学積層体300において樹脂層50は省略されてもよい。
【0114】
光学積層体は、例えば、基板40上に形成される金属層30の上に、光学フィルム10と、その少なくとも一方の面上に積層される粘着剤層20とを含む粘着剤付き光学フィルム1をその粘着剤層20を介して貼合することによって作製できる。
【0115】
上述のように粘着剤付き光学フィルム1は、光学フィルム10とその少なくとも一方の面に積層される粘着剤層20とを含む(
図1)。光学フィルム10の両面に粘着剤層20が積層されていてもよい。通常、粘着剤層20は光学フィルム10の表面に直接積層される。粘着剤層20を光学フィルム10の表面に設ける際には、光学フィルム10の貼合面及び/又は粘着剤層20の貼合面にプライマー層の形成や、表面活性化処理、例えばプラズマ処理、コロナ処理等を施すことが好ましく、コロナ処理を施すことがより好ましい。
【0116】
光学フィルム10と粘着剤層20の間には別途帯電防止層を設けてもよいが、本発明の粘着剤層20は粘着剤層単独で優れた帯電防止性を付与することができるため、光学積層体の薄膜化や積層体作製工程の簡略化の点で、光学フィルム10と粘着剤層20の間に帯電防止層を有さないことが好ましい。
【0117】
粘着剤付き光学フィルム1は、粘着剤層20の外面に積層されるセパレートフィルム(剥離フィルム)を含んでいてもよい。このセパレートフィルムは通常、粘着剤層20の使用時(例えば金属層30上への積層時)に剥離除去される。セパレートフィルムは、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート等の各種樹脂からなるフィルムの粘着剤層20が形成される面に、シリコーン処理等の離型処理が施されたものであることができる。
【0118】
粘着剤付き光学フィルム1は、上記粘着剤組成物を構成する各成分を溶剤に溶解又は分散して溶剤含有の粘着剤組成物とし、次いで、これを光学フィルム10の表面に塗布・乾燥して粘着剤層20を形成することによって得ることができる。また粘着剤付き光学フィルム1は、セパレートフィルムの離型処理面に上と同様にして粘着剤層20を形成し、この粘着剤層20を光学フィルム10の表面に積層(転写)することによっても得ることができる。
【0119】
金属層30(又は上記樹脂層)上に粘着剤付き光学フィルム1をその粘着剤層20を介して貼合することにより光学積層体を得ることができる。粘着剤付き光学フィルム1と金属層30とを貼着して光学積層体を作製した後、何らかの不具合があった場合には、粘着剤付き光学フィルム1を金属層30から剥離し、別の粘着剤付き光学フィルム1を金属層30に貼り直す、いわゆるリワーク作業が必要となることがある。本発明に係る光学積層体は、粘着剤付き光学フィルム1を金属層30から剥離した後の金属層30の表面に曇りや糊残りなどが発生しにくく、リワーク性に優れている。本発明に係る光学積層体によれば、粘着剤層20を貼合する表面が金属層30ではなくガラス基板やITO層であるときにも良好なリワーク性を示すことができる。
【0120】
<画像表示装置>
本発明に係る画像表示装置は、上記本発明に係る光学積層体を含むものである。本発明に係る画像表示装置は、金属層30の腐食を抑制することができ、また、良好な耐久性を示す。
【実施例0121】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。例中、配合量ないし含有量を表す「部」及び「%」は、特に断りのない限り質量基準である。
【0122】
以下の例において、固形分(不揮発分)は、アクリル樹脂溶液を任意の質量でシャーレにとり、防爆オーブンにて120℃で4時間乾燥させた後の残留不揮発分質量を、最初に測りとった溶液の質量に対する割合で表したものである。また、重量平均分子量Mwの測定は、GPC装置に、カラムとして、東ソー(株)製の「TSKgel GMHHR-H(S)」を2本直列につないで配置し、溶出液としてテトラヒドロフランを用い、試料濃度2mg/mL、試料導入量100μL、温度40℃、流速1mL/分の条件で、標準ポリスチレン換算により行った。
【0123】
[アクリル樹脂溶液(1)~(5)の調製]
(アクリル樹脂溶液(1))
冷却管、窒素導入管、温度計及び撹拌機を備えた反応容器に、アクリル酸n-ブチル42.5質量部、アクリル酸2-エチルヘキシル5質量部、アクリル酸メチル20質量部、アクリル酸2-メトキシエチル30質量部、アクリル酸2-ヒドロキシエチル1.0質量部、及びアクリル酸1.5質量部を酢酸エチルで希釈したモノマー混合物を仕込み、窒素ガスで装置内の空気を置換して酸素不含としながら内温を55℃に上げた。その後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを酢酸エチルに溶かした溶液を、モノマー総量100質量部に対してアゾビスイソブチロニトリルが0.3質量部となるように添加した。重合開始剤の添加後、55℃で1時間保持し、次に内温を54~56℃に保ちながら、添加速度17.3部/hrで酢酸エチルを反応容器内へ連続的に加え、アクリル樹脂の濃度が35%となった時点で酢酸エチルの添加を止め、さらに酢酸エチルの添加開始から12時間経過するまで55℃で保温した。その後、酢酸エチルを加えてアクリル樹脂の濃度が20%となるように調節し、アクリル樹脂溶液(1)を調製した。得られたアクリル樹脂の重量平均分子量Mwを表1に示す。
【0124】
(アクリル樹脂溶液(2)~(5))
表1に示すモノマー組成としたこと以外はアクリル樹脂溶液(1)の調製と同様にして、アクリル樹脂溶液(2)~(5)を得た。得られたアクリル樹脂の重量平均分子量Mwを表1に示す。
【0125】
[粘着剤組成物(1)~(15)の調製]
(粘着剤組成物(1))
上記で得たアクリル樹脂溶液(1)の固形分100質量部に対して、架橋剤として三井化学(株)製の商品名「D-103」(トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体の酢酸エチル溶液(固形分濃度75質量%)を有効成分ベースで0.5質量部、シラン化合物として信越化学工業(株)製の商品名「KBM-403」(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)を有効成分ベースで0.5質量部、及び、イオン性化合物としてトリブチルメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを有効成分ベースで0.54質量部添加し、さらに固形分濃度が14%となるように酢酸エチルを添加して粘着剤組成物(1)を得た。
【0126】
(粘着剤組成物(2)~(15))
表2に記載したアクリル樹脂溶液及びイオン性化合物を用い、且つ、イオン性化合物の有効成分ベースの配合量を表2に示す配合量(アクリル樹脂溶液の固形分100質量部に対する量)としたこと以外は粘着剤組成物(1)の調製と同様にして、粘着剤組成物(2)~(15)を得た。
【0127】
[粘着シート(1)~(15)の作製]
(粘着シート(1))
上記で得た粘着剤組成物(1)を、剥離フィルム(1)(三菱ケミカル(株)製、商品名「MRV38(V04)」、厚さ:38μm)の剥離処理面上にアプリケーターを用いて乾燥後の厚さが15μmとなるように塗布した後、温度100℃で1分間乾燥して、厚さ15μmの粘着剤層(1)を得た。得られた粘着剤層(1)の剥離フィルム(1)とは反対側に、剥離フィルム(2)(三菱ケミカル(株)製、商品名「MRF38」、厚さ:38μm)を、その剥離処理面が粘着剤層(1)側となるように積層した。得られた積層体を温度23℃、相対湿度60%環境下に7日間以上静置し、粘着シート(1)を得た。
【0128】
(粘着シート(2)~(15))
粘着剤組成物(2)~(15)を用いたこと以外は粘着シート(1)の作製と同様にして、粘着シート(2)~(15)を得た。
【0129】
【表1】
BA:アクリル酸n-ブチル
2EHA:アクリル酸2-エチルヘキシル
MA:アクリル酸メチル
MEA:アクリル酸2-メトキシエチル
HEA:アクリル酸2-ヒドロキシエチル
AA:アクリル酸
【0130】
【0131】
[偏光子(1)の作製]
厚さ30μmのポリビニルアルコール系樹脂フィルム(平均重合度約2400、ケン化度99.9モル%以上)を乾式延伸により約5倍に縦一軸延伸し、さらに緊張状態を保ったまま、温度60℃の純水に1分間浸漬した後、ヨウ素/ヨウ化カリウム/水の質量比が0.05/5/100である温度28℃の水溶液に60秒間浸漬した。その後、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水の質量比が8.5/8.5/100である温度72℃の水溶液に300秒間浸漬した。引き続き温度26℃の純水で20秒間洗浄した後、温度65℃で乾燥処理を行って、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムにヨウ素が吸着配向している、厚さ12μmの直線偏光層である偏光子(1)を得た。
【0132】
[第1保護フィルムの準備]
第1保護フィルム(1)としてトリアセチルセルロース(TAC)フィルム(厚さ:25μm)を準備した。また、第1保護フィルム(2)としてトリアセチルセルロース(TAC)フィルム(厚さ:25μm)の片面に厚さ7μmのハードコート層を形成したもの(合計厚さ:32μm)を準備した。
【0133】
[第2保護フィルムの作製]
第2保護フィルム(1)としてシクロオレフィン系樹脂(COP)フィルム(厚さ:13μm)を準備した。また、第2保護フィルム(2)としてトリアセチルセルロース(TAC)フィルム(厚さ:20μm)を準備した。また、第2保護フィルム(3)としてトリアセチルセルロース(TAC)フィルム(厚さ:25μm)を準備した。
【0134】
[偏光板(1)の作製]
第1保護フィルム(1)及び第2保護フィルム(1)の表面の一方面に、それぞれコロナ処理を施した。偏光子(1)の一方の面に、水系接着剤を塗布し、第1保護フィルム(1)を貼り合わせた。偏光子(1)のもう一方の面に、水系接着剤を塗布し、第2保護フィルム(1)を貼り合わせた。その後、乾燥させて偏光板(1)を得た。上記水系接着剤は、水100部に対して、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール〔株式会社クラレから入手した商品名「KL-318」〕を3部溶解させ、水溶性エポキシ樹脂であるポリアミドエポキシ系添加剤〔田岡化学工業株式会社製の商品名「スミレーズレジン 650(30)」、固形分濃度30%の水溶液〕を1.5部添加したものである。以上により、第1保護フィルム(1)/接着剤層/偏光子(1)/接着剤層/第2保護フィルム(1)からなる直線偏光板である偏光板(1)を得た。
【0135】
[偏光板(2)の作製]
第1保護フィルム(1)及び第2保護フィルム(2)の表面の一方面に、それぞれコロナ処理を施した。偏光子(1)の一方の面に、水系接着剤を塗布し、第1保護フィルム(1)を貼り合わせた。偏光子(1)のもう一方の面に、水系接着剤を塗布し、第2保護フィルム(2)を貼り合わせた。その後、乾燥させて偏光板(2)を得た。以上により、第1保護フィルム(1)/接着剤層/偏光子(1)/接着剤層/第2保護フィルム(2)からなる直線偏光板である偏光板(2)を得た。
【0136】
[偏光板(3)の作製]
第1保護フィルム(2)及び第2保護フィルム(3)の表面の一方面に、それぞれコロナ処理を施した。偏光子(1)の一方の面に、水系接着剤を塗布し、第1保護フィルム(2)を貼り合わせた。偏光子(1)のもう一方の面に、水系接着剤を塗布し、第2保護フィルム(3)を貼り合わせた。その後、乾燥させて偏光板(3)を得た。以上により、第1保護フィルム(2)/接着剤層/偏光子(1)/接着剤層/第2保護フィルム(3)からなる直線偏光板である偏光板(3)を得た。
【0137】
[位相子(1)の作製]
(1)積層体Aの作製
(1-1)光配向膜形成用組成物Aの調製
下記構造の光配向性材料(重量平均分子量:50000、m:n=50:50)は特開2021-196514号公報に記載の方法に準じて製造した。光配向性材料2部とシクロペンタノン(溶剤)98部とを成分として混合し、得られた混合物を80℃で1時間攪拌することにより、光配向膜形成用組成物Aを調製した。
光配向性材料:
【化7】
【0138】
(1-2)重合性液晶化合物の製造
下記に示す構造を有する重合性液晶化合物(A1)及び重合性液晶化合物(A2)を、それぞれ調製した。重合性液晶化合物(A1)は、特開2019-003177号公報に記載の方法と同様に準備した。重合性液晶化合物(A2)は、特開2009-173893号公報に記載の方法と同様に準備した。
重合性液晶化合物(A1):
【化8】
重合性液晶化合物(A2):
【化9】
【0139】
クロロホルム10mLに重合性液晶化合物(A1)1mgを溶解させて溶液を得た。得られた溶液を光路長1cmの測定用セルに測定用試料を入れ、測定用試料を紫外可視分光光度計(株式会社島津製作所製「UV-2450」)にセットして吸収スペクトルを測定した。得られた吸収スペクトルから極大吸収度となる波長を読み取ったところ、波長300~400nmの範囲における極大吸収波長λmaxは356nmであった。
【0140】
(1-3)位相差膜形成用組成物Aの調製
重合性液晶化合物(A1)及び重合性液晶化合物(A2)を質量比90:10で混合し、混合物を得た。得られた混合物100部に対して、レベリング剤「BYK-361N」(BM Chemie社製)0.1部と、光重合開始剤として「イルガキュアOXE-03」(BASFジャパン株式会社製)3部を添加した。さらに、固形分濃度が13%となるようにN-メチル-2-ピロリドン(NMP)を添加した。この混合物を温度80℃で1時間撹拌することにより、位相差膜形成用組成物Aを調製した。
【0141】
(1-4)位相差膜Aの作製
基材Aとして二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(ダイアホイル;三菱樹脂(株)製)に、光配向膜形成用組成物Aをバーコーターにより塗布した。得られた塗布膜を120℃で2分間乾燥させた後、室温まで冷却して乾燥被膜を形成した。その後、UV照射装置(SPOT CURE SP-9;ウシオ電機株式会社製)を用いて、偏光紫外光100mJ(313nm基準)を照射し光配向膜Aを得た。日本分光株式会社製のエリプソメータ M-220を用いて測定した光配向膜Aの膜厚は100nmであった。
【0142】
得られた光配向膜A上に、上記位相差膜形成用組成物Aをバーコーターにより塗布し、塗布膜を形成した。この塗布膜を120℃で2分間加熱乾燥後、室温まで冷却して乾燥被膜を得た。次いで、高圧水銀ランプ(ウシオ電機株式会社製「ユニキュアVB-15201BY-A」)を用いて、窒素雰囲気下にて露光量500mJ/cm2(365nm基準)の紫外光を上記乾燥被膜に照射することにより、重合性液晶化合物が基材面内に対して水平方向に配向した状態で硬化した位相差膜Aを形成し、基材A/光配向膜A/位相差膜Aからなる積層体Aを得た。オリンパス株式会社製のレーザー顕微鏡LEXT OLS4100を用いて測定した位相差膜Aの膜厚は2.0μmであった。
【0143】
積層体Aの位相差膜Aの表面にコロナ処理を実施し、厚さ25μmの粘着剤層を介してガラスに貼合し、基材Aを剥離、除去した。波長450nm、550nm及び650nmの光に対する光配向膜A/位相差膜Aの積層体の面内位相差値を、波長448.2nm、498.6nm、548.4nm、587.3nm、628.7nm、748.6nmの光に対する面内位相差値の測定結果から得られたコーシーの分散公式より求めた。
その結果、面内位相差値は、Re(450)=122nm、Re(550)=140nm、Re(650)=144nmであり、各波長での面内位相差値の関係は以下の通りとなった。
Re(450)/Re(550)=0.87
Re(650)/Re(550)=1.03
(式中、Re(450)は波長450nmの光に対する面内位相差値を、Re(550)は波長550nmの光に対する面内位相差値を、Re(650)は波長650nmの光に対する面内位相差値を表す。)
【0144】
(2)積層体Bの作製
(2-1)配向膜形成用組成物Bの調製
市販の配向性ポリマーであるサンエバーSE-610(日産化学工業株式会社製)に2-ブトキシエタノールを固形分量が1%になるよう加えて、配向膜形成用組成物Bを得た。
【0145】
(2-2)位相差膜形成用組成物Bの調製
下記に示す構造を有する重合性液晶化合物Paliocolor LC242(BASFジャパン社製)100部と、レベリング剤「BYK-361N」(BYK-Chemie社製)0.1部と、光重合開始剤「Omnirad907」(IGM Resin B.V.社製)2.5部を混合した。さらに、プロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセテート(PGME)400部を添加し、得られた混合物を温度80℃で1時間撹拌することにより、位相差膜形成用組成物Bを調製した。
重合性液晶化合物LC242:
【化10】
【0146】
(2-3)位相差膜Bの作製
基材Bとして、シクロオレフィン系樹脂(COP)フィルム(日本ゼオン株式会社製、ZF14)を用いて、その片面にコロナ処理装置(AGF-B10;春日電機株式会社製)を用いてコロナ処理を施し、その表面に配向膜形成用組成物Bを、バーコーターを用いて塗布し、90℃で1分間乾燥した。得られた配向膜Bの膜厚をレーザー顕微鏡で測定したところ、30nmであった。
【0147】
得られた配向膜B上に位相差膜形成用組成物Bを、バーコーターを用いて塗布し、90℃で1分間乾燥して乾燥被膜を得た。高圧水銀ランプ(ウシオ電機株式会社製「ユニキュアVB-15201BY-A」)を用いて、窒素雰囲気下にて露光量1000mJ/cm2(365nm基準)の紫外光を上記乾燥被膜に照射することにより位相差膜Bを形成し、基材B/配向膜B/位相差膜Bからなる積層体Bを得た。オリンパス株式会社製のレーザー顕微鏡LEXT OLS4100を用いて測定した位相差膜Bの膜厚は450nmであった。
【0148】
積層体Bの位相差値を測定したところ、Re(550)=1nm、Rth(550)=-75nmであった。積層体Bは、nx≒ny<nzで表される光学特性を有した。なお、COPの波長550nmにおける位相差値は略0であるため、当該光学特性には影響しない。
【0149】
(3)位相子(1)の作製
(3-1)活性エネルギー線硬化型接着剤(1)の調製
下記成分を配合して混合した後、脱泡して、活性エネルギー線硬化型接着剤(1)(以下、単に「接着剤(1)」という。)を調製した。
(カチオン重合性化合物)
・3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(商品名:CEL2021P、株式会社ダイセル製):70部
・ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(商品名:EX-211、ナガセケムテックス株式会社製):20部
・2-エチルヘキシルグリシジルエーテル(商品名:EX-121、ナガセケムテックス株式会社製):10部
(光カチオン重合開始剤)
・商品名:CPI-100(サンアプロ株式会社製、50%プロピレンカーボネート溶液):4.5部(実質固形分2.25部)
(光増感助剤)
・1,4-ジエトキシナフタレン:2部
【0150】
(3-2)位相子(1)の作製
積層体Aの位相差膜A及び積層体Bの位相差膜Bに、それぞれコロナ処理を施した。位相差膜A又は位相差膜Bのいずれか一方のコロナ処理面に接着剤を塗布して、積層体Aと積層体Bとを貼り合わせた。接着剤には、上記接着剤(1)を用いた。コロナ処理装置には、春日電機株式会社製のAGF-B10を用いた。コロナ処理は、上記コロナ処理装置を用いて、出力0.3kW、処理速度3m/分の条件で1回行った。積層体A側から紫外線を照射して接着剤(1)を硬化させて、厚さ1.5μmの接着剤層(1)を形成した。紫外線は、波長320nm~390nmのUVAが420mJ/cm2となるように照射した。以上により、基材A/光配向膜A/位相差膜A/接着剤層(1)/位相差膜B/配向膜B/基材Bからなる基材付きの位相子(1)を作製した。
【0151】
[層間粘着剤層(1)の作製]
以下の手順で層間粘着剤層(1)を作製した。層間粘着剤層(1)は、後述する実施例では主として直線偏光板-位相子間粘接着剤層として用いる。
【0152】
(1)層間粘着剤用アクリル系樹脂溶液(1)の調製
冷却管、窒素導入管、温度計、及び撹拌機を備えた反応容器に、酢酸エチル100部、アクリル酸ブチル99.0部、アクリル酸2-ヒドロキシエチル0.5部、及びアクリル酸0.5部の混合溶液を仕込み、窒素ガスで装置内の空気を置換して酸素不含としながら内温を55℃に上げた。その後、アゾビスイソブチロニトリル(重合開始剤)0.12部を酢酸エチル10部に溶かした溶液を全量添加した。重合開始剤を添加した後、1時間この温度で保持し、次いで内温を54~56℃に保ちながら酢酸エチルを添加速度17.3部/hrで反応容器内へ連続的に加え、アクリル系樹脂の濃度が35質量%となった時点で酢酸エチルの添加を止め、さらに酢酸エチルの添加開始から6時間経過するまでこの温度で保温した。最後に酢酸エチルを加えてアクリル系樹脂の濃度が20質量%となるように調節し、層間粘着剤用アクリル系樹脂溶液(1)を調製した。得られたアクリル系樹脂は、重量平均分子量Mwが170万であった。なお、Mwは、GPC装置にカラムとして、東ソー(株)製の「TSKgel GMHHR-H(S)」を2本直列につないで配置し、溶出液としてテトラヒドロフランを用い、試料濃度2mg/mL、試料導入量100μL、温度40℃、流速1mL/分の条件で、標準ポリスチレン換算により測定した。
【0153】
(2)層間粘着剤組成物(1)の調製
上記(1)にて得られた層間粘着剤用アクリル系樹脂溶液(1)の固形分80部に対して、二官能アクリレート(新中村化学工業株式会社より入手;品番「A-DOG」)を20部(固形分)、架橋剤(三井化学製:商品名「D-101E」(トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体の酢酸エチル溶液(固形分濃度75質量%))を有効成分ベースで2.5部、光重合開始剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製:商品名「イルガキュア500」)を1.5部、シランカップリング剤(信越化学工業株式会社製:商品名「KBM-403」)を0.3部添加し、さらに固形分濃度が13%となるように酢酸エチルを添加して層間粘着剤組成物(1)を得た。
【0154】
A-DOGは、ヒドロキシピバルアルデヒドとトリメチロールプロパンとのアセタール化合物のジアクリレートであって、下式の構造を有する。
【化11】
【0155】
(3)層間粘着剤層(1)の作製
上記(2)で調製した層間粘着剤組成物(1)を、離型処理が施されたポリエチレンテレフタレートフィルムからなる剥離フィルム〔三菱ケミカル製:MRV(V04)(厚さ:38μm)〕の離型処理面に、アプリケーターを用いて乾燥後の厚さが5μmとなるように塗布し、100℃で1分間乾燥して層間粘着剤層(粘着剤シート)を作製した。次いで得られた粘着剤層の上記剥離フィルム側とは反対側の表面を、離型処理が施されたポリエチレンテレフタレートフィルムからなる剥離フィルム〔三菱ケミカル製:MRF(厚さ:38μm)〕の離型処理面と貼合した。続けて紫外線を下記の条件で照射し、層間粘着剤層(1)を作製した。層間粘着剤層(1)の温度85℃での貯蔵弾性率G’は0.125MPaであった。
<UV照射条件>
Fusion UVランプシステム(フュージョンUVシステムズ社製)Hバルブ使用・UV波長領域UVAの積算光量250mJ/cm2(測定器:FusionUV社製UV Power PuckIIによる測定値)
【0156】
[円偏光板(1)の作製]
上記偏光板(1)の第2保護フィルム(1)の表面及び位相子(1)の基材Aを剥離除去することにより露出した表面に、それぞれコロナ処理を施した。コロナ処理装置には、春日電機株式会社製のAGF-B10を用いた。コロナ処理は、上記コロナ処理装置を用いて、出力0.3kW、処理速度3m/分の条件で1回行った。偏光板(1)のコロナ処理面と位相子(1)のコロナ処理面とを、上記層間粘着剤層(1)を介して貼り合わせた。その後、位相子(1)の基材Bを剥離除去して、第1保護フィルム(1)/接着剤層/偏光子(1)/接着剤層/第2保護フィルム(1)/層間粘着剤層(1)/光配向膜A/位相差膜A/接着剤層(1)/位相差膜B/配向膜Bをこの順に含む円偏光板(1)を得た。
【0157】
[円偏光板(2)の作製]
上記偏光板(2)の第2保護フィルム(2)の表面及び位相子(1)の基材Aを剥離除去することにより露出した表面に、それぞれコロナ処理を施した。コロナ処理装置には、春日電機株式会社製のAGF-B10を用いた。コロナ処理は、上記コロナ処理装置を用いて、出力0.3kW、処理速度3m/分の条件で1回行った。偏光板(2)のコロナ処理面と位相子(1)のコロナ処理面とを、上記層間粘着剤層(1)を介して貼り合わせた。その後、位相子(1)の基材Bを剥離除去して、第1保護フィルム(1)/接着剤層/偏光子(1)/接着剤層/第2保護フィルム(2)/層間粘着剤層(1)/光配向膜A/位相差膜A/接着剤層(1)/位相差膜B/配向膜Bをこの順に含む円偏光板(2)を得た。
【0158】
[円偏光板(3)の作製]
上記偏光板(3)の第2保護フィルム(3)の表面及び位相子(1)の基材Aを剥離除去することにより露出した表面に、それぞれコロナ処理を施した。コロナ処理装置には、春日電機株式会社製のAGF-B10を用いた。コロナ処理は、上記コロナ処理装置を用いて、出力0.3kW、処理速度3m/分の条件で1回行った。偏光板(3)のコロナ処理面と位相子(1)のコロナ処理面とを、上記層間粘着剤層(1)を介して貼り合わせた。その後、位相子(1)の基材Bを剥離除去して、第1保護フィルム(2)/接着剤層/偏光子(1)/接着剤層/第2保護フィルム(3)/層間粘着剤層(1)/光配向膜A/位相差膜A/接着剤層(1)/位相差膜B/配向膜Bをこの順に含む円偏光板(3)を得た。
【0159】
【0160】
[粘着剤付き偏光板の作製]
(実施例1)
上記粘着シート(1)から剥離フィルム(2)を剥離し、露出した粘着剤面にコロナ処理を行った後、このコロナ処理面に上記円偏光板(1)の位相差膜B表面を貼り合わせることで、実施例1の粘着剤付き円偏光板を得た。
【0161】
(実施例2~15及び比較例1~9)
表4に示す円偏光板と粘着シートとを用いたこと以外は、実施例1の粘着剤付き円偏光板の作製と同様にして、実施例2~15及び比較例1~9の粘着剤付き偏光板を得た。
【0162】
[金属腐食防止性評価]
無アルカリガラス表面にスパッタリングによって厚さ約500nmのチタンとアルミニウムの合金層を形成した金属層付きガラス基板(ジオマテック社製)を準備した。上記で得られた粘着剤付き円偏光板を30mm×30mmの大きさに裁断し、剥離フィルム(1)を剥離し、露出した粘着剤面を金属層に貼合し、温度50℃、圧力0.49MPaにてオートクレーブ処理を行い、金属腐食評価用の試験片を作製した。この金属腐食評価用の試験片を温度85℃、相対湿度98%の環境下で100時間保管した後、試験片の金属層の状態を、金属層付きガラス基板のガラス側から光を当てて偏光板側表面から観察した。この時の試験片が貼合されている金属層の面積をA
1とし、試験片が貼合されている金属層の内、腐食により光が透過している部分の面積をA
2とした際に、下記式で示される腐食部の割合A
C[%]を算出した。この値が1.8以下であると適切に金属腐食を抑制していると考えられ、より好ましくは1.5以下、さらに好ましくは1.15以下であるとさらに金属腐食を抑制していると言える。結果を表4に示す。
【数1】
【0163】
[粘着力評価]
上記で得られた粘着シートから剥離フィルム(2)を剥離し、露出した粘着剤面とPETフィルム(厚さ:50μm)とを貼合し、粘着剤付きPETフィルムを得た。得られた粘着剤付きPETフィルムを25mm×120mmの大きさに裁断し、剥離フィルム(1)を剥離し、露出した粘着剤面と無アルカリガラスを貼合した後、温度50℃、圧力0.49MPaにてオートクレーブ処理を行い、粘着力評価用の試験片を得た。この粘着力評価用の試験片を温度23℃、相対湿度60%にて24時間保管した後、オートグラフ((株)島津製作所製、商品名「AGS-X(50N)」)を用いて、剥離角度180°、剥離速度0.3m/分にてPETフィルム及び粘着剤層を無アルカリガラスから剥離した際の試験力を剥離している区間で平均をとり、粘着力とした。粘着力は1N/25mm以上であると衝撃試験時の剥がれといった不具合を適切に抑制でき、より好ましくは3N/25mm以上、さらに好ましくは5N/25mm以上であることでさらに不具合を抑制可能である。結果を表4に示す。
【0164】
[表面抵抗値評価]
上記で得られた粘着シートから剥離フィルム(2)を剥離し、露出した粘着剤面とPETフィルム(厚さ:50μm)とを貼合し、粘着剤付きPETフィルムを得た。得られた粘着剤付きPETフィルムを40mm×40mmの大きさに裁断し、剥離フィルム(1)を剥離し、露出した粘着剤面に表面抵抗値測定装置(三菱化学(株)製、商品名「ハイレスタ-up MCP-HT450」)のプローブを接触させて表面抵抗値を測定した。測定条件は、印加電圧100V、印加時間30秒とした。なお、記載の測定条件においては表面抵抗値が1.0×1012Ω/□以上の場合測定不可となり、OVERと表記される。表面抵抗値は1.0×1013Ω/□以下であると剥離フィルムの剥離時の帯電による不具合の発生を抑制可能であり、より好ましくは1.0×1012Ω/□以下、さらに好ましくは5.0×1011Ω/□であることで帯電による不具合を抑制可能である。結果を表4に示す。
【0165】