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特開2024-177221水系樹脂分散体、前記水系樹脂分散体を原料とする組成物、前記組成物の乾燥物を含む積層体
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  • 特開-水系樹脂分散体、前記水系樹脂分散体を原料とする組成物、前記組成物の乾燥物を含む積層体 図1
  • 特開-水系樹脂分散体、前記水系樹脂分散体を原料とする組成物、前記組成物の乾燥物を含む積層体 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177221
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】水系樹脂分散体、前記水系樹脂分散体を原料とする組成物、前記組成物の乾燥物を含む積層体
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/00 20060101AFI20241212BHJP
   C08L 33/04 20060101ALI20241212BHJP
   C09J 123/00 20060101ALI20241212BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20241212BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
C08L23/00
C08L33/04
C09J123/00
B32B27/32 E
B65D65/40 D
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024168816
(22)【出願日】2024-09-27
(62)【分割の表示】P 2023502212の分割
【原出願日】2022-01-28
(31)【優先権主張番号】P 2021029842
(32)【優先日】2021-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100142309
【弁理士】
【氏名又は名称】君塚 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】原田 明
(72)【発明者】
【氏名】川合 絵理
(57)【要約】
【課題】ポリオレフィン基材に対する低温ヒートシール性に優れ、低温且つ短時間の加熱により容易にポリオレフィン基材と密着させることができる密着性に優れた水系樹脂分散体を使用する接着剤及び前記接着剤の乾燥物を含む積層体を提供すること。
【解決手段】オレフィン系単量体由来の構成単位を有する重合体Aと、ラジカル重合性単量体由来の構成単位を有する重合体Bとを同一粒子内に含む水系樹脂分散体Cであって、前記水系樹脂分散体Cを80℃で30分間乾燥した塗膜の弾性率が0MPaよりも大きく35MPa以下である、水系樹脂分散体C。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィン系単量体由来の構成単位を有する重合体Aと、ラジカル重合性単量体由来の構成単位を有する重合体Bとを同一粒子内に含む水系樹脂分散体Cであって、前記水系樹脂分散体Cを80℃で30分間乾燥した塗膜の弾性率が0MPaよりも大きく35MPa以下である、水系樹脂分散体C。
【請求項2】
前記水系樹脂分散体Cを80℃で30分間乾燥した塗膜の破断伸度が100%以上3000%以下である、請求項1に記載の水系樹脂分散体C。
【請求項3】
前記水系樹脂分散体Cを80℃で30分間乾燥した塗膜の破断伸度が800%以上3000%以下である、請求項1又は請求項2に記載の水系樹脂分散体C。
【請求項4】
前記重合体Bの全構成単位に対する芳香族系単量体由来の構成単位の質量割合が1.0質量%以上30.0質量%以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の水系樹脂分散体C。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の水系樹脂分散体Cを含む組成物D。
【請求項6】
前記組成物Dがポリオレフィン基材用のヒートシール接着剤である、請求項5に記載の組成物D。
【請求項7】
前記重合体Aと前記重合体Bの合計質量に対する前記重合体Aの質量割合が30質量%以上である、請求項5又は請求項6に記載の組成物D。
【請求項8】
前記オレフィン系単量体がプロピレンを含む、請求項5~7のいずれか一項に記載の組成物D。
【請求項9】
前記重合体Bのガラス転移温度が-80℃以上20℃以下である、請求項5~8のいずれか一項に記載の組成物D。
【請求項10】
前記重合体Bのガラス転移温度が-80℃以上-3℃未満である、請求項5~9のいずれか一項に記載の組成物D。
【請求項11】
請求項5~10のいずれか一項に記載の組成物Dの乾燥物を含む積層体。
【請求項12】
ポリプロピレン基材層1と、前記組成物Dの乾燥物からなる層2と、金属箔、無機蒸着膜層及び熱可塑性樹脂層からなる群から選択される少なくとも1種の層3と、がこの順序で積層している、請求項11に記載の積層体。
【請求項13】
請求項6に記載の組成物Dを含む、食品包装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水系樹脂分散体、前記水系樹脂分散体を原料とする組成物、前記組成物の乾燥物を含む積層体に関する。
本願は、2021年2月26日に、日本に出願された特願2021-029842号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
プロピレン系重合体やプロピレン-α-オレフィン共重合体等のポリオレフィンは安価であり、しかも、機械的物性、耐熱性、耐薬品性、耐水系等に優れていることから、広い分野で使用されている。しかしながら、前記ポリオレフィンは、分子中に極性基を持たないため一般に低極性であり、塗装や接着が困難であり、塗装性と接着性の改善が望まれていた。塗装性と接着性を改善するため、ポリオレフィンの成形体の表面を薬剤等で化学的に処理すること、コロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理等の手法で成形体表面を酸化処理すること等の種々の手法が試みられている。しかしながら、前記手法は、いずれも特殊な装置が必要であるばかりでなく、塗装性や接着性の改良効果が必ずしも十分ではなかった。
【0003】
そこで、比較的簡便な方法でポリオレフィン、例えばプロピレン系重合体に良好な塗装性や接着性を付与するための方として、塩素化ポリプロピレン、酸変性プロピレン-α-オレフィン共重合体、酸変性塩素化ポリプロピレン等の変性ポリオレフィンが提案されてきた。前記変性ポリオレフィンは、一般的にはポリオレフィンの成形体表面に表面処理剤、接着剤或いは塗料等として塗布することができるという特徴を有する。前記変性ポリオレフィンは通常、有機溶媒の溶液、又は水への分散体等の形態で塗布することで使用されている。安全衛生及び環境汚染の面から通常、水分散体が好ましく用いられている。
【0004】
特許文献1には酸変性ポリオレフィンに親水系高分子を結合させた重合体を水系媒体に分散した樹脂分散体がポリオレフィン用の塗料、プライマー、接着剤として使用でき、塗装物としての積層体が記載されている。特許文献1に記載の方法は、乾燥塗膜の弾性率等の塗膜物性の制御まで言及されておらず、低温ヒートシール性に課題が残る。
【0005】
一方、特許文献2にはオレフィン系重合体とアクリル系重合体の樹脂分散体を熱シール剤として使用することが記載されている。特許文献2に記載の方法は、前記熱シール剤をポリプロピレン基材に使用してもよいことの記載は有るが、具体的な例として非極性なポリプロピレン基材への密着性の効果まで言及されておらず、ポリプロピレン基材への密着性については不明であって課題が残る。また、特許文献3にはオレフィン系重合体とアクリル系重合体の樹脂分散体を使用することでポリプロピレン基材への密着性が良好となることについての記載はあるが、低温下でヒートシールを行った場合に乾燥塗膜の弾性率等の塗膜物性の具体的な効果が記載されておらず、低温ヒートシール性に課題が残る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007-270122号公報
【特許文献2】特開2001-179909号公報
【特許文献3】特開2018-104620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的はポリオレフィン基材に対する低温ヒートシール性に優れ、低温且つ短時間の加熱により容易にポリオレフィン基材と密着させることができる密着性に優れた水系樹脂分散体を使用する接着剤及び前記接着剤の乾燥物を含む積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は以下の[1]~[39]を要旨とする。
[1]オレフィン系単量体由来の構成単位を有する重合体Aと、ラジカル重合性単量体由来の構成単位を有する重合体Bとを同一粒子内に含む水系樹脂分散体Cであって、前記水系樹脂分散体Cを80℃で30分間乾燥した塗膜の弾性率が0MPaよりも大きく35MPa以下である、水系樹脂分散体C。
[2]前記水系樹脂分散体Cを80℃で30分間乾燥した塗膜の破断伸度が100%以上3000%以下である、[1]に記載の水系樹脂分散体C。
[3]前記水系樹脂分散体Cを80℃で30分間乾燥した塗膜の破断伸度が800%以上3000%以下である、[1]又は[2]に記載の水系樹脂分散体C。
[4]前記重合体Bの全構成単位に対する芳香族系単量体由来の構成単位の質量割合が1.0質量%以上30.0質量%以下である、[1]~[3]のいずれか一項に記載の水系樹脂分散体C。
[5]前記重合体Aが、反応性基を有さないオレフィン系単量体由来の構成単位を有する重合体A1、及び反応性基及びオレフィン系単量体由来の構成単位を有する変性重合体A2からなる群から選択される少なくとも1種を含む、[1]~[4]のいずれか一項に記載の水系樹脂分散体C。
[6]前記重合体Aが前記重合体A1を含み、前記重合体A1が、エチレン又はプロピレンの単独重合体、エチレン及びプロピレンの共重合体、エチレン及びプロピレンからなる群から選択される少なくとも1種と、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、及びノルボルネンからなる群(以下、「α-オレフィン単量体」ともいう。)から選択される少なくとも1種との共重合体、前記α-オレフィン単量体から選択される少なくとも1種と、酢酸ビニル、アクリル酸エステル、及びメタクリル酸エステルからなる群から選択される少なくとも1種との共重合体、前記α-オレフィン単量体から選択される少なくとも1種と、芳香族ビニル単量体との共重合体及びその水素添加体、共役ジエンブロック共重合体及びその水素添加物からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく;ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-ブテン共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、プロピレン-ブテン共重合体、プロピレン-ヘキセン共重合体、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、塩素化エチレン-プロピレン共重合体、塩素化プロピレン-ブテン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体の水素添加物(SEBS)、及びスチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体の水素添加物(SEPS)からなる群から選択される少なくとも1種を含むことがより好ましく;プロピレン単独重合体、プロピレンと他のα-オレフィンとの共重合体、及びこれらの塩素化された重合体からなる群から選択される少なくとも1種を含むことがさらに好ましく;プロピレン単独重合体、エチレン-プロピレン共重合体、プロピレン-ブテン共重合体、塩素化ポリプロピレン、塩素化エチレン-プロピレン共重合体、又は塩素化プロピレン-ブテン共重合体がより好ましく、塩素を含有しないプロピレン単独重合体、エチレン-プロピレン共重合体、プロピレン-ブテン共重合体、及びエチレン-プロピレン-ブテン共重合体からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが特に好ましい、[5]に記載の水系樹脂分散体C。
[7]前記重合体Aの重量平均分子量(Mw)が、5,000以上500,000以下が好ましく、10,000以上500,000以下がより好ましく、50,000以上300,000以下がさらに好ましく、100,000以上300,000以下が特に好ましい、[1]~[6]のいずれか一項に記載の水系樹脂分散体C。
[8]前記重合体Aの分子量分布(Mw/Mn)が、0.5~5.0が好ましく、1.0~4.0がより好ましく、1.5~3.0がさらに好ましい、[1]~[7]のいずれか一項に記載の水系樹脂分散体C。
[9]前記重合体Bのガラス転移温度が、-80℃以上20℃以下が好ましく、-80℃以上10℃以下がより好ましく、-70℃以上5℃以下がさらに好ましく、-60℃以上-3℃未満が特に好ましい、[1]~[8]のいずれか一項に記載の水系樹脂分散体C。
[10]前記ラジカル重合性単量体が、ビニル系単量体を含むことが好ましく;(メタ)アクリル系単量体、芳香族系単量体、アミド系単量体、(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、及びバーサチック酸ビニルからなる群から選択される少なくとも1種を含むことがより好ましく;(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、スチレン、及びα-メチルスチレンからなる群から選択される少なくとも1種を含むことがさらに好ましく;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸-n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸-n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸-t-ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸-2-アミノエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸-2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸-3-メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸とポリエチレンオキサイドの付加物、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2-トリフルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸-2-パ-フルオロエチルエチル、スチレン、及びα-メチルスチレンからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが特に好ましく;(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸-t-ブチル、(メタ)アククリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸グリシジル、及びスチレンからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが最も好ましい、[1]~[9]のいずれか一項に記載の水系樹脂分散体C。
[11]前記ラジカル重合性単量体が、ビニル系単量体を含み、前記ビニル系単量体が水酸基及びエポキシ基からなる群から選択される少なくとも1種を有し、前記ビニル系単量体由来の構成単位の質量割合は、前記重合体Bを構成する構成単位の総質量に対して1.0質量%以上30質量%以下が好ましく、1.5質量%以上20質量%以下がより好ましく、2.0質量%以上15質量%以下がさらに好ましく、5.0質量%以上10.0質量%以下が特に好ましい、[1]~[10]のいずれか一項に記載の水系樹脂分散体C。
[12]前記ラジカル重合性単量体が、芳香族系単量体を含み、前記芳香族系単量体由来の構成単位の質量割合は、前記重合体Bを構成する構成単位の総質量に対して5.0質量%以上80質量%以下が好ましく、8.0質量%以上70質量%以下がより好ましく、10.0質量%以上65質量%以下がさらに好ましく、12.0質量%以上60質量%以下が特に好ましい、[1]~[11]のいずれか一項に記載の水系樹脂分散体C。
[13]前記重合体Aと前記重合体Bの合計質量に対する前記重合体Aの質量割合は、30質量%以上90質量%以下が好ましく、50質量%以上80質量%以下がより好ましく、60質量%以上75質量%がさらに好ましく、65質量%以上70質量%以下が特に好ましい、[1]~[12]のいずれか一項に記載の水系樹脂分散体C。
[14]前記重合体Aと前記重合体Bの合計質量に対する前記重合体Bの質量割合は、10質量%以上70質量%以下が好ましく、30質量%以上60質量%以下がより好ましく、35質量%以上55質量%以下がさらに好ましい、[1]~[13]のいずれか一項に記載の水系樹脂分散体C。
[15][前記重合体Aの質量]:[前記重合体Bの質量]で表される質量割合は、30:70~90:10が好ましく、40:60~80:20がより好ましく、50:50~70:30がさらに好ましい、[1]~[14]のいずれか一項に記載の水系樹脂分散体C。
[16]前記粒子が、実質的に前記重合体Aと、前記重合体Bとからなる、[1]~[15]のいずれか一項に記載の水系樹脂分散体C。
[17]前記水系樹脂分散体Cを80℃で30分間乾燥して形成した塗膜の弾性率が0MPa超35MPa以下であり、5MPa以上35MPa以下が好ましく、10MPa以上25MPa以下がより好ましい、[1]~[16]のいずれか一項に記載の水系樹脂分散体C。
[18]前記水系樹脂分散体Cを80℃で30分間乾燥して形成した塗膜の破断伸度が100%以上3000%以下が好ましく、800%以上3000%以下がより好ましく、1000%以上2500%以下がさら好ましく、1500%以上2000%以下が特に好ましい、[1]~[17]のいずれか一項に記載の水系樹脂分散体C。
[19]前記粒子の平均粒子径が、0μm超0.5μm以下が好ましく、0.05μm以上0.3μm以下がより好ましく、0.1μm以上0.2μm以下がさらに好ましい、[1]~[18]のいずれか一項に記載の水系樹脂分散体C。
[20]前記水系樹脂分散体Cが、前記重合体Aの分散体中で前記ラジカル重合性単量体を重合させて前記重合体Bを形成させて得られる、[1]~[19]のいずれか一項に記載の水系樹脂分散体C。
[21]前記水系樹脂分散体Cを含む組成物Dから前記組成物Dの乾燥物を含む積層体を形成し、前記積層体から幅15mmの試験片を採取し、引張り試験機を用い、90度剥離により試験片の端部から界面を剥離した際の前記組成物Dの剥離強度(測定条件:23℃、65%RHの雰囲気中、引張速度50mm/分)が、1.00N/15mm以上10.00N/15mm以下であることが好ましく、2.00N/15mm以上8.00N/15mm以下であることがより好ましく、3.00N/15mm以上7.00N/15mm以下であることがさらに好ましく、4.00N/15mm以上6.00N/15mm以下であることが特に好ましい、[1]~[20]のいずれか一項に記載の水系樹脂分散体C。
【0009】
[22][1]~[21]のいずれか一項に記載の水系樹脂分散体Cを含む組成物D。
[23]前記組成物Dがポリオレフィン基材用のヒートシール接着剤である、[22]に記載の組成物D。
[24]前記重合体Aと前記重合体Bとの合計質量に対する前記重合体Aの質量割合が30質量%以上である、[22]又は[23]に記載の組成物D。
[25]前記オレフィン系単量体がプロピレンを含む、[22]~[24]のいずれか一項に記載の組成物D。
[26]前記重合体Bのガラス転移温度が-80℃以上20℃以下である、[22]~[25]のいずれか一項に記載の組成物D。
[27]前記重合体Bのガラス転移温度が-80℃以上-3℃未満である、[22]~[26]のいずれか一項に記載の組成物D。
[28]前記組成物Dの総質量に対する前記水系樹脂分散体Cの質量割合が、80質量%以上100質量%以下が好ましく、90質量%以上100質量%以下がより好ましい、[22]~[27]のいずれか一項に記載の組成物D。
【0010】
[29][22]~[28]のいずれか一項に記載の組成物Dの乾燥物を含む積層体。
[30]前記乾燥物が、前記組成物Dの乾燥物からなる層である、[29]に記載の積層体。
[31]ポリプロピレン基材層1と、前記組成物Dの乾燥物からなる層2と、金属箔、無機蒸着膜層及び熱可塑性樹脂層からなる群から選択される少なくとも1種の層3と、がこの順序で積層している、[29]又は[30]に記載の積層体。
[32]前記組成物Dの乾燥物からなる層の厚みが、10μm以上60μm以下が好ましく、20μm以上50μm以下がより好ましい、[30]又は[31]に記載の積層体。
[33]前記層1の厚みが、10μm以上60μm以下が好ましく、20μm以上50μm以下がより好ましい、[31]又は[32]に記載の積層体。
[34]前記層3の厚みが、10μm以上60μm以下が好ましく、20μm以上50μm以下がより好ましい、[31]~[33]のいずれか一項に記載の積層体。
[35]前記層3が、熱可塑性樹脂層であり、前記熱可塑性樹脂層がポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレ-ト等のポリエステル系樹脂、各種のナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアリールフタレ-ト系樹脂、シリコ-ン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエ-テルスルホン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アセタ-ル系樹脂、セルロ-ス系樹脂、及びポリビニルアルコール樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を含むフィルム又はシ-トであることが好ましく;ポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、及びポリアミド系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を含むフィルム又はシ-トであることがより好ましい、[31]~[34]のいずれか一項に記載の積層体。
[36]前記層3が、金属箔又は無機蒸着膜層であり、前記金属箔又は前記無機蒸着膜層としては、アルミニウム箔等の軟質金属箔、アルミニウム蒸着層、シリカ蒸着層、アルミナ蒸着層、及びシリカアルミナ2元蒸着の無機蒸着層からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく;アルミニウム箔、及びアルミニウム蒸着膜からなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましい、[31]~[34]のいずれか一項に記載の積層体。
[37][23]に記載の組成物Dを含む、食品包装材。
[38]前記重合体Aの分散体中でラジカル重合性単量体を重合する工程を有する、[1]~[21]のいずれか一項に記載の水系樹脂分散体Cの製造方法。
[39]前記重合する工程において、前記ラジカル重合性単量体の全量に対して80~100重量%の量のラジカル重合性単量体を供給して重合し、重合途中で前記ラジカル重合性単量体の残量を供給して重合することを含む、[38]に記載の水系樹脂分散体Cの製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ポリオレフィン基材に対する低温ヒートシール性に優れ、低温且つ短時間の加熱により容易にポリオレフィン基材と密着させることができる密着性に優れた水系樹脂分散体を使用する接着剤及び前記接着剤の乾燥物を含む積層体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】積層体の一例を示した説明図である。
図2】食品包装材の一例を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書において、「~」とは、その前後の数字を含むことを意味する。また、本明細書において「分散」とは、分散粒子が極めて小さく単分子で分散している状態、及び実質的には溶解と言えるような状態を意味する。さらに本発明において「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルの総称を意味する。
【0014】
本発明の水系樹脂分散体Cは、オレフィン系単量体由来の構成単位を有する重合体Aとラジカル重合性単量体由来の構成単位を有する重合体Bとを同一粒子内に含む水系樹脂分散体Cである。
以下に各成分について記載する。
【0015】
[オレフィン系単量体由来の構成単位を有する重合体A]
オレフィン系単量体由来の構成単位を有する重合体とは、オレフィンを原料の単量体とする重合体を意味し、オレフィンの単独重合体や共重合体等のオレフィン系単量体由来の構成単位を有する重合体A(以下、「重合体A」と記載することがある。)等を意味する。
【0016】
前記オレフィン系単量体由来の構成単位を有する重合体Aとしては、反応性基を有さないオレフィン系単量体由来の構成単位を有する重合体A1(以下、「重合体A1」と記載することがある。)、反応性基及びオレフィン系単量体由来の構成単位を有する変性重合体A2(以下、「重合体A2」と記載することがある。)等が挙げられる。
【0017】
前記重合体Aの好ましい態様としては、下記の(1)~(2)を満たすプロピレン系重合体が挙げられる。
(1)プロピレン基材への密着性が良好となる点で、前記重合体Aのプロピレン含有率は、50モル%以上が好ましく、60モル%以上がより好ましく、70モル%以上がさらに好ましい。
(2)120℃以下の低温ヒートシール時の密着性が良好となる点で、前記重合体Aの融点[Tm]は、120℃以下が好ましく、100℃以下がより好ましく、90℃以下がさらに好ましい。また、Tmの下限は、ブロッキング性に優れる点から60℃以上が好ましい。
【0018】
[反応性基を有さないオレフィン系単量体由来の構成単位を有する重合体A1]
前記重合体A1としては、公知のオレフィン系重合体及びオレフィン系共重合体を用いることができる。前記重合体A1としては、特に限定されないが、エチレン又はプロピレンの単独重合体;エチレン及びプロピレンの共重合体;エチレン及びプロピレンからなる群から選択される少なくとも1種と、その他の単量体として、例えば、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、及びノルボルネン等の炭素数2以上のα-オレフィン単量体との共重合体、もしくは前記α-オレフィン単量体の2種類以上の共重合体;前記α-オレフィン単量体と、酢酸ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等の単量体との共重合体;前記α-オレフィン単量体と、芳香族ビニル単量体等の単量体との共重合体又はその水素添加体;共役ジエンブロック共重合体又はその水素添加物等が挙げられる。
【0019】
オレフィン系単量体由来の構成単位を有する重合体A1が溶剤に溶解し、容易に反応できる点で、前記α-オレフィン単量体としては、炭素数2~4のα-オレフィン単量体が好ましい。
なお、前記の各種共重合体はランダム共重合体及びブロック共重合体からなる群から選択される少なくとも1種であってもよい。前記の各種共重合体としては、ポリオレフィンを塩素化した塩素化ポリオレフィンを使用することもできる。オレフィン系重合体A1の溶剤への溶解性が向上する点で、前記塩素化ポリオレフィンの塩素化度は、ポリオレフィンの合計質量に対して、5重量%以上が好ましく、10重量%以上がより好ましい。また40重量%以下が好ましく、30重量%以下がより好ましい。
【0020】
前記重合体A1の具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-ブテン共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、プロピレン-ブテン共重合体、プロピレン-ヘキセン共重合体、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、塩素化エチレン-プロピレン共重合体、塩素化プロピレン-ブテン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体の水素添加物(SEBS)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体の水素添加物(SEPS)等が挙げられる。
【0021】
プロピレン基材への密着性が良好となる点で、前記重合体A1としては、プロピレン単独重合体、プロピレンと他のα-オレフィンとの共重合体及び、これらの塩素化された重合体が好ましく、プロピレン単独重合体、エチレン-プロピレン共重合体、プロピレン-ブテン共重合体、塩素化ポリプロピレン、塩素化エチレン-プロピレン共重合体、又は塩素化プロピレン-ブテン共重合体がより好ましく、塩素を含有しないプロピレン単独重合体、エチレン-プロピレン共重合体、プロピレン-ブテン共重合体、エチレン-プロピレン-ブテン共重合体がさらに好ましい。
【0022】
前記重合体A1は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
前記重合体A1としては、その構成単位としてプロピレン由来の構成単位を有するプロピレン系重合体が好ましい。即ち、前記オレフィン系単量体としてはプロピレンを含むことが好ましい。前記オレフィン系単量体がプロピレンを含むことで、ポリプロピレン基材への密着性が増す傾向がある。前記プロピレン系重合体の全構成単位に対するプロピレン由来の構成単位の割合は、50モル%以上が好ましく、60モル%以上がより好ましく、70モル%以上がさらに好ましい。前記範囲内であれば、プロピレン由来の構成単位の割合が高いほどポリプロピレン基材への密着性が増す傾向がある。
【0024】
前記重合体A1の重量平均分子量Mwは、GPC(Gel Permeation Chromatography)で測定し、各々のポリオレフィンの検量線で換算してMwを求めることができる。前記重合体A1の重量平均分子量Mwは、5,000以上が好ましく、10,000以上がより好ましく、50,000以上がさらに好ましく、100,000以上が特に好ましい。また、500,000以下が好ましく、300,000以下がより好ましい。前記範囲内であれば、Mwが高いほどべたつき度合いが小さくなり基材への密着性が増す傾向がある。また前記範囲内であれば、Mwが低いほど粘度が低くなり前記水系樹脂分散体の調製が容易になる傾向がある。
【0025】
前記GPCによる重量平均分子量Mwの測定は、オルトジクロロベンゼン等を溶媒として、市販のGPC装置を用いて従来公知の方法で行うことができる。
【0026】
前記重合体A1の融点Tmは、120℃以下が好ましく、100℃以下がより好ましく、90℃以下がさらに好ましい。また前記重合体A1の融点Tmは、50℃以上が好ましい。前記範囲内であれば、融点が高いほどブロッキング性が良好になる傾向となる。また融点が低いほど、低温ヒートシール性が向上する傾向となる。
【0027】
前記重合体A1の製造方法については、本発明の要件を満たす重合体を製造できれば特に限定されず、いかなる製造方法であってもよい。例えばラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合、配位重合等が挙げられ、それぞれリビング重合的であってもよい。
【0028】
また配位重合の場合は、例えばチーグラー・ナッタ触媒により重合する方法、シングルサイト触媒により重合する方法が挙げられる。これらの中でも、配位子のデザインにより分子量分布や立体規則性分布をシャープにすることができる点で、シングルサイト触媒により重合する方法が好ましい。
【0029】
前記シングルサイト触媒としては、例えばメタロセン触媒、ブルックハート型触媒を用いることができる。前記メタロセン触媒としては、C1対称型、C2対称型、C2V対称型、CS対称型等、重合するポリオレフィンの立体規則性に応じて適切な触媒を選択すればよい。
【0030】
前記重合体A1の製造方法としては溶液重合、スラリー重合、バルク重合、気相重合等いずれの重合形態でも実施することができる。溶液重合及びスラリー重合の場合の溶媒としては、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素;ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族系炭化水素;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素;ハロゲン化炭化水素、エステル類、ケトン類、エーテル類等が挙げられる。なかでも、重合体A1を容易に溶解する点で、芳香族系炭化水素、脂肪族系炭化水素、及び脂環式炭化水素が好ましく、トルエン、キシレン、ヘプタン、及びシクロヘキサンがより好ましい。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお前記重合体A1の分子構造は直鎖状であっても分岐状であってもよい。
【0031】
[反応性基及びオレフィン系単量体由来の構成単位を有する変性重合体A2]
前記重合体A2としては、変性重合時にオレフィンと反応性基を有する不飽和化合物とを共重合した共重合体A2a、反応性基を有するラジカル重合性不飽和化合物をオレフィン系単量体由来の構成単位を有する重合体にグラフト重合したグラフト重合体A2b等が挙げられる。
【0032】
前記共重合体A2aは、オレフィンと、反応性基を有する不飽和化合物とを共重合して得られ、反応性基を有する不飽和化合物が主鎖に導入された共重合体である。前記共重合体A2aとしては、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン等のα-オレフィンと、アクリル酸、無水マレイン酸等のα、β-不飽和カルボン酸又はその無水物との共重合体が挙げられる。前記共重合体A2aとしては、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エステル-無水マレイン酸共重合体等が使用することができる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。前記共重合体A2aの製造方法は、前記重合体A1で述べた方法を同様に用いることができる。
【0033】
前記グラフト重合体A2bは、オレフィン系単量体由来の構成単位を有する重合体に、反応性基を有するラジカル重合性不飽和化合物をグラフト重合することにより得ることができる。前記反応性基としては、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、イソシアナート基、スルホニル基、水酸基等が挙げられる。これらの中でも反応性基が反応性に優れる点から、前記反応性基としては、カルボキシル基及びその無水物が好ましい。またく、前記グラフト重合体A2bとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンに(メタ)アクリル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸又はそれらの無水物、クロトン酸等をグラフト重合した重合体が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
前記グラフト重合体A2bに用いることができるオレフィン系単量体由来の構成単位を有する重合体としては、前記重合体A1を使用することができる。前記グラフト重合体A2bとしては、無水マレイン酸変性ポリプロピレン及びその塩素化物、無水マレイン酸変性エチレン-プロピレン共重合体及びその塩素化物、無水マレイン酸変性プロピレン-ブテン共重合体、アクリル酸変性ポリプロピレン及びその塩素化物、アクリル酸変性エチレン-プロピレン共重合体及びその塩素化物、アクリル酸変性プロピレン-ブテン共重合体等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
グラフト重合体A2bの製造に用いるラジカル重合開始剤としては、通常のラジカル重合開始剤から適宜選択して使用することができ、有機過酸化物、アゾニトリル等を挙げることができる。前記有機過酸化物としては、ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン等のパーオキシケタール類;クメンハイドロパーオキシド等のハイドロパーオキシド類;ジ(t-ブチル)パーオキシド等のジアルキルパーオキシド類;ベンゾイルパーオキシド等のジアシルパーオキシド類;t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート等のパーオキシエステル類等を挙げることができる。前記アゾニトリルとしては、アゾビスブチロニトリル、アゾビスイソプロピルニトリル等が挙げられる。これらの中でも水素引き抜き力が強く、グラフト反応に優れる点で、ベンゾイルパーオキシド及びt-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネートが好ましい。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
前記グラフト重合体A2bの全構成単位に対するラジカル重合開始剤の使用割合は、ラジカル重合開始剤:グラフト重合体A2bの全構成単位=1:100~2:1(モル比)が好ましく、1:20~1:1(モル比)がより好ましい。前記範囲内であれば、グラフト共重合体同士の結合が抑制できる。反応温度は、50℃以上が好ましく、80~200℃がより好ましい。前記範囲内であれば、ラジカル重合成開始剤の水素引き抜き力により、グラフト反応が進行する。反応時間は、通常2~20時間程度である。
【0037】
前記重合体A2bの製造方法については、特に限定されず、いかなる製造方法であってもよい。前記重合体A2bの製造方法としては、溶液中で加熱攪拌して反応する方法、無溶媒で溶融加熱攪拌して反応する方法、押し出し機で加熱混練して反応する方法等が挙げられる。溶液中で製造する場合の溶媒としては、前記重合体A1で説明した溶媒を同様に用いることができる。
【0038】
前記重合体A2中の前記反応性基の含有量は、前記重合体A21g当たり0.01mmol/g以上が好ましく、0.05mmol/g以上がより好ましく、0.1mmol/g以上がさらに好ましい。また1mmol/g以下が好ましく、0.5mmol/g以下がより好ましく、0.3mmol/g以下がさらに好ましい。前記範囲内であれば、高いほど、親水系が増すため分散粒子径が小さくなる傾向にあり、低いほど、ポリプロピレン基材に対する密着性が増す傾向にある。
【0039】
[重合体Aの分散体]
前記重合体Aの分散体の製造方法としては、前記重合体Aに界面活性剤を含有させて前記重合体Aを分散させる方法、前記重合体Aに親水系高分子をグラフト結合させたグラフト共重合体を用いてグラフト共重合体を分散させる方法、前記重合体A2の前記反応性基が、カルボキシル基又はその無水物、スルホニル基の等の酸性基である場合に、前記酸性基を塩基性化合物で中和することにより、前記重合体A2を分散させる方法等が挙げられる。
【0040】
前記重合体Aの分散体で使用する前記親水系高分子は、25℃の水に10重量%の濃度で溶解させたときに、不溶分が1重量%以下の高分子を意味する。前記親水系高分子としては、本発明の効果を著しく損なわない範囲で、特に限定することなく用いることができ、合成高分子、半合成高分子、天然高分子等を用いることができる。ポリオレフィン分散体の機械安定性に優れる点で、前記親水系高分子の数平均分子量Mnは300以上が好ましい。
【0041】
前記重合体Aの分散体で使用する前記塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機塩基;アンモニア、トリエチルアミン、ジエチルアミン、エタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、2-メチル-2-アミノ-プロパノール、トリエタノールアミン、モルフォリン、ピリジン等の有機塩基等が挙げられる。塩基性化合物による中和率は水への分散性が得られる範囲であれば特に限定はされないが、前記酸性基に対して1~100モル%が好ましく、50モル%以上がより好ましい。前記範囲内であれば、中和率が高いほど水への分散性が良好となる。
【0042】
本発明において分散体とは、分散粒子が極めて小さく単分子で分散している状態、実質的には溶解と言えるような状態まで含むことを意味する。従って、分散体の平均粒子径の下限値は、0μmでもよい。本発明で用いられる前記重合体Aの分散体の平均粒子径は、0.5μm以下が好ましく、0.3μm以下がより好ましく、0.2μm以下がさらに好ましい。また前記重合体Aの分散体の平均粒子径は、0μm以上が好ましい。前記範囲内であれば、分散安定性を向上させ、凝集が起きにくくなる。なお、分散粒子径は、動的光散乱法やレーザードップラー法等により測定できる。
【0043】
前記重合体Aの分散体の固形分の含有量は、前記重合体Aの分散体の総重量に対して5重量%以上が好ましく、10重量%以上がより好ましく、20重量%以上がさらに好ましい。また70重量%以下が好ましく、60重量%以下がより好ましく、50重量%以下がさらに好ましい。前記範囲内であれば、固形分の含有量が少ないほど粘度が低く、ラジカル重合性単量体との重合性に優れる傾向にある。また固形分の含有量が多いほど、乾燥にあまり多量のエネルギーを必要としないため、乾燥性に優れる傾向にある。
【0044】
前記重合体Aの分散体の水以外の溶媒の比率は、前記重合体Aの分散体の総重量に対して、50重量%以下が好ましく、20重量%以下がより好ましく、10重量%以下がさらに好ましい。前記範囲内であれば、溶媒が少ないほど貯蔵安定性に優れる傾向にある。水系樹脂分散体Cの貯蔵安定性が良好となる点で、前記溶媒としては水に1重量%以上溶解する溶媒が好ましく、水に5重量%以上溶解する溶媒がより好ましい。水以外の前記溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、t-ブタノール、シクロヘキサノール、テトラヒドロフラン、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、2-ブトキシエタノール、2-メトキシプロパノール、2-エトキシプロパノールが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
前記重合体Aの分散体として、日本製紙社製アウローレン及びスーパークロン、東洋紡社製ハードレン、三菱ケミカル社製アプトロック、ユニチカ社製アローベ―ス等を用いることができる。これらの中でも、塩素が含まれていないことからアウローレン、ハードレン、アプトロック、アローベ―スが好ましく、アプトロックがより好ましい。
【0046】
[ラジカル重合性単量体由来の構成単位を有する重合体B]
重合体Bのガラス転移温度は、20℃以下が好ましく、10℃以下がより好ましく、5℃以下がさらに好ましく、-3℃未満が特に好ましい。重合体Bのガラス転移温度が20℃以下であれば、塗膜の柔軟性及び成膜性が向上し、低温ヒートシール性が向上する。また、塗膜のブロッキング性が向上する観点から、アクリル重合体Bのガラス転移温度は、-80℃以上が好ましく、-70℃以上がより好ましく、-60℃以上がさらに好ましい。即ち、前記重合体Bのガラス転移温度は-80℃以上20℃以下が好ましく、-80℃以上-3℃未満がより好ましい。
【0047】
なお、重合体Bのガラス転移温度は、下記式(i)で表されるFoxの計算式により求められる値を意味する。
【0048】
1/(273+Tg)=Σ(Wi/(273+Tgi))・・・式(i)
(式(i)中、Wiは単量体iの質量分率を示し、Tgiは単量体iの単独重合体のTg(℃)を示す。ここで、各単量体の単独重合体のガラス転移温度は、ポリマーハンドブック第4版(POLYMER HANDBOOK Fourth Edition),John Wiley & Sons, Inc.(1999)に記載されている値を使用することができる。)
【0049】
ラジカル重合性単量体は、重合性に優れることからビニル系単量体が好ましい。ビニル系単量体としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等の(メタ)アクリル系単量体;スチレン、α-メチルスチレン等の芳香族系単量体;(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド等のアミド系単量体;(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等が挙げられる。本発明の効果を著しく損なわない範囲で、ビニル系単量体を特に限定なく用いることができる。
【0050】
これらの中でも塗膜の耐候性、耐溶剤性の点で(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。前記(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸-n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸-n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸-t-ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、炭素原子数6~12のアリール基又はアラルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル、例えば(メタ)アクリル酸ベンジル等;(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸-2-アミノエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸-2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸-3-メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸とポリエチレンオキサイドの付加物等;フッ素原子を有する炭素原子数1~20のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル類、例えば(メタ)アクリル酸トリフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2-トリフルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸-2-パ-フルオロエチルエチル等を挙げることができる。
【0051】
これらの中でも、プロピレン基材への密着性の点から、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸-t-ブチル、(メタ)アククリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル、スチレンが好ましい。
【0052】
ポリプロピレン基材層1、並びに金属箔、無機蒸着膜層及び熱可塑性樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の層3に対する組成物の硬化物層2の密着性が良好となる点から、前記重合体Bの全構成単位に対して芳香族系単量体由来の構成単位を1.0質量%以上30.0質量%以下有することが好ましい。
【0053】
前記記載の芳香族系単量体由来の具体例としてスチレン、メタクリル酸フェノキシエチル、α-メチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、ビニルピレン、ビニルアニソール、ビニル安息香酸エステル、アセチルスチレンなどが挙げられる。これらの中でも重合性の点からスチレンが好ましい。
【0054】
前記水系樹脂分散体Cとメラミン樹脂、イソシアネート等の架橋剤を混合し塗料組成物としたときに、塗膜性能が向上する点から、前記ラジカル重合性単量体は、水酸基を有するビニル系単量体やエポキシ基を有するビニル系単量体を含むことが好ましい。水酸基を有するビニル系単量体としては、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸-4-ヒドロキシブチル等が挙げられる。エポキシ基を有するビニル系単量体としては、(メタ)アクリル酸グリシジル、1,2-エポキシ4-ビニルシクロヘキサン、(メタ)アクリル酸4-(2,3-エポキシプロポキシ)ブチル等が挙げられる。水酸基やエポキシ基を有するビニル系単量体の使用量は前記ラジカル重合性単量体の全使用量に対して30重量%以下が好ましく、20重量%以下がより好ましい。前記範囲内であれば、ポリプロピレン基材への密着性が良好となる傾向にある。
【0055】
金属基材へ密着する点から、前記ラジカル重合性単量体はカルボン酸基やリン酸基を有するビニル系単量体を含むことが好ましい。カルボン酸基を有するビニル単量体としては、(メタ)アクリル酸等が挙げられる。カルボン酸基を有するビニル単量体の使用量は前記ラジカル重合性単量体の全使用量に対して10重量%以下が好ましく、5重量%以下がより好ましい。前記範囲内であれば金属基材とポリプロピレン基材への密着性が良好となる傾向となる。
【0056】
前記重合体Aと前記重合体Bの合計質量に対する前記重合体Bの質量割合は10質量%以上が好ましく、前記質量割合は30質量%以上がより好ましい。また、70質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。前記範囲内であれば、ポリプロピレン基材への密着性が優れる。
【0057】
前記重合体Aと前記重合体Bの合計質量に対する前記重合体Aの質量割合は30質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、65質量%以上がさらに好ましい。前記範囲内であれば、ポリプロピレン基材への密着性が優れる。
【0058】
[重合体Bの製造方法]
前記重合体Bの製造方法としては、前記重合体Aの分散体中で前記ラジカル重合性単量体が溶解した状態で重合する方法、前記重合体Aとラジカル重合性単量の両方が分散した状態の分散体中で重合する方法、前記ラジカル重合性単量体と界面活性剤を用いて乳化重合する方法等が挙げられる。
【0059】
前記重合体Bの製造方法としては、前記重合体Aの分散体中でラジカル重合性単量体を重合すればよく、本発明の効果を著しく損なわない範囲で、一括重合及び滴下重合のいずれを用いることもできる。
前記一括重合とは、一度にラジカル重合性単量体の全量を反応容器に仕込んで重合する方法である。前記重合体Bの製造方法に一括重合を採用する場合は、例えば、前記重合体Aの分散体に、ラジカル重合性単量体の全量を混合した後に、水溶性の開始剤や有機過酸化物とチオ硫酸ナトリウム等の還元剤を含むレドックス系開始剤等を添加して重合を行うことができる。また、前記滴下重合とは、単量体を少量ずつ反応容器に滴下しながら重合する方法である。前記重合体Bの製造方法に滴下重合を採用する場合は、例えば、前記重合体Aの分散体に、ラジカル重合性単量体を滴下しながら重合を行うことができる。
重合安定性及びプロピレン基材に対する接着性の点から、前記重合体Bの製造方法に前記一括重合を採用することが好ましく、前記一括重合は、ラジカル重合性単量体の全量に対して80~100重量%の量のラジカル重合性単量体を供給して重合し、重合途中でラジカル重合性単量体の残量を供給して重合することがより好ましい。
【0060】
前記重合体Bの製造効率及び前記水系樹脂分散体Cの貯蔵安定性の点から、乳化重合用界面活性剤を使用して重合することが好ましい。
前記乳化重合用界面活性剤としては、各種のアニオン性、カチオン性、又はHLBが8以上のノニオン性の界面活性剤等が挙げられ、界面活性剤成分中にエチレン性不飽和結合を有する、いわゆる反応性界面活性剤も使用することができる。これらの中でも、得られる分散体の貯蔵安定性の向上の点から、アニオン性の界面活性剤を用いることが好ましい。アニオン性界面活性剤としては、特に限定されないが、反応性界面活性剤である株式会社ADEKA製アデカリアソープSR、非反応性界面活性剤であるネオコールSW-C、ニューコール707SF等を用いることができる。
【0061】
前記乳化重合用界面活性剤の使用量は、ラジカル重合性単量体100重量部に対し、5重量部以下が好ましく、3重量部以下がより好ましい。前記範囲内であれば、耐水系が優れる傾向がある。
【0062】
重合に用いる開始剤としては、一般的にラジカル重合に使用される開始剤を使用することができる。前記開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩類;アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2-フェニルアゾ-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル等の油溶性アゾ化合物類;2,2’-アゾビス{2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’-アゾビス{2-メチル-N-[2-(1-ヒドロキシエチル)]プロピオンアミド}、2,2’-アゾビス{2-メチル-N-[2-(1-ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド}、2,2’-アゾビス[2-(5-メチル-2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]及びその塩;2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]及びその塩;2,2’-アゾビス{2-[1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリン-2-イル]プロパン}及びその塩;2,2’-アゾビス(2-メチルプロピンアミジン)及びその塩;2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]等の水溶性アゾ化合物;過酸化ベンゾイル、クメンハイドロパーオキシド、t-ブチルハイドロパーオキシド、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシイソブチレート等の有機過酸化物類等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0063】
得られる前記重合体Bの重合率の点から、前記開始剤としては、重亜硫酸ナトリウム、硫酸第一鉄、イソアスコルビン酸塩、ロンガリット等の還元剤を水溶性の重合触媒と組み合わせて用いることが好ましい。
【0064】
重合の温度は、得られる前記重合体Bの重合率の点から50℃以上が好ましい。重合時間は30分間以上が好ましい。重合時間が30分間以上であれば、ラジカル重合性単量体が十分に重合し、重合率が向上する傾向にある。また、重合時間は3時間以下が好ましい。重合時間が3時間以下であれば、重合時にカレットが発生しにくく、製造効率が向上する傾向にある。
【0065】
前記重合は、分子量調整剤として、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、α-メチルスチレンダイマー等の公知の連鎖移動剤を用いてもよい。
【0066】
重合反応が完結した後、冷却し、水系樹脂分散体Cを取り出す際には、異物やカレットの混入を防止するため、濾過操作を行うことが好ましい。濾過方法については公知の方法を使用することができ、ナイロンメッシュ、バグフィルター、濾紙、金属メッシュ等を用いることができる。
【0067】
[水系樹脂分散体C]
水系樹脂分散体Cの前記重合体A及びラジカル重合性単量体由来の構成単位を有する前記重合体Bの質量割合は、A:B=30:70~90:10が好ましい。前記範囲内であれば、前記重合体Aの分散体中で前記ラジカル重合性単量体が溶解した状態で重合する方法、前記重合体Aとラジカル重合性単量の両方が分散した状態の分散体中で重合する方法等を用いることができ、本発明の効果を著しく損なわない範囲で、通常知られる製造方法によって前記水系樹脂分散体Cを製造することができる。
【0068】
前記水系樹脂分散体Cを80℃で30分間乾燥した塗膜の弾性率は0MPaよりも大きく35MPa以下であり、5MPa以上35MPa以下が好ましく、10MPa以上25MPa以下がより好ましい。塗膜の弾性率が35MPaよりも大きいと塗膜の流動性が低く、ヒートシール性が劣る傾向となる。弾性率が0MPa以下であれば、塗膜にタック性があり、ブロッキング性が劣る傾向となる。
前記塗膜の破断伸度は100%以上3000%以下が好ましく、800%以上3000%以下がより好ましく、1000%以上がさら好ましく、1500%以上が特に好ましい。
前記塗膜の破断伸度は100%より小さいと塗膜が脆く、密着強度が劣る傾向となる。
【0069】
水系樹脂分散体Cの製造方法としては、前記重合体Aの分散体中でラジカル重合性単量体を重合する方、オレフィン系重合体Aとラジカル重合性単量を溶解させ、分散後に重合する方等が挙げられる。ポリプロピレン基材への密着性の点で、前記重合体Aの分散体中でラジカル重合性単量体を重合することが好ましい。
前記水系樹脂分散体Cの製造方法におけるラジカル重合性単量体の重合方法は、前記重合体Bの製造方法と同様の重合方法によって行うことができる。
【0070】
[組成物D]
本発明の組成物Dは水系樹脂分散体Cを原料とすることが好ましい。
前記水系樹脂分散体Cはそのまま本発明の組成物Dとして用いることができる。前記組成物Dの接着強度、耐水系、耐熱性、耐薬品性、濡れ性等の性能を向上させるために、必要に応じて水系樹脂分散体C以外のその他の樹脂を含有させてもよい。前記その他の樹脂としては、添加剤や架橋剤等を挙げることができる。
【0071】
前記添加剤としては、ポリ酢酸ビニル、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビリニデン、スチレン-ブタジエン樹脂、ブタジエン樹脂、ポリ(メタ)アクリロニトリル樹脂、(メタ)アクリルアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ナイロン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。前記その他の樹脂の含有量は、前記水系樹脂分散体Cの総重量に対して、50重量%未満が好ましく、30重量%未満がより好ましく、20重量%未満がさらに好ましい。
【0072】
前記架橋剤としては特に限定されないが、2官能以上の官能基を有する化合物が挙げられる。前記架橋剤としては、多官能エポキシ化合物、多官能イソシアネート化合物、多官能アミン化合物、多官能オキサゾリン化合物、ヒドラジン化合物等が挙げられる。これらの中でも、酸変性ポリオレフィンのカルボキシル基との反応性の点から、多官能エポキシ化合物、多官能オキサゾリン化合物、ヒドラジン化合物が好ましい。
【0073】
本発明の組成物Dについて、乾燥速度を上げる目的又は仕上がり感の良好な表面を得る目的で造膜助剤、湿潤剤等を配合してもよいし、配合しなくてもよい。前記造膜助剤、湿潤剤としては、有機溶媒を用いることができる。前記有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類;アセトン等のケトン類;エチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコール類及びそれらのエーテル類等が挙げられる。
また、湿潤剤としては、シロキサン系湿潤剤を用いることもできる。
【0074】
本発明の組成物Dは、オレフィン系単量体由来の構成単位を有する重合体Aと、ラジカル重合性単量体由来の構成単位を有する重合体Bとを同一粒子内に含む水系樹脂分散体Cを含み、必要に応じて前記その他の樹脂を含むことが好ましい。前記組成物Dの製造方法としては、前記の各成分を通常使用される撹拌機で混合する製造方法等を挙げることができる。
【0075】
前記組成物Dは、ポリオレフィン基材に対する低温ヒートシール密着性に優れている点で、ポリオレフィン基材用のヒートシール接着剤であることが好ましい。前記組成物Dをポリオレフィン基材用のヒートシール接着剤に使用することで、ポリオレフィン基材に対する低温ヒートシール性が良好となって、低温で、短時間の加熱により容易にポリオレフィン基材への密着性が良好となる傾向がある。
【0076】
[積層体]
本発明の積層体は、前記樹脂組成物Dの乾燥物を含む積層体であることが好ましい。前記樹脂組成物Dの乾燥物を含むことで、ポリオレフィン基材に対する低温ヒートシール性、密着性が良好となる。
また、本発明の積層体は、ポリプロピレン基材層1と、組成物のDの乾燥物から形成される層2(以下、「組成物Dの硬化物層2」ともいう。)と、金属箔、無機蒸着膜層及び熱可塑性樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の層3と、がこの順序で積層していることが好ましい。D図1は、ポリプロピレン基材層1と、組成物Dの硬化物層2と、金属箔、無機蒸着膜層及び熱可塑性樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の層3と、がこの順序で積層している積層体10を表している。
【0077】
本発明におけるポリプロピレン基材層1としては、ポリプロピレン系樹脂、酸変性ポリプロピレン、ポリプロピレン-αオレフィン共重合体等のポリプロピレン樹脂等が挙げられる。中でも包装材料としての内容物の保護の点から、ポリプロピレン系樹脂、プロピレン-エチレン共重合樹脂、プロピレン-ブテン共重合樹脂が好ましく、ポリプロピレン系樹脂がより好ましい。
【0078】
ポリプロピレン基材層1として、延伸ポリプロピレン(OPP)、無延伸ポリプロピレン(CPP)、アルミニウム蒸着ポリプロピレン、共押出フィルムポリプロピレン等のポリプロピレン系基材等が挙げられる。中でも透明性と強度に優れる点から、延伸ポリプロピレン(OPP)が好ましい。
【0079】
[組成物の硬化物層2]
組成物の硬化物層2は組成物Dの乾燥物から形成されていればよく、組成物Dの使用量は、接着面の面積に対して、0.01~20g/m2が好ましく、0.1~10g/m2がより好ましく、0.3~5g/m2がさらに好ましい。前記使用量が、0.01g/m2未満では十分な接着性が得られず、20g/m2を超えると、乾燥に時間がかかり、経済的にも不利になる。
【0080】
組成物の硬化物層2は組成物Dを乾燥物から形成されていればよく、金属箔、無機蒸着膜層及び熱可塑性樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の層3に組成物Dを塗布後に、セーフベンドライヤーなどを用いて乾燥させてもよい。乾燥温度は、60~150℃が好ましい。60℃以上であれば、組成物Dの乾燥が短時間で行える。150℃以下であれば、組成物Dの透明性が優れる。
【0081】
塗布方法としては、公知の塗布方法を使用することができる。塗布方法としては、グラビアロールコーティング、リバースロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、リップコーティング、エアナイフコーティング、カーテンフローコーティング、スプレーコーティング、ディップコーティング、はけ塗り法等が挙げられる。前記塗布方法により基材表面に組成物Dを均一にコーティングし、乾燥処理又は乾燥のための加熱処理に供することにより、前記組成物の硬化物層2を熱可塑性樹脂等の前記層3に密着させることができる。
【0082】
本発明において、前記金属箔及び無機蒸着膜層としては、遮光性、ガスバリア性を有するバリア層として、アルミニウム箔等の軟質金属箔;アルミニウム蒸着、シリカ蒸着、アルミナ蒸着、シリカアルミナ2元蒸着の無機蒸着層が挙げられる。安価でバリア性が高く、遮光性が付与できる点から、アルミニウム箔、又はアルミ蒸着膜が好ましい。
【0083】
前記積層体を構成するアルミニウム箔層は、前記組成物の硬化物層2と接する面に、接着性向上のために熱水変成処理を施すこともできる。アルミニウム箔の表面を熱水変成処理する際に使用される処理水としては、水道水、脱イオン水、蒸留水、脱イオン化された蒸留水等が挙げられる。それらの中では、脱イオン化された蒸留水が好ましい。アルミニウム箔の表面への熱水変成処理は、処理温度によって様々な水和酸化物の皮膜が表面に被覆されて熱水変成処理層が形成される。前記熱水変成処理としては、常圧下、80~100℃程度の条件で行われるベーマイト処理(熱水変成処理)が好ましい。
【0084】
熱可塑性樹脂層としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレ-ト等のポリエステル系樹脂、各種のナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアリールフタレ-ト系樹脂、シリコ-ン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエ-テルスルホン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アセタ-ル系樹脂、セルロ-ス系樹脂、ポリビニルアルコール樹脂等の各種の樹脂のフィルム又はシ-トを使用することができる。本発明においては、これらの中でも、ポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂のフィルム又はシ-トを使用することが好ましい。これらは、1種を単独で用いてもよくいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0085】
前記フィルム又はシ-トの製膜化に際して、フィルムの加工性、耐熱性、耐候性、機械的性質、寸法安定性、抗酸化性、滑り性、離形性、難燃性、抗カビ性、電気的特性、強度等を改良する目的で、前記フィルム又はシ-トに、種々のプラスチック配合剤や添加剤等を添加することができ、その添加量としては、その目的に応じて、任意に添加することができる。
前記添加剤としては、滑剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、帯電防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤、染料、顔料等の着色剤、改質用樹脂等を任意に使用することができる。
【0086】
本発明の組成物Dは、ポリプロピレン基材に対する接着剤、包装材用ヒートシール接着剤、塗料等の分野において好適に利用できる点から、本発明の積層体としては、ヒートシール接着剤を含む、食品包装材であることが好ましい。
【0087】
本発明の積層体を形成する方法としては、金属箔、無機蒸着膜層及び熱可塑性樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の層3へ組成物Dを積層させ、ポリプロピレン基材層1を組成物の硬化物層2からヒ―トシールにより接着さればよい。前記ヒートシールの温度条件はポリプロピレン基材層1の外観の点から140℃以下が好ましく、120℃以下がより好ましく。100℃以下がさらに好ましい。
【実施例0088】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
なお、実施例及び比較例における「部」及び「%」は、各々、「質量部」及び「質量%」を意味する。また、表中における各成分に係る数値は、それぞれ質量部を意味する。
【0089】
[物性測定方法及び評価方法]
(1)オレフィン系重合体Aの重量平均分子量[Mw]及び分子量分布[Mw/Mn]の測定方法
オレフィン系重合体Aの試料5mgを10mLのバイアル瓶に採取し、安定剤としてジブチルヒドロキシトルエン 250ppmを含有するテトラヒドロフランを5g添加し、50℃で完全に溶解させたる。室温に冷却後、孔径0.45μmのフィルターでろ過し、ポリマー濃度0.1質重量%の試料溶液を調製した。次に、カラムとしてTSKgel GMHXL-L(30cm×2本)にガードカラムTSKguardcolumnHXL-Hを装着した東ソー(株)社製GPC HLC-8020を使用してGPC測定を行った。測定条件としては、試料溶液のインジェクション量:50μL、カラム温度:40℃、溶媒:テトラヒドロフラン、流量1.0mL/minで測定した。分子量は、標準試料として市販の単分散のポリスチレン標準試料を測定し、標準試料の保持時間と分子量から検量線を作成してオレフィン系単量体由来の構成単位を有する重合体Aの重量平均分子量[Mw]及び分子量分布[Mw/Mn]を算出した。
【0090】
(2)オレフィン系単量体由来の構成単位を有する重合体Aの融点[Tm]の測定方法
セイコーインスツル(株)社製 示差走査熱量計 DSC 220Cを使用して測定した。オレフィン系単量体由来の構成単位を有する重合体Aの試料5±1mgをアルミニウム製のパンに入れアルミニウム製の蓋をし、空のアルミニウム製のパンをリファレンスとして検出器にのせた。200℃まで100℃/分の速度で昇温した。同温度で5分間保持した後、10℃/分の速度で冷却し、-10℃まで0.5秒間隔で熱量を検出した。同温度で1分保持した後10℃/分の速度で200℃まで昇温させ、0.5秒間隔で熱量を検出した。
各試料とも冷却過程において発熱ピークが1つ、最後の昇温過程において吸熱ピークが1つ観測された。最後の昇温過程におけるピークのピークトップ時の温度をオレフィン系単量体由来の構成単位を有する重合体Aの融点[Tm]とした。
【0091】
(3)水系樹脂分散体の平均粒径の測定方法
水系樹脂分散体を濃厚系粒径アナライザー FPAR-1000(商品名、大塚電子社製)を用いて、平均粒径を求めた。結果を表1に記載した。
【0092】
(4)水系樹脂分散体の乾燥後の塗膜の弾性率及び破断伸度の測定方法
水系樹脂分散体をイソプロパノールで表面を脱脂したガラス基材に膜厚300μmになるようにアプリケーターで塗装を行った。その後、80℃に設定したセーフベンドライヤーで30分間乾燥を行い、膜厚100μmの水系樹脂分散体の乾燥後の塗膜を得た。得られた乾燥後の塗膜を30mm×5mmにせん断し、島津社製小型卓上試験機 EZを用いて測定温度23℃で引張速度50mm/min、チャック間距離10mmの条件で引張試験を行った。得られた応力歪み曲線より、水系樹脂分散体の乾燥後の塗膜の弾性率と破断伸度を求めた。結果を表1に記載した。
【0093】
(5)組成物Dのポリオレフィン基材層1及び層3に対する密着性試験の評価方法
層3として熱可塑性樹脂製のOPPフィルム(東洋紡社製パイレン(登録商標)、フィルム-OT P2108(商品名))の未処理面(コロナ処理をしていない面)へ水系樹脂分散体C100部と濡れ剤としてシロキサン系基材湿潤剤(エボニック社製TEGO(登録商標)、Wet KL 245(商品名)7部を混合し、組成物Dを得た。得られた組成物Dをバーコーターで前記層3の未処理面に塗装後、100℃で3分の乾燥を行うことで、熱可塑性樹脂製のOPP未処理フィルムである層3と組成物の硬化物層2の厚さ10μm(10g/m2)の試験片を得た。
さらに、ポリプロピレン基材層1として、前記OPPフィルムと同じ種類のフィルムを用い、前記フィルムの未処理面を、得られた試験片の組成物の硬化物層2の表面にヒートシーラーで表2に記載の温度で10秒、1kg荷重でヒートシールを行うことで、積層体を得た。
得られた積層体から幅15mmの試験片を採取し、引張り試験機を用い、90度剥離により試験片の端部からポリプロピレン基材層1とポリプロピレン基材(1)の界面を剥離して組成物Dの剥離強度(測定条件:23℃、65%RHの雰囲気中、引張速度50mm/分)を測定することで、組成物Dのポリオレフィン基材層1及び層3に対する密着性試験の評価を以下評価基準で評価した。評価結果を表2に記載した。
(評価基準)
A:剥離強度が2.00N/15mm以上で密着性が優れている。
B:剥離強度が1.00N/15mm以上2.00N/15mm未満で密着性が良好である。
C:剥離強度が1.00N/15mm未満で密着性が悪い。
【0094】
[製造例1] 水系樹脂分散体(1)の製造
攪拌機、還流冷却管及び温度制御装置を備えたフラスコに、オレフィン系単量体由来の構成単位を有する重合体Aの分散体としてアプトロック(登録商標)BW-5683(三菱ケミカル社製:固形分30.0%、重量平均分子量210000、分子量分布2.2 融点70℃)を333.3部(固形分で100部)、脱イオン水を115.4部仕込み、50℃に昇温した。 次いで、ラジカル重合性単量体としてアクリル酸-2-エチルヘキシル(2EHA)41.5部、スチレン(ST)6部、メタクリル酸グリシジル(GMA)2.5部とを入れ、1時間保持した。さらに、開始剤としてパーブチル(登録商標)H69(商品名、日油社製、固形分69%)0.05部、還元剤として硫酸第一鉄0.0001部、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)0.00014部、イソアスコルビン酸ナトリウム一水和物0.04部、及び脱イオン水0.5部を添加し、重合を開始した。
重合の発熱ピークを検出した後、パーブチル(登録商標)H69を0.05部と、脱イオン水10部を30分間かけて滴下した。滴下終了後、60℃で30分間熟成し、50%平均粒子径110nmの水系樹脂分散体(1)を得た。結果を表1に記載した。
【0095】
[製造例2~5、8、9] 水系樹脂分散体(2)~(5)、(8)、及び(9)の製造
ラジカル重合性単量体由来の構成単位を表1に記載の通りに変更した以外は製造例1と同様の操作を行うことで水系樹脂分散体(2)~(5)、(8)、及び(9)を得た。結果を表1に記載した。
【0096】
[製造例6] 水系樹脂分散体(6)の製造
ラジカル重合性単量体としてアクリル酸-2-エチルヘキシル(2EHA)41.5部、スチレン(ST)6部、メタクリル酸グリシジル(GMA)2.5部と脱イオン水20部と界面活性剤としてニューコール707SF5部(日本乳化剤株式会社社製、固形分30%、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸塩)をホモミクサー(プライミクス株式会社製、ホモミクサーMART II)で乳化し、プレエマルションを得た。攪拌機、還流冷却管及び温度制御装置を備えたフラスコに、脱イオン水80.4部と得られたプレエマルション75部を入れ、50℃に昇温した。1時間保持後に、開始剤としてパーブチル(登録商標)H69(商品名、日油社製、固形分69%)0.05部、還元剤として硫酸第一鉄0.0001部、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)0.00014部、イソアスコルビン酸ナトリウム一水和物0.04部、及び脱イオン水0.5部を添加し、重合を開始した。
重合の発熱ピークを検出した後、パーブチル(登録商標)H69を0.05部と、脱イオン水10部を30分間かけて滴下した。滴下終了後、60℃で30分間熟成した。冷却後にアプトロック(登録商標)BW-5683を333.3部入れ、50%平均粒子径110nmの重合体Aと重合体Bの配合物である水系樹脂分散体(6)を得た。結果を表1に記載した。
【0097】
[製造例7] 水系樹脂分散体(7)の製造
オレフィン系単量体由来の構成単位を有する重合体Aの分散体としてアプトロック(登録商標)BW-5683(三菱ケミカル社製:固形分30.0%、重量平均分子量210000、分子量分布2.2 融点70℃)333.3部(固形分で100部)を水系樹脂分散体(7)として使用した。結果を表1に記載した。
【0098】
[実施例1~6、比較例1~3]
表2に記載の通りに積層体を作成し、前記ポリオレフィン基材層1及び層3に対する密着性試験を行った。評価結果を表2に記載した。
なお、表1中の略号は以下の通りである。
アプトロックBW-5683:オレフィンエマルション、三菱ケミカル社製
EHA:アクリル酸エチルヘキシル、三菱ケミカル社製
iBMA:メタクリル酸イソブチル、三菱ケミカル社製
tBMA:メタクリル酸t-ブチル、三菱ケミカル社製
ST:スチレン、NSスチレン単量体社製
GMA:メタクリル酸グリシジル、三菱ケミカル社製
【0099】
【表1】
【0100】
【表2】
【0101】
なお、表2中のOPPとは延伸ポリプロピレンフィルムを意味する。
【0102】
実施例1~6は、重合体Aと重合体Bとを同一粒子内に含み、水系樹脂分散体Cを80℃で乾燥した塗膜の弾性率が本願規定の範囲内である水系樹脂分散体を使用したため、ポリオレフィン基材層1及び層3に対する密着性が良好であった。比較例1は、水系樹脂分散体を80℃で乾燥した塗膜の弾性率が本願規定の範囲外である水系樹脂分散体を使用したため、ポリオレフィン基材層1及び層3に対する密着性が悪かった。比較例2は、重合体Aと重合体Bとを同一粒子内に含まない配合物である水系樹脂分散体を使用したため、ポリオレフィン基材層1及び層3に対する密着性が悪かった。比較例3は、重合体Bを同一粒子内に含まない水系樹脂分散体を使用したため、ポリオレフィン基材層1及び層3に対する100℃における密着性が悪かった。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明によれば、ポリオレフィン基材に対する低温ヒートシール性に優れ、低温で、短時間の加熱により容易にポリオレフィン基材との密着性に優れた水系樹脂分散体を使用する接着剤及び前記接着剤の乾燥物を含む積層体を提供することができる。したがって、本発明の接着剤は、ポリプロピレン基材に対する接着剤、包装材用ヒートシール接着剤、塗料等の分野において好適に利用でき、産業上極めて重要である。
【符号の説明】
【0104】
10...積層体、11...食品包装材、1...層3、2...層2、3...層1
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2024-09-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィン系単量体由来の構成単位を有する重合体Aと、ラジカル重合性単量体由来の構成単位を有する重合体Bとを同一粒子内に含む水系樹脂分散体Cであって、前記重合体Aがプロピレン由来の構造を含有し、
前記重合体Bの全構成単位に対する芳香族系単量体由来の構成単位の質量割合が5.0量%以上60質量%以下であり、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸-t-ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、及び(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル由来の構成単位からなる群から選ばれる一つ以上を含有し、ガラス転移温度が-80℃以上5℃以下であり、
前記水系樹脂分散体Cを80℃で30分間乾燥した塗膜の弾性率が0MPaよりも大きく35MPa以下である、水系樹脂分散体C。
【請求項2】
前記水系樹脂分散体Cを80℃で30分間乾燥した塗膜の破断伸度が100%以上3000%以下である、請求項1に記載の水系樹脂分散体C。
【請求項3】
前記水系樹脂分散体Cを80℃で30分間乾燥した塗膜の破断伸度が800%以上3000%以下である、請求項1又は請求項2に記載の水系樹脂分散体C。
【請求項4】
請求項1~のいずれか一項に記載の水系樹脂分散体Cを含む組成物D。
【請求項5】
前記組成物Dがポリオレフィン基材用のヒートシール接着剤である、請求項に記載の組成物D。
【請求項6】
前記重合体Aと前記重合体Bの合計質量に対する前記重合体Aの質量割合が30質量%以上である、請求項又は請求項に記載の組成物D。
【請求項7】
前記オレフィン系単量体がプロピレンを含む、請求項のいずれか一項に記載の組成物D。
【請求項8】
請求項のいずれか一項に記載の組成物Dの乾燥物を含む積層体。
【請求項9】
ポリプロピレン基材層1と、前記組成物Dの乾燥物からなる層2と、金属箔、無機蒸着膜層及び熱可塑性樹脂層からなる群から選択される少なくとも1種の層3と、がこの順序で積層している、請求項に記載の積層体。
【請求項10】
請求項に記載の組成物Dを含む、食品包装材。