(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177258
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】シリカ粒子の製造方法、シリカゾルの製造方法、研磨方法、半導体ウェハの製造方法及び半導体デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
C01B 33/18 20060101AFI20241212BHJP
C01B 33/141 20060101ALI20241212BHJP
C09K 3/14 20060101ALI20241212BHJP
C09G 1/02 20060101ALI20241212BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
C01B33/18 Z
C01B33/141
C09K3/14 550D
C09G1/02
H01L21/304 622B
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024171238
(22)【出願日】2024-09-30
(62)【分割の表示】P 2021000740の分割
【原出願日】2021-01-06
(31)【優先権主張番号】P 2020016431
(32)【優先日】2020-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 裕太
(72)【発明者】
【氏名】出島 栄治
(72)【発明者】
【氏名】河瀬 康弘
(57)【要約】
【課題】金属、特に、亜鉛及び鉄の含有率を低減することができる、シリカ粒子の製造方法を提供する。
【解決手段】工程(1):メタノールをイオン交換樹脂により精製する工程、及び、工程(2):工程(1)で精製したメタノールを含む溶液(A)に、テトラアルコキシシランを含む溶液(B)を添加し、テトラアルコキシシランを加水分解反応及び縮合反応させる工程、を含み、イオン交換樹脂を乾燥させる工程を含まない、シリカ粒子の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程(1)及び工程(2)を含み、イオン交換樹脂を乾燥させる工程を含まない、シリカ粒子の製造方法。
工程(1):メタノールをイオン交換樹脂により精製する工程
工程(2):工程(1)で精製したメタノールを含む溶液(A)に、テトラアルコキシシランを含む溶液(B)を添加し、テトラアルコキシシランを加水分解反応及び縮合反応させる工程
【請求項2】
工程(1)におけるイオン交換樹脂が、陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂を含む、請求項1に記載のシリカ粒子の製造方法。
【請求項3】
陽イオン交換樹脂が、強酸性陽イオン交換樹脂を含む、請求項2に記載のシリカ粒子の製造方法。
【請求項4】
陰イオン交換樹脂が、強塩基性陰イオン交換樹脂を含む、請求項2又は3に記載のシリカ粒子の製造方法。
【請求項5】
溶液(B)が、工程(1)で精製したメタノールを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のシリカ粒子の製造方法。
【請求項6】
更に、以下の工程(3)を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載のシリカ粒子の製造方法。
工程(3):工程(2)で得られたシリカ粒子の分散液を濃縮し、分散媒を置換する工程
【請求項7】
更に、以下の工程(4)を含む、請求項6に記載のシリカ粒子の製造方法。
工程(4):工程(3)で得られたシリカ粒子の分散液を加圧加熱処理する工程
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載のシリカ粒子の製造方法を含む、シリカゾルの製造方法。
【請求項9】
シリカゾル中のシリカ粒子の含有率が、3質量%~50質量%である、請求項8に記載のシリカゾルの製造方法。
【請求項10】
シリカゾル中の亜鉛の含有率が、50ppb以下である、請求項8又は9に記載のシリカゾルの製造方法。
【請求項11】
シリカゾル中の鉄の含有率が、4ppb以下である、請求項8~10のいずれか1項に記載のシリカゾルの製造方法。
【請求項12】
請求項1~7のいずれか1項に記載のシリカ粒子の製造方法で得られたシリカ粒子を含む研磨組成物を用いて研磨する、研磨方法。
【請求項13】
請求項12に記載の研磨方法を含む、半導体ウェハの製造方法。
【請求項14】
請求項12に記載の研磨方法を含む、半導体デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリカ粒子の製造方法、シリカゾルの製造方法、研磨方法、半導体ウェハの製造方法及び半導体デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
金属や無機化合物等の材料の表面を研磨する方法として、研磨液を用いた研磨方法が知られている。中でも、半導体用のプライムシリコンウェハやこれらの再生シリコンウェハの最終仕上げ研磨、及び、半導体デバイス製造時の層間絶縁膜の平坦化、金属プラグの形成、埋め込み配線形成等の化学的機械的研磨(CMP)では、その表面状態が半導体特性に大きく影響するため、これらの部品の表面や端面は、極めて高精度に研磨されることが要求されている。
【0003】
このような精密研磨においては、シリカ粒子を含む研磨組成物が採用されており、その主成分である砥粒として、コロイダルシリカが広く用いられている。コロイダルシリカは、その製造方法の違いにより、四塩化珪素の熱分解によるもの(ヒュームドシリカ等)、水ガラス等の珪酸アルカリの脱イオンによるもの、アルコキシシランの加水分解反応及び縮合反応(一般に「ゾルゲル法」と称される)によるもの等が知られている。
【0004】
コロイダルシリカの製造方法に関し、これまで多くの検討がなされてきた。例えば、特許文献1~3には、アルコキシシランの加水分解反応及び縮合反応によりシリカゾルを製造する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11-60232号公報
【特許文献2】特開2005-060217号公報
【特許文献3】特開2018-108924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、アルコキシシランの加水分解反応及び縮合反応により得られるシリカ粒子は、金属の含有率が十分に少ないとは言えない。一般に、アルコキシシランの加水分解反応及び縮合反応によりシリカ粒子を製造する場合、アルコキシシランの溶媒や反応液として、メタノールに代表されるアルコールを用いることが多い。このメタノールに含まれる金属は、溶媒と共に留去されず、シリカ粒子の中に残留する。金属の中でも、亜鉛は、メタノールを製造する際の触媒として用いられるため、メタノール中に不純物として多く含まれる。また、鉄は、一般にメタノールを保管、運搬するのに用いられるステンレス製の缶や配管から溶出するため、メタノール中に不純物として多く含まれる。そのため、亜鉛と鉄は、シリカ粒子の分散液中に残留しやすい。シリカ粒子の分散液中に亜鉛や鉄等の金属を多く含むと、シリコンウェハ等の半導体材料を研磨する際に、金属が表面に付着し、電気特性に悪影響を及ぼすという課題を有する。
【0007】
特許文献1~3に開示されているアルコキシシランの加水分解反応及び縮合反応によりシリカ粒子を製造する方法は、用いるメタノール中の金属を低減させる処理を何ら行っていないため、得られるシリカ粒子の分散液中の金属含有率は、十分に少ないとは言えない。
【0008】
本発明は、このような課題を鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、金属、特に、亜鉛及び鉄の含有率を低減することができる、シリカ粒子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
従来のアルコキシシランの加水分解反応及び縮合反応によりシリカ粒子を製造する方法は、製造に用いるメタノール中の金属、特に、亜鉛及び鉄を十分に低減することができず、超高純度のシリカ粒子を得ることが困難であった。本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、メタノールをイオン交換樹脂により精製し、精製したメタノールをシリカ粒子の製造に用いることで、超高純度のシリカ粒子が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明の要旨は、以下の通りである。
[1]以下の工程(1)及び工程(2)を含む、シリカ粒子の製造方法。
工程(1):メタノールをイオン交換樹脂により精製する工程
工程(2):工程(1)で精製したメタノールを含む溶液(A)に、テトラアルコキシシランを含む溶液(B)を添加し、テトラアルコキシシランを加水分解反応及び縮合反応させる工程
[2]工程(1)におけるイオン交換樹脂が、陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂を含む、[1]に記載のシリカ粒子の製造方法。
[3]陽イオン交換樹脂が、強酸性陽イオン交換樹脂を含む、[2]に記載のシリカ粒子の製造方法。
[4]陰イオン交換樹脂が、強塩基性陰イオン交換樹脂を含む、[2]又は[3]に記載のシリカ粒子の製造方法。
[5]溶液(B)が、工程(1)で精製したメタノールを含む、[1]~[4]のいずれかに記載のシリカ粒子の製造方法。
[6]更に、以下の工程(3)を含む、[1]~[5]のいずれかに記載のシリカ粒子の製造方法。
工程(3):工程(2)で得られたシリカ粒子の分散液を濃縮し、分散媒を置換する工程
[7]更に、以下の工程(4)を含む、[6]に記載のシリカ粒子の製造方法。
工程(4):工程(3)で得られたシリカ粒子の分散液を加圧加熱処理する工程
[8][1]~[7]のいずれかに記載のシリカ粒子の製造方法を含む、シリカゾルの製造方法。
[9]シリカゾル中のシリカ粒子の含有率が、10質量%~25質量%である、[8]に記載のシリカゾルの製造方法。
[10]シリカゾル中の亜鉛の含有率が、50ppb以下である、[8]又は[9]に記載のシリカゾルの製造方法。
[11]シリカゾル中の鉄の含有率が、4ppb以下である、[8]~[10]のいずれかに記載のシリカゾルの製造方法。
[12][1]~[7]のいずれかに記載のシリカ粒子の製造方法で得られたシリカ粒子を含む研磨組成物を用いて研磨する、研磨方法。
[13][12]に記載の研磨方法を含む、半導体ウェハの製造方法。
[14][12]に記載の研磨方法を含む、半導体デバイスの製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明のシリカ粒子の製造方法は、得られるシリカ粒子の金属、特に、亜鉛及び鉄の含有率を低減することができる。また、本発明のシリカゾルの製造方法は、得られるシリカゾルの金属、特に、亜鉛及び鉄の含有率を低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明について詳述するが、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更して実施することができる。尚、本明細書において「~」という表現を用いる場合、その前後の数値又は物性値を含む表現として用いる。
【0013】
本発明のシリカ粒子の製造方法は、以下の工程(1)及び工程(2)を含む。
工程(1):メタノールをイオン交換樹脂により精製する工程
工程(2):工程(1)で精製したメタノールを含む溶液(A)に、テトラアルコキシシランを含む溶液(B)を添加し、テトラアルコキシシランを加水分解反応及び縮合反応させる工程
【0014】
(工程(1))
工程(1)は、メタノールをイオン交換樹脂により精製する工程である。
【0015】
メタノールは、市販品を用いればよく、例えば、関東化学株式会社製のメタノール、住友化学株式会社製のメタノール、キシダ化学株式会社製のメタノール、高杉製薬株式会社製のメタノール、三菱ケミカル株式会社製のメタノール等が挙げられる。
【0016】
イオン交換樹脂とは、イオン交換能を有する官能基が導入された化学構造を有する合成樹脂である。
【0017】
イオン交換樹脂は、陽イオンとしてメタノール中に存在する金属の除去性に優れることから、陽イオン交換樹脂を用いることが好ましく、精製工程でのメタノールのpHの変動を抑制することができることから、陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂とを併用することがより好ましい。
【0018】
陽イオン交換樹脂としては、例えば、三菱ケミカル株式会社の「ダイヤイオン(商品名)」SKシリーズ、三菱ケミカル株式会社の「ダイヤイオン(商品名)」PKシリーズ等の強酸性陽イオン交換樹脂;三菱ケミカル株式会社製の「ダイヤイオン(商品名)」WKシリーズ、三菱ケミカル株式会社製の「ダイヤイオン(商品名)」WK40L等の弱酸性陽イオン交換樹脂等が挙げられる。これらの陽イオン交換樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの陽イオン交換樹脂の中でも、中性塩に対しても陽イオン交換能力に優れることから、強酸性陽イオン交換樹脂が好ましい。
【0019】
陽イオン交換樹脂のイオン交換基としては、例えば、スルホン酸基、カルボン酸基等が挙げられる。これらの陽イオン交換樹脂のイオン交換基は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの陽イオン交換樹脂のイオン交換基の中でも、中性塩に対しても陽イオン交換能力に優れることから、スルホン酸基が好ましい。
【0020】
陰イオン交換樹脂としては、例えば、三菱ケミカル株式会社製の「ダイヤイオン(商品名)」SAシリーズ等の強塩基性陰イオン交換樹脂;三菱ケミカル株式会社製の「ダイヤイオン(商品名)」WA10、三菱ケミカル株式会社製の「ダイヤイオン(商品名)」WA20)等の弱塩基性陰イオン交換樹脂等が挙げられる。これらの陰イオン交換樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの陰イオン交換樹脂の中でも、中性塩に対しても陰イオン交換能力に優れることから、強塩基性陰イオン交換樹脂が好ましい。
【0021】
陰イオン交換樹脂のイオン交換基としては、例えば、トリメチルアンモニウム基、ジメチルエタノールアンモニウム基、ポリアミン基、3級アミノ基等が挙げられる。これらの陰イオン交換樹脂のイオン交換基は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの陰イオン交換樹脂のイオン交換基の中でも、中性塩に対しても陰イオン交換能力に優れることから、トリメチルアンモニウム基が好ましい。
【0022】
イオン交換樹脂の材質としては、例えば、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂等が挙げられる。これらのイオン交換樹脂の材質の中でも、イオン交換能を有する官能基を容易に導入することができ、精製能力に優れることから、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂が好ましく、スチレン系樹脂がより好ましい。
【0023】
イオン交換樹脂の形状としては、例えば、ゲル型、ポーラス型等が挙げられる。これらのイオン交換樹脂の形状の中でも、メタノールの精製効率に優れることから、ゲル型が好ましい。
【0024】
メタノールをイオン交換樹脂で精製する方法は、特に限定されることなく、例えば、イオン交換樹脂が充填された容器にメタノールを流す方法、イオン交換樹脂とメタノールを容器に入れて接触させた後にイオン交換樹脂を濾別してメタノールを回収する方法等が挙げられる。これらの精製方法の中でも、メタノールの精製効率に優れることから、イオン交換樹脂が充填された容器にメタノールを流す方法が好ましい。
【0025】
(工程(2))
工程(2)は、工程(1)で精製したメタノールを含む溶液(A)に、テトラアルコキシシランを含む溶液(B)を添加し、テトラアルコキシシランを加水分解反応及び縮合反応させる工程である。
【0026】
溶液(A)は、工程(1)で精製したメタノールを含む。
【0027】
溶液(A)は、テトラアルコキシシランの加水分解及び縮合反応を促進させることから、工程(1)で精製したメタノール以外に、水を含むことが好ましい。
【0028】
溶液(A)は、テトラアルコキシシランの加水分解反応及び縮合反応の反応速度を高めることができることから、工程(1)で精製したメタノール以外に、アルカリ触媒を含むことが好ましい。
【0029】
溶液(A)中のアルカリ触媒としては、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、アンモニア、尿素、エタノールアミン、テトラメチル水酸化アンモニウム等が挙げられる。これらのアルカリ触媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのアルカリ触媒の中でも、触媒作用に優れ、金属の混入を抑制することができ、揮発性が高く加水分解反応及び縮合反応後の除去性に優れることから、アンモニアが好ましい。
【0030】
溶液(B)は、テトラアルコキシシランを含む。
【0031】
溶液(B)中のテトラアルコキシシランとしては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン等が挙げられる。これらのテトラアルコキシシランは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのテトラアルコキシシランの中でも、加水分解反応が早く、未反応物が残留しづらく、生産性に優れ、安定なシリカゾルを容易に得ることができることから、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランが好ましく、テトラメトキシシランがより好ましい。
【0032】
シリカ粒子の原料は、テトラアルコキシシランの低縮合物等のテトラアルコキシシラン以外の原料を用いてもよいが、反応性に優れることから、シリカ粒子を構成する全原料100質量%中、テトラアルコキシシランが50質量%以上で、テトラアルコキシシラン以外の原料が50質量%以下であることが好ましく、テトラアルコキシシランが90質量%以上で、テトラアルコキシシラン以外の原料が10質量%以下であることがより好ましい。
【0033】
溶液(B)は、溶媒を含まずテトラアルコキシシランのみでもよいが、反応液中でのテトラアルコキシシランの分散性に優れることから、溶媒を含むことが好ましい。
【0034】
溶液(B)中の溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール等が挙げられる。これらの溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの溶媒の中でも、加水分解反応及び縮合反応で用いるものと副生するものとが同一で、製造上の利便性に優れることから、アルコールが好ましく、メタノールがより好ましく、シリカ粒子の金属の含有率を低減することができることから、工程(1)で精製したメタノールが更に好ましい。
【0035】
テトラアルコキシシランの加水分解反応及び縮合反応の反応速度を高めることができることから、テトラアルコキシシランを含む溶液(B)以外にも、アルカリ触媒を含む溶液(C)を溶液(A)に添加することが好ましい。
【0036】
溶液(C)中のアルカリ触媒としては、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、アンモニア、尿素、エタノールアミン、テトラメチル水酸化アンモニウム等が挙げられる。これらのアルカリ触媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのアルカリ触媒の中でも、触媒作用に優れ、粒子形状を制御しやすく、金属の混入を抑制することができ、揮発性が高く加水分解反応及び縮合反応後の除去性に優れることから、アンモニアが好ましい。
【0037】
溶液(C)は、反応液中のアルカリ触媒の濃度の変動を小さくすることができることから、溶媒を含むことが好ましい。
【0038】
溶液(C)中の溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール等が挙げられる。これらの溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの溶媒の中でも、加水分解反応及び縮合反応で用いるものと副生するものとが同一で、製造上の利便性に優れることから、水、アルコールが好ましく、水がより好ましい。
【0039】
本発明のシリカ粒子の製造方法は、不必要な成分を除去し、必要な成分を添加することができることから、更に、以下の工程(3)を含むことが好ましい。
工程(3):工程(2)で得られたシリカ粒子の分散液を濃縮し、分散媒を添加する工程
【0040】
分散媒は、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール等が挙げられる。これらの分散媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの分散媒の中でも、シリカ粒子との親和性に優れることから、水、アルコールが好ましく、水がより好ましい。
【0041】
本発明のシリカ粒子の製造方法は、シリカ粒子の縮合度を高めることができることから、更に、以下の工程(4)を含むことが好ましい。
工程(4):工程(3)で得られたシリカ粒子の分散液を加圧加熱処理する工程
【0042】
加圧加熱処理の圧力は、0.10MPa~2.3MPaが好ましく、0.14MPa~1.0MPaがより好ましい。加圧加熱処理の圧力が0.10MPa以上であると、シリカ粒子の縮合度を高めることができる。また、加圧加熱処理の圧力が2.3MPa以下であると、平均1次粒子径、平均2次粒子径、会合比を大きく変化させることなくシリカ粒子を製造することができ、シリカゾルの分散安定性に優れる。
加圧は、密閉した状態でシリカ粒子の分散液を分散媒の沸点以上に加熱すればよい。密閉した状態でシリカ粒子の水分散液を100℃以上に加熱した場合、圧力は、その温度の飽和水蒸気圧となる。
【0043】
加圧加熱処理の温度は、100℃~220℃が好ましく、110℃~180℃がより好ましい。加圧加熱処理の温度が100℃以上であると、シリカ粒子の縮合度を高めることができる。加圧加熱処理の温度が220℃以下であると、平均1次粒子径、平均2次粒子径、会合比を大きく変化させることなくシリカ粒子を製造することができ、シリカゾルの分散安定性に優れる。
【0044】
加圧加熱処理の時間は、0.25時間~10時間が好ましく、0.5時間~8時間がより好ましい。加圧加熱処理の時間が0.25時間以上であると、シリカ粒子の縮合度を高めることができる。加圧加熱処理の時間が10時間以下であると、平均1次粒子径、平均2次粒子径、会合比を大きく変化させることなくシリカ粒子を製造することができ、シリカゾルの分散安定性に優れる。
【0045】
加圧加熱処理は、平均1次粒子径、平均2次粒子径、会合比を大きく変化させることなくシリカ粒子の縮合度を高めることができることから、水分散液中で行うことがより好ましい。
【0046】
加圧加熱処理を水分散液中で行う際のpHは、6.0~8.0が好ましく、6.5~7.8がより好ましい。加圧加熱処理を水分散液中で行う際のpHが6.0以上であると、シリカゾルのゲル化を抑制することができる。また、加圧加熱処理を水分散液中で行う際のpHが8.0以下であると、平均1次粒子径、平均2次粒子径、会合比を大きく変化させることなくシリカ粒子の縮合度を高めることができる。
【0047】
シリカ粒子の平均1次粒子径は、5nm~100nmが好ましく、10nm~60nmがより好ましい。シリカ粒子の平均1次粒子径が5nm以上であると、シリカゾルの保存安定性に優れる。また、シリカ粒子の平均1次粒子径が100nm以下であると、シリコンウェハに代表される被研磨体の表面粗さや傷を低減でき、シリカ粒子の沈降を抑制することができる。
【0048】
シリカ粒子の平均1次粒子径は、BET法により測定する。具体的には、比表面積自動測定装置を用いてシリカ粒子の比表面積を測定し、下記式(1)を用いて平均1次粒子径を算出する。
平均1次粒子径(nm)=6000/(比表面積(m2/g)×密度(g/cm3)) ・・・ (1)
【0049】
シリカ粒子の平均1次粒子径は、公知の条件・方法により、所望の範囲に設定することができる。
【0050】
シリカ粒子の平均2次粒子径は、10nm~200nmが好ましく、20nm~100nmがより好ましい。シリカ粒子の平均2次粒子径が10nm以上であると、研磨後の洗浄における粒子等の除去性に優れ、シリカゾルの保存安定性に優れる。シリカ粒子の平均2次粒子径が200nm以下であると、研磨時のシリコンウェハに代表される被研磨体の表面粗さや傷を低減でき、研磨後の洗浄における粒子等の除去性に優れ、シリカ粒子の沈降を抑制することができる。
【0051】
シリカ粒子の平均2次粒子径は、DLS法により測定する。具体的には、動的光散乱粒子径測定装置を用いて測定する。
【0052】
シリカ粒子の平均2次粒子径は、公知の条件・方法により、所望の範囲に設定することができる。
【0053】
シリカ粒子のcv値は、15~50が好ましく、20~40がより好ましく、25~35が更に好ましい。シリカ粒子のcv値が15以上であると、シリコンウェハに代表される被研磨体に対する研磨レートに優れ、シリコンウェハの生産性に優れる。また、シリカ粒子のcv値が50以下であると、研磨時のシリコンウェハに代表される被研磨体の表面粗さや傷を低減でき、研磨後の洗浄における粒子等の除去性に優れる。
【0054】
シリカ粒子のcv値は、動的光散乱粒子径測定装置を用いてシリカ粒子の平均2次粒子径を測定し、下記式(2)を用いて算出する。
cv値=(標準偏差(nm)/平均2次粒子径(nm))×100 ・・・ (2)
【0055】
シリカ粒子の会合比は、1.0~4.0が好ましく、1.1~3.0がより好ましい。シリカ粒子の会合比が1.0以上であると、シリコンウェハに代表される被研磨体に対する研磨レートに優れ、シリコンウェハの生産性に優れる。また、シリカ粒子の会合比が4.0以下であると、研磨時のシリコンウェハに代表される被研磨体の表面粗さや傷を低減でき、シリカ粒子の凝集を抑制することができる。
【0056】
シリカ粒子の会合比は、前述の測定方法にて測定した平均1次粒子径と前述の測定方法にて測定した平均2次粒子径とから、下記式(3)を用いて会合比を算出する。
会合比=平均2次粒子径/平均1次粒子径 ・・・ (3)
【0057】
シリカ粒子の形状としては、例えば、球状、鎖状、繭状(こぶ状や落花生状とも称される)、異形状(例えば、疣状、屈曲状、分岐状等)等が挙げられる。これらのシリカ粒子の形状の中でも、研磨時のシリコンウェハに代表される被研磨体の表面粗さや傷を低減させたい場合は、球状が好ましく、シリコンウェハに代表される被研磨体に対する研磨レートをより高めたい場合は、異形状が好ましい。
【0058】
シリカ粒子は、機械的強度、保存安定性に優れることから、細孔を有しないことが好ましい。
シリカ粒子の細孔の有無は、窒素を吸着ガスとした吸着等温線を用いたBET多点法解析により確認する。
【0059】
(シリカゾルの製造方法)
本発明のシリカゾルの製造方法は、本発明のシリカ粒子の製造方法を含む。
【0060】
シリカゾルは、本発明のシリカ粒子の製造方法で得られたシリカ粒子の分散液をそのまま用いてもよく、工程(2)で得られた反応液中の成分のうち、不必要な成分を除去し、必要な成分を添加して製造してもよい。
【0061】
シリカゾルの製造において、粗大粒子を除去したり、微粒子による凝集を回避したりするため、ろ過工程を含んでもよい。
ろ過の方法としては、例えば、常圧下での自然ろ過、減圧ろ過、加圧ろ過、遠心ろ過等が挙げられる。
ろ過は、任意のタイミング、任意の回数行ってもよいが、研磨組成物の保存安定性や研磨特性に優れることから、研磨組成物の調製直前に行うことが好ましい。
【0062】
シリカゾルは、シリカ粒子及び分散媒を含むことが好ましい。
シリカゾルの分散媒は、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール等が挙げられる。これらのシリカゾルの分散媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのシリカゾルの分散媒の中でも、シリカ粒子との親和性に優れることから、水、アルコールが好ましく、水がより好ましい。
【0063】
シリカゾル中のシリカ粒子の含有率は、シリカゾル全量100質量%中、3質量%~50質量%が好ましく、4質量%~40質量%がより好ましく、5質量%~30質量%が更に好ましい。シリカゾル中のシリカ粒子の含有率が3質量%以上であると、シリコンウェハに代表される被研磨体に対する研磨レートに優れる。また、シリカゾル中のシリカ粒子の含有率が50質量%以下であると、シリカゾルや研磨組成物中のシリカ粒子の凝集を抑制することができ、シリカゾルや研磨組成物の保存安定性に優れる。
【0064】
シリカゾル中の分散媒の含有率は、シリカゾル全量100質量%中、50質量%~97質量%が好ましく、60質量%~96質量%がより好ましく、70質量%~95質量%が更に好ましい。シリカゾル中の分散媒の含有率が50質量%以上であると、シリカゾルや研磨組成物中のシリカ粒子の凝集を抑制することができ、シリカゾルや研磨組成物の保存安定性に優れる。また、シリカゾル中の分散媒の含有率が97質量%以下であると、シリコンウェハに代表される被研磨体に対する研磨レートに優れる。
【0065】
シリカゾル中のシリカ粒子や分散媒の含有率は、本発明のシリカ粒子の製造方法で得られたシリカ粒子の分散液の成分のうち、不必要な成分を除去し、必要な成分を添加することで、所望の範囲に設定することができる。
【0066】
シリカゾルは、シリカ粒子及び分散媒以外に、その性能を損なわない範囲において、必要に応じて、酸化剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、pH緩衝剤、界面活性剤、キレート剤、抗菌殺生物剤等の他の成分を含んでもよい。
特に、シリカゾルの保存安定性に優れることから、シリカゾル中に抗菌殺生物剤を含ませることが好ましい。
【0067】
抗菌殺生物剤としては、例えば、過酸化水素、アンモニア、第四級アンモニウム水酸化物、第四級アンモニウム塩、エチレンジアミン、グルタルアルデヒド、過酸化水素、p-ヒドロキシ安息香酸メチル、亜塩素酸ナトリウム等が挙げられる。これらの抗菌殺生物剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの抗菌殺生物剤の中でも、シリカゾルとの親和性に優れることから、過酸化水素が好ましい。
殺生物剤は、一般に殺菌剤と言われるものも含む。
【0068】
シリカゾル中の抗菌殺生物剤の含有率は、シリカゾル全量100質量%中、0.0001質量%~10質量%が好ましく、0.001質量%~1質量%がより好ましい。シリカゾル中の抗菌殺生物剤の含有率が0.0001質量%質量%以上であると、シリカゾルの保存安定性に優れる。シリカゾル中の抗菌殺生物剤の含有率が10質量%以下であると、シリカゾルの本来の性能を損なわない。
【0069】
シリカゾルのpHは、6.0~8.0が好ましく、6.5~7.8がより好ましい。シリカゾルのpHが6.0以上であると、分散安定性に優れて、シリカ粒子の凝集を抑制することができる。また、シリカゾルのpHが8.0以下であると、シリカ粒子の溶解を防ぎ、長期間の保存安定性に優れる。
シリカゾルのpHは、pH調整剤を添加することで、所望の範囲に設定することができる。
【0070】
半導体デバイスのシリコンウェハの研磨において、金属が被研磨体の表面に付着・汚染することで、シリコンウェハ特性に悪影響を及ぼすと共に、ウェハ内部に拡散して品質が劣化するため、このようなシリコンウェハによって製造された半導体デバイスの性能が著しく低下する。
また、シリカゾルに金属が存在すると、酸性を示す表面シラノール基と金属との配位的な相互作用が発生し、表面シラノール基の化学的性質(酸性度等)を変化させたり、シリカ粒子表面の立体的な環境(シリカ粒子の凝集のしやすさ等)を変化させたり、研磨レートに影響を及ぼす。
【0071】
シリカゾル中の亜鉛の含有率は、50ppb以下が好ましく、30ppb以下がより好ましい。シリカゾル中の亜鉛含有率が50ppb以下であると、シリコンウェハを研磨する際に、シリコンウェハ表面の汚染を低減することができる。
【0072】
シリカゾル中の鉄の含有率は4ppb以下が好ましく、3ppb以下がより好ましい。シリカゾル中の鉄含有率が4ppb以下であると、シリコンウェハを研磨する際に、シリコンウェハ表面の汚染を低減することができる。
【0073】
シリカゾル中の亜鉛及び鉄の含有率は、高周波誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)により測定する。具体的には、シリカゾル0.5gを正確に量り取り、硫酸とフッ酸を加え、加温・溶解・蒸発させ、残存した液滴に純水を加えて試験液を作成し、高周波誘導結合プラズマ質量分析装置を用いて測定する。
【0074】
(研磨組成物)
本発明のシリカ粒子の製造方法で得られるシリカ粒子は、研磨組成物として好適に用いることができる。
研磨組成物は、前述したシリカゾル及び水溶性高分子を含むことが好ましい。
【0075】
水溶性高分子は、シリコンウェハに代表される被研磨体に対する研磨組成物の濡れ性を高める。水溶性高分子は、水親和性の高い官能基を保有する高分子であることが好ましく、この水親和性の高い官能基とシリカ粒子の表面シラノール基との親和性が高く、研磨組成物中でより近傍にシリカ粒子と水溶性高分子とが安定して分散する。そのため、シリコンウェハに代表される被研磨体への研磨の際、シリカ粒子と水溶性高分子との効果が相乗的に機能する。
【0076】
水溶性高分子としては、例えば、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン骨格を有する共重合体、ポリオキシアルキレン構造を有する重合体等が挙げられる。
【0077】
セルロース誘導体としては、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、加水分解処理を施したヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。
ポリビニルピロリドン骨格を有する共重合体としては、例えば、ポリビニルアルコールとポリビニルピロリドンとのグラフト共重合体等が挙げられる。
ポリオキシアルキレン構造を有する重合体としては、例えば、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの共重合体等が挙げられる。
【0078】
これらの水溶性高分子は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの水溶性高分子の中でも、シリカ粒子の表面シラノール基との親和性が高く、相乗的に作用して被研磨体の表面に良好な親水性を与えることから、セルロース誘導体が好ましく、ヒドロキシエチルセルロースがより好ましい。
【0079】
水溶性高分子の質量平均分子量は、1,000~3,000,000が好ましく、5,000~2,000,000がより好ましく、10,000~1,000,000が更に好ましい。水溶性高分子の質量平均分子量が1,000以上であると、研磨組成物の親水性が向上する。また、水溶性高分子の質量平均分子量が3,000,000以下であると、シリカゾルとの親和性に優れ、シリコンウェハに代表される被研磨体に対する研磨レートに優れる。
【0080】
水溶性高分子の質量平均分子量は、ポリエチレンオキサイド換算で、0.1mol/LのNaCl溶液を移動相とする条件で、サイズ排除クロマトグラフィーにより測定する。
【0081】
研磨組成物中の水溶性高分子の含有率は、研磨組成物全量100質量%中、0.02質量%~10質量%が好ましく、0.05質量%~5質量%がより好ましい。研磨組成物中の水溶性高分子の含有率が0.02質量%以上であると、研磨組成物の親水性が向上する。また、研磨組成物中の水溶性高分子の含有率が10質量%以下であると、研磨組成物調製時のシリカ粒子の凝集を抑制することができる。
【0082】
研磨組成物は、シリカゾル及び水溶性高分子以外に、その性能を損なわない範囲において、必要に応じて、塩基性化合物、研磨促進剤、界面活性剤、親水性化合物、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、pH緩衝剤、界面活性剤、キレート剤、抗菌・殺生物剤等の他の成分を含んでもよい。
特に、シリコンウェハに代表される被研磨体の表面に化学的な作用を与えて化学的研磨(ケミカルエッチング)ができ、シリカ粒子の表面シラノール基との相乗効果により、シリコンウェハに代表される被研磨体の研磨速度を向上させることができることから、研磨組成物中に塩基性化合物を含ませることが好ましい。
【0083】
塩基性化合物としては、例えば、有機塩基性化合物、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸水素塩、アルカリ金属炭酸塩、アンモニア等が挙げられる。これらの塩基性化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの塩基性化合物の中でも、水溶性が高く、シリカ粒子や水溶性高分子との親和性に優れることから、アンモニア、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウムが好ましく、アンモニア、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウムがより好ましく、アンモニアが更に好ましい。
【0084】
研磨組成物中の塩基性化合物の含有率は、研磨組成物全量100質量%中、0.001質量%~5質量%が好ましく、0.01質量%~3質量%がより好ましい。研磨組成物中の塩基性化合物の含有率が0.001質量%以上であると、シリコンウェハに代表される被研磨体の研磨速度を向上させることができる。また、研磨組成物中の塩基性化合物の含有率が5質量%以下であると、研磨組成物の安定性に優れる。
【0085】
研磨組成物のpHは、8.0~12.0が好ましく、9.0~11.0がより好ましい。研磨組成物のpHが8.0以上であると、研磨組成物中のシリカ粒子の凝集を抑制することができ、研磨組成物の分散安定性に優れる。また、研磨組成物のpHが12.0以下であると、シリカ粒子の溶解を抑制することができ、研磨組成物の安定性に優れる。
研磨組成物のpHは、pH調整剤を添加することで、所望の範囲に設定することができる。
【0086】
研磨組成物は、本発明のシリカゾル、水溶性高分子、及び、必要に応じて、他の成分を混合することで得られるが、保管・運搬を考慮し、一旦高濃度で調製し、研磨直前に水等で希釈してもよい。
【0087】
(研磨方法)
本発明の研磨方法は、本発明のシリカ粒子の製造方法で得られたシリカ粒子を含む研磨組成物を用いて研磨する方法である。
研磨組成物は、前述した研磨組成物を用いることが好ましい。
具体的な研磨の方法としては、例えば、シリコンウェハの表面を研磨パッドに押し付け、研磨パッド上に本発明の研磨組成物を滴下し、シリコンウェハの表面を研磨する方法が挙げられる。
【0088】
(用途)
本発明のシリカ粒子の製造方法で得られたシリカ粒子や本発明のシリカゾルの製造方法で得られたシリカゾルは、研磨用途に好適に用いることができ、例えば、シリコンウェハ等の半導体材料の研磨、ハードディスク基板等の電子材料の研磨、集積回路を製造する際の平坦化工程における研磨(化学的機械的研磨)、フォトマスクや液晶に用いる合成石英ガラス基板の研磨、磁気ディスク基板の研磨等に用いることができ、中でもシリコンウェハの研磨や化学的機械的研磨に特に好適に用いることができる。
【実施例0089】
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
【0090】
(平均1次粒子径の測定)
実施例及び比較例で得られたシリカゾルを150℃で乾燥し、比表面積自動測定装置「BELSORP-MR1」(機種名、マイクロトラック・ベル株式会社)を用いて、シリカ粒子の比表面積を測定し、下記式(1)を用い、密度を2.2g/cm3とし、平均1次粒子径を算出した。
平均1次粒子径(nm)=6000/(比表面積(m2/g)×密度(g/cm3)) ・・・ (1)
【0091】
(平均2次粒子径・cv値の測定)
実施例及び比較例で得られたシリカゾルを、動的光散乱粒子径測定装置「ゼーターサイザーナノZS」(機種名、マルバーン社製)を用いて、シリカ粒子の平均2次粒子径を測定し、下記式(2)を用いてcv値を算出した。
cv値=(標準偏差(nm)/平均2次粒子径(nm))×100 ・・・ (2)
【0092】
(会合比の算出)
測定した平均1次粒子径と平均2次粒子径とから、下記式(3)を用いて会合比を算出した。
会合比=平均2次粒子径/平均1次粒子径 ・・・ (3)
【0093】
(メタノール中の亜鉛及び鉄の含有率の測定)
参考例で得られたメタノール10gを正確に量り取り、ホットプレートで蒸発乾固させた。ホットプレート上に残った固体に硝酸を加え加温溶解させた後、残存した液滴を回収、定容して試験液を作成し、高周波誘導結合プラズマ質量分析装置「ELEMENT2」(機種名、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)を用いて、亜鉛及び鉄の含有率を測定した。
【0094】
(シリカゾル中の亜鉛及び鉄の含有率の測定)
実施例及び比較例で得られたシリカゾル0.5gを正確に量り取り、硫酸とフッ酸を加え、加温・溶解・蒸発させ、残存した液滴に純水を加えて試験液を作成し、高周波誘導結合プラズマ質量分析装置「ELEMENT2」(機種名、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)を用いて、亜鉛及び鉄の含有率を測定した。
【0095】
[比較参考例1]
キシダ化学株式会社製のメタノールをそのまま用いた。
【0096】
[比較参考例2]
三菱ケミカル株式会社製のメタノールをそのまま用いた。
【0097】
[参考例1]
内径10mm、長さ400mmのテトラフルオロエチレン樹脂管に、イオン交換樹脂(「ダイヤイオン(商品名)」SMT200L、三菱ケミカル株式会社製、イオン交換基がスルホン酸基であるゲル型のスチレン系の強酸性陽イオン交換樹脂及びイオン交換基がトリメチルアンモニウム基であるゲル型のスチレン系の強塩基性陰イオン交換樹脂を含む)を充填した。テトラフルオロエチレン樹脂管の一端から比較参考例2のメタノールを流し入れてイオン交換樹脂層を通過させ、メタノールを精製した。
イオン交換樹脂をテトラフルオロエチレン樹脂管に充填した際のイオン交換樹脂層の高さは、175mmとした。また、メタノールを流し入れる速度は、38mL/分とした。
【0098】
[参考例2]
イオン交換樹脂が「ダイヤイオン(商品名)」SMT100L(三菱ケミカル株式会社製、イオン交換基がスルホン酸基であるゲル型のスチレン系の強酸性陽イオン交換樹脂及びイオン交換基がトリメチルアンモニウム基であるゲル型のスチレン系の強塩基性陰イオン交換樹脂を含む)とした以外は、参考例1と同様に操作を行い、メタノールを精製した。
【0099】
[参考例3]
イオン交換樹脂を「ダイヤイオン(商品名)」SKT20L(三菱ケミカル株式会社製、イオン交換基がスルホン酸基であるゲル型のスチレン系の強酸性陽イオン交換樹脂)とした以外は、参考例1と同様に操作を行い、メタノールを精製した。
【0100】
[参考例4]
イオン交換樹脂を「ダイヤイオン(商品名)」SAT20L(三菱ケミカル株式会社製、イオン交換基がトリメチルアンモニウム基であるゲル型のスチレン系の強塩基性陰イオン交換樹脂)とした以外は、参考例1と同様に操作を行い、メタノールを精製した。
【0101】
[参考例5]
イオン交換樹脂を「ダイヤイオン(商品名)」WK100(三菱ケミカル株式会社製、イオン交換基がカルボン酸基であるポーラス型のアクリル系の弱酸性陽イオン交換樹脂)とした以外は、参考例1と同様に操作を行い、メタノールを精製した。
【0102】
[参考例6]
イオン交換樹脂を「ダイヤイオン(商品名)」WA20(三菱ケミカル株式会社製、イオン交換基がポリアミン基であるポーラス型のスチレン系の弱塩基性陰イオン交換樹脂)とした以外は、参考例1と同様に操作を行い、メタノールを精製した。
【0103】
[参考例7]
イオン交換樹脂を「ダイヤイオン(商品名)」WA30(三菱ケミカル株式会社製、イオン交換基が3級アミノ基であるポーラス型のスチレン系の弱塩基性陰イオン交換樹脂)とした以外は、参考例1と同様に操作を行い、メタノールを精製した。
【0104】
[比較参考例3]
イオン交換樹脂を合成吸着剤HP20(三菱ケミカル株式会社製、イオン交換基がないポーラス型のスチレン系の合成吸着剤)とした以外は、参考例1と同様に操作を行い、メタノールを精製した。
【0105】
参考例及び比較参考例で得られたメタノールの評価結果を、表1に示す。
【0106】
【0107】
[実施例1]
テトラメトキシシランと参考例1で得られたメタノールとを4.4:1(体積比)で混合した溶液(B)と4質量%アンモニア水溶液の溶液(C)とをそれぞれ調液した。温度計、攪拌機、供給管及び留出ラインを備えた反応槽に、参考例1で得られたメタノール、純水及びアンモニアを混合した溶液(A)を仕込んだ。溶液(A)中の水の濃度を7.5質量%、溶液(A)中のアンモニアの濃度を1.2質量%とした。
反応液の温度を31℃に保持したまま、溶液(A)48体積%に、溶液(B)41体積%及び溶液(C)11体積%を、211分間かけてそれぞれ等速で滴下し、シリカ粒子の分散液を得た。
得られたシリカ粒子の分散液を、シリカ粒子の含有率が約20質量%になるように、液量を純水追加で調整しながら、温度を上げてメタノールとアンモニアの除去を行い、シリカ粒子の含有率が約20質量%のシリカ粒子の分散液を得て、得られたシリカ粒子の分散液をそのままシリカゾルとして用いた。
得られたシリカゾルの評価結果を、表2に示す。
【0108】
[比較例1]
溶液(A)及び溶液(B)に比較参考例1のメタノールを用いた以外は、実施例1と同様に操作し、シリカ粒子の含有率が約20質量%のシリカ粒子の分散液を得て、得られたシリカ粒子の分散液をそのままシリカゾルとして用いた。
得られたシリカゾルの評価結果を、表2に示す。
【0109】
【0110】
表2から分かるように、イオン交換樹脂により精製しなかったメタノールを用いた比較例1に対し、イオン交換樹脂により精製したメタノールを用いた実施例1で得られたシリカゾルは、平均1次粒子径、平均2次粒子径、cv値及び会合比がほぼ同一であるにもかかわらず、シリカゾル中の亜鉛及び鉄の含有率を大幅に低減させることができた。実施例1で製造したシリカゾルを含む研磨組成物を用いてシリコンウェハを研磨した際には、シリコンウェハ表面の汚染を少なくできると期待される。
本発明のシリカ粒子の製造方法で得られたシリカ粒子や本発明のシリカゾルの製造方法で得られたシリカゾルは、研磨用途に好適に用いることができ、例えば、シリコンウェハ等の半導体材料の研磨、ハードディスク基板等の電子材料の研磨、集積回路を製造する際の平坦化工程における研磨(化学的機械的研磨)、フォトマスクや液晶に用いる合成石英ガラス基板の研磨、磁気ディスク基板の研磨等に用いることができ、中でもシリコンウェハの研磨や化学的機械的研磨に特に好適に用いることができる。