(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177522
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】基板処理方法、基板処理装置、プログラム及びコンピュータ記憶媒体
(51)【国際特許分類】
H01L 21/02 20060101AFI20241212BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
H01L21/02 B
H01L21/304 622J
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024176903
(22)【出願日】2024-10-09
(62)【分割の表示】P 2022509457の分割
【原出願日】2021-03-02
(31)【優先権主張番号】P 2020053201
(32)【優先日】2020-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【弁理士】
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(74)【代理人】
【識別番号】100212059
【弁理士】
【氏名又は名称】三根 卓也
(74)【代理人】
【識別番号】100233814
【弁理士】
【氏名又は名称】矢田 充洋
(72)【発明者】
【氏名】田之上 隼斗
(72)【発明者】
【氏名】山下 陽平
(57)【要約】
【課題】第1の基板と第2の基板が接合された重合基板において、第2の基板を第1の基板から適切に剥離する。
【解決手段】第1の基板と第2の基板が接合された重合基板を処理する基板処理方法であって、前記第2の基板には、前記第2の基板側から剥離促進層及びレーザ吸収層がこの順に積層して形成され、前記基板処理方法は、前記第2の基板側から前記レーザ吸収層に対してレーザ光を照射することで、前記レーザ吸収層と前記剥離促進層の界面に応力を発生させることと、前記レーザ吸収層と前記剥離促進層の境界に沿って前記第1の基板から前記第2の基板を剥離することと、を含む。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基板と第2の基板が接合された重合基板を処理する基板処理方法であって、
前記第2の基板には、前記第2の基板側から剥離促進層及びレーザ吸収層がこの順に積層して形成され、
前記基板処理方法は、
前記第2の基板側から前記レーザ吸収層に対してレーザ光を照射することで、前記レーザ吸収層と前記剥離促進層の界面に応力を発生させることと、
前記レーザ吸収層と前記剥離促進層の境界に沿って前記第1の基板から前記第2の基板を剥離することと、を含む、基板処理方法。
【請求項2】
前記第2の基板には、前記第2の基板側から前記剥離促進層、前記レーザ吸収層、デバイス層、及び前記第1の基板と接合される表面膜がこの順に積層して形成されている、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記第2の基板には、前記レーザ吸収層と前記デバイス層との間において反射膜が形成されている、請求項2に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記第1の基板には、複数のデバイスを含むデバイス層が形成されている、請求項2に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記第1の基板の前記デバイス層にはさらに表面膜が形成され、当該表面膜を介して、前記第2の基板の前記表面膜と接合されている、請求項4に記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記第1の基板及び前記第2の基板の前記表面膜は、酸化膜である、請求項5に記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記第1の基板の前記表面膜は、接着剤である、請求項5に記載の基板処理方法。
【請求項8】
第1の基板と第2の基板が接合された重合基板を処理する基板処理装置であって、
前記第2の基板には、前記第2の基板側から剥離促進層及びレーザ吸収層がこの順に積層して形成され、
前記基板処理装置は、
前記レーザ吸収層に対してレーザ光を照射するレーザ照射部と、
前記第2の基板を前記第1の基板から剥離する剥離部と、
前記レーザ照射部及び剥離部の動作を制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、
前記第2の基板側から前記レーザ吸収層に対してレーザ光を照射することで、前記レーザ吸収層と前記剥離促進層の界面に応力を発生させることと、
前記レーザ吸収層と前記剥離促進層の境界に沿って前記第1の基板から前記第2の基板を剥離することと、を含む制御を実行する、基板処理装置。
【請求項9】
第1の基板と第2の基板が接合された重合基板を処理する基板処理方法を基板処理システムに実行させるように、前記基板処理システムを制御する制御装置のコンピュータ上で動作するプログラムであって、
前記第2の基板には、前記第2基板側から剥離促進層及びレーザ吸収層がこの順に積層して形成され、
前記基板処理方法は、
前記第2の基板側から前記レーザ吸収層に対してレーザ光を照射することで、前記レーザ吸収層と前記剥離促進層の界面に応力を発生させることと、
前記レーザ吸収層と前記剥離促進層の境界に沿って前記第1の基板から前記第2の基板を剥離することと、を含む、プログラム。
【請求項10】
第1の基板と第2の基板が接合された重合基板を処理する基板処理方法を基板処理システムに実行させるように、前記基板処理システムを制御する制御装置のコンピュータ上で動作するプログラムを格納した読み取り可能なコンピュータ記憶媒体であって、
前記第2の基板には、前記第2基板側から剥離促進層及びレーザ吸収層がこの順に積層して形成され、
前記基板処理方法は、
前記第2の基板側から前記レーザ吸収層に対してレーザ光を照射することで、前記レーザ吸収層と前記剥離促進層の界面に応力を発生させることと、
前記レーザ吸収層と前記剥離促進層の境界に沿って前記第1の基板から前記第2の基板を剥離することと、を含む、コンピュータ記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理方法、基板処理装置、プログラム及びコンピュータ記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、半導体装置の製造方法が開示されている。かかる半導体装置の製造方法は、半導体基板の裏面よりCO2レーザを照射して剥離酸化膜を局所的に加熱する加熱工程と、剥離酸化膜中、及び/又は剥離酸化膜と半導体基板との界面において剥離を生じさせて、半導体素子を転写先基板に転写させる転写工程と、を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】日本国 特開2007-220749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示にかかる技術は、第1の基板と第2の基板が接合された重合基板において、第2の基板を第1の基板から適切に剥離する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、第1の基板と第2の基板が接合された重合基板を処理する基板処理方法であって、前記第2の基板には、前記第2の基板側から剥離促進層及びレーザ吸収層がこの順に積層して形成され、前記基板処理方法は、前記第2の基板側から前記レーザ吸収層に対してレーザ光を照射することで、前記レーザ吸収層と前記剥離促進層の界面に応力を発生させることと、前記レーザ吸収層と前記剥離促進層の境界に沿って前記第1の基板から前記第2の基板を剥離することと、を含む。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、第1の基板と第2の基板が接合された重合基板において、第2の基板を第1の基板から適切に剥離することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】ウェハ処理システムで処理される重合ウェハの一例を示す側面図である。
【
図2】ウェハ処理システムの構成の概略を模式的に示す平面図である。
【
図3】界面用レーザ照射装置の構成の概略を示す側面図である。
【
図4】界面用レーザ照射装置の構成の概略を示す平面図である。
【
図5】本実施形態にかかる剥離改質層を形成する様子を示す説明図である。
【
図6】本実施形態にかかる剥離改質層の形成例を示す平面図である。
【
図7】本実施形態にかかるウェハ処理における、重合ウェハの内部でのガスの流れを示す説明図である。
【
図8】本実施形態にかかる剥離改質層の他の形成例を示す平面図である。
【
図9】本実施形態にかかる第2のウェハの剥離の様子を示す説明図である。
【
図10】本実施形態にかかる第2のウェハの剥離の様子を示す説明図である。
【
図11】第2のウェハの押圧の様子を示す説明図である。
【
図12】第2のウェハの押圧の様子を示す説明図である。
【
図13】他の実施形態における重合ウェハの構成の概略を示す側面図である。
【
図14】本実施形態にかかるエッジトリム処理の流れを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
近年、LEDの製造プロセスにおいては、レーザ光を用いてサファイア基板からGaN(窒化ガリウム)系化合物結晶層(材料層)を剥離する、いわゆるレーザリフトオフが行われている。このようにレーザリフトオフが行われる背景には、サファイア基板が短波長のレーザ光(例えばUV光)に対して透過性を有するため、レーザ吸収層に対して吸収率の高い短波長のレーザ光を使用することができ、レーザ光についても選択の幅が広いことが挙げられる。
【0009】
一方、半導体デバイスの製造プロセスにおいては、一の基板(半導体などのシリコン基板)の表面に形成されたデバイス層を他の基板に転写することが行われる。シリコン基板は、一般的にNIR(近赤外線)の領域のレーザ光に対しては透過性を有するが、レーザ吸収層もNIRのレーザ光に対して透過性を有するため、デバイス層が損傷を被るおそれがある。そこで、半導体デバイスの製造プロセスにおいてレーザリフトオフを行うためには、FIR(遠赤外線)の領域のレーザ光を使用する。
【0010】
一般的には、例えばCO2レーザにより、FIRの波長のレーザ光を使用することができる。上述した特許文献1に記載の方法では、レーザ吸収層としての剥離酸化膜にCO2レーザを照射することで、剥離酸化膜と基板の界面において剥離を生じさせている。
【0011】
しかしながら本発明者らが鋭意検討したところ、レーザリフトオフ手法においては、基板とレーザ吸収層の剥離が適切に生じない、すなわち適切に転写を行えない場合があることがわかった。具体的には、レーザ吸収層の面内においてレーザ光が照射されず、レーザ吸収層と基板の接合強度が低下されていない領域が存在する場合には、当該レーザ光の照射されていない領域においてはウェハWが内部から引き剥がされ、転写処理後のレーザ吸収層の表面にウェハWの一部(シリコン片)がデバイス層と共に転写されるおそれがある。
【0012】
本開示にかかる技術は、第1の基板と第2の基板が接合された重合基板において、第2の基板を第1の基板から適切に剥離する。以下、本実施形態にかかる基板処理装置としてのウェハ処理システム、及び基板処理方法としてのウェハ処理方法ついて、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素においては、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0013】
図1に示すように、本実施形態にかかるウェハ処理において処理される重合基板としての重合ウェハTは、第1の基板としての第1のウェハW1と第2の基板としての第2のウェハW2とが接合されて形成されている。以下、第1のウェハW1において、第2のウェハW2に接合される側の面を表面W1aといい、表面W1aと反対側の面を裏面W1bという。同様に、第2のウェハW2において、第1のウェハW1に接合される側の面を表面W2aといい、表面W2aと反対側の面を裏面W2bという。
【0014】
第1のウェハW1は、例えばシリコン基板等の半導体ウェハである。第1のウェハW1の表面W1aには、複数のデバイスを含むデバイス層D1が形成されている。デバイス層D1にはさらに表面膜F1が形成され、当該表面膜F1を介して第2のウェハW2と接合されている。表面膜F1としては、例えば酸化膜(SiO2膜、TEOS膜)、SiC膜、SiCN膜又は接着剤などが挙げられる。なお、表面W1aには、デバイス層D1と表面膜F1が形成されていない場合もある。
【0015】
第2のウェハW2も、例えばシリコン基板等の半導体ウェハである。第2のウェハW2の表面W2aには、剥離促進層P2、レーザ吸収層P、デバイス層D2、及び表面膜F2が表面W2a側からこの順で積層して形成されており、表面膜F2を介して第1のウェハW1と接合されている。デバイス層D2、表面膜F2はそれぞれ、第1のウェハW1のデバイス層D1、表面膜F1と同様である。レーザ吸収層Pとしては、後述するようにレーザ光(例えばCO2レーザ)を吸収することができるもの、例えば酸化膜(SiO2膜、TEOS膜)などが挙げられる。剥離促進層P2は、第2のウェハW2の第1のウェハW1からの剥離(転写)を容易に行うために形成され、第2のウェハW2(シリコン)との密着性が、レーザ吸収層Pとの密着性よりも低い材料、例えば窒化ケイ素(SiN)により形成される。なお、表面W2aには、剥離促進層P2、レーザ吸収層P、デバイス層D2及び表面膜F2が形成されていない場合もある。この場合、剥離促進層P2、レーザ吸収層Pはデバイス層D1及び表面膜F1が形成された第1のウェハW1の表面W1aに形成され、当該デバイス層D1が第2のウェハW2側に転写される。
【0016】
第2のウェハW2の周縁部Weは面取り加工がされており、周縁部Weの断面はその先端に向かって厚みが小さくなっている。半導体デバイスの製造プロセスにおいては、このように形成された第2のウェハW2の裏面を除去して薄化する場合があり、この薄化処理においては周縁部Weに鋭く尖った形状(いわゆるナイフエッジ形状)になるおそれがある。そうすると、第2のウェハW2の周縁部Weでチッピングが発生し、第2のウェハW2が損傷を被るおそれがある。そこで、この薄化処理前に予め第2のウェハW2の周縁部Weを除去する、後述のエッジトリムが行われる場合がある。周縁部Weはこのエッジトリムにおいて除去される部分であり、例えば第2のウェハW2の外端部から径方向に0.5mm~3mmの範囲である。
【0017】
本実施形態にかかる後述のウェハ処理システム1では、ウェハ処理としての前述のレーザリフトオフ処理、すなわちデバイス層D2の第1のウェハW1側への転写処理、又は、ウェハ処理としての前述のエッジトリム処理、すなわち第2のウェハW2の周縁部Weの除去処理が行われる。
【0018】
図2に示すようにウェハ処理システム1は、搬入出ブロックG1、搬送ブロックG2、及び処理ブロックG3を一体に接続した構成を有している。搬入出ブロックG1、搬送ブロックG2及び処理ブロックG3は、X軸負方向側からこの順に並べて配置されている。
【0019】
搬入出ブロックG1は、例えば外部との間で複数の重合ウェハT、複数の第1のウェハW1、複数の第2のウェハW2をそれぞれ収容可能なカセットCt、Cw1、Cw2がそれぞれ搬入出される。搬入出ブロックG1には、カセット載置台10が設けられている。図示の例では、カセット載置台10には、複数、例えば3つのカセットCt、Cw1、Cw2をY軸方向に一列に載置自在になっている。なお、カセット載置台10に載置されるカセットCt、Cw1、Cw2の個数は、本実施形態に限定されず、任意に決定することができる。
【0020】
搬送ブロックG2には、カセット載置台10のX軸正方向側において、当該カセット載置台10に隣接してウェハ搬送装置20が設けられている。ウェハ搬送装置20は、Y軸方向に延伸する搬送路21上を移動自在に構成されている。また、ウェハ搬送装置20は、重合ウェハT、第1のウェハW1及び第2のウェハW2を保持して搬送する、例えば2つの搬送アーム22、22を有している。各搬送アーム22は、水平方向、鉛直方向、水平軸回り及び鉛直軸回りに移動自在に構成されている。なお、搬送アーム22の構成は本実施形態に限定されず、任意の構成を取り得る。そして、ウェハ搬送装置20は、カセット載置台10のカセットCt、Cw1、Cw2、及び後述するトランジション装置30に対して、重合ウェハT、第1のウェハW1及び第2のウェハW2を搬送可能に構成されている。
【0021】
搬送ブロックG2には、ウェハ搬送装置20のX軸正方向側において、当該ウェハ搬送装置20に隣接して、重合ウェハT、第1のウェハW1及び第2のウェハW2の受け渡すためのトランジション装置30が設けられている。
【0022】
処理ブロックG3は、ウェハ搬送装置40、周縁除去装置50、洗浄装置60、内部用レーザ照射装置70、及び界面用レーザ照射装置80を有している。
【0023】
ウェハ搬送装置40は、X軸方向に延伸する搬送路41上を移動自在に構成されている。また、ウェハ搬送装置40は、重合ウェハT、第1のウェハW1及び第2のウェハW2を保持して搬送する、例えば2つの搬送アーム42、42を有している。各搬送アーム42は、水平方向、鉛直方向、水平軸回り及び鉛直軸回りに移動自在に構成されている。なお、搬送アーム42の構成は本実施形態に限定されず、任意の構成を取り得る。そして、ウェハ搬送装置40は、トランジション装置30、周縁除去装置50、洗浄装置60、内部用レーザ照射装置70、及び界面用レーザ照射装置80に対して、重合ウェハT、第1のウェハW1及び第2のウェハW2を搬送可能に構成されている。
【0024】
周縁除去装置50は、ウェハ搬送装置40のY軸正方向側に設けられ、第2のウェハW2の周縁部Weの除去、すなわちエッジトリム処理を行う。洗浄装置60は、ウェハ搬送装置40のY軸負方向側に設けられ、剥離後、または周縁部Weの除去後の重合ウェハTの洗浄を行う。第2のレーザ照射部としての内部用レーザ照射装置70は、ウェハ搬送装置40のY軸正方向側に設けられ、第2のウェハW2の内部にレーザ光(内部用レーザ光、例えばYAGレーザ)を照射し、周縁部Weの剥離の基点となる後述の周縁改質層M2を形成する。界面用レーザ照射装置80は、ウェハ搬送装置40のY軸負方向側に設けられ、第2のウェハW2の表面W2aに形成されたレーザ吸収層Pにレーザ光(界面用レーザ光、例えばCO2レーザ)を照射する。なお、界面用レーザ照射装置80の構成は後述する。
【0025】
以上のウェハ処理システム1には、制御部としての制御装置90が設けられている。制御装置90は、例えばコンピュータであり、プログラム格納部(図示せず)を有している。プログラム格納部には、ウェハ処理システム1における重合ウェハTの処理を制御するプログラムが格納されている。また、プログラム格納部には、上述の各種処理装置や搬送装置などの駆動系の動作を制御して、ウェハ処理システム1における後述のウェハ処理を実現させるためのプログラムも格納されている。なお、上記プログラムは、コンピュータに読み取り可能な記憶媒体Hに記録されていたものであって、当該記憶媒体Hから制御装置90にインストールされたものであってもよい。
【0026】
ウェハ処理システム1は以上のように構成されており、ウェハ処理システム1においては、上述の重合ウェハTのレーザリフトオフ処理、すなわち第1のウェハW1に対するデバイス層D2の転写処理と、上述の第2のウェハW2のエッジトリム処理をそれぞれ行うことができる。なお、例えばウェハ処理システム1において第2のウェハW2のエッジトリム処理を行わない場合には、周縁除去装置50及び内部用レーザ照射装置70を省略できる。
【0027】
また、本実施形態においては、後述するように第2のウェハW2の第1のウェハW1からの剥離を界面用レーザ照射装置80において行うが、ウェハ処理システム1には、剥離部としての剥離装置が更に別に設けられていてもよい。
【0028】
次に、上述した界面用レーザ照射装置80について説明する。
【0029】
図3及び
図4に示すように界面用レーザ照射装置80は、重合ウェハTを上面で保持する、チャック100を有している。チャック100は、第1のウェハW1の裏面W1bの一部、又は全面を吸着保持する。チャック100には、搬送アーム42との間で重合ウェハTの受け渡しを行うための昇降ピン(図示せず)が設けられている。昇降ピンは、チャック100を貫通して形成された貫通孔(図示せず)を挿通して昇降自在に構成されており、重合ウェハTを下方から支持して昇降させる。
【0030】
チャック100は、エアベアリング101を介して、スライダテーブル102に支持されている。スライダテーブル102の下面側には、回転機構103が設けられている。回転機構103は、駆動源として例えばモータを内蔵している。チャック100は、回転機構103によってエアベアリング101を介して、θ軸(鉛直軸)回りに回転自在に構成されている。スライダテーブル102は、その下面側に設けられた移動機構104によって、基台106に設けられY軸方向に延伸するレール105に沿って移動可能に構成されている。なお、移動機構104の駆動源は特に限定されるものではないが、例えばリニアモータが用いられる。
【0031】
チャック100の上方には、レーザ照射部としてのレーザヘッド110が設けられている。レーザヘッド110は、レンズ111を有している。レンズ111は、レーザヘッド110の下面に設けられた筒状の部材であり、チャック100に保持された重合ウェハTにレーザ光を照射する。本実施形態ではレーザ光はパルス状のCO2レーザ光であり、レーザヘッド110から発せられたレーザ光は第2のウェハW2を透過し、レーザ吸収層Pに照射される。なお、CO2レーザ光の波長は、例えば8.9μm~11μmである。また、レーザヘッド110は、昇降機構(図示せず)によって昇降自在に構成されている。なお、レーザ光の光源は、レーザヘッド110の外部の離れた位置に設けられている。
【0032】
また、チャック100の上方には、下面に第2のウェハW2の裏面W2bを吸着保持するための吸着面を有する、剥離部としての搬送パッド120が設けられている。搬送パッド120は、昇降機構(図示せず)によって昇降自在に構成されている。搬送パッド120は、チャック100と搬送アーム42との間で第2のウェハW2を搬送する。具体的には、チャック100を搬送パッド120の下方(搬送アーム42との受渡位置)まで移動させた後、搬送パッド120を下降させて第2のウェハW2の裏面W2bを吸着保持し、その後、搬送パッド120を再度上昇させて第1のウェハW1から剥離する。剥離された第2のウェハW2は、搬送パッド120から搬送アーム42に受け渡され、界面用レーザ照射装置80から搬出される。なお、搬送パッド120は、反転機構(図示せず)により、ウェハの表裏面を反転させるように構成されていてもよい。
【0033】
次に、以上のように構成されたウェハ処理システム1を用いて行われるウェハ処理について説明する。なお、以下の説明では、ウェハ処理システム1においてレーザリフトオフ処理を行う場合、すなわち第2のウェハW2のデバイス層D2を第1のウェハW1に転写する場合を説明する。なお、本実施形態では、ウェハ処理システム1の外部の接合装置(図示せず)において、第1のウェハW1と第2のウェハW2が接合され、予め重合ウェハTが形成されている。
【0034】
先ず、複数の重合ウェハTを収納したカセットCtが、搬入出ブロックG1のカセット載置台10に載置される。次に、ウェハ搬送装置20によりカセットCt内の重合ウェハTが取り出される。カセットCtから取り出された重合ウェハTは、トランジション装置30を介してウェハ搬送装置40に受け渡された後、界面用レーザ照射装置80に搬送される。界面用レーザ照射装置80では、第2のウェハW2が第1のウェハW1から剥離(レーザリフトオフ処理)される。
【0035】
具体的には、搬送アーム42から昇降ピンを介してチャック100に吸着保持された重合ウェハTは、先ず、移動機構104によって処理位置に移動される。この処理位置は、レーザヘッド110から重合ウェハT(レーザ吸収層P)にレーザ光を照射できる位置である。
【0036】
次に、
図5及び
図6に示すようにレーザヘッド110から第2のウェハW2の裏面W2bに向けてレーザ光L(CO
2レーザ光)をパルス状に照射する。この際、レーザ光Lは、第2のウェハW2の裏面W2b側から当該第2のウェハW2、及び剥離促進層P2を透過し、レーザ吸収層Pにおいて吸収される。そして、このレーザ光Lを吸収したレーザ吸収層Pの内部には
図7(a)に示すように応力が発生する。以下、このようにレーザ光の照射により発生により形成された、第2のウェハW2の剥離の基点(デバイス層D2の転写の基点)となる応力の蓄積層を「剥離改質層M1」という場合がある。なお、レーザ吸収層Pに照射されたレーザ光Lは剥離改質層M1の形成によりほぼすべてのエネルギーが吸収され、デバイス層D2に到達することがない。このため、デバイス層D2がダメージを被るのを抑制することができる。
【0037】
ここで、レーザ吸収層Pに照射されるレーザ光Lは、当該レーザ光Lの照射により発生した応力により剥離促進層P2とレーザ吸収層Pとを剥離させない出力に制御される。
【0038】
このようにレーザ光Lの照射により剥離促進層P2とレーザ吸収層Pの剥離を発生させず、発生した応力の逃げ場をなくすことで、レーザ吸収層Pの内部には応力が蓄積され、これにより剥離改質層M1が形成される。より具体的には、例えばレーザ光の照射によりレーザ吸収層Pをガス化し、上述のように発生したガスの逃げ場をなくすことにより、剥離改質層M1として圧縮応力が蓄積される。また例えば、レーザ光の吸収によりレーザ吸収層Pに熱が発生し、剥離促進層P2とレーザ吸収層Pとの熱膨張係数の差により、剥離改質層M1としてせん断応力が蓄積される。
【0039】
レーザ光Lの照射により発生した応力は、通常、上述のようにレーザ光Lの照射位置(レーザ吸収層Pの内部)に留まり、剥離改質層M1を形成する。しかしながら、本実施形態においては第2のウェハW2の表面W2aとレーザ吸収層Pの間に剥離促進層P2が形成されており、剥離促進層P2と第2のウェハW2との密着性は剥離促進層P2とレーザ吸収層Pとの密着性よりも小さい。このため
図7(b)に示すように、レーザ吸収層Pの内部に発生した応力は剥離促進層P2を透過して剥離促進層P2と第2のウェハW2の界面に蓄積される。換言すれば、レーザ光Lを照射することで発生した応力は、より安定して滞留することができる剥離促進層P2と第2のウェハW2の界面まで移動して蓄積される。そして、このように剥離促進層P2と第2のウェハW2の界面に応力が蓄積されると、これにより剥離促進層P2と第2のウェハW2の接合強度が低下する。
【0040】
そして本実施形態においては、このレーザ吸収層Pに対するレーザ光Lの照射、すなわち剥離促進層P2と第2のウェハW2の剥離を、平面視におけるレーザ吸収層Pの全面において行う。具体的には、レーザ吸収層Pにレーザ光Lを照射する際、回転機構103によってチャック100(重合ウェハT)を回転させるとともに、移動機構104によってチャック100をY軸方向に移動させる。そうすると、レーザ光Lは、レーザ吸収層Pに対して例えば径方向外側から内側に向けて照射され、その結果、外側から内側に向けてレーザ吸収層Pの面内の全面において螺旋状に照射される。なお、
図6に示す黒塗り矢印はチャック100の回転方向を示している。なお、剥離改質層M1の形成方向は径方向内側から外側であってもよい。
【0041】
ここで、隣接する剥離改質層M1の形成間隔、換言すればレーザ光Lのパルス間隔(周波数)は、当該剥離改質層M1の形成に際して生じる衝撃により、隣接する剥離改質層M1において剥離が発生しない間隔に制御する。具体的には、例えば隣接する剥離改質層M1が、平面視において相互に重ならないように形成されることが好ましい。またこの時、隣接する剥離改質層M1は相互に近接して形成されることが好ましい。
【0042】
なお、
図8に示すようにレーザ吸収層Pにおいて、レーザ光Lは同心円状に環状に照射してもよい。但し、この場合、チャック100の回転とチャック100のY方向が交互に行われるため、上述したようにレーザ光Lを螺旋状に照射した方が、照射時間を短時間にしてスループットを向上させることができる。
【0043】
また、本実施形態ではレーザ吸収層Pにレーザ光Lを照射するにあたり、チャック100を回転させたが、レーザヘッド110を移動させて、チャック100に対してレーザヘッド110を相対的に回転させてもよい。また、チャック100をY軸方向に移動させたが、レーザヘッド110をY軸方向に移動させてもよい。
【0044】
レーザ吸収層Pの面内前面においてレーザ光Lの照射が行われると、次に、移動機構104によってチャック100を搬送パッド120の下方の受渡位置に移動させる。受渡位置においては、
図9(a)に示すように搬送パッド120で第2のウェハW2の裏面W2bを吸着保持し、その後、
図9(b)に示すように搬送パッド120を上昇させることで、剥離促進層P2(第1のウェハW1)から第2のウェハW2を剥離する。これにより、第2のウェハW2の表面に形成されていたデバイス層D2が、第1のウェハW1へと転写される。この際、上述したように剥離促進層P2と第2のウェハW2の界面には、レーザ光の照射により発生した応力が蓄積され、接合強度が低下しているため、大きな荷重をかけることなく、剥離促進層P2から第2のウェハW2を剥離することができる。
【0045】
またこの時、上述のように剥離改質層M1は相互に重ならないように形成されているが、剥離改質層M1の形成により蓄積された応力は、当該剥離改質層M1の形成位置において第2のウェハW2と剥離促進層P2の剥離が発生した際に外部に解放される。そして本実施形態においては、上述のように剥離改質層M1を相互に近接して形成するため、隣接して形成された剥離改質層M1の形成位置において剥離が発生した際、すなわち隣接位置において応力が外部に解放された際に、連鎖的に開放される。すなわち、搬送パッド120を上昇させることにより剥離促進層P2と第2のウェハW2の界面の一部が剥離されると、これにより当該剥離箇所を起点として第2のウェハW2の全面が連鎖的に剥離される。すなわち、大きな荷重をかけることなく、より適切に剥離促進層P2から第2のウェハW2を剥離することができる。
【0046】
ところで、このようにレーザ光Lが照射されたレーザ吸収層Pには、
図1に示したように、例えばレーザ光Lの周波数やチャック100の回転数等の関係によりレーザ光Lの照射がされず、剥離促進層P2と第2のウェハW2の剥離が発生していない領域(未剥離領域R1)が形成されている場合がある。しかしながら本実施形態によれば、剥離促進層P2は第2のウェハW2(シリコン)と密着性の低い材料により形成されるため、このように未剥離領域R1が形成されている場合であっても、剥離促進層P2と第2のウェハW2の剥離を容易に行うことができる。そして、このように剥離促進層P2と第2のウェハW2が適切に剥離されるため、第2のウェハW2を剥離した後の剥離促進層P2の表面に第2のウェハW2の一部(シリコン片)が転写されることを適切に抑制することができる。またこれにより、剥離後の第2のウェハW2に対するダメージを抑制することができる。
【0047】
なお、このように剥離促進層P2と第2のウェハW2の界面での剥離を適切行う場合、レーザ光の照射により発生した応力が剥離促進層P2を透過する必要がある。具体的には、例えばレーザ吸収層Pがガス化される場合、発生したガスがレーザ吸収層Pを透過する必要がある。また例えば、熱膨張係数の差により剥離促進層P2と第2のウェハW2の剥離を行う場合、レーザ光の照射により生じた熱を適切に剥離促進層P2と第2のウェハW2の界面まで伝熱させる必要がある。しかしながら、剥離促進層P2の膜厚が大きい場合、発生した応力が適切に剥離促進層P2を透過せず、剥離促進層P2とレーザ吸収層Pの界面に残留する場合がある。そこで、剥離促進層P2と第2のウェハW2の界面で適切に剥離を行うため、剥離促進層P2の膜厚はレーザ吸収層Pに対して薄く、具体的には、例えばレーザ吸収層Pの膜厚の10分の1程度であることが好ましい。このように剥離促進層P2の膜厚を小さくすることにより、発生した応力が適切に剥離促進層P2を透過し、第2のウェハW2を剥離促進層P2の接合強度を低下させることができる。すなわち、第2のウェハW2を剥離促進層P2から適切に剥離することができる。
【0048】
ただし、剥離促進層P2の膜厚が大きくなり、発生した応力が適切に剥離促進層P2を透過せず、剥離促進層P2とレーザ吸収層Pの界面に残留する場合であっても、剥離促進層P2は第2のウェハW2の保護膜として作用させることができる。すなわち、第2のウェハW2が内部から引き剥がされることで、剥離後の界面にデバイス層D2と共にシリコン片が転写されることを適切に抑制できる。
【0049】
具体的には、剥離促進層P2とレーザ吸収層Pの界面に発生した応力により剥離改質層M1が形成され、当該界面に応力が残留する場合、第2のウェハW2は、
図10に示すように剥離促進層P2とレーザ吸収層Pを境界として、第1のウェハW1から剥離される。この時、第2のウェハW2は剥離促進層P2を介してレーザ吸収層Pから剥離されるため、剥離界面において第2のウェハW2が残ることはない。すなわち、これにより第2のウェハW2の表面W2aを保護し、剥離面に対するダメージを抑制することができる。
【0050】
第1のウェハW1から剥離された第2のウェハW2は、搬送パッド120からウェハ搬送装置40の搬送アーム42に受け渡され、カセット載置台10のカセットCw2に搬送される。なお、界面用レーザ照射装置80から搬出された第2のウェハW2は、カセットCw2に搬送される前に洗浄装置60において表面W2aが洗浄されてもよい。
【0051】
一方、チャック100に保持されている第1のウェハW1は、昇降ピンを介してウェハ搬送装置40の搬送アーム42に受け渡され、洗浄装置60に搬送される。洗浄装置60では、剥離面である剥離促進層P2の表面がスクラブ洗浄される。なお、洗浄装置60では、剥離促進層P2の表面と共に、第1のウェハW1の裏面W1bが洗浄されてもよい。
【0052】
その後、デバイス層D2の第1のウェハW1への転写にかかるすべての処理が施された第1のウェハW1は、トランジション装置30を介してウェハ搬送装置20によりカセット載置台10のカセットCw1に搬送される。こうして、ウェハ処理システム1における一連のウェハ処理が終了する。
【0053】
以上の実施形態によれば、第2のウェハW2とレーザ吸収層Pとの間に剥離促進層P2が形成されていることにより、第2のウェハW2を第1のウェハW1から適切に剥離することが、すなわち、デバイス層D2の転写処理を適切に行うことができる。具体的には、レーザ光の照射によりレーザ吸収層Pに発生した応力が第2のウェハW2と剥離促進層P2との境界まで移動し、これにより当該第2のウェハW2と剥離促進層P2の境界における接合強度が低下するため、適切に第2のウェハW2と剥離促進層P2を剥離できる。またこの時、剥離促進層P2は第2のウェハW2とは密着性の低い材料(例えばSiN)により形成されるため、第2のウェハW2を剥離促進層P2の剥離を更に適切に行うことができる。
【0054】
なお、上記実施形態においては剥離促進層P2として第2のウェハW2(シリコン)との密着性が低い材料を使用したが、剥離促進層P2に使用される材料はこれに限定されず、例えば第2のウェハW2(シリコン)と熱膨張係数の異なる材料を使用してもよい。かかる場合、レーザ吸収層Pに対するレーザ光Lの照射で生じる熱による変形量が、第2のウェハW2と剥離促進層P2で異なり、これにより、第2のウェハW2と剥離促進層P2の界面にせん断力が生じ、第2のウェハW2と剥離促進層P2を剥離することができる。特に、上述のように第2のウェハW2と剥離促進層P2の界面に剥離改質層M1としてせん断応力を発生させ蓄積する場合、このように剥離促進層P2として熱膨張係数の異なる材料を使用することで、より適切に第2のウェハW2と剥離促進層P2の剥離を行うことができる。
【0055】
なお、以上の実施形態においては、レーザ光Lの照射により第2のウェハW2を剥離促進層P2から剥離したが、この第2のウェハW2の剥離に際しては、重合ウェハTに反りが生じる場合がある。そして、このように重合ウェハTに反りが生じた場合、ウェハ処理システム1におけるウェハ処理を適切に行うことができなくなるおそれがある。そこで、この重合ウェハTの反りを抑制するため、レーザ吸収層Pに対するレーザ光Lの照射が行われる際に、重合ウェハTを上方から押圧するようにしてもよい。
【0056】
例えば、重合ウェハTが上凸形状に変形するように反りが生じる場合、
図11に示すように、重合ウェハTの中心部を押圧部材200により押圧するようにしてもよい。具体的には、第2のウェハW2の剥離に際しては、先ず、押圧部材200による押圧範囲であるレーザ吸収層Pの中心部に、予め剥離改質層M1を形成する。剥離改質層M1の径方向に対する形成方向は特に限定されない。レーザ吸収層Pの中心部に剥離改質層M1を形成すると、次に、当該剥離改質層M1が形成された重合ウェハTの中心部を押圧部材200により押圧する。そしてその後、押圧部材200により中心部が押圧された状態で、レーザ吸収層Pの外周部に対して剥離改質層M1を形成し、その後、第2のウェハW2を剥離する。この時、重合ウェハTの中心部が押圧部材200により抑えられているため、レーザ吸収層Pの外周部への剥離改質層M1の形成、及び第2のウェハW2の剥離に際して重合ウェハTに反りが生じるのが抑制される。
【0057】
なお、レーザ光Lの照射に際しては重合ウェハTを回転させるため、押圧部材200の端部は重合ウェハTと共に回転可能に構成されることが望ましい。
【0058】
また例えば、重合ウェハTが下凸形状に変形するように反りが生じる場合、
図12に示すように、重合ウェハTの周縁部Weを押圧部材200により押圧するようにしてもよい。具体的には、第2のウェハW2の剥離に際しては、先ず、押圧部材200による押圧範囲であるレーザ吸収層Pの外周部に、予め剥離改質層M1を形成する。レーザ吸収層Pの外周部に剥離改質層M1を形成すると、次に、当該剥離改質層M1が形成された重合ウェハTの外周部を押圧部材200により押圧する。そしてその後、押圧部材200により外周部が押圧された状態で、レーザ吸収層Pの中心部に対して剥離改質層M1を形成し、その後、第2のウェハW2を剥離する。この時、重合ウェハTの外周部が押圧部材200により抑えられているため、レーザ吸収層Pの中心部への剥離改質層M1の形成、及び第2のウェハW2の剥離に際して重合ウェハTに反りが生じるのが抑制される。
【0059】
なお、以上の実施形態で処理される重合ウェハTにおいて、
図13に示すようにレーザ吸収層Pとデバイス層D2の間には、反射膜Rが設けられていてもよい。すなわち反射膜Rは、レーザ吸収層Pにおいて、レーザ光Lの入射面と反対側の面に形成されている。反射膜Rには、レーザ光Lに対する反射率が高く、融点が高い材料、例えば金属膜が用いられる。なお、デバイス層D2は機能を有する層であり、反射膜Rとは異なるものである。
【0060】
かかる場合、レーザヘッド110から発せられたレーザ光Lは、第2のウェハW2を透過し、レーザ吸収層Pにおいてほぼすべて吸収されるが、吸収しきれなかったレーザ光Lが存在したとしても、反射膜Rで反射される。その結果、レーザ光Lがデバイス層D2に到達することがなく、デバイス層D2がダメージを被るのを確実に抑制することができる。
【0061】
また、反射膜Rで反射したレーザ光Lは、レーザ吸収層Pに吸収される。したがって、第2のウェハW2の剥離効率を向上させることができる。
【0062】
なお、以上の実施形態においてはウェハ処理システム1において重合ウェハTのレーザリフトオフ処理、すなわち第1のウェハW1に対するデバイス層D2の転写処理を行う場合について説明したが、上述のように、ウェハ処理システム1においては第2のウェハW2のエッジトリム処理を行うことができる。以下、ウェハ処理システム1において第2のウェハW2のエッジトリムを行う場合について説明する。
【0063】
先ず、搬入出ブロックG1のカセット載置台10に載置されたカセットCtから重合ウェハTがウェハ搬送装置20により取り出され、トランジション装置30を介してウェハ搬送装置40に受け渡された後、内部用レーザ照射装置70に搬送される。
【0064】
内部用レーザ照射装置70では、
図14(a)に示すように第2のウェハW2の内部にレーザ光L2(YAGレーザ光)を照射し、後述のエッジトリムにおいて周縁部Weを除去する際の基点となる周縁改質層M2を形成する。周縁改質層M2からは、第2のウェハW2の厚み方向にクラックC2が伸展する。クラックC2の上端部、及び下端部は、それぞれ例えば第2のウェハW2の裏面W2b、及び表面W2aに到達させる。第2のウェハW2の内部に周縁改質層M2が形成された重合ウェハTは、次に、ウェハ搬送装置40により界面用レーザ照射装置80に搬送される。
【0065】
界面用レーザ照射装置80において重合ウェハTは、第2のウェハW2の除去対象としての周縁部Weにおける剥離促進層P2と第2のウェハW2の接合強度が低下される。具体的には、
図14(b)に示すようにレーザ吸収層Pにレーザ光L(CO
2レーザ)を照射し、内部用レーザ照射装置70で形成された周縁改質層M2よりも径方向外側において、レーザ吸収層Pの内部に応力が発生する。更に、発生した応力は、
図14(c)に示すように剥離促進層P2を透過し、これにより第2のウェハW2と剥離促進層P2との境界に応力が蓄積する。
【0066】
周縁部Weの全面において剥離改質層M1が形成され、剥離促進層P2と第2のウェハW2の接合強度の低下された重合ウェハTは、次に、ウェハ搬送装置40によって周縁除去装置50に搬送される。
【0067】
周縁除去装置50において重合ウェハTは、
図14(d)に示すように、周縁改質層M2、及びクラックC2を基点に、第2のウェハW2の周縁部Weが除去される(エッジトリム)。なお、周縁除去装置50におけるエッジトリム方法は任意に選択することができる。この時、周縁部Weの除去に際しては剥離改質層M1の形成により第2のウェハW2と剥離促進層P2の接合強度が低下しているため、周縁部Weの除去を容易に行うことができる。
【0068】
第2のウェハW2の周縁部Weが除去された重合ウェハTは、次に、ウェハ搬送装置40により洗浄装置60に搬送される。洗浄装置60では、重合ウェハTのスクラブ洗浄が行われる。その後、すべての処理が施された重合ウェハTは、ウェハ搬送装置40により洗浄装置60から搬出され、トランジション装置30を介してウェハ搬送装置20によりカセット載置台10のカセットCtに搬送される。こうして、ウェハ処理システム1における一連のウェハ処理が終了する。
【0069】
以上のように、本開示にかかる技術によれば、界面用レーザ照射装置80において周縁部Weにおける第2のウェハW2と剥離促進層P2の接合強度を低下させることができ、これにより、周縁除去装置50において適切に周縁部Weの除去、すなわちエッジトリムを行うことができる。
【0070】
なお、内部用レーザ照射装置70、及び界面用レーザ照射装置80による重合ウェハTの処理順序は上記実施形態に限定されるものではなく、界面用レーザ照射装置80において周縁部Weの剥離が行われた後、内部用レーザ照射装置70において周縁改質層M2が形成されてもよい。
【0071】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0072】
D2 デバイス層
L レーザ光
P レーザ吸収層
P2 剥離促進層
T 重合ウェハ
W1 第1のウェハ
W2 第2のウェハ
W2a 表面
W2b 裏面