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特開2024-177725チャックテーブルの製造方法及びチャックテーブル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177725
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】チャックテーブルの製造方法及びチャックテーブル
(51)【国際特許分類】
   B23Q 3/08 20060101AFI20241217BHJP
   B24B 41/06 20120101ALI20241217BHJP
   B24B 7/04 20060101ALI20241217BHJP
   B23Q 1/01 20060101ALI20241217BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
B23Q3/08 A
B24B41/06 L
B24B7/04 A
B23Q1/01 T
H01L21/304 631
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096022
(22)【出願日】2023-06-12
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(72)【発明者】
【氏名】山本 節男
【テーマコード(参考)】
3C016
3C034
3C043
3C048
5F057
【Fターム(参考)】
3C016DA05
3C034AA08
3C034BB52
3C034BB73
3C034CA13
3C034DD10
3C043BA03
3C043BA09
3C043BA16
3C043CC04
3C043DD05
3C043DD12
3C048BC02
3C048BC03
3C048DD12
5F057AA32
5F057DA11
5F057EC10
5F057FA13
(57)【要約】
【課題】チャックテーブルの保持面にハイトゲージを接触させた際に、ハイトゲージの跳ね上がりを抑制し、測定値を安定させることが可能なチャックテーブルを提供する。
【解決手段】
板状物を保持するチャックテーブルの製造方法であって、金属、半導体又はこれらの酸化物を主成分として多孔質状に構成された柱状のテーブル体を準備するテーブル体準備ステップと、該テーブル体の一方の底面の外周縁を加工して、該外周縁の全周に段差を形成する段差形成ステップと、該テーブル体の側面及び他方の底面の少なくとも一部をシール材によりシールするシールステップと、該テーブル体に含まれている該金属、該半導体又は該酸化物を構成する金属又は半導体を主成分として非多孔質状に構成された環状の部材を該段差に固定する固定ステップと、を有するチャックテーブルの製造方法を提供する。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状物を保持するチャックテーブルの製造方法であって、
金属、半導体又はこれらの酸化物を主成分として多孔質状に構成された柱状のテーブル体を準備するテーブル体準備ステップと、
該テーブル体の一方の底面の外周縁を加工して、該外周縁の全周に段差を形成する段差形成ステップと、
該テーブル体の側面及び他方の底面の少なくとも一部をシール材によりシールするシールステップと、
該テーブル体に含まれている該金属、該半導体又は該酸化物を構成する金属又は半導体を主成分として非多孔質状に構成された環状の部材を該段差に固定する固定ステップと、を有するチャックテーブルの製造方法。
【請求項2】
該チャックテーブルを固定するための固定具が挿入される穴を該テーブル体に形成する穴形成ステップをさらに有する請求項1に記載のチャックテーブルの製造方法。
【請求項3】
該固定ステップの後、該テーブル体の該一方の底面と該環状の部材の該一方の底面側の面とを加工することにより、該テーブル体の該一方の底面と該環状の部材の該面とをそろえて該基板を保持する保持面を形成する保持面形成ステップをさらに有する請求項1に記載のチャックテーブルの製造方法。
【請求項4】
該テーブル体の該主成分と、該環状の部材の該主成分とが、同じ材料である請求項1から請求項3のいずれかに記載のチャックテーブルの製造方法。
【請求項5】
該半導体はシリコンであり、該金属はアルミニウムである請求項1から請求項3のいずれかに記載のチャックテーブルの製造方法。
【請求項6】
該シール材は、ガラス融着剤である請求項1から請求項3のいずれかに記載のチャックテーブルの製造方法。
【請求項7】
板状物を保持するチャックテーブルであって、
金属、半導体又はこれらの酸化物を主成分として多孔質状且つ柱状に構成され、一方の底面側の外周縁の全周に段差が設けられたテーブル体と、
該段差に固定された環状の部材と、
該テーブル体の側面及び他方の底面の少なくとも一部に設けられたシール材層と、を備え、
該環状の部材は、該テーブル体に含まれている該金属、該半導体又は該酸化物を構成する金属又は半導体を主成分として非多孔質状に構成されたチャックテーブル。
【請求項8】
該テーブル体の該主成分と、該環状の部材の該主成分とが、同じ材料である請求項7に記載のチャックテーブル。
【請求項9】
該半導体はシリコンであり、該金属はアルミニウムである請求項7に記載のチャックテーブル。
【請求項10】
該シール材層は、ガラス融着剤を構成する元素を含む請求項7から請求項9のいずれかに記載のチャックテーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャックテーブルの製造方法及びチャックテーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
ウェーハ等の板状物は、加工されたり、分析されるたりする際に、チャックテーブルに保持される。チャックテーブルとして、例えば特許文献1に記載されたものが知られている。特許文献1には、板状のウェーハ(被加工物)を保持するチャックテーブルを備えた加工装置(研削装置)が記載されている。
【0003】
当該チャックテーブルは、ウェーハを吸着する吸着面(保持面)を備えたポーラスプレート(多孔質材)と、この多孔質材の吸着面以外が固定される枠体と、を備えている。枠体には、ポーラスプレートの吸着面に吸引力(負圧)を伝達する複数のウェーハ吸引孔が設けられている。このウェーハ吸引孔に吸引源を接続することにより、吸引源から発生した負圧がウェーハ吸引孔を介してポーラスプレートの吸着面に作用し、チャックテーブルの吸着面に配置されたウェーハが吸着面に吸引され、保持される。
【0004】
研削装置の研削ユニットは、回転軸となるスピンドルの先端部に固定されたホイールマウントを備えており、ホイールマウントには、板状物を研削するための研削砥石を備えた研削ホイールが装着される。板状物を保持したチャックテーブルを回転させ、かつ、研削ホイールを回転させた状態で、研削砥石の下面(研削加工面)と板状物とを接触させることにより、板状物が研削される。
【0005】
研削装置で板状物を研削する際には、研削後の板状物の平坦性を高めるために、チャックテーブルの表面を研削砥石で研削するセルフグラインドが行われている。このセルフグラインドに適したチャックテーブルとして、例えば、特許文献2に記載されたものが知られている。特許文献2のチャックテーブルでは、その全体が、板状物の硬度と同程度の硬度を持つ材質で多孔質状に構成されているので、板状物を研削する研削ホイールでセルフグラインドを実施することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2022-178178号公報
【特許文献2】特開2021-109258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、チャックテーブルに保持された板状物の厚みをハイトゲージにより測定する場合がある。例えば、研削装置では、研削中の板状物の厚みを測定するために、回転するチャックテーブルの保持面(上面)に第1ハイトゲージを接触させ、第1ハイトゲージによりチャックテーブルの保持面の高さが測定される。また、板状物の表面(上面)に第2ハイトゲージを接触させ、第2ハイトゲージにより板状物の高さが測定される。そして、第2ハイトゲージの測定値から、第1ハイトゲージの測定値を減算することにより、板状物の研削中の厚みが算出される。
【0008】
しかしながら、チャックテーブルの保持面を構成する多孔質材の表面は、凹凸構造を有しているため、回転するチャックテーブルにハイトゲージを接触させると、ハイトゲージが多孔質材の表面の凹凸によって跳ね上がることで、ハイトゲージの測定値が安定しないという問題があった。
【0009】
よって、本発明の目的は、チャックテーブルの保持面にハイトゲージを接触させた際に、ハイトゲージの跳ね上がりを抑制し、測定値を安定させることが可能なチャックテーブルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一側面によれば、板状物を保持するチャックテーブルの製造方法であって、
金属、半導体又はこれらの酸化物を主成分として多孔質状に構成された柱状のテーブル体を準備するテーブル体準備ステップと、該テーブル体の一方の底面の外周縁を加工して、該外周縁の全周に段差を形成する段差形成ステップと、該テーブル体の側面及び他方の底面の少なくとも一部をシール材によりシールするシールステップと、該多孔質材に含まれている該金属、該半導体又は該酸化物を構成する金属又は半導体を主成分として非多孔質状に構成された環状の部材を該段差に固定する固定ステップと、を有するチャックテーブルの製造方法が提供される。
【0011】
好ましくは、該チャックテーブルを固定するための固定具が挿入される穴を該テーブル体に形成する穴形成ステップをさらに有する。
【0012】
好ましくは、該固定ステップの後、該テーブル体の該一方の底面と該環状の部材の該一方の底面側の面とを加工することにより、該テーブル体の該一方の底面と該環状の部材の該面とをそろえて該基板を保持する保持面を形成する保持面形成ステップをさらに有する。
【0013】
好ましくは、該テーブル体の該主成分と、該環状の部材の該主成分とが、同じ材料である。
【0014】
好ましくは、該半導体はシリコンであり、該金属はアルミニウムである。
【0015】
好ましくは、該シール材は、ガラス融着剤である。
【0016】
本発明の別の一側面によれば、板状物を保持するチャックテーブルであって、金属、半導体又はこれらの酸化物を主成分として多孔質状且つ柱状に構成され、一方の底面側の外周縁の全周に段差が設けられたテーブル体と、該段差に固定された環状の部材と、該テーブル体の側面及び他方の底面の少なくとも一部に設けられたシール材層と、を備え、該環状の部材は、該テーブル体に含まれている該金属、該半導体又は該酸化物を構成する金属又は半導体を主成分として非多孔質状に構成されたチャックテーブルが提供される。
【0017】
好ましくは、該テーブル体の該主成分と、該環状の部材の該主成分とが、同じ材料である。
【0018】
好ましくは、該半導体はシリコンであり、該金属はアルミニウムである。
【0019】
好ましくは、該シール材層は、ガラス融着剤を構成する元素を含む。
【発明の効果】
【0020】
本発明にかかるチャックテーブルは、多孔質状に構成された柱状のテーブル体と、このテーブル体の一方の底面の外周縁を加工することにより該外周縁の全周に設けられた段差に固定され非多孔質状に構成された環状の部材と、を有している。
【0021】
したがって、環状の部材の表面にハイトゲージを接触させることにより、チャックテーブルの保持面の高さを適切に測定することができる。これにより、ハイトゲージのチャックテーブルとの接触による跳ね上がりを抑制し、チャックテーブルの保持面の高さの測定値を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、実施形態の研削装置を模式的に示す斜視図である。
図2図2は、実施形態のチャックテーブルの製造方法を示すフロー図である。
図3図3は、実施形態のテーブル体の斜視図である。
図4図4は、第1段差が形成されたテーブル体の斜視図である。
図5図5は、第1段差及び第2段差が形成されたテーブル体の斜視図である。
図6図6は、第1段差、第2段差及び穴が形成されたテーブル体の斜視図である。
図7図7は、テーブル体の上面とシール材層とを示す斜視図である。
図8図8は、テーブル体の下面とシール材層とを示す斜視図である。
図9図9は、テーブル体等と環状の部材を示す斜視図である。
図10図10は、チャックテーブルのテーブル体の上面等を示す斜視図である。
図11図11は、チャックテーブルのテーブル体の下面等を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。まず、本実施形態のチャックテーブルが使用される研削装置について説明する。図1は、研削装置2を模式的に示す斜視図である。なお、図1では、研削装置2を構成する一部の要素が機能ブロックで表現されている。また、以下の説明において使用されるX軸(第1軸)、Y軸(第2軸)、及びZ軸(第3軸)は、互いに垂直である。
【0024】
図1に示されるように、研削装置2は、この研削装置2を構成する各種の要素を支持する基台4を備えている。基台4の上面には、X軸に対して概ね平行な方向(前後方向)に長い開口部4aが形成されている。開口部4a内には、ボールねじ式のX軸移動機構6が配置されている。X軸移動機構6は、ボールねじに連結されるモーター等(不図示)と、移動テーブル(不図示)と、を含んでおり、この移動テーブルをX軸に沿って前後に移動させる。
【0025】
移動テーブルの上方は、テーブルカバー8によって覆われている。また、テーブルカバー8の前後には、移動テーブル(テーブルカバー8)の移動に応じて伸縮できる蛇腹状の防塵防滴カバー10が取り付けられている。この移動テーブルの上部には、加工の対象となる板状物(ワークピース)11を保持できるように構成されたチャックテーブル12が、テーブルカバー8から部分的に露出する態様で配置されている。
【0026】
板状物11は、例えば、シリコン等の半導体材料で構成されたウェーハであり、概ね円形状の表面(上面)11aと、表面11aとは反対側の概ね円形状の裏面(底面)11bと、を有する円盤形状に構成されている。板状物11の直径(表面11a又は裏面11bの幅)は、例えば、200mm以上300mm以下であり、厚みは、例えば、0.7mm以上1.8mm以下である。
【0027】
なお、板状物11の材質、形状、直径(幅)及び厚み等は、この態様に制限されない。例えば、他の半導体、セラミックス、樹脂及び金属等で構成される基板等が板状物11の材質として用いられ得る。また、板状物11の裏面11bには、IC(Integrated Circuit)等のデバイスが形成されていても良い。
【0028】
チャックテーブル12は、モーター等の回転駆動源(不図示)に接続されており、Z軸に対して平行な回転軸、又はZ軸に対して僅かに傾いた回転軸の周りに回転する。チャックテーブル12の上面12aの一部は、多孔質材によって構成されており、その上面12aの一部が、板状物11の裏面11b側を保持する保持面となる。すなわち、チャックテーブル12は、板状物11を保持する保持面を上部に備えている。
【0029】
チャックテーブル12の保持面は、このチャックテーブル12の内部に形成された吸引路(不図示)等を介して、負圧を生成できるエジェクタ等の吸引源(不図示)に接続されている。チャックテーブル12に搬入された板状物11は、保持面に作用する吸引源の負圧によって、裏面11b側を吸引される。このように、チャックテーブル12は、板状物11の裏面11b側を保持面で吸引することにより、板状物11の表面11a側が露出するように板状物11を保持する。
【0030】
上述したX軸移動機構6で移動テーブルをX軸に沿って前後に移動させると、チャックテーブル12もX軸に沿って前後に移動する。より具体的には、X軸移動機構6は、チャックテーブル12を、例えば、板状物11がチャックテーブル12に搬入される前方の搬入搬出領域と、搬入搬出領域の後方の研削領域と、の間で移動させる。
【0031】
チャックテーブル12の近傍には、チャックテーブル12によって保持された板状物11の厚さを測定するハイトゲージ(高さ測定器)44が設けられている。例えば、ハイトゲージ44は、チャックテーブル12の上面12aの高さを測定する第1ハイトゲージ(第1高さ測定器)46と、チャックテーブル12によって保持された板状物11の上面の高さを測定する第2ハイトゲージ(第2高さ測定器)48と、を備える。
【0032】
基台4の後方(つまり、X軸移動機構6の後方)には、柱状の支持構造14が設けられている。支持構造14の前面側には、Z軸移動機構16が配置されている。Z軸移動機構16は、Z軸に対して概ね平行な方向(上下方向)に長い一対のガイドレール18を備え、この一対のガイドレール18には、移動プレート20がスライドできる態様で取り付けられている。
【0033】
移動プレート20の後面側には、ボールねじを構成するナット部(不図示)が設けられており、このナット部には、Z軸に対して概ね平行なねじ軸22が回転できる態様で連結されている。ねじ軸22の一端部には、モーター24等が接続されている。モーター24等によりねじ軸22を回転させることで、移動プレート20は、ガイドレール18に沿って上下に移動する。
【0034】
移動プレート20の前面には、支持具26が設けられている。この支持具26には、チャックテーブル12により保持された板状物11の表面11aを研削できる研削ユニット28が支持されている。研削ユニット28は、支持具26に固定されるスピンドルハウジング30を含む。スピンドルハウジング30には、Z軸に対して平行な回転軸、又はZ軸に対して僅かに傾いた回転軸となるスピンドル32が、その軸心の周りに回転できる態様で収容されている。
【0035】
スピンドル32の下端部は、スピンドルハウジング30の下端面から露出しており、このスピンドル32の下端部には、円盤状のマウント34が固定されている。例えば、マウント34の外縁部には、マウント34を厚みの方向に貫通する複数の穴(不図示)が設けられており、各孔には、ボルト36が挿入される。
【0036】
マウント34の下面には、上述したボルト36により研削ホイール38が固定される。つまり、スピンドル32には、マウント34等を介して研削ホイール38が装着される。また、スピンドルハウジング30には、スピンドル32の上端側に接続されるモーター(不図示)等が収容されている。このモーター等の動力により、スピンドル32とともに研削ホイール38が回転する。
【0037】
ホイール基台40の下面には、環状の溝(不図示)が開口しており、この溝には、ダイヤモンド等の砥粒がビトリファイドやレジノイド等の結合剤に分散されてなる複数の研削砥石42が、ホイール基台40の周方向に沿って配置されている。つまり、複数の研削砥石42は、ホイール基台40の下面側に配列されている。なお、各研削砥石42は、接着剤等によってホイール基台40に固定されている。また、砥粒の大きさや結合剤の種類等は、研削により得られる板状物11に求められる品質等に応じて適切に設定される。
【0038】
研削装置2の各要素には、コントローラー(制御ユニット)50が接続されている。このコントローラー50は、例えば、処理装置52と、記憶装置54と、を含むコンピュータによって構成され、板状物11が適切に研削されるように、上述した研削装置2の各要素の動作等を制御する。
【0039】
処理装置52は、代表的には、CPU(Central Processing Unit)であり、上述した要素を制御するために必要な種々の処理を行う。記憶装置54は、例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の主記憶装置と、ハードディスクドライブやフラッシュメモリ等の補助記憶装置と、を含む。コントローラー50の機能は、例えば、記憶装置54に記憶されているプログラムに従い処理装置52が動作することによって実現される。
【0040】
コントローラー50には、入力装置56が接続されている。入力装置56は、例えば、タッチスクリーンであり、オペレーターからの指令をコントローラー50に入力する。このタッチスクリーンは、コントローラー50から出力される情報を表示する表示装置を兼ねる。なお、キーボードやマウス等が入力装置56として採用されてもよい。
【0041】
コンピュータ等による読み取りが可能な非一時的な記録媒体を含む記憶装置54の一部には、板状物11の研削に必要な一連の手順を処理装置52に実行させるためのプログラムが記憶されている。処理装置52は、このプログラムに従って、板状物11の研削に必要な種々の手順を遂行する。
【0042】
次に、本実施形態のチャックテーブルとその製造方法について説明する。図2は、チャックテーブルの製造方法を示すフロー図である。図2に示されるように、本実施形態のチャックテーブルの製造方法は、テーブル体準備ステップS1、段差形成ステップS2、シールステップS3及び固定ステップS4を含む。
【0043】
テーブル体準備ステップS1では、多孔質状に構成された柱状のテーブル体が準備される。図3は、本実施形態のテーブル体の斜視図である。図3に示されるように、本実施形態に係るテーブル体13は、略円形状の2つの底面(上面13a及び下面13b)を有する円柱状に構成されている。ここで、「多孔質状」は、空隙率が10%以上70%以下の状態であることを意味する。空隙率は、テーブル体13の電子顕微鏡観察写真において、所定の領域の画像から、テーブル体と空隙率の割合を解析することにより算出される。
【0044】
上面13a及び下面13bの直径(幅)aは、例えば、370mm以上400mm以下であり、代表的には、380mmである。また、厚みbは、例えば、40mm以上50mm以下であり、代表的には、46mmである。なお、テーブル体13の形状及び大きさは、これに限られない。例えば、テーブル体13の形状は、角柱状であっても良い。
【0045】
テーブル体13は、金属、半導体又はこれらの酸化物を主成分とする。例えば、金属としてはアルミニウム(Al)が、半導体としてはシリコン(Si)が、酸化物としては酸化アルミニウム(アルミナ、Al)及び二酸化ケイ素(シリカ、SiO)が挙げられる。
【0046】
多孔質状のテーブル体13は、例えば、上述した主成分の粒子(直径:50μm以上1000mm以下)に、無機結合材(ガラス(シリカ)、粘土(ケイ酸アルミニウム)等)又は樹脂系結合材(アクリル樹脂及びシリコーン樹脂等)を所定の割合で混合し、プレス成形にて加圧して所定の形状に成形した後、焼成することで得られる。
【0047】
例えば、テーブル体13の主成分をSiとする場合、直径が100μm以上500μm以下のSi粒子に、結合材であるシリカ等を所定の割合で混合し、プレス成形にて加圧し、焼成を行う。例えば、焼成温度は、600℃以上1300℃以下、焼成時間は、12時間以上40時間以下に設定される。焼成後、テーブル体13の上面13a、下面13b及び側面13cを研削することにより、図3に示されるテーブル体13が作製される。なお、テーブル体13を構成する主成分、テーブル体13の製造方法及び製造条件は、これらに限られない。
【0048】
次に、段差形成ステップS2が行われる。段差形成ステップS2では、テーブル体13に段差が形成される。本実施形態では、テーブル体13に、チャックテーブル12を固定するための段差(第1段差)と、後述する環状の部材(図9)が固定される段差(第2段差)と、が形成される。
【0049】
図4は、第1段差15が形成されたテーブル体13の斜視図である。テーブル体13に段差が形成される前に、テーブル体13の表面(上面13a、下面13b及び側面13c)の全体が研削される。次に、図4に示されるように、テーブル体13の上面13a側の外周縁の全周に、第1段差15が研削により形成される。テーブル体13に第1段差15が形成されることにより、テーブル体13は、直径cを有する円柱Aの上部に、直径cよりも小さい直径dを有する円柱Bが積層された構造へと加工される。
【0050】
例えば、直径cは、350mm以上380mm以下であり、代表的には、366mmである。また、直径dは、例えば、305mm以上320mm以下であり、代表的には、310mmである。また、第1段差15のテーブル体13の上面13aからの深さeは、例えば、15mm以上30mm以下、代表的には、20mmである。なお、直径c、直径d及び深さeは、上述した範囲の値に限られない。
【0051】
図5は、第1段差15及び第2段差17が形成されたテーブル体13の斜視図である。図5に示されるように、テーブル体13に第1段差15が形成された後に、第2段差17が形成される。第2段差17は、テーブル体13の上面13a側の外周縁の全周、すなわち、円柱Bの上面側の全周を研削することにより形成される。テーブル体13に第2段差17が形成されることにより、テーブル体13は、直径dを有する円柱B´の上部に、直径dよりも小さい直径fを有する円柱Cが積層された構造へと加工される。
【0052】
例えば、直径fは、295mm以上300mm以下であり、代表的には、297mmである。また、第2段差17のテーブル体13の上面13aからの深さgは、例えば、5mm以上15mm以下、代表的には、9mmである。なお、直径f及び深さgは、上述した範囲の値に限られない。
【0053】
その後、テーブル体13の円柱Aを貫通する穴が形成される。図6は、第1段差15、第2段差17及び穴19が形成されたテーブル体13の斜視図である。穴19は、テーブル体13の円柱Aを上下に貫通するように、例えば、テーブル体13の第1段差15の上面15aからテーブル体13の下面13bに向かって切削等により形成される。本実施形態では、12個の穴19が、テーブル体13の外周に沿って、略等間隔に形成される。
【0054】
第1段差15に設けられる穴19は、チャックテーブル12を固定するための固定具(ねじ等)が挿入されるための穴(取り付け穴)である。例えば、研削装置2の移動テーブルに設けられる円柱状のテーブルベース(不図示)には、テーブル体13に形成された穴19に対応する数量及び配置の穴が設けられている。テーブル体13に設けられた穴19を通じてテーブルベースの穴にねじが締め込まれることにより、チャックテーブル12がテーブルベースに固定される。
【0055】
なお、穴19は、第1段差15に設けられなくても良い。例えば、テーブル体13に第1段差15を設けず、テーブル体13の第2段差17の外周に沿って、テーブル体13を貫通するように、第2段差17の上面13aから下面13bに向かって穴19が形成されていても良い。
【0056】
次に、シールステップS3が行われる。シールステップS3では、テーブル体13の側面13cと、下面13bの一部と、をシール材によりシールする。図7は、テーブル体13の上面13a側とシール材層21とを示す斜視図であり、図8は、テーブル体13の下面13b側とシール材層21とを示す斜視図である。
【0057】
図7及び図8に示されるように、本実施形態では、テーブル体13の側面13cの全体にシール材層21が設けられる。また、図7に示されるように、第1段差15及び第2段差17の表面にもシール材層21が設けられる。更に、図8に示されるように、テーブル体13の下面13bの外周縁の全体にもシール材層21が設けられる。そして、図7及び図8に示されるように、穴19を含む部分にもシール材層21が設けられる。このように、シール材層21は、板状物11を保持するための保持面となる部分及びチャックテーブル12に負圧を作用させるための部分を除いた部分を封止する。
【0058】
シール材層21は、例えば、テーブル体13にガラス融着剤を塗布することにより形成される。ガラス融着剤は、低融点ガラス(ガラス転移点が600℃以下のガラス)が有機バインダー等に分散された、フリット状又はペースト状の材料である。低融点ガラスの組成は、特に限定は無いが、テーブル体13の主成分の融点よりも低い融点を有していることが好ましい。また、低融点ガラスは、環境負荷の低減の観点から、また、ウェーハへ金属不純物の混入を防止する観点から、鉛が含まれない物が好ましい。
【0059】
シール材層21は、ガラス融着剤をテーブル体13に塗布し、加熱することにより形成される。例えば、加熱の条件は、電気炉により450℃以上650℃以下、加熱時間は、30分以上3時間以下に設定される。
【0060】
シール材層21の厚みは、例えば、100μm以上1000μm以下である。シール材層21は、シール材層21の原料であるガラス融着剤を構成する元素を含む。なお、シール材層21を構成する元素は、例えば、誘導結合プラズマ質量分析法 (Inductively Coupled Plasma Mass Spectrometry, ICP-MS)により検出することができる。
【0061】
次に、固定ステップS4が行われる。固定ステップS4では、環状の部材をテーブル体13の第2段差17に固定する。図9は、テーブル体13等と環状の部材23を示す斜視図である。図9に示されるように、第2段差17に固定される非多孔質状の環状の部材23が準備される。環状の部材23の外径hは、例えば、円柱B(図4)の直径dと実質的に同じであり、環状の部材23の内径iは、円柱C(図5)の直径fと実質的に同じである。また、環状の部材23の厚みjは、例えば、第2段差17の深さgと実質的に同じである。ここで、「非多孔質状」は、空隙率が1%以下の状態であり、実質的に水や空気を通さない状態であることを意味する。
【0062】
環状の部材23は、例えば、環状の部材23の厚みjと同じ厚みを有し、環状の部材23の外径hよりも大きい直径を有する円盤状の基板の中央部をくり抜くように除去することで作製することができる。また、環状の部材23は、環状の部材23の厚みjと同じ厚みを有する基板から、環状の部材23を構成する複数の部材を切り出し、それらの側面を接合することで作製することができる。なお、環状の部材23の作製方法は、これらに限られない。また、環状の部材23は、固定ステップS4より前であれば、どの段階で作製されても良い。
【0063】
環状の部材23は、テーブル体13に含まれている金属又は半導体、又は、テーブル体13に含まれている酸化物を構成する金属又は半導体を主成分として、非多孔質状に構成される。例えば、テーブル体13の主成分がSiや又はSiO(Siの酸化物)である場合、環状の部材23はSiを主成分とする。
【0064】
上述した環状の部材23を、テーブル体13の第2段差17に設置した後、加熱することにより、第2段差17に環状の部材23が固定される。すなわち、環状の部材23とテーブル体13の第2段差17とが、シール材層21が加熱により溶融することで接着され、冷却されることにより固まり、固定される。なお、環状部材23がテーブル体13の第2段差17に固定される際に、環状部材23のテーブル体13の第2段差17と接触する面(内側面と底面)にシール材が改めて塗布されてもよい。
【0065】
なお、上述した固定ステップS4の後に、環状の部材23の上面と、テーブル体13の上面13aとを、研削ユニット28により研削することによりそろえるためのセルフグラインドが実施されても良い。この際、板状物11がSiウェーハであり、環状の部材23とテーブル体13の主成分がSiである場合、板状物11と、環状の部材23と、テーブル体13の主成分は、全て同じ材料になる。すなわち、板状物11の硬度と、環状の部材23の硬度と、テーブル体13の硬度とは、近い値をとるため、板状物11を研削するための研削ホイール38を交換することなく、環状の部材23の上面と、テーブル体13の上面13aとの研削を行うことができる。
【0066】
図10は、チャックテーブル12のテーブル体13の上面13a等を示す斜視図であり、図11は、チャックテーブル12のテーブル体13の下面13b等を示す斜視図である。図10に示されるように、チャックテーブル12は、テーブル体13の上面13aが、チャックテーブル12の上面(保持面)12aを構成している。
【0067】
また、図11に示されるように、チャックテーブル12のテーブル体13の下面13bでは、外周側の一部分にシール材層21が設けられており、下面13bのそれ以外の部分では、テーブル体13が露出している。この露出した部分に吸引源が接続され、吸引源の負圧がテーブル体13の下面13bから上面13aに伝達される。
【0068】
上述したチャックテーブル12では、第1ハイトゲージ46を環状の部材23に接触させることにより、チャックテーブル12の表面の高さが測定される。環状の部材23の上面には、多孔質材で構成されるテーブル体13の上面13aのような凹凸構造が無いため、測定中にハイトゲージが跳ね上がることなく、安定した測定値が得られる。
【0069】
環状の部材23は、テーブル体13を補強する役割も果たす。環状の部材23は、従来のポーラスプレートを支持する枠体と比較して、チャックテーブル12を軽量化することができる。また、本実施形態のチャックテーブル12は、テーブル体13の上面13aとテーブル体13の下面13bの一部とが露出しているため、従来のポーラスプレートを支持する枠体を設けたチャックテーブルと比較して、放熱性が高くなる。
【0070】
なお、本発明は、上述した実施形態の記載に制限されず種々変更して実施され得る。例えば、上述した実施形態では、研削装置2が備えるチャックテーブル12について説明したが、本実施形態のチャックテーブル12は、切削装置や分析装置にも適用できる。
【0071】
その他、上述の実施形態及び変形例に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて変更して実施され得る。
【符号の説明】
【0072】
11 :板状物
11a :表面
11b :裏面
13 :テーブル体
13a :上面
13b :下面
13c :側面
15 :第1段差
15a :上面
17 :第2段差
19 :穴
21 :シール材層
23 :環状の部材
2 :研削装置
4 :基台
4a :開口部
6 :X軸移動機構
8 :テーブルカバー
10 :防塵防滴カバー
12 :チャックテーブル
12a :上面
14 :支持構造
16 :Z軸移動機構
18 :ガイドレール
20 :移動プレート
22 :ねじ軸
24 :モーター
26 :支持具
28 :研削ユニット
30 :スピンドルハウジング
32 :スピンドル
34 :マウント
36 :ボルト
38 :研削ホイール
40 :ホイール基台
42 :研削砥石
44 :高さ測定器(ハイトゲージ)
46 :第1ハイトゲージ
48 :第2ハイトゲージ
50 :コントローラー(制御ユニット)
52 :処理装置
54 :記憶装置
56 :入力装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11