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特開2024-177726レーザー加工装置及び接着フィルムの切断方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177726
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】レーザー加工装置及び接着フィルムの切断方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20241217BHJP
【FI】
H01L21/78 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096023
(22)【出願日】2023-06-12
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(72)【発明者】
【氏名】向井 光紀
【テーマコード(参考)】
5F063
【Fターム(参考)】
5F063AA48
5F063BA00
5F063CC25
5F063DE11
5F063DE33
(57)【要約】
【課題】複数のチップに含まれる非直線部に沿って接着フィルムが正常に切断されているか否かを簡便に判定することが可能なレーザー加工装置を提供する。
【解決手段】複数のチップの境界の非直線部に含まれる箇所をそれぞれが示す3つ以上の分割予定座標を辿るように接着フィルムにレーザービームを照射した後に、当該3つ以上の分割予定座標のそれぞれが示す箇所の全てが含まれる結合画像を形成する。そして、この結合画像において示される接着フィルムの切断痕と当該非直線部とを比較することによって、接着フィルムが正常に切断されているか否かを判定する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
その境界に直線的に延在しない非直線部が含まれる複数のチップに一面側が貼着した接着フィルムを該非直線部に沿って切断するためのレーザー加工装置であって、
該接着フィルムの他面側を保持するためのチャックテーブルと、
該接着フィルムを切断可能なレーザービームを照射するためのレーザービーム照射ユニットと、
該接着フィルムを撮像して画像を形成するための撮像ユニットと、
該チャックテーブルと、該レーザービーム照射ユニット及び該撮像ユニットと、を相対的に移動させるための移動機構と、
該接着フィルムに関する情報を表示するためのディスプレイと、
該レーザービーム照射ユニット、該撮像ユニット、該移動機構及び該ディスプレイを制御するためのコントローラと、を備え、
該コントローラは、
該非直線部に沿うように該接着フィルムが切断される前の該非直線部の全域又は互いに異なる複数の領域を撮像して1又は複数の事前画像を形成するために該撮像ユニット及び該移動機構を制御する事前撮像部と、
該1又は複数の事前画像に基づいてそれぞれが該非直線部に含まれる箇所を示す3つ以上の分割予定座標を特定する特定部と、
該3つ以上の分割予定座標を辿るように該接着フィルムに該レーザービームを照射するために該レーザービーム照射ユニット及び該移動機構を制御する照射部と、
該非直線部に沿うように該接着フィルムが切断された後の該非直線部の互いに異なる複数の領域を撮像してそれぞれに該3つ以上の分割予定座標のいずれかが示す箇所が含まれる3つ以上の事後画像を形成するために該撮像ユニット及び該移動機構を制御する事後撮像部と、
該3つ以上の事後画像に基づいて該3つ以上の分割予定座標のそれぞれが示す箇所の全てが含まれる結合画像を形成する結合部と、
該結合画像を表示するために該ディスプレイを制御する表示部と、を含むレーザー加工装置。
【請求項2】
該コントローラは、該結合画像において示される該接着フィルムの切断痕と該非直線部とを比較して、該接着フィルムが正常に切断されているか否かを判定する判定部をさらに含み、
該表示部は、該結合画像とともに該判定部による判定結果を報知するための情報を表示するために該ディスプレイを制御する請求項1に記載のレーザー加工装置。
【請求項3】
その境界に直線的に延在しない非直線部が含まれる複数のチップに一面側が貼着した接着フィルムを該非直線部に沿って切断するための接着フィルムの切断方法であって、
該非直線部の全域又は互いに異なる複数の領域を撮像して1又は複数の事前画像を形成する事前撮像ステップと、
該事前撮像ステップの後に、該1又は複数の事前画像に基づいてそれぞれが該非直線部に含まれる箇所を示す3つ以上の分割予定座標を特定する特定ステップと、
該特定ステップの後に、該3つ以上の分割予定座標を辿るように該接着フィルムに該接着フィルムを切断可能なレーザービームを照射する照射ステップと、
該照射ステップの後に、該非直線部の互いに異なる複数の領域を撮像してそれぞれに該3つ以上の分割予定座標のいずれかが示す箇所が含まれる3つ以上の事後画像を形成する事後撮像ステップと、
該事後撮像ステップの後に、該3つ以上の事後画像に基づいて該3つ以上の分割予定座標のそれぞれが示す箇所の全てが含まれる結合画像を形成する結合ステップと、
該結合ステップの後に、該結合画像において示される該接着フィルムの切断痕と該非直線部とを比較して、該接着フィルムが正常に切断されているか否かを判定する判定ステップと、
を備える接着フィルムの切断方法。
【請求項4】
該結合ステップにおいては、該3つ以上の事後画像のそれぞれから一部を抽出して3つ以上の抽出事後画像を形成してから該3つ以上の抽出事後画像を結合することによって該結合画像が形成される請求項3に記載の接着フィルムの切断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、その境界に直線的に延在しない非直線部が含まれる複数のチップに一面側が貼着した接着フィルムを非直線部に沿って切断するためのレーザー加工装置及び接着フィルムの切断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IC(Integrated Circuit)等のデバイスのチップは、携帯電話及びパーソナルコンピュータ等の各種電子機器において不可欠の構成要素である。このチップは、例えば、マトリックス状に配列された複数のデバイスが表面側に設けられているウエーハを複数のデバイスの境界に沿って格子状に分割することで製造される。
【0003】
チップの製造方法としては、例えば、ウエーハの表面側に溝を形成してから、その裏面側を研削する方法が知られている。具体的には、この方法においては、まず、ウエーハの表面側に格子状に延在する溝が形成されるように、複数のデバイスの境界に沿ってウエーハを切削する。
【0004】
次いで、ウエーハの裏面側を研削する際におけるデバイスの破損を防止するために、バックグラインド(BG)テープとも呼ばれる保護部材をウエーハの表面側に貼着する。次いで、ウエーハの表面側を保持した状態で溝においてウエーハが分割されるまでウエーハの裏面側を研削する。その結果、それぞれが直方体状の形状を有する複数のチップが製造される。
【0005】
そして、複数のチップのそれぞれの裏面には、一般的に、各チップを所定の構造物に固定する際に利用されるダイアタッチフィルム(DAF)とも呼ばれる矩形状の接着フィルムが設けられる(例えば、特許文献1参照)。この矩形状の接着フィルムは、一般的に、複数のチップの全ての裏面側に1枚の接着フィルムを貼着し、かつ、表面側から保護部材を剥離した後に、接着フィルムのうち複数のチップの境界と重なる部分を除去することによって設けられる。
【0006】
また、このような接着フィルムの部分的な除去は、例えば、チャックテーブルと、接着フィルムを切断可能なレーザービームを照射するためのレーザー照射ユニットと、チャックテーブルとレーザー照射ユニットとを相対的に移動させるための移動機構と、を備えるレーザー加工装置において行われる。
【0007】
このレーザー加工装置において接着フィルムを部分的に除去する際には、まず、接着フィルムを介して複数のチップをチャックテーブルによって保持する。そして、各チップの表面側から接着フィルムに対してレーザー照射ユニットからレーザービームを照射しながら、この照射されるレーザービームの軌跡が複数のチップの境界に沿うようにチャックテーブルとレーザー照射ユニットとを移動機構が相対的に移動させる。
【0008】
ただし、上述したように複数のチップが製造されると、ウエーハ及び保護部材の内部応力が開放され、かつ/又は、溝においてウエーハが分割された後にも研削が少し継続されること等に起因して、複数のチップの配列が乱れることがある。この場合、複数のチップの境界が厳密な格子状にならずに、直線的に延在しない非直線部が複数のチップの境界に含まれることがある。
【0009】
そして、非直線部が複数のチップの境界に含まれるにもかかわらず、上述した接着フィルムに対するレーザービームの照射が格子状の軌跡を描くように行われると、複数のチップの少なくとも一つが損傷するおそれがある。この点を踏まえて、接着フィルムに対するレーザービームの照射に先立って、複数のチップの境界を把握することが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002-118081号公報
【特許文献2】特開2006-278784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述したレーザービームの照射は、一般的に、レーザー加工装置における加工送り速度、すなわち、チャックテーブルとレーザー照射ユニットとの相対的な移動速度が比較的速い速度に設定された状態で行われる。そのため、非直線部を含む複数のチップの境界が予め把握されていても、複数のチップの境界からずれた軌跡に沿ってレーザービームが接着フィルムに対して照射されるおそれがある。
【0012】
そのため、このようにレーザービームが接着フィルムに対して照射された後には、接着フィルムが正常に切断されているか否か、具体的には、レーザービームの軌跡が正確に複数のチップの境界に沿っているかを判定する必要がある。しかしながら、この判定を行うためにレーザービームの軌跡の全域を確認する場合には、多大な手間がかかるとともに所要時間が長くなる。
【0013】
この点に鑑み、本発明の目的は、複数のチップに含まれる非直線部に沿って接着フィルムが正常に切断されているか否かを簡便に判定することが可能なレーザー加工装置及び接着フィルムの切断方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一側面によれば、その境界に直線的に延在しない非直線部が含まれる複数のチップに一面側が貼着した接着フィルムを該非直線部に沿って切断するためのレーザー加工装置であって、該接着フィルムの他面側を保持するためのチャックテーブルと、該接着フィルムを切断可能なレーザービームを照射するためのレーザービーム照射ユニットと、該接着フィルムを撮像して画像を形成するための撮像ユニットと、該チャックテーブルと、該レーザービーム照射ユニット及び該撮像ユニットと、を相対的に移動させるための移動機構と、該接着フィルムに関する情報を表示するためのディスプレイと、該レーザービーム照射ユニット、該撮像ユニット、該移動機構及び該ディスプレイを制御するためのコントローラと、を備え、該コントローラは、該非直線部に沿うように該接着フィルムが切断される前の該非直線部の全域又は互いに異なる複数の領域を撮像して1又は複数の事前画像を形成するために該撮像ユニット及び該移動機構を制御する事前撮像部と、該1又は複数の事前画像に基づいてそれぞれが該非直線部に含まれる箇所を示す3つ以上の分割予定座標を特定する特定部と、該3つ以上の分割予定座標を辿るように該接着フィルムに該レーザービームを照射するために該レーザービーム照射ユニット及び該移動機構を制御する照射部と、該非直線部に沿うように該接着フィルムが切断された後の該非直線部の互いに異なる複数の領域を撮像してそれぞれに該3つ以上の分割予定座標のいずれかが示す箇所が含まれる3つ以上の事後画像を形成するために該撮像ユニット及び該移動機構を制御する事後撮像部と、該3つ以上の事後画像に基づいて該3つ以上の分割予定座標のそれぞれが示す箇所の全てが含まれる結合画像を形成する結合部と、該結合画像を表示するために該ディスプレイを制御する表示部と、を含むレーザー加工装置が供給される。
【0015】
好ましくは、該コントローラは、該結合画像において示される該接着フィルムの切断痕と該非直線部とを比較して、該接着フィルムが正常に切断されているか否かを判定する判定部をさらに含み、該表示部は、該結合画像とともに該判定部による判定結果を報知するための情報を表示するために該ディスプレイを制御する。
【0016】
本発明の別の側面によれば、その境界に直線的に延在しない非直線部が含まれる複数のチップに一面側が貼着した接着フィルムを該非直線部に沿って切断するための接着フィルムの切断方法であって、該非直線部の全域又は互いに異なる複数の領域を撮像して1又は複数の事前画像を形成する事前撮像ステップと、該事前撮像ステップの後に、該1又は複数の事前画像に基づいてそれぞれが該非直線部に含まれる箇所を示す3つ以上の分割予定座標を特定する特定ステップと、該特定ステップの後に、該3つ以上の分割予定座標を辿るように該接着フィルムに該接着フィルムを切断可能なレーザービームを照射する照射ステップと、該照射ステップの後に、該非直線部の互いに異なる複数の領域を撮像してそれぞれに該3つ以上の分割予定座標のいずれかが示す箇所が含まれる3つ以上の事後画像を形成する事後撮像ステップと、該事後撮像ステップの後に、該3つ以上の事後画像に基づいて該3つ以上の分割予定座標のそれぞれが示す箇所の全てが含まれる結合画像を形成する結合ステップと、該結合ステップの後に、該結合画像において示される該接着フィルムの切断痕と該非直線部とを比較して、該接着フィルムが正常に切断されているか否かを判定する判定ステップと、を備える接着フィルムの切断方法が提供される。
【0017】
好ましくは、該結合ステップにおいては、該3つ以上の事後画像のそれぞれから一部を抽出して3つ以上の抽出事後画像を形成してから該3つ以上の抽出事後画像を結合することによって該結合画像が形成される。
【発明の効果】
【0018】
本発明においては、複数のチップの境界の非直線部に含まれる箇所をそれぞれが示す3つ以上の分割予定座標を辿るように接着フィルムにレーザービームを照射した後に、当該3つ以上の分割予定座標のそれぞれが示す箇所の全てが含まれる結合画像が形成される。この場合、この結合画像において示される接着フィルムの切断痕と当該非直線部とを比較することによって、接着フィルムが正常に切断されているか否かを簡便に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1(A)は、接着フィルムと接着フィルムの一面側に貼着されている複数のチップとを備えるフレームユニットの一例を模式的に示す斜視図であり、図1(B)は、複数のチップの境界に含まれる非直線部の一例を模式的に示す平面図である。
図2図2は、接着フィルムを非直線部に沿って切断するためのレーザー加工装置の一例を模式的に示す斜視図である。
図3図3は、レーザー加工装置の構成要素を制御するためのコントローラの一例を模式的に示すブロック図である。
図4図4は、レーザー加工装置において、その境界に非直線部が含まれる複数のチップに表面側が貼着した接着フィルムを非直線部に沿って切断するための接着フィルムの切断方法の一例を模式的に示すフローチャートである。
図5図5(A)は、事前撮像ステップにおいて撮像される領域の一例を模式的に示す平面図であり、図5(B)は、特定ステップにおいて特定される3つ以上の分割予定座標の一例を模式的に示す平面図であり、図5(C)は、照射ステップにおいて形成される接着フィルムの切断痕の一例を模式的に示す平面図である。
図6図6(A)は、事後撮像ステップにおいて撮像される領域の一例を模式的に示す平面図であり、図6(B)は、結合ステップにおいて形成される結合画像の一例を模式的に示す図である。
図7図7は、結合ステップにおいて形成される結合画像の別の例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。図1(A)は、接着フィルムと接着フィルムの一面側に貼着されている複数のチップとを備えるフレームユニットの一例を模式的に示す斜視図である。図1に示されるフレームユニット1は、例えば、アルミニウム等の金属材料からなり、その中央領域に円筒状の開口3aが形成されている環状のフレーム3を備える。
【0021】
フレーム3の裏面側には、開口3aよりも直径が大きい円盤状のダイシングテープ5の表面側の外周領域が貼着されている。このダイシングテープ5は、例えば、可撓性を有するフィルム状の基材層と、基材層の表面(フレーム3側の面)に設けられた粘着層(糊層)とを有する。
【0022】
具体的には、この基材層は、ポリオレフィン(PO)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)又はポリスチレン(PS)等からなる。また、この粘着層は、紫外線硬化性のシリコーンゴム、アクリル系材料又はエポキシ系材料等からなる。
【0023】
ダイシングテープ5の表面側の中央領域には、開口3aよりも直径が小さい円盤状の接着フィルム(DAF)7の裏面側(他面側)が貼着されている。この接着フィルム7は、例えば、エポキシ樹脂等からなる。また、接着フィルム7の表面側(一面側)には、複数のチップ9が貼着されている。
【0024】
複数のチップ9は、例えば、マトリックス状に配列された複数のデバイスが表面側に設けられているウエーハの表面側に格子状の溝を形成してから、この溝においてウエーハが分割されるまでウエーハの裏面側を研削することによって製造される。そして、このように製造されてから接着フィルム7に貼着される複数のチップ9の境界には、直線的に延在しない非直線部11が含まれている。
【0025】
図1(B)は、複数のチップ9の境界に含まれる非直線部11を模式的に示す平面図である。この非直線部11は、10個のチップ9a1~9a10と10個のチップ9b1~9b10との間に位置する。なお、チップ9a1のチップ9b1側の端とチップ9a10のチップ9b10側の端とは、仮想の直線L1と概ね重なる。
【0026】
また、チップ9b1のチップ9a1側の端とチップ9b10のチップ9a10側の端とは、仮想の直線L1と平行な仮想の直線L2と概ね重なる。そして、非直線部11の一部(例えば、チップ9a1とチップ9b1との間からチップ9a5とチップ9b5との間にまで延在する部分)は、仮想の直線L1,L2に対して僅かに傾斜するように延在する。
【0027】
図2は、接着フィルム7を非直線部11に沿って切断するためのレーザー加工装置の一例を模式的に示す斜視図である。なお、図2に示されるX軸方向及びY軸方向は、水平面上において互いに直交する方向であり、Z軸方向は、X軸方向及びY軸方向のそれぞれと直交する方向(鉛直方向)である。
【0028】
図2に示されるレーザー加工装置2は、チャックテーブル4を備える。このチャックテーブル4は、接着フィルム7よりも大きく、かつ、フレーム3の開口3aよりも小さい直径を有するとともに、水平面に概ね平行な円状の保持面を含む。さらに、チャックテーブル4は、吸引機構(不図示)及び回転機構(不図示)に連結されている。
【0029】
吸引機構は、例えば、エジェクタ等を有する。そして、吸引機構が動作すると、チャックテーブル4の保持面近傍の空間に吸引力が作用する。そのため、保持面にダイシングテープ5を介して接着フィルム7が置かれた状態で吸引機構が動作すると、チャックテーブル4の保持面においてフレームユニット1、具体的には、ダイシングテープ5を介して接着フィルム7の裏面側が保持される。
【0030】
回転機構は、例えば、プーリ及びモータ等を有する。そして、回転機構が動作すると、保持面の中心を通るZ軸方向に沿った直線を回転軸としてチャックテーブル4が回転する。例えば、レーザー加工装置2においては、チャックテーブル4の保持面においてフレームユニット1を保持した後に、仮想の直線L1,L2がX軸方向に概ね平行になるように回転機構がチャックテーブル4を回転させる。
【0031】
チャックテーブル4の上方には、レーザービーム照射ユニット6のヘッド8が設けられている。このヘッド8は、Y軸方向に沿って延在する円筒状のハウジング10の先端部に固定されている。なお、ヘッド8は集光レンズ及びミラー等の光学系を収容し、ハウジング10はミラー及び/又はレンズ等の光学系を収容する。
【0032】
ハウジング10の基端部は、チャックテーブル4と、レーザービーム照射ユニット6及び後述する撮像ユニット12と、を相対的に移動させるための水平方向移動機構(不図示)及び鉛直方向移動機構(不図示)に連結されている。
【0033】
水平方向移動機構及び鉛直方向移動機構のそれぞれは、例えば、ボールねじ及びモータ等を有する。そして、水平方向移動機構が動作すると、X軸方向及び/又はY軸方向に沿ってヘッド8及びハウジング10が移動し、また、鉛直方向移動機構が動作すると、Z軸方向に沿ってヘッド8及びハウジング10が移動する。
【0034】
また、レーザービーム照射ユニット6は、接着フィルム7を切断可能なレーザービーム、具体的には、接着フィルム7に吸収される波長のレーザービームを生成するレーザー発振器(不図示)を有する。このレーザー発振器は、例えば、レーザー媒質としてNd:YAG等を有する。そして、レーザー発振器でレーザービームが生成されると、ハウジング10及びヘッド8に収容された光学系を介して、レーザービームがヘッド8の中心からみて直下に射出される。
【0035】
さらに、ハウジング10の側部には、接着フィルム7等を撮像して画像を形成するための撮像ユニット12が設けられている。この撮像ユニット12は、例えば、LED(Light Emitting Diode)等の光源と、対物レンズと、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ等の撮像素子と、を有する。
【0036】
また、レーザー加工装置2には、チャックテーブル4及びレーザービーム照射ユニット6を覆うようにカバー(不図示)が設けられている。そして、このカバーの前面には、接着フィルム7に関する情報等を表示するためのディスプレイ14が配置されている。このディスプレイ14は、例えば、液晶ディスプレイ又は有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイである。
【0037】
なお、ディスプレイ14は、ユーザインターフェースとして機能するタッチパネルに置換されてもよい。このタッチパネルは、例えば、ディスプレイ14と、静電容量方式又は抵抗膜方式のタッチセンサ等の入力ユニットと、によって構成される。
【0038】
さらに、レーザー加工装置2は、上述した構成要素を制御するためのコントローラを内蔵する。図3は、このコントローラの一例を模式的に示すブロック図である。図3に示されるコントローラ16は、プロセッサ18とメモリ20とを有する。
【0039】
プロセッサ18は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等によって構成される。また、メモリ20は、例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)又はSRAM(Static Random Access Memory)等の揮発性メモリと、SSD(Solid State Drive)(NAND型フラッシュメモリ)又はHDD(Hard Disk Drive)(磁気記憶装置)等の不揮発性メモリと、によって構成される。
【0040】
メモリ20は、プロセッサ18において用いられるデータ及びプログラム等を記憶する。このデータとしては、例えば、接着フィルム7を切断する際のレーザービームの照射条件が挙げられる。また、このプログラムとしては、例えば、その境界に非直線部11が含まれる複数のチップ9に表面側が貼着した接着フィルム7を非直線部11に沿って切断するための接着フィルムの切断方法を実施するためのプログラムが挙げられる。
【0041】
また、プロセッサ18は、メモリ20に記憶された当該接着フィルムの切断方法を実施するためのプログラムを読みだして実行するようにレーザー加工装置2の構成要素を制御する。このプロセッサ18は、事前撮像部18a、特定部18b、照射部18c、事後撮像部18d、結合部18e、判定部18f及び表示部18gを有する。
【0042】
事前撮像部18aは、非直線部11に沿うように接着フィルム7が切断される前の非直線部11の全域又は互いに異なる複数の領域を撮像して1又は複数の事前画像を形成するために、撮像ユニット12並びにハウジング10に連結されている水平方向移動機構及び鉛直方向移動機構を制御する。
【0043】
特定部18bは、当該1又は複数の事前画像に基づいてそれぞれが非直線部11に含まれる箇所を示す3つ以上の分割予定座標を特定する。照射部18cは、当該3つ以上の分割予定座標を辿るように接着フィルム7にレーザービームLBを照射するために、レーザービーム照射ユニット6並びにハウジング10に連結されている水平方向移動機構及び鉛直方向移動機構を制御する。
【0044】
事後撮像部18dは、非直線部11に沿うように接着フィルム7が切断された後の非直線部11の互いに異なる複数の領域を撮像してそれぞれに当該3つ以上の分割予定座標のいずれかが示す箇所が含まれる3つ以上の事後画像を形成するために、撮像ユニット12並びにハウジング10に連結されている水平方向移動機構及び鉛直方向移動機構を制御する。
【0045】
結合部18eは、当該3つ以上の事後画像に基づいて当該3つ以上の分割予定座標の全てが示す箇所が含まれる結合画像を形成する。判定部18fは、当該結合画像において示される接着フィルム7の切断痕と非直線部11とを比較して、接着フィルム7が正常に切断されているか否かを判定する。表示部18gは、当該結合画像を表示するためにディスプレイ14を制御する。
【0046】
図4は、レーザー加工装置2において、その境界に非直線部11が含まれる複数のチップ9に表面側が貼着した接着フィルム7を非直線部11に沿って切断するための接着フィルムの切断方法の一例を模式的に示すフローチャートである。
【0047】
この方法においては、まず、非直線部11の互いに異なる複数の領域を撮像して複数の事前画像を形成する(事前撮像ステップS1)。図5(A)は、事前撮像ステップS1において撮像される領域の一例を模式的に示す平面図である。
【0048】
この事前撮像ステップS1においては、まず、チップ9a1とチップ9b1との間を中心とする領域R1と、撮像ユニット12によって撮像可能な範囲と、を鉛直方向において重ねるように、事前撮像部18aがハウジング10に連結されている水平方向移動機構を制御する。
【0049】
次いで、撮像ユニット12による撮像の焦点が各チップ9の上面と概ね同じ高さに位置付けられるように、事前撮像部18aがハウジング10に連結されている鉛直方向移動機構を制御する。次いで、領域R1を撮像して画像(事前画像)を形成するように、事前撮像部18aが撮像ユニット12を制御する。
【0050】
さらに、チップ9a4とチップ9b4との間を中心とする領域R2と、チップ9a7とチップ9b7との間を中心とする領域R3と、チップ9a10とチップ9b10との間を中心とする領域R4と、のそれぞれを撮像して、3つの事前画像を形成するように、事前撮像部18aが撮像ユニット12及びハウジング10に連結されている水平方向移動機構を制御する。これにより、4つの事前画像が形成されて事前撮像ステップS1が完了する。
【0051】
事前撮像ステップS1の後には、複数の事前画像に基づいてそれぞれが非直線部11に含まれる箇所を示す3つ以上の分割予定座標を特定する(特定ステップS2)。図5(B)は、特定ステップS2において特定される3つ以上の分割予定座標の一例を模式的に示す平面図である。
【0052】
この特定ステップS2においては、Y軸方向において隣接する一対のチップ9(例えば、チップ9a1及びチップ9b1)の中心に位置する点のX軸方向及びY軸方向のそれぞれに平行な平面(XY平面)における座標(例えば、(X1,Y1))を分割予定座標として特定部18bが特定する。
【0053】
なお、Y軸方向において隣接する一対のチップ9の中心に位置する点のX座標は、当該一対のチップ9のそれぞれのX軸方向における中心のX座標と等しく、また、そのY座標は、当該一対のチップ9のY軸方向における中間に位置する。そのため、各事前画像に含まれる当該一対のチップ9を参照することで、分割予定座標を特定することができる。これにより、3つ以上(ここでは、4つ)の分割予定座標(X1,Y1)、(X2,Y2)、(X3,Y3)、(X4,Y4)が形成されて特定ステップS2が完了する。
【0054】
特定ステップS2の後には、3つ以上の分割予定座標(X1,Y1)、(X2,Y2)、(X3,Y3)、(X4,Y4)を辿るように接着フィルム7にレーザービームを照射する(照射ステップS3)。図5(C)は、照射ステップS3において形成される接着フィルム7の切断痕の一例を模式的に示す平面図である。
【0055】
この照射ステップS3においては、まず、ヘッド8の中心が平面視において接着フィルム7の外側に位置付けられるとともに、この中心からみて分割予定座標(X1,Y1)がX軸方向に位置付けられるように、照射部18cがハウジング10に連結されている水平方向移動機構を制御する。次いで、ヘッド8から射出されるレーザービームの集光点が接着フィルム7に対応する高さに位置付けられるように、照射部18cがハウジング10に連結されている鉛直方向移動機構を制御する。
【0056】
次いで、ヘッド8からレーザービームが射出されるように照射部18cがレーザービーム照射ユニット6を制御しながら、ヘッド8の中心が分割予定座標(X1,Y1)の直上に位置付けられるまでヘッド8をX軸方向に移動させるように照射部18cがハウジング10に連結されている水平方向移動機構を制御する。
【0057】
次いで、ヘッド8からレーザービームを射出させたまま、ヘッド8の中心が分割予定座標(X2,Y2)の直上、分割予定座標(X3,Y3)の直上及び分割予定座標(X4,Y4)に順番に位置付けられるまでヘッド8を折れ線状に移動させるように照射部18cがハウジング10に連結されている水平方向移動機構を制御する。
【0058】
次いで、ヘッド8からレーザービームを射出させたまま、ヘッド8の中心が平面視において接着フィルム7の外側に位置付けられるまでヘッド8をX軸方向に移動させるように、照射部18cがハウジング10に連結されている水平方向移動機構を制御する。これにより、接着フィルム7のうちレーザービームが照射された部分が除去されて、すなわち、接着フィルム7に切断痕13が形成されて、照射ステップS3が完了する。
【0059】
照射ステップS3の後には、非直線部11の互いに異なる複数の領域を撮像してそれぞれに3つ以上の分割予定座標のいずれかが示す箇所が含まれる3つ以上の事後画像を形成する(事後撮像ステップS4)。図6(A)は、事後撮像ステップS4において撮像される領域の一例を模式的に示す平面図である。
【0060】
この事後撮像ステップS4においては、まず、チップ9a1とチップ9b1との間を中心とする領域R1’と、撮像ユニット12によって撮像可能な範囲と、を鉛直方向において重ねるように、事後撮像部18dがハウジング10に連結されている水平方向移動機構を制御する。
【0061】
次いで、撮像ユニット12による撮像の焦点が接着フィルム7の上面と概ね同じ高さに位置付けられるように、事後撮像部18dがハウジング10に連結されている鉛直方向移動機構を制御する。次いで、領域R1’を撮像して画像(事後画像)を形成するように、事後撮像部18dが撮像ユニット12を制御する。
【0062】
さらに、チップ9a4とチップ9b4との間を中心とする領域R2’と、チップ9a7とチップ9b7との間を中心とする領域R3’と、チップ9a10とチップ9b10との間を中心とする領域R4’と、のそれぞれを撮像して、3つの事後画像を形成するように、事後撮像部18dが撮像ユニット12及びハウジング10に連結されている水平方向移動機構を制御する。これにより、4つの事後画像が形成されて事後撮像ステップS4が完了する。
【0063】
事後撮像ステップS4の後には、3つ以上の事後画像に基づいて3つ以上の分割予定座標(X1,Y1)、(X2,Y2)、(X3,Y3)、(X4,Y4)の全てが示す箇所が含まれる結合画像を形成する(結合ステップS5)。図6(B)は、結合ステップS5において形成される結合画像の一例を模式的に示す図である。
【0064】
この結合ステップS5においては、4つの事後画像に基づいて、4つの領域R1’,R2’,R3’,R4’が連続的に示される結合画像Iを結合部18eが形成する。これにより、4つの分割予定座標(X1,Y1)、(X2,Y2)、(X3,Y3)、(X4,Y4)の全てが示す箇所が含まれる結合画像Iが形成されて、結合ステップS5が完了する。
【0065】
結合ステップS5の後には、結合画像Iにおいて示される接着フィルム7の切断痕13と非直線部11とを比較して、接着フィルム7が正常に切断されているか否かを判定する(判定ステップS6)。
【0066】
この判定ステップS6においては、例えば、切断痕13と各チップ(例えば、チップ9a4)9との最短間隔がY軸方向において隣接する一対のチップ(例えば、チップ9a4及びチップ9b4)9との間隔のk(kは、0.1、好ましくは0.15、より好ましくは0.20)倍以上であれば、接着フィルム7が正常に切断されていると判定部18fが判定する。なお、kの値は、予めメモリ20に記憶されている。
【0067】
さらに、判定部18fによる判定が完了すれば、レーザー加工装置2のオペレータに判定結果を報知するために、結合画像Iとともに判定部18fによる判定結果を報知するための情報(例えば、判定結果を示すテキスト)が表示されるように表示部18gがディスプレイ14を制御してもよい。
【0068】
レーザー加工装置2においては、複数のチップ9の境界の非直線部11に含まれる箇所をそれぞれが示す3つ以上の分割予定座標(X1,Y1)、(X2,Y2)、(X3,Y3)、(X4,Y4)を辿るように接着フィルム7にレーザービームを照射した後に、当該3つ以上の分割予定座標(X1,Y1)、(X2,Y2)、(X3,Y3)、(X4,Y4)のそれぞれが示す箇所の全てが含まれる結合画像Iが形成される。この場合、この結合画像Iにおいて示される接着フィルム7の切断痕13と非直線部11とを比較することによって、接着フィルム7が正常に切断されているか否かを簡便に判定することができる。
【0069】
なお、上述した内容は本発明の一態様であって、本発明は上述した内容に限定されない。例えば、レーザー加工装置2においては、プロセッサ18に判定部18fが設けられなくてもよい。この場合、結合ステップS5の後に、結合画像Iを表示するように表示部18gがディスプレイ14を制御する。
【0070】
そして、判定ステップS6においては、レーザー加工装置2のオペレータが、ディスプレイ14に表示された結合画像Iにおいて示される接着フィルム7の切断痕13と非直線部11とを比較して、接着フィルム7が正常に切断されているか否かを判定する
【0071】
また、事前撮像ステップS1においては、非直線部11の全域を撮像することによって1つの事前画像が形成されてもよい。この場合、特定ステップS2においては、1つの事前画像に基づいてそれぞれが非直線部11に含まれる箇所を示す3つ以上の分割予定座標が特定される。
【0072】
また、結合ステップS5においては、3つ以上の事後画像のそれぞれから一部を抽出して3つ以上の抽出事後画像を形成してから3つ以上の抽出事後画像を結合することによって結合画像が形成されてもよい。図7は、このように形成される結合画像の一例を模式的に示す図である。
【0073】
このように結合ステップS5が実施される場合、例えば、4つの事後画像のうちX軸方向において中央側に位置する部分を抽出してから、抽出された4つの部分が連続的に示される結合画像I’が形成される。この場合、分割予定座標の数が非常に多くなっても、当該分割予定座標のそれぞれが示す箇所の全てが含まれる結合画像I’をディスプレイ14に表示させることが可能になる。
【0074】
その他、上述した実施形態にかかる構造及び方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0075】
1 :フレームユニット
2 :レーザー加工装置
3 :フレーム(3a:開口)
4 :チャックテーブル
5 :ダイシングテープ
6 :レーザービーム照射ユニット
7 :接着フィルム
8 :ヘッド
9 :チップ(9a1~9a10,9b1~9b10:チップ)
10:ハウジング
11:非直線部
12:撮像ユニット
13:切断痕
14:ディスプレイ
16:コントローラ
18:プロセッサ
(18a:事前撮像部、18b:特定部、18c:照射部)
(18d:事後撮像部、18e:結合部、18f:判定部、18g:表示部)
20:メモリ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7