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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177732
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】メモリモジュールおよび形状測定機
(51)【国際特許分類】
   G11C 5/14 20060101AFI20241217BHJP
   G06F 1/26 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
G11C5/14 100
G06F1/26 303
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096033
(22)【出願日】2023-06-12
(71)【出願人】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 千尋
(72)【発明者】
【氏名】金松 敏裕
【テーマコード(参考)】
5B011
【Fターム(参考)】
5B011DA02
5B011DB01
5B011DB21
5B011EA05
5B011EA10
5B011JA03
(57)【要約】
【課題】バッテリの消費を抑制可能なメモリモジュールにおいて、揮発性メモリの不具合発生を抑制する
【解決手段】メモリモジュール1は、揮発性メモリであるSRAM132と、バッテリ12の電力をSRAM132に供給する電力供給経路L1と、SRAM132に対して並列な関係で電力供給経路L1に接続された第1コンデンサ31と、第1コンデンサ31に対して並列な関係で電力供給経路L1に接続された放電抵抗33と、電力供給経路L1をバッテリに接続するオン状態と、電力供給経路L1を放電切替経路L2に接続するオフ状態とを切り替えるバッテリスイッチ41と、バッテリスイッチ41がオン状態からオフ状態に切り替えられ、かつ、電力供給経路L1からバッテリスイッチ41を介して放電切替経路L2に任意の電荷が流入する間、放電抵抗33をグランドに接続する放電スイッチ42と、を備える
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
揮発性メモリと、
バッテリの電力を前記揮発性メモリに供給する電力供給経路と、
前記揮発性メモリに対して並列な関係で前記電力供給経路に接続された第1コンデンサと、
前記第1コンデンサに対して並列な関係で前記電力供給経路に接続された放電抵抗と、
前記電力供給経路を前記バッテリに接続するオン状態と、前記電力供給経路を放電切替経路に接続するオフ状態とを切り替えるバッテリスイッチと、
前記バッテリスイッチが前記オン状態から前記オフ状態に切り替えられ、かつ、前記電力供給経路から前記バッテリスイッチを介して前記放電切替経路に任意の電荷が流入する間、前記放電抵抗をグランドに接続する放電スイッチと、を備える、メモリモジュール。
【請求項2】
前記電力供給経路に設けられ、かつ、前記第1コンデンサから前記バッテリへの電流の逆流を防止するダイオードと、
前記ダイオードの上流側において、前記第1コンデンサに対して並列な関係で前記電力供給経路に接続された第2コンデンサと、をさらに備える、請求項1に記載のメモリモジュール。
【請求項3】
前記放電スイッチは、前記放電切替経路に接続された制御端子を有し、かつ、前記放電抵抗と前記グランドとの間に接続された半導体スイッチである、請求項1に記載のメモリモジュール。
【請求項4】
前記放電スイッチは、
前記放電切替経路に設けられた発光ダイオードと、
前記放電抵抗と前記グランドとの間に接続され、前記発光ダイオードから光信号を受光するフォトトランジスタと、を有する、請求項1に記載のメモリモジュール。
【請求項5】
ワークの表面粗さを測定する形状測定機であって、
請求項1~4のいずれか一項に記載のメモリモジュールと、
前記揮発性メモリに電力を供給する前記バッテリと、
前記揮発性メモリに保存された測定条件に基づいて測定処理を行うプロセッサと、を含み、
前記バッテリスイッチが前記オフ状態から前記オン状態に切り替えられた場合、前記プロセッサは、前記測定条件のデフォルトデータを前記揮発性メモリに書き込む、形状測定機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揮発性メモリを有するメモリモジュールおよび形状測定機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プログラムやデータを一時的に格納するメモリとして、SRAMやDRAMなどの揮発性メモリが利用される。この揮発性メモリは、素早い応答性を有するが、電力供給を受けない状態ではデータを保持できない。そこで、外部電源が遮断された場合には、バッテリの電力を利用することで揮発性メモリのデータを維持する電子機器が存在する(例えば特許文献1参照)。
【0003】
また、従来、ワークの表面粗さを測定する形状測定機では、測定動作を行うために、種々の設定パラメータを含む測定条件を必要とする(例えば特許文献2参照)。このような測定条件は、上述したような揮発性メモリに書き込まれることで、素早い測定動作を可能にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6-266476号公報
【特許文献2】特開2022-89103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、特許文献1に開示されるようなバッテリを有する電子機器では、電子機器を長期間使用しない場合、バッテリの消費を抑制するためにバッテリの電力を遮断することが望ましい。本発明者らは、揮発性メモリに対するバッテリの電力遮断に関して検討したところ、以下の問題を見出した。
まず、揮発性メモリと、バッテリと揮発性メモリとの間の接続をオンオフするバッテリスイッチとを有するメモリモジュールを想定する。このメモリモジュールにおいて、バッテリスイッチがオンからオフに切り替えられた場合、揮発性メモリの電圧は、メモリモジュール内のコンデンサなどの影響を受けることで緩やかに降下する。ここで、揮発性メモリの電圧がデータ保持可能な電圧値を下回った直後にバッテリスイッチがオフからオンに切り替えられた場合、揮発性メモリのデータが部分的に消失しつつ完全に消去されない状態で電源が再投入されることがある。このような場合、プロセッサが揮発性メモリの部分的なデータ消失を検出できないまま再起動され、正常な出力を実行できないことがある。
特に、電子機器が特許文献2のような形状測定機である場合には、プロセッサが揮発性メモリに書き込まれているはずの測定条件を読み取ることができず、エラーが生じるという問題が生じる。
【0006】
本発明は、バッテリの消費を抑制可能なメモリモジュールおよび形状測定機において、揮発性メモリの不具合発生を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係るメモリモジュールは、揮発性メモリと、バッテリの電力を前記揮発性メモリに供給する電力供給経路と、前記揮発性メモリに対して並列な関係で前記電力供給経路に接続された第1コンデンサと、前記第1コンデンサに対して並列な関係で前記電力供給経路に接続された放電抵抗と、前記電力供給経路を前記バッテリに接続するオン状態と、前記電力供給経路を放電切替経路に接続するオフ状態とを切り替えるバッテリスイッチと、前記バッテリスイッチが前記オン状態から前記オフ状態に切り替えられ、かつ、前記電力供給経路から前記バッテリスイッチを介して前記放電切替経路に任意の電荷が流入する間、前記放電抵抗をグランドに接続する放電スイッチと、を備える。
このような構成では、バッテリスイッチがオン状態からオフ状態に切り替えられると、放電抵抗がグランドに接続されることで、第1コンデンサが放電抵抗により放電される。その結果、揮発性メモリに加わる電圧が急速に低下するため、揮発性メモリのデータが素早く消去される。よって、バッテリスイッチが連続的に切り替え操作された場合において、揮発性メモリに対するバッテリの電力遮断後、当該電力が再投入される前に、揮発性メモリのデータを完全に消去することができる。これにより、揮発性メモリのデータが部分的に消失した状態で電力を再投入されることを抑制でき、揮発性メモリにおける不完全なデータ消失状態という不具合の発生を抑制できる。
【0008】
本発明の一態様に係るメモリモジュールは、前記電力供給経路に設けられ、かつ、前記第1コンデンサから前記バッテリへの電流の逆流を防止するダイオードと、前記ダイオードの上流側において、前記第1コンデンサに対して並列な関係で前記電力供給経路に接続された第2コンデンサと、をさらに備えることが好ましい。
このような構成では、第2コンデンサに蓄積された電荷を利用して放電スイッチが好適にオン動作することができる。
【0009】
本発明の一態様に係るメモリモジュールにおいて、前記放電スイッチは、前記放電切替経路に接続された制御端子を有し、かつ、前記放電抵抗と前記グランドとの間に接続された半導体スイッチであってもよい。
【0010】
本発明の一態様に係るメモリモジュールにおいて、前記放電スイッチは、前記放電切替経路に設けられた発光ダイオードと、前記放電抵抗と前記グランドとの間に接続され、前記発光ダイオードから光信号を受光するフォトトランジスタと、を有してもよい。
【0011】
本発明の一態様に係る形状測定機は、ワークの表面粗さを測定する形状測定機であって、上述のいずれかに記載のメモリモジュールと、前記揮発性メモリに電力を供給する前記バッテリと、前記揮発性メモリに保存された測定条件に基づいて測定処理を行うプロセッサと、を含み、前記バッテリスイッチが前記オフ状態から前記オン状態に切り替えられた場合、前記プロセッサは、前記測定条件のデフォルトデータを前記揮発性メモリに書き込む。
このような構成では、上述のメモリモジュールの効果により、揮発性メモリの不完全なデータ消失状態の発生が抑制されるため、プロセッサの再起動時、測定条件のデフォルトデータを揮発性メモリに正常に書き込むことができる。このため、形状測定機は、再起動によるエラーを出すことなく、正常に測定動作を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態のメモリモジュールを含む形状測定機を模式的に示す図であって、バッテリスイッチのオン状態(形状測定機の通常使用状態)を説明する図。
図2】第1実施形態のメモリモジュールを含む形状測定機を模式的に示す図であって、バッテリスイッチのオフ状態(形状測定機の長期保存状態)を説明する図。
図3】第2実施形態のメモリモジュールを含む形状測定機を模式的に示す図。
図4】第3実施形態のメモリモジュールを含む形状測定機を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態に係るメモリモジュール1を含んで構成された形状測定機10を模式的に示す。この形状測定機10は、ワーク表面の粗さを測定する装置であり、図1に示すように、メモリモジュール1、電源入力端子11、バッテリ12、制御部13、電源部14、および、動作部15を備える。なお、本実施形態の形状測定機10は、バッテリ12から供給される電力により任意の場所での測定を可能とする小型の可搬型機器である。
【0014】
電源入力端子11は、例えばUSB端子であり、商用電源に接続されたACアダプタ16などに接続される。ACアダプタ16は、入力された商用電源の交流を直流に変換し、変換後の直流を電源電力として電源入力端子11に供給する。電源入力端子11は、ACアダプタ16から入力された電源電力を各供給先へ出力可能である。
【0015】
バッテリ12は、形状測定機10に内蔵された二次電池である。バッテリ12は、電源入力端子11と同様、電源電力を各供給先へ出力可能である。
なお、電源入力端子11およびバッテリ12は、電源入力端子11に接続される第1ダイオード21と、バッテリ12に接続される第2ダイオード22と共に、OR回路を構成しており、いずれか電圧が高い方が電源電力を供給する。例えば、電源入力端子11がACアダプタ16に接続されているときには、電源入力端子11からの電源電力が供給され、バッテリ12は消費されない。また、電源入力端子11がACアダプタ16から取り外されると、バッテリ12から電源電力がシームレスに供給される。
【0016】
制御部13は、CPU(Central Processing Unit)131、揮発性メモリであるSRAM(Static Random Access Memory)132、および、不揮発性メモリであるROM(Read Only Memory)などを備える。なお、図1では、各種メモリのうち、SRAM132のみを例示し、他の図示を省略している。
CPU131は、本発明のプロセッサであり、ROMに記憶されているシステムプログラムなどの各種処理プログラムを直接読み出し、読み出したプログラムに従って測定処理を行う。また、SRAM132は、キャッシュメモリを構成し、CPU131は、必要なデータをSRAM132に保存する。CPU131は、SRAM132に保存されたデータに基づいて測定処理を高速で実行できる。なお、測定処理としては、動作部15を制御するための処理や動作部15から取得されたデータに基づく演算処理などが挙げられる。
【0017】
本実施形態では、SRAM132に保存されるデータとして、1以上の設定パラメータを含む測定条件が挙げられる。設定パラメータとしては、粗さ規格の種類、粗さパラメータの種類、プローブの移動速度、測定レンジ、評価長さ、データに適用するフィルタ、および、校正係数などが挙げられる。測定条件のデフォルトデータは、ROMに予め記憶されている。
また、SRAM132は、保存データ消失判別用のデータ領域を含むものとする。CPU131は、起動時、SRAM132における保存データ消失判別用のデータ領域の有無を判定することで、SRAM132におけるデータ消失を検知できる。CPU131は、SRAM132におけるデータ消失を検知した場合、測定条件のデフォルトデータや保存データ消失判別用データ領域を含む初期データをSRAM132に保存する。
【0018】
電源部14は、例えばレギュレータにより構成され、電源入力端子11またはバッテリ12から電源電力を受けることで、CPU131や動作部15等へ安定した電力を供給する。この電源部14は、電力供給の有無を切り替えるスイッチを含んで構成される。
【0019】
動作部15は、CPU131により制御されることで、形状測定機10の所期の機能である測定動作を行う負荷である。具体的には、動作部15は、ワーク表面の変位を検出するプローブ、プローブの移動機構、および、CPU131で演算された測定結果を出力する出力部などを含む。なお、動作部15の構成は、従来と略同様の構成を利用できるため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0020】
本実施形態のメモリモジュール1は、上述のSRAM132を含んで構成される。このメモリモジュール1は、上述のSRAM132と、バッテリ12の電力をSRAM132に供給する電力供給経路L1と、互いに並列な関係で電力供給経路L1に接続される第1コンデンサ31、第2コンデンサ32および放電抵抗33と、バッテリ12の接続をオンオフするバッテリスイッチ41と、放電抵抗33のグランド接続をオンオフする放電スイッチ42と、放電スイッチ42をオン動作させるための放電切替経路L2と、を備える。
なお、図示は省略するが、メモリモジュール1は、上述の各要素が搭載された回路基板を備える。この回路基板には、メモリモジュール1以外の要素(例えば電源入力端子11、制御部13のSRAM132以外の要素、電源部14など)が搭載されてもよい。
【0021】
電力供給経路L1の一端は、バッテリスイッチ41の基点411に接続され、電力供給経路L1の他端は、SRAM132に接続されている。また、電力供給経路L1上には、上述のOR回路に含まれる第2ダイオード22が設けられる。この第2ダイオード22は、本発明のダイオードに相当し、バッテリ12への電流の逆流を防止する。なお、電源入力端子11および電源部14は、電力供給経路L1における第2ダイオード22の下流側に接続される。
【0022】
第1コンデンサ31は、第2ダイオード22の下流側において、SRAM132に対して並列な関係で電力供給経路L1に接続され、SRAM132に供給される電圧の平滑化を行なう
第2コンデンサ32は、第2ダイオード22の上流側において、第1コンデンサ31に対して並列な関係で電力供給経路L1に接続されている。
【0023】
放電抵抗33は、第2ダイオード22の下流側において、第1コンデンサ31に対して並列な関係で電力供給経路L1に接続される。放電抵抗33は、バッテリスイッチ41がオフ状態に切り替えられ、放電スイッチ42がグランドに接続されたとき、第1コンデンサ31および第2コンデンサ32の電荷を放電可能である。
【0024】
バッテリスイッチ41は、電力供給経路L1をバッテリ12または放電切替経路L2に選択的に接続する1回路2接点スイッチである。具体的には、バッテリスイッチ41は、電力供給経路L1に接続される基点411と、バッテリ12に電気的に接続される切替点412と、放電切替経路L2の一端に接続される切替点413とを有する。このバッテリスイッチ41は、電力供給経路L1をバッテリ12に電気的に接続するオン状態(図1参照)と、電力供給経路L1を放電切替経路L2に電気的に接続するオフ状態(図2参照)とを切り替える。また、バッテリスイッチ41は、手動切替スイッチであり、バッテリスイッチ41の切り替えは、例えば形状測定機10に設けられたボタンやスライドスイッチなどの操作部(図示省略)に対するユーザ操作に応じて実行される。
なお、形状測定機10が通常に使用可能である期間、電源部14のオンオフ状態に関わらず、バッテリスイッチ41は常にオン状態に維持される。また、形状測定機10が長期保存される際、電源部14がオフ状態にされた後、バッテリスイッチ41がオン状態からオフ状態に切り替えられる。すなわち、バッテリスイッチ41は、形状測定機10の通常使用状態と長期保存状態とを切り替えるスイッチである。
【0025】
放電スイッチ42は、例えばNchMOSFETにより構成される半導体スイッチであり、放電抵抗33とグランドとの間に接続されている。この放電スイッチ42は、放電切替経路L2に接続された制御端子となるゲート端子Gと、放電抵抗33に直列接続されたドレイン端子Dと、グランド接続されたソース端子Sとを有する。ゲート端子Gとソース端子Sとの間に電圧が加わると、ドレイン端子Dからソース端子Sに電流が流れる。すなわち、放電スイッチ42は、ゲート端子Gに加わる電圧の有無により、放電抵抗33とグランドとを切り離す開放状態と、放電抵抗33をグランドに接続する短絡状態とを切り替え可能である。
なお、図1において、放電スイッチ42は、放電抵抗33の下流側に直列接続されているが、放電抵抗33の上流側に直列接続されていてもよい。
【0026】
放電切替経路L2の一端は、バッテリスイッチ41の切替点413に接続され、放電切替経路L2の他端は、放電スイッチ42のゲート端子Gに接続されている。また、放電切替経路L2の中間部は、抵抗34を介してグランド接続されている。この抵抗34は、バッテリスイッチ41がオン状態(図1参照)であるときに、放電スイッチ42のゲート端子Gの電位を確実にグランド電位にするためのプルダウン抵抗である。
【0027】
次に、メモリモジュール1の動作について説明する。なお、以下の説明では、電源入力端子11がACアダプタ16に接続されておらず(またはACアダプタ16が商用電源に接続されておらず)、電源入力端子11から電源電力が遮断されているものとする。
【0028】
まず、図1に示すように、バッテリスイッチ41がオン状態である場合、バッテリ12から供給される電力がSRAM132に供給される。これにより、SRAM132は、種々の設定パラメータを含む測定条件を保存する。また、第1コンデンサ31および第2コンデンサ32のそれぞれは、バッテリ12から供給される電力により充電されつつ、当該電力からノイズ成分を取り除く。
この場合において、放電スイッチ42のゲート端子Gはグランド電位に保たれるため、放電スイッチ42は開放状態に保たれ、放電抵抗33に電流が流れない。これにより、放電抵抗33による無駄な電力消費を抑制できる。
【0029】
ユーザは、形状測定機10を長期間使用しない場合など、電源部14をオフ状態にした後、バッテリ12の電力を遮断するための操作を行う。この操作に応じて、バッテリスイッチ41は、図2に示すようなオフ状態に切り替えられる。
【0030】
バッテリスイッチ41がオン状態からオフ状態に切り替えられたとき、メモリモジュール1の各要素が搭載された回路基板の電荷が放出される。このうち、特に第2コンデンサ32から放出された電荷が電力供給経路L1およびバッテリスイッチ41を介して放電切替経路L2に流入し、放電スイッチ42のゲート端子Gとドレイン端子Dとの間に電圧を加える(図2の矢印R1参照)。これにより、放電スイッチ42が短絡状態になり、第1コンデンサ31が放電抵抗33により放電される(図2の矢印R2参照)。なお、放電スイッチ42が短絡状態のとき、第2コンデンサ32も放電抵抗33により放電される(図2の矢印R3参照)。その結果、回路基板に残存する電荷が急速に放電され、SRAM132に加わる電圧が急速に低下するため、SRAM132のデータが素早く消去される。
【0031】
その後、ユーザがバッテリスイッチ41をオン状態に切り替えた場合、バッテリ12の電力はSRAM132等に再び供給される。その後、電源部14がオン状態に切り替えられると、CPU131は、SRAM132における保存データ消失判別用データ領域の有無を判定する。CPU131は、SRAM132に当該データ領域が無いと判定した場合、SRAM132におけるデータ消失を検知し、測定条件のデフォルトデータや保存データ消失判別用データ領域を含む初期データをSRAM132に保存する。これにより、CPU131が正常に再起動する。
【0032】
以上に説明した本実施形態のメモリモジュール1によれば、バッテリスイッチ41が連続的に切り替え操作された場合において、SRAM132に対するバッテリ12の電力遮断後、当該電力が再投入される前に、SRAM132のデータを完全に消去することができる。これにより、SRAM132のデータが部分的に消失した状態で電力を再投入されることを抑制でき、SRAM132における不完全なデータ消失状態という不具合の発生を抑制できる。その結果、CPU131がSRAM132におけるデータ有無を正しく判別することができ、正常に再起動することができる。
【0033】
また、本実施形態のメモリモジュール1では、バッテリスイッチ41がオフされると、メモリモジュール1内の電荷放出を利用して放電スイッチ42が自動的にオンされ、時間経過によって放電スイッチ42が自動的にオフされる。このため、放電スイッチ42をオンオフ操作するためのコントローラが不要である。これにより、メモリモジュール1を低コストで構成できる。また、コントローラのための電源も不要であるため、消費電力を好適に抑制できる。
【0034】
また、本実施形態のメモリモジュール1は、第2ダイオード22によりバッテリ12への電流の逆流を防止しつつ、第2ダイオード22の上流側の第2コンデンサ32に蓄積された電荷を利用することで、放電スイッチ42を好適にオン動作させることができる。
【0035】
本実施形態において、放電スイッチ42は、オン動作するために必要なゲートソース間電圧Vgsが十分に小さいMOSFETなどの半導体スイッチであることが好ましい。これにより、放電スイッチ42のオン期間を好適に確保できる。
また、放電スイッチ42がオン動作するために必要なゲートソース間電圧Vgsは、SRAM132のデータ保持可能電圧よりも小さいことが好ましい。これにより、第1コンデンサ31の電圧がSRAM132のデータ保持可能電圧以下に減少するまでの間、放電スイッチ42を短絡状態に維持することができ、SRAM132のデータを素早く消去できる。
【0036】
本実施形態のメモリモジュール1は、電源遮断時にSRAM132のデータを保持するのではなく、迅速なデータ消去を行うものであるため、大容量のコンデンサを必要としない。このため、本実施形態のメモリモジュール1は、小型の形状測定機10に対して好適に利用することができる。
【0037】
本実施形態の形状測定機10では、上述したようにSRAM132の不完全なデータ消失状態の発生が抑制されるため、CPU131の再起動時、測定条件のデフォルトデータをSRAM132に正常に書き込むことができる。このため、形状測定機10は、再起動によるエラーを出すことなく、正常に測定動作を行うことができる。
【0038】
[第2実施形態]
第2実施形態の形状測定機10Aについて図3に基づいて説明する。なお、第2実施形態の形状測定機10Aは、第1実施形態の形状測定機10とほぼ同様の構成を有する。以下では、第1実施形態と同様の構成には同一符号を利用し、その説明を省略または簡略化する。
【0039】
第2実施形態の形状測定機10Aでは、動作部15(図3における図示省略)の動作電圧と、制御部13の動作電圧とが互いに異なる。そこで、形状測定機10Aは、図3に示すように、電源入力端子11から供給される電源電力を制御部13用に電圧変換する第1電圧変換部51と、電圧変換前の当該電源電力を動作部15に供給する第1電源部14Aと、バッテリ12から供給される電源電力を制御部13用に電圧変換する第2電圧変換部52と、変換前の当該電源電力を動作部15に供給する第2電源部14Bと、第1電圧変換部51または第2電圧変換部52で電圧変換された電源電力をCPU131などに供給する第3電源部14Cとを備える。なお、第1電圧変換部51は、電源入力端子11と第1ダイオード21との間に接続された電圧変換回路であり、第2電圧変換部52は、バッテリ12と第2ダイオード22との間に接続された電圧変換回路である。
【0040】
第2実施形態に係るメモリモジュール1Aにおいて、SRAM132は、第2電圧変換部52で電圧変換された電源電力を供給される。また、放電切替経路L2には、放電スイッチ42のゲート端子Gに加わる電圧を調整する分圧用の抵抗35が設けられている。
【0041】
以上の第2実施形態に係るメモリモジュール1Aは、第1実施形態のメモリモジュール1と同様の動作が可能である。
具体的には、電源入力端子11からの電源電力が遮断された状態において、バッテリスイッチ41がオン状態からオフ状態に切り替えられると、主に第2コンデンサ32の蓄積電荷により、放電スイッチ42のゲート端子Gに電圧が加えられる(図3の矢印R1参照)。これにより、放電スイッチ42が短絡状態になり、第1コンデンサ31が放電抵抗33により放電される(図3の矢印R2参照)。なお、放電スイッチ42が短絡状態のとき、第2コンデンサ32も放電抵抗33により放電される(図3の矢印R3参照)。その結果、SRAM132に加わる電圧が急速に低下するため、SRAM132のデータが素早く消去される。
したがって、第2実施形態の形状測定機10Aは、第1実施形態の形状測定機10と同様、再起動によるエラーを出すことなく、正常に測定動作を行うことができる。
【0042】
[第3実施形態]
第3実施形態の形状測定機10Bについて図4に基づいて説明する。なお、第3実施形態の形状測定機10Bは、放電スイッチ42Aの構成以外、第1実施形態の形状測定機10とほぼ同様の構成を有する。以下では、第1実施形態と同様の構成には同一符号を利用し、その説明を省略または簡略化する。
【0043】
第3実施形態の放電スイッチ42Aは、フォトカプラにより構成される。具体的には、放電スイッチ42Aは、放電切替経路L2に設けられた発光ダイオード421と、放電抵抗33とグランドとの間に接続され、発光ダイオード421から光信号を受光するフォトトランジスタ422とを備える。発光ダイオード421に電流が流れると、発光ダイオード421が発光する。フォトトランジスタ422は、発光ダイオード421の光を受光する間、放電抵抗33に電流が流れる短絡状態となる。すなわち、フォトトランジスタ422は、発光ダイオード421の発光有無により、放電抵抗33とグランドとを切り離す開放状態と、放電抵抗33をグランドに接続する短絡状態とを切り替え可能である。
なお、第3実施形態の放電切替経路L2の一端は、バッテリスイッチ41の切替点413に接続され、放電切替経路L2の他端は、グランド接続されている。
【0044】
以上の第3実施形態に係るメモリモジュール1Bは、第1実施形態のメモリモジュール1と同様の動作が可能である。
具体的には、電源入力端子11からの電源電力が遮断された状態において、バッテリスイッチ41がオン状態からオフ状態に切り替えられると、主に第2コンデンサ32の蓄積電荷が発光ダイオード421に流れ、発光ダイオード421が発光する(図4の矢印R1参照)。これにより、フォトトランジスタ422が短絡状態になり、第1コンデンサ31が放電抵抗33により放電される(図4の矢印R2参照)。なお、フォトトランジスタ422が短絡状態のとき、第2コンデンサ32も放電抵抗33により放電される(図4の矢印R3参照)。その結果、SRAM132に加わる電圧が急速に低下するため、SRAM132のデータが素早く消去される。
したがって、第3実施形態の形状測定機10Bは、第1実施形態の形状測定機10と同様、再起動によるエラーを出すことなく、正常に測定動作を行うことができる。
【0045】
[変形例]
本発明は上述の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形および改良等によって得られる構成は本発明に含まれるものである。
【0046】
上記各実施形態の形状測定機10,10A,10Bは、バッテリ12およびACアダプタ16という2つの電源間で電源切り替えを行うために、OR回路を構成するダイオード21,22を備えており、電圧が高い方の電源を優先消費する。この変形例として形状測定機10,10A,10Bは、OR回路の替わりに、バッテリ12およびACアダプタ16という2つの電源間での電源切り替えを制御する優先電源切り替え機能ICを備えてもよい。この優先電源切り替え機能ICは、バッテリ12およびACアダプタ16のうち、低い側の電源を優先消費する機能を有してもよい。あるいは、形状測定機10,10A,10Bは、電源切り替えを行うための他の手段(回路や半導体等)を備えてもよい。
また、上記各実施形態の形状測定機10,10A,10Bは、バッテリ12およびACアダプタ16による2系統の電源経路を備えるが、少なくともバッテリ12による電源経路を備えるものであればよい。
【0047】
上記各実施形態のメモリモジュール1,1A,1Bは、本発明の揮発性メモリとして、キャッシュを構成するSRAM132を備えるが、本発明はこれに限定されない。例えば、SRAM132は、キャッシュ以外のバッファなどを構成するものであってもよい。また、本発明の揮発性メモリは、DRAMなど、SRAM以外のメモリであってもよい。
【0048】
上記各実施形態のバッテリスイッチ41は、手動切替スイッチであるが、他の制御回路など制御される電子切替スイッチであってもよい。
【0049】
上記各実施形態では、放電スイッチ42,42AがNchMOSFETまたはフォトカプラである場合を例示しているが、本発明はこれに限定されない。例えば、第1,第2実施形態における放電スイッチ42は、バイポーラトランジスタや、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)など、他の半導体スイッチであってもよい。
【0050】
上記各実施形態では、主に第2コンデンサ32に蓄積された電荷により、放電スイッチ42が短絡状態に切り替えられることを説明しているが、本発明はこれに限定されない。例えば、電力供給経路L1に接続される他のコンデンサなどの蓄積電荷により、放電スイッチ42が短絡状態に切り替えられてもよい。
【0051】
上記各実施形態では、形状測定機10,10A,10Bについて説明しているが、本発明のメモリモジュールは、他の任意の電子機器に適用可能である。また、本発明のメモリモジュールが適用される任意の電子機器において、バッテリは、少なくとも揮発性メモリに電力を供給するものであればよい。
【符号の説明】
【0052】
1,1A,1B…メモリモジュール、10,10A,10B…形状測定機、11…電源入力端子、12…バッテリ、13…制御部、131…CPU(プロセッサ)、132…SRAM(揮発性メモリ)、14…電源部、14A…第1電源部、14B…第2電源部、14C…第3電源部、15…動作部、16…ACアダプタ、21…第1ダイオード、22…第2ダイオード、31…第1コンデンサ、32…第2コンデンサ、33…放電抵抗、34…抵抗、35…抵抗、41…バッテリスイッチ、411…基点、412…切替点、413…切替点、42,42A…放電スイッチ、421…発光ダイオード、422…フォトトランジスタ、51…第1電圧変換部、52…第2電圧変換部、D…ドレイン端子、G…ゲート端子、L1…電力供給経路、L2…放電切替経路、S…ソース端子。
図1
図2
図3
図4