(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177772
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】成膜装置
(51)【国際特許分類】
C23C 14/56 20060101AFI20241217BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20241217BHJP
H10K 59/10 20230101ALI20241217BHJP
H10K 71/16 20230101ALI20241217BHJP
【FI】
C23C14/56 F
H10K50/10
H10K59/10
H10K71/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096103
(22)【出願日】2023-06-12
(71)【出願人】
【識別番号】591065413
【氏名又は名称】キヤノントッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 康信
【テーマコード(参考)】
3K107
4K029
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC45
3K107GG04
3K107GG32
3K107GG42
4K029AA24
4K029BB03
4K029CA01
4K029DA03
4K029DB18
4K029DB23
4K029HA01
4K029KA01
4K029KA09
(57)【要約】
【課題】2つの領域において、成膜を行うための準備動作が同時になされることによる悪影響を抑制することのできる成膜装置を提供する。
【解決手段】第1領域Aにて蒸発源110による成膜動作が行われる間に第2領域Bに搬入される基板に対して成膜動作を行うための準備動作が行われる工程と、第2領域Bにて前記成膜動作が行われる間に第1領域Aに搬入される前記基板に対して前記準備動作が行われる工程とが交互に繰り返される成膜装置1であって、第1領域Aまたは第2領域Bへの基板搬入が遅延した場合には、第1領域A及び第2領域Bにおいて、正常時に行う前記準備動作を同時に行わないことを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に対して薄膜を形成するための第1領域及び第2領域を有する成膜チャンバと、
前記基板に対して薄膜を形成する成膜源と、
を備え、
前記第1領域にて前記成膜源による成膜動作が行われる間に前記第2領域に搬入される前記基板に対して成膜動作を行うための準備動作が行われる工程と、前記第2領域にて前記成膜動作が行われる間に前記第1領域に搬入される前記基板に対して前記準備動作が行われる工程とが交互に繰り返される成膜装置であって、
前記第1領域または前記第2領域への基板搬入が遅延した場合には、前記第1領域及び前記第2領域において、正常時に行う前記準備動作を同時に行わないことを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
前記第1領域または前記第2領域への基板搬入が遅延した場合には、少なくとも当該領域にて前記準備動作が行われている間は、他方の領域では前記準備動作を行わないことを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記第1領域または前記第2領域への基板搬入が遅延した場合には、少なくとも当該領域にて前記準備動作が行われている間は、他方の領域では正常時よりも速度を低下させて前記準備動作を行うことを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項4】
静止した状態にある前記基板に対して前記成膜源が移動しながら前記成膜動作がなされるように構成されると共に、
前記第1領域または前記第2領域への基板搬入が遅延した場合には、少なくとも当該領域にて前記準備動作が行われている間は、他方の領域では正常時よりも前記成膜源の移動速度を低下させて前記成膜動作を行うことを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項5】
静止した状態にある前記基板に対して前記成膜源が移動しながら前記成膜動作がなされるように構成されると共に、
前記成膜源が前記第1領域と前記第2領域との間を移動する方向と、前記成膜動作の際に前記成膜源が移動する方向は交差することを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項6】
静止した状態にある前記基板に対して前記成膜源が移動しながら前記成膜動作がなされるように構成されると共に、
前記成膜源が前記第1領域と前記第2領域との間を移動する方向と、前記成膜動作の際に前記成膜源が移動する方向は平行であることを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、成膜装置において、2つの領域において、交互に成膜を行う技術が知られている。このような技術においては、一方の領域で成膜動作が行われる間に他方の領域で基板とマスクとの位置合わせを行うアライメントなどの準備動作が行われる。これにより、生産効率を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来技術においては、何らかのトラブルでいずれかの領域への基板搬入が遅延した場合、当該領域での準備動作が終了するまでの時間が長くなってしまう。そのため、当該領域での準備動作中に他方の領域での準備動作が始まってしまう。これにより、2つの領域で同時に準備動作がなされることになる。この場合、例えば、動作の集中により電力の負荷が一時的に集中するなどの悪影響が出るおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、2つの領域において、成膜を行うための準備動作が同時になされることによる悪影響を抑制することのできる成膜装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
基板に対して薄膜を形成するための第1領域及び第2領域を有する成膜チャンバと、
前記基板に対して薄膜を形成する成膜源と、
を備え、
前記第1領域にて前記成膜源による成膜動作が行われる間に前記第2領域に搬入される前記基板に対して成膜動作を行うための準備動作が行われる工程と、前記第2領域にて前記成膜動作が行われる間に前記第1領域に搬入される前記基板に対して前記準備動作が行われる工程とが交互に繰り返される成膜装置であって、
前記第1領域または前記第2領域への基板搬入が遅延した場合には、前記第1領域及び前記第2領域において、正常時に行う前記準備動作を同時に行わないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
以上説明したように、本発明によれば、2つの領域において、成膜を行うための準備動作が同時になされることによる悪影響を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例に係る成膜装置を備える電子デバイス製造装置の概略図である。
【
図2】実施例に係る成膜装置の内部構成を示す斜視図である。
【
図3】実施例に係る成膜装置の内部構成を示す概略図である。
【
図4】実施例に係る成膜源の移動機構を示す概略図である。
【
図5】実施例及び変形例に係る成膜源の移動機構の概略図である。
【
図6】経過時間と各種動作との関係を説明する図である。
【
図7】経過時間と各種動作との関係を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ本発明の好適な実施例を説明する。ただし、以下の実施例は本発明の好ましい構成を例示的に示すものにすぎず、本発明の範囲はそれらの構成に限定されない。また、以下の説明における、装置のハードウェア構成及びソフトウェア構成、処理フロー、製造条件、寸法、材質、形状などは、特に特定的な記載がないかぎりは、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0010】
本発明は、基板の表面に真空蒸着によって所望のパターンの薄膜(材料層)を形成する装置に望ましく適用することができる。基板の材料としては、硝子、高分子材料のフィルム、金属などの任意の材料を選択してもよく、また、蒸着材料としても、有機材料、金属性材料(金属、金属酸化物など)などの任意の材料を選択してもよい。本発明の技術は、具体的には、有機電子デバイス(例えば、有機EL表示装置、薄膜太陽電池)、光学部材などの製造装置に適用可能である。その中でも、有機EL表示装置の製造装置においては、蒸着材料を蒸発させてマスクを介して基板に蒸着させることで有機EL表示素子を形成しているので、本発明の好ましい適用例の一つである。
【0011】
(実施例)
図1~
図7を参照して、本発明の実施例に係る成膜装置について説明する。
図1は本発明の実施例に係る成膜装置を備える電子デバイス製造装置の概略図であり、当該製造装置を構成する各種装置を概略的に平面図にて示す図である。
図2は本発明の実施例に係る成膜装置の内部構成を示す斜視図である。
図3は本発明の実施例に係る成膜装置の内部構成の概略図であり、成膜装置の内部構成を正面から見た図である。
図4は本発明の実施例に係る成膜源の移動機構を示す概略図であり、当該移動機構を概略的に平面図にて示す図である。
図5は本発明の実施例及び変形例に係る成膜源の移動機構の概略図であり、成膜源の移動方向を概略的に示した図である。
図6及び
図7は経過時間と各種動作との関係を説明する図である。
【0012】
<電子デバイス製造装置>
本実施例に係る電子デバイスの製造装置は、複数のクラスタ装置と、隣り合うクラスタ装置同士を繋ぐ中継装置とを備えている。
図1に示すように、クラスタ装置は、基板Pに薄膜を形成する複数の成膜装置1と、使用前後のマスクを収納する複数のマスクストック装置2と、その中央に配置される搬送室3とを備えている。搬送室3内には、複数の成膜装置1に対して基板Pを搬送し、成膜装置1とマスクストック装置2に対してマスクMを搬送する搬送ロボット(不図示)が設置されている。搬送ロボットは、例えば、多関節アームに、基板P又はマスクMを保持するロボットハンドが取り付けられた構造を有するロボットである。
【0013】
成膜装置1では、成膜源としての蒸発源110に収納された蒸着材料が、ヒータによって加熱されることで蒸発又は昇華されて、マスクMを介して基板上に蒸着される。搬送ロボットとの基板Pの受け渡し、基板PとマスクMの相対位置の調整(アライメント)、マスクM上への基板Pの固定、成膜(蒸着)などの一連の成膜プロセスは、成膜装置1によって行われる。
【0014】
マスクストック装置2には、成膜装置1での成膜工程に使われる新しいマスクと、使用済みのマスクとが、二つのカセットに分けて収納されている。搬送ロボットは、使用済みのマスクを成膜装置1からマスクストック装置2のカセットに搬送し、マスクストック装置2の他のカセットに収納された新しいマスクを成膜装置1に搬送する。
【0015】
クラスタ装置には、基板Pの流れ方向における上流側からの基板Pを、自己のクラスタ装置に搬送するためのパス室4と、このクラスタ装置で成膜処理が完了した基板Pを下流側の他のクラスタ装置に搬送するためのバッファー室5とが連結されている。搬送室3の搬送ロボットは、上流側のパス室4から基板Pを受け取って、このクラスタ装置内の成膜装置1の一つに搬送する。また、搬送ロボットは、このクラスタ装置での成膜処理が完了した基板Pを成膜装置1の一つから受け取って、下流側に連結されたバッファー室5に搬送する。バッファー室5は、その上流側のクラスタ装置と下流側のクラスタ装置においての処理速度の差がある場合や、下流側でのトラブルの影響で、基板Pを正常に搬送することができない場合などに、複数の基板Pを一時的に収納することができるように構成されると好適である。
【0016】
バッファー室5とパス室4との間には、基板Pの向きを変える旋回室6が設置されている。旋回室6には、バッファー室5から基板Pを受け取って、基板Pを180°回転させ、パス室4に搬送するための搬送ロボット(不図示)が設けられている。これにより、上流側のクラスタ装置と下流側のクラスタ装置で基板Pの向きが同じになり、基板処理が容易になる。
【0017】
パス室4、バッファー室5、及び旋回室6は、クラスタ装置間を連結する、いわゆる中継装置である。クラスタ装置の上流側及び/又は下流側に設置される中継装置は、パス室、バッファー室、及び旋回室のうち少なくとも1つを備えている。
【0018】
成膜装置1、マスクストック装置2、搬送室3、バッファー室5、旋回室6などは、有機EL表示パネルの製造の過程で、高真空状態に維持される。パス室4は、通常は低真空状態に維持されるが、必要に応じて高真空状態に維持されてもよい。
【0019】
本実施例では、
図1を参照して、電子デバイス製造装置の構成について説明したが、本発明はこれに限定されず、他の種類の装置やチャンバーを有してもよく、これらの装置やチャンバー間の配置が変わってもよい。例えば、電子デバイス製造装置の一部のクラスタ装置に繋がる中継装置においては、バッファー室を設けず、旋回室の上流側と下流側にそれぞれパス室を設けてもよい。また、旋回室を設けずに、パス室に基板の向きを変える基板回転装置を設けてもよく、基板の向きを変える必要がなければ基板回転装置を設けなくてもよい。
【0020】
また、成膜装置1は、制御部を備えている。制御部は、基板Pの搬送、基板Pのアライメント、マスクMのアライメント、蒸発源の制御、成膜の制御など、各種の制御を行う機能を有している。制御部は、例えば、プロセッサ、メモリー、ストレージ、I/Oなどを持つコンピューターによって構成可能である。この場合、制御部の機能は、メモリーまたはストレージに格納されたプログラムをプロセッサが実行することにより実現される。コンピューターとしては、汎用のパーソナルコンピューターを使用してもよく、組込み型のコンピューターまたはPLC(programable logic controller)を使用してもよい。または、制御部の機能の一部または全部をASICやFPGAのような回路で構成してもよい。また、成膜装置ごとに制御部が設置されていてもよく、一つの制御部が複数の成膜装置を制御するように構成してもよい。以下、成膜装置1について、より詳細に説明する。
【0021】
<成膜装置>
図2及び
図3に示すように、成膜装置1は、内部が真空雰囲気となる成膜チャンバ10と、成膜チャンバ10内に備えられる成膜源ユニット100と、成膜源ユニット100を移動させるための第1移動機構300及び第2移動機構400とを備えている。成膜チャ
ンバ10は気密容器であり、不図示の排気ポンプによって、その内部は真空状態(又は減圧状態)に維持される。第1移動機構300は、成膜源ユニット100を第1方向(
図3において左右方向)に移動させるために設けられている。より具体的には、成膜源ユニット100は、第1移動機構300によって、第1方向に直線的に往復移動するように構成されている。また、第2移動機構400は、成膜源ユニット100を第1方向と交差する第2方向(
図3において紙面手前・奥方向)に移動させるために設けられている。より具体的には、成膜源ユニット100は、第2移動機構400によって、第2方向に直線的に往復移動するように構成されている。また、この第2移動機構400は、第1移動機構300により第1方向に移動可能に構成されている。なお、本実施例においては、第1方向と第2方向は直交する。
【0022】
成膜源ユニット100は、成膜源としての蒸発源110を備えている。この蒸発源110は、いわゆる真空蒸着装置に採用され得る各種公知技術を採用することができるので、その詳細な説明は省略する。なお、成膜装置1には、蒸発源110から蒸発する蒸着材料を遮断または通過させる開閉シャッター(不図示)と、蒸発源110から放出された蒸着材料の蒸発レートをモニタする膜厚モニタ(不図示)なども設けられる。また、基板PとマスクMをそれぞれ支持する部材、及び、基板Pを支持する部材及びマスクMを支持する部材のうちの少なくとも一方を移動させることで、基板PとマスクMの位置合わせを行うためのアライメント装置なども設けられる。これらについても、適宜、公知技術を採用可能であるので、その説明は省略する。なお、本実施例おいては、成膜装置がいわゆる真空蒸着装置であり成膜源は蒸発源である。しかしながら、本発明の成膜装置は、例えば、スパッタ装置にも適用可能である。この場合、成膜源は、ターゲットなどにより構成される。
【0023】
<移動機構>
特に
図4を参照して、蒸発源110を備える成膜源ユニット100の移動機構について説明する。成膜源ユニット100は、第2移動機構400に固定されている。この成膜源ユニット100には大気ボックスが設けられている。この大気ボックスの内部は、第1大気アーム210及び第2大気アーム220の内部を通じて、成膜チャンバ10の外部と連通するように構成されている。このような構成により、成膜源ユニット100に電気配線や冷却管を接続することが可能となっている。なお、第1大気アーム210と第2大気アーム220は、成膜源ユニット100の移動に追随して動作するように構成されている。より具体的には、第1大気アーム210は、その一端が成膜チャンバ10の底板に対して回動自在に構成されている。そして、第2大気アーム220は、その一端が第1大気アーム210の他端に対して回動自在に軸支され、その他端が成膜源ユニット100に設けられた大気ボックスに対して回動自在に軸支されている。
【0024】
本実施例に係る成膜装置1においては、
図2及び
図4中、A側の領域(第1領域Aと称する)と、B側の領域(第2領域Bと称する)のそれぞれの領域において、成膜を行うことができるように構成されている。第1領域Aで成膜を行う場合には、第1移動機構300により、成膜源ユニット100を第1領域Aに移動させた状態で、第2移動機構400により成膜源ユニット100を移動させつつ成膜源ユニット100を稼働させることで、第1領域Aに配された基板P上に、マスクMを介して成膜することができる。第2領域Bで成膜を行う場合には、第1移動機構300により、成膜源ユニット100を第2領域Bに移動させた状態で、第2移動機構400により成膜源ユニット100を移動させつつ成膜源ユニット100を稼働させることで、第2領域Bに配された基板P上に、マスクMを介して成膜することができる。
【0025】
第1移動機構300と第2移動機構400の基本的な構成及び動作メカニズムは同様である。これらの移動機構は、直線運動案内装置などと呼ばれる装置を備えており、直線状
に伸びる案内レールと、案内レールに沿って移動する移動体とを備えている。
【0026】
第1移動機構300は、互いに平行に設置される一対の第1案内レール310を備えている。そして、これら一対の第1案内レール310上には、それぞれの第1案内レール310に沿って移動する第1移動体(不図示)が2つずつ設けられている。そして、第2移動機構400を構成する一対の第2案内レール410が、複数の第1移動体に固定されている。具体的には、一方の第2案内レール410の一端側が、一対の第1案内レール310のうちの一方に設けられた第1移動体に固定され、他端側が一対の第1案内レール310のうちの他方に設けられた第1移動体に固定されている。他方の第2案内レール410についても同様である。また、一対の第2案内レール410は、一対の連結部材330によって連結されている。そして、これら一対の連結部材330のうちの少なくとも一方に、不図示の駆動源(モータなど)により回転するギア340が設けられている。このギア340は、第1案内レール310の側面に形成されたラックと噛み合うように構成されている。以上のような構成により、駆動源によってギア340を回転させることで、複数の第1移動体と共に、第2移動機構400の全体を第1方向に直線的に往復移動させることができる。
【0027】
第2移動機構400は、互いに平行に設置される一対の第2案内レール410を備えている。そして、これら一対の第2案内レール410上には、それぞれの第2案内レール410に沿って移動する第2移動体(不図示)が2つずつ設けられている。そして、複数の第2移動体上に、成膜源ユニット100が固定されている。成膜源ユニット100には、回転軸441と、回転軸441の両端に設けられるギア442が設けられている。これらのギア442は、第2案内レール410の上面に形成されたラックと噛み合うように構成されている。以上のような構成により、不図示の駆動源によって回転軸441と共にギア442を回転させることで、複数の第2移動体と共に、成膜源ユニット100を第2方向に直線的に往復移動させることができる。
【0028】
以上のように、成膜源ユニット100は、第2移動体に対して直接的に固定され、第1移動体に対して間接的に固定されている。なお、上記の第1移動機構300及び第2移動機構400において、移動体を移動させるための機構として、いわゆるラックアンドピニオン機構を採用する場合を示した。しかしながら、これらの移動機構において、移動体を移動させるための機構としては、ラックアンドピニオン機構に限定されることはなく、ボールねじ機構など、各種公知技術を採用し得る。
【0029】
<移動機構の変形例>
図5(a)には、上記の移動機構における第1領域A及び第2領域Bに対する成膜源ユニット100に備えられる蒸発源110の移動範囲が平面図にて概略的に示されている。本実施例に係る成膜装置1においては、静止した状態にある基板Pに対して蒸発源110が移動しながら成膜動作がなされる。上記の移動機構を採用した場合には、蒸発源110が第1領域Aと第2領域Bとの間を移動する方向Sと、成膜動作の際に蒸発源110が移動する方向TA,TBは交差するように構成されている。より具体的には、方向Sと方向TA,TBは直交する。なお、方向TAは第1領域Aにおいて成膜動作が行われる場合の蒸発源110の移動方向であり、方向TBは第2領域Bにおいて成膜動作が行われる場合の蒸発源110の移動方向である。方向TAと方向TBは平行である。
【0030】
本発明においては、上記のような移動機構に限定されることはない。その他の一例が
図5(b)に示されている。この図示の例においては、蒸発源110が第1領域Aと第2領域Bとの間を移動する方向Sと、成膜動作の際に蒸発源110が移動する方向TA,TBは平行である。このような構成を採用する場合には、一つの移動機構を用いて、蒸発源110によって、第1領域Aでの成膜動作と第2領域Bでの成膜動作を行うことができる。
すなわち、第1領域Aと第2領域Bとの間で蒸発源110を移動させるための案内レール及び移動体と、第1領域A及び第2領域Bにおいて成膜時に蒸発源110を移動させるための案内レール及び移動体を共用することができる。また、移動体を移動させるための駆動源等についても、共用することができる。従って、移動機構を簡略化できる利点がある。
【0031】
<成膜動作>
上記のように構成される成膜装置1による成膜動作について説明する。本実施例に係る成膜装置1においては、第1領域Aにて蒸発源110による成膜動作が行われる間に第2領域Bに搬入される基板Pに対して成膜動作を行うための準備動作が行われる。また、第2領域Bにて成膜動作が行われる間に第1領域Aに搬入される基板Pに対して準備動作が行われる。成膜装置1においては、これらの工程が交互に繰り返される。なお、準備動作とは、基板Pに対して成膜動作が開始される前に必要な動作を意味しており、例えば、成膜済みの基板Pを搬出する動作や、搬入された基板PとマスクMとの位置合わせを、不図示のアライメント装置により行う動作などが含まれる。
【0032】
図6及び
図7には、経過時間に対する第1領域Aでの各種動作と第2領域Bでの各種動作が示されている。
図6(a)には、正常動作が継続的に行われている場合の各種動作が示されている。図中、T1は成膜動作が行われている期間であり、T2は蒸発源110が第1領域Aと第2領域Bとの間を移動する期間であり、T3は準備動作の期間である。正常に動作が行われていれば、第1領域Aで成膜動作が行われている期間T1中は第2領域Bでは同時に準備動作が行われる(期間T3参照)。そして、これらの動作が終了後、蒸発源110が第2領域Bに移動して、第2領域Bで成膜動作が行われている期間T1中は第1領域Aでは同時に準備動作が行われる(期間T3参照)。その後、蒸発源110は第1領域Aに移動する。このような動作が繰り返し行われる。従って、一方の領域で成膜動作のための準備動作行われている期間中に他方の領域で成膜動作が行われるため、生産性を高めることができる。
【0033】
しかしながら、何らかのトラブルでいずれかの領域への基板搬入が遅延した場合、当該領域での準備動作が終了するまでの時間が長くなってしまう。
図6(b)には、その一例が示されている。図中、T4は基板搬入が遅れた期間である。図示のように、第2領域Bにおいて、基板搬入の遅延が発生した場合、第2領域Bでの準備期間T3の開始と終了が遅延してしまう。これにより、第1領域Aにおいて、成膜動作が終了し、その後、新たな基板Pに対する準備動作が終了しても、第2領域Bでの成膜動作が終了していない状態となる。そのため、第1領域Aにおいては、第2領域Bでの成膜動作が終了して蒸発源110が第1領域Aに移動するまでは成膜動作を開始することができない。従って、第1領域Aにおいては、準備動作が終了した後に待機する期間が必要となる。図中、T5は待機期間である。なお、その後は、基板搬入などのトラブルが再発しない限り、上述した正常動作と同様の動作がなされる。
【0034】
基板搬入が遅延して、上記の動作がなされる場合には、
図6(b)から明らかなように、第1領域Aと第2領域Bにおいて、準備動作が同時に行われる期間が生じる(図中、期間T3A参照)。このように、第1領域Aと第2領域Bで同時に準備動作がなされると、例えば、動作の集中により電力の負荷が一時的に集中するなどの悪影響が出るおそれがある。また、例えば、期間T3Aにおいて第1領域Aの準備動作においてアライメント装置により基板PとマスクMとの位置合わせが行われている場合に第2領域Bの準備動作により発生した振動が第1領域Aに伝わるおそれがある。それにより、第1領域Aの準備動作における基板PとマスクMとの位置合わせに当該振動による悪影響が出るおそれがある。そこで、本実施例に係る成膜装置1においては、第1領域Aまたは第2領域Bへの基板搬入が遅延した場合には、第1領域A及び第2領域Bにおいて、正常時に行う準備動作を同
時に行わないように構成されている。
【0035】
なお、成膜装置1においては、上記の通り、基板Pの搬送、基板PとマスクMとのアライメント、及び蒸発源110の動作については、制御部により制御される。従って、本実施例に係る成膜装置1においては、第1領域Aまたは第2領域Bへの基板搬入が遅延した場合には、第1領域A及び第2領域Bにおいて、正常時に行う準備動作を同時に行わないように制御部により制御されるということもできる。
【0036】
ここで、基板搬入の遅延を検出する方法については、各種の公知技術を採用することができる。例えば、成膜チャンバ10において基板Pが搬入される位置に基板Pを検知するセンサを設けたり、基板Pを支持する部材に基板Pを検知するセンサを設けたりすることで、これらのセンサからの情報に基づいて基板搬入の遅延を検出することができる。また、上述の搬送室3に備えられた搬送ロボット(不図示)の動作を検出することで、基板搬入の遅延を検出することもできる。
【0037】
以下、第1領域Aまたは第2領域Bへの基板搬入が遅延した場合には、第1領域A及び第2領域Bにおいて、正常時に行う準備動作を同時に行わないようにするための複数の動作手順について説明する。
【0038】
<<動作手順例1>>
動作手順例1においては、第1領域Aまたは第2領域Bへの基板搬入が遅延した場合には、少なくとも当該領域にて準備動作が行われている間は、他方の領域では準備動作を行わない構成を採用した例を説明する。
図6(c)には、その一例が示されている。
【0039】
図6(c)に示すように、第2領域Bにおいて、基板搬入の遅延が発生した場合(期間T4参照)、第2領域Bでの準備期間T3の開始と終了が遅延してしまう。そこで、第1領域Aにおいては、成膜動作が終了し、蒸発源110が第2領域Bに移動しても、第2領域Bでの準備動作が終了するまでは、待機して(待機期間T5参照)、準備動作を開始しないように構成されている。
【0040】
このような構成を採用することで、第1領域Aまたは第2領域Bへの基板搬入が遅延した場合には、第1領域A及び第2領域Bにおいて、正常時に行う準備動作を同時に行わないようにすることができる。なお、この手順例1の場合には、第1領域A及び第2領域Bにおいて、同時に準備動作が行われることがない。従って、第1領域Aと第2領域Bにおいて、成膜を行うための準備動作が同時になされることによる悪影響を抑制することができる。
【0041】
なお、第2領域Bにおいて準備期間T3が終了した後は、第2領域Bにおいて成膜動作が行われ、第1領域Aにおいて、同時に準備動作が行われる。その後は、基板搬入などのトラブルが再発しない限り、上述した正常動作と同様の動作がなされる。
【0042】
<<動作手順例2>>
動作手順例2においては、第1領域Aまたは第2領域Bへの基板搬入が遅延した場合には、少なくとも当該領域にて準備動作が行われている間は、他方の領域では正常時よりも速度を低下させて準備動作を行う構成を採用した例を説明する。
図7(b)には、その一例が示されている。なお、正常動作が継続的に行われている場合と比較し易くするために、
図7(a)には、正常動作が継続的に行われている場合の各種動作が示されている。
【0043】
図7(b)に示すように、第2領域Bにおいて、基板搬入の遅延が発生した場合(期間T4参照)、第2領域Bでの準備期間T3の開始と終了が遅延してしまう。そこで、第1
領域Aにおいては、成膜動作が終了し、蒸発源110が第2領域Bに移動した後に行う準備動作においては、正常時よりも速度を低下させて準備動作を行うように構成されている(速度を低下させた準備動作期間T3X参照)。なお、
図7(b)に示す例の場合には、第1領域Aにおいて、速度を低下させて準備動作を行った場合でも、準備動作の終了時点で第2領域Bでの成膜動作が終了していないため待機期間T5が設けられている。しかしながら、遅延期間T4や準備動作の速度の低下のさせ方などによっては、待機期間T5が設けられない場合もある。
【0044】
このような構成を採用することで、第1領域Aまたは第2領域Bへの基板搬入が遅延した場合には、第1領域A及び第2領域Bにおいて、正常時に行う準備動作を同時に行わないようにすることができる。なお、この手順例2の場合には、第1領域Aと第2領域Bにおいて、同時に準備動作が行われる期間があるものの、基板搬入が遅延した領域ではない領域における準備動作は正常時よりも速度を低下させて行われる。従って、第1領域Aと第2領域Bにおいて、成膜を行うための準備動作が同時になされることによる悪影響を抑制することができる。なお、準備動作の速度を低下させる(例えば、成膜済みの基板Pの搬出速度を低下させたり、基板PとマスクMのアライメントを行う際の動作速度を低下させる)ことにより、必要な電力を低下させることができる。
【0045】
なお、第2領域Bにおいて成膜動作が終了した後は、基板搬入などのトラブルが再発しない限り、上述した正常動作と同様の動作がなされる。
【0046】
<<動作手順例3>>
動作手順例3においては、第1領域Aまたは第2領域Bへの基板搬入が遅延した場合には、当該領域にて準備動作が行われている間は、他方の領域では正常時よりも速度を低下させて準備動作を行う構成を採用した例を説明する。
図7(c)には、その一例が示されている。
【0047】
図7(c)に示すように、第2領域Bにおいて、基板搬入の遅延が発生した場合(期間T4参照)、第2領域Bでの準備期間T3の開始と終了が遅延してしまう。そこで、第1領域Aにおいては、成膜動作が終了し、蒸発源110が第2領域Bに移動した後に行う準備動作においては、第2領域Bでの準備動作が終了するまでの間は、正常時よりも速度を低下させて準備動作を行うように構成されている(速度を低下させた準備動作期間T3X参照)。この手順例3の場合には、手順例2と異なり、第2領域Bでの準備動作が終了した後は、第1領域Aにおいては正常時と同じ速度で準備動作が行われる。なお、
図7(c)に示す例の場合には、手順例2で示した例とは異なり、第1領域Aにおいて待機期間T5が設けられていないが、遅延期間T4や準備動作期間T3Xなどによっては、待機期間T5が設けられる場合もある。
【0048】
このような構成を採用することで、第1領域Aまたは第2領域Bへの基板搬入が遅延した場合には、第1領域A及び第2領域Bにおいて、正常時に行う準備動作を同時に行わないようにすることができる。なお、この手順例3の場合には、第1領域Aと第2領域Bにおいて、同時に準備動作が行われる期間があるものの、基板搬入が遅延した領域ではない領域における準備動作は正常時よりも速度を低下させて行われる。従って、第1領域Aと第2領域Bにおいて、成膜を行うための準備動作が同時になされることによる悪影響を抑制することができる。
【0049】
なお、第2領域Bにおいて準備動作が終了した後は、基板搬入などのトラブルが再発しない限り、上述した正常動作と同様の動作がなされる。
【0050】
<<動作手順例4>>
動作手順例4においては、第1領域Aまたは第2領域Bへの基板搬入が遅延した場合には、少なくとも当該領域にて準備動作が行われている間は、他方の領域では正常時よりも蒸発源110の移動速度を低下させて成膜動作を行う構成を採用した例を説明する。
図7(d)には、その一例が示されている。
【0051】
図7(d)に示すように、第2領域Bにおいて、基板搬入の遅延が発生した場合(期間T4参照)、第2領域Bでの準備期間T3の開始と終了が遅延してしまう。そこで、第1領域Aにおいては、少なくとも第2領域Bにて準備動作が行われている間は、正常時よりも蒸発源110の移動速度を低下させて成膜動作を行うように構成されている(速度を低下させた成膜動作期間T1X参照)。この手順例4の場合には、第2領域Bでの遅延期間T4も含めて、第1領域Aにおける蒸発源110の移動速度を低下させているが、第2領域Bでの準備動作が開始された際に移動速度を低下させてもよい。なお、蒸発源110の移動速度を低下させる場合は、所望の膜厚が得られるように、蒸発源110の蒸発レートを制御することが考慮され得る。
【0052】
このような構成を採用することで、第1領域Aまたは第2領域Bへの基板搬入が遅延した場合には、第1領域A及び第2領域Bにおいて、正常時に行う準備動作を同時に行わないようにすることができる。なお、この手順例4の場合には、第2領域Bでの準備期間T3が終了した後に、第1領域Aでの準備期間T3が開始される。そのため、手順例1と同様に、第1領域A及び第2領域Bにおいて、同時に準備動作が行われることがない。従って、第1領域Aと第2領域Bにおいて、成膜を行うための準備動作が同時になされることによる悪影響を抑制することができる。
【0053】
なお、第2領域Bにおいて準備期間T3が終了した後は、第2領域Bにおいて成膜動作が行われ、第1領域Aにおいて、同時に準備動作が行われる。その後は、基板搬入などのトラブルが再発しない限り、上述した正常動作と同様の動作がなされる。以上説明した動作手順例1~4については、使用環境等に応じて適宜選択して採用することができる。
【0054】
(電子デバイスの製造方法)
上記の実施例に係る成膜装置を用いた電子デバイスの製造装置及び方法の一例を説明する。以下、電子デバイスの例として有機EL表示装置の構成及び製造方法を例示する。まず、製造する有機EL表示装置について説明する。
図8(a)は有機EL表示装置50の全体図、
図8(b)は1画素の断面構造を表している。
【0055】
図8(a)に示すように、有機EL表示装置50の表示領域51には、発光素子を複数備える画素52がマトリクス状に複数配置されている。詳細は後で説明するが、発光素子のそれぞれは、一対の電極に挟まれた有機層を備えた構造を有している。なお、ここでいう画素とは、表示領域51において所望の色の表示を可能とする最小単位を指している。本実施例に係る有機EL表示装置の場合、互いに異なる発光を示す第1発光素子52R、第2発光素子52G、第3発光素子52Bの組合せにより画素52が構成されている。画素52は、赤色発光素子と緑色発光素子と青色発光素子の組合せで構成されることが多いが、黄色発光素子とシアン発光素子と白色発光素子の組み合わせでもよく、少なくとも1色以上であれば特に制限されるものではない。
【0056】
図8(b)は、
図8(a)のA-B線における部分断面模式図である。画素52は、基板53上に、第1電極(陽極)54と、正孔輸送層55と、発光層56R、56G、56Bと、電子輸送層57と、第2電極(陰極)58と、を備える有機EL素子を有している。これらのうち、正孔輸送層55、発光層56R、56G、56B、電子輸送層57が有機層に当たる。また、本実施例では、発光層56Rは赤色を発する有機EL層、発光層56Gは緑色を発する有機EL層、発光層56Bは青色を発する有機EL層である。発光層
56R、56G、56Bは、それぞれ赤色、緑色、青色を発する発光素子(有機EL素子と記述する場合もある)に対応するパターンに形成されている。また、第1電極54は、発光素子ごとに分離して形成されている。正孔輸送層55と電子輸送層57と第2電極58は、複数の発光素子52R、52G、52Bと共通で形成されていてもよいし、発光素子毎に形成されていてもよい。なお、第1電極54と第2電極58とが異物によってショートするのを防ぐために、第1電極54間に絶縁層59が設けられている。さらに、有機EL層は水分や酸素によって劣化するため、水分や酸素から有機EL素子を保護するための保護層60が設けられている。
【0057】
図8(b)では正孔輸送層55や電子輸送層57が一つの層で示されているが、有機EL表示素子の構造によって、正孔ブロック層や電子ブロック層を含む複数の層で形成されてもよい。また、第1電極54と正孔輸送層55との間には第1電極54から正孔輸送層55への正孔の注入が円滑に行われるようにすることのできるエネルギーバンド構造を有する正孔注入層を形成することもできる。同様に、第2電極58と電子輸送層57の間にも電子注入層が形成されことができる。
【0058】
次に、有機EL表示装置の製造方法の例について具体的に説明する。
【0059】
まず、有機EL表示装置を駆動するための回路(不図示)および第1電極54が形成された基板53を準備する。
【0060】
第1電極54が形成された基板53の上にアクリル樹脂をスピンコートで形成し、アクリル樹脂をリソグラフィ法により、第1電極54が形成された部分に開口が形成されるようにパターニングし絶縁層59を形成する。この開口部が、発光素子が実際に発光する発光領域に相当する。
【0061】
絶縁層59がパターニングされた基板53を成膜装置に搬入し、基板支持手段にて基板を支持し、正孔輸送層55を、表示領域の第1電極54の上に共通する層として成膜する。正孔輸送層55は真空蒸着により成膜される。実際には正孔輸送層55は表示領域51よりも大きなサイズに形成されるため、高精細なマスクは不要である。
【0062】
次に、正孔輸送層55までが形成された基板53を別の成膜装置に搬入し、基板支持手段にて支持する。基板とマスクとのアライメントを行い、基板をマスクの上に載置し、基板53の赤色を発する素子を配置する部分に、赤色を発する発光層56Rを成膜する。発光層56Rの成膜と同様に、別の成膜装置により緑色を発する発光層56Gを成膜し、さらに別の成膜装置により青色を発する発光層56Bを成膜する。発光層56R、56G、56Bの成膜が完了した後、更に別の成膜装置により表示領域51の全体に電子輸送層57を成膜する。電子輸送層57は、3色の発光層56R、56G、56Bに共通の層として形成される。
【0063】
電子輸送層57までが形成された基板をスパッタリング装置に移動し、第2電極58を成膜し、その後プラズマCVD装置に移動して保護層60を成膜して、有機EL表示装置50が完成する。
【0064】
絶縁層59がパターニングされた基板53を成膜装置に搬入してから保護層60の成膜が完了するまでは、水分や酸素を含む雰囲気にさらしてしまうと、有機EL材料からなる発光層が水分や酸素によって劣化してしまうおそれがある。従って、本例において、成膜装置間の基板の搬入搬出は、真空雰囲気または不活性ガス雰囲気の下で行われる。
【符号の説明】
【0065】
1:成膜装置 2:マスクストック装置 3:搬送室 4:パス室 5:バッファー室
6:旋回室 10:成膜チャンバ 100:成膜源ユニット 110:蒸発源 210:第1大気アーム 220:第2大気アーム 300:第1移動機構 310:第1案内レール 330:連結部材 340:ギア 400:第2移動機構 410:第2案内レール 441:回転軸 442:ギア A:第1領域 B:第2領域 M:マスク P:基板