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特開2024-177815エア付与装置、シート給送装置および液体を付与する装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177815
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】エア付与装置、シート給送装置および液体を付与する装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 3/48 20060101AFI20241217BHJP
【FI】
B65H3/48 320A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096161
(22)【出願日】2023-06-12
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(72)【発明者】
【氏名】蛯原 隆司
【テーマコード(参考)】
3F343
【Fターム(参考)】
3F343FA02
3F343FB04
3F343FC01
3F343GA01
3F343GB01
3F343GC01
3F343GD01
3F343JD03
3F343JD28
3F343KB03
3F343KB17
3F343KB18
3F343LA04
3F343LA13
3F343LA15
3F343LC02
3F343LC04
3F343MA26
3F343MB02
3F343MB09
3F343MC03
3F343MC13
(57)【要約】
【課題】シートの分離性能のばらつきを低減する。
【解決手段】シートの幅方向の端部に対して進退可能に設けられ、前記シートの前記端部の位置を規制する規制部材と、前記シートの前記端部にエアを付与するエア付与部と、を有するエア付与装置であって、前記規制部材の進退動作と連動して前記エアの付与方向を変更する方向変更手段を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートの幅方向の端部に対して進退可能に設けられ、前記シートの前記端部の位置を規制する規制部材と、
前記シートの前記端部にエアを付与するエア付与部と、
を有するエア付与装置であって、
前記規制部材の進退動作と連動して前記エアの付与方向を変更する方向変更手段を備えることを特徴とするエア付与装置。
【請求項2】
前記エア付与部は、前記シートの前記幅方向と直交する方向に複数設けられていることを特徴とする請求項1記載のエア付与装置。
【請求項3】
前記幅方向と直交する方向は前記シートの搬送方向であり、
複数のエア付与部のうち、前記搬送方向の下流側に設置されたエア付与部は、前記規制部材の進退動作と連動しないことを特徴とする請求項2記載のエア付与装置。
【請求項4】
前記規制部材の進退動作と連動する前記エア付与部の移動量が、複数のエア付与部で異なることを特徴とする請求項2記載のエア付与装置。
【請求項5】
前記規制部材と前記エア付与部との間に、前記規制部材に対する前記エア付与部の初期位置を調整可能にする初期位置調整手段を備えることを特徴とする請求項1記載のエア付与装置。
【請求項6】
前記エア付与部は、前記エアの付与量を調整する調整部材を備えることを特徴とする請求項1記載のエア付与装置。
【請求項7】
前記幅方向と直交する方向は前記シートの搬送方向であり、
前記調整部材は、前記エア付与部のエア付与口が、前記搬送方向と直交する位置から、前記搬送方向の下流側に向かうに従い、前記エア付与口からの前記エアの付与量が小さくなるように、前記エア付与部内に配置されていることを特徴とする請求項6記載のエア付与装置。
【請求項8】
前記調整部材は、複数のエア付与部において、調整範囲を異ならせて設けられることを特徴とする請求項6記載のエア付与装置。
【請求項9】
積み重ねられたシートの幅方向の端部にエアを付与し、前記積み重ねられたシートから分離された最上位のシートを所定方向に給送するシート給送装置において、
請求項1乃至8のいずれか一項に記載のエア付与装置を備えることを特徴とするシート給送装置。
【請求項10】
シートに液体を付与する液体付与手段と、
前記液体付与手段に向けて前記シートを給送する請求項9記載のシート給送装置と、
を備えることを特徴とする液体を付与する装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エア付与装置、シート給送装置および液体を付与する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、用紙束の側面にエアを吹き付ける複数のサイド吐出ノズルを、サイドフェンスと連動して移動可能に設けたシート給送装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-274837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のようなシート給送装置においては、エアの吹き付け方向が常に一定であるため、シートのサイズによっては、積み重ねられたシートから最上位のシートをうまく分離させることができない場合があり、分離性能がばらつくという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、シートの幅方向の端部に対して進退可能に設けられ、前記シートの前記端部の位置を規制する規制部材と、前記シートの前記端部にエアを付与するエア付与部と、を有するエア付与装置であって、前記規制部材の進退動作と連動して前記エアの付与方向を変更する方向変更手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、シートの分離性能のばらつきを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態に係る液体を付与する装置の一例を示す概略構成図。
図2】液体付与ユニットの一例を示す概略平面図。
図3】実施形態に係るエア付与装置の一例を示す概略平面図。
図4】シートサイズとエア付与の関係を示す説明図。
図5】方向変更手段の構成例を示す要部平面図。
図6】方向変更手段の構成例を示す概略側面図。
図7】エア付与部のエアの流れを示す説明図。
図8】エア付与部の取り付け構成の一例を示す説明図。
図9】エア付与部の初期位置調整手段の一例を示す説明図。
図10】調整部材の配置例を示す概略平面図。
図11】調整部材の別の配置例を示す概略平面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、発明を実施するための形態を説明する。図面の説明において、同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0009】
<液体を付与する装置の概略>
はじめに、図1および図2を用いて液体を付与する装置の概略について説明する。図1は、実施形態に係る液体を付与する装置の一例を示す概略構成図である。図1において、液体を付与する装置は、印刷装置が例示されている。図2は、同印刷装置の液体付与ユニットの一例を示す概略平面図である。
【0010】
印刷装置1は、搬入部10、前処理部20、印刷部30、乾燥部40、反転機構部50および搬出部60を備える。
【0011】
印刷装置1は、搬入部10から搬入されるシート(例えば用紙)Pを、シートの搬送方向である矢印Xの方向(以下、X方向という)へ搬送し、シートPに対し、前処理部20で必要に応じて前処理液を付与し、印刷部30で所要の液体(例えばインク)を付与して所要の印刷を行う。
【0012】
印刷装置1は、シートPに付与した液体を乾燥部40で乾燥させた後、反転機構部50を介して、そのまま、または、シートPの両面に印刷を行った後、シートPを搬出部60に排出する。
【0013】
搬入部10は、上下方向に配置された複数の給送装置を有し、例えば、下段に設置された給送装置11Aと、その上段に設置された給送装置11Bとを備える。給送装置11A,11Bは、それぞれシート分離装置12A,12Bと、送り装置13A,13Bを備える。なお、給送装置11Aと給送装置11Bは、それぞれ同一もしくは同等の構成であるため、以降、特に区別しない場合は、給送装置11と総称表記する。また、シート分離装置12Aとシート分離装置12B、送り装置13Aと送り装置13Bについても、特に区別しない場合は、シート分離装置12、送り装置13と総称表記する。ここで、給送装置11,11A,11Bは「シート給送装置」の一例、シート分離装置12,12A,12Bは「エア付与装置」の一例である。
【0014】
シート分離装置12は、積み重ねられた複数枚のシートPからなるシート束の上部側面にエア(風)を吹き付けるエア吹付部を備え、このエアによってシート束から最上位のシートを分離させる。
【0015】
送り装置13は、シート分離装置12で分離された最上位のシートPを保持することが可能な搬送部材を備える。搬送部材は、シートPと接する面に例えば負圧や静電気力を発生させた無端状ベルトやローラからなり、搬送部材の表面にシートPを吸着させて1枚ずつX方向に搬送する。送り装置13から送り出されたシートPは、搬入部10内の搬送経路を経て前処理部20に供給される。
【0016】
前処理部20は、例えば、シートPの表面を改質するなどの目的でシートPの表面に処理液を塗布する塗布装置21などを備えている。
【0017】
印刷部30は、シートPを周面に担持して回転するドラム31と、ドラム31に担持されたシートPに液体を付与する液体付与部32を備える。また、印刷部30は、前処理部20から送り込まれたシートPを受け取り、ドラム31との間でシートPの受け渡しを行う搬入胴34と、ドラム31によって搬送されたシートPを受け取り、乾燥部40との受け渡しを行う搬出胴35を備える。
【0018】
前処理部20から印刷部30へ搬送されてきたシートPは、搬入胴34に設けられた把持機構(シートグリッパ)によって先端が把持され、搬入胴34の回転に伴って搬送される。搬入胴34により搬送されたシートPは、ドラム31との対向位置でドラム31へ受け渡される。シートグリッパはドラム31の表面にも設けられており、シートPの先端がシートグリッパによって把持される。
【0019】
また、ドラム31の表面には複数の吸引穴が分散して形成され、吸引機構によってドラム31の所要の吸引穴から内側へ向かう吸い込み気流を発生させる。そして、搬入胴34からドラム31へ受け渡されたシートPは、シートグリッパによって先端が把持されるとともに、吸引機構による吸い込み気流によってドラム31上に吸着担持され、ドラム31の回転に伴って搬送される。
【0020】
液体付与部32は、複数の液体付与ユニット33A,33B,33C,33Dを備える。例えば、液体付与ユニット33Aはシアン色の液体を、液体付与ユニット33Bはマゼンタ色の液体を、液体付与ユニット33Cはイエロー色の液体を、液体付与ユニット33Dはブラック色の液体を、それぞれ付与する。また、液体付与部32は、その他、白色、金色、銀色など特殊色の液体の付与を行う液体付与ユニットを使用することもできる。ここで、液体付与部32は「液体付与手段」の一例である。なお、液体付与ユニット33A,33B,33C,33Dは、それぞれ同一または同等の構成であるため、以降、特に区別しない場合は、液体付与ユニット33と総称表記する。ここで図2を用いて液体付与ユニット33の構成について説明する。
【0021】
液体付与ユニット33は、例えば図2に示されるようなヘッドモジュール100を備える。ヘッドモジュール100は、ベース部材103を有し、複数のヘッド101がベース部材103に取り付けられている。ヘッド101は、複数(本例では2つ)のノズル孔111によって形成されるノズル列を複数列(本例では5列)有している。そして、このヘッド101がシートの幅方向である矢印Yの方向(以下、Y方向という)に複数個(本例では6個)並べられて、フルライン型ヘッドを構成している。なお、本例では、フルライン型ヘッドをX方向に2つ配置し、ヘッド101を千鳥状に配置した構成を示しているが、フルライン型ヘッドは1つでもよく、またはX方向に3つ以上配置した構成としてもよい。
【0022】
再び図1に戻り、印刷装置1の概略の続きを説明する。液体付与ユニット33は、印刷情報に応じた駆動信号により、それぞれ液体付与動作が制御される。ドラム31に担持されたシートPが液体付与部32との対向領域を通過するときに、液体付与ユニット33から各色の液体がシートPに付与され、印刷情報に応じた画像が印刷される。
【0023】
乾燥部40は、搬送部41と乾燥装置42を備える。搬送部41は、例えば、駆動ローラと従動ローラに掛け渡された搬送ベルトを備え、印刷部30から搬送されてくるシートPを搬送ベルトに載せて搬送する。乾燥装置42は、搬送部41の上方に設けられ、搬送部41によって搬送される、液体が付与されたシートPを加熱し乾燥させる。
【0024】
反転機構部50は、乾燥部40を通過して一面に液体が付与されて乾燥されたシートPに対して両面印刷を行うときに、スイッチバック方式でシートPを反転する反転部51を備える。また、反転機構部50は、反転部51で反転されたシートPを印刷部30の搬入胴34よりも上流側に逆送する両面搬送部52を備える。
【0025】
搬出部60は、搬出トレイ61を備え、反転機構部50から搬送されてくるシートPを搬出トレイ61上に順次積み重ねて収容する。
【0026】
<エア付与装置の構成>
次に、エア付与装置の構成について説明する。
【0027】
[エア付与装置の概略]
図3は、実施形態に係るエア付与装置の一例を示す概略平面図である。図3において、エア付与装置は、シート分離装置が例示されている。
【0028】
シート分離装置12は、枠体120と、枠体120内においてY方向正側およびY方向負側に進退移動可能に設けられた左右のサイドフェンス123,124を備える。また、シート分離装置12は、サイドフェンス123,124間に置かれるシート束に対してエアを吹き付けるエア吹付部131,132,133,134,141,142,143,144等を備える。
【0029】
枠体120は、Y方向に延びた前側板120aと、前側板120aのY方向両端部に位置し、X方向に延びた左側板120bおよび右側板120cと、これら側板120a,120b,120cを支持する底板120dとから構成される。また、左側板120bと右側板120cは、Y方向に延びた2本の軸部材121,122を支持している。2本の軸部材121,122は、X方向に所定間隔をおいて設けられる。
【0030】
サイドフェンス123,124は、2本の軸部材121,122によって支持されるとともに、軸部材121,122に沿ってY方向正側およびY方向負側に移動可能に設けられている。サイドフェンス123,124は、シートの積み重ね方向であるZの方向(以下、Z方向という)において、Z方向正側に所要の高さを有し、サイドフェンス123,124間に置かれたシートPのY方向の端部の位置を規制する。
【0031】
上記構成により、サイドフェンス123,124は、シートPのY方向の端部に対して進退可能となり、使用するシートPのサイズに応じて位置を変えることが可能になる。ここで、サイドフェンス123,124は「規制部材」の一例である。
【0032】
サイドフェンス123には、サイドフェンス123の移動方向に歯が形成された板状歯車(ラック)123aが設けられる。ラック123aは、枠体120に回転可能に支持された円形状歯車(ピニオン)120eに噛み合わされている。同じようにサイドフェンス124にも、サイドフェンス124の移動方向に歯が形成されたラック124aが設けられ、ラック124aはピニオン120eに噛み合わされている。ピニオン120eは、サイドフェンス123とサイドフェンス124との中央位置に配置されており、サイドフェンス123とサイドフェンス124は、Y方向においてピニオン120eから等しい距離に配置されている。
【0033】
上記構成により、サイドフェンス123またはサイドフェンス124の一方がY方向に移動すると、ピニオン120eを介してもう一方のサイドフェンスにも動力が伝達され、Y方向において互いを同じ距離だけ反対方向に変位させることが可能になる。
【0034】
シート分離装置12は、サイドフェンス123,124の移動範囲を制限、もしくはサイドフェンス123,124を任意の位置に固定するロック機構を備えてもよい。ロック機構の構成は特に限定されないが、例えば図3に示されるような、軸部材122に対し移動・固定が可能なストッパ125a,125bを用いた構成が挙げられる。
【0035】
ストッパ125aとストッパ125bとのY方向の間隔を小さくすることで、サイドフェンス124の移動できる範囲も狭くなり、移動範囲の制限が可能になる。また、任意の位置においてサイドフェンス124を2つのストッパ125a,125bで挟んだ状態にし、ストッパ125a,125bを軸部材122に固定することで、サイドフェンスを任意の位置に固定することが可能になる。サイドフェンス123とサイドフェンス124のY方向の移動は、ラック123a、ピニオン120eおよびラック124aを介して連動するため、サイドフェンス124の移動範囲の制限(または固定)はサイドフェンス123にも及ぶこととなる。
【0036】
エア吹付部131,132,133,134は、X方向に所定間隔をおいて、サイドフェンス123の上部に設けられる。エア吹付部141,142,143,144は、X方向に所定間隔をおいて、サイドフェンス124の上部に設けられる。なお、エア吹付部について、以降、特に区別しない場合、エア吹付部131,132,133,134はエア吹付部130と総称表記し、エア吹付部141,142,143,144はエア吹付部140と総称表記する。
【0037】
エア吹付部130,140は、サイドフェンス123とサイドフェンス124の間に置かれたシートPの幅方向の端部(例えばシート束の上部側面)にエアを吹き付け、このエアによってシート束から最上位のシートを浮上させて分離する。分離された最上位のシートは、上述のように送り装置13によって給送装置11から送り出され、次の工程へ搬送される。なお、シートの分離効率を高めるため、シート束の前側にエアを吹き付けるエア吹付部をさらに追加してもよい。この場合、例えば前側板120aに、Y方向に配置された複数のエア吹付部151,152,153,154が設けられる。ここで、エアを吹き付けるエア吹付部130,140は「エアを付与するエア付与部」の一例である。
【0038】
また、エア吹付部130,140のうち、エア吹付部132,133,134,142,143,144は、X-Y平面上で回動可能に設けられ、使用するシートの種類(サイズ、厚さ、材質等)に応じてエア吹付方向を変えられるように構成されている。以下、エア吹付方向を変更する構成について説明する。
【0039】
[エア付与方向を変更する構成]
まず、エアの付与方向(吹付方向)を変更する理由について図4を用いて説明する。図4は、シートサイズとエア付与の関係を示す説明図であり、図4(a)は大きいサイズのシートに対しエアを付与する場合の様子を示し、図4(b)は小さいサイズのシートに対しエアを付与する場合の様子を示している。
【0040】
大きいサイズのシートとして、図4(a)では、全てのエア吹付部130,140を跨ぐ長さを有するシートP1が例示されている。シートP1の後端(X方向負側のシート端)は、エア吹付部134,144の位置を越えてX方向負側、つまりシートの搬送方向の上流側へ更に延びている。
【0041】
このようなシートP1に対してエアを付与する場合、エア吹付部130,140は、エア吹付口がシートP1の搬送方向の上流側に向く角度で配置され、全てのエア吹付部130,140を用いてシート束から最上位のシートを浮上させる。
【0042】
小さいサイズのシートとして、図4(b)では、エア吹付部130,140のうちシートの前側1番目から3番目までのエア吹付部131~133,141~143を跨ぐ長さを有するシートP2が例示されている。シートP2の後端は、エア吹付部133,143と対向する位置までしかなく、エア吹付部134,144と対向する位置にシートP2は存在しない。
【0043】
このようなシートP2に対してエアを付与する場合、1番目のエア吹付部131,141は、エア吹付口がシートP2の搬送方向の上流側に向く角度で配置される。2番目のエア吹付部132,142は、エア吹付口が1番目のエア吹付部131,141よりも小さい傾きでシートP2の搬送方向の上流側に向く角度で配置される。また、3番目のエア吹付部133,143は、エア吹付口をシートP2の搬送方向に直交させて配置される。
【0044】
なお、4番目のエア吹付部134,144は、エア吹付口を3番目のエア吹付部133,143と同じ方向を向けて配置されるが、シートP2へのエアの吹き付けは行われない。小さいサイズのシートP2の場合は、これらエア吹付部131~133,141~143を用いてシート束から最上位のシートを浮上させる。
【0045】
以上のように、エアの吹付方向は、使用するシートの種類(サイズ、厚さ、材質等)に応じて最適な方向が異なるため、実施形態ではシートの種類に応じてエア吹付方向を変更し、これによりシートの分離性能のばらつきが低減されるようにしている。
【0046】
エア吹付部130,140におけるエア吹付方向の変更は、サイドフェンス123,124のY方向正側およびY方向負側への進退動作に連動してエア吹付部130,140を移動(回動)させる構成となっている。また、サイドフェンス123,124の進退動作に連動して移動する各エア吹付部132,133,134,142,143,144の移動量(回動量)は異なり、シートの搬送方向の上流側(X方向負側)に配置されるエア吹付部ほど大きな移動量で移動する。つまり、サイドフェンス123,124を進退動作させた際、シートの前側から2番目のエア吹付部132,142よりも3番目のエア吹付部133,143の方が大きく回動し、4番目のエア吹付部134,144は、3番目のエア吹付部133,143よりも更に大きく回動する。
【0047】
また、シートの前側から1番目のエア吹付部131,141は、サイドフェンス123,124の進退動作に連動せず、エア吹付方向は一方向に固定されている。エア吹付部131,141に対しては、シートサイズに依らず常にシートが存在するからである。
【0048】
なお、エア吹付部130,140のサイドフェンス123,124に対する個々の初期位置、移動量、シート毎のエア吹付方向等は、上記の構成に限るものではない。エア吹付部130,140の個々の初期位置、移動量、シート毎のエア吹付方向等は、例えば、予め求めた実験データに基づき部品仕様を変えることで任意に変更可能である。
【0049】
図5は、方向変更手段の構成例を示す要部平面図であり、図5(a)はシート分離装置に小さいサイズのシートを載せる場合の様子を示し、図5(b)はシート分離装置に大きいサイズのシートを載せる場合の様子を示している。なお、図5においては、左側のサイドフェンス123とエア吹付部132との構成に基づいて説明するが、他のエア吹付部133,134においても同じ構成が適用される。
【0050】
サイドフェンス123の進退移動に連動させてエア吹付部132のエア吹付方向を変更するための方向変更の機構は、板状歯車(ラック)120fと、ラック120fと噛み合う円形状歯車(ピニオン)135とによって構成される。ラック120fは、例えば枠体120やシートPが置かれるトレイ等の固定部材側に設けられる。ピニオン135は、エア吹付部132の下方(Z方向負側)に設けられる。ピニオン135とエア吹付部132は、ピニオン135の回転軸136の一方の端部(上端部)にエア吹付部132を固定することで一体化され、これによりピニオン135とエア吹付部132は同期して回転することが可能になる。
【0051】
上記構成において、図5(a)に示された状態から幅を狭める方向(右矢印方向)にサイドフェンス123を移動させると、ラック120fに噛み合ったピニオン135が反時計まわり方向に回転する。ピニオン135の回転に同期してエア吹付部132も反時計まわり方向に回転するため、エア吹付部132のエア吹付口132aはX方向正側に回転する。
【0052】
また、上記構成において、図5(b)に示された状態から幅を広げる方向(左矢印方向)にサイドフェンス123を移動させると、ラック120fに噛み合ったピニオン135が時計まわり方向に回転する。ピニオン135の回転に同期してエア吹付部132も時計まわり方向に回転するため、エア吹付部132のエア吹付口132aはX方向負側に回転する。
【0053】
なお、図5は、サイドフェンス123の移動方向と、エア吹付部132の回転方向との関係を説明するものであり、エア吹付部132の初期位置はこれに限定されるものではない。つまり、図5(a)および図5(b)ではエア吹付口132aがY方向に向いた位置を初期位置として説明したが、初期位置は任意の位置に変更可能である。
【0054】
また、右側のサイドフェンス124の場合は、幅を狭める方向および幅を広げる方向が左側のサイドフェンス123と反対となり、「幅を狭める方向」が左方向、「幅を広げる方向」が右方向となる。そして、サイドフェンス124の場合は、幅を狭める方向にサイドフェンス124を移動させると、エア吹付部142(143,144)は時計まわり方向に回転し、エア吹付口がX方向正側に回転する。また、幅を広げる方向にサイドフェンス124を移動させると、エア吹付部142(143,144)は反時計まわり方向に回転し、エア吹付口がX方向負側に回転する。
【0055】
上記構成により、サイドフェンス123(124)の進退移動に連動させてエア吹付部132(133,134,142,143,144)のエア吹付方向を変更することが可能になる。ここで、ラック120fおよびピニオン135は「方向変更手段」の一例である。
【0056】
上述のように本実施形態は、シートPの幅方向(Y方向)の端部に対して進退可能に設けられ、シートPの端部の位置を規制するサイドフェンス123,124と、シートPの端部にエアを吹き付けるエア吹付部130,140と、を有するシート分離装置12であって、サイドフェンス123,124の進退動作と連動してエアの吹付方向を変更する方向変更機構(ラック120f、ピニオン135)を備える。これにより、シート束からのシートの分離性能のばらつきを低減することができる。
【0057】
また、上述のように、エア吹付部130,140は、シートPの幅方向と直交する方向(X方向)に複数設けられている。
【0058】
また、上述のように、幅方向(Y方向)と直交する方向(X方向)はシートPの搬送方向であり、複数のエア吹付部130,140のうち、搬送方向の下流側に設置されたエア吹付部131,141は、サイドフェンス123,124の進退動作と連動しない。これらにより、シートの種類に応じて最適な分離を行うことができる。
【0059】
[エア付与部の移動量を変える構成]
次に、サイドフェンスの進退動作に連動して移動するエア吹付部の移動量(回動量)を変える構成について、図6を用いて説明する。
【0060】
図6は、方向変更手段の構成例を示す概略側面図であり、図6(a)はエア吹付部の移動量を小さくする場合の構成を示し、図6(b)はエア吹付部の移動量を大きくする場合の構成を示している。
【0061】
エア付与部の一例であるエア吹付部130,140の移動量の変更は、エア吹付部130,140の下方に設けられるピニオン135の径を変えることにより行われる。図6(a)において、回転軸136は、一方の端部(上端部)にエア吹付部130,140が固定されている。また、回転軸136のもう一方の端部(下端部)は、サイドフェンス123,124の底板(サイドフェンス底板)123b,124bに、軸受123c,124cを介して固定されている。回転軸136にはピニオン135Aが固定されており、ピニオン135Aの外周部に形成された歯と噛み合う位置にラック120fが設けられる。ラック120fは、例えば枠体120の底板120dに固定される。
【0062】
図6(b)に示された構成は、図6(a)のピニオン135Aよりも小さい径を有するピニオン135Bを備えている点が異なる。
【0063】
上記構成において、サイドフェンス123,124が進退移動すると、それに伴いサイドフェンス底板123b,124bが進退方向(図6では紙面と垂直な方向)に移動する。サイドフェンス底板123b,124b(サイドフェンス123,124)が移動すると、ラック120fに噛み合ったピニオン135A,135Bが回転する。ピニオン135A,135Bの回転は、ピニオン135A,135Bに固定した回転軸136に伝達され、回転軸136の上端部に固定されたエア吹付部130,140を回動させる。
【0064】
このように、サイドフェンス123,124におけるエア吹付部130,140の配置位置に応じて、使用するピニオン135の径を変えることで、エア吹付部130,140の移動量を個別に異ならせることが可能になる。
【0065】
例えば、図3の構成において、シートの前側から2番目のエア吹付部132,142には図6(a)のピニオン135Aを用い、3番目のエア吹付部133,143には図6(b)のピニオン135Bを用いる。また、4番目のエア吹付部134,144にはピニオン135Bよりもさらに小径のピニオンを用いる。これにより、サイドフェンス123,124を進退動作させた際、エア吹付部132,142よりもエア吹付部133,143の方が大きく回動し、エア吹付部134,144は、エア吹付部133,143よりも更に大きく回動する構成が得られる。
【0066】
上述のように、本実施形態は、サイドフェンス123,124の進退動作と連動するエア吹付部130,140の移動量が、複数のエア吹付部で異なる。これにより、複数のエア吹付部毎に移動量を変えることが可能になり、シートの種類に応じて最適なシート分離を行うことができる。また、常にシートが存在する側(X方向正側)ではエア吹付部の移動量を小さくすることで、常にエアを付与することが可能な状態にできる。一方で、シートサイズによってシートが存在しなくなる側(X方向負側)ではエア吹付部の移動量を大きくすることで、不要なエアの吹付方向が迅速に修正され、シート分離に悪影響を及ぼさない状態にすることができる。
【0067】
[エア付与部の初期位置を調整する構成]
ここで、エア吹付部におけるエアの流れについて、図7を用いて説明する。図7は、エア付与部のエアの流れを示す説明図である。
【0068】
エア付与部の一例であるエア吹付部130,140は、ダクト130b,140bを介してブロアファン160に接続されている。ブロアファン160は、例えば、サイドフェンス123,124の内部に取り付けられる。ブロアファン160によって発生させたエアは、ダクト130b,140bを通り、エア吹付部130,140に送り込まれて、エア吹付口130a,140aから送り出される。
【0069】
エア吹付部130,140とダクト130b,140bとの接続部、および回転軸136とダクト130b,140bとの接続部は、スポンジ材やゴム製のパッキンなどでエアが漏れない構造となっている。
【0070】
ブロアファン160の数量は、必要な風量に応じて適宜設定されてよく、複数のエア吹付部それぞれに1つずつブロアファン160を設ける構成としてもよいし、1つのブロアファン160を複数のエア吹付部で共用する構成としてもよい。後者の場合は、例えば、ダクト130b(140b)をサイドフェンス123(124)の内部で分岐させることで、1つのブロアファン160から複数のエア吹付部にエアが供給される。また、ブロアファン160の風量は、使用するシートの種類(サイズ、厚さ、材質等)に応じて制御される。
【0071】
図8は、エア付与部の取り付け構成の一例を示す説明図であり、図8(a)は板ばねを用いた構成例を示し、図8(b)はネジを用いた構成例を示す。図9は、エア付与部の初期位置調整手段の一例を示す説明図である。
【0072】
図8(a)において、エア吹付部130,140は、サイドフェンス123,124に形成された受け台123d,124d上において回動可能に設置される。図7で説明したダクト130b,140b等は受け台123d,124dの内部に収容される。エア吹付部130,140の上方には、サイドフェンス123,124の天板123e,124eが位置し、天板123e,124eの下面には板ばね123f,124fが設けられている。エア吹付部130,140は、この板ばね123f,124fの弾性力によって上面が押され、受け台123d,124dに押し付けられることで支持される。
【0073】
図8(b)の場合には、エア吹付部130,140の上面に、ネジ123g,124gの先端を受けるための緩衝材130c,140cを設けるとともに、天板123e,124e側からネジ123g,124gで緩衝材130c,140cの部分を締め付ける。エア吹付部130,140は、このネジ123g,124gの締め付け力によって上面が押され、受け台123d,124dに押し付けられることで支持される。
【0074】
図8(a)および図8(b)の構成において、エア吹付部130,140の内部上面には、回転軸136の上端部136aが篏合可能な凹部130d,140dが形成されている。上端部136aと凹部130d,140dとは、断面形状が円ではなく、例えば、図9に示されるような断面が多角形状(図9(a))であったり、星形状(図9(b))に形成されている。従って、上端部136aと凹部130d,140dとの篏合位置を周方向で変えることにより、任意の角度で回転軸136にエア吹付部130,140を取り付けることが可能になる。これにより、サイドフェンス123,124を最大幅(または最小幅)に設置した際のエア吹付部130,140の初期位置を、任意の角度に調整することが可能になる。ここで、回転軸136の上端部136aおよびエア吹付部130,140の凹部130d,140dは「初期位置調整手段」の一例である。
【0075】
上述のように、本実施形態は、サイドフェンス123,124とエア吹付部130,140との間に、サイドフェンス123,124に対するエア吹付部130,140の初期位置を調整可能にする初期位置調整手段(回転軸136の上端部136a、エア吹付部130,140の凹部130d,140d)を備える。これにより、エア吹付部毎に初期位置を微調整することが可能になり、シートの種類に応じてより最適な分離を行うことができる。
【0076】
[エア付与部の調整部材の構成]
次に、エア付与部の調整部材の構成について、図10および図11を用いて説明する。図10は、調整部材の配置例を示す概略平面図、図11は、調整部材の別の配置例を示す概略平面図である。ここではサイドフェンス124に設置されるエア吹付部140側を例示して説明するが、サイドフェンス123に設置されるエア吹付部130側においても同様に適用されるものである。
【0077】
図10において、エア吹付部140の内部には、遮蔽板140eが設けられる。遮蔽板140eは、例えば、上述のダクト140bに取り付けられており、遮蔽板140eの上端はエア吹付部140の内部上面に接触している。遮蔽板140eは、円筒形の一部を切り欠いた、断面C形状を有し、ダクト140bから送られたエアは遮蔽板140eの切り欠き部分より送り出される。
【0078】
図10(a)は、エア吹付部140のエア吹付口140aがX方向負側寄り、つまりシートの搬送方向の上流側に向いている状態である。図10(b)は、エア吹付口140aがX方向に対し直角に向いている状態である。図10(c)は、エア吹付口140aがX方向正側寄り、つまりシートの搬送方向の下流側に向いている状態である。
【0079】
図10(a)および図10(b)は、比較的大きいサイズのシートに対してエアを付与する場合のエア吹付部140の向きとなる。この場合、遮蔽板140eに設けられた切り欠き部分と、エア吹付部140のエア吹付口140aとは対向しており、十分なエアを送り出すことができる。
【0080】
これに対し、図10(c)は、比較的小さいサイズのシートに対してエアを付与する場合のエア吹付部140の向きとなる。この場合、エア吹付口140aは遮蔽板140eによって半分以上が遮蔽されており、エア吹付口140aからのエアの量は制限される。
【0081】
上記のような遮蔽板140eを設けることで、サイドフェンス124の進退移動に連動させてエア吹付部140の向き(エア吹付方向)を変更することに加え、エアの付与量(吹付量)を調整することが可能になる。ここで、遮蔽板140eは「調整部材」の一例である。
【0082】
図10に示された遮蔽板140eの配置は、例えば、図3に示されたシート分離装置12に当てはめた場合、主にシートの前方から2番目のエア吹付部142、および3番目のエア吹付部143において適用される。なお、1番目のエア吹付部141には遮蔽板140eは存在しない。
【0083】
図11に示された構成は、遮蔽板140eの配置が図10に示された構成と異なる。つまり、図11の遮蔽板は、図10の遮蔽板の位置よりも、反時計まわり方向にわずかに位置を変えており、エア吹付口140aと遮蔽板140eとの重なる範囲が増している。
【0084】
図11(a)は、エア吹付部140のエア吹付口140aがX方向負側寄り、つまりシートの搬送方向の上流側に向いている状態である。図11(b)は、エア吹付口140aがX方向に対し直角に向いている状態である。図11(c)は、エア吹付口140aがX方向正側寄り、つまりシートの搬送方向の下流側に向いている状態である。
【0085】
図11(a)では、エア吹付部140のエア吹付口140aが遮蔽板140eに設けられた切り欠き部分と対向しており、十分なエアを送り出すことができる。図11(b)では、エア吹付口140aの約半分が遮蔽板140eによって遮蔽されるため、エア吹付口140aからのエアの量は制限される。図11(c)では、エア吹付口140aは遮蔽板140eによって全域が遮蔽されるため、エアは送り出されない。
【0086】
そして、図11に示された遮蔽板140eの配置は、例えば、図3に示されたシート分離装置12に当てはめた場合、主にシートの前方から4番目のエア吹付部144において適用される。
【0087】
上述のように、本実施形態において、エア吹付部140は、エアの付与量(吹付量)を調整する遮蔽板140eを備える。これにより、サイドフェンス124の進退移動に連動させてエア吹付部140からのエアの付与量(吹付量)を調整することが可能になり、シートの種類に応じてより最適なシート分離を行うことができる。
【0088】
また、上述のように、幅方向(Y方向)と直交する方向(X方向)はシートの搬送方向であり、遮蔽板140eは、エア吹付部140のエア吹付口140aが、搬送方向と直交する位置から、搬送方向の下流側に向かうに従い、エア吹付口140aからのエアの吹付量が小さくなるように、エア吹付部140内に配置されている。これにより、不要なエアを早期に遮断し、シート分離のためのエアの流れを乱さないようにすることができる。
【0089】
また、上述のように、図10に示された遮蔽板140eの配置構成はエア吹付部142,143に適用され、図11に示された遮蔽板140eの配置構成はエア吹付部144に適用される。つまり、遮蔽板140eは、複数のエア吹付部142,143,144において調整範囲(遮蔽する範囲)を異ならせて設けられる。これにより、シートの搬送方向の下流側よりも上流側のエアを早いタイミングで遮蔽することが可能になる。小さいサイズのシートでは、搬送方向の上流側でのエアは不要となるため、遮蔽板140eでエアを遮り、不要なエアの流れが生成されないようにすることができる。
【0090】
<補足>
本発明において、「液体を付与する装置」は、液体を付与するヘッドを備え、ヘッドを駆動させて、液体を付与する装置である。液体を付与する装置には、液体が付着可能なものに対して液体を付与することが可能な装置だけでなく、液体を気中や液中に向けて付与する装置も含まれる。
【0091】
この「液体を付与する装置」は、液体が付着可能なものの供給、搬送、排出に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。例えば、「液体を付与する装置」として、インクを付与して用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を付与する立体造形装置(三次元造形装置)がある。
【0092】
また、「液体を付与する装置」は、付与した液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0093】
上記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
【0094】
上記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス、アルミニウム箔や銅箔といった集電体、または集電体上に活物質層が形成された電極など、液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0095】
また、「液体」は、ヘッドから付与可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、電極材料として用いられる活物質や固体電解質、導電性材料や絶縁性材料を含むインクなどを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどが挙げられる。これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液、電極、電気化学素子等の用途で用いることができる。
【0096】
また、「液体を付与する装置」は、ヘッドと、液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、ヘッドを移動させるシリアル型装置、ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
【0097】
また、「液体を付与する装置」としては他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液をノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。
【0098】
以上説明したものは一例であり、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到し得る範囲内で変更することができ、次のいずれの態様においても本発明の作用効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0099】
[態様1]
態様1は、シートの幅方向の端部に対して進退可能に設けられ、前記シートの前記端部の位置を規制する規制部材(例えばサイドフェンス123,124)と、前記シートの前記端部にエアを付与するエア付与部(例えばエア吹付部130,140)と、を有するエア付与装置(例えばシート分離装置12)であって、前記規制部材の進退動作と連動して前記エアの付与方向を変更する方向変更手段(例えばラック120fおよびピニオン135)を備えることを特徴とするものである。
【0100】
[態様2]
態様2は、態様1において、前記エア付与部は、前記シートの前記幅方向と直交する方向に複数設けられていることを特徴とするものである。
【0101】
[態様3]
態様3は、態様2において、前記幅方向と直交する方向は前記シートの搬送方向であり、複数のエア付与部のうち、前記搬送方向の下流側に設置されたエア付与部(例えばエア吹付部131,141)は、前記規制部材の進退動作と連動しないことを特徴とするものである。
【0102】
[態様4]
態様4は、態様2または態様3において、前記規制部材の進退動作と連動する前記エア付与部の移動量が、複数のエア付与部で異なることを特徴とするものである。
【0103】
[態様5]
態様5は、態様1乃至態様4のいずれかにおいて、前記規制部材と前記エア付与部との間に、前記規制部材に対する前記エア付与部の初期位置を調整可能にする初期位置調整手段(例えば回転軸136の上端部136aと、エア吹付部130,140の凹部130d,140d)を備えることを特徴とするものである。
【0104】
[態様6]
態様6は、態様1乃至態様5のいずれかにおいて、前記エア付与部は、前記エアの付与量を調整する調整部材(例えば遮蔽板140e)を備えることを特徴とするものである。
【0105】
[態様7]
態様7は、態様6において、前記幅方向と直交する方向は前記シートの搬送方向であり、前記調整部材は、前記エア付与部(例えばエア吹付部140)のエア付与口(例えばエア吹付口140a)が、前記搬送方向と直交する位置(例えば図10(b)、図11(b))から、前記搬送方向の下流側(例えば図10(c)、図11(c))に向かうに従い、前記エア付与口からの前記エアの付与量が小さくなるように、前記エア付与部内に配置されていることを特徴とするものである。
【0106】
[態様8]
態様8は、態様6または態様7において、前記調整部材は、複数のエア付与部において、調整範囲を異ならせて設けられることを特徴とするものである。
【0107】
[態様9]
態様9は、積み重ねられたシートの幅方向の端部にエアを付与し、前記積み重ねられたシートから分離された最上位のシートを所定方向に給送するシート給送装置において、態様1乃至態様8のいずれかのエア付与装置(例えばシート分離装置シート分離装置12,12A,12B)を備えることを特徴とするシート給送装置(例えば給送装置11,11A,11B)である。
【0108】
[態様10]
態様10は、シートに液体を付与する液体付与手段(例えば液体付与部32)と、前記液体付与手段に向けて前記シートを給送する態様9のシート給送装置(例えば給送装置11,11A,11B)と、を備えることを特徴とする液体を付与する装置(例えば印刷装置1)である。
【符号の説明】
【0109】
1 印刷装置
10 搬入部
11,11A,11B 給送装置
12,12A,12B シート分離装置
13,13A,13B 送り装置
30 印刷部
32 液体付与部
120 枠体
120a 前側板
120b 左側板
120c 右側板
120d 底板
120e ピニオン
120f ラック
121,122 軸部材
123,124 サイドフェンス
123a,124a ラック
123b,124b サイドフェンス底板
123c,124c 軸受
123d,124d 受け台
123e,124e 天板
123f,124f 板ばね
123g,124g ネジ
125a,125b ストッパ
130,131,132,133,134 エア吹付部
130a,132a エア吹付口
130b ダクト
130c 緩衝材
130d 凹部
135,135A,135B ピニオン
136 回転軸
136a 上端部
140,141,142,143,144 エア吹付部
140a エア吹付口
140b ダクト
140c 緩衝材
140d 凹部
140e 遮蔽板
151,152,153,154 エア吹付部
160 ブロアファン
P,P1,P2 シート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11