(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177823
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】多孔質ゼオライト成形体
(51)【国際特許分類】
B01J 29/40 20060101AFI20241217BHJP
C01B 39/36 20060101ALI20241217BHJP
B01J 35/60 20240101ALI20241217BHJP
C07C 15/04 20060101ALI20241217BHJP
C07C 15/06 20060101ALI20241217BHJP
C07C 15/08 20060101ALI20241217BHJP
C07C 15/073 20060101ALI20241217BHJP
C07C 2/82 20060101ALI20241217BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20241217BHJP
【FI】
B01J29/40 Z
C01B39/36
B01J35/10 301G
C07C15/04
C07C15/06
C07C15/08
C07C15/073
C07C2/82
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096170
(22)【出願日】2023-06-12
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中岡 尚太
(72)【発明者】
【氏名】林 智洋
(72)【発明者】
【氏名】花谷 誠
【テーマコード(参考)】
4G073
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G073BD11
4G073BD15
4G073BD26
4G073CZ13
4G073CZ49
4G073CZ50
4G073DZ02
4G073FA15
4G073FB11
4G073FD27
4G073FD28
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4G073GA14
4G073GB10
4G073UA03
4G169AA02
4G169BA02A
4G169BA02B
4G169BA07A
4G169BA07B
4G169BC35A
4G169BC35B
4G169CB25
4G169CB66
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4G169EA02X
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4G169EC16X
4G169EC16Y
4G169EC17X
4G169EC17Y
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4G169FC08
4G169ZA11B
4G169ZA32A
4G169ZA32B
4G169ZA46A
4G169ZA46B
4G169ZC06
4G169ZF02A
4G169ZF02B
4G169ZF05A
4G169ZF05B
4H006AA02
4H006AC28
4H006BA07
4H006BA71
4H006DA46
4H039CA41
4H039CH40
(57)【要約】
【課題】 石油化学触媒、排ガス浄化触媒、吸着剤、分子篩として有用性が期待され、特に脂肪族炭化水素の芳香族化反応に対して、高活性で長寿命であることのみならず、低コーク量となる芳香族化反応用触媒としての有用性が期待される新規な多孔質ゼオライト成形体を提供する。
【解決手段】 少なくともゼオライト及びバインダーを含む多孔質成形体であって、(1)水銀圧入法による細孔直径-細孔容積の関係において、直径0.011~0.09μmの範囲にある細孔の細孔容積が0.04~0.8cc/gである多孔質ゼオライト成形体。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともゼオライト及びバインダーを含む多孔質成形体であって、(1)水銀圧入法による細孔直径-細孔容積の関係において、直径0.011~0.09μmの範囲にある細孔の細孔容積が0.04~0.8cc/gであることを特徴とする多孔質ゼオライト成形体。
【請求項2】
さらに(ii)水銀圧入法による細孔直径-細孔容積の関係において、直径0.09μm~200μmの範囲にある細孔の細孔容積が0.1~0.8cc/gであることを特徴とする請求項1に記載の多孔質ゼオライト成形体。
【請求項3】
ゼオライトとバインダーとの配合割合が、ゼオライト100重量部に対しバインダー5~100重量部であることを特徴とする請求項1又は2に記載の多孔質ゼオライト成形体。
【請求項4】
ゼオライトが、平均粒子径1~25μmの粒状ゼオライトであり、バインダーが平均粒子径10~100nmの粒状バインダーであることを特徴とする請求項1又は2に記載の多孔質ゼオライト成形体。
【請求項5】
円柱、円筒、多角柱及び多角筒より選択される少なくとも1つの形状を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の多孔質ゼオライト成形体。
【請求項6】
ゼオライトが、10員環細孔ゼオライトであり、バインダーが、シリカであることを特徴とする請求項1又は2に記載の多孔質ゼオライト成形体。
【請求項7】
さらに、金属種を含むことを特徴とする請求項1に記載の多孔質ゼオライト成形体。
【請求項8】
金属種が、亜鉛種であることを特徴とする請求項7に記載の多孔質ゼオライト成形体。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の多孔質ゼオライト成形体を含むことを特徴とする芳香族化反応用触媒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくともゼオライト及びバインダーを含む多孔質ゼオライト成形体に関するものであり、石油化学触媒、排ガス浄化触媒、吸着剤、分子篩として有用性が期待され、特に脂肪族炭化水素の芳香族化反応に対して優れた性能、安定性を発揮する芳香族化反応用触媒としての有用性が期待される特定の細孔が特定の細孔容積を有する新規な多孔質ゼオライト成形体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ゼオライトは、石油化学触媒(例えば、特許文献1,2参照。)、内燃機関等の排ガス浄化触媒(例えば、特許文献3,4参照。)、吸着剤(例えば、特許文献5,6参照。)等の用途として工業的に幅広く用いられる。そして、工業的使用の際には、バインダー(例えば、シリカ、アルミナ、シリカアルミナ、粘土鉱物など)を混合し、所定の形状に成形され、高温焼成により焼結を行うことでゼオライトとバインダーとを複合化したゼオライト成形体として用いられており、その際にはバインダーもゼオライト成形体の性能に影響を与える因子として、適切な種類、量等の選択・検討が行われてきた。
【0003】
また、ゼオライト、ゼオライト成形体、ゼオライト複合体における細孔は、基質の拡散、脱着、放出等に大きな影響を与えるものであり、特にメソ細孔は、基質の拡散に重要な役割を果たす細孔である。そして、均一なメソ細孔はその効果が顕著であることから、均一なメソ細孔を有するゼオライト(例えば、特許文献7参照。)が提案されている。また、高い性能を発揮する吸着剤や触媒などの利用として、成形体のマクロ細孔のサイズ等に関する検討(例えば、特許文献8参照。)が報告されている。
【0004】
さらに、ゼオライトの触媒としての使用においては、製品の生産効率の観点から高活性で長寿命であることが期待される他にも、燃焼再生工程の時間の短縮や燃焼時のゼオライトの脱アルミニウム抑制の観点から、反応によって成形体に堆積するコーク量が少ないことが期待されている。
【0005】
なお、石油化学触媒、排ガス浄化触媒等の触媒技術は、未利用分の有効利用・浄化を高めるものであり、包摂的で持続可能な産業の推進化に寄与するものであり、近年叫ばれているSDGs等持続可能な社会に必要なテクノロジーの1つとして期待されるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3580518号
【特許文献2】特許第3950437号
【特許文献3】特許第2931332号
【特許文献4】特許第3311370号
【特許文献5】特許第6147499号
【特許文献6】特許第6183580号
【特許文献7】特開2017-119267公報
【特許文献8】特開2009-242163公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、現状では、ゼオライト成形体を触媒として使用した際に活性や寿命のみならず、コーク量に大きな影響を与える細孔の細孔直径の範囲や望ましい細孔容積に関する検討・報告は限られたものであり、その性能としても課題を有するものであった。
【0008】
そこで、本発明は、石油化学触媒、排ガス浄化触媒、吸着剤、分子篩、特に芳香族化反応用触媒として期待される特定の細孔が特定の細孔容積を有する新規な多孔質ゼオライト成形体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記の課題を解決するため鋭意検討を行った結果、特定の直径範囲における細孔が特定の細孔容積を有する新規な多孔質ゼオライト成形体が、芳香族化反応用触媒とした際に優れた性能・安定性を発現することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、少なくともゼオライト及びバインダーを含む多孔質成形体であって、(1)水銀圧入法による細孔直径-細孔容積の関係において、直径0.011~0.09μmの範囲にある細孔の細孔容積が0.04~0.8cc/gであることを特徴とする多孔質ゼオライト成形体に関するものである。
【0011】
以下に、本発明について詳細に説明する。
【0012】
本発明の多孔質ゼオライト成形体は、少なくともゼオライト及びバインダーを含む多孔質の成形体であって、(i)直径0.011~0.09μmの範囲にある細孔の細孔容積が0.04~0.8cc/gの範囲にあるものである。その際の細孔直径-細孔容積の関係は水銀圧入法により測定することができ、例えば水銀ポロシメーターを用いて、水銀圧入量を測定し算出する方法を挙げることができる。
【0013】
本発明の多孔質ゼオライト成形体を構成するゼオライトとしては特に制限はなく、細孔を有するゼオライトと称されるものであればよい。そして、中でも芳香族化合物を長時間にわたって安定的に製造することが可能な芳香族化反応用触媒として優れた性能・安定性を発揮するものとなることから10員環細孔ゼオライトであることが好ましく、例えばAEL、EUO、FER、HEU、MEU、MEL、MFI、NES型等のゼオライトを挙げることができ、特に脂肪族炭化水素の芳香族化反応用触媒として期待されるものとなることからMFI型ゼオライト又はMEL型ゼオライトであることが好ましい。そして、例えばMFI型としては、国際ゼオライト学会で定義される構造コードMFIに属するアルミノシリケート化合物を挙げることができる。また、ZSM-5と称されるものであってもよい。
【0014】
また、ゼオライトとしては市販品であってもよく、例えば(商品名)HSZ-822HOA(東ソー株式会社製、平均粒子径5μm)、(商品名)HSZ-840HOA(東ソー株式会社製、平均粒子径10μm)、(商品名)HSZ-890HOA(東ソー株式会社製、平均粒子径10μm)、(商品名)HSZ-891HOA(東ソー株式会社製、平均粒子径4μm)、(商品名)HSZ-820NHA(東ソー株式会社製、平均粒子径5μm)、(商品名)HSZ-840NHA(東ソー株式会社製、平均粒子径10μm)、(商品名)HSZ-930NHA(東ソー株式会社製、平均粒子径5μm)、(商品名)HSZ-940NHA(東ソー株式会社製、平均粒子径4μm)、(商品名)HSZ-931HOA(東ソー株式会社製、平均粒子径3μm)、(商品名)HSZ-940HOA(東ソー株式会社製、平均粒子径4μm)、(商品名)HSZ-941HOA(東ソー株式会社製、平均粒子径4μm)、(商品名)HSZ-980HOA(東ソー株式会社製、平均粒子径2.5μm)、(商品名)HSZ-720NHA(東ソー株式会社製、平均粒子径6μm)、(商品名)HSZ-720KOA(東ソー株式会社製、平均粒子径20μm)、(商品名)HSZ-642NAA(東ソー株式会社製、平均粒子径12μm)、(商品名)HSZ-620HOA(東ソー株式会社製、平均粒子径18μm)、(商品名)HSZ-640HOA(東ソー株式会社製、平均粒子径12μm)、(商品名)HSZ-660HOA(東ソー株式会社製、平均粒子径12μm)、(商品名)HSZ-690HOA(東ソー株式会社製、平均粒子径12μm)、(商品名)HSZ-500KOA(東ソー株式会社製、平均粒子径4μm)、(商品名)HSZ-341NHA(東ソー株式会社製、平均粒子径4μm)、(商品名)HSZ-371NHA(東ソー株式会社製、平均粒子径2.5μm)、(商品名)HSZ-320NAA(東ソー株式会社製、平均粒子径7μm)、(商品名)HSZ-320HOA(東ソー株式会社製、平均粒子径7μm)、(商品名)HSZ-330HUA(東ソー株式会社製、平均粒子径7μm)、(商品名)HSZ-331HSA(東ソー株式会社製、平均粒子径2.5μm)、(商品名)HSZ-350HUA(東ソー株式会社製、平均粒子径6μm)、(商品名)HSZ-360HUA(東ソー株式会社製、平均粒子径6μm)、(商品名)HSZ-385HUA(東ソー株式会社製、平均粒子径2.5μm)、(商品名)HSZ-390HUA(東ソー株式会社製、平均粒子径6μm)等を挙げることができる。
【0015】
また、ゼオライトとしては、特に(i)直径0.011~0.09μmの範囲にある細孔の細孔容積が0.04~0.8cc/gの範囲にある多孔質ゼオライト成形体を効率的に得ることができることから、粒状ゼオライトであることが好ましく、特に平均粒子径1~25μmを有するゼオライトであることが好ましく、平均粒子径4~10μmを有するゼオライトであることがさらに好ましい。この際の平均粒子径は、例えば粒子径分布測定装置((商品名)マイクロトラックMT3300EX II、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
【0016】
本発明の多孔質ゼオライト成形体を構成するバインダーとしては、バインダー、更には結合剤、結着剤と称される範疇に属するものであれば如何なるものであってもよく、例えばシリカ、アルミナ、シリカアルミナ、粘土鉱物等を挙げることができ、中でも触媒、特に芳香族化反応用触媒とした際の性能に影響を与えないことからシリカであることが好ましい。バインダーの粒子径や凝集径等に関しても如何なる制限はなく、中でも取り扱い性に優れることから粒状バインダーであることが好ましく、特に多孔質ゼオライト成形体とした際の圧壊強度が高いものとなることから、平均粒子径10~100nmの粒子であることが好ましく、直径0.011~0.09μmの細孔を効率的に形成できることから、平均粒子径20~100nmの粒子であることが更に好ましい。また、直径0.011~0.09μmの細孔の形成の効率と圧壊強度向上効果に優れるものとなることから、平均粒子径20~100nmの粒状バインダーと平均粒子径10~20nmの粒状バインダーとを混合したものであることが好ましい。この場合、平均粒子径20~100nmの粒状バインダー:平均粒子径10~20nmの粒状バインダー=60~95:40~5(重量割合)であることが好ましく、70~90:30~10(重量割合)であることがさらに好ましい。
【0017】
また、バインダーとしては市販品であってもよく、例えば((商品名)スノーテックスN30G、日産化学工業社製、平均粒子径12nm)、((商品名)スノーテックスN、日産化学工業社製、平均粒子径12nm)、((商品名)スノーテックス30、日産化学工業社製、平均粒子径12nm)、((商品名)スノーテックスO、日産化学工業社製、平均粒子径12nm)、((商品名)スノーテックスC、日産化学工業社製、平均粒子径12nm)、((商品名)スノーテックスAK、日産化学工業社製、平均粒子径12nm)、((商品名)スノーテックスN-40、日産化学工業社製、平均粒子径22nm)、((商品名)スノーテックス50-T、日産化学工業社製、平均粒子径22nm)、((商品名)スノーテックスO-40、日産化学工業社製、平均粒子径22nm)、((商品名)スノーテックスCM、日産化学工業社製、平均粒子径22nm)、((商品名)スノーテックス30L、日産化学工業社製、平均粒子径45nm)、((商品名)スノーテックスOL、日産化学工業社製、平均粒子径45nm)、((商品名)スノーテックスAK-L、日産化学工業社製、平均粒子径45nm)、((商品名)スノーテックスYL、日産化学工業社製、平均粒子径60nm)、((商品名)スノーテックスOYL、日産化学工業社製、平均粒子径60nm)、((商品名)スノーテックスAK-YL、日産化学工業社製、平均粒子径60nm)、((商品名)スノーテックスZL、日産化学工業社製、平均粒子径80nm)、((商品名)MP-1040、日産化学工業社製、平均粒子径100nm)等を挙げることができる。
【0018】
本発明の多孔質ゼオライト成形体は、(i)直径0.011~0.09μmの範囲にある細孔の細孔容積が0.04~0.8cc/gのものであり、より好ましくは0.06~0.5cc/gのものであり、さらに好ましくは0.08~0.2cc/gのものである。ここで直径0.011~0.09μmの範囲にある細孔の細孔容積が0.04cc/g未満である場合、多孔質であってもその空隙内における拡散が不十分となり、吸着性能、更には触媒とした際の触媒性能等に劣るものとなる。また、直径0.011~0.09μmの範囲における細孔の細孔容積が0.8cc/gより大きい場合、成形体の巨視的空隙割合が大きくなるため、成形体の圧壊強度が低く崩壊し易いものとなる。
【0019】
また、本発明の多孔質ゼオライト成形体は、特にその空隙内における拡散に優れ、吸着性能、更には触媒とした際の触媒性能等に優れるものとなることから、(ii)直径0.09~200μmの範囲における細孔の細孔容積が0.1~0.8cc/gであることが好ましく、0.2~0.6cc/gであることが更に好ましい。
【0020】
本発明の新規な多孔質ゼオライト成形体は、少なくともゼオライト及びバインダーを含むものであり、その際の配合割合は任意である。中でも芳香族化反応用触媒として優れた性能が期待される成形体となることから、ゼオライト100重量部に対してバインダー5~100重量部であることが好ましく、特に10~60重量部であることが好ましい。
【0021】
本発明の新規な多孔質ゼオライト成形体の製造方法としては、如何なる方法を用いてもよく、例えばゼオライト及びバインダー、場合によっては更にセルロース、水等の添加剤等を所定割合で混合し、その混合物を所定形状に成形し、焼結することにより成形体とする方法を挙げることができる。その際の焼成温度としては、上記(i)、更には(ii)の特性を満足する細孔を有する成形体を容易に製造することが可能となることから400~800℃とすることが好ましい。
【0022】
本発明の多孔質ゼオライト成形体は、如何なる形状を有するものであってもよく、例えば円柱形状、円筒形状、三角柱形状,四角柱形状,五角柱形状,六角柱形状等の多角柱形状、中空多角柱形状である多角筒形状等を挙げることができ、中でも、連続生産性に優れ、かつ高圧壊強度の成形体となることから円柱形状、円筒形状、又は多角柱形状であることが好ましい。また、その直径,幅,長さ等のサイズ、嵩密度,真密度等の密度としては充填効率等を考慮し任意に選択可能である。さらに、使用にあたっての形態には如何なる制限もなく、必要に応じて成形体を適当な大きさや形状に粉砕及び分級したものを使用することが可能である。
【0023】
本発明の多孔質ゼオライト成形体は、石油化学触媒、排ガス浄化触媒等の触媒として利用する際には、含浸担持、イオン交換、物理混合、蒸着等の処理により金属種を含むものであってもよい。その際の金属種としては、例えば銀、白金、パラジウム、タングステン、ガリウム、亜鉛、銅、鉄、カルシウム、これらの化合物、イオン、配位物等を挙げることができる。金属種の種類や組み合わせに関しても如何なる制限はなく目的に応じて選択すればよい。中でも炭化水素より芳香族化合物を高選択的かつ安定的に製造することが可能な芳香族化反応触媒としては、亜鉛種であることが好ましい。
【0024】
本発明の多孔質ゼオライト成形体を芳香族化反応用触媒とすることにより、反応選択性、生産性等の効率に優れる触媒となり、例えば、炭素数10以下、特に炭素数3~8の脂肪族炭化水素及び/又は脂環式炭化水素と接触することにより、効率よく芳香族化合物を製造することが可能となる。その際の脂肪族炭化水素及び/又は脂環式炭化水素としてはその範疇に属するものであれば如何なるものを挙げることができ、例えばプロパン、プロピレン、シクロプロパン、シクロプロペン、ブタン、ブテン、ブタジエン、シクロブタン、シクロブテン、ペンタン、ペンテン、シクロペンタン、シクロペンテン、ヘキサン、ヘキセン、ヘキサジエン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、ヘプタン、ヘプテン、シクロヘプタン、シクロヘプテン、オクタン、オクテン、シクロオクタン、シクロオクテン等、及びそれらの混合物等を挙げることができる。そして、これらの炭化水素は、ナフサ等に代表される石油由来のものは無論、バイオエタノール、バイオナフサ等に代表される植物由来のもの、ポリオレフィン、ポリスチレンに代表される樹脂のケミカルリサイクル由来のものであってもよい。
【0025】
そして、その際の実施形態である反応において、反応温度は特に限定されるものではなく、芳香族化合物の製造が可能であればよく、特に生産効率に優れるものとなることから400~650℃の範囲が望ましい。また、反応圧力にも制限はなく、例えば0.1MPaA~2MPaA程度の圧力範囲で運転が可能である。そして、その際の芳香族化反応用触媒に対する反応原料の供給は、触媒体積に対し原料ガスの体積の比として特に制限されるものではなく、例えば50h-1~2000h-1程度を挙げることができる。脂肪族炭化水素及び/又は脂環式炭化水素を原料ガスとして供給する際には、単一ガス、混合ガス、及びこれらを窒素等の不活性ガス、水素、一酸化炭素、二酸化炭素から選ばれる単一または混合ガスにより希釈したものとして用いることもできる。
【0026】
その反応形式として制限はなく、例えば固定床、輸送床、流動床、移動床、多管式反応器のみならず連続流式および間欠流式並びにスイング式反応器、等を用いることができる。
【0027】
また、製造される芳香族化合物としては、芳香族化合物と称される範疇に属するものであれば特に制限はなく、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、ブチルベンゼン、ナフタレン、メチルナフタレン等を挙げることができ、特に、ベンゼン、トルエン、キシレンであることが好ましい。
【発明の効果】
【0028】
本発明の少なくともゼオライト及びバインダーを含む多孔質ゼオライト成形体は、特定の細孔直径の範囲にある細孔が特定の細孔容積を有する新規な成形体であり、触媒、吸着剤として工業的な有用性が期待されるものであり、特に芳香族化反応用触媒として使用する際には、高活性で長寿命であることのみならず、低コーク量となる触媒として高い性能を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】;実施例1により得られた多孔質ゼオライト成形体の細孔径-細孔容積の関係図。
【
図2】;実施例2により得られた多孔質ゼオライト成形体の細孔径-細孔容積の関係図。
【
図3】;比較例1により得られた多孔質ゼオライト成形体の細孔径-細孔容積の関係図。
【
図4】;比較例2により得られた多孔質ゼオライト成形体の細孔径-細孔容積の関係図。
【実施例0030】
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0031】
なお、実施例及び比較例における測定・評価を以下に示す。
【0032】
~細孔分布、細孔径-細孔容積の測定~
水銀ポロシメーター((商品名)POREMASTER GT、Quantachrome Instruments社製)を用いて、測定セル(0.5ccガラスセル)に多孔質ゼオライト成形体を0.6g入れ、各測定圧力下での水銀圧入量を測定した。水銀圧入量はブランクセルの測定時の圧入量をベースとして差し引くことにより得た。直径0.006~200μmの範囲の細孔の容積は、水銀圧入量を積算することで得た。細孔容積の解析は解析ソフト((商品名)Poremaster for WindowsR、Quantachrome Instruments社製)により行った。水銀の表面張力は480erg/cm2、水銀の前進角は140°とした。
【0033】
~圧壊強度の測定~
プッシュプルゲージ((商品名)MODEL-RX-100、アイコーエンジニアリング社製)を電動スタンド((商品名)MODEL-2257、アイコーエンジニアリング社製)に設置して多孔質ゼオライト成形体の圧壊強度を測定した。前処理として真空下で300℃に加熱し3時間の乾燥を行った。測定は各試料に対して25回行い、その平均値を圧壊強度とした。
【0034】
~芳香族化合物製造装置及びその製造方法~
得られた多孔質ゼオライト成形体は、以下の方法により芳香族化反応用触媒として調製し、芳香族化合物の製造を行い、その性能評価を行った。
【0035】
(芳香族化反応用触媒の調製方法)
気体を流通可能なマッフル炉を用いて、多孔質ゼオライト成形体を600℃で加熱した状態で空気2NL/分と水2NL/分の混合ガスを6時間流通するスチーム処理を行い、室温まで降温した。続いて、多孔質ゼオライト成形体200gを1000mlの1460mmol/lの酢酸亜鉛溶液中で30分攪拌した後に固液分離する操作を3回繰り返した。その後、多孔質ゼオライト成形体200gを1000mlの純水中で30分攪拌した後に固液分離する操作を5回繰り返した。固液分離により亜鉛種を含む多孔質ゼオライト成形体を得、180℃で一晩乾燥することで芳香族化反応用触媒として調製を行った。
【0036】
(芳香族化合物の製造)
ステンレス製反応管(内径16mm、長さ1400mm)を有する固定床気相流通式反応装置を用いた。ステンレス製反応管の中段に、芳香族化反応用触媒を充填し、乾燥空気100Nml/分の流通下、530℃での1時間の加熱前処理を行ったのち、原料混合ガスを48時間フィードした。そして、加熱はセラミック製管状炉を用い、芳香族化反応用触媒層の温度を制御した。反応出口ガス及び反応液を採取し、ガスクロマトグラフを用い、ガス成分及び液成分を個別に分析した。ガス成分は、TCD検出器を備え、充填剤(Waters社製、(商品名)PorapakQ又はGLサイエンス社製、(商品名)MS-5A)を有するガスクロマトグラフ(島津製作所製、(商品名)GC-1700)を用いて分析した。液成分は、FID検出器を備え、分離カラムとしてキャピラリーカラム(GLサイエンス社製、(商品名)TC-1)を有するガスクロマトグラフ(島津製作所製、(商品名)GC-2015)を用いて分析した。
【0037】
反応条件は下記のように設定した。
【0038】
(芳香族化合物製造条件)
原料混合ガス:1-ブテン123.3Nml/分、2-ブテン93.0Nml/分、イソブテン231.6Nml/分、ノルマルブタン44.1Nml/分、イソブタン9.1Nml/分、プロパン71.1Nml/分の混合ガス。
芳香族化反応用触媒:70g。
反応温度:530℃。
反応圧力:150kPaG
(C4転化率、芳香族収率)
以下の式により算出した。
(1)C4転化率(%)=(1-(未反応のブタン類+ブテン類重量/原料混合ガス中のブタン類+ブテン類重量))×100
(2)芳香族収率(wt%)=(ベンゼン+トルエン+キシレン+エチルベンゼン重量/原料炭化水素重量)×100
~堆積コーク量~
示差熱天秤((商品名)STA 2500 Regulus、NETZSCH社製)を用いて、コークが堆積した芳香族化反応用触媒を空気80Nml/分と窒素20Nml/分の混合ガス流通条件下で10℃/分の昇温速度で800℃まで昇温し、コークを完全に燃焼させた。全体の重量変化の内、成形体に吸着した水や軽質炭化水素の脱離による重量変化を差し引いて、成形体重量当たりに堆積したコーク重量を算出した。
【0039】
実施例1
市販のMFI型ゼオライト((商品名)HSZ-822HOA、東ソー株式会社製、ZSM-5粉末、平均粒子径5μm、SiO2/Al2O3比=24)100重量部に対して、市販のシリカ((商品名)スノーテックス50-T、日産化学工業社製、平均粒子径22nm)25重量部、セルロース5重量部、純水36重量部を混合し混練物とした。
【0040】
そして、混練物を直径3.0mm、長さ4.0~7.0mm(平均長さ5.6mm)の円柱状の成形体とし、100℃で1晩乾燥した。乾燥後の成形体を、空気流通下、600℃で2時間焼成して多孔質ゼオライト成形体を得た。得られた多孔質ゼオライト成形体の物性を表1に示す。また、細孔径-細孔容積の関係を
図1に示す。
【0041】
得られた多孔質ゼオライト成形体をマッフル炉を用いて600℃で加熱した状態で空気2NL/分と水2NL/分の混合ガスを6時間流通するスチーム処理を行い、室温まで降温した。続いて、多孔質ゼオライト成形体200gを1000mlの1460mmol/lの酢酸亜鉛溶液中で30分攪拌した後に固液分離する操作を3回繰り返した。その後、多孔質ゼオライト成形体200gを1000mlの純水中で30分攪拌した後に固液分離する操作を5回繰り返した。固液分離により亜鉛を含む多孔質ゼオライト成形体を得、180℃で一晩乾燥することで芳香族化反応用触媒として調製を行った。
【0042】
得られた芳香族化反応用触媒を用い、上記の芳香族化合物製造条件にて芳香族化合物の製造を行い、芳香族化の評価を行った結果を表2に示す。高活性かつ高芳香族収率であり、末期のC4転化率が十分に高い長寿命の触媒であった。また、低コーク量で、芳香族化反応用触媒として優れた性能を示した。
【0043】
【0044】
【0045】
実施例2
市販のシリカ((商品名)スノーテックス30L、日産化学工業社製、平均粒子径45nm)を用い、純水を29重量部とした以外は、実施例1と同様の方法にて多孔質ゼオライト成形体を得、芳香族化反応用触媒としての調製、評価を行った。それぞれの結果を表1,2に示す。また、細孔径-細孔容積の関係を
図2に示す。高活性かつ高芳香族収率であり、末期のC4転化率が十分に高い長寿命の触媒であった。また、低コーク量で、芳香族化触媒として優れた性能を示した。
【0046】
実施例3
市販のシリカ((商品名)スノーテックスYL、日産化学工業社製、平均粒子径60nm)を用い、純水を26重量部とした以外は、実施例1と同様の方法にて多孔質ゼオライト成形体を得、芳香族化反応用触媒としての調製、評価を行った。それぞれの結果を表1,2に示す。高活性かつ高芳香族収率であり、末期のC4転化率が十分に高い長寿命の触媒であった。また、低コーク量で、芳香族化触媒として優れた性能を示した。
【0047】
実施例4
市販のシリカ((商品名)スノーテックスZL、日産化学工業社製、平均粒子径80nm)を用い、純水を26重量部とした以外は、実施例1と同様の方法にて多孔質ゼオライト成形体を得、芳香族化反応用触媒としての調製、評価を行った。それぞれの結果を表1,2に示す。高活性かつ高芳香族収率であり、末期のC4転化率が十分に高い長寿命の触媒であった。また、低コーク量で、芳香族化触媒として優れた性能を示した。
【0048】
実施例5
市販のシリカ((商品名)スノーテックスZL、日産化学工業社製、平均粒子径80nm)を用い、純水を53重量部とした以外は、実施例1と同様の方法にて多孔質ゼオライト成形体を得、芳香族化反応用触媒としての調製、評価を行った。それぞれの結果を表1,2に示す。高活性かつ高芳香族収率であり、末期のC4転化率が十分に高い長寿命の触媒であった。また、低コーク量で、芳香族化触媒として優れた性能を示した。
【0049】
実施例6
市販のシリカ((商品名)スノーテックスZL、日産化学工業社製、平均粒子径80nm)20重量部、市販のシリカ((商品名)スノーテックス30、日産化学工業社製、平均粒子径12nm)5重量部とし、純水を22重量部とした以外は、実施例1と同様の方法にて多孔質ゼオライト成形体を得、芳香族化反応用触媒としての調製、評価を行った。それぞれの結果を表1,2に示す。高活性かつ高芳香族収率であり、末期のC4転化率が十分に高い長寿命の触媒であった。また、低コーク量で、芳香族化触媒として優れた性能を示した。
【0050】
実施例7
市販のシリカ((商品名)スノーテックス30L、日産化学工業社製、平均粒子径45nm)20重量部、市販のシリカ((商品名)スノーテックス30、日産化学工業社製、平均粒子径12nm)5重量部、純水を29重量部とした以外は、実施例1と同様の方法にて多孔質ゼオライト成形体を得、芳香族化反応用触媒としての調製、評価を行った。それぞれの結果を表1,2に示す。高活性かつ高芳香族収率であり、末期のC4転化率が十分に高い長寿命の触媒であった。また、低コーク量で、芳香族化触媒として優れた性能を示した。
【0051】
比較例1
市販のシリカ((商品名)スノーテックス30、日産化学工業社製、平均粒子径12nm)25重量部、純水を29重量部とした以外は、実施例1と同様の方法にて多孔質ゼオライト成形体を得、芳香族化反応用触媒としての調製、評価を行った。それぞれの結果を表1,2,また、細孔径-細孔容積の関係を
図3に示す。低活性かつ低芳香族収率であり、末期のC4転化率が低く、48時間の長時間の反応には適さない触媒であった。また、高コーク量で、芳香族化反応用触媒としての性能に劣るものであった。
【0052】
比較例2
市販のシリカ((商品名)スノーテックスN30G、日産化学工業社製、平均粒子径12nm)25重量部、純水を30重量部とした以外は、実施例1と同様の方法にて多孔質ゼオライト成形体を得、芳香族化反応用触媒としての調製、評価を行った。それぞれの結果を表1,2に示す。また、細孔径-細孔容積の関係を
図4に示す。低活性かつ低芳香族収率であり、末期のC4転化率が低く、48時間の長時間の反応には適さない触媒であった。また、高コーク量で、芳香族化反応用触媒としての性能に劣るものであった。
直径が特定の範囲の細孔における細孔容積が特定範囲である多孔質ゼオライト成形体は、特に脂肪族炭化水素の芳香族化反応に対して、高活性で長寿命であることのみならず、低コーク量となる芳香族化反応用触媒としての有用性も期待されるものであり、その産業の利用価値は高いものである。