(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177843
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20241217BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
G03G15/20 505
G03G21/00 538
G03G15/20 555
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096208
(22)【出願日】2023-06-12
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100182453
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 英明
(72)【発明者】
【氏名】塩寺 広太
(72)【発明者】
【氏名】醒井 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】安藤 貴之
【テーマコード(参考)】
2H033
2H270
【Fターム(参考)】
2H033AA42
2H033BA34
2H033BB00
2H033BB29
2H033BB30
2H033BE00
2H033BE03
2H033CA03
2H033CA07
2H033CA08
2H033CA26
2H033CA28
2H033CA32
2H270KA35
2H270KA72
2H270LA25
2H270LA70
2H270SA01
2H270SA03
2H270SC08
2H270ZC03
2H270ZC06
(57)【要約】
【課題】部品点数を増加させることなく、画像形成装置から発生する微粒子の量を低減する。
【解決手段】記録媒体Pに画像を定着させる定着装置20を備える画像形成装置において、定着装置20は、記録媒体Pを通過させるニップ部Nを形成する一対の回転体21,22と、一対の回転体21,22の少なくとも一方を加熱する加熱源2と、を有し、印刷時に1枚目の記録媒体Pが装置外に排出されてから3分以内に排出される記録媒体Pの画像情報に基づいて、1枚目の記録媒体Pが装置外に排出されてから3分以内における加熱源23の出力を、あらかじめ設定された基準値よりも低く設定する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に画像を定着させる定着装置を備える画像形成装置において、
前記定着装置は、
前記記録媒体を通過させるニップ部を形成する一対の回転体と、
前記一対の回転体の少なくとも一方を加熱する加熱源と、
を有し、
印刷時に1枚目の前記記録媒体が装置外に排出されてから3分以内に排出される前記記録媒体の画像情報に基づいて、1枚目の前記記録媒体が装置外に排出されてから3分以内における前記加熱源の出力を、あらかじめ設定された基準値よりも低く設定することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記画像情報は、前記記録媒体に形成される画像の画像面積率である請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記画像情報は、前記記録媒体に形成される画像のトナーの重ね合わせ率である請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記画像情報は、前記記録媒体の幅方向両端部から画像までの余白の幅である請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
印刷時に1枚目の前記記録媒体が装置外に排出されてから3分以内に排出される前記記録媒体の画像情報に基づいて、前記加熱源の加熱開始から1枚目の前記記録媒体が前記ニップ部へ供給されるまでの前記加熱源による前記定着装置の予熱時間及び予熱温度の少なくとも一方を制御する請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記一対の回転体のうち、一方が、前記記録媒体の未定着画像担持面側に配置される第一回転体であり、他方が、前記第一回転体の外周面に対向するように配置される第二回転体であって、
印刷時に1枚目の前記記録媒体が装置外に排出されてから3分以内に排出される前記記録媒体の画像情報に基づいて、前記加熱源の加熱開始から1枚目の前記記録媒体が前記ニップ部へ供給されるまでの前記加熱源による前記第二回転体の予熱時間及び予熱温度の少なくとも一方を制御する請求項1に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機又はプリンタなどの画像形成装置において、排気中に含まれる微粒子などの異物を除去する技術が知られている。
【0003】
近年、環境問題に対する意識の高まりから、製品から放出される微粒子の発生を抑制する対策が望まれており、電子写真プロセスを用いた複写機、複合機、プリンタなどの画像形成装置においても微粒子の発生が少ない製品の開発が求められている。特に、欧州においては、環境への関心が非常に高く、画像形成時に発生する揮発性有機化合物(VOC)、オゾン、ダスト、微粒子などに対する様々な認定基準が存在する。例えば、ドイツ政府の研究機関においては、「ブルーエンジェルマーク」というエコラベル制度があり、認証を受けた製品及びサービスにのみラベルの使用が認められる。「ブルーエンジェルマーク」の認証には、様々な試験をクリアする必要があるが、特に微粒子の試験が非常に厳しい。具体的には、画像形成装置から発生する5.6nm以上560nm以下の微粒子を粒子計測器FMPS(Fast Mobility Particle Sizer)で計測した際に得られる微粒子の数が、3.5×1011個/10分より少ないことが求められ、将来的にはさらに厳しい基準値になることが予想される。
【0004】
画像形成装置から発生する微粒子を除去する技術として、特許文献1(特開2016-85407号公報)においては、微粒子が急増する時間帯に、全てのフィルタを捕集可能な状態に切り替えて、微粒子を捕集する方法が提案されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、フィルタのほか、フィルタへ微粒子を案内するダクト及びファンなどが必要になるため、部品点数が多くなる課題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、部品点数を増加させることなく、画像形成装置から発生する微粒子の量を低減することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、記録媒体に画像を定着させる定着装置を備える画像形成装置において、前記定着装置は、前記記録媒体を通過させるニップ部を形成する一対の回転体と、前記一対の回転体の少なくとも一方を加熱する加熱源と、を有し、印刷時に1枚目の前記記録媒体が装置外に排出されてから3分以内に排出される前記記録媒体の画像情報に基づいて、1枚目の前記記録媒体が装置外に排出されてから3分以内における前記加熱源の出力を、あらかじめ設定された基準値よりも低く設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、部品点数を増加させることなく、画像形成装置から発生する微粒子の量を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第一実施形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
【
図2】本発明の第一実施形態に係る定着装置の概略構成図である。
【
図3】本発明の第一実施形態に係る定着装置の斜視図である。
【
図4】連続印刷を行った場合のトナーから発生するFP/UFPの発生速度を示す図である。
【
図5】連続印刷中のハロゲンヒータの通電デューティを示す図である。
【
図6】本発明の第一実施形態に係る制御部の構成を示すブロック図である。
【
図7】本発明の第一実施形態に係る通電デューティの制御方法を示すフローチャートである。
【
図9】画像面積率が大きい場合と小さい場合の一例を示す図である。
【
図10】トナーの重ね合わせ率が大きい場合と小さい場合の一例を示す図である。
【
図11】画像が端部ヒータの加熱領域内に形成されている例を示す図である。
【
図12】画像が中央ヒータの加熱領域と端部ヒータの加熱領域の両方にまたがって形成されている例を示す図である。
【
図13】画像が中央ヒータの加熱領域内に形成されている例を示す図である。
【
図15】本発明の第二実施形態に係る定着装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付の図面に基づき、本発明について説明する。なお、本発明を説明するための各図面において、同一の機能もしくは形状を有する部材及び構成部品などの構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付し、一度説明した後ではその説明を省略する。
【0011】
<画像形成装置の全体構成>
図1は、本発明の第一実施形態に係る画像形成装置の概略構成図である。ここで、本明細書中における「画像形成装置」には、プリンタ、複写機、ファクシミリ、印刷機、又は、これらのうちの二つ以上を組み合わせた複合機などが含まれる。なお、以下の説明における「印刷」は「画像形成」と同義語である。また、「画像形成」には、文字及び図形などの意味を持つ画像を形成する場合のほか、パターンなどの意味を持たない画像を形成する場合も含まれる。まず、
図1を参照して、本発明の第一実施形態に係る画像形成装置の全体構成及び動作について説明する。
【0012】
図1に示されるように、本発明の第一実施形態に係る画像形成装置1000は、画像形成部100と、定着部200と、記録媒体供給部300と、記録媒体排出部400を備えている。
【0013】
(画像形成部)
画像形成部100は、用紙などのシート状の記録媒体に画像を形成する部分である。画像形成部100には、4つの作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkと、露光装置6と、転写装置8が設けられている。
【0014】
各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkは、カラー画像の色分解成分に対応するイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックなどの異なる色のトナー(現像剤)を収容している以外、基本的に同じ構成である。具体的に、各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkは、静電潜像担持体2と、帯電部材3と、現像装置4と、クリーニング部材5などを備えている。
【0015】
静電潜像担持体2は、表面に静電潜像を担持する回転体である。静電潜像担持体2としては、
図1に示されるようなドラム状の感光体のほか、無端ベルト状の感光体などが用いられる。
【0016】
帯電部材3は、静電潜像担持体2の表面を帯電させる部材である。帯電部材3としては、静電潜像担持体2の表面に電圧を印加して一様に帯電させることができるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択可能である。具体的には、導電性又は半導電性の帯電ローラ、磁気ブラシ、ファーブラシ、フィルム、ゴムブレードなど接触式の帯電部材のほか、コロナ放電を利用した非接触式の帯電部材が挙げられる。
【0017】
現像装置4は、静電潜像担持体2の静電潜像に現像剤としてのトナーを供給してトナー画像を形成する装置である。現像装置4は、静電潜像担持体2に対して接触又は近接して配置されるトナー担持体などを備えている。トナー担持体が、表面にトナーを担持しながら回転することにより、トナー担持体から静電潜像担持体2へトナーが供給される。
【0018】
クリーニング部材5は、静電潜像担持体2上に残留するトナー及びその他の異物を除去する部材である。クリーニング部材5としては、例えば、静電潜像担持体2の表面に接触するように配置されるクリーニングブレードなどが用いられる。静電潜像担持体2が回転すると、静電潜像担持体2上の残留トナー及び異物がクリーニング部材5によって除去される。
【0019】
露光装置6は、静電潜像担持体2の帯電面を露光して静電潜像を形成する装置である。露光装置6としては、静電潜像担持体2の帯電面に対して露光できる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択可能である。具体的には、複写光学系、ロッドレンズアレイ系、レーザー光学系、液晶シャッタ光学系、LED光学系などの各種露光装置が挙げられる。
【0020】
転写装置8は、記録媒体に画像を転写する装置である。転写装置8は、中間転写ベルト11と、一次転写ローラ12と、二次転写ローラ13を備えている。中間転写ベルト11は、無端状のベルト部材であり、複数の支持ローラによって張架されている。一次転写ローラ12は、中間転写ベルト11の内側に4つ設けられている。各一次転写ローラ12が中間転写ベルト11を介して各静電潜像担持体2に接触することにより、中間転写ベルト11と各静電潜像担持体2との間に一次転写ニップが形成されている。二次転写ローラ13は、中間転写ベルト11の外周面に接触し、二次転写ニップを形成している。
【0021】
(定着部)
定着部200は、記録媒体に画像を定着させる部分である。定着部200には、画像を定着させる定着装置20が設けられている。定着装置20は、記録媒体を加熱及び加圧しながら搬送する一対の回転体19A,19Bなどを備えている。
【0022】
(記録媒体供給部)
記録媒体供給部300は、画像形成部100へ記録媒体を供給する部分である。記録媒体供給部300には、記録媒体としての用紙Pを収容する給紙カセット14と、給紙カセット14から画像形成部100へ用紙Pを供給する給紙ローラ15が設けられている。以下、「記録媒体」を「用紙」として説明するが、「記録媒体」は紙(用紙)に限定されない。「記録媒体」には、紙(用紙)だけでなくOHPシート又は布帛、金属シート、プラスチックフィルム、あるいは炭素繊維にあらかじめ樹脂を含浸させたプリプレグシートなども含まれる。また、「用紙」には、普通紙以外に、厚紙、はがき、封筒、薄紙、塗工紙(コート紙及びアート紙など)、トレーシングペーパなども含まれる。
【0023】
(記録媒体排出部)
記録媒体排出部400は、用紙P(記録媒体)を画像形成装置外に排出する部分である。記録媒体排出部400には、用紙Pを排出する一対の排紙ローラ17と、排出された用紙Pを載置する排紙トレイ18が設けられている。
【0024】
<画像形成動作>
次に、
図1を参照しつつ本実施形態に係る画像形成装置1000の画像形成動作について説明する。
【0025】
画像形成動作が開始されると、各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkの静電潜像担持体2及び転写装置8の中間転写ベルト11が回転を開始する。また、給紙ローラ15が、回転を開始し、給紙カセット14から用紙Pが送り出される。送り出された用紙Pは、一対のタイミングローラ16に接触することにより静止し、用紙Pに転写される画像が形成されるまで用紙Pの搬送が一旦停止される。
【0026】
各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkにおいては、まず、帯電部材3によって、静電潜像担持体2の表面が均一な高電位に帯電される。次いで、原稿読取装置によって読み取られた原稿の画像情報、あるいは端末からプリント指示されたプリント画像情報に基づいて、露光装置6が、各静電潜像担持体2の表面(帯電面)を露光する。これにより、露光された部分の電位が低下して各静電潜像担持体2の表面に静電潜像が形成される。そして、この静電潜像に対して現像装置4からトナーが供給されることにより、静電潜像がトナー画像として現像される。その後、各静電潜像担持体2上のトナー画像は、静電潜像担持体2の回転に伴って一次転写ニップ(一次転写ローラ12の位置)に到達し、回転する中間転写ベルト11上に順次重なり合うように転写される。かくして、中間転写ベルト11上にフルカラーのトナー画像が形成される。なお、画像形成は、4つの作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkを全て用いてフルカラー画像を形成する場合に限らず、各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkのうち、いずれか一つを使用して単色画像を形成したり、いずれか2つ又は3つの作像ユニットを用いて2色又は3色の画像を形成したりすることも可能である。また、トナー画像の転写後は、静電潜像担持体2の表面がクリーニング部材5によって清掃される。これにより、静電潜像担持体2上の残留トナーなどの異物が除去される。
【0027】
その後、中間転写ベルト11上のトナー画像は、中間転写ベルト11の回転に伴って二次転写ニップ(二次転写ローラ13の位置)へ搬送され、タイミングローラ16によって搬送されてきた用紙P上に転写される。そして、用紙Pは、定着装置20へと搬送され、一対の回転体19A,19Bによって加熱及び加圧される。これにより、用紙P上のトナー画像が用紙Pに定着される。そして、用紙Pは、排紙ローラ17によって装置外へ排出され、排紙トレイ18上に用紙Pが載置されることにより、一連の画像形成動作が終了する。
【0028】
<定着装置の基本構成>
続いて、本発明の第一実施形態に係る定着装置20の構成について説明する。
【0029】
図2に示されるように、本発明の第一実施形態に係る定着装置20は、一対の回転体19A,19Bのほか、ハロゲンヒータ23、ニップ形成部材24、支持部材25、反射部材26、遮蔽部材27、回転体保持部材28、温度センサ29を備えている。
【0030】
一対の回転体19A,19Bは、用紙Pの未定着画像担持面側(トナー画像T側)に配置される第一回転体19Aとしての定着ベルト21と、第一回転体19Aの外周面に対向するように配置される第二回転体19Bとしての加圧ローラ22により構成される。
【0031】
定着ベルト21は、無端状のベルトであり、内側から順に、基材、弾性層、離型層などを有する。基材は、例えば、層厚が30~50μmであって、ニッケル、ステンレスなどの金属材料、あるいはポリイミドなどの樹脂材料により形成される。弾性層は、層厚が100~300μmであって、シリコーンゴム、発泡性シリコーンゴム、フッ素ゴムなどのゴム材料により形成される。定着ベルト21が弾性層を有することにより、定着ベルト21の表面に微小な凹凸が形成されにくくなるため、用紙P上のトナー画像Tに熱が均一に伝わりやすくなる。離型層は、層厚が10~50μmであって、PFA(テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ポリイミド、ポリエーテルイミド、PES(ポリエーテルサルファイド)などの材料により構成される。定着ベルト21が、離型層を有することにより、用紙P上のトナー画像Tに対する離型性が確保される。また、小型化及び低熱容量化を図る場合は、定着ベルト21の全体の厚さが1mm以下で、直径が30mm以下であることが好ましい。
【0032】
加圧ローラ22は、円筒状又は円柱状の芯材と、芯材の外周面に設けられる弾性層と、弾性層の外周面に設けられる離型層などを有する。芯材は、例えば、鉄などの金属材料により形成される。弾性層の材料としては、シリコーンゴム、発泡性シリコーンゴム、フッ素ゴムなどが挙げられる。離型層は、例えば、PFA又はPTFEなどのフッ素樹脂により形成される。
【0033】
ハロゲンヒータ23は、赤外線(赤外光)を放射し、赤外線の輻射熱により対象物を加熱する輻射熱式の加熱源である。本実施形態においては、ハロゲンヒータ23が、定着ベルト21の内側に2つ配置されている。ハロゲンヒータ23から赤外線が放射されると、輻射熱により定着ベルト21が内側から加熱される。なお、加熱源として、ハロゲンヒータ以外に、カーボンヒータなどの他の輻射熱式のヒータを用いてもよい。また、定着ベルト21に金属層を設け、金属層を電磁誘導により発熱させる電磁誘導加熱(IH)方式の加熱源を用いることも可能である。また、加熱源の数は、2つに限らず、1つ又は3つ以上であってもよい。
【0034】
ニップ形成部材24は、定着ベルト21の内側に配置され、加圧ローラ22との間に定着ベルト21を挟んでニップ部Nを形成する部材である。ニップ形成部材24は、耐熱温度が200℃以上の耐熱性部材により構成されることが好ましい。ニップ形成部材24の材料として、例えば、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリアミドイミド(PAI)、又は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などの一般的な耐熱性樹脂が挙げられる。このような耐熱性材料を用いることにより、ニップ形成部材24の熱による変形を防止でき、ニップ部Nの形状を安定させることができる。なお、ニップ部Nの形状は、
図2に示されるような平面状のほか、曲面状、あるいはそれ以外の形状であってもよい。
【0035】
支持部材25は、ニップ形成部材24を支持する部材である。支持部材25が、ニップ形成部材24を加圧ローラ22側とは反対側から支持することにより、加圧ローラ22からの加圧力によるニップ形成部材24の撓みが抑制され、均一な幅のニップ部Nが形成される。支持部材25の材料としては、剛性を確保するため、SUS又はSECCなどの鉄系金属材料が好ましい。
【0036】
反射部材26は、ハロゲンヒータ23の輻射熱を定着ベルト21に向けて反射する部材である。反射部材26は、輻射熱を反射するため、定着ベルト21の内側でハロゲンヒータ23に対向するように配置されている。ハロゲンヒータ23の輻射熱が反射部材26によって定着ベルト21へ反射されると、反射された輻射熱により定着ベルト21が効果的に加熱される。また、本実施形態においては、反射部材26が、ハロゲンヒータ23と支持部材25との間に配置されているため、支持部材25への不要な輻射熱の付与も抑制され、省エネルギー化を図れる。
【0037】
遮蔽部材27は、ハロゲンヒータ23と定着ベルト21との間に介在し、ハロゲンヒータ23から定着ベルト21への輻射熱を遮蔽する部材である。遮蔽部材27は、例えば、定着ベルト21の内周面に倣って円弧状に形成された厚さ0.1mm~1.0mmの金属板により構成される。遮蔽部材27の材料としては、輻射熱を遮蔽できる材料であればよく、例えば、アルミニウム、鉄、ステンレスなどの金属材料、又はセラミックなどの耐熱性を有する材料が好ましい。なお、遮蔽部材27は、輻射熱を完全に遮蔽する場合のほか、輻射熱の一部を遮蔽する場合であってもよい。
【0038】
回転体保持部材28は、定着ベルト21を回転可能に保持する部材である。回転体保持部材28が定着ベルト21の内側に挿入されることにより、定着ベルト21の内周面が回転体保持部材28によって回転可能に支持される。
【0039】
温度センサ29は、定着ベルト21の温度を検知する温度検知部材である。本実施形態においては、温度検知部材として、定着ベルト21の外周面に対して非接触に配置される非接触式の温度センサが用いられている。なお、温度検知部材は、非接触式の温度センサのほか、定着ベルト21の表面に接触して表面温度を検知する接触式の温度センサであってもよい。
【0040】
図3は、本発明の第一実施形態に係る定着装置20の斜視図である。
【0041】
図3に示されるように、遮蔽部材27は、最大幅の用紙Pが通過する最大通紙領域(最大記録媒体通過領域)W1よりも外側の非通紙領域(非通過領域)W2に配置されている。
【0042】
ハロゲンヒータ23は、その特性上、発熱部の端部ほど発熱強度が低下する傾向にある。このため、ハロゲンヒータ23の発熱部が最大通紙領域W1と同じ範囲に配置されると、最大通紙領域W1の端部側において定着ベルト21の温度が低下する虞がある。そこで、従来においては、最大通紙領域W1内の発熱強度が一定となるように、発熱部の長さを最大通紙領域W1を超える長さまで延長し、最大通紙領域W1の端部側における温度低下を解消する対策が採られている。しかしながら、発熱部の長さを最大通紙領域W1を超える長さまで延長すると、非通紙領域W2において発熱部の端部から赤外線が照射されるため、連続通紙時に定着ベルト21の非通紙領域W2が過剰に温度上昇する虞がある。そのため、本実施形態においては、遮蔽部材27を非通紙領域W2に配置している。遮蔽部材27を非通紙領域W2配置することにより、非通紙領域W2における赤外線の照射が遮蔽されるため、連続通紙時の定着ベルト21の過剰な温度上昇を抑制できるようになる。一方、遮蔽部材27が配置されていない通紙領域W1においては、定着ベルト21が一定の発熱強度で良好に加熱される。
【0043】
また、
図3に示されるように、定着ベルト21は、その長手方向Xの両端部側に配置される一対の回転体保持部材28によって回転可能に保持される。なお、ここでいう「長手方向」とは、定着ベルト21の回転方向に対して直交し、かつ、定着ベルト21の外周面に沿った方向を意味する。すなわち、「長手方向」は、
図3中の矢印Xにて示される方向であり、加圧ローラ22の長手方向又は回転軸方向、あるいは、ニップ部Nを通過する用紙の幅方向(用紙搬送方向とは交差する方向)と同じ方向ある。
【0044】
回転体保持部材28は、断面C字状の保持部28aと、規制部28bと、固定部28cを有する。保持部28aは、定着ベルト21の端部内に挿入される部分である。保持部28aが定着ベルト21の内に挿入されることにより、定着ベルト21が保持部28aによって回転可能に保持される。規制部28bは、定着ベルト21の長手方向Xの寄りを規制する部分である。すなわち、定着ベルト21に長手方向Xの寄りが生じた場合は、定着ベルト21の端部が保持部28aよりも大径の規制部28bに突き当たることによって、定着ベルト21の長手方向Xの寄りが規制される。固定部28cは、定着装置20の側板などのフレーム部材に固定される部分である。固定部28cがフレーム部材に固定されることにより、定着ベルト21が回転体保持部材28を介して回転可能に保持される。
【0045】
本発明の第一実施形態に係る定着装置20は、次のように動作する。
【0046】
画像形成動作が開始されると、加圧ローラ22が
図2中の矢印方向へ回転を開始し、これに伴って定着ベルト21が従動回転する。また、ハロゲンヒータ23への通電が開始され、ハロゲンヒータ23から放射される赤外線によって定着ベルト21が加熱される。そして、定着ベルト21の温度が所定の目標温度になった状態において、未定着画像(トナー画像T)を担持する用紙Pが定着ベルト21と加圧ローラ22との間(ニップ部N)へ搬送され、用紙Pが加熱及び加圧される。これにより、未定着画像が用紙Pに定着される。その後、用紙Pは、装置外へ排出される。
【0047】
<微粒子発生のメカニズム>
ここで、画像形成装置における微粒子発生のメカニズムについて説明する。なお、本明細書中の「微粒子」とは、ブルーエンジェルの微粒子基準に準拠した装置及び条件により測定される微粒子及び超微粒子であって、粒径が5.6nm以上560nm以下の粒子を意味する。以下、「微粒子」を「FP/UFP」と称する。
【0048】
FP/UFPの発生要因として、トナーに含有されるワックスがある。トナー画像が転写された用紙が定着装置へ搬送されると、用紙及びトナー画像が定着装置において加熱及び加圧されることによりトナー画像が用紙に定着される。このとき、トナーが加熱され、トナー中のワックスが温度上昇して揮発すると、その後、ワックスが冷えて固体となることによりFP/UFPが生成される。
【0049】
<連続印刷中のFP/UFPの発生量>
図4に、連続印刷を行った場合のトナーから発生するFP/UFPの発生速度を示す。
図4において、横軸は1枚目の用紙が画像形成装置外に排出されてからの経過時間を示し、縦軸は時間ごとのFP/UFPの発生速度(1秒あたりの発生個数)を示す。
【0050】
図4に示されるFP/UFP発生速度の測定試験においては、画像形成装置をブルーエンジェルDE-UZ219に準拠する試験室に配置し、ブルーエンジェルDE-UZ219に準拠した方法により約9分間、連続印刷を行った。そして、連続印刷中のFP/UFPの発生速度を、高速応答型パーティクルサイザーFMPS(Fast Mobility Particle Sizer)を用いて測定した。
【0051】
また、測定されるFP/UFPを、トナーから生じるFP/UFPのみに限定するため、トナー以外のFP/UFP発生要因を除外した。FP/UFPは、トナーのほか、定着ベルトの摺動性を向上させるなど目的で使用される液状又は半固体状の潤滑剤からも発生する。このため、本試験においては、定着装置に潤滑剤を使用しないようにした。
【0052】
図4に示される試験結果では、FP/UFPの発生速度が、1枚目の用紙が排出されてから3分経過までの間に急激に速くなり、3分経過以降は次第に遅くなった。このことから、FP/UFPは、特に印刷開始から3分までの間に多く発生することが分かった。
【0053】
<ハロゲンヒータの通電デューティとFP/UFPの発生量との関係>
図5に、連続印刷中のハロゲンヒータの通電デューティを示す。
【0054】
定着装置が備えるハロゲンヒータの出力は、ハロゲンヒータに供給される電力の通電デューティを制御することにより決定される。「通電デューティ」とは、単位時間あたりの通電時間の割合である。通電デューティは、通常、定着ベルトの温度情報に基づいて制御される。例えば、定着ベルトの温度が目標温度に対して大幅に低いときは、通電デューティを大きくすることにより、ハロゲンヒータの出力を増大させ、定着ベルトへ付与される熱量を多くする。反対に、定着ベルトの温度が目標温度に近い時は、通電デューティを小さくすることにより、ハロゲンヒータの出力を減少させ、定着ベルトの温度が目標温度を大きく超えないように制御される。
【0055】
図5に示されるように、1枚目の用紙が画像形成装置外に排出されてから60秒経過するまでにおいては、通電デューティが比較的大きい値となり、その後、通電デューティは次第に小さくなっている。そして、1枚目の用紙排出から240秒経過以降は、通電デューティが比較的小さい値で安定した。このように、印刷開始後の初期段階において通電デューティが大きくなり、その後、通電デューティが小さくなったのは、次のような制御が行われたことによる。
【0056】
ウォームアップ動作が完了し、印刷が開始された直後は、定着ベルトが所定の目標温度に達しているものの加圧ローラはそれほど蓄熱されていない。このため、印刷が開始されると、通紙に伴って定着ベルトの温度が低下する傾向にある。そのため、1枚目の用紙が排出されてから60秒経過までにおいては、定着ベルトの温度が急激に低下しないように、通電デューティが大きい値に制御され、定着ベルトに対して多くの熱量が付与される制御が行われる。
【0057】
これに対して、印刷開始から一定時間が経過すると、加圧ローラの蓄熱量が増えるため、通紙に伴って消費される定着ベルトの熱を加熱ローラの熱により補填することができるようになる。従って、1枚目の用紙が排出されてから240秒経過後は、通電デューティを大きくしなくても、通紙に伴う定着ベルトの温度低下を抑制でき、比較的小さい通電デューティでも定着ベルトの温度を所定の温度に維持できるようになる。
【0058】
上記の通り、印刷開始後の初期段階においては、ハロゲンヒータの通電デューティが大きくなる傾向にあるため、加熱される未定着トナーの温度も高くなる傾向にある。その結果、
図4に示されるように、1枚目の用紙が排出されてから3分経過までの間においては、トナーから発生するFP/UFPが多くなったものと考えられる。一方、1枚目の用紙が排出されてから3分経過以降は、加圧ローラがある程度蓄熱された状態となるため、比較的小さい通電デューティでも定着ベルトの温度を目標温度に維持できるようになり、未定着トナーの加熱温度も抑えられ、FP/UFPの発生が抑制されたものと考えられる。
【0059】
従って、本試験結果から、画像形成に伴って発生するFP/UFPを少なくするには、特に印刷開始後の初期段階におけるFP/UFPの発生量を少なくすることが有効であるといえる。そこで、本発明の第一実施形態においては、印刷開始後の初期段階におけるFP/UFPの発生を抑制すべく、次のようにハロゲンヒータの通電デューティを制御するようにしている。以下、本発明の第一実施形態において、ハロゲンヒータの通電デューティを制御する制御部の構成、及び、通電デューティの制御について説明する。
【0060】
<制御部の構成>
図6は、本発明の第一実施形態に係る制御部の構成を示すブロック図である。
【0061】
図6に示されるように、制御部600は、CPU(Central Processing Unit)61と、ROM(Read Only Memory)62と、RAM(Random Access Memory)63と、外部機器接続I/F64と、ネットワークI/F65と、画像情報取得部66とを有している。
【0062】
CPU61は、ハロゲンヒータの通電デューティのほか画像形成装置の全体動作を制御する。すなわち、CPU61は、画像形成部100、定着部200、記録媒体供給部300及び記録媒体排出部400などの各種動作を制御する。ROM62は、IPLなどのCPUの駆動に用いられるプログラムなどを記憶する。RAM63は、CPU61のワークエリアとして使用される。
【0063】
外部機器接続I/F64は、USB(Universal Serial Bus)ケーブルなどにより、PC(Personal Computer)に接続され、PCとの間で制御信号及び印刷用の画像情報の通信を行う。ネットワークI/F65は、インターネットなどの通信ネットワークを利用してデータ通信をするためのインターフェースである。画像情報取得部66は、外部機器接続I/F64を介して印刷用の画像情報を取得し、記憶する。
【0064】
<通電デューティの制御>
続いて、
図7を参照しつつ、本発明の第一実施形態に係る通電デューティの制御について説明する。
【0065】
印刷動作が開始されると、まず、画像情報取得部66が、取得した画像情報のうち、印刷時に1枚目の用紙が画像形成装置外に排出されてから3分以内に排出される用紙の画像情報をCPU61へ送る。そして、CPU61は、1枚目の用紙排出から3分以内に排出される用紙の画像情報に基づき、1枚目の用紙排出から3分以内のハロゲンヒータの通電デューティを制御する(
図7のStep1)。
【0066】
1枚目の用紙排出から3分以内は、加圧ローラなどが十分に蓄熱されていない。このため、多くの定着熱量を必要とする画像が形成されると、ハロゲンヒータの通電デューティが大きくなり、FP/UFPが発生する虞がある。そのため、CPU61が画像情報に基づいて多くの定着熱量を必要とするか否かを判断し、1枚目の用紙排出から3分以内の通電デューティがあらかじめ設定された基準値以上になりそうな場合は、通電デューティを基準値よりも低い値に設定する。なお、ここでいう「基準値」とは、通電デューティが定着ベルトの温度情報に基づいて決定される通常の制御において、トナー中のワックスが揮発する虞がある通電デューティの値である。また、以下の説明における「基準値」も同じ意味である。すなわち、通電デューティがあらかじめ設定された基準値以上になりそうな場合は、通電デューティを基準値よりも低くし、トナー中のワックスが揮発しないような値に設定する。一方、1枚目の用紙排出から3分以内の通電デューティが基準値未満になると予想される場合は、温度センサによる定着ベルトの検知温度に基づいて通電デューティが決定される。
【0067】
その後、1枚目の用紙排出から3分が経過した場合(
図7のStep2で「YES」の場合)は、ハロゲンヒータの通電デューティの制御を、画像情報に基づく制御から、定着ベルトの温度情報に基づく通常の制御へ変更する。すなわち、CPU61が、画像情報取得部66から送られた画像情報ではなく、温度センサによって検知される定着ベルトの温度情報に基づいてハロゲンヒータの通電デューティを制御する(
図7のStep3)。以降、同じように、定着ベルトの温度情報に基づく通常の制御が行われる。そして、全ての用紙に対する印刷が終了すると(
図7のStep4で「YES」の場合)、通電デューティの制御も終了する。
【0068】
以上のように、本発明の第一実施形態においては、1枚目の用紙排出から3分以内に排出される用紙の画像情報に基づき、1枚目の用紙排出から3分以内のハロゲンヒータの通電デューティを制御することにより、印刷開始後の初期段階におけるFP/UFPの発生量を少なくすることができる。すなわち、1枚目の用紙排出から3分以内に排出される用紙の画像情報の中に通電デューティが大きくなるような画像が含まれる場合は、通電デューティを基準値よりも低い値に設定することにより、ニップ部の温度がトナー中のワックスの揮発温度よりも高くならないようにすることができる。これにより、印刷開始後の初期段階において、トナー中のワックスが揮発するのを防止でき、画像形成装置から発生するFP/UFPの量を低減できるようになる。
【0069】
また、本発明の第一実施形態に係る制御によれば、通電デューティを制御するだけでFP/UFPの発生を抑制することができる。すなわち、FP/UFPを捕集するフィルタなどの部品を追加することなく、画像形成装置から発生するFP/UFPの量を減少させることができるので、部品点数を少なくでき、低コスト化を図れるようになる。
【0070】
1枚目の用紙排出から3分以内に排出される用紙の画像情報の中に、通電デューティが大きくなるような画像が含まれるか否かは、必ずしも1枚目の用紙排出から3分以内に排出される全ての用紙の画像情報に基づいて判断されなくてもよい。例えば、任意に選択された5枚の用紙の画像情報の中に、通電デューティが基準値以上になると予想される画像が3枚以上含まれる場合、通電デューティを基準値よりも低い値に設定するようにしてもよい。なお、任意に選択される用紙の枚数、及び、通電デューティを決定する判断基準となる画像の枚数は、適宜変更可能である。
【0071】
続いて、画像情報に基づく通電デューティの制御の具体例について説明する。
【0072】
<画像面積率に基づく制御>
定着ベルトの温度情報に基づいて通電デューティの制御を行う場合、ニップ部を通過する用紙の画像面積率が異なると、通電デューティも変化する。ここでいう「画像面積率」は、用紙上の画像形成可能な面積のうち、実際に画像が形成される部分の面積の割合である。例えば、用紙に対して画像を余白無く形成可能な仕様においては、
図8の(a)に示されるように、用紙Pの片面全体の半分の面積にトナーTが付着する場合、50%の画像面積率となる。一方、全面印刷しても余白が生じる仕様においては、
図8の(b)に示されるように、用紙の余白部分を除いた点線部分のうち半分の面積にトナーTが付着する場合、50%の画像面積率となる。
【0073】
図9の(a)に示されるような画像面積率が大きい画像は、
図9の(b)に示されるような画像面積率が小さい画像に比べて、画像の定着に必要な熱量が多くなる。このため、定着ベルトの温度情報に基づく通常の制御の場合、特に印刷開始後の初期段階に画像面積率の大きい画像が含まれていると、ハロゲンヒータの通電デューティが大きくなり、FP/UFPが発生する虞がある。そのため、1枚目の用紙排出から3分以内に排出される用紙の画像の中に、あらかじめ設定された画像面積率よりも大きい画像面積率の画像が所定枚数以上含まれる場合は、通電デューティを基準値よりも低い値に設定する。これにより、印刷開始後の初期段階におけるFP/UFPの発生量を低減できるようになる。なお、画像面積率は、画像情報取得部66によって取得される画像情報の1つである。従って、画像情報取得部66から送られる画像面積率の情報に基づいて、CPU61が1枚目の用紙排出から3分以内のハロゲンヒータの通電デューティを制御する。
【0074】
<トナーの重ね合わせ率に基づく制御>
また、通電デューティに影響する画像情報として、トナーの重ね合わせ率がある。ここでいう「トナーの重ね合わせ率」は、用紙の指定領域内において最も多くのトナー同士が重なり合う部分の重ね合わせ率を意味する。例えば、指定領域内に、トナーの重ね合わせ率が100%の黒単色文字と、トナーの重ね合わせ率が200%の青色文字が含まれる場合は、青色文字の200%が指定領域におけるトナーの重ね合わせ率となる。トナーの重ね合わせ率は、画像情報取得部66によって取得される画像情報から算出することができる。イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックなどの4色のトナーを用いる場合、トナーの重ね合わせ率の最大値は400%になる。
【0075】
図10の(a)に示されるようなトナーTの重ね合わせ率が大きい画像(例えば青色画像90L)は、
図10の(b)に示されるようなトナーTの重ね合わせ率が小さい画像(例えば黒単色画像90K)に比べて、単位面積当たりのトナー量が多くなるため、定着に必要な熱量も多くなる。このため、定着ベルトの温度情報に基づく通常の制御の場合、特に印刷開始後の初期段階において、トナーの重ね合わせ率の大きい画像が含まれていると、ハロゲンヒータの通電デューティが大きくなり、FP/UFPが発生する虞がある。そのため、1枚目の用紙排出から3分以内に排出される用紙の画像の中に、あらかじめ設定されたトナーの重ね合わせ率よりも大きい重ね合わせ率の画像が所定枚数以上含まれる場合は、CPU61が1枚目の用紙排出から3分以内のハロゲンヒータの通電デューティを基準値よりも低い値に設定する。これにより、印刷開始後の初期段階におけるFP/UFPの発生量を低減できるようになる。
【0076】
また、トナーの重ね合わせ率のほか、画像面積率を加味して、通電デューティを制御してもよい。すなわち、画像のトナーの重ね合わせ率と画像面積率との両方に基づいて判断し、FP/UFPの発生の虞がある場合は、通電デューティを基準値よりも低くなるように設定してもよい。
【0077】
<余白の大きさに基づく制御>
図11は、用紙Pの搬送方向Aとは直交する幅方向Bの両端側にトナー画像90が形成されている場合の例を示す。ここで、定着装置が備える2つのハロゲンヒータ23は、定着ベルト21の長手方向中央部を加熱する中央加熱源としての中央ヒータ23Aと、定着ベルト21の長手方向両端部側を加熱する端部加熱源としての端部ヒータ23Bとにより構成される。
【0078】
中央ヒータ23Aは、用紙Pの幅方向中央部を含む中央部側の範囲に配置される発熱部231を有する。一方、端部ヒータ23Bは、中央ヒータ23Aの発熱部231よりも用紙Pの幅方向両端部側に配置される2つの発熱部232を有する。
【0079】
図11の例においては、画像90が端部ヒータ23Bの加熱領域H2内に形成されるため、端部ヒータ23Bを発熱させることにより、画像90を加熱して定着させることができる。このとき、端部ヒータ23Bの発熱が、印刷開始後の1枚目の用紙排出から3分以内に行われる場合は、端部ヒータ23Bの通電デューティを基準値よりも低い値に設定することにより、FP/UFPの発生量を低減できる。
【0080】
なお、
図11の例において、中央ヒータ23Aの加熱領域H1には画像が形成されていないが、端部ヒータ23Bを発熱させる際、併せて中央ヒータ23Aを発熱させてもよい。ただし、中央ヒータ23Aの発熱によるFP/UFPの発生の虞は無いので、中央ヒータ23Aの通電デューティは、定着ベルトの温度情報に基づく通常の制御によって決定される。
【0081】
次に、
図12の例のように、画像90が中央ヒータ23Aの加熱領域H1と端部ヒータ23Bの加熱領域H2の両方にまたがって形成される場合は、中央ヒータ23Aと端部ヒータ23Bの両方を発熱させることにより、画像90を加熱できる。このとき、中央ヒータ23A及び端部ヒータ23Bの発熱が、1枚目の用紙排出から3分以内に行われる場合は、中央ヒータ23A及び端部ヒータ23Bのそれぞれの通電デューティを基準値よりも低い値に設定することにより、FP/UFPの発生量を低減できる。
【0082】
また、
図13の例のように、画像90が中央ヒータ23Aの加熱領域H1のみに形成される場合は、中央ヒータ23Aのみを発熱させることにより、画像90を加熱できる。なお、端部ヒータ23Bは発熱させなくてもよい。このとき、中央ヒータ23Aの発熱が、1枚目の用紙排出から3分以内に行われる場合は、中央ヒータ23Aの通電デューティを基準値よりも低い値に設定することにより、FP/UFPの発生量を低減できる。
【0083】
このように、画像90が形成される位置に応じて発熱させるヒータが異なる場合は、主に画像90を加熱するヒータの通電デューティを低くすることにより、FP/UFPの発生量を低減することが可能である。
【0084】
また、画像90が形成される位置は、
図14に示される用紙Pの幅方向両端部から画像90までの余白の幅d1,d2により把握できる。また、余白の幅d1,d2は、画像情報取得部66によって取得される画像情報から得ることが可能である。従って、余白の幅d1,d2から、用紙P上の画像90の位置を把握し、画像90の位置に基づいてCPU61が当該画像90を加熱するヒータの通電デューティを制御すればよい。
【0085】
また、通電デューティは、画像の位置のほか、トナーの重ね合わせ率を加味して制御されてもよい。例えば、下記表1のように通電デューティを設定してもよい。
【0086】
【0087】
表1においては、中央ヒータ23A及び端部ヒータ23Bの通電デューティの低減レベルを、画像の位置とトナーの重ね合わせ率とに基づいて、各ヒータ23A,23Bの加熱領域H1,H2ごとに個別に設定している。具体的に、中央ヒータ23Aの加熱領域H1におけるトナーの重ね合わせ率が150%である場合、中央ヒータ23Aの通電デューティの低減レベルを「レベル1」に設定し、トナーの重ね合わせ率が大きくなるにつれて通電デューティの低減レベルを「レベル2」、「レベル3」に上げ、通電デューティを大きく下げるようにしている。すなわち、定着ベルトの温度情報に基づく通常の制御では、トナーの重ね合わせ率が大きいほど通電デューティは大きくなるので、基準値に対する低減幅を大きくして、ニップ部の温度がトナー中のワックスの揮発温度よりも高くならないようにしている。また、端部ヒータ23Bについても、中央ヒータ23Aと同じように、加熱領域H2におけるトナーの重ね合わせ率が大きいほど、通電デューティの低減幅を大きくしている。また、この例においては、トナーの重ね合わせ率が同じであっても、端部ヒータ23Bの通電デューティの低減レベルを中央ヒータ23Aに比べて高く設定し、用紙の幅方向中央よりも温度上昇しやすい両端部側におけるFP/UFPの発生を効果的に抑制できるようにしている。
【0088】
このように、通電デューティを、余白情報から得られる画像の位置のほか、トナーの重ね合わせ率を加味して制御することにより、画像形成装置から発生するFP/UFPの量をより効果的に低減できるようになる。
【0089】
また、通電デューティを、画像の位置とトナーの重ね合わせ率に基づいて制御する場合に限らず、画像の位置と各加熱領域H1,H2における画像面積率に基づいて制御してもよい。さらに、画像の位置と画像面積率に加え、トナーの重ね合わせ率を考慮して、通電デューティを制御してもよい。
【0090】
<予熱制御>
ところで、1枚目の用紙排出から3分以内のハロゲンヒータの出力を低減する制御が行われる場合、FP/UFPの発生を抑制できる一方で、画像の定着性が低下する可能性がある。そのため、1枚目の用紙排出から3分以内のハロゲンヒータの出力を低減する必要があると判断された場合は、あらかじめ定着装置の蓄熱量を多くしておくことが好ましい。そのために、定着装置又は加圧ローラなどの構成部材の予熱時間及び予熱温度の少なくとも一方を制御することが好ましい。ここでいう「予熱時間」及び「予熱温度」は、ハロゲンヒータの加熱が開始されてから1枚目の用紙が定着装置のニップ部へ供給されるまでのハロゲンヒータによる定着装置又は構成部材の加熱時間及び加熱温度である。
【0091】
1枚目の用紙排出から3分以内のハロゲンヒータの出力を低減する制御が行われる場合は、出力を低減しない場合に比べて予熱時間を長くすることにより、定着装置又は加圧ローラなど構成部材の蓄熱量を多くすることができる。また、予熱温度を高くすることによっても、蓄熱量を多くすることができる。
【0092】
このように、予熱時間を長くしたり、予熱温度を高くしたりすることにより、定着装置又は加圧ローラなどの各構成部材の蓄熱量を多くすることができるので、定着ベルトの熱量不足を補填できるようになる。これにより、ハロゲンヒータの出力低減に伴う定着性の低下を抑制でき、良好な定着性が得られるようになる。
【0093】
以上、本発明の第一実施形態について説明した。
【0094】
上述のように、本発明の第一実施形態においては、1枚目の用紙排出から3分以内に排出される用紙の画像情報(画像面積率、トナーの重ね合わせ率、余白の幅など)に基づき、1枚目の用紙排出から3分以内のハロゲンヒータの出力(通電デューティ)を制御することにより、印刷開始後の初期段階におけるFP/UFPの発生量を少なくすることができるので、環境に配慮した画像形成装置を提供できるようになる。しかも、FP/UFPを捕集するフィルタなどの部品を追加することなく、FP/UFPの量を減少させることができるので、部品点数を少なくでき、低コスト化も図れるようになる。
【0095】
本発明に係る制御が適用される印刷動作は、印刷が1枚目の用紙排出から3分以上継続される場合のほか、印刷が1枚目の用紙排出から3分以内に終了する場合にも適用可能である。印刷が3分以内に終了する場合であっても本発明に係る制御を適用することにより、FP/UFPが多く発生する傾向にある初期段階におけるFP/UFPの発生量を低減することができる。
【0096】
また、本発明に係る制御が適用される印刷動作には、画像形成装置の電源投入後に開始される印刷動作のほか、電源投入後、定着装置が待機状態に移行してから開始される印刷動作なども含まれる。すなわち、本発明に係る制御は、定着装置への通紙が無く、ハロゲンヒータの発熱も行われていない状態から、ハロゲンヒータの発熱が開始されて印刷動作が開始される場合に適用される。
【0097】
また、本発明に係る画像形成装置が備える定着装置は、
図2に示される定着装置20に限らない。本発明は、例えば次のような定着装置を備える画像形成装置にも適用可能である。
【0098】
図15に、本発明の第二実施形態に係る定着装置の構成を示す。
【0099】
図15に示される定着装置30は、用紙Pの未定着画像担持面側(トナー画像T側)に配置される第一回転体19Aとして、定着ローラ31を備えている。定着ローラ31は、第二回転体19Bとしての加圧ローラ32と接触し、ニップ部Nを形成する。定着ローラ31は、例えば、円筒状の芯材と、芯材の外周面に設けられる弾性層と、弾性層を被覆する離型層を有する。定着ローラ31の芯材の内側には、ハロゲンヒータ33が配置されている。これにより、ハロゲンヒータ33から赤外線が放射されると、輻射熱により定着ローラ31が内側から加熱される。また、ハロゲンヒータ33の出力は、温度センサ34によって検知される定着ローラ31の温度などに基づいて制御される。
【0100】
このような定着ローラ31を備える定着装置30においても、印刷開始後の初期段階においてハロゲンヒータ33の通電デューティが大きくなると、ニップ部Nにおいて加熱されるトナー中のワックスが揮発し、FP/UFPが発生する虞がある。そのため、本発明を適用し、印刷開始後の初期段階においてFP/UFPが発生する虞がある場合は、画像情報に基づいて1枚目の用紙排出から3分以内のハロゲンヒータ33の通電デューティを低減することにより、発生するFP/UFPの量を低減できるようになる。
【0101】
また、本発明の態様をまとめると、本発明には、少なくとも下記の態様が含まれる。
【0102】
[第1の態様]
第1の態様は、記録媒体に画像を定着させる定着装置を備える画像形成装置において、前記定着装置は、前記記録媒体を通過させるニップ部を形成する一対の回転体と、前記一対の回転体の少なくとも一方を加熱する加熱源と、を有し、印刷時に1枚目の前記記録媒体が装置外に排出されてから3分以内に排出される前記記録媒体の画像情報に基づいて、1枚目の前記記録媒体が装置外に排出されてから3分以内における前記加熱源の出力を、あらかじめ設定された基準値よりも低く設定する画像形成装置である。
【0103】
[第2の態様]
第2の態様は、第1の態様において、前記画像情報は、前記記録媒体に形成される画像の画像面積率である画像形成装置である。
【0104】
[第3の態様]
第3の態様は、第1又は第2の態様において、前記画像情報は、前記記録媒体に形成される画像のトナーの重ね合わせ率である画像形成装置である。
【0105】
[第4の態様]
第4の態様は、第1から第3のいずれか1つの態様において、前記画像情報は、前記記録媒体の幅方向両端部から画像までの余白の幅である画像形成装置である。
【0106】
[第5の態様]
第5の態様は、第1から第4のいずれか1つの態様において、印刷時に1枚目の前記記録媒体が装置外に排出されてから3分以内に排出される前記記録媒体の画像情報に基づいて、前記加熱源の加熱開始から1枚目の前記記録媒体が前記ニップ部へ供給されるまでの前記加熱源による前記定着装置の予熱時間及び予熱温度の少なくとも一方を制御する画像形成装置である。
【0107】
[第6の態様]
第6の態様は、第1から第4のいずれか1つの態様において、前記一対の回転体のうち、一方が、前記記録媒体の未定着画像担持面側に配置される第一回転体であり、他方が、前記第一回転体の外周面に対向するように配置される第二回転体であって、印刷時に1枚目の前記記録媒体が装置外に排出されてから3分以内に排出される前記記録媒体の画像情報に基づいて、前記加熱源の加熱開始から1枚目の前記記録媒体が前記ニップ部へ供給されるまでの前記加熱源による前記第二回転体の予熱時間及び予熱温度の少なくとも一方を制御する画像形成装置である。
【符号の説明】
【0108】
20 定着装置
19A 回転体(第一回転体)
19B 回転体(第二回転体)
21 定着ベルト(第一回転体)
22 加圧ローラ(第二回転体)
23 ハロゲンヒータ(加熱源)
1000 画像形成装置
N ニップ部
P 用紙(記録媒体)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0109】