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特開2024-177931情報処理装置、ガラス板製造装置、情報処理方法及びガラス板製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177931
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】情報処理装置、ガラス板製造装置、情報処理方法及びガラス板製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 18/02 20060101AFI20241217BHJP
   C03B 17/06 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
C03B18/02
C03B17/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096346
(22)【出願日】2023-06-12
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大村 義豊
(57)【要約】
【課題】製造後のガラス板の板厚が一定範囲から外れそうなときに素早く温度調整等を行うことで、製造後のガラス板の板厚の品質維持を実現できる情報処理装置を提供する。
【解決手段】所定の流れ方向に流されながら製造されるガラス板について、前記ガラス板の製造時における製造条件の情報を機械学習の学習済みモデルに入力し、前記学習済みモデルからの出力結果を前記ガラス板の板厚の推定結果に関する情報として取得する判定部を備える、情報処理装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の流れ方向に流されながら製造されるガラス板について、前記ガラス板の製造時における製造条件の情報を機械学習の学習済みモデルに入力し、前記学習済みモデルからの出力結果を前記ガラス板の板厚の推定結果に関する情報として取得する判定部を備える、
情報処理装置。
【請求項2】
前記学習済みモデルに入力される前記製造条件の情報は、前記ガラス板の製造時における前記ガラス板の板厚の情報を含む、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記ガラス板の製造時における前記ガラス板の前記板厚の情報は、前記ガラス板の製造時における前記板厚の時系列情報を含む、
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
所定の流れ方向に流されながら製造されるガラス板について、前記ガラス板の製造時における製造条件の情報を機械学習の学習済みモデルに入力し、前記学習済みモデルからの出力結果を前記ガラス板の板厚の推定結果に関する情報として取得する判定部を備える、情報処理装置と、
前記判定部による前記推定結果に基づいて前記製造条件を調整する調整部と、を備える、
ガラス板製造装置。
【請求項5】
判定部が、所定の流れ方向に流されながら製造されるガラス板について、前記ガラス板の製造時における製造条件の情報を機械学習の学習済みモデルに入力し、前記学習済みモデルからの出力結果を前記ガラス板の板厚の推定結果に関する情報として取得する、
情報処理方法。
【請求項6】
判定部が、所定の流れ方向に流されながら製造されるガラス板について、前記ガラス板の製造時における製造条件の情報を機械学習の学習済みモデルに入力し、前記学習済みモデルからの出力結果を前記ガラス板の板厚の推定結果に関する情報として取得し、
調整部が、前記判定部による前記推定結果に基づいて前記製造条件を調整する、
ガラス板製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報処理装置、ガラス板製造装置、情報処理方法及びガラス板製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フロート法等によってガラス板の製造が行われている(例えば、特許文献1参照。)。
ガラス板の製造では、製造後のガラス板の板厚を一定範囲に維持することは、重要な品質管理となる。
【0003】
従来では、ガラス板製造装置の下流においてガラス板の板厚を常時監視し、当該板厚に基づいてフロートバス内の温度等を調整することで、当該板厚を一定範囲に維持することが図られていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-98161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の技術では、ガラス板製造装置の下流においてガラス板の温度が低下した状態で当該ガラス板の板厚の監視が行われ、それよりも上流のフロートバス内の温度等を調整することが行われていたため、これらの間で時間差(例えば、30分など)が大きかった。従来の技術では、このような時間差のため、例えば、何らかの理由で温度調整等が不完全であった場合に、その是正が大きく遅延してしまう場合があり、歩留まりの低下が長く続いてしまう事態が発生する場合があった。
また、フロート法に限られず、フュージョン法等においても、同様な課題が存在する。
【0006】
本開示は、このような事情を考慮してなされたもので、製造後のガラス板の板厚が一定範囲から外れそうなときに素早く温度調整等を行うことで、製造後のガラス板の板厚の品質維持を実現できる情報処理装置、ガラス板製造装置、情報処理方法及びガラス板製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様は、所定の流れ方向に流されながら製造されるガラス板について、前記ガラス板の製造時における製造条件の情報を機械学習の学習済みモデルに入力し、前記学習済みモデルからの出力結果を前記ガラス板の板厚の推定結果に関する情報として取得する判定部を備える、情報処理装置である。
【0008】
一態様は、所定の流れ方向に流されながら製造されるガラス板について、前記ガラス板の製造時における製造条件の情報を機械学習の学習済みモデルに入力し、前記学習済みモデルからの出力結果を前記ガラス板の板厚の推定結果に関する情報として取得する判定部を備える、情報処理装置と、前記判定部による前記推定結果に基づいて前記製造条件を調整する調整部と、を備える、ガラス板製造装置である。
【0009】
一態様は、判定部が、所定の流れ方向に流されながら製造されるガラス板について、前記ガラス板の製造時における製造条件の情報を機械学習の学習済みモデルに入力し、前記学習済みモデルからの出力結果を前記ガラス板の板厚の推定結果に関する情報として取得する、情報処理方法である。
【0010】
一態様は、判定部が、所定の流れ方向に流されながら製造されるガラス板について、前記ガラス板の製造時における製造条件の情報を機械学習の学習済みモデルに入力し、前記学習済みモデルからの出力結果を前記ガラス板の板厚の推定結果に関する情報として取得し、調整部が、前記判定部による前記推定結果に基づいて前記製造条件を調整する、ガラス板製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本開示に係る情報処理装置、情報処理装置、ガラス板製造装置、情報処理方法及びガラス板製造方法によれば、製造後のガラス板の板厚が一定範囲から外れそうなときに素早く温度調整等を行うことで、製造後のガラス板の板厚の品質維持を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態に係るガラス板製造装置の概略的な構成例を示す図である。
図2】実施形態に係る情報処理装置の構成例を示す図である。
図3】実施形態に係る学習済みモデルの入出力情報の一例を示す図である。
図4】実施形態に係る製造条件の例を示す図である。
図5】実施形態に係るガラス板の様子の一例を示す図である。
図6】実施形態に係るガラス板の幅方向の板厚の特性の一例を示す図である。
図7A】実施形態に係るガラス板の板厚の時間変化の特性の一例を示す図である。
図7B】実施形態に係るガラス板の板厚の時間変化の特性の一例を示す図である。
図7C】実施形態に係るガラス板の板厚の時間変化の特性の一例を示す図である。
図7D】実施形態に係るガラス板の板厚の時間変化の特性の一例を示す図である。
図7E】実施形態に係るガラス板の板厚の時間変化の特性の一例を示す図である。
図8】実施形態に係るガラス板製造装置において行われる処理の手順の一例を示す図である。
図9】実施形態に係る学習済みモデルの入出力情報の他の例を示す図である。
図10】フロート方式のガラス板製造装置の部分を示す断面図である。
図11】フロートバスを示す平面図である。
図12】フロートバスを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照し、本開示の実施形態について説明する。
なお、以下の実施形態での説明における各種の情報は、データなどと呼ばれてもよい。
【0014】
[ガラス板製造装置]
図1は、実施形態に係るガラス板製造装置1の概略的な構成例を示す図である。
図1には、説明の便宜上、三次元直交座標系であるXYZ直交座標系を示してある。
本実施形態では、Z軸の正方向が上方向を表し、Z軸の負方向が下方向を表す。また、XY平面が、上下方向に水平な面を表す。
【0015】
ガラス板製造装置1は、熔解窯11と、フロートバス12と、徐冷炉13と、洗浄検査・切断部14と、を備える。
また、ガラス板製造装置1は、情報処理装置101と、板厚検出部121と、製造条件検出部122と、調整部123と、を備える。
また、図1には、ガラス板製造装置1を操作するオペレータ141を示してある。オペレータ141は、例えば、人である。なお、オペレータの代わりに、ユーザーなどと呼ばれてもよい。
【0016】
ここで、図1の例では、図を見易くするために、板厚検出部121、製造条件検出部122及び調整部123を、ガラス板製造工程部分(熔解窯11、フロートバス12、徐冷炉13及び洗浄検査・切断部14)から離隔して図示してあるが、例えば、板厚検出部121、製造条件検出部122及び調整部123のうちの1以上は、当該ガラス板製造工程部分と一体化されていてもよい。
【0017】
熔解窯11では、熔解工程の処理が行われる。
熔解工程では、複数種類の原料を混ぜて調製したガラス原料を熔解して、溶融ガラスを得る。ガラス原料は、熔解窯11の内部に投入された後、バーナから噴射される火炎の輻射熱や電気熔融などの加熱手段によって熔解され、溶融ガラスとなる。
【0018】
フロートバス12では、成形工程の処理が行われる。
成形工程では、熔解工程で得られる溶融ガラスを浴槽内の溶融スズ上に連続的に供給し、溶融スズ上で溶融ガラスを流動させて成形し、板状のガラスであるガラス板(所謂、ガラスリボン)を得る。ガラス板は、所定方向に流動しながら冷却され、溶融スズから引き上げられる。
【0019】
徐冷炉13では、徐冷工程の処理が行われる。
徐冷工程では、成形工程で得られるガラス板を徐冷炉13の内部で徐冷する。ガラス板は、徐冷炉13の内部において、徐冷炉13の入口から出口に向けて、ロール上を水平に搬送されながら徐冷される。
【0020】
洗浄検査・切断部14では、洗浄検査工程の処理、及び、切断工程の処理が行われる。
洗浄検査工程では、徐冷工程で徐冷されたガラス板に対して洗浄検査を行う。
切断工程では、徐冷工程で徐冷されたガラス板を切断機で所定寸法に切断する。切断工程において、ガラス板の幅方向両縁部(所謂、耳部)が切除される。ガラス板の幅方向両縁部は、表面張力等の影響で肉厚になるため、切除される。
切断工程の後、ガラス板が出荷される。
【0021】
板厚検出部121は、ガラス板の板厚(板の厚さ)を検出する。本実施形態では、当該板厚は、上下方向(図1の例では、Z軸に平行な方向)の厚さである。
ここで、本実施形態では、板厚検出部121は、ガラス板製造装置1の下流の出口付近の位置に配置されており、当該位置におけるガラス板の板厚を検出する。当該位置は、徐冷炉13よりも下流の位置であり、洗浄検査・切断部14のあたりの位置である。
【0022】
板厚検出部121は、例えば、ガラス板の搬送方向(図1の例では、X軸に平行な方向であり、X軸の負側から正側に向かう方向)に対して垂直な幅方向(図1の例では、Y軸に平行な方向)について、複数の位置で板厚を検出してもよい。これら複数の位置は、当該幅方向において、例えば、一定間隔に配置されてもよく、或いは、他の間隔で配置されてもよい。
【0023】
本実施形態では、板厚検出部121により板厚の検出対象となるガラス板の箇所は、フロートバス12を通過してから所定時間が経過した後の状態である。当該所定時間は、例えば、30分程度であるが、他の時間であってもよい。
【0024】
製造条件検出部122は、所定の製造条件を検出する。
ここで、本実施形態では、製造条件検出部122は、フロートバス12における製造条件を検出する。
なお、他の例として、製造条件検出部122は、ガラス板製造装置1におけるフロートバス12以外の部位における製造条件を検出する場合があってもよい。
【0025】
調整部123は、製造条件を調整する機能を有する。
ここで、本実施形態では、調整部123は、フロートバス12における製造条件を調整する機能を有する。
なお、他の例として、調整部123は、ガラス板製造装置1におけるフロートバス12以外の部位における製造条件を調整する機能を有していてもよい。
【0026】
一例として、調整部123は、オペレータ141により操作される操作部を有し、当該操作部が受け付けた操作の内容に応じて、製造条件の調整を行ってもよい。
他の例として、調整部123は、外部の装置(本実施形態では、情報処理装置101)から入力された指示に応じて、製造条件の調整を行ってもよい。
【0027】
[情報処理装置]
図2は、実施形態に係る情報処理装置101の構成例を示す図である。
情報処理装置101は、例えば、コンピューターから構成される。
情報処理装置101は、入力部211と、出力部212と、通信部213と、記憶部214と、制御部215と、を備える。
入力部211は、操作部231を備える。
出力部212は、表示部251を備える。
制御部215は、判定部271を備える。
【0028】
入力部211は、外部から情報を入力する機能を有している。例えば、操作部231は、オペレータ141により行われる操作に応じて情報を入力する機能を有している。
出力部212は、外部に情報を出力する機能を有している。例えば、表示部251は、表示対象の情報を画面に表示出力する機能を有している。
通信部213は、外部の装置と通信を行う機能を有している。
【0029】
記憶部214は、各種の情報を記憶する。本実施形態では、記憶部214は、学習済みモデル311などを記憶する。
学習済みモデル311は、あらかじめ記憶部214に設定されてもよく、或いは、任意のタイミングで外部から設定されてもよい。
ここで、学習済みモデル311の学習モデルとしては、任意の機械学習のモデルが用いられてもよく、例えば、ニューラルネットワークのモデルが用いられてもよい。
【0030】
制御部215は、各種の処理及び制御を行う。
判定部271は、判定対象となる所定の情報を学習済みモデル311に入力して、学習済みモデル311からの出力を判定結果の情報として取得する。
【0031】
制御部215は、例えば、取得した判定結果の情報を出力部212により出力してもよく、一例として、取得した判定結果の情報に関する表示内容を表示部251の画面に表示出力してもよい。この場合、例えば、オペレータ141は、当該表示内容を見て、当該表示内容に応じて調整部123を操作することで、調整部123による製造条件の調整を制御(オペレータ141の手動で制御)してもよい。
【0032】
また、制御部215は、例えば、取得した判定結果の情報に基づいて、調整部123による製造条件の調整を制御する機能(自動的に制御する機能)を有していてもよい。
具体例として、制御部215は、取得した判定結果の情報又はそれに基づく他の情報を、調整部123の制御信号として、通信部213により調整部123に出力することで、調整部123による製造条件の調整を制御してもよい。この場合、調整部123は、制御部215から受信した当該制御信号に応じて、製造条件の調整を行う。
【0033】
ここで、判定部271は、例えば、学習済みモデル311からの出力(推定結果)をそのまま採用して判定部271による判定結果としてもよく、或いは、学習済みモデル311からの出力(推定結果)に基づいて更なる判定又は解析等を行い、その結果を判定部271による判定結果としてもよい。
なお、推定の代わりに、予測、又は、予想などの語が使用されてもよい。
【0034】
本実施形態では、情報処理装置101は、通信部213により、板厚検出部121と通信を行う機能を有している。これにより、情報処理装置101は、板厚検出部121により検出された板厚の検出結果の情報を受信して取得できる。
また、本実施形態では、情報処理装置101は、通信部213により、製造条件検出部122と通信を行う機能を有している。これにより、情報処理装置101は、製造条件検出部122により検出された製造条件の検出結果の情報を受信して取得できる。
また、本実施形態では、情報処理装置101は、通信部213により、調整部123と通信を行う機能を有している。これにより、情報処理装置101は、調整部123に対して指示を出力(送信)することで、調整部123による製造条件の調整を制御できる。
【0035】
ここで、それぞれの通信は、例えば、有線の通信であってもよく、或いは、無線の通信であってもよい。
なお、本実施形態では、情報処理装置101が、板厚検出部121、製造条件検出部122及び調整部123のそれぞれと通信を行う構成を示すが、2つの異なる装置の間での情報のやり取りは、任意の手法で行われてもよく、例えば、携帯型の外部記憶媒体を用いて行われてもよい。
また、本実施形態では、情報処理装置101が調整部123を制御できる構成を示すが、他の例として、情報処理装置101が調整部123を制御しない構成が用いられてもよい。
【0036】
<学習済みモデルの入出力情報の例>
図3は、実施形態に係る学習済みモデル311の入出力情報の一例を示す図である。
学習済みモデル311には、入力情報として、製造条件の検出結果の情報が入力される。当該情報としては、製造条件検出部122により検出される製造条件の検出結果の情報が用いられる。
図3の例では、ガラス板の板厚の検出結果の情報が学習済みモデル311への入力情報として用いられない場合を示す。
ここで、製造条件の検出結果の情報としては、例えば、1個の情報が用いられてもよく、或いは、複数の情報が用いられてもよい。
【0037】
なお、他の例として、当該入力情報として、製造条件の検出結果の情報に基づいて加工等された情報が用いられてもよい。つまり、当該入力情報は、必ずしも製造条件の検出結果の情報自体でなくてもよく、他の情報に変換等されていてもよい。
【0038】
学習済みモデル311からは、出力情報として、板厚の推定結果の情報が出力される。当該情報としては、例えば、板厚検出部121により検出されると推定される板厚の情報である。
【0039】
なお、他の例として、当該出力情報として、板厚の推定結果の情報に基づいて加工等された情報が用いられてもよい。つまり、当該出力情報は、必ずしも板厚の推定結果の情報自体でなくてもよく、他の情報に変換等されていてもよい。
具体例として、当該出力情報は、板厚の推定結果が所定の条件を満たすか否かを表す情報であってもよい。当該条件は、例えば、当該板厚(推定結果)が所定の範囲(下限値と上限値との間)に含まれない場合には異常であるという条件であってもよい。
また、例えば、ガラス板の幅方向について複数の位置における板厚の推定結果を取得して、当該幅方向において板厚の推定結果が大きく外れる(例えば、所定の閾値を超えて外れる)位置が1つも無いように機械学習が行われてもよい。
【0040】
ここで、本実施形態では、学習済みモデル311は、任意の学習手法で生成されてもよい。
一例として、学習済みモデル311は、学習前モデルの入力情報として製造条件の検出結果の情報を用いるとともに、当該学習前モデルの出力情報に対する教師データ(真値のデータ)として板厚検出部121により検出された板厚の情報を用いることで、機械学習により生成されてもよい。
【0041】
また、本実施形態では、判定部271により判定が行われる前に学習が済んでいる学習済みモデル311が用いられる場合を示すが、他の例として、既に学習されたモデル内容を時系列的に逐次的に更新(修正)していく学習モデル(本実施形態では、これも学習済みモデル311の一例とみなす。)が用いられてもよい。このような学習モデルとして、例えば、状態空間モデルが用いられてもよい。
このように、学習済みモデル311としては、既に学習が終了していてモデル内容が固定である学習モデルが用いられてもよく、或いは、モデル内容を更に時系列的に逐次的に更新していく学習モデルが用いられてもよい。
【0042】
[製造条件の例]
図4は、実施形態に係る製造条件511の例を示す図である。
製造条件511としては、例えば、温度条件531、圧力条件532、ツイール条件533、ヒータ条件534、湿度条件535及び板厚条件536がある。
なお、製造条件511としては、必ずしも図4に示される全ての条件が用いられなくてもよく、任意の1以上の条件が用いられてもよい。
また、製造条件511としては、本実施形態における例示とは異なる条件が用いられてもよい。
ここで、図4に示される製造条件511の具体例は例示であり、必ずしも当該具体例に限定されず、例えば、図4に示される製造条件(当該具体例)は用いられずに、他の製造条件が用いられる構成とされてもよい。
それぞれの製造条件は、例えば、ガラス板の製造工程において、製造条件検出部122によりリアルタイムで検出されてもよい。
【0043】
<温度条件>
製造条件として、温度に関する条件(温度条件531)が用いられてもよい。
温度条件531としては、例えば、フロートバス12の内部の温度が用いられてもよく、或いは、他の温度が用いられてもよい。
温度条件531としては、例えば、1個の箇所の温度が用いられてもよく、或いは、複数の異なる箇所の温度が用いられてもよい。これら複数の異なる箇所は、例えば、ガラス板の搬送方向(本実施形態では、X軸に平行な方向)に分布してもよく、又は、ガラス板の幅方向(本実施形態では、Y軸に平行な方向)に分布してもよく、或いは、これら両方に分布してもよい。
また、温度条件531としては、例えば、それぞれの箇所について、1個の時刻の温度が用いられてもよく、或いは、複数の異なる時刻の温度が用いられてもよい。
なお、所定箇所の温度は、例えば、当該所定箇所(又は、その付近)に設けられた温度センサによって検出されてもよい。
また、複数の箇所の温度を平均化した値(空間的な平均値)が用いられてもよく、また、複数の時刻の温度を平均化した値(時間的な平均値)が用いられてもよい。
【0044】
<圧力条件>
製造条件として、圧力に関する条件(圧力条件532)が用いられてもよい。
圧力条件532としては、例えば、フロートバス12の内部の圧力が用いられてもよく、或いは、他の圧力が用いられてもよい。
圧力条件532としては、例えば、1個の箇所の圧力が用いられてもよく、或いは、複数の異なる箇所の圧力が用いられてもよい。これら複数の異なる箇所は、例えば、ガラス板の搬送方向(本実施形態では、X軸に平行な方向)に分布してもよく、又は、ガラス板の幅方向(本実施形態では、Y軸に平行な方向)に分布してもよく、或いは、これら両方に分布してもよい。
また、圧力条件532としては、例えば、それぞれの箇所について、1個の時刻の圧力が用いられてもよく、或いは、複数の異なる時刻の圧力が用いられてもよい。
なお、所定箇所の圧力は、例えば、当該所定箇所(又は、その付近)に設けられた圧力センサによって検出されてもよい。
また、複数の箇所の圧力を平均化した値(空間的な平均値)が用いられてもよく、また、複数の時刻の圧力を平均化した値(時間的な平均値)が用いられてもよい。
【0045】
<ツイール条件>
製造条件として、ツイールに関する条件(ツイール条件533)が用いられてもよい。
本実施形態では、ツイールは、フロートバス12の上流側から供給される溶融ガラスの流量を制御する部位である。
ツイール条件533としては、例えば、ツイールの開閉の程度(例えば、角度)を表す値が用いられてもよく、或いは、他の値が用いられてもよい。
また、ツイール条件533としては、例えば、1個の時刻の値が用いられてもよく、或いは、複数の異なる時刻の値が用いられてもよい。
なお、ツイールの開閉の程度(例えば、角度)を表す値は、例えば、当該ツイールを制御する機能(例えば、調整部123の機能であってもよい)によって特定されてもよい。
また、複数の時刻の値を平均化した値(時間的な平均値)が用いられてもよい。
【0046】
<ヒータ条件>
製造条件として、ヒータに関する条件(ヒータ条件534)が用いられてもよい。
本実施形態では、ヒータは、フロートバス12の内部の温度を調整する部位である。ヒータとしては、複数のヒータが設けられてもよい。
ヒータ条件534としては、例えば、ヒータによる加熱状況(例えば、ヒータの温度など)を表す値が用いられてもよく、或いは、他の値が用いられてもよい。
ヒータ条件534としては、例えば、1個の箇所のヒータに関する値が用いられてもよく、或いは、複数の異なる箇所のヒータに関する値が用いられてもよい。これら複数の異なる箇所は、例えば、ガラス板の搬送方向(本実施形態では、X軸に平行な方向)に分布してもよく、又は、ガラス板の幅方向(本実施形態では、Y軸に平行な方向)に分布してもよく、或いは、これら両方に分布してもよい。
また、ヒータ条件534としては、例えば、それぞれの箇所について、1個の時刻の値が用いられてもよく、或いは、複数の異なる時刻の値が用いられてもよい。
なお、ヒータによる加熱状況を表す値は、例えば、当該ヒータを制御する機能(例えば、調整部123の機能であってもよい)によって特定されてもよい。
また、複数の箇所のヒータに関する値を平均化した値(空間的な平均値)が用いられてもよく、また、複数の時刻の値を平均化した値(時間的な平均値)が用いられてもよい。
【0047】
<湿度条件>
製造条件として、湿度に関する条件(湿度条件535)が用いられてもよい。
湿度条件535としては、例えば、フロートバス12の内部の湿度が用いられてもよく、或いは、他の湿度が用いられてもよい。
湿度条件535としては、例えば、1個の箇所の湿度が用いられてもよく、或いは、複数の異なる箇所の湿度が用いられてもよい。これら複数の異なる箇所は、例えば、ガラス板の搬送方向(本実施形態では、X軸に平行な方向)に分布してもよく、又は、ガラス板の幅方向(本実施形態では、Y軸に平行な方向)に分布してもよく、或いは、これら両方に分布してもよい。
また、湿度条件535としては、例えば、それぞれの箇所について、1個の時刻の湿度が用いられてもよく、或いは、複数の異なる時刻の湿度が用いられてもよい。
なお、所定箇所の湿度は、例えば、当該所定箇所(又は、その付近)に設けられた湿度センサによって検出されてもよい。
また、複数の箇所の湿度を平均化した値(空間的な平均値)が用いられてもよく、また、複数の時刻の湿度を平均化した値(時間的な平均値)が用いられてもよい。
【0048】
<板厚条件>
製造条件として、ガラス板の板厚に関する条件(板厚条件536)が用いられてもよい。
板厚条件536としては、例えば、フロートバス12の内部に存在する状態におけるガラス板の所定箇所の板厚が用いられてもよく、或いは、他の状態におけるガラス板の板厚が用いられてもよい。
板厚条件536としては、例えば、1個の箇所の板厚が用いられてもよく、或いは、複数の異なる箇所の板厚が用いられてもよい。これら複数の異なる箇所は、例えば、ガラス板の搬送方向(本実施形態では、X軸に平行な方向)に分布してもよく、又は、ガラス板の幅方向(本実施形態では、Y軸に平行な方向)に分布してもよく、或いは、これら両方に分布してもよい。
また、板厚条件536としては、例えば、それぞれの箇所について、1個の時刻の板厚が用いられてもよく、或いは、複数の異なる時刻の板厚が用いられてもよい。
なお、所定箇所の板厚は、例えば、当該所定箇所(又は、その付近)に設けられた板厚センサによって検出されてもよい。当該所定箇所が、板厚検出部121によって板厚を検出する箇所と同じである場合、当該所定箇所の板厚を検出する機能として板厚検出部121の機能が利用されてもよい。
また、複数の箇所の板厚を平均化した値(空間的な平均値)が用いられてもよく、また、複数の時刻の板厚を平均化した値(時間的な平均値)が用いられてもよい。
【0049】
ここで、温度、圧力及び湿度は、例えば、天候、又は、一日の時間帯(例えば、太陽の登り沈み等)に応じた外乱によって変化する可能性があり、一定に制御することが難しい場合がある。
また、ガラス板の製造中における幅方向への拡がり具合が、外乱によって変化する可能性があり、一定に制御することが難しい場合がある。
なお、本実施形態では、ツイール及びヒータは、制御可能である。
【0050】
<ガラス板の様子の例>
図5は、実施形態に係るガラス板611の様子の一例を示す図である。
図5には、説明の便宜上、図1に示されるのと同様なXYZ直交座標系を示してある。
また、図5に示されるガラス板611の形状は、説明のための模式的なものである。
【0051】
ガラス板611は、搬送方向(図5の例では、X軸に平行な方向)に分布するとともに、下流に行くにほど幅方向(図5の例では、Y軸に平行な方向)に拡大していく。
図5の例では、ガラス板611の幅方向の中心に対して対称に、ガラス板611の幅が広がっていく場合を示してある。
【0052】
図5の例では、ガラス板611の搬送方向に向かって、ガラス板611に6箇所の位置(位置x0~位置x5)を示してある。
例えば、時刻t0に位置x0に存在したガラス構成部分は、時刻t1に位置x1に進み、同様に、それぞれの時刻t2、時刻t3、時刻t4、時刻t5に、それぞれの位置x0、位置x2、位置x3、位置x4、位置x5に進む。
ここで、位置x0~位置x5は、数字が大きくなるほど、下流の位置を表す。また、時刻t0~時刻t5は、数字が大きくなるほど、進んだ時刻(つまり、後の時刻)を表す。
【0053】
図5の例では、幅方向において、ガラス板611に5箇所の位置(位置y0、位置yR1、位置yR2、位置yL1、位置yL2)を示してある。
位置y0は、ガラス板611の幅方向の中心位置を表す。
位置yR1及び位置yL1は、位置y0に対して幅方向に対称に、それぞれの方向(図5の例では、上方向及び下方向)に位置y0から同じ距離だけ離れた位置を表す。
同様に、位置yR2及び位置yL2は、位置y0に対して幅方向に対称に、それぞれの方向(図5の例では、上方向及び下方向)に位置y0から同じ距離だけ離れた位置を表す。
ここで、位置yR2及び位置yL2は、位置yR1及び位置yL1と比べて、位置y0からの離隔距離が大きい。
【0054】
図6は、実施形態に係るガラス板の幅方向の板厚の特性の一例を示す図である。
なお、図6の例に示される特性は、説明のための例示であり、必ずしも厳密なものではない。
図6に示されるグラフにおいて、横軸はガラス板の幅方向(本実施形態では、Y軸に平行な方向)を表し、縦軸は板厚を表している。
【0055】
図6には、ガラス板の幅方向の板厚の特性2011を示してある。
横軸には、ガラス板の幅方向の中心の位置h0と、中心の位置h0に対して対称な位置にある位置hR1及び位置hL1と、中心の位置h0に対して対称な位置にある位置hR2及び位置hL2と、を示してある。
ここで、位置hR1は中心の位置h0に対して所定方向(図6の例では、Y軸の正方向)に所定距離だけ離れた位置であり、位置hR2は更に離れた位置である。逆に、位置hL1は中心の位置h0に対して当該所定方向とは逆方向(図6の例では、Y軸の負方向)に所定距離だけ離れた位置であり、位置hL2は更に離れた位置である。
【0056】
例えば、板厚検出部121により検出される対象となるガラス板の板厚の特性は、図6に示されるようなものとなり得る。
また、例えば、フロートバス12のように、板厚検出部121よりも上流の位置においても、ガラス板の板厚の特性は、図6に示されるようなものとなり得る。
ただし、図6に示される特性2011は説明のための例示であり、実際には、ガラス板の板厚の特性は、ガラス板が上流から下流に進むにしたがって変化し得る。
【0057】
図7A図7Eは、それぞれ、実施形態に係るガラス板の板厚の時間変化の特性の一例を示す図である。
図7A図7Eのそれぞれに示されるグラフにおいて、横軸は時間(時刻)を表しており、縦軸は板厚を表している。
【0058】
図7Aには、図6に示される位置h0におけるガラス板の板厚の時間変化の特性2110を示してある。
図7Bには、図6に示される位置hR1におけるガラス板の板厚の時間変化の特性2121を示してある。
図7Cには、図6に示される位置hR2におけるガラス板の板厚の時間変化の特性2122を示してある。
図7Dには、図6に示される位置hL1におけるガラス板の板厚の時間変化の特性2131を示してある。
図7Eには、図6に示される位置hL2におけるガラス板の板厚の時間変化の特性2132を示してある。
【0059】
例えば、図7A図7Eに示されるように、ガラス板の幅方向における複数の位置について、板厚の推定(学習済みモデル311による判定)が行われてもよい。
なお、本例では、ガラス板の幅方向における5個の位置を示したが、ガラス板の幅方向における複数の位置の数としては、任意の数が用いられてもよく、例えば、10個などの数が用いられてもよい。
【0060】
図8は、実施形態に係るガラス板製造装置1において行われる処理の手順の一例を示す図である。
【0061】
(ステップS1)
ガラス板製造装置1では、判定部271は、学習済みモデル311への入力情報(本実施形態では、製造条件の検出結果の情報)を取得する。そして、ステップS2の処理へ移行する。
【0062】
(ステップS2)
ガラス板製造装置1では、判定部271は、取得した入力情報を学習済みモデル311に入力する。そして、ステップS3の処理へ移行する。
【0063】
(ステップS3)
ガラス板製造装置1では、判定部271は、学習済みモデル311からの出力情報(本実施形態では、板厚の推定結果の情報)を取得する。そして、ステップS4の処理へ移行する。
【0064】
(ステップS4)
ガラス板製造装置1では、制御部215は、判定部271により取得された出力情報に基づいて、製造条件の調整の制御を行う。そして、ステップS5の処理へ移行する。
【0065】
(ステップS5)
ガラス板製造装置1では、制御部215は、本フローの処理を終了するか否かを判定する。
この判定の結果、制御部215は、本フローの処理を終了すると判定した場合(ステップS5:YES)、本フローの処理を終了する。
一方、この判定の結果、制御部215は、本フローの処理を終了しないと判定した場合(ステップS5:NO)、ステップS1の処理へ移行する。
【0066】
ここで、図8の例では、説明の便宜上、ステップS5の処理において、制御部215が本フローの処理を終了するか否かを判定する場合を示したが、本フローの処理を終了するか否かを判定する構成としては、任意の構成が用いられてもよい。
【0067】
また、図8の例では、調整部123による製造条件の調整を制御する処理ステップ(ステップS4)を有する処理フローを示したが、他の例として、このような処理ステップ(ステップS4)を含まない処理フローが実行されてもよい。
【0068】
<学習済みモデルの入出力情報の他の例>
図9は、実施形態に係る学習済みモデル311aの入出力情報の他の例を示す図である。
ここで、学習済みモデル311aは、学習済みモデル311の変形例である。
学習済みモデル311aは、概略的には、学習済みモデル311と比べて、入力情報が異なる点を除いて同様であり、ここでは、相違する点について詳しく説明し、同様な点については詳しい説明を省略する。
図9の例では、ガラス板の板厚の検出結果の情報が学習済みモデル311aへの入力情報に含まれる場合を示す。
【0069】
学習済みモデル311aには、入力情報として、製造条件の検出結果の情報が入力される。
当該入力情報としては、様々な情報であってもよく、本例では、推定目的以外の板厚の検出結果の情報を含む。
ここで、推定目的以外の板厚とは、学習済みモデル311aにより推定する目的となる板厚(つまり、推定結果として得たい板厚そのもの)以外の板厚である。
【0070】
例えば、推定目的の板厚を、ガラス板における所定箇所の所定タイミングでの板厚(図1の例では、ガラス板における当該所定箇所が実際に製造された時点で板厚検出部121により検出されるタイミングでの板厚)とすると、推定目的以外の板厚として、例えば、ガラス板における異なる箇所(当該所定箇所以外の箇所)の板厚、又は、ガラス板における同じ箇所(当該所定箇所)であっても異なるタイミング(当該所定タイミング以外のタイミング)での板厚が用いられる。
【0071】
学習済みモデル311aからは、出力情報として、板厚の推定結果の情報が出力される。当該情報としては、例えば、板厚検出部121により検出されると推定される板厚の情報である。
なお、入力情報及び出力情報としては、それぞれ、他の情報(例えば、変換等された情報)が用いられてもよい。
ここで、学習済みモデル311aは、任意の学習手法で生成されてもよい。
【0072】
また、本例では、判定部271により判定が行われる前に学習が済んでいる学習済みモデル311aが用いられる場合を示すが、他の例として、既に学習されたモデル内容を時系列的に逐次的に更新(修正)していく学習モデル(本実施形態では、これも学習済みモデル311aの一例とみなす。)が用いられてもよい。このような学習モデルとして、例えば、状態空間モデルが用いられてもよい。
このように、学習済みモデル311aとしては、既に学習が終了していてモデル内容が固定である学習モデルが用いられてもよく、或いは、モデル内容を更に時系列的に逐次的に更新していく学習モデルが用いられてもよい。
【0073】
<ガラス板の製造時における板厚の時系列情報>
学習済みモデル311aの入力情報は、ガラス板の製造時における板厚の時系列情報を含んでもよい。
【0074】
ここで、ガラス板の製造時における板厚の時系列情報としては、例えば、ガラス板において板厚の推定対象となる箇所(ガラス構成部分)の板厚について、複数の時刻の当該板厚の情報が用いられてもよい。
これら複数の時刻は、例えば、一定の間隔の時刻であってもよく、或いは、他の間隔の時刻であってもよい。
【0075】
これら複数の時刻の開始時刻と終了時刻は、様々であってもよい。
一例として、当該ガラス構成部分の製造が開始される時刻(又は、その付近の時刻)が開始時刻として用いられるとともに、当該ガラス構成部分の製造が終了される時刻(又は、その付近の時刻)が終了時刻として用いられてもよい。
他の例として、ガラス製造工程における一部の特定の工程(例えば、フロートバス12での製造の工程)に着目して、その工程において、当該ガラス構成部分の製造が開始される時刻(又は、その付近の時刻)が開始時刻として用いられるとともに、当該ガラス構成部分の製造が終了される時刻(又は、その付近の時刻)が終了時刻として用いられてもよい。
【0076】
具体例として、ガラス板における当該ガラス構成部分が製造開始から1時間かけて製造終了される場合に、当該製造開始から当該製造終了までにおける1分毎の当該ガラス構成部分の板厚の情報(つまり、60個の時刻における板厚の情報)が、当該ガラス板の製造時における板厚の時系列情報として用いられてもよい。
【0077】
なお、本実施形態では、ガラス板における各ガラス構成部分が、当該ガラス板の搬送方向(本実施形態では、X軸に平行な方向)に沿って直線的に流れることを仮定して機械学習を行う場合を示すが、実際には、各ガラス構成部分は幅方向に曲がった部分を有する経路(幅方向にカーブした経路)で流れ得るため、このような経路を考慮した機械学習を行う構成が用いられてもよい。
ただし、本実施形態のように、ガラス板における各ガラス構成部分が、当該ガラス板の搬送方向(本実施形態では、X軸に平行な方向)に沿って直線的に流れることを仮定しても、その仮定で機械学習を行うことで、学習済みモデルからの出力結果としては、実用上で十分な精度の推定結果を取得し得る。
【0078】
[フロート方式のフロートバスにおけるヒータの例]
図10図11を参照して、フロート方式のフロートバス810におけるヒータの例を説明する。本例では、ヒータ分割の構成例を示す。
【0079】
図10図11に示されるフロートバス810におけるヒータの構成は、例えば、実施形態に係るフロートバス12に適用されてもよい。この場合、図1に示される調整部123は、製造条件の調整として、図10に示される複数のヒータ830のうちの1以上の加熱状況の調整を行ってもよい。
また、図10図11に示されるフロートバス810におけるヒータ以外の構成についても、その一部又は全部が、実施形態に係るフロートバス12に適用されてもよい。
【0080】
図10は、フロート方式のガラス板製造装置1の部分を示す断面図である。
図11及び図12は、それぞれ、フロートバスを示す平面図である。
図10には、説明の便宜上、図1に示されるのと同様なXYZ直交座標系を示してある。
図10に示される断面図は、XZ断面図である。
【0081】
なお、図1と同様に、Z軸方向が上下方向であり、X軸方向がフロートバス810の長さ方向であり、Y軸方向がフロートバス810の幅方向である。
フロートバス810の長さ方向は、図10図12における左右方向であり、本実施形態では、ガラスリボンGR(ガラス板)の搬送方向である。また、フロートバス810の幅方向は、図10図12における上下方向であり、ガラスリボンGRの搬送方向と直交する幅方向である。
【0082】
ガラスリボンGRの搬送方向とは、平面視においてガラスリボンGRが搬送される方向である。
また、上流側及び下流側とは、ガラス板製造装置1の内部におけるガラスリボンGRの搬送方向(X軸方向)において、+X側(X軸の正側)が下流側であり、-X側(X軸の負側)が上流側である。
【0083】
幅方向(Y軸方向)の内側とは、幅方向において、フロートバス810の幅方向の中心が位置する側である。幅方向の外側とは、幅方向において、フロートバス810の幅方向の中心が位置する側と反対側である。
なお、以下の説明においては、特に断りのない限り、幅方向とは、フロートバス810の幅方向及びガラスリボンGRの幅方向を意味するものとし、搬送方向とは、ガラスリボンGRの搬送方向を意味するものとする。
【0084】
図11及び図12においては、ルーフ811bの図示を省略している。また、図12においては、トップロール820~829の図示を省略している。
ガラス板製造装置1は、内部空間ARを有するフロートバス810を備える。図10には、フロートバス810の開口部810aを示してある。
フロートバス810は、内部空間ARの内部においてガラスリボンGRを成形する装置である。フロートバス810の上流側(-X側)には、溶融炉(図1に示される熔解窯11)が接続されている。溶融炉は、リップ819を介して、上流側からフロートバス810に貯留された溶融金属Mの表面Ma上に溶融ガラスGmを供給する。溶融ガラスGmは、ツイール818により流量を制御されつつ、溶融金属Mの表面Ma上に連続的に供給される。
【0085】
フロートバス810の下流側(+X側)には、徐冷炉(図1に示される徐冷炉13)が接続されている。徐冷炉は、フロートバス810で成形されたガラスリボンGRを冷却する。徐冷炉には、例えば、複数の搬送ロールが設けられている。ガラスリボンGRは、徐冷炉の搬送ロールによって、下流側に引っ張られることで上流側(-X側)から下流側へ搬送される。
すなわち、ガラス板製造装置1は、フロートバス810に貯留された溶融金属Mの表面Ma上に溶融ガラスGmを連続的に供給してガラスリボンGRを形成し、ガラスリボンGRを搬送方向(X軸方向)に搬送する。
【0086】
フロートバス810は、ボトム811aと、ルーフ811bと、複数のヒータ830と、複数の制御装置840と、を有する。また、フロートバス810は、図11に示すように、複数のトップロール820~829を有する。
図10に示されるように、ボトム811aには、溶融金属Mが貯留されている。ルーフ811bは、ボトム811aの上側(+Z側)を覆っている。複数のヒータ830は、ルーフ811bに設けられている。それぞれのヒータ830は、制御装置840によって制御され、溶融金属M上に形成されるガラスリボンGRを加熱可能となっている。
以下、フロートバス810の各部について詳細に説明する。
【0087】
<ボトム>
ボトム811aは、ボトム本体812と、ボトムケーシング813と、を有する。
ボトム本体812の上側(+Z側)の面には、下側(-Z側)に凹となる貯留槽812aが形成されている。貯留槽812aの内部には、溶融金属Mが貯留される。溶融金属Mは、例えば、溶融スズ、溶融スズ合金等である。ボトム本体812の材質は、例えば、粘土質レンガ等である。
ボトムケーシング813は、ボトム本体812の外側面を覆っている。ボトムケーシング813は、例えば、鋼製である。
【0088】
<ルーフ>
ルーフ811bは、ボトム811aの上側(+Z側)に配置されている。ルーフ811bは、ルーフケーシング815と、ルーフレンガ層816と、を有する。
ルーフケーシング815は、たとえば、フロートバス810が設置されている建物の梁等の図示しない上部構造から吊り下げられている。ルーフケーシング815は、下側(-Z側)に開口する箱型である。ルーフケーシング815には、図示しないガス導入口が設けられている。ルーフケーシング815は、たとえば、鋼製である。
【0089】
ルーフケーシング815における下側(-Z側)の部分の内側には、図示しないサイドウォールが固定されている。サイドウォールの材質は、例えば、保温レンガ、又は、シリマナイト等である。
ルーフレンガ層816は、サイドウォールの内側に設けられている。ルーフレンガ層816は、図示しない格子状に組まれた骨組みの上に、PBAと呼ばれる略直方体状のレンガブロックを載置して構成される。格子状に組まれた骨組みは、例えば、ルーフケーシング815の内側の天面から吊り下げられている。これにより、ルーフレンガ層816は、所望の高さに配置される。
【0090】
ルーフレンガ層816は、フロートバス810の内部空間ARを下方空間AR1と上方空間AR2とに二分する。
下方空間AR1は、フロートバス810の内部空間ARのうちボトム811aとルーフ811bとの間に位置する空間である。下方空間AR1は、溶融金属M及び溶融金属M上に形成されるガラスリボンGRと接している。
【0091】
上方空間AR2は、フロートバス810の内部空間ARのうちルーフ811bの内部に位置する空間である。上方空間AR2は、ルーフレンガ層816とサイドウォールとの上側(+Z側)に位置する。上方空間AR2は、ルーフレンガ層816に設けられた貫通孔を介して、下方空間AR1と連通している。
ボトム811aとルーフ811bとの上下方向の間には、図示しないサイドシールが設けられている。サイドシールは、ボトム811aとルーフ811bとの上下方向の隙間をシールする。これにより、ボトム811aとルーフ811bとサイドシールとによって囲まれた略密閉された内部空間ARが形成される。
【0092】
<ヒータ>
複数のヒータ830は、ボトム811aの上方に設けられている。フロートバス810において複数のヒータ830は、例えば、数千本程度、設置されている。複数のヒータ830は、上下方向(Z軸方向)に延びている。複数のヒータ830は、ルーフレンガ層816を貫通して設置されている。複数のヒータ830は、例えば、中実の円柱形状である。複数のヒータ830の材質は、例えば、炭化ケイ素(SiC)である。
【0093】
図12に示されるように、フロートバス810を上方から見た視点で複数のヒータ830が配置されるヒータ領域ARHは、溶融金属M上に形成されるガラスリボンGRの搬送方向(X軸方向)、及び搬送方向と直交する幅方向(Y軸方向)に沿って区割りされた複数の区画を有している。図12の例では、ヒータ領域ARHは、搬送方向に沿って列A~列Hに分割されるとともに、列B~列Gが幅方向に沿って5個の区画に区割りされている。
【0094】
各区画には、それぞれヒータ830が複数設けられている。1個の区画に設けられる複数のヒータ830は、同一の制御装置840に接続される。すなわち、1個の区画に設けられた複数のヒータ830は、1個の制御装置840によって一括して制御される。区画内における複数のヒータ830は、例えば、複数のヒータ830からガラスリボンGRに向けて放射される熱量が、1個の区画内においてほぼ均一となるように設置されている。
なお、ヒータ領域ARHは、上方から見た視点で貯留槽812aの内側に位置する領域である。
【0095】
<制御装置>
制御装置840は、ヒータ830を制御する。制御装置840は、ヒータ領域ARHの有する区画毎に設けられている。制御装置840は、対応する区画に設けられた複数のヒータ830を一括して制御する。制御装置840の構成は、1個の区画内における複数のヒータ830の出力を一括して調整できる範囲において、特に限定されない。
【0096】
<トップロール>
複数のトップロール820~829は、図11に示されるように、ガラスリボンGRの幅方向(Y軸方向)の両側に対向配置されている。トップロール820~829は、ガラスリボンGRの幅が、表面張力によって狭まるのを防止している。トップロールの設置数は、ガラスの種類又は目標厚さ等の成形条件に応じて適宜設定される。トップロールの設置数は、例えば、4対以上、30対以下、好ましくは10対以上、30対以下である。図11の例では、トップロールは、トップロール820、825、トップロール821、826、トップロール822、827、トップロール823、828、及びトップロール824、829の計5対設けられている。製造するフロートガラスの板厚を小さくするほど、トップロールの設置数は増加する傾向にある。
【0097】
なお、トップロール820~829の構成は、設けられる位置が異なる点を除いて同様の構成であるため、以下の説明においては、代表してトップロール824についてのみ説明する場合がある。
トップロール824は、ガラスリボンGRの幅方向(Y軸方向)の端部を支持するトップロール本体824Aと、トップロール本体824Aに連結される回転軸824Bと、で構成される。
【0098】
これらのトップロール820~829、より正確にはトップロール本体824Aは、ガラスリボンGRの成形域ARFに設けられる。ガラスリボンGRの成形域ARFとは、ガラスリボンGRの粘度が104.5dPa・s以上、107.5dPa・s以下となる領域である。成形域ARFは、ヒータ領域ARHのうち列B~列Gが設けられる領域に相当する。
【0099】
成形域ARFは、上流側成形域ARF1と、下流側成形域ARF2と、を有する。
上流側成形域ARF1は、成形域ARFの上流側(-X側)に位置する領域である。上流側成形域ARF1は、ガラスリボンGRの粘度が104.5dPa・s以上で、かつ、105.7dPa・sより小さい領域である。本例では、上流側成形域ARF1は、ヒータ領域ARHのうち列B~列Eが設けられる領域に相当する。上流側成形域ARF1では、列B~列Eの各区画におけるヒータ830の出力が調整されることで、ガラスリボンGRの板厚が調整される。
【0100】
下流側成形域ARF2は、成形域ARFの下流側(+X側)に位置する領域である。下流側成形域ARF2は、ガラスリボンGRの粘度が105.7dPa・s以上、107.5dPa・s以下となる領域である。すなわち、下流側成形域ARF2におけるガラスリボンGRの粘度は、上流側成形域ARF1におけるガラスリボンGRの粘度よりも高い。本例では、下流側成形域ARF2は、ヒータ領域ARHのうち列F、Gが設けられる領域に相当する。
【0101】
下流側成形域ARF2では、上流側成形域ARF1において板厚が調整されたガラスリボンGRの温度が、上流側(-X側)から下流側(+X側)に向かうにしたがって徐々に低下するように、列F、Gの各区画におけるヒータ830の出力が調整される。
【0102】
なお、図11及び図12には、説明の便宜上、搬送方向(X軸方向)に隣接する2列を分割する分割線PL1を示してある。分割線PL1は、搬送方向に隣り合うヒータ830同士の間のほぼ中央に位置する。分割線PL1は、例えば、幅方向に延びる直線である。
また、図11及び図12には、説明の便宜上、幅方向(Y軸方向)に隣接する2個の区画を区割りする区割り線PL2を示してある。区割り線PL2は、ガラスリボンGRの幅方向に隣り合うヒータ830同士の間のほぼ中央に位置する。区割り線PL2は、例えば、搬送方向に延びる直線である。
区割り線PL2は、内部区割り線PL2a~PL2dを含む。
【0103】
なお、図12には、説明の便宜上、ガラスリボンGRの流線FL1、FL2を示してある。
図12の例において、流線FL1は、搬送方向(X軸方向)に対して、幅方向の一方側(+Y側)に膨らむように曲がっている箇所を有する。
また、図12の例において、流線FL2は、搬送方向(X軸方向)に対して、幅方向の他方側(-Y側)に膨らむように曲がっている箇所を有する。
複数のヒータ830は、例えば、ガラスリボンGRのそれぞれの流線(例えば、流線FL1、流線FL2)に沿って配置されていてもよく、当該流線の方向の温度差を小さく(例えば、最小に)してもよい。
【0104】
ここで、 図10図11に示されるフロートバス810におけるヒータの構成が、実施形態に係るフロートバス12に適用される場合、例えば、制御装置840の機能は、図1に示される調整部123に備えられてもよい。
【0105】
以上のように、本実施形態に係るガラス板製造装置1では、製造時におけるガラス板の製造条件を入力とする機械学習のモデルによって、最終的に製造される当該ガラス板の板厚(又は、それに関する情報)を推定できる。これにより、ガラス板製造装置1では、製造後のガラス板の板厚が一定範囲(幅を持った範囲であるが、当該幅が0とみなせる一定値である場合も含む)から外れそうなときに素早く温度調整等を行うことで、製造後のガラス板の板厚の品質維持を実現できる。
【0106】
また、本実施形態に係るガラス板製造装置1では、その推定の結果に基づいてガラス板の製造条件を調整でき、例えば、板厚の不良が発生すると推定されたときなどに、その不良を早期に是正するために温度等を調整することで、歩留まり低下期間を最小限に抑えられる。
【0107】
また、本実施形態に係るガラス板製造装置1では、ガラス板の板厚(又は、それに関する情報)の時間変化を推定でき、これにより、例えば、板厚の不良が発生することをリアルタイムで監視し続けられる。
また、本実施形態に係るガラス板製造装置1では、その推定の結果に基づいてガラス板の製造条件を調整し続けられ、長期にわたって、板厚の不良の発生を抑制できる。
【0108】
一構成例として、ガラス板製造装置1において、情報処理装置101では、判定部271は、所定の流れ方向(搬送方向)に流されながら製造されるガラス板について、当該ガラス板の製造時における製造条件の情報を機械学習の学習済みモデル311に入力し、学習済みモデル311からの出力結果を当該ガラス板の板厚の推定結果に関する情報として取得する。
したがって、ガラス板製造装置1では、製造時におけるガラス板の製造条件を入力とする機械学習のモデル(学習済みモデル311)によって、最終的に製造される当該ガラス板の板厚(又は、それに関する情報)を推定できる。
【0109】
一構成例として、ガラス板製造装置1において、情報処理装置101では、学習済みモデル311に入力される製造条件の情報は、ガラス板の製造時における当該ガラス板の板厚の情報を含む。
したがって、ガラス板製造装置1では、学習済みモデル311に入力する情報として、製造時におけるガラス板の板厚の情報を含むことで、学習済みモデル311からの出力(推定結果)の精度向上を図れる。
【0110】
一構成例として、ガラス板製造装置1において、情報処理装置101では、ガラス板の製造時における当該ガラス板の板厚の情報は、当該ガラス板の製造時における当該板厚の時系列情報を含む。
したがって、ガラス板製造装置1では、学習済みモデル311に入力する情報として、製造時におけるガラス板の板厚の時系列情報を含むことで、更に、学習済みモデル311からの出力(推定結果)の精度向上を図れる。
【0111】
一構成例として、ガラス板製造装置1では、調整部123は、判定部271による推定結果に基づいて製造条件を調整する。
したがって、ガラス板製造装置1では、製造後のガラス板の板厚を一定範囲に維持できる。
【0112】
ここで、ガラス板の板厚は、ガラス板の生産において重要な品質である。
従来の製造工程では、ガラス板の板厚は常時監視されて、ガラス板の成形装置内の温度調整等によって、ガラス板の板厚を一定に維持することが行われていた。ここで、従来において監視される板厚は、当該成形装置の下流において当該ガラス板の温度が低下した後に検査機で測定される板厚であった。つまり、従来では、当該成形装置の下流の位置(例えば、出口付近の位置)で板厚が検出されて良品判定され、その情報がフロートバス内の温度調整等にフィードバックされることで、板厚の一定維持が図られていた。
しかしながら、このような従来の監視手法では、温度調整等が行われる位置から良品判定が行われる位置までに大きな時間差(例えば、30分などの時間差)があるため、何らかの理由で温度調整等が不完全であった場合に、その是正が大きく遅延してしまう場合があった。つまり、板厚の不良が検査機で判定されてから温度調整等が是正されるまでの時間に、板厚の不良が発生するガラス板が製造され続けてしまい、歩留まりの低下が長く続いてしまう事態が発生していた。
そこで、本実施形態では、機械学習のモデルにより、ガラス板の製造に関連するパラメータを用いて、フロートバス内でのガラス板の板厚の分布を推定する構成とした。これにより、本実施形態では、早期に、板厚分布の不良を是正でき、歩留まり低下期間を最小限に抑えられる。
【0113】
なお、以上の実施形態では、フロート法によりガラス板を製造する場合について説明したが、以上の実施形態に係る技術が、他の手法によりガラス板を製造する場合に適用されてもよく、例えば、フュージョン法によりガラス板を製造する場合に適用されてもよい。
また、以上の実施形態に係る技術は、例えば、様々な種類のガラス板の製造に適用されてもよく、一例として、フラットパネルディスプレイ(FPD)に使用されるガラス板の製造に適用されてもよい。
【0114】
なお、以上に説明した任意の装置における任意の構成部の機能を実現するためのプログラムを、コンピューター読み取り可能な記録媒体に記録し、そのプログラムをコンピューターシステムに読み込ませて実行するようにしてもよい。なお、ここでいう「コンピューターシステム」とは、オペレーティングシステム或いは周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピューター読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD(Compact Disc)-ROM(Read Only Memory)等の可搬媒体、コンピューターシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピューター読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワーク或いは電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバー或いはクライアントとなるコンピューターシステム内部の揮発性メモリーのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。当該揮発性メモリーは、例えば、RAM(Random Access Memory)であってもよい。記録媒体は、例えば、非一時的記録媒体であってもよい。
【0115】
また、上記のプログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピューターシステムから、伝送媒体を介して、或いは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピューターシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク或いは電話回線等の通信回線のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
また、上記のプログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、上記のプログラムは、前述した機能をコンピューターシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイルであってもよい。差分ファイルは、差分プログラムと呼ばれてもよい。
【0116】
また、以上に説明した任意の装置における任意の構成部の機能は、プロセッサーにより実現されてもよい。例えば、実施形態における各処理は、プログラム等の情報に基づき動作するプロセッサーと、プログラム等の情報を記憶するコンピューター読み取り可能な記録媒体により実現されてもよい。ここで、プロセッサーは、例えば、各部の機能が個別のハードウェアで実現されてもよく、或いは、各部の機能が一体のハードウェアで実現されてもよい。例えば、プロセッサーはハードウェアを含み、当該ハードウェアは、デジタル信号を処理する回路及びアナログ信号を処理する回路のうちの少なくとも一方を含んでもよい。例えば、プロセッサーは、回路基板に実装された1又は複数の回路装置、或いは、1又は複数の回路素子のうちの一方又は両方を用いて、構成されてもよい。回路装置としてはIC(Integrated Circuit)などが用いられてもよく、回路素子としては抵抗或いはキャパシターなどが用いられてもよい。
【0117】
ここで、プロセッサーは、例えば、CPUであってもよい。ただし、プロセッサーは、CPUに限定されるものではなく、例えば、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、DSP(Digital Signal Processor)等のような、各種のプロセッサーが用いられてもよい。また、プロセッサーは、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)によるハードウェア回路であってもよい。また、プロセッサーは、例えば、複数のCPUにより構成されていてもよく、或いは、複数のASICによるハードウェア回路により構成されていてもよい。また、プロセッサーは、例えば、複数のCPUと、複数のASICによるハードウェア回路と、の組み合わせにより構成されていてもよい。また、プロセッサーは、例えば、アナログ信号を処理するアンプ回路或いはフィルター回路等のうちの1以上を含んでもよい。
【0118】
以上、この開示の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この開示の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【0119】
[付記]
[構成例1]~[構成例6]を示す。
【0120】
[構成例1]
所定の流れ方向に流されながら製造されるガラス板について、前記ガラス板の製造時における製造条件の情報を機械学習の学習済みモデルに入力し、前記学習済みモデルからの出力結果を前記ガラス板の板厚の推定結果に関する情報として取得する判定部を備える、
情報処理装置。
【0121】
[構成例2]
前記学習済みモデルに入力される前記製造条件の情報は、前記ガラス板の製造時における前記ガラス板の板厚の情報を含む、
[構成例1]に記載の情報処理装置。
【0122】
[構成例3]
前記ガラス板の製造時における前記ガラス板の前記板厚の情報は、前記ガラス板の製造時における前記板厚の時系列情報を含む、
[構成例2]に記載の情報処理装置。
【0123】
[構成例4]
所定の流れ方向に流されながら製造されるガラス板について、前記ガラス板の製造時における製造条件の情報を機械学習の学習済みモデルに入力し、前記学習済みモデルからの出力結果を前記ガラス板の板厚の推定結果に関する情報として取得する判定部を備える、情報処理装置と、
前記判定部による前記推定結果に基づいて前記製造条件を調整する調整部と、を備える、
ガラス板製造装置。
【0124】
例えば、情報処理装置において行われる処理の方法を実施可能である。
[構成例5]
判定部が、所定の流れ方向に流されながら製造されるガラス板について、前記ガラス板の製造時における製造条件の情報を機械学習の学習済みモデルに入力し、前記学習済みモデルからの出力結果を前記ガラス板の板厚の推定結果に関する情報として取得する、
情報処理方法。
【0125】
例えば、ガラス板製造装置において行われる処理の方法を実施可能である。
[構成例6]
判定部が、所定の流れ方向に流されながら製造されるガラス板について、前記ガラス板の製造時における製造条件の情報を機械学習の学習済みモデルに入力し、前記学習済みモデルからの出力結果を前記ガラス板の板厚の推定結果に関する情報として取得し、
調整部が、前記判定部による前記推定結果に基づいて前記製造条件を調整する、
ガラス板製造方法。
【符号の説明】
【0126】
1…ガラス板製造装置、11…熔解窯、12、810…フロートバス、13…徐冷炉、14…洗浄検査・切断部、101…情報処理装置、121…板厚検出部、122…製造条件検出部、123…調整部、141…オペレータ、211…入力部、212…出力部、213…通信部、214…記憶部、215…制御部、231…操作部、251…表示部、271…判定部、311、311a…学習済みモデル、511…製造条件、531…温度条件、532…圧力条件、533…ツイール条件、534…ヒータ条件、535…湿度条件、536…板厚条件、611…ガラス板、810a…開口部、811a…ボトム、811b…ルーフ、812…ボトム本体、812a…貯留槽、813…ボトムケーシング、815…ルーフケーシング、818…ツイール、819…リップ、820~829…トップロール、824A…トップロール本体、824B…回転軸、830…ヒータ、840…制御装置、2011、2110、2121~2122、2131~2132…特性、AR…内部空間、AR1…下方空間、AR2…上方空間、ARF…成形域、ARF1…上流側成形域、ARF2…下流側成形域、ARH…ヒータ領域、FL1~FL2…流線、Gm…溶融ガラス、GR…ガラスリボン(ガラス板)、M…溶融金属、Ma…表面、PL1…分割線、PL2…区切り線、PL2a~PL2d…内側区切り線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図8
図9
図10
図11
図12