(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177944
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】発光装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 33/20 20100101AFI20241217BHJP
H01L 33/50 20100101ALI20241217BHJP
【FI】
H01L33/20
H01L33/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096368
(22)【出願日】2023-06-12
(71)【出願人】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004026
【氏名又は名称】弁理士法人iX
(72)【発明者】
【氏名】松下 良樹
【テーマコード(参考)】
5F142
5F241
【Fターム(参考)】
5F142AA66
5F142DA14
5F142FA28
5F142FA46
5F142FA50
5F241AA43
5F241CA05
5F241CA13
5F241CA22
5F241CA40
5F241CA74
5F241CA76
5F241CB11
(57)【要約】
【課題】積層体へのダメージを低減しつつ容易に個片化することができる発光装置の製造方法を提供すること。
【解決手段】発光装置の製造方法は、波長変換層と、前記波長変換層上に配置された透光層と、前記透光層上に配置された半導体層と、を有する積層体を準備する工程と、前記半導体層の一部を除去することにより、前記波長変換層上において前記半導体層を複数の半導体部に分離する工程と、前記半導体層の一部が除去された部分に沿って前記波長変換層を割断して、前記積層体を複数の発光装置に個片化する工程と、備える。
【選択図】
図1L
【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長変換層と、前記波長変換層上に配置された透光層と、前記透光層上に配置された半導体層と、を有する積層体を準備する工程と、
前記半導体層の一部を除去することにより、前記波長変換層上において前記半導体層を複数の半導体部に分離する工程と、
前記半導体層の一部が除去された部分に沿って前記波長変換層を割断して、前記積層体を複数の発光装置に個片化する工程と、
備える発光装置の製造方法。
【請求項2】
前記半導体層を複数の前記半導体部に分離する工程において、前記半導体層の前記一部をエッチングにより除去する請求項1に記載の発光装置の製造方法。
【請求項3】
前記半導体層を複数の前記半導体部に分離する工程において、前記透光層の一部も除去し、前記半導体層の一部が除去された部分において前記波長変換層を前記半導体層及び前記透光性から露出させる請求項1または2に記載の発光装置の製造方法。
【請求項4】
前記半導体層を複数の前記半導体部に分離する工程において、前記半導体層の一部が除去された部分において前記透光層を前記半導体層から露出させて、
前記積層体を複数の発光装置に個片化する工程において、前記半導体層の一部が除去された部分に沿って前記透光層と前記波長変換層とを割断する請求項1または2に記載の発光装置の製造方法。
【請求項5】
前記積層体を準備する工程において、前記透光層は、前記波長変換層上に配置され、複数の誘電体層を有する第1透光層と、前記第1透光層上に配置された第2透光層とを有し、
前記半導体層を複数の前記半導体部に分離する工程において、前記半導体層の一部が除去された部分において前記第1透光層を前記半導体層及び前記第2透光層から露出させ、
前記積層体を複数の前記発光装置に個片化する工程において、前記半導体層の一部が除去された部分に沿って前記第1透光層と前記波長変換層とを割断する請求項1または2に記載の発光装置の製造方法。
【請求項6】
前記積層体を準備する工程において、前記複数の誘電体層のうち前記第2透光層に接する誘電体層の厚さを、前記複数の誘電体層のうち前記誘電体層以外の他の誘電体層のそれぞれの厚さよりも厚くする請求項5に記載の発光装置の製造方法。
【請求項7】
前記半導体層を複数の前記半導体部に分離する工程において除去される前記半導体層の前記一部の厚さは、前記透光層の厚さよりも厚い請求項1または2に記載の発光装置の製造方法。
【請求項8】
前記積層体を準備する工程は、
第1基板と、前記第1基板上に配置された前記半導体層とを有するウェハを準備する工程と、
前記ウェハの前記第1基板を除去し、前記半導体層の第1面を露出させる工程と、
前記第1面上に前記透光層を形成する工程と、
前記透光層に前記波長変換層を接合する工程と、
を有する請求項1または2に記載の発光装置の製造方法。
【請求項9】
前記積層体を準備する工程は、前記ウェハにおける前記第1基板の反対側に位置する面側を第2基板に接合する工程をさらに有し、
前記ウェハと前記第2基板とを接合した後に、前記第1基板を除去する請求項8に記載の発光装置の製造方法。
【請求項10】
前記積層体を準備する工程は、前記半導体層の前記第1面を粗面化する工程をさらに有する請求項8に記載の発光装置の製造方法。
【請求項11】
前記透光層を形成する工程において、前記透光層は粗面化された前記第1面上に形成され、
前記積層体を準備する工程は、前記透光層における前記波長変換層が接合される面を化学的機械的研磨により研磨する工程をさらに有する請求項10に記載の発光装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、半導体積層体を成長させた基板を剥離して半導体積層体の第1の面を露出させる工程と、露出した第1の面に蛍光体層を形成する工程と、第1の面に蛍光体層を形成した後に個片化する工程とを有する発光装置の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、積層体へのダメージを低減しつつ容易に個片化することができる発光装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、発光装置の製造方法は、波長変換層と、前記波長変換層上に配置された透光層と、前記透光層上に配置された半導体層と、を有する積層体を準備する工程と、前記半導体層の一部を除去することにより、前記波長変換層上において前記半導体層を複数の半導体部に分離する工程と、前記半導体層の一部が除去された部分に沿って前記波長変換層を割断して、前記積層体を複数の発光装置に個片化する工程と、備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、積層体へのダメージを低減しつつ容易に個片化することができる発光装置の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1A】第1実施形態に係る発光装置の製造方法の一工程を説明するための模式断面図である。
【
図1B】第1実施形態に係る発光装置の製造方法の一工程を説明するための模式断面図である。
【
図1C】第1実施形態に係る発光装置の製造方法の一工程を説明するための模式断面図である。
【
図1D】第1実施形態に係る発光装置の製造方法の一工程を説明するための模式断面図である。
【
図1E】第1実施形態に係る発光装置の製造方法の一工程を説明するための模式断面図である。
【
図1F】第1実施形態に係る発光装置の製造方法の一工程を説明するための模式断面図である。
【
図1G】第1実施形態に係る発光装置の製造方法の一工程を説明するための模式断面図である。
【
図1H】第1実施形態に係る発光装置の製造方法の一工程を説明するための模式断面図である。
【
図1I】第1実施形態に係る発光装置の製造方法の一工程を説明するための模式断面図である。
【
図1J】第1実施形態に係る発光装置の製造方法の一工程を説明するための模式断面図である。
【
図1K】第1実施形態に係る発光装置の製造方法の一工程を説明するための模式断面図である。
【
図1L】第1実施形態に係る発光装置の製造方法の一工程を説明するための模式断面図である。
【
図2A】第2実施形態に係る発光装置の製造方法の一工程を説明するための模式断面図である。
【
図2B】第2実施形態に係る発光装置の製造方法の一工程を説明するための模式断面図である。
【
図3A】第3実施形態に係る発光装置の製造方法の一工程を説明するための模式断面図である。
【
図3C】第3実施形態に係る発光装置の製造方法の一工程を説明するための模式断面図である。
【
図3D】第3実施形態に係る発光装置の製造方法の一工程を説明するための模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照し、実施形態について説明する。各図面中、同じ構成には同じ符号を付している。なお、各図面は、実施形態を模式的に示したものであるため、各部材のスケール、間隔若しくは位置関係などが誇張、又は部材の一部の図示を省略する場合がある。また、断面図として、切断面のみを示す端面図を示す場合がある。また、断面図において、半導体層の各層の境界を見やすくするために、半導体層の断面にはハッチングを付していない。
【0009】
以下の説明において、実質的に同じ機能を有する構成要素は共通の参照符号で示し、説明を省略することがある。また、特定の方向又は位置を示す用語(例えば、「上」、「下」及びそれらの用語を含む別の用語)を用いる場合がある。しかしながら、それらの用語は、参照した図面における相対的な方向又は位置を分かり易さのために用いているに過ぎない。参照した図面における「上」、「下」等の用語による相対的な方向又は位置の関係が同一であれば、本開示以外の図面、実際の製品等において、参照した図面と同一の配置でなくてもよい。本明細書において「上」と表現する位置関係は、接している場合と、接していないが上方に位置している場合も含む。また、本明細書において、特定的な記載がない限り、部材が被覆対象を覆うとは、部材が被覆対象に接して被覆対象を直接覆う場合と、部材が被覆対象に非接触で被覆対象を間接的に覆う場合を含む。また、「平面視」とは、波長変換層上の半導体層を上から見た平面視をいうものとする。
【0010】
[第1実施形態]
図1A~
図1Lを参照して、第1実施形態に係る発光装置1の製造方法について説明する。
【0011】
第1実施形態に係る発光装置の製造方法は、波長変換層30と透光層20と半導体層10とを有する積層体101を準備する工程と、波長変換層30上において半導体層10を複数の半導体部60に分離する工程と、波長変換層30を割断して、積層体101を複数の発光装置1に個片化する工程と備える。
【0012】
<積層体を準備する工程>
図1Fに示すように、積層体101は、波長変換層30と、波長変換層30上に配置された透光層20と、透光層20上に配置された半導体層10とを有する。
【0013】
(半導体層)
半導体層10は、n側半導体層11と、p側半導体層13と、n側半導体層11とp側半導体層13との間に位置する活性層12とを有する。活性層12は、光を発する発光層であり、例えば、発光ピーク波長が210nm以上580nm以下の光を発する。活性層12は、例えば、複数の障壁層と、複数の井戸層を含むMQW(Multiple Quantum well)構造を有することができる。n側半導体層11は、n型不純物を含む半導体層を有する。p側半導体層13は、p型不純物を含む半導体層を有する。
【0014】
半導体層10は、活性層12及びp側半導体層13が配置された側の面の反対側に位置する第1面10aを有する。活性層12が発する光は、主に第1面10aから半導体層10の外部に取り出される。
【0015】
n側半導体層11は、第1面10aの反対側に位置し、活性層12及びp側半導体層13から露出する第1n側露出面11a及び第2n側露出面11bを有する。
【0016】
半導体層10は、窒化物半導体からなる。本明細書において「窒化物半導体」とは、例えば、InxAlyGa1-x-yN(0≦x≦1,0≦y≦1,x+y≦1)なる化学式において組成比x及びyをそれぞれの範囲内で変化させた全ての組成の半導体を含むものとする。また、上記化学式において、N(窒素)以外のV族元素もさらに含むもの、導電型などの各種の物性を制御するために添加される各種の元素をさらに含むものも「窒化物半導体」に含まれるものとする。
【0017】
(波長変換層)
波長変換層30は、活性層12が発する光の少なくとも一部を波長変換する。波長変換層30として、蛍光体の粉末を焼結させることにより形成される実質的に蛍光体のみからなる焼結体を用いることができる。または、波長変換層30として、透光性材料に蛍光体を含有させたものを用いることができる。透光性材料として、例えば、セラミックス、樹脂、またはガラスを用いることができる。蛍光体として、例えば、セリウムで賦活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(例えば、(Y,Gd)3(Al,Ga)5O12:Ce)、セリウムで賦活されたルテチウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(例えば、Lu3(Al,Ga)5O12:Ce)等を用いることができる。波長変換層30の厚さは、例えば、30μm以上500μm以下にすることができる。
【0018】
(透光層)
透光層20は、半導体層10と波長変換層30との間に位置する。半導体層10と波長変換層30との間に透光層20が位置することで、半導体層10と波長変換層30とを直接接合する場合に比べて、半導体層10と波長変換層30との間の結合力を高くしやすくできる。
【0019】
透光層20は、活性層12が発する光に対して高い透光性を有する。透光層20が高い透光性を有するとは、活性層12が発する光の発光ピーク波長に対して、50%以上、好ましくは60%以上、さらに好ましくは80%以上の透光率を有することである。
【0020】
また、透光層20は、半導体層10の屈折率と波長変換層30の屈折率との間の屈折率を有することが好ましい。これにより、半導体層10と波長変換層30との間の屈折率差を低減でき、活性層12が発する光の、半導体層10と波長変換層30との間における反射を低減できる。例えば、半導体層10の屈折率は2.3以上2.6以下、波長変換層30の屈折率は1.7以上1.9以下、透光層20の屈折率は1.6以上2.4以下の範囲からそれぞれ適宜選択することができる。
【0021】
透光層20の材料として、例えば、SiO2、SiN、SiON、Al2O3、Nb2O5又はTiO2等を用いることができる。透光層20の厚さは、例えば、2μm以上50μm以下にすることができる。
【0022】
<半導体層を複数の半導体部に分離する工程>
積層体101を準備した後、半導体層10の一部を除去することにより、
図1Gに示すように、波長変換層30上において半導体層10を複数の半導体部60に分離する。半導体層10の一部が除去された部分10Aは、互いに分離された隣り合う半導体部60間の隙間となり、平面視において例えば格子状に形成されている。
【0023】
n側半導体層11の第2n側露出面11bの下方の一部が除去され、半導体層10は複数の半導体部60に分離される。半導体層10を複数の半導体部60に分離する工程において、半導体層10の一部をエッチングにより除去することが好ましい。これにより、半導体層10の一部をブレードを用いて除去する場合に比べて、半導体層10の欠けを生じにくくできる。
【0024】
例えば、積層体101における第2n側露出面11bの一部以外の部分をマスクで覆い、塩素を含むガスを用いたRIE(Reactive Ion Etching)法により、窒化物半導体からなる半導体層10の一部を除去することができる。マスクから露出する第2n側露出面11bから第1面10aに向かって半導体層10の厚さ方向にエッチングが進行する。マスクとして、例えばレジストマスクを用いることができる。
【0025】
図1Gに示す例では、半導体層10を複数の半導体部60に分離する工程において、透光層20の一部も除去し、半導体層10の一部が除去された部分10Aにおいて波長変換層30を半導体層10及び透光層20から露出させている。半導体層10の一部が除去された部分10Aの下方に、透光層20の一部が除去された部分20Aが位置する。半導体層10の一部が除去された部分10A及び透光層20の一部が除去された部分20Aは、
図1Gにおいて紙面を貫く方向に延びる隙間である。それぞれの半導体部60の下に位置する透光層20は、透光層20の一部が除去された部分20Aによって複数に分離している。
【0026】
例えば、透光層20が酸化シリコンを含む場合、フッ素を含むガスを用いたRIE法により、透光層20の一部を除去することができる。RIE法の場合、半導体層10の一部と透光層20の一部とを、ガスの種類を切り換えることで連続して除去することができる。
【0027】
<積層体を複数の発光装置に個片化する工程>
半導体層10を複数の半導体部60に分離した後、半導体層10の一部が除去された部分10Aに沿って波長変換層30を割断して、
図1Lに示すように、積層体101を複数の発光装置1に個片化する。
【0028】
例えば、波長変換層30に対するレーザ光の照射と押圧力の付与により、波長変換層30を割断することができる。
【0029】
図1Jに示すように、波長変換層30における透光層20及び半導体部60が配置された側の第2面30aの反対側の第3面30bからレーザ光Lを波長変換層30の内部に照射する。または、レーザ光Lは、第2面30aから波長変換層30の内部に照射してもよい。レーザ光Lを第3面30bから照射すると、第2面30aから照射する場合に比べて、半導体部60がレーザ光Lによりダメージを受けにくくできる。
【0030】
レーザ光Lは、波長変換層30の内部の特定の深さの位置において集光され、その位置にレーザ光Lのエネルギーが集中し、波長変換層30の内部に改質部200が形成される。改質部200は、レーザ光Lが集光されていない部分よりも脆化した部分である。レーザ光Lは半導体層10の一部が除去された部分10Aに沿って走査され、複数の改質部200が半導体層10の一部が除去された部分10Aに沿って形成される。レーザ光Lの照射で形成された改質部200は応力を発生させ、その応力により波長変換層30の内部に亀裂が生じる。改質部200から波長変換層30の厚さ方向に亀裂が伸展する。
【0031】
レーザ光Lの照射により改質部200を形成した後、
図1Kに示すように、押圧部材300を用いて波長変換層30に力を加え、半導体層10の一部が除去された部分10Aに沿って波長変換層30を割断する。押圧部材300は、半導体層10の一部が除去された部分10Aに沿って延びる。例えば、第2面30a側から押圧部材300による押圧力を波長変換層30に加える。第2面30a側から押圧力を受けた波長変換層30は、改質部200から伸展し第3面30bに達するまたは第3面30bの近くに達する亀裂を起点として第3面30b側から割れ始める。第3面30bに開口する断面V字状の溝30cが半導体層10の一部が除去された部分10Aに沿って形成され、この溝30cが第2面30aまで到達し、波長変換層30は割断される。または、第3面30b側から押圧部材300による押圧力を波長変換層30に加えてもよい。
【0032】
積層体101を複数の発光装置1に個片化するにあたって、半導体層10と波長変換層30とを同じ方法で一括して割断、切断、またはエッチングする方法が考えられる。半導体層10と波長変換層30とを一括して割断する方法においては、半導体層10が割断されにくい。また、ブレードを用いて半導体層10と波長変換層30とを一括して切断する方法においては、波長変換層30よりも硬い半導体層10に欠けが生じやすい。また、半導体層10と波長変換層30とを一括してエッチングする方法においては、半導体層10よりも厚い波長変換層30のエッチングに時間がかかり、発光装置の製造効率を低下させ得る。
【0033】
本実施形態によれば、波長変換層30上において半導体層10を複数の半導体部60に分離した後、波長変換層30を割断して積層体101を複数の発光装置1に個片化するため、半導体層10の半導体部60への分離と、波長変換層30の割断とにそれぞれ適した方法を選択できる。これにより、積層体101へのダメージを低減しつつ容易に積層体101を複数の発光装置1に個片化することができる。
【0034】
発光装置1における波長変換層30の第3面30bが、光の主な取り出し面となる。なお、発光装置1において、光は、半導体層10の側面、透光層20の側面、及び波長変換層30の側面からも取り出され得る。
【0035】
図1Gに示すように、半導体層10を複数の半導体部60に分離する工程において透光層20の一部も除去することで、波長変換層30の割断による積層体101の発光装置1への個片化が容易になる。また、半導体層10を複数の半導体部60に分離する工程において、半導体層10の一部及び透光層20の一部が除去された部分の下方に位置する波長変換層30の一部も除去して、波長変換層30の厚さを薄くしてもよい。この場合、波長変換層30の割断がさらに容易になる。
【0036】
半導体層10の一部及び透光層20の一部が除去された部分の下方に位置する波長変換層30の第2面30aの一部は、
図1Lに示すように、個片化された発光装置1において透光層20及び半導体層10から露出する外周部30a1となる。
【0037】
図1Fに示す積層体101を準備する工程において、積層体101は、導電層40と、第1絶縁膜51と、第2絶縁膜52とをさらに有してよい。
【0038】
導電層40は、p側半導体層13上に配置され、p側半導体層13と電気的に接続されている。導電層40は、後述するp側電極から供給される電流を、p側半導体層13の面方向に拡散させる機能を有する。
【0039】
また、導電層40は、活性層12が発する光に対して高い反射性を有することができる。導電層40が高い反射性を有するとは、導電層40が、活性層12が発する光の発光ピーク波長に対して、50%以上、好ましくは60%以上の反射率を有することを表す。導電層40の材料として、例えば、銀またはアルミニウムを用いることができる。
【0040】
第1絶縁膜51は、p側半導体層13の上面及び導電層40を覆っている。第1絶縁膜51が導電層40を覆っていることで、水分等による導電層40への影響を低減し、導電層40のマイグレーションの発生を低減できる。第1絶縁膜51として、例えば、シリコン酸化膜またはシリコン窒化膜を用いることができる。
【0041】
第2絶縁膜52は、第1絶縁膜51を覆っている。また、第2絶縁膜52は、第1n側露出面11aの一部及び第2n側露出面11bの一部を覆っている。また、第2絶縁膜52は、第1n側露出面11aとp側半導体層13の上面とに連続する半導体層10の側面、及び第2n側露出面11bとp側半導体層13の上面とに連続する半導体層10の側面を覆っている。
【0042】
積層体101を準備する工程は、
図1Fに示す積層体101を購入して準備することができる。または、積層体101を準備する工程は、
図1A~
図1Eを参照して説明する以下の工程を有してもよい。
【0043】
積層体101を準備する工程は、ウェハWを準備する工程と、ウェハWの第1基板91を除去し、半導体層10の第1面10aを露出させる工程と、第1面10a上に透光層20を形成する工程と、透光層20に波長変換層30を接合する工程とを有することができる。
【0044】
ウェハWを準備する工程において、
図1Aに示すように、ウェハWは、第1基板91と、第1基板91上に配置された半導体層10とを有する。また、ウェハWは、前述した導電層40、第1絶縁膜51、及び第2絶縁膜52をさらに有してもよい。
【0045】
第1基板91は、例えば、MOCVD(metal organic chemical vapor deposition)法による半導体層10の形成に用いた基板である。第1基板91として、例えば、サファイア基板を用いることができる。
【0046】
ウェハWの第1基板91を除去する工程において、例えば、レーザリフトオフ法により、第1基板91を除去することができる。ウェハWにおいて第1基板91が除去され、
図1Cに示すように、半導体層10の第1面10aが露出する。
【0047】
露出された第1面10a上には、
図1Eに示すように、透光層20が形成される。透光層20は、例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)法により、第1面10a上に形成することができる。
【0048】
透光層20には、
図1Fに示すように、波長変換層30が接合され、積層体101が準備される。透光層20と波長変換層30とは、押圧力及び熱を加えた状態で直接接合することができる。
【0049】
積層体101を準備する工程は、
図1Bに示すように、ウェハWにおける第1基板91の反対側に位置する面側を第2基板92に接合する工程を有することが好ましい。ウェハWと第2基板92とを接合した後に、第1基板91を除去する。これにより、第1基板91が除去されても、第2基板92により半導体層10を安定して支持した状態で、透光層20の形成及び波長変換層30の接合を行いやすい。
【0050】
第2基板92として、第1基板91と同じ材料の基板を用いることができる。ウェハWにおける第1基板91の反対側に位置する面側は、接合部材93によって第2基板92と接合される。接合部材93の材料として、例えば、樹脂を用いることができる。
【0051】
積層体を準備する工程は、第1基板91を除去して半導体層10の第1面10aを露出させた後、
図1Dに示すように、第1面10aを粗面化する工程をさらに有することが好ましい。これにより、第1面10aからの光取り出し効率を向上できる。
【0052】
例えば、TMAH(Tetramethylammonium hydroxide)等のアルカリ溶液を使用したウェットエッチング、または塩素を含むガスによるドライエッチングにより、第1面10aを粗面化することができる。
【0053】
第1面10aを粗面化した場合、
図1Eに示すように、透光層20は粗面化された第1面10a上に形成される。透光層20と波長変換層30との直接接合には、接合面における平坦性が求められる。透光層20を粗面化した第1面10a上に形成した場合には、積層体101を準備する工程は、透光層20における波長変換層30が接合される面を化学的機械的研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)により研磨する工程をさらに有することが好ましい。これにより、透光層20における波長変換層30が接合される面の平坦性を高めて、透光層20と波長変換層30との接合強度を高くすることができる。透光層20における波長変換層30が接合される面の表面粗さ(算術平均粗さ)は、例えば、0.2nm以下が好ましい。
【0054】
透光層20に波長変換層30を接合した後、第2基板92は除去される。例えば、第2基板92と接合部材93との界面にレーザ光を照射して、その界面に位置する接合部材93を蒸発させることで第2基板92を接合部材93から剥離することができる。この後、接合部材93は、例えば、薬液を使って溶解させて半導体層10から除去することができる。
【0055】
半導体層10を複数の半導体部60に分離する工程において除去される半導体層10の一部の厚さは、透光層20の厚さよりも厚いことが好ましい。これにより、半導体層10の第1面10a上に形成された透光層20の内部応力により半導体層10に亀裂が生じにくくできる。
【0056】
第1実施形態に係る発光装置の製造方法は、
図1Hに示すように、第2絶縁膜52上にp側電極71及びn側電極72を形成する工程をさらに備えることができる。
【0057】
p側電極71は、第2絶縁膜52に形成された開口及び第1絶縁膜51に形成された開口において導電層40の上面に接する。p側電極71は、導電層40を介して、p側半導体層13と電気的に接続される。n側電極72は、第1n側露出面11aに接し、第1n側半導体層11と電気的に接続される。
【0058】
p側電極71及びn側電極72の材料として、例えば、Ag、Ni、Ti、Pt、Al、Ru、Rh、Au等の金属材料又はそれらの合金を用いることができる。p側電極71及びn側電極72は、上記の金属材料の単層としてもよいし、複数の金属層を有する積層構造としてもよい。
【0059】
第1実施形態に係る発光装置の製造方法は、
図1Iに示すように、p側外部接続電極81及びn側外部接続電極82を形成する工程をさらに備えることができる。
【0060】
p側外部接続電極81は、p側電極71上に形成され、p側電極71と電気的に接続される。n側外部接続電極82は、n側電極72上に形成され、n側電極72と電気的に接続される。p側外部接続電極81の厚さ及びn側外部接続電極82の厚さは、p側電極71の厚さ及びn側電極72の厚さよりも厚い。
【0061】
p側外部接続電極81及びn側外部接続電極82の材料として、例えば、Ag、Ni、Ti、Pt、Al、Ru、Rh、Au等の金属材料又はそれらの合金を用いることができる。p側外部接続電極81及びn側外部接続電極82は、上記の金属材料の単層としてもよいし、複数の金属層を有する積層構造としてもよい。
【0062】
p側電極71、n側電極72、p側外部接続電極81、及びn側外部接続電極82を形成する各工程は、波長変換層30を割断する前であればどのタイミングで行ってよい。なお、半導体層10をエッチングして一部を除去する工程においてレジストマスクを使う場合には、p側外部接続電極81及びn側外部接続電極82を形成する前の積層体101上にレジスマスクを配置することが好ましい。これにより、p側外部接続電極81及びn側外部接続電極82を形成した状態の積層体101よりも厚さが薄い状態の積層体101上にレジストマスクを配置でき、露光及び現像によるレジストマスクのパターニング精度を向上しやすくできる。
【0063】
[第2実施形態]
図2A及び
図2Bを参照して、第2実施形態に係る発光装置2の製造方法について説明する。
【0064】
第2実施形態によれば、
図2Aに示すように、半導体層10を複数の半導体部60に分離する工程において、半導体層10の一部が除去された部分10Aにおいて透光層20を半導体層10から露出させる。半導体層10の一部が除去された部分10Aの下方における波長変換層30の第2面30a上に透光層20が残る。この透光層20により、波長変換層30をエッチングから保護することができ、波長変換層30の変質を防ぐことができる。
【0065】
そして、積層体101を複数の発光装置2に個片化する工程において、半導体層10の一部が除去された部分10Aに沿って透光層20と波長変換層30とを割断する。前述した波長変換層30の割断に伴って透光層20も割断される。
【0066】
第2実施形態によれば、
図2Bに示すように、個片化された発光装置2において、波長変換層30の第2面30aの外周部30a1上に透光層20が配置される。これにより、半導体層10からの光が波長変換層30全体に導光され、波長変換層30から出射される光の輝度ムラが低減された発光装置2にすることができる。
【0067】
[第3実施形態]
図3A~
図3Dを参照して、第3実施形態に係る発光装置3の製造方法について説明する。
【0068】
第3実施形態によれば、
図3Aに示すように、積層体102を準備する工程において、透光層120は、波長変換層30上に配置された第1透光層121と、第1透光層121上に配置された第2透光層122とを有する。第2透光層122は、第1透光層121と半導体層10との間に位置する。第2透光層122の材料として、第1及び第2実施形態における透光層20と同じ材料を用いることができる。
【0069】
図3AにおけるA部の拡大断面図である
図3Bに示すように、第1透光層121は、複数の誘電体層を有する。複数の誘電体層は、波長変換層30と第2透光層122との間に交互に積層された第1誘電体層121a及び第2誘電体層121bを含む。第1誘電体層121a及び第2誘電体層121bの積層ペア数は、
図3Bに示すペア数に限らない。
【0070】
複数の誘電体層を有する第1透光層121は、活性層12が発する光の波長域の光は透過させやすく、波長変換層30で波長変換された光の波長域の光は反射しやすい特性を持つ。このような特性を持つ第1透光層121により、発光装置3における波長変換層30の第3面30bからの光取り出し効率を向上させることができる。
【0071】
例えば、第1誘電体層121a及び第2誘電体層121bのうちの一方の材料として酸化ニオブ(Nb2O5)を、他方の材料として酸化シリコン(SiO2)を用いることができる。
【0072】
第3実施形態によれば、
図3Cに示すように、半導体層10を複数の半導体部60に分離する工程において、半導体層10の一部が除去された部分10Aにおいて第1透光層121を半導体層10及び第2透光層122から露出させる。半導体層10の一部が除去された部分10Aの下方における波長変換層30の第2面30a上に第1透光層121が残る。この第1透光層121により、波長変換層30をエッチングから保護することができ、波長変換層30の変質を防ぐことができる。
【0073】
そして、積層体102を複数の発光装置3に個片化する工程において、半導体層10の一部が除去された部分10Aに沿って第1透光層121と波長変換層30とを割断する。前述した波長変換層30の割断に伴って第1透光層121も割断される。
【0074】
第3実施形態によれば、
図3Dに示すように、個片化された発光装置3において、波長変換層30の第2面30aの外周部30a1上に第1透光層121が配置される。
【0075】
第3実施形態の積層体102を準備する工程において、
図3Bに示すように、第1透光層121の複数の誘電体層のうち第2透光層122に接する誘電体層(第2誘電体層121b1)の厚さを、複数の誘電体層のうち第2透光層122に接する誘電体層(第2誘電体層121b1)以外の他の誘電体層のそれぞれの厚さよりも厚くすることが好ましい。これにより、半導体層10を複数の半導体部60に分離する工程のエッチングにおいて、所定のペア数の第1誘電体層121a及び第2誘電体層121bを、半導体層10の一部が除去された部分10Aの下方における波長変換層30の第2面30a上に残しやすくできる。換言すると、個片化された発光装置3において、波長変換層30の第2面30aの外周部30a1上に、所定のペア数の第1誘電体層121a及び第2誘電体層121bを残しやすくできる。これにより、波長変換層30で波長変換され外周部30a1に向かう光を第1透光層121で反射させて、第3面30bからの光取り出し効率を向上させることができる。
【0076】
本発明の実施形態は、以下の発光装置の製造方法を含むことができる。
【0077】
[項1]
波長変換層と、前記波長変換層上に配置された透光層と、前記透光層上に配置された半導体層と、を有する積層体を準備する工程と、
前記半導体層の一部を除去することにより、前記波長変換層上において前記半導体層を複数の半導体部に分離する工程と、
前記半導体層の一部が除去された部分に沿って前記波長変換層を割断して、前記積層体を複数の発光装置に個片化する工程と、
備える発光装置の製造方法。
[項2]
前記半導体層を複数の前記半導体部に分離する工程において、前記半導体層の前記一部をエッチングにより除去する項1に記載の発光装置の製造方法。
[項3]
前記半導体層を複数の前記半導体部に分離する工程において、前記透光層の一部も除去し、前記半導体層の一部が除去された部分において前記波長変換層を前記半導体層及び前記透光性から露出させる項1または2に記載の発光装置の製造方法。
[項4]
前記半導体層を複数の前記半導体部に分離する工程において、前記半導体層の一部が除去された部分において前記透光層を前記半導体層から露出させて、
前記積層体を複数の発光装置に個片化する工程において、前記半導体層の一部が除去された部分に沿って前記透光層と前記波長変換層とを割断する項1または2に記載の発光装置の製造方法。
[項5]
前記積層体を準備する工程において、前記透光層は、前記波長変換層上に配置され、複数の誘電体層を有する第1透光層と、前記第1透光層上に配置された第2透光層とを有し、
前記半導体層を複数の前記半導体部に分離する工程において、前記半導体層の一部が除去された部分において前記第1透光層を前記半導体層及び前記第2透光層から露出させ、
前記積層体を複数の前記発光装置に個片化する工程において、前記半導体層の一部が除去された部分に沿って前記第1透光層と前記波長変換層とを割断する項1または2に記載の発光装置の製造方法。
[項6]
前記積層体を準備する工程において、前記複数の誘電体層のうち前記第2透光層に接する誘電体層の厚さを、前記複数の誘電体層のうち前記誘電体層以外の他の誘電体層のそれぞれの厚さよりも厚くする項5に記載の発光装置の製造方法。
[項7]
前記半導体層を複数の前記半導体部に分離する工程において除去される前記半導体層の前記一部の厚さは、前記透光層の厚さよりも厚い項1~6のいずれか1つに記載の発光装置の製造方法。
[項8]
前記積層体を準備する工程は、
第1基板と、前記第1基板上に配置された前記半導体層とを有するウェハを準備する工程と、
前記ウェハの前記第1基板を除去し、前記半導体層の第1面を露出させる工程と、
前記第1面上に前記透光層を形成する工程と、
前記透光層に前記波長変換層を接合する工程と、
を有する項1~7のいずれか1つに記載の発光装置の製造方法。
[項9]
前記積層体を準備する工程は、前記ウェハにおける前記第1基板の反対側に位置する面側を第2基板に接合する工程をさらに有し、
前記ウェハと前記第2基板とを接合した後に、前記第1基板を除去する項8に記載の発光装置の製造方法。
[項10]
前記積層体を準備する工程は、前記半導体層の前記第1面を粗面化する工程をさらに有する項8または9に記載の発光装置の製造方法。
[項11]
前記透光層を形成する工程において、前記透光層は粗面化された前記第1面上に形成され、
前記積層体を準備する工程は、前記透光層における前記波長変換層が接合される面を化学的機械的研磨により研磨する工程をさらに有する項10に記載の発光装置の製造方法。
【0078】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。本発明の上述した実施形態を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての形態も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものである。
【符号の説明】
【0079】
1~3…発光装置、10…半導体層、10a…第1面、11…n側半導体層、11a…第1n側露出面、11b…第2n側露出面、12…活性層、13…p側半導体層、20…透光層、30…波長変換層、30a…第2面、30b…第3面、30c…溝、40…導電層、51…第1絶縁膜、52…第2絶縁膜、60…半導体部、71…p側電極、72…n側電極、81…p側外部接続電極、82…n側外部接続電極、91…第1基板、92…第2基板、93…接合部材、101~102…積層体、120…透光層、121…第1透光層、121a…第1誘電体層、121b(121b1)…第2誘電体層、122…第2透光層、200…改質部、300…押圧部材、W…ウェハ、L…レーザ光