(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177973
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】配線基板、電子装置及び配線基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 1/02 20060101AFI20241217BHJP
H05K 3/46 20060101ALI20241217BHJP
H05K 3/44 20060101ALI20241217BHJP
H05K 3/40 20060101ALI20241217BHJP
H05K 1/11 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
H05K1/02 Q
H05K3/46 U
H05K3/44 B
H05K3/40 E
H05K3/40 K
H05K1/11 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096421
(22)【出願日】2023-06-12
(71)【出願人】
【識別番号】000190688
【氏名又は名称】新光電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 健一
【テーマコード(参考)】
5E315
5E316
5E317
5E338
【Fターム(参考)】
5E315AA05
5E315AA11
5E315BB03
5E315BB04
5E315BB15
5E315BB16
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5E338BB72
5E338BB75
5E338CC08
5E338EE02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】放熱効率を向上する配線基板、電子装置及び配線基板の製造方法を提供する。
【解決手段】配線基板100は、金属板110と、第1貫通孔113と、絶縁層120と、第2貫通孔121と、配線層130と、貫通配線135と、を有する。第1貫通孔113は、金属板110に形成される。絶縁層120は、金属板110の両面と第1貫通孔113の内壁面とを被覆する。第2貫通孔121は、第1貫通孔113内の絶縁層120の内側に形成される。配線層130は、金属板110の両面側において絶縁層120上に積層される。貫通配線135は、第2貫通孔121に形成され、金属板110の両面側の配線層130を接続する。金属板110は、有底箱状に湾曲して金属板110の一方の面側に空間Sを形成する湾曲部111を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板と、
前記金属板に形成される第1貫通孔と、
前記金属板の両面と前記第1貫通孔の内壁面とを被覆する絶縁層と、
前記第1貫通孔内の前記絶縁層の内側に形成される第2貫通孔と、
前記金属板の両面側において前記絶縁層上に積層される配線層と、
前記第2貫通孔に形成され、前記金属板の両面側の前記配線層を接続する貫通配線と
を有し、
前記金属板は、
有底箱状に湾曲して前記金属板の一方の面側に空間を形成する湾曲部を有する
ことを特徴とする配線基板。
【請求項2】
前記金属板は、
前記湾曲部の外周に形成され、前記空間から離れる方向に迫り出す鍔部
を有することを特徴とする請求項1に記載の配線基板。
【請求項3】
前記第1貫通孔は、
前記湾曲部及び前記鍔部に形成され、
前記金属板の他方の面側の前記配線層は、
前記湾曲部における前記第1貫通孔の位置に対応して形成される第1パッドと、
前記鍔部における前記第1貫通孔の位置に対応して形成される第2パッドと、
前記第1パッドと前記第2パッドとを接続する配線と
を有することを特徴とする請求項2に記載の配線基板。
【請求項4】
前記鍔部は、
スリットを介して分割されている
ことを特徴とする請求項2に記載の配線基板。
【請求項5】
前記金属板の他方の面側の前記配線層上に設けられた他の絶縁層と、
前記他の絶縁層上に設けられた他の配線層と、
前記他の絶縁層中に設けられたビア配線と
をさらに有し、
前記他の配線層は、
前記ビア配線を介して、前記配線層に接続される
ことを特徴とする請求項1に記載の配線基板。
【請求項6】
前記空間に収容されるとともに、前記金属板の一方の面側の前記配線層に電気的に接続される電子部品
をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の配線基板。
【請求項7】
第1配線基板と、
前記第1配線基板上に固定された電子部品と、
前記電子部品上及び前記第1配線基板上に搭載された第2配線基板と、
前記第2配線基板上に搭載された他の電子部品と
を有し、
前記第2配線基板は、
金属板と、
前記金属板に形成される第1貫通孔と、
前記金属板の両面と前記第1貫通孔の内壁面とを被覆する絶縁層と、
前記第1貫通孔内の前記絶縁層の内側に形成される第2貫通孔と、
前記金属板の両面側において前記絶縁層上に積層される配線層と、
前記第2貫通孔に形成され、前記金属板の両面側の前記配線層を接続する貫通配線と
を有し、
前記金属板は、
有底箱状に湾曲して前記金属板の一方の面側に前記電子部品を収容可能な空間を形成する湾曲部を有し、
前記電子部品は、
前記空間に収容されるとともに、前記金属板の一方の面側の前記配線層に電気的に接続されており、
前記他の電子部品は、
前記金属板の他方の面側の前記配線層に電気的に接続されている、
ことを特徴とする電子装置。
【請求項8】
金属板を準備する工程と、
前記金属板に第1貫通孔を形成する工程と、
前記金属板の両面に、一部が前記第1貫通孔を充填する絶縁層を形成する工程と、
前記絶縁層の前記第1貫通孔を充填する部分に第2貫通孔を形成する工程と、
前記金属板の両面側において前記絶縁層上に配線層を形成するとともに、前記第2貫通孔に前記金属板の両面側の前記配線層を接続する貫通配線を形成する工程と
を有し、
前記金属板を準備する工程は、
有底箱状に湾曲して前記金属板の一方の面側に電子部品を収容可能な空間を形成する湾曲部を有する前記金属板を成形する
ことを特徴とする配線基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板、電子装置及び配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高密度な部品実装を実現するために、例えば半導体チップなどの電子部品を基板の内部に内蔵する部品内蔵型の配線基板が注目されている。このような配線基板は、例えば絶縁性の絶縁層と導電性の配線層とからなる層を積層した基板にキャビティを設け、電子部品が配置されたキャビティ内に、電子部品を被覆する絶縁性樹脂を充填することで製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、電子部品を内蔵する配線基板においては、電子部品が発する熱を十分に放熱することが困難であるという問題がある。すなわち、内蔵される電子部品の周囲は、熱伝導性が低い絶縁性樹脂によって被覆されているため、電子部品が発する熱は、熱伝導性が高い金属の端子から基板の配線層を伝って外部に放熱される。しかしながら、電子部品の表面積において端子が占める面積は小さく、放熱の効率はあまり高くない。このため、特に電子部品の発熱量が比較的大きいものである場合は、これらの電子部品の端子から十分な放熱をすることが困難である。
【0005】
開示の技術は、上記に鑑みてなされたものであって、放熱効率を向上することができる配線基板、電子装置及び配線基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の開示する配線基板は、一つの態様において、金属板と、第1貫通孔と、絶縁層と、第2貫通孔と、配線層と、貫通配線とを有する。第1貫通孔は、金属板に形成される。絶縁層は、金属板の両面と第1貫通孔の内壁面とを被覆する。第2貫通孔は、第1貫通孔内の絶縁層の内側に形成される。配線層は、金属板の両面側において絶縁層上に積層される。貫通配線は、第2貫通孔に形成され、金属板の両面側の配線層を接続する。金属板は、有底箱状に湾曲して金属板の一方の面側に空間を形成する湾曲部を有する。
【発明の効果】
【0007】
本願の開示する配線基板の一つの態様によれば、放熱効率を向上することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る配線基板の構成を示す図である。
【
図2】
図2は、金属板の上面側の配線層の構成を示す図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係る配線基板の製造方法を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、貫通孔形成工程の具体例を示す図である。
【
図6】
図6は、絶縁層形成工程の具体例を示す図である。
【
図7】
図7は、貫通孔形成工程の具体例を示す図である。
【
図8】
図8は、DFRパターニング工程の具体例を示す図である。
【
図9】
図9は、電解銅めっき工程の具体例を示す図である。
【
図11】
図11は、ソルダーレジスト層形成工程の具体例を示す図である。
【
図12】
図12は、第1実施形態に係る電子装置の製造方法を示すフローチャートである。
【
図14】
図14は、ICチップ固定工程の具体例を示す図である。
【
図15】
図15は、配線基板搭載工程の具体例を示す図である。
【
図18】
図18は、第2実施形態に係る配線基板の構成を示す図である。
【
図19】
図19は、第2実施形態に係る配線基板の製造方法を示すフローチャートである。
【
図20】
図20は、ソルダーレジスト層形成工程の具体例を示す図である。
【
図21】
図21は、ビルドアップ工程の具体例を示す図である。
【
図22】
図22は、ソルダーレジスト層形成工程の具体例を示す図である。
【
図23】
図23は、第3実施形態に係る配線基板の構成を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本願の開示する配線基板、電子装置及び配線基板の製造方法の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態により開示技術が限定されるものではない。
【0010】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る配線基板100の構成を示す図である。
図1においては、配線基板100の断面を模式的に示している。
図1に示す配線基板100は、例えば、半導体チップなどの電子部品を搭載する電子装置において、電子部品と他の電子部品とを電気的に接続する中継基板として利用することが可能である。
【0011】
配線基板100は、金属板110、絶縁層120、配線層130及びソルダーレジスト層140、150を有する。なお、以下においては、ソルダーレジスト層140が形成される側の金属板110の一方の面を下面110aとし、ソルダーレジスト層150が形成される側の金属板110の他方の面を上面110bとして説明する。ただし、配線基板100は、例えば上下反転して用いられても良く、任意の姿勢で用いられて良い。
【0012】
金属板110は、金属製の板状部材であり、配線基板100の基材である。金属板110としては、例えば、銅やアルミニウム等からなる板状部材等を用いることができる。金属板110の表面は、例えば酸化防止膜等の保護膜によって被覆されていてもよい。金属板110の厚さは、例えば150~300μm程度とすることができる。
【0013】
金属板110には、金属板110を厚さ方向に貫通する貫通孔113(第1貫通孔の一例)が形成されている。貫通孔113は、例えば開口部の直径が90~170μm程度の円筒形状の貫通孔である。
【0014】
絶縁層120は、金属板110の下面110a及び上面110bと貫通孔113の内壁面とを被覆する層である。絶縁層120は、例えばエポキシ樹脂又はポリイミド樹脂等の絶縁樹脂を用いて形成される。貫通孔113内の絶縁層120の内側には貫通孔121(第2貫通孔の一例)が形成され、貫通孔121の内部に貫通配線135が形成されている。
【0015】
配線層130は、金属板110の両面(下面110a及び上面110b)側において、絶縁層120上に積層される。配線層130は、例えば銅や銅合金などの金属を用いて形成される。金属板110の両面(下面110a及び上面110b)側の配線層130は、必要に応じて貫通配線135によって接続される。
【0016】
ソルダーレジスト層140は、金属板110の下面110a側の配線層130を被覆し、配線を保護する層である。ソルダーレジスト層140は、例えばアクリル樹脂及びポリイミド樹脂等の絶縁性の感光性樹脂からなる層であり、絶縁層の1つである。なお、ソルダーレジスト層140は、例えばエポキシ樹脂等の絶縁性の非感光性樹脂を用いて形成されても良い。
【0017】
配線基板100のソルダーレジスト層140側は、電子部品や実装基板に接続される面である。電子部品や実装基板と電気的に接続される位置においては、ソルダーレジスト層140に開口部が形成され、この開口部から配線層130が露出する。
【0018】
ソルダーレジスト層150は、金属板110の上面110b側の配線層130を被覆し、配線を保護する層である。ソルダーレジスト層150は、例えばアクリル樹脂及びポリイミド樹脂等の絶縁性の感光性樹脂からなる層であり、絶縁層の1つである。なお、ソルダーレジスト層150は、例えばエポキシ樹脂等の絶縁性の非感光性樹脂を用いて形成されても良い。
【0019】
配線基板100のソルダーレジスト層150側は、ソルダーレジスト層140側に接続される電子部品とは異なる他の電子部品が搭載される面である。他の電子部品が搭載される位置においては、ソルダーレジスト層150に開口部が形成され、この開口部から配線層130が露出する。また、他の電子部品が搭載される位置とは異なる位置においても、ソルダーレジスト層150に開口部が形成され、この開口部から配線層130が露出する。
【0020】
次に、金属板110の詳細について説明する。金属板110は、湾曲部111及び鍔部112を有する。
【0021】
湾曲部111は、金属製の板状部材が有底箱状に湾曲することにより形成される。湾曲部111は、金属板110の下面110a側に、電子部品を収容可能な空間Sを形成する。すなわち、湾曲部111の底部及び側壁によって囲まれる領域に、空間Sが形成される。
【0022】
本実施形態では、金属板110に湾曲部111を形成することにより、湾曲部111の底部及び側壁が、ソルダーレジスト層140及び絶縁層120を介して、比較的に大きな面積で電子部品の上面及び側面と対向する。このため、空間Sに収容される電子部品において発生する熱が、ソルダーレジスト層140及び絶縁層120を介して効率良く金属板110へ伝導し、金属板110から放熱される。その結果、配線基板100の放熱効率を向上することができる。
【0023】
鍔部112は、湾曲部111の側壁外周の下端部が空間Sから離れる方向へ迫り出すことにより形成される。鍔部112は、金属板110の下面110a側に、実装基板に接続される面を形成する。すなわち、鍔部112に対応するソルダーレジスト層140の下面が、実装基板に接続される。
【0024】
本実施形態では、金属板110に鍔部112を形成することにより、金属板110の放熱面積が鍔部112の分だけ増大するとともに、ソルダーレジスト層140の下面に実装基板との接続面を形成することができる。このため、空間Sに収容される電子部品から金属板110へ伝導する熱が、金属板110から絶縁層120及びソルダーレジスト層140を介して実装基板へ効率的に放熱される。その結果、配線基板100の放熱効率をより向上することができる。
【0025】
図2は、金属板110の上面110b側の配線層130の構成を示す図である。
図1及び
図2に示すように、金属板110の湾曲部111及び鍔部112には、貫通孔113が形成される。湾曲部111における貫通孔113の位置に対応して、金属板110の上面110b側の配線層130には、他の電子部品と電気的に接続されるパッド131(第1パッドの一例)が形成される。また、鍔部112における貫通孔113の位置に対応して、金属板110の上面110b側の配線層130には、実装基板から他の電子部品への給電及び信号伝送に用いられるパッド132(第2パッドの一例)が形成される。
【0026】
パッド131どうしは、配線133によって接続される。これにより、湾曲部111と上面視で重なる範囲において、パッド131間での信号伝送が実現可能となる。
【0027】
これに対し、パッド131とパッド132とは、配線134によって接続される。これにより、湾曲部111及び鍔部112と上面視で重なる範囲において、実装基板から他の電子部品への給電及び信号伝送が実現可能となる。
【0028】
次に、上記のように構成された配線基板100の製造方法について、
図3を参照しながら、具体的に例を挙げて説明する。
図3は、第1実施形態に係る配線基板100の製造方法を示すフローチャートである。
【0029】
まず、配線基板100の基材となる金属板110が準備される(ステップS101)。すなわち、金属製の板状部材に例えばプレス加工が施されることにより、例えば
図4に示すように、湾曲部111及び鍔部112を有する金属板110が成形される。
図4は、金属板110の構造を示す図である。湾曲部111は、有底箱状に湾曲して金属板110の下面110a側に電子部品を収容可能な空間Sを形成する。湾曲部111の側壁外周の下端部においては、鍔部112が空間Sから離れる方向へ迫り出すように形成される。
【0030】
そして、金属板110を厚み方向に貫通する貫通孔113が形成される(ステップS102)。貫通孔113は、例えば
図5に示すように、金属板110の湾曲部111及び鍔部112の両方に形成され、開口部の直径が90~170μm程度の円筒形状を有する。
図5は、貫通孔形成工程の具体例を示す図である。貫通孔113は、例えば打ち抜き加工又はエッチング加工によって形成される。
【0031】
金属板110に貫通孔113が形成された後、金属板110の下面110a及び上面110bに絶縁層が形成される(ステップS103)。すなわち、金属板110の下面110a及び上面110bに、例えばエポキシ樹脂又はポリイミド樹脂等の耐熱性を有し、非感光性及び熱硬化性の樹脂からなる絶縁層120が積層される。金属板110の下面110a及び上面110bに積層された絶縁層120の一部は、例えば
図6に示すように、貫通孔113を充填する。
図6は、絶縁層形成工程の具体例を示す図である。金属板110の下面110a及び上面110b側の絶縁層120は、貫通孔113において一体化され、金属板110の下面110a及び上面110bを被覆するとともに、一部が貫通孔113を充填する一つの絶縁層120が形成される。
【0032】
そして、絶縁層120の貫通孔113を充填する部分に、絶縁層120を貫通する貫通孔121が形成される(ステップS104)。貫通孔121は、例えば
図7に示すように、貫通孔113内の絶縁層120が残存するように形成される。
図7は、貫通孔形成工程の具体例を示す図である。貫通孔121は、例えばレーザ加工又はドリル加工によって形成される。
【0033】
絶縁層120に貫通孔121が形成されると、金属板110の両面(下面110a及び上面110b)側において、絶縁層120上に配線層130が形成される。具体的には、まず貫通孔121の内壁面を含む絶縁層120の表面に、例えば無電解銅めっきによってシード層が形成され、シード層上にドライフィルムレジスト(DFR)が貼付される。そして、DFRのパターニングによって、配線層130の配線パターン形成位置に開口部が形成される(ステップS105)。
【0034】
すなわち、例えば
図8に示すように、金属板110の両面(下面110a及び上面110b)側において、絶縁層120の表面のシード層(不図示)上にDFR160が貼付され、配線層130の配線パターン形成位置に開口部161が形成される。
図8は、DFRパターニング工程の具体例を示す図である。
【0035】
DFR160のパターニングが行われると、電解銅めっきが施されることにより(ステップS106)、開口部161に銅が析出し、所望の配線パターンを有する配線層130が形成される。例えば、金属板110の上面110b側の配線層130には、パッド131、132及び配線133を含む配線パターンが形成される。
【0036】
このとき、例えば
図9に示すように、絶縁層120の貫通孔121には、電解銅めっきが充填されることで貫通配線135が形成され、金属板110の両面(下面110a及び上面110b)側の配線層130が電気的に接続される。
図9は、電解銅めっき工程の具体例を示す図である。
【0037】
配線層130が形成されると、例えば
図10に示すように、DFR160が剥離され(ステップS107)、その後、配線パターンが形成されている部分以外のシード層がフラッシュエッチングにより除去される。
図10は、DFR剥離工程の具体例を示す図である。DFR160の剥離には、例えば苛性ソーダやアミン系のアルカリ剥離液が用いられる。このようにして、金属板110の両面(下面110a及び上面110b)側において、絶縁層120上に配線層130が形成される。
【0038】
金属板110の両面(下面110a及び上面110b)側において、絶縁層120上に配線層130が形成された後、配線層130がソルダーレジスト層140、150によって被覆される(ステップS108)。すなわち、例えば
図11に示すように、金属板110の下面110a側の配線層130がソルダーレジスト層140によって被覆される。ソルダーレジスト層140には開口部が形成され、この開口部から金属板110の下面110a側の配線層130に形成されたパッド136、137が露出する。パッド136は、空間Sに収容される電子部品と電気的に接続可能であり、パッド137は、配線基板100が実装される実装基板と電気的に接続可能である。一方、金属板110の上面110b側の配線層130がソルダーレジスト層150によって被覆される。ソルダーレジスト層150には開口部が形成され、この開口部から金属板110の上面110b側の配線層130に形成されたパッド131、132が露出する。パッド131は、空間Sに収容される電子部品とは異なる他の電子部品と電気的に接続可能である。
図11は、ソルダーレジスト層形成工程の具体例を示す図である。ソルダーレジスト層140、150が形成されることにより、配線基板100が完成する。
【0039】
この配線基板100は、例えば半導体チップなどの電子部品を搭載する電子装置において、電子部品と他の電子部品とを電気的に接続する中継基板として利用することができる。以下においては、配線基板100を中継基板として有する電子装置の製造方法について、
図12を参照しながら具体的に例を挙げて説明する。
図12は、第1実施形態に係る電子装置の製造方法を示すフローチャートである。
【0040】
まず、電子装置の基材となる実装基板210(第1配線基板の一例)が準備される(ステップS111)。実装基板210の上面には、例えば
図13に示すように、パッド211が形成される。
図13は、実装基板210の構造を示す図である。パッド211は、例えば銅などの導電体により形成され、実装基板210が配線基板100(第2配線基板の一例)に接合される際の接続端子となる。また、パッド211上には、実装基板210と配線基板100とを接合するためのはんだ212が塗布される。はんだ212の塗布は、例えばはんだペーストの印刷によって行われる。
【0041】
続いて、実装基板210の上面に、ICチップ220(電子部品の一例)が固定される(ステップS112)。すなわち、例えば
図14に示すように、実装基板210の上面に、接着層230を介してICチップ220が固定される。
図14は、ICチップ固定工程の具体例を示す図である。また、ICチップ220の電極221上には、ICチップ220と配線基板100とを接合するためのはんだ222が塗布される。はんだ222の塗布は、例えばはんだペーストの印刷によって行われる。
【0042】
実装基板210の上面にICチップ220が固定されると、配線基板100がICチップ220上及び実装基板210上に搭載される(ステップS113)。すなわち、例えば
図15に示すように、実装基板210上のICチップ220が配線基板100の空間Sに収容されるとともに、配線基板100のパッド136が、はんだ222を介してICチップ220の電極221に接続される。また、配線基板100のパッド137が、はんだ212を介して実装基板210のパッド211に接続される。はんだ212、222による接続は、例えばリフロープロセスによって行われる。
図15は、配線基板搭載工程の具体例を示す図である。
【0043】
ICチップ220の上面及び側面は、空間SにICチップ220が収容された状態で、金属板110の湾曲部111の底部及び側壁と対向する。このため、空間Sに収容されるICチップ220において発生する熱が、ソルダーレジスト層140及び絶縁層120を介して効率良く金属板110へ伝導し、金属板110から放熱される。その結果、配線基板100の放熱効率を向上することができる。
【0044】
また、金属板110の鍔部112は、ソルダーレジスト層140の下面に実装基板210との接続面を形成することができる。このため、空間Sに収容されるICチップ220から金属板110へ伝導する熱が、金属板110から絶縁層120及びソルダーレジスト層140を介して実装基板210へ効率的に放熱される。その結果、金属板110に鍔部112が形成されない場合と比較して、配線基板100の放熱効率をより向上することができる。
【0045】
配線基板100がICチップ220上及び実装基板210上に搭載されると、配線基板100上には、例えばインダクタなどの受動部品が搭載される(ステップS114)。すなわち、例えば
図16に示すように、配線基板100の上面に受動部品240(他の電子部品の一例)が搭載される。例えば、受動部品240の電極241が、はんだ242を介して配線基板100のパッド131に接続される。これにより、ICチップ220及び受動部品240が実装されるとともに、ICチップ220と受動部品240とが配線基板100によって電気的に接続された電子装置が得られる。
図16は、電子装置の構成を示す図である。パッド131には、受動部品240の代わりに、例えばICチップなどの能動部品が実装されても良い。また、パッド131には、受動部品240とともに、例えばICチップなどの能動部品が実装されても良い。また、受動部品240としては、インダクタ以外にも、例えばキャパシタ及び抵抗などがある。
【0046】
なお、上記第1実施形態においては、配線基板100が電子装置における中継基板として利用される場合を例に説明したが、配線基板100から、電子部品を搭載する部品搭載基板を形成することもできる。具体的には、
図17に示すように、配線基板100の下面にICチップ220が搭載されることにより、ICチップ220を搭載する部品搭載基板が得られる。
図17は、部品搭載基板の構成を示す図である。例えば、ICチップ220が配線基板100の空間Sに収容されるとともに、配線基板100のパッド136が、はんだ222を介してICチップ220の電極221に接続される。すなわち、
図17に示す部品搭載基板は、
図16に示す電子装置から実装基板210及び受動部品240が省略されたものである。
【0047】
(第2実施形態)
上記第1実施形態においては、金属板110の上面110b側の配線層130がソルダーレジスト層150によって被覆されるものとしたが、金属板110の上面110b側の配線層130に絶縁層及び配線層が積層されてもよい。そこで、第2実施形態においては、金属板110の上面110b側の配線層130に絶縁層及び配線層が積層された配線基板100について説明する。
【0048】
図18は、第2実施形態に係る配線基板100の構成を示す図である。
図18においては、配線基板100の断面を模式的に示している。
図18において、
図1と同じ部分には同じ符号を付す。
【0049】
図18に示す配線基板100は、
図1に示すソルダーレジスト層150に代えて、絶縁層170(他の絶縁層の一例)、配線層180(他の配線層の一例)及びソルダーレジスト層190を有する。
【0050】
絶縁層170は、金属板110の上面110b側の配線層130を被覆する層である。絶縁層170は、絶縁層120と同様に、例えばエポキシ樹脂又はポリイミド樹脂等の絶縁樹脂を用いて形成される。
【0051】
配線層180は、絶縁層170上に積層される。絶縁層170を介して隣接する配線層130、180は、必要に応じて絶縁層170中に設けられたビア配線185によって接続される。
【0052】
ソルダーレジスト層190は、配線層180を被覆し、配線を保護する層である。ソルダーレジスト層190は、例えばアクリル樹脂及びポリイミド樹脂等の絶縁性の感光性樹脂からなる層であり、絶縁層の1つである。なお、ソルダーレジスト層190は、例えばエポキシ樹脂等の絶縁性の非感光性樹脂を用いて形成されても良い。
【0053】
配線基板100のソルダーレジスト層190側は、ソルダーレジスト層140側に接続される電子部品とは異なる他の電子部品が搭載される面である。他の電子部品が搭載される位置においては、ソルダーレジスト層190に開口部が形成され、この開口部から配線層180が露出する。また、他の電子部品が搭載される位置とは異なる位置においても、ソルダーレジスト層190に開口部が形成され、この開口部から配線層180が露出する。
【0054】
次に、上記のように構成された配線基板100の製造方法について、
図19を参照しながら、具体的に例を挙げて説明する。
図19は、第2実施形態に係る配線基板100の製造方法を示すフローチャートである。
図19において、
図3と同じ部分には同じ符号を付す。
【0055】
ステップS105~S107の処理により、絶縁層120上に配線層130が形成された後、例えば
図20に示すように、金属板110の下面110a側の配線層130がソルダーレジスト層140によって被覆される(ステップS201)。
図20は、ソルダーレジスト層形成工程の具体例を示す図である。ソルダーレジスト層140には開口部が形成され、この開口部から金属板110の下面110a側の配線層130に形成されたパッド136、137が露出する。パッド136は、空間Sに収容される電子部品と電気的に接続可能であり、パッド137は、配線基板100が実装される実装基板と電気的に接続可能である。
【0056】
続いて、金属板110の上面110b側の配線層130には、絶縁層170及び配線層180が順にビルドアップされる(ステップS202)。具体的には、例えば
図21に示すように、配線層130の上面に絶縁層170が積層され、絶縁層170の上面に配線層180が形成される。
図21は、ビルドアップ工程の具体例を示す図である。絶縁層170は、例えばエポキシ樹脂又はポリイミド樹脂等の絶縁樹脂を用いて形成される。配線層180は、例えば銅などの金属のめっきによって形成される。配線層180と配線層130との間は、必要に応じて、絶縁層170中に設けられたビア配線185によって電気的に接続される。絶縁層170及び配線層130は、配線層130の上面に複数積層されても良い。
【0057】
そして、配線層180は、例えば
図22に示すように、ソルダーレジスト層190によって被覆される(ステップS203)。
図22は、ソルダーレジスト層形成工程の具体例を示す図である。ソルダーレジスト層190には開口部が形成され、この開口部から配線層180に形成されたパッド181、182が露出する。パッド181は、空間Sに収容される電子部品とは異なる他の電子部品と電気的に接続可能である。ソルダーレジスト層190が形成されることにより、配線基板100が完成する。
【0058】
本実施形態では、金属板110の上面110b側の配線層130に絶縁層170及び配線層180を積層し、配線層180と配線層130とをビア配線185によって接続する。これにより、配線基板100の配線レイアウトの柔軟性を向上することができる。
【0059】
(第3実施形態)
図23は、第3実施形態に係る配線基板100の構成を示す上面図である。
図23において、
図2と同じ部分には同じ符号を付す。
図23に示す配線基板100において、金属板110の鍔部112は、スリット112aを介して分割されている。
【0060】
本実施形態では、鍔部112にスリット112aを設けることにより、スリット112aから電子部品が収容される空間Sへ外気を導入することができ、湾曲部111の空間Sでの電子部品の冷却効率を向上することができる。また、配線基板100が実装基板に接続される際に、実装基板上に部品を配置するためのスペースをスリット112aの位置に確保することができる。これにより、実装基板側の部品レイアウトの柔軟性を向上することができる。
【0061】
以上のように、実施形態に係る配線基板(一例として、配線基板100)は、金属板(一例として、金属板110)と、第1貫通孔(一例として、貫通孔113)と、絶縁層(一例として、絶縁層120)と、第2貫通孔(一例として、貫通孔121)と、配線層(一例として、配線層130)と、貫通配線(一例として、貫通配線135)とを有する。第1貫通孔は、金属板に形成される。絶縁層は、金属板の両面(一例として、下面110a及び上面110b)と第1貫通孔の内壁面とを被覆する。配線層は、金属板の両面側において絶縁層上に積層される。貫通配線は、第2貫通孔に形成され、金属板の両面側の配線層を接続する。金属板は、有底箱状に湾曲して金属板の一方の面(一例として、下面110a)側に空間(一例として、空間S)を形成する湾曲部(一例として、湾曲部111)を有する。これにより、配線基板の放熱効率を向上することができる。
【0062】
また、金属板は、湾曲部の外周に形成され、空間から離れる方向に迫り出す鍔部(一例として、鍔部112)を有していても良い。これにより、配線基板の放熱効率をより向上することができる。
【0063】
また、第1貫通孔は、湾曲部及び前記鍔部に形成されても良い。金属板の他方の面(一例として、上面110b)側の配線層は、第1パッド(一例として、パッド131)と、第2パッド(一例として、パッド132)と、配線(一例として、配線134)とを有していても良い。第1パッドは、湾曲部における第1貫通孔の位置に対応して形成されても良い。第2パッドは、鍔部における第1貫通孔の位置に対応して形成されても良い。配線は、第1パッドと第2パッドとを接続しても良い。これにより、湾曲部及び鍔部と上面視で重なる範囲において、実装基板から他の電子部品への給電及び信号伝送が実現可能となる。
【0064】
また、鍔部は、スリット(一例として、スリット112a)を介して分割されていても良い。これにより、湾曲部の空間での電子部品の冷却効率を向上することができる。
【0065】
また、実施形態に係る配線基板は、金属板の他方の面側の配線層上に設けられた他の絶縁層(一例として、絶縁層170)と、他の絶縁層上に設けられた他の配線層(一例として、配線層180)と、他の絶縁層中に設けられたビア配線(一例として、ビア配線185)とをさらに有していても良い。他の配線層は、ビア配線を介して、配線層に接続されても良い。これにより、配線基板の配線レイアウトの柔軟性を向上することができる。
【0066】
また、実施形態に係る配線基板は、空間に収容されるとともに、金属板の一方の面側の配線層に電気的に接続される電子部品(一例として、ICチップ220)をさらに有していても良い。これにより、電子部品から配線基板への放熱効率を向上することができる。
【符号の説明】
【0067】
100 配線基板
110 金属板
110a 下面
110b 上面
111 湾曲部
112 鍔部
112a スリット
113 貫通孔
120 絶縁層
121 貫通孔
130 配線層
131 パッド
132 パッド
134 配線
135 貫通配線
170 絶縁層
180 配線層
185 ビア配線
210 実装基板
220 ICチップ
240 受動部品
S 空間