(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177975
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】被加工物の処理方法
(51)【国際特許分類】
B24B 41/06 20120101AFI20241217BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20241217BHJP
B24B 7/04 20060101ALI20241217BHJP
B23Q 3/08 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
B24B41/06 L
H01L21/68 N
B24B7/04 A
B23Q3/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096423
(22)【出願日】2023-06-12
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】須藤 雄二郎
【テーマコード(参考)】
3C016
3C034
3C043
5F131
【Fターム(参考)】
3C016DA15
3C034AA08
3C034BB73
3C043BA03
3C043BA16
3C043CC04
3C043DD02
3C043DD04
3C043DD05
5F131AA02
5F131BA32
5F131CA06
5F131CA12
5F131EA05
5F131EB03
5F131EC34
5F131EC62
5F131EC63
5F131EC72
(57)【要約】
【課題】被加工物を薄化する際に、加工品質を維持しつつ製造コストの抑制が可能な被加工物の処理方法を提供すること。
【解決手段】被加工物の処理方法は、貫通孔を有する支持基板と、熱可塑性樹脂を含むシートとを準備する準備ステップ101と、シートの表面側に被加工物の表面をシートの裏面側に支持基板の一方の面をそれぞれ対面させ、シートを加熱することで、シートを介して被加工物と支持基板とを熱圧着し固定する固定ステップ102と、被加工物が固定された支持基板を保持テーブルで保持し、被加工物の裏面を研削加工する加工ステップ103と、支持基板の他方の面から貫通孔を介して流体を供給することで、支持基板とシートとの間に隙間を形成して支持基板をシートから剥離する支持基板剥離ステップ104と、被加工物からシートを剥離するシート剥離ステップ105とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物の処理方法であって、
少なくとも1つの貫通孔を有する支持基板と、熱可塑性樹脂を含むシートと、を準備する準備ステップと、
該シートの表面側に被加工物の一方の面を、該シートの裏面側に該支持基板の一方の面をそれぞれ対面させ、該シートを加熱することで、該シートを介して該被加工物と該支持基板とを熱圧着し固定する固定ステップと、
被加工物が固定された該支持基板を保持テーブルで保持し、該被加工物の他方の面を加工する加工ステップと、
該加工ステップを実施した後、該支持基板の他方の面から該貫通孔を介して流体を供給することで、該支持基板と該シートとの間に隙間を形成して該支持基板を該シートから剥離する支持基板剥離ステップと、
該被加工物から該シートを剥離するシート剥離ステップと、
を備えることを特徴とする、被加工物の処理方法。
【請求項2】
該固定ステップでは、熱可塑性樹脂を含むシートを該支持基板の他方の面側に更に対面させた状態で該シートを加熱することで、該支持基板の他方の面側にも該シートを固定することを特徴とする、請求項1に記載の被加工物の処理方法。
【請求項3】
該貫通孔は、該支持基板に複数形成され、
該支持基板の外周領域に形成される貫通孔の密度が該支持基板の中央領域に形成される貫通孔の密度より高くなるように設定されることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の被加工物の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造プロセスでは、デバイスを所望の厚さにするために、個々のデバイスに分割される前の半導体ウエーハの段階で半導体ウエーハの裏面を研削して薄化する工程が実施されている。
【0003】
近年では、半導体デバイスを搭載する装置の小型化により、デバイスチップを極力薄くすることが要求されている。薄化した半導体ウエーハは取り扱いが困難になるため、研削前に半導体ウエーハの表面側を支持基板に貼り付け、研削後にこの支持基板から半導体ウエーハを剥離する方法が用いられる。
【0004】
ここで、支持基板の貼り付け方法として、加熱により溶融した固形ワックスを用いてワックス膜を作り、このワックス膜を介して半導体ウエーハと支持基板を固定する手法が知られている。
【0005】
ところが、この方法は、作業者の熟練度によってワックスの膜厚が不均一になったり、エアやパーティクルを噛み込んだりしてしまい、研磨後に凹部やうねりを発生することがある。
【0006】
また、研削後にワックスを除去するための洗浄工程が必要となり、その際にウエーハを破損するリスクも問題視されていた。
【0007】
また、スピンコート法を用いてワックス膜を形成する方法も知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に示された方法では、前述の方法と比較して膜厚は一様になるものの、ワックスを浪費するため製造コストが上がってしまうという問題がある。
【0010】
本発明は、上記事実に鑑みてなされたものであり、その目的は、被加工物を薄化する際に、加工品質を維持しつつ製造コストの抑制が可能な被加工物の処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の被加工物の処理方法は、被加工物の処理方法であって、少なくとも1つの貫通孔を有する支持基板と、熱可塑性樹脂を含むシートと、を準備する準備ステップと、該シートの表面側に被加工物の一方の面を、該シートの裏面側に該支持基板の一方の面をそれぞれ対面させ、該シートを加熱することで、該シートを介して該被加工物と該支持基板とを熱圧着し固定する固定ステップと、被加工物が固定された該支持基板を保持テーブルで保持し、該被加工物の他方の面を加工する加工ステップと、該加工ステップを実施した後、該支持基板の他方の面から該貫通孔を介して流体を供給することで、該支持基板と該シートとの間に隙間を形成して該支持基板を該シートから剥離する支持基板剥離ステップと、該被加工物から該シートを剥離するシート剥離ステップと、を備えることを特徴とする。
【0012】
前記被加工物の処理方法において、該固定ステップでは、熱可塑性樹脂を含むシートを該支持基板の他方の面側に更に対面させた状態で該シートを加熱することで、該支持基板の他方の面側にも該シートを固定しても良い。
【0013】
前記被加工物の処理方法において、該貫通孔は、該支持基板に複数形成され、該支持基板の外周領域に形成される貫通孔の密度が該支持基板の中央領域に形成される貫通孔の密度より高くなるように設定されても良い。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、被加工物を薄化する際に、加工品質を維持しつつ製造コストの抑制が可能になるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る被加工物の処理方法の処理対象の被加工物の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態1に係る被加工物の処理方法の流れを示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、
図2に示された被加工物の処理方法の準備ステップにおいて準備される支持基板と、シート等を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、
図3に示された支持基板の変形例1を示す平面図である。
【
図5】
図5は、
図3に示された支持基板の変形例2を示す平面図である。
【
図6】
図6は、
図3に示された支持基板の変形例3を示す平面図である。
【
図7】
図7は、
図3に示された支持基板の変形例4を示す平面図である。
【
図8】
図8は、
図2に示された被加工物の処理方法の固定ステップを一部断面で模式的に示す側面図である。
【
図9】
図9は、
図2に示された被加工物の処理方法の加工ステップを模式的に示す側面図である。
【
図10】
図10は、
図2に示された被加工物の処理方法の支持基板剥離ステップにおいて第2シートを剥離する状態を模式的に示す側面図である。
【
図11】
図11は、
図2に示された被加工物の処理方法の支持基板剥離ステップにおいて支持基板をシートから剥離する状態を模式的に示す側面図である。
【
図12】
図12は、
図2に示された被加工物の処理方法のシート剥離ステップを模式的に示す側面図である。
【
図13】
図13は、実施形態2に係る被加工物の処理方法の支持基板剥離ステップを模式的に一部断面で示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0017】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1に係る被加工物の処理方法を図面に基づいて説明する。
図1は、実施形態1に係る被加工物の処理方法の処理対象の被加工物の一例を模式的に示す斜視図である。
図2は、実施形態1に係る被加工物の処理方法の流れを示すフローチャートである。
【0018】
(被加工物)
実施形態1に係る被加工物の処理方法は、
図1に示す被加工物1に研削加工を施して、被加工物1を所定の仕上げ厚さ2まで薄化する方法である。実施形態1に係る被加工物の処理方法の処理対象の被加工物1は、実施形態1では、SiC(炭化ケイ素)又はGaAs(ガリウム砒素)などを基板3とする円板状の半導体ウエーハ等のウエーハである。
【0019】
被加工物1は、
図1に示すように、表面4の複数の分割予定ライン5によって区画された領域にそれぞれデバイス6が形成されている。デバイス6は、例えば、IC(Integrated Circuit)又はLSI(Large Scale Integration)等の集積回路、又は各種のメモリ(半導体記憶装置)である。
【0020】
(被加工物の処理方法)
実施形態1に係る被加工物の処理方法は、前述した被加工物1に研削加工を施す処理方法である。実施形態1に係る被加工物の処理方法は、
図2に示すように、準備ステップ101と、固定ステップ102と、加工ステップ103と、支持基板剥離ステップ104と、シート剥離ステップ105とを備える。
【0021】
(準備ステップ)
図3は、
図2に示された被加工物の処理方法の準備ステップにおいて準備される支持基板と、シート等を示す斜視図である。
図4は、
図3に示された支持基板の変形例1を示す平面図である。
図5は、
図3に示された支持基板の変形例2を示す平面図である。
図6は、
図3に示された支持基板の変形例3を示す平面図である。
図7は、
図3に示された支持基板の変形例4を示す平面図である。
【0022】
準備ステップ101は、少なくとも1つの貫通孔11を有する支持基板10と、熱可塑性樹脂を含むシート20と、を準備するステップである。実施形態1において、準備ステップ101では、
図3に示すように、前述した被加工物1に加え、支持基板10と、シート20とを準備する。
【0023】
支持基板10は、厚みが一定で硬質な材料で構成されて、剛性の高い基板である。実施形態1では、支持基板10は、サファイア等で構成され、厚さが研削加工前の被加工物1の厚さよりも厚く、かつ被加工物1と同径の円板状に形成されている。実施形態1において、支持基板10は、厚み方向に貫通した貫通孔11を複数有している。実施形態1において、支持基板10は、貫通孔11を平面視の中央に一つ設け、外縁部に周方向に等間隔に複数(8つ)設けている。
【0024】
このように、実施形態1において、支持基板10の外周領域である外縁部に形成される貫通孔11の密度が支持基板10の中央領域である中央に形成される貫通孔11の密度より高くなるように設定されている。なお、貫通孔11の密度とは、支持基板10の両面12,13の単位面積あたりの貫通孔11の数である。
【0025】
しかしながら、本発明では、支持基板10は、貫通孔11を少なくとも一つ有していれば、貫通孔11の数及び配置が、
図4、
図5、
図6及び
図7に示すように、実施形態1のものに限定されない。
図4に示す変形例1では、支持基板10は、貫通孔11を中央に一つのみ設けている。
図5に示す変形例2では、支持基板10は、貫通孔11を中央に一つ設け、中央から外縁に向かって放射上でかつ径方向に等間隔に貫通孔11を設けている。
図6に示す変形例3では、支持基板10は、貫通孔11を中央に一つ設け、外縁部に周方向に等間隔に貫通孔11を設けている。
図7に示す変形例4では、支持基板10は、互いに直交する2方向に等間隔に貫通孔11を設けている。また、貫通孔11は、大きすぎると研削加工時に貫通孔11の形状が被加工物1に転写されてしまう恐れがあり、また、小さすぎると流体63を適切に供給できず支持基板10の剥離がうまくいかない可能性がある。このため、本発明では、貫通孔11は、研削加工時に貫通孔11の形状が被加工物1に転写されることなく、流体63を適切に供給でき支持基板10を剥離することができる大きさであるのが望ましい。
【0026】
シート20は、熱可塑性樹脂を含み、可撓性を有している。実施形態1において、シート20を構成する熱可塑性樹脂は、具体的には、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ビニル系樹脂、ポリアセタール、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4-メチル-1-ペンテン)、ポリ(1-ブテン)等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン-6、ナイロン-66、ポリメタキシレンアジパミド等のポリアミド、ポリアクリレート、ポリメタアクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリエーテルイミド、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレン、エーテルポリブタジエン樹脂、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアミドイミド樹脂、フッ素樹脂、エチレン-不飽和カルボン酸共重合樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、アイオノマー、エチレン-酢酸ビニル-無水マレイン酸三元共重合樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化樹脂、並びに、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂等から選択される一種または二種以上を挙げることができる。
【0027】
上記のエチレン-不飽和カルボン酸共重合体を構成する不飽和カルボン酸は、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、無水マレイン酸、及び、無水イタコン酸等が例示される。ここで、エチレン-不飽和カルボン酸共重合体は、エチレンと不飽和カルボン酸の2元共重合体のみならず、更に他の単量体が共重合された多元共重合体を包含するものである。エチレン-不飽和カルボン酸共重合体に共重合されていてもよい上記他の単量体としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルのようなビニルエステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n-ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸イソブチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチルのような不飽和カルボン酸エステルなどが例示される。
【0028】
また、実施形態1において、シート20は、前述した熱可塑性樹脂の成分、分子量等が適宜調整されることで、軟化点が0℃以上でかつ300℃以下(望ましくは、80℃以上でかつ100℃以下)に調整されている。実施形態1では、シート20の10℃から30℃での貯蔵弾性率は1×106(Pa)以上でかつ1×109(Pa)以下であり、加熱時(貼着時)の温度80℃から100℃での貯蔵弾性率は1×106(Pa)以上でかつ1×107(Pa)以下である。
【0029】
また、実施形態1において、シート20は、厚さが150μmであり、被加工物1及び支持基板10と同形の円板状に形成されている。
【0030】
(固定ステップ)
図8は、
図2に示された被加工物の処理方法の固定ステップを一部断面で模式的に示す側面図である。固定ステップ102は、シート20の表面21側に被加工物1の一方の面である表面4を、シート20の裏面22側に支持基板10の一方の面12をそれぞれ対面させ、シート20を加熱することで、シート20を介して被加工物1と支持基板10とを熱圧着し固定するステップである。
【0031】
実施形態1において、固定ステップ102では、シート20の表面21に被加工物1の表面4を対面させ、シート20の裏面22に支持基板10の一方の面12を対面させる。更に、実施形態1において、固定ステップ102では、
図8に示すように、支持基板10の他方の面13にシート20と同じ構成の第2シート30の表面を対面させて、第2シート30の裏面を固定装置40の加熱テーブル41の平坦な保持面42に重ねて、保持面42に第2シート30、支持基板10、シート20及び被加工物1を順に重ねる。
【0032】
実施形態1において、固定ステップ102では、被加工物1の他方の面である裏面7に押圧部材43の平坦な押圧面44を重ね、加熱テーブル41に内蔵されたヒータ45と、押圧部材43に内蔵されたヒータ46をシート20,30の軟化点を超えかつ融点を下回る温度に加熱しながら、保持面42と押圧面44との距離を予め定められた所定の距離に維持して、押圧部材43で被加工物1、シート20、支持基板10及び第2シート30を保持面42に向けて押圧する。
【0033】
すると、ヒータ45,46にシート20,30が軟化点を超えかつ融点を下回る温度に加熱されて、軟化し、シート20が被加工物1の表面4と支持基板10の一方の面12に接着し、第2シート30が支持基板10の他方の面13に接着する。シート20の表面21が被加工物1の表面4に熱圧着し、シート20の裏面22が支持基板10の一方の面12に熱圧着するとともに、第2シート30が支持基板10の他方の面13に熱圧着し、被加工物1、シート20、支持基板10及び第2シート30が一体化して、これらが互いに固定される。このように、実施形態1において、固定ステップ102では、熱可塑性樹脂を含むシートである第2シート30を支持基板10の他方の面13側に更に対面させた状態で第2シート30を加熱することで、支持基板10の他方の面13側にも第2シート30を固定する。
【0034】
なお、本発明では、第2シート30を設けなくても良い。また、本発明では、ヒータ45,46のうちいずれか一方のみが設けられていれば良い。また、本発明では、押圧部材43の代わりに、被加工物1の裏面7上を転動しながら被加工物1等を保持面42に向けて押圧する転動ローラを用いても良い。また、本発明では、被加工物1、シート20、支持基板10及び第2シート30を真空チャンバ内に挿入して、これらの間を真空引きすること等により互いに固定しても良い。
【0035】
(加工ステップ)
図9は、
図2に示された被加工物の処理方法の加工ステップを模式的に示す側面図である。加工ステップ103は、被加工物1が固定された支持基板10を保持テーブル51で保持し、被加工物1の他方の面である裏面7を研削加工するステップである。実施形態1において、加工ステップ103では、被加工物1の裏面7を研削加工する。
【0036】
実施形態1において、加工ステップ103では、研削装置50が第2シート30を介して支持基板10の他方の面13側を保持テーブル51の保持面52に吸引保持する。実施形態1において、加工ステップ103では、
図9に示すように、研削装置50がスピンドル53により研削ホイール54を軸心回りに回転しかつ保持テーブル51を軸心回りに回転するとともに、図示しない研削液ノズルから研削液を供給しつつ、研削ホイール54の研削砥石55を被加工物1の裏面7に当接させて保持テーブル51に所定の送り速度で近づけて、研削砥石55で被加工物1の裏面7を研削する。
【0037】
実施形態1において、加工ステップ103では、研削装置50が被加工物1の厚さが仕上げ厚さ2になるまで、被加工物1の裏面7を研削する。実施形態1において、加工ステップ103では、研削装置50が被加工物1の厚さが仕上げ厚さ2になると、研削ホイール54を被加工物1の裏面7から遠ざける。
【0038】
(支持基板剥離ステップ)
図10は、
図2に示された被加工物の処理方法の支持基板剥離ステップにおいて第2シートを剥離する状態を模式的に示す側面図である。
図11は、
図2に示された被加工物の処理方法の支持基板剥離ステップにおいて支持基板をシートから剥離する状態を模式的に示す側面図である。
【0039】
支持基板剥離ステップ104は、加工ステップ103を実施した後、支持基板10の他方の面13から貫通孔11を介して流体63を供給することで、支持基板10とシート20との間に隙間を形成して支持基板10をシート20から剥離するステップである。実施形態1において、支持基板剥離ステップ104では、被加工物1の裏面7を剥離装置60の吸着ユニット61の平坦な吸着面62に吸引保持し、互いに一体となった被加工物1、シート20、支持基板10及び第2シート30を保持テーブル51の保持面52から持ち上げる。
【0040】
実施形態1において、支持基板剥離ステップ104では、
図10に示すように、第2シート30を端から順に支持基板10の他方の面13から剥離する。すると、貫通孔11が支持基板10の他方の面13側に開口する。実施形態1において、支持基板剥離ステップ104では、
図11に示すように、剥離装置60が、貫通孔11の他方の面13側の開口から貫通孔11内に水とエアの少なくとも一方を含む流体63を供給する。すると、シート20の裏面22と支持基板10との間に隙間が生じる。その後、支持基板剥離ステップ104では、シート20から支持基板10を剥離する。
【0041】
なお、本発明において、支持基板剥離ステップ104では、加工ステップ103後に互いに一体となった被加工物1、シート20、支持基板10及び第2シート30を上下反転して、被加工物1の裏面7を保持ユニットで保持し、上側から第2シート30の剥離と流体63の供給を実施してもよい。なお、本発明では、支持基板剥離ステップ104において、流体63を供給するだけで支持基板10が剥がれない場合には、吸引保持と離隔させることで支持基板10を剥がしても良い。
【0042】
(シート剥離ステップ)
図12は、
図2に示された被加工物の処理方法のシート剥離ステップを模式的に示す側面図である。シート剥離ステップ105は、被加工物1からシート20を剥離するステップである。実施形態1において、シート剥離ステップ105では、
図12に示すように、被加工物1の裏面7を剥離装置60の吸着ユニット61の平坦な吸着面62に吸引保持した状態で、シート20を端から順に被加工物1の表面4から剥離する。
【0043】
以上説明した実施形態1に係る被加工物の処理方法は、貫通孔11が形成された支持基板10と被加工物1とを熱可塑性樹脂を含むシート20を介して固定した後、加工ステップ103を実施する。このように、実施形態1に係る被加工物の処理方法は、シート20を支持基板10と被加工物1に熱圧着して固定するので、作業者の熟練度に依存せず精度の良いこれらの固定が可能となり、ワックスを浪費することがない。
【0044】
また、実施形態1に係る被加工物の処理方法は、加工ステップ103後、被加工物1を吸引保持した状態で、支持基板10に形成された貫通孔11から流体63を供給することで、支持基板10とシート20との間に隙間を形成して、シート20から支持基板10を剥離する。このために、実施形態1に係る被加工物の処理方法は、被加工物1からシート20を剥離する際に、被加工物1が撓むことを抑制でき、被加工物1の破損を抑制できるとともに、支持基板10を容易に剥離できるので、生産性が向上する。
【0045】
その結果、実施形態1に係る被加工物の処理方法は、被加工物1を薄化する際に、加工品質を維持しつつ製造コストの抑制が可能になるという効果を奏する。
【0046】
〔実施形態2〕
実施形態2に係る被加工物の処理方法を図面に基づいて説明する。
図13は、実施形態2に係る被加工物の処理方法の支持基板剥離ステップを模式的に一部断面で示す側面図である。なお、
図13は、実施形態1と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0047】
実施形態2に係る被加工物の処理方法は、支持基板剥離ステップ104が異なること以外、実施形態1と同じである。実施形態2において、支持基板剥離ステップ104では、
図13に示すように、支持基板10の他方の面13を多孔質材であるポーラスセラミック等で構成された保持テーブル70の平坦な保持面71に載置する。実施形態2において、支持基板剥離ステップ104では、保持テーブル70の基台72に設けられた流路73を通して保持面71に流体63を供給して、保持面71から貫通孔11に流体63を供給して、シート20と支持基板10との間に隙間を形成する。その後、実施形態2において、支持基板剥離ステップ104では、シート20から支持基板10を剥離する。
【0048】
実施形態2に係る被加工物の処理方法は、貫通孔11が形成された支持基板10と被加工物1とを熱可塑性樹脂を含むシート20を介して固定した後、加工ステップ103を実施し、その後、支持基板10に形成された貫通孔11から流体63を供給することで、支持基板10とシート20との間に隙間を形成して、シート20から支持基板10を剥離する。その結果、実施形態2に係る被加工物の処理方法は、実施形態1と同様に、被加工物1を薄化する際に、加工品質を維持しつつ製造コストの抑制が可能になるという効果を奏する。
【0049】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 被加工物
4 表面(一方の面)
7 裏面(他方の面)
10 支持基板
11 貫通孔
12 一方の面
13 他方の面
20 シート
21 表面
22 裏面
30 第2シート(シート)
51 保持テーブル
63 流体
101 準備ステップ
102 固定ステップ
103 加工ステップ
104 支持基板剥離ステップ
105 シート剥離ステップ