(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024177990
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】高周波増幅装置及び定電流回路
(51)【国際特許分類】
H03F 1/30 20060101AFI20241217BHJP
G05F 1/56 20060101ALI20241217BHJP
H03F 3/343 20060101ALI20241217BHJP
H03F 3/19 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
H03F1/30 220
G05F1/56 310E
H03F3/343 210
H03F3/19
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096452
(22)【出願日】2023-06-12
(71)【出願人】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】日野 貴
【テーマコード(参考)】
5H430
5J500
【Fターム(参考)】
5H430BB01
5H430BB09
5H430BB11
5H430EE04
5J500AA01
5J500AA58
5J500AC04
5J500AC14
5J500AC82
5J500AC88
5J500AF10
5J500AH12
5J500AH19
5J500AH24
5J500AH25
5J500AH29
5J500AH33
5J500AK09
5J500AK11
5J500AK12
5J500AT01
5J500NF01
5J500NH21
(57)【要約】
【課題】電源電圧の依存性を低減して、カレントミラー回路に流れる電流の変動を抑制できる高周波増幅装置及び定電流回路を提供する。
【解決手段】永田カレントミラー回路21の電源ラインL1と電源電圧VDDを供給する電源ラインL3との間にレギュレータ回路3を接続する。レギュレータ回路3は、電源電圧VDDが低い間は電源電圧VDDの増加に応じて大きく増加する電圧Vregを電源ラインL1に出力し、電源電圧VDDが一定値を超えると飽和して電源電圧VDDの増加に応じて小さく増加する電圧Vregを電源ラインL1に出力する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電源電圧が供給される第1の電源ラインと、第2の電源電圧が供給される第2の電源ラインと、の間に接続された第1のトランジスタと、
前記第1のトランジスタにカレントミラー接続され、前記第1のトランジスタに流れるドレイン電流又はコレクタ電流を折り返すと共に、ゲート又はベースが入力コンデンサを介して入力端子に接続され、ドレイン又はコレクタが出力コンデンサを介して出力端子に接続され、前記入力端子に入力された高周波信号を増幅して前記出力端子から出力する第2のトランジスタと、
前記第1のトランジスタのドレイン又はコレクタと、ゲート又はベースとの間に接続された抵抗と
を有するカレントミラー回路と、
第3の電源電圧が供給される第3の電源ラインと、前記第1の電源ラインとの間に接続され、前記第3の電源電圧が低い間は前記第3の電源電圧の増加に応じて大きく増加する前記第1の電源電圧を前記第1の電源ラインに出力し、前記第3の電源電圧が一定値を超えると飽和して前記第3の電源電圧の増加に応じて小さく増加する前記第1の電源電圧を前記第1の電源ラインに出力するレギュレータ回路とを備えた、
高周波増幅装置。
【請求項2】
請求項1に記載の高周波増幅装置において、
前記カレントミラー回路は、前記第1のトランジスタ及び前記第2のトランジスタの閾値電圧に応じて前記第2のトランジスタのドレイン電流又はコレクタ電流がピークとなる前記第1の電源電圧のピーク領域が各々異なり、
前記レギュレータ回路は、前記閾値電圧に応じて各々異なる飽和領域の前記第1の電源電圧を出力し、前記閾値電圧に応じた前記飽和領域が、当該前記閾値電圧に応じた前記ピーク領域内に含まれるような前記第1の電源電圧を供給する、
高周波増幅装置。
【請求項3】
請求項1に記載の高周波増幅装置において、
前記レギュレータ回路は、
ドレイン又はコレクタが前記第3の電源ラインに接続され、ソース又はエミッタが前記第1の電源ラインに接続される第3のトランジスタと、
前記第3のトランジスタのゲート又はベースと前記第2の電源ラインとの間に直列接続された複数の第4のトランジスタもしくは複数の前記第4のトランジスタ及びダイオードとを有する、
高周波増幅装置。
【請求項4】
請求項1に記載の高周波増幅装置において、
前記カレントミラー回路は、前記第1のトランジスタ及び前記第2のトランジスタの閾値電圧に応じて前記第2のトランジスタのドレイン電流又はコレクタ電流がピークとなる前記第1の電源電圧のピーク領域の少なくとも一部が重なり、
前記レギュレータ回路は、前記閾値電圧に応じて同じ飽和領域の前記第1の電源電圧を出力し、前記飽和領域が、前記閾値電圧に応じた前記ピーク領域が重なる領域内に含まれるような前記第1の電源電圧を供給する、
高周波増幅装置。
【請求項5】
請求項1に記載の高周波増幅装置において、
前記レギュレータ回路は、
ドレイン又はコレクタが前記第3の電源ラインに接続され、ソース又はエミッタが前記第1の電源ラインに接続される第3のトランジスタと、
前記第3のトランジスタのゲート又はベースと前記第2の電源ラインとの間に直列接続された第5のトランジスタ及びダイオードとを有する、
高周波増幅装置。
【請求項6】
第1の電源電圧が供給される第1の電源ラインと、第2の電源電圧が供給される第2の電源ラインと、の間に接続された第1のトランジスタと、
前記第1のトランジスタにカレントミラー接続され、前記第1のトランジスタに流れるドレイン電流又はコレクタ電流を折り返す第2のトランジスタと、
前記第1のトランジスタのドレイン又はコレクタと、ゲート又はベースとの間に接続された抵抗と
を有するカレントミラー回路と、
第3の電源電圧が供給される第3の電源ラインと、前記第1の電源ラインと、の間に接続され、前記第3の電源電圧が低い間は前記第3の電源電圧の増加に応じて大きく増加する前記第1の電源電圧を前記第1の電源ラインに出力し、前記第3の電源電圧が一定値を超えると飽和して前記第3の電源電圧の増加に応じて小さく増加する前記第1の電源電圧を前記第1の電源ラインに出力するレギュレータ回路とを備えた、
定電流回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波増幅装置及び定電流回路、に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、永田カレントミラー回路(特許文献1)をバイアス回路とする高周波増幅装置が提案されている。永田カレントミラー回路は、電源電圧-電流特性がピーキング特性を有し、ピーク付近では電源電圧に対して電流がほぼ一定となる定電流とみなすことができる。しかしながら、電流がほぼ一定となるピーク付近の電源電圧領域(ピーク領域)は非常に狭い。このため、カレントミラー回路に流れる電流の電源電圧依存性が高く、電流を一定にすることができない、という課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、電源電圧の依存性を低減して、カレントミラー回路に流れる電流の変動を抑制できる高周波増幅装置及び定電流回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前述した目的を達成するために、本発明に係る高周波増幅装置及び定電流回路は、下記[1]~[6]を特徴としている。
[1]
第1の電源電圧が供給される第1の電源ラインと、第2の電源電圧が供給される第2の電源ラインと、の間に接続された第1のトランジスタと、
前記第1のトランジスタにカレントミラー接続され、前記第1のトランジスタに流れるドレイン電流又はコレクタ電流を折り返すと共に、ゲート又はベースが入力コンデンサを介して入力端子に接続され、ドレイン又はコレクタが出力コンデンサを介して出力端子に接続され、前記入力端子に入力された高周波信号を増幅して前記出力端子から出力する第2のトランジスタと、
前記第1のトランジスタのドレイン又はコレクタと、ゲート又はベースとの間に接続された抵抗と
を有するカレントミラー回路と、
第3の電源電圧が供給される第3の電源ラインと、前記第1の電源ラインとの間に接続され、前記第3の電源電圧が低い間は前記第3の電源電圧の増加に応じて大きく増加する前記第1の電源電圧を前記第1の電源ラインに出力し、前記第3の電源電圧が一定値を超えると飽和して前記第3の電源電圧の増加に応じて小さく増加する前記第1の電源電圧を前記第1の電源ラインに出力するレギュレータ回路とを備えた、
高周波増幅装置であること。
[2]
[1]に記載の高周波増幅装置において、
前記カレントミラー回路は、前記第1のトランジスタ及び前記第2のトランジスタの閾値電圧に応じて前記第2のトランジスタのドレイン電流又はコレクタ電流がピークとなる前記第1の電源電圧のピーク領域が各々異なり、
前記レギュレータ回路は、前記閾値電圧に応じて各々異なる飽和領域の前記第1の電源電圧を出力し、前記閾値電圧に応じた前記飽和領域が、当該前記閾値電圧に応じた前記ピーク領域内に含まれるような前記第1の電源電圧を供給する、
高周波増幅装置であること。
[3]
[1]に記載の高周波増幅装置において、
前記レギュレータ回路は、
ドレイン又はコレクタが前記第3の電源ラインに接続され、ソース又はエミッタが前記第1の電源ラインに接続される第3のトランジスタと、
前記第3のトランジスタのゲート又はベースと前記第2の電源ラインとの間に直列接続された複数の第4のトランジスタもしくは複数の前記第4のトランジスタ及びダイオードとを有する、
高周波増幅装置であること。
[4]
[1]に記載の高周波増幅装置において、
前記カレントミラー回路は、前記第1のトランジスタ及び前記第2のトランジスタの閾値電圧に応じて前記第2のトランジスタのドレイン電流又はコレクタ電流がピークとなる前記第1の電源電圧のピーク領域の少なくとも一部が重なり、
前記レギュレータ回路は、前記閾値電圧に応じて同じ飽和領域の前記第1の電源電圧を出力し、前記飽和領域が、前記閾値電圧に応じた前記ピーク領域が重なる領域内に含まれるような前記第1の電源電圧を供給する、
高周波増幅装置であること。
[5]
[1]に記載の高周波増幅装置において、
前記レギュレータ回路は、
ドレイン又はコレクタが前記第3の電源ラインに接続され、ソース又はエミッタが前記第1の電源ラインに接続される第3のトランジスタと、
前記第3のトランジスタのゲート又はベースと前記第2の電源ラインとの間に直列接続された第5のトランジスタ及びダイオードとを有する、
高周波増幅装置であること。
[6]
第1の電源電圧が供給される第1の電源ラインと、第2の電源電圧が供給される第2の電源ラインと、の間に接続された第1のトランジスタと、
前記第1のトランジスタにカレントミラー接続され、前記第1のトランジスタに流れるドレイン電流又はコレクタ電流を折り返す第2のトランジスタと、
前記第1のトランジスタのドレイン又はコレクタと、ゲート又はベースとの間に接続された抵抗と
を有するカレントミラー回路と、
第3の電源電圧が供給される第3の電源ラインと、前記第1の電源ラインと、の間に接続され、前記第3の電源電圧が低い間は前記第3の電源電圧の増加に応じて大きく増加する前記第1の電源電圧を前記第1の電源ラインに出力し、前記第3の電源電圧が一定値を超えると飽和して前記第3の電源電圧の増加に応じて小さく増加する前記第1の電源電圧を前記第1の電源ラインに出力するレギュレータ回路とを備えた、
定電流回路であること。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、電源電圧の依存性を低減して、カレントミラー回路に流れる電流の変動を抑制できる高周波増幅装置及び定電流回路を提供することができる。
【0007】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1実施形態における高周波増幅装置の一例を示す回路図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す永田カレントミラー回路の電圧Vreg-電源電流IDD特性を示すグラフである。
【
図3】
図3は、
図1に示すレギュレータ回路の入出力特性を示すグラフである。
【
図4】
図4は、
図1に示す高周波増幅装置の電源電圧VDD-電源電流IDD特性を示すグラフである。
【
図5】
図5は、
図1に示す高周波増幅装置の閾値電圧Vth-電源電流IDD特性を示すグラフである。
【
図6】
図6は、
図1に示す高周波増幅装置の詳細を示す回路図である。
【
図7】
図7は、
図6に示すレギュレータ回路の入出力特性を示すグラフである。
【
図8】
図8は、第2実施形態における高周波増幅装置の一例を示す回路図である。
【
図9】
図9は、
図8に示す永田カレントミラー回路の電圧Vreg-電源電流IDD特性を示すグラフである。
【
図11】
図11は、
図8に示す高周波増幅装置の電源電圧VDD-電源電流IDD特性を示すグラフである。
【
図12】
図12は、
図8に示す高周波増幅装置の閾値電圧Vth-電源電流IDD特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0010】
(第1実施形態)
まず、第1実施形態の高周波増幅装置1について説明する。本実施形態の高周波増幅装置1は、GaAs(ヒ化ガリウム)基板上にpHEMTプロセスを用いて形成されている。本実施形態の高周波増幅装置1は、入力端子TINから入力した高周波信号RFINを増幅して、高周波信号RFOUTとして出力端子TOUTから出力する回路である。高周波増幅装置1は、永田カレントミラー回路21(=カレントミラー回路)をバイアス回路とした高周波増幅部2と、永田カレントミラー回路21の入力に設けられたレギュレータ回路3とを備えている。
【0011】
高周波増幅部2は、増幅トランジスタ及び増幅トランジスタのバイアス回路として機能する永田カレントミラー回路21と、高周波信号RFIN,RFOUTから直流成分をカットするための入力コンデンサC1,出力コンデンサC2と、コイルLとを有している。
【0012】
永田カレントミラー回路21は、トランジスタM1(=第1のトランジスタ),トランジスタM2(第2のトランジスタ)と、抵抗R1~R3とを有する。本実施形態では、トランジスタM1,M2は、Nチャンネルの電界効果トランジスタから構成されている。トランジスタM1は、電圧Vreg(=第1の電源電圧)が供給される電源ラインL1(=第1の電源ライン)と、グランド電圧Vgnd(=第2の電源電圧)が供給されるグランドラインL2(=第2の電源ライン)との間に接続されている。
【0013】
詳しく説明すると、トランジスタM1は、ソースがグランドラインL2に接続され、ドレインが抵抗R1,R2を介して電源ラインL1に接続されている。電源ラインL1には電源端子TDD2が接続され、レギュレータ回路3から電圧Vregが供給される。トランジスタM1は、ゲートが抵抗R1,R2の接続点に接続されている。即ち、トランジスタM1のゲートとドレインとの間に抵抗R1が接続されている。
【0014】
トランジスタM2は、トランジスタM1にカレントミラー接続される。詳しく説明すると、トランジスタM2は、ソースがグランドラインL2に接続され、ゲートが抵抗R3を介してトランジスタM1のドレインに接続されている。トランジスタM1,M2は同一特性のトランジスタから構成される。トランジスタM2のドレインには、トランジスタM1に流れるドレイン電流が折り返された電源電流IDDが流れる。
【0015】
トランジスタM2は、増幅トランジスタとして機能し、ゲートが入力コンデンサC1を介して入力端子TINに接続され、ドレインが出力コンデンサC2を介して出力端子TOUTに接続される。また、トランジスタM2は、ドレインがコイルLを介して電源端子TDDに接続される。電源端子TDDには電源電圧VDDが供給されている。
【0016】
レギュレータ回路3は、電源電圧VDD(=第3の電源電圧)が供給される電源ラインL3(=第3の電源ライン)と、電源ラインL1との間に接続される。電源ラインL3は、電源端子TDDに接続されている。レギュレータ回路3は、入力端子TIN2が電源ラインL3に接続され、出力端子TOUT2が高周波増幅部2の電源端子TDD2に接続されている。
【0017】
次に、永田カレントミラー回路21の電圧Vreg-電源電流IDD特性について
図2を参照して以下説明する。トランジスタM1のゲート・ドレイン間に抵抗R1がない一般的なカレントミラー回路の場合、トランジスタM1に供給される電圧Vregが高くなるほどトランジスタM2に折り返される電源電流IDDは多くなる。
【0018】
これに対して、永田カレントミラー回路21は、トランジスタM1のゲートとドレインとの間に抵抗R1を設けることにより、
図2に示すように、電圧Vreg-電源電流IDD特性が、ピーキング特性を有する。詳しく説明すると、電圧Vregが低い間は、電圧Vregが高くなるに従って電源電流IDDが多くなり、電源電流IDDがピークに達すると、電圧Vregが高くなるに従って電源電流IDDが少なくなる。
【0019】
このため、ピーク付近の電圧領域(以下、「ピーク領域」と略記)では、電圧Vregの変動に対して電源電流IDDがほぼ一定となる定電流とみなすことができる。即ち、電源端子TDD2にピーク領域内の電圧を供給すれば、永田カレントミラー回路21の電源電流IDDを一定にして、高周波増幅装置1の増幅率を一定にすることができる。
【0020】
しかしながら、ピーク領域は非常に狭く、電源電流IDDを一定にすることが難しい。しかも、永田カレントミラー回路21の設計によっては、ピーク領域が、トランジスタM1,M2の閾値電圧Vthによって変動することがあり、これも電源電流IDDを一定にできない要因となる。
図2に示す例では、閾値電圧Vth=0.10Vのときのピーク領域をVpeak(0.1)、閾値電圧Vth=0.25Vのときのピーク領域をVpeak(0.25)、閾値電圧Vth=0.40Vのときのピーク領域をVpeak(0.4)とする。これらピーク領域Vpeak(0.1),Vpeak(0.25),Vpeak(0.4)は、閾値電圧Vthに応じて異なり、重なっている領域がない。
【0021】
そこで、本実施形態では、電源ラインL3と電源ラインL1との間にレギュレータ回路3を設けている。そして、永田カレントミラー回路21の特性に合わせて、レギュレータ回路3を設計することにより、電源電流IDDの電源電圧VDDの依存性、閾値電圧Vthの依存性を低減して、電源電流IDDの変動を低減する。
【0022】
詳しく説明すると、永田カレントミラー回路21が
図2に示すような特性の場合、レギュレータ回路3の入出力特性を
図3に示すように設計する。一般的にレギュレータ回路3は、
図3に示すように、電源電圧VDDが低い間は電源電圧VDDの増加に応じて大きく増加する電圧Vregを出力し、電源電圧VDDが一定値を超えると飽和して電源電圧VDDの増加に応じて小さく増加する電圧Vregを出力する。
【0023】
本実施形態では、
図3に示すように、トランジスタM1,M2の閾値電圧Vthに応じて電圧Vregの飽和領域(電圧Vregが小さく増加する領域)が各々異なるように、レギュレータ回路3を設計する。
図3に示す例では、閾値電圧Vth=0.10Vのときの飽和領域をVsa(0.1)、閾値電圧Vth=0.25Vのときの飽和領域をVsa(0.25)、閾値電圧Vth=0.40Vのときの飽和領域をVsa(0.4)とする。飽和領域Vsa(0.1),Vsa(0.25),Vsa(0.4)は、閾値電圧Vthに応じて異なり、重なっている領域がない。そして、閾値電圧Vthに応じた飽和領域Vsa(0.1),Vsa(0.25),Vsa(0.4)が、閾値電圧Vthに応じたピーク領域Vpeak(0.1)、Vpeak(0.25)、Vpeak(0.4)内に含まれるように、レギュレータ回路3を設計する。
【0024】
上述したようにレギュレータ回路3を設計した結果、
図4に示すように、電源電圧VDDがある程度高くなると、電源電流IDDが一定値に飽和する。そして、
図4及び
図5に示すように、閾値電圧Vthが異なってもほぼ同じ電源電流IDDに飽和する。これにより、電源電流IDDの電源電圧VDDの依存性、閾値電圧Vthの依存性を低減して、電源電流IDDの変動を低減することができる。
【0025】
次に、上述したレギュレータ回路3の具体的な一例について
図6を参照して説明する。同図に示すように、レギュレータ回路3は、トランジスタM3(=第3のトランジスタ)、トランジスタM41,M42(=第4のトランジスタ)と、抵抗R4とを有している。トランジスタM3、トランジスタM41,M42は、Nチャンネルの電界効果トランジスタから構成され、トランジスタM1,M2と同一特性のトランジスタである。このため、トランジスタM1~M3、M41,M42の閾値電圧Vthは同じである。
【0026】
トランジスタM3は、ドレインが入力端子TIN2に接続され、ソースが出力端子TOUT2に接続される。トランジスタM41,M42は、ゲートがドレインに接続されたダイオード接続されている。また、トランジスタM41,M42は、トランジスタM3のゲートとグランドラインL2との間に直列接続される。詳しく説明すると、トランジスタM41のドレイン及びゲートがトランジスタM3のゲートに接続され、トランジスタM42のドレイン及びゲートがトランジスタM41のソースに接続されている。トランジスタM42のソースはグランドラインL2に接続されている。
【0027】
上述した構成のレギュレータ回路3によれば、抵抗R4を介してトランジスタM41,M42に電流が供給される。トランジスタM41,M42はダイオードとして機能するため、トランジスタM3のゲート電圧はトランジスタM41,M42の閾値電圧Vthを加算した値(=2×Vth)となる。よって、出力端子TOUT2に接続されたトランジスタM3のソース電圧は、トランジスタM3のゲート電圧から閾値電圧Vthを差し引いた値となり、出力端子TOUT2からは、閾値電圧Vthが電圧Vregとして出力される。このため、電圧Vregは、
図7に示すように、閾値電圧Vthが増加すると増加し、閾値電圧Vthが減少すると減少し、閾値電圧Vthに応じて飽和領域が異なる。
【0028】
上述したように
図6に示す構成のレギュレータ回路3によれば、レギュレータ回路3をNチャンネルのトランジスタM3、M41,M42から構成でき、Pチャンネルのトランジスタが必要ない。このため、Pチャンネルのトランジスタを形成しにくいGaAs基板上にpHEMTプロセスを用いた高周波増幅装置1を形成する場合に適している。
【0029】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態の高周波増幅装置1Bについて、
図8を参照して説明する。同図において、上述した第1実施形態で説明した
図1~
図7に示す高周波増幅装置1と同等の部分については同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0030】
本実施形態の高周波増幅装置1Bは、永田カレントミラー回路21Bを有する高周波増幅部2B(=カレントミラー回路)と、レギュレータ回路3Bとを備えている。高周波増幅部2B、永田カレントミラー回路21Bの構成は、第1実施形態で既に説明した高周波増幅部2、永田カレントミラー回路21と同等であるためここでは詳細な説明を省略する。
【0031】
ただし、第2実施形態の永田カレントミラー回路21Bは、第1実施形態の永田カレントミラー回路21とは抵抗R1~R3の抵抗値やトランジスタM1,M2の特性などが異なる。このため、第2実施形態の永田カレントミラー回路21Bと、第1実施形態の永田カレントミラー回路21との特性は異なる。
図9に、第2実施形態の永田カレントミラー回路21Bの電圧Vreg-電源電流IDD特性を示す。
【0032】
同図に示すように、第2実施形態の永田カレントミラー回路21Bは、第1実施形態と同様にピーキング特性は有する。一方、閾値電圧Vthに応じたピーク領域Vpeak(0.1)、Vpeak(0.25)、Vpeak(0.4)は多少異なるものの、電圧Vregが0.8V~1.0Vの範囲では重なる。そこで、第2実施形態では、レギュレータ回路3Bを
図8に示すように構成する。
【0033】
図8に示すように、レギュレータ回路3Bは、トランジスタM3,トランジスタM5(第5のトランジスタ)と、抵抗R4と、ダイオードD1とを有している。トランジスタM3,M5は、Nチャンネルの電界効果トランジスタから構成され、トランジスタM1,M2と同一特性のトランジスタである。このため、トランジスタM1~M3,M5の閾値電圧Vthは同じである。
【0034】
トランジスタM3は、ドレインが入力端子TIN2に接続され、ソースが出力端子TOUT2に接続される。トランジスタM5は、ゲートがドレインに接続されたダイオード接続されている。トランジスタM5,ダイオードD1は、トランジスタM3のゲートとグランドラインL2との間に直列接続される。詳しく説明すると、トランジスタM5のドレイン及びゲートがトランジスタM3のゲートに接続されている。ダイオードD1は、アノードがトランジスタM5のソースに接続され、カソードがグランドラインL2に接続されている。
【0035】
上述した構成のレギュレータ回路3Bによれば、抵抗R4を介してトランジスタM5,ダイオードD1に電流が供給される。トランジスタM5はダイオードとして機能するため、トランジスタM3のゲート電圧は、トランジスタM5の閾値電圧VthとダイオードD1の順方向電圧VD1を加算した値となる(=Vth+VD1)。よって、出力端子TOUT2に接続されたトランジスタM3のソース電圧は、トランジスタM3のゲート電圧から閾値電圧Vthを差し引いた値となり、出力端子TOUT2からは、順方向電圧VD1が電圧Vregとして出力される。このため、電圧Vregは、
図10に示すように、閾値電圧Vthが変動しても、変動せずほぼ同じとなる。
【0036】
図10に示すように、電圧Vregは0.8V~1.0Vで飽和する。即ち、電圧Vregの飽和領域Vsa(0.1)、Vsa(0.25)、Vsa(0.4)は0.8V~1.0Vである。一方、上述したようにピーク領域Vpeak(0.1)、Vpeak(0.25)、Vpeak(0.4)は、0.8V~1.0Vの間で重なる(
図9参照)。このようなレギュレータ回路3Bを設けた結果、
図11に示すように、電源電圧VDDがある程度高くなると、電源電流IDDが一定値に飽和する。そして、
図11及び
図12に示すように、電源電流IDDの電源電圧VDDの依存性、閾値電圧Vthの依存性を低減して、電源電流IDDの変動を低減することができる。
【0037】
上述した
図8に示す構成のレギュレータ回路3Bによれば、レギュレータ回路3BをNチャンネルのトランジスタM3、M5から構成でき、Pチャンネルのトランジスタが必要ない。このため、Pチャンネルのトランジスタを形成しにくいGaAs基板上にpHEMTプロセスを用いた高周波増幅装置1Bを形成する場合に適している。
【0038】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0039】
上述した実施形態では、レギュレータ回路3は、トランジスタM3のゲートとグランドラインL2との間に2つのダイオード接続されたトランジスタM41,M42が直列接続されていたが、これに限ったものではない。トランジスタM3のゲートとグランドラインL2との間に直列接続されるトランジスタの数は、永田カレントミラー回路21の特性に合わせればよく、3つ以上接続されていてもよい。また、永田カレントミラー回路21の特性に合わせて、トランジスタM3のゲートとグランドラインL2との間にトランジスタM41,M42と1つもしくは複数のダイオードを直列接続してもよい。
【0040】
上述した実施形態では、レギュレータ回路3Bは、トランジスタM3のゲートとグランドラインL2との間に1つのダイオード接続されたトランジスタM5と1つのダイオードD1が直列接続されていたが、これに限ったものではない。トランジスタM3のゲートとグランドラインL2との間に直列接続されるダイオードD1の数は、永田カレントミラー回路21Bの特性に合わせればよく、2つ以上接続されていてもよい。
【0041】
上述した実施形態では、Si基板上に高周波増幅装置1、1Bを形成する場合は、レギュレータ回路3、3Bは、
図6や
図8に示す構成に限定されるものではなく、オペアンプを用いた周知のレギュレータ回路を用いてもよい。
【0042】
上述した実施形態では、トランジスタM1~M3、M41,M42、M5を電界効果トランジスタで構成されていたが、これに限ったものではない。トランジスタとしてはバイポーラトランジスタから構成されていてもよい。この場合、「ゲート」を「ベース」、「ソース」を「エミッタ」、「ドレイン」を「コレクタ」に読み替えて説明することができる。
【符号の説明】
【0043】
1 高周波増幅装置
3,3B レギュレータ回路
21,21B 永田カレントミラー回路(カレントミラー回路)
C1 入力コンデンサ
C2 出力コンデンサ
D1 ダイオード
L1 電源ライン(第1の電源ライン)
L2 グランドライン(第2の電源ライン)
M1 トランジスタ(第1のトランジスタ)
M2 トランジスタ(第2のトランジスタ)
M3 トランジスタ(第3のトランジスタ)
M41,M42 トランジスタ(第4のトランジスタ)
M5 トランジスタ(第5のトランジスタ)
R1 抵抗
RFIN,RFOUT 高周波信号
TIN 入力端子
Vgnd グランド電圧(=第2の電源電圧)
Vreg 電圧(第1の電源電圧)
Vsa(0.1) 飽和領域
Vsa(0.25) 飽和領域
Vsa(0.4) 飽和領域
Vpeak(0.1) ピーク領域
Vpeak(0.25) ピーク領域
Vpeak(0.4) ピーク領域