(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178059
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】画像読取装置、画像形成装置および画像読取方法
(51)【国際特許分類】
H04N 1/191 20060101AFI20241217BHJP
H04N 1/40 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
H04N1/191
H04N1/40 006
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096572
(22)【出願日】2023-06-12
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西後 淳貴
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 博礼
【テーマコード(参考)】
5C072
5C077
【Fターム(参考)】
5C072AA01
5C072BA08
5C072BA20
5C072DA02
5C072DA03
5C072DA04
5C072DA25
5C072EA05
5C072EA06
5C072EA07
5C072FB12
5C072FB16
5C072FB25
5C072RA16
5C072UA02
5C072UA06
5C072UA11
5C072UA13
5C072XA01
5C077LL04
5C077LL19
5C077MM03
5C077MM04
5C077MM05
5C077MM27
5C077PP06
5C077PP07
5C077PP15
5C077PP44
(57)【要約】
【課題】清浄な白基準データをより容易に生成可能にする画像読取装置、画像形成装置および画像読取方法を提供する。
【解決手段】実施の形態の画像読取装置は、画像を読み取る画像読取部と、前記画像読取部の対向に設けられる濃度基準部材と、前記濃度基準部材を移動させる可動機構と、前記濃度基準部材を固定状態または可動状態に切り替えるロック機構と、前記可動状態にされた可動機構によって、原稿の読み取り時に使用される読取箇所とは異なる読取箇所に移動させられた固定状態の濃度基準部材から読み取られた画像から、シェーディング補正の基準データを生成する生成部と、前記基準データを用いて、前記画像のシェーディング補正を実施するシェーディング補正部と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を読み取る画像読取部と、
前記画像読取部の対向に設けられる濃度基準部材と、
前記濃度基準部材を移動させる可動機構と、
前記濃度基準部材を固定状態または可動状態に切り替えるロック機構と、
前記可動機構によって、原稿の読み取り時に使用される読取箇所とは異なる読取箇所に移動させられた固定状態の濃度基準部材から読み取られた画像から、シェーディング補正の基準データを生成する生成部と、
前記基準データを用いて、前記画像のシェーディング補正を実施するシェーディング補正部と、
を備える画像読取装置。
【請求項2】
前記基準データを記憶する補助記憶部と、
前記生成部によって生成された基準データ、または、前記補助記憶部に記憶されている基準データを選択するセレクタと、
前記セレクタによって選択された基準データを記憶する主記憶部と、を更に備え、
前記シェーディング補正部は、前記主記憶部に記憶された基準データを用いて、前記画像のシェーディング補正を実施する、
請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記補助記憶部に記憶されている基準データを用いて、前記主記憶部に記録された基準データの異常個所を検知し、前記主記憶部に記録された基準データを補正するデータ補正部、
を更に備える請求項2に記載の画像読取装置。
【請求項4】
前記画像読取部は、第1の部品として構成され、
前記濃度基準部材は、第2の部品として構成され、
前記主記憶部および前記補助記憶部は、第3の部品として構成され、
前記第1乃至第3の部品の少なくとも1つが交換された場合、
前記生成部は、前記可動機構によって、原稿の読み取り時に使用される読取箇所とは異なる読取箇所に移動させられた固定状態の濃度基準部材から読み取られた画像から、シェーディング補正の基準データを再生成し、
前記補助記憶部は、前記生成部によって再生成された基準データを記憶する、
請求項2に記載の画像読取装置。
【請求項5】
前記可動機構は、操作部材を有し、
前記ロック機構は、前記操作部材の移動によって、前記濃度基準部材を前記固定状態または前記可動状態に切り替える、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像読取装置。
【請求項6】
前記可動機構は、前記濃度基準部材を主走査方向に移動させる機構である、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像読取装置。
【請求項7】
前記可動機構は、前記濃度基準部材を副走査方向に移動させる機構である、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像読取装置。
【請求項8】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像読取装置と、
前記画像読取装置で読み取られた画像を形成する画像形成部と、
を備える画像形成装置。
【請求項9】
ロック機構が、画像読取部の対向に設けられる濃度基準部材を、固定状態から可動状態に切り替えるステップと、
可動機構が、原稿の読み取り時に使用される読取箇所とは異なる読取箇所に、前記濃度基準部材を移動させるステップと、
画像読取部が、前記異なる読取箇所に移動させられた濃度基準部材から画像を読み取るステップと、
生成部が、前記濃度基準部材から読み取られた画像から、シェーディング補正の基準データを生成するステップと、
シェーディング補正部が、前記基準データを用いて、原稿から読み取られた画像のシェーディング補正を実施するステップと、
を含む画像読取方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像読取装置、画像形成装置および画像読取方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スキャナで読み取られた画像は、センサに光を結像させるレンズによる周期的なムラが乗っている。そのため、センサの対向に位置する白部材を読み取ったデータを白基準データとして、スキャナで読み取られた画像のシェーディング補正が行われている。
【0003】
特許文献1には、原稿の読取位置とは異なる位置に配置された白基準板によるシェーディング補正を正確に行う目的で、予め白基準板から生成されたシェーディングデータを格納しておく技術が開示されている。特許文献1では、このシェーディングデータを用いて直前に読取を行った白基準板のシェーディングデータを調整するか否かを判定し、判定結果に応じて調整値を算出し、当該調整値に応じたシェーディング補正が行われている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、基準データの生成に使用される部材は紙の搬送路上に存在しているため、紙粉などのごみが付着しやすい環境にあるが、基準データにごみのようなノイズが乗ってしまうと、補正先の画像データに縦スジが発生してしまう。基準データを格納しているメモリを実装している基板、または読取モジュール自体が交換された場合に、製造工程外の環境下で基準データを再生成する必要があるが、ごみの影響を除去することが難しいという課題があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、清浄な基準データをより容易に生成可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、画像を読み取る画像読取部と、前記画像読取部の対向に設けられる濃度基準部材と、前記濃度基準部材を移動させる可動機構と、前記濃度基準部材を固定状態または可動状態に切り替えるロック機構と、前記可動機構によって、原稿の読み取り時に使用される読取箇所とは異なる読取箇所に移動させられた固定状態の濃度基準部材から読み取られた画像から、シェーディング補正の基準データを生成する生成部と、前記基準データを用いて、前記画像のシェーディング補正を実施するシェーディング補正部と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、清浄な基準データをより容易に生成可能にすることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1の実施の形態の画像形成装置のハードウェア構成の例を示す図である。
【
図2】
図2は、第1の実施の形態の読取信号処理に係る機能構成の例を示す図である。
【
図3】
図3は、第1の実施の形態の濃度基準部材およびロック機構の例を示す概念図である。
【
図4】
図4は、第1の実施の形態の画像読取処理に係る部品構成の例を示す図である。
【
図5A】
図5Aは、第1の実施の形態の濃度基準部材を副走査方向へ移動させる機構(固定状態)の例を説明するための概念図である。
【
図5B】
図5Bは、第1の実施の形態の濃度基準部材を副走査方向へ移動させる機構(可動状態)の例を説明するための概念図である。
【
図6】
図6は、第1の実施の形態の濃度基準部材を主走査方向へ移動させる機構の例を説明するための概念図である。
【
図7】
図7は、第1の実施の形態の画像読取方法の例を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、第2の実施の形態の読取信号処理に係る機能構成の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照して、画像読取装置、画像形成装置および画像読取方法の実施の形態を詳細に説明する。
【0010】
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態では、本発明の画像形成装置を、コピー機能、プリンタ機能、スキャナ機能およびファクシミリ機能のうち少なくとも2つの機能を有する複合機に適用した例を挙げて説明するが、複写機、プリンタ、スキャナ装置、ファクシミリ装置等のスキャナ機能を有する画像読取装置からなる装置であればいずれにも適用することができる。
【0011】
[ハードウェア構成の例]
図1は、第1の実施の形態の画像形成装置1のハードウェア構成の例を示す図である。
図1を参照しながら、本実施形態に係る画像形成装置1のハードウェア構成について説明する。なお、
図1では、画像形成装置1はMFP(Multifunction Peripheral:複合機)であるものとして説明する。
【0012】
図1に示すように、画像形成装置1は、コントローラ910と、近距離通信回路920と、エンジン制御部930と、操作パネル940と、ネットワークI/F950と、を備えている。
【0013】
コントローラ910は、コンピュータの主要部であるCPU(Central Processing Unit)901と、MEM-P(システムメモリ)902と、NB(ノースブリッジ)903と、SB(サウスブリッジ)904と、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)906と、MEM-C(ローカルメモリ)907と、HDD(Hard Disk Drive)コントローラ908と、HD909と、を有する。このうち、NB903とASIC906とは、AGP(Accelerated Graphics Port)バス921で接続されている。
【0014】
CPU901は、画像形成装置1の全体制御を行う演算装置である。NB903は、CPU901と、MEM-P902、SB904およびAGPバス921とを接続するためのブリッジであり、MEM-P902に対する読み書きなどを制御するメモリコントローラと、PCI(Peripheral Component Interconnect)マスタおよびAGPターゲットと、を有する。
【0015】
MEM-P902は、コントローラ910の各機能を実現させるプログラムおよびデータの格納用メモリであるROM902aと、プログラムおよびデータの展開、ならびにメモリ印刷時の描画用メモリ等として用いるRAM902bと、を含む。なお、RAM902bに記憶されているプログラムは、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、CD-R(Compact Disc Recordable)、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成してもよい。
【0016】
SB904は、NB903と、PCIデバイスおよび周辺デバイス等と、を接続するためのブリッジである。ASIC906は、画像処理用のハードウェア要素を有する画像処理用途向けのIC(Integrated Circuit)であり、AGPバス921、PCIバス922、HDDコントローラ908およびMEM-C907をそれぞれ接続するブリッジの役割を有する。ASIC906は、PCIターゲットおよびAGPマスタ、ASIC906の中核をなすアービタ(ARB)、MEM-C907を制御するメモリコントローラ、ハードウェアロジック等により画像データの回転等を行う複数のDMAC(Direct Memory Access Controller)、ならびに、画像読取部10および画像形成部931との間でPCIバス922を介したデータ転送を行うPCIユニットを含む。なお、ASIC906には、USB(Universal Serial Bus)インターフェース、またはIEEE1394(Institute of Electrical and Electronics Engineers 1394)のインターフェースが接続されるようにしてもよい。
【0017】
MEM-C907は、コピー用画像バッファおよび符号バッファとして用いるローカルメモリである。HDDコントローラ908は、CPU901の制御に従って、HD909に対するデータの読み出しまたは書き込みを制御するコントローラである。HD909は、画像データの蓄積、印刷時に用いるフォントデータの蓄積、およびフォームの蓄積を行うためのストレージである。なお、HDDコントローラ908およびHD909は、SSD(Solid State Drive)であってもよい。
【0018】
AGPバス921は、グラフィック処理を高速化するために提案されたグラフィックスアクセラレーターカード用のバスインターフェースであり、MEM-P902に高スループットで直接アクセスすることにより、グラフィックスアクセラレーターカードを高速にすることができる。
【0019】
近距離通信回路920は、NFC(Near Field Communication)またはBluetooth(登録商標)等の通信回路である。近距離通信回路920は、PCIバス922を介して、ASIC906に電気的に接続されている。近距離通信回路920には、無線通信用のアンテナ920aが接続されている。
【0020】
エンジン制御部930は、画像読取部10および画像形成部931を含む。画像読取部10および画像形成部931は、誤差拡散またはガンマ変換等の画像処理機能を含む。
【0021】
操作パネル940は、現在の設定値または選択画面等を表示させ、ユーザからの入力を受け付けるタッチパネル等のパネル表示部940a(表示装置)と、濃度の設定条件等の画像形成に関する条件の設定値を受け付けるテンキーおよびコピー開始指示を受け付けるスタートキー等からなるハードキー940bと、を備えている。
【0022】
なお、画像形成装置1は、操作パネル940のアプリケーションの切り替えキーにより、ドキュメントボックス機能、コピー機能、プリンタ機能、およびファックス機能を順次に切り替えて選択することが可能となる。ドキュメントボックス機能の選択時にはドキュメントボックスモードとなり、コピー機能の選択時にはコピーモードとなり、プリンタ機能の選択時にはプリンタモードとなり、ファックス機能の選択時にはファックスモードとなる。
【0023】
ネットワークI/F950は、ネットワークを介してデータ通信をするためのインターフェースであり、例えば、イーサネット(登録商標)、およびTCP(Transmission Control Protocol)/IP(Internet Protocol)等に準拠した通信が可能なインターフェースである。ネットワークI/F950は、PCIバス922を介して、ASIC906に電気的に接続されている。
【0024】
なお、
図1に示した画像形成装置1のハードウェア構成は一例を示すものであり、
図1に示した構成要素をすべて含む必要はなく、または、その他の構成要素を含むものとしてもよい。
【0025】
次に、
図1の画像読取部10により読み取られた画像読取信号を処理する機能の詳細について説明する。
【0026】
[画像読取信号の処理に係る機能構成の例]
図2は、第1の実施の形態の読取信号処理に係る機能構成の例を示す図である。第1の実施の形態の画像読取部10は、光源11、センサ12およびA/D変換部13を備える。
【0027】
光源11は、原稿に光を照射し、センサ12は、集光された原稿の反射光を受光することによって画像を読み取る。具体的にはセンサ12はCMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)センサを用いたCIS(Contact Image Sensor)のような構成でもよいし、CCD(Charge-Coupled Device)センサを用いた構成でもよい。
【0028】
A/D変換部13は、センサ12から入力された電気信号をデジタル信号に変換する。すなわち、A/D変換部13は、センサ12で取得されたアナログデータをデジタルデータに変換し、当該デジタルデータを信号処理部20へ送る。
【0029】
信号処理部20へ送られるデータは、画像読取部10の対向に設けられる濃度基準部材を読み取ったときの白シェーディングデータと、原稿を読み取ったときの画像データとがある。白シェーディングデータは、シェーディング補正処理に用いられるデータである。画像データは、原稿の画像形成処理に用いられるデータである。
【0030】
信号処理部20は、生成部21、補助記憶部22、セレクタ23、主記憶部24及びシェーディング補正部25を備える。セレクタ23は、生成部21および補助記憶部22のどちらか一方のデータを選択し、主記憶部24に入力する。
【0031】
信号処理部20の各機能は、
図1の画像読取装置として機能する画像形成装置のエンジン制御部930またはコントローラ910で実現される。
【0032】
はじめに、濃度基準部材から読み取られた白シェーディングデータが、補助記憶部22に清浄な白基準データ(基準データの一例)として格納されるまでの処理の流れを説明する。なお、濃度基準部材として、白色以外の色が用いられ、白色以外の色が基準データとして利用されてもよい。
【0033】
まず、生成部21が、画像読取部10から白シェーディングデータを受け付ける。生成部21は、白シェーディングデータを、副走査ゲート信号によって切り出し、1ライン分の白データを生成する。
【0034】
この白データが、今後の白基準データとして使用される場合、そのままセレクタ23を通り、主記憶部24に格納される。その後、この白基準データは、不揮発性の補助記憶部22へ保存される。
【0035】
主記憶部24は、揮発性の為、電源が供給されなくなると白基準データが消滅してしまうが、補助記憶部2は不揮発性の為、電源が落とされても白基準データは保持される。補助記憶部22の白基準データは、次に使用する際に直ちにシェーディング補正に使用できるよう、電源が供給されたタイミングですぐに補助記憶部22からセレクタ23を通って主記憶部24に格納される。
【0036】
画像読取時には、画像データがシェーディング補正部25に入力されるが、主記憶部24に格納された白基準データも当該シェーディング補正部25に入力される。シェーディング補正部25は、画像データ、および白基準データによってシェーディング補正を実施する。
【0037】
読み取られた画像データは、センサ等の固有特性や周囲環境などの影響も受けるため、均一濃度の画像を読み取っても、画像データを主走査方向に見た場合、均一データにはならない。そこで、このシェーディング補正によって、均一濃度の画像が均一データの出力になるようにしている。
【0038】
図2に示す機能構成とすることで、濃度基準部材から読み取られた白基準データを補助記憶部22(不揮発性メモリ)に格納し、原稿から読み取られた画像データを、予め格納された白基準データでシェーディング補正を行うことができる。
【0039】
図3は、第1の実施の形態の濃度基準部材30およびロック機構40の例を示す概念図である。
図3の例では、濃度基準部材30は、画像読取部10に対して対向に位置している濃度基準板である。
【0040】
画像読取部10は、上述の光源11とセンサ12とを備え、濃度基準部材30から反射された光を読み取る。
【0041】
ロック機構40は、濃度基準部材30を可動させる可動状態と、濃度基準部材30を固定させる固定状態とを任意に選択可能にする機構である。
【0042】
原稿読取時は、濃度基準部材30は固定状態で使用される。濃度基準部材30は原稿搬送のガイドとしての役割や、原稿読取時の背景として機能する。
【0043】
工場での出荷工程などで白基準データを取得する際や、市場でのパーツ交換等で白基準データの再取得が必要になった場合に、ロック機構40は解除され、濃度基準部材30は可動状態にされる。
【0044】
その後、可動状態の濃度基準部材30は、通常の原稿の読取時には使用しない位置へ移動させられ、画像読取部10によって、白シェーディングデータとして読み取られる。そして、上述の生成部21によって、白シェーディングデータから生成された白基準データが、上述の補助記憶部22に記憶される。
【0045】
このとき、白基準データは、1ラインだけのデータから生成されてもよいし、濃度基準部材30の移動前後を含めた複数ラインのデータから生成されてもよい。
【0046】
図3に示すように、濃度基準部材30を、通常使用時の読取位置と異なる読取箇所に移動させることで、濃度基準部材30の表面に付着したゴミや傷の影響を除去し、清浄な白基準データを生成することが可能となる。すなわち、生成部21は、原稿の読み取り時に使用される読取箇所とは異なる読取箇所に移動させられた濃度基準部材30から読み取られた画像から、シェーディング補正の基準データを生成する。
【0047】
異なる読取箇所は、濃度基準部材30に照射される複数の発光体を有する光源11の1つの発光体の照射径が連なる1ラインの幅よりも少なくともずれた異なる位置で、好ましくは発光体の前後の照射径に相当する範囲を含めた照射範囲よりもずれた異なる位置である。原稿の読み取り時に使用される読取箇所の濃度基準部材30は固定状態を解除されて可動状態になり、濃度基準部材30が任意に移動する。そして原稿の読み取り時に使用される読取箇所とは異なる複数の固定位置でロック機構40により固定可能である。濃度基準部材30は、この固定された固定状態で基準データを生成することが可能となる。
【0048】
なお、濃度基準部材30の移動方向は、副走査方向101および主走査方向102がある。濃度基準部材30を副走査方向101に移動させる場合の可動機構については、
図5A及び5Bで後述する。濃度基準部材30を主走査方向102に移動させる場合の可動機構については、
図6で後述する。
【0049】
図4は、第1の実施の形態の画像読取処理に係る部品構成の例を示す図である。
図4に示すように、画像読取部10(第1の部品)、濃度基準部材30(第2の部品)、および、電気回路基板50(第3の部品)は、それぞれ独立した部品で構成されている。電気回路基板50は、データ伝送経路を介して画像読取部10と接続される。
【0050】
画像読取部10、濃度基準部材30および電気回路基板50のいずれかの部品が破損ないし故障した際には、破損ないし故障した部品に対して市場での交換が実施可能となっている。
【0051】
補助記憶部22に保存されている白基準データは、画像読取部10の光源11やセンサ12と、濃度基準部材30との組み合わせによって、それぞれ異なる分布を有している。そのため、画像読取部10ないし濃度基準部材30のいずれかが交換された場合には、補助記憶部22の白基準データとの整合性がとれなくなってしまう。
【0052】
したがって、画像読取部10、濃度基準部材30および電気回路基板50はセットで交換する必要があり、市場での部品交換コストが高くなってしまう。電気回路基板50が交換された場合であっても、補助記憶部22に保存されている白基準データが失われてしまうため、補助記憶部22を実現するメモリを、取り外し可能な構成にしておくといったコストをかける必要が生じる。
【0053】
しかし、上述の
図3の可動状態と固定状態とを任意に選択可能にするロック機構40を有する構成とすれば、市場でいずれかの部品が交換された場合であっても、市場で清浄な白基準データを生成することが可能である。これにより、市場での部品交換コストを低減することが可能である。
【0054】
すなわち、上述の第1乃至第3の部品の少なくとも1つが交換された場合、生成部21が、原稿の読み取り時に使用される読取箇所とは異なる読取箇所に移動させられた濃度基準部材30から読み取られた画像から、シェーディング補正の基準データを再生成できる。そして、補助記憶部22が、生成部21によって再生成された基準データを記憶できる。
【0055】
なお、補助記憶部22および主記憶部24は、画像処理IC51の中にあってもよいし、外にあってもよい。
図4の例では、主記憶部24は、画像処理IC51の中にあり、補助記憶部22は、画像処理IC51の外にある。
【0056】
また、必要であれば、市場での交換の単位は、画像読取部10、濃度基準部材30および電気回路基板50のそれぞれ単品ではなく、画像読取部10、濃度基準部材30および電気回路基板50のセットでの交換としてもよい。
【0057】
図5Aは、第1の実施の形態の濃度基準部材30を副走査方向101へ移動させる可動機構(固定状態)の例を説明するための概念図である。
図5Aは、画像読取部10および濃度基準部材30を短手方向から見た図である。
【0058】
濃度基準部材30は、画像読取部10の対向に位置しており、使用者がアクセスできる位置に軸60と軸受け61とが配置されている。濃度基準部材30は、この軸60と一体の軸受け61との回転と連動して動作するような仕組みになっている。
図5Aの例では、濃度基準部材30が回転移動するような構成を示しているが、横方向にスライド移動するような構成であってもよく、副走査方向101へ移動させる機構は
図5Aの例に限定されない。
【0059】
原稿の読み取りが行われる通常使用時には、軸60は固定状態となっているため、濃度基準部材30は動くことはない。原稿の読み取りが行われる場合、読取面において、反射光201の読取箇所202の位置で原稿の読み取りが行われる。
【0060】
図5Aの濃度基準部材30を固定状態とするロック機構は、軸受け61に操作部材である取手62を設けている。取手62が移動し濃度基準部材30周辺の外装に引っ掛け濃度基準部材30を固定する。または取手62を移動とばねの張力を利用して濃度基準部材30の回転を固定する構成であってもよい。固定状態とする機構は
図5Aの例に限定されない。
【0061】
図5Bは、第1の実施の形態の濃度基準部材30を副走査方向101へ移動させる機構(可動状態)の例を説明するための概念図である。
【0062】
固定状態が解除されることで、濃度基準部材30が読取方向に対して副走査方向101に移動できる状態となる。反射光201の読取箇所202と異なる読取箇所を使用することが可能となるため、白基準データ生成時のゴミや傷の影響の除去に効果があり、特に主走査方向102に伸びるようなゴミや傷に対して除去性能が高い。
【0063】
軸60の回転、および固定状態の解除には、使用者の操作により行われる。使用者の操作により動作させる場合は、使用者が取手62を指で摘まんで外装から外れる方向に回転移動させる。
【0064】
また電気的な駆動回路を動力源として用いてもよい。電気的な駆動回路を用いる場合は、軸受け61にギアを追加し、モータ動力を伝えることで動作が可能である。
【0065】
使用者の操作によって動作する構成とする場合は、モータの動力を伝えるためのギア、および、ギアを支えるための軸などの駆動機構、並びに、その他の電気的駆動回路の点数が削減できるため、コストダウンが実現できる。
【0066】
図6は、第1の実施の形態の濃度基準部材30を主走査方向102へ移動させる機構の例を説明するための概念図である。
図6は、画像読取部10と、濃度基準部材30を長手方向から見た図である。
【0067】
濃度基準部材30は、画像読取部10の対向に位置しており、使用者がアクセスできる位置に軸60と軸受け61とが配置されている。濃度基準部材30は、この軸60と軸受け61との回転と連動して動作するような仕組みになっている。
図6の例では、円筒溝カム63が濃度基準部材30と連結しているような構成を示しているが、他の機構を用いてスライドさせるような構成でもよく、主走査方向102へ移動させる機構は
図6の例に限定されない。
【0068】
原稿の読み取りが行われる通常使用時には、軸60はロック機構により固定状態となっているため、軸60は回転せず、濃度基準部材30は動くことはない。固定状態とするロック機構は、軸60と一体に回転する軸受け61に取手62を設けて外装に引っ掛けるような構成でもよいし、ばねの張力を利用して回転を固定するような構成であってもよい。
【0069】
固定状態が解除されることで、軸60が回転し、円筒溝カム63が回転できるようになり、濃度基準部材30が読取方向に対して主走査方向102に移動できるようになる。これにより、原稿の読み取りに使用されている読取面201の読取箇所と異なる読取箇所を使用することが可能となる。そのため、白基準データ生成時のゴミや傷の影響の除去に効果があり、特に副走査方向101に伸びるようなゴミや傷に対して除去性能が高い。
【0070】
軸60の回転や、固定状態の解除には、電気的な駆動回路を用いてもよいし、使用者の操作により行われてもよい。電気的な駆動回路を用いる場合は、軸受け61にギアを追加し、モータ動力を伝えることで動作が可能である。使用者の操作により動作させる場合は、使用者が取手62を指で摘まんで回転させればよい。使用者の操作によって動作する構成とする場合は、モータの動力を伝えるためのギアや、ギアを支えるための軸、その他の電気的駆動回路の点数が削減できるため、コストダウンが実現できる。
【0071】
[画像読取方法の例]
図7は、第1の実施の形態の画像読取方法の例を示すフローチャートである。はじめに、ロック機構40が、画像読取部10の対向に設けられる濃度基準部材30を、固定状態から可動状態に切り替える(ステップS1)。
【0072】
次に、可動機構が、原稿の読み取り時に使用される読取箇所とは異なる読取箇所に、濃度基準部材30を移動させる(ステップS2)。例えば、濃度基準部材30を副走査方向101へ移動させる
図5A及び5Bの例では、可動機構は、軸60、軸受け61および取手62である。また例えば、濃度基準部材30を主走査方向102へ移動させる
図6の例では、可動機構は、軸60、軸受け61、取手62および円筒溝カム63である。
【0073】
なお、可動機構は、副走査方向101および主走査方向102の両方に移動可能なように、上述の
図5B及び
図6の両方の構成が備えられていてもよい。また、副走査方向101または主走査方向102のいずれか一方へ移動可能なように、
図5Bまたは
図6のいずれか一方の構成が備えられていてもよい。
【0074】
次に、画像読取部10が、ステップS2の処理によって異なる読取箇所に移動させられた固定状態の濃度基準部材30から画像を読み取る(ステップS3)。
【0075】
次に、生成部21が、濃度基準部材30から読み取られた画像から、シェーディング補正の基準データを生成する(ステップS4)。
【0076】
シェーディング補正部25が、ステップS4で生成された基準データを用いて、原稿から読み取られた画像のシェーディング補正を実施する(ステップS5)。
【0077】
以上、説明したように、第1の実施の形態によれば、清浄な基準データをより容易に生成可能にすることができる。具体的には、第1の実施の形態では、濃度基準として使用している濃度基準部材30(例えば、白板)を、可動させるか固定させるかを選択可能とするロック機構40を設けられている。これにより、濃度基準部材30の可動によるごみの影響の低減効果と、濃度基準部材30の固定によるコスト低減効果を維持したまま、市場でパーツ交換が発生した場合にも簡単に清浄な白基準データを生成できる。
【0078】
従来は、製造工程外の環境下で基準データを再生成する必要がある場合に、管理されていない環境下ではごみの影響を除去することが非常に難しかった。第1の実施の形態によれば、市場でパーツ交換が発生した際に、ごみ、または傷などの影響が除去された基準データをより簡単に作り直すことができる。これにより、市場での交換コストを低減することができる。
【0079】
(第2の実施の形態)
次に第2の実施の形態について説明する。第2の実施の形態の説明では、第1の実施の形態と同様の説明については省略し、第1の実施の形態と異なる箇所について説明する。
【0080】
図8は、第2の実施の形態の読取信号処理に係る機能構成の例を示す図である。第2実施形態では、信号処理部20に基準データ補正部26が追加されている。基準データ補正部26は、補助記憶部22に記憶されている基準データを用いて、主記憶部24に記録された基準データの異常個所を検知し、主記憶部24に記録された基準データを補正する。
【0081】
不揮発性の補助記憶部22に、清浄な白基準データを保存する処理の流れについては、第1実施形態と同じである。以下、第2実施形態の処理の流れについて説明する。
【0082】
第2実施形態では、画像読取部10が、原稿の画像の読取直前のタイミングで、濃度基準部材30を読み取った白シェーディングデータを生成部21へ流す。生成部21は、白シェーディングデータから、例えば1ライン分の白データを生成する。生成部21により生成された白データは、セレクタ23を通って主記憶部24に白基準データとして保存される。
【0083】
この白データは、固定状態の濃度基準部材30を読み取っており、ゴミの影響を受けている可能性があるので、この白データは基準データ補正部26へ入力される。
【0084】
更に、不揮発性の補助記憶部22から清浄な白基準データが基準データ補正部26へ入力される。
【0085】
基準データ補正部26は、主記憶部24および補助記憶部22から入力された2つの白基準データ同士を比較し、原稿読取直前に取得した白データ上に付着しているゴミの位置を検出する。また、基準データ補正部26は、検出した箇所を清浄な白基準データによって部分的に置き換えることによって、主記憶部24から入力された白基準データを補正する処理を行う。
【0086】
シェーディング補正部25は、基準データ補正部26により補正された白基準データを用いて、原稿から読み取られた画像にシェーディング補正を実施する。
【0087】
画像読取部10の光源は、経年の使用により光量が劣化する可能性がある。また、動作中の発熱等により、センサ12の感度の低下や、主走査分布の変動が発生する可能性がある。そのため、補助記憶部22に保存された白基準データが、原稿読取時に対して時間的に古いデータである場合、上記の変動の影響を受け、シェーディング補正後のデータにムラとして現れてしまう可能性がある。
【0088】
しかし、第2実施形態のように、原稿読取直前に取得された白データを使用すれば、経年の使用による変動の影響も吸収することが可能である。だが、原稿読取直前に取得した白データには前述の通りゴミの影響を受けている可能性があるため、第2実施形態では、その部分のみ清浄な白基準データで置き換えることを行う。
【0089】
第1実施形態では、補助記憶部22に保存された白基準データを主記憶部24へ格納し、その白基準データをそのままシェーディング補正に使用する構成となっていた。第2実施形態では、基準データ補正部26を追加することによって、白基準データの大部分を、原稿取得直前に取得された白シェーディングデータから生成することが可能になる。
【0090】
これにより第2実施形態によれば、光源11の短期変動および温度変動の影響といった、白シェーディングデータの経時変動の影響を吸収することができるため、シェーディング補正後の画質の向上が期待できる。
【0091】
本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
<1> 画像を読み取る画像読取部と、
前記画像読取部の対向に設けられる濃度基準部材と、
前記濃度基準部材を移動させる可動機構と、
前記濃度基準部材を固定状態または可動状態に切り替えるロック機構と、
前記可動機構によって、原稿の読み取り時に使用される読取箇所とは異なる読取箇所に移動させられた固定状態の濃度基準部材から読み取られた画像から、シェーディング補正の基準データを生成する生成部と、
前記基準データを用いて、前記画像のシェーディング補正を実施するシェーディング補正部と、
を備える画像読取装置である。
<2> 前記基準データを記憶する補助記憶部と、
前記生成部によって生成された基準データ、または、前記補助記憶部に記憶されている基準データを選択するセレクタと、
前記セレクタによって選択された基準データを記憶する主記憶部と、を更に備え、
前記シェーディング補正部は、前記主記憶部に記憶された基準データを用いて、前記画像のシェーディング補正を実施する、
前記<1>に記載の画像読取装置である。
<3> 前記補助記憶部に記憶されている基準データを用いて、前記主記憶部に記録された基準データの異常個所を検知し、前記主記憶部に記録された基準データを補正するデータ補正部、
を更に備える前記<2>に記載の画像読取装置である。
<4> 前記画像読取部は、第1の部品として構成され、
前記濃度基準部材は、第2の部品として構成され、
前記主記憶部および前記補助記憶部は、第3の部品として構成され、
前記第1乃至第3の部品の少なくとも1つが交換された場合、
前記生成部は、前記可動機構によって、原稿の読み取り時に使用される読取箇所とは異なる読取箇所に移動させられた固定状態の濃度基準部材から読み取られた画像から、シェーディング補正の基準データを再生成し、
前記補助記憶部は、前記生成部によって再生成された基準データを記憶する、
前記<2>に記載の画像読取装置である。
<5> 前記可動機構は、操作部材を有し、
前記ロック機構は、前記操作部材の移動によって、前記濃度基準部材を前記固定状態または前記可動状態に切り替える、
前記<1>乃至<4>のいずれか1項に記載の画像読取装置である。
<6> 前記可動機構は、前記濃度基準部材を主走査方向に移動させる機構である、
前記<1>乃至<5>のいずれか1項に記載の画像読取装置である。
<7> 前記可動機構は、前記濃度基準部材を副走査方向に移動させる機構である、
前記<1>乃至<6>のいずれか1項に記載の画像読取装置である。
<8> 前記<1>乃至<7>のいずれか1項に記載の画像読取装置と、
前記画像読取装置で読み取られた画像を形成する画像形成部と、
を備える画像形成装置である。
<9> ロック機構が、画像読取部の対向に設けられる濃度基準部材を、固定状態から可動状態に切り替えるステップと、
可動機構が、原稿の読み取り時に使用される読取箇所とは異なる読取箇所に、前記濃度基準部材を移動させるステップと、
画像読取部が、前記異なる読取箇所に移動させられた濃度基準部材から画像を読み取るステップと、
生成部が、前記濃度基準部材から読み取られた画像から、シェーディング補正の基準データを生成するステップと、
シェーディング補正部が、前記基準データを用いて、原稿から読み取られた画像のシェーディング補正を実施するステップと、
を含む画像読取方法である。
【符号の説明】
【0092】
1 画像形成装置
10 画像読取部
11 光源
12 センサ
13 A/D変換部
21 生成部
22 補助記憶部
23 セレクタ
24 主記憶部
25 シェーディング補正部
26 基準データ補正部
30 濃度基準部材
40 ロック機構
50 電気回路基板
51 画像処理IC
60 軸
61 軸受け
62 取手
63 円筒溝カム
901 CPU
902 MEM-P
902a ROM
902b RAM
903 NB
904 SB
906 ASIC
907 MEM-C
908 HDDコントローラ
909 HD
910 コントローラ
920 近距離通信回路
920a アンテナ
921 AGPバス
922 PCIバス
930 エンジン制御部
931 画像形成部
940 操作パネル
940a パネル表示部
940b ハードキー
950 ネットワークI/F
【先行技術文献】
【特許文献】
【0093】