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特開2024-1781液体クロマトグラフ装置、およびその制御方法。
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001781
(43)【公開日】2024-01-10
(54)【発明の名称】液体クロマトグラフ装置、およびその制御方法。
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/24 20060101AFI20231227BHJP
   G01N 30/02 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
G01N30/24 A
G01N30/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022100660
(22)【出願日】2022-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】503460323
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテクサイエンス
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 悠輔
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 正人
(72)【発明者】
【氏名】福田 真人
(72)【発明者】
【氏名】小佐井 貴雄
(72)【発明者】
【氏名】森崎 敦己
(72)【発明者】
【氏名】松本 拓也
(57)【要約】
【課題】オートサンプラを備える液体クロマトグラフを用いた分析の際のユーザの利便性を向上させる。
【解決手段】試料に対して、複数のメソッドのうちのいずれかにより分析を行うことが可能な液体クロマトグラフ装置は、分析対象である試料が収容されるバイアルを輸送し、バイアルを割り当て可能な複数のレーンを有する輸送部と、前記複数のレーンそれぞれに対して、前記複数のメソッドのうちのいずれかを設定する設定部と、バイアルと、当該バイアルを分析するためのメソッドとを対応付けたバイアル情報を保持する保持部と、バイアル情報に基づいて、前記複数のレーンのうちの対応するメソッドが設定されたレーンに、バイアルを振り分けるように前記輸送部を制御する輸送制御部と、を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料に対して、複数のメソッドのうちのいずれかにより分析を行うことが可能な液体クロマトグラフ装置であって、
分析対象である試料が収容されるバイアルを輸送し、バイアルを割り当て可能な複数のレーンを有する輸送部と、
前記複数のレーンそれぞれに対して、前記複数のメソッドのうちのいずれかを設定する設定部と、
バイアルと、当該バイアルを分析するためのメソッドとを対応付けたバイアル情報を保持する保持部と、
バイアル情報に基づいて、前記複数のレーンのうちの対応するメソッドが設定されたレーンに、バイアルを振り分けるように前記輸送部を制御する輸送制御部と、
を有する液体クロマトグラフ装置。
【請求項2】
前記設定部は、前記複数のレーンそれぞれの空き状態、および、新たに輸送されてきたバイアルに対応するメソッドに応じて、前記複数のレーンそれぞれに対して設定したメソッドを更新する、請求項1に記載の液体クロマトグラフ装置。
【請求項3】
前記輸送制御部は、前記複数のレーンにおいて、新たに輸送されてきたバイアルに対応するメソッドが設定されたレーンが無く、かつ、空のレーンが無い場合、当該新たに輸送されてきたバイアルの輸送を停止させる、請求項1に記載の液体クロマトグラフ装置。
【請求項4】
前記複数のレーンは、優先度が高い優先レーンを含み、
前記バイアル情報は、分析の優先度に関する情報を更に含み、
前記輸送制御部は、分析の優先度が高いバイアルを、前記優先レーンに割り当てる、
請求項1に記載の液体クロマトグラフ装置。
【請求項5】
前記複数のレーンに割り当てられたバイアルに対して順に分析を行う分析部を有し、
前記分析部は、前記優先レーンにバイアルが割り当てられたことに起因して、当該バイアルに対応するメソッドに切り替えて優先的に分析を行う、
請求項4に記載の液体クロマトグラフ装置。
【請求項6】
バイアルを破棄するための複数の破棄部を備え、
前記輸送制御部は、前記分析部により分析が行われた後のバイアルを、前記バイアル情報に応じて異なる破棄部へ輸送させる、
請求項5に記載の液体クロマトグラフ装置。
【請求項7】
試料に対して、複数のメソッドのうちのいずれかにより分析を行うことが可能な液体クロマトグラフ装置の制御方法であって、
前記液体クロマトグラフ装置は、
分析対象である試料が収容されるバイアルを輸送し、バイアルを割り当て可能な複数のレーンを有する輸送部と、
バイアルと、当該バイアルを分析するためのメソッドとを対応付けたバイアル情報を保持する保持部と、
を有し、
前記複数のレーンそれぞれに対して、前記複数のメソッドのうちのいずれかを設定する設定工程と、
バイアル情報に基づいて、前記複数のレーンのうちの対応するメソッドが設定されたレーンに、バイアルを振り分けるように前記輸送部を制御する制御工程と、
を有する液体クロマトグラフ装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体クロマトグラフ装置、およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体の試料の成分を分析するために液体クロマトグラフを用いることが行われている。このような液体クロマトグラフなどの分析装置にて、複数の試料を逐次分析する場合、試料溶液を収容したバイアルを選択し、そのバイアルから試料溶液を採取して分析装置本体に導入するオートサンプラが用いられている。
【0003】
従来、液体クロマトグラフにおけるオートサンプラを用いて試料の分析を行う場合、オペレータは、段階的な手順を踏む必要があった。段階的な手順としては、例えば、試料をバイアルに注入、バイアルをラックにセット、ラックをオートサンプラ内にセット、制御装置にラックにおけるバイアルの位置や分析条件を入力、分析の実行指示、分析完了後にオートサンプラからラックの取り出し、ラックからバイアルの取り出し、バイアル内の試料を種類ごとに分別し破棄、などが挙げられる。
【0004】
特許文献1では、オートサンプラに選択対象となるバイアルを指示するための構成が開示されている。特許文献1では、使用する試料プレートに対応するレイアウト部品や試料の類型などに対応したバイアルレイアウト部品を予め作成して登録しておく。オペレータは、バイアルレイアウト部品を画面上で適宜選択し、ドラッグ&ドロップなどのグラフィカルな動作により、1枚の試料プレートに対するバイアルのレイアウト配置を作成する。レイアウト配置が決まった後にオペレータが所定操作を行うと、分析順に対応付けられている属性情報を用いてレイアウトが展開され、各バイアルの試料の類型や濃度レベルなどが記述されたバッチテーブルが自動的に作成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-135240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の方法では、オペレータが、ラックをオートサンプラにセットした後、制御装置に対して、ラック内の複数のバイアルに対して分析順を指定する必要がある。つまり、バイアルに収容された試料を分析するための設定が個別に必要となり、オペレータの作業が発生し、手間となる。
【0007】
本発明は、上記課題を鑑み、オートサンプラを備える液体クロマトグラフ装置を用いた分析の際に、ユーザの利便性を向上させた、液体クロマトグラフ装置およびその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明は以下の構成を有する。すなわち、試料に対して、複数のメソッドのうちのいずれかにより分析を行うことが可能な液体クロマトグラフ装置であって、
分析対象である試料が収容されるバイアルを輸送し、バイアルを割り当て可能な複数のレーンを有する輸送部と、
前記複数のレーンそれぞれに対して、前記複数のメソッドのうちのいずれかを設定する設定部と、
バイアルと、当該バイアルを分析するためのメソッドとを対応付けたバイアル情報を保持する保持部と、
バイアル情報に基づいて、前記複数のレーンのうちの対応するメソッドが設定されたレーンに、バイアルを振り分けるように前記輸送部を制御する輸送制御部と、
を有する。
【0009】
また、本発明の別の形態は以下の構成を有する。すなわち、試料に対して、複数のメソッドのうちのいずれかにより分析を行うことが可能な液体クロマトグラフ装置の制御方法であって、
前記液体クロマトグラフ装置は、
分析対象である試料が収容されるバイアルを輸送し、バイアルを割り当て可能な複数のレーンを有する輸送部と、
バイアルと、当該バイアルを分析するためのメソッドとを対応付けたバイアル情報を保持する保持部と、
を有し、
前記複数のレーンそれぞれに対して、前記複数のメソッドのうちのいずれかを設定する設定工程と、
バイアル情報に基づいて、前記複数のレーンのうちの対応するメソッドが設定されたレーンに、バイアルを振り分けるように前記輸送部を制御する制御工程と、
を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、オートサンプラを備える液体クロマトグラフ装置を用いた分析の際のユーザの利便性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る液体クロマトグラフ装置の構成例を示す概略図。
図2】本発明の第1の実施形態に係るオートサンプラ内の輸送を説明するための概略図。
図3】本発明の第1の実施形態に係るバイアルの輸送動作のフローチャート。
図4】本発明の第1の実施形態に係る分析動作時のフローチャート。
図5】本発明の第1の実施形態に係る各種情報の構成例を示す図。
図6】本発明の第1の実施形態に係るバイアルの輸送を説明するための図。
図7】本発明の第2の実施形態に係るオートサンプラ内の輸送を説明するための概略図。
図8】本発明の第2の実施形態に係るバイアルの輸送動作のフローチャート。
図9】本発明の第2の実施形態に係る分析動作時のフローチャート。
図10】本発明の第2の実施形態に係る各種情報の構成例を示す図。
図11】本発明の第2の実施形態に係るバイアルの輸送を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について図面などを参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を説明するための一実施形態であり、本発明を限定して解釈されることを意図するものではなく、また、各実施形態で説明されている全ての構成が本発明の課題を解決するために必須の構成であるとは限らない。また、各図面において、同じ構成要素については、同じ参照番号を付すことにより対応関係を示す。
【0013】
<第1の実施形態>
以下、本発明の第1の実施形態について説明を行う。
【0014】
[装置構成]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る自動測定システムである液体クロマトグラフ装置100の概要を示すブロック図である。液体クロマトグラフ装置100は、所定の分析対象を定性分析または定量分析する装置である。本実施形態に係る液体クロマトグラフ装置100は、バイアルに収容された試料を分析し、その分析結果を出力する。液体クロマトグラフ装置100は、移動相格納部1、ポンプ2、オートサンプラ3、カラムオーブン4、検出器6、データ処理装置7、および表示部10を含んで構成される。
【0015】
移動相格納部1は、試料を分析する際に用いられる移動相が格納される。移動相は、溶離液と溶媒の混合溶液である。本実施形態に係る液体クロマトグラフ装置100は、分析において複数のメソッドを実行することができ、複数のメソッドそれぞれに対応した複数種類の移動相が保持されている。メソッドの実行により移動相は消費されるため、消費された場合には適宜補充される。ポンプ2は、移動相格納部1に格納された複数種類の移動相の中から、分析に用いる移動相を取り出し、オートサンプラ3に供給する。
【0016】
オートサンプラ3は、分析対象の試料が収容された複数のバイアルそれぞれを所定の位置へ輸送したのち、バイアルから試料を取り出して、ポンプ2から供給される移動相に注入させ、カラム5に供給される。試料と移動相が混在する分析対象物を含むカラム5は、カラムオーブン4へ配置される。オートサンプラ3内の動作については、図を用いて後述する。
【0017】
カラムオーブン4は、オートサンプラ3から供給される分析対象物を収容したカラム5に対して、所定の温度に保つように動作する。カラム5は、分析対象物に存在する試料の成分を分離する分離部として機能する。カラム5は、充填型カラム、モノリスカラムなどが用いられてよい。また、カラム5の充填剤は、吸着型、分配型、イオン交換型など、分析内容に応じて切り替えられてよい。また、カラムオーブン4にて維持される温度は、操作者が任意に設定可能であってもよいし、分析内容に応じて予め規定されていてよい。
【0018】
検出器6は、カラム5から溶出した成分を検出し、検出結果を示す信号へ変換する。検出器6の構成は、分析内容に応じて切り替えられてよい。検出器6は、例えば、紫外検出器、紫外可視分光検出器、ダイオードアレイ検出器、蛍光検出器、示差屈折率検出器、電導度検出器などが用いられてよい。また、複数波長を同時に検出可能な3次元検出器が用いられてもよい。
【0019】
データ処理装置7は、検出器6にて検出された信号に基づいて、分析結果を集計、解析、記録等を行う。データ処理装置7は、記憶部8および制御部9を含んで構成される。記憶部8は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、ROM(Read Only Memory)、またはRAM(Random Access Memory)等の揮発性や不揮発性の記憶装置により構成される。制御部9は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphical Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、あるいはFPGA(Field Programmable Gate Array)のうち少なくとも1つを用いて構成されてよい。制御部9が、記憶部8に記憶された各種プログラムを読み出して実行することにより、データ処理装置7における各種機能を実現する。
【0020】
また、データ処理装置7は、液体クロマトグラフ装置100における設定パラメータや各種情報を受け付け、当該情報に基づいて液体クロマトグラフ装置100を動作させる。本実施形態に係るデータ処理装置7にて管理される各種情報の構成例については、図5等を用いて後述する。本実施形態においては、液体クロマトグラフ装置100の各部位を制御するための制御部は、データ処理装置7が司るものとして説明するが、検出器6までの各部位に対する制御部と、検出器6にて得られた信号を集計、解析、記録等を行うデータ処理部とを別個の装置として分け、これらが連携するような構成であってもよい。
【0021】
表示部10は、データ処理装置7によるデータ処理の結果を表示する。表示部10は、有機ELなどのディスプレイであってもよいし、操作部が一体となったタッチパネルディスプレイなどで構成されてもよい。図1では不図示であるが、データ処理装置7は、外部装置と通信するための通信部や、他のUI(User Interface)部を更に備えていてもよい。
【0022】
[オートサンプラにおけるバイアル輸送]
図2は、本実施形態に係る液体クロマトグラフ装置100が備えるオートサンプラ3におけるバイアルの輸送を説明するための概略図である。ここで、各要素を説明する際に、個々に説明を要する場合には参照番号に添え字(a,b,c…)を付し、共通的に説明が可能な場合には添え字は省略して示す。
【0023】
試料が収容されたバイアル37は、オペレータ等により所定の位置に設置された後、オートサンプラ3の搬入口に向けてベルトコンベアなどの自動輸送機構(不図示)により順に輸送されてくる。また、バイアルには、そのバイアルおよび/または収容された試料に関する各種情報(以下、「バイアル情報」と称する)を示すラベル(不図示)が添付されているものとする。ラベルには、例えば、バーコードやQRコード(登録商標)などが表示されていてよい。ラベルにて示されるバイアル情報は、例えば、データ処理装置7の記憶部8に予め登録されている。
【0024】
本実施形態に係るオートサンプラ3は、複数のレーン33が設けられる。図2の例では、3つのレーン33a、33b、33cが設けられた例を示す。バイアル37が搬送されてくると、輸送経路31上に設けられた読取部32により、バイアル37に添付されたラベルからバイアル情報が読み取られる。例えば、図2において、搬送されているバイアル37aが読取部32にてラベルを読み取られ、バイアル情報が特定される。読取部32は、例えば、カメラであってもよいし、所定のコードに対応したリーダー(例えば、バーコードリーダー)であってもよい。
【0025】
その後、バイアル37は、読み取られたバイアル情報に基づいて、複数のレーン33のうちのいずれかが割り当てられ、割り当てられたレーンへと輸送される。図2の例では、バイアル37b、37cは、レーン33aに割り当てられ、バイアル37dは、レーン33bに割り当てられている。なお、図2では不図示であるが、輸送経路31、35には、バイアル37の輸送方向を調整するためのフリッパーなどが設けられてよい。本実施形態では、複数のレーン33それぞれに対して、分析のためのメソッドが割り当てられる。更に、複数のバイアル37それぞれは、バイアル情報に基づいて、分析のためのメソッドが対応付けられたレーン33に割り当てられる。レーン33に対応付けられるメソッドは、適宜更新される。ここでの具体的な動作については、図6を用いて後述する。
【0026】
レーン33に割り当てられたバイアル37は、インジェクタ34により収容されている試料が採取される。採取された試料は、図1を用いて説明したように、メソッドに対応する移動相に注入され、後段の各部位にて分析が行われる。試料が採取された後のバイアル37は、輸送経路35を通ってバイアル破棄部36へと輸送される。図2の例では、分析完了後のバイアル37eがバイアル破棄部36へ輸送されている。
【0027】
[処理フロー]
以下、本実施形態に係るオートサンプラ3のバイアル37の輸送に係る処理フローについて説明する。ここでは、バイアル37を、オートサンプラ3のレーン33に割り当てるまでの処理(図3)と、バイアル37に収容された試料に対する分析を行ってバイアル37を破棄するまでの処理(図4)とを分けて説明する。これらの処理は、同時並行的に実行されてよい。
【0028】
また、図5は、本実施形態に係るデータ処理装置7が管理するバイアル情報、および、オートサンプラ3のレーン33に関するレーン情報の構成例を示す図である。図5(a)は、オートサンプラ3にて輸送されるバイアル37に関するバイアル情報の構成例である。バイアル情報は、バイアル37を一意に識別するためのバイアル識別情報、バイアルの種別を示すバイアル種別、およびバイアル37に収容された試料に対して分析を行う際のメソッドの項目を含んで構成される。データ処理装置7は、バイアル37に添付されたラベルから読み取られたバイアル識別情報に基づいて、そのバイアルに収容された試料に対する分析のためのメソッドを特定できる。
【0029】
図5(b)は、オートサンプラ3が有するレーン33に関するレーン情報の構成例を示し、輸送中のバイアル37の割り当て状態などが示される。レーン情報は、レーンを位置に識別するためのレーンNo、レーンに設定されているメソッド、現在割り当てられているバイアルの数、および、割り当てられているバイアルの順番に関する情報を含んで構成される。設定メソッドは、ある時点においてレーンに設定されているメソッドを示し、そのレーンに割り当てられたバイアルは、設定メソッドにより分析が行われることを示す。割当バイアル数は、ある時点におけるレーンに割り当てられているバイアルの数を示す。割当バイアル数の上限値は、レーンの寸法に応じて予め規定されていてもよいし、サイズの異なる複数種類のバイアルが利用される場合には各バイアルの寸法に応じて上限値が変動してもよい。バイアル順は、レーンに割り当てられたバイアルの分析順を示し、図5(a)のバイアル識別情報に対応する。
【0030】
(輸送処理)
図3は、本実施形態に係るオートサンプラ3のバイアル37の輸送において、バイアル37をオートサンプラ3の複数のレーン33のいずれかに割り当てるまでの流れのフローチャートである。本処理は、例えば、液体クロマトグラフ装置100が起動され、試料が収容されたバイアル37が所定の位置に設置されたことに起因して、実行されてよい。上述したように、本実施形態では液体クロマトグラフ装置100の制御全体をデータ処理装置7が司るが、ここでは処理主体をオートサンプラ3として記載する。
【0031】
S301にて、オートサンプラ3は、所定の位置に配置されたバイアル37の輸送を開始する。本実施形態では、自動輸送機構(不図示)により1つずつバイアル37を、図2に示した輸送経路31へと輸送させる。
【0032】
S302にて、オートサンプラ3は、輸送経路31にて輸送中のバイアル37のラベルを読み出し、バイアル情報を特定する。このとき特定される内容としては、当該バイアル37に収容された試料に対して行われる分析のメソッド(すなわち、分析にて用いられる移動相)の情報が少なくとも含まれる。ここでバイアル情報を特定したバイアル37を着目バイアルとも称する。
【0033】
S303にて、オートサンプラ3は、複数のレーン33のうち、着目バイアルのバイアル情報にて特定されたメソッドが設定されたレーン33があるか否かを判定する。ここでの判定は、図5(b)のレーン情報における設定メソッドの情報を参照することで行われてよい。該当のレーン33が有る場合(S303にてYES)、オートサンプラ3の処理はS304へ進む。一方、該当のレーン33が無い場合(S303にてNO)、オートサンプラ3の処理はS306へ進む。
【0034】
S304にて、オートサンプラ3は、着目バイアルのバイアル情報にて特定されたメソッドが設定されたレーン33において、着目バイアルを輸送するための空きがあるか否かを判定する。ここでの判定は、図5(b)のレーン情報における割当バイアル数の情報を参照することで行われてよい。空きがある場合(S304にてYES)、オートサンプラ3の処理はS305へ進む。一方、空きが無い場合(S304にてNO)、オートサンプラ3の処理はS306へ進む。
【0035】
S305にて、オートサンプラ3は、対応するメソッドが設定されたレーンに着目バイアルを割り当て、そのレーンへ向けて輸送させる。そして、オートサンプラ3の処理はS312へ進む。
【0036】
S306にて、オートサンプラ3は、複数のレーン33のうち、その時点でバイアル37が割り当てられていない空のレーンが有るか否かを判定する。ここでの判定は、図5(b)のレーン情報における割当バイアル数の情報を参照することで行われてよい。空のレーン33が有る場合(S306にてYES)、オートサンプラ3の処理はS310へ進む。一方、空のレーンが無い場合(S306にてNO)、オートサンプラ3の処理はS307へ進む。
【0037】
S307にて、オートサンプラ3は、バイアルの輸送を停止させる。このとき、レーン33が一杯であり、バイアル37の輸送が一旦停止している旨を表示部10にて表示させるような構成であってもよい。そして、オートサンプラ3の処理はS308へ進む。
【0038】
S308にて、オートサンプラ3は、既にレーン33に割り当てられているバイアル37に対する分析処理が進むことで、空のレーンが発生したか否かを判定する。空のレーンが発生した場合(S308にてYES)、オートサンプラ3の処理はS309へ進む。一方、空のレーンが発生していない場合(S308にてNO)、オートサンプラ3はS308の処理を繰り返し、輸送停止状態にて待機する。
【0039】
S309にて、オートサンプラ3は、着目バイアルの輸送を再開させ、S310の処理へ進む。
【0040】
S310にて、オートサンプラ3は、空のレーンに対して、S302にて特定した着目バイアルに対応するメソッドを設定する。これにより、空のレーンのレーン情報において、設定メソッドの値が更新される。そして、オートサンプラ3の処理はS311へ進む。
【0041】
S311にて、オートサンプラ3は、S310にてメソッドを設定したレーンに着目バイアルを割り当て、そのレーンへ向けて輸送させる。そして、オートサンプラ3の処理はS312へ進む。
【0042】
S312にて、オートサンプラ3は、輸送対象のバイアルが有るか否かを判定する。輸送対象のバイアルが有る場合(S312にてYES)、次の輸送対象のバイアルを着目バイアルとし、S302の処理へ戻って繰り返す。一方、輸送対象のバイアルが無い場合(S312にてNO)、本処理フローを終了する。ここでの輸送対象のバイアルの有無は、バイアルが設置される所定の位置を適宜監視することで行われてもよいし、オペレータにより停止指示が行われた際にバイアルが無いものとして終了させてもよい。
【0043】
(分析処理)
図4は、本実施形態に係るオートサンプラ3のバイアル37の輸送において、レーン33に割り当てられたバイアルに収容された試料を分析し、そのバイアルを破棄するまでの流れのフローチャートである。本処理は、例えば、液体クロマトグラフ装置100が起動され、試料が収容されたバイアル37がいずれかのレーン33に割り当てられたことに起因して、実行されてよい。上述したように、本実施形態では液体クロマトグラフ装置100の制御全体をデータ処理装置7が司るが、ここでは処理主体をオートサンプラ3として記載する。本処理フローは、図3の処理と、同時並行的に実行されてよい。
【0044】
S401にて、オートサンプラ3は、バイアルの分析動作を開始させる。本工程では、オートサンプラ3以外の各部位における分析のための準備動作なども含まれてよい。例えば、移動相格納部1に格納されている複数種類の移動相のうち、消費状況などに応じて利用可能な移動相を特定し、実行可能なメソッドを特定するような動作を行ってもよい。また、分析に要する移動相が不足している場合には、表示部10を介してオペレータに移動相の補充を促す表示を行ってもよい。
【0045】
S402にて、オートサンプラ3は、複数のレーン33のうち、バイアル37が割り当てられているレーンが有るか否かを判定する。ここでの判定は、図5(b)に示すレーン情報を参照することで行われてよい。バイアル37が割り当てられているレーンが有る場合(S402にてYES)、オートサンプラ3の処理はS403へ進む。一方、バイアル37が割り当てられているレーンが1つもない場合には(S402にてNO)、本処理フローは終了する。この場合、図3の処理の経過に応じて、再度本処理フローを開始するような構成であってよい。
【0046】
S403にて、オートサンプラ3は、現在実行中のメソッドが設定されたレーンが有るか否かを判定する。ここでの判定は、図5(b)のレーン情報における設定メソッドの情報を参照することで行われてよい。例えば、液体クロマトグラフ装置100を構成する各部位において、分析のメソッドを切り替える場合、洗浄や交換などの動作が発生する。そのため、切り替えの回数を抑制し、同じメソッドを継続することが分析全体の効率化につながる。よって、現在実行中のメソッドを極力継続するように制御する。実行中のメソッドが設定されたレーンが有る場合(S403にてYES)、オートサンプラ3の処理はS404へ進む。一方、実行中のメソッドが設定されたレーンが無い場合(S403にてNO)、オートサンプラ3の処理はS405へ進む。
【0047】
S404にて、オートサンプラ3は、現在実行中のメソッドに対応したレーンの先頭のバイアルへの分析処理を開始する。例えば、バイアル37から試料をインジェクタ34にて採取し、カラム5へ注入する。このとき、液体クロマトグラフ装置100の各部位も分析に伴う動作を行う。そして、オートサンプラ3の処理はS408へ進む。
【0048】
S405にて、オートサンプラ3は、バイアルが割り当てられているレーンのうちの1つを選択する。ここでの選択は、例えば、各レーンの割当バイアル数、メソッドの優先度、メソッドにて用いる移動相の残量、別途設定された分析のスケジュールなどに基づいて行われてもよい。メソッドの優先度は、実行に係る時間などから予め規定されていてもよい。移動相の残量は、例えば、移動相格納部1に設置された残量センサ(不図示)などを用いて取得してもよい。スケジュールは、より効率的に分析を行うために、オペレータが設定していてもよいし、システム側で自動的に設定されてもよい。
【0049】
S406にて、オートサンプラ3は、S405にて選択したレーンに設定されているメソッドへの切り替え動作を行う。このとき、液体クロマトグラフ装置100の各部位もメソッドの切り替えに動作(例えば、洗浄や交換など)を行う。切り替え動作が完了した後、オートサンプラ3の処理は、S407へ進む。
【0050】
S407にて、オートサンプラ3は、切り替えたメソッドにより、S405にて選択したレーンの先頭のバイアルへの分析処理を開始する。このとき、液体クロマトグラフ装置100の各部位も分析に伴う動作を行う。そして、オートサンプラ3の処理はS408へ進む。
【0051】
S408にて、オートサンプラ3は、分析後のバイアル37を輸送経路35を介してバイアル破棄部36へ搬送させる。そして、S402へ戻り、オートサンプラ3は処理を繰り返す。
【0052】
(輸送例)
図6を用いて、本実施形態に係るオートサンプラ3によるバイアルの輸送例について説明する。ここでは、液体クロマトグラフ装置100は3つのメソッド(メソッドA、メソッドB、メソッドC)にて分析が可能である例を示す。図6では、3つのメソッドをそれぞれ、メソッドA(黒丸(●))、メソッドB(黒三角(▲))、メソッドC(黒四角(■))にて示す。説明のため、各バイアルも対応するメソッドと同じ記号にて示す。また、オートサンプラ3は3つのレーン(レーンA、レーンB、レーンC)を備えるものとして説明する。また、各レーンが割り当て可能なバイアルの上限値は「3」として説明する。
【0053】
図6(a)では、輸送開始前の状態として、10個のバイアルが輸送待ちの状態として設置された例を示している。ここでは「輸送待ちバイアル」にて示す各バイアルが左から順に1つずつオートサンプラ3の搬入口に輸送されてくるものとする。この状態では、3つのレーンそれぞれに対してメソッドは設定されておらず、また、液体クロマトグラフ装置100による分析・測定動作は待機中であるものとする。また、各レーンおよびバイアル破棄部36も空の状態である。
【0054】
図3にて示した処理フローが開始されると、図6(b)に示すように、空のレーン(本例では、レーンA)に対して、先頭のバイアルのメソッド(ここでは、黒丸(●)にて示すメソッドA)が設定される。そして、そのレーンAに対してメソッドAが対応付けられたバイアル(ここでは2つ)が割り当てられ、順に輸送される。
【0055】
続いて、図6(c)に示すように、異なるメソッド(ここでは、黒三角(▲)にて示すメソッドB)に対応したバイアルが現れるため、空のレーン(本例では、レーンB)に対して、メソッドBが設定される。そして、そのレーンBに対してメソッドBが対応付けられたバイアルが搬送される。ここで、メソッドBのバイアルは4つが連続しているが、レーンに割り当て可能なバイアルの上限値は「3」であるため、3つのバイアルがレーンBに割り当てられ、順に輸送される。
【0056】
続いて、図6(d)に示すように、空のレーン(ここでは、レーンC)が存在するため、4つ連続したメソッドBのバイアルのうちの最後のバイアルは、レーンCに割り当てられ、輸送される。このとき、レーンCには、メソッドBが設定される。
【0057】
次に、輸送待ちバイアルの戦闘はメソッドC(黒四角(■))のバイアルであるが、空のレーンが無いため、この時点でバイアルの輸送が一旦停止される。一方、各レーンに割り当てられたバイアルの分析処理は適宜実施される。図6(d)に示すように、レーンAに割り当てられたバイアルに対して、メソッドAにて分析動作が行われるものとして説明する。
【0058】
図6(e)に示すように、レーンAに割り当てられたバイアルに対するメソッドAでの分析動作が行われた結果、レーンAのバイアルは破棄済みバイアルとして、バイアル破棄部36へ輸送される。その結果、レーンAが空となり、輸送待ちバイアルにあったメソッドCのバイアル(ここでは2つ)がレーンAに割り当てられ、輸送される。このとき、レーンAにはメソッドCが設定される。並行して、レーンBに割り当てられたメソッドBのバイアルに対して、メソッドBにて分析動作が行われる。なお、輸送待ちバイアルの最後のバイアルは、メソッドA(黒丸(●))のバイアルであるが、この時点ではメソッドAが設定されたレーンが無いため、このバイアルの輸送は一旦停止される。
【0059】
図6(f)に示すように、レーンBに割り当てられたメソッドBのバイアルすべてに対する分析動作が行われた後、同じメソッドBが設定されているレーンCのバイアルに対して、メソッドBにより、分析動作が行われる。また、レーンBが空になったことに応じて、輸送待ちバイアルの最後のバイアル(メソッドAのバイアル)がレーンBに割り当てられ、輸送される。このとき、レーンBにはメソッドAが設定される。
【0060】
図6(g)に示すように、レーンCに割り当てられたメソッドBのバイアルすべてに対する分析・測定動作が行われた後、バイアルが割り当てられている残りのレーンのいずれかを選択する。ここでは、レーンAが選択された例を示す。
【0061】
そして、各レーンのバイアルの分析動作が完了すると、図6(h)に示すような状態となる。
【0062】
以上、本実施形態により、複数のメソッドにて分析を行うことが可能な液体クロマトグラフ装置において、試料を収容するバイアルの測定順序や設置位置をオペレータが個別に指示を行うことなく、効率的に分析を行うことが可能となる。また、オペレータは、バイアルを所定の位置に配置するのみで、所望の順番にて分析が進むように自動的に輸送させることができるため、例えば、バイアルをラックに設置する手間や、そのラックをオートサンプラに設置するといった手間も簡略化することが可能となる。
【0063】
<第2の実施形態>
本発明の第2の実施形態について説明する。第1の実施形態では、オートサンプラ3が複数のレーン33を備える構成について説明したが、各レーンは同等であるものとして制御を行っていた。本実施形態では、複数のレーンのうち優先レーンを設定し、より優先度の高いバイアルすなわち優先して分析を行う必要がある試料に対しては、その優先レーンを用いて先行して分析を行うように制御する形態について説明する。なお、第1の実施形態と重複する箇所については説明を省略し、差分に着目して説明を行う。本実施形態に係る装置概要は、図1にて示したものと同様である。
【0064】
[オートサンプラにおけるバイアル輸送]
図7は、本実施形態に係る液体クロマトグラフ装置100が備えるオートサンプラ3におけるバイアルの輸送を説明するための概略図である。第1の実施形態にて図2を用いて説明した構成との差異として、ここでは4つのレーン33を備え、そのうちのレーン33dが優先レーンとして設置されている。優先レーン33dには、バイアル37fが割り当てられた状態である。
【0065】
[処理フロー]
以下、本実施形態に係るオートサンプラ3のバイアル37の輸送に係る処理フローについて説明する。ここでは、第1の実施形態と同様、バイアル37を、オートサンプラ3のレーン33に割り当てるまでの処理(図8)と、バイアル37に収容された試料に対する分析を行ってバイアル37を破棄するまでの処理(図9)とを分けて説明する。これらの処理は、同時並行的に実行されてよい。
【0066】
また、図10は、本実施形態に係るデータ処理装置7が管理するバイアル情報、および、オートサンプラ3のレーン33に関するレーン情報の構成例を示す図である。図10(a)は、オートサンプラ3にて輸送されるバイアル37に関するバイアル情報の構成例である。図5(a)との差異として、各バイアルの優先度を示す情報が新たに追加されている。ここでは、「標準」と、より優先度の高い「優先」の2段階の例を示す。
【0067】
図10(b)は、オートサンプラ3が有するレーン33に関するレーン情報の構成例を示す。図10(b)との差異として、優先レーンであるレーンNo「LN04」が追加されている。
【0068】
(輸送処理)
図8は、本実施形態に係るオートサンプラ3のバイアル37の輸送において、バイアル37をオートサンプラ3のレーン33に割り当てるまでの流れのフローチャートである。本処理は、例えば、液体クロマトグラフ装置100が起動され、試料が収容されたバイアル37が所定の位置に設置されたことに起因して、実行されてよい。上述したように、本実施形態では液体クロマトグラフ装置100の制御全体をデータ処理装置7が司るが、ここでは処理主体をオートサンプラ3として記載する。第1の実施形態の図3と同じ工程については同じ参照番号を付して示す。
【0069】
S302の処理の後、オートサンプラ3の処理はS801へ進む。S801にて、オートサンプラ3は、着目バイアルの優先度が高い、すなわち、「優先」に設定されているか否かを判定する。ここでの判定は、図10(a)のバイアル情報における優先度の項目を参照することで行われてよい。着目バイアルの優先度が高い場合(S801にてYES)、オートサンプラ3の処理はS802へ進む。一方、着目バイアルの優先度が高くない、すなわち、「標準」に設定される場合(S801にてNO)、オートサンプラ3の処理はS303へ進む。
【0070】
S802にて、オートサンプラ3は、着目バイアルを優先レーンに割り当て、優先レーンへ向けて輸送させる。そして、オートサンプラ3の処理はS312へ進む。このとき、優先レーンが一杯であり、着目バイアルを輸送できない場合には、優先レーンに空きができるまで着目バイアルの輸送を停止してよい。
【0071】
(分析処理)
図9は、本実施形態に係るオートサンプラ3のバイアル37の輸送において、レーン33に割り当てられたバイアルに収容された試料を分析し、そのバイアルを破棄するまでの流れのフローチャートである。本処理は、例えば、液体クロマトグラフ装置100が起動され、試料が収容されたバイアル37がいずれかのレーン33に割り当てられたことに起因して、実行されてよい。上述したように、本実施形態では液体クロマトグラフ装置100の制御全体をデータ処理装置7が司るが、ここでは処理主体をオートサンプラ3として記載する。本処理フローは、図9の処理と、同時並行的に実行されてよい。第1の実施形態の図4と同じ工程については同じ参照番号を付して示す。
【0072】
S401の処理の後、オートサンプラ3の処理はS901へ進む。S901にて、オートサンプラ3は、優先レーンにバイアルが有るか否かを判定する。ここでの判定は、図10(b)のレーン情報を参照して行われてよい。優先レーンにバイアルが有る場合(S901にてYES)、オートサンプラ3の処理はS903へ進む。一方、優先レーンにバイアルが無い場合(S901にてNO)、オートサンプラ3の処理はS902へ進む。
【0073】
S902にて、オートサンプラ3は、優先レーン以外のレーンにバイアルが有るか否かを判定する。ここでの判定は、図10(b)のレーン情報を参照して行われてよい。優先レーン以外にバイアルが有る場合(S902にてYES)、オートサンプラ3の処理はS403へ進む。一方、優先レーン以外にバイアルが無い場合(S902にてNO)、本処理フローを終了する。この場合、図10の処理の経過に応じて、再度本処理フローを開始するような構成であってよい。
【0074】
S903にて、オートサンプラ3は、優先レーンの先頭のバイアルのバイアル情報に基づき、当該バイアルのメソッドを特定する。メソッドは、図10(a)のバイアル情報、および、図10(b)のレーン情報に基づいて特定されてよい。
【0075】
S904にて、オートサンプラ3は、S903にて特定したメソッドへの切り替え動作を行う。このとき、液体クロマトグラフ装置100の各部位もメソッドの切り替えに動作(例えば、洗浄や交換など)を行う。更に、切り替え動作が完了した後、オートサンプラ3は、切り替えたメソッドにより、優先レーンの先頭のバイアルへの分析処理を開始する。このとき、液体クロマトグラフ装置100の各部位も分析に伴う動作を行う。そして、オートサンプラ3の処理はS408へ進む。
【0076】
(輸送例)
図11を用いて、本実施形態に係るオートサンプラ3によるバイアル37の輸送例について説明する。ここでは、液体クロマトグラフ装置100は3つのメソッド(メソッドA、メソッドB、メソッドC)にて分析が可能である例を示す。図11では、3つのメソッドをそれぞれ、メソッドA(黒丸(●))、メソッドB(黒三角(▲)、白三角(△))、メソッドC(黒四角(■)、白四角(□))にて示す。ここで、白三角(△)と白四角(□)は優先度が高い(「優先」)ものとし、それ以外は、優先度が「標準」であるものとする。また、オートサンプラ3は3つの標準レーン(レーンA、レーンB、レーンC)と、1つの優先レーンを備えるものとして説明する。また、各レーンが割り当て可能なバイアルの上限値は「3」として説明する。
【0077】
図11(a)では、輸送開始前の状態として、8個のバイアルが輸送待ちの状態として設置された例を示している。ここでは「輸送待ちバイアル」にて示す各バイアルが左から順に1つずつオートサンプラ3の搬入口に輸送されてくるものとする。この状態では、3つの標準レーンそれぞれに対してメソッドは設定されておらず、また、液体クロマトグラフ装置100による分析動作は待機中であるものとする。また、各レーンおよびバイアル破棄部36も空の状態である。
【0078】
図8にて示した処理フローが開始されると、図11(b)に示すように、空のレーン(本例では、レーンA)に対して、先頭のバイアルのメソッド(ここでは、黒丸(●)にて示すメソッドA)が設定される。そして、そのレーンAに対してメソッドAが対応付けられたバイアル(ここでは2つ)が割り当てられ、輸送される。更に、空のレーン(本例では、レーンB)に対して、メソッドBが設定される。そして、そのレーンBに対してメソッドBが対応付けられたバイアル(ここでは2つ)が割り当てられ、輸送される。このとき、レーンAに割り当てられたバイアルに対して、図9の処理にてメソッドAにて分析が開始される。
【0079】
続く輸送待ちバイアルは、メソッドCかつ優先度が高いバイアルである。そのため、図11(c)に示すように、当該バイアルを優先レーンに割り当て、輸送させる。ここで、優先レーンにバイアルが割り当てられたため、レーンAに割り当てられた各バイアルへの分析は中断し、優先レーンのバイアルへの分析が行われる。このとき、実行中のメソッドと、優先レーンのバイアルに対するメソッドとが異なる場合には、メソッドの切り替え動作が行われる。なお、本実施形態では、実行中のバイアルに対する分析が完了してから切り替えが行われるものとして説明するが、その実行中のバイアルの分析を中断してから切り替えを行ってもよい。これは、実行中のバイアルに対する分析の残りの予測時間などに応じて決定してもよい。
【0080】
図11(d)に示すように、優先レーンのバイアルの分析が完了した後、バイアルが割り当てられているレーンのいずれかを選択し、分析動作を継続する。ここでは、メソッドBが設定されたレーンBが選択され、レーンBのバイアルの分析処理が継続されているものとして説明する。
【0081】
また、続く輸送待ちバイアルは、メソッドCかつ優先度が標準のバイアルである。そのため、図11(e)に示すように、空のレーンであるレーンCにメソッドCを設定し、そのレーンCに当該バイアルを割り当てて輸送する。
【0082】
更に、続く輸送待ちバイアルは、メソッドBかつ優先度が高いバイアルである。そのため、図11(f)に示すように、当該バイアルを優先レーンに割り当て、輸送させる。ここで、優先レーンにバイアルが割り当てられたため、レーンBに割り当てられた各バイアルへの分析は中断し、優先レーンのバイアルへの分析が行われる。このとき、実行中のメソッドと、優先レーンのバイアルに対するメソッドとが異なるため、メソッドの切り替え動作が行われる。
【0083】
そして、順次優先度に基づいて各レーンのバイアルの分析が進むことにより、図11(g)に示す状態となり、分析が完了する。
【0084】
以上、本実施形態により、第1の実施形態の効果に加え、優先度の高いバイアルの分析については、割り込みを発生させるように制御することで、優先的に実行することが可能となる。よって、オペレータの意図に応じた順にて分析を実行させることが可能となり、利便性を向上させることが可能となる。
【0085】
<その他の実施形態>
上記の実施形態では、分析処理が完了したバイアルから順次、バイアル破棄部36へ輸送していた。ここで、バイアル破棄部36は、複数のエリアから構成されていてもよい。そして、バイアルに対して実行したメソッドの種類、バイアルの種別(例えば、寸法)、収容されていた試料の種類などに応じて、複数のエリアのそれぞれに分別するように破棄させてもよい。また、バイアル破棄部36に破棄されたバイアルの数を監視し、その数に応じてエリアを切り替えたり、オペレータに通知したりするような構成であってもよい。
【0086】
また、第2の実施形態では、優先レーンを1つ設ける形態について説明したが、異なる優先度が設定可能な優先レーンを複数設けてもよい。この場合、例えば、バイアルの分析に対する優先度を3段階以上で設定できるように構成してもよい。その結果、より優先度の高いバイアルの分析について待ち時間を抑制でき、利便性を向上させることができる。
【0087】
また、液体クロマトグラフ装置100が複数のメソッドの分析動作を並行して行えるように構成してもよい。例えば、液体クロマトグラフ装置100が、カラム5を備える流路系を複数備え、それぞれの流路系が異なるメソッドの分析動作を行えるように構成することが出来る。この場合、オートサンプラ3のレーンと前述の流路系とが対応関係を持つことになる。以下、このように構成した液体クロマトグラフ装置100で、アミノ酸分析を行う場合、へモグロビンHbA1Cの分析を行う場合、食品分野向けの分析を行う場合の例を説明する。ここでは、2つのメソッドAおよびメソッドBを同時並行的に実行可能な例を挙げ、それらのメソッドに対応した2つのレーンへの分岐を例に挙げる。併せて、このような構成に対する本発明の利点についても記載する。
【0088】
例えば、アミノ酸分析を行う場合、たんぱく質加水分解物分析法(PH法)をメソッドAに、生体液分析法(PF法)をメソッドBに振り分けることが有用である。これは、移動相の違いによる。即ち、PH法の移動相はクエン酸ナトリウム系を、PF法の移動相はクエン酸リチウム系を用いるため、PH法のバイアルをレーンAの流路系へ、PF法のバイアルをレーンBの流路系へ輸送することで、メソッドAとメソッドBとを1つの流路系で実現する場合に比べて、メソッドAからメソッドBへ移動相を置換する時間を省略できる。その結果、迅速に効率よく、PH法、PF法それぞれの分析動作を実行することができる。このように、移動相がメソッドごとに異なる場合も本発明は適用可能である。
【0089】
例えば、へモグロビンHbA1Cの分析を行う場合、高速法をメソッドAに、高分離法をメソッドBに振り分けることが有用である。これは、カラム長さの違いによる。即ち、高速法では35mmのカラムを、高分離法では80mmのカラムを用いるため、高速法用のカラムを備えた流路系と高分離法用のカラムを備えた流路系とをそれぞれ予め平衡化し、それぞれの流路系へバイアルを輸送することにより、迅速に分析動作を実行することができる。このように、カラムがメソッドごとに異なる場合も本発明は適用可能である。
【0090】
例えば、食品分野向けの分析を行う場合、カテキン分析専用で分離するメソッドAと、クロロゲン酸などポリフェノール全般を分析するメソッドBとを振り分けることが有用である。メソッドAは、カラム5としてフェニル系カラムを用い、検出器6として質量分析器を用いる。一方、メソッドBは、カラム5としてC18系逆相クロマトグラフィー用カラムを用い、検出器6としてUV検出器を用いる。このように、検出器がメソッド毎に異なる場合にも本発明は適用可能である。
【0091】
上記のような複数のメソッドを同時並行的に実行可能な液体クロマトグラフ装置におけるレーンとメソッドの対応付けは、各メソッドに関する所要時間や特性などに応じて、スケジューリングが行われた際に決定されてもよいし、オペレータが任意に設定可能であってもよい。また、ある時点での液体クロマトグラフ装置の状態に応じて切り替えられてもよい。
【0092】
本発明において、上述した1以上の実施形態の機能を実現するためのプログラムやアプリケーションを、ネットワーク又は記憶媒体等を用いてシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。
【0093】
また、1以上の機能を実現する回路によって実現してもよい。なお、1以上の機能を実現する回路としては、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)が挙げられる。
【0094】
以上の通り、本明細書には次の事項が開示されている。
(1) 試料に対して、複数のメソッドのうちのいずれかにより分析を行うことが可能な液体クロマトグラフ装置(例えば、100)であって、
分析対象である試料が収容されるバイアル(例えば、37)を輸送し、バイアルを割り当て可能な複数のレーン(例えば、33)を有する輸送部(例えば、3)と、
前記複数のレーンそれぞれに対して、前記複数のメソッドのうちのいずれかを設定する設定部(例えば、7、9)と、
バイアルと、当該バイアルを分析するためのメソッドとを対応付けたバイアル情報を保持する保持部(例えば、7、8)と、
バイアル情報に基づいて、前記複数のレーンのうちの対応するメソッドが設定されたレーンに、バイアルを振り分けるように前記輸送部を制御する輸送制御部(例えば、7、9)と、
を有する液体クロマトグラフ装置。
これにより、オートサンプラを備える液体クロマトグラフ装置を用いた分析の際のユーザの利便性を向上させることが可能となる。
【0095】
(2) 前記設定部は、前記複数のレーンそれぞれの空き状態、および、新たに輸送されてきたバイアルに対応するメソッドに応じて、前記複数のレーンそれぞれに対して設定したメソッドを更新する、(1)に記載の液体クロマトグラフ装置。
これにより、バイアルの輸送状態に応じて、レーンの設定を切り替え、効率的にバイアルの輸送および分析を行うことが可能となる。
【0096】
(3) 前記輸送制御部は、前記複数のレーンにおいて、新たに輸送されてきたバイアルに対応するメソッドが設定されたレーンが無く、かつ、空のレーンが無い場合、当該新たに輸送されてきたバイアルの輸送を停止させる、(1)に記載の液体クロマトグラフ装置。
これにより、レーンの空き状況に応じて、バイアルの輸送を自動的に制御することが可能となる。
【0097】
(4) 前記複数のレーンは、優先度が高い優先レーン(例えば、33d)を含み、
前記バイアル情報は、分析の優先度に関する情報を更に含み、
前記輸送制御部は、分析の優先度が高いバイアルを、前記優先レーンに割り当てる、
(1)に記載の液体クロマトグラフ装置。
これにより、試料の分析順を、優先度に応じて適宜切り替えるように制御することが可能となる。
【0098】
(5) 前記複数のレーンに割り当てられたバイアルに対して順に分析を行う分析部(例えば、3、4、6、7)を有し、
前記分析部は、前記優先レーンにバイアルが割り当てられたことに起因して、当該バイアルに対応するメソッドに切り替えて優先的に分析を行う、
(4)に記載の液体クロマトグラフ装置。
これにより、試料の分析順を、優先度に応じて適宜割り込みを発生させて制御することが可能となる。
【0099】
(6) バイアルを破棄するための複数の破棄部(例えば、36)を備え、
前記輸送制御部は、前記分析部により分析が行われた後のバイアルを、前記バイアル情報に応じて異なる破棄部へ輸送させる、
(5)に記載の液体クロマトグラフ装置。
これにより、バイアル情報に応じて分別して破棄することが可能となる。また、ユーザの仕分けの手間が簡略でき、利便性を向上させることができる。
【0100】
(7) 試料に対して、複数のメソッドのうちのいずれかにより分析を行うことが可能な液体クロマトグラフ装置(例えば、100)の制御方法であって、
前記液体クロマトグラフ装置は、
分析対象である試料が収容されるバイアル(例えば、37)を輸送し、バイアルを割り当て可能な複数のレーン(例えば、33)を有する輸送部と、
バイアルと、当該バイアルを分析するためのメソッドとを対応付けたバイアル情報を保持する保持部(例えば、8)と、
を有し、
前記複数のレーンそれぞれに対して、前記複数のメソッドのうちのいずれかを設定する設定工程と、
バイアル情報に基づいて、前記複数のレーンのうちの対応するメソッドが設定されたレーンに、バイアルを振り分けるように前記輸送部を制御する制御工程と、
を有する液体クロマトグラフ装置の制御方法。
これにより、オートサンプラを備える液体クロマトグラフ装置を用いた分析の際のユーザの利便性を向上させることが可能となる。
【0101】
また、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【符号の説明】
【0102】
1 移動相格納部
2 ポンプ
3 オートサンプラ
4 カラムオーブン
5 カラム
6 検出器
7 データ処理装置
8 記憶部
9 制御部
10 表示部
31、35 輸送経路
32 読取部
33 レーン
34 インジェクタ
36 バイアル破棄部
37 バイアル
100 液体クロマトグラフ装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11