(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178102
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】積層体
(51)【国際特許分類】
B32B 15/092 20060101AFI20241217BHJP
C08G 59/24 20060101ALI20241217BHJP
H01L 23/29 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
B32B15/092
C08G59/24
H01L23/30 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024060163
(22)【出願日】2024-04-03
(31)【優先権主張番号】P 2023096226
(32)【優先日】2023-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(71)【出願人】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】芳我 基治
(72)【発明者】
【氏名】趙 帥捷
【テーマコード(参考)】
4F100
4J036
4M109
【Fターム(参考)】
4F100AA20B
4F100AA37B
4F100AB01A
4F100AB17A
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4F100AK53B
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4F100CA02B
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4M109AA01
4M109BA01
4M109CA22
4M109EA02
4M109EB02
4M109EB03
4M109EB12
4M109EB19
(57)【要約】
【課題】高温環境下で長期信頼性を有する積層体及びこの積層体の製造に用いる熱硬化性組成物の提供。
【解決手段】積層体は、金属部材と、この金属部材に積層する樹脂層とを含む。樹脂層は、熱硬化性組成物の硬化物である。熱硬化性組成物は、脂環式エポキシ基を有する熱硬化性化合物を含有している。200℃、1000時間経過後の樹脂層に対し、X線光電子分光装置(XPS)を用いて深さ方向の元素分析をおこなうとき、この樹脂層の、金属部材との接触面からの深さ100nmにおける金属含有率は、1atomic%以下である。熱硬化性組成物の硬化物の塩素含有量は1000ppm以下であり、硫黄含有量は1000ppm以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属部材と、この金属部材に積層する樹脂層とを含み、
上記樹脂層が、熱硬化性組成物の硬化物であり、
上記熱硬化性組成物が、脂環式エポキシ基を有する熱硬化性化合物を含有しており、
上記樹脂層は、以下の測定方法で求められる200℃、1000時間経過後の金属含有率が、上記金属部材との接触面からの深さ100nmにおいて1atomic%以下である、積層体。
(測定方法:コンプレッション成形(温度175℃、圧力3MPa)をおこなって、金属部材に積層した樹脂層(厚み1.3mm)を有する積層体を準備し、この積層体を温度200℃で1000時間保存した後、金属部材から剥離した樹脂層に対して、X線光電子分光装置(XPS)を用いて深さ方向の元素分析をおこない、金属元素、炭素及び酸素の原子数を測定し、この樹脂層の、金属部材との接触面からの深さ100nmにおける、炭素、酸素及び金属元素の原子数の合計に対する金属元素の原子数の比率を、金属含有率(atomic%)として算出する。)
【請求項2】
上記金属部材の材質が銅であり、
上記樹脂層は、以下の測定方法で求められる200℃、1000時間経過後の銅含有率が、上記金属部材との接触面からの深さ100nmにおいて1atomic%以下である、請求項1に記載の積層体。
(測定方法:コンプレッション成形(温度175℃、圧力3MPa)をおこなって、金属部材に積層した樹脂層(厚み1.3mm)を有する積層体を準備し、この積層体を温度200℃で1000時間保存した後、金属部材から剥離した樹脂層に対して、X線光電子分光装置(XPS)を用いて深さ方向の元素分析をおこない、銅、炭素及び酸素の原子数を測定し、この樹脂層の、金属部材との接触面からの深さ100nmにおける、炭素、酸素及び銅の原子数の合計に対する銅の原子数の比率を銅含有率(atomic%)として算出する。)
【請求項3】
温度200℃で240時間保存後における上記樹脂層と上記金属部材との接合面のシェア強度が、上記保存前のシェア強度に対して50%以上である、請求項1に記載の積層体。
【請求項4】
上記熱硬化性化合物は、塩素含有量が1000ppm以下である、請求項1に記載の積層体。
【請求項5】
上記熱硬化性化合物は、エポキシ当量が200g/eq以下である、請求項1に記載の積層体。
【請求項6】
上記熱硬化性化合物は、下記式(1)で示される化合物である、請求項1に記載の積層体。
【化1】
(式(1)中、Xは単結合又は連結基を示す。)
【請求項7】
上記熱硬化性組成物が硬化剤をさらに含む、請求項1に記載の積層体。
【請求項8】
上記熱硬化性組成物の硬化物のガラス転移温度Tgが130℃以上250℃以下である、請求項1に記載の積層体。
【請求項9】
上記熱硬化性組成物の硬化物は、塩素含有量が1000ppm以下である、請求項1に記載の積層体。
【請求項10】
上記熱硬化性組成物の硬化物は、硫黄含有量が1000ppm以下である、請求項1に記載の積層体。
【請求項11】
上記金属部材が半導体装置の構成部材である、請求項1に記載の積層体。
【請求項12】
上記熱硬化性組成物を上記金属部材に供給する工程と、
上記金属部材に供給された熱硬化性組成物を硬化させて上記樹脂層を形成する工程と、を有する、請求項1に記載の積層体の製造方法。
【請求項13】
積層体の製造に用いる熱硬化性組成物であって、
上記熱硬化性組成物は、脂環式エポキシ基を有する熱硬化性化合物を含有しており、
上記熱硬化性組成物の硬化物は、塩素含有量が1000ppm以下であり、硫黄含有量が1000ppm以下であり、
上記熱硬化性組成物の硬化物は、以下の測定方法で求められる200℃、1000時間経過後の金属含有率が、金属部材との接触面からの深さ100nmにおいて1atomic%以下である、熱硬化性組成物。
(測定方法:コンプレッション成形(温度175℃、圧力3MPa)をおこなって、金属部材に積層した熱硬化性組成物の硬化物からなる樹脂層(厚み1.3mm)を有する積層体を準備し、この積層体を温度200℃で1000時間保存した後、金属部材から剥離した樹脂層に対して、X線光電子分光装置(XPS)を用いて深さ方向の元素分析をおこない、金属元素、炭素及び酸素の原子数を測定し、この樹脂層の、金属部材との接触面からの深さ100nmにおける、炭素、酸素及び金属元素の原子数の合計に対する金属元素の原子数の比率を、金属含有率(atomic%)として算出する。)
【請求項14】
上記積層体が半導体装置である、請求項13に記載の熱硬化性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体パワーパッケージ及びパワーモジュールは、金属フレーム、半導体チップ、ダイボンド材、ボンディングワイヤー、封止樹脂(モールド樹脂)等、異なる材質からなる複数の部材が接合又は接着されることにより構成されている。半導体パッケージの封止樹脂には、半田実装時の半田リフロー温度(260℃)における耐熱性が求められる。耐熱性の高い封止樹脂として、従来、熱硬化性樹脂が用いられている。一般的には、ビスフェノールA型を原料とするエポキシ樹脂が多用されてきた。
【0003】
また、封止樹脂は、外部環境から内部を保護するために用いられる。例えば、金属フレームと封止樹脂との界面において剥離が生じると、この剥離箇所を起点としてダイボンド材との接合部に亀裂が進展して、半導体チップの熱特性及び電気特性が低下する場合がある。そのため、最も接着面積の大きい金属フレームと封止樹脂との密着性は、特に重要である。使用環境下で樹脂層と金属部材との剥離が生じない、信頼性の高い積層体が求められている。さらに、近年では、半導体パッケージの自動車部品への適用にともなって、200℃を超える高温条件、-55℃~175℃の温度サイクル条件、高温高湿条件(121℃、100%RH、2atm)等における高い信頼性が求められている。
【0004】
例えば、金属部材との剥離が抑制された封止樹脂として、金属(例えば、銅)と同程度の線膨張係数を有し、ガラス転移温度200℃を超える樹脂が開発されている。また、金属部材に近似した線膨張係数を達成するために、封止樹脂に、約70~80%のシリカフィラーが配合されている。しかし、このような樹脂を使用しても、前述した高温条件においては、金属部材との剥離を完全には抑制できず、長期信頼性が得られないという問題があり、そのメカニズムも未だ解明されていない。
【0005】
非特許文献1は、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂等のポリマー中への金属拡散について報告している。非特許文献2には、銅と樹脂が接触すると、金属イオンがポリマーの自動酸化反応を促進させる触媒的な作用により、ポリマー類を劣化させることが記載されている。非特許文献3には、エポキシ樹脂に銅を混ぜると、エポキシ樹脂の高温での劣化が加速する結果が示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Franz Faupel, Ralf Willecke, Axel Thran, Materials Science and Engineering, R22(l998) 1-55
【非特許文献2】大武義人、空気調和・衛生工学 80 (1), 69-75 (2006)
【非特許文献3】Hong, S. G., & Wang, T. C., Journal of applied polymer science, 52(9), 1339-1351 (1994)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
樹脂層と金属部材との接着強度が高く、かつ、高温環境下において、初期の接着強度が維持されて、金属部材との界面における剥離が抑制される積層体は未だ提案されていない。本開示の目的は、高温環境下で長期信頼性を有する積層体の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示者らは、鋭意検討の結果、高温環境下において、金属部材に起因する金属元素が樹脂層に拡散することに着目した。そして、金属部材との接触界面のごく近傍における樹脂中の金属濃度を制御することで、接着強度の低下が抑制されることを見出し、上記課題を解決するに到った。
【0009】
即ち、本開示の積層体は、金属部材と、この金属部材に積層する樹脂層とを含む。樹脂層は、熱硬化性組成物の硬化物である。熱硬化性組成物は、脂環式エポキシ基を有する熱硬化性化合物を含有している。この樹脂層は、以下の測定方法で求められる200℃、1000時間経過後の金属含有率が、上記金属部材との接触面からの深さ100nmにおいて1atomic%以下である。
(測定方法:コンプレッション成形(温度175℃、圧力3MPa)をおこなって、金属部材に積層した樹脂層(厚み1.3mm)を有する積層体を準備し、この積層体を温度200℃で1000時間保存した後、金属部材から剥離した樹脂層に対して、X線光電子分光装置(XPS)を用いて深さ方向の元素分析をおこなって、金属元素、炭素及び酸素の原子数を測定し、この樹脂層の、金属部材との接触面からの深さ100nmにおける、炭素、酸素及び金属元素の原子数の合計に対する金属元素の原子数の比率を、金属含有率(atomic%)として算出する。)
【0010】
他の観点から、本開示は、前述の積層体を製造するための熱硬化性組成物に関する。この熱硬化性組成物は、脂環式エポキシ基を有する熱硬化性化合物を含有している。この熱硬化性組成物の硬化物は、塩素含有量が1000ppm以下であり、硫黄含有量が1000ppm以下である。この熱硬化性組成物の硬化物は、以下の測定方法で求められる200℃、1000時間経過後の金属含有率が、金属部材との接触面からの深さ100nmにおいて1atomic%以下である。
(測定方法:コンプレッション成形(温度175℃、圧力3MPa)をおこなって、金属部材に積層した熱硬化性組成物の硬化物からなる樹脂層(厚み1.3mm)を有する積層体を準備し、この積層体を温度200℃で1000時間保存した後、金属部材から剥離した樹脂層に対して、X線光電子分光装置(XPS)を用いて深さ方向の元素分析をおこない、金属元素、炭素及び酸素の原子数を測定し、この樹脂層の、金属部材との接触面からの深さ100nmにおける、炭素、酸素及び金属元素の原子数の合計に対する金属元素の原子数の比率を、金属含有率(atomic%)として算出する。)
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、金属部材と樹脂層との接着強度の高い積層体が得られる。この積層体によれば、高温環境下においても、金属部材と樹脂層との界面における剥離が抑制されるので、長期間、その性能を維持することができる。本開示の積層体は、高温への耐熱性が求められる自動車部品にも好適に用いられうる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1Aは、実施例1の高温処理前のXPSプロファイルであり、
図1Bは、実施例1の高温処理後のXPSプロファイルである。
【
図2】
図2Aは、実施例2の高温処理前のXPSプロファイルであり、
図2Bは、実施例2の高温処理後のXPSプロファイルである。
【
図3】
図3Aは、比較例1の高温処理前のXPSプロファイルであり、
図3Bは、比較例1の高温処理後のXPSプロファイルである。
【
図4】
図4Aは、参考例1の高温処理前のXPSプロファイルであり、
図4Bは、参考例1の高温処理後のXPSプロファイルである。
【
図5】
図5は、実施例1について得られた赤外吸収スペクトルである。
【
図6】
図6は、実施例2について得られた赤外吸収スペクトルである。
【
図7】
図7は、比較例1について得られた赤外吸収スペクトルである。
【
図8】
図8は、参考例1について得られた赤外吸収スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、好ましい実施形態の一例を具体的に説明する。各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は、一例であって、本開示の主旨から逸脱しない範囲内で、適宜、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。本開示は、実施形態によって限定されることはなく、クレームの範囲によってのみ限定される。また、本明細書に開示された各々の態様は、本明細書に開示された他のいかなる特徴とも組み合わせることができる。
【0014】
なお、本願明細書において、範囲を示す「X~Y」は「X以上Y以下」の意味である。また、特に注釈のない限り、試験温度は全て室温(20℃±5℃)である。
【0015】
(積層体)
本開示の積層体は、金属部材と、この金属部材に積層する樹脂層とを含む。樹脂層は、熱硬化性組成物の硬化物である。熱硬化性組成物は、脂環式エポキシ基を有する熱硬化性化合物を含有している。この樹脂層は、以下の測定方法で求められる200℃、1000時間経過後の金属含有率が、金属部材との接触面からの深さ100nmにおいて1atomic%以下である。
(測定方法:コンプレッション成形(温度175℃、圧力3MPa)をおこなって、金属部材に積層した樹脂層(厚み1.3mm)を有する積層体を準備し、この積層体を温度200℃で1000時間保存した後、金属部材から剥離した樹脂層に対して、X線光電子分光装置(XPS)を用いて深さ方向の元素分析をおこなって、金属元素、炭素及び酸素の原子数を測定し、この樹脂層の、金属部材との接触面からの深さ100nmにおける、炭素、酸素及び金属元素の原子数の合計に対する金属元素の原子数の比率を、金属含有率(atomic%)として算出する。)
【0016】
樹脂層中の金属含有率の増加は、樹脂の劣化要因の一つである。特に、金属部材との接触面のごく近傍における樹脂の劣化が、樹脂層と金属部材との剥離を生じさせると考えられる。しかしながら、本開示の積層体によれば、高温環境下に長期間おかれた場合も、金属部材から樹脂層への金属元素の拡散が有意に低減され、金属部材との接触面近傍における金属含有率が1atomic%以下に維持される。この積層体では、高温環境下における樹脂層と金属部材との剥離が十分に抑制されうる。この積層体は、高温信頼性に優れている。本開示の積層体は、例えば、パワーパッケージ及びパワーモジュールのような半導体装置に適用することができる。本開示の積層体を含む半導体装置は、高温環境下での長期信頼性を有している。
【0017】
さらに、本開示の積層体は、金属部材と樹脂層との間に、金属拡散防止膜を形成することなく、高い高温信頼性を有している。換言すれば、この積層体では、樹脂層が直接金属部材に接して積層された場合も、金属部材から樹脂層への金属元素の拡散が低減されうる。即ち、本開示の積層体は、金属部材と、この金属部材の表面に直接積層された樹脂層とから構成されてもよい。
【0018】
樹脂層の剥離を抑制するとの観点から、上記測定方法で求められる200℃、1000時間経過後の金属含有率が、金属部材との接触面からの深さ50nmにおいて1atomic%以下であってよく、深さ30nmにおいて1atomic%以下であってよく、深さ10nmにおいて1atomic%以下であってよい。
【0019】
本開示の積層体において、樹脂層と金属部材との接着性は、シェア強度により評価されてよい。剥離抑制の観点から、樹脂層の金属部材に対するシェア強度は5MPa以上が好ましく、10MPa以上であってよく、15MPa以上であってよく、その上限は特に限定されない。なお、本明細書中、シェア強度は、室温下、ヘッドスピード50μm/s、ヘッドと金属部材との距離200μmにて測定される。測定方法の詳細は、実施例にて詳述する。
【0020】
さらに、金属部材からの樹脂層の剥離を抑制するとの観点から、本開示の積層体では、温度200℃で240時間保存後における樹脂層と金属部材との接合面のシェア強度が、当該保存前のシェア強度に対して50%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、70%以上であることがさらに好ましく、80%以上であることが特に好ましい。
【0021】
好ましい実施態様では、温度200℃で500時間保存後における樹脂層と金属部材との接合面のシェア強度が、当該保存前のシェア強度に対して10%以上であることが好ましく、25%以上であることがより好ましく、50%以上であることがさらに好ましく、80%以上であることが特に好ましい。
【0022】
他の好ましい実施態様では、温度200℃で1000時間保存後における樹脂層と金属部材との接合面のシェア強度が、当該保存前のシェア強度に対して5%以上であることが好ましく、10%以上であることがより好ましく、20%以上であることがさらに好ましく、30%以上であることが特に好ましい。
【0023】
(金属部材)
金属部材の形状は、板状、棒状等であってよい。例えば、半導体装置を構成する金属部材として、基板、電極、ワイヤー等が挙げられる。
【0024】
金属部材の材質は、銅、ニッケル、銀等であってよい。半導体装置の構成部材の材質としては、銅が好ましい。金属部材の材質が銅である場合、積層体が含む樹脂層は、以下の測定方法で求められる200℃、1000時間経過後の銅含有率が、金属部材との接触面からの深さ100nmにおいて1atomic%以下であってよい。
(測定方法:コンプレッション成形(温度175℃、圧力3MPa)をおこなって、金属部材に積層した樹脂層(厚み1.3mm)を有する積層体を準備し、この積層体を温度200℃で1000時間保存した後、金属部材から剥離した樹脂層に対して、X線光電子分光装置(XPS)を用いて深さ方向の元素分析をおこなって、銅、炭素及び酸素の原子数を測定し、この樹脂層の、金属部材との接触面からの深さ100nmにおける、炭素、酸素及び銅の原子数の合計に対する銅の原子数の比率を銅含有率(atomic%)として算出する。)
【0025】
また、樹脂層の剥離を抑制するとの観点から、上記測定方法で求められる200℃、1000時間経過後の銅含有率が、金属部材との接触面からの深さ50nmにおいて1atomic%以下であってよく、深さ30nmにおいて1atomic%以下であってよく、深さ10nmにおいて1atomic%以下であってよい。
【0026】
樹脂層との接着性の観点から、金属部材の表面が意図的に酸化処理されていてもよく、意図的ではない自然酸化膜で覆われていてもよい。
【0027】
(熱硬化性組成物)
本開示の熱硬化性組成物は、前述した積層体の製造に用いられる。詳細には、本開示の熱硬化性組成物の硬化物である樹脂層を、金属部材に積層することにより、本開示の積層体が製造される。この金属部材は、半導体装置の構成部材であってよい。本開示の熱硬化性組成物の硬化物である樹脂層を、半導体装置の構成部材である金属部材に積層することにより、半導体装置が製造されてもよい。換言すれば、本開示の熱硬化性組成物は、半導体装置の製造に用いられうる。
【0028】
本開示の熱硬化性組成物は、熱硬化性化合物を含有する。本開示において、熱硬化性化合物は、脂環式エポキシ基を有している。熱硬化性化合物が、脂環式エポキシ基を有していることで、金属部材から樹脂層への金属元素の拡散を抑制することができる。脂環式エポキシ基を有する熱硬化性化合物を含む熱硬化性組成物を用いることにより、金属部材と樹脂層との接着強度の高い積層体が得られる。熱硬化性化合物が、複数の脂環式エポキシ基を有していてもよい。2以上の脂環式エポキシ基を有する熱硬化性化合物が好ましい。本開示の効果が得られる限り、熱硬化性化合物が、脂環式エポキシ基とともに、他のエポキシ基を有していてもよい。他のエポキシ基として、グリシジル基が挙げられる。また、本開示の効果が得られる範囲で、熱硬化性組成物が、脂環式エポキシ基を有する熱硬化性化合物を2種以上含んでもよく、脂環式エポキシ基を有する熱硬化性化合物とともに脂環式エポキシ基を有しない熱硬化性化合物を含んでもよい。
【0029】
複数の脂環式エポキシ基を有する熱硬化性化合物としては、例えば、下記式(1)で表される化合物であってよい。
【化1】
【0030】
上記式(1)中、Xは単結合又は連結基を示す。この連結基としては、例えば、二価の炭化水素基、炭素-炭素二重結合の一部又は全部がエポキシ化されたアルケニレン基、カルボニル基(-CO-)、エーテル結合(-O-)、エステル結合(-COO-)、カーボネート基(-O-CO-O-)、アミド基(-CONH-)等が挙げられる。また、連結基Xは、これらが複数個連結した官能基であってよい。
【0031】
二価の炭化水素基としては、例えば、炭素数1~18の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基、炭素数3~18の二価の脂環式炭化水素基等が挙げられる。炭素数1~18の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基等が挙げられる。炭素数3~18の二価の脂環式炭化水素基としては、例えば、1,2-シクロペンチレン基、1,3-シクロペンチレン基、1,2-シクロヘキシレン基、1,3-シクロヘキシレン基、1,4-シクロヘキシレン基等のシクロアルキレン基が挙げられる。
【0032】
炭素-炭素二重結合の一部又は全部がエポキシ化されたアルケニレン基(以下、「エポキシ化アルケニレン基」ともいう。)におけるアルケニレン基としては、例えば、炭素数2~8の直鎖状又は分岐鎖状のアルケニレン基等が挙げられる。炭素数2~8の直鎖状又は分岐鎖状のアルケニレン基としては、例えば、ビニレン基、プロペニレン基、1-ブテニレン基、2-ブテニレン基、ブタジエニレン基、ペンテニレン基、ヘキセニレン基、ヘプテニレン基、オクテニレン基等が挙げられる。上記エポキシ化アルケニレン基としては、炭素-炭素二重結合の全部がエポキシ化されたアルケニレン基が好ましく、炭素-炭素二重結合の全部がエポキシ化された炭素数2~4のアルケニレン基がより好ましい。
【0033】
上記式(1)中のシクロヘキセンオキシド基(脂環式エポキシ基)には、置換基(例えば、炭素数1~10のアルキル基等)が結合していても良い。
【0034】
上記式(1)で表される化合物の代表的な例としては、上記式(1)中のXがエステル結合を含む基である化合物、(3,4,3’,4’-ジエポキシ)ビシクロヘキシル、1,2-エポキシ-1,2-ビス(3,4-エポキシシクロヘキサン-1-イル)エタン等が挙げられる。
【0035】
上記式(1)中のXがエステル結合を含む基である化合物としては、下記式(1-1)~(1-5)で示される化合物等が挙げられる。
【化2】
【0036】
熱硬化性化合物は、飽和又は不飽和の環状炭化水素基を含むことが好ましい。この環状炭化水素基は、ヘテロ原子(例えば、窒素(N)、硫黄(S)等)を含んでもよい。この環状炭化水素基は、多環芳香族基(例えば、ナフタレン骨格)等も含む概念である。
【0037】
熱硬化性化合物は、環状炭化水素基として、五員環及び六員環の少なくとも一方を有することが好ましく、六員環を有することがより好ましく、六員環のみを有することが特に好ましい。この六員環としては、ベンゼン骨格、シクロヘキサン骨格が挙げられる。シクロヘキサン骨格である六員環が好ましい。環状炭化水素基が、芳香族基を含まないことが好ましく、また、ヘテロ原子を含まないことが好ましい。
【0038】
本開示の効果が得られる限り、熱硬化性化合物が、脂環式エポキシ基とともに、さらに水酸基を有してもよい。この水酸基は、アルコール性水酸基であってもよく、フェノール性水酸基であってもよい。
【0039】
好ましくは、熱硬化性化合物のエポキシ当量は200g/eq以下である。ここで「エポキシ当量」とは、エポキシ基1当量当たりの熱硬化性化合物の量(g)である。エポキシ当量が小さい程、得られる硬化物の架橋密度が増加する。硬化物の架橋密度の増大によって、金属部材から樹脂層への金属元素の拡散が抑制されると推測される。高温信頼性向上の観点から、熱硬化性化合物のエポキシ当量は180g/eq以下がより好ましく、150g/eq以下がさらに好ましく、130g/eq以下が特に好ましい。エポキシ当量の下限値は特に限定されないが、熱硬化性化合物のエポキシ当量は50g/eq以上であってよい。なお、熱硬化性化合物のエポキシ当量は、例えば、JIS K7236:2009に記載された方法に準拠して測定される。
【0040】
好ましくは、熱硬化性化合物の塩素含有量は1000ppm以下である。本開示者らの知見によれば、熱硬化性化合物に由来する塩素が、金属酸化物と反応して、金属をイオン化させる。そのため、金属が移動しやすくなり、金属部材から樹脂層への金属元素の拡散が加速される。高温環境下での金属元素の拡散抑制の観点から、熱硬化性化合物の塩素含有量は、500ppm以下がより好ましく、100ppm以下がさらに好ましく、10ppm未満が特に好ましく、理想的には0である。なお、熱硬化性化合物中の塩素含有量はJIS K7243-3:2005に記載された方法に準拠して測定される。
【0041】
脂環式エポキシ基を有する熱硬化性化合物の含有量は、熱硬化性組成物全体の5重量%以上であってよく、10重量%以上であってよく、15重量%以上であってよい。脂環式エポキシ基を有する熱硬化性化合物の含有量は、熱硬化性組成物全体の50重量%以下であってよく、40重量%以下であってよく、30重量%以下であってよい。
【0042】
熱硬化性組成物は、熱硬化性化合物とともに、硬化剤を含んでもよい。硬化剤としては、熱硬化性化合物を硬化させることができる化合物であればよく、例えば、酸無水物硬化剤、アミン系硬化剤、フェノール系硬化剤等が挙げられる。
【0043】
酸無水物硬化剤としては、無水フタル酸(下記式(2))、メチルテトラヒドロ無水フタル酸(例えば、4-メチルテトラヒドロ無水フタル酸、3-メチルテトラヒドロ無水フタル酸等)、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸(例えば、4-メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、3-メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等)、ドデセニル無水コハク酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物、無水ピロメリット酸、無水トリメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、無水ナジック酸、無水メチルナジック酸、水素化メチルナジック酸無水物、4-(4-メチル-3-ペンテニル)テトラヒドロ無水フタル酸、無水コハク酸、無水アジピン酸、無水セバシン酸、無水ドデカン二酸、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸無水物、ビニルエーテル-無水マレイン酸共重合体、アルキルスチレン-無水マレイン酸共重合体等が挙げられる。熱硬化性組成物が、これら2種以上を硬化剤として含んでも良い。
【0044】
【0045】
アミン系硬化剤としては、例えば、脂肪族ポリアミン、脂環式ポリアミン、芳香族ポリアミン等が挙げられる。脂肪族ポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジプロピレンジアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ポリプロピレントリアミン等が挙げられる。脂環式ポリアミンとしては、例えば、メンセンジアミン、イソホロンジアミン、ビス(4-アミノ-3-メチルジシクロヘキシル)メタン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、N-アミノエチルピペラジン、3,9-ビス(3-アミノプロピル)-3,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等が挙げられる。芳香族ポリアミンとしては、例えば、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、トリレン-2,4-ジアミン、トリレン-2,6-ジアミン、メシチレン-2,4-ジアミン、3,5-ジエチルトリレン-2,4-ジアミン、3,5-ジエチルトリレン-2,6-ジアミン、ビフェニレンジアミン、4,4-ジアミノジフェニルメタン、2,5-ナフチレンジアミン、2,6-ナフチレンジアミン等が挙げられる。
【0046】
フェノール系硬化剤としては、例えば、ノボラック型フェノール樹脂、ノボラック型クレゾール樹脂、p-キシリレン変性フェノール樹脂、p-キシリレン・m-キシリレン変性フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、トリフェノールプロパン等が挙げられる。
【0047】
熱硬化性組成物が含有する硬化剤の量は、熱硬化性化合物の種類によって適宜調整することができる。例えば、熱硬化性化合物100重量部に対して50重量部以上であってよく、60重量部以上であってよく、70重量部以上であってよく、また、200重量部以下であってよく、180重量部以下であってよい。
【0048】
得られる硬化物の成形収縮率、熱膨張係数、熱伝導性、機械的強度などを調整する観点から、熱硬化性組成物が、さらにフィラーを含有してもよい。このフィラーとしては、例えば、シリカ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ガリウム、アルミナ、炭化ケイ素、酸化マグネシウム、ダイヤモンド等が挙げられる。
【0049】
硬化性、保存性などを調整する観点から、熱硬化性組成物が、硬化促進剤を含有してもよい。この硬化促進剤としては、例えば、テトラフェニルホスホニウム テトラフェニルボレート(Tetraphenylphosphonium tetraphenylborate)、イミダゾール類、トリフェニルフォスフェイト(TPP)、アミン系硬化促進剤などが挙げられる。該アミン系硬化促進剤としては、例えば、三フッ化ホウ素モノエチルアミン等が挙げられる。
【0050】
本開示において、熱硬化性組成物は、プリプレグであってよい。即ち、熱硬化性組成物が、繊維をさらに含有してもよい。この繊維としては、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、ボロン繊維、ポリパラフェニレン・ベンゾビス・オキサゾール(PBO)繊維、ポリエチレン繊維、アルミナ繊維、炭化ケイ素繊維等が挙げられる。また、繊維は、織布の形態で熱硬化性組成物に含まれていてもよく、不織布の形態で熱硬化性組成物に含まれていてもよく、繊維がバラバラの状態で熱硬化性組成物に含まれていてもよい。
【0051】
熱硬化性組成物が繊維を含む場合、この繊維は、モノフィラメントであってもよく、マルチフィラメントであってもよい。繊維がモノフィラメントの場合、単繊維の繊度は、好ましくは0.2~2.0dtex、より好ましくは0.4~1.8dtexである。繊維がマルチフィラメントである場合、この繊維におけるフィラメント数は、2500~50000本であることが好ましい。
【0052】
離型性、接着性、捺印性などを調整する観点から、熱硬化性組成物が、さらに離型剤を含有してもよい。この離型剤としては、例えば、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸カルシウム等が挙げられる。具体例としては、カルナバワックス、ポリエチレン系ワックス等が挙げられる。
【0053】
得られる硬化物を低応力化(低弾性化)させる観点から、熱硬化性組成物が、さらに改質剤(「低応力化剤」とも称される場合がある。)を含有してもよい。この改質剤としては、例えば、ブタジエン系ゴム、シリコーン化合物等が挙げられる。ブタジエン系ゴムの例として、アクリル酸メチル-ブタジエン-スチレン共重合体、メタクリル酸メチル-ブタジエン-スチレン共重合体等が挙げられる。
【0054】
本開示の効果が得られる範囲で、熱硬化性組成物が、他の添加剤を含有してもよい。この他の添加剤として、例えば、難燃剤、顔料、イオントラップ剤などが挙げられる。
【0055】
難燃剤としては、例えば、有機リン化合物、酸化アンチモン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等が挙げられる。顔料としては、例えば、カーボンブラック等が挙げられる。イオントラップ剤としては、例えば、ハイドロタルサイト類、水酸化ビスマス等が挙げられる。
【0056】
(樹脂層)
本開示の積層体が含む樹脂層は、前述した熱硬化性組成物の硬化物である。この硬化物のガラス転移温度Tgは130℃以上であってよく、150℃以上であってよく、170以上であってよく、190℃以上であってよく、また、250℃以下であってよい。ガラス転移温度が高い硬化物ほど、高温環境下における金属部材との接着性にすぐれている。なお、硬化物のガラス転移温度は、JIS K7121:2012に記載された方法に準拠して測定される。
【0057】
本開示の熱硬化性組成物の硬化物は、塩素含有量が1000ppm以下であってよく、900ppm以下であってよく、800ppm以下であってよく、500ppm以下であってよい。塩素含有量が少ない硬化物ほど、高温環境下における金属部材との接着性にすぐれている。そのため、硬化物中の塩素含有量の下限値は特に限定されないが、例えば、塩素含有量は0を超えてよく、50ppm以上であってよい。なお、硬化物の塩素含有量は、蛍光X線分析(XRF)により測定される。本開示において、熱硬化性組成物の硬化物に含まれる塩素は、主として原料である熱硬化性組成物中の塩素又は硬化過程で混入する塩素に由来する。熱硬化性組成物中の塩素を低減し、硬化過程による塩素の混入を防止することにより、塩素含有量が1000ppm以下である熱硬化性組成物の硬化物が得られうる。
【0058】
本開示の熱硬化性組成物の硬化物は、硫黄含有量が1000ppm以下であってよく、900ppm以下であってよく、800ppm以下であってよく、500ppm以下であってよい。硫黄含有量が少ない硬化物ほど、高温環境下における金属部材との接着性にすぐれている。そのため、硬化物中の硫黄含有量の下限値は特に限定されないが、例えば、硫黄含有量は0を超えてよく、50ppm以上であってよい。なお、硬化物の硫黄含有量は、蛍光X線分析(XRF)により測定される。本開示において、熱硬化性組成物の硬化物に含まれる硫黄は、主として原料である熱硬化性組成物中の硫黄又は硬化過程で混入する硫黄に由来する。熱硬化性組成物中の硫黄を低減し、硬化過程による硫黄の混入を防止することにより、塩素含有量が1000ppm以下である熱硬化性組成物の硬化物が得られうる。
【0059】
(積層体の製造方法)
本開示の積層体は、前述した熱硬化性組成物を金属部材に供給する工程(A)と、この金属部材に供給された熱硬化性組成物を硬化させて樹脂層を形成する工程(B)と、この形成された樹脂層を完全硬化させる工程(C)とを有する製造方法により得ることができる。この製造方法が、金属部材を金型に設置した後、この金属部材の表面に直接熱硬化性組成物を供給する工程(A1)と、金属部材及び熱硬化性組成物を含む金型を加熱及び加圧することにより、金型中で熱硬化性組成物を硬化させて、金属部材の表面に直接積層する樹脂層を形成する工程(B1)と、この金属部材及び樹脂層をさらに加熱して、樹脂層を完全硬化させる工程(C1)とを有してもよい。工程(B1)における加熱及び加圧条件は、熱硬化性組成物の組成等により適宜調整することができるが、加熱温度は150~250℃であってよく、加熱時間は60~500秒であってよい。また、工程(C1)における加熱条件は、熱硬化性組成物の組成等により適宜調整することができるが、加熱温度は100~250℃であってよく、加熱時間は2~6時間であってよく、異なる温度及び時間を組み合わせたステップキュアであってもよい。
【0060】
本開示において、熱硬化性組成物は、前述した脂環式エポキシ基を有する熱硬化性化合物を含有する。従って、積層体の製造方法が、工程(A)の前に、この熱硬化性化合物に、硬化剤及びフィラー等の各種添加剤を配合して、熱硬化性組成物を調製する工程(C)をさらに有してもよい。熱硬化性組成物の調製には、ニーダー、バンバリーミキサー等既知の混練機を用いることができる。
【0061】
一実施態様において、この製造方法が、工程(A)の前に、金属部材の表面から酸化膜を除去する工程(D)をさらに有してもよい。例えば、金属部材の表面を、アセトン及びアルコールに順次接触させた後、純水中で超音波洗浄することで、金属部材の表面から油分を除去する。この油分を除去した金属部材を酸水溶液に接触させることにより、金属部材の表面から酸化膜を除去することができる。
【0062】
アルコールとしては、例えば、イソプロピルアルコール(IPA)、エタノール等が挙げられる。また、酸水溶液における酸としては、例えば、硫酸、硝酸、塩酸等が挙げられる。
【実施例0063】
以下、実施例によって本開示の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本開示が限定的に解釈されるべきではない。なお、実施例等で用いられる化合物の詳細は、以下の通りである。
【0064】
(熱硬化性化合物)
・脂環式エポキシ基含有化合物1:ダイセル社製のセロキサイド2021(CEL2021P)、3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル 3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(下記式(1-1))、エポキシ当量130g/eq、塩素含有量(検出限界以下)
【0065】
【0066】
・脂環式エポキシ基含有化合物2:ダイセル社製のセロキサイド8010(CEL8010)、エポキシ当量100g/eq、塩素含有量(検出限界以下)
・脂環式エポキシ基含有化合物3:ダイセル社製のセロキサイド2081(CEL2081)、エポキシ当量200g/eq、塩素含有量(検出限界以下)
・脂環式エポキシ基含有化合物3:ダイセル社製の3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル 3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(上記式(1-1))、エポキシ当量130g/eq、塩素含有量580ppm
・脂環式エポキシ基含有化合物4:ダイセル社製の3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル 3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(上記式(1-1))、エポキシ当量130g/eq、塩素含有量1000ppm
・グリシジル基含有化合物:新日鐡住金化学社製のYD-128、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(下記式(3))、エポキシ当量190g/eq、塩素含有量1700ppm
・ビフェニル骨格含有エポキシ化合物:昭和電工社製の商品名CEL-420HFA
【0067】
【0068】
(硬化剤)
・酸無水物硬化剤:ダイセル社製のB0954B(4-メチル無水フタル酸:無水フタル酸混合物(混合比7:3)、リン系硬化促進剤1%及びエチレングリコール2%含有)
【0069】
(充填剤)
・シリカ:デンカ社製のFB-5FDC、20μmカット
・カーボンブラック:三菱ケミカル社製のMA100、φ24nm
【0070】
[実施例1]
(熱硬化性組成物の調製)
混練機(シンキー社製)に、脂環式エポキシ基含有化合物1(前述のCEL2021P)、酸無水物硬化剤(前述のB0954B)、シリカ(前述のFB-5FDC)及びカーボンブラック(前述のMA100)を投入し、室温にて2000rpmで10分間混練することにより、熱硬化性組成物(1)を得た。酸無水物硬化剤の量は、100重量部の脂環式エポキシ基含有化合物1に対して115重量部とした。熱硬化性組成物(1)中のカーボンブラック及びシリカの量は、それぞれ、0.2重量%、71.5重量%とした。
【0071】
(積層体の製造)
金属部材としてCu基板(C1020-1/2H、厚さ2.0mm)を準備した。このCu基板を金型内にセットし、Cu基板の表面に熱硬化性組成物(1)を注入してコンプレッション成形(175℃、3MPa、300秒)した後、オーブンにて100℃で2時間加熱後、150℃で2時間加熱(ステップキュア)することにより、熱硬化性組成物(1)を完全硬化させた。その後、Cu基板上に熱硬化性組成物(1)の硬化物(樹脂層)が積層された積層体を、金型から取り出してカットすることにより、外形寸法12.5mm×12.5mm、厚み3.3mmのパッケージを得た。この硬化物は、ガラス転移温度Tgが187℃であり、線膨張係数がα1:84.3、α2:155.3であり、曲げ弾性率が3279MPaであった。
【0072】
[実施例2]
熱硬化性化合物として脂環式エポキシ基含有化合物2(前述のCEL8010)を使用し、硬化剤の量を、100重量部の脂環式エポキシ基含有化合物2に対して150重量部とした以外は、実施例1と同様にして、実施例2の積層体を得た。実施例2の積層体が含む硬化物は、ガラス転移温度Tgが235℃であり、線膨張係数がα1:81であり、曲げ弾性率が3272MPaであった。
【0073】
[比較例1]
熱硬化性化合物として、グリシジル基含有化合物(前述のYD-128)を使用し、硬化剤の量を、100重量部のグリシジル基含有化合物に対して80重量部とした以外は、実施例1と同様にして、比較例1の積層体を得た。比較例1の積層体が含む硬化物は、ガラス転移温度Tgが125℃であり、線膨張係数がα1:72、α2:184であり、曲げ弾性率が2828MPaであった。
【0074】
[比較例2]
熱硬化性化合物として、ビフェニル骨格含有エポキシ化合物(前述のCEL-420HFA)を使用し、硬化剤の量を、100重量部のビフェニル骨格含有エポキシ化合物に対して80重量部とした以外は、実施例1と同様にして、比較例2の積層体を得た。比較例2の積層体が含む硬化物は、ガラス転移温度Tgが270℃であり、線膨張係数がα1:16、α2:95であり、曲げ弾性率が13.5GPaであった。
【0075】
[参考例1]
コンプレッション成形前に、Cu基板の表面に銅拡散防止膜(4-アミノチオフェノール)を形成した以外は、比較例1と同様にして、参考例1の積層体を得た。参考例1の積層体が含む硬化物の物性は、比較例1と同様である。
【0076】
(高温信頼性試験)
実施例、比較例及び参考例で作成したパッケージを、温度200℃のオーブンに保存して、樹脂層と金属部材(Cu基板)との接着強度(シェア強度)の経時変化を調べた。保存時間は、0時間、240時間、500時間及び1000時間とした。また、各保存時間における樹脂層のX線光電子分光分析(XPS)及びフーリエ変換赤外分光分析(ATR-FTIR)をおこなった。各測定方法の詳細は、以下の通りである。なお、以下の測定方法における「サンプル」は、適宜「積層体」、「樹脂層」等に読みかえられる。
【0077】
(シェア強度測定)
パッケージのレーザー開封により、積層体の樹脂層を部分的に除去して、Cu基板上に、熱硬化性組成物(1)の硬化物である角柱状(4mm×4mm、高さ1.3mm)の樹脂層を4つ形成した。その後、角柱状の樹脂層のそれぞれについて、ボンドテスター(Nordonson Dage社製のDage-4000)を用いて、熱硬化性組成物の硬化物とCu基板との接合強度(シェア強度)を測定した。測定条件は、以下の通りとした。4つの樹脂層についてシェア強度を測定して平均値(算術平均値)及び標準偏差を求めた。この平均値を用いて、各保存時間後のシェア強度の、保存前(0時間)のシェア強度に対する比率(%)を算出した。得られた結果が「強度%」として、下表に示されている。
ヘッドとCu基板との距離:200μm
ヘッドのスピード:50μm/s
【0078】
【0079】
【0080】
【0081】
【0082】
(X線光電子分光分析(XPS))
前述のシェア強度測定後、Cu基板から剥離した樹脂層をXPS測定用サンプルとした。具体的には、Cu基板から剥離した樹脂層の破断面に対し、アルゴンイオン(Ar
+)、加速電圧2kVでスパッタリングをおこなった後、XPS測定により、銅(Cu)、酸素(O)及び炭素(C)について、元素組成を分析した。さらに、スパッタリングとXPS測定とを繰り返すことにより、破断面(Cu基板との接着面)からの深さ100nmまでの樹脂層の元素組成について、深さ方向のプロファイルを得た。なお、測定には、X線光電子分光装置(Ulvac-phi社製)を使用した。得られた結果が、
図1-4に示されている。
図1-4において、横軸は破断面からの深さ(nm)であり、縦軸は原子濃度(atoic%)である。なお、
図1Aは、実施例1の高温処理前(保存時間0時間)のXPSプロファイルであり、
図1Bは、実施例1の高温処理後(保存時間1000時間)のXPSプロファイルであり、
図2Aは、実施例2の高温処理前(保存時間0時間)のXPSプロファイルであり、
図2Bは、実施例2の高温処理後(保存時間1000時間)のXPSプロファイルであり、
図3Aは、比較例1の高温処理前(保存時間0時間)のXPSプロファイルであり、
図3Bは、比較例1の高温処理後(保存時間1000時間)のXPSプロファイルであり、
図4Aは、参考例1の高温処理前(保存時間0時間)のXPSプロファイルであり、
図4Bは、参考例1の高温処理後(保存時間1000時間)のXPSプロファイルである。
【0083】
(フーリエ変換赤外分光分析(ATR-FTIR))
前述のシェア強度測定後、Cu基板から剥離した樹脂層をATR-FTIR測定用サンプルとした。具体的には、フーリエ変換赤外分光分析装置(PerkinElmer社製)を用いて、ATR法により、樹脂層の破断面(Cu基板との接着面)を測定して、赤外吸収スペクトル(波長600~4000cm
-1)を得た。ATR-FTIRによる測定深さは、約1μmである。得られた結果が、
図5-8に示されている。なお、
図5は、実施例1について得られた赤外吸収スペクトルであり、
図6は、実施例2について得られた赤外吸収スペクトルであり、
図7は、比較例1について得られた赤外吸収スペクトルであり、
図8は、参考例1について得られた赤外吸収スペクトルである。
【0084】
(蛍光X線分析(XRF))
前述のシェア強度測定後、Cu基板から剥離した樹脂層をXRF測定用サンプルとした。具体的には、蛍光X線分光装置(Rigaku社製の商品名「ZSX100e」)を用いて、実施例1及び2並びに比較例1及び2について、高温処理前(保存時間0時間)の樹脂層中の塩素(Cl)及び硫黄(S)の元素分析をおこない、塩素含有量(ppm)及び硫黄含有量(ppm)を求めた。得られた結果が、下表に示されている。なお、表中の記号「-」は、蛍光X線分光装置の検出限界以下であり、100ppm以下であることを示す。
【0085】
【0086】
(透過型電子顕微鏡/エネルギー分散X線分光分析(TEM/EDS))
前述のシェア強度測定後、比較例1及び比較例2のサンプルの断面を透過型電子顕微鏡(JEOL社製の商品名「JEM-ARM200F」)を用いて観察し、樹脂層中の銅(Cu)、硫黄(S)及び塩素(Cl)について元素分析をおこなった。高温処理後(保存時間1000時間)の比較例1及び2について得られた結果が、それぞれ
図9及び10に示されている。
図9A及び
図9Bは、それぞれ倍率の異なる比較例1のTEM画像であり、
図9Cは
図9Bの銅(Cu)のEDS画像であり、
図9Dは
図9Bの硫黄(S)のEDS画像であり、
図9Eは
図9Bの塩素(Cl)のEDS画像である。
図10Aは比較例2のTEM画像であり、
図10Bは
図10Aの銅(Cu)のEDS画像であり、
図10Cは
図10Aの硫黄(S)のEDS画像である。なお各画像の倍率は、画像に付されたスケールによる。
【0087】
(まとめ)
図1及び2に示される通り、実施例の積層体では、200℃で1000時間経過後の金属含有率が、金属部材との接触面からの深さ100nmにおいて1atomic%以下であり、表1-2に示される通り、200℃で240時間経過後の接合面のシェア強度が、初期強度の50%以上であった。これに対し、比較例の積層体では、200℃で1000時間経過後の金属含有率が、金属部材との接触面からの深さ100nmにおいて10atomic%を超えており、接触面に近い程、金属含有率が多かった。また、表3に示される通り、比較例の積層体では、200℃で240時間経過後の接合面のシェア強度が、初期強度の3%に低下した。これらの結果から、金属部材との接合面近傍における金属含有率が、接着強度(シェア強度)低下の要因であることが確認できる。
【0088】
図4に示される通り、樹脂層と金属部材との間に金属拡散防止膜を備えた参考例の積層体では、200℃で1000時間経過後の金属含有率が、金属部材との接触面からの深さ100nmにおいて5atomic%以下であり、表4に示される通り、200℃で240時間経過後の接合面のシェア強度が、初期強度の21%であった。
図3及び表3との対比から、接着強度低下の要因である樹脂中の金属含有率の増加が、高温環境下で金属部材から樹脂層への金属元素の拡散によることがわかる。
【0089】
図5及び
図6に示される通り、実施例の積層体では、200℃で1000時間経過後も赤外吸収スペクトルに変化がなく、樹脂層の劣化がないことがわかる。これに対し、比較例の積層体では、
図7に示される通り、200℃で1000時間経過後に、赤外吸収ピークの減少が確認された。これは、樹脂層をなす硬化物の劣化にともなって、官能基量が減少したためであると推測される。
【0090】
図7と表3との対比から、比較例の積層体では、200℃で500時間経過後赤外吸収スペクトルに変化がないにも関わらず、そのシェア強度が初期強度の0%に低下した。また、
図8に示される通り、金属拡散防止膜により樹脂層中の金属含有率が増加しなかった参考例の積層体でも、200℃で1000時間経過後も赤外吸収スペクトルに変化がないにも関わらず、そのシェア強度が初期強度の0%に低下した。これは、ATR-FTIRでは、金属部材との接触面からの深さ約1μmの樹脂を測定しているため、金属部材との接触面近傍(深さ100nm程度)における樹脂の劣化を検出できなかったものと考えられる。
【0091】
表5に示される通り、比較例1及び2では樹脂層中に塩素及び/又は硫黄が検出されたが、実施例1及び2では、塩素及び硫黄のいずれも検出限界以下であった。この結果から、Cu基板から樹脂層への銅の拡散は、樹脂中に含まれる塩素、硫黄等の不純元素の含有量に影響を受けることがわかる。銅の表面は、一般的に大気圧下において酸化膜で被覆されている。この酸化膜は酸化銅である。高温環境下で銅が樹脂層に拡散する際、酸化銅の結晶構造から銅がイオン化するか、酸化膜直下の銅が酸化膜の結晶構造を通過して、イオン化することが必要である。樹脂中に含有されている硫黄や塩素等の元素が酸化膜と反応することで、酸化膜を構成する銅のイオン化を促進すると考えられる。また同様に、酸化膜直下の銅が通過し易くなると考えられる。塩素や硫黄の含有量が少ない場合、その反応による銅の通過量が少なくなるため、銅のイオン化による樹脂層への拡散が抑制されたと考えられる。
【0092】
図9及び
図10に示される通り、樹脂層に拡散した銅と同じ位置に塩素及び/又は硫黄が観察された。高温環境下で銅と塩素及び/又は硫黄が反応して樹脂中に拡散したものと考えられる。
【0093】
金属部材との接触面近傍の金属含有率に着目した本開示の技術によれば、当該領域の樹脂の劣化が抑制された積層体を得ることができる。その結果として、高温環境下において、樹脂層と金属部材との剥離が低減されるので、積層体の高温信頼性が向上する。
【0094】
以上の通り、実施例の積層体は、比較例の積層体に比べて評価が高い。この評価結果から、本開示の優位性は明らかである。
【0095】
[開示項目]
以下の項目のそれぞれは、好ましい実施形態を開示する。
【0096】
[項目1]
金属部材と、この金属部材に積層する樹脂層とを含み、
上記樹脂層が、熱硬化性組成物の硬化物であり、
上記熱硬化性組成物が、脂環式エポキシ基を有する熱硬化性化合物を含有しており、
上記樹脂層は、以下の測定方法で求められる200℃、1000時間経過後の金属含有率が、上記金属部材との接触面からの深さ100nmにおいて1atomic%以下である、積層体。
(測定方法:コンプレッション成形(温度175℃、圧力3MPa)をおこなって、金属部材に積層した樹脂層(厚み1.3mm)を有する積層体を準備し、この積層体を温度200℃で1000時間保存した後、金属部材から剥離した樹脂層に対して、X線光電子分光装置(XPS)を用いて深さ方向の元素分析をおこなって、金属元素、炭素及び酸素の原子数を測定し、この樹脂層の、金属部材との接触面からの深さ100nmにおける、炭素、酸素及び金属元素の原子数の合計に対する金属元素の原子数の比率を、金属含有率(atomic%)として算出する。)
【0097】
[項目2]
上記金属部材の材質が銅であり、
上記樹脂層は、以下の測定方法で求められる200℃、1000時間経過後の銅含有率が、上記金属部材との接触面からの深さ100nmにおいて1atomic%以下である、項目1に記載の積層体。
(測定方法:コンプレッション成形(温度175℃、圧力3MPa)をおこなって、金属部材に積層した樹脂層(厚み1.3mm)を有する積層体を準備し、この積層体を温度200℃で1000時間保存した後、金属部材から剥離した樹脂層に対して、X線光電子分光装置(XPS)を用いて深さ方向の元素分析をおこなって、銅、炭素及び酸素の原子数を測定し、この樹脂層の、金属部材との接触面からの深さ100nmにおける、炭素、酸素及び銅の原子数の合計に対する銅の原子数の比率を銅含有率(atomic%)として算出する。)
【0098】
[項目3]
温度200℃で240時間保存後における上記樹脂層と上記金属部材との接合面のシェア強度が、上記保存前のシェア強度に対して50%以上である、項目1又は2に記載の積層体。
【0099】
[項目4]
上記熱硬化性化合物は、塩素含有量が1000ppm以下である、項目1から3のいずれかに記載の積層体。
【0100】
[項目5]
上記熱硬化性化合物は、エポキシ当量が200g/eq以下である、項目1から4のいずれかに記載の積層体。
【0101】
[項目6]
上記熱硬化性化合物は、下記式(1)で示される化合物である、項目1から5のいずれかに記載の積層体。
【化6】
(式(1)中、Xは単結合又は連結基を示す。)
【0102】
[項目7]
上記熱硬化性組成物が硬化剤をさらに含む、項目1から6のいずれかに記載の積層体。
【0103】
[項目8]
上記熱硬化性組成物の硬化物のガラス転移温度Tgが130℃以上250℃以下である、項目1から7のいずれかに記載の積層体。
【0104】
[項目9]
上記熱硬化性組成物の硬化物は、塩素含有量が1000ppm以下である、項目1から8のいずれかに記載の積層体。
【0105】
[項目10]
上記熱硬化性組成物の硬化物は、硫黄含有量が1000ppm以下である、項目1から9のいずれかに記載の積層体。
【0106】
[項目11]
上記金属部材が半導体装置の構成部材である、項目1から10のいずれかに記載の積層体。
【0107】
[項目12]
上記熱硬化性組成物を上記金属部材に供給する工程と、
上記金属部材に供給された熱硬化性組成物を硬化させて上記樹脂層を形成する工程と、を有する、項目1から11のいずれかに記載の積層体の製造方法。
【0108】
[項目13]
積層体の製造に用いる熱硬化性組成物であって、
上記熱硬化性組成物は、脂環式エポキシ基を有する熱硬化性化合物を含有しており、
上記熱硬化性組成物の硬化物は、塩素含有量が1000ppm以下であり、硫黄含有量が1000ppm以下であり、
上記熱硬化性組成物の硬化物は、以下の測定方法で求められる200℃、1000時間経過後の金属含有率が、金属部材との接触面からの深さ100nmにおいて1atomic%以下である、熱硬化性組成物。
(測定方法:コンプレッション成形(温度175℃、圧力3MPa)をおこなって、金属部材に積層した熱硬化性組成物の硬化物からなる樹脂層(厚み1.3mm)を有する積層体を準備し、この積層体を温度200℃で1000時間保存した後、金属部材から剥離した樹脂層に対して、X線光電子分光装置(XPS)を用いて深さ方向の元素分析をおこない、金属元素、炭素及び酸素の原子数を測定し、この樹脂層の、金属部材との接触面からの深さ100nmにおける、炭素、酸素及び金属元素の原子数の合計に対する金属元素の原子数の比率を、金属含有率(atomic%)として算出する。)
【0109】
[項目14]
上記積層体が半導体装置である、項目13に記載の熱硬化性組成物。