(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178136
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】新規な熱電変換性溶融合成体及びその利用
(51)【国際特許分類】
H10N 10/851 20230101AFI20241217BHJP
H10N 10/857 20230101ALI20241217BHJP
【FI】
H10N10/851
H10N10/857
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024093895
(22)【出願日】2024-06-10
(31)【優先権主張番号】P 2023096252
(32)【優先日】2023-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000125370
【氏名又は名称】学校法人東京理科大学
(71)【出願人】
【識別番号】301023238
【氏名又は名称】国立研究開発法人物質・材料研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100136939
【弁理士】
【氏名又は名称】岸武 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】飯田 努
(72)【発明者】
【氏名】國岡 春乃
(72)【発明者】
【氏名】飯田 詩織
(72)【発明者】
【氏名】木村 洸介
(72)【発明者】
【氏名】今井 基晴
(57)【要約】
【課題】低温域の熱電変換材料として有用な非焼結体であって、所望の形状及び大きさの熱電変換部材を切り出し可能な性状を有する新規な熱電変換性溶融合成体及びその製造方法、低温域の熱電変換材料として有用であり、かつ、所望の形状及び大きさの熱電変換部材を切り出し可能な熱電変換性焼結体及びその製造方法、上記の熱電変換性溶融合成体又は上記の熱電変換性焼結体を用いた熱電変換素子、並びに上記の熱電変換素子を備える熱電変換モジュールを提供する。
【解決手段】本発明に係る熱電変換性溶融合成体は、ストロンチウムシリサイド多結晶体から構成される熱電変換性溶融合成体であって、粉末X線回折パターンのリートベルト解析による定量値として、立方晶SrSi
2相の含有率が99.0質量%以上であり、正方晶SrSi
2相及び三方晶SrSi
2相の含有率がいずれも0.1質量%未満である。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストロンチウムシリサイド多結晶体から構成される熱電変換性溶融合成体であって、
粉末X線回折パターンのリートベルト解析による定量値として、立方晶SrSi2相の含有率が99.0質量%以上であり、正方晶SrSi2相及び三方晶SrSi2相の含有率がいずれも0.1質量%未満である熱電変換性溶融合成体。
【請求項2】
粉末X線回折パターンのリートベルト解析による定量値として、Siの含有率が0.1質量%未満である、請求項1に記載の熱電変換性溶融合成体。
【請求項3】
粉末X線回折パターンのリートベルト解析による定量値として、Srの含有率が0.1質量%未満である、請求項1に記載の熱電変換性溶融合成体。
【請求項4】
310Kにおける出力因子が2.50×10-3W/mK2以上である、請求項1に記載の熱電変換性溶融合成体。
【請求項5】
バンドギャップが45.0meV以上である、請求項1に記載の熱電変換性溶融合成体。
【請求項6】
ストロンチウムシリサイド多結晶体から構成される熱電変換性焼結体であって、
粉末X線回折パターンのリートベルト解析による定量値として、立方晶SrSi2相の含有率が99.0質量%以上であり、正方晶SrSi2相及び三方晶SrSi2相の含有率がいずれも0.1質量%未満である熱電変換性焼結体。
【請求項7】
請求項1に記載の熱電変換性溶融合成体を焼結してなる、請求項6に記載の熱電変換性焼結体。
【請求項8】
粉末X線回折パターンのリートベルト解析による定量値として、Siの含有率が0.8質量%未満である、請求項6に記載の熱電変換性焼結体。
【請求項9】
粉末X線回折パターンのリートベルト解析による定量値として、Srの含有率が0.1質量%未満である、請求項6に記載の熱電変換性焼結体。
【請求項10】
310Kにおける出力因子が2.35×10-3W/mK2以上である、請求項6に記載の熱電変換性焼結体。
【請求項11】
バンドギャップが50.0meV以上である、請求項6に記載の熱電変換性焼結体。
【請求項12】
請求項1~5のいずれか1項に記載の熱電変換性溶融合成体、又は請求項6~11のいずれか1項に記載の熱電変換性焼結体から構成される熱電変換部と、
前記熱電変換部に設けられる第1電極及び第2電極と、
を備える熱電変換素子。
【請求項13】
請求項12に記載の熱電変換素子を備える熱電変換モジュール。
【請求項14】
請求項1~5のいずれか1項に記載の熱電変換性溶融合成体の製造方法であって、
ストロンチウム及びシリコンを含有する組成原料を1000℃以上SrSi2の融点未満の温度で加熱し、SrSi2を合成する固相液相反応工程と、
前記固相液相反応工程で合成されたSrSi2を加熱し、融解液を得る融解工程と、
前記融解液から結晶を育成させてストロンチウムシリサイド多結晶体を得る結晶育成工程と、
を含む熱電変換性溶融合成体の製造方法。
【請求項15】
前記組成原料中のストロンチウムとシリコンとの原子量比が33.0:67.0~34.5:65.5である、請求項14に記載の熱電変換性溶融合成体の製造方法。
【請求項16】
前記結晶育成工程では、前記融解液の温度が1100℃に達するまでは0.223~4.72℃/hの降温速度で、前記融解液の温度が1100℃に達した後、1000℃に達するまでは0.494~10.38℃/hの降温速度で、前記融解液の温度を降下させる、請求項14に記載の熱電変換性溶融合成体の製造方法。
【請求項17】
前記固相液相反応工程、前記融解工程、及び前記結晶育成工程が垂直ブリッジマン炉を用いて実施される、請求項14に記載の熱電変換性溶融合成体の製造方法。
【請求項18】
請求項14に記載の製造方法により得られる熱電変換性溶融合成体を焼結する焼結工程を含む熱電変換性焼結体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱電変換性溶融合成体及びその製造方法、熱電変換性焼結体及びその製造方法、熱電変換素子、並びに熱電変換モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種設備等から排出される熱(排熱)をエネルギーとして有効利用するため、熱電変換材料を用いて発電する試みがなされている。
【0003】
これまで、0~300℃程度の低温域において高い熱電変換性能を示す熱電変換材料として、ビスマステルライド(Bi2Te3)が主に実用化されている。しかし、構成元素であるビスマス及びテルルは、毒性があり環境負荷が大きい上に、地殻埋蔵量が少ないという問題があった。
【0004】
このような背景から、環境負荷が小さく、地殻埋蔵量が豊富な元素から構成され、かつ、低温域において高い熱電変換性能を示す熱電変換材料の開発が望まれている。近年、そのような熱電変換材料の1つとして、ストロンチウムシリサイド(SrSi2)が研究されている。SrSi2には、立方晶、正方晶、三方晶等の結晶形が存在することが知られており、そのうち立方晶SrSi2(α-SrSi2とも称される)のみが半導体の特性を示すことから、熱電変換材料として期待されている。
【0005】
特許文献1には、ストロンチウム及びシリコンを含有する組成原料をアーク溶解して珪化ストロンチウム合金を得た後、この珪化ストロンチウム合金の粉末を焼結することにより、主な結晶相が立方晶SrSi2相である珪化ストロンチウムバルク多結晶体(焼結体)を得たことが記載されている。ただし、特許文献1の珪化ストロンチウムバルク多結晶体は、その嵩密度及び含有酸素量を特徴とするものであり、熱電変換性能の測定データは示されていない。
【0006】
また、特許文献2には、特許文献1と同様にして珪化ストロンチウムバルク多結晶体(焼結体)を得た後、この珪化ストロンチウムバルク多結晶体をターゲットとしたスパッタ法により、立方晶SrSi2相を主体に三方晶SrSi2相及び/又はSiを含有する薄膜を得たことが記載されている。特許文献2には、得られた薄膜の300℃における熱電変換性能も示されている。
【0007】
また、非特許文献1には、一般的に知られている垂直ブリッジマン法により、ストロンチウム及びシリコンを含有する組成原料をSrSi2の融点以上の温度で加熱して融解液を調製し、その融解液から結晶を育成させることにより、主な結晶相が立方晶SrSi2相であるストロンチウムシリサイド多結晶体(溶融合成体)を得たことが記載されている。
【0008】
また、非特許文献2には、市販のSrSi2のインゴットを粉砕した後、得られた粉体を放電プラズマ焼結法にて1073Kの温度で焼結することにより、主な結晶相が立方晶SrSi2相であるストロンチウムシリサイド焼結体を得たことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2019-147728号公報
【特許文献2】特開2019-149523号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】D. Shiojiri et al., J. Appl. Phys., 129, 115101 (2021)
【非特許文献2】K. Hashimoto et al., J. Appl. Phys., 102, 063703 (2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1及び2のように、珪化ストロンチウム合金の合成をアーク溶解法により行う場合、組成原料が急激に局所加熱されることになるため、得られる珪化ストロンチウム合金はクラック及びボイドが多く存在するものとなる。また、アーク溶解法では温度制御が難しいため、組成原料の組成と一致した珪化ストロンチウム合金を得ることが困難である。実際、特許文献1の実施例2では、組成原料におけるストロンチウムとシリコンとの原子量比が1:2であるにもかかわらず、得られた珪化ストロンチウム合金におけるストロンチウムとシリコンとの原子量比は30:70となっている。さらに、特許文献2で得られた薄膜は、300℃における出力因子の最高値が実施例4の0.46×10-3W/mK2(膜厚:1400nm)と極めて低いものである。特許文献2のような薄膜状の熱電変換材料の場合、発生する電力が微小になるため、用途が限られると考えられる。
【0012】
一方、非特許文献1のように通常の垂直ブリッジマン法によりストロンチウムシリサイド多結晶体を溶融合成する場合、組成原料の組成と一致したストロンチウムシリサイド多結晶体(溶融合成体)を得ることが可能である。しかし、本発明者らが非特許文献1の製造方法で得られたストロンチウムシリサイド多結晶体を分析したところ、粉末X線回折パターンのリートベルト解析による定量値として、3質量%程度の正方晶SrSi2相(β-SrSi2とも称される)が含まれていることを確認した。正方晶SrSi2は、半導体ではなく金属レベルの導体である。非特許文献1には、得られたストロンチウムシリサイド多結晶体のバンドギャップ値が13.1meVであったと記載されており、このバンドギャップ値の低さは、ストロンチウムシリサイド多結晶体に正方晶SrSi2相が含まれているためと考えられる。このようにバンドギャップ値が低いストロンチウムシリサイド多結晶体は、半導体の熱電変換材料としては不適当である。
【0013】
また、非特許文献2には、市販のインゴットから製造されたストロンチウムシリサイド焼結体の出力因子の値が、低温域の331Kにおいて1.19×10-3W/mK2であったと記載されており、実用化には依然として不十分である。
【0014】
ところで、熱電変換モジュールに使用される熱電変換素子の熱電変換部を構成する材料(熱電変換部材と称する)を製造する場合、アーク溶解法や溶融合成法によって得た熱電変換性インゴットを粉砕した後に焼結して焼結体とし、この焼結体から所望の形状及び大きさの熱電変換部材を切り出すことが一般的である。この点、熱電変換性インゴット自体から熱電変換部材を直接切り出すことができれば、粉砕や焼結の工程を省略することができ、便宜である。しかし、特許文献1及び2に記載のアーク溶解法では、得られる珪化ストロンチウム合金にクラック及びボイドが多く存在するため、熱電変換部材の切り出しに使用することができない。一方、非特許文献1に記載の溶融合成法では、クラック及びボイドのないストロンチウムシリサイド多結晶体(溶融合成体)を得ることが可能である。しかし、本発明者らが確認したところ、ストロンチウムシリサイド多結晶体中に正方晶SrSi2が多く含まれていると、熱電変換部材を切り出す際に切り出し部分が崩れてしまい、所望の形状及び大きさの熱電変換部材を得ることが困難であった。
【0015】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、低温域(0~300℃程度)の熱電変換材料として有用な非焼結体であって、所望の形状及び大きさの熱電変換部材を切り出し可能な性状を有する新規な熱電変換性溶融合成体及びその製造方法、低温域の熱電変換材料として有用であり、かつ、所望の形状及び大きさの熱電変換部材を切り出し可能な熱電変換性焼結体及びその製造方法、上記の熱電変換性用溶融合成体又は上記の熱電変換性焼結体を用いた熱電変換素子、並びに上記の熱電変換素子を備える熱電変換モジュールを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するための具体的な手段には、以下の実施態様が含まれる。
<1> ストロンチウムシリサイド多結晶体から構成される熱電変換性溶融合成体であって、
粉末X線回折パターンのリートベルト解析による定量値として、立方晶SrSi2相の含有率が99.0質量%以上であり、正方晶SrSi2相及び三方晶SrSi2相の含有率がいずれも0.1質量%未満である熱電変換性溶融合成体。
【0017】
<2> 粉末X線回折パターンのリートベルト解析による定量値として、Siの含有率が0.1質量%未満である、<1>に記載の熱電変換性溶融合成体。
【0018】
<3> 粉末X線回折パターンのリートベルト解析による定量値として、Srの含有率が0.1質量%未満である、<1>又は<2>に記載の熱電変換性溶融合成体。
【0019】
<4> 310Kにおける出力因子が2.50×10-3W/mK2以上である、<1>~<3>のいずれか1項に記載の熱電変換性溶融合成体。
【0020】
<5> バンドギャップが45.0meV以上である、<1>~<4>のいずれか1項に記載の熱電変換性溶融合成体。
【0021】
<6> ストロンチウムシリサイド多結晶体から構成される熱電変換性焼結体であって、
粉末X線回折パターンのリートベルト解析による定量値として、立方晶SrSi2相の含有率が99.0質量%以上であり、正方晶SrSi2相及び三方晶SrSi2相の含有率がいずれも0.1質量%未満である熱電変換性焼結体。
【0022】
<7> <1>~<5>のいずれか1項に記載の熱電変換性溶融合成体を焼結してなる、<6>に記載の熱電変換性焼結体。
【0023】
<8> 粉末X線回折パターンのリートベルト解析による定量値として、Siの含有率が0.8質量%未満である、<6>又は<7>に記載の熱電変換性焼結体。
【0024】
<9> 粉末X線回折パターンのリートベルト解析による定量値として、Srの含有率が0.1質量%未満である、<6>~<8>のいずれか1項に記載の熱電変換性焼結体。
【0025】
<10> 310Kにおける出力因子が2.35×10-3W/mK2以上である、<6>~<9>のいずれか1項に記載の熱電変換性焼結体。
【0026】
<11> バンドギャップが50.0meV以上である、<6>~<10>のいずれか1項に記載の熱電変換性焼結体。
【0027】
<12> <1>~<5>のいずれか1項に記載の熱電変換性溶融合成体、又は<6>~<11>のいずれか1項に記載の熱電変換性焼結体から構成される熱電変換部と、
前記熱電変換部に設けられる第1電極及び第2電極と、
を備える熱電変換素子。
【0028】
<13> <12>に記載の熱電変換素子を備える熱電変換モジュール。
【0029】
<14> <1>~<5>のいずれか1項に記載の熱電変換性溶融合成体の製造方法であって、
ストロンチウム及びシリコンを含有する組成原料を1000℃以上SrSi2の融点未満の温度で加熱し、SrSi2を合成する固相液相反応工程と、
前記固相液相反応工程で合成されたSrSi2を加熱し、融解液を得る融解工程と、
前記融解液から結晶を育成させてストロンチウムシリサイド多結晶体を得る結晶育成工程と、
を含む熱電変換性溶融合成体の製造方法。
【0030】
<15> 前記組成原料中のストロンチウムとシリコンとの原子量比が33.0:67.0~34.5:65.5である、<14>に記載の熱電変換性溶融合成体の製造方法。
【0031】
<16> 前記結晶育成工程では、前記融解液の温度が1100℃に達するまでは0.223~4.72℃/hの降温速度で、前記融解液の温度が1100℃に達した後、1000℃に達するまでは0.494~10.38℃/hの降温速度で、前記融解液の温度を降下させる、<14>又は<15>に記載の熱電変換性溶融合成体の製造方法。
【0032】
<17> 前記固相液相反応工程、前記融解工程、及び前記結晶育成工程が垂直ブリッジマン炉を用いて実施される、<14>~<16>のいずれか1項に記載の熱電変換性溶融合成体の製造方法。
【0033】
<18> <14>~<17>のいずれか1項に記載の製造方法により得られる熱電変換性溶融合成体を焼結する焼結工程を含む熱電変換性焼結体の製造方法。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、新規な熱電変換性溶融合成体及びその製造方法、新規な熱電変換性焼結体及びその製造方法、上記の熱電変換性溶融合成体又は上記の熱電変換性焼結体を用いた熱電変換素子、並びに上記の熱電変換素子を備える熱電変換モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図2】垂直ブリッジマン炉の加熱部の移動可能範囲(0mm-200mm)を示す図である。
【
図5】熱電変換モジュールの他の例を示す図である。
【
図6】垂直ブリッジマン炉の加熱部の位置(0mm-200mm)と坩堝直下における温度との関係を示す図である。
【
図7A】実施例1のインゴットから得られた各試料の粉末X線回折パターンを示す図である。
【
図7B】実施例1のインゴットから得られた各試料の粉末X線回折パターンを示す図である。
【
図8A】実施例2のインゴットから得られた各試料の粉末X線回折パターンを示す図である。
【
図8B】実施例2のインゴットから得られた各試料の粉末X線回折パターンを示す図である。
【
図9】実施例1及び2の各インゴットから得られた試験片並びに実施例3の焼結体から得られた試験片における温度とゼーベック係数との関係を示すグラフである。
【
図10】実施例1及び2の各インゴットから得られた試験片並びに実施例3の焼結体から得られた試験片における温度と電気伝導率との関係を示すグラフである。
【
図11】実施例1及び2の各インゴットから得られた試験片並びに実施例3の焼結体から得られた試験片における温度と出力因子との関係を示すグラフである。
【
図12】実施例4のインゴットを走査型電子顕微鏡で観察した反射電子像及び二次電子像を示す図である。
【
図13A】実施例4のインゴットから得られた各試料の粉末X線回折パターンを示す図である。
【
図13B】実施例4のインゴットから得られた各試料の粉末X線回折パターンを示す図である。
【
図14】実施例5のインゴットを走査型電子顕微鏡で観察した反射電子像及び二次電子像を示す図である。
【
図15A】実施例5のインゴットから得られた各試料の粉末X線回折パターンを示す図である。
【
図15B】実施例5のインゴットから得られた各試料の粉末X線回折パターンを示す図である。
【
図16A】比較例1のインゴットから得られた試料の粉末X線回折パターンを示す図である。
【
図16B】比較例1のインゴットから得られた試料の粉末X線回折パターンを示す図である。
【
図17】比較例2のインゴットから得られた各試料の粉末X線回折パターンを示す図である。
【
図18】実施例4及び5並びに比較例1の各インゴットから得られた試験片における温度とゼーベック係数との関係を示すグラフである。
【
図19】実施例4及び5並びに比較例1の各インゴットから得られた試験片における温度と電気伝導率との関係を示すグラフである。
【
図20】実施例4及び5並びに比較例1の各インゴットから得られた試験片における温度と出力因子との関係を示すグラフである。
【
図21】実施例6~8の各焼結体を光学顕微鏡で観察した光学顕微鏡像及び走査型電子顕微鏡で観察した反射電子像を示す図である。
【
図22A】実施例6~8の各焼結体から得られた試料の粉末X線回折パターンを示す図である。
【
図22B】実施例6~8の各焼結体から得られた試料の粉末X線回折パターンを示す図である。
【
図23】実施例6~8及び比較例3の各焼結体から得られた試験片における温度とゼーベック係数との関係を示すグラフである。
【
図24】実施例6~8及び比較例3の各焼結体から得られた試験片における温度と電気伝導率との関係を示すグラフである。
【
図25】実施例6~8及び比較例3の各焼結体から得られた試験片における温度と出力因子との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明を適用した具体的な実施形態について詳細に説明する。
本明細書において、数値x及びyを用いた「x~y」という表記は、特に断りのない限り、「x以上y以下」を意味するものとする。かかる表記において数値yのみに単位を付した場合には、当該単位が数値xにも適用されるものとする。
【0037】
<熱電変換性溶融合成体>
本実施形態に係る熱電変換性溶融合成体(以下、単に「溶融合成体」ともいう。)は、結晶相が実質的に立方晶SrSi2相のみであるストロンチウムシリサイド多結晶体から構成される。ここで、「溶融合成体」とは、組成原料を加熱して融解液を調製し、その融解液の温度を降下させながら結晶を育成させて得られた固化体を意味する。
【0038】
本実施形態に係る溶融合成体は、粉末X線回折パターンのリートベルト解析による定量値として、立方晶SrSi2相の含有率が99.0質量%以上であり、99.5質量%以上であることが好ましい。また、本実施形態に係る溶融合成体は、粉末X線回折パターンのリートベルト解析による定量値として、正方晶SrSi2相及び三方晶SrSi2相の含有率がいずれも0.1質量%未満であり、検出限界値未満であることが好ましい。また、本実施形態に係る溶融合成体は、粉末X線回折パターンのリートベルト解析による定量値として、Sr及びSiの含有率がいずれも0.1質量%未満であることが好ましく、検出限界値未満であることがより好ましい。粉末X線回折分析及びリートベルト解析の条件としては、後述する実施例に記載の条件を採用するものとする。
【0039】
一般に、溶融合成体を用いて熱電変換素子を製造する場合、溶融合成体から直接、熱電変換部材を切り出そうとすると、切り出し部分が崩れてしまい、所望の形状の熱電変換部材を得ることが困難である。このため、溶融合成体を粉末化した後に焼結して焼結体とし、この焼結体から熱電変換部材を切り出している。
【0040】
これに対して、本実施形態に係る溶融合成体は、結晶相が実質的に立方晶SrSi2相のみであるストロンチウムシリサイド多結晶体から構成されるため、結晶相が均質であり、緻密性に優れる上、ヤング率や破壊靭性値等の機械的特性にも優れる。このため、本実施形態に係る溶融合成体によれば、切り出し部分が崩れることなく、ワイヤーソー等を用いて所望の形状の熱電変換部材を切り出すことができ、その結果、従来行われている粉砕や焼結の工程を省略することができる。
【0041】
後述する本実施形態に係る熱電変換性焼結体は、本実施形態に係る溶融合成体の粉末を焼結したものであるため、熱電変換性能に影響しない程度の微小なボイドや粉末同士の界面が存在するものとなる。これに対して、本実施形態に係る溶融合成体は、組成原料を融解した融解液から結晶を育成させて得られたものであるため、ボイドはなく、粉末同士の界面が存在するようなこともない。この違いは、光学顕微鏡(ノマルスキーコントラスト)及び反射電子顕微鏡によって確認することができる。
【0042】
また、本実施形態に係る溶融合成体は、結晶相が実質的に立方晶SrSi2相のみであるストロンチウムシリサイド多結晶体から構成されるため、半導体の特性を示す。本実施形態に係る溶融合成体のバンドギャップ値(Eg)は、45.0meV以上であることが好ましく、46.0meV以上であることがより好ましく、47.0meV以上であることがさらに好ましい。バンドギャップ値(Eg)の上限値は特に制限されず、例えば、60.0meV程度である。
【0043】
また、本実施形態に係る溶融合成体は、結晶相が実質的に立方晶SrSi2相のみであるストロンチウムシリサイド多結晶体から構成されるため、低温域(0~300℃程度)において高い熱電変換性能を示す。本実施形態に係る溶融合成体の310Kにおける出力因子は、2.50×10-3W/mK2以上であることが好ましく、2.60×10-3W/mK2以上であることがより好ましく、2.70×10-3W/mK2以上であることがさらに好ましい。310Kにおける出力因子の上限値は特に制限されず、例えば、3.20W/mK2程度である。
【0044】
また、本実施形態に係る溶融合成体は、優れた機械的特性を示す。本実施形態に係る溶融合成体のヤング率は、85.0GPa以上であることが好ましく、88.0GPa以上であることがより好ましく、90.0GPa以上であることがさらに好ましい。ヤング率の上限値は特に制限されず、例えば、100.0GPa程度である。また、本実施形態に係る溶融合成体の破壊靭性値は、1.0MPa・m1/2以上であることが好ましく、1.2MPa・m1/2以上であることがより好ましく、1.3MPa・m1/2以上であることがさらに好ましい。破壊靭性値の上限値は特に制限されず、例えば、2.0MPa・m1/2程度である。溶融合成体のヤング率及び破壊靭性値は、後述する実施例に記載の方法により測定するものとする。
【0045】
なお、本発明者らは、溶融合成体を構成するストロンチウムシリサイド多結晶体の結晶相における正方晶SrSi2相の含有率が多くなるほど、溶融合成体が酸化劣化しやすくなり、さらには熱電変換部材の切り出しが困難になることを確認している。これは、正方晶SrSi2が水分と反応しやすいためと推測される。この点、本実施形態に係る溶融合成体は、結晶相が実質的に立方晶SrSi2相のみであるストロンチウムシリサイド多結晶体から構成されるため、耐久性にも優れる上、熱電変換部材の切り出しも容易である。
【0046】
本実施形態に係る溶融合成体は、ドーパントを含有していてもよい。ドーパントとしては、Ba、Ag、Ga等のp型ドーパント;N、P、Sb等のn型ドーパント;などが挙げられる。
【0047】
<溶融合成体の製造方法>
本実施形態に係る溶融合成体は、ストロンチウム及びシリコンを含有する組成原料を1000℃以上SrSi2の融点(1121℃)未満の温度で加熱し、SrSi2を合成する固相液相反応工程と、固相液相反応工程で合成されたSrSi2をSrSi2の融点以上のSrSi2が分解しない温度で加熱して、融解液を得る融解工程と、融解液から結晶を育成させてストロンチウムシリサイド多結晶体を得る結晶育成工程と、を含む製造方法(溶融合成法)により製造することができる。
【0048】
一般に、合金を溶融合成する場合、組成原料を合金の融点以上の温度で加熱することにより、合金を合成しながら合金の融解液を一工程で調製し、次いで、融解液の温度を降下させながら結晶を育成させる。つまり、合金を合成しながら合金の融解液を調製し、その融解液から結晶を育成させることが一般的である。非特許文献1においても、組成原料をSrSi2の融点(1121℃)よりも高い温度で加熱することにより、SrSi2を合成しながらSrSi2の融解液を調製し、その融解液から結晶を育成させている。しかし、本発明者らの検討によれば、SrSi2を合成しながらSrSi2の融解液を調製する場合、SrSi2の合成時の温度が高いことに起因し、結晶育成時に正方晶SrSi2やその他の不純物が析出してしまうことが判明している。
【0049】
これに対して、本実施形態に係る溶融合成体の製造方法では、SrSi2を合成しながらSrSi2の融解液を一工程で調製するのではなく、固相液相反応工程と融解工程との二工程に分けて、SrSi2の融点未満の温度でSrSi2の合成を完結させた後、SrSi2の融点以上の温度に昇温して融解液を調製する。このような製造方法によれば、結晶相が実質的に立方晶SrSi2相のみである均質なストロンチウムシリサイド多結晶体(溶融合成体)を得ることが可能である。
【0050】
本実施形態に係る溶融合成体の製造方法により製造される溶融合成体が、高いバンドギャップ値及び高い熱電変換性能を示し、かつ、優れた機械的特性を示すのは、結晶相が実質的に立方晶SrSi2相のみである均質なストロンチウムシリサイド多結晶体から構成されるためである。本実施形態に係る溶融合成体の製造方法によれば、産業上有用な大型の溶融合成体を得ることが可能である。
【0051】
以下、本実施形態に係る溶融合成体の製造方法で使用する組成原料、及び製造方法の各工程について詳細に説明する。
【0052】
[組成原料]
本実施形態に係る溶融合成体を製造する際の組成原料は、ストロンチウム及びシリコンを含有する。
【0053】
組成原料中のストロンチウムとしては、例えば、純度2N以上(99質量%以上)の高純度ストロンチウムを使用することが好ましい。ストロンチウムは、後述する固相液相反応工程において液相となるため、組成原料中のストロンチウムのサイズは特に制限されない。但し、固相液相反応工程における反応効率の観点から、組成原料中のストロンチウムは、3mm角以下のサイズであることが好ましい。
【0054】
組成原料中のシリコンとしては、例えば、純度5N以上(99.999質量%以上)の高純度シリコンを使用することが好ましい。シリコンは、後述する固相液相反応工程において固相となるため、固相液相反応工程における反応効率の観点から、粉末化した後、分級しておくことが好ましい。シリコンの粉末の粒径は、1~100μmであることが好ましく、25~75μmであることがより好ましい。
【0055】
組成原料中のストロンチウムとシリコンとの原子量比は約1:2であり、33.0:67.0~34.5:65.5であることが好ましい。
【0056】
[溶融合成法]
後述する固相液相反応工程、融解工程、及び結晶育成工程は、通常、組成原料を坩堝に装填し、蓋により密閉した上で加熱炉に設置して実施される。
【0057】
溶融合成時の圧力条件は、大気圧であってもよいが、+0.5~3.5kPa程度の正圧であることが好ましい。また、溶融合成時の雰囲気条件は、Arガス等の不活性ガス雰囲気が好ましく、不活性ガスに3~7体積%程度の水素ガスを混合した還元雰囲気がより好ましい。このような還元雰囲気下で溶融合成を行うことにより、酸化物の生成が抑えられるとともに、溶融合成後のインゴットを坩堝から取り出しやすくなる傾向になる。
【0058】
(固相液相反応工程)
固相液相反応工程では、組成原料を1000℃以上SrSi2の融点未満の温度で加熱し、ストロンチウムとシリコンとを反応させることにより、SrSi2を合成する。
【0059】
固相液相反応工程における加熱温度(固相液相反応温度)は、後工程の融解温度よりも低いことが必要であるが、加熱温度が低くなるに従って正方晶SrSi2が生じやすくなる。このため、加熱温度(固相液相反応温度)は、例えば、1035~1055℃であることが好ましい。固相液相反応温度に達するまでの昇温速度は特に制限されない。
【0060】
また、固相液相反応工程における加熱時間は、ストロンチウムとシリコンとの固相液相反応が完結する時間であればよく、例えば、1~20時間であることが好ましく、3~10時間であることがより好ましい。
【0061】
(融解工程)
融解工程では、固相液相反応工程で合成されたSrSi2をSrSi2の融点以上のSrSi2が分解しない温度で加熱し、ムラが生じない均質な融解液を得る。
【0062】
融解工程における加熱温度(融解温度)は、均質な融解液を得るために、例えば、1121~1150℃であることが好ましく、1130~1135℃であることがより好ましい。融解温度に達するまでの昇温速度は特に制限されない。
【0063】
また、融解工程における加熱時間は、合成されたSrSi2が完全に融解する時間であればよく、例えば、1~10時間であることが好ましく、3~5時間であることがより好ましい。
【0064】
(結晶育成工程)
結晶育成工程では、融解液の温度を降下させることにより、融解液から結晶を育成させてストロンチウムシリサイド多結晶体(溶融合成体)を得る。
【0065】
結晶相が実質的に立方晶SrSi2相のみからなるストロンチウムシリサイド多結晶体を得るため、特に結晶成長の初期段階では、降温速度を小さくすることが好ましい。具体的には、融解液の温度が1100℃に達するまでは0.223~4.72℃/hの降温速度、融解液の温度が1100℃に達した後、1000℃に達するまでは0.494~10.38℃/hの降温速度とすることが好ましい。融解液の温度が1000℃に達した後は、室温まで徐冷する。このように、降温速度を調整しながら結晶を育成することにより、正方晶SrSi2及び三方晶SrSi2を実質的に含まず、かつ、ボイドやクラックのないストロンチウムシリサイド多結晶体を得ることができる。
【0066】
なお、結晶育成工程では、坩堝の底部側の温度が相対的に低く、口部側の温度が相対的に高くなるような温度勾配を設けておくことが好ましい。このような温度勾配を設けておくと、結晶成長の終端側である上部側(坩堝の口部側)に未反応のシリコンやSr2(SiO4)等の不純物が偏析するため、この部分を除去することで、純度の高いストロンチウムシリサイド多結晶体からなる溶融合成体を得ることができる。
【0067】
上記の温度勾配を容易に実現する観点から、固相液相反応工程、融解工程、及び結晶育成工程は、いずれも垂直ブリッジマン炉を用いて実施することが好ましい。垂直ブリッジマン炉は、鉛直方向に並べられた複数のヒーターの温度を独立に設定可能であり、下方の温度が相対的に低く、上方の温度が相対的に高くなるような温度勾配を容易に実現することができる。垂直ブリッジマン炉は、坩堝が固定され、坩堝を取り囲む加熱部が鉛直方向に移動可能に構成されたものであってもよく、坩堝を取り囲む加熱部が固定され、坩堝が鉛直方向に移動可能に構成されたものであってもよい。
【0068】
垂直ブリッジマン炉に形成する温度勾配によって変わり得るが、加熱部が鉛直方向に移動可能に構成された垂直ブリッジマン炉を用いてストロンチウムシリサイド多結晶体(溶融合成体)を得る場合には、概して、加熱部の移動速度を0.5~7.2mm/hとすることが好ましい。特に、正方晶SrSi2及び三方晶SrSi2を実質的に含まないストロンチウムシリサイド多結晶体を得るためには、加熱部の移動速度を0.5~5.5mm/hとすることがより好ましく、1.0~4.5mm/hとすることがさらに好ましい。
【0069】
本実施形態に係る溶融合成体の製造方法で使用可能な垂直ブリッジマン炉の一例を
図1に示す。
図1に示す垂直ブリッジマン炉1は、炉本体10と、炉本体10を取り囲む加熱部20とを備える。
【0070】
炉本体10は、軸線方向が鉛直方向となるように配置された円筒形の石英ガラス管11と、石英ガラス管11の内部に配置され、坩堝30及び石英製カバー31が載置されるグラファイト製試料台12と、石英ガラス管11の内部上方に配置される遮熱板13と、坩堝直下における温度を測定するための熱電対14とを有する。石英ガラス管11には、石英ガラス管11内を減圧する減圧機構と、石英ガラス管11内にArガスを供給するArガス供給機構とが接続されている。
【0071】
加熱部20は、石英ガラス管11の外周に鉛直方向に並べられた3つのヒーター21A、21B、21Cと、ヒーター21A、21B、21Cを覆う断熱材22と、ヒーター21A、21B、21Cのそれぞれの温度を測定するための熱電対23A、23B、23Cとを有する。ヒーター21A、21B、21Cの温度は独立に設定可能であり、溶融合成体を製造する際には、下方(ヒーター21C側)の温度が相対的に低く、上方(ヒーター21A側)の温度が相対的に高くなるような温度勾配が形成される。
【0072】
図1に示す垂直ブリッジマン炉1は、加熱部20が鉛直方向に移動可能に構成されている。具体的に、加熱部20は、下端である0mmの位置(
図2左側)から上端である200mmの位置(
図2右側)まで、鉛直方向に移動可能に構成されている。そして、加熱部20を下方に移動させることで坩堝の温度を上昇させることができ、加熱部20を上方に移動させることで坩堝の温度を降下させることができる。
【0073】
<熱電変換性焼結体>
本実施形態に係る熱電変換性焼結体(以下、単に「焼結体」ともいう。)は、結晶相が実質的に立方晶SrSi2相のみであるストロンチウムシリサイド多結晶体から構成されるものであり、上述した本実施形態に係る溶融合成体を焼結することにより得ることができる。本実施形態に係る溶融合成体は焼結性に優れるため、クラック等のない緻密な焼結体が得られる。
【0074】
本実施形態に係る焼結体は、本実施形態に係る溶融合成体と同様に、粉末X線回折パターンのリートベルト解析による定量値として、立方晶SrSi2相の含有率が99.0質量%以上であり、99.5質量%以上であることが好ましい。また、本実施形態に係る焼結体は、粉末X線回折パターンのリートベルト解析による定量値として、正方晶SrSi2相及び三方晶SrSi2相の含有率がいずれも0.1質量%未満であり、検出限界値未満であることが好ましい。また、本実施形態に係る焼結体は、粉末X線回折パターンのリートベルト解析による定量値として、Srの含有率が0.1質量%未満であることが好ましく、検出限界値未満であることがより好ましい。また、本実施形態に係る焼結体は、粉末X線回折パターンのリートベルト解析による定量値として、Siの含有率が0.8質量%未満であることが好ましく、0.1質量%未満であることがより好ましく、検出限界値未満であることがさらに好ましい。
【0075】
本実施形態に係る焼結体は、本実施形態に係る溶融合成体と同様に、半導体の特性を示す。本実施形態に係る焼結体のバンドギャップ値(Eg)は、50.0meV以上であることが好ましく、51.0meV以上であることがより好ましく、52.0meV以上であることがさらに好ましい。バンドギャップ値(Eg)の上限値は特に制限されず、例えば、70.0meV程度である。
【0076】
また、本実施形態に係る焼結体は、本実施形態に係る溶融合成体と同様に、低温域(0~300℃程度)において高い熱電変換性能を示す。本実施形態に係る焼結体の310Kにおける出力因子は、2.35×10-3W/mK2以上であることが好ましく、2.40×10-3W/mK2以上であることがより好ましく、2.45×10-3W/mK2以上であることがさらに好ましい。310Kにおける出力因子の上限値は特に制限されず、例えば、3.00×10-3W/mK2程度である。
【0077】
また、本実施形態に係る焼結体は、本実施形態に係る溶融合成体と同様に、優れた機械的特性を示す。本実施形態に係る焼結体のヤング率は、80.0GPa以上であることが好ましく、85.0GPa以上であることがより好ましく、86.0GPa以上であることがさらに好ましい。ヤング率の上限値は特に制限されず、例えば、100.0GPa程度である。また、本実施形態に係る焼結体の破壊靭性値は、1.3MPa・m1/2以上であることが好ましく、1.5MPa・m1/2以上であることがより好ましく、1.6MPa・m1/2以上であることがさらに好ましい。破壊靭性値の上限値は特に制限されず、例えば、2.0MPa・m1/2程度である。
【0078】
<焼結体の製造方法>
本実施形態に係る焼結体は、上述した本実施形態に係る溶融合成体を焼結する焼結工程を含む製造方法により製造することができる。
【0079】
焼結前には、本実施形態に係る溶融合成体を粉末化した後、分級しておくことが好ましい。これにより、ボイドのない緻密な焼結体が得られる傾向にある。溶融合成体の粉末の粒径は、10~100μmであることが好ましく、25~45μmであることがより好ましい。
【0080】
焼結には、ホットプレス焼結法(HP)、熱間等方圧焼結法(HIP)、放電プラズマ焼結法等の加圧圧縮焼結法を採用することができ、その中でも放電プラズマ焼結法が好ましい。
【0081】
加圧圧縮焼結には、例えば、
図3に示すような治具が用いられる。焼結に際しては、まず、
図3に示すグラファイト製ダイ50とグラファイト製パンチ51a、51bとで囲まれた空間に溶融合成体の粉末を充填する。その際、固着を防ぐため、溶融合成体の粉末とグラファイト製ダイ50及びグラファイト製パンチ51a、51bとの接触部分にカーボンペーパーを挟んでおくことが好ましい。その後、放電プラズマ焼結装置等の焼結装置を用いて焼結する。焼結は減圧下、かつ、不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
【0082】
加圧圧縮焼結の焼結圧力は60~150MPaが好ましい。焼結圧力を60MPa以上とすることで、十分な密度(例えば、理論密度に対する相対密度が97%以上)を有する焼結体が得やすい傾向にある。
【0083】
また、加圧圧縮焼結の焼結温度は850~950℃が好ましい。焼結温度を850℃以上とすることで、十分な密度を有する焼結体が得やすい傾向にある。一方、焼結温度を950℃以下とすることで、ストロンチウムシリサイド多結晶体の損傷及びボイドの発生が抑えられ、また、ストロンチウムの飛散が防止される傾向にある。
【0084】
<熱電変換素子>
本実施形態に係る熱電変換素子は、上述した本実施形態に係る溶融合成体又は焼結体から構成される熱電変換部と、該熱電変換部に設けられる第1電極及び第2電極と、を備える。
【0085】
熱電変換部としては、本実施形態に係る溶融合成体又は焼結体を、ワイヤーソー等を用いて所望の大きさに切り出した熱電変換部材を用いることができる。上述したとおり、本実施形態に係る溶融合成体は均質で緻密性及び機械的特性(ヤング率、破壊靭性値等)に優れるため、切り出し部分が崩れることなく、溶融合成体から直接、熱電変換部材を切り出すことができる。また、本実施形態に係る溶融合成体は焼結性にも優れるため、クラック等がなく緻密性に優れ、機械的特性(ヤング率、破壊靭性値等)にも優れる焼結体が得られる。このため、焼結体から熱電変換部材を切り出す際の歩留まりが向上する傾向にある。
【0086】
第1電極及び第2電極の形成方法は特に制限されない。一例としては、溶融合成体又は焼結体に対して無電解ニッケルメッキ等のメッキを施す方法、溶融合成体又は焼結体に対して導電性ペーストを付与した後に焼成する方法等が挙げられる。また、他の例としては、電極形成用の金属粉末、溶融合成体の粉末、電極形成用の金属粉末をこの順で積層した後、加圧圧縮焼結により焼結体を得ることにより、焼結体の製造時に電極を同時に形成する方法が挙げられる。
【0087】
<熱電変換モジュール>
本実施形態に係る熱電変換モジュールは、上述した本実施形態に係る熱電変換素子を備える。本実施形態に係る熱電変換モジュールの構成は特に制限されず、π型、ユニレグ型等の任意の構成を採用することができる。
【0088】
本実施形態に係る熱電変換モジュールの一例としては、例えば、
図4に示すようなものが挙げられる。
図4に示す熱電変換モジュールにおいて、並置されたn型熱電変換部100及びp型熱電変換部110の上端部には電極101、111が、下端部には電極102、112がそれぞれ設けられる。そして、電極101、111が接続されて一体化された電極を形成する一方、電極102、112は分離して構成される。本実施形態に係る溶融合成体又は焼結体は、例えば、p型熱電変換部110に使用される。
【0089】
図4に示す熱電変換モジュールにおいては、電極101、111側を加熱し、電極102、112側から放熱することで、電極101、111と電極102、112との間に正の温度差(Th-Tc)が生じ、熱励起されたキャリアによってp型熱電変換部110がn型熱電変換部100よりも高電位となる。このとき、電極102と電極112との間に負荷130を接続することで、p型熱電変換部110からn型熱電変換部100へと電流が流れる。
【0090】
本実施形態に係る熱電変換モジュールの他の例としては、例えば、
図5に示すようなものが挙げられる。
図5に示す熱電変換モジュールにおいて、熱電変換部120の上端部には電極121が、下端部には電極122がそれぞれ設けられる。
【0091】
図5に示す熱電変換モジュールにおいては、電極121側を加熱し、電極122側から放熱することで、電極121と電極122との間に正の温度差(Th-Tc)が生じ、電極121側が電極122側よりも高電位となる。このとき、電極121と電極122との間に負荷130を接続することで、電極121側から電極122側へと電流が流れる。
【実施例0092】
以下に実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって制限されるものではない。
【0093】
<実施例1>
[原料の準備]
油中保存されていた不定形状のストロンチウム(純度2N、(株)高純度化学研究所製)を、Arガス雰囲気のグローブボックス内にて、アセトンで3回洗浄した後、1~3mm角に裁断した。
【0094】
また、2~5mmの粒状のシリコン(純度5N、(株)高純度化学研究所製)と、直径20mmのジルコニア製ボールとをジルコニア製容器に入れ、遊星ボールミル(PULVERISETTE 7、FRITSCH社製)を用いて400rpm、2分間の条件で粉砕した。粉砕後、ステンレス製篩を用いて分級し、粒径75~212μmの粉末を得た。
【0095】
[坩堝の準備]
坩堝としては、窒化ホウ素(BN)製の坩堝(デンカ(株)製)を準備した。坩堝の内部高さは70mmであり、口部から深さ方向に56.5mmの位置までの上部側は略円筒形、それよりも底部側は温度勾配を形成しやすくするために略円錐形の内部形状となっている。口部の内径は38.75mm、口部から深さ方向に56.5mmの位置の内径は31.2mm、底部の内径は3mmである。ストロンチウム融液と坩堝との反応を防止するため、エタノールで希釈した離型剤(ホワイティ・セブン、(株)オーデック製)を坩堝内に流し込んで内壁をコーティングし、乾燥炉で乾燥(80℃、1時間以上)させた後、電気炉で空焼き(1140℃、10時間)を行った。その後、BNスプレー(化研テック(株)製)を内壁全体に塗布した。
【0096】
坩堝の蓋としては、アルミナ製の蓋((株)ニッカトー製特注)を準備した。蓋の外面には、上述した離型剤をコーティングした。
【0097】
[ストロンチウムシリサイド多結晶体の溶融合成]
加熱炉としては、
図1に示す構成の垂直ブリッジマン炉(ガス置換型縦型真空加熱炉、(株)ヒートテック製特注)を用いた。
【0098】
ストロンチウムとシリコンとの原子量比が33.33:66.67となるように、ストロンチウム(20.000g)とシリコン(12.822g)とをそれぞれ秤量し、組成原料として坩堝内に装填した。坩堝に蓋をしてグラファイト製試料台((株)ウエキコーポレーション製)に設置し、坩堝全体を石英製カバーで覆った。そして、加熱炉の内部を-98kPa以下の負圧に真空引きした後、-50kPaの負圧になるまでArガスを充填する作業を3回繰り返し、最後は+2.4kPaの正圧になるまでArガスを充填した。
【0099】
ストロンチウムシリサイド多結晶体の溶融合成に際しては、まず、加熱部を下端から123mmの位置に固定した上で、上段のヒーター(ヒーター21A)及び中段のヒーター(ヒーター21B)の温度を1130℃に設定するとともに、下段のヒーター(ヒーター21C)の温度を890℃に設定した。加熱部が下端に存在する場合を0mm、上端に存在する場合を200mmとしたときの加熱部の位置(0mm-200mm)と、坩堝直下における温度との関係を
図6に示す。坩堝直下の温度は90分後に1040℃に達した。その状態で10時間保持し、組成原料の固相液相反応を進行させ、SrSi
2を合成した(固相液相反応工程)。
【0100】
次いで、加熱部を15分間かけて下端(0mmの位置)まで移動させた。そのときの坩堝直下の温度は1131℃であった。その状態で5時間保持し、SrSi2の融解液を得た(融解工程)。
【0101】
次いで、加熱部を下端(0mmの位置)から上端(200mmの位置)まで3.6mm/hの移動速度で移動させることによって融解液の温度を降下させ、融解液から結晶を育成させた(結晶育成工程)。融解液の降温速度は、1100℃に達するまでは平均1.84℃/h(最小:1.23℃/h、最大:2.36℃/h)であり、1100℃に達した後、1000℃に達するまでは平均4.32℃/h(最小:3.01℃/h、最大:5.19℃/h)であった。
【0102】
その後、上段、中段、及び下段の各ヒーターの温度をいずれも600℃に設定し、5時間かけて坩堝直下の温度を600℃まで降下させた。さらに、上段、中段、及び下段の各ヒーターの温度をいずれも25℃に設定し、5時間かけて坩堝直下の温度を25℃まで降下させた後、坩堝からインゴットを取り出した。得られたインゴットは、目視でボイドが観察されないものであった。
【0103】
[粉末X線回折分析及びリートベルト解析]
得られたインゴットのうち、結晶成長の終端側である上部側(坩堝の口部側)の約1/5の部分を、坩堝の高さ方向に垂直にワイヤーソーで切断し、上部試料とした。さらに、残りの部分を、坩堝の高さ方向に垂直にワイヤーソーで半分に切断し、中部試料及び下部試料とした。そして、各試料の一部を粉末化し、X線回折装置(MiniFlex300、(株)リガク製)を用いて、特性X線:CuKα線、管電圧:40kV、管電流:15mA、スキャン速度:3deg/min、スキャンステップ:0.02degの条件で粉末X線回折分析を行った。
【0104】
各試料の粉末X線回折パターンを
図7A及び
図7Bに示す。
図7A及び
図7Bに示すとおり、上部試料には不純物としてSi及びSr
2(SiO
4)が確認されたが、中部試料及び下部試料には不純物が確認されなかった。この結果から、不純物がインゴットの上部側(結晶成長の終端側)に偏析していることが分かる。
【0105】
さらに、粉末X線回折パターンのリートベルト解析を行った。リートベルト解析の解析条件を下記表1に示し、リートベルト解析による定量値を下記表2に示す。
【0106】
【0107】
【0108】
表2に示すとおり、上部試料の結晶相にはSi相及びSr2(SiO4)相が含まれていたが、中部試料及び下部試料は結晶相が立方晶SrSi2相のみからなるものであった。この中部試料及び下部試料が、上述した本実施形態に係る溶融合成体となり得る。
【0109】
[バンドギャップ値の測定]
ホール測定装置(ResiTest8300、(株)東陽テクニカ製)を用いて、80~400Kの測定温度における下部試料のキャリア濃度を測定してアレニウスプロットし、280~400Kをフィッテング範囲として、その範囲のプロット線の傾きからバンドギャップ値を算出した。その結果、実施例1の下部試料のバンドギャップ値(Eg)は48.0meVであった。
【0110】
<実施例2>
[ストロンチウムシリサイド多結晶体の溶融合成]
実施例2では、溶融合成の条件を以下のように変更したこと以外は実施例1と同様にして、インゴットを得た。
【0111】
ストロンチウムシリサイド多結晶体の溶融合成に際しては、まず、加熱部を下端から106mmの位置に固定した上で、上段のヒーター(ヒーター21A)及び中段のヒーター(ヒーター21B)の温度を1130℃に設定するとともに、下段のヒーター(ヒーター21C)の温度を890℃に設定した。坩堝直下の温度は90分後に1050℃に達した。その状態で10時間保持し、組成原料の固相液相反応を進行させ、SrSi2を合成した(固相液相反応工程)。
【0112】
次いで、加熱部を15分間かけて下端(0mmの位置)まで移動させた。そのときの坩堝直下の温度は1133℃であった。その状態で5時間保持し、SrSi2の融解液を得た(融解工程)。
【0113】
次いで、加熱部を下端(0mmの位置)から上端(200mmの位置)まで1.08mm/hの移動速度で移動させることによって融解液の温度を徐々に降下させ、融解液から結晶を育成させた(結晶育成工程)。融解液の降温速度は、1100℃に達するまでは平均0.617℃/h(最小:0.445℃/h、最大:0.745℃/h)であり、1100℃に達した後、1015℃に達するまでは平均1.152℃/h(最小:0.988℃/h、最大:1.339℃/h)であった。
【0114】
その後、上段、中段、及び下段の各ヒーターの温度をいずれも600℃に設定し、5時間かけて坩堝直下の温度を600℃まで降下させた。さらに、上段、中段、及び下段の各ヒーターの温度をいずれも25℃に設定し、5時間かけて坩堝直下の温度を25℃まで降下させた後、坩堝からインゴットを取り出した。得られたインゴットは、目視でボイドが観察されないものであった。
【0115】
[粉末X線回折分析及びリートベルト解析]
得られたインゴットのうち、結晶成長の終端側である上部側(坩堝の口部側)の約1/5の部分を、坩堝の高さ方向に垂直にワイヤーソーで切断し、上部試料とした。さらに、残りの部分を、坩堝の高さ方向に垂直にワイヤーソーで半分に切断し、中部試料及び下部試料とした。そして、各試料の一部を粉末化し、実施例1と同様にして粉末X線回折分析を行った。
【0116】
各試料の粉末X線回折パターンを
図8A及び
図8Bに示す。
図8A及び
図8Bに示すとおり、上部試料には不純物としてSi及びSr
2(SiO
4)が確認されたが、中部試料及び下部試料には不純物が確認されなかった。この結果から、不純物がインゴットの上部側(結晶成長の終端側)に偏析していることが分かる。
【0117】
さらに、実施例1と同様にして粉末X線回折パターンのリートベルト解析を行った。リートベルト解析による定量値を下記表3に示す。
【0118】
【0119】
表3に示すとおり、上部試料の結晶相にはSi相及びSr2(SiO4)相が含まれていたが、中部試料及び下部試料は結晶相が立方晶SrSi2相のみからなるものであった。この中部試料及び下部試料が、上述した本実施形態に係る溶融合成体となり得る。
【0120】
[バンドギャップ値の測定]
実施例1と同様にして、実施例2の下部試料のバンドギャップ値を測定した。その結果、実施例2の下部試料のバンドギャップ値(Eg)は49.4meVであった。
【0121】
<実施例3>
[焼結体の製造]
Arガス雰囲気のグローブボックス内にて、実施例1の下部試料の一部を、乳鉢を用いて粉砕した。粉砕後、ステンレス製篩を用いて分級し、粒径25~45μmの試料粉末を得た。
【0122】
内径10.4mmのグラファイト製ダイ((株)ウエキコーポレーション製)と、上下2つのグラファイト製パンチ((株)ウエキコーポレーション製)とで囲まれた空間に、試料粉末3.75gを仕込んだ(
図3参照)。粉末の上下端には、パンチへの固着防止のためにカーボンペーパーを挟んだ。この状態で、足踏み式油圧プレス機(理研精機(株)製)を用いて60MPaの圧力でプレスし、圧粉体とした。
【0123】
次いで、グラファイト製ダイを放電プラズマ焼結装置(Ed-PAS III、(株)エレニックス製)に設置し、プレス圧力を100MPaに昇圧し、Ar雰囲気下で放電プラズマ焼結を行った。焼結時の温度条件は以下のとおりである。まず、室温から500℃まで1分間かけて昇温した後、800℃まで1分間かけて昇温した。次いで、焼結温度である920℃に達するまで30℃/minの昇温速度で昇温し、920℃で10分間保持した。次いで、600℃に達するまで50℃/minの降温速度で降温し、その間に42MPaになるまで徐々にプレス圧力を低下させた。その後、室温まで放冷した。なお、温度測定は、グラファイト製ダイの温度を測定することにより行い、室温から580℃まではK熱電対を使用し、それ以上の温度では赤外線放射温度計を使用した。
【0124】
焼結後、付着したカーボンペーパーをサンドペーパーで除去することにより、焼結体を得た。得られた焼結体の形状は、円柱状(上面及び底面が直径10mmの円、高さが5mm)である。
【0125】
<熱電変換性能の評価>
実施例1及び2の下部試料を、坩堝の高さ方向に垂直にワイヤーソーで切断し、厚さ2mmの略円盤状の試料を得た。さらに、ワイヤーソーを用いて、略円盤状の試料から2mm×2mm×7.5mmの大きさの試験片を切り出した。また、実施例3の焼結体を、円柱の軸方向に垂直にワイヤーソーで切断し、厚さ2mmの円盤状の試料を得た。さらに、ワイヤーソーを用いて、円盤状の試料から2mm×2mm×7.5mmの大きさの試験片を切り出した。
【0126】
実施例1~3の各試験片について、熱電特性評価装置(ZEM-3、アドバンス理工(株)製)を用いて、300~600Kの温度範囲におけるゼーベック係数及び電気伝導率を測定した。そして、得られたゼーベック係数及び電気伝導率に基づいて出力因子を算出した。実施例1~3の各試験片のゼーベック係数、電気伝導率、及び出力因子を
図9~11に示す。
図11から分かるように、実施例1~3の各試験片は、低温領域で高い熱電変換性能を有していた。310Kにおける出力因子は、実施例1が2.736×10
-3W/mK
2、実施例2が2.919×10
-3W/mK
2、実施例3が2.845×10
-3W/mK
2であった。
【0127】
<実施例4>
[ストロンチウムシリサイド多結晶体の溶融合成]
実施例4では、組成原料を装填する坩堝をアルミナ製の坩堝((株)ニッカトー製)の内表面に窒化ホウ素を押し固めたものに変更し、加熱炉内部の充填ガスを5体積%の水素ガスを含むArガスに変更し、溶融合成の条件を以下のように変更したこと以外は実施例1と同様にして、インゴットを得た。
【0128】
ストロンチウムシリサイド多結晶体の溶融合成に際しては、まず、加熱部を下端から123mmの位置に固定した上で、上段のヒーター(ヒーター21A)及び中段のヒーター(ヒーター21B)の温度を1130℃に設定するとともに、下段のヒーター(ヒーター21C)の温度を890℃に設定した。坩堝直下の温度は90分後に1035℃に達した。その状態で10時間保持し、組成原料の固相液相反応を進行させ、SrSi2を合成した(固相液相反応工程)。
【0129】
次いで、加熱部を15分間かけて下端(0mmの位置)まで移動させた。そのときの坩堝直下の温度は1130℃であった。その状態で5時間保持し、SrSi2の融解液を得た(融解工程)。
【0130】
次いで、加熱部を下端(0mmの位置)から上端(200mmの位置)まで3.6mm/hの移動速度で移動させることによって融解液の温度を徐々に降下させ、融解液から結晶を育成させた(結晶育成工程)。融解液の降温速度は、1100℃に達するまでは平均1.84℃/h(最小:1.23℃/h、最大:2.36℃/h)であり、1100℃に達した後、1000℃に達するまでは平均4.32℃/h(最小:3.01℃/h、最大:5.19℃/h)であった。
【0131】
その後、上段、中段、及び下段の各ヒーターの温度をいずれも600℃に設定し、5時間かけて坩堝直下の温度を600℃まで降下させた。さらに、上段、中段、及び下段の各ヒーターの温度をいずれも25℃に設定し、5時間かけて坩堝直下の温度を25℃まで降下させた後、坩堝からインゴットを取り出した。得られたインゴットは、目視でボイドが観察されないものであった。得られたインゴットを走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した反射電子像及び二次電子像を
図12に示す。
【0132】
[粉末X線回折分析及びリートベルト解析]
得られたインゴットのうち、結晶成長の終端側である上部側(坩堝の口部側)の約1/5の部分を、坩堝の高さ方向に垂直にワイヤーソーで切断し、上部試料とした。さらに、残りの部分を、坩堝の高さ方向に垂直にワイヤーソーで半分に切断し、中部試料及び下部試料とした。そして、各試料の一部を粉末化し、実施例1と同様にして粉末X線回折分析を行った。
【0133】
各試料の粉末X線回折パターンを
図13A及び
図13Bに示す。
図13A及び
図13Bに示すとおり、上部試料には不純物としてSiが確認されたが、中部試料及び下部試料には不純物が確認されなかった。この結果から、不純物がインゴットの上部側(結晶成長の終端側)に偏析していることが分かる。
【0134】
さらに、実施例1と同様にして粉末X線回折パターンのリートベルト解析を行った。リートベルト解析による定量値を下記表4に示す。
【0135】
【0136】
表4に示すとおり、上部試料の結晶相にはSi相が含まれていたが、中部試料及び下部試料は結晶相が立方晶SrSi2相のみからなるものであった。この中部試料及び下部試料が、上述した本実施形態に係る溶融合成体となり得る。
【0137】
[バンドギャップ値の測定]
実施例1と同様にして、実施例4の下部試料のバンドギャップ値を測定した。その結果、実施例4の下部試料のバンドギャップ値(Eg)は49.4meVであった。
【0138】
[ヤング率及び破壊靭性値の測定]
実施例4の下部試料について、Hillの近似式を用いた密度汎関数理論(DFT)に基づき、次式:E=9BG/(3B+G)に従ってヤング率Eを求めた。式中、Gは剪断弾性率(Gpa)を示し、Bは等方性体積弾性率(Gpa)を示す。また、実施例4の下部試料について、JIS R 1607:2015のIF法に準じて破壊靭性値を測定した。その結果、実施例4の下部試料のヤング率は90.17GPaであり、破壊靭性値は1.452MPa・m1/2であった。
【0139】
<実施例5>
[ストロンチウムシリサイド多結晶体の溶融合成]
実施例5では、溶融合成の条件を以下のように変更したこと以外は実施例4と同様にして、インゴットを得た。
【0140】
ストロンチウムシリサイド多結晶体の溶融合成に際しては、まず、加熱部を下端から106mmの位置に固定した上で、上段のヒーター(ヒーター21A)及び中段のヒーター(ヒーター21B)の温度を1130℃に設定するとともに、下段のヒーター(ヒーター21C)の温度を890℃に設定した。坩堝直下の温度は90分後に1035℃に達した。その状態で10時間保持し、組成原料の固相液相反応を進行させ、SrSi2を合成した(固相液相反応工程)。
【0141】
次いで、加熱部を15分間かけて下端(0mmの位置)まで移動させた。そのときの坩堝直下の温度は1130℃であった。その状態で5時間保持し、SrSi2の融解液を得た(融解工程)。
【0142】
次いで、加熱部を下端(0mmの位置)から上端(200mmの位置)まで1.08mm/hの移動速度で移動させることによって融解液の温度を徐々に降下させ、融解液から結晶を育成させた(結晶育成工程)。融解液の降温速度は、1100℃に達するまでは平均0.617℃/h(最小:0.445℃/h、最大:0.745℃/h)であり、1100℃に達した後、1015℃に達するまでは平均1.152℃/h(最小:0.988℃/h、最大:1.339℃/h)であった。
【0143】
その後、上段、中段、及び下段の各ヒーターの温度をいずれも600℃に設定し、5時間かけて坩堝直下の温度を600℃まで降下させた。さらに、上段、中段、及び下段の各ヒーターの温度をいずれも25℃に設定し、5時間かけて坩堝直下の温度を25℃まで降下させた後、坩堝からインゴットを取り出した。得られたインゴットは、目視でボイドが観察されないものであった。得られたインゴットをSEMで観察した反射電子像及び二次電子像を
図14に示す。
【0144】
[粉末X線回折分析及びリートベルト解析]
得られたインゴットのうち、結晶成長の終端側である上部側(坩堝の口部側)の約1/5の部分を、坩堝の高さ方向に垂直にワイヤーソーで切断し、上部試料とした。さらに、残りの部分を、坩堝の高さ方向に垂直にワイヤーソーで半分に切断し、中部試料及び下部試料とした。そして、各試料の一部を粉末化し、実施例1と同様にして粉末X線回折分析を行った。
【0145】
各試料の粉末X線回折パターンを
図15A及び
図15Bに示す。
図15A及び
図15Bに示すとおり、上部試料には不純物としてSiが確認されたが、中部試料及び下部試料には不純物が確認されなかった。この結果から、不純物がインゴットの上部側(結晶成長の終端側)に偏析していることが分かる。
【0146】
さらに、実施例1と同様にして粉末X線回折パターンのリートベルト解析を行った。リートベルト解析による定量値を下記表5に示す。
【0147】
【0148】
表5に示すとおり、上部試料の結晶相にはSi相が含まれていたが、中部試料及び下部試料は結晶相が立方晶SrSi2相のみからなるものであった。この中部試料及び下部試料が、上述した本実施形態に係る溶融合成体となり得る。
【0149】
[バンドギャップ値の測定]
実施例1と同様にして、実施例5の下部試料のバンドギャップ値を測定した。その結果、実施例5の下部試料のバンドギャップ値(Eg)は46.1meVであった。
【0150】
[ヤング率及び破壊靭性値の測定]
実施例4と同様にして、実施例5の下部試料のヤング率及び破壊靭性値を測定した。その結果、実施例5の下部試料のヤング率は91.14GPaであり、破壊靭性値は1.370MPa・m1/2であった。
【0151】
<比較例1>
[ストロンチウムシリサイド多結晶体の溶融合成]
比較例1では、ストロンチウムとシリコンとの原子量比を33.8:66.2に変更し、加熱炉内部の充填ガスをArガスに変更し、溶融合成の条件を以下のように変更したこと以外は実施例4と同様にして、インゴットを得た。
【0152】
ストロンチウムシリサイド多結晶体の溶融合成に際しては、まず、加熱部を下端から197mmの位置に固定した上で、上段のヒーター(ヒーター21A)の温度を1100℃、中段のヒーター(ヒーター21B)の温度を1130℃、下段のヒーター(ヒーター21C)の温度を890℃にそれぞれ設定した。坩堝直下の温度は90分後に900℃に達した。その状態で3時間保持し、組成原料の固相液相反応を進行させ、SrSi2を合成した。
【0153】
次いで、加熱部を15分間かけて下端(0mmの位置)まで移動させた。そのときの坩堝直下の温度は1130℃であった。その状態で3時間保持し、SrSi2の融解液を得た。
【0154】
次いで、加熱部を下端(0mmの位置)から上端(200mmの位置)まで7.2mm/hの移動速度で移動させることによって融解液の温度を徐々に降下させ、融解液から結晶を育成させた(結晶育成工程)。融解液の降温速度は、1100℃に達するまでは平均2.13℃/h(最小:0.88℃/h、最大:3.35℃/h)であり、1100℃に達した後、1000℃に達するまでは平均7.02℃/h(最小:3.56℃/h、最大:9.73℃/h)であった。
【0155】
その後、上段、中段、及び下段の各ヒーターの温度をいずれも600℃に設定し、5時間かけて坩堝直下の温度を600℃まで降下させた。さらに、上段、中段、及び下段の各ヒーターの温度をいずれも25℃に設定し、5時間かけて坩堝直下の温度を25℃まで降下させた後、坩堝からインゴットを取り出した。
【0156】
[粉末X線回折分析及びリートベルト解析]
得られたインゴットのうち、結晶成長の始端側である下部側(坩堝の底部側)から粉末状の試料を回収した。そして、実施例1と同様にして粉末X線回折分析を行った。
【0157】
【0158】
さらに、実施例1と同様にして粉末X線回折パターンのリートベルト解析を行った。リートベルト解析による定量値を下記表6に示す。
【0159】
【0160】
表6に示すとおり、比較例1の試料の結晶相には1.88質量%の正方晶SrSi2相が含まれていた。
【0161】
[バンドギャップ値の測定]
実施例1と同様にして、比較例1の試料のバンドギャップ値を測定した。その結果、比較例1の試料のバンドギャップ値(Eg)は30.9meVであった。
【0162】
<比較例2>
[ストロンチウムシリサイド多結晶体の溶融合成]
比較例2では、溶融合成の条件を以下のように変更したこと以外は実施例4と同様にして、インゴットを得た。
【0163】
ストロンチウムシリサイド多結晶体の溶融合成に際しては、まず、加熱部を下端(0mmの位置)に固定した上で、上段のヒーター(ヒーター21A)及び中段のヒーター(ヒーター21B)の温度を1130℃に設定するとともに、下段のヒーター(ヒーター21C)の温度を890℃に設定した。坩堝直下の温度は90分後に1130℃に達した。その状態で5時間保持し、SrSi2を合成しながらSrSi2の融解液を得た。
【0164】
次いで、加熱部を下端(0mmの位置)から上端(200mmの位置)まで3.6mm/hの移動速度で移動させることによって融解液の温度を徐々に降下させ、融解液から結晶を育成させた。融解液の降温速度は、1100℃に達するまでは平均1.84℃/h(最小:1.23℃/h、最大:2.36℃/h)であり、1100℃に達した後、1000℃に達するまでは平均4.32℃/h(最小:3.01℃/h、最大:5.19℃/h)であった。
【0165】
その後、上段、中段、及び下段の各ヒーターの温度をいずれも600℃に設定し、5時間かけて坩堝直下の温度を600℃まで降下させた。さらに、上段、中段、及び下段の各ヒーターの温度をいずれも25℃に設定し、5時間かけて坩堝直下の温度を25℃まで降下させた後、坩堝からインゴットを取り出した。
【0166】
[粉末X線回折分析]
得られたインゴットのうち、結晶成長の始端側である下部側(坩堝の底部側)の異なる2箇所から粉末状の試料1及び2を回収した。そして、実施例1と同様にして粉末X線回折分析を行った。
【0167】
比較例2の試料1及び2の粉末X線回折パターンを
図17に示す。
図17に示すとおり、試料1及び2のいずれについても、正方晶SrSi
2やその他の不純物が多く確認された。
【0168】
<熱電変換性能の評価>
実施例4及び5の下部試料を、坩堝の高さ方向に垂直にワイヤーソーで切断し、厚さ2mmの略円盤状の試料を得た。さらに、ワイヤーソーを用いて、略円盤状の試料から2mm×2mm×7.5mmの大きさの試験片を切り出した。また、比較例1のインゴットから同様にして試験片を切り出した。
【0169】
実施例4及び5並びに比較例1の各試験片について、熱電特性評価装置(ZEM-3、アドバンス理工(株)製)を用いて、300~600Kの温度範囲におけるゼーベック係数及び電気伝導率を測定した。そして、得られたゼーベック係数及び電気伝導率に基づいて出力因子を算出した。実施例4及び5並びに比較例1の各試験片のゼーベック係数、電気伝導率、及び出力因子を
図18~20に示す。
図20から分かるように、実施例4及び5の各試験片は、低温領域で高い熱電変換性能を有していた。310Kにおける出力因子は、実施例4が2.707×10
-3W/mK
2、実施例5が2.893×10
-3W/mK
2、比較例1が2.275×10
-3W/mK
2であった。
【0170】
<実施例6~8>
[焼結体の製造]
実施例6~8では、実施例5の下部試料の一部を使用し、焼結時の温度条件を以下のように変更したこと以外は実施例3と同様にして、焼結体を得た。
【0171】
焼結に際しては、まず、室温から500℃まで1分間かけて昇温した後、800℃まで1分間かけて昇温した。次いで、焼結温度である890℃(実施例6)、920℃(実施例7)、又は950℃(実施例8)に達するまで30℃/minの昇温速度で昇温し、各焼結温度で10分間保持した。次いで、600℃に達するまで50℃/minの降温速度で降温し、その間に42MPaになるまで徐々にプレス圧力を低下させた。その後、室温まで放冷し、焼結体を得た。
【0172】
実施例6~8の焼結体を光学顕微鏡で観察した光学顕微鏡像及びSEMで観察した反射電子像を
図21に示す。
図21から分かるように、焼結温度が高いほどボイドが少なく、粒界の密着性が高かった。
【0173】
[相対密度の測定]
アルキメデス法により、実施例6~8の焼結体の見かけ密度を測定した。また、ガスピクノメーターを用いたガス置換法により、実施例6~8の焼結体の真密度を測定した。そして、真密度に対する見かけ密度の割合から、相対密度を算出した。その結果、焼結体の相対密度は、実施例6が97.6%、実施例7が97.7%、実施例8が99.7%であった。
【0174】
[粉末X線回折分析及びリートベルト解析]
実施例6~8の焼結体の端部を粉末化し、実施例1と同様にして粉末X線回折分析を行った。
【0175】
実施例6~8の焼結体の粉末X線回折パターンを
図22A及び
図22Bに示す。
図22A及び
図22Bに示すとおり、実施例8の焼結体には不純物としてSiが確認されたが、実施例6及び7の焼結体には不純物が確認されなかった。
【0176】
さらに、実施例1と同様にして粉末X線回折パターンのリートベルト解析を行った。リートベルト解析による定量値を下記表7に示す。
【0177】
【0178】
表7に示すとおり、実施例8の焼結体の結晶相にはSi相が僅かに含まれていたが、実施例6及び7の焼結体は結晶相が立方晶SrSi2相のみからなるものであった。
【0179】
[バンドギャップ値の測定]
実施例1と同様にして、実施例6~8の焼結体のバンドギャップ値を測定した。その結果、バンドギャップ値(Eg)は、実施例6が55.8meV、実施例7が53.8meV、実施例8が52.6meVであった。
【0180】
[ヤング率及び破壊靭性値の測定]
実施例4と同様にして、実施例6~8の焼結体のヤング率及び破壊靭性値を測定した。その結果、ヤング率は、実施例6が86.92GPa、実施例7が88.56GPa、実施例8が87.32GPaであった。また、破壊靭性値は、実施例6が1.445MPa・m1/2、実施例7が1.650MPa・m1/2、実施例8が1.445MPa・m1/2であった。
【0181】
<比較例3>
[焼結体の製造]
比較例3では、比較例2の試料1を使用したこと以外は実施例3と同様にして、焼結体を得た。
【0182】
<熱電変換性能の評価>
実施例6~8及び比較例3の焼結体を、円柱の軸方向に垂直にワイヤーソーで切断し、厚さ2mmの円盤状の試料を得た。さらに、ワイヤーソーを用いて、円盤状の試料から2mm×2mm×7.5mmの大きさの試験片を切り出した。
【0183】
実施例6~8及び比較例3の各試験片について、熱電特性評価装置(ZEM-3、アドバンス理工(株)製)を用いて、300~600Kの温度範囲におけるゼーベック係数及び電気伝導率を測定した。そして、得られたゼーベック係数及び電気伝導率に基づいて出力因子を算出した。実施例6~8及び比較例3の各試験片のゼーベック係数、電気伝導率、及び出力因子を
図23~25に示す。
図25から分かるように、実施例6~8の各試験片は、低温領域で高い熱電変換性能を有していた。310Kにおける出力因子は、実施例6が2.401×10
-3W/mK
2、実施例7が2.571×10
-3W/mK
2、実施例8が2.442×10
-3W/mK
2、比較例3が1.814×10
-3W/mK
2であった。